駆動装置、撮像ユニット、撮像装置および駆動装置の製造方法
【課題】固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間のずれを精度良く設定することが可能な技術を提供する。
【解決手段】駆動装置1Aは、第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛部と、第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛部とを有し、移動櫛部が可動部に駆動変位を与える駆動機構8と、移動櫛部と固定櫛部との間に、第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させるオフセット機構5aとを備える。そして、固定櫛部は、オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して移動櫛部とそれぞれ一体的に形成され、オフセット機構5aは、弾性部を弾性変形させて固定櫛部をオフセット方向に移動させ、相対的なずれを発生させる。
【解決手段】駆動装置1Aは、第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛部と、第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛部とを有し、移動櫛部が可動部に駆動変位を与える駆動機構8と、移動櫛部と固定櫛部との間に、第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させるオフセット機構5aとを備える。そして、固定櫛部は、オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して移動櫛部とそれぞれ一体的に形成され、オフセット機構5aは、弾性部を弾性変形させて固定櫛部をオフセット方向に移動させ、相対的なずれを発生させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電アクチュエータを用いた駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロカメラユニット(Micro Camera Unit:MCU)を搭載することによって、撮影機能が付加された小型の電子機器(例えば携帯電話)が急速に普及している。これに伴いMCU向けのAF機構またはズーム機構に用いられる駆動装置に対しては、小型化の要請が強くなっている。
【0003】
しかし、駆動部にステッピングモータ等を用いた駆動装置では、駆動部のための固有空間を確保する必要があるため、小型化に対応することは困難である。
【0004】
そこで、駆動部の小型化を実現するために、半導体の微細加工技術を駆使して作製されたMEMS(Micro Electro Mechanical System)の静電アクチュエータを駆動部に採用した駆動装置が提案されている。
【0005】
静電アクチュエータは、固定櫛歯電極とこれに対向する移動櫛歯電極とによって構成され、所定方向の変位を発生させるために、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とは相対的なずれ(位置ずれ)を有した状態(「位置ずれ状態」とも称する)に配置される。
【0006】
このような位置ずれ状態を確保する手法としては、固定櫛歯電極が形成された基板と移動櫛歯電極が形成された基板とを貼り合わせる際に、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とを互いにずれを有した状態に配置する技術が知られている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開2006−79078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間のずれを精度良く設定するには、貼り合わせの際に固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とを精度良く位置決めしなければならないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間のずれを精度良く設定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、可動部を駆動させる駆動装置であって、第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに前記第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛歯電極と、前記第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が前記複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛歯電極とを有し、前記移動櫛歯電極が前記可動部に駆動変位を与える駆動機構と、前記移動櫛歯電極と前記固定櫛場電極との間に、前記第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させるオフセット手段とを備え、前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、前記オフセット手段は、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させ、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る駆動装置において、前記オフセット手段は、段差部を有する基台を含み、前記段差部は、前記基台において、前記基台と前記駆動機構とが接合された場合に、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させる位置に存在し、前記段差部は、前記接合にともなって、前記固定櫛歯電極と前記移動櫛歯電極との間に、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る駆動装置において、前記移動櫛歯電極および前記固定櫛歯電極は、SOI基板において2層あるSi層のうち、1層のSi層を用いて一方向からエッチングにより作製されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る駆動装置において、前記段差部は、前記基台に設けられた凸部であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る駆動装置において、前記段差部は、前記基台に設けられた凹部であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る駆動装置において、前記段差部の段差は、櫛歯面においてオフセット方向と平行な辺の長さ以下であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る駆動装置において、前記可動部には撮像素子が配置されることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明に係る駆動装置は、単一のハウジングの内部空間に配置されることを特徴とする。
【0018】
また、請求項9の発明は、撮像装置であって、請求項8の発明に係る撮像ユニットを備えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項10の発明は、可動部を駆動させる駆動装置の製造方法であって、a)第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに前記第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛歯電極と、前記第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が前記複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛歯電極とを有し、前記移動櫛歯電極が前記可動部に駆動変位を与える駆動機構を一体的に形成する工程と、b)前記移動櫛歯電極と前記固定櫛場電極との間に、前記第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させる工程と、前記a)工程においては、前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、前記b)工程においては、前記固定櫛歯電極は、前記弾性部を弾性変形させて前記オフセット方向に移動し、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする。
【0020】
また、請求項11の発明は、可動部を駆動させる駆動装置であって、前記可動部に駆動変位を与える移動櫛歯電極と、前記移動櫛歯電極に交互配置される固定櫛歯電極とを有する駆動機構と、前記固定櫛歯電極と前記移動櫛歯電極との間に、前記移動櫛歯電極の櫛歯面内において櫛歯の延伸方向に垂直なオフセット方向の相対的なずれを発生させるオフセット手段とを備え、前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、前記オフセット手段は、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させ、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1から請求項11に記載の発明によれば、移動櫛歯電極と固定櫛歯電極とを一体的に形成し、固定櫛歯電極をオフセット方向に移動させるので、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間のずれを精度良く設定することが可能になる。
【0022】
また特に、請求項3に記載の発明によれば、移動櫛歯電極および固定櫛歯電極は、SOI基板において2層あるSi層のうち、1層のSi層を用いて一方向からエッチングにより作製されるので、移動櫛歯電極および固定櫛歯電極の作製時間を短縮することができる。
【0023】
また特に、請求項6に記載の発明によれば、段差部の段差は、櫛歯面においてオフセット方向と平行な辺の長さ以下であるので、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間にオフセット方向の相対的なずれが発生した状態において、移動櫛歯電極の各櫛歯面と固定櫛歯電極の各櫛歯面とが互いに重複する部分を確保すること可能となり、ひいては電圧印加時に櫛歯電極間に初期引き込み力を発生させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0025】
<実施形態>
<静電アクチュエータについて>
図1は、静電作用を利用したアクチュエータ(静電アクチュエータ)の構成および動作の第1の状況を示す図である。図1(a)は、静電アクチュエータの上面図であり、図1(b)は、静電アクチュエータの側面図である。
【0026】
また図2は、静電アクチュエータの構成および動作の第2の状況を示す図である。図2(a)は、静電アクチュエータの上面図である。また、図2(b)は、静電アクチュエータの側面図であり、図2(c)は、電圧印加時の静電アクチュエータの側面図である。
【0027】
本実施形態では、駆動装置の駆動部に静電アクチュエータを採用するが、静電アクチュエータは、図1(a)に示されるように、櫛歯部分が互い違いに配置(交互配置)された、第1の櫛歯電極101と第2の櫛歯電極102とによって構成され、2つの櫛歯電極間に印加される電圧によって生じる静電気力を駆動源とする。このような静電アクチュエータは、2つの櫛歯電極の相対的な位置に応じて、異なる方向の力を発生させる。なお、図中にXYZ直角座標系が記入されているが、X軸方向は第1の櫛歯電極101の各歯が伸びる方向(「櫛歯の延伸方向」とも称する)に相当し、Y軸方向は2つの櫛歯電極101,102の歯間溝に沿った方向(「櫛歯の厚さ方向」または「櫛歯面内において櫛歯の延伸方向に垂直な方向」とも称する)に相当し、Z軸方向は2つの櫛歯電極の各歯が交互配置される方向(「交互配置方向」または「ギャップ方向」とも称する)に相当する。また、2つの櫛歯電極の各櫛歯が横方向に交互配置されると表現すると、上記Y軸方向は縦方向とも表現される。
【0028】
例えば、図1(b)に示されるように、固定された第1の櫛歯電極(「固定櫛部」とも称する)101と移動可能な第2の櫛歯電極(「移動櫛部」とも称する)102との櫛歯面が互いにY軸方向にずれなく配置されている状態の移動櫛部102の動きについて説明する。
【0029】
この状態において、スイッチSWの接点が構成され2つの櫛歯電極間に電圧が印加されると、固定櫛部101と移動櫛部102との間にはX方向の引力が発生する。X方向に伸びる弾性材で形成された支持部材103aを介して、固定部104に接続された移動櫛部102は、この引力によって+X方向に移動する。そして、スイッチSWが切断されると、固定櫛部101と移動櫛部102との間に発生していた引力は消滅し、支持部材103aの弾性力によって移動櫛部102は、−X方向に復帰する。
【0030】
このように互いの櫛歯面がY軸方向にずれなく配置されている状態においては、櫛歯電極間に印加する電圧を制御することによって、移動櫛部102を、矢印HYaに示すようにX方向に移動させることができる。
【0031】
次に、図1(b)のように櫛歯面がY軸方向にずれなく配置された状態ではなく、図2(b)に示すように移動櫛部102の櫛歯面が固定櫛部101の櫛歯面に対してY軸方向にずれた状態(「位置ずれ状態」または「オフセット状態」とも称する)の移動櫛部102の動きについて説明する。ただし、図2における支持部材103bは、図1の支持部材103aとは異なり、上面図視においても直線状である。
【0032】
この状態において、スイッチSWの接点が構成され2つの櫛歯電極間に電圧が印加されると、固定櫛部101と移動櫛部102との間にはX方向の引力およびY方向の引力が発生する。これによって、棒状の支持部材103bを介して固定部104に接続された移動櫛部102は、+X方向の力Fxと−Y方向の力Fyとを受ける。支持部材103bは曲げ弾性を有しつつも実質的な伸縮弾性は持たない形状または材質で形成されている。このため、移動櫛部102は−X方向には移動しないが、−Y方向の力Fyを受けることによって、支持部材103bをたわませながら、略−Y方向に移動する(図2(c)参照)。そして、スイッチSWの接点が開放されると、固定櫛部101と移動櫛部102との間に発生していた引力は消滅し、支持部材103bの曲げ弾性力によって移動櫛部102は、略+Y方向に復帰する。
【0033】
このように移動櫛部102の櫛歯面が固定櫛部101に対してY軸方向、換言すれば櫛部の櫛歯面内において櫛歯の延伸方向に垂直な方向(「オフセット方向」とも称する)にずれて配置される状態においては、櫛歯電極間に印加する電圧を制御することによって、移動櫛部102を、矢印HYbに示すように回転移動(回動)させることができる。
【0034】
なお、移動櫛部102を第1方向と第2方向とによって規定された櫛歯面(板面)を持つとともに第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛部102と表現するとともに、固定櫛部101を第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛部101と表現すると、第2方向は上記オフセット方向となる。
【0035】
また、印加された電圧によって櫛歯電極間に発生する力は、櫛歯の数に比例して大きくなり、また、印加する電圧の2乗に比例して大きくなる。一方、櫛歯電極間に発生する力は、櫛歯間の距離に反比例し、櫛歯間の距離が大きくなると小さくなる。また、各櫛歯は、接触による短絡を防止するために、各櫛歯電極間の距離が等しくなるように互いの中立位置に配置されることが好ましく、設計時において、各櫛歯に対して剛性を持たせる等の工夫が施される。
【0036】
<駆動装置について>
<構成>
次に、本実施形態に係る駆動装置1Aについて説明する。図3は、本実施形態に係る駆動装置1Aの機能ブロック図である。図4は、駆動装置1Aの上面図である。図5は、図4のK1方向から視認した場合の駆動前の初期状態における駆動装置1Aの側面図である。なお、図5では、明瞭化のため、固定部FX1および弾性部16a,16cの図示は省略され、固定櫛部101a,101cは破線によって表されている。
【0037】
図3に示されるように、駆動装置1Aは、駆動部5と変位伝達部6と可動部7とを含む駆動機構8を有している。
【0038】
駆動部5は、変位(「駆動変位」とも称する)を発生させ、当該駆動変位を変位伝達部6に与える機能を有している。本実施形態では、駆動部5に上述の静電アクチュエータを採用し、櫛歯電極間に電圧を印加することによって駆動変位を発生させる。具体的には、駆動部5は、オフセット機構5aを有し、静電アクチュエータの移動櫛部の櫛歯面と固定櫛部の櫛歯面とをオフセット方向に互いにずれた状態で配置させる。そして、印加される電圧に応じて駆動部5は、オフセット方向への駆動変位を発生させる(詳細は、後述する)。
【0039】
変位伝達部6は、変位拡大機構6aを有し、駆動部5より与えられた駆動変位を大きく(拡大)した出力変位を生成し、当該出力変位を可動部7に伝達する機能を有している。
【0040】
可動部7は、上記の出力変位に応じて所定方向に移動される。
【0041】
ここで、上記各機能部を備える駆動装置1Aの具体的構成について説明する。
【0042】
図4に示すように、駆動装置1Aは、被駆動体を固定する可動部7の外周に沿って可動部7から離隔配置された略矩形のフレーム構造FRを有している。このフレーム構造FRは半割されており、そのうちの1つ(図中の上半部)に相当する第1のフレーム11と他の1つ(図中の下半部)に相当する第2のフレーム21とが可動部7の対称線C−Cに関して対称的に配置されている。駆動装置1Aはまた、このフレーム構造FRを介して可動部7を駆動するための駆動部5として4つの静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dを有している。各静電アクチュエータ10a〜10dは、固定櫛部101a,101b,101c,101dと、それら固定櫛部101a〜101dにそれぞれ対向する移動櫛部102a,102b,102c,102dとをそれぞれ有し、各櫛歯電極間に印加される電圧に応じた駆動変位をそれぞれ発生させる。
【0043】
フレーム構造FRは図3の変位伝達部6の要素となっているが、以下では、第1のフレーム11の構造および機能について詳述する。第2のフレーム21も第1のフレーム11と同様の構造および機能を有している。
【0044】
第1のフレーム11は、横辺部11Lと、この横辺部11Lの両側に連続する一対の縦辺部11Hとによって形成されており、一端がそれぞれ固定部FX1,FX2に固定された第1の支持部材13aと第2の支持部材13bとによって、一対の縦辺部11Hのそれぞれの中点よりも対称線C−C寄りの部位が支持されている。第1の支持部材13aおよび第2の支持部材13bは、ねじり弾性を持つ材質(たとえばSi)で形成されている。より具体的には、これらの支持部材13a、13bは第1のフレーム11と一体形成されてもよいが、第1のフレーム11に比べて細く(或いは厚さを薄く)設計されることによって、第1のフレーム11に比べて弾性的にねじり変形し易い弾性部材として形成されている。
【0045】
また、第1のフレーム11の両端には、静電アクチュエータ10a,10bの要素となる移動櫛部102a,102bがそれぞれ接続され、各静電アクチュエータ10a,10bからの駆動変位が第1のフレーム11に与えられる。具体的には、各静電アクチュエータ10a,10bにおいては、固定櫛部101a,101bは、移動櫛部102a,102bに対して、移動櫛部102a,102bの櫛歯の厚さ方向(オフセット方向)に位置ずれを有した状態で配置される。これにより、図2(a)と同様の原理によって、各静電アクチュエータ10a,10bは、縦辺部11Hの接続端PFa,PFbにそれぞれ接続された移動櫛部102b,102aをY方向(オフセット方向)に駆動させることができる。
【0046】
移動櫛部102a,102bに対して位置ずれを有した状態に配置される固定櫛部101a,101bは、それぞれ弾性部16a,16bを介して固定部FX1,FX2に接続される。
【0047】
第1の支持部材13aの一端と弾性部16aの一端とが接続される固定部FX1および第2の支持部材13bの一端と弾性部16bの一端とが接続される固定部FX2は、それぞれ後述の基台FD1に接合され、静電アクチュエータ10a,10bおよび第1のフレーム11等を含む駆動機構8を保持する。
【0048】
弾性部16a,16bは、Y軸方向への曲げ弾性を有し、たわんだ状態で基台FD1に固定される(図16参照)。詳細は、後述する。
【0049】
第1のフレーム11において、静電アクチュエータ10aの接続端PFaを始点として、第1の支持部材13aによる支持点(「結合部位」とも称する)BPaを介して延びる第1の長尺部12aは第1のフレーム11の縦辺部11Hのひとつに相当し、第1のフレーム11の変位拡大機構6a(図3)の要素となっている。具体的には、図5に示されるように第1の長尺部12aは、支持点BPaを支点として、XY平面内を傾動可能に構成され、また、支持点BPaは、第1の長尺部12aの中点と第1の長尺部12aの一端PFaとの間に設けられている。このため、第1の長尺部12aは、いわゆる梃子の原理を利用して、第1の長尺部12aの一端(接続端PFa)に与えられる駆動変位を第1の長尺部12aの他端PEaにおいて拡大して出力することが可能となる。
【0050】
また、第1のフレーム11において、静電アクチュエータ10bの接続端PFbを始点として、第2の支持部材13bによる支持点(結合部位)BPbを介して延びる第2の長尺部12bも第1のフレーム11の縦辺部11Hの他のひとつに相当し、第1のフレーム11と同様に第1のフレーム11の変位拡大機構6a(図3)の要素となっている。
【0051】
また、第1のフレーム11の横辺部11Lの略中心は、第1の連結部材14によって可動部7と連結されている。第1の連結部材14は、曲げ弾性を持つ材質(たとえばSi)で形成され、具体的には第1のフレーム11と一体に形成された部材のうちの一部を第1のフレーム11に比べて細く(或いは厚さを薄く)設計することによって第1の連結部材14が得られるものであり、第1のフレーム11と同じ材質であってもこのような相対的なサイズ選択によって第1のフレーム11と比べて弾性変形し易くなっている。
【0052】
第2のフレーム21は、上述の第1のフレーム11と同様の構成を有し、変位伝達部6の要素となっている。簡単には、第2のフレーム21は、第3の支持部材13cと第4の支持部材13dとによって支持されている。また、第2のフレーム21の両端には、移動櫛部102c,102dがそれぞれ接続されている。そして、移動櫛部102c,102dに対向した位置に配置される各固定櫛部101c,101dは、弾性部16c,16dを介してそれぞれ固定部FX1,FX2に接続される。第2のフレーム21は、支持点(結合部位)BPcと支持点(結合部位)BPdとをそれぞれ支点とする第3の長尺部12cと第4の長尺部12dとを有している。これらの長尺部12c,12dは、XY平面内を傾動可能な変位拡大機構6aの要素となっている。
【0053】
また、第2のフレーム21は、第2の連結部材15を有している。第2の連結部材15は、第2のフレーム21に比べて細く(或いは厚さを薄く)設計されており、第2のフレーム21の他の部位に比べて弾性変形し易くなっている。そして、上記第1の連結部材14と当該第2の連結部材15とは、互いに対向する位置(対称位置)において可動部7を保持するように構成されている。
【0054】
以上のように、可動部7の対称線C−Cを境界とする上半部と下半部とは対称的な構成となっており、それぞれが単位駆動機構となっている。この実施形態では2つの単位駆動機構を可動部7に関して対称配置していることになるが、可動部7を移動させる機能そのものはそれぞれのひとつの単位駆動機構が有している。
【0055】
<動作>
次に、上述の構成を有する駆動装置1Aの動作について説明する。図6は、図4のK1方向から視認した場合の駆動状態における駆動装置1Aの側面図である。図7は、駆動装置1Aの初期状態と駆動状態とを示す図である。なお、図7では、明瞭化のため、固定櫛部101a,101cの図示は省略されている。
【0056】
図5に示される駆動前の初期状態において、静電アクチュエータ10aから−Y方向の力Fayが第1の長尺部12aの一端PFa側に加えられると、第1の長尺部12aは、弾性変形可能な第1の支持部材13aにねじれを発生させながら、支持部材13aの弾性力に抗して支持点BPaを中心にXY面内で回転(回動)する。端的に言えば、第1の長尺部12aの一端PFaは−Y方向に変位し、第1の長尺部12aの他端PEaは+Y方向に変位する。
【0057】
また同様に、静電アクチュエータ10cから−Y方向の力Fcyが第3の長尺部12cの一端PFc側に加えられると、第3の長尺部12cは、弾性変形可能な第3の支持部材13cにねじれを発生させながら、支持点BPcを中心にして回転する。端的に言えば、第3の長尺部12cの一端PFcは−Y方向に変位し、第3の長尺部12cの他端PEcは+Y方向に変位する。
【0058】
また、図5においては図示されていない第2の長尺部12bおよび第3の長尺部12dも、それぞれ静電アクチュエータ10b,10dから力を受けて傾動し、各長尺部12b,12dの他端PEb,PEdは、+Y方向に変位する。
【0059】
そして、第1のフレーム11における2つの長尺部12a,12bの各他端PEa,PEbにおいて生じた出力変位は、第1の連結部材14を介して可動部7に伝達されるとともに、第2のフレーム21における2つの長尺部12c,12dの各他端PEc,PEd側において生じた出力変位は、第2の連結部材15を介して可動部7に伝達される。可動部7は、出力変位の増加にともなって、図6に示されるように+Y方向へと移動する。
【0060】
このとき、第1の連結部材14および第2の連結部材15は、可動部7の+Y方向への移動にともなって、弾性変形しながら可動部7を保持する。これによって、駆動装置1Aの円滑な動作が可能となる。
【0061】
具体的には、上述のように各長尺部12a〜12dは、駆動の際には各支持点BPa〜BPdを中心にした回転移動を行う。このため、各長尺部12a〜12dの他端PEa〜PEdにおいて発生する出力変位は、X方向の変位QXとY方向の変位QYとを含んだものとなる。
【0062】
例えば、図7に示される駆動状態において、第1の長尺部12aと第2の長尺部12bとによって発生する出力変位(第1の出力変位)は、矢印AR1のように表される。当該第1の出力変位は、−X方向の変位QX1と+Y方向の変位QY1とによって表すことができる。また、図7に示される駆動状態において、第3の長尺部12cと第4の長尺部12dとによって発生する出力変位(第2の出力変位)は、矢印AR2のように表される。当該第2の出力変位は、+X方向の変位QX2と−Y方向の変位QY2とによって表すことができる。
【0063】
このように、第1のフレーム11における第1の出力変位と、第2のフレーム21における第2の出力変位とは、それぞれ−X方向の変位QX1と+X方向の変位QX2とを有している。このため、図7の駆動状態においては、第1の長尺部12aの他端PEaと第3の長尺部12cの他端PEcとの間の距離は、図5の初期状態における距離と比較して短くなる。したがって、上述のような変位拡大機構6aを用いた駆動装置1Aにおいては、第1の連結部材14と第2の連結部材15とをフレームに比べて弾性変形し易く設計し、動作の際に2つの連結部材を弾性変形させる(ここでは曲げ変形を生じさせる)ことによって、駆動によって生じるX方向の変位を吸収し、駆動装置1Aにおける2つの単位駆動機構の並列的な協働による動作を円滑にしている。
【0064】
また、上記のように駆動装置1Aでは、第1の連結部材14と第2の連結部材15とが、互いに対向する位置において可動部7を挟持している。これによれば、第1の連結部材14から可動部7に加えられる−X方向の力F14と第2の連結部材15から可動部7に加えられる+X方向の力F15とを同一直線上において互いに向き合う方向から可動部7に加えることが可能になる。したがって、動作中の第1の連結部材14からの力F14と第2の連結部材15からの力F15とによって可動部7のバランス(均衡)を乱すことなく、可動部7の姿勢を保ったまま(維持したまま)で可動部7をY方向へとX軸に平行に移動させることができる。
【0065】
上述のように、出力変位の増加にともなって+Y方向へと移動する可動部7は、各静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dからの力と、各長尺部12a,12b,12c,12dの傾動によって生じる各支持部材13a,13b,13c,13dのねじれの復元力とが釣り合う位置において停止する。例えば、櫛歯電極間への電圧の印加を停止すると、ねじれを生じていた各支持部材13a〜13dの復元力によって、可動部7は元の位置に復帰する。このように可動部7の変位は、静電アクチュエータ10a〜10dにおいて発生する力とねじれの復元力とによって決定されることから、駆動装置1Aにおける可動部7の変位は、櫛歯電極間に印加される電圧の大きさを制御することによって調整される。
【0066】
<製法>
次に、駆動装置1Aの製造方法について説明する。図8は、駆動装置1Aの製造工程を示すフローチャートである。図9は、SOI(Silicon On Insulator)基板50を示す図である。図10は、形成層SL1の表面にパターンニングされたマスクを示す図であり、図11は、補助層SL2の表面にパターンニングされたマスクを示す図である。図12、図13、図14および図16は、駆動装置1Aの各製造工程の説明図である。図15は、基台FD1における凸部TBの位置を示す図である。
【0067】
図8に示されるように、ステップSP1〜SP3では、フレーム11,21および駆動部5等の駆動機構8がSOI基板50から一体的に形成され、ステップSP4では、作製された駆動機構8が基台FD1に接合される。
【0068】
具体的には、ステップSP1では、フレーム11,21および駆動部5等の駆動機構8の外形がSOI基板50において形成される。ここで、SOI基板50(図9参照)は、比較的厚い(例えば、200μm)Si層(「形成層」とも称する)SL1と、比較的薄い(例えば、5μm)Si層(「補助層」とも称する)SL2と、当該2のSi層SL1,SL2に挟まれた比較的薄い(例えば、5μm)SiO2層(「犠牲層」とも称する)GSとを有している。
【0069】
ステップSP1では、図4に示される駆動装置1Aの上面外形に応じたマスクが、SOI基板50の形成層SL1の表面にパターンニングされ、駆動装置1Aの下面外形に応じたマスクがSOI基板50の補助層SL2の表面にパターンニングされる。なお、形成層SL1の表面に施されるパターンニングでは、駆動装置1Aの上面外形のうち、連結部材14,15と支持部材13a〜13dと弾性部16a〜16dとに相当する部分(図10において破線で示される部分)のマスクは、除かれる。また、補助層SL2の表面に施されるパターンニングでは、駆動装置1Aの下面外形のうち、移動櫛部102a〜102dに相当する部分(図11において破線で示される部分)のマスクは、除かれる。
【0070】
そして、ドライエッチングによって犠牲層GSの表面まで、形成層SL1および補助層SL2における不要な薄膜(Si層)がそれぞれ除去される(図12参照)。このステップSP1によって、図12に示されるSOI基板50の形成層SL1には、櫛歯形状の駆動部5等が形成される。
【0071】
ステップSP2では、犠牲層GSが除去される。犠牲層GSの除去は、SiO2を溶解させるHF(フッ酸)を用いたウェットエッチングによって行われる。詳細には、ステップSP1のエッチングにより露出された犠牲層GSがウェットエッチングによって除去される。例えば、この犠牲層GSの除去によって、固定櫛部101a〜101d、フレーム11,21および固定部FX1,FX2等における非露出の犠牲層GSは除去されず、移動櫛部102a〜102dにおける露出された犠牲層GSは除去される(図13参照)。
【0072】
上記のようなステップSP1およびSP2を経ることによって、駆動機構8が形成される。具体的には、駆動機構8のうち、移動櫛部102a〜102d(図13では、移動櫛部102a,102c)は形成層SL1の1層で形成され、固定部FX1,FX2、固定櫛部101a〜101d、フレーム11,21および可動部7は、形成層SL1、犠牲層GSおよび補助層SL2の3層で形成される。また、駆動機構8のうち、連結部材14,15、支持部材13a〜13dおよび弾性部16a〜16dは、比較的薄い補助層SL2の1層によって形成され、他の部位に比べて曲げ変形、或いはねじり変形し易い弾性部材として形成される。
【0073】
次のステップSP3(図8)では、ワイヤーボンディング等により駆動部5に用いられる静電アクチュエータ10a〜10dへの電気的な配線が行われる。
【0074】
ステップSP4では、駆動機構8と基台FD1との接合が行われる。
【0075】
接合に用いられる基台FD1は、図14に示されるように、その接合面MFにおいて段差部(ここでは、凸部TB)を有している。この段差部(凸部TB)は、基台FD1において、駆動機構8の固定部FX1,FX2と基台FD1とが接合された場合に、固定櫛部101a〜101dを+Y方向に移動させる位置に存在する。例えば、図15に示されるように、凸部TBは、基台FD1(破線で囲まれる部分)において固定櫛部101a〜101dと接触する位置に存在する。
【0076】
このような凸部TBを有する基台FD1と駆動機構8とが接合されると(ステップSP4)、固定櫛部101a〜101dは、各凸部TBによって+Y方向に押し上げられ、Y軸方向の曲げ弾性を有する各弾性部16a〜16dはたわんだ状態となる(図16参照)。各弾性部16a〜16dがたわんだ状態、すなわち固定櫛部101a〜101dが+Y方向に移動した状態で固定されると、各固定櫛部101a〜101dは、移動櫛部102a〜102dに対してY方向(オフセット方向)の相対的な位置ずれ(単に「ずれ」とも称する)を有した状態になる。
【0077】
なお、段差部の段差(ここでは、凸部TBの高さ)(「オフセット量」とも称する)は、櫛歯の厚さ(詳細には、櫛歯面においてオフセット方向と平行な辺の長さ)以下であることが好ましい。これによれば、オフセット状態において、移動櫛部102a〜102dの各櫛歯面と固定櫛部101a〜101dの各櫛歯面とが互いに重複する部分を確保することができるので、電圧印加時に、櫛歯電極間に初期引き込み力を発生させることが可能となる。
【0078】
また、段差の大きさを調整することによって、或いは、駆動機構8と基台FD1とが接合されたときに段差部が固定櫛部101a〜101dまたは弾性部16a〜16bと接触する位置を調整することによって、移動櫛部102a〜102dの櫛歯面と固定櫛部101a〜101dの櫛歯面とのずれ量を精度良く設定することが可能となる。
【0079】
このように、駆動機構8と基台FD1との接合では、固定櫛部101a〜101dを移動させて固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に位置ずれを生じさせるオフセットが行われる。
【0080】
上述のように、駆動装置1Aの製造工程では、ステップSP1〜SP3において、エッチング等により駆動機構8が形成される。固定櫛部101a〜101dおよびこれらに対応する移動櫛部102a〜102dは、SOI基板5の形成層SL1を用いて形成されるので、ステップSP1〜SP3を経て形成された駆動機構(「一体形成後の駆動機構」とも称する)8の固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとは、形成層SL1が存在した同一平面内において形成されることになる。したがって、一体形成後の駆動機構8では、固定櫛部101a〜101dの各櫛歯面と、移動櫛部102a〜102dの各櫛歯面とはY軸方向にずれなく配置された状態となる。
【0081】
そして、ステップSP4において、凸部TBを有する基台FD1と駆動機構8とを接合させることによって、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間にY軸方向の相対的な位置ずれを発生させ、位置ずれ状態(オフセット状態)にする。これにより、各静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dは、電圧の印加に応じてY方向の駆動変位を発生させることが可能となる。
【0082】
なお、基台FD1は、駆動機構8との接合によって、固定櫛歯電極を移動させて、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間に、移動櫛歯電極における各櫛歯の延伸方向に垂直なオフセット方向のずれを発生させるオフセット手段として機能するとも表現される。
【0083】
また、弾性部16a〜16dは、X軸に垂直な平面によるその切断面において、Z軸方向の辺の長さはY軸方向の辺の長さに比べて長く形成されるため、弾性部16a〜16dは、Y軸方向に曲げ変形し易く、Z軸方向には弾性変形し難い弾性部材となる。これによれば、弾性部16a〜16dは、固定櫛部101a〜101dを一方向(ここではオフセット方向)に案内する案内部材として機能し、移動櫛部102a〜102dと固定櫛部101a〜101dとのギャップ間の距離を保ったまま、オフセットすることが可能になる。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る駆動装置1Aは、第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛部102a〜102dと、第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛部101a〜101dとを有し、移動櫛部102a〜102dが可動部7に駆動変位を与える駆動機構8と、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に、第2方向をオフセット方向として相対的な位置ずれを発生させるオフセット機構5aとを備える。そして、固定櫛部101a〜101dは、オフセット方向に弾性変形可能な弾性部16a〜16dを介して移動櫛部102a〜102dとそれぞれ一体的に形成され、オフセット機構5aは、弾性部16a〜16dを弾性変形させて固定櫛部101a〜101dをオフセット方向に移動させ、相対的なずれを発生させる。これによれば、移動櫛部102a〜102dと対応する固定櫛部101a〜101dとを一体的に形成し、固定櫛部101a〜101dをそれぞれオフセット方向に移動させるので、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間のずれを精度良く設定することが可能になる。
【0085】
また、位置ずれ状態を確保する手法として、SiO2層を介して上下に櫛歯厚さ分のSi層を有するSOI基板を上下方向から各々エッチングすることで固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とをそれぞれ形成し、位置ずれを有した状態の静電アクチュエータを作製する手法が考えられる。しかし、当該手法では、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とがそれぞれ上下方向から別々の工程で作製されるため、櫛歯の作製を精度良く行うことが困難であり、また、櫛歯の作製に多大な時間を要してしまう。これに対して、駆動装置1Aでは、一方向からのエッチングによって固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とを同じ工程で形成することができるので、櫛歯の作製を精度良く行うことが可能になるとともに、櫛歯の作製時間を短縮することが可能になる。
【0086】
<適用例>
次に、上記実施形態の駆動装置1Aの適用例について説明する。
【0087】
そのような適用例としては上記駆動装置1AをAF機構に採用した撮像ユニットがあり、また、その撮像ユニットを設けた撮像装置がある。図17は、撮像ユニット30を示す図である。図18は、撮像ユニット30を備える撮像装置70を示す図である。
【0088】
図17に示されるように、撮像ユニット30は、パッケージ(箱体:ハウジング)35と保護ガラス36とを有し、パッケージ35と保護ガラス36とによって形成される密封空間内には、駆動装置1Aと可動部7に配置された撮像素子31等とを備えている。
【0089】
撮像素子(例えばCCD)31は、R(赤)、G(緑)、B(青)の原色透過フィルターがピクセル単位に市松状に配列(ベイヤー配列)されたエリアセンサとして構成され、被写体像に係る画像信号(画像)を取得する撮像手段として機能する。また、撮像素子31は、密封空間内のリードフレーム37に据え付けられた駆動装置1Aの可動部7に配置(設置)される。
【0090】
このような構成を有する撮像ユニット30においては、櫛歯電極間へ印加する電圧を制御することによって、撮像素子31を両矢印HWのように移動させることができる。
【0091】
また、パッケージ35と保護ガラス36とによって形成される空間へのゴミの侵入を防止するために、撮像ユニット30の組み立ては、例えばクリーンルーム(或いはクリーンベンチ)内で行われる。さらに、撮像ユニット30は、密封空間を形成することによって、駆動装置1Aの駆動部5に用いられる静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dへのゴミの侵入を防ぎ、静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dを保護している。また、撮像ユニット30では、密封空間を形成することによって空気の対流がなくなるため、駆動装置1Aに対する負荷のばらつきを低減することができる。
【0092】
また、撮像ユニット30は、例えば、図18に示される撮像装置70に搭載される。撮像装置70は、撮像ユニット30とズームレンズ等の撮影光学系71とを有している。撮像ユニット30は、撮影光学系71から導かれる被写体像を取得可能な位置に配置される。
【0093】
このような構成を有する撮像装置70においては、駆動装置1Aの櫛歯電極間へ印加する電圧を制御することによって、撮像素子31を光軸L方向に移動させて、焦点調整が行われる。
【0094】
以上のように、小型化が可能な駆動装置1Aは、例えば、撮像ユニット内の部品を駆動させる駆動装置として採用され、撮像ユニットのさらなる小型化を可能にする。
【0095】
<変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は、上記に説明した内容に限定されるものではない。
【0096】
例えば、上記実施形態においては、段差部として凸部TBを有する基台FD1を駆動機構8と接合させることによって、固定櫛部101a〜101dの櫛歯面と移動櫛部102a〜102dの櫛歯面との間に、相対的な位置ずれを発生させていたがこれに限定されない。図19および図20は、変形例にかかる駆動装置1Bの製造工程の説明図である。
【0097】
具体的には、図19に示されるように、段差部として凹部UBを有する基台FD2を用いて、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に相対的な位置ずれを生じさせてもよい。
【0098】
凹部UBは、駆動機構8と基台FD2とが接合された場合に、基台FD2において固定櫛部101a〜101dの存在する位置と対面する位置に設けられる。
【0099】
このような凹部UBを有する基台FD2を用いてオフセットを行う場合は、固定部FX1と基台FD2とを接合し、加工を補助するためのジグ(不図示)を用いて固定櫛部101a〜101dを押し下げて、固定櫛部101a〜101dを基台FD2に固定する。図20に示されるように、固定櫛部101a〜101dが基台FD2に固定されると、固定櫛部101a〜101dに接続された各弾性部16a〜16dは、たわんだ状態で保持され、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に位置ずれ状態が形成される。なお、固定櫛部101a〜101dと基台FD2との固定は、陽極接合、共晶接合または接着等によって行われる。
【0100】
このように、変形例にかかる駆動装置1Bは、段差部として凹部UBを有する基台FD2を用いて、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に相対的な位置ずれを発生させる。
【0101】
また、上記適用例における撮像装置70において、撮像素子31の位置を測定する位置センサをさらに備える構成としてもよい。
【0102】
具体的には、撮像ユニット30の密封空間において、可動部7の位置を測定する位置センサ(不図示)を配置し、当該位置センサから可動部7の位置(測定位置)を取得する。そして、当該位置情報と、印加電圧より換算して取得される可動部7の位置(換算位置)とを比較して、可動部7の現在位置を補正する。詳細には、測定位置と換算位置とが異なっている場合は、測定位置が換算位置と合致するように印加電圧を修正して、可動部7の現在位置を補正するようなフィードバック制御がなされる。
【0103】
これによれば、駆動装置1A(1B)の動作精度が悪化する状況においても、適切な焦点調整を行うことが可能となる。なお、位置センサとしては、例えば、測距対象物に照射したレーザの反射光を用いて測距対象物までの距離を測定するセンサ、或いは、永久磁石と当該永久磁石の磁束密度の変化を検出するホール素子とを用いた磁気センサ(ホールセンサ)を採用することができる。
【0104】
また、上記適用例においては、駆動装置1Aの可動部7に撮像素子31を配置していたがこれに限定されない。具体的には、駆動装置1Aの可動部7をレンズ、ミラーまたは回折格子等の光学素子によって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】静電アクチュエータの構成および動作を示す図である。
【図2】静電アクチュエータの構成および動作を示す図である。
【図3】本実施形態に係る駆動装置の機能ブロック図である。
【図4】本実施形態に係る駆動装置の上面図である。
【図5】駆動前の初期状態における駆動装置の側面図である。
【図6】駆動状態における駆動装置の側面図である。
【図7】駆動装置の初期状態と駆動状態とを示す図である。
【図8】駆動装置の製造工程を示すフローチャートである。
【図9】SOI基板を示す図である。
【図10】形成層の表面にパターンニングされたマスクを示す図である。
【図11】補助層の表面にパターンニングされたマスクを示す図である。
【図12】本実施形態に係る駆動装置の製造工程の説明図である。
【図13】本実施形態に係る駆動装置の製造工程の説明図である。
【図14】本実施形態に係る駆動装置の製造工程の説明図である。
【図15】基台FD1における凸部TBの位置を示す図である。
【図16】本実施形態に係る駆動装置の製造工程の説明図である。
【図17】撮像ユニットを示す図である。
【図18】撮像ユニットを備える撮像装置を示す図である。
【図19】変形例にかかる駆動装置の製造工程の説明図である。
【図20】変形例にかかる駆動装置の製造工程の説明図である。
【符号の説明】
【0106】
1A,1B 駆動装置
10a,10b,10c,10d 静電アクチュエータ
11 第1のフレーム
21 第2のフレーム
101,101a〜101d 固定櫛部
102,102a〜102d 移動櫛部
16a〜16d 弾性部
FD1,FD2 基台
TB 凸部
UB 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電アクチュエータを用いた駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロカメラユニット(Micro Camera Unit:MCU)を搭載することによって、撮影機能が付加された小型の電子機器(例えば携帯電話)が急速に普及している。これに伴いMCU向けのAF機構またはズーム機構に用いられる駆動装置に対しては、小型化の要請が強くなっている。
【0003】
しかし、駆動部にステッピングモータ等を用いた駆動装置では、駆動部のための固有空間を確保する必要があるため、小型化に対応することは困難である。
【0004】
そこで、駆動部の小型化を実現するために、半導体の微細加工技術を駆使して作製されたMEMS(Micro Electro Mechanical System)の静電アクチュエータを駆動部に採用した駆動装置が提案されている。
【0005】
静電アクチュエータは、固定櫛歯電極とこれに対向する移動櫛歯電極とによって構成され、所定方向の変位を発生させるために、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とは相対的なずれ(位置ずれ)を有した状態(「位置ずれ状態」とも称する)に配置される。
【0006】
このような位置ずれ状態を確保する手法としては、固定櫛歯電極が形成された基板と移動櫛歯電極が形成された基板とを貼り合わせる際に、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とを互いにずれを有した状態に配置する技術が知られている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開2006−79078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間のずれを精度良く設定するには、貼り合わせの際に固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とを精度良く位置決めしなければならないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間のずれを精度良く設定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、可動部を駆動させる駆動装置であって、第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに前記第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛歯電極と、前記第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が前記複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛歯電極とを有し、前記移動櫛歯電極が前記可動部に駆動変位を与える駆動機構と、前記移動櫛歯電極と前記固定櫛場電極との間に、前記第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させるオフセット手段とを備え、前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、前記オフセット手段は、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させ、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る駆動装置において、前記オフセット手段は、段差部を有する基台を含み、前記段差部は、前記基台において、前記基台と前記駆動機構とが接合された場合に、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させる位置に存在し、前記段差部は、前記接合にともなって、前記固定櫛歯電極と前記移動櫛歯電極との間に、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る駆動装置において、前記移動櫛歯電極および前記固定櫛歯電極は、SOI基板において2層あるSi層のうち、1層のSi層を用いて一方向からエッチングにより作製されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る駆動装置において、前記段差部は、前記基台に設けられた凸部であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る駆動装置において、前記段差部は、前記基台に設けられた凹部であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る駆動装置において、前記段差部の段差は、櫛歯面においてオフセット方向と平行な辺の長さ以下であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る駆動装置において、前記可動部には撮像素子が配置されることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明に係る駆動装置は、単一のハウジングの内部空間に配置されることを特徴とする。
【0018】
また、請求項9の発明は、撮像装置であって、請求項8の発明に係る撮像ユニットを備えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項10の発明は、可動部を駆動させる駆動装置の製造方法であって、a)第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに前記第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛歯電極と、前記第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が前記複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛歯電極とを有し、前記移動櫛歯電極が前記可動部に駆動変位を与える駆動機構を一体的に形成する工程と、b)前記移動櫛歯電極と前記固定櫛場電極との間に、前記第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させる工程と、前記a)工程においては、前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、前記b)工程においては、前記固定櫛歯電極は、前記弾性部を弾性変形させて前記オフセット方向に移動し、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする。
【0020】
また、請求項11の発明は、可動部を駆動させる駆動装置であって、前記可動部に駆動変位を与える移動櫛歯電極と、前記移動櫛歯電極に交互配置される固定櫛歯電極とを有する駆動機構と、前記固定櫛歯電極と前記移動櫛歯電極との間に、前記移動櫛歯電極の櫛歯面内において櫛歯の延伸方向に垂直なオフセット方向の相対的なずれを発生させるオフセット手段とを備え、前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、前記オフセット手段は、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させ、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1から請求項11に記載の発明によれば、移動櫛歯電極と固定櫛歯電極とを一体的に形成し、固定櫛歯電極をオフセット方向に移動させるので、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間のずれを精度良く設定することが可能になる。
【0022】
また特に、請求項3に記載の発明によれば、移動櫛歯電極および固定櫛歯電極は、SOI基板において2層あるSi層のうち、1層のSi層を用いて一方向からエッチングにより作製されるので、移動櫛歯電極および固定櫛歯電極の作製時間を短縮することができる。
【0023】
また特に、請求項6に記載の発明によれば、段差部の段差は、櫛歯面においてオフセット方向と平行な辺の長さ以下であるので、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間にオフセット方向の相対的なずれが発生した状態において、移動櫛歯電極の各櫛歯面と固定櫛歯電極の各櫛歯面とが互いに重複する部分を確保すること可能となり、ひいては電圧印加時に櫛歯電極間に初期引き込み力を発生させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0025】
<実施形態>
<静電アクチュエータについて>
図1は、静電作用を利用したアクチュエータ(静電アクチュエータ)の構成および動作の第1の状況を示す図である。図1(a)は、静電アクチュエータの上面図であり、図1(b)は、静電アクチュエータの側面図である。
【0026】
また図2は、静電アクチュエータの構成および動作の第2の状況を示す図である。図2(a)は、静電アクチュエータの上面図である。また、図2(b)は、静電アクチュエータの側面図であり、図2(c)は、電圧印加時の静電アクチュエータの側面図である。
【0027】
本実施形態では、駆動装置の駆動部に静電アクチュエータを採用するが、静電アクチュエータは、図1(a)に示されるように、櫛歯部分が互い違いに配置(交互配置)された、第1の櫛歯電極101と第2の櫛歯電極102とによって構成され、2つの櫛歯電極間に印加される電圧によって生じる静電気力を駆動源とする。このような静電アクチュエータは、2つの櫛歯電極の相対的な位置に応じて、異なる方向の力を発生させる。なお、図中にXYZ直角座標系が記入されているが、X軸方向は第1の櫛歯電極101の各歯が伸びる方向(「櫛歯の延伸方向」とも称する)に相当し、Y軸方向は2つの櫛歯電極101,102の歯間溝に沿った方向(「櫛歯の厚さ方向」または「櫛歯面内において櫛歯の延伸方向に垂直な方向」とも称する)に相当し、Z軸方向は2つの櫛歯電極の各歯が交互配置される方向(「交互配置方向」または「ギャップ方向」とも称する)に相当する。また、2つの櫛歯電極の各櫛歯が横方向に交互配置されると表現すると、上記Y軸方向は縦方向とも表現される。
【0028】
例えば、図1(b)に示されるように、固定された第1の櫛歯電極(「固定櫛部」とも称する)101と移動可能な第2の櫛歯電極(「移動櫛部」とも称する)102との櫛歯面が互いにY軸方向にずれなく配置されている状態の移動櫛部102の動きについて説明する。
【0029】
この状態において、スイッチSWの接点が構成され2つの櫛歯電極間に電圧が印加されると、固定櫛部101と移動櫛部102との間にはX方向の引力が発生する。X方向に伸びる弾性材で形成された支持部材103aを介して、固定部104に接続された移動櫛部102は、この引力によって+X方向に移動する。そして、スイッチSWが切断されると、固定櫛部101と移動櫛部102との間に発生していた引力は消滅し、支持部材103aの弾性力によって移動櫛部102は、−X方向に復帰する。
【0030】
このように互いの櫛歯面がY軸方向にずれなく配置されている状態においては、櫛歯電極間に印加する電圧を制御することによって、移動櫛部102を、矢印HYaに示すようにX方向に移動させることができる。
【0031】
次に、図1(b)のように櫛歯面がY軸方向にずれなく配置された状態ではなく、図2(b)に示すように移動櫛部102の櫛歯面が固定櫛部101の櫛歯面に対してY軸方向にずれた状態(「位置ずれ状態」または「オフセット状態」とも称する)の移動櫛部102の動きについて説明する。ただし、図2における支持部材103bは、図1の支持部材103aとは異なり、上面図視においても直線状である。
【0032】
この状態において、スイッチSWの接点が構成され2つの櫛歯電極間に電圧が印加されると、固定櫛部101と移動櫛部102との間にはX方向の引力およびY方向の引力が発生する。これによって、棒状の支持部材103bを介して固定部104に接続された移動櫛部102は、+X方向の力Fxと−Y方向の力Fyとを受ける。支持部材103bは曲げ弾性を有しつつも実質的な伸縮弾性は持たない形状または材質で形成されている。このため、移動櫛部102は−X方向には移動しないが、−Y方向の力Fyを受けることによって、支持部材103bをたわませながら、略−Y方向に移動する(図2(c)参照)。そして、スイッチSWの接点が開放されると、固定櫛部101と移動櫛部102との間に発生していた引力は消滅し、支持部材103bの曲げ弾性力によって移動櫛部102は、略+Y方向に復帰する。
【0033】
このように移動櫛部102の櫛歯面が固定櫛部101に対してY軸方向、換言すれば櫛部の櫛歯面内において櫛歯の延伸方向に垂直な方向(「オフセット方向」とも称する)にずれて配置される状態においては、櫛歯電極間に印加する電圧を制御することによって、移動櫛部102を、矢印HYbに示すように回転移動(回動)させることができる。
【0034】
なお、移動櫛部102を第1方向と第2方向とによって規定された櫛歯面(板面)を持つとともに第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛部102と表現するとともに、固定櫛部101を第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛部101と表現すると、第2方向は上記オフセット方向となる。
【0035】
また、印加された電圧によって櫛歯電極間に発生する力は、櫛歯の数に比例して大きくなり、また、印加する電圧の2乗に比例して大きくなる。一方、櫛歯電極間に発生する力は、櫛歯間の距離に反比例し、櫛歯間の距離が大きくなると小さくなる。また、各櫛歯は、接触による短絡を防止するために、各櫛歯電極間の距離が等しくなるように互いの中立位置に配置されることが好ましく、設計時において、各櫛歯に対して剛性を持たせる等の工夫が施される。
【0036】
<駆動装置について>
<構成>
次に、本実施形態に係る駆動装置1Aについて説明する。図3は、本実施形態に係る駆動装置1Aの機能ブロック図である。図4は、駆動装置1Aの上面図である。図5は、図4のK1方向から視認した場合の駆動前の初期状態における駆動装置1Aの側面図である。なお、図5では、明瞭化のため、固定部FX1および弾性部16a,16cの図示は省略され、固定櫛部101a,101cは破線によって表されている。
【0037】
図3に示されるように、駆動装置1Aは、駆動部5と変位伝達部6と可動部7とを含む駆動機構8を有している。
【0038】
駆動部5は、変位(「駆動変位」とも称する)を発生させ、当該駆動変位を変位伝達部6に与える機能を有している。本実施形態では、駆動部5に上述の静電アクチュエータを採用し、櫛歯電極間に電圧を印加することによって駆動変位を発生させる。具体的には、駆動部5は、オフセット機構5aを有し、静電アクチュエータの移動櫛部の櫛歯面と固定櫛部の櫛歯面とをオフセット方向に互いにずれた状態で配置させる。そして、印加される電圧に応じて駆動部5は、オフセット方向への駆動変位を発生させる(詳細は、後述する)。
【0039】
変位伝達部6は、変位拡大機構6aを有し、駆動部5より与えられた駆動変位を大きく(拡大)した出力変位を生成し、当該出力変位を可動部7に伝達する機能を有している。
【0040】
可動部7は、上記の出力変位に応じて所定方向に移動される。
【0041】
ここで、上記各機能部を備える駆動装置1Aの具体的構成について説明する。
【0042】
図4に示すように、駆動装置1Aは、被駆動体を固定する可動部7の外周に沿って可動部7から離隔配置された略矩形のフレーム構造FRを有している。このフレーム構造FRは半割されており、そのうちの1つ(図中の上半部)に相当する第1のフレーム11と他の1つ(図中の下半部)に相当する第2のフレーム21とが可動部7の対称線C−Cに関して対称的に配置されている。駆動装置1Aはまた、このフレーム構造FRを介して可動部7を駆動するための駆動部5として4つの静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dを有している。各静電アクチュエータ10a〜10dは、固定櫛部101a,101b,101c,101dと、それら固定櫛部101a〜101dにそれぞれ対向する移動櫛部102a,102b,102c,102dとをそれぞれ有し、各櫛歯電極間に印加される電圧に応じた駆動変位をそれぞれ発生させる。
【0043】
フレーム構造FRは図3の変位伝達部6の要素となっているが、以下では、第1のフレーム11の構造および機能について詳述する。第2のフレーム21も第1のフレーム11と同様の構造および機能を有している。
【0044】
第1のフレーム11は、横辺部11Lと、この横辺部11Lの両側に連続する一対の縦辺部11Hとによって形成されており、一端がそれぞれ固定部FX1,FX2に固定された第1の支持部材13aと第2の支持部材13bとによって、一対の縦辺部11Hのそれぞれの中点よりも対称線C−C寄りの部位が支持されている。第1の支持部材13aおよび第2の支持部材13bは、ねじり弾性を持つ材質(たとえばSi)で形成されている。より具体的には、これらの支持部材13a、13bは第1のフレーム11と一体形成されてもよいが、第1のフレーム11に比べて細く(或いは厚さを薄く)設計されることによって、第1のフレーム11に比べて弾性的にねじり変形し易い弾性部材として形成されている。
【0045】
また、第1のフレーム11の両端には、静電アクチュエータ10a,10bの要素となる移動櫛部102a,102bがそれぞれ接続され、各静電アクチュエータ10a,10bからの駆動変位が第1のフレーム11に与えられる。具体的には、各静電アクチュエータ10a,10bにおいては、固定櫛部101a,101bは、移動櫛部102a,102bに対して、移動櫛部102a,102bの櫛歯の厚さ方向(オフセット方向)に位置ずれを有した状態で配置される。これにより、図2(a)と同様の原理によって、各静電アクチュエータ10a,10bは、縦辺部11Hの接続端PFa,PFbにそれぞれ接続された移動櫛部102b,102aをY方向(オフセット方向)に駆動させることができる。
【0046】
移動櫛部102a,102bに対して位置ずれを有した状態に配置される固定櫛部101a,101bは、それぞれ弾性部16a,16bを介して固定部FX1,FX2に接続される。
【0047】
第1の支持部材13aの一端と弾性部16aの一端とが接続される固定部FX1および第2の支持部材13bの一端と弾性部16bの一端とが接続される固定部FX2は、それぞれ後述の基台FD1に接合され、静電アクチュエータ10a,10bおよび第1のフレーム11等を含む駆動機構8を保持する。
【0048】
弾性部16a,16bは、Y軸方向への曲げ弾性を有し、たわんだ状態で基台FD1に固定される(図16参照)。詳細は、後述する。
【0049】
第1のフレーム11において、静電アクチュエータ10aの接続端PFaを始点として、第1の支持部材13aによる支持点(「結合部位」とも称する)BPaを介して延びる第1の長尺部12aは第1のフレーム11の縦辺部11Hのひとつに相当し、第1のフレーム11の変位拡大機構6a(図3)の要素となっている。具体的には、図5に示されるように第1の長尺部12aは、支持点BPaを支点として、XY平面内を傾動可能に構成され、また、支持点BPaは、第1の長尺部12aの中点と第1の長尺部12aの一端PFaとの間に設けられている。このため、第1の長尺部12aは、いわゆる梃子の原理を利用して、第1の長尺部12aの一端(接続端PFa)に与えられる駆動変位を第1の長尺部12aの他端PEaにおいて拡大して出力することが可能となる。
【0050】
また、第1のフレーム11において、静電アクチュエータ10bの接続端PFbを始点として、第2の支持部材13bによる支持点(結合部位)BPbを介して延びる第2の長尺部12bも第1のフレーム11の縦辺部11Hの他のひとつに相当し、第1のフレーム11と同様に第1のフレーム11の変位拡大機構6a(図3)の要素となっている。
【0051】
また、第1のフレーム11の横辺部11Lの略中心は、第1の連結部材14によって可動部7と連結されている。第1の連結部材14は、曲げ弾性を持つ材質(たとえばSi)で形成され、具体的には第1のフレーム11と一体に形成された部材のうちの一部を第1のフレーム11に比べて細く(或いは厚さを薄く)設計することによって第1の連結部材14が得られるものであり、第1のフレーム11と同じ材質であってもこのような相対的なサイズ選択によって第1のフレーム11と比べて弾性変形し易くなっている。
【0052】
第2のフレーム21は、上述の第1のフレーム11と同様の構成を有し、変位伝達部6の要素となっている。簡単には、第2のフレーム21は、第3の支持部材13cと第4の支持部材13dとによって支持されている。また、第2のフレーム21の両端には、移動櫛部102c,102dがそれぞれ接続されている。そして、移動櫛部102c,102dに対向した位置に配置される各固定櫛部101c,101dは、弾性部16c,16dを介してそれぞれ固定部FX1,FX2に接続される。第2のフレーム21は、支持点(結合部位)BPcと支持点(結合部位)BPdとをそれぞれ支点とする第3の長尺部12cと第4の長尺部12dとを有している。これらの長尺部12c,12dは、XY平面内を傾動可能な変位拡大機構6aの要素となっている。
【0053】
また、第2のフレーム21は、第2の連結部材15を有している。第2の連結部材15は、第2のフレーム21に比べて細く(或いは厚さを薄く)設計されており、第2のフレーム21の他の部位に比べて弾性変形し易くなっている。そして、上記第1の連結部材14と当該第2の連結部材15とは、互いに対向する位置(対称位置)において可動部7を保持するように構成されている。
【0054】
以上のように、可動部7の対称線C−Cを境界とする上半部と下半部とは対称的な構成となっており、それぞれが単位駆動機構となっている。この実施形態では2つの単位駆動機構を可動部7に関して対称配置していることになるが、可動部7を移動させる機能そのものはそれぞれのひとつの単位駆動機構が有している。
【0055】
<動作>
次に、上述の構成を有する駆動装置1Aの動作について説明する。図6は、図4のK1方向から視認した場合の駆動状態における駆動装置1Aの側面図である。図7は、駆動装置1Aの初期状態と駆動状態とを示す図である。なお、図7では、明瞭化のため、固定櫛部101a,101cの図示は省略されている。
【0056】
図5に示される駆動前の初期状態において、静電アクチュエータ10aから−Y方向の力Fayが第1の長尺部12aの一端PFa側に加えられると、第1の長尺部12aは、弾性変形可能な第1の支持部材13aにねじれを発生させながら、支持部材13aの弾性力に抗して支持点BPaを中心にXY面内で回転(回動)する。端的に言えば、第1の長尺部12aの一端PFaは−Y方向に変位し、第1の長尺部12aの他端PEaは+Y方向に変位する。
【0057】
また同様に、静電アクチュエータ10cから−Y方向の力Fcyが第3の長尺部12cの一端PFc側に加えられると、第3の長尺部12cは、弾性変形可能な第3の支持部材13cにねじれを発生させながら、支持点BPcを中心にして回転する。端的に言えば、第3の長尺部12cの一端PFcは−Y方向に変位し、第3の長尺部12cの他端PEcは+Y方向に変位する。
【0058】
また、図5においては図示されていない第2の長尺部12bおよび第3の長尺部12dも、それぞれ静電アクチュエータ10b,10dから力を受けて傾動し、各長尺部12b,12dの他端PEb,PEdは、+Y方向に変位する。
【0059】
そして、第1のフレーム11における2つの長尺部12a,12bの各他端PEa,PEbにおいて生じた出力変位は、第1の連結部材14を介して可動部7に伝達されるとともに、第2のフレーム21における2つの長尺部12c,12dの各他端PEc,PEd側において生じた出力変位は、第2の連結部材15を介して可動部7に伝達される。可動部7は、出力変位の増加にともなって、図6に示されるように+Y方向へと移動する。
【0060】
このとき、第1の連結部材14および第2の連結部材15は、可動部7の+Y方向への移動にともなって、弾性変形しながら可動部7を保持する。これによって、駆動装置1Aの円滑な動作が可能となる。
【0061】
具体的には、上述のように各長尺部12a〜12dは、駆動の際には各支持点BPa〜BPdを中心にした回転移動を行う。このため、各長尺部12a〜12dの他端PEa〜PEdにおいて発生する出力変位は、X方向の変位QXとY方向の変位QYとを含んだものとなる。
【0062】
例えば、図7に示される駆動状態において、第1の長尺部12aと第2の長尺部12bとによって発生する出力変位(第1の出力変位)は、矢印AR1のように表される。当該第1の出力変位は、−X方向の変位QX1と+Y方向の変位QY1とによって表すことができる。また、図7に示される駆動状態において、第3の長尺部12cと第4の長尺部12dとによって発生する出力変位(第2の出力変位)は、矢印AR2のように表される。当該第2の出力変位は、+X方向の変位QX2と−Y方向の変位QY2とによって表すことができる。
【0063】
このように、第1のフレーム11における第1の出力変位と、第2のフレーム21における第2の出力変位とは、それぞれ−X方向の変位QX1と+X方向の変位QX2とを有している。このため、図7の駆動状態においては、第1の長尺部12aの他端PEaと第3の長尺部12cの他端PEcとの間の距離は、図5の初期状態における距離と比較して短くなる。したがって、上述のような変位拡大機構6aを用いた駆動装置1Aにおいては、第1の連結部材14と第2の連結部材15とをフレームに比べて弾性変形し易く設計し、動作の際に2つの連結部材を弾性変形させる(ここでは曲げ変形を生じさせる)ことによって、駆動によって生じるX方向の変位を吸収し、駆動装置1Aにおける2つの単位駆動機構の並列的な協働による動作を円滑にしている。
【0064】
また、上記のように駆動装置1Aでは、第1の連結部材14と第2の連結部材15とが、互いに対向する位置において可動部7を挟持している。これによれば、第1の連結部材14から可動部7に加えられる−X方向の力F14と第2の連結部材15から可動部7に加えられる+X方向の力F15とを同一直線上において互いに向き合う方向から可動部7に加えることが可能になる。したがって、動作中の第1の連結部材14からの力F14と第2の連結部材15からの力F15とによって可動部7のバランス(均衡)を乱すことなく、可動部7の姿勢を保ったまま(維持したまま)で可動部7をY方向へとX軸に平行に移動させることができる。
【0065】
上述のように、出力変位の増加にともなって+Y方向へと移動する可動部7は、各静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dからの力と、各長尺部12a,12b,12c,12dの傾動によって生じる各支持部材13a,13b,13c,13dのねじれの復元力とが釣り合う位置において停止する。例えば、櫛歯電極間への電圧の印加を停止すると、ねじれを生じていた各支持部材13a〜13dの復元力によって、可動部7は元の位置に復帰する。このように可動部7の変位は、静電アクチュエータ10a〜10dにおいて発生する力とねじれの復元力とによって決定されることから、駆動装置1Aにおける可動部7の変位は、櫛歯電極間に印加される電圧の大きさを制御することによって調整される。
【0066】
<製法>
次に、駆動装置1Aの製造方法について説明する。図8は、駆動装置1Aの製造工程を示すフローチャートである。図9は、SOI(Silicon On Insulator)基板50を示す図である。図10は、形成層SL1の表面にパターンニングされたマスクを示す図であり、図11は、補助層SL2の表面にパターンニングされたマスクを示す図である。図12、図13、図14および図16は、駆動装置1Aの各製造工程の説明図である。図15は、基台FD1における凸部TBの位置を示す図である。
【0067】
図8に示されるように、ステップSP1〜SP3では、フレーム11,21および駆動部5等の駆動機構8がSOI基板50から一体的に形成され、ステップSP4では、作製された駆動機構8が基台FD1に接合される。
【0068】
具体的には、ステップSP1では、フレーム11,21および駆動部5等の駆動機構8の外形がSOI基板50において形成される。ここで、SOI基板50(図9参照)は、比較的厚い(例えば、200μm)Si層(「形成層」とも称する)SL1と、比較的薄い(例えば、5μm)Si層(「補助層」とも称する)SL2と、当該2のSi層SL1,SL2に挟まれた比較的薄い(例えば、5μm)SiO2層(「犠牲層」とも称する)GSとを有している。
【0069】
ステップSP1では、図4に示される駆動装置1Aの上面外形に応じたマスクが、SOI基板50の形成層SL1の表面にパターンニングされ、駆動装置1Aの下面外形に応じたマスクがSOI基板50の補助層SL2の表面にパターンニングされる。なお、形成層SL1の表面に施されるパターンニングでは、駆動装置1Aの上面外形のうち、連結部材14,15と支持部材13a〜13dと弾性部16a〜16dとに相当する部分(図10において破線で示される部分)のマスクは、除かれる。また、補助層SL2の表面に施されるパターンニングでは、駆動装置1Aの下面外形のうち、移動櫛部102a〜102dに相当する部分(図11において破線で示される部分)のマスクは、除かれる。
【0070】
そして、ドライエッチングによって犠牲層GSの表面まで、形成層SL1および補助層SL2における不要な薄膜(Si層)がそれぞれ除去される(図12参照)。このステップSP1によって、図12に示されるSOI基板50の形成層SL1には、櫛歯形状の駆動部5等が形成される。
【0071】
ステップSP2では、犠牲層GSが除去される。犠牲層GSの除去は、SiO2を溶解させるHF(フッ酸)を用いたウェットエッチングによって行われる。詳細には、ステップSP1のエッチングにより露出された犠牲層GSがウェットエッチングによって除去される。例えば、この犠牲層GSの除去によって、固定櫛部101a〜101d、フレーム11,21および固定部FX1,FX2等における非露出の犠牲層GSは除去されず、移動櫛部102a〜102dにおける露出された犠牲層GSは除去される(図13参照)。
【0072】
上記のようなステップSP1およびSP2を経ることによって、駆動機構8が形成される。具体的には、駆動機構8のうち、移動櫛部102a〜102d(図13では、移動櫛部102a,102c)は形成層SL1の1層で形成され、固定部FX1,FX2、固定櫛部101a〜101d、フレーム11,21および可動部7は、形成層SL1、犠牲層GSおよび補助層SL2の3層で形成される。また、駆動機構8のうち、連結部材14,15、支持部材13a〜13dおよび弾性部16a〜16dは、比較的薄い補助層SL2の1層によって形成され、他の部位に比べて曲げ変形、或いはねじり変形し易い弾性部材として形成される。
【0073】
次のステップSP3(図8)では、ワイヤーボンディング等により駆動部5に用いられる静電アクチュエータ10a〜10dへの電気的な配線が行われる。
【0074】
ステップSP4では、駆動機構8と基台FD1との接合が行われる。
【0075】
接合に用いられる基台FD1は、図14に示されるように、その接合面MFにおいて段差部(ここでは、凸部TB)を有している。この段差部(凸部TB)は、基台FD1において、駆動機構8の固定部FX1,FX2と基台FD1とが接合された場合に、固定櫛部101a〜101dを+Y方向に移動させる位置に存在する。例えば、図15に示されるように、凸部TBは、基台FD1(破線で囲まれる部分)において固定櫛部101a〜101dと接触する位置に存在する。
【0076】
このような凸部TBを有する基台FD1と駆動機構8とが接合されると(ステップSP4)、固定櫛部101a〜101dは、各凸部TBによって+Y方向に押し上げられ、Y軸方向の曲げ弾性を有する各弾性部16a〜16dはたわんだ状態となる(図16参照)。各弾性部16a〜16dがたわんだ状態、すなわち固定櫛部101a〜101dが+Y方向に移動した状態で固定されると、各固定櫛部101a〜101dは、移動櫛部102a〜102dに対してY方向(オフセット方向)の相対的な位置ずれ(単に「ずれ」とも称する)を有した状態になる。
【0077】
なお、段差部の段差(ここでは、凸部TBの高さ)(「オフセット量」とも称する)は、櫛歯の厚さ(詳細には、櫛歯面においてオフセット方向と平行な辺の長さ)以下であることが好ましい。これによれば、オフセット状態において、移動櫛部102a〜102dの各櫛歯面と固定櫛部101a〜101dの各櫛歯面とが互いに重複する部分を確保することができるので、電圧印加時に、櫛歯電極間に初期引き込み力を発生させることが可能となる。
【0078】
また、段差の大きさを調整することによって、或いは、駆動機構8と基台FD1とが接合されたときに段差部が固定櫛部101a〜101dまたは弾性部16a〜16bと接触する位置を調整することによって、移動櫛部102a〜102dの櫛歯面と固定櫛部101a〜101dの櫛歯面とのずれ量を精度良く設定することが可能となる。
【0079】
このように、駆動機構8と基台FD1との接合では、固定櫛部101a〜101dを移動させて固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に位置ずれを生じさせるオフセットが行われる。
【0080】
上述のように、駆動装置1Aの製造工程では、ステップSP1〜SP3において、エッチング等により駆動機構8が形成される。固定櫛部101a〜101dおよびこれらに対応する移動櫛部102a〜102dは、SOI基板5の形成層SL1を用いて形成されるので、ステップSP1〜SP3を経て形成された駆動機構(「一体形成後の駆動機構」とも称する)8の固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとは、形成層SL1が存在した同一平面内において形成されることになる。したがって、一体形成後の駆動機構8では、固定櫛部101a〜101dの各櫛歯面と、移動櫛部102a〜102dの各櫛歯面とはY軸方向にずれなく配置された状態となる。
【0081】
そして、ステップSP4において、凸部TBを有する基台FD1と駆動機構8とを接合させることによって、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間にY軸方向の相対的な位置ずれを発生させ、位置ずれ状態(オフセット状態)にする。これにより、各静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dは、電圧の印加に応じてY方向の駆動変位を発生させることが可能となる。
【0082】
なお、基台FD1は、駆動機構8との接合によって、固定櫛歯電極を移動させて、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極との間に、移動櫛歯電極における各櫛歯の延伸方向に垂直なオフセット方向のずれを発生させるオフセット手段として機能するとも表現される。
【0083】
また、弾性部16a〜16dは、X軸に垂直な平面によるその切断面において、Z軸方向の辺の長さはY軸方向の辺の長さに比べて長く形成されるため、弾性部16a〜16dは、Y軸方向に曲げ変形し易く、Z軸方向には弾性変形し難い弾性部材となる。これによれば、弾性部16a〜16dは、固定櫛部101a〜101dを一方向(ここではオフセット方向)に案内する案内部材として機能し、移動櫛部102a〜102dと固定櫛部101a〜101dとのギャップ間の距離を保ったまま、オフセットすることが可能になる。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る駆動装置1Aは、第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛部102a〜102dと、第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛部101a〜101dとを有し、移動櫛部102a〜102dが可動部7に駆動変位を与える駆動機構8と、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に、第2方向をオフセット方向として相対的な位置ずれを発生させるオフセット機構5aとを備える。そして、固定櫛部101a〜101dは、オフセット方向に弾性変形可能な弾性部16a〜16dを介して移動櫛部102a〜102dとそれぞれ一体的に形成され、オフセット機構5aは、弾性部16a〜16dを弾性変形させて固定櫛部101a〜101dをオフセット方向に移動させ、相対的なずれを発生させる。これによれば、移動櫛部102a〜102dと対応する固定櫛部101a〜101dとを一体的に形成し、固定櫛部101a〜101dをそれぞれオフセット方向に移動させるので、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間のずれを精度良く設定することが可能になる。
【0085】
また、位置ずれ状態を確保する手法として、SiO2層を介して上下に櫛歯厚さ分のSi層を有するSOI基板を上下方向から各々エッチングすることで固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とをそれぞれ形成し、位置ずれを有した状態の静電アクチュエータを作製する手法が考えられる。しかし、当該手法では、固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とがそれぞれ上下方向から別々の工程で作製されるため、櫛歯の作製を精度良く行うことが困難であり、また、櫛歯の作製に多大な時間を要してしまう。これに対して、駆動装置1Aでは、一方向からのエッチングによって固定櫛歯電極と移動櫛歯電極とを同じ工程で形成することができるので、櫛歯の作製を精度良く行うことが可能になるとともに、櫛歯の作製時間を短縮することが可能になる。
【0086】
<適用例>
次に、上記実施形態の駆動装置1Aの適用例について説明する。
【0087】
そのような適用例としては上記駆動装置1AをAF機構に採用した撮像ユニットがあり、また、その撮像ユニットを設けた撮像装置がある。図17は、撮像ユニット30を示す図である。図18は、撮像ユニット30を備える撮像装置70を示す図である。
【0088】
図17に示されるように、撮像ユニット30は、パッケージ(箱体:ハウジング)35と保護ガラス36とを有し、パッケージ35と保護ガラス36とによって形成される密封空間内には、駆動装置1Aと可動部7に配置された撮像素子31等とを備えている。
【0089】
撮像素子(例えばCCD)31は、R(赤)、G(緑)、B(青)の原色透過フィルターがピクセル単位に市松状に配列(ベイヤー配列)されたエリアセンサとして構成され、被写体像に係る画像信号(画像)を取得する撮像手段として機能する。また、撮像素子31は、密封空間内のリードフレーム37に据え付けられた駆動装置1Aの可動部7に配置(設置)される。
【0090】
このような構成を有する撮像ユニット30においては、櫛歯電極間へ印加する電圧を制御することによって、撮像素子31を両矢印HWのように移動させることができる。
【0091】
また、パッケージ35と保護ガラス36とによって形成される空間へのゴミの侵入を防止するために、撮像ユニット30の組み立ては、例えばクリーンルーム(或いはクリーンベンチ)内で行われる。さらに、撮像ユニット30は、密封空間を形成することによって、駆動装置1Aの駆動部5に用いられる静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dへのゴミの侵入を防ぎ、静電アクチュエータ10a,10b,10c,10dを保護している。また、撮像ユニット30では、密封空間を形成することによって空気の対流がなくなるため、駆動装置1Aに対する負荷のばらつきを低減することができる。
【0092】
また、撮像ユニット30は、例えば、図18に示される撮像装置70に搭載される。撮像装置70は、撮像ユニット30とズームレンズ等の撮影光学系71とを有している。撮像ユニット30は、撮影光学系71から導かれる被写体像を取得可能な位置に配置される。
【0093】
このような構成を有する撮像装置70においては、駆動装置1Aの櫛歯電極間へ印加する電圧を制御することによって、撮像素子31を光軸L方向に移動させて、焦点調整が行われる。
【0094】
以上のように、小型化が可能な駆動装置1Aは、例えば、撮像ユニット内の部品を駆動させる駆動装置として採用され、撮像ユニットのさらなる小型化を可能にする。
【0095】
<変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は、上記に説明した内容に限定されるものではない。
【0096】
例えば、上記実施形態においては、段差部として凸部TBを有する基台FD1を駆動機構8と接合させることによって、固定櫛部101a〜101dの櫛歯面と移動櫛部102a〜102dの櫛歯面との間に、相対的な位置ずれを発生させていたがこれに限定されない。図19および図20は、変形例にかかる駆動装置1Bの製造工程の説明図である。
【0097】
具体的には、図19に示されるように、段差部として凹部UBを有する基台FD2を用いて、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に相対的な位置ずれを生じさせてもよい。
【0098】
凹部UBは、駆動機構8と基台FD2とが接合された場合に、基台FD2において固定櫛部101a〜101dの存在する位置と対面する位置に設けられる。
【0099】
このような凹部UBを有する基台FD2を用いてオフセットを行う場合は、固定部FX1と基台FD2とを接合し、加工を補助するためのジグ(不図示)を用いて固定櫛部101a〜101dを押し下げて、固定櫛部101a〜101dを基台FD2に固定する。図20に示されるように、固定櫛部101a〜101dが基台FD2に固定されると、固定櫛部101a〜101dに接続された各弾性部16a〜16dは、たわんだ状態で保持され、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に位置ずれ状態が形成される。なお、固定櫛部101a〜101dと基台FD2との固定は、陽極接合、共晶接合または接着等によって行われる。
【0100】
このように、変形例にかかる駆動装置1Bは、段差部として凹部UBを有する基台FD2を用いて、固定櫛部101a〜101dと移動櫛部102a〜102dとの間に相対的な位置ずれを発生させる。
【0101】
また、上記適用例における撮像装置70において、撮像素子31の位置を測定する位置センサをさらに備える構成としてもよい。
【0102】
具体的には、撮像ユニット30の密封空間において、可動部7の位置を測定する位置センサ(不図示)を配置し、当該位置センサから可動部7の位置(測定位置)を取得する。そして、当該位置情報と、印加電圧より換算して取得される可動部7の位置(換算位置)とを比較して、可動部7の現在位置を補正する。詳細には、測定位置と換算位置とが異なっている場合は、測定位置が換算位置と合致するように印加電圧を修正して、可動部7の現在位置を補正するようなフィードバック制御がなされる。
【0103】
これによれば、駆動装置1A(1B)の動作精度が悪化する状況においても、適切な焦点調整を行うことが可能となる。なお、位置センサとしては、例えば、測距対象物に照射したレーザの反射光を用いて測距対象物までの距離を測定するセンサ、或いは、永久磁石と当該永久磁石の磁束密度の変化を検出するホール素子とを用いた磁気センサ(ホールセンサ)を採用することができる。
【0104】
また、上記適用例においては、駆動装置1Aの可動部7に撮像素子31を配置していたがこれに限定されない。具体的には、駆動装置1Aの可動部7をレンズ、ミラーまたは回折格子等の光学素子によって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】静電アクチュエータの構成および動作を示す図である。
【図2】静電アクチュエータの構成および動作を示す図である。
【図3】本実施形態に係る駆動装置の機能ブロック図である。
【図4】本実施形態に係る駆動装置の上面図である。
【図5】駆動前の初期状態における駆動装置の側面図である。
【図6】駆動状態における駆動装置の側面図である。
【図7】駆動装置の初期状態と駆動状態とを示す図である。
【図8】駆動装置の製造工程を示すフローチャートである。
【図9】SOI基板を示す図である。
【図10】形成層の表面にパターンニングされたマスクを示す図である。
【図11】補助層の表面にパターンニングされたマスクを示す図である。
【図12】本実施形態に係る駆動装置の製造工程の説明図である。
【図13】本実施形態に係る駆動装置の製造工程の説明図である。
【図14】本実施形態に係る駆動装置の製造工程の説明図である。
【図15】基台FD1における凸部TBの位置を示す図である。
【図16】本実施形態に係る駆動装置の製造工程の説明図である。
【図17】撮像ユニットを示す図である。
【図18】撮像ユニットを備える撮像装置を示す図である。
【図19】変形例にかかる駆動装置の製造工程の説明図である。
【図20】変形例にかかる駆動装置の製造工程の説明図である。
【符号の説明】
【0106】
1A,1B 駆動装置
10a,10b,10c,10d 静電アクチュエータ
11 第1のフレーム
21 第2のフレーム
101,101a〜101d 固定櫛部
102,102a〜102d 移動櫛部
16a〜16d 弾性部
FD1,FD2 基台
TB 凸部
UB 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を駆動させる駆動装置であって、
第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに前記第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛歯電極と、前記第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が前記複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛歯電極とを有し、前記移動櫛歯電極が前記可動部に駆動変位を与える駆動機構と、
前記移動櫛歯電極と前記固定櫛場電極との間に、前記第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させるオフセット手段と、
を備え、
前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、
前記オフセット手段は、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させ、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記オフセット手段は、段差部を有する基台を含み、
前記段差部は、前記基台において、前記基台と前記駆動機構とが接合された場合に、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させる位置に存在し、
前記段差部は、前記接合にともなって、前記固定櫛歯電極と前記移動櫛歯電極との間に、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置において、
前記移動櫛歯電極および前記固定櫛歯電極は、SOI基板において2層あるSi層のうち、1層のSi層を用いて一方向からエッチングにより作製されることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の駆動装置において、
前記段差部は、前記基台に設けられた凸部であることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の駆動装置において、
前記段差部は、前記基台に設けられた凹部であることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の駆動装置において、
前記段差部の段差は、櫛歯面においてオフセット方向と平行な辺の長さ以下であることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の駆動装置において、
前記可動部には撮像素子が配置されることを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動装置は、単一のハウジングの内部空間に配置されることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の撮像ユニットを備える撮像装置。
【請求項10】
可動部を駆動させる駆動装置の製造方法であって、
a)第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに前記第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛歯電極と、前記第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が前記複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛歯電極とを有し、前記移動櫛歯電極が前記可動部に駆動変位を与える駆動機構を一体的に形成する工程と、
b)前記移動櫛歯電極と前記固定櫛場電極との間に、前記第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させる工程と、
前記a)工程においては、前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、
前記b)工程においては、前記固定櫛歯電極は、前記弾性部を弾性変形させて前記オフセット方向に移動し、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする製造方法。
【請求項11】
可動部を駆動させる駆動装置であって、
前記可動部に駆動変位を与える移動櫛歯電極と、前記移動櫛歯電極に交互配置される固定櫛歯電極とを有する駆動機構と、
前記固定櫛歯電極と前記移動櫛歯電極との間に、前記移動櫛歯電極の櫛歯面内において櫛歯の延伸方向に垂直なオフセット方向の相対的なずれを発生させるオフセット手段と、
を備え、
前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、
前記オフセット手段は、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させ、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする駆動装置。
【請求項1】
可動部を駆動させる駆動装置であって、
第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに前記第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛歯電極と、前記第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が前記複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛歯電極とを有し、前記移動櫛歯電極が前記可動部に駆動変位を与える駆動機構と、
前記移動櫛歯電極と前記固定櫛場電極との間に、前記第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させるオフセット手段と、
を備え、
前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、
前記オフセット手段は、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させ、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記オフセット手段は、段差部を有する基台を含み、
前記段差部は、前記基台において、前記基台と前記駆動機構とが接合された場合に、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させる位置に存在し、
前記段差部は、前記接合にともなって、前記固定櫛歯電極と前記移動櫛歯電極との間に、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置において、
前記移動櫛歯電極および前記固定櫛歯電極は、SOI基板において2層あるSi層のうち、1層のSi層を用いて一方向からエッチングにより作製されることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の駆動装置において、
前記段差部は、前記基台に設けられた凸部であることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の駆動装置において、
前記段差部は、前記基台に設けられた凹部であることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の駆動装置において、
前記段差部の段差は、櫛歯面においてオフセット方向と平行な辺の長さ以下であることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の駆動装置において、
前記可動部には撮像素子が配置されることを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動装置は、単一のハウジングの内部空間に配置されることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の撮像ユニットを備える撮像装置。
【請求項10】
可動部を駆動させる駆動装置の製造方法であって、
a)第1方向と第2方向とによって規定された板面を持つとともに前記第1方向を歯高方向とする複数の第1歯板が互いに間隔を隔てて第3方向に配列されてなる移動櫛歯電極と、前記第1方向を歯高方向とする複数の第2歯板が前記複数の第1歯板に対して略平行に交互配列されてなる固定櫛歯電極とを有し、前記移動櫛歯電極が前記可動部に駆動変位を与える駆動機構を一体的に形成する工程と、
b)前記移動櫛歯電極と前記固定櫛場電極との間に、前記第2方向をオフセット方向として相対的なずれを発生させる工程と、
前記a)工程においては、前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、
前記b)工程においては、前記固定櫛歯電極は、前記弾性部を弾性変形させて前記オフセット方向に移動し、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする製造方法。
【請求項11】
可動部を駆動させる駆動装置であって、
前記可動部に駆動変位を与える移動櫛歯電極と、前記移動櫛歯電極に交互配置される固定櫛歯電極とを有する駆動機構と、
前記固定櫛歯電極と前記移動櫛歯電極との間に、前記移動櫛歯電極の櫛歯面内において櫛歯の延伸方向に垂直なオフセット方向の相対的なずれを発生させるオフセット手段と、
を備え、
前記固定櫛歯電極は、前記オフセット方向に弾性変形可能な弾性部を介して前記移動櫛歯電極と一体的に形成され、
前記オフセット手段は、前記弾性部を弾性変形させて前記固定櫛歯電極を前記オフセット方向に移動させ、前記相対的なずれを発生させることを特徴とする駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−34779(P2009−34779A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201904(P2007−201904)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
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