説明

駆動モータ用の冷却ジャケット

【課題】 駆動モータ用の冷却ジャケットを提供する。
【解決手段】 モータ用の冷却ジャケットは、外周面と、内周面と、内周面と外周面との間に配置された、複数の分離した冷却路とを有する押出成形ジャケット本体を含み、複数の分離した冷却路により、多方向流体流れが生じる。冷却流体をジャケット本体に向ける流体流入口を設け、加熱された流体をジャケット本体から離れる方向に向ける流体流出口を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、協同してモータを冷却する複数の冷却路を備えた押出成形ジャケット本体を含むモータ用冷却ジャケットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータの出力密度は、ロータおよびステータの寸法と関係がある。通常、出力密度を高めるためには、ロータおよびステータの寸法を相応して大きくしなければならない。一方、電気モータを液体冷却して、同様にロータおよびステータの寸法を大きくする必要なく出力密度を高めることも可能である。液体冷却により、冷却されない同じ寸法のロータおよびステータに比べてモータ電流をより大きくすることができる。
【0003】
モータ用冷却ジャケットは、液体冷却を行うために使用される。公知のモータ用冷却ジャケットの1つに、現場鋳造冷却管を備えた単体の鋳造部品がある。このタイプの冷却ジャケットは、鋳型のコストが高くリードタイムが長いために不利益である。また、鋳型は、異なるモータ形態がそれぞれ独自の鋳物を必要とするという点で融通が利かない。さらに、現場鋳造冷却管は冷却能力が限定される。
【0004】
鋳造冷却ジャケットは従来、両端部を端部キャップで閉鎖されている。冷却液は、端部キャップとジャケット内に形成されたチャネルとを流れる。端部キャップは、戻り流体流れが冷却ジャケットを通って反対側の端部キャップに至るのを可能にする流体チャネルを含むように形成されるか、または機械加工されなければならない。これにより、冷却ジャケットのコストが高くなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
モータ用の冷却ジャケットは、複数の分離した冷却流路を含む押出成形体からなり、冷却流体が流体流入口から流体流出口に流れるときに、複数の分離した冷却路により、押出成形体内部に多方向流れが生じる。
【0006】
一例では、冷却ジャケットは、反対の流れ方向間で流体流れの方向を変えるのに、ジャケット端部キャップに流体路を形成する必要がない冷却流路を形成するジャケット本体を含む。
【0007】
一例では、ジャケット本体は、外周面と、内周面と、内周面と外周面との間に分離して配置された複数の冷却路とを有する。流体流入口は、冷却流体をジャケット本体に向けるように設けられ、流体流出口は、加熱された流体をジャケット本体から離れる方向に向けるように設けられる。
【0008】
一例では、ジャケット本体は、モータの対向する円周部分を囲む、分離した第1および第2の流体路を形成する第1および第2の部分に分割される。流体流入口は、一方の分離した冷却路と接続され、冷却流体は、最初に流体流入口で両方向に向けられて、最初に一方の方向で第1の流体路に流入し、反対の方向で第2の流体路に流入する。流体流出口は、第1および第2の流体路からの流体が、流体流出口から出る前に互いの方に向かって流れるように、もう一方の分離した冷却路と接続される。
【0009】
一例では、第1および第2の冷却路はそれぞれ、モータ回転軸に対してほぼ平行な第1の方向の流体流れをもたらす第1の軸方向路セットと、第1の方向とは反対の第2の方向の流体流れをもたらす第2の軸方向路セットと、第1および第2の軸方向路セットを互いに接続する円周方向路セットとを含む。
【0010】
一例では、ジャケット本体は、少なくとも1つの端部キャップで閉鎖される。端部キャップは、複数の分離した冷却路が、流体流入口から流体流出口に延びる、封止された流体路を画定するようにジャケット本体の一端に取り付けられる。流体流入口および流体流出口は、ジャケット本体かまたは端部キャップに形成することができる。さらに、必要に応じて、流体流入口および流出口を余分に設けることができる。
【0011】
一例では、冷却ジャケットは、単体の押出成形構造体として形成される。別の例では、冷却ジャケットは、押出成形された複数のジャケット小部分から形成され、これらの小部分は、次に互いに固定されて完全な冷却ジャケットを形成する。工程には、複数のジャケット部分を押出成形することが含まれ、各ジャケット部分は、内周壁と外周壁との間の冷却流路を画定する、複数の分離した冷却路を含む。複数のジャケット部分同士が結合されて、モータのステータを囲むことができる完全な冷却ジャケットを形成し、次いで、必要に応じて、第1および第2の端部キャップを複数のジャケット部分に取り付けることができる。
【0012】
一例では、端部キャップは、複数のジャケット部分と第1および第2の端部キャップによって連続冷却ループが形成されるように、一方の端部キャップから冷却ジャケット本体を通り、次いで、反対側の端部キャップに至る冷却流体の経路を変える流体路を含むように機械加工される。
【0013】
別の例では、冷却ジャケット自体が連続冷却ループを形成するので、端部キャップは単に流れ領域を制限するだけである。
【0014】
押出成形加工の別の特徴には、1回の押出成形加工で複数の冷却ジャケットまたはジャケット小部分を形成することが挙げられる。単体の冷却ジャケットの例では、冷却ジャケット本体全体を1つの細長い部片として押出成形することができ、次いで、これを所望する様々な長さに切断する。同様に、ジャケット小部分の細長い押出材を所望する様々な長さに切断することができる。
【0015】
本発明のこれらのおよび他の特徴は、下記の詳述および図面から最も深く理解することができ、以下は簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】冷却ジャケットを装着した電気モータの概略図である。
【図2】電気モータ用冷却ジャケットの一例の斜視図である。
【図3】端部キャップを装着した図1の冷却ジャケットを示す斜視図である。
【図4】冷却ジャケットを装着したモータの断面図である。
【図5】電気モータ用冷却ジャケットの別の例の斜視図である。
【図6】一方の端部キャップを示す、図5の冷却ジャケットの斜視図である。
【図7】他方の端部キャップを示す、図5の冷却ジャケットの斜視図である。
【図8】図5の冷却ジャケット用の内部流体路を示している。
【図9】別の例の冷却ジャケットを装着した電気モータの概略図である。
【図10】第1および第2の端部キャップを装着した図9の冷却ジャケットの一例の斜視図である。
【図11】端部キャップのない図10の冷却ジャケットを示す斜視図である。
【図12】端部キャップを迂回するが、図10に示す閉じた構成とするのに端部キャップを使用する図11の冷却ジャケット内の冷却管流路の斜視図である。
【図13】図12と同様であるが、端部キャップを含まない、流体流入口および流体流出口を示す斜視図である。
【図14】複数のジャケット小部分から形成される図9〜13と同様の冷却ジャケット構成を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、ステータ14と、出力シャフト18に連結されたロータ16とを有する電気モータ12用の冷却ジャケット10を示している。出力シャフト18は、例えば、車両用ホイールなどの車両駆動列部品20を駆動するように連結されている。冷却ジャケット10は、冷却流体供給部22と流体連通している。冷却ジャケット10は、押出成形された複数のジャケット部分で構成され、これらのジャケット部分同士が結合されて、電気モータ12を囲んでいる。
【0018】
冷却ジャケット10の一例を図2〜4に示している。冷却ジャケット10は、押出成形部品である複数のジャケット部分30を含む。一例では、各ジャケット部分30は、他の押出部分30と同一であり、単一の押出材を使用して、複数のジャケット部分を形成することができ、この場合に、複数のジャケット部分は所望の長さに切断され、互いに結合されて電気モータ12を囲む。
【0019】
電気モータ12は、出力シャフト18およびロータ16がそのまわりを回転する中心軸32(図1)を画定する。各ジャケット部分30は、外周壁34および内周壁36を含み、内周壁36は、中心軸32に向かう方向で外周壁34から内側に離間して、内周壁36と外周壁34との間に冷却空間38を形成している。連結壁40は、内周壁36と外周壁34を相互連結して、冷却空間38内に複数の分離した冷却路42を画定する。この例では、各ジャケット部分30は、中心軸32を部分的に囲む円弧状のセグメントを形成している。互いに連結されると、ジャケット部分30は、電気モータ12を完全に囲む、すなわち、ジャケット部分30は中心軸32を完全に囲んで延びる。示した例では、ジャケット部分は協同して、形状が略円形の管状構造体を形成するが、他の形状構成の他の管状構造体、例えば、正方形や長方形の形状などを使用することもできる。
【0020】
図2〜4に示した例では、3つのジャケット部分30を使用して冷却ジャケット10を形成している。各ジャケット部分30は、各円弧の端部46にフランジ44を含む。1つのジャケット部分30のフランジ44は、隣接するジャケット部分30のフランジ44と対接して接合境界48を形成している。ジャケット部分30は、接合境界48で互いに固定される。示した例では、ジャケット部分30は、接合境界48で互いに溶接されるが、他の取付方法、例えば、留め具(ボルト、ねじ、リベットなど)、クランプ、バンド、ストラップ、キー結合、ダブテール結合、またはスプリングファスナなどを使用することもできる。別の構成例では、フランジ44が削除されて、円弧の端部46の縁部が互いに直接溶接される。
【0021】
複数の分離した冷却路42が図2〜4にさらに詳細に示されている。この例では、冷却路42を形成する連結壁40は、内周壁36から外周壁34に、中心軸32から離れて半径方向に延びる半径方向壁セット40aを含む。連結壁40はまた、半径方向壁40aに対して斜めに延びる傾斜壁セット40bを含む。示した例では、半径方向壁40aが傾斜壁40bと交互に配置されていて、各半径方向壁40aは一対の傾斜壁40b間に配置され、各傾斜壁40bは一対の半径方向壁40a間に配置されている。
【0022】
第1の端部キャップ60および第2の端部キャップ62は、複数の分離した冷却路を閉鎖するようにジャケット部分30に固定され、その結果、複数のジャケット部分30、第1の端部キャップ60、および第2の端部キャップ62によって連続冷却ループが形成されて、電気モータ12の外周を冷却する。各ジャケット部分30において、冷却路42aの少なくとも幾つかは、矢印64で示すように、第1の方向の、すなわち中心軸32に沿って一方の端部キャップ60に向かう流体流れ用であり、冷却路42bの少なくとも幾つかは、矢印66で示すように、(第1の方向とは反対の)第2の方向の、すなわち反対側の端部キャップ62に向かう流体流れ用である。端部キャップ60、62は、流体が冷却路42a、42b間で反転して流れることができるように、それぞれの端部キャップ60、62内に形成された接続流体路68を含む。別のオプション例では、流体は一方向だけ流れることができるが、そのような構成は、少なくとも2つの異なる方向の流体流れほど有益ではない。
【0023】
端部キャップ60、62の一方は、冷却流体供給部22と流体連通するための接続境界70を含む。接続境界70は、冷却流体供給部22と接続される流体流入口72と、逆戻りさせて冷却流体供給部22から再循環させるために、加熱された流体を冷却すべき電気モータ12の外に移送する流体流出口74とを含む。
【0024】
端部キャップ60、62の一方はまた、隣接するジャケット部分30間で液体が移送されるのを可能にする流体接続境界80を含む。流体接続境界80は、ジャケット部分30の接合境界48とほぼ一列に並ぶ。カバープレート82は、流体接続境界80を覆い、これを封止するために使用される。図3に示す例では、3つの接合境界48がある。接合境界の2つは、流体接続境界80と一列に並び、第3の接合境界では、流体流入口72および流体流出口74を介した流体連通移送が行われる。必要に応じて、カバープレートで、および/または端部キャップとジャケット部分との間にガスケット(図示せず)を使用して、堅く密封された環境をもたらすことができる。
【0025】
各ジャケット部分30はまた、端部キャップ60、62をジャケット部分30に固定する留め具(図示せず)を受け入れる複数の穴90を含む。端部キャップ60、62はまた、ジャケット部分30の穴90と一列に並ぶ穴92を含む。
【0026】
ジャケット部分30同士が固定されて、ステータ14を囲み、ステータ14と熱接触する管状冷却ジャケット10を形成する。ジャケット部分30は、押出金型で押出成形された同一のセグメントである。このセグメントは、「焼き嵌め(hot dropping)」法によってステータ14に取り付けられて、張力のかかった完全なバンドを形成する。焼き嵌めとは、ジャケット部分30同士を固定し、その後、最終的な内径寸法になるように内周面を機械加工し、次いで、形成した冷却ジャケットを加熱し、ジャケット10とステータ14が同じ温度になるまで、低温の方のステータにジャケット10を押し込んでおく方法を指す。これにより、張力のかかったバンドが得られる。
【0027】
冷却ジャケット100の別の例を図5〜図8に示している。この構成は、図2〜4と同様であるが、3つではなく4つのジャケット部分102を使用している。上記のように、中心軸32を完全に囲むためにジャケット部分102同士が固定されている。各ジャケット部分102は、外周壁104および内周壁106を含み、内周壁106は、中心軸32に向かう方向で外周壁104から内側に離間して、内周壁106と外周壁104との間に冷却空間108を形成している。連結壁110は、内周壁106と外周壁104を相互連結して、冷却空間108に複数の分離した冷却路112を画定する。こうして、各ジャケット部分102は、中心軸32を部分的に囲む円弧状のセグメントを形成している。
【0028】
この構成での連結壁110はほぼ半径方向の壁であり、内周壁106から外周壁104に、中心軸32から離れてほぼ半径方向に延びている。連結壁110は、中心軸32を中心として互いに離間して、冷却路112を形成している。冷却路112a(図5および図8)の中には、中心軸32に沿って一方の方向に流れるものがあり、冷却路112bの中には、中心軸32に沿って反対方向に流れるものもある。この構成では、冷却路112a、112bは互いに交互に配置されている。
【0029】
各流路対112a、112bの間には、第1の端部キャップ122(図6)および第2の端部キャップ124(図7)をジャケット部分102に固定するのに使用される留め具(図示せず)を受け入れることができる穴120がある。端部キャップ122、124は、キャップ内に形成された流体接続境界126を含み、この流体接続境界126は、流体が交互流動冷却路112a、112b間を移動するのを可能にする。流体接続境界126の1つは、上記のように、冷却流体供給部22に接続された流入口および流出口と流体的に接続される。
【0030】
さらに、端部キャップ122、124は、ジャケッ部分102の穴120と一列に並んだ穴128を有する。留め具は穴120、128内に延びて、ジャケット部分102および端部キャップ122、124を、圧力をかけてともに固定し、締め付ける。
【0031】
上記の冷却ジャケットを形成する方法は以下のステップを含む。各ジャケット部分30、102が、外周壁34、104と、外周壁34、104から内側に離間して外周壁との間に冷却空間38、108を形成する内周壁36、106と、内周壁と外周壁の間に延びて、冷却空間に複数の分離した冷却路42、112を形成する複数の連結壁40、110とを含む形で、複数のジャケット部分30、102を押出成形する。ジャケット部分30、102同士を結合してモータステータ14を囲む管状冷却ジャケット10、100を形成する。次いで、複数の分離した冷却路を閉鎖するように、第1の端部キャップ60、122および第2の端部キャップ62、124を複数のジャケット部分に取り付けて、複数のジャケット部分、第1の端部キャップ、および第2の端部キャップで連続冷却ループを形成する。
【0032】
代替の構成では、冷却ジャケット10、100は、単方向流れを提供することもできる。この構成では、冷却流体は、一方の端部から他方の端部に冷却路を流れることになる。冷却流体は、一方の端部キャップに流入口から供給され、冷却路を一方向に流れ、次いで、流出口から他方の端部キャップを出る。次いで、加熱された冷却流体は再度冷却され、連続冷却ループを形成するように、冷却流体供給部を経由して流入口に戻る経路で送られる。
【0033】
押出成形加工時に、ジャケット部分は細長いジャケット部分を形成するように押出成形される。ジャケット部分は互いに同一であり、細長いジャケット部分は、長さが互いに等しい断片に切断され、切断された断片は互いに結合されてステータを囲む。これは、非常にコスト効率の良い、冷却ジャケットを形成する方法である。また、様々なモータ構成に対処するために、ジャケット部分を細長い押出材から様々な長さに切断することができる。
【0034】
図9は、ステータ214と、出力シャフト218に連結されたロータ216とを有する電気モータ212用の冷却ジャケット210の別の例を示している。出力シャフト218は、例えば、車両用ホイールなどの車両駆動列部品220を駆動するように連結されている。冷却ジャケット210は、冷却流体供給部222と流体連通している。
【0035】
冷却ジャケット210は、両端面に第1の端部キャップ226および第2の端部キャップ228を装着したジャケット本体224を含む。ジャケット本体224は、内周面230および外周面232を含む。少なくとも1つの流体流入口234は、外周面232に形成されて、流体供給部222からの冷却流体をジャケット本体224に向ける。少なくとも1つの流体流出口236は、外周面232に形成されて、加熱された流体をジャケット本体224から遠ざかり、次いで流体供給部に戻るように向ける。必要に応じて、流入口および流出口を冷却ジャケットに余分に設けることもできる。さらに任意で、例えば、図10のI/Oで示すように、流入口および流出口を端部キャップに配置することもできる。
【0036】
図10〜11に示すように、ジャケット本体224は、複数の分離した冷却路238を含む、押出成形された単体の構造体からなり、複数の冷却路238は協同して、ジャケット本体224全体にわたる少なくとも両方向の流体流れをもたらす。任意で、押出成形構造体は、互いに結合されて完全な冷却ジャケットを形成する複数の断片で構成される。冷却路238は、押出成形時にジャケット本体224の一部として形成された冷却管またはチャネルで構成される。これは、下記にさらに詳細に説明される。
【0037】
図10に示すように、第2の端部キャップ228は、駆動列部品220に取り付けるために、出力シャフト218が冷却ジャケット210から外に突出することを可能にする開口240を含む。上記に説明したように、駆動列部品220には、車両用ホイールなどの部品を含めることができるが、電気モータ212は、駆動シャフト、トランスミッション、差動装置などの部品を駆動するハイブリッド車構成の一部として構成することもできる。
【0038】
図12に示すように、複数の分離した冷却路238は、電気モータ212の円周のまわりに平行に並んだ第1の流路250aおよび第2の流路250bを形成するように分割されている。第1の冷却路セット238aは、第1の流路250aを画定し、第2の冷却路セット238bは、第2の流路250bを画定する。第1の流路250aは、モータ円周の第1の部分のまわりに延び、第2の流路250bは、モータ円周の残りの部分のまわりに延びている。
【0039】
流体流入口234は、冷却路238の1つに接続され、流体供給部222から冷却流体を受け入れる。冷却流体が最初に冷却路238に流入すると、流体は、矢印252、254でそれぞれ示すように、2つの反対の流れ方向に流れる。第1の流れ方向252に流れると、第1の流路250aの始まりになり、反対の第2の流れ方向254に流れると、第2の流路250bの始まりとなる。第1の流路250aおよび第2の流路250bは、モータ円周のまわりに平行に進み、対向する矢印256、258で示すように、反対方向から流体流出口236で合流する。第1の流れ方向256は、第1の流路250aの端部を画定し、第2の流れ方向258は、第2の流路250bの端部を画定する。第1および第2の流路は、流体流出口236で合流し、ともに流体流出口236から冷却ジャケット210を出る。
【0040】
第1の流路250aおよび第2の流路250bはそれぞれ、第1の方向の流体流れを可能にする第1の軸方向路セット260と、第1の方向とは反対の第2の方向の流体流れを可能にする第2の軸方向路セット262と、第1の軸方向流路セット260と第2の軸方向セット262とを接続する円周方向路セット264とを含む。一例では、各円周方向路264は、第1の軸方向路260の一端を隣接する第2の軸方向路262の対応する端部に接続する。第1の軸方向路セット260および第2の軸方向路セット262は、電気モータ212のほぼ長手方向に延び、モータ回転軸A(図9)に対してほぼ平行である。円周方向路264は、モータ回転軸Aのまわりに円周方向に延びる。
【0041】
図12に示すように、第1の端部キャップ226は、両側に出力シャフトがあるモータ構成を可能にするために、モータ出力シャフト218が貫通する開口を有する。任意で、第1の端部キャップ226および第2の端部キャップ228の一方は、開口のない中実端面とすることもできる。どちらの構成においても、第1の端部キャップ226がジャケット本体224に固定された場合に、冷却流体が端部キャップを通らないで進むのは明らかである。第2の端部キャップ228も同様に構成される。したがって、流体流れの向きを反対側の端部キャップに向かう反対の方向に変えるのを可能にするために、端部キャップを機械加工したり、または他の方法で修正したりする必要はない。
【0042】
図13に示すように、冷却ジャケット210はまた、少なくとも1つの排気口280および/または少なくとも1つの排液口290を含む。示した例では、排気口280は第1の流路250aに接続され、排液口290は第2の流路250bに接続されている。排気口280および排液口290の位置は単なる例であり、車両内の電気モータの大きさおよび向きに応じて変わり得る。さらに、必要に応じて、排気口および/または排液口を余分に設けることができ、あるいは、特定の構成では、排気口または排液口を必要としないこともある。
【0043】
上記に説明したように、冷却ジャケット210は、押出成形加工を利用して作ることができる。冷却ジャケット210を形成する方法には、以下のステップが含まれる。一例では、モータを完全に囲むことができる単体の円筒状構造体としてジャケット本体224を押出成形する。任意で、複数のジャケット断片を押出成形することができ、次いで、これらを互いに固定して完全なジャケット本体を形成する。ジャケット本体224は、外周面232と、内周面230と、内周面230と外周面232との間に分離して配置された複数の冷却路238とを有する。一例では、冷却流体をジャケット本体224に向ける少なくとも1つの流体流入口234を外周面232に形成し、加熱された流体をジャケット本体224から離れる方向に向ける少なくとも1つの流体流出口236を外周面232に形成する。任意で、上記のように、端部キャップの片方または両方に流体流入口および流出口を配置することができる。流体が流体流入口234から流体流出口236に移動するときに、複数の分離した冷却路238は協同して、ジャケット本体224全体にわたる両方向または多方向の流体流れをもたらす。例えば、冷却路238には流体流れを一方の方向に向けるものがあり、他の流体路238は、流体流れを反対の方向に向ける。さらに、流体流れは、冷却路238によって画定される方向に対して垂直な方向に円周方向路264によって向けられる。
【0044】
冷却路238は、反対の流れ方向間で流体流れの方向を変えるために、端部キャップに流体路を形成する必要がないように構成される。その代わりに、第1の軸方向路セット260と第2の軸方向路セット262を接続する円周方向路264を使用して、流体流れの方向を変える。
【0045】
押出成形加工時に、細長い冷却ジャケットを形成するようにジャケット本体224を押出成形する。次いで、細長い冷却ジャケットを所望の長さに切断する。細長い冷却ジャケットをこのように容易に形成して、単一の押出材から複数の冷却ジャケットを得ることができる。各冷却ジャケットは、同じ長さに切断することができ、またはより大きいモータやより小さいモータに対処するために、様々な長さに切断することもできる。これは、非常にコスト効率の良い、冷却ジャケットを形成する方法である。任意で、単一の押出材を単一の冷却ジャケットとすることもできる。これは、十分に大きいプレス機が用意された場合か、またはモータがそのような構成に対して十分に小さい場合に有用である。
【0046】
複数のジャケット断片288から形成された冷却ジャケット210’の例が図14に示されている。ジャケット断片288が互いに結合されて完全な冷却ジャケット210’を形成した場合に、各ジャケット断片288は、少なくとも1つの分離した冷却路292を含み、294で示すように、隣接する断片の対向する端面同士が対接する。一例では、各ジャケット断片288は、冷却ジャケット全体のうちの60°の区間に相当する。断片は上記の長さに切断されて、次いで、6つの部片が互いに結合される。当然のことながら、より多いまたはより少ない数量のジャケット断片を使用して冷却ジャケットを形成することもできる。さらに、ジャケット断片288は、溶接、留め具、または他の任意のタイプの取付方法で互いに結合することができる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態を開示したが、当業者には、本発明の範囲内で特定の修正を行えると分かるであろう。このような理由から、本発明の真の範囲および内容を特定するために、添付の特許請求の範囲が検討されるべきである。
【符号の説明】
【0048】
10 冷却ジャケット
12 電気モータ
14 ステータ
16 ロータ
18 出力シャフト
20 車両駆動列部品
22 冷却流体供給部
30 ジャケット部分
32 中心軸
34 外周壁
36 内周壁
38 冷却空間
40 連結壁
40a 半径方向壁
40b 傾斜壁
42a 冷却路
42b 冷却路
44 フランジ
46 端部
48 接合境界
60 第1の端部キャップ
62 第2の端部キャップ
68 接続流体路
70 接続境界
72 流体流入口
74 流体流出口
90 穴
92 穴
100 冷却ジャケット
102 ジャケット部分
104 外周壁
106 内周壁
108 冷却空間
110 連結壁
112a 冷却路
112b 冷却路
120 穴
122 第1の端部キャップ
124 第2の端部キャップ
126 流体接続境界
128 穴
210 冷却ジャケット
210’ 冷却ジャケット
212 電気モータ
214 ステータ
216 ロータ
218 出力シャフト
222 冷却流体供給部
224 ジャケット本体
226 第1の端部キャップ
228 第2の端部キャップ
230 内周面
232 外周面
234 流体流入口
236 流体流出口
238 冷却路
240 開口
250a 第1の流路
250b 第2の流路
256 第1の流れ方向
258 第2の流れ方向
288 ジャケット断片
260 第1の軸方向路
262 第2の軸方向路
264 円周方向路
280 排気口
288 ジャケット断片
290 排液口
292 冷却路
294 冷却路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ用の冷却ジャケットであって、
内周面および外周面を有し、モータ部品を囲むジャケット本体であって、複数の分離した冷却路が前記内周面と前記外周面との間に形成され、前記複数の分離した冷却路は協同して、前記ジャケット本体全体にわたる少なくとも両方向の流体流れをもたらす、ジャケット本体と、
冷却流体を前記ジャケット本体に向ける少なくとも1つの流体流入口、および加熱された流体を前記ジャケット本体から離れる方向に向ける少なくとも1つの流体流出口と、
を含む冷却ジャケット。
【請求項2】
前記複数の分離した冷却路は、流体が第1の方向に流れる第1の冷却路セットと、流体が、前記第1の方向とは反対の第2の方向に流れる第2の冷却路セットと、前記第1および第2の冷却路セットを互いに接続する第3の冷却路セットとを含む、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項3】
前記第1および前記第2の方向は、モータ回転軸に対してほぼ平行であり、前記第3の冷却路セットは、前記モータ回転軸を中心としてほぼ円周方向に延びる、請求項2に記載の冷却ジャケット。
【請求項4】
前記ジャケット本体は、前記モータ部品の対向する部分を囲む、分離した第1および第2の流体路を形成する第1および第2の部分に分割される、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項5】
前記少なくとも1つの流体流入口は、1つの分離した冷却路と接続され、冷却流体は、前記流体流入口で両方向に向けられて、一方の方向で前記第1の流体路に流入し、反対の方向で前記第2の流体路に流入する、請求項4に記載の冷却ジャケット。
【請求項6】
前記第1の流体路は、モータ円周の第1の部分のまわりに延び、前記第2の流体路は、前記モータ円周の残りの部分のまわりに延びる、請求項4に記載の冷却ジャケット。
【請求項7】
前記少なくとも1つの流体流出口は、前記第1および第2の流体路からの流体が互いに向かって流れ、前記流体流出口から流出するように1つの分離した冷却路に接続される、請求項6に記載の冷却ジャケット。
【請求項8】
前記複数の分離した冷却路は、前記第1の流体路に対応する第1の冷却路セットと、前記第2の流体路に対応する第2の冷却路セットとを含み、前記第1および前記第2の冷却路セットはそれぞれ、モータ回転軸に対して平行な第1の方向の流体流れを可能にする第1の軸方向路セットと、前記第1の方向とは反対で、前記モータ軸に対して平行な第2の方向の流体流れを可能にする第2の軸方向路セットと、前記第1の軸方向路セットと前記第2の軸方向路セットとを接続する円周方向路セットとを含む、請求項7に記載の冷却ジャケット。
【請求項9】
前記ジャケット本体は第1の端部と第2の端部との間に延び、前記第1および第2の端部の一方に取り付けられた少なくとも1つの端部キャップを含み、前記複数の分離した冷却路は、前記少なくとも1つの端部キャップを迂回する、前記流体流入口から前記流体流出口までの封止された流体路を画定する、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項10】
前記ジャケット本体は、互いに結合されて1つの完全な冷却ジャケットを形成する、複数の押出成形されたジャケット断片から形成される、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項11】
電気モータ用の冷却ジャケットを形成する方法であって、
(a)外周壁と、内周壁と、前記内周壁と前記外周壁との間に配置された、複数の分離した冷却路とを含み、モータ部品を実質的に囲むジャケット本体を押出成形するステップと、
(b)冷却流体を前記ジャケット本体に向ける少なくとも1つの流体流入口を設けるステップと、
(c)前記複数の分離した冷却路が、ジャケット端部キャップを迂回し、流体が前記流体流入口から流体流出口に移動する冷却流路を画定するように、加熱された流体を前記ジャケット本体から離れる方向に向ける少なくとも1つの流体流出口を設けるステップと
を含む方法。
【請求項12】
所定の初期長さでジャケット本体を押出成形し、前記ジャケット本体を初期長さよりも短い第1の長さに切断して、第1のモータ構成用の第1の冷却ジャケットを形成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記初期長さよりも短く、前記第1の長さとは異なる第2の長さに前記ジャケット本体を切断して、第2のモータ構成用の第2の冷却ジャケットを形成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
モータ部品の対向する円周部分を囲む、分離した第1および第2の流体路を形成する第1および第2の部分に前記ジャケット本体を分割することと、前記少なくとも1つの流体流入口を一方の分離した冷却路と接続し、冷却流体は、前記流体流入口で両方向に向けられて、最初に、一方の方向で前記第1の流体路に流入し、反対の方向で前記第2の流体路に流入することと、前記第1および第2の流体路からの流体が前記流体流出口を出る前に互いの方に向かって流れるように、前記少なくとも1つの流体流出口をもう一方の分離した冷却路と接続することとを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
モータ回転軸に沿った第1の方向の流体流れ用の第1の冷却路セットと、前記第1の方向とは反対の第2の方向の流体流れ用の第2の冷却路セットと、前記第1の冷却路セットと前記第2の冷却路セットとを互いに接続する第3の冷却路セットとを含むように前記第1および第2の流体路をそれぞれ形成することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の分離した冷却路が、前記端部キャップを通り抜けない、前記流体流入口から前記流体流出口への封止した流体路を画定するように、少なくとも1つの端部キャップを前記ジャケット本体の端部に取り付けることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ジャケット本体の前記外周面または前記少なくとも1つの端部キャップの一方に少なくとも1つの流入口を形成し、前記ジャケット本体の前記外周面または前記少なくとも1つの端部キャップの一方に少なくとも1つの流出口を形成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複数のジャケット断片として前記ジャケット本体を押出成形し、前記ジャケット断片を互いに結合して完全な冷却ジャケットを形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
電気モータ用の冷却ジャケットを形成する方法であって、
(a)複数のジャケット部分を押出成形し、各ジャケット部分は、外周壁と、前記外周壁から内側に離間した内周壁と、前記内周壁と前記外周壁との間に形成された、複数の分離した冷却路とを含むステップと、
(b)前記複数のジャケット部分を互いに結合して、モータステータを囲む1つの完全な冷却ジャケットを形成するステップと、
(c)少なくとも1つの端部キャップを前記完全な冷却ジャケットに取り付けるステップと
を含む方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの端部キャップには、第1および第2の端部キャップが含まれ、ステップ(c)は、前記複数の分離した冷却路を閉鎖するように、前記第1および第2の端部キャップを前記完全な冷却ジャケットの両端に取り付けて、前記複数のジャケット部分と前記第1および第2の端部キャップとで直列または並列のいずれかの連続冷却ループを形成することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複数のジャケット部分によって、少なくとも1つの端部キャップを迂回する連続冷却ループを形成することを含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−72183(P2011−72183A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−197544(P2010−197544)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(501050690)アーヴィンメリター テクノロジー エルエルスィー (29)
【Fターム(参考)】