説明

駆動力制御装置

【課題】 アクセルペダル等の操作部材の操作特性違いに対して機動的に対応できる駆動力制御装置の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明による駆動力制御装置は、運転者により操作される操作部材の操作量を検出する手段と、検出した操作量を補正する補正手段と、車速検出手段と、検出した車速と、補正した操作量とに基づいて、車両の前後方向の運動に対する目標加速度を決定する目標加速度決定手段と、目標加速度決定手段にて決定した目標加速度に基づいて、目標駆動力を決定する目標駆動力決定手段と、目標駆動力決定手段にて決定した目標駆動力を実現するように駆動力発生装置を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力発生装置により発生させる駆動力を制御する駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクセル操作量及び車速の検出結果に基づいて、アクセル操作量及び車速に応じた理想的な加速度波形が得られるように、目標駆動力を演算する駆動力制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−355477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、アクセル操作量(アクセル開度)は、最終的な目標駆動力を演算する過程で必要となる必須パラメータである。そして、操作する人間(ドライバ)が感じ取るアクセル操作量は、アクセルペダルの操作特性(反力特性やストローク特性)によって異なるので、アクセルペダルの操作量と駆動力(又は加速度)の発生具合をドライバの感覚に合うように設定するのには多大なチューニングを要する。
【0004】
従って、上述の従来技術のように、アクセル操作量及び車速と、目標駆動力との関係を、アクセル操作量及び車速に応じた理想的な加速度波形が得られるようにマップに定義する構成では、車両の動力性能が同じでも、アクセルペダルの操作特性が異なれば、同様のマップをいちいち定義(チューニング)しなければならないという問題点が生ずる。
【0005】
そこで、本発明は、アクセルペダル等の操作部材の操作特性違いに対して機動的に対応できる駆動力制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、運転者により操作される操作部材の操作量を検出する手段と、
検出した操作量を補正する補正手段と、
車速検出手段と、
検出した車速と、補正した操作量とに基づいて、車両の前後方向の運動に対する目標加速度を決定する目標加速度決定手段と、
目標加速度決定手段にて決定した目標加速度に基づいて、目標駆動力を決定する目標駆動力決定手段と、
目標駆動力決定手段にて決定した目標駆動力を実現するように駆動力発生装置を制御する制御手段とを備えることを特徴とする、駆動力制御装置が提供される。
【0007】
本局面において、目標加速度決定手段は、重力成分を加味しない平坦路での目標加速度を決定するものであってよい。目標駆動力決定手段は、車両の走行抵抗又は勾配抵抗を加味して、前記目標加速度が実現されるように、前記目標駆動力を決定するものであってよい。補正手段は、検出した操作量に対する補正後の操作量が所定の非線形特性となるように前記補正を行うものであってよい。目標駆動力決定手段は、車速及び操作量に対する目標駆動力の関係を定めた3次元マップに基づいて、検出した車速及び補正した操作量をパラメータとして、目標加速度を決定するものであってよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アクセルペダル等の操作部材の操作特性違いに対して機動的に対応できる駆動力制御装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0010】
先ず、図1を参照して、本発明の駆動力制御装置が組み込まれる車両統合制御装置が搭載されてよい車両の概要を説明する。
【0011】
この車両は、前後左右にそれぞれ車輪100を備える。図1において「FL」は左前輪、「FR」は右前輪、「RL」は左後輪、「RR」は左後輪をそれぞれ示す。
【0012】
この車両は、動力源としてエンジン140を備える。尚、駆動源は、エンジンに限定されず、電気モータのみやエンジンと電気モータとの組み合わせであってもよく、電気モータの動力源は、2次電池や燃料電池であってよい。
【0013】
エンジン140の運転状態は、運転者によるアクセルペダル200(車両の前後運動を制御するために運転者が操作する操作部材の一例である。)の操作量に応じて電気的に制御される。エンジン140の運転状態は、また、必要に応じて、運転者によるアクセルペダル200の操作とは無関係に自動的に制御される。
【0014】
このようなエンジン140の電気的な制御は、例えば、図示しないが、エンジン140の吸気マニホールド内に配置されるスロットルバルブの開度(即ち、スロットル開度)を電気的に制御することや、エンジン140の燃焼室に噴射される燃料の量を電気的に制御することや、バルブ開閉タイミングを調整するインテークカムシャフトの位相を電気的に制御することで実現することが可能である。
【0015】
この車両は、左右前輪が転動輪、左右後輪が駆動輪である後輪駆動式である。そのため、エンジン140の出力軸は、トルクコンバータ220、トランスミッション240、プロペラシャフト260及びデファレンシャル280と、各後輪と共に回転するドライブシャフト300とをそれらの順に介して各後輪に連結されている。尚、トルクコンバータ220、トランスミッション240、プロペラシャフト260及びデファレンシャル280は、左右後輪に共通な動力伝達要素である。尚、車両は、後輪駆動式である必要はなく、例えば、左右前輪が駆動輪、左右後輪が転動輪である前輪駆動式であっても、全部の車輪が駆動輪となる4WD式であってもよい。
【0016】
トランスミッション240は、図示しない自動変速機を備えている。この自動変速機は、エンジン140の回転速度をトランスミッション240のアウトプットシャフトの回転速度に変速する際の変速比を電気的に制御する。尚、自動変速機は、有段変速機であっても、無段階変速機(CVT)であってもよい。
【0017】
車両は、運転者により回転操作されるステアリングホイール440を備えている。このステアリングホイール440には、操舵反力付与装置480により、運転者による回転操作(以下、「操舵」ともいう。)に応じた反力が操舵反力として電気的に付与される。その操舵反力は、電気的に制御可能とされている。
【0018】
左右前輪の向き、即ち前輪舵角は、フロントステアリング装置500によって電気的に変化させられる。フロントステアリング装置500は、運転者によりステアリングホイール440が回転操作された角度、即ち操舵角に基づいて前輪操舵角を制御し、また、必要に応じて、その回転操作とは無関係に前輪操舵角を自動的に制御する。即ち、ステアリングホイール440と左右前輪とは機械的に絶縁されていてもよい。
【0019】
左右後輪の向き、即ち後輪舵角も、前輪舵角と同様に、リアステアリング装置520によって電気的に変化させられる。
【0020】
各車輪100には、その回転を抑制するために作動させられるブレーキ560が設けられている。各ブレーキ560は、運転者によるブレーキペダル580(車両の前後運動を制御するために運転者が操作する操作部材の一例である。)の操作量に応じて電気的に制御され、また、必要に応じて、自動的に各車輪100が個別に制御される。
【0021】
この車両においては、各車輪100は、各サスペンション620を介して車体(図示せず)に懸架されている。各サスペンション620の懸架特性は、個別に電気的に制御可能とされている。
【0022】
以上のように説明した各構成要素は、それを電気的に作動させるために作動させられる以下のアクチュエータを備えている。
(1)エンジン140を電気的に制御するためのアクチュエータ
(2)トランスミッション240を電気的に制御するためのアクチュエータ
(3)操舵反力付与装置480を電気的に制御するためのアクチュエータ
(4)フロントステアリング装置500を電気的に制御するためのアクチュエータ
(5)リアステアリング装置520を電気的に制御するためのアクチュエータ
(6)ブレーキ560を電気的に制御するためのアクチュエータ
(7)サスペンション620を電気的に制御するためのアクチュエータ。
【0023】
尚、これらアクチュエータは、代表的なものだけを列挙したものであり、車両の仕様によっては、これらのアクチュエータの何れかが欠けることもあり、或いは、その他のアクチュエータ(例えば、ステアリングホイール440の操舵量と転舵輪の転舵量との比(ステアリングレシオ)を電気的に制御するためのアクチュエータ、アクセルペダル200の反力を電気的に制御するためのアクチュエータ等)が付加されることもあり、従って、本発明は、特にアクチュエータの構成によって限定されることはない。
【0024】
図1に示すように、車両統合制御装置は、以上のように説明した各種アクチュエータに電気的に接続された状態で車両に搭載されている。車両統合制御装置は、図示しないバッテリを電力源として動作する。
【0025】
図2は、本実施例の車両統合制御装置の一実施例を示すシステム構成図である。
【0026】
尚、以下で登場する各マネージャ(及びモデル)は、通常的なECU(電子制御ユニット)と同様、マイクロコンピュータによって構成されており、例えば、制御プログラムを格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイス等を有する装置を意味する。また、以下では、機能的に分けて各制御ユニットを例えばP−DRMやVDMなどと命名しているが、これらは必ずしも物理的に独立した構成である必要はなく、適切なソフトウェア構成により一体的に具現化されてよい。
【0027】
図2に示すように、駆動系システムの初段には、駆動系のドライバ意思抽出部として機能するマネージャ(以下、Power−Train Driver Model:P−DRMという。)が配置される。駆動系システムの初段には、P−DRMと並列的に、ドライバ運転補佐・代行システム(以下、Driver Support System:DSSという。)が配置される。
【0028】
P−DRMの前段には、アクセルセンサが設定される。アクセルセンサは、ドライバの意思が直接的に入力されるアクセルペダル200の操作量に応じた電気的信号を発生する。
【0029】
DSSの前段には、車輪速センサが設定される。車輪速センサは、車両の各車輪100に設定され、車輪100の所定回転角毎にパルス信号を出力する。
【0030】
P−DRMには、アクセルセンサからの信号と共に、車輪速センサからの信号が入力される。P−DRM内部の初段では、先ず、目標駆動力算出部にて、アクセルセンサ及び車輪速センサからそれぞれ入力される電気信号に基づくアクセル開度pap[%]及び車速No[prm]に応じた目標駆動力F1が算出される。
【0031】
図3は、図2に示すP−DRMの目標駆動力算出部における目標駆動力算出処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
先ず、ステップ100では、非線形感性特性補償処理が行われる。ここで、非線形感性特性補償処理(ステップ100の処理)について、図4を参照して説明する。
【0033】
アクセル開度pap[%]は、図4(A)は、アクセルペダル200の操作量の増加に伴って線形的に増加する。尚、この線形関係は、アクセルペダルの操作特性(反力特性やストローク特性)によって異なることはない。
【0034】
これに対して、本実施例では、図4(B)に実線(3種類の非線形特性を例示。)にて示すように、アクセル開度pap[%]は、アクセルペダル200の操作量の変化に対して非線形的に変化するアクセル開度papmod[%]へと補正される。他言すると、本実施例では、実際に検出されるアクセル開度pap[%]とは異なるアクセル開度papmod[%]を、続くステップ110における目標加速度決定処理の1パラメータとして用いる。
【0035】
図5は、ステップ110の処理で用いられる3次元マップの一例であり、アクセル開度papmod[%]及び車速No[prm]に対する目標加速度G[m/s]の関係を定める3次元マップを示す。
【0036】
P−DRM内部の目標駆動力算出部は、図4(B)に示すような補正特性に従って、上述の如くアクセル開度pap[%]を非線形感度補償処理によりアクセル開度papmod[%]へと補正し、次いで、図5に示すようなマップに基づいて、当該補正したアクセル開度papmod[%]と車速No[prm]とをパラメータとして、目標加速度G[m/s]を算出する(ステップ110)。
【0037】
ここで、算出される目標加速度Gは、好ましくは、重力成分が加味されない平坦路での目標加速度である。これは、登坂路・降坂路では重力成分がドライバの感じる加速度に減算・加算されるが、かかる加減算分は実際にはドライバの視覚からの情報に基づいて相殺されるためである(即ち、平坦路でも坂路でも車体加速度をドライバは加速感として感じるためである。)。他言すると、目標加速度に重力成分を加味すると、例えば登坂路では加速感が強く降坂路では加速感が弱いといったように、違和感が生ずるのである。
【0038】
尚、この観点から、かかる目標駆動力に影響を与える他の因子(道路勾配等)は、後に説明するステップ200乃至220の処理で算出され、最終的な段階、即ち、目標加速度が目標駆動力に変換された段階で、加味される。
【0039】
ここで、図5に示すような3次元マップは、アクセルペダル200を操作する人間(ドライバ)が感じ取るアクセル操作量及び車速との関係で、ドライバの感覚に合うような目標加速度が決定されるように設定される。この種の3次元マップを使用すると、多大なチューニングを要するものの、アクセル操作量と目標加速度との関係を定める2次元マップを使用する場合に比べて、車速方向の味付け(加速感の伸び、スノー、パワーなどの味付け)が可能となり、よりドライバの感覚に合うような目標加速度の決定が可能である。
【0040】
このようにして目標加速度Gを決定すると、目標駆動力算出部は、次いで、目標加速度G[m/s]を目標駆動力[N]に変換する(ステップ120)。このように、本実施例では、一次的には目標加速度を求め、目標加速度から2次的に目標駆動力を求める構成をとる。即ち、アクセル開度papmod[%]と車速No[prm]に対する目標駆動力[N]を定めた3次元マップを用いることも可能であるが、本実施例では、アクセル開度papmod[%]と車速No[prm]に対する目標加速度G[m/s]を定めた3次元マップを用いている。これは、ドライバの感じる動力性能は、風景の変化やシート圧や三半規管で感じる加速度が支配的であり、ドライバ意思に基づく期待値(目標値)は、加速度で表現されることが好ましいためである(これにより、図5に示すような3次元マップのドライバの感覚に対する適合性が高まる。)。
【0041】
一方、上記ステップ100乃至120処理と並列して、P−DRMの目標駆動力算出部は、ステップ200乃至220の処理を実行する。
【0042】
具体的には、ステップ200では、目標駆動力算出部は、車輪速センサからの車速信号に基づいて、車両走行時の走行抵抗[N](勾配、車両重量を除く。)を算出する。また、同様に、ステップ210において、目標駆動力算出部は、車輪速センサからの車速信号に基づいて、道路勾配を算出する。尚、道路勾配は、例えば、ナビゲーションシステムから得られうる道路勾配情報を利用して算出されてもよく、若しくは、外部の情報提供センタから提供されうる道路勾配情報を利用して算出されてもよい。ステップ220では、道路勾配に基づいて登坂勾配補償量[N] が算出される。
【0043】
最後に、ステップ130では、目標駆動力算出部は、上記ステップ120にて算出した目標駆動力[N]を、上記ステップ200,220で算出した走行抵抗[N]及び登坂勾配補償量[N]に基づいて補正して、最終的な目標駆動力F1[N]を算出する。
【0044】
このようにして決定される目標駆動力F1[N]は、目標駆動力算出部から2つに分流した信号線により後段へと伝達される。以下、目標駆動力F1が分流して伝達される2つのルートを、それぞれ「エンジン制御系伝達ルート」と「T/M制御系伝達ルート」という。目標駆動力F1[N]は、それぞれのルートにおいて、図2に示すように、DSSからの要求がある場合は、DSSからの要求駆動力との調停処理を受ける。
【0045】
DSSは、カメラやレーダー等の周囲障害物情報、ナビゲーションシステムから得られる道路情報や周囲環境情報、ナビゲーションシステムのGPS測位装置から得られる自車位置情報、或いは、外部センタ施設との通信、車車間通信や路車間通信を介して得られる各種外部情報に基づいて、ドライバ意思に代わる適切な要求又はドライバ意思結果に対する適切な補正要求を行う。これら要求として典型的な例は、オートクルーズ制御やその類の自動又は半自動走行制御実施時にDSSから出される要求や、障害物回避等のための介入減速制御や操舵補助制御実施時にDSSから出される要求である。
【0046】
このようにして必要に応じて調停を経た目標駆動力F1[N]は、パワートレーンマネージャ(以下、Power−Train Manager:PTMという。)へと出力される。PTMは、駆動系の要求調和部として機能するマネージャである。
【0047】
PTMの初段では、P−DRMから上述の如く入力される目標駆動力F1[N]が、動的安定化システム系のマネージャ(以下、Vehicle Dynamics Manager:VDMという。)に送信(公開)される。VDMは、制動系のドライバ意思抽出部として機能するマネージャ(以下、Brake Driver Model:B−DRMという。)の後段に配置される
VDMは、車両運動調和部として機能するマネージャである。尚、車両の動的挙動を安定化させるシステムとしては、トラクションコントロールシステム(滑りやすい路面での発進や加速時に生じやすい駆動輪のムダな空転を抑制するシステム。)、滑りやすい路面に進入した時などの車両の横滑りを抑制するシステム、コーナリング時に安定限界に達した場合にスピンやコースアウトを防止すべく車体姿勢を安定させるシステム、4WDの左右後輪の駆動力差をアクティブに生成してヨーモーメントを発生させるシステムが代表例として挙げられる。
【0048】
尚、VDMの後段には、ブレーキ560のアクチュエータを駆動制御するブレーキ制御ユニットと並列的に、フロントステアリング装置500及びリアステアリング装置520のアクチュエータを駆動制御するステア制御ユニットや、サスペンション620のアクチュエータを駆動制御するサス制御ユニットが設定される。尚、B−DRM内部では、ブレーキセンサから入力される電気信号は、目標制動力算出部にて目標制動力に変換され、VDMを介して、ブレーキ制御ユニットへと出力される。尚、本明細書では、詳説しないが、目標制動力算出部にて算出された目標制動力は、以下で詳説する目標駆動力F1と同様又は類似する態様で、各種補正(調停)を受けながらブレーキ制御ユニットへと出力されることになる。
【0049】
VDMの駆動力補正部は、上述の如く主にドライバ意思に応じて一次的に決定された目標制動力F1に対して、車両の動的挙動を安定化させる観点から2次的な補正要求を行う。即ち、VDMの駆動力補正部は、公開される目標駆動力F1に対して、必要に応じて、補正要求を行う。この際、VDMの駆動力補正部は、好ましくは、目標駆動力F1に対して増減する補正量ΔFを要求するのではなく、目標駆動力F1に代わるべき目標駆動力F1の絶対量を要求する。以下、このようにして、目標駆動力F1に基づいて生成されるVDMからの絶対量による目標駆動力を、「目標駆動力F2」とする。
【0050】
目標駆動力F2は、図2に示すように、PTMに入力される。この際、目標駆動力F2は、図2に示すように、エンジン制御系伝達ルートとT/M制御系伝達ルートのそれぞれに入力され、当該入力部において、それぞれ、目標駆動力F1との調停を受ける。この調停では、好ましくは、車両の動的挙動を安定化させることを優先させる観点から、目標駆動力F2が目標駆動力F1に対して優先して選択される。或いは、2つの目標駆動力F2及び目標駆動力F1を適切に重み付けして最終的な目標駆動力を導出することとしてもよい。この際、同様の観点から、目標駆動力F2に対する重み付けが目標駆動力F1に対する重み付けよりも大きくなるようにする。このような調停を経て導出される目標駆動力を、「目標駆動力F3」とする。
【0051】
T/M制御系伝達ルートでは、調停を経た目標駆動力F3は、図2に示すように、目標ギア段設定部に入力される。目標ギア段設定部では、所与の変速線図(駆動力×車速Noの変速線図)に基づいて、最終的な目標ギア段が決定される。
【0052】
このようにしてPTM内部で決定された目標ギア段は、PTMの後段に配置されたT/M制御ユニットへと出力される。T/M制御ユニットは、入力された目標ギア段を実現するようにトランスミッション240のアクチュエータを駆動制御する。
【0053】
エンジン制御系伝達ルートでは、調停を経た目標駆動力F3は、図2に示すように、変換部にて駆動力表現[N]からエンジントルク表現[N・m]に変換され、T/M制御ユニットからPTMに入力される要求エンジントルクとの調停を経て、PTMの後段に配置されたエンジン制御ユニットへと出力される。エンジン制御ユニットは、PTMから入力される目標エンジントルクを実現するようにエンジン140のアクチュエータを駆動制御する。
【0054】
以上の通り本実施例では、P−DRMの目標駆動力算出部にて算出された目標駆動力F1は、各種補正(調停)を受けながらエンジン制御ユニット及びT/M制御ユニットへと出力され、これらによるエンジン140及びトランスミッション240のアクチュエータの駆動制御により、当該目標駆動力F1(調停等を受けた場合は目標駆動力F2,F3。)が実現されることになる。
【0055】
ところで、かかるシステムは、車種毎に車両の運動性能やアクセルペダルの操作特性等が異なることを考慮すると、車両の運動性能やアクセルペダルの操作特性等の相違・変更に対して、機動的に対応できるように構築されていることが望ましい。
【0056】
この点、本実施例では、システム前段にてドライバの意思や感覚に応じて決定される目標駆動力F1は、システム後段で、車両の運動性能等の観点から各種補正(調停)を受ける。これにより、車両の運動性能等が異なる場合でも、システム後段の補正(調停)態様を変更するのみで対応可能であり(システム前段に変更を加える必要が無い)、システム全体の汎用性が高まる。
【0057】
また、一般的に、アクセルペダル200の操作特性(反力特性やストローク特性)の違いにより、同じ操作量であっても、ドライバが感じるアクセルペダル200の操作量(アクセル開度pap[%])が異なることがあるが、本実施例では、上述の如く、アクセルペダル200の操作量(アクセル開度pap[%])を直接的にパラメータとして、目標加速度G[m/s]を求めるのではなく、アクセル開度pap[%]を補正して得られるアクセル開度papmod[%]を介して、目標加速度G[m/s]を求めている。これにより、アクセルペダル200の操作特性(反力特性やストローク特性)が異なる場合でも、アクセル開度pap[%]からアクセル開度papmod[%]への補正特性(図4に示す非線形特性)を変更(非線形感性特性補償)するのみで対応可能であり(図5に示すような3次元マップを作り直す必要が無い)、システム全体の汎用性が高まる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0059】
例えば、上述の実施例では、電子スロットルを有するエンジン140を例示しているが、本発明は、電子スロットルを有さない原動機を動力源として用いる構成に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の駆動力制御装置が組み込まれる車両統合制御装置が搭載されてよい車両の上面図である。
【図2】本実施例の車両統合制御装置の一実施例を示すシステム構成図である。
【図3】P−DRMの目標駆動力算出部における目標駆動力算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図4(A)は、アクセルペダル200の操作量とアクセル開度pap[%]との関係を示し、図4(B)は、本発明による非線形感性特性補償処理を施した場合に得られる同関係を示す図である。
【図5】アクセル開度papmod[%]及び車速No[prm]に対する目標加速度G[m/s]の関係を定める3次元マップの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
140 エンジン
200 アクセルペダル
240 トランスミッション
580 ブレーキペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者により操作される操作部材の操作量を検出する手段と、
検出した操作量を補正する補正手段と、
車速検出手段と、
検出した車速と、補正した操作量とに基づいて、車両の前後方向の運動に対する目標加速度を決定する目標加速度決定手段と、
目標加速度決定手段にて決定した目標加速度に基づいて、目標駆動力を決定する目標駆動力決定手段と、
目標駆動力決定手段にて決定した目標駆動力を実現するように駆動力発生装置を制御する制御手段とを備えることを特徴とする、駆動力制御装置。
【請求項2】
目標加速度決定手段は、重力成分を加味しない平坦路での目標加速度を決定する、請求項1に記載の駆動力制御装置。
【請求項3】
目標駆動力決定手段は、車両の走行抵抗又は勾配抵抗を加味して、前記目標加速度が実現されるように、前記目標駆動力を決定する、請求項1又は2に記載の駆動力制御装置。
【請求項4】
補正手段は、検出した操作量に対する補正後の操作量が所定の非線形特性となるように前記補正を行う、請求項1に記載の駆動力制御装置。
【請求項5】
目標駆動力決定手段は、車速及び操作量に対する目標駆動力の関係を定めた3次元マップに基づいて、検出した車速及び補正した操作量をパラメータとして、目標加速度を決定する、請求項1に記載の駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−282135(P2006−282135A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108661(P2005−108661)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】