説明

駆動源停止装置

【課題】より適切なアイドルストップを実現することができる駆動源停止装置を提供すること。
【解決手段】本発明による駆動源停止装置1は、車両Cが右折を目的として進入する交差点に対向して進入する対向車両OCの位置と車速とウィンカー信号を検出する検出手段13aと、検出された位置と車速とウィンカー信号に基づいて対向車両OCが車両Cの右折を阻害しない位置まで移動するまでの時間を、車両Cの右折待機時間TWとして算出する算出手段14aと、算出された右折待機時間TWが所定時間TC以上である場合に、車両Cの駆動源を停止する停止手段2aを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者が交差点において右折する適切な時期を、特には対向車両の有無や対向車両の挙動に基づいて模索して待機している状況において、適宜のタイミングと期間においてアイドルストップを実行することができる車両のエンジン等を制御対象とする駆動源停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、交差点における車両の一時的な停止に伴って、車両のエンジン等の駆動源を一時的に停止するアイドルストップを実行して、二酸化炭素等を含む排気ガスの排出量を低減し、車両の燃費性能を高めることが行われている。この場合において、例えば特許文献1に記載されているように、交差点に設置された信号機等のインフラから信号の切り替わり周期を含む信号情報に代表される交通情報を取得して、車両が交差点に一時的に停止する場合に、予め定められた一定時間以上停止することが発生する場合に、アイドルストップを自動的に実行することが提案されており、さらに、特許文献2に記載されているように右折手前における右折待機状態においてアイドルストップを自動的に実行することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−045818号公報
【特許文献2】特開2001−289087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1及び特許文献2に記載されているようなアイドルストップを自動的に実行する手法においては、対向車両の有無や対向車両の挙動を考慮して、アイドルストップがなされていないため、交差点の対向する車線を対向車両が走行していることに起因して右折待ちの時間つまり待機時間が変化する場合に、適切にアイドルストップを行うことができず、排気ガスの排出量の低減と燃費性能の向上を適切に実行することが依然として実現できていないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、より適切なアイドルストップを実現することができる駆動源停止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明による駆動源停止装置は、
車両が進入する交差点に進入する交差車両の位置と車速とウィンカー信号を検出する検出手段と、
前記検出された前記位置と前記車速と前記ウィンカー信号に基づいて前記交差車両が前記車両の進入を阻害しない位置まで移動するまでの時間を、前記車両の待機時間として算出する算出手段と、
前記算出された待機時間が所定時間以上である場合に、前記車両の駆動源を停止する停止手段を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明による前記駆動源停止装置によれば、前記交差車両の位置と車速、ウィンカー信号の挙動に基づいて、前記待機時間を算出して、前記待機時間に基づいて、前記駆動源を停止するか否かを判定した上で、前記駆動源の停止を実行することができるので、前記待機時間が比較的短い時間である場合に前記駆動源を停止してしまい、前記車両の交差点への進入のタイミングを逃して進入が遅れてしまうことを防止することができる。
【0008】
また、従来においては、前記交差車両の前記挙動に基づいて前記待機時間を算出することは行われていなかったため、前記交差車両が例えば複数存在して、前記待機時間が比較的長い時間となる場合において、前記待機時間を有効に活用して前記駆動源を停止することができず、排気ガスの排出量の低減や前記車両の燃費性能の向上を十分に図ることができなかったが、本発明による前記駆動源停止装置によれば、前記交差車両の挙動に基づいて前記待機時間を算出しているので、前記待機時間を正確に算出して前記待機時間を有効に活用した上で前記駆動源を停止することができる。なお、単に車両と記載した車両は自車両を指し、前記交差車両又は前記対向車両又は先行車両と区別している。
【0009】
なお、前記交差車両が前記車両に対向する対向車両であり、前記車両が前記交差点に右折を目的として進入する場合には、
上記の問題を解決するため、本発明による駆動源停止装置は、
車両が右折を目的として進入する交差点に対向して進入する対向車両の位置と車速とウィンカー信号を検出する検出手段と、
前記検出された前記位置と前記車速と前記ウィンカー信号に基づいて前記対向車両が前記車両の右折を阻害しない位置まで移動するまでの時間を、前記車両の右折待機時間として算出する算出手段と、
前記算出された右折待機時間が所定時間以上である場合に、前記車両の駆動源を停止する停止手段を含むことを特徴とすることができる。
【0010】
ここで、前記検出手段は、路側に設置されて前記車両が右折を目的として進入する交差点に対向して進入する前記対向車両を撮像して画像処理により前記対向車両の前記位置と前記車速と前記ウィンカー信号を検出する路側撮像手段であっても、前記車両側に設置されて車両が右折を目的として進入する交差点に対向して進入する対向車両を撮像して画像処理により前記対向車両の前記位置と前記車速と前記ウィンカー信号を検出する車両側撮像手段であってもよく、前記路側撮像手段と前記車両側撮像手段の双方を含むものであってもよい。
【0011】
前記路側撮像手段及び前記車両側撮像手段は、例えば、オブジェクトレコグニッションカメラセンサであって撮像した画像情報に基づいて二値化処理、濃淡処理、輝度差分処理、エッジ処理等の画像処理を行い、前記対向車両の前記位置と前記車速と前記ウィンカー信号を検出するものとすることができる。
【0012】
なお、前記対向車両が前記車両の右折を阻害しない位置まで移動する時間は、前記対向車両が直進する場合には前記交差点の前記右折車両が停止している位置の側方に到達するまでの時間であり、前記対向車両が左折する場合には左折を完了するまでの時間であり、前記対向車両が右折する場合には右の前記ウィンカー信号が発生されるまでの時間を指す。
【0013】
また、前記検出手段は、前記対向車両に搭載されたカーナビゲーションシステムであってもよく、この場合には、GPS(Global Positioning System)により前記対向車両の前記位置と前記車速を検出し、前記対向車両の例えばボディECUから前記ウィンカー信号を検出する。
【0014】
さらに、前記算出手段は、前記交差点近傍の路側に設置されていてもよいし、前記車両側に設置されていてもよい。
【0015】
前記算出手段が、前記路側に設置される場合で、前記停止手段が前記車両に設置されて、前記検出手段が前記路側に設置された路側撮像手段である場合には、前記駆動源停止装置は、前記算出手段の算出した右折待機時間を含む第一データフレームを前記車両側に送信する第一送信手段を前記路側に含み、当該第一データフレームを受信して前記停止手段に提供する第一受信手段を前記車両側に含む。
【0016】
前記算出手段が、前記路側に設置される場合で、前記停止手段が前記車両に設置されて、前記検出手段が前記対向車両に搭載されたカーナビゲーションシステムである場合には、前記駆動源停止装置は、前記路側に前記位置と前記車速と前記ウィンカー信号を含む第二データフレームを送信する第二送信手段を前記対向車両側に含み、前記対向車両側から当該第二データフレームを受信する第二受信手段を前記路側に含み、前記算出手段の算出した右折待機時間を含む第一データフレームを前記車両側に送信する第一送信手段を前記路側に含み、当該第一データフレームを受信して前記停止手段に提供する第一受信手段を前記車両側に含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より適切なアイドルストップを実現することができる駆動源停止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る駆動源停止装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る駆動源停止装置が適用される交差点の態様を示す模式図である。
【図3】本発明に係る駆動源停止装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る駆動源停止装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明に係る駆動源停止装置が適用される道路の態様を示す模式図である。
【図6】本発明に係る駆動源停止装置が適用される交差点の態様を示す模式図である。
【図7】本発明に係る駆動源停止装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明に係る駆動源停止装置の一実施形態を示すブロック図である。図2は、本発明に係る駆動源停止装置が適用される交差点の態様と路側の設備を示す模式図である。図3は、本発明に係る駆動源停止装置の制御内容を示すフローチャートである。図4は、本発明に係る駆動源停止装置の他の実施形態を示す模式図である。
【0021】
図1に示すように、駆動源停止装置1の車両C側に設置される部分は、アイドルストップECU2(Electronic Control Unit)と、エンジンECU3と、バッテリ充電状態監視ECU4と、ナビゲーションECU5と、インフラ通信ECU6と、車内外気温検出用温度センサ7と、ブレーキ負圧検出圧力センサ8と、加速度センサ9と、クラッチストロークセンサ10と、ブレーキストロークセンサ11と、シフト信号センサ12とを備えて構成される。
【0022】
アイドルストップECU2には、エンジンECU3と、バッテリ充電状態監視ECU4と、ナビゲーションECU5とは、CANにより相互に接続されている。ナビゲーションECU5には、ここでは図示しない、GPSアンテナ(Global Positioning System:全地球測位システム)と、ヨーレートセンサと、受信機と、データベースと、ディスプレイと、スピーカと、タッチパネルとが接続される。
【0023】
図2に示すように、駆動源停止装置1の路側に設置される部分は、カメラ13とコンピュータ14とを含んで構成される。カメラ13は、例えば画像処理を実行できるマイクロコンピュータを含むオブジェクトレコグニッションカメラセンサであって、図2に示すように、例えば交差点の対向車線の接続箇所の直上に設置されて、対向車線全般を撮像範囲として撮像して、撮像した画像情報に基づいて二値化処理、濃淡処理、輝度差分処理、エッジ処理等を行い、対向車両OCの有無と、対向車両OCの位置、車速を検出し、特には輝度差分処理により対向車両の左右何れかのウィンカーランプが点灯していることを検出して、ウィンカーランプの点灯の検出に基づいて、左右何れかのウィンカー信号の有無を検出する。つまりカメラ13は、検出手段13aを構成するものである。
【0024】
コンピュータ14は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバス及び入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う算出手段14aとして機能する。これとともに、コンピュータ14は、図示しない送信機と受信機を制御して例えばスペクトラム拡散方式等の狭域無線通信方式に基づく路車間通信を実現する第一送信手段14bとしても機能するものである。
【0025】
算出手段14aは、検出手段13aによりウィンカー信号が検出されない、つまり、対向車両OCが直進する場合には、対向車両OCの位置と、交差点の対向車両OCと反対側に位置する右折レーンの白線の設置位置との距離を、対向車両OCの車速により除して、対向車両OCが右折レーンの側方に到達するまでの時間を算出し、この時間を車両の右折待機時間TWとする。
【0026】
検出手段13aにより、対向車両OCの右のウィンカー信号が検出される、つまり、対向車両OCが右折する場合には、算出手段14aは、右のウィンカー信号が検出された時点で、対向車両OCが車両Cの右折を阻害しない位置まで移動したとみなして、右折待機時間TWをゼロとする。
【0027】
また、検出手段13aにより、対向車両の左のウィンカー信号が検出される、つまり、対向車両OCが左折する場合には、算出手段14aは、対向車両OCの位置と、交差点の対向車両が左折した後に進入する車線の入口の位置との距離を、対向車両OCの車速と左折時の予測経路曲率から推測される左折時の車速により除して、対向車両OCが左折を終了するまでの時間を算出し、この時間を車両Cの右折待機時間TWとする。
【0028】
第一送信手段14bは、算出手段14aの算出した右折待機時間TWと交差点の信号機の右折矢印信号の点滅灯を含む第一データフレームを、送信機を制御することに基づいて対象エリアに発信する。
【0029】
アイドルストップECU2は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバス及び入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う停止手段2a、始動手段2bとして機能するものである。
【0030】
エンジンECU3は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバス及び入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、図示しない駆動源を構成するエンジンのバルブ開閉タイミング、空燃比、燃料噴射量等を制御して主にエンジンの回転数を制御するとともに、図示しないイグニッションキーのオフ又はアイドルストップECU2の停止手段2aの停止指令に基づいてエンジンを停止し、イグニッションキーのオン又はアイドルストップECU2の始動手段2bの始動指令に基づいて、図示しないエンジンを始動するものである。
【0031】
バッテリ充電状態監視ECU4は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバス及び入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、図示しないバッテリに設置された電流計により検出した電流を積算することにより、バッテリの充電量を算出して、充電量が下限値を下回った場合に、図示しないオルタネータの界磁電流を制御して、エンジンのクランクシャフトの回転を駆動力とする発電量を制御して、バッテリの充電量を下限値以上とする制御を行うものである。
【0032】
ナビゲーションECU5は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバス及び入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う探索手段5a、表示手段5bとして機能するものである。
【0033】
GPSアンテナは、地球上空の複数の衛星の内三個の衛星からの電波を受信し、これらの電波をもとに、ナビゲーションECU5の探索手段5aは、例えば三角測量の原理で車両Cの現在の位置つまりは経度と緯度を測定する。ヨーレートセンサは車両Cのヨーレートを検出するものであり、タッチパネルは運転者が目的地等の探索条件を入力する入力装置であり、データベースはCD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体により構成され、表示用の地図情報と、探索用の地図情報を格納し記憶している。
【0034】
また、ディスプレイは入力された目的地をもとにナビゲーションECU5の探索手段5aが探索した経路を表示手段5bの指令に基づき表示用の地図情報とともに表示するものである。
【0035】
さらに、受信機は光あるいは電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information & Communication System:道路交通情報システム)からの交通情報すなわち渋滞情報、道路の幅員情報、災害、事故の発生情報を受信する。
【0036】
ナビゲーションECU5の探索手段5aは、CAN上から取得した車速と操舵角、ヨーレートセンサが検出したヨーレートに基づいて、車両Cの移動距離と方向を計算して車両Cの現在の位置を自律航法によっても測定して、三角測量の原理による車両Cの現在の位置の測定を補完して、トータルの車両Cの位置の測定の精度を高めている。
【0037】
そして、ナビゲーションECU5の表示手段5bは、データベース内の表示用の地図情報と、上述した方法により検出した車両Cの位置と、タッチパネルにより入力された目的地と、探索手段5aにより探索された経路とを併せてディスプレイに表示する。
【0038】
インフラ通信ECU6は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバス及び入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、図示しない送信機及び受信機を制御するとともに、スペクトラム拡散方式を用いた狭域無線通信方式による路車間通信及び車車間通信を実現して、コンピュータ14の第一送信手段14bが対象エリアに発信した第一データフレームを受信する。つまりインフラ通信ECU6は、第一受信手段6aとして機能するものである。
【0039】
車内外気温検出用温度センサ7は、車両Cの車室内と車室外に設けられて、車内外の気温の双方を検出して、アイドルストップECU2に検出結果を出力するものである。ブレーキ負圧検出圧力センサ8は、図示しないブレーキ装置のブレーキペダルの踏力を増大させて増大させた力に基づいてマスターシリンダ圧を生成する倍力装置に供給される、図示しないエンジンからの負圧を検出して、検出結果をアイドルストップECU2に出力するものである。
【0040】
加速度センサ9は、車両Cのフロア中央に設けられて、車両Cの加速度を検出して検出結果をアイドルストップECU2に出力するものである。クラッチストロークセンサ10は、車両Cの変速機がマニュアルトランスミッションである場合に、図示しないクラッチのストロークを検出して検出結果をアイドルストップECU2に出力するものである。
【0041】
ブレーキストロークセンサ11は、図示しないブレーキペダルのストロークを検出して、検出結果をアイドルストップECU2に出力するものである。シフト信号センサ12は、図示しない変速機ECU内部に備えられて、変速機ECUにより制御される変速機のシフト信号を検出して、検出結果をアイドルストップECU2に出力するものである。
【0042】
アイドルストップECU2の停止手段2aは、CAN上において図示しないボディECUから発信された右のウィンカー信号を取得した後、インフラ通信手段ECU6の第一受信手段6aが受信した第一データフレームに含まれる、右折待機時間TWが例えば30秒の所定時間TC以上である場合には、エンジンECU3に対して図示しないエンジンを停止する停止指令を出力し、エンジンECU3は停止指令に基づいてエンジンを停止する。
【0043】
アイドルストップECU2の始動手段2bは、停止手段2aが停止指令を出力した後、右折待機時間TWが経過するタイミングの例えば0.3秒手前のタイミングにおいて、すみやかに、エンジンを始動する始動指令をエンジンECU3に対して出力する。これとともに、始動手段2bは、第一データフレームに含まれる右折矢印信号が点灯である場合にエンジンを始動する始動指令をエンジンECU3に対して出力する。
【0044】
停止手段2aは、車両Cが右折する場合以外において、停止している場合つまりブレーキECU3から取得した車速が例えば5km/h以下の極低車速である場合、加速度センサ9により検出された加速度がゼロとなった場合、クラッチストロークセンサ10によるストロークに基づいてクラッチの結合の開始が検出された場合、ブレーキストロークセンサ11のブレーキペダルのストロークからブレーキペダルの踏み込み解除が検出された場合にも、エンジンECU3に対して停止指令を出力する。
【0045】
なお、車両Cが停止している場合でも、車室外気温検出用温度センサ7により検出される車内外の気温が例えば5度よりも低い極低温である場合には、停止手段2aは、エンジンECU3に対して停止指令を出力せずに、エンジンのアイドリングを継続する。
【0046】
また、ブレーキ負圧検出圧力センサ8により検出されるブレーキ装置の倍力装置内の負圧が規定値よりも低下している場合には、停止手段2aは、車両Cが停止している場合にも、エンジンECU3に対して停止指令を出力せずに、エンジンのアイドリングを継続する。
【0047】
さらに、停止手段2aは、車両Cが直進している途中で停止する場合には、路側のコンピュータ14から路車間通信により交差点の信号情報を含むデータフレームを、インフラ通信ECU6を介して取得して、停止時間を算出して、停止時間と前述した所定時間TCと比較して、停止時間が所定時間TC以上である場合に、エンジンECU3に対して停止指令を出力する。
【0048】
加えて、図2に示すように、車両Cと右折レーンとの間に先行車両FCが存在している場合で、先行車両FCに車車間通信を可能とするインフラ通信ECU6が具備されている場合には、車車間通信により取得した先行車両FCの位置、速度と、コンピュータ14から路車間通信により取得した対向車両OCの位置、速度から、先行車両FCのみが右折できると判定される場合には、停止手段2aはアイドルストップを行わない。
【0049】
以下に以上述べた本実施例1の駆動源停止装置1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。
【0050】
図3のステップS1において、路側のカメラ13は、撮像した画像の画像処理を実行して、一台の又は複数の対向車両OCの位置、車速、左右何れかのウィンカー信号を検出し、ステップS2において、路側のコンピュータ14の算出手段14aは、一台の対向車両OCが車両Cの右折を阻害しない位置まで移動するまでの時間を算出する。対向車両OCが複数存在している場合には、前後に隣接して位置する対向車両OC相互間の間隔が、車両Cが右折することが可能な所定距離以上である場合の、所定距離以上の間隔の交差点側に位置する対向車両OCが車両Cの右折を阻害しない位置まで移動するまでの時間を算出して、算出した時間を右折待機時間TWとする。
【0051】
ステップS2において、第一送信手段14bは、右折待機時間TWを含む第一データフレームを対象エリアに発信し、インフラ通信ECU6の第一受信手段6aは、第一データフレームを受信してアイドルストップECU2に送信し、アイドルストップECU2の停止手段2aは第一データフレームを受信する。
【0052】
ステップS3において、アイドルストップECU2の停止手段2aは第一データフレームが含む右折待機時間TWが、所定時間TC以上であるか否かを判定し、否定である場合にはENDにすすみ、肯定である場合にはステップS4にすすんで、エンジンECU3に対して停止指令を出力して、エンジンECU3は停止指令に基づいてエンジンを停止してアイドルストップを行う。ステップS1からS4までの処理は所定の制御周期において繰り返し実行される。
【0053】
これらの制御内容により実現される本実施例1の駆動源停止装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例1による駆動源停止装置1によれば、対向車両OCの位置と車速、ウィンカー信号を含む対向車両OCの挙動に基づいて、車両Cの右折待機時間TWを正確に算出することができる。また、正確に算出された右折待機時間TWと所定時間TCとの比較に基づいて、車両Cのエンジンを停止するか否かを判定した上で、エンジンの停止を実行することができるので、右折待機時間TWが比較的短い時間である場合にエンジンを停止してしまい、車両Cの交差点への進入のタイミングを逃して進入及び右折の完了が遅れてしまうことを防止することができる。
【0054】
また、本実施例1の駆動源停止装置1においては、エンジンを停止した後再度始動するタイミングも、右折待機時間TWに基づいて正確に定めることができるので、対向車両OCが車両Cの右折を阻害しない位置まで移動するタイミングの直前に速やかにエンジンを始動させて、対向車両OCが車両Cの右折を阻害しない位置に移動したタイミングにおいてエンジンは確実に始動されていることとすることができるので、右折のタイミングを逃すことなく速やかに車両Cを右折させることができる。
【0055】
また、複数の対向車両OCが比較的狭い車間距離を保って連続して走行している場合には、前後方向に隣接する対向車両OC間において、車両Cが右折することが可能な間隔が確保できず、複数の対向車両OCのうち最後尾の対向車両OCが、車両Cの右折を阻害しない位置まで移動するタイミングまで右折待機時間TWが継続することとなり、右折待機時間TWが比較的長い時間となることとなるが、本実施例1の駆動源停止装置1においては、対向車両OCの位置、車速、左右のウィンカー信号を含む挙動に基づいて、右折待機時間TWを算出しているので、右折待機時間TWを正確に算出して、右折待機時間TWを有効に活用して右折待機時間TW中においてエンジンをなるべく長く停止することができる。これにより、排気ガスの排出量の低減や車両Cの燃費性能の向上を十分に図ることができる。
【0056】
さらに、車両Cが直進中に、例えば、図5に示すように進行方向右側に目的とする店舗等が存在して、車両Cが右折することを目的として、右のウィンカーランプを点灯させている場合においては、対向車両OCと車両Cが実施例1の車両Cに示したものと同等のハード構成を有している場合には、対向車両OCと車両Cとの間において車車間通信を行い、対向車両OCのナビゲーションECU5が検出した対向車両OCの位置、速度を車両CのアイドルストップECU2が取得する。
【0057】
これによれば、対向車両OCが複数ある場合に、車両Cが右折することが可能な隣接する対向車両OCの車間距離が存在し、その車間距離の前方に位置する対向車両OCつまりは一群となって連続して走行している対向車両OCの最後尾に位置する対向車両OCが車両Cの側方を通過するまでの時間を右折待機時間TWとして、車両Cが右折する位置を交差点とみなして、図3に示したフローチャートと同様の制御を実行することができる。
【0058】
なお、上述した実施例1においては、検出手段としての路側撮像手段として、カメラ13を路側に設置したが、検出手段は車両側撮像手段に置換することもでき、路側撮像手段と車両側撮像手段を併用することもできる。車両側撮像手段のみを用いる場合には、右折待機時間TWを算出する算出手段は、例えば、車両CのアイドルストップECU2に具備させることができる。
【0059】
また、対向車両OCがナビゲーションECU5を具備することが確保できる状況においては、対向車両OCの位置、車速、左右何れかのウィンカー信号を検出する検出手段は、対向車両OCが搭載したナビゲーションECU5に具備させることができ、この場合においてナビゲーションECU5は、図示しないボディECUから左右何れかのウィンカー信号の有無を検出することとすることができる。
【0060】
さらに、上述した実施例1において、対向車両OCがインフラ通信ECU6を具備することが確保できて対向車両OCからコンピュータ14に対して路車間通信を行うことが可能である状況においては、図4に示すように、対向車両OCの具備するナビゲーションECU5が取得した対向車両OCの位置、車速、ウィンカー信号を、インフラ通信ECU6がコンピュータ14に対して路車間通信により送信することとすることができる。つまりこの場合においては、対向車両OCの搭載しているインフラ通信ECU6が第二送信手段を構成し、コンピュータ14が第二受信手段を構成する。
【0061】
上述した実施例1においては、車両Cに対して交差点において交差する交差車両が対向する対向車両OCである場合を示したが、例えば交差点が一時停止線を含む交差点であり、一時停止線の手前に位置する車両Cに対して、右方から交差点に進入する交差車両RCが存在するような状況においても、本発明の駆動源停止装置を適用することはできる。以下それについての実施例2について述べる。
【実施例2】
【0062】
図6は、本発明に係る駆動源停止装置が適用される交差点の態様と路側の設備を示す模式図である。図7は、本発明に係る駆動源停止装置の制御内容を示すフローチャートである。
【0063】
本実施例2において、車両C及び交差車両RCは、実施例1に述べた車両Cと同等のハード構成を具備しているものとし、路側においても一時停止線近傍に、実施例1に示したカメラ13とコンピュータ14を具備しているものとして、個々の構成要素についての重複する説明は割愛する。
【0064】
カメラ13は、図6に示すように、例えば交差点の一時停止線の前方の交通量が多い主車線の直上に設置されて、一時停止線近傍の交差点及び交差点から視て右方全般を撮像範囲として撮像して、撮像した画像情報に基づいて二値化処理、濃淡処理、輝度差分処理、エッジ処理等を行い、交差車両RCの有無と、交差車両RCの位置、車速、歩行者Mの有無、位置、速度を検出する。
【0065】
コンピュータ14の算出手段14aは、交差車両RCの位置と、一時停止線を含む交差点との距離を、交差車両RCの車速により除して、交差車両RCが交差点を通過するまでの通過時間を算出し、歩行者Mの現在の位置と主車線の幅員から残りの歩行距離を算出して、歩行距離を歩行者Mの速度で除して歩行者Mが主車線を渡りきって横断を完了するまでの歩行時間を算出して、通過時間と歩行時間の双方の時間の内長い方の時間を車両の一時停止後待機時間TSWとする。
【0066】
コンピュータ14の第一送信手段14bは、算出手段14aの算出した一時停止後待機時間TSWを含む第一データフレームを、送信機を制御することに基づいて対象エリアに発信する。
【0067】
アイドルストップECU2の停止手段2aは、CAN上において図示しないボディECUから発信された左のウィンカー信号を取得した後、インフラ通信手段ECU6の第一受信手段6aが受信した第一データフレームに含まれる、一時停止後待機時間TSWが例えば30秒の所定時間TC以上である場合には、エンジンECU3に対して図示しないエンジンを停止する停止指令を出力し、エンジンECU3は停止指令に基づいてエンジンを停止する。
【0068】
アイドルストップECU2の始動手段2bは、停止手段2aが停止指令を出力した後、一時停止後待機時間TSWが経過するタイミングの例えば0.3秒手前のタイミングにおいて、すみやかに、エンジンを始動する始動指令をエンジンECU3に対して出力する。
【0069】
以下に以上述べた本実施例2の駆動源停止装置1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。
【0070】
図7のステップS11において、路側のカメラ13は、撮像した画像の画像処理を実行して、交差車両RCの位置、車速を検出し、歩行者Mの有無、位置、速度を検出する。ステップS12において、路側のコンピュータ14の算出手段14aは、交差車両RCが車両Cの左折を阻害しない位置まで、つまりは、一時停止線を含む交差点を通過するまでの通過時間を算出し、歩行者Mが主車線を渡りきり横断を完了するまでの歩行時間を算出して、長い方向の時間を一時停止後待機時間TSWとする。
【0071】
ステップS12において、第一送信手段14bは、一時停止後待機時間TSWを含む第一データフレームを対象エリアに発信し、インフラ通信ECU6の第一受信手段6aは、第一データフレームを受信してアイドルストップECU2に送信し、アイドルストップECU2の停止手段2aは第一データフレームを受信する。
【0072】
ステップS13において、アイドルストップECU2の停止手段2aは第一データフレームが含む一時停止後待機時間TSWが、所定時間TC以上であるか否かを判定し、否定である場合にはENDにすすみ、肯定である場合にはステップS14にすすんで、エンジンECU3に対して停止指令を出力して、エンジンECU3は停止指令に基づいてエンジンを停止してアイドルストップを行う。ステップS11からS14までの処理は所定の制御周期において繰り返し実行される。
【0073】
これらの制御内容により実現される本実施例2の駆動源停止装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例2による駆動源停止装置1によれば、交差車両RCの位置と車速を含む交差車両RC及び歩行者Mの挙動に基づいて、車両Cの一時停止後待機時間TSWをより正確に算出することができる。また、正確に算出された一時停止後待機時間TSWと所定時間TCとの比較に基づいて、車両Cのエンジンを停止するか否かを判定した上で、エンジンの停止を実行することができる。
【0074】
このため、一時停止後待機時間TSWが比較的短い時間である場合にエンジンを停止してしまい、車両Cの交差点への進入のタイミングを逃して進入及び左折の完了が遅れてしまうことを防止することができる。
【0075】
さらに、本実施例2の駆動源停止装置1においては、エンジンを停止した後再度始動するタイミングも、一時停止後待機時間TSWに基づいて正確に決定することができるので、交差車両RCが車両Cの左折を阻害しない位置まで移動して交差点を通過するタイミングの直前に速やかにエンジンを始動させて、交差車両RCが車両Cの左折を阻害しない位置に移動したタイミングにおいてエンジンの再始動を完了することができるので、左折のタイミングを逃すことなく速やかに車両Cを、一時停止線を含む交差点において左折させることができる。
【0076】
また、歩行者Mの挙動を含めて、一時停止後待機時間TSWを算出することができるので、歩行者Mの挙動を配慮した上で、より適切な一時停止後待機時間TSWを設定して、一時停止後待機時間TSWを極力有効活用してアイドルストップを実行し、排出量の削減と燃費性能の向上を図ることができる。
【0077】
なお、歩行者Mの挙動については、上述したようにカメラ13により検出してもよいが、歩行者Mが上述したナビゲーションECU5と同等のGPS機能付きの携帯電話を所有している場合には、携帯電話とコンピュータ14の歩路間通信によりコンピュータ14が検出することができる。あるいは、携帯電話とインフラ通信ECU6との歩車間通信を利用して、歩行者Mの挙動を車両CのアイドルストップECU2が検出することもできる。
【0078】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0079】
例えば、カメラ13については、実施例1、実施例2ともに、交差点のみに設置することに加えて、交差点に合流する車線上の例えば100m間隔に適宜設置して、検出対象とする対向車両OC又は交差車両RCをより多くすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、より適切なアイドルストップを実現することができる駆動源停止装置を提供するものであって、比較的取得の容易なパラメータと軽微な制御上の変更に基づいて、所望の効果を得ることができるので、乗用車、トラック、バス等の各車両に適用して特に有益なものである。
【符号の説明】
【0081】
1 駆動源停止装置
2 アイドルストップECU
2a 停止手段
2b 始動手段
3 エンジンECU
4 バッテリ充電状態監視ECU
5 ナビゲーションECU
5a 探索手段
5b 表示手段
6 インフラ通信ECU
6a 第一受信手段
7 車内外気温検出用温度センサ
8 ブレーキ負圧検出圧力センサ
9 加速度センサ
10 クラッチストロークセンサ
11 ブレーキストロークセンサ
12 シフト信号センサ
13 カメラ
13a 検出手段
14 コンピュータ
14a 算出手段
14b 第一送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が進入する交差点に進入する交差車両の位置と車速とウィンカー信号を検出する検出手段と、前記検出された前記位置と前記車速と前記ウィンカー信号に基づいて前記交差車両が前記車両の進入を阻害しない位置まで移動するまでの時間を、前記車両の待機時間として算出する算出手段と、前記算出された待機時間が所定時間以上である場合に、前記車両の駆動源を停止する停止手段を含むことを特徴とする駆動源停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−216421(P2010−216421A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66105(P2009−66105)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】