説明

駆動力制御装置

【課題】運転指向に基づいて車両の駆動力を制御する駆動力制御装置において、車両の走行に要する注意度と乖離した駆動力制御が行われることを抑制することが可能な駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】人工知能システムを用いて運転指向を推定し、前記推定された運転指向に基づいて車両の駆動力を補正する駆動力制御装置であって、前記車両の走行に要する注意度を推定する手段(S002)と、前記車両の走行に要する注意度に基づいて、前記駆動力の補正の応答性を変更する手段(S007〜S010)とを備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力制御装置に関し、特に、運転指向に基づいて車両の駆動力を補正する駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の運転指向を推定し、その推定された運転指向に基づいて駆動力を制御する駆動力制御装置が知られている。従来、運転指向の推定技術に関しては、例えば以下の技術が開示されている。
【0003】
特開平10−77893号公報(特許文献1)には、車両の運転指向を推定するための運転指向推定装置であって、車両の運転操作に関連して発生させられる第1運転操作関連変数と所定期間毎に周期的に発生させられる第2運転操作関連変数に基づいて車両の運転指向を逐次推定する運転指向推定手段と、該運転指向推定手段により推定された過去の運転指向に基づいて、前記車両の標準的運転指向を推定する標準運転指向推定手段と、該標準運転指向推定手段により推定された標準的運転指向の関数であるフィルタ定数に基づいて、前記運転指向推定手段に入力される第2運転操作関連変数にフィルタ処理を施す入力フィルタ手段とを、含む車両の運転指向推定装置の技術が開示されている。
【0004】
特開2000−127803号公報(特許文献2)には、車両の運転指向の推定のために道路状況を加味することにより、運転指向の誤推定を防止するものとして、車両の運転状態に基づいて運転指向を推定する車両の運転指向推定装置において、コーナーまでの距離を検出する距離検出手段と、検出されたコーナーまでの距離に応じて運転指向の推定内容を変更する運転指向推定内容変更手段とを備えた技術が開示されている。したがってコーナーに接近したことによるアクセルペダルなどの操作の仕方を運転指向を表しているものとして直ちに採用することがないので、運転指向の誤推定を防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−77893号公報
【特許文献2】特開2000−127803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
運転指向に基づいて車両の駆動力を制御する駆動力制御装置において、車両の走行に要する注意度に応じて、より適正な駆動力の制御が行われることが望まれている。
【0007】
例えば、車両周辺状況、車両状態(タイヤ、燃料、チェーン装着等)、路面状況、ドライバー状態等が原因で、走行に注意を要する場合がある。このような場合に、スポーツ走行側の車両制御が行われると、運転者は違和感を感じる場合がある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、スポーツ走行指向が燃費走行指向に直ぐに復帰しないように、入力変数のフィルタ処理がスポーツ走行指向寄りに設定されるため、上記のように走行に注意を要する場合であっても、運転指向推定値がスポーツ走行指向側に出力され易く、スポーツ走行側の車両制御が行われ易い。
【0009】
また、上記特許文献2の技術によれば、道路状況の影響により運転指向推定結果がスポーツ走行指向から燃費走行指向側に変化するという誤推定が抑制されるため、上記のように走行に注意を要する場合であっても、運転指向推定値がスポーツ走行指向側に出力され易く、スポーツ走行側の車両制御が行われ易い。
【0010】
本発明の目的は、運転指向に基づいて車両の駆動力を制御する駆動力制御装置において、車両の走行に要する注意度と乖離した駆動力制御が行われることを抑制することが可能な駆動力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の駆動力制御装置は、人工知能システムを用いて運転指向を推定し、前記推定された運転指向に基づいて車両の駆動力を補正する駆動力制御装置であって、前記車両の走行に要する注意度を推定する手段と、前記車両の走行に要する注意度に基づいて、前記駆動力の補正の応答性を変更する手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
本発明の駆動力制御装置において、運転者の操作量及び前記車両の状態量の少なくともいずれか一つの入力変数の変化方向に基づいて、前記車両の走行に要する注意度に基づいて変更する前記駆動力の補正の応答性の変化方向が決定されることを特徴としている。
【0013】
本発明の駆動力制御装置において、前記入力変数の変化方向が上昇方向である場合には、前記車両の走行に要する注意度に基づいて変更する前記駆動力の補正の応答性を低下させることを特徴としている。
【0014】
本発明の駆動力制御装置において、前記入力変数の変化方向が下降方向である場合には、前記車両の走行に要する注意度に基づいて変更する前記駆動力の補正の応答性を上昇させることを特徴としている。
【0015】
本発明の駆動力制御装置において、前記運転指向には、スポーツ走行指向、燃費指向の少なくともいずれか一つが含まれることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の駆動力制御装置によれば、運転指向に基づいて車両の駆動力を制御する駆動力制御装置において、車両の走行に要する注意度と乖離した駆動力制御が行われることを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の駆動力制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1から図13を参照して、第1実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態は、運転者の操作量及び車両の状態量にフィルタ処理を施した変数をニューラルネットワークの入力情報とし、運転者の運転指向推定値を算出し、その運転指向推定値に基づいて駆動力を制御する駆動力制御装置において、車両前方道路状況(視界、見通し、車線、工事、渋滞等)、道路種類(駐車場、構内路、細街路等)、道路場面(スクールゾーン、商店街、駐車場等)、前走・対向・後方の周辺車両状況、車両状態(タイヤ、燃料、チェーン装着)、路面状況、風の状態、同乗者状況、走行経験、運転歴、気分・体調等の走行に伴う要注意度に応じて、運転指向推定値の上昇の応答性を抑制するように、また、逆に、運転指向推定値の低下の応答性を向上させるように、運転者の操作量及び車両の状態量へのフィルタ定数を変更し、走行時の要注意度と乖離した車両制御を抑制する。
【0020】
本実施形態によれば、以下の方法により安全性の向上を図っている。車両の走行に注意を要すると判断された場合、運転指向推定値がスポーツ走行指向側になることを抑制し、また、燃費指向側になることを促進することにより、走行環境等に対して要注意度が高いスポーツ走行側(走行性能重視側)の車両制御が実施されることが抑制される。
【0021】
以下に詳述するように、本実施形態では、具体的には、(1)〜(3)の手段が用いられる(図11参照)。
【0022】
(1)スポーツ走行指向側への変化に対しても後述する数式3のフィルタ処理を施す。上記特開平10−77893号公報(特許文献1)の技術では、燃費指向側への変化に対してのみにフィルタ処理が施されていた。
(2)走行に伴う要注意度が高く、かつスポーツ走行指向側に変化する場合に、フィルタ定数を大きくする。上記(1)の具体的内容に相当する。
(3)走行に伴う要注意度が高く、かつ燃費走行指向側に変化する場合には、予め設定された基準値(固定値)よりもフィルタ定数を小さくする。
【0023】
図1には、車両の自動変速機および変速制御装置が示されている。図1において、車両のエンジン10から出力された動力は、トルクコンバータ12、自動変速機14、および図示しない差動歯車装置および車軸を経て図示しない駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0024】
上記トルクコンバータ12は、クランク軸16に連結されたポンプ翼車18と、自動変速機14の入力軸20に連結され且つ流体を介してポンプ翼車18から動力が伝達されるタービン翼車22と、一方向クラッチ24を介して位置固定のハウジング26に固定された固定翼車28と、ポンプ翼車18およびタービン翼車22をダンパ30を介して直結するロックアップクラッチ32とを備えている。このロックアップクラッチ32は、解放側油室33と係合側油室35との圧力差により係合制御される。
【0025】
上記自動変速機14は、たとえば前進4速或いは5速のギヤ段が達成される遊星歯車式の多段変速機である。前進4速である場合の自動変速機14は、同軸上に配設された3組のシングルピニオン型遊星歯車装置34,36,38と、前記入力軸20と、遊星歯車装置38のリングギヤとともに回転する出力歯車39と前記差動歯車装置との間で動力を伝達するカウンタ軸(出力軸)40とを備えている。それら遊星歯車装置34,36,38の構成要素の一部は互いに一体的に連結されるだけでなく、3つのクラッチC0 ,C1 ,C2 によって互いに選択的に連結されている。また、上記遊星歯車装置34,36,38の構成要素の一部は、4つのブレーキB0 ,B1 ,B2 ,B3 によってハウジング26に選択的に連結されるとともに、さらに、構成要素の一部は3つの一方向クラッチF0 ,F1 ,F2 によってその回転方向により相互に若しくはハウジング26と係合させられるようになっている。
【0026】
上記クラッチC0 ,C1 ,C2 、ブレーキB0 ,B1 ,B2 ,B3 は、例えば多板式のクラッチや1本または巻付け方向が反対の2本のバンドを備えたバンドブレーキ等にて構成され、それぞれ図示しない油圧アクチュエータによって作動させられるようになっている。後述の電子制御装置42からの指令に従って作動する油圧制御回路44によりそれ等の油圧アクチュエータの作動がそれぞれ制御されることにより、図2に示されているように変速比γ(=入力軸20の回転速度/カウンタ軸40の回転速度)がそれぞれ異なる前進4段・後進1段の変速段が得られる。
【0027】
図2において、「1st」,「2nd」,「3rd」,「O/D(オーバドライブ)」は、それぞれ前進側の第1速ギヤ段,第2速ギヤ段,第3速ギヤ段,第4速ギヤ段を表しており、上記変速比は第1速ギヤ段から第4速ギヤ段に向かうに従って順次小さくなる。なお、上記トルクコンバータ12および自動変速機14は、軸心に対して対称的に構成されているため、図1においては入力軸20の回転軸線の下側およびカウンタ軸40の回転軸線の上側を省略して示してある。
【0028】
上記油圧制御回路44には、自動変速機14のギヤ段を制御するための変速制御用油圧制御回路と、ロックアップクラッチ32の係合を制御するための係合制御用油圧制御回路とが設けられている。変速制御用油圧制御回路は、ソレノイドNo.1およびソレノイドNo.2によってそれぞれオンオフ駆動される第1電磁弁46および第2電磁弁48を備えており、それら第1電磁弁46および第2電磁弁48の作動の組み合わせによって図1に示すようにクラッチおよびブレーキが選択的に作動させられて前記第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のうちのいずれかが成立させられるようになっている。
【0029】
また、上記係合制御用油圧制御回路は、ロックアップクラッチ32を解放状態とする解放側位置とロックアップクラッチ32を係合状態とする係合側位置とに切り換える図示しないクラッチ切換弁をオンオフ作動させる切換用信号圧を発生する第3電磁弁50と、係合側油室35および解放側油室33の圧力差ΔPを調節してロックアップクラッチ32のスリップ量を制御する図示しないスリップ制御弁を作動させるスリップ制御用信号圧を電子制御装置42からの駆動電流に従って発生させるリニアソレノイド弁54とを備えている。
【0030】
前記電子制御装置42は、CPU60、RAM62、ROM64、図示しない入出力インターフェースなどを含む所謂マイクロコンピュータであって、それには、エンジン10の吸気配管66に設けられたスロットル弁68の開度TAを検出するスロットルセンサ70、エンジン10の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ72、自動変速機14の入力軸20の回転速度を検出する入力軸回転速度センサ74、車速Vを検出するために自動変速機14のカウンタ軸40の回転速度を検出する車速センサ76、シフトレバー78の操作位置、すなわちL、S、D、N、R、Pレンジのいずれかを検出する操作位置センサ80、ブレーキペダル82の操作を検出するブレーキスイッチ84から、スロットル弁開度TAを表す信号、エンジン回転速度NE を表す信号、入力軸回転速度NINを表す信号、出力軸(カウンタ軸40)の回転速度NOUT を表す信号、シフトレバー78の操作位置PS を表す信号、ブレーキペダル82の操作を表す信号SBKがそれぞれ供給されるようになっている。上記スロットル弁68は、たとえば図16に示す関係から電子制御装置42により出力操作部材に対応するアクセルペダル58の操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ86によりスロットル弁開度TAが制御されるものである。
【0031】
電子制御装置42のCPU60は、予めROM64に記憶されたプログラムに従って上記入力信号を処理し、たとえば運転指向推定制御、変速制御、ロックアップクラッチ制御、スロットル開度制御、道路勾配の計測又は推定などを実行する。したがって、本実施形態では、電子制御装置42が運転指向推定装置、変速制御装置として機能している。
【0032】
上記電子制御装置42の運転指向推定制御では、入力信号から所定の運転操作関連変数を算出し、その運転操作関連変数が入力されるニューラルネットワークNNの出力に基づいて運転指向が推定される。
【0033】
また、電子制御装置42の変速制御やロックアップクラッチ制御では、予めROM64に記憶された複数種類の変速線図すなわち図3の加速指向の変速線図、図4の中間指向(通常)の変速線図、図5の燃費指向の変速線図から運転指向に対応する変速線図が選択され、その選択された変速線図から実際の車速Vおよびスロットル弁開度TAに基づいて所定のギヤ段へのシフト判定或いはロックアップオンオフ判定が行われる。
【0034】
たとえば、図4の通常の変速線図において実際の車速Vおよびスロットル弁開度TAを示す点がアップシフト線或いはダウンシフト線と交差するとアップシフト判定或いはダウンシフト判定が行われる。そして、そのシフト判定が行われたギヤ段を成立させるように、図1に示す第1電磁弁46および第2電磁弁48が駆動され、或いはロックアップクラッチ32の係合制御のために第3電磁弁50およびリニアソレノイド弁54が駆動される。
【0035】
なお、図3、図4、図5において、実線はシフトアップ線を示し、破線はシフトダウン線を示し、1点鎖線はロックアップクラッチの係合線を示し、2点鎖線はロックアップクラッチの開放線を示している。図3の加速指向の変速線図では、図4と比較して、高車速(高エンジン回転速度)で変速が実行されるように変速線が設定されている。また、図5の燃費指向の変速線図では、図4と比較して、低エンジン回転速度で変速が実行されるように変速線が設定されている。
【0036】
図6は、上記電子制御装置42の制御機能を説明する機能ブロック線図である。図6において、(電子)スロットル制御手段88は、図16に示す関係から実際のアクセルペダル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ86を駆動することによりスロットル弁開度TAを制御する。変速制御手段90は、ROM64に予め記憶された複数種類の変速線図から駆動力選択手段92により選択された変速線図から、車速センサ76により検出された実際の車速Vおよびスロットルセンサ70により検出された実際のスロットル弁開度TAに基づいて所定のギヤ段への変速判断を実行し、その変速判断により判断されたギヤ段を達成するための電磁弁46、48、50に対して変速出力を行って自動変速機14のギヤ段を切換制御する。
【0037】
駆動力選択手段92は、ROM64に予め記憶された図3、図4、図5に示す複数種類の変速線図から、運転指向推定部94により推定された運転指向を示す値DL或いはFDLに基づいて変速線図を選択する。たとえば、駆動力選択手段92では、運転指向推定部94から出力された運転指向を示す値DL或いはFDLが予め設定された加速指向判断基準値PSLを越えた場合には、図3の加速指向の変速線図が選択されるが、燃費指向判断基準値ESLを下回った場合には、図5の燃費指向の変速線図が選択され、加速指向判断基準値PSLと燃費指向判断基準値ESLとの間にある場合には、それら加速指向の変速線図および燃費指向の変速線図の中間的な特性を備えた図4の中間指向の変速線図が選択されるのである。
【0038】
走行時要注意度推定部118は、車両前方道路状況(視界、見通し、車線、工事、渋滞等)、道路種類(駐車場、構内路、細街路等)、道路場面(スクールゾーン、商店街、駐車場等)、前走・対向・後方の周辺車両状況、車両状態(タイヤ、燃料、チェーン装着)、路面状況、風の状態、同乗者状況、走行経験、運転歴、気分・体調等に基づいて、走行に伴う要注意度を推定する。その推定に際しては公知の手法が適宜採用されることができる。
【0039】
上記運転指向推定部94は、複数種類の運転操作関連変数のいずれかの算出毎にその運転操作関連変数が入力されて推定演算が起動されるニューラルネットワークNNを備え、そのニューラルネットワークNNの出力に基づいて車両の運転指向を推定し、その運転指向を示す値DL或いはFDLを出力する。この運転指向を示す値DL或いはFDLは、たとえば「0」から「1」までの連続値である。
【0040】
たとえば図7に示すように、上記運転指向推定部94は、信号読込手段96と、運転操作関連変数算出手段すなわち前処理手段98と、運転指向推定手段100と、標準運転指向推定手段102と、入力フィルタ手段110とを備え、ニューラルネットワークNNの出力信号NNOUT に基づく運転指向を示す値DLを前記駆動力選択手段92へ供給するとともに、車両に搭載され且つ運転指向に関連して制御を変更することが必要な他の制御装置へ供給する。
【0041】
信号読込手段96は、前記各センサ70、72、74、76、84などからの検出信号を比較的短い所定の周期で読み込む。前処理手段98は、信号読込手段96により逐次読み込まれた信号から、運転指向を反映する運転操作に密接に関連する複数種類の運転操作関連変数、すなわち車両発進時の出力操作量(アクセルペダル操作量)すなわち車両発進時のスロットル弁開度TAST、加速操作時の出力操作量の最大変化率すなわちスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONST、所定区間内において各センサから入力された信号の区間最大値、運転開始以後における最大車速Vmax などをそれぞれ算出する。
【0042】
運転指向推定手段100は、前処理手段98により運転操作関連変数が算出される毎にその運転操作関連変数が許可されて運転指向推定演算を行うニューラルネットワークNNを備え、そのニューラルネットワークNNの出力である運転指向推定値を出力する。運転指向推定手段100には、車両発進時のスロットル弁開度TAST、加速操作時におけるスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST、車速一定走行時間TVCONSTなどの第1運転操作関連変数と、各センサからの入力信号のうちの所定区間内の最大値、運転開始以後における最大車速Vmax など周期的に発生させられる第2運転操作関連変数が前処理手段98から供給されており、運転指向推定手段100は、その第1運転操作関連変数の供給毎に或いは所定周期毎にそれら第1運転操作関連変数および第2運転操作関連変数に基づいて車両の運転指向DLを逐次推定する。
【0043】
標準運転指向推定手段102は、運転指向推定手段100により推定された過去の運転指向に基づいて、車両の標準的運転指向SDLを推定する。
【0044】
入力フィルタ手段110は、標準運転指向推定手段102により推定された標準的運転指向SDLの関数であるフィルタ定数KDL2 に基づいて、運転指向推定手段100に入力される第2運転操作関連変数にフィルタ処理を施す。
【0045】
上記他の制御装置としては、たとえば上記運転指向推定部94により推定された運転指向に基づいて車両のパワーステアリングの操舵力が制御される操舵力制御装置、上記運転指向推定部94により推定された運転指向DLに基づいて車両懸架装置のショックアブソーバの減衰力或いはばね特性が制御されるサスペンション制御装置である。上記運転指向推定手段100では、車両発進時のスロットル弁開度TAST、加速操作時のスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONSTが入力される毎に演算されるニューラルネットワークの出力に基づいて、車両の運転指向が推定されることから、より正確に運転指向を推定でき、複数回の推定を要することなく、運転者の操作に対する運転指向結果の応答性が十分に得られる。
【0046】
上記図7の前処理手段98には、車両発進時の出力操作量すなわち車両発進時のスロットル弁開度TASTを算出する発進時出力操作量算出手段98a、加速操作時における出力操作量の最大変化率すなわちスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX を算出する加速操作時出力操作量最大変化率算出手段98b、車両の制動操作時の最大減速度GNMAXを算出する制動時最大減速度算出手段98c、車両の惰行走行時間TCOAST を算出する惰行走行時間算出手段98d、車速一定走行時間TVCONSTを算出する車速一定走行時間算出手段98e、たとえば3秒程度の所定区間内における各センサからの入力信号(スロットル弁開度TA、車速V、エンジン回転速度NE 、前後加速度NOGBW )のうちの最大値を周期的に算出する入力信号区間最大値算出手段98f、運転開始以後における最大車速Vmax をたとえば3秒程度の所定区間内において周期的に算出する最大車速算出手段98gなどがそれぞれ備えられている。
【0047】
上記入力信号区間最大値算出手段98fにおいて算出される所定区間内の入力信号のうちの最大値としては、スロットル弁開度TAmaxt、車速Vmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW maxt (減速のときは負の値)或いは減速度GNMAXt (絶対値)が用いられる。前後加速度NOGBW maxt 或いは減速度GNMAXt は、たとえば車速V(NOUT )の変化率から求められる。
【0048】
図7の運転指向推定手段100には、上記車両発進時のスロットル弁開度TAST、加速操作時におけるスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONSTなどの運転操作に関連して発生させられる第1運転操作関連変数と、上記各センサからの入力信号のうちの最大値、運転開始以後における最大車速Vmax など周期的に発生させられる第2運転操作関連変数とが入力される。運転指向推定手段100は、ニューラルネットワークNNを利用して、それら第1運転操作関連変数および第2運転操作関連信号の入力毎にそれらに基づいて、たとえば少なくとも3秒毎に運転指向の度合を示す値すなわち運転指向DLを逐次出力する。
【0049】
運転指向推定手段100に備えられたニューラルネットワークNNは、コンピュータプログラムによるソフトウエアにより、或いは電子的素子の結合から成るハードウエアにより生体の神経細胞群をモデル化して構成され得るものであり、たとえば図7の運転指向推定手段100のブロック内に例示されるように構成される。
【0050】
図7において、ニューラルネットワークNNは、r個の神経細胞要素(ニューロン)Xi (X1 〜Xr )から構成された入力層と、s個の神経細胞要素Yj (Y1 〜Ys )から構成された中間層と、t個の神経細胞要素Zk (Z1 〜Zt )から構成された出力層とから構成された3層構造の階層型である。そして、上記入力層から出力層へ向かって神経細胞要素の状態を伝達するために、結合係数(重み)WXij を有して上記r個の神経細胞要素Xi とs個の神経細胞要素Yj とをそれぞれ結合する伝達要素DXij と、結合係数(重み)WYjk を有してs個の神経細胞要素Yj とt個の神経細胞要素Zk とをそれぞれ結合する伝達要素DYjk が設けられている。
【0051】
上記ニューラルネットワークNNは、その結合係数(重み)WXij 、結合係数(重み)WYjk を所謂誤差逆伝搬学習アルゴリズムによって学習させられたパターン連想型のシステムである。その学習は、前記運転操作関連変数の値と運転指向とを対応させる走行実験によって予め完了させられているので、車両組み立て時では、上記結合係数(重み)WXij 、結合係数(重み)WYjk は固定値が与えられている。
【0052】
上記の学習に際しては、複数の運転者についてそれぞれ燃費指向、加速指向、それらの中間的な中間(ノーマル)指向の運転がたとえば高速道路、郊外道路、山岳道路、市街道路などの種々の道路において実施され、そのときの運転指向を教師信号とし、教師信号とセンサ信号を前処理したn個の指標(入力信号)とがニューラルネットワークNNに入力させられる。なお、上記教師信号は運転指向を0から1までの値に数値化し、たとえば燃費指向を0、中間指向を0.5、加速指向を1とする。また、上記入力信号は−1から+1までの間あるいは0から1までの間の値に正規化して用いられる。
【0053】
標準運転指向推定手段102では、運転指向推定手段100により逐次推定された運転指向を示す値DLのうちの過去の運転指向に基づいて、前記車両の標準的運転指向の度合を示す値すなわち標準運転指向SDLが推定される。すなわち、前記運転指向推定手段100により逐次推定された運転指向を表す値DLn に、なまし処理、或いは所定の移動区間における重み付け平均値処理が施されることにより、運転開始からの運転者の平均的な運転指向或いは標準的な運転指向を示す成分を有する標準運転指向SDLが推定される。
【0054】
数式1は、上記なまし処理の一例を示している。数式1において、nはサンプリング番号を示す整数であり、KDL1 はなまし処理の特性を示すなましフィルタ定数であって、たとえば「10」程度に設定されている。このフィルタ定数が大きくなるほど、標準運転指向SDL内の過去の成分が多くなる。
【0055】
【数1】

【0056】
上記入力フィルタ手段110は、数式2から上記標準運転指向SDLに基づいてフィルタ定数KDL2 を算出し、そのフィルタ定数KDL2 を備えた数式3のフィルタ処理式を用いて、運転指向推定手段100から出力された運転指向DLの減少傾向にある期間すなわち燃費指向側へ変化している期間において、第2運転操作関連変数に対してフィルタ処理を施す。
【0057】
すなわち、入力フィルタ手段110は、標準運転指向推定手段102により推定された標準運転指向SDLの関数であるフィルタ定数KDL2 すなわちフィルタ特性に基づいて、運転指向DLに遅れ処理或いはなまし処理のフィルタ処理を施す。数式2においてCKDL2 は基準フィルタ定数であり、KSDLO2 はたとえば「6」程度の定数である。また、数式3においてnはサンプリング番号を示す整数であり、OPn 、OPn+1 はフィルタ処理前の第2運転操作関連変数を示す値であり、FOPn+1 はフィルタ処理後の第2運転操作関連変数を示す値である。
【0058】
【数2】

【0059】
【数3】

【0060】
図8は、本実施形態の電子制御装置42の制御作動の要部、すなわち運転指向推定作動を説明するフローチャートである。図8のステップ(以下、ステップを省略する)SM1では、初期処理が実行されることにより、RAM62内に設けられた種々の記憶領域或いはレジスタ、計数或いは計時などのためのカウンタやタイマ等がクリアされるとともに、推定許可フラグXNNCAL の内容が「0」にクリアされ且つ停車フラグXSTOPの内容が「1」にセットされる。次いで、前記信号読込手段96に対応するSM2では、各センサからの入力信号が読み込まれる。
【0061】
次に、前記前処理手段(運転操作関連変数算出手段)98に対応するSM3では、各運転操作に関連するイベントの発生時期とイベントの量、すなわち運転操作関連変数が算出される。すなわち、車両発進時のスロットル弁開度TAST、運転開始以後におけるスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONST、所定区間内における各センサからの入力信号のうちの区間最大値たとえばスロットル開度TAmaxt、車速Vmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW(GNMAXt ) などの複数種類の運転操作関連変数が、各センサからの入力信号に基づいて算出される。なお、シフトレバー78によりP、Rレンジが選択されている時には運転指向の推定は実行されない。
【0062】
次いで、SM4において、推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされているか否かが判断される。推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされていない場合には、このSM4の判断が否定されて上記SM2以下が繰り返し実行されるが、推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされている場合には、SM4の判断が肯定されて、上記入力フィルタ手段110に対応するSM5に進む。
【0063】
SM5では、数式2から実際の標準運転指向SDLに基づいてフィルタ定数KDL2 が決定され、運転指向推定手段100から出力された運転指向DLの減少傾向にある期間すなわち燃費指向側へ変化している期間、及び、運転指向推定手段100から出力された運転指向DLの増加傾向にある期間すなわちスポーツ走行指向側へ変化している期間において、運転指向推定手段100に入力される入力信号のうち、各センサからの入力信号のうちの所定区間内の最大値、運転開始以後における最大車速Vmax など周期的に発生させられる第2運転操作関連変数に対して、数式3に示すフィルタ処理が実行される。
【0064】
次いで、前記運転指向推定手段100に対応するSM6において、運転指向の推定演算が実行される。上記推定許可フラグXNNCALは、前記運転操作関連変数の算出毎に、または惰行走行時間TCOAST の計測中、車速一定走行時間TVCONSTの計測中、或いは制動時の最大減速度GNMAXの計測中の場合は3秒程度の所定時間毎にその内容が「1」にセットされるものであり、SM4はその推定許可フラグXNNCAL のセット毎に上記SM6の運転指向推定演算を許可するのである。
【0065】
上記SM6では、前記運転指向推定手段100において説明したように、車両発進時のスロットル弁開度TAST、運転開始以後におけるスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONST、所定区間内における各センサからの入力信号のうちの区間最大値すなわちスロットル開度TAmaxt、車速Vmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW maxt( GNMAXt ) などの複数種類の運転操作関連変数が入力されるニューラルネットワークNNが用いられ、そのニューラルネットワークNNの出力信号に基づいて、運転指向を示す値DLが出力される。この運転指向を示す値DLは、その値が大きくなるに従って、燃費指向、中間指向、加速指向を順次意味する。
【0066】
次いで、前記標準運転指向算出手段102に対応するSM7では、上記SM6において逐次推定された運転指向を表す値DLn に、数式1に示すなまし処理が施されることにより、運転開始からの運転者の平均的な運転指向或いは標準的な運転指向を示す成分を有する標準運転指向SDLが推定される。次いで、SM8において推定許可フラグXNNCAL の内容が「0」にクリアされ、その後、前記SM2以下が繰り返し実行される。
【0067】
運転指向推定手段100(SM5)では、車両の運転操作に関連して発生させられる第1運転操作関連変数と所定期間毎に周期的に発生させられる第2運転操作関連変数とに基づいて、車両の運転指向DLが逐次推定されるとともに、標準運転指向推定手段102(SM7)では、その運転指向推定手段100により推定された過去の運転指向DLに基づいて、所定の運転者の平均的な運転指向或いは標準的な運転指向を示す車両の標準運転指向SDLが推定される。そして、入力フィルタ手段110(SM5)により、その標準運転指向推定手段102により推定された標準的運転指向SDLの関数であるフィルタ定数KDL2 に基づいて、運転指向推定手段100に入力される第2運転操作関連変数にフィルタ処理が施される。これにより、運転指向推定手段100により推定された運転指向DLが、車両の標準運転指向SDLを反映したフィルタ定数KDL2を備えた入力フィルタ手段110によりフィルタ処理された第2運転操作関連変数に基づいて推定されるので、運転者の運転意志を高精度に反映した運転指向を得ることができる。
【0068】
また、入力フィルタ手段110(SM5)は、運転指向推定手段100により逐次推定される運転指向を示す値DLが燃費指向側へ変化している期間、及びスポーツ走行指向(加速指向)側へ変化している期間に、前記運転指向推定手段100に入力される第2運転操作関連変数にフィルタ処理を施すものである。この場合、走行時要注意度推定部118によって推定された走行に要する注意度に応じて、次に述べるように、フィルタ定数が可変に設定されることにより、運転試行の推定指向に基づいて車両制御が行われる場合に、走行に伴う要注意度と乖離した車両制御が行われることを抑制することができる。
【0069】
即ち、運転指向DLがスポーツ走行指向側へ変化するときには、たとえばアクセルペダルが急に踏み込まれて駆動力が要求されている場合であって、走行に伴う要注意度が高いと推定された場合には、第2運転操作関連変数にフィルタ処理を行うことにより、運転指向を示す値DLがスポーツ走行指向側へ変化させられる際の応答性が低くされる。これにより、本実施形態のフィルタ処理を行わない場合に比べて、運転者指向推定値が低下するため、スポーツ走行指向側の車両制御量が抑制され、より安全側に制御される。
【0070】
反対に、運転指向DLが燃費指向側へ変化するときには、たとえばアクセルペダルが急に戻された場合には、原則として、運転状況や道路環境によりやむをえず誤推定している可能性があるため、フィルタ処理によって運転指向の推定の応答性が低くされる。但し、走行に伴う要注意度が高いと推定された場合には、第2運転操作関連変数にフィルタ処理を行うことにより、運転指向を示す値DLが燃費指向側へ変化させられる際の応答性が高くされる。これにより、本実施形態のフィルタ処理を行わない場合に比べて、運転者指向推定値の低下量が増大するため、燃費指向側の車両制御量が増大され、より安全側に制御される。
【0071】
なお、入力フィルタ手段110(SM5)は、原則として、標準運転指向SDLが加速指向である場合は、燃費指向である場合に比較して前記フィルタ定数KDL2を大きくしてフィルタリング効果を高めるものであることから、運転指向DLが燃費指向側へ変化したとしてもそれ以前の運転指向の成分の高い標準運転指向SDLが加速指向側の値である場合は前記フィルタ定数KDL2が大きくされてフィルタ処理によって第2運転操作関連変数の応答性すなわち運転指向の推定の応答性が低くされることにより、運転指向の誤推定が緩和される。また、反対に、運転指向DLが加速指向側へ変化したとしてもそれ以前の運転指向の成分の高い標準運転指向SDLが燃費指向側の値である場合はフィルタ定数KDL2が小さくされてフィルタ処理によって第2運転操作関連変数の応答性すなわち運転指向の推定の応答性が高くされることにより、実際の運転者の意志に近い運転指向の推定が可能となる。
【0072】
また、運転指向推定手段100により、入力フィルタ手段110によりフィルタ処理された第2運転操作関連変数に基づいて推定された運転指向DLにより車両の実際の駆動力を選択する駆動力選択手段92がさらに含まれることから、その駆動力選択手段92により、フィルタ処理された第2運転操作関連変数に基づいて推定された運転指向DLにより、変速判断の基礎となる変速線図が選択されて車両の駆動力が切り換えられるので、運転者の運転指向に適合した充分な加速性或いは燃費が得られる。
【0073】
図10及び図11を参照して、入力フィルタ処理SM5について説明する。入力フィルタ処理SM5は、フィルタ処理によりニューラルネットワークNNに入力される入力変数を算出する。図10は、入力フィルタ処理SM5のサブルーチンを示している。
【0074】
S001では、車両のナビゲーションシステム装置、車両に搭載されたカメラ、レーダー装置、各種センサ、記憶装置、又は外部からの通信情報等から、車両前方道路状況(視界、見通し、車線、工事、渋滞等)、道路種類(駐車場、構内路、細街路等)、道路場面(スクールゾーン、商店街、駐車場等)、前走・対向・後方の周辺車両状況、車両状態(タイヤ、燃料、チェーン装着)、路面状況、風速、風向等の風の状態、同乗者状況、走行経験、運転歴、気分・覚醒度・体調等の運転者の状態等の情報が取得される。
【0075】
次に、S002では、上記001にて取得された情報に基づいて、走行時要注意度推定部118により、走行に伴う要注意度が推定される。次に、S003では、前処理ルーチンの後、運転操作関連変数を含む運転者の操作量または車両の状態量の読み込みが行われる。
【0076】
次いで、S004では、上記S003にて読み込まれた運転者の操作量または車両の状態量が下降方向であるか否かが判定される。ここで、運転者の操作量または車両の状態量が下降方向である場合とは、運転指向推定値が燃費指向側へ変化していく場合に対応し、運転者の操作量または車両の状態量が上昇方向である場合とは、運転指向推定値がスポーツ走行指向側へ変化していく場合に対応する。S004の判定の結果、肯定的に判定された場合には、S005に進み、そうでない場合にはS006に進む。
【0077】
S005では、上記S002にて推定された走行に伴う要注意度が予め設定された第1所定値よりも高いか否かが判定される。その判定の結果、走行に伴う要注意度が上記第1所定値よりも高くないと判定された場合には、S008にて、フィルタ定数KDL2が、予め設定された基準値(固定値)に設定され、走行に伴う要注意度が上記第1所定値よりも高いと判定された場合には、S007にて、フィルタ定数KDL2が、上記基準値よりも小さな値に設定される(図11)。ここで、上記基準値は、例えば、上記数式2により求められたフィルタ定数KDL2、又は、上記特開平10−77893号公報(特許文献1)の技術にて運転指向がスポーツ走行指向側から燃費指向側に変化した場合に用いられるフィルタ定数KDL2と同じ値であることができる。
【0078】
S006では、上記S002にて推定された走行に伴う要注意度が予め設定された第2所定値よりも高いか否かが判定される。ここで、第2所定値は、上記第1所定値よりも異なる値であることができ、目的に応じて適宜設定することができる。その判定の結果、走行に伴う要注意度が上記第2所定値よりも高くないと判定された場合には、S010にて、フィルタ定数KDL2が、ゼロに設定され、走行に伴う要注意度が上記第2所定値よりも高いと判定された場合には、S009にて、フィルタ定数KDL2が、ゼロよりも大きな値に設定される(図11)。
【0079】
S007、S008、S009、又はS010において、フィルタ定数KDL2が求められると、次いで、S011において、上記数式3を用いて、フィルタ処理後の第2運転操作関連変数FOPn+1が求められる。
【0080】
図12及び図13は、入力フィルタ処理SM5の動作を示すタイムチャートである。
図12は、運転者の操作量又は車両の状態量が上昇した場合の動作を示し、図13は、運転者の操作量又は車両の状態量が下降した場合の動作を示している。
【0081】
図12は、運転者の操作量又は車両の状態量が上昇している場合であって、走行時の要注意度が高い状況(要注意度判定401の成立)に移行した場合を示している(図10のS009)。ここで、運転者の操作量又は車両の状態量が上昇している状態は、図12において、スロットル関連変数などの入力変数であるOP(上記フィルタ処理前の第2運転操作関連変数を示す値)405(上記数式3参照)の上昇として示されている。なお、図12では、OP405は、実質的にアクセル開度に対応している。
【0082】
ここで、上記特開平10−77893号公報(特許文献1)の技術では、運転指向推定手段により逐次推定される運転指向を示す値が加速指向側へ変化するときには、加速指向側への制御の応答性を高くするために、入力フィルタ手段が、前記運転指向推定手段に入力される第2運転操作関連変数にフィルタ処理を施していなかった(フィルタ定数KDL2がゼロ)。すなはち、上記特許文献1の技術では、運転指向を示す値が加速指向側へ変化するときには、フィルタ処理後の入力変数FOP406は、フィルタ処理前の第2運転操作関連変数OP405と同じ値であった(上記数式3において、フィルタ定数KDL2がゼロ)。
【0083】
これに対して、本実施形態では、フィルタ定数KDL2403が、ゼロよりも大きな値に設定される(図10のS009、図11)。そのため、上記特許文献1の技術(フィルタ定数KDL2をゼロに設定する技術)における入力変数FOP(n+1)406に比べて、本実施形態の入力変数FOP(n+1)407は、前回(n)の制御サイクルの入力変数FOP(n)407の影響をより大きく受け(上記数式3参照)、OP405に対する入力変数FOP407の上昇方向への応答性が低くなるように構成されている。
【0084】
これにより、入力変数FOP407に基づいて算出される運転指向推定値DL409の上昇方向への応答性を低くすることができる。このことから、運転者の操作量又は車両の状態量が上昇している場合であって、走行時の要注意度が高い場合には、上記特許文献1の技術における運転指向推定値DL408に比べて、本実施形態の運転指向推定値DL409は、その上昇方向の応答性が抑制される。このように、本実施形態によれば、走行時の要注意度が高い場合には、運転指向推定値DL409の上昇方向の応答性が抑制されるため、運転指向推定値DL409に基づいて行われる車両制御の制御量411は、従来の技術における運転指向推定値DL408に基づいて行われる車両制御の制御量410に比べて、安全側に抑制される。よって、走行時の要注意度と乖離した車両制御が行われることを改善することが可能となる。
【0085】
図13は、運転者の操作量又は車両の状態量が下降した場合であって、走行時の要注意度が高い状況(要注意度判定401の成立)に移行した場合を示している(図10のS007)。ここで、運転者の操作量又は車両の状態量が下降した状態は、図13において、スロットル関連変数などの入力変数であるOP(上記フィルタ処理前の第2運転操作関連変数を示す値)505(上記数式3参照)の下降として示されている。なお、図13では、OP505は、実質的にアクセル開度に対応している。
【0086】
ここで、上記特許文献1の技術では、運転指向推定手段により逐次推定される運転指向を示す値が燃費指向側へ変化するときには、フィルタ処理後の入力変数FOP506は、フィルタ処理前の第2運転操作関連変数OP505に対して、その応答性が低くなるように設定されていた(上記数式3において、フィルタ定数KDL2が基準値)。そのため、入力変数FOP506に基づいて算出される運転指向推定値DL508の低下方向への応答性も低くなっていた。このように、上記特許文献1の技術では、運転指向を示す値が燃費指向側へ変化するときには、フィルタ処理によって、運転指向の推定の応答性が低くなるように設定されていたため、走行時の要注意度が高い場合には、走行時の要注意度と乖離した車両制御(制御量510)が行われることがあった。
【0087】
これに対して、本実施形態では、フィルタ定数KDL2403が、基準値よりも小さな値に設定される(図10のS007、図11)。そのため、上記特許文献1の技術(フィルタ定数KDL2を基準値に設定する技術)における入力変数FOP(n+1)506に比べて、本実施形態の入力変数FOP(n+1)507は、前回(n)の制御サイクルの入力変数FOP(n)507の影響をより小さく受け(上記数式3参照)、OP505に対する入力変数FOP507の下降方向への応答性が高くなるように構成されている。
【0088】
これにより、入力変数FOP507に基づいて算出される運転指向推定値DL509の下降方向への応答性を低くすることができる。このことから、運転者の操作量又は車両の状態量が下降した場合であって、走行時の要注意度が高い場合には、上記特許文献1の技術における運転指向推定値DL508に比べて、本実施形態の運転指向推定値DL509は、その下降方向の応答性が向上する。このように、本実施形態によれば、走行時の要注意度が高い場合には、運転指向推定値DL509の下降方向の応答性が向上するため、運転指向推定値DL509に基づいて行われる車両制御の制御量511は、従来の技術における運転指向推定値DL508に基づいて行われる車両制御の制御量510に比べて、より安全側の値に設定される。よって、走行時の要注意度と乖離した車両制御が行われることを改善することが可能となる。
【0089】
図9は、前記駆動力選択手段92に対応する変速線図切換ルーチンを示している。図9において、SH1では、運転指向推定手段100から出力された運転指向DLが予め設定された加速指向判断基準値PSL以上であるか否かが判断される。このSH1の判断が肯定された場合は、SH2においてたとえば図3に示す加速指向の変速線図が選択されるが、否定された場合は、SH3において、運転指向推定手段100から出力された運転指向DLが予め設定された燃費指向判断基準値ESL以上であるか否かが判断される。このSH3の判断が肯定された場合は、SH4において、たとえば図4の中間指向の変速線図が選択されるが、否定された場合は、SH5においてたとえば図5の燃費指向の変速線図が選択される。これにより、上記変速線図が加速指向のものとなるほど走行中の車両の駆動力が高められるので、本変速線図切換ルーチンにより車両の駆動力が選択される。
【0090】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0091】
図12に示すように、従来、運転者の操作量及び車両の状態量が上昇した場合、入力変数(FOP)406は、フィルタ処理が施されていないため、応答性良く上昇し、更に、運転指向推定値408も応答性良く上昇する。その結果、走行環境等に伴う要注意度に関係なく、車両への制御量410もスポーツ走行指向側(要注意側)に応答性良く推移し、要注意度が高い環境でもスポーツ走行指向側(要注意側)の制御量410が反映されてしまう場合がある。
【0092】
これに対して、本実施形態では、車両周辺状況、車両状態、路面状況、ドライバー状態等から走行環境等に伴う要注意度が高いと判断され(S006肯定)、入力変数(OP)が上昇方向にある場合(S004否定)、フィルタ処理を施し(S009)、入力変数(FOP)407及び運転指向推定値409の上昇、また、車両への制御量411がスポーツ走行指向側(要注意側)へ推移する応答性を抑制することで、走行における要注意度と乖離した車両制御を抑制する。
【0093】
図10の例では、フィルタ処理におけるフィルタ定数KDL2403は、要注意度に閾値を持たせ(S006)、閾値以下である場合(S006否定)は0(実質的にフィルタ処理なし、S010)、閾値よりも大きい場合(S006肯定)にはゼロよりも大きな所定値としている(S009)。これに代えて、フィルタ処理におけるフィルタ定数は、要注意度に応じて線形または非線形に設定することができる。
【0094】
図13に示すように、従来、運転者の操作量及び車両の状態量が低下した場合、入力変数(FOP)506は、誤推定抑制のためにフィルタ処理が施され、低い応答性で低下し、更に、運転指向推定値508も低い応答性で低下する。その結果、走行環境等に伴う要注意度に関係なく、車両への制御量510も燃費指向側(安全側)に低い応答性で推移し、要注意度が高い環境でもスポーツ走行指向側(要注意側)の制御量510が反映されてしまう場合がある。
【0095】
これに対して、本実施形態では、車両周辺状況、車両状態、路面状況、ドライバー状態等から走行環境等に伴う要注意度が高いと判断され(S005肯定)、入力変数(OP)が下降方向にある場合(S004肯定)、フィルタ定数を小さくし(S007)、入力変数(FOP)507及び運転指向推定値509の下降、また、車両への制御量511が燃費指向側(安全側)へ推移する応答性を促進させることで、走行における要注意度と乖離した車両制御を抑制する。
【0096】
図10の例では、フィルタ処理におけるフィルタ定数KDL2403は、要注意度に閾値を持たせ(S005)、閾値以下である場合(S005否定)は基準値(S008)、閾値よりも大きい場合(S005肯定)には基準値よりも小さな所定値としている(S007)。これに代えて、フィルタ処理におけるフィルタ定数は、要注意度に応じて線形または非線形に設定することができる。
【0097】
(第2実施形態)
次に、図14及び図15を参照して、第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、上記実施形態と異なる点について説明する。
【0098】
上記第1実施形態では、入力フィルタ手段110(図7)による入力フィルタ処理(SM5、図8)のサブルーチンとして、車両周辺状況、車両状態、路面状況、ドライバー状態等から走行環境等に伴う要注意度に応じて、フィルタ定数を変える動作(図10、図11)が行なわれた。これに対して、第2実施形態では、以下に述べる出力フィルタ手段104(図14)による出力フィルタ処理(図15)において、走行環境等に伴う要注意度に応じて、フィルタ定数を変える動作(図10、図11)が行なわれる。
【0099】
図14に示すように、第2実施形態は、標準運転指向推定手段102により推定された標準的運転指向の関数であるフィルタ定数KDL3 に基づいて、運転指向推定手段100により推定された運転指向DLにフィルタ処理を施す出力フィルタ手段104を備えている。出力フィルタ手段104は、ニューラルネットワークNNの出力信号NNOUT に基づく運転指向を示す値DL或いはFDLを前記駆動力選択手段92へ供給するとともに、車両に搭載され且つ運転指向に関連して制御を変更することが必要な他の制御装置へ供給する。
【0100】
出力フィルタ手段104は、数式4から上記標準運転指向SDLに基づいてフィルタ定数KDL3 を算出し、そのフィルタ定数KDL3 を備えた数式5のフィルタ処理式を用いて、運転指向推定手段100から出力された運転指向DLのうちの減少傾向にある部分すなわち燃費指向側へ変化している部分に対してフィルタ処理を施す。すなわち、出力フィルタ手段104は、標準運転指向推定手段102により推定された標準運転指向SDLの関数であるフィルタ定数KDL3 すなわちフィルタ特性に基づいて、運転指向DLに遅れ処理或いはなまし処理のフィルタ処理を施す。数式4においてCKDLは基準フィルタ定数であり、KSDLOはたとえば「6」程度の定数である。また、数式5においてnはサンプリング番号を示す整数であり、FDLはフィルタ処理後の運転指向を示す値である。
【0101】
【数4】

【0102】
【数5】

【0103】
次に、図15を参照して、第2実施形態の動作を説明する。
【0104】
図15では、図8のSM5の入力フィルタ処理が除去されることに代えて、標準運転指向推定(SM7)と推定許可フラグクリア(SM8)の間に、出力フィルタ処理(SM9)が設けられている。
【0105】
前記出力フィルタ手段104に対応するSM9では、数式4から上記標準運転指向SDLに基づいてフィルタ定数KDL3 が算出され、そのフィルタ定数KDL3 を備えた数式5のフィルタ処理式を用いて上記SM6において算出された運転指向DLのうちの減少傾向にある部分に対してフィルタ処理が施されることにより、フィルタ処理後の運転指向FDLが出力される。
【0106】
そして、上記のようにフィルタ処理後の運転指向FDLが推定された後においては、SM8において推定許可フラグXNNCAL の内容が「0」にクリアされ、その後、前記SM2以下が繰り返し実行される。
【0107】
運転指向推定手段100(SM6)では、運転操作関連変数に基づいて車両の運転指向DLが逐次推定されるとともに、標準運転指向推定手段102(SM7)では、その運転指向推定手段100により推定された過去の運転指向に基づいて、所定の運転者の平均的な運転指向或いは標準的な運転指向を示す車両の標準運転指向SDLが推定される。そして、出力フィルタ手段104(SM9)により、その標準運転指向推定手段102により推定された標準的運転指向SDLの関数であるフィルタ定数KDL3 に基づいて、上記運転指向推定手段100により推定された運転指向DLに対してフィルタ処理が施される。これにより、運転指向推定手段100により推定された運転指向DLが、車両の標準運転指向SDLを反映したフィルタ定数KDL3を備えた出力フィルタ手段104によりフィルタ処理されるので、フィルタ処理後においては運転者の運転意志を高精度に反映した運転指向FDLを得ることができる。
【0108】
また、運転指向推定手段100により推定され且つ出力フィルタ手段104によりフィルタ処理された運転指向FDLに基づいて、車両の実際の駆動力を選択する駆動力選択手段92(図9のSH1乃至SH5)が設けられており、この駆動力選択手段92により、フィルタ処理された運転指向FDLに基づいて、変速判断の基礎となる変速線図が選択されることにより、車両の駆動力が切り換えられるので、運転者の意志に適合した十分な加速性或いは燃費が得られる。
【0109】
第2実施形態では、走行環境等に伴う要注意度に応じて、フィルタ定数KDL3を変える動作が行なわれる。図10では、第1実施形態のフィルタ定数KDL2が走行環境等に伴う要注意度に応じて、異なる値に設定されたが、第2実施形態では、フィルタ定数KDL2に代えて、フィルタ定数KDL3が走行環境等に伴う要注意度に応じて、異なる値に設定される。この場合、走行環境等に伴う要注意度とフィルタ定数KDL3との関係は、図11に示す関係である。これにより、要注意度と乖離した車両制御を抑制する。
【0110】
以上、本発明の一実施形態を示す図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0111】
たとえば、前述の実施形態の駆動力選択手段92は、運転指向DL或いはFDLに基づいて、予め記憶された複数種類の変速線図を切り換えるものであったが、たとえば図16に示す予め記憶された複数種類のアクセルペダル操作量Accとスロットル弁開度TAとの関係を切り換えるものであっても差し支えない。図16には、1点鎖線に示す加速指向用の関係、実線に示す中間指向用の関係、2点鎖線に示す燃費指向用の関係が記載されており、上記駆動力選択手段92は、スロットルアクチュエータ86を駆動制御するスロットル制御手段88において用いられる関係を切り換える。
【0112】
また、前述の標準運転指向推定手段102は、遅れ処理或いはなまし処理に類似した数式1を用いて推定されていたが、イグニションスイッチがオンされてからの期間内において運転指向推定手段100により推定された運転指向DLの平均値、所定区間内の運転指向DLの移動平均値、或いはそれらの重み付け平均値などであっても差し支えない。
【0113】
また、前述の信号読込手段96は、車輪速度、横加速度、操舵角度などの信号を読み込むものであっても差し支えない。
【0114】
また、上記第1及び第2実施形態は、相互に組み合わせて実施されることが可能である。
【0115】
また、前述の実施形態において、運転指向推定手段100のニューラルネットワークNNには、発進時のスロットル弁開度TAST、アクセル踏込時の最大スロットル弁開度変化率ACCMAX 、制動時最大減速度GNMAX、惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONSTが入力されていたが、それらのうちの何れか1つ或いはその何れか1つ以上が入力されていても一応の信頼性のある推定が可能である。
【0116】
また、前述の実施形態では、運転指向が、ニューラルネットワークNNの出力から加速指向、中間指向、燃費指向の3段階に推定されていたが、加速指向と燃費指向との2段階に推定されてもよい。さらに加速指向と燃費指向の間を連続的に推定されてもよい。このような場合には、加速指向と燃費指向との間の指向は、ニューラルネットワークNNの補完機能により推定される。
【0117】
また、前述の実施形態の運転指向推定手段100のニューラルネットワークNNは、入力層、中間層、出力層からなる3層構造であったが、4層以上の階層型であってもよいし、各神経細胞要素が相互に結合された相互結合型であっても差支えない。
【0118】
また、前述の実施形態では、スロットル弁開度TAおよび最大スロットル弁開度変化率ACCMAX が用いられていたが、ディーゼルエンジン搭載車のようにスロットル弁68が設けられていない車両などでは、それらスロットル弁開度TAおよび最大スロットル弁開度変化率ACCMAX に替えて、アクセルペダル操作量およびアクセルペダル踏込速度が用いられ得る。
【0119】
さらに、上記においては、運転指向を推定する手段として、ニューラルネットワークNNが用いられたが、ニューラルネットワークに限定されず、例えば、遺伝的アルゴリズムのような人工知能システム(最適化手法、ソフトコンピューティング)を用いた情報処理機構を用いることができる。このような情報処理機構を用いた場合であっても、運転者の操作量及び車両の状態量の少なくともいずれか一方に対応する変数にフィルタ処理を施す際のフィルタ定数を走行環境等に伴う要注意度に応じて変更することで、要注意度と乖離した車両制御を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の第1実施形態の運転指向推定機能を備えた車両用自動変速機の変速制御装置を説明する図である。
【図2】図1の自動変速機におけるギヤ段とそれを成立させるための電磁弁或いは摩擦係合装置の作動状態との組み合わせを示す図表である。
【図3】図1の変速制御装置において用いられる変速線図であって、運転が加速(スポーツ)指向であると推定されたときに選択される変速線図である。
【図4】図1の変速制御装置において用いられる変速線図であって、運転が中間(ノーマル)指向であると推定されたときに選択される変速線図である。
【図5】図1の変速制御装置において用いられる変速線図であって、運転が燃費(エコノミー)指向であると推定されたときに選択される変速線図である。
【図6】図1の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図7】図6の運転指向推定部の制御機能を詳しく説明する機能ブロック線図である。
【図8】図1の電子制御装置の制御作動の要部、すなわち運転指向推定作動を説明するフローチャートである。
【図9】図1の電子制御装置の制御作動の要部、すなわち駆動力選択作動を説明するフローチャートである。
【図10】図8の運転指向推定作動の他の動作を説明するフローチャートである。
【図11】図10の運転指向推定作動の動作において用いられるフィルタ定数を説明するための図である。
【図12】図10の運転指向推定作動の動作において入力変数が上昇している時におけるフィルタ定数の変更による効果を説明するためのタイムチャートである。
【図13】図10の運転指向推定作動の動作において入力変数が下降している時におけるフィルタ定数の変更による効果を説明するためのタイムチャートである。
【図14】本発明の第2実施形態の運転指向推定部の制御機能を詳しく説明する機能ブロック線図である。
【図15】本発明の第2実施形態の電子制御装置の制御作動の要部、すなわち運転指向推定作動を説明するフローチャートである。
【図16】本発明の第1、第2実施形態におけるスロットル制御手段において用いられる、アクセルペダル操作量Accとスロットル弁開度TAとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0121】
14 自動変速機
90 変速制御手段
92 駆動力選択手段
94 運転指向推定部
98 前処理手段
100 運転指向推定手段
102 標準運転指向推定手段
104 出力フィルタ手段
110 入力フィルタ手段
401 要注意度判定
403 フィルタ定数
405 入力変数OP
406 従来技術におけるフィルタ処理後の入力変数FOP
407 本実施形態におけるフィルタ処理後の入力変数FOP
408 従来技術における運転指向推定値
409 本実施形態における運転指向推定値
410 従来技術における車両制御量
411 本実施形態における車両制御量
501 要注意度判定
503 フィルタ定数
505 入力変数OP
506 従来技術におけるフィルタ処理後の入力変数FOP
507 本実施形態におけるフィルタ処理後の入力変数FOP
508 従来技術における運転指向推定値
509 本実施形態における運転指向推定値
510 従来技術における車両制御量
511 本実施形態における車両制御量
NN ニューラルネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工知能システムを用いて運転指向を推定し、前記推定された運転指向に基づいて車両の駆動力を補正する駆動力制御装置であって、
前記車両の走行に要する注意度を推定する手段と、
前記車両の走行に要する注意度に基づいて、前記駆動力の補正の応答性を変更する手段と
を備えたことを特徴とする駆動力制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動力制御装置において、
運転者の操作量及び前記車両の状態量の少なくともいずれか一つの入力変数の変化方向に基づいて、前記車両の走行に要する注意度に基づいて変更する前記駆動力の補正の応答性の変化方向が決定される
ことを特徴とする駆動力制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の駆動力制御装置において、
前記入力変数の変化方向が上昇方向である場合には、前記車両の走行に要する注意度に基づいて変更する前記駆動力の補正の応答性を低下させる
ことを特徴とする駆動力制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の駆動力制御装置において、
前記入力変数の変化方向が下降方向である場合には、前記車両の走行に要する注意度に基づいて変更する前記駆動力の補正の応答性を上昇させる
ことを特徴とする駆動力制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の駆動力制御装置において、
前記運転指向には、スポーツ走行指向、燃費指向の少なくともいずれか一つが含まれる
ことを特徴とする駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−230303(P2008−230303A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69211(P2007−69211)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】