説明

飽和および/または充足を誘発するプロバイオティックス

本発明は、栄養および医薬の分野に関する。本発明は飽和および充足を誘発または増強させるための組成物、および肥満症、体重過多および体重過多関連疾病を処置または予防するための組成物、細菌株および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は栄養付与の分野、特に新規プロバイオティックス菌株(probiotic strains)、少なくとも1種のこれらの菌株を含む組成物、または少なくとも1種のこれらの菌株の培養培地(特に、醗酵培地)から得られる無細胞培地を含む組成物、ならびにこのような組成物および/または菌株および/または無細胞培養培地の製造方法および/または使用方法に関する。これらの組成物は飽和および/または充足の誘発に適しており、従って体重減少の誘導に、および/または体重獲得および体重過多に関連する疾病、例えば肥満症および関連心臓病の防止および/または処置に適する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ファブレス(Fabuless)(登録商標)(DSM)およびピノシン(Pinno Thin)(登録商標)(液状栄養付与製品)などの天然脂肪の製剤が摂取されると飽和効果を有することは知られている。ピノシンはコリア松果樹木(Korean pine nut tree)[ピナス コライエンシス)(Pinus koraiensis)]の種子から誘導される多不飽和脂肪酸ピノレン酸を含有しており、食欲抑制ホルモン(グルカゴン様ペプチド−1)GLP−1およびコレシストキニン(CCK)の発現を増強する。これらのホルモンは飽和、充足)現象に関連している(参考文献:C.de Graaf等、Am.J.Clin.Nutr(2004)79:946−61)。ファブレス(登録商標)はパーム油およびオートムギ油を含有し、消化に際し、身体は消化プロセスの比較的遅い段階で比較的高レベルの未消化脂肪を同定し、これにより飢餓信号が抑制または遅延される。
【0003】
従って、ある種の多量養素、例えば脂肪はCCKおよびGLP−1などの飽和ホルモンの分泌を増強させる。CCKは脂肪およびタンパク質の存在下に十二指腸で放出される。GLP−1は炭水化物および脂肪に応答して腸L−細胞により放出されるが、その分泌はまた、中枢神経系によっても刺激されることがある。ホルモンGLP−1およびタンパク質ペプチドY(PYY)は両方共に小腸および大腸の腸内分泌腺L−細胞によって分泌され、「回腸分断」メカニズムで役割を演じることができ、胃腸内分泌および自動運動の制御に包含される。ホルモングレリン(ghrelin)は胃の基底部で生産され、その合成は炭水化物によって抑制することができ、これにより飢餓感覚が減少される。
【0004】
WO2007/043933は脂肪代謝および肥満に影響する3種の周知プロバイオティックス菌株(ラクトバシラス カセイ(Lactobacillus casei)F19−LMG P−17806;ラクトバシラス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)NCFB1748およびビフィドバクテリウム ラクチス(Bifidobacterium lactis)Bb12 DSM10140)を開示している。これら公知のプロバイオティックス菌株は飽和および/または充足を調整する菌株を同定するようにデザインされた機能検定に基づいて同定されたことはなかったが、コレステロール低下にかかわるヒト試験において二次パラメータとして体重減少に対するそれらの効果によって選択されているように見える。また、これらの菌株は酸性化乳汁に添加されている、すなわち醗酵を生じさせることなく最終被験製品に添加されている。さらにまた、本発明は飽和ホルモンレベルの誘発を直接的に調整し、従って消費後の飽和および/または充足の増強に格別の効果を有する菌株に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食物または飼料摂取に明白な減少を生じさせることができ、また食物または飼料摂取の格別の減少に有効であるLAB類およびLAB派生代謝物資を同定するという必要性が当技術で残されている。このようなLBS類、LAB派生代謝物質およびこれらを含む組成物は体重獲得、肥満症、体重過多関連疾病(心臓病、卒中、糖尿病など)の処置および/または防止に使用することができ、また体重減少を生じさせることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(定義)
「乳酸菌」(LAB)および「乳酸生産性細菌」は、本明細書において、互換可能で使用されており、醗酵の最終生成物として乳酸またはその他の有機酸(例えば、プロピオン酸)を生成するプロバイオティックスを表し、これらに制限されないものとして、例えばラクトバシラス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペジオコッカス属(Pediococcus)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、エンテロコッカス属(Eetrococcus)およびビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の細菌を表す。
【0007】
「プロバイオティックス」(probiotics)または「プロバイオティックス菌株」(probiotic strain(s))は、対象によって摂取されると宿主に対し有益な効果を有し、またヒトに対し一般に安全であると考えられる(GRAS)細菌の菌株を表す。
【0008】
「上清」は、培養培地(好ましくは、醗酵ブロスなど)から濾過または遠心分離などの技術によって細菌細胞を分離した後に得られる無細胞培地である。上清は使用前に、分別または濃縮することができる。「上清」は、以下の記載において、同等に「無細胞培地」と称される。
【0009】
「醗酵培地」および「醗酵ブロス」は、本明細書において互換可能に使用されており、状況に応じて、細菌株が添加される培地(すなわち、細菌株を含有していない培地)または添加された菌による醗酵の期間中および/または醗酵後の培地(ブロス)(すなわち、醗酵生成物を含む)を表す。それらが有する意味は前後関係から明白である。
【0010】
「対象」は、本明細書において、ヒトまたはヒト以外の動物、特に脊椎動物を表す。
【0011】
「食物摂取の調整」または「食物摂取の減少」は、飽和および/または充足の結果としての食物摂取の格別の減少を表す。
【0012】
「飽和」または「増強された飽和」は、食事後の延長された期間にわたる満腹感覚および次回の食事までの間隔期間の延長を表す。
【0013】
「充足」または「増強された充足」は、より早い満腹感覚によってより早く食事を止めることを表す。
【0014】
「飽和関連ホルモン」または「飽和ホルモン」は誘発または抑制されると、飽和および/または充足に対する作用を有するホルモン類を表し、例えばこれらに制限されないものとして、CCKおよび/またはGLP−1、ボンベシン(bombesin)、ソマトスタチン(somatostatin)、インスリン(insulin)、レプチン(leptin)、グルコース依存性向インスリン性ポリペプチド(GIP)、グレリン(ghrelin)、ペプチドYY(PYY)、エンテロスタチン(enterostatin)などを表す。
【0015】
「ホルモン誘発」は、胃腸器官ホルモン合成、例えばGLP−1および/またはCCKレベルの誘発(刺激)を表し、これは血漿および/またはインビトロ細胞系検定法で測定することができる。
【0016】
「ホルモン抑制」はグレリンレベルなどの胃腸器官ホルモン合成の減少を表し、これは血漿および/またはインビトロ細胞系検定法で測定することができる。
【0017】
「インビトロ細胞系」および「インビトロ細胞系検定法」は、プロバイオティックス菌株を同定するために、および/またはそれらのホルモン誘発および/または抑制を生じさせる能力におけるプロバイオティックス菌株の機能を測定するために細胞系培養を使用することを表し、特にCCKおよび/またはGLP−1などの胃腸器官ホルモンを生産可能な哺乳動物細胞系を使用することを表す。
【0018】
「代謝」は、生存している細胞で生じる化学的反応である。「代謝物質」は、代謝の結果として生成される分子であり、本明細書において、異化反応(エネルギー生成反応)中および同化反応(エネルギー使用反応)中に生成される代謝物質を包含する。従って、代謝物質はまた、細胞の培養培地(例えば、無細胞培地)中の化合物、例えば培養培地/増殖培地/細菌細胞によって合成される増殖環境または特異成分の1種または2種以上の成分の分解生成物などを包含する。
【0019】
「パーセンテージ」または「平均」は一般に、別段の記載がない限り、または別段のその他の意味がないかぎり、重量によるパーセンテージを表す。
【0020】
「含む」の用語は、記載部分、工程または成分の存在を明示するものと解釈されるべきであり、1種または2種以上の追加の部分、工程または成分の存在を排除するものではない。
【0021】
「ア」(a)または「アン」(an)は、一つに制限されず、少なくとも一つを意味するものと解釈する。
【0022】
(詳細な説明)
本発明者等は、インビトロ細胞系検定法を(共生)細菌株の同定および/または単離に効果的に使用することができることを見出した。これらの菌株はヒトおよび/または哺乳動物対象において飽和および/または充足を格別に誘発させる。インビトロ細胞検定法においてCCKおよび/またはGLP−1などの胃腸器官飽和ホルモン生産を刺激することができる菌株をスクリーニングすることによって、CCKおよび/またはGLP−1生産などの胃腸器官飽和ホルモン生産を誘発させることができる菌株を同定することができる。本発明を制限するものではないが、これらの菌株はインビボ胃腸器官飽和ホルモン生産を刺激することによって飽和および/または充足感覚を誘発する(または増強する、または刺激する)ことができるものと信じられる(適量の1種または2種以上のこのような菌株を含む組成物および/または1種または2種以上のこのような菌株の培養から得られる/得ることができる、特に醗酵条件下にこれらの菌株の培養から得られる/得ることができる、無細胞培養培地を摂取した後)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に従うスクリーニング方法
一態様において、飽和および/または充足の感覚を誘発または増強させることができる細菌を同定および/または単離するための方法が提供され、この方法は下記工程を含んでいる:
(a)1種または2種以上の細菌株を培地で培養する、
(b)(a)の細菌細胞および/または培養培地を含む細菌細胞および/または無細胞培養培地を採取する、
(c)細菌細胞および/または培養培地および細菌細胞および/または無細胞培地を哺乳動物細胞系培地に添加する、
(d)(c)の添加後、当該細胞系によって生産された飽和ホルモン(例えば、GLP−1および/またはCCK)の量を分析する、次いで
(e)対照(未処理哺乳動物細胞系、対照試料、例えば緩衝液のみ、または細菌を含有していない別の培地で処理された哺乳動物細胞系)に比較し、細菌細胞および/または培養培地を含む細菌細胞および/または無細胞培養培地で処理した後に、(好ましくは、格別に)大量の飽和ホルモン(例えば、GLP−1および/またはCCK)を(直接的に、または培養培地または培地中に存在する代謝物質を経て間接的に)生産する細菌株(1種または2種以上)を同定する、次いで
(f)任意に、同定された細菌株の培養から得られる/得ることができる同定された細菌株および/または培養培地を含む細菌細胞および/または無細胞培地を食物摂取を減少させる組成物、飽和および/または充足感覚を誘発および/または増強する組成物、肥満症を処置または予防する組成物および/または体重を減少させる組成物の調製に使用する。
【0024】
工程(a)において、あらゆる細菌株を使用することができるが、好適菌株はプロバイオティックス菌株、さらに好ましくはLABに属する菌株である。培養培地は好ましくは、そこで増殖および/または醗酵を生起させることができる培地、例えば酪農製品または乳汁基材培地(例えば、脱脂乳など)、または植物起源の「乳汁」(例えば、大豆乳汁)であるが、別種の培地が適することもある。従って、醗酵生成物、例えば乳酸および/またはその他の有機酸を生成することができる基質を利用すべきである。培養条件(醗酵時間)は醗酵プロセスを生起させることができる条件であるべきである。すなわち、インキュベーション時間および温度などは当業者に公知のとおりに選択する。典型的醗酵時間は数時間乃至数日である。醗酵期間中、有機酸の生成によりpHは低下する。場合により、このpHは醗酵の終了時点で、例えば1種または2種以上の有機酸(例えば、乳酸)またはpH緩衝物質をさらに添加することによって適合させることができる。場合により、醗酵培地には、プロバイオティックス菌株、タンパク質加水分解生成物(例えば、カサミノ酸)、ペプトン類、ミネラル類、ビタミン類、酵母エキスなどを補給することができる。
【0025】
工程(b)において、細菌細胞および/または細菌細胞を含む培養培地を採取する。採取は、例えば遠心分離および/または濾過および/または濃縮により行うことができ、細胞(および/または細胞を含む培地)は次いで、哺乳動物細胞系培地の処理に適する緩衝液中に再懸濁することができる(工程(c)において)。好ましくは、細菌細胞を適当な濃度、例えば当該哺乳動物細胞系に対し負の作用を有していない濃度に希釈する。一連の希釈を使用し、その細胞濃度(CFU)が最も適する試験に使用することができる。細菌細胞は場合により、使用前に洗浄することができるが(例えば、培地の全部を除去するため)、一態様において、採取された細菌細胞は採取後であって、再懸濁の前、または哺乳細胞系と接触させる前に洗浄しない方が好ましい。従って、一態様において、細胞を採取し(遠心分離および/または濾過および/または濃縮による)、次いで懸濁液または希釈液の調製に直接に使用し、次いで哺乳動物細胞系と接触させる。
【0026】
別法として、例えば遠心分離または濾過による細菌細胞からの分離(全部または実質的全部)により得られる無細胞培地またはそこから得られる1種または2種以上のフラクションを採取し、次いで(c)で使用する。無細胞培地の部分的にまたは実質的に精製したフラクションを使用し、飽和ホルモン生産(例えば、GLP−1および/またはCCK生産)を刺激することができる無細胞培地の成分(例えば、1種または2種以上の代謝物質)を確認することができる。飽和ホルモン誘発活性を保有するフラクションは次いで結果的に、飽和ホルモン誘発活性を有する1種または2種以上の特定成分の確認に使用することができる。
【0027】
もう一つの態様では、場合により濃縮または希釈されている細菌細胞を培養培地(例えば、醗酵ブロス)と組合せて使用する。
【0028】
工程(d)において、インビトロ検定を行い、細菌細胞および/または培地を含む細菌細胞および/または無細胞培地(またはそのフラクション)が培地において哺乳動物細胞増殖に対し飽和ホルモン誘発効果を有するかを試験する。当技術で入手可能な多くの哺乳動物細胞系を使用することができる。好適態様において、使用細胞系は、STC−1(形質転換マウスの小腸内分泌腺腫瘍からの天然腸内分泌腺細胞)であり、この点は、例えばMcLaughlin等、J.Physiol.513:11−18(1998)に、あるいは下記文献に記載されている:Gevrey等、Diadetologia(2004)47:926−936;Cordier−Bussat等、Eendocrinology138:1137−1144(1997);Hira等、J.Biol.Chem.(2004)279(25)26082−26089;Kazmi等、J.Physiol.(2003)553:759−773;Trinh等、Diabetes(2003)52:425−433;Benson等、J.Physiol.(2002)538:121−131;Wang等、Am.J.Physiol.Gastroinst Liver Physiol(2002)282:16−22;Cordier−Bussat等、Diabetes(1998)47:1038−1045。
【0029】
別の適当な細胞系は、例えば細胞系GLUTag(形質転換マウスの大腸からの腸内分泌腺腫瘍細胞系)(Brubaker等、Endcrinology(1998)139:4108−4114、1998;Reinmann等、Diabetologia(2004)47:1592−1601;Reimann等、J.Physiol.(2005)563:161−175;Reimann等、J.Physiol.(2005)569:761−772;Anini等、Diabetes(2003)52:252−259;およびReimann等、Diabetes(2002)51:2757−63参照)、NCI−H716(ヒト腸細胞系)(Anini等、Endocrinology(2003)144:3244−3250;Cao等、Endcrinology(2003)144:2025−2033;Anini等、Diabetes(2003)52:252−259;Reimer等、Endcrinology(2001)142:4522−4528参照)、FRIC(ラット胎児腸細胞系)(Brubaker等、Endcrinology(1991)129:3351−8;およびAnini等、Endcrinology(2002)143:2420−2426参照)、単離イヌL−細胞(Damholt等、Endcrinology(1998)139:2085−2091参照)、Caco−2細胞(Hyae Gyeong Cheon Pharmacol.(2005)70:22−29参照)およびその他を包含する。当業者は1種または2種以上の飽和ホルモン、例えばGLP−1および/またはCCKを生産することができる適当な細胞系を同定することができる(基礎レベルおよび/または誘発後)。
【0030】
工程(d)は種々の方法で行うことができる。一例として、ホルモン様GLP−1および/またはCCKタンパク質(またはペプチド、この用語は本明細書においてアミノ酸鎖を表す用語として互換可能に使用されている)は、例えばELISA(すなわち、タンパク質検出用抗体ベーススクリーンを使用する)または別の方法を用いて同定することができ、次いで場合により定量することができる。別法として、遺伝子発現(mRNA転写)を当業者に公知の方法、例えば定量性RT−PCRまたは別の分子生物学的方法を用いて分析することができる。ヒトGLP−1ペプチドは配列番号:1(hdeferhaeg tftsdvssyl egqaakefia wlvkgrg)のアミノ酸配列を有する(遺伝子バンク受託番号(GenBank Accession No.)P01275参照)。このマウス相同体はヒトペプチドと同一である(遺伝子バンクP55095参照)。ラットCCKタンパク質先駆体は受託番号P01355(配列番号:2、mkcgvclcvv mavlaagala qpvvpveavd pmeqraccap rrqlravlrp dseprarlga llaryiqqvr kapsgrmsvl knlqgldpsh risdrdymgw mdfgrrsaed yeyps)およびマウスP09240(配列番号:3、mksgvclcvv mavlaagala qpvvpaeatd pveqraeeap rrqlravlrp dreprarlga llaryiqqvr kapsgrmsvl knlqsldpsh risdrdymgw mdfgrrsaed yeyps)を有する。
【0031】
すなわち、タンパク質およびcDNA配列は両方共に、タンパク質(またはその同族体、例えばBlosum62置換マトリックスを用い、例えばEmbossWinのプログラム「ニードル」(needle)または「ウォーター」(water)などの対配列比較(pairwise alignment)をギャップ開放優先度(gap opening penalty)10.0およびギャップ延長優先度(gap extension penalty)と共に使用して測定し、配列番号:1、2または3に対し少なくとも80%、90%、95%、98%またはそれ以上同一のアミノ酸配列同一性を含むタンパク質など)を検出することができる抗体およびGLP−1および/またはCCKタンパク質などの飽和ホルモンの相対レベルまたは絶対レベルの検出方法のような該当技術で利用することができる。適する哺乳動物細胞系にかかわる上記参考文献をまた参照し、例えばペプトン、脂肪酸またはその他の試薬による刺激後のGLP−1および/またはCCK放出をまた測定することができる。
【0032】
GLP−1および/またはCCK転写体(mRNAまたは対応するcDNA)などの飽和ホルモンおよび/または処理後に生産されるタンパク質の絶対量または相対量は適当な対照と比較し、転写およびタンパク質生産が当該処理により誘発されたか否かを測定する。適当な対照は、例えばi)未処理哺乳動物細胞(例えば、GLP−1および/またはCCKの基礎レベルを測定する場合)、ii)細菌細胞を含有していないか、および/または培地を含む細菌細胞を含有していないか、および/または無細胞培地を含有していない緩衝液で処理されている哺乳動物細胞あるいはiii)対照培地(例えば乳酸などにより酸性化されている脱脂乳)で処理されている哺乳動物細胞を包含する。
【0033】
工程(e)では、対照に比較して、(直接的に、または培地を経て、例えば培地中に存在する1種または2種以上の代謝物質を経て間接的に)1種または2種以上の飽和ホルモンの格別に増加した生産をもたらす細菌株の同定に統計学的分析を使用する。本明細書において、「格別に増加」の用語は対照で生産される量の少なくとも1.5x、好ましくは少なくとも2x、3x、4x、5x、6xまたはそれ以上を表す。
【0034】
所望により、各種工程は反復することができる。一例として、2種または3種以上の細菌細胞培地および/または培地を含む細菌細胞および/または無細胞培地(あるいはその各種フラクション)の混合物を使用し、これらの混合物の飽和ホルモン誘発活性を試験することができる。また、処理後の混合物の飽和ホルモン様GLP−1および/またはCCK誘発にかかわり種々の哺乳動物細胞系を試験することができる。
【0035】
上記方法によって得られる菌株はまた、1種または2種以上のこのような菌株を含む(培養培地を含む、または培養培地を含まない)組成物および/または1種または2種以上のこのような菌株の無細胞培地(またはその一部分)、例えば醗酵培地(またはその一部分)を含有する組成物と同様に、本発明の態様の一つである。
【0036】
工程(f)は任意であり、同定された細菌株および/または同定された細菌株の培地から得られた/得ることができる培養培地を含む細菌株および/または無細胞培地を組成物の製造に使用する。最初に、インビボ飽和および/または充足誘発効果を確認するために、これらの1種または2種以上を含む組成物を製造し、次いで動物、例えばラットに供与することができ、好ましくは次いでヒト治験を行う。食物/飼料摂取は服用後に減少されると好ましい。この効果は対照食物/飼料に比較してより早い食事の終了に、および/またはより長い食事/飼料摂取間隔に見ることができる。この効果はまた、次回の食事が欲しくなるまでの時間の延長に見ることができる。細菌株を含む食物/飼料組成物および/または細菌株および培養培地を含む食物/飼料組成物および/または無細胞培地(好ましくは、醗酵の結果として得られる培地)を含む食物/飼料組成物を用いる延長された期間にわたる食物摂取/飼料給食はまた、対照食物/飼料組成物に比較し、体重低下をもたらすことができる。
【0037】
ヒト対照においてまた、これらの組成物(1種または2種以上)の摂取前および摂取後の間隔をあけた或る時点における対象採点は、例えば公知技術であるビジュアルアナログスケール(Visual Analogue Scale)(VAS)を用い評価することができる(例えば、飢餓状態の対象、満腹状態の対象、飽和状態の対象、食欲のある対象など)(例えば、Luscombe−Marsh等、Am.J.Clin.Nutr.(2005)81:762−772またはMoran等、J.Clin.Endocrinol.Metabol.(2005)90:5202−5211参照)。対象には極限間(例えば、空腹〜非空腹)の或る時点で彼等の感覚を尋ねて印を付けるように要求する。基礎的状態からの評価の変化を次いで、採点する。
【0038】
本発明による菌株および培地
一態様において、本発明は(共生)細菌株を提供する。この細菌株はヒトおよび/または動物対象に投与後(例えば、摂取による)、飽和および/または充足を刺激することができる。
【0039】
使用される細菌株は好ましくは、乳酸またはその他の有機酸、例えばプロピオン酸生産性プロバイオティックス、好ましくはラクトバシラス(Lactobacillus)属の細菌である。ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)またはプロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)の細菌もまた好適である。これらの細菌は食品品質級でなければならない。すなわち、これらはヒトまたは動物対象に摂取された場合、無害でなければならない。非食品品質級、例えば病原性菌は、対象により摂取されてももはや有害ではないように変性されている場合に、本発明の範囲に包含されるものと理解されるべきである。
【0040】
ラクトバシラス(Lactobacillus)属に属する菌株は好適である。ラクトバシラス(Lactobacillus)菌株は下記菌株であることができる:エル.ラムノスス(L.rhamnosus)、エル.カセイ(L.casei)、エル.パラカセイ(L.paracasei)、エル.ヘルベチクス(L.helveticus)、エル.デルブリュック(L.delbrueckii)、エル.ロテリ(L.reuteri)、エル.ブレビス(L.brevis)、エル.クリスパツス(L.crispatus)、エル.サケイ(L.sakei)、エル.ヤンセニ(L.jensenii)、エル.サンフランシスセンシス(L.sanfransiscensis)、エル.フラクチボランス(L.fructivorans)、エル.ケフィリ(L.kefiri)、エル.クルバツス(L.curvatus)、エル.パラプランタルム(L.paraplantarum)、エル.ケフィアグラヌム(L.kefirgrannum)、エル.パラケフィア(L.parakefir)、エル.フェルメンツム(L.fermentum)、エル.プランタルム(L.plantarum)、エル.アシドフィルス(L.acidophilus)、エル.ジョンソニ(L.johnsonii)、エル.ガセリ(L.gasseri)、エル.キシロスス(L.xylosus)、エル.サルバリウス(L.salivarius)等。好適菌株は、エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)、エル.カセイ(L.casei)、エル.アシドフィルス(L.acidophilus)、エル.パラカセイ(L.paracasei)、エル.ヘルベチクス(L.helveticus)、エル.フラクチボランス(L.fructivorans)、エル.サルバリウス(L.salivarius)、エル.クルバツス(L.curvatus)、およびエル.サケイ(L.sakei)である。
【0041】
微生物の菌株同定は生化学的に、またはDNA配列(例えば、保存配列)によって、またはパルスフィールドゲル電気泳動などの公知方法によって測定することができる。一般に、菌株は16S rRNA領域(例えば、欠損パラメータを用いるプログラムGAPまたはBESTFITなどにより最適に配列されている場合)で少なくとも97%核酸配列同一性を示す場合、同一菌株に属する。
【0042】
これらの細菌株は、インビトロ細胞系検定法において、および/またはインビボ対象において飽和ホルモン、例えばグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)および/またはコレシストキニン(CCK)の生産および/または放出を刺激することができる。インビトロ細胞系検定法において、飽和ホルモン(例えば、GLP−1および/またはCCK)生産の誘発能力は前記のとおりに試験することができる。ヒトまたは哺乳動物におけるインビボ試験において、GLP−1および/またはCCKなどの飽和ホルモンの生産/誘発は、本発明による菌株(1種または2種以上)あるいは本発明による1種または2種以上の菌株および/または本発明による無細胞培養培地(またはそのフラクション)を含む組成物の投与または摂取の前および投与または摂取後の1時点または2時点以上の時点でこれらのタンパク質の血漿レベルを測定することによって比較することができる。上記したように、菌株はホルモン生産、特にGLP−1および/またはCCK生産を対照処置および/または基礎レベル生産に対して格別に増加させる(直接的に、または培地を経て間接的に)ことができるという特徴を有する。
【0043】
これらの菌株がそれらの飽和効果および/または充足効果を対象に対して有することをまた、特徴としていることは勿論のことである。従って、1種または2種以上の菌株を標準的方法を用い増殖させ、収穫することができる。別法として、無細胞培養培地を使用することができ、この場合、この培地は1種または2種以上の飽和調整性代謝物質を含有する。被験組成物を調製するために、細菌細胞および/または無細胞培地(またはそのフラクション)の種々の希釈液を適当な媒質(例えば、緩衝液、水、食物基材(例えば、脱脂乳等)中で調製することができる。これらは次いで実験動物および/またはヒト対象に投与(好ましくは、経口投与)することができ、このためには好ましくは適当な統計学的分析の実行を可能にする試験計画を用いる(例えば、二重盲験、プラセボ、プラセボ制御試験)。被験組成物の飽和に対する効果は、例えば次回の食事までの満腹期間について採点することによって測定することができる。満腹感覚の期間が対照よりも格別に長い場合、例えば少なくとも1%、2%、3%、5%、10%、20%またはそれ以上長い場合、飽和効果が見られる。追加として、または別法として、飽和効果は活性成分(例えば、被験組成物)を含有する製品を消費した後の或る期間後(例えば、4時間後)に食べた食事中の食物消費量(満腹の好ましい感覚に達するまでの量)を測定することによって評価することができる。消費されたカロリー量が活性成分を含有していない対象製品を食べた後の消費量よりも少なくとも1%、2%、3%、5%、10%または15%(またはそれ以上)少ない場合、飽和効果が見られる。
【0044】
飽和に対する効果は、食事の停止の時点を採点することによって測定することができる。食事停止時点で消費されたカロリー量が対照における量よりも格別に少ない場合、例えば1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%またはそれ以上少ない場合、飽和効果を見ることができる。さらに長期間にわたる場合(例えば、1、2、3、4、5週間またはそれ以上)、対照食に比較した体重減少または体重変化を採点することができる。規定量の被験組成物を投与された(例えば、一日一回、一日二回またはそれ以上)対象の体重は対照対象に比較し好ましく格別に制御される(減少または増加の減少)。
【0045】
好適態様において、下記菌株(およびその複製または誘導体)が提供され、ならびに1種または2種以上のこれらの菌株を含む組成物および/または1種または2種以上のこれらの菌株の増殖から(例えば、醗酵条件下に)得られる/得ることができる培養培地を含む組成物が提供される:ラクトバシラス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)MUH41、ラクトバシラス デルブリュック亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii ssp bulgaricus)MUH192、ラクトバシラス カセイ亜種パラカセイ(Lactobacillus casei ssp paracasei)MUH142、ラクトバシラス デルブリュック亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii ssp bulgaricus)MUH190[この菌株はCampina Nederland BVにより2007年7月5日付けでTheNetherland at the Centraalbureau voor Schimmelculturesに寄託されており(CBS、Uppsalaan 8、3548CT Untrecht、The Netherland)、寄託番号CBS121540(エル.アシドフィルス(L.acidophilus)MUH41)、CBS121543(エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH192)、CBS121541(エル.カセイ亜種パラカセイ(L.caseissp paracasei)MUH142)およびCBS121542(エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH190)が付与されている;2002年11月15日付けでAmerican Type Culture CollectionにPTA−4797としてRhodia Chimie、Franceにより寄託されているラクトバシラス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)NCFM;2002年11月15日付けでAmerican Type Culture CollectionにPTA−4800としてRhodia Chimie、Franceにより寄託されているラクトバシラス サルバリウス(Lactobacillus salivarius)33;2003年7月23日付けでDeutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbHにDSM15794としてDanisco Niebull GmbHにより寄託されているラクトバシラス サルバリウス(Lactobacillus salivarius)1502; 2003年7月23日付けでDeutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbHにDSM15793としてDanisco Niebull GmbHにより寄託されているラクトバシラス クルバツス(Lactobacillus curvatus)853;および2003年9月2日付けでDeutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbHにDSM15889としてDanisoco A/Sにより寄託されているラクトバシラス サケイ(Lactobacillus sakei)570。これらの菌株および/またはこれらの菌株の誘導体および/または複製(および/またはこれらの菌株の培養から得られる培地)は、食物/飼料摂取を減少させる組成物の調製に適している。
【0046】
寄託されている菌株または本発明に従うあらゆるその他の菌株の複製および/または誘導体は本発明に包含されるものと理解されるべきである。「複製」の用語は、或る物質、例えば培養培地における細菌の増殖などの微生物増殖により生産される物質の実質的に未変性のコピイを表す生物学的物質を表す。「誘導体」の用語は生物学的物質から作り出される物質を表し、誘導体は実質的に変性されており、遺伝的物質における相続可能な変化によって作り出される新しい性質を有する。これらの変化は、自発的に、および/または適用された化学的および/または物理的試薬(例えば、突然変異誘発剤)の結果として、および/または当技術で公知の組換えDNA技術によって生じさせることができる。別の菌株から「誘導された」菌株を表す場合、誘導された菌株が食物/飼料摂取に対し減少効果を依然として保有するかぎり、この菌株の「複製」およびこの菌株の「誘導体」が両方共に包含されるものと理解されるべきである。
【0047】
一態様においては、菌株はラクトバシラス カセイ(Lactobacillus casei)F19−LMGP−17806、ラクトバシラス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)NCFB1748およびビフィドバクテリウム ラクティス(Bifidobacterium lactis)Bb−12DSM10140からなる群から選択される菌株ではない。
【0048】
本発明による組成物
本発明はまた、飽和および/または充足誘発量の1種または2種以上の細菌株および/または好ましくは醗酵後の培地を含む細菌細胞、および/またはそれらから誘導される無細胞培地を含む組成物を提供する。
【0049】
本明細書において、「上清」または「培養上清」または「無細胞培地」の用語が示されている場合、細菌、ここでは好ましくは乳酸菌が増殖(成長/培養)される培地、好ましくは醗酵培地であって、細菌の全部(100%)または実質的全部(>90%、好ましくは>95%または>99%)がまた、例えば醗酵後にそこから再度分離されている培地を表すことは明白である。従って、この定義には無細胞培地(すなわち、菌株の細菌細胞の全部または基本的に全部が、例えば遠心分離、濾過またはその他の手段により分離された培地)、またはこのような無細胞培地のフラクションが包含される。場合により、無細胞培地はあらゆる潜在的に残存する細菌細胞が殺滅されるような方法で処理することができる。
【0050】
種々の醗酵培地、例えば(これらに制限されないものとして)、そこで菌株(1種または2種以上)が増殖される初期には工業用の培地が本発明に従い適しており、これはそのままで、または濃縮(例えば、乾燥)後に、または別の食物基材または製品(例えば、ヨーグルトおよび/または乳汁または二次乳汁、または乳汁を基材とする培地、あるいは乳汁を含む培地、例えば菌株を成長させるビタミン類および/またはペプトン類および/またはミネラル類を添加した乳汁)を添加した後に単独でまたは別種のLABと組合わせて使用され、および直接にまたは濃縮(例えば、乾燥)後、または別の食物基材または製品(例えば、果実製品)と組合わせて使用される。
【0051】
別様には、細菌細胞、細菌細胞を含む培地(例えば、醗酵ブロス)、またはこのような細胞を含む培地のフラクション(すなわち、1種または2種以上の上記細菌株を含む培地)を使用することができる。細胞および/または細胞を含む培地はさらに、菌株(1種または2種以上)の生存しているか、または生存可能な細胞および/または死滅しているか、または生存不可能な細胞を含むことができる。すなわち、培地は、これらに制限されないが、加熱または音波処理により処理し、1種または2種以上の菌株の細菌の一部分または全部を死滅させることができる。
【0052】
また、真空凍結または冷凍した細菌および/または無細胞培地(これは濃縮されていてもよい)がここに包含される。
【0053】
1種または2種以上の上記細菌株それら自体、および/または細菌細胞を含む培地および/または1種または2種以上の無細胞培地(またはその一部分)を含む組成物は医薬組成物、完全食品または飼料組成物、食物−または飼料−補助食品、栄養付与組成物などを包含する。菌株(それら自体または培養培地を含む)および/または無細胞培地は、組成物製造プロセスのあらゆる時点で添加することができ、例えばこれらは製造プロセスの開始時点で食物基材に添加することができ、あるいはこれらは最終食品に添加することができる。「食物」は、液体、固体または半固体状のダイエット食物組成物、特に追加の栄養付与組成物または食物補助組成物を必要としない総合食物組成物(食物代替製品)を表す。食物補助組成物は別種の食事による栄養付与物質摂取の代わりを完全には果たさない。食物および食物補助組成物は好ましい態様において、醗酵酪農製品または酪農製品を基材とする製品であり、これらを好ましくは、腸内に投与するか、または摂取させる、好ましくは一日一回または二回以上経口摂取させる。
【0054】
別様には、食物および食物補助組成物は非酪農製品または酪農未醗酵製品(例えば、未醗酵乳汁、または別種の食物媒質中の菌株または無細胞培地)であることができる。
【0055】
もう一つの態様において、菌株または無細胞培地はカプセル封入することができ、また食物(例えば、乳汁)中に、または非食物媒質中に分散させることができる。
【0056】
醗酵酪農製品は製造プロセス中に本発明による細菌を直接に使用することによって、例えばそれ自体公知の方法を用い食物基材に添加することによって製造することができる。このような方法において、本発明による菌株(1種または2種以上)は常用される微生物に添加して使用することができ、および/または1種または2種以上の常用微生物の代わりに、またはその一部の代わりに使用することができる。一例として、ヨーグルトまたはヨーグルト基材飲料などの醗酵酪農製品の調製において、本発明による細菌は出発培地に添加することができ、または出発培地の一部として使用することができ、あるいはその醗酵中に適当に添加することができる。場合により、細菌は製造プロセスの後に不活性化することができ、あるいは殺滅することができる。
【0057】
醗酵酪農製品は、乳汁基材製品、例えば(これらに制限されないものとして)デザート、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、クオーク、ケフィア、醗酵乳汁基材飲料、バターミルク、チーズ、ドレッシング、低脂肪スプレッド、フレッシュチーズ、大豆基材飲料、アイスクリームなどを包含する。未醗酵酪農製品はアイスクリーム、栄養補給バーおよびドレッシングなどを包含することができる。非酪農製品は粉末状飲料、および栄養付与バーなどを包含することができる。これらの製品は公知方法を使用し、例えば有効量の菌株(1種または2種以上)および/または無細胞培養培地を、公知の食物基材、例えば脱脂乳または乳汁あるいは乳汁基材組成物および醗酵に添加することによって製造することができる。菌株細胞および/または無細胞培養培地(を含む組成物)を添加することができるその他の食物基材には、肉、代用肉または植物基材がある。
【0058】
組成物は、固体、半固体または液体であることができる。組成物は、食物製品、または食物補助製品の形態、例えば錠剤、ゲル、粉末、カプセル剤、飲料品、バーなどの形態であることができる。
【0059】
組成物は有効量の細菌細胞および/または無細胞培養培地を含み、ここで有効量は飽和および/または充足効果の達成に適する量である(投与計画と組合わせて)。有効量は変えることができ、当業者によって容易に決定することができる。適当範囲は、一日当たり、少なくとも約1x10cfu(コロニイ形成単位)、好ましくは1x10〜1x1012cfu、さらに好ましくは約1x10〜1x1011cfu/日、さらに好ましくは約1x10〜5x1010cfu/日、最も好ましくは1x10〜2x1010cfu/日を包含し、および/または同様のレベルの培養増殖からの無細胞培地(濃縮されているか、または濃縮されていない)を包含する。
【0060】
栄養付与組成物は好ましくは、ヒトおよび/または動物の消費に適する炭水化物および/またはタンパク質および/または脂質を含んでいるものと理解される。これらの組成物は別種の生体活性成分、例えば別種の(共生)菌株およびプロバイオティックスを支援するプレバイオティックス(prebiotics)を含有していてもよく、または含有していなくてもよい。好適態様において、これらの食物または飼料組成物は低カロリーである。すなわち、痩身化または体重減少または体重制御に適することができる。好ましくは、これらの組成物は低量の脂肪を含んでいるか、または脂肪を含んでいない。これらはまた、低量のタンパク質および/または炭水化物を含むことができ、あるいはタンパク質および/または炭水化物を含んでいなくてもよい。
【0061】
食物補助製品は1種または2種以上の担体、安定剤、プレバイオティックスなどを含むことができる。これらの菌株(1種または2種以上)の生存しているか、生存可能な細胞を使用する場合、細胞は胃に対し保護されるようにカプセル封入形態で提供することができる。一例として、組成物は水、果汁、乳汁またはその他の飲料に溶解することができるパッケージに充填した粉末の形態であることができる。
【0062】
1種または2種以上の菌株および/または無細胞培養培地の適当な投与形態をまた、肥満症、体重過多および体重過多関連疾病の処置、治療または予防用医薬組成物の調製に使用することができる。医薬組成物は通常、腸投与(例えば、経口)または鼻/吸入投与に使用される。医薬組成物は通常、本発明による菌株(1種または2種以上)に加え、調剤用担体を含んでいる。好適形態は意図する投与方法および(治療)用途に依存する。調剤用担体は1種または2種以上の菌株を望まれる身体空洞、例えば対象の腸に放出させるのに適するあらゆる両立性の無毒性物質であることができる。一例として、水または不活性固体を担体として、通常医薬として許容されるアジュバント、緩衝剤、分散剤などの補助の下に使用することができる。医薬組成物は追加の生物学的活性成分および医薬活性成分を含むことができる。
【0063】
食物組成物、食物補助組成物、栄養付与組成物または医薬組成物は、液体、例えば1種または2種以上の菌株の安定化されている懸濁液、または固体形態、例えば粉末、または半固体形態あるいは無細胞培地のいずれかである。一例として、経口投与の場合、1種または2種以上の菌株または無細胞培地を固体投与形態、例えばカプセル剤、錠剤および粉末として、または液体投与形態、例えばエレキシル、シロップおよび懸濁液として投与することができる。1種または2種以上の菌株または無細胞培地は、不活性成分および粉末状担体、例えばグルコース、乳糖、ショ糖、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ナトリウムサッカリン、タルク、炭酸マグネシウムなどと共にゼラチンカプセル中に封入することができる。これらの組成物は追加の成分、例えばタンパク質、炭水化物、ビタミン類、ミネラル類、微量元素、アミノ酸、別の生物学的または医薬的活性化合物、担体、安定剤、芳香剤、別種のプロバイオティックス、プレバイオティックスなどを含むことができる。
【0064】
上記のとおりの本発明による組成物を含む容器がまた、提供される。これらの容器は錠剤、カプセル剤、粉末剤、アンプル剤、サシェ剤などの形態の1〜100個を保持するパッケージおよび個人用に、1〜100個、例えば1、5、10、20、30、40、50、100個またはそれ以上を保持するパッケージであることができる。同様に、パッケージは1〜200個、1〜500個、またはそれ以上を保持することもできる。相違する菌株および/または無細胞培養培地(を含む)を一緒に投与する場合、これらの容器は菌株および/または無細胞培地を含む組成物をそれぞれ、分離した投与形態で含むことができるものと理解されるべきである。好ましくは、これらの容器は外側に、当該組成物の有益な効果または健康上の効果を述べた指示ラベルを含んでいる。一例として、これらの容器は、当該組成物が「痩身用」、「体重減少用」、「体重調節用」などであることを示すことができる。これらの容器はカートン製、ガラス製、プラスティック製、金属製などであることができる。当該組成物が液体または粉末形態である場合、これらの容器は当該組成物の投与に適する用具を含むことができる。さらにまた、これらの容器は使用用の指示書を含むことができる。
【0065】
本発明に従う使用
本発明による1種または2種以上の菌株、これらの菌株から誘導される1種または2種以上の無細胞培地および/またはこれらを含む組成物の肥満症、体重過多および体重過多関連疾病の処置、制御および/または予防のための医薬組成物および/または栄養付与組成物における使用がまた、本発明により提供される。
【0066】
さらにまた、本発明による1種または2種以上の菌株、これらの菌株から誘導される1種または2種以上の無細胞培地および/またはこれらを含む組成物の食物摂取量の減少および飽和および/または充足の増強のための医薬組成物および/または栄養付与組成物(食物−または食物補助)における使用がまた、提供される。
【実施例】
【0067】
下記例は本発明による使用および方法を説明するものである。別段の記載がないかぎり、本発明の実施においては分子生物学、薬理学、免疫学、ウイルス学、微生物学または生化学の標準的常習方法を使用する。このような技術は下記刊行物に記載されており、これらの全部を引用してここに組み入れる:SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、Ausubel等(1994)Current Protocols in Molecular Biology、Current Protocols、USAの1巻および2巻、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、Pa.17版(1985)、James Cappuccino著、Microbiology:A Laboratory Manual(6版)、W.Harrigan(著者)Academic PressによるLaboratory Methodes in Food Microbiology(3版)。
【0068】
(例)
1.材料および方法
1.1 96−ウエルプレートにおける哺乳動物細胞系の調製
細胞系STC−1を96−ウエルプレートにおいてD−MEM(ダルベッコの変性イーグル培地)(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)中37℃で、5%CO補給空気雰囲気下に3〜4日間、これらが約85%濃度(約500000細胞/ウエル)に達するまで増殖させた。培養培地を除去し、細胞を200μlHBSS(ハンクの緩衝塩溶液)(Hank’s Buffered Salt Solution)/ウエルで洗浄した。
【0069】
1.2 インビトロ哺乳動物細胞系検定法に使用するための被験試料の調製
MRS培地[マン−ロゴサ−シャープ(Mann−Rogosa−Sharpe)培地]において細菌株(下記参照)を新しく増殖させ、次いでCFU[コロニイ形成単位(Colony Forming Units)]を測定した。STC−1刺激検定法で用いる無細胞培地は、増殖培地から細菌株を遠心分離によって分離することによって調製した。この無細胞培地をHBSSにより1:10に希釈し、次いでSTC−1刺激試験に使用した。
【0070】
0.5%カサミノ酸(酸加水分解されたカゼイン;Becton Dickinson and Company)(細菌増殖を刺激するため)を添加した脱脂乳を、種々の細菌株(下記参照)を用いて37℃で、5x10〜5x10CFU/mlまで醗酵させた。
【0071】
醗酵時間は菌株毎に変え、定常相に達するまで約15時間〜約48時間であった。
【0072】
醗酵乳汁は、これらが少なくとも5.5pHに達し、次いで1に達した時点で使用し、次いで
1.乳酸によりpH4.35に調整し、遠心分離によりペレット化し、次いでタンパク質を凝集させた。上清を採取し、凍結させ、次いで−80℃においてSTC−1細胞培地刺激に使用するまで保存した。STC−1細胞培地とのインキュベートに先立ち、上清はHBSS緩衝液で10倍に希釈した。この方式の試験における対照は乳酸によりpH4.35に酸性化されている乳汁、またはHBSS緩衝液それ自体であった。
【0073】
2.相違する最終pHを有する醗酵乳汁を遠心分離し、細胞および凝集タンパク質をペレット化し、上清を採取し、凍結させ、次いで−80℃においてSTC−1細胞培地刺激に使用するまで保存した。STC−1細胞培養物とのインキュベートに先立ち、上清はHBSS緩衝液で10倍に希釈した。
【0074】
STC−1細胞培地を醗酵乳汁の上清とともにインキュベートした後、分泌されたCCKレベルを対応するpHに酸性化された対照乳汁によって刺激された分泌CCKレベルおよび/またはHBSS緩衝液それ自体によって刺激された分泌CCKレベルと比較した。
【0075】
1.3 STC−1細胞系培地によるCCK刺激および分泌にかかわる試験
胃腸器官飽和ホルモン生産を刺激することができる(細菌細胞により、または無細胞培地により)(共生)細菌を同定および/または単離するために、インビトロ細胞系検定法を使用した。
【0076】
被験溶液200μl(すなわち、STC−1細胞に有害に作用しない最高濃度である200,000細菌細胞、またはFBSS中細菌細胞培地上清)を、96−ウエルプレートの各ウエルに添加し、次いで5%COの存在下に37℃で2時間かけてインキュベートした。各種被験希釈度を用いてインキュベートした後のSTC−1細胞の「健全」状態を各ウエルの顕微鏡観察によって検査した。
【0077】
インキュベート後、被験プレートを1200rpmで3分間にわたり遠心分離し、被験試料中の浮遊細胞の存在を回避した。被験試料中のCCKレベルを市販ELISAキット(Nuclilab、Ede、The Netherlands)により測定した。
【0078】
使用LAB菌株
下記9種の菌株を使用した:
ラクトバシラス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)MUH41(CBS121540)
ラクトバシラス デルブリュック亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii ssp bulgaricus)MUH192(CBS121543)
ラクトバシラス カセイ亜種パラカセイ(Lactobacillus casei ssp paracasei)MUH142(CBS121541)
ラクトバシラス デルブリュック亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbraueckii ssp bulgaricus)MUH190(CBS121542)
ラクトバシラス サルバリウス(Lactobacillus salivarius)1502(DSM15794)
ラクトバシラス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)NCFM(PTA−4797)
ラクトバシラス サケイ(Lactobacillus sakei)570(DSM15889)
ラクトバシラス サルバリウス(Lactobacillus salivarius)Ls−33(PTA−4800)
ラクトバシラス クルバツス(Lactobacillus curvatus)853(DSM15793)。
【0079】
2.結果および検討
2.1 醗酵乳清(無細胞培地)
エル.カセイ亜種パラカセイ(L. casei ssp paracasei)142、エル.ブルガリクス(L.bulgaricus)190、エル.ブルガリクス(L.bulgaricus)192、エル.アシドフィルス(L.acidophilus)41、エル.サルバリウス(L. salivarius)1502、エル.サルバリウス(L. salivarius)Ls−33およびエル.アシドフィルス(L.acidophilus)NCFMのpH4.35に調整されている上清は、対照乳汁(乳酸によってpH4.35に調整されている)に比較し、より高いCCK分泌を刺激した(表1)。
【0080】
【表1】


試料は単一方式で調製した
【0081】
同一菌株の上清(但し、pH調整はなされていない)はまた、当該pHで予想される対照値以上のCCK分泌を刺激した(表2)。
【0082】
【表2】


乳酸によって酸性化された乳汁におけるpH依存性:CCK=0.0836pH−0.3002
【0083】
【表3】

【0084】
同様の試験において、乳汁の代わりに醗酵培地としてMRSを用い同様の結果を得た。
【0085】
2.2 MRS中で培養されたエル.サケイ(L.sakei)570およびエル.クルバツス(L.curvatus)853の無細胞培地
表4のデータは、エル.サケイ(L.sakei)570およびエル.クルバツス(L.curvatus)853の無細胞培地が両方ともに、HBSSおよびMRSに比較し、CCK分泌を強力に刺激することを示している。
【0086】
【表4】

【0087】
結論
9菌株全部の上清(無細胞醗酵培地)はSTC−1細胞におけるCCK生産および分泌を刺激した。
【0088】
3.ヒトにおける確認試験
飽和誘発性ラクトバシラス(Lactobacillus)菌株、例えばエル.アシドフィルス(L.acidophilus)41の効果はヒトにおける対象クロスオーバー試験で組換え、二重盲験、プラセボ−制御により確認される。30人の協力者(女性、年齢20〜59、BMI24〜29g/m)が参加する。各対象は1週間の間隔の2時点で試験する。対象には試験前日の夜、20:00時から絶食することを要請する。
【0089】
被験製品は下記のとおりに調製する:0.5%乳汁タンパク質加水分解生成物を含む脱脂乳(DMV International)を5分間にわたり95°に加熱し、次いで37°に冷却させる。次いで、凍結乾燥させたエル.アシドフィルス(L.acidophilus)MUH41(10cfu/ml)を接種する。pHが5.4に達するまで37℃で醗酵を行う。糖およびクエン酸を含むイチゴ味製剤10%を添加し、次いで糖シロップを最終糖濃度7%およびpH4.4までさらに添加する。この調製物を4℃に冷却させ、次いで350ml密封ビーカー内に保存する。タンパク質加水分解生成物を含む乳汁を酸性化するためにグルコノ−デルタ−ラクトンを用いることによってプラセボを調製する。後処理は被験製品と同様である。協力者(プラセボ15人、被験製品15人)には9:00時にヨーグルト1ビーカーを消費させる。飢餓採点および飽和採点はビジュアルアナログスコア(Visual Analoge Score)(VAS)を用いて測定する。12:00時に、ラザーニア食事を提供し、協力者には、彼等が気持ち良く満腹するまで食べるように要請する。被験製品の協力者はほとんど飢餓感がないものと報告し、プラセボの協力者に比較してラザーニアを少ない量で食べる。
【0090】
類似試験を別の前記菌株、例えばエル.アシドフィルス(L.acidophilus)NCFMおよびエル.サルバリウス(L.salivarius)1502を用いて行う。
【0091】
4.醗酵乳汁基材製品
4.1 単独菌株としてエル.アシドフィルス(L.acidophilus)MUH41を用いる製品
上記項目3、ヒト確認の項参照。
【0092】
4.2 ラクトバシラス カセイ亜種パラカセイ(Lactobacillus caseissp paracasei)MUH142を用いる製品
0.5%乳汁タンパク質加水分解生成物を含む脱脂乳(DMV International)に(95°に加熱し、次いで37°に冷却させた後)、凍結乾燥させたラクトバシラス カセイ亜種パラカセイ(Lactobacillus caseissp paracasei)MUH142(10cfu/ml)を接種する。pHが5.3に達するまで37℃で醗酵を行う。pH4.4まで乳酸を添加する。この生成物を、甘味剤としてアセサフランおよびアスパラタムを含む市販果実味脂肪0%ヨーグルト(Campina Optimal Peach)と1:1比で混合する。
【0093】
同様の製品を別の前記菌株それぞれを用いて調製する。
【0094】
4.3 ラクトバシラス デルブリュック亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbraueckii ssp bulgaricus)MUH192およびストレプトコッカス セルモフィラス(Streptococcus Thermophilus)の共同醗酵
接種細菌は当業者に公知の乳漿浸透培地において37℃でMUH192から生成した。pH4.5において、細胞を収穫し、次いで遠心分離により20〜50倍に濃縮した。濃縮した細胞懸濁液を液体窒素中でペレット化し、次いで−40以下で使用時まで保存した。乳汁および乳汁粉末から5%タンパク質含有量を有するヨーグルト乳汁を調製し、次いで95℃で5分間にわたり加熱し、その後、37℃の醗酵温度にまで冷却させた。この乳汁に推奨用量の市販ストレプトコッカス セルモフィラス(Streptococcus Thermophilus)菌株を調製済MUH192(0.05%)と組合わせて接種し、次いで37℃で醗酵させた。醗酵はpH4.5で停止し、次いで20℃で適当なパッケージに充填した。この菌株の最終細胞量は前記プレート計量技術を用いて確認することができる。
【0095】
別の前記菌株をそれぞれ使用し、類似の製品を調製する。
【0096】
4.4 エル.アシドフィルス(L.acidophilus)MUH41を含むヨーグルト
接種細菌は塩基性乳漿浸透培地において37℃でMUH41から調製した。pH4.5において、細胞を収穫し、次いで遠心分離により20〜50倍に濃縮した。濃縮した細胞懸濁液を液体窒素中でペレット化し、次いで−40以下で使用時まで保存した。乳汁および乳汁粉末から5%タンパク質含有量を有するヨーグルト乳汁を調製し、次いで95℃で5分間にわたり加熱し、その後、37℃の醗酵温度にまで冷却させた。この乳汁に推奨用量の市販ヨーグルト接種細菌[ストレプトコッカス セルモフィラス(Streptococcus Thermophilus)およびラクトバシラス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)]を調製済MUH41(0.05%)と組合わせて接種し、次いで37℃で醗酵させた。醗酵はpH4.5で停止し、組織化し、次いで適当なパッケージに20℃で充填した。
【0097】
別の前記菌株、例えばエル.アシドフィルス(L.acidophilus)NCFMおよび/またはエル.サルバリウス(L.salivarius)1502を使用して実施し、類似または均等な酪農製品を得る。
【0098】
5.製品の安定性
ヨーグルト様製品において、選択されたラクトバシラス(Lactobacillus)菌株の冷蔵庫条件環境における生残りを評価する。ラクトバシラス(Lactobacillus)予備培養物をMRS中で一夜かけて増殖させる。このヨーグルト様製品に使用されたプロテアーゼ陽性ストレプトコッカス セルモフィラス(Streptococcus Thermophilus)培養物は115℃において10時間かけて処理された乳汁中で一夜にわたり予備培養する。37℃に冷却されている殺菌した(85℃において5分間)脱脂乳(乳汁粉末から調製)中のラクトバシラス(Lactobacillus)予備培養物1%の接種とともにストレプトコッカス セルモフィラス(Streptococcus Thermophilus)培養物を0.1%の濃度で接種する。接種された培地を100mlづつの定量に分ける。この脱脂乳汁培養物を37℃において15分間にわたり増殖させ、増殖後、無菌ピペットで攪拌し、4℃に冷却させ、次いで冷蔵庫(4〜6℃)で保存する。ラクトバシラス(Lactobacillus)培養濃度を、MRS−カンテンプレートにおけるコロニー形成単位/mlの計数によって増殖および冷却の直後(0時点)および冷蔵庫内に2日間、8日間、15日間、および28日間保存した後に測定する。生存可能細胞濃度に加えて、当該ヨーグルト様製品のpHを同一時点で測定する。
【0099】
結果は一般に、相違するラクトバシラス(Lactobacillus)菌株間における明白な相違を示す。しかしながら、MUH41、MUH42、MUH190、MUH192、エル.アシドフィルス(L.acidophilus)NCFM、エル.サルバリウス(L.salivarius)1502、エル.サルバリウス(L.salivarius)Ls33、エル.クルバツス(L.curvatus)853およびエル.サケイ(L.sakei)570は、冷蔵庫保存期間中にわたり非常に良好な生残りを示す。これらの菌株の経過時間にわたる生存可能性は安定しており、また冷蔵庫内における4週間の保存期間中、(格別に)減少または増加しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の細菌株、または当該細菌株の培養から得られる無細胞培養培地を含む飽和および/または充足感覚を誘発または増強させる組成物であって、上記菌株が乳酸菌(Lactic Acid Bacteria)(LAB)に属し、および上記細菌株または上記無細胞培地が細胞系STC−1を用いるインビトロ細胞系検定においてコレシストキニン(CCK)の生産を刺激する組成物。
【請求項2】
上記組成物が上記細菌株の培養培地の少なくとも一部分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記培養培地が乳汁を含むか、または乳汁からなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上記無細胞培地が上記細菌株の生存または生存可能な細胞を含んでいない、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
上記組成物が、醗酵酪農製品、好ましくは上記菌株の醗酵によって調製される醗酵酪農製品である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
上記細菌株がラクトバシラス デルブリュック(Lactobacillus delbraueckii)株、ラクトバシラス サルバリウス(Lactobacillus salivarius)株、ラクトバシラス クルバツス(Lactobacillus curvatus)株またはラクトバシラス サケイ(Lactobacillus sakei)株である、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
上記細菌株が、ラクトバシラス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)株、好ましくはCBS121540株、またはラクトバシラス サルバリウス(Lactobacillus salivarius)株、好ましくはDSM15794株の細菌株である、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも2種の細菌株またはこれらの細菌株の無細胞培地を使用し、上記細菌株または上記無細胞培養培地はそれぞれ、細胞系STC−1を用いるインビトロ細胞系検定においてコレシストキニン(CCK)の生産を刺激することができる、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
上記細菌株(1種または2種以上)が受託番号CBS121540[エル.アシドフィルス(L.acidophilus)MUH41]、CBS121543[エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH192]、CBS121541[エル.カセイ亜種パラカセイ(L.casei ssp paracasei)MUH142]、CBS121542[エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH190]、PTA−4797[エル.アシドフィルス(L.acidophilus)NCFM]、PTA−4800[エル.サルバリウス(L.salivarius)33]、DSM15794[エル.サルバリウス(L.salivarius)1502]、DSM15793[エル.クルバツス(L.curvatus)853]およびDSM15889[エル.サケイ(L.sakei)570]、あるいはその誘導体または複製からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
上記組成物が医薬組成物、食物組成物、または食物補助組成物である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
飽和および/または充足感覚を誘発または増強させることができる細菌を同定し、および/または単離する方法であって、
(a)1種または2種以上の細菌株を培地で培養する、
(b)(a)の細菌細胞および/または培養培地を含む細菌細胞および/または無細胞培養培地を採取する、
(c)(b)の細菌細胞および/または培養培地を含む細菌細胞および/または無細胞培養培地を哺乳動物細胞系培地に添加する、
(d)(c)の添加後、当該哺乳動物細胞系によって生産されるCCKホルモンの量を分析する、次いで
(e)細菌細胞および/または無細胞培地による処理後、対照に比較して大量のCCKを生産させる菌株(1種または2種以上)を同定する、および
(f)任意に、同定された細菌株および/または同定された細菌株の培養から得られる無細胞培養培地を、食物摂取を減少させる組成物、飽和および/または充足感覚を誘発および/または増強する組成物、肥満症を処置または予防する組成物および/または体重を減少させる組成物の調製に使用する、
工程を含む方法。
【請求項12】
上記培養培地が乳汁を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法によって同定される細菌株。
【請求項14】
受託番号CBS121540[エル.アシドフィルス(L.acidophilus)MUH41]、CBS121543[エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH192]、CBS121541[エル.カセイ亜種パラカセイ(L.casei ssp paracasei)MUH142]、CBS121542[エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH190]の下に寄託されている細菌株あるいはその誘導体または複製。
【請求項15】
体重過多、肥満症または体重過多関連疾病を処置および/または予防するための組成物、あるいは飽和および/または充足を刺激するための組成物の製造における乳酸菌(Lactic Acid Bacteria)(LAB)に属する細菌株またはこれらの細菌株の培養から得られる無細胞培養培地の使用であって、上記細菌株または上記無細胞培養培地が細胞系STC−1を用いるインビトロ細胞系検定においてコレシストキニン(CCK)の生産を刺激するものである、上記使用。
【請求項16】
上記細菌株が受託番号CBS121540[エル.アシドフィルス(L.acidophilus)MUH41]、CBS121543[エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH192]、CBS121541[エル.カセイ亜種パラカセイ(L.casei ssp paracasei)MUH142]、CBS121542[エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH190]、PTA−4797[エル.アシドフィルス(L.acidophilus)NCFM]、PTA−4800[エル.サルバリウス(L.salivarius)33]、DSM15794[エル.サルバリウス(L.salivarius)1502]、DSM15793[エル.クルバツス(L.curvatus)853]およびDSM15889[エル.サケイ(L.sakei)570]からなる群から選択される細菌株、またはその誘導体または複製である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
飽和および/または充足を増強させる食品、食物補助製品または飼料組成物の製造方法であって、
a)細胞系STC−1を用いるインビトロ細胞系検定においてコレシストキニン(CCK)の生産を誘発させることができる細菌株を同定する、
b)上記細菌株または上記細菌株の培養から得られる無細胞培養培地を、食品、食物補助製品または飼料製品を製造する製造方法において使用する、
工程を含む製造方法。
【請求項18】
工程b)における製造方法が醗酵を包含し、上記細菌株を発酵食品、食物補助製品または飼料製品を製造する醗酵プロセスで使用する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記食品または食物補助製品が、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、ケフィア、醗酵乳汁基材飲料、デザート、バターミルク、チーズ、ドレッシング、アイスクリーム、低脂肪スプレッド、大豆基材飲料、栄養付与バーまたは粉末状飲料である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
上記菌株が受託番号CBS121540[エル.アシドフィルス(L.acidophilus)MUH41]、CBS121543[エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH192]、CBS121541[エル.カセイ亜種パラカセイ(L.casei ssp paracasei)MUH142]、CBS121542[エル.デルブリュック亜種ブルガリクス(L.delbrueckii ssp bulgaricus)MUH190]、PTA−4797[エル.アシドフィルス(L.acidophilus)NCFM]、PTA−4800[エル.サルバリウス(L.salivarius)33]、DSM15794[エル.サルバリウス(L.salivarius)1502]、DSM15793[エル.クルバツス(L.curvatus)853]およびDSM15889[エル.サケイ(L.sakei)570]からなる群から選択される細菌株、あるいはその誘導体または複製である、請求項17〜19のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2010−534074(P2010−534074A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518135(P2010−518135)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050369
【国際公開番号】WO2009/014421
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(507210373)カンピナ ネーデルランド ホールディング ビー.ブイ. (4)
【出願人】(510022819)ダニスコ アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】