説明

駆動装置および駆動装置の製造方法

【課題】電気的接続の信頼性を向上させた駆動装置および駆動装置の製造方法を提供すること
【解決手段】プリント配線板13は、スルーホール44が形成された基材40と、その基材40の下面40bに形成された配線41と、その配線42と電気的に接続された端子部42と、とを備え、端子部42は、基材40の上面40aにおいてスルーホール44を塞ぐように設置された基部42aと、その基部42aから立設しスルーホール44を貫通するバンプ39よりも径が小さい立設部42bとを有するとともに、基部42aはスルーホール44を通じて配線41と接続されており、さらに、プリント配線板13は、基材40の下面40bにおいて配線41及びスルーホール44を覆うように形成される合成樹脂層43を備え、バンプ39が、プリント配線板13に形成された合成樹脂層43を貫通した状態で立設部40bと電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置および駆動装置の製造方法に関し、特に、インクジェットプリンタ装置に用いられる液体吐出ヘッドなどの駆動装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクジェット式のプリンタ装置などの液体吐出装置においては、圧電アクチュエータを駆動することによって複数のノズルから選択的に液体を吐出する液体吐出ヘッドが用いられている。この液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエータが複数のノズルに対応する複数の駆動部を備えており、その駆動部を駆動することで対応するノズルから液体を吐出するものである。より具体的には、複数の駆動部にそれぞれ対応して個別電極が設けられており、これらの個別電極は、配線基板に設けられた複数の配線の端子とそれぞれ電気的に接続され、選択的に駆動信号が供給されるようになっている。なお、配線基板は配線が絶縁層でコートされているが、端子だけは絶縁層に形成された開口から露出されるようになっているので、個別電極との電気的な接続が可能となっている。
【0003】
このような液体吐出ヘッドにおいて、配線基板の端子は、開口を形成するときの位置ずれを見込んで大き目に形成されていた。しかし、その構成では、端子の間を通る配線の形成エリアが狭くなり、配線密度が高密度化してしまうという問題があった。そこで、端子の面積を小さくできる接続構造が望まれていた。このような要請に対し、本出願人は、圧電アクチュエータには個別電極と電気的に接続されたバンプを形成し、配線基板は、基板上に形成された配線と端子を未硬化の合成樹脂層で覆う構成とし、圧電アクチュエータ側のバンプを合成樹脂層に押し当てて合成樹脂層を貫通させることでバンプと端子を接触させ、その後、未硬化の合成樹脂層を加熱して硬化させる、駆動装置と配線基板との接続構造を提案している。(特許文献1)これによれば、端子を露出させる開口を形成する必要がないので、端子を大き目に形成しなくてもよく、配線基板の配線密度を低減させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−305847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この接続構造では、バンプと配線基板の端子は、接触により電気的に接続されるため、ハンダ接合のように物理的にも接合される電気的接続に比べ、電気的接続の信頼性の面では劣っていた。
【0006】
そこで本発明は、配線基板の配線密度を低減させた従来発明からさらに改良を加え、その電気的接続の信頼性を向上させた駆動装置および駆動装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る駆動装置は、駆動素子に対応する個別電極を備えた駆動ユニットと、前記個別電極と電気的に接続され、その個別電極に対して前記駆動素子を駆動する為の信号を供給するプリント配線板とを備えた駆動装置において、前記駆動ユニットは、前記プリント配線板と対向する側の面に突出状態で形成され、前記個別電極と電気的に接続されたバンプを備え、前記プリント配線板は、スルーホールが形成された基材と、その基材の前記駆動ユニットと対向する側の面に形成された配線と、その配線と電気的に接続された端子部と、とを備え、前記端子部は、前記基材の前記駆動ユニットと対向する側と反対側の面において前記スルーホールを塞ぐように設置された基部と、その基部から立設し前記スルーホールを貫通する前記バンプよりも径が小さい立設部とを有するとともに、前記基部は前記スルーホールを通じて前記配線と接続されており、さらに、前記プリント配線板は、前記基材の前記駆動ユニットと対向する側の面において前記配線及び前記スルーホールを覆うように形成される合成樹脂層を備え、前記バンプが、前記プリント配線板に形成された前記合成樹脂層を貫通した状態で前記立設部と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成とすることにより、プリント配線板に形成された合成樹脂層を貫通したバンプは、プリント配線板の端子部のうちの、そのバンプよりも径の小さい立設部と押圧されることとなる。したがって、バンプに対して立設部が食い込んだ状態で接触することが期待でき、これにより駆動ユニットとプリント配線板とが離間する方向に力が加わったとしても、バンプと端子部とが剥離しにくくなるので、電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る駆動装置の製造方法は、駆動素子に対応する個別電極を備えた駆動ユニットと、前記個別電極と電気的に接続され、その個別電極に対して前記駆動素子を駆動する為の信号を供給するプリント配線板とを備えた駆動装置の製造方法であって、前記駆動ユニット形成工程と、前記プリント配線板形成工程とを備え、前記駆動ユニット形成工程は、前記プリント配線板と対向する側の面において突出し、前記個別電極と電気的に接続する導電性バンプを形成するバンプ形成工程を含み、前記プリント配線板形成工程は、スルーホールを有する基材を形成する基材形成工程と、前記基材の前記駆動ユニットと対向する側の面に配線を形成する配線形成工程と、前記基材の前記駆動ユニットと対向する側と反対側の面において前記スルーホールを塞ぐように配置されるともに、前記スルーホールを通じて前記配線と接続される基部と、その基部から前記スルーホールを貫通するように立設する前記バンプよりも径が小さい立設部と、を有する端子部を形成する端子部形成工程と、前記駆動ユニットと対向する側の面に、前記配線と前記スルーホールを覆うように未効果の合成樹脂層を形成する合成樹脂層形成工程と、含み、前記駆動ユニット形成工程と、前記プリント配線板形成工程の後に、前記基材の前記駆動ユニットと対向する側と反対側の面に配された加熱押圧手段を前記基部に接触させた状態で、前記プリント配線板に塗布された前記未硬化の合成樹脂層を前記駆動ユニットの前記バンプに向けて押圧し、前記バンプにこの合成樹脂層を貫通させて、前記バンプを前記立設部と接触させる押圧接触工程を行い、その後、前記加熱押圧手段から前記基部を介して伝わる熱によって前記合成樹脂層を硬化させる硬化工程を行う、ことを特徴とする
【0010】
このような構成とすることにより、プリント配線板に形成された合成樹脂層を貫通したバンプは、プリント配線板の端子部のうちの、そのバンプよりも径の小さい立設部と押圧されることとなる。したがって、バンプに対して立設部が食い込んだ状態で接触することが期待でき、これにより駆動ユニットとプリント配線板とが離間する方向に力が加わったとしても、バンプと端子部とが剥離しにくくなるので、電気的接続の信頼性を向上させることができる。また、基部が駆動ユニットと対向する側と反対側の面に形成されている為、押圧接触工程のときに、加熱押圧手段と基部とが直接接触する。これにより、加熱押圧手段の熱が、基部に立設する立設部に伝わるとともに、立設部と接触するバンプに伝わる。その為、従来のような、加熱押圧手段と端子部とが直接接触しないものと比べると、加熱押圧手段の熱が端子部を通じてバンプに伝わり易く、バンプの周囲の合成樹脂層へ伝わり易い。従って、バンプ周囲の合成樹脂層に加熱押圧手段の熱が伝わり易く、合成樹脂層を早く硬化させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来に比べて駆動ユニットのバンプとプリント配線板の端子部の電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るCOF13が接続された吐出ヘッド10の分解斜視図である。
【図2】図1に示すCOF13が接続された吐出ヘッド10の一部拡大断面図である。
【図3】基部42aを形成する工程を示す一部拡大断面図である。
【図4】スルーホール44を形成する工程を示す一部拡大断面図である。
【図5】立設部42bを形成する工程を示す一部拡大断面図である。
【図6】スルーホール44を拡張する工程を示す一部拡大断面図である。
【図7】導線41及び導線45を形成する工程を示す一部拡大断面図である。
【図8】合成樹脂層43を塗布する工程を示す一部拡大断面図である。
【図9】COF13を圧電アクチュエータ12に接合する押圧接触工程を示す一部拡大断面図である。
【図10】合成樹脂層43を硬化する工程を示す一部拡大断面図である。
【図11】本発明の変更形態1のCOF113を示す一部拡大断面図である。
【図12】本発明の変更形態2のCOF213を示す一部拡大断面図である。
【図13】基部242aを形成する工程を示す一部拡大断面図である。
【図14】立設部242bを形成する工程を示す一部拡大断面図である。
【図15】スルーホール244を拡張する工程を示す一部拡大断面図である。
【図16】合成樹脂層43を塗布する工程を示す一部拡大断面図である。
【図17】COF213と圧電アクチュエータ12とを接合させる接合工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(配線構造体の概略構成)
以下、本発明に係る実施形態を図1、図2を参照して説明する。図1は本発明の実施形態に係るCOF13が接続された吐出ヘッド10の分解斜視図である。また、図2はCOF13が接続された吐出ヘッド10の一部拡大断面図である。なお、本明細書中における上下方向、左右方向、及び、前後方向は、図1の矢印で示す上下方向、左右方向、及び、前後方向である。
【0014】
なお、本実施形態において、吐出ヘッド10は、インクジェットプリンタ(図示せず)の左右方向に往復移動可能なキャリッジ(図示せず)の下部に搭載され、キャリッジの下方において前後方向に搬送される記録用紙に向かってインクカートリッジから供給されたインクを吐出するものを一例として挙げる。
【0015】
図1に示すように、吐出ヘッド10は、複数枚のプレートが積層された流路ユニット11と、その流路ユニット11に対して重ねて接着されるユニモルフ方式の圧電アクチュエータ12(駆動ユニット)とを備えている。流路ユニット11は、最下層の下面側に開口したノズル24(図2参照)から下向きにインクが噴射される構成となっている。圧電アクチュエータ12は、流路ユニット11に対面配置される振動板26と、振動板26の上面に形成された後述する共通電極29(図2参照)と、共通電極29の上面を覆うように設けられた圧電シート30と、圧電シート30の上面に多数配列された個別電極31とを備えている。個別電極31は、後述する圧力室22と相似の略長円状の主電極部31aと、この主電極部31aの長手方向の端部から圧力室22と重ならない位置まで引き出された個別電極端子31bとを有している。圧電シート30の上面の所要箇所には、共通電極29(図2参照)とスルーホール(図示せず)を介して導通する共通電極端子32が形成されている。
【0016】
圧電アクチュエータ12の上面には、駆動IC13aが搭載されたフレキシブルな配線部材であるCOF(Chip On Film)13(プリント配線板)の一端部が重ねて配置され、そのCOF13の下面に露出した電極ランド42(図2参照)が、圧電アクチュエータ12の各電極端子31a,32に導通接続されている。COF13の他端部は、駆動信号供給源となる制御装置(図示せず)に電気的に接続されている。また、振動板26にはメッシュ状のフィルタ33が被せられたインク供給口34が形成されており、流路ユニット11にもそのインク供給口34と連通するインク供給口25が形成されている。なお、電極ランド42は、本発明の「端子部」の一例である。
【0017】
図2に示すように、流路ユニット11は複数枚のプレート15〜18が積層された構成となっている。プレート15〜18には開孔又は溝が形成されており、各プレート15〜18が積層されることによって夫々の開孔及び溝が連通し、インクの流路が形成されるようになっている。流路ユニット11の流路は、インク供給口25(図1参照)に連通する共通液室20と、共通液室20から多数分岐した接続通路21と、接続通路21の下流端にそれぞれ連続して圧電アクチュエータ12に対向するように4列に配置された圧力室22と、圧力室22を流路ユニット11の下面に開口するノズル24にそれぞれ連通させる流出路23とを備えている。
【0018】
圧電アクチュエータ12は、流路ユニット11の上面に重ねて接着された振動板26を有している。振動板26は、ステンレス板などの金属板からなる振動板本体27と、振動板本体27の上面に成膜されたアルミナ等からなる絶縁層28とを有している。振動板26の上面には、多数の圧力室22に対応して連続配置された共通電極29が印刷形成されている。共通電極29の上面には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなるシート状の圧電シート30が形成されている。圧電シート30の上面には、各圧力室22の夫々に対応するよう配置された多数の個別電極31が4列に印刷形成されている。
【0019】
圧電アクチュエータ12の圧電シート30の分極方向はその厚み方向(上下方向)であり、圧電アクチュエータ12は、1枚の圧電シート30のうち共通電極29と個別電極31とで挟まれた構成となっている。個別電極31に個別電極端子31bを介して電圧が印加されると、圧電シート30における個別電極31の主電極部31aと共通電極29とに挟まれた電界発生部分が、活性部Aとして働いて分極方向と直角方向に縮む。一方、振動板26は、電界の影響を受けず自発的には縮まないため、圧電シート30と振動板26との間で、分極方向と垂直な方向(左右方向)への歪みに差を生じることとなり、圧電シート30及び振動板26が圧力室22に向けて凸となるように変形する(ユニモルフ変形)。なお、振動板26の代わりに、電界の影響を受けない非活性層となる圧電シートを設けた構成としてもよい。また、個別電極31の個別電極端子31bの表面には、ハンダ等の導電性材料からなるバンプ39が上方に向けて突出するように形成されており、このバンプ39がCOF13の電極ランド42に接触導通する。
【0020】
COF13は、ポリイミド等からなるフィルム状の基板40(基材)と、この基板40の上面40aに銅箔等の導電性金属により形成された複数の導線41(配線)と、この導線41を下側から覆うように基板40の下面40bに形成された合成樹脂層43とを有する。基板40は、ポリイミド等の絶縁樹脂基板で構成されている。導線41は、バンプ39と対応する位置に電極ランド42を有しており、駆動IC13aと複数の電極ランド42とを個別に接続している。また、基板40は、その上面から下面に貫通する略円柱状のスルーホール44が形成されており、上面側のスルーホール44の開口が電極ランド42の一部である基部42aに覆われている。基部42aは、略円板形状を有しており、その中央には略円柱状の立設部42bが接合されている。基部42aと立設部42bは、銅箔等で形成されている。
【0021】
バンプ39は、略円錐台の形状を有しており、合成樹脂層43を貫通するとともに立設部42bが食い込まれており、さらに、合成樹脂層43に覆われている。このバンプ39は、Ag等を含む樹脂材料で構成されており、電極ランド42よりも軟らかい。以上説明した構成により、COF13と圧電アクチュエータ12とを備えた駆動装置50が形成されている。
【0022】
(バンプ、立設部及びスルーホールの大きさ関係)
ここで、バンプ39、立設部42b、及び、スルーホール44の大きさ関係について図2を参照して説明する。なお、図2に示すaは、バンプ39の左右方向における径を示し、bは立設部42bの左右方向における径を示す。また、cはスルーホール44の左右方向における径を示す。図2に示すように、バンプ39の左右方向における径aは、立設部42bの径bよりも大きく、さらに、スルーホール44の径c以上の大きさである。なお、バンプ39の径aとスルーホール44の径cが等しいのが望ましい。また、立設部42bの径bは、スルーホール44の径cよりも小さい。以上の大きさ関係を満たすことにより、立設部42bがバンプ39にめり込んで接合されるとともに、スルーホール44内にバンプ39が入り込むようにすることができる。
【0023】
(バンプ及び基板の大きさ関係)
次に、バンプ39と基板40の大きさ関係について図2を参照して説明する。なお、図2に示すxはバンプ39の上下方向における高さを示し、yは基板40の厚さ(上下方向の大きさ)を示す。図2に示すように、バンプ39の上下方向における高さxは、基板40の厚さyよりも大きい。これにより、COF13が圧電アクチュエータ12に接合された際に、合成樹脂層43と圧電アクチュエータ12の上面12aとを離して配置することができる。その為、合成樹脂層43が圧電アクチュエータ12に干渉するのを防ぐことができる。
【0024】
(配線構造体の製造方法)
次に、駆動装置50の製造方法について図3〜図10を参照して説明する。ここで、図3〜図8は、COF13を製造する工程における一部拡大断面図であり、図9、10は、COF13を圧電アクチュエータ12に接合する工程を示す一部拡大断面図である。なお、以下の説明において、COF13を製造する工程と、COF13を圧電アクチュエータ12に接合する工程とを続けて説明する。
【0025】
最初に、COF13を形成する工程(COF形成工程)について図4〜図6を参照して説明する。図3に示すように、まず、基板40の上面40aに、電極ランド42の基部42aをパターン印刷等により形成する。次に、図4に示すように、基板40の下面40b側から基部42aよりも小さいスルーホール44をエッチング等により形成する(スルーホール形成工程)。このスルーホール44は、基板40の下面40b側から形成される。その次に、図5に示すように、基板40に形成されたスルーホール44内に未硬化状態の導電性材料を入れて硬化し、立設部42bを形成する。そして、図6に示すように、立設部42bが硬化した後、スルーホール44が立設部42bよりも一回り大きくなるように、エッチング等により拡張する。以上の工程により、基板40に電極ランド42が形成される(電極ランド形成工程)。
【0026】
次に、基板40に導線41及び導線45を形成する工程について図7を参照して説明する。基板40に電極ランド42を形成した後、図7に示すように、基板40の下面40bに導線41を印刷等により形成する(導線形成工程)。その後に、導線41と電極ランド42の基部42aとを接続する導線45を、基板40の下面40b及びスルーホール44に形成する(導線接続工程)。また、この導線45は図示しないが、表面が絶縁膜等で覆われており、バンプ39との導通は避けるように構成されている。
【0027】
その次に、基板40の下面40bに合成樹脂層43を塗布する工程について図8を参照して説明する。基板40の下面40bに導線41を形成した後、基板40の下面40bに合成樹脂層43を塗布する(合成樹脂層形成工程)。合成樹脂層43は、例えば、アンダーフィル系のソルダーレジストであり、LT-3905(ヘンケル社製)が一例として挙げられる。このLT-3905は、温度80度で18分間の加熱処理を行うことにより硬化し、硬化後に温度80度以下となっても軟化しない。
【0028】
次に、COF13を圧電アクチュエータ12に接合する工程について図9、10を参照して説明する。まず、圧電アクチュエータ12の上面12aに、突出する半球状のバンプ39を形成する(バンプ形成工程)。
【0029】
図9に示すように、COF13の立設部42bがバンプ39と接触するように配置された状態で、基板40の上面40aの上方に配置されるヒータ60が、下方へ移動する。このとき、ヒータ60が基部42aと接触したまま、COF13を圧電アクチュエータ12のバンプ39に向けた押圧し、バンプ39に合成樹脂層43を貫通させて、バンプ39を立設部42bに接触させる(接触押圧工程)。
【0030】
上記の接触押圧工程の際に、合成樹脂層43は未硬化状態の為、スルーホール44から流れ出す。このとき、スルーホール44の径がバンプ39の径よりも大きい為、スルーホール44から外に未硬化状態の合成樹脂層43が流れ出る。合成樹脂層43は、樹脂材料で構成されている為、電気を通さず、バンプ39と基部42a及び立設部42bとの間に介在すると、バンプ39と基部42a、バンプ39と立設部42bとの間で電気的な抵抗が大きくなり、電流が流れにくくなる。また、合成樹脂層43は、スルーホール44の底、即ち、スルーホール44内の基部42a側に残り易く、バンプ39と基部42aとの間に介在し易い。その為、スルーホール44内から合成樹脂層43が排出され易くすることで、バンプ39と基部42aとの間に合成樹脂層43が介在するのを防ぎ、バンプ39と基部42aの間の電気的な抵抗が大きくなるのを防ぐ。
【0031】
また、ヒータ60は、基部42aに熱を加えながら下方に移動する。このとき、立設部42bの温度も基部42aとともに上昇させられる。そして、ヒータ60がCOF13を下方に押圧した結果、バンプ39が未硬化状態の合成樹脂層43を貫通させられて、立設部42bと接触させられる。バンプ39と立設部42bとが接触させられた状態でも、ヒータ60は、基部42a及び立設部42bに熱を与えるように駆動している為、バンプ39と立設部42bの温度差が大きくなり、立設部42bの熱がバンプ39に伝えられて、バンプ39の温度が上昇する。バンプ39を構成する樹脂材料は、ガラス転移温度が120程度であるのに対し、立設部42bを構成する銅は融点が1084度である。その為、ヒータ60により120度程度で加熱された場合に、バンプ39がガラス転移して軟らかくなるのに対し、立設部42bは硬さがほとんど変わらない。その為、立設部42bがバンプ39よりも硬くなる為、バンプ39が立設部42bに向けて押圧されたときに、バンプ39が立設部42bよりも変形し易い為、立設部42bがバンプ39にめり込み易くなる。
【0032】
そして、バンプ39は、立設部42bにより強引に凹形状に変形させられ、立設部42bが全てバンプ39にめり込むまで、立設部42bにより押圧され続ける。このとき、バンプ39がスルーホール44内に入り込むが、スルーホール44の径がバンプ39の径よりも大きいため、バンプ39はスルーホール44内に収まり易い。これにより、図10に示すように、バンプ39が凹形状に変形させられるとともに、バンプ39の凹部内に立設部42bが嵌め込まれた状態で接触させられる。同時に、バンプ39がスルーホール44内に収まるように配置させることができる。
【0033】
図10に示すような、立設部42aの全てがバンプ39に嵌め込まれた状態で、ヒータ60が下方へ移動するのを中止して、COF13を下方へ押圧するのを止める。そして、ヒータ60は、基部42aと接触させたままの状態で、合成樹脂層43を熱硬化させる為に、加熱温度を調整し、合成樹脂層43を硬化させる(硬化工程)。このとき、ヒータ60が基部42bと直接接触している為、ヒータ60の熱が直接、基部42bに伝わる。そして、ヒータ60の熱が基部42aから立設する立設部42bへと伝わり、立設部42bと接触するバンプ39へと伝わる。そのとき、COF13は、従来にあるような、COFの電極ランドがヒータと直接接触しないものに比べると、ヒータ60の熱が基部42bに直接伝わる為、基部42bと接触するバンプ39へヒータ60の熱が早く伝わる。これにより、バンプ39の周囲の合成樹脂層43に熱が伝わり易く、合成樹脂層43を早期に硬化させることができる。
【0034】
硬化工程により、ヒータ60による加熱を所定時間行った後、ヒータ60をCOF13から話す。以上の製造工程により、導線41が電極ランド42及びバンプ39を介して個別電極端子31bに導通した状態で、COF13と圧電アクチュエータ12とが機械的に接合されて、駆動装置50が製造される。
【0035】
この駆動装置50は、バンプ39が立設部41bに食い込んで接合されている為、バンプ39と立設部41とが接触のみにより接合される従来のものに比べると、例えば、COF13をFPC等の別のプリント配線板と接続する際に、COF13と圧電アクチュエータ12とが離れるような力が加わったとしても、バンプ39と電極ランド42とが剥離しにくくなる。
【0036】
なお、本実施形態におけるCOF形成工程は、本発明の「プリント配線板形成工程」の一例であり、本実施形態におけるスルーホール形成工程は、本発明の「基材形成工程」の一例である。また、本実施形態における導線形成工程は、本発明の「配線形成工程」の一例であり、導線接続工程と電極ランド形成工程とは、本発明の「端子部形成工程」に含まれる一例である。
【0037】
(変更形態)
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0038】
(変更形態1)
前記実施形態において、スルーホール44は、基板40の上面40aから下面40bまで同一径で貫通されるものが形成されていたが、上面40aから下面40b側に向かうにつれて径が大きくなるように構成されていてもよい。図11に示すように、COF113は、基板140の下面140b側の開口径の大きさが、基部42aよりも大きなスルーホール144を有している。このスルーホール144を形成する場合、スルーホール144を拡張する工程において、スルーホール144の下面140b側の開口径が大きくなるように調整される。
【0039】
このようにスルーホール144の下面140b側の開口が大きい為、COF113と圧電アクチュエータ12とを接合する際に、バンプ39と基板140との間の隙間を確保することができる。その為、バンプ39により貫通させられた合成樹脂層43が、基板140の下面140b側に流れ易くなり、スルーホール内に合成樹脂層43を形成する合成樹脂が残るのを防ぐことができる。
【0040】
(変更形態2)
また、前記実施形態においては、電極ランド42の立設部42がスルーホール44の中央に配置されていたが、立設部がスルーホールの中央から外れた位置に配置されていてもよい。図12に示すように、電極ランド242の立設部242bが、基部242aの中心線246から外れた位置に形成されている。
【0041】
このCOF213の製造方法について図13〜図16を参照して説明する。図13に示すように、基材40の上面40aに基部242aを形成する。次に、図14に示すように、立設部242bを形成する工程において、基部242aの中心線246から外れた位置にスルーホール244を形成し、このスルーホール244内に立設部242bの材料となる導電材料を充填する。そして、図15に示すように、スルーホール244を拡張する。このとき、スルーホール244は、その中央が基部242aの中央と重なるように拡張される。その後、図16に示すように、基材40の下面40b側に導線41を形成し、導線41を形成した後で、下面40bに合成樹脂層43を塗布する。以上の工程により、COF213が製造される。
【0042】
次に、COF213と圧電アクチュエータ12とを接合させる接合工程について図17を参照して説明する。COF213と圧電アクチュエータ12とを接合させる際には、図17に示すように、バンプ39の中心をスルーホール244の中心線246と重なるように、COF213と圧電アクチュエータ12とを位置付け、COF213を圧電アクチュエータ12に押圧する。このとき、立設部242bが、スルーホール244の中心線246から個別電極31a側に寄っている為、立設部242bがバンプ39の中央から個別電極a側に外れて接合される。これにより、ヒータ60の熱が、バンプ39の個別電極31a側の合成樹脂層43に伝わり易くなる。その為、個別電極31a側の合成樹脂層43を早期に硬化させることができ、未硬化状態の合成樹脂層43が個別電極31aに流れる前に硬化させて、個別電極31aを覆うのを抑えることができる。
【0043】
(その他の変更形態)
本実施形態におけるCOF13と圧電アクチュエータ12の製造工程の順番は、本発明を実施する一例にすぎず、COF13と圧電アクチュエータ12の製造工程の順番を適宜入れ換えてもよい。また、導線接続工程において、スルーホール44の内壁に導線45を形成したが、スルーホールを別途設けて、導線と電極ランドとを接続するように構成してもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、COF13を接合する対象として圧電アクチュエータ12をその一例としてあげたが、これに限られず、COF等の配線基板と電気的に接続される被接続対象体であればよい。また、本実施形態では、COFを配線基板の一例としてあげたが、駆動ICが実装された配線基板に限られず、配線と電極ランドを有する配線基板についても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 吐出ヘッド
12 圧電アクチュエータ
13、113、213 COF
39 バンプ
40 基板
41 導線
42 電極ランド
42a、242a 基部
42b、242b 立設部
43 合成樹脂層
44、144、244 スルーホール
45 導線
60 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動素子に対応する個別電極を備えた駆動ユニットと、
前記個別電極と電気的に接続され、その個別電極に対して前記駆動素子を駆動する為の信号を供給するプリント配線板と
を備えた駆動装置において、
前記駆動ユニットは、
前記プリント配線板と対向する側の面に突出状態で形成され、前記個別電極と電気的に接続されたバンプを備え、
前記プリント配線板は、
スルーホールが形成された基材と、
その基材の前記駆動ユニットと対向する側の面に形成された配線と、
その配線と電気的に接続された端子部と、を備え、
前記端子部は、前記基材の前記駆動ユニットと対向する側と反対側の面において前記スルーホールを塞ぐように設置された基部と、その基部から立設し前記スルーホールを貫通する前記バンプよりも径が小さい立設部とを有するとともに、前記基部は前記スルーホールを通じて前記配線と接続されており、
さらに、前記プリント配線板は、前記基材の前記駆動ユニットと対向する側の面において前記配線及び前記スルーホールを覆うように形成される合成樹脂層を備え、
前記バンプが、前記プリント配線板に形成された前記合成樹脂層を貫通した状態で前記立設部と電気的に接続されている駆動装置。
【請求項2】
前記立設部が、前記バンプよりも硬いことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記スルーホールの径が、前記バンプの径よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記立設部は、前記スルーホールの中央から前記駆動ユニットの前記個別電極側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項5】
駆動素子に対応する個別電極を備えた駆動ユニットと、
前記個別電極と電気的に接続され、その個別電極に対して前記駆動素子を駆動する為の信号を供給するプリント配線板と
を備えた駆動装置の製造方法であって、
前記駆動ユニット形成工程と、前記プリント配線板形成工程とを備え、
前記駆動ユニット形成工程は、
前記プリント配線板と対向する側の面において突出し、前記個別電極と電気的に接続するバンプを形成するバンプ形成工程を含み、
前記プリント配線板形成工程は、
スルーホールを有する基材を形成する基材形成工程と、
前記基材の前記駆動ユニットと対向する側の面に配線を形成する配線形成工程と、
前記基材の前記駆動ユニットと対向する側と反対側の面において前記スルーホールを塞ぐように配置されるともに前記スルーホールを通じて前記配線と接続される基部と、その基部から前記スルーホールを貫通するように立設する前記バンプよりも径が小さい立設部と、を有する端子部を形成する端子部形成工程と、
前記駆動ユニットと対向する側の面に、前記配線と前記スルーホールを覆うように未効果の合成樹脂層を形成する合成樹脂層形成工程と、含み、
前記駆動ユニット形成工程と、前記プリント配線板形成工程の後に、
前記基材の前記駆動ユニットと対向する側と反対側の面に配された加熱押圧手段を前記基部に接触させた状態で、前記プリント配線板に塗布された前記未硬化の合成樹脂層を前記駆動ユニットの前記バンプに向けて押圧し、前記バンプにこの合成樹脂層を貫通させて、前記バンプを前記立設部と接触させる押圧接触工程を行い、
その後、前記加熱押圧手段から前記基部を介して伝わる熱によって前記合成樹脂層を硬化させる硬化工程を行う、
ことを特徴とする駆動装置の製造方法。
【請求項6】
前記端子部形成工程において、前記立設部を、前記スルーホールの中央から外れた位置に形成し、
前記押圧接触工程において、前記バンプの、前記駆動ユニットの前記個別電極側に、前記立設部が押圧されることを特徴とする請求項5に記載の駆動装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−234544(P2010−234544A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82208(P2009−82208)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】