説明

香り物質を有する密封手段

【課題】容器を開封するために操作することが可能な在来型の密封手段に関する。
【解決手段】密封手段は、使用者が開封過程を実行するために手で掴む操作部と、操作部と動作可能に結合されている密封部とを有し、香りを時間的制御が可能な態様で放出する手段を更に備える。この手段は該密封手段と関連し、容器を開封する開封過程の実行に呼応した香り放出の起動が実行され、かつこの手段は、芳香剤を収容する芳香剤貯留部を含んで成り、該貯留部は前記開封過程中に開封され得る貯留部壁を有する。この場合、香りは前記操作部に付与されるように意図されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を開封するために操作することが可能な密封手段に関する。該密封手段は少なくとも1個の、使用者が開封過程を実行するために手で掴む操作部と、該操作部と動作可能に結合されている1個の密封部とを有し、該密封部は前記容器を密封し、開封過程中には、該密封部において前記容器が開封され、かつ該密封部に所定の香りを発生せしめる芳香剤が仕込まれており、該密封部によって容器を開封する開封過程に呼応した香り放出の起動が実行され、かつ該密封部は芳香剤を収容する芳香剤貯留部を含んで成るものであって、該貯留部は開封過程の実行中に破壊・開封され得る貯留部壁を有する。本発明はさらに、このような密封手段を備えた容器、及び該容器を開封する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に食品の領域においては、製品は保護的な包装材料内に、それらが目に見えないか、人間が持つ他の感覚によって感知し得ないような態様で包装されるのが普通である。したがって現代の包装が目指す目標は、消費者が当該製品を購入する際に、または少なくとも消費者が当該製品を消費する前に、消費者に対して包装された製品の利点を伝えることである。その場合、包装を介して消費者が既に行った買い物を確認するのに好都合である。この点で、包装は、包装されている品物によって直接訴えられない1つ以上の人間の感覚に理想的に訴えるマーケティング手段を構成するものである。
【0003】
ある種類の密封手段は、例えば特許文献1に、香味料、すなわち味覚及び嗅覚の両方に効果を及ぼす物質を含浸せしめたプラスチック材料の成形によって作られた容器密封手段の形で開示されている。この目的のために、香味料が果物、菓子類または飲み物類の香りを有することが提案されている。密封手段に香味料を含浸せしめると、該密封手段の外側を取り巻く大気に上記の「香り」が浸透して、所望の効果が生ずる。
【0004】
その種の密封手段の欠点は、香り物質が絶えず環境に放出される結果、例えばスーパーマーケット内にはその種の密封手段を有する容器がきわめて多数存在し、しかもそれらがきわめて異なった香り成分を内蔵する可能性があるため、「芳香過剰」のリスクが存在することである。状況に応じて、そのような従来型の密封手段に、少なくとも環境への香りの放出を減少させる外蓋のような特別の覆いを設けることはできる。しかし、この場合には、密封手段に加えて余分の部品が必要となる上に、これによって密封手段設計上の自由度が低減される。
【0005】
この種の密封手段は、例えば特許文献2に開示されており、該公報は蓋板(Deckelspiegel)に、切り取り溝(スコア)に沿って注ぎ口を形成するための舌状部を有する缶蓋に関する。上記蓋板は、缶の内部に向いた側に、複数個の壁によって形成された、芳香剤を収容する分離された空間を有し、開封過程中に舌状部の内側に向かって動く部分が上記の壁に力を加え、それによって上記空間に開口が生じるため、開封過程中に芳香剤が漏出し得るようになる。そのような設計によって上述した「芳香過剰」は防止されるものの、芳香剤が開封過程中に容器内に保存されている食品と接触する可能性があり、これは多くの場合望ましくない欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許 EP 1 056 660 B1
【特許文献2】公開公報 DE 100 64 572 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故に本発明は、容器を開封するために操作することができ、芳香剤が仕込まれている従来型の密封手段が持つ上述の欠点を少なくとも一部除去するという課題に基づくものである。装置構成において、この課題は既に請求項1に記載の特徴を有する容器を開封するために操作し得る密封手段により、驚くほど簡単な方式で既に解決されている。本発明の密封手段は、芳香剤が操作部に付与されることを特徴としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、芳香剤が操作部に付与され、そのため芳香剤が密封部に組み込まれることを通常は回避することができ、最終的には芳香剤による食品の汚染が防止される密封手段を提供するというアイデアに基づいている。その場合、密封部の領域、すなわち容器を閉鎖し、開封過程中にはその域内で容器が開封される密封手段の領域内には、芳香剤が組み込まれていないことが好ましい。その代わりに、芳香剤は操作部のみに付与されることが好ましい。但しこの場合、この操作部は、使用者が操作の間に手を触れる領域を有するが、実施形態によっては操作中に通常手を触れられない1つ以上の領域をも含み得ることを指摘しておかねばならない。
【0009】
「芳香剤」という用語は、実際の香り物質または香り試薬を担持しており、さらに他の添加物をも担持し得る担体であると理解され得ることを指摘しておくべきである。しかしながら、芳香剤は、香りを発する実際の香り物質のみを含むもの、または例えば他の香り反応物質と反応して芳香性物質を生成する香り反応成分を含むものもあり得る。そのような香り物質、担体材料、あるいは添加物または芳香性の反応物質は、当業者には周知されており、従って以下でさらに詳述する必要はない。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従って、密封手段は香りを時間的に制御された態様で放出するように、また容器を開封する開封過程の実行に呼応して香りの放出が起動されるように設計されている。この設計上の方策によって、該密封手段が実際に操作される時、すなわち容器の開封される時にのみ香りの放出が実現される。本発明は、操作部、密封部、または容器の他の部分を、開封過程の実行時のみに香りを放出させるために扱われるか起動される1個の香り放出手段と結合することにより、これを実現している。例えば、容器を開封するための操作部と、香りを放出する手段との間に機械的な作動結合(mechanische Wirkverbindung)を存在せしめ、それによって香りを放出する手段が容器の開封過程と共にもしくは開封過程中に起動され、香りが環境中に放出されることが保証される。
【0011】
本発明においては、香りを放出する手段は、少なくとも1個の、芳香剤を収容する芳香剤貯留部を含んで成り、該貯留部は開封過程の実行中に開封され得る貯留部壁を有する。この場合、該貯留部が香りを通さない貯留部壁を持ち、貯留部が開封される前に本発明の密封手段を備えた容器の周辺大気中に香り物質が放出されないようにすると有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下、添付図面をもとに、幾つかの実施形態ならびに本発明のその他の特徴の幾つかを説明することにより、本発明を詳しく説明する。
【図1a】第1の実施形態による、直方体状の形態と本発明に従って設計された1個の密封手段を有する容器を、閉鎖状態で示すものである。
【図1b】図1aに示されている容器の、密封手段が操作された後の状態を示すものである。
【図2a】第2の実施形態による、密封手段としてねじ蓋を有する壜の形の容器であって、上記ねじ蓋が補強シールバンドを有するものである。
【図2b】図2aに示されているねじ蓋の、それが操作された後の状態を示すものである。
【図3a】第3の実施形態による、ひき起こしタブ(ステイオンタブ)式密封システムを備えた飲料用缶の形の容器の部分図である。
【図3b】図3aに示す飲料用缶の密封システムの、開封された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態によっては、前記貯留部壁は、特に密封部の一部、操作部の一部、他の容器部分の一部、及び/または芳香剤自体に設けられた塗料、フィルムもしくは紙などの被覆層で構成できる。後者の実施形態では、芳香剤はカプセルに封入されており、カプセルの壁が開封された時に環境大気中に拡散することができる。その場合、貯留部壁の部分が芳香剤の香りを通さない被覆層で構成されているならば、特に有利であろう。被覆された、あるいはカプセルに封入された芳香剤は、密封手段の外側境界面を形成することができる。容器を開封する開封過程の実行中にこの境界面が開封されると、香り物質が漏出し得る。
【0014】
香りを放出する手段が、起動エネルギー(Aktivierungsenergie)を印加するあるいは発生させる印加手段または発生手段によって起動され得るならば、基本的には目的に適い得る。この起動エネルギーは、例えば摩擦力に抗する運動を発生させること、あるいはあらかじめ定められた温度、あらかじめ定められた大気の湿気を発生させること、及び/または赤外/紫外領域もしくは可視領域の電磁放射を発生させることによって得られる機械的エネルギーであっても良い。さらに起動エネルギーは、それに加えて香り放出のための芳香剤の表面積増加、及び/または芳香剤の蒸発のために供されても良い。それ故、本発明は、香りの放出が開封過程の時点のみに制御される設計に限定されるものではない。本発明における密封手段の設計は、香りが遅くとも開封過程の時点で放出されるというものである。
【0015】
芳香剤は、種々の場所で密封手段に付与され得る。特定の実施形態では、消費者が芳香剤を感知し得るように、開封過程中に芳香剤が密封手段または容器の周囲の大気中に漏出できることが保証されている。例えば、芳香剤は容器の引き剥がしストラップあるいは一般に食品缶または飲料容器の「タップ」と呼ばれる金属ストラップのような操作部の表面に付与される。そのようなタップに、カプセルに封入された芳香剤を、例えば塗布、ワニス塗り、貼り付け、コーティングにより備えることができ、而して開封過程中に操作部が掴まれ、容器を開封するために力が加えられた時、このカプセルが破れ、開放される。そのような操作タブが、蓋板を開封するためのレバーとして形成され、開封過程の実行中に該レバーが蓋板から取り去られるならば、特に有利である。この設計により、操作部に付与された芳香剤が容器内に収蔵されている食品と望ましくない態様で接触することが起こり難くなる。
【0016】
芳香剤のカプセル封入には、直径が約4〜 40 μm 、好ましくは直径が5〜 10 μm というサイズのマイクロカプセルが用いられる。カプセル封入に特に適した材料は、例えばメラミン樹脂、架橋されたアミノプラスト、またはメラミン・ホルムアルデヒド樹脂である。また、例えばアクリル樹脂やゼラチンも利用でき、これらにはホルムアルデヒドを放出しないという、さらなる利点がある。
【0017】
容器、または操作可能な密封手段に付与されるために、そのようなマイクロカプセル封入芳香剤はインク、ワニスまたは接着剤などの担体に混入することができる。その場合、ワニス/塗料またはインク等と特定のマイクロカプセルの乾燥混合物に対するマイクロカプセルの体積割合が5〜 35 % 、特に好ましくは 20 % であると特に有利であることが明らかにされている。担体、例えばインクまたはワニスとマイクロカプセルの混合物は、次いで例えばパッド印刷法またはジェット印刷法、あるいは吹き付け法などの印刷法を用いて、特に操作部に塗布される。吹き付け法またはインクジェット印刷法を使用する場合には、塗布工程中にマイクロカプセルが無傷で残るようにプロセスパラメータ、またはマイクロカプセルの製品パラメータを調整する。塗布後、混合物は、例えば赤外線、レーザまたは紫外線の照射によって乾燥される。
【0018】
かなり一般的には、芳香剤を容器、例えば容器本体に塗布することができる。また、芳香剤が被覆層、ワニス、フィルム、紙などの構成要素であっても良い。さらに本発明の範囲内で、被覆層、ワニス、フィルムまたは紙が、芳香剤を封入し、特に機械的作用、化学的作用、光電作用または光化学作用によって開封されて香りを放出する貯留部壁の構成要素であっても良い。
【0019】
別の好ましい一実施形態では、密封手段が、例えば雌ねじを備えている蓋本体(Verschluskorper)からなる1個のねじ蓋を有し、かつ操作部がこの蓋本体の外殻によって提供されることができる。この実施形態においては、適切にカプセル封入された芳香剤、及び/または芳香剤貯留部を、蓋本体の外殻領域に、蓋が操作された際にカプセルもしくは貯留部の破壊・開封によって芳香剤が放出され得るように配置することができる。
【0020】
さらに、前述のねじ蓋が、破壊・開封され得る芳香剤貯留部を少なくとも部分的に構成する補強シールバンド(Garantieband)を有するのが好適である。
【0021】
目的に適うべく、密封手段の密封部は、容器壁の一部と、少なくともその一部に設けられた弱化線(Schwachungslinie)を含むことができる。開封過程中、この弱化線に沿って容器は開封される。この種の密封手段は、特に厚紙またはプラスチック製の開封タブ(Reislasche)の場合に特に有用であるが、それに加えて例えば飲料用の缶のような金属製容器壁にも、また金属被覆されたフォイル包装材料にも有用である。
【0022】
前記弱化線は、芳香剤貯留部が容器の開封過程と同時に破壊・開封されるように、芳香剤貯留部の壁領域に亘って伸びるものが好適である。
【0023】
有利ならしめるべく、操作部は、操作力を密封部に伝達し、密封部領域にて容器を開封する操作タブとして設計することができる。
【0024】
好適には、操作部が芳香剤貯留部壁の一部を含んで成り、使用者によって該操作部に操作力が加えられることによって上記貯留部壁が開封されるようにする。
【0025】
かなり一般的には、操作部が前記貯留壁の一部を含んで成り、この貯留壁部分が、力を加えられながら、操作部をつかみとること、及び/または容器を開封するために密封手段を操作することによって、破壊・開封されるのが好適である。その場合、それぞれのエネルギー発生手段は、上述のごとくして作られる起動エネルギーのいずれかを含むことができる。
【0026】
さらに、密封部が前記貯留壁の一部を含んで成り、この貯留壁部分が、操作部に力が加えられること、及び/または容器を開封するために密封手段が操作され、起動エネルギーが印加されることによって破壊・開封されるならば目的に適うであろう。この場合にも、起動エネルギーは上で説明したように、種々多様な方法で発生させることができる。
【0027】
本発明の密封手段は、原則的には、芳香剤が該密封手段すなわち密封部もしくは操作部に付与されることだけに限定されない。容器本体及び密封手段を含んで成る容器の場合には、芳香剤は密封部もしくは操作部の代わりに、容器本体にも付与され得る。その場合、該容器本体が前記貯留部壁の一部を含んで成り、この貯留壁部分が、容器を開封するために使用者が容器に手を触れ、起動エネルギーを印加する結果破壊・開封されるならば目的に合致するであろう。この場合にも、起動エネルギーは種々多様な方法、例えば上に説明されているような方法で発生させることができる。それ故、本発明は、芳香剤が容器本体に付与され、かつ使用者が操作部を取り扱う時に操作部だけでなく、例えばもう一方の手を容器に触れ、それによって所要の起動エネルギーが発生せしめられ、而して使用者が容器本体に手を触れることによって芳香剤の放出が引き起こされるような容器をも含む。さらに、芳香剤を容器本体及び密封手段に付与し、開封過程の間に香りが容器のいろいろな箇所から同時に、あるいは時間的な間隔を置いて放出されるようにすることもできる。
【0028】
さらに、密封手段、特に操作部が、その表面領域に複数個の芳香剤封入マイクロカプセル貯留部を含んでおり、操作力が加えられた際にそれらが破壊・開封されて香りが外部に流出し得るような形態も目的に合致するであろう。
【0029】
さらにまた、密封手段が、容器を開封するための操作力が貯留部壁の一部を介して密封部に伝達されるように設計されており、かつ貯留部壁が、あらかじめ定められた操作力が加えられた時に破壊・開封されるように設計されていると目的に合致するであろう。この実施形態は、例えば飲料用の缶あるいは食品保存用の缶に使用するのに好適である。
【0030】
さらにまた、操作タブがレバーとして設計されており、このレバーが容器の開封過程中にレバーアームによって芳香剤貯留部壁を押圧し、それを破壊・開封するようにしても良い。
【0031】
装置構成として、本発明は、本発明に従って設計された、容器を開封するために操作され得る密封手段を備えた食品保存容器に関する。そのような食品保存容器は、例えば牛乳や果汁のような飲料は勿論、果実のコンポートやヨーグルトなど他の食品を充填するように設計することができ、それらの場合に使用され、密封手段、一般的に言えば容器に付与される芳香剤は、製品に応じて選定される。
【0032】
目的に適う特別な一実施形態では、単なる香りとしてだけではなく、香味料(Geschmackmittel)としての効果も有する芳香性物質を芳香剤として使用してもよい。この目的のためには、上記芳香性物質は、それが容器から放出された際に製品、及び/または消費者の口と接触して香味料としての効果をも発揮し得るように、密封手段の部分に付与される。芳香性物質が容器を開封するための密封手段に仕込まれている場合には、芳香性の物質は密封部の領域に付与され、開封過程中に該領域内に開口が露呈もしくは形成され、而して該芳香性物質が開封過程によって同時に放出及び/または遊離される。この目的のために、芳香性物質は、芳香剤について先に説明したのと同様の方法で密封手段の前記部分に、より一般的には容器に、付与することができる。
【0033】
本発明の基盤をなしている課題は、方法としては、容器を開封するために操作され得る密封手段を使用して容器を開封する方法によって解決される。該密封手段は、使用者が該密封手段に手を触れて開封過程を実行するための少なくとも1個の操作部と、該操作部と動作可能に結合されている1個の密封部を有しており、上記密封手段を操作することによって容器の該密封部に開口が露呈もしくは形成されること、香り放出の時点が、開封過程の実行中に香りの放出が起動されるよう選択的に制御されることを特徴とする。本発明の方法は、芳香剤が操作部に付与されることを特徴としている。芳香剤は、該操作部の使用者が開封過程を実行するために手を触れる、つまり掴む領域内に付与されることが好適である。
【0034】
その場合、芳香剤の放出が容器の環境条件、すなわち温度、大気湿度、及び/または可視領域、紫外領域または赤外領域の電磁放射の電磁束密度などの調節によって起動されることが好適である。これら環境条件の調節は、開封過程の実行と組み合わせることができる。すなわち開封過程は、上述した容器の環境条件の内の少なくとも1種が、香りの放出が起動されるべく自動的に変化せしめられるように設計される。例えば、密封手段を操作することによって、大気の湿気、または電磁放射のいずれかに芳香剤が曝され、芳香剤自体の香り放出が起動されるように芳香剤貯留部が破壊・開封されるものとする。
【0035】
密封手段、及び容器開封方法に関して以上で用いられた用語の「開封過程」には、容器を開けるプロセスに直結するすべての時間的段階が含まれることに留意すべきである。すなわち、この期間には容器を直接開けるための操作過程の部分を構成するすべての時間的段階が含まれる。その限りにおいて、密封手段に覆いがあり、それを除去しても容器自体は開封されず、容器内に収蔵されている製品にアクセスできない場合、その覆いの除去は開封過程に含まれない。
【0036】
特に有利な一実施形態では、光化学的に起動される芳香剤を備えることができる。この芳香剤は遮光状態で密封手段に配置され、開封過程実行のために該密封手段が操作されることにより、芳香剤への光の供給が可能となる。その場合、光化学的に起動される芳香剤がカプセル内に封入されているか貯留部内に収容されていて、開封過程中にこの貯留部が破壊・開封されるか、芳香剤を封入しているカプセルが破壊されれば十分である。
【0037】
別の一実施形態では、密封手段を操作することにより、芳香剤の湿式化学反応が起こされ、香りが遊離されることが好適であり得る。この方法は、使用される芳香剤が汗のような人体分泌物との反応によって起動される場合に特に適切である。さらに、芳香剤と、容器内に収納されている製品との間の湿式化学反応が、容器から製品が取り出されることによりこれら2種の反応成分の接触が起こることによって惹起されるように設定することもできる。
【0038】
相互に反応して所定の香りを発生させる複数種の芳香剤成分が、反応成分として相互に隔離されて密封手段に配置されており、開封過程を実行するために密封手段が操作されることにより上記芳香剤成分相互の接触・混和が可能となるならば、特に有用である。この場合には、2種の反応成分を精密にマッチングさせ得るので、発生する香りを正確に確定させることができる。この場合に、例えば複数種の芳香剤成分が相互に湿式化学反応を行って上記の香りを発生させ得ることは言うまでもない。
【0039】
好適には、密封手段の操作中に、例えば該芳香剤封入カプセルが破壊されるような、あるいは該芳香剤の体積面積比が甚だしく増大するような態様で、芳香剤に力を加えて香りの放出を作動し、あるいは表面積の増大によって香りの放出を強化することができる。
【0040】
さらに、密封手段が操作される際に芳香剤が蒸発、粉砕または霧状にされて芳香剤の表面積が著しく増大し、それによって香りの放出が作動されるか、表面積の増大によって著しく強化されるような手段が備えられても良い。
【0041】
芳香剤を収容している貯留部が密封手段に配置され、該貯留部が密封手段が操作されることによって破壊・開封されて香りが放出されることが、特に好適である。その場合、密封手段の操作が、香りの放出を起動するための起動エネルギーの印加に組み合わされても良い。
【0042】
さらに、芳香剤が操作部に付与され、使用者が該操作部に手を掛けることによって香りが放出されるならば、特に好都合であろう。その場合、例えば該芳香剤が使用者の手の汗と湿式化学反応することによって、あるいは操作部の表面に付与されている芳香剤のカプセルが破裂することによって香りは放出され得る。この方法は、例えば操作部が、ねじ蓋の外殻、厚紙製、プラスチック製または金属製の包装容器、複合材料製包装容器に設けられた切り取り片のタブによって、あるいは缶に鋲止めされた金属製のタブで構成されているような場合に適する。例えばマイクロカプセルに封入された芳香剤のような貯留部の形で付与された芳香剤が密封手段の操作部だけに含まれており、密封部には含まれていないならば、芳香剤が食品容器内に収容されている製品と接触することは、通常は避けられる。
【0043】
他の一実施形態では、芳香剤が、開封過程中に容器が開封される部分である密封部に付与されるようにもできる。開封過程の実行より前に芳香剤が放出されることを避けるために、芳香剤をカプセルに封入するか、貯留部内に収容することができる。この配置は、密封部の内側、外側いずれの表面でも、あるいは該密封部の壁の内部でも設定可能である。これは、開封過程中に貯留部が破壊・開封されて香りが放出されるようなものであれば良い。
【実施例】
【0044】
本発明に従って設計される容器は、原則的には例えばプラスチック、紙もしくは厚紙、金属あるいは複合材料のような多くの種類の材料で作られ、またそれらの材料を含んで構成され得る。図1に例として示されている容器は直方体型の厚紙製容器(10)であって、その容器壁(11)上に操作可能な1個の密封手段(20)を有する。この密封手段はタブ型の密封部(22)を含んで成り、該密封部は消費者が手で掴むことができる操作タブ(21)に渡る。密封部(22)は容器壁(11)の一部であり、該容器壁の他の部分とは、弱化線(23)によって区切られており、該弱化線は場合によりミシン目として形成されていても良い。
【0045】
図示されていない容器の一実施形態では、容器を袋状に構成することもできる。本発明の容器は実施形態の如何により、形状が安定したものでも良いし、また形状が安定していないものでも良い。
【0046】
図1a/bの実施形態の場合、壁(11)の、つまり密封部(22)の外表面の下に、芳香剤貯留部(30)が配置されている。該貯留部中に芳香剤が空気や香りを通さない態様で配置されており、図中では破線で示されている。該貯留部は、例えば厚紙製容器の壁内に直接作り付けることができ、従って貯留部壁も厚紙材料を含む。別の実施形態では、貯留部が芳香剤が練り込まれた薄いプラスチックフィルムを含むものとしても良い。さらに、芳香剤貯留部は、実施形態により容器壁の内部に、あるいはその外側または内側に配置され得る。すべての実施形態において、貯留部は密封手段が操作された際に裂けるか破れ、芳香剤が漏れ出ることができるような態様で配置されている。
【0047】
図1aに示されている例では、操作タブ(21)はさらにその表面に接して被覆層(31)またはワニス層を有し、該被覆層またはワニス層は別の、但し空気を(従って香りを)通さない態様でカプセルに封入されている芳香剤を含む。しかしこの場合、芳香剤を封入したカプセルは、外力を加えることによって破壊・開封され得る。従って、使用者が密封手段(20)を操作して密封タブ(22)を引き裂き開封するために操作タブ(21)を掴んだ時に、芳香剤のカプセル封入は解除される。
【0048】
密封タブが部分的に開封された状態が、図1bに示してある。密封手段の操作により、容器には開口(12)が生じ、芳香剤貯留部(30)は破壊・開封されているため、芳香剤は漏れ出ることができる。同時に、被覆層(31)中の芳香剤のカプセル封入も、この状態において操作タブ(21)が掴まれることによって解除され、周辺の大気を香らせるための芳香剤も漏れ出ることができる。本発明の範囲内で、芳香剤を操作部の領域のみに付与する構成にも設定できる。
【0049】
図2a/bに例が示されている実施形態では、容器は壜(40)、特に壜首(41)の領域に図では見ることができない雄ねじを有し、この雄ねじにねじ蓋(50)の形をした密封手段をネジ止めできるプラスチック壜である。この場合、操作部はねじ蓋(50)の円筒形の壁(51)によって供される。ねじ蓋(50)は、壜本体側の末端に補強シールバンド(54)を有し、かつ穿孔列(53)が備えられていて、補強シールバンド(54)を蓋(50)の他の部分から切り離している。
【0050】
操作部(51)の外部表面に、芳香剤が香り反応成分(62)の形で付与されており、これが蓋を操作する使用者の手の汗と反応して香りを放出する。図示されている実施形態では、上記香り反応成分はねじ蓋の円筒形をなす壁の一部に付与されているだけであるが、芳香剤がねじ蓋の外殻全面を覆うように付与する構成も、もちろん可能である。
【0051】
さらに、少なくとも1個の芳香剤貯留部(60)が備えられている。該貯留部は補強シールバンド(54)の領域内から、穿孔列(53)を越えて蓋(50)の残り部分にまで広がっている。一実施形態では、該芳香剤貯留部は、例えば芳香剤を収容する閉鎖されたプラスチック製被包を含んで成る。この被包は、例えば壜首(41)に向いている蓋の内側または外側に付着されており、補強シールバンドから出発して穿孔列を越えた先まで拡がっている。図2bは、ねじ蓋を操作した後、該操作によって穿孔列(53)のリブ(55)と、芳香剤貯留部(60)が破壊・開封され、その結果内蔵された芳香剤が漏出可能になった状態を示す。
【0052】
図3a/bは、本発明の容器の別の一実施形態を示す。この場合、容器は飲料用の缶(70)として設計されており、図中にはその一部だけが示されている。該飲料缶(70)は、その上面に蓋板(71)を有し、該蓋板に鋲(82)によって操作タブ(81)が固定されている。一部が該操作タブ(81)によって覆われる形で、密封部(83)が配置されており、該密封部は蓋板(71)に弱化線(84)によって固定されている。実施形態により蓋板(71)の外側または内側に任意の芳香剤貯留部(90)を、一部が密封部(83)内にまで延び、かつ密封部に固定されるように配置されている。さらに操作タブ(81)は、操作を行う人物が手で掴む領域に被覆層(91)を有し、該被覆層はカプセルに封入された芳香剤を含んでいる。当業者には、このような実施形態が一般的に金属製の食品用包装容器に適し、その限りでは一方の端面に密封蓋板を有し、この蓋板に例えば鋲によって1個の操作タブが固定され、このタブの、開封過程実行のために使用者が手を触れる領域に芳香剤が付与される構成にも適していることが理解されるであろう。この実施形態の場合にも、上記操作タブは、蓋板に1本の弱化線によって固定されている密封部を部分的に覆う態様で配置され得る。開封過程に際して操作タブが密封蓋板から上向きに引き離される(図3b参照)ことにより、製品が泡だって噴き出しても、被覆層(91)が付与されており、開封過程を実行するために操作する人物が操作タブ(81)のその部分を掴む操作タブ(81)上部に、製品が接触するに至らないことが保証され得る。この実施形態では、芳香剤は遅くとも容器が開封されるまでには放出される。但し、使用者が操作タブに手を触れるだけで、容器を開封するための操作を実行しなくても芳香剤が早期に放出されることも、十分に可能である。
【0053】
操作部(この場合には操作タブ)への芳香剤の付与は、実施形態により、例えば食品缶詰用の缶が充填され密封された後に行うこともできるが、缶の蓋の製作後もしくは製作中、すなわち製品を充填する以前にも行うことができる。
【0054】
密封手段(80)を操作する場合、使用者は操作タブ(81)の被覆層(91)領域を掴み、タブをその水平な静止位置(図3a参照)から実質的に垂直な位置(図3b参照)へと動かす。この動きによって操作タブ(81)は密封部(83)を突き押して、弱化線(84)内にある蓋板領域を切り離して容器内へと押し込む。被覆層(91)の領域に操作力を加えることにより、芳香剤を封入したカプセルは破壊・開封され、香り物質が漏出できるようになる。さらに、任意に設置されている芳香剤貯留部も破壊・開封されるので、この場所にある香り物質も漏出することができる。
【符号の説明】
【0055】
10:厚紙容器
11:容器の壁
12:開口
20:密封タブ
21:操作タブ
22:密封部
23:弱化線
30:芳香剤貯留部
31:カプセルに封入された芳香剤を含む被覆層
40:壜
41:壜首
50:ねじ蓋
51:蓋の壁
53:穿孔列(ミシン目)
54:補強シールバンド
55:リブ(Steg;web)
60:芳香剤貯留部
62:香り反応成分
70:飲料缶
71:蓋板
72:開口
80:密封手段
81:操作タブ
82:鋲
83:密封部
84:弱化線
90:芳香剤貯留部
91:カプセルに封入された芳香剤を含む被覆層
【図1a)】

【図1b)】

【図2a)】

【図2b)】

【図3a)】

【図3b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品容器(10、40、70)を開封するために操作することが可能な密封手段であり、該密封手段は、使用者が開封過程を実行するために手で掴む少なくとも1個の操作部(21、50、81)と、該操作部と動作可能に結合されている1個の密封部(22、51,83)とを含んで成り、該密封部は前記容器(10、40、70)を密封し、開封過程中には該密封部において前記容器が開封され、かつ該密封手段に所定の香りを発生させるために芳香剤が仕込まれており、かつ該密封手段に香りを時間的制御が可能な態様で放出する手段が組み込まれており、この手段によって、容器を開封するための開封過程の実行に呼応して香りの放出が実施され、またこの手段は芳香剤を収容する芳香剤貯留部(30、60、90)を含み、該貯留部は開封過程中に破壊・開封され得る貯留部壁を有し、芳香剤が操作部(21、50、81)に付与されることを特徴とする操作可能な密封手段。
【請求項2】
香りを放出する手段が、起動エネルギーの印加によって起動され得ることを特徴とする請求項1に記載の操作可能な密封手段。
【請求項3】
貯留部外壁の少なくとも一部が、香りを通さない芳香剤の被覆層によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の操作可能な密封手段。
【請求項4】
密封手段が1個のねじ蓋(50)を有し、該ねじ蓋が雌ねじ部及び補強シールバンド(54)を有する蓋本体を含んで成り、かつ操作部(21、50、81)が蓋本体の円筒形外殻を含んで成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の操作可能な密封手段。
【請求項5】
補強シールバンド(54)が破壊・開封が可能な貯留部壁の少なくとも一部を構成することを特徴とする請求項4に記載の操作可能な密封手段。
【請求項6】
密封部(22、83)が容器壁の一部を含んで成り、少なくとも部分的に1個の弱化線(23、87)を有し、開封過程の際には該弱化線に沿って容器壁が開封されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の操作可能な密封手段。
【請求項7】
操作部が操作タブ(21、81)として設計されており、該操作タブが操作力を密封部に伝達することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の操作可能な密封手段。
【請求項8】
操作部(21、50、81)が貯留部壁の一部分を含んで成り、使用者が操作部を掴むことによって操作力を加えた際に上記部分が破壊・開封されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の操作可能な密封手段。
【請求項9】
操作部(21、50、81)が貯留部壁の一部を含んで成り、該貯留部壁が、操作部が掴まれることにより、及び/または容器を開封するために密封手段が操作されることにより、起動エネルギーが印加されて破壊・開封されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の操作可能な密封手段。
【請求項10】
密封手段が少なくともその一部に、特に操作部(21、50、81)に、多数の芳香剤封入マイクロカプセル貯留部を含んで成ることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の操作可能な密封手段。
【請求項11】
容器(10、40、70)を開封するための操作力が、貯留部壁の一部分を介して密封部(22、51、83)に伝達可能であり、かつ貯留部壁が、操作力が発生した際に破壊・開封されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の操作可能な密封手段。
【請求項12】
操作タブ(81)が1個のレバー(Hebel)として設計されており、このレバーが容器(70)の開封中にレバーアームによって貯留部壁の一部に圧力を加え、該貯留部壁を破壊・開封することを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の操作可能な密封手段。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の操作可能な密封手段を有することを特徴とする食品容器(10、40、70)。
【請求項14】
操作可能な密封手段を有する食品容器(10、40、70)を開封する方法であり、上記密封手段は、使用者が開封過程を実行するために手を触れる少なくとも1個の操作部(21、50、81)と、該操作部と動作可能に結合されて容器(10、40、70)を密封する1個の密封部(22、51、83)とを含んで成り、上記密封手段の操作によって密封部内に容器の開口が露呈もしくは形成されて、該容器から、特に密封手段から香りが放出され、かつ香り放出の時点が適切に制御される結果、香り放出が開封過程の実行中に起動されるものであり、芳香剤が操作部に付与されることを特徴とする方法。
【請求項15】
光化学的に活性化することができる芳香剤が、遮光状態で密封手段に配置されており、開封過程を実行するために該密封手段が操作されることによって、芳香剤への光供給が可能となることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
密封手段が操作されることによって、芳香剤の湿式化学反応が起動されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
相互に化学反応することによって所定の香りを発生する複数種の芳香剤成分が、互に隔離されて密封手段に配置されており、開封過程を実行するために密封手段が操作されることによって上記芳香剤成分相互の接触が可能となることを特徴とする請求項14または16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
密封手段が操作されることによって芳香剤に力が加えられることを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
密封手段が操作されることによって芳香剤の表面積/体積比率が著しく増大されることを特徴とする請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
密封手段に接して芳香剤を内蔵した貯留部が配置されており、密封手段が操作されることによって該貯留部が破壊・開封されることを特徴とする請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
芳香剤が操作部(21、50、81)に付与されており、使用者が該操作部を手で掴むことによって芳香剤が放出されることを特徴とする請求項14〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
香りの放出が、容器が曝される環境条件、例えば温度、大気の湿度、及び/または可視領域、紫外領域または赤外領域における電磁放射の電磁束密度などの調節によって起動されることを特徴とする請求項14〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
開封過程が実行される以前に芳香剤が放出されることを特徴とする請求項14〜22のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−526020(P2012−526020A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509054(P2012−509054)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056280
【国際公開番号】WO2010/128149
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(508242942)ボール パッケージング ユーロプ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】