駆動装置及び光学装置
【課題】圧電アクチュエータの駆動特性を考慮して被駆動部材を精度良く移動させることができる駆動装置及び光学装置を提供する。
【解決手段】圧電素子1に駆動軸2を取り付けたアクチュエータ10を有し、駆動信号により圧電素子を伸縮させ、圧電素子1の伸縮動作に応じて駆動軸2を往復運動させて、駆動軸2に摩擦係合させた被駆動部材3を移動させる駆動装置において、被駆動部材3が移動する移動範囲Z内を複数の領域Z1〜Z10に分割して、被駆動部材3の移動速度が移動範囲Z内で同一となるように、複数の領域Z1〜Z10ごとに駆動信号の波形を変更する制御部81を備えることで、被駆動部材3の摩擦係合位置に依存した速度の違いを小さくすることができる。よって、被駆動部材3の駆動制御を正確に行ない、被駆動部材3を精度良く移動させることができる。
【解決手段】圧電素子1に駆動軸2を取り付けたアクチュエータ10を有し、駆動信号により圧電素子を伸縮させ、圧電素子1の伸縮動作に応じて駆動軸2を往復運動させて、駆動軸2に摩擦係合させた被駆動部材3を移動させる駆動装置において、被駆動部材3が移動する移動範囲Z内を複数の領域Z1〜Z10に分割して、被駆動部材3の移動速度が移動範囲Z内で同一となるように、複数の領域Z1〜Z10ごとに駆動信号の波形を変更する制御部81を備えることで、被駆動部材3の摩擦係合位置に依存した速度の違いを小さくすることができる。よって、被駆動部材3の駆動制御を正確に行ない、被駆動部材3を精度良く移動させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動部材を駆動させる駆動装置及びその駆動装置を備える光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動装置及び光学装置として、圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータ(圧電アクチュエータ)を有するものが知られている。例えば、特許文献1〜3には、駆動信号により圧電素子を伸縮させ、圧電素子の伸縮動作に応じて駆動軸を往復運動させて、駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させるものが開示されている。
【0003】
特許文献1記載の駆動装置は、撮像装置等の光学装置に採用されるものであり、複数のレンズに対しそれぞれ独立した駆動機構を有し、被駆動部材である各レンズの移動速度の比(フローティング比)が設定されている領域では設定されたフローティング比で各レンズの移動速度を制御し、フローティング比が設定されていない領域では各レンズの焦点距離に応じて各レンズの移動速度を制御するものである。特許文献2記載の駆動装置は、駆動開始、駆動停止及び駆動方向反転の際に、圧電素子への印加時間を制御することで被駆動部材の移動速度を制御するものである。特許文献3記載の駆動装置は、駆動波形を予めメモリに記憶しておき、被駆動部材の目標駆動方向及び目標駆動速度に応じて、記憶された駆動波形を選択し、駆動速度を制御するものである。
【特許文献1】特開平8−21947号公報
【特許文献2】特開平9−191676号公報
【特許文献3】特開平11−155292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3記載の駆動装置にあっては、被駆動部材をアクチュエータの駆動により高精度に移動させることが困難である。例えば、圧電アクチュエータが有する駆動特性によっては、目標移動量に対する実際の移動量の偏差が大きくなることがある。
【0005】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、圧電アクチュエータの駆動特性を考慮して被駆動部材を精度良く移動させることができる駆動装置及び光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る駆動装置は、圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータを有し、駆動信号により圧電素子を伸縮させ、圧電素子の伸縮動作に応じて駆動軸を往復運動させて、駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させる駆動装置であって、被駆動部材が移動する移動範囲内を複数の範囲に分割し、分割されたそれぞれの範囲ごとに所定の駆動信号に対する平均移動速度を求め、平均移動速度が同一となるように、分割されたそれぞれの範囲ごとに駆動信号の波形を変更する駆動信号制御手段を備えて構成される。
【0007】
本発明に係る駆動装置によれば、被駆動部材の移動範囲を複数の範囲に分割し、分割した複数の範囲ごとに平均移動速度を求め、求めた平均移動速度が同一となるように、分割した範囲ごとに駆動信号を変更することができるため、被駆動部材の係合位置に依存した移動速度の違いを小さくし、被駆動部材3の移動速度が移動範囲内で同一とすることが可能となる。よって、被駆動部材の駆動制御を正確に行ない、被駆動部材を精度良く移動させることができる。
【0008】
また、本発明に係る駆動装置は、圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータを有し、駆動信号により圧電素子を伸縮させ、圧電素子の伸縮動作に応じて駆動軸を往復運動させて、駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させる駆動装置であって、被駆動部材が移動する移動範囲内を複数の範囲に分割し、分割されたそれぞれの範囲ごとに所定の駆動信号に対する平均移動速度を求め、分割されたそれぞれの範囲ごとに定められた目標移動速度と平均移動速度が同一となるように、分割されたそれぞれの範囲ごとに駆動信号の波形を変更する駆動信号制御手段を備えて構成される。
【0009】
本発明に係る駆動装置によれば、被駆動部材の移動範囲を複数の範囲に分割し、分割した複数の範囲ごとに平均移動速度を求め、分割したそれぞれの範囲ごとに定めた目標移動速度と平均移動速度が同一となるように、分割した範囲ごとに駆動信号を変更することができるため、被駆動部材の係合位置に関わらず被駆動部材3の移動速度を目標速度に合わせることが可能となる。よって、被駆動部材の駆動制御を正確に行ない、被駆動部材を精度良く移動させることができる。
【0010】
ここで、駆動信号制御手段は、駆動信号としてパルス信号を用い、分割されたそれぞれの範囲内の単位時間あたりのパルス数を変更して駆動信号の波形を変更することが好適である。このように構成することで、駆動軸に摩擦係合した被駆動部材の移動速度を変化させることができる。
【0011】
また、単位時間あたりのパルス数を変更する駆動装置において、駆動信号制御手段は、アクチュエータの駆動と休止とを繰り返させて被駆動部材を移動させることが好適である。このように構成することで、被駆動部材の移動位置や移動速度を細かく制御して滑らかに移動させることができる。
【0012】
また、本発明に係る光学装置は、上述した駆動装置を備えて構成される。この光学装置によれば、上述した駆動装置を備えていることから、光学部材を精度良く移動させることができる。
【0013】
ここで、上述した駆動装置を備える光学装置において、駆動信号制御手段は、レンズのレンズ特性、及びレンズを保持する被駆動部材の摩擦係合位置に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更することが好適である。このように構成することで、摩擦係合位置に基づく移動速度の偏差だけでなく、レンズ特性に基づく目標位置の偏差を考慮して、レンズを移動させることができるので、画角の変化を滑らかにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧電アクチュエータの駆動特性を考慮して被駆動部材を精度良く移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
本実施形態に係る駆動装置は、例えば屈曲光学系を有する撮像装置に好適に採用されるものである。図1は、本実施形態に係る駆動装置を適用した撮像装置(光学装置)の撮像光学系を示す概要図である。撮像装置は、例えば図1に示すように、固定レンズ105、プリズム104、移動レンズ90、102、固定レンズ101及び撮像素子82を備えている。そして、本実施形態に係る駆動装置が、移動レンズ90、102を光軸Oに沿って移動させる機能を有している。以下では説明理解の容易性を考慮し、移動レンズ90を移動させる駆動装置について詳細を説明する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る駆動装置の断面図である。図2に示すように、本実施形態に係る駆動装置は、圧電素子1に駆動軸2を取り付けたアクチュエータ10を有し、圧電素子1の伸縮に応じて駆動軸2を往復移動させ、駆動軸2に摩擦係合される被駆動部材3を駆動軸2に沿って移動させる装置である。
【0018】
圧電素子1は、駆動信号の入力により伸縮可能な電気機械変換素子であり、所定の方向へ伸長及び収縮可能となっている。この圧電素子1は、制御部(駆動信号制御手段)81に接続され、その制御部81により電気信号を入力されることにより伸縮する。例えば、圧電素子1には、二つの入力端子11a、11bが設置される。この入力端子11a、11bに印加される電圧を繰り返して増減させることにより、圧電素子1が伸長及び収縮を繰り返すこととなる。なお、電気機械変換素子としては駆動信号の入力により伸縮するものであれば、導電性高分子からなる材料や形状記憶合金等、圧電素子1以外のものを用いてもよい。
【0019】
駆動軸2は、圧電素子1の伸縮方向に長手方向を向けて圧電素子1に取り付けられている。例えば、駆動軸2の一端が圧電素子1に当接され接着剤21を用いて接着されている。この駆動軸2は、長尺状の部材であり、例えば円柱状のものが用いられる。駆動軸2は、固定枠4から内側へ延びる仕切り部4a、仕切り部4cにより長手方向に沿って移動可能に支持されている。仕切り部4b、仕切り部4cは、被駆動部材3の移動領域を仕切るための部材であり、駆動軸2の支持部材としても機能している。固定枠4は、圧電素子1、駆動軸2及び被駆動部材などを収容し組み付けるための筐体として機能する。
【0020】
駆動軸2の材質は、軽く高剛性のものが適している。なお、駆動軸2の形状は円柱状に限定されるものではなく、角柱状でもよい。
【0021】
仕切り部4b、仕切り部4cには、駆動軸2を貫通させる貫通孔4aがそれぞれ形成されている。仕切り部4bは、駆動軸2の圧電素子1取付部分の近傍箇所、すなわち駆動軸2の基端箇所を支持している。仕切り部4cは、駆動軸2の先端箇所を支持している。駆動軸2は、圧電素子1に取り付けられることにより、圧電素子1の伸長及び収縮の繰り返し動作に応じて、その長手方向に沿って往復移動する。
【0022】
なお、図2では、駆動軸2を仕切り部4b、4cによりその先端側と基端側の二箇所で支持する場合を示しているが、駆動軸2をその先端側又は基端側の一方で支持する場合もある。例えば、仕切り部4bの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4cにより先端箇所のみで支持されることとなる。また、仕切り部4cの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4bにより基端箇所のみで支持されることとなる。
【0023】
また、図2では、駆動軸2を支持する仕切り部4b、4cが固定枠4と一体になっている場合について示したが、これらの仕切り部4b、4cは固定枠4と別体のものを固定枠4に取り付けて設けてもよい。別体の場合であっても、一体となっている場合と同様な機能、効果が得られる。
【0024】
被駆動部材3は、駆動軸2に移動可能に取り付けられている。この被駆動部材3は、駆動軸2に対し摩擦係合されて取り付けられ、駆動軸2の長手方向に沿って移動可能となっている。例えば、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2に圧接されて所定の摩擦係数で係合しており、一定の押圧力で駆動軸2に押し付けられることによってその移動の際に一定の摩擦力が生ずるように取り付けられている。この摩擦力を超えるように駆動軸2が移動することにより、慣性により被駆動部材3がその位置を維持し、その被駆動部材3に対し相対的に駆動軸2が移動する。
【0025】
圧電素子1は、支持部材5により固定枠4に取り付けられている。支持部材5は、圧電素子1をその伸縮方向に対して側方から支持して取り付けるものであり、圧電素子1と固定枠4との間に配設されている。この場合、支持部材5により圧電素子12をその伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この支持部材5は、圧電素子1を側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
【0026】
このように支持部材5によりアクチュエータ10が圧電素子1の伸縮方向に対し側方側から支持されており、アクチュエータ10の両端は圧電素子1の伸縮方向へ移動可能な自由端となっている。このため、アクチュエータ10が駆動しても圧電素子1の伸縮による振動が固定枠4側へ伝達されにくい構造となっている。従って、アクチュエータ10の駆動信号をアクチュエータ10自体の共振周波数に関連づけて設定することが有効となっている。
【0027】
支持部材5は、所定以上の弾性特性を有する弾性体により形成され、例えばシリコーン樹脂により形成される。支持部材5は、圧電素子1を挿通させる挿通孔5aを形成して構成され、その挿通孔5aに圧電素子1を挿通させた状態で固定枠4に組み付けられている。支持部材5の固定枠4への固着は、接着剤22による接着により行われる。また、支持部材5と圧電素子1の間の固着も、接着剤による接着により行われる。この支持部材5を弾性体によって構成することにより、圧電素子1をその伸縮方向に移動可能に支持することができる。図2において、支持部材5が圧電素子1の両側に二つ図示されているが、この支持部材5、5は環状の支持部材5の断面をとることによって二つに図示されたものである。
【0028】
なお、支持部材5の固定枠4への固着及び圧電素子1への固着は、固定枠4と圧電素子1の間に支持部材5を圧入し、支持部材5の押圧によって行ってもよい。例えば、支持部材5を弾性体により構成し、かつ、固定枠4と圧電素子1の間より大きく形成して、その間に圧入して設置する。これにより、支持部材5は、固定枠4及び圧電素子1に密着して配設される。この場合、圧電素子1は、支持部材5により伸縮方向に直交する方向の両側から押圧される。これによって、圧電素子1が支持される。
【0029】
また、ここでは支持部材5をシリコーン樹脂で形成する場合について説明したが、支持部材5をバネ部材により構成してもよい。例えば、固定枠4と圧電素子1の間にバネ部材を配置し、このバネ部材によって圧電素子1を固定枠4に対し支持してもよい。
【0030】
被駆動部材3には、レンズ枠91を介して移動レンズ90が取り付けられている。移動レンズ90は、カメラの撮影光学系を構成するものであり、駆動装置の移動対象物となるものである。この移動レンズ90は、被駆動部材3と一体的に設けられ、被駆動部材3と共に移動するように設けられている。移動レンズ90の光軸O上には、図示しない固定レンズなどが配設され、カメラの撮影光学系を構成している。この移動レンズ90として、例えばズームレンズが用いられる。また、光軸O上には、撮像素子82が配設されている。撮像素子82は、撮影光学系により結像された画像を電気信号に変換する撮像手段であり、例えばCCDにより構成される。撮像素子82は、制御部81と接続されており、画像信号を制御部81に出力する。
【0031】
圧電素子1の端部には、錘部材6が取り付けられている。錘部材6は、圧電素子1の伸縮力を駆動軸2側へ伝達させるための部材であって、圧電素子1の駆動軸2が取り付けられる端部と反対側の端部に取り付けられている。
【0032】
この錘部材6は、アクチュエータ10の一部を構成する部品である。錘部材6としては、駆動軸2より重いものが用いられる。
【0033】
錘部材6の材質は、圧電素子1及び駆動軸2よりもヤング率の小さい材料のものが用いられる。なお、錘部材6と圧電素子1とを固着する接着剤としては、弾性接着剤を用いることが好ましい。
【0034】
また、錘部材6は、固定枠4に対し支持固定されない状態で設けられている。すなわち、錘部材6は、圧電素子1の自由端に取り付けられ、固定枠4に対し直接支持されたり固定されておらず、また接着剤や樹脂材を介して固定枠4に対し動きを拘束されるように支持されたり固定されていない状態で設けられている。
【0035】
駆動装置には、被駆動部材3の移動位置を検出する検出器83が設けられている。検出器83としては、例えば光学式の検出器が用いられ、ホトリフレクタ(PR)、フォトインタラプタなどが用いられる。本実施形態では、検出器83としてリフレクタ(反射板)83a及び検出部83bを備えたものを用いている。リフレクタ83aは、被駆動部材3と連動するレンズ枠91に取り付けられている。検出部83bは、赤外光を発光する発光部及び赤外光を受光する受光部を備えている。
【0036】
受光部に入射された光の受光量は、例えば図4に示す回路にてA/D変換され信号として検出される。そして、検出部83bの発光部からリフレクタ83a側へ検出光を出射し、リフレクタ83a側で反射してくる反射光を検出部83bの受光部で検出することにより被駆動部材3及び移動レンズ90の移動位置を検出する。図5に、A/D出力の一例を示す。図5は、A/D出力のリフレクタ83a位置依存性を示すグラフであって、横軸がリフレクタ83aの位置、縦軸がA/D出力である。図5に示すように、リフレクタ83aの位置に依存して傾斜を持ったA/D出力が得られる。また、検出器83は、制御部81に接続されており、検出器83の出力信号は制御部81に入力される。
【0037】
制御部81は、駆動装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAM、EEPROM、入力信号回路、出力信号回路などにより構成される。EEPROMには、例えば調整時に測定によって得られたズーム位置に対するA/D出力値が記憶されている。また、例えばズーム領域(移動範囲)Z1〜Z10に応じた平均速度も測定され記憶されている。また、制御部81は、A/D出力値のズーム位置依存性に基づいて、各ズーム領域Z1〜Z10においてアクチュエータ10の駆動制御を行う機能を有している。A/D出力値のズーム位置依存性の一例を図6に示す。そして、制御部81は、圧電素子1を作動させるための駆動回路を備えており、圧電素子1に対し駆動のための電気信号を出力する機能を有している。これらの機能の詳細については後述する。
【0038】
図3は、図2のIII−IIIにおける被駆動部材3の摩擦係合部分の断面図である。図3に示すように、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2を押圧することにより、駆動軸2に取り付けられている。例えば、被駆動部材3には、駆動軸2を位置決めするためのV字状の溝3aが形成される。その溝3aには、断面V字状の摺動板3bが配置され、その摺動板3bを介して駆動軸2が被駆動部材3に押圧される。
【0039】
また、板バネ7と被駆動部材3との間には、断面V字状の摺動板3cが配設され、板バネ7は、この摺動板3cを介して被駆動部材3を押圧する。このため、摺動板3b、3cが互いに凹部側を向き合わせて配置され、駆動軸2を挟んで設けられている。V字状の溝3a内に駆動軸2を収容することにより、被駆動部材3を安定して駆動軸14に取り付けることができる。
【0040】
板バネ7としては、例えば、断面L字状の板バネ材が用いられる。板バネ7一辺を被駆動部材3に掛止させ、他の一辺を溝3aの対向位置に配することにより、他の一辺により溝3aに収容される駆動軸2を被駆動部材3との間に挟み込むことができる。
【0041】
このように、被駆動部材3は、板バネ7により被駆動部材3を駆動軸2側に一定の力で押圧して取り付けられることにより、駆動軸2に対し摩擦係合される。すなわち、被駆動部材3は、駆動軸2に対し被駆動部材3が一定の押圧力で押し付けられ、その移動に際し一定の摩擦力が生ずるように取り付けられる。
【0042】
また、断面V字状の摺動板3b、3cにより駆動軸2を挟み込むことにより、被駆動部材3が駆動軸2に複数箇所で線接触することになり、駆動軸2に対し安定して摩擦係合させることができる。また、複数箇所の線接触状態により被駆動部材3が駆動軸2に係合しているため、実質的に被駆動部材3が駆動軸2に面接触状態で係合していると同様な係合状態となり、安定した摩擦係合が実現できる。
【0043】
次に、制御部81の詳細について説明する。制御部81は、圧電素子1を作動させる駆動回路を備えている。図7は、圧電素子1を作動させる駆動回路85の回路図である。この駆動回路85は、圧電素子1のドライブ回路として機能するものであり、圧電素子1に対し駆動用の電気信号を出力する。駆動回路85は、制御部81の制御信号生成部(図示なし)から制御信号を入力し、その制御信号を電圧増幅又は電流増幅して圧電素子1の駆動用電気信号を出力する。駆動回路85は、例えば入力段を論理回路U1〜U3により構成し、出力段に電界効果型のトランジスタ(FET)Q1、Q2を備えたものが用いられる。トランジスタQ1、Q2は、出力信号として、Hi出力(高電位出力)、Lo出力(低電位出力)及びOFF出力(オフ出力、オープン出力)を出力可能に構成されている。なお、図7に示す駆動回路は、圧電素子1を作動させるための回路の一例であり、これ以外の回路を用いて圧電素子1を作動させてもよい。
【0044】
図8に駆動回路85から出力される駆動信号の一例を示す。図8(A)は、被駆動部材3を圧電素子1に接近させる方向(図2において右方向)に移動させる際に圧電素子1に入力される駆動信号であり、図8(B)は、被駆動部材3を圧電素子1から離間させる方向(図2において左方向)に移動させる際に圧電素子1に入力される駆動信号である。
【0045】
図8(A)、(B)の駆動信号において、Aoutの信号が圧電素子1の一方の入力端子11aに入力され、Boutの信号が圧電素子1の他方の入力端子11bに入力される。このため、AoutとBoutとの電位差が圧電素子1の入力電圧となる。
【0046】
図8の駆動信号は矩形波であるが、実際に圧電素子1に入力される波形は、圧電素子1のキャパシタ成分により三角波状となる。このため、駆動信号のハイ、ローのデューティー比が50%でなければ、矩形状の駆動信号の入力によって圧電素子1の伸長速度と収縮速度を異ならせることができ、被駆動部材3を移動させることができる。
【0047】
これらの図8(A)、(B)の駆動信号は、パルス信号であり、アクチュエータ10の駆動時における信号である。1パルスごとの信号が連続してアクチュエータ10に入力されることにより、連続駆動が行われることとなる(駆動状態)。なお、アクチュエータ10に入力される信号は、図8に示すものに限られるものではなく、パルス信号でなく鋸歯波状の信号や三角波状の信号などであってもよい。
【0048】
一方、アクチュエータ10の休止時における信号は、図示していないが、圧電素子1の二つの端子に入力される電位差がゼロとなる信号である。また、電位差がゼロとなる休止時の入力信号は、図8(A)、(B)に示す駆動時の入力信号における1パルスの周期時間以上の長い時間で電位差がゼロとなる信号とすることが好ましい。このような信号がアクチュエータ10に入力されることにより、駆動が休止されることとなる(休止状態)。
【0049】
また、制御部81は、駆動回路85を制御してアクチュエータ10へ出力する駆動信号の波形を変更する機能を有している。例えば、制御部81は、単位時間あたりのパルス数を変更することによって駆動信号の波形の変更を行う。例えば、パルスを間引いたりパルス間隔を変更したりすることにより単位時間あたりのパルス数を変更する。さらに、被駆動部材3を移動させる際に、単位時間あたりのパルス数を変更する場合には、1パルスごとの信号が連続する期間の後に、AoutとBoutとの電位差がゼロ(又はAoutとBoutがオープン)となる期間を、1パルスの周期時間以上の長い時間設け、両期間が交互に繰り返されるように駆動信号の波形の変更を行う。すなわち、連続するパルス信号(駆動命令)と、電位差が0となる信号(休止命令)とが交互に繰り返し出力されるように駆動信号の波形を変更する。
【0050】
そして、制御部81は、アクチュエータ10の駆動特性に基づいて駆動回路85を制御する機能を有している。すなわち、アクチュエータ10の駆動特性に応じて、駆動信号の波形を変更する機能を有している。
【0051】
最初に、アクチュエータ10の駆動特性について説明する。図9は、被駆動部材3の駆動軸2上の位置と移動速度との関係を示すグラフである。ここで、図9に示すグラフは、単位時間あたりのパルス数を所定値(固定値)とした駆動信号をアクチュエータ10に入力した場合を示している。また、グラフの横軸は、被駆動部材3が駆動軸2(ここでは全長6.5mm)に摩擦係合している位置(摩擦係合位置)を示すものであり、被駆動部材3が圧電素子1側に最も近い位置に摩擦係合されている場合を0としている。そして、グラフの縦軸は、被駆動部材3の移動速度の大きさである。
【0052】
図9に示すように、アクチュエータ10は、被駆動部材3の摩擦係合位置に依存する駆動特性を有している。例えば、被駆動部材3が圧電素子1側に最も近い領域、あるいは最も遠い領域に係合されている場合には移動速度が小さくなり、駆動軸2の中間領域に係合されている場合には移動速度が大きくなるという駆動特性を有している。さらに、アクチュエータの姿勢が変わった場合、駆動方向が水平方向(実線)、錘下方向(破線)、錘上方向(破線)によって被駆動部材3の移動速度が変化するという駆動特性を有している。すなわち、アクチュエータ10は、駆動信号として単位時間あたりのパルス数が同一の連続的なパルスを入力しても、被駆動部材3の移動速度が移動範囲で一定とならず、被駆動部材3の摩擦係合位置に依存して被駆動部材3の移動速度が変化する特性を有している。なお、この駆動特性は、例えば調整時等、予め取得され、EEPROM等に記憶されている。
【0053】
次に、アクチュエータ10の駆動特性に基づいて駆動回路85を制御する機能について説明する。制御部81は、例えば予め取得し記憶したアクチュエータ10の駆動特性を参照し、被駆動部材3の摩擦係合位置に基づいて、アクチュエータ10を制御する駆動信号の波形を変更する。具体的には、制御部81は、被駆動部材3が駆動軸2上を移動する移動領域を複数の領域に分割し、分割した各領域間の平均移動速度に偏差が無いように、分割した領域ごとに駆動信号の波形を変更する。例えば、図9に示すように、移動領域Zを10個の領域Z1〜Z10に分割し、領域ごとに単位時間あたりのパルス数を変更し、移動領域Zの中で同一の移動速度(例えば後述する期待値)とする。なお、同一の移動速度とは、ほぼ同一の移動速度のことであって、例えば誤差がほぼ±15%の範囲内となる移動速度のことである。
【0054】
ここで、駆動特性に基づいて変更される駆動信号について詳細に説明する。説明理解の容易性を考慮して、圧電素子1側に最も近い点を被駆動部材3の出発点とし、圧電素子1から離間させる方向(図2において左方向)に移動させる場合を説明する。すなわち、図9に示す領域Z1から領域Z10へ移動させる場合である。制御部81は、制御目標として、期待値(理想的な移動速度)を達成するように、駆動信号を変更する。
【0055】
制御目標の一例を図10に示す。図10は、横軸が時間、縦軸が移動量であり、点線で示すグラフが制御目標Mである。制御部81の制御目標Mは、被駆動部材3の移動速度をグラフの傾きx1(一定速度)としている。すなわち、時刻0〜時刻t1の間は領域Z1、時刻t1〜時刻t2の間は領域Z2、時刻t2〜時刻t3の間は領域Z3、時刻t3〜時刻t4の間は領域Z4、時刻t4〜時刻t5の間は領域Z5、時刻t5〜時刻t6の間は領域Z6、時刻t6〜時刻t7の間は領域Z7、時刻t7〜時刻t8の間は領域Z8、時刻t8〜時刻t9の間は領域Z9、時刻t9〜時刻t10の間は領域Z10で、被駆動部材3を移動させるという目標である。
【0056】
制御部81は、目標速度x1を達成すべく、単位時間あたりのパルス数が所定値である駆動信号を入力した際の駆動特性(図9)を参照し、被駆動部材3の摩擦係合位置に応じて単位時間あたりのパルス数を所定値から変更する。具体的には、領域Z1〜Z10での所定のパルス数に対する平均移動速度をそれぞれ算出し、領域Z1〜Z10の各平均移動速度が目標速度x1と同一となるように、領域ごとに単位時間あたりのパルス数を所定値から変更する。ここでは、目標速度x1を例えば3mm/sとする。
【0057】
単位時間あたりのパルス数を変更する方法は、例えば、パルス間隔を変更せずに駆動と休止を繰り返す方法、パルス間隔を変更する方法、パルス間隔を変更してさらに駆動と休止を繰り返す方法がある。最初に、パルス間隔を変更せずに駆動と休止を繰り返す方法から説明する。図11(A),(B)は、図10の一部拡大図であり、図11(C)は、図11(B)の駆動信号の一部を示すものである。
【0058】
領域Z1では平均移動速度は約3.5mm/sであり、目標速度x1も3mm/sであるので、略同一速度である。このため、時刻0〜時刻t1において休止期間の無い連続した駆動信号を出力する。これにより、図11(A)に示すように、領域Z1において制御目標Mに沿った実行値Sを得ることができる。一方、領域Z4での平均移動速度は約5.0mm/sであり、目標速度x1は3mm/sである。このため、図11(C)に示す駆動信号のように、駆動期間と休止期間が連続した駆動信号を出力することで、単位時間あたりのパルス数を変更し、領域Z4での平均移動速度を目標速度x1と同一となるようにする。これにより、駆動命令、休止命令を繰り返しながら、領域Z4での平均移動速度を3mm/sとすることができる。よって、図11(B)に示す実行値Sのように、制御目標Mに沿って被駆動部材3を滑らかに駆動させることができる。
【0059】
次に、パルス間隔を変更する方法、及びパルス間隔を変更してさらに駆動と休止を繰り返す方法を説明する。図13は、駆動装置の動作を示すフローチャートである。図13に示す制御処理は、例えば、所定の駆動範囲(領域)を駆動する際に実行される。
【0060】
最初に、駆動範囲の平均移動速度読み出し処理から開始する(S10)。例えば、EEPROMに記憶された駆動範囲の平均移動速度を読み出す。S10の処理が終了すると、パルス数の演算処理へ移行する(S12)。
【0061】
S12の処理は、駆動範囲内で目標速度x1とするために、単位時間あたりのパルス数を演算する処理である。例えば、領域Z1を移動する場合、目標速度x1を3mm/sとすると、図9より平均移動速度は約3.5mm/sであるので、領域Z1(図6のPR0〜PR1の範囲)ではパルス数を間引いて目標速度x1に近づける。同様に、領域Z2での平均移動速度は約4.2mm/s、領域Z3での平均移動速度は約5.5mm/s、領域Z4での平均移動速度は約5.0mm/sであるので、パルス数を間引いて目標速度x1に近づける。このように、パルス各領域での平均移動速度を、パルスを間引くことにより統一する。例えば、S10の処理で入力した平均移動速度と目標速度x1との比を算出し、平均移動速度から算出される単位時間当たり(例えば1ms)のパルス数に、算出した比を積算する。この処理を領域Z4の場合を例に具体的に説明する。1パルス50kHzの場合、1パルスの時間は、0.02msである。この場合、1msのパルス数は、1÷0.02より50パルスとなる(図12の(A))。速度を5.0mm/sから3.0mm/sへ制御すると3÷5×50により30パルスとなる。よって領域Z4(PR3〜PR4の範囲)では、1ms期間に30パルス駆動させる(図12の(B))。仮にズーム移動範囲が10mmとすると、10分割すれば1つの領域が1mmに相当するので、領域Z4(PR3〜PR4の範囲)では30000パルス駆動することとなる。このように、パルスを間引くことによりパルス間隔を変更し、各領域の平均速度を統一する。これにより、制御目標の単位時間あたりのパルス数を算出できる。S12の処理が終了すると、タイマリセット処理へ移行する(S14)。
【0062】
S14の処理は、単位時間を制御するためのタイマを初期化する処理である。例えば、1msのタイマ値を0とする。S14の処理が終了すると、タイマスタート処理へ移行する(S16)。S16の処理は、初期化したタイマを開始する処理である。例えば、タイマ値が0からカウントを開始する。S16の処理が終了すると、間引き駆動処理へ移行する(S18)。
【0063】
S18の処理は、S12の処理で演算したパルス数で駆動する処理である。例えば、1msのパルス数を減少させた駆動信号によりアクチュエータを駆動する。S18の処理が終了すると、タイマ値判定処理へ移行する(S20)。
【0064】
S20の処理は、単位時間が経過したか否かを判定する処理である。例えば、S16の処理でセットしたタイマ値を確認し1msを経過しているか否かを判定する。S20の処理において、単位時間を経過していないと判定した場合には、位置確認処理へ移行する(S22)。
【0065】
S22の処理は、駆動させた被駆動部材のズーム位置を確認するために、ホトリフレクタのA/D出力値を入力する処理である。S22の処理が終了すると、制御目標確認処理へ移行する(S24)。
【0066】
S24の処理は、S22の処理で入力したA/D出力値が目標ズーム位置に対応するA/D出力値を超えているか否かを判定する処理である。例えば、目標ズーム位置に対応するA/D出力値(図6)をEEPROMから入力し、S22の処理で入力したA/D出力値と比較する。S24の処理において、目標A/D値より大きいと判定した場合には、駆動休止処理へ移行する(S26)。
【0067】
S26の処理は、駆動信号を停止する処理である。例えば、パルス間隔よりも大きな間隔で駆動信号を停止する。S26の処理が終了すると、タイマ値判定処理へ移行する(S28)。S28の処理は、単位時間が経過したか否かを判定する処理である。S28の処理において、単位時間を経過したと判定した場合には、駆動範囲確認処理へ移行する(S30)。
【0068】
S30の処理は、駆動範囲の最後に到達したかを判定する処理である。例えば、S22の処理で入力したA/D出力値に基づいて駆動範囲の最後に到達したか否かを判定する。S30の処理において、駆動範囲の最後に到達したと判定した場合には、図13に示す制御処理を終了する。一方、S30の処理において、駆動範囲の最後に到達していないと判定した場合には、タイマリセット処理に再度移行し(S14)、間引き駆動等を実行する。
【0069】
一方、S20の処理において、単位時間を経過していると判定した場合には駆動範囲確認処理へ移行する(S30)。また、S24の処理において、目標A/D値より大きくないと判定した場合には、間引き駆動処理へ再度移行する(S18)。また、S28の処理において、単位時間を経過していないと判定した場合には、制御目標確認処理へ再度移行する(S24)。
【0070】
以上の動作で図13に示す制御処理を終了する。図13に示す制御処理を実行することで、間引きした駆動信号を休止することなく用いて目標の期待値に近い制御を行うことができる。さらに、例えば図14に示すように、駆動命令、休止命令を繰り返しながら、領域の平均移動速度を目標速度x1にあわせることができる。また、従来の駆動装置であれば、例えば図19に示すように、駆動の移動量が大きいため目標移動量に沿ってスムーズに移動させることは困難であるが、図13に示す制御処理を行うことで、図14に示すように、1回当たりの駆動量時間、駆動量が小さいので目標移動量に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0071】
制御部81は、上述した単位時間あたりのパルス数を変更する方法を用い、アクチュエータ10の駆動特性に基づいて、領域ごとに単位時間あたりのパルス数を変更することにより、図10に示す実行値Sのように被駆動部材3の移動領域全体において、被駆動部材3の摩擦係合位置に関わらず移動速度を一定として移動させることができる。
【0072】
また、制御部81は、被駆動部材3に取り付けられた移動レンズ90のレンズ特性に基づいて、駆動回路85を制御する機能を有している。すなわち、移動レンズ90のレンズ特性に応じて、駆動信号の波形を変更する機能を有している。
【0073】
最初に、レンズ特性について説明する。以下では、移動レンズ90の一例としてズームレンズを用いた場合を説明する。アクチュエータ10によってズームレンズを光軸Oに沿って移動させると、その動きに連動して画角が変化する。ここで、レンズ特性があるズームレンズを用いた場合、ズームレンズの光軸O上の位置によっては、ズームレンズの移動量と画角の変化量とが連動しない場合がある。例えば、光軸O上のある領域では画角の変化が著しい場合等である。このようなレンズ特性がある場合には、駆動信号として単位時間あたりのパルス数が同一の連続的なパルスを入力しても、画角の変化量は一定とならない。すなわち、被駆動部材3の摩擦係合位置に依存して画角の変化量が増減してしまうため、ズーム倍率が摩擦係合位置に対して比例的とならない。
【0074】
次に、移動レンズ90のレンズ特性及びアクチュエータ10の駆動特性に基づいて駆動回路85を制御する機能について説明する。制御部81は、上述したアクチュエータ10の駆動特性を考慮しつつ、さらにレンズ特性を考慮した移動速度の制御を行う。例えば、上述したレンズ特性を予め取得して、被駆動部材3の摩擦係合位置に基づいて、アクチュエータ10を制御する駆動信号の波形を変更する。制御部81は、例えば、被駆動部材3が駆動軸2上を移動する移動領域を複数の領域に分割し、分割した各領域間の画角変化量に偏差が出ないように、分割した領域ごとに駆動信号の波形を変更する。例えば、移動領域Zを10の領域Z1〜Z10に分割し、領域ごとに単位時間あたりのパルス数を変更し、移動領域Zの中で画角が同一の変化量となるように移動速度を変更する。なお、同一の変化量とは、ほぼ同一の変化量のことであって、例えば誤差がほぼ±15%の範囲内となる変化量のことである。
【0075】
ここで、レンズ特性に基づいて変更される駆動信号について詳細に説明する。説明理解の容易性を考慮して、圧電素子1側に最も近い点を被駆動部材3の出発点とし、圧電素子1から離間させる方向(図2において左方向)に移動させる場合を説明する。すなわち、図9に示す領域Z1から領域Z10へ移動させる場合である。制御部81は、制御目標として、期待値(理想的な移動速度)を達成するように、駆動信号を変更する。ここで制御目標の一例を図15に示す。図15は、横軸が時間、縦軸が移動量であり、点線で示すグラフが制御目標Mである。すなわち、制御部81の制御目標Mは、すなわち、時刻0〜時刻t1までの間は領域Z1、時刻t1〜時刻t2までの間は領域Z2、時刻t2〜時刻t3までの間は領域Z3、時刻t3〜時刻t4までの間は領域Z4、時刻t4〜時刻t5までの間は領域Z5、時刻t5〜時刻t6までの間は領域Z6、時刻t6〜時刻t7までの間は領域Z7、時刻t7〜時刻t8までの間は領域Z8で、被駆動部材3を移動させるという目標である。
【0076】
制御部81は、アクチュエータ10の駆動特性を考慮する場合と同様に、単位時間あたりのパルス数が所定値である駆動信号を入力した際の駆動特性(図9)を参照し、被駆動部材3の摩擦係合位置に応じて単位時間あたりのパルス数を所定値から変更する。ここで、説明理解の容易性を考慮してパルス間隔を変更せずに駆動と休止を繰り返すことで単位時間あたりのパルス数を変更する例を説明する。図16(A),(B),(C)は、図15の一部拡大図であり、図16(D)は、図16(C)の駆動信号の一部を示すものである。
【0077】
領域Z1での平均移動速度は約3.5mm/sであり、領域Z1での目標速度を3mm/sとすると、時刻0〜時刻t1においてパルス数を所定値のまま変更せずに駆動信号を出力する。これにより、図16(A)に示すように、領域Z1において制御目標Mに沿った実行値Sを得ることができる。一方、領域Z4での平均移動速度は約5.0mm/sであり、領域Z4での目標速度を5mm/sとすると、時刻t3〜t4においてパルス数を所定値のまま変更せずに駆動信号を出力する。これにより、図16(B)に示すように、領域Z4において制御目標Mに沿った実行値Sを得ることができる。そして、領域Z10での平均移動速度は約3.5mm/sであり、領域Z10での目標速度を1.5mm/sとすると、偏差が生じている。このため、図16(D)に示す駆動信号のように、駆動期間と休止期間が連続した駆動信号を出力することで単位時間あたりのパルス数を変更し、領域Z10での平均移動速度を目標速度と同一となるようにする。これにより、駆動命令、休止命令を繰り返しながら、領域Z10での平均移動速度を1.5mm/sとすることができる。よって、図16(C)に示す実行値Sのように、制御目標Mに沿って被駆動部材3を駆動させることができる。
【0078】
このように、制御部81は、レンズ特性に基づいて、領域ごとに目標速度を設定するとともに単位時間あたりのパルス数を変更することにより、図15に示すように被駆動部材3の移動領域全体において、レンズ特性を考慮しながら移動速度を変更させることができるので、被駆動部材3の摩擦係合位置に関わらず画角変化量を一定とすることができる。
【0079】
また、制御部81は、レンズ特性を考慮しながら被駆動部材3の移動速度を変更させる場合、アクチュエータ10の駆動特性に基づいて被駆動部材3の移動を制御する駆動信号を算出し、算出した駆動信号をレンズ特性に基づいた補正式を用いて変更する構成としてもよい。
【0080】
例えば、制御部81は、分割した領域ごとに、レンズ特性を考慮した駆動信号の補正式又は補正テーブルを複数備え、駆動する領域ごとに異なる補正式又は補正テーブルを用いて単位時間あたりの駆動パルス数を算出して行えばよい。また、逆転駆動の補正は、例えば制御部81に逆転駆動の場合の補正式又は補正テーブルを設定し、逆転駆動する場合には異なる補正式又は補正テーブルを用いて単位時間あたりの駆動パルス数を算出して行えばよい。駆動パルス数の補正式としては、例えば次の式(1)で示されるように、駆動量の二次式である補正式が用いられる。
【0081】
Y=a・X2+b・X+c …(1)
【0082】
この式(1)において、Yが1ms期間内のパルス数、Xが駆動量[μm]、a、b及びcは定数である。補正式においては、各定数がレンズ特性により決定される。
【0083】
このように、制御部81は、レンズ特性に基づいた補正式を用いて、領域ごとに、あるいは駆動時間ごとに単位時間あたりのパルス数を変更することにより、図16に示すように被駆動部材3の移動領域全体において、レンズ特性を考慮しながら移動速度を変更させることができるので、被駆動部材3の摩擦係合位置に関わらず画角変化量を一定とすることができる。
【0084】
なお、駆動信号は、可聴周波数を超える周波数の信号が用いられる。AoutとBoutの二つの信号の周波数は、可聴周波数を超える周波数信号とされ、例えば、30〜80kHzの周波数信号とされ、より好ましくは40〜60kHzとされる。このようは周波数の信号を用いることにより、圧電素子1の可聴領域における作動音を低減することができる。
【0085】
次に、本実施形態に係る駆動装置の全体動作について説明する。
【0086】
図2において、圧電素子1に駆動信号が入力され、その駆動信号の入力により圧電素子1が伸長及び収縮を繰り返す。この伸長及び収縮に応じて駆動軸2が往復運動する。このとき、圧電素子1の伸長速度と収縮速度を異ならせることにより、駆動軸2が一定の方向へ移動する速度とその逆方向へ移動する速度が異なることとなる。これにより、被駆動部材3及び移動レンズ90を所望の方向へ移動させることができる。さらに、駆動軸2の単位時間あたりの往復運動回数を制御することで、移動速度を制御することができる。
【0087】
ここで、被駆動部材3の移動速度は、被駆動部材3の摩擦係合位置によって変化する。このため、従来の駆動装置のように、摩擦係合位置に関わらず移動速度が一定と仮定して移動量を制御すると、実行値Sと制御目標Mとの偏差が大きくなる。例えば、図17に示すように、目標とする移動量を達成するために想定される駆動パルスを入力しても、実行値Sと制御目標Mとの偏差が大きくなる。さらに、被駆動部材3に取り付けられた移動レンズ90のレンズ特性によっては、図18に示すように、実行値Sと制御目標Mとの偏差が一層大きくなる。
【0088】
これに対して、本実施形態の駆動装置は、被駆動部材3の摩擦係合位置に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更する。このため、被駆動部材3を一定速度で移動させることができる。さらに、レンズ特性に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更する。このため、被駆動部材3の移動速度を緩やかに変更することができる。
【0089】
以上、本実施形態に係る駆動装置及び光学装置によれば、被駆動部材3の移動範囲を領域Z1〜Z10に分割し、分割した領域Z1〜Z10ごとに平均移動速度を求め、求めた平均移動速度が同一となるように、領域Z1〜Z10ごとに駆動信号を変更するため、被駆動部材の係合位置に依存した移動速度の違いを小さくし、被駆動部材3の移動速度が移動範囲内で同一とすることが可能となる。よって、被駆動部材3の駆動制御を正確に行ない、被駆動部材を精度良く移動させることができる。
【0090】
また、本実施形態に係る駆動装置及び光学装置によれば、領域Z1〜Z10の単位時間あたりのパルス数を変更して駆動信号の波形を変更することができるので、駆動軸2に摩擦係合した被駆動部材3の移動速度を変化させることができる。
【0091】
また、本実施形態に係る駆動装置及び光学装置によれば、単位時間あたりのパルス数を変更する場合には、制御部81は、アクチュエータ10の駆動と休止とを繰り返させることができるので、被駆動部材3の移動位置を細かく制御して滑らかに移動させることができる。
【0092】
さらに、本実施形態に係る光学装置によれば、ズームレンズのレンズ特性、及びズームレンズを保持する被駆動部材の摩擦係合位置に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更するため、摩擦係合位置に基づく移動速度の偏差だけでなく、レンズ特性に基づく目標位置の偏差を考慮して、ズームレンズを移動させることができるので、画角の変化を滑らかにすることができる。
【0093】
なお、上述した実施形態は本発明に係る駆動装置及び光学装置の一例を示すものである。本発明に係る駆動装置及び光学装置は、これらの実施形態に係る駆動装置及び光学装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る駆動装置及び光学装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0094】
例えば、上述した実施形態では、移動レンズ90をズームレンズとして説明したが、オートフォーカス用のレンズ等であってもよい。また、移動レンズ90以外の物(例えばステージやプローブ等)を駆動させる駆動装置等に適用してもよい。さらに、手振れ補正機構のように、光軸に直交する方向に駆動させるアクチュエータに採用してもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、光学装置として撮像装置において好適に採用される例を説明したが、インクジェット式のプリントヘッドの駆動やインク噴射、又は点火装置等に用いられる圧電素子の制御に採用してもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、支持部材5を介し固定枠4に圧電素子1を取り付けて、圧電素子1の端部を自由端にした場合について説明したが、圧電素子1の端部を直接固定枠4に取り付けるものであってもよい。
【0097】
また、上述した実施形態では、アクチュエータ10は、圧電素子1から離間する方向に被駆動部材3を移動させる例を説明したが、圧電素子1へ接近する方向に被駆動部材3を移動させる場合でも被駆動部材3の移動を正確に制御することができる。また、上述した実施形態では、被駆動部材3が最も圧電素子1に近い位置から処理を開始する例を説明したが、被駆動部材3の開始位置はどこでもよい。
【0098】
また、上述した実施形態では、被駆動部材3の移動領域を8つの領域に分割する例を説明したが、この領域の数は8以外であってもよく、より細かく領域を分けることで被駆動部材3の移動を正確に制御することができる。また、移動領域を等分して領域を生成してもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、単位時間当たりのパルス数を変更することにより駆動信号の変更を行う例を説明したが、分割した領域ごとに駆動周波数又は駆動電圧を変更することにより、駆動信号を変更してもよい。また、分割した領域ごとに、単位時間当たりのパルス数、駆動周波数若しくは駆動電圧を組み合わせたものを制御して、駆動信号を変更してもよい。さらに、分割した領域ごとに、単位時間当たりのパルス数、駆動周波数若しくは駆動電圧又はこれらの組み合わせたものを予め制御パターンとして用意しておき、用意した速度パターンを用いて駆動制御を実行する構成としてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態では、アクチュエータ10の駆動特性、被駆動部材3に取り付けられたレンズの光学特性を予め取得する例を説明したが、被駆動部材3の摩擦係合位置及び移動速度をセンサ等により取得し、被駆動部材3の移動中に計測してフィードバックし、パルス数を変更する構成や、被駆動部材3の摩擦係合位置及び画角変化量を、被駆動部材3の移動中に計測してフィードバックし、パルス数を変更する構成としてもよい。
【0101】
さらに、上述した実施形態では、撮像装置及び光学装置のアクチュエータとして圧電素子を用いたものを採用しているが、モータ、高分子アクチュエータ、形状記憶合金などの他の駆動部品を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置を採用した撮像装置の撮像光学系の概要図である。
【図2】本発明の実施形態に係る駆動装置を示す断面図である。
【図3】図2のIII−IIIにおける被駆動部材の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る駆動装置におけるホトリフレクタのA/D変換回路図である。
【図5】本発明の実施形態に係る駆動装置におけるホトリフレクタの出力イメージである。
【図6】本発明の実施形態に係る駆動装置におけるホトリフレクタのA/D出力のズーム位置依存性を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る駆動装置における駆動回路を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る駆動装置の圧電素子に入力される駆動信号の波形図である。
【図9】本発明の実施形態に係る駆動装置のアクチュエータの駆動特性を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御、駆動信号の概要を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態に係る駆動装置の圧電素子に入力される駆動信号の波形図である。
【図13】本発明の実施形態に係る駆動装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図15】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図16】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御、駆動信号の概要を説明する図である。
【図17】従来の駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図18】従来の駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図19】従来の駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【符号の説明】
【0103】
1…圧電素子、2…駆動軸、3…被駆動部材、10…アクチュエータ、81…制御部(駆動信号制御手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動部材を駆動させる駆動装置及びその駆動装置を備える光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動装置及び光学装置として、圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータ(圧電アクチュエータ)を有するものが知られている。例えば、特許文献1〜3には、駆動信号により圧電素子を伸縮させ、圧電素子の伸縮動作に応じて駆動軸を往復運動させて、駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させるものが開示されている。
【0003】
特許文献1記載の駆動装置は、撮像装置等の光学装置に採用されるものであり、複数のレンズに対しそれぞれ独立した駆動機構を有し、被駆動部材である各レンズの移動速度の比(フローティング比)が設定されている領域では設定されたフローティング比で各レンズの移動速度を制御し、フローティング比が設定されていない領域では各レンズの焦点距離に応じて各レンズの移動速度を制御するものである。特許文献2記載の駆動装置は、駆動開始、駆動停止及び駆動方向反転の際に、圧電素子への印加時間を制御することで被駆動部材の移動速度を制御するものである。特許文献3記載の駆動装置は、駆動波形を予めメモリに記憶しておき、被駆動部材の目標駆動方向及び目標駆動速度に応じて、記憶された駆動波形を選択し、駆動速度を制御するものである。
【特許文献1】特開平8−21947号公報
【特許文献2】特開平9−191676号公報
【特許文献3】特開平11−155292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3記載の駆動装置にあっては、被駆動部材をアクチュエータの駆動により高精度に移動させることが困難である。例えば、圧電アクチュエータが有する駆動特性によっては、目標移動量に対する実際の移動量の偏差が大きくなることがある。
【0005】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、圧電アクチュエータの駆動特性を考慮して被駆動部材を精度良く移動させることができる駆動装置及び光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る駆動装置は、圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータを有し、駆動信号により圧電素子を伸縮させ、圧電素子の伸縮動作に応じて駆動軸を往復運動させて、駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させる駆動装置であって、被駆動部材が移動する移動範囲内を複数の範囲に分割し、分割されたそれぞれの範囲ごとに所定の駆動信号に対する平均移動速度を求め、平均移動速度が同一となるように、分割されたそれぞれの範囲ごとに駆動信号の波形を変更する駆動信号制御手段を備えて構成される。
【0007】
本発明に係る駆動装置によれば、被駆動部材の移動範囲を複数の範囲に分割し、分割した複数の範囲ごとに平均移動速度を求め、求めた平均移動速度が同一となるように、分割した範囲ごとに駆動信号を変更することができるため、被駆動部材の係合位置に依存した移動速度の違いを小さくし、被駆動部材3の移動速度が移動範囲内で同一とすることが可能となる。よって、被駆動部材の駆動制御を正確に行ない、被駆動部材を精度良く移動させることができる。
【0008】
また、本発明に係る駆動装置は、圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータを有し、駆動信号により圧電素子を伸縮させ、圧電素子の伸縮動作に応じて駆動軸を往復運動させて、駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させる駆動装置であって、被駆動部材が移動する移動範囲内を複数の範囲に分割し、分割されたそれぞれの範囲ごとに所定の駆動信号に対する平均移動速度を求め、分割されたそれぞれの範囲ごとに定められた目標移動速度と平均移動速度が同一となるように、分割されたそれぞれの範囲ごとに駆動信号の波形を変更する駆動信号制御手段を備えて構成される。
【0009】
本発明に係る駆動装置によれば、被駆動部材の移動範囲を複数の範囲に分割し、分割した複数の範囲ごとに平均移動速度を求め、分割したそれぞれの範囲ごとに定めた目標移動速度と平均移動速度が同一となるように、分割した範囲ごとに駆動信号を変更することができるため、被駆動部材の係合位置に関わらず被駆動部材3の移動速度を目標速度に合わせることが可能となる。よって、被駆動部材の駆動制御を正確に行ない、被駆動部材を精度良く移動させることができる。
【0010】
ここで、駆動信号制御手段は、駆動信号としてパルス信号を用い、分割されたそれぞれの範囲内の単位時間あたりのパルス数を変更して駆動信号の波形を変更することが好適である。このように構成することで、駆動軸に摩擦係合した被駆動部材の移動速度を変化させることができる。
【0011】
また、単位時間あたりのパルス数を変更する駆動装置において、駆動信号制御手段は、アクチュエータの駆動と休止とを繰り返させて被駆動部材を移動させることが好適である。このように構成することで、被駆動部材の移動位置や移動速度を細かく制御して滑らかに移動させることができる。
【0012】
また、本発明に係る光学装置は、上述した駆動装置を備えて構成される。この光学装置によれば、上述した駆動装置を備えていることから、光学部材を精度良く移動させることができる。
【0013】
ここで、上述した駆動装置を備える光学装置において、駆動信号制御手段は、レンズのレンズ特性、及びレンズを保持する被駆動部材の摩擦係合位置に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更することが好適である。このように構成することで、摩擦係合位置に基づく移動速度の偏差だけでなく、レンズ特性に基づく目標位置の偏差を考慮して、レンズを移動させることができるので、画角の変化を滑らかにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧電アクチュエータの駆動特性を考慮して被駆動部材を精度良く移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
本実施形態に係る駆動装置は、例えば屈曲光学系を有する撮像装置に好適に採用されるものである。図1は、本実施形態に係る駆動装置を適用した撮像装置(光学装置)の撮像光学系を示す概要図である。撮像装置は、例えば図1に示すように、固定レンズ105、プリズム104、移動レンズ90、102、固定レンズ101及び撮像素子82を備えている。そして、本実施形態に係る駆動装置が、移動レンズ90、102を光軸Oに沿って移動させる機能を有している。以下では説明理解の容易性を考慮し、移動レンズ90を移動させる駆動装置について詳細を説明する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る駆動装置の断面図である。図2に示すように、本実施形態に係る駆動装置は、圧電素子1に駆動軸2を取り付けたアクチュエータ10を有し、圧電素子1の伸縮に応じて駆動軸2を往復移動させ、駆動軸2に摩擦係合される被駆動部材3を駆動軸2に沿って移動させる装置である。
【0018】
圧電素子1は、駆動信号の入力により伸縮可能な電気機械変換素子であり、所定の方向へ伸長及び収縮可能となっている。この圧電素子1は、制御部(駆動信号制御手段)81に接続され、その制御部81により電気信号を入力されることにより伸縮する。例えば、圧電素子1には、二つの入力端子11a、11bが設置される。この入力端子11a、11bに印加される電圧を繰り返して増減させることにより、圧電素子1が伸長及び収縮を繰り返すこととなる。なお、電気機械変換素子としては駆動信号の入力により伸縮するものであれば、導電性高分子からなる材料や形状記憶合金等、圧電素子1以外のものを用いてもよい。
【0019】
駆動軸2は、圧電素子1の伸縮方向に長手方向を向けて圧電素子1に取り付けられている。例えば、駆動軸2の一端が圧電素子1に当接され接着剤21を用いて接着されている。この駆動軸2は、長尺状の部材であり、例えば円柱状のものが用いられる。駆動軸2は、固定枠4から内側へ延びる仕切り部4a、仕切り部4cにより長手方向に沿って移動可能に支持されている。仕切り部4b、仕切り部4cは、被駆動部材3の移動領域を仕切るための部材であり、駆動軸2の支持部材としても機能している。固定枠4は、圧電素子1、駆動軸2及び被駆動部材などを収容し組み付けるための筐体として機能する。
【0020】
駆動軸2の材質は、軽く高剛性のものが適している。なお、駆動軸2の形状は円柱状に限定されるものではなく、角柱状でもよい。
【0021】
仕切り部4b、仕切り部4cには、駆動軸2を貫通させる貫通孔4aがそれぞれ形成されている。仕切り部4bは、駆動軸2の圧電素子1取付部分の近傍箇所、すなわち駆動軸2の基端箇所を支持している。仕切り部4cは、駆動軸2の先端箇所を支持している。駆動軸2は、圧電素子1に取り付けられることにより、圧電素子1の伸長及び収縮の繰り返し動作に応じて、その長手方向に沿って往復移動する。
【0022】
なお、図2では、駆動軸2を仕切り部4b、4cによりその先端側と基端側の二箇所で支持する場合を示しているが、駆動軸2をその先端側又は基端側の一方で支持する場合もある。例えば、仕切り部4bの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4cにより先端箇所のみで支持されることとなる。また、仕切り部4cの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4bにより基端箇所のみで支持されることとなる。
【0023】
また、図2では、駆動軸2を支持する仕切り部4b、4cが固定枠4と一体になっている場合について示したが、これらの仕切り部4b、4cは固定枠4と別体のものを固定枠4に取り付けて設けてもよい。別体の場合であっても、一体となっている場合と同様な機能、効果が得られる。
【0024】
被駆動部材3は、駆動軸2に移動可能に取り付けられている。この被駆動部材3は、駆動軸2に対し摩擦係合されて取り付けられ、駆動軸2の長手方向に沿って移動可能となっている。例えば、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2に圧接されて所定の摩擦係数で係合しており、一定の押圧力で駆動軸2に押し付けられることによってその移動の際に一定の摩擦力が生ずるように取り付けられている。この摩擦力を超えるように駆動軸2が移動することにより、慣性により被駆動部材3がその位置を維持し、その被駆動部材3に対し相対的に駆動軸2が移動する。
【0025】
圧電素子1は、支持部材5により固定枠4に取り付けられている。支持部材5は、圧電素子1をその伸縮方向に対して側方から支持して取り付けるものであり、圧電素子1と固定枠4との間に配設されている。この場合、支持部材5により圧電素子12をその伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この支持部材5は、圧電素子1を側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
【0026】
このように支持部材5によりアクチュエータ10が圧電素子1の伸縮方向に対し側方側から支持されており、アクチュエータ10の両端は圧電素子1の伸縮方向へ移動可能な自由端となっている。このため、アクチュエータ10が駆動しても圧電素子1の伸縮による振動が固定枠4側へ伝達されにくい構造となっている。従って、アクチュエータ10の駆動信号をアクチュエータ10自体の共振周波数に関連づけて設定することが有効となっている。
【0027】
支持部材5は、所定以上の弾性特性を有する弾性体により形成され、例えばシリコーン樹脂により形成される。支持部材5は、圧電素子1を挿通させる挿通孔5aを形成して構成され、その挿通孔5aに圧電素子1を挿通させた状態で固定枠4に組み付けられている。支持部材5の固定枠4への固着は、接着剤22による接着により行われる。また、支持部材5と圧電素子1の間の固着も、接着剤による接着により行われる。この支持部材5を弾性体によって構成することにより、圧電素子1をその伸縮方向に移動可能に支持することができる。図2において、支持部材5が圧電素子1の両側に二つ図示されているが、この支持部材5、5は環状の支持部材5の断面をとることによって二つに図示されたものである。
【0028】
なお、支持部材5の固定枠4への固着及び圧電素子1への固着は、固定枠4と圧電素子1の間に支持部材5を圧入し、支持部材5の押圧によって行ってもよい。例えば、支持部材5を弾性体により構成し、かつ、固定枠4と圧電素子1の間より大きく形成して、その間に圧入して設置する。これにより、支持部材5は、固定枠4及び圧電素子1に密着して配設される。この場合、圧電素子1は、支持部材5により伸縮方向に直交する方向の両側から押圧される。これによって、圧電素子1が支持される。
【0029】
また、ここでは支持部材5をシリコーン樹脂で形成する場合について説明したが、支持部材5をバネ部材により構成してもよい。例えば、固定枠4と圧電素子1の間にバネ部材を配置し、このバネ部材によって圧電素子1を固定枠4に対し支持してもよい。
【0030】
被駆動部材3には、レンズ枠91を介して移動レンズ90が取り付けられている。移動レンズ90は、カメラの撮影光学系を構成するものであり、駆動装置の移動対象物となるものである。この移動レンズ90は、被駆動部材3と一体的に設けられ、被駆動部材3と共に移動するように設けられている。移動レンズ90の光軸O上には、図示しない固定レンズなどが配設され、カメラの撮影光学系を構成している。この移動レンズ90として、例えばズームレンズが用いられる。また、光軸O上には、撮像素子82が配設されている。撮像素子82は、撮影光学系により結像された画像を電気信号に変換する撮像手段であり、例えばCCDにより構成される。撮像素子82は、制御部81と接続されており、画像信号を制御部81に出力する。
【0031】
圧電素子1の端部には、錘部材6が取り付けられている。錘部材6は、圧電素子1の伸縮力を駆動軸2側へ伝達させるための部材であって、圧電素子1の駆動軸2が取り付けられる端部と反対側の端部に取り付けられている。
【0032】
この錘部材6は、アクチュエータ10の一部を構成する部品である。錘部材6としては、駆動軸2より重いものが用いられる。
【0033】
錘部材6の材質は、圧電素子1及び駆動軸2よりもヤング率の小さい材料のものが用いられる。なお、錘部材6と圧電素子1とを固着する接着剤としては、弾性接着剤を用いることが好ましい。
【0034】
また、錘部材6は、固定枠4に対し支持固定されない状態で設けられている。すなわち、錘部材6は、圧電素子1の自由端に取り付けられ、固定枠4に対し直接支持されたり固定されておらず、また接着剤や樹脂材を介して固定枠4に対し動きを拘束されるように支持されたり固定されていない状態で設けられている。
【0035】
駆動装置には、被駆動部材3の移動位置を検出する検出器83が設けられている。検出器83としては、例えば光学式の検出器が用いられ、ホトリフレクタ(PR)、フォトインタラプタなどが用いられる。本実施形態では、検出器83としてリフレクタ(反射板)83a及び検出部83bを備えたものを用いている。リフレクタ83aは、被駆動部材3と連動するレンズ枠91に取り付けられている。検出部83bは、赤外光を発光する発光部及び赤外光を受光する受光部を備えている。
【0036】
受光部に入射された光の受光量は、例えば図4に示す回路にてA/D変換され信号として検出される。そして、検出部83bの発光部からリフレクタ83a側へ検出光を出射し、リフレクタ83a側で反射してくる反射光を検出部83bの受光部で検出することにより被駆動部材3及び移動レンズ90の移動位置を検出する。図5に、A/D出力の一例を示す。図5は、A/D出力のリフレクタ83a位置依存性を示すグラフであって、横軸がリフレクタ83aの位置、縦軸がA/D出力である。図5に示すように、リフレクタ83aの位置に依存して傾斜を持ったA/D出力が得られる。また、検出器83は、制御部81に接続されており、検出器83の出力信号は制御部81に入力される。
【0037】
制御部81は、駆動装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAM、EEPROM、入力信号回路、出力信号回路などにより構成される。EEPROMには、例えば調整時に測定によって得られたズーム位置に対するA/D出力値が記憶されている。また、例えばズーム領域(移動範囲)Z1〜Z10に応じた平均速度も測定され記憶されている。また、制御部81は、A/D出力値のズーム位置依存性に基づいて、各ズーム領域Z1〜Z10においてアクチュエータ10の駆動制御を行う機能を有している。A/D出力値のズーム位置依存性の一例を図6に示す。そして、制御部81は、圧電素子1を作動させるための駆動回路を備えており、圧電素子1に対し駆動のための電気信号を出力する機能を有している。これらの機能の詳細については後述する。
【0038】
図3は、図2のIII−IIIにおける被駆動部材3の摩擦係合部分の断面図である。図3に示すように、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2を押圧することにより、駆動軸2に取り付けられている。例えば、被駆動部材3には、駆動軸2を位置決めするためのV字状の溝3aが形成される。その溝3aには、断面V字状の摺動板3bが配置され、その摺動板3bを介して駆動軸2が被駆動部材3に押圧される。
【0039】
また、板バネ7と被駆動部材3との間には、断面V字状の摺動板3cが配設され、板バネ7は、この摺動板3cを介して被駆動部材3を押圧する。このため、摺動板3b、3cが互いに凹部側を向き合わせて配置され、駆動軸2を挟んで設けられている。V字状の溝3a内に駆動軸2を収容することにより、被駆動部材3を安定して駆動軸14に取り付けることができる。
【0040】
板バネ7としては、例えば、断面L字状の板バネ材が用いられる。板バネ7一辺を被駆動部材3に掛止させ、他の一辺を溝3aの対向位置に配することにより、他の一辺により溝3aに収容される駆動軸2を被駆動部材3との間に挟み込むことができる。
【0041】
このように、被駆動部材3は、板バネ7により被駆動部材3を駆動軸2側に一定の力で押圧して取り付けられることにより、駆動軸2に対し摩擦係合される。すなわち、被駆動部材3は、駆動軸2に対し被駆動部材3が一定の押圧力で押し付けられ、その移動に際し一定の摩擦力が生ずるように取り付けられる。
【0042】
また、断面V字状の摺動板3b、3cにより駆動軸2を挟み込むことにより、被駆動部材3が駆動軸2に複数箇所で線接触することになり、駆動軸2に対し安定して摩擦係合させることができる。また、複数箇所の線接触状態により被駆動部材3が駆動軸2に係合しているため、実質的に被駆動部材3が駆動軸2に面接触状態で係合していると同様な係合状態となり、安定した摩擦係合が実現できる。
【0043】
次に、制御部81の詳細について説明する。制御部81は、圧電素子1を作動させる駆動回路を備えている。図7は、圧電素子1を作動させる駆動回路85の回路図である。この駆動回路85は、圧電素子1のドライブ回路として機能するものであり、圧電素子1に対し駆動用の電気信号を出力する。駆動回路85は、制御部81の制御信号生成部(図示なし)から制御信号を入力し、その制御信号を電圧増幅又は電流増幅して圧電素子1の駆動用電気信号を出力する。駆動回路85は、例えば入力段を論理回路U1〜U3により構成し、出力段に電界効果型のトランジスタ(FET)Q1、Q2を備えたものが用いられる。トランジスタQ1、Q2は、出力信号として、Hi出力(高電位出力)、Lo出力(低電位出力)及びOFF出力(オフ出力、オープン出力)を出力可能に構成されている。なお、図7に示す駆動回路は、圧電素子1を作動させるための回路の一例であり、これ以外の回路を用いて圧電素子1を作動させてもよい。
【0044】
図8に駆動回路85から出力される駆動信号の一例を示す。図8(A)は、被駆動部材3を圧電素子1に接近させる方向(図2において右方向)に移動させる際に圧電素子1に入力される駆動信号であり、図8(B)は、被駆動部材3を圧電素子1から離間させる方向(図2において左方向)に移動させる際に圧電素子1に入力される駆動信号である。
【0045】
図8(A)、(B)の駆動信号において、Aoutの信号が圧電素子1の一方の入力端子11aに入力され、Boutの信号が圧電素子1の他方の入力端子11bに入力される。このため、AoutとBoutとの電位差が圧電素子1の入力電圧となる。
【0046】
図8の駆動信号は矩形波であるが、実際に圧電素子1に入力される波形は、圧電素子1のキャパシタ成分により三角波状となる。このため、駆動信号のハイ、ローのデューティー比が50%でなければ、矩形状の駆動信号の入力によって圧電素子1の伸長速度と収縮速度を異ならせることができ、被駆動部材3を移動させることができる。
【0047】
これらの図8(A)、(B)の駆動信号は、パルス信号であり、アクチュエータ10の駆動時における信号である。1パルスごとの信号が連続してアクチュエータ10に入力されることにより、連続駆動が行われることとなる(駆動状態)。なお、アクチュエータ10に入力される信号は、図8に示すものに限られるものではなく、パルス信号でなく鋸歯波状の信号や三角波状の信号などであってもよい。
【0048】
一方、アクチュエータ10の休止時における信号は、図示していないが、圧電素子1の二つの端子に入力される電位差がゼロとなる信号である。また、電位差がゼロとなる休止時の入力信号は、図8(A)、(B)に示す駆動時の入力信号における1パルスの周期時間以上の長い時間で電位差がゼロとなる信号とすることが好ましい。このような信号がアクチュエータ10に入力されることにより、駆動が休止されることとなる(休止状態)。
【0049】
また、制御部81は、駆動回路85を制御してアクチュエータ10へ出力する駆動信号の波形を変更する機能を有している。例えば、制御部81は、単位時間あたりのパルス数を変更することによって駆動信号の波形の変更を行う。例えば、パルスを間引いたりパルス間隔を変更したりすることにより単位時間あたりのパルス数を変更する。さらに、被駆動部材3を移動させる際に、単位時間あたりのパルス数を変更する場合には、1パルスごとの信号が連続する期間の後に、AoutとBoutとの電位差がゼロ(又はAoutとBoutがオープン)となる期間を、1パルスの周期時間以上の長い時間設け、両期間が交互に繰り返されるように駆動信号の波形の変更を行う。すなわち、連続するパルス信号(駆動命令)と、電位差が0となる信号(休止命令)とが交互に繰り返し出力されるように駆動信号の波形を変更する。
【0050】
そして、制御部81は、アクチュエータ10の駆動特性に基づいて駆動回路85を制御する機能を有している。すなわち、アクチュエータ10の駆動特性に応じて、駆動信号の波形を変更する機能を有している。
【0051】
最初に、アクチュエータ10の駆動特性について説明する。図9は、被駆動部材3の駆動軸2上の位置と移動速度との関係を示すグラフである。ここで、図9に示すグラフは、単位時間あたりのパルス数を所定値(固定値)とした駆動信号をアクチュエータ10に入力した場合を示している。また、グラフの横軸は、被駆動部材3が駆動軸2(ここでは全長6.5mm)に摩擦係合している位置(摩擦係合位置)を示すものであり、被駆動部材3が圧電素子1側に最も近い位置に摩擦係合されている場合を0としている。そして、グラフの縦軸は、被駆動部材3の移動速度の大きさである。
【0052】
図9に示すように、アクチュエータ10は、被駆動部材3の摩擦係合位置に依存する駆動特性を有している。例えば、被駆動部材3が圧電素子1側に最も近い領域、あるいは最も遠い領域に係合されている場合には移動速度が小さくなり、駆動軸2の中間領域に係合されている場合には移動速度が大きくなるという駆動特性を有している。さらに、アクチュエータの姿勢が変わった場合、駆動方向が水平方向(実線)、錘下方向(破線)、錘上方向(破線)によって被駆動部材3の移動速度が変化するという駆動特性を有している。すなわち、アクチュエータ10は、駆動信号として単位時間あたりのパルス数が同一の連続的なパルスを入力しても、被駆動部材3の移動速度が移動範囲で一定とならず、被駆動部材3の摩擦係合位置に依存して被駆動部材3の移動速度が変化する特性を有している。なお、この駆動特性は、例えば調整時等、予め取得され、EEPROM等に記憶されている。
【0053】
次に、アクチュエータ10の駆動特性に基づいて駆動回路85を制御する機能について説明する。制御部81は、例えば予め取得し記憶したアクチュエータ10の駆動特性を参照し、被駆動部材3の摩擦係合位置に基づいて、アクチュエータ10を制御する駆動信号の波形を変更する。具体的には、制御部81は、被駆動部材3が駆動軸2上を移動する移動領域を複数の領域に分割し、分割した各領域間の平均移動速度に偏差が無いように、分割した領域ごとに駆動信号の波形を変更する。例えば、図9に示すように、移動領域Zを10個の領域Z1〜Z10に分割し、領域ごとに単位時間あたりのパルス数を変更し、移動領域Zの中で同一の移動速度(例えば後述する期待値)とする。なお、同一の移動速度とは、ほぼ同一の移動速度のことであって、例えば誤差がほぼ±15%の範囲内となる移動速度のことである。
【0054】
ここで、駆動特性に基づいて変更される駆動信号について詳細に説明する。説明理解の容易性を考慮して、圧電素子1側に最も近い点を被駆動部材3の出発点とし、圧電素子1から離間させる方向(図2において左方向)に移動させる場合を説明する。すなわち、図9に示す領域Z1から領域Z10へ移動させる場合である。制御部81は、制御目標として、期待値(理想的な移動速度)を達成するように、駆動信号を変更する。
【0055】
制御目標の一例を図10に示す。図10は、横軸が時間、縦軸が移動量であり、点線で示すグラフが制御目標Mである。制御部81の制御目標Mは、被駆動部材3の移動速度をグラフの傾きx1(一定速度)としている。すなわち、時刻0〜時刻t1の間は領域Z1、時刻t1〜時刻t2の間は領域Z2、時刻t2〜時刻t3の間は領域Z3、時刻t3〜時刻t4の間は領域Z4、時刻t4〜時刻t5の間は領域Z5、時刻t5〜時刻t6の間は領域Z6、時刻t6〜時刻t7の間は領域Z7、時刻t7〜時刻t8の間は領域Z8、時刻t8〜時刻t9の間は領域Z9、時刻t9〜時刻t10の間は領域Z10で、被駆動部材3を移動させるという目標である。
【0056】
制御部81は、目標速度x1を達成すべく、単位時間あたりのパルス数が所定値である駆動信号を入力した際の駆動特性(図9)を参照し、被駆動部材3の摩擦係合位置に応じて単位時間あたりのパルス数を所定値から変更する。具体的には、領域Z1〜Z10での所定のパルス数に対する平均移動速度をそれぞれ算出し、領域Z1〜Z10の各平均移動速度が目標速度x1と同一となるように、領域ごとに単位時間あたりのパルス数を所定値から変更する。ここでは、目標速度x1を例えば3mm/sとする。
【0057】
単位時間あたりのパルス数を変更する方法は、例えば、パルス間隔を変更せずに駆動と休止を繰り返す方法、パルス間隔を変更する方法、パルス間隔を変更してさらに駆動と休止を繰り返す方法がある。最初に、パルス間隔を変更せずに駆動と休止を繰り返す方法から説明する。図11(A),(B)は、図10の一部拡大図であり、図11(C)は、図11(B)の駆動信号の一部を示すものである。
【0058】
領域Z1では平均移動速度は約3.5mm/sであり、目標速度x1も3mm/sであるので、略同一速度である。このため、時刻0〜時刻t1において休止期間の無い連続した駆動信号を出力する。これにより、図11(A)に示すように、領域Z1において制御目標Mに沿った実行値Sを得ることができる。一方、領域Z4での平均移動速度は約5.0mm/sであり、目標速度x1は3mm/sである。このため、図11(C)に示す駆動信号のように、駆動期間と休止期間が連続した駆動信号を出力することで、単位時間あたりのパルス数を変更し、領域Z4での平均移動速度を目標速度x1と同一となるようにする。これにより、駆動命令、休止命令を繰り返しながら、領域Z4での平均移動速度を3mm/sとすることができる。よって、図11(B)に示す実行値Sのように、制御目標Mに沿って被駆動部材3を滑らかに駆動させることができる。
【0059】
次に、パルス間隔を変更する方法、及びパルス間隔を変更してさらに駆動と休止を繰り返す方法を説明する。図13は、駆動装置の動作を示すフローチャートである。図13に示す制御処理は、例えば、所定の駆動範囲(領域)を駆動する際に実行される。
【0060】
最初に、駆動範囲の平均移動速度読み出し処理から開始する(S10)。例えば、EEPROMに記憶された駆動範囲の平均移動速度を読み出す。S10の処理が終了すると、パルス数の演算処理へ移行する(S12)。
【0061】
S12の処理は、駆動範囲内で目標速度x1とするために、単位時間あたりのパルス数を演算する処理である。例えば、領域Z1を移動する場合、目標速度x1を3mm/sとすると、図9より平均移動速度は約3.5mm/sであるので、領域Z1(図6のPR0〜PR1の範囲)ではパルス数を間引いて目標速度x1に近づける。同様に、領域Z2での平均移動速度は約4.2mm/s、領域Z3での平均移動速度は約5.5mm/s、領域Z4での平均移動速度は約5.0mm/sであるので、パルス数を間引いて目標速度x1に近づける。このように、パルス各領域での平均移動速度を、パルスを間引くことにより統一する。例えば、S10の処理で入力した平均移動速度と目標速度x1との比を算出し、平均移動速度から算出される単位時間当たり(例えば1ms)のパルス数に、算出した比を積算する。この処理を領域Z4の場合を例に具体的に説明する。1パルス50kHzの場合、1パルスの時間は、0.02msである。この場合、1msのパルス数は、1÷0.02より50パルスとなる(図12の(A))。速度を5.0mm/sから3.0mm/sへ制御すると3÷5×50により30パルスとなる。よって領域Z4(PR3〜PR4の範囲)では、1ms期間に30パルス駆動させる(図12の(B))。仮にズーム移動範囲が10mmとすると、10分割すれば1つの領域が1mmに相当するので、領域Z4(PR3〜PR4の範囲)では30000パルス駆動することとなる。このように、パルスを間引くことによりパルス間隔を変更し、各領域の平均速度を統一する。これにより、制御目標の単位時間あたりのパルス数を算出できる。S12の処理が終了すると、タイマリセット処理へ移行する(S14)。
【0062】
S14の処理は、単位時間を制御するためのタイマを初期化する処理である。例えば、1msのタイマ値を0とする。S14の処理が終了すると、タイマスタート処理へ移行する(S16)。S16の処理は、初期化したタイマを開始する処理である。例えば、タイマ値が0からカウントを開始する。S16の処理が終了すると、間引き駆動処理へ移行する(S18)。
【0063】
S18の処理は、S12の処理で演算したパルス数で駆動する処理である。例えば、1msのパルス数を減少させた駆動信号によりアクチュエータを駆動する。S18の処理が終了すると、タイマ値判定処理へ移行する(S20)。
【0064】
S20の処理は、単位時間が経過したか否かを判定する処理である。例えば、S16の処理でセットしたタイマ値を確認し1msを経過しているか否かを判定する。S20の処理において、単位時間を経過していないと判定した場合には、位置確認処理へ移行する(S22)。
【0065】
S22の処理は、駆動させた被駆動部材のズーム位置を確認するために、ホトリフレクタのA/D出力値を入力する処理である。S22の処理が終了すると、制御目標確認処理へ移行する(S24)。
【0066】
S24の処理は、S22の処理で入力したA/D出力値が目標ズーム位置に対応するA/D出力値を超えているか否かを判定する処理である。例えば、目標ズーム位置に対応するA/D出力値(図6)をEEPROMから入力し、S22の処理で入力したA/D出力値と比較する。S24の処理において、目標A/D値より大きいと判定した場合には、駆動休止処理へ移行する(S26)。
【0067】
S26の処理は、駆動信号を停止する処理である。例えば、パルス間隔よりも大きな間隔で駆動信号を停止する。S26の処理が終了すると、タイマ値判定処理へ移行する(S28)。S28の処理は、単位時間が経過したか否かを判定する処理である。S28の処理において、単位時間を経過したと判定した場合には、駆動範囲確認処理へ移行する(S30)。
【0068】
S30の処理は、駆動範囲の最後に到達したかを判定する処理である。例えば、S22の処理で入力したA/D出力値に基づいて駆動範囲の最後に到達したか否かを判定する。S30の処理において、駆動範囲の最後に到達したと判定した場合には、図13に示す制御処理を終了する。一方、S30の処理において、駆動範囲の最後に到達していないと判定した場合には、タイマリセット処理に再度移行し(S14)、間引き駆動等を実行する。
【0069】
一方、S20の処理において、単位時間を経過していると判定した場合には駆動範囲確認処理へ移行する(S30)。また、S24の処理において、目標A/D値より大きくないと判定した場合には、間引き駆動処理へ再度移行する(S18)。また、S28の処理において、単位時間を経過していないと判定した場合には、制御目標確認処理へ再度移行する(S24)。
【0070】
以上の動作で図13に示す制御処理を終了する。図13に示す制御処理を実行することで、間引きした駆動信号を休止することなく用いて目標の期待値に近い制御を行うことができる。さらに、例えば図14に示すように、駆動命令、休止命令を繰り返しながら、領域の平均移動速度を目標速度x1にあわせることができる。また、従来の駆動装置であれば、例えば図19に示すように、駆動の移動量が大きいため目標移動量に沿ってスムーズに移動させることは困難であるが、図13に示す制御処理を行うことで、図14に示すように、1回当たりの駆動量時間、駆動量が小さいので目標移動量に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0071】
制御部81は、上述した単位時間あたりのパルス数を変更する方法を用い、アクチュエータ10の駆動特性に基づいて、領域ごとに単位時間あたりのパルス数を変更することにより、図10に示す実行値Sのように被駆動部材3の移動領域全体において、被駆動部材3の摩擦係合位置に関わらず移動速度を一定として移動させることができる。
【0072】
また、制御部81は、被駆動部材3に取り付けられた移動レンズ90のレンズ特性に基づいて、駆動回路85を制御する機能を有している。すなわち、移動レンズ90のレンズ特性に応じて、駆動信号の波形を変更する機能を有している。
【0073】
最初に、レンズ特性について説明する。以下では、移動レンズ90の一例としてズームレンズを用いた場合を説明する。アクチュエータ10によってズームレンズを光軸Oに沿って移動させると、その動きに連動して画角が変化する。ここで、レンズ特性があるズームレンズを用いた場合、ズームレンズの光軸O上の位置によっては、ズームレンズの移動量と画角の変化量とが連動しない場合がある。例えば、光軸O上のある領域では画角の変化が著しい場合等である。このようなレンズ特性がある場合には、駆動信号として単位時間あたりのパルス数が同一の連続的なパルスを入力しても、画角の変化量は一定とならない。すなわち、被駆動部材3の摩擦係合位置に依存して画角の変化量が増減してしまうため、ズーム倍率が摩擦係合位置に対して比例的とならない。
【0074】
次に、移動レンズ90のレンズ特性及びアクチュエータ10の駆動特性に基づいて駆動回路85を制御する機能について説明する。制御部81は、上述したアクチュエータ10の駆動特性を考慮しつつ、さらにレンズ特性を考慮した移動速度の制御を行う。例えば、上述したレンズ特性を予め取得して、被駆動部材3の摩擦係合位置に基づいて、アクチュエータ10を制御する駆動信号の波形を変更する。制御部81は、例えば、被駆動部材3が駆動軸2上を移動する移動領域を複数の領域に分割し、分割した各領域間の画角変化量に偏差が出ないように、分割した領域ごとに駆動信号の波形を変更する。例えば、移動領域Zを10の領域Z1〜Z10に分割し、領域ごとに単位時間あたりのパルス数を変更し、移動領域Zの中で画角が同一の変化量となるように移動速度を変更する。なお、同一の変化量とは、ほぼ同一の変化量のことであって、例えば誤差がほぼ±15%の範囲内となる変化量のことである。
【0075】
ここで、レンズ特性に基づいて変更される駆動信号について詳細に説明する。説明理解の容易性を考慮して、圧電素子1側に最も近い点を被駆動部材3の出発点とし、圧電素子1から離間させる方向(図2において左方向)に移動させる場合を説明する。すなわち、図9に示す領域Z1から領域Z10へ移動させる場合である。制御部81は、制御目標として、期待値(理想的な移動速度)を達成するように、駆動信号を変更する。ここで制御目標の一例を図15に示す。図15は、横軸が時間、縦軸が移動量であり、点線で示すグラフが制御目標Mである。すなわち、制御部81の制御目標Mは、すなわち、時刻0〜時刻t1までの間は領域Z1、時刻t1〜時刻t2までの間は領域Z2、時刻t2〜時刻t3までの間は領域Z3、時刻t3〜時刻t4までの間は領域Z4、時刻t4〜時刻t5までの間は領域Z5、時刻t5〜時刻t6までの間は領域Z6、時刻t6〜時刻t7までの間は領域Z7、時刻t7〜時刻t8までの間は領域Z8で、被駆動部材3を移動させるという目標である。
【0076】
制御部81は、アクチュエータ10の駆動特性を考慮する場合と同様に、単位時間あたりのパルス数が所定値である駆動信号を入力した際の駆動特性(図9)を参照し、被駆動部材3の摩擦係合位置に応じて単位時間あたりのパルス数を所定値から変更する。ここで、説明理解の容易性を考慮してパルス間隔を変更せずに駆動と休止を繰り返すことで単位時間あたりのパルス数を変更する例を説明する。図16(A),(B),(C)は、図15の一部拡大図であり、図16(D)は、図16(C)の駆動信号の一部を示すものである。
【0077】
領域Z1での平均移動速度は約3.5mm/sであり、領域Z1での目標速度を3mm/sとすると、時刻0〜時刻t1においてパルス数を所定値のまま変更せずに駆動信号を出力する。これにより、図16(A)に示すように、領域Z1において制御目標Mに沿った実行値Sを得ることができる。一方、領域Z4での平均移動速度は約5.0mm/sであり、領域Z4での目標速度を5mm/sとすると、時刻t3〜t4においてパルス数を所定値のまま変更せずに駆動信号を出力する。これにより、図16(B)に示すように、領域Z4において制御目標Mに沿った実行値Sを得ることができる。そして、領域Z10での平均移動速度は約3.5mm/sであり、領域Z10での目標速度を1.5mm/sとすると、偏差が生じている。このため、図16(D)に示す駆動信号のように、駆動期間と休止期間が連続した駆動信号を出力することで単位時間あたりのパルス数を変更し、領域Z10での平均移動速度を目標速度と同一となるようにする。これにより、駆動命令、休止命令を繰り返しながら、領域Z10での平均移動速度を1.5mm/sとすることができる。よって、図16(C)に示す実行値Sのように、制御目標Mに沿って被駆動部材3を駆動させることができる。
【0078】
このように、制御部81は、レンズ特性に基づいて、領域ごとに目標速度を設定するとともに単位時間あたりのパルス数を変更することにより、図15に示すように被駆動部材3の移動領域全体において、レンズ特性を考慮しながら移動速度を変更させることができるので、被駆動部材3の摩擦係合位置に関わらず画角変化量を一定とすることができる。
【0079】
また、制御部81は、レンズ特性を考慮しながら被駆動部材3の移動速度を変更させる場合、アクチュエータ10の駆動特性に基づいて被駆動部材3の移動を制御する駆動信号を算出し、算出した駆動信号をレンズ特性に基づいた補正式を用いて変更する構成としてもよい。
【0080】
例えば、制御部81は、分割した領域ごとに、レンズ特性を考慮した駆動信号の補正式又は補正テーブルを複数備え、駆動する領域ごとに異なる補正式又は補正テーブルを用いて単位時間あたりの駆動パルス数を算出して行えばよい。また、逆転駆動の補正は、例えば制御部81に逆転駆動の場合の補正式又は補正テーブルを設定し、逆転駆動する場合には異なる補正式又は補正テーブルを用いて単位時間あたりの駆動パルス数を算出して行えばよい。駆動パルス数の補正式としては、例えば次の式(1)で示されるように、駆動量の二次式である補正式が用いられる。
【0081】
Y=a・X2+b・X+c …(1)
【0082】
この式(1)において、Yが1ms期間内のパルス数、Xが駆動量[μm]、a、b及びcは定数である。補正式においては、各定数がレンズ特性により決定される。
【0083】
このように、制御部81は、レンズ特性に基づいた補正式を用いて、領域ごとに、あるいは駆動時間ごとに単位時間あたりのパルス数を変更することにより、図16に示すように被駆動部材3の移動領域全体において、レンズ特性を考慮しながら移動速度を変更させることができるので、被駆動部材3の摩擦係合位置に関わらず画角変化量を一定とすることができる。
【0084】
なお、駆動信号は、可聴周波数を超える周波数の信号が用いられる。AoutとBoutの二つの信号の周波数は、可聴周波数を超える周波数信号とされ、例えば、30〜80kHzの周波数信号とされ、より好ましくは40〜60kHzとされる。このようは周波数の信号を用いることにより、圧電素子1の可聴領域における作動音を低減することができる。
【0085】
次に、本実施形態に係る駆動装置の全体動作について説明する。
【0086】
図2において、圧電素子1に駆動信号が入力され、その駆動信号の入力により圧電素子1が伸長及び収縮を繰り返す。この伸長及び収縮に応じて駆動軸2が往復運動する。このとき、圧電素子1の伸長速度と収縮速度を異ならせることにより、駆動軸2が一定の方向へ移動する速度とその逆方向へ移動する速度が異なることとなる。これにより、被駆動部材3及び移動レンズ90を所望の方向へ移動させることができる。さらに、駆動軸2の単位時間あたりの往復運動回数を制御することで、移動速度を制御することができる。
【0087】
ここで、被駆動部材3の移動速度は、被駆動部材3の摩擦係合位置によって変化する。このため、従来の駆動装置のように、摩擦係合位置に関わらず移動速度が一定と仮定して移動量を制御すると、実行値Sと制御目標Mとの偏差が大きくなる。例えば、図17に示すように、目標とする移動量を達成するために想定される駆動パルスを入力しても、実行値Sと制御目標Mとの偏差が大きくなる。さらに、被駆動部材3に取り付けられた移動レンズ90のレンズ特性によっては、図18に示すように、実行値Sと制御目標Mとの偏差が一層大きくなる。
【0088】
これに対して、本実施形態の駆動装置は、被駆動部材3の摩擦係合位置に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更する。このため、被駆動部材3を一定速度で移動させることができる。さらに、レンズ特性に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更する。このため、被駆動部材3の移動速度を緩やかに変更することができる。
【0089】
以上、本実施形態に係る駆動装置及び光学装置によれば、被駆動部材3の移動範囲を領域Z1〜Z10に分割し、分割した領域Z1〜Z10ごとに平均移動速度を求め、求めた平均移動速度が同一となるように、領域Z1〜Z10ごとに駆動信号を変更するため、被駆動部材の係合位置に依存した移動速度の違いを小さくし、被駆動部材3の移動速度が移動範囲内で同一とすることが可能となる。よって、被駆動部材3の駆動制御を正確に行ない、被駆動部材を精度良く移動させることができる。
【0090】
また、本実施形態に係る駆動装置及び光学装置によれば、領域Z1〜Z10の単位時間あたりのパルス数を変更して駆動信号の波形を変更することができるので、駆動軸2に摩擦係合した被駆動部材3の移動速度を変化させることができる。
【0091】
また、本実施形態に係る駆動装置及び光学装置によれば、単位時間あたりのパルス数を変更する場合には、制御部81は、アクチュエータ10の駆動と休止とを繰り返させることができるので、被駆動部材3の移動位置を細かく制御して滑らかに移動させることができる。
【0092】
さらに、本実施形態に係る光学装置によれば、ズームレンズのレンズ特性、及びズームレンズを保持する被駆動部材の摩擦係合位置に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更するため、摩擦係合位置に基づく移動速度の偏差だけでなく、レンズ特性に基づく目標位置の偏差を考慮して、ズームレンズを移動させることができるので、画角の変化を滑らかにすることができる。
【0093】
なお、上述した実施形態は本発明に係る駆動装置及び光学装置の一例を示すものである。本発明に係る駆動装置及び光学装置は、これらの実施形態に係る駆動装置及び光学装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る駆動装置及び光学装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0094】
例えば、上述した実施形態では、移動レンズ90をズームレンズとして説明したが、オートフォーカス用のレンズ等であってもよい。また、移動レンズ90以外の物(例えばステージやプローブ等)を駆動させる駆動装置等に適用してもよい。さらに、手振れ補正機構のように、光軸に直交する方向に駆動させるアクチュエータに採用してもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、光学装置として撮像装置において好適に採用される例を説明したが、インクジェット式のプリントヘッドの駆動やインク噴射、又は点火装置等に用いられる圧電素子の制御に採用してもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、支持部材5を介し固定枠4に圧電素子1を取り付けて、圧電素子1の端部を自由端にした場合について説明したが、圧電素子1の端部を直接固定枠4に取り付けるものであってもよい。
【0097】
また、上述した実施形態では、アクチュエータ10は、圧電素子1から離間する方向に被駆動部材3を移動させる例を説明したが、圧電素子1へ接近する方向に被駆動部材3を移動させる場合でも被駆動部材3の移動を正確に制御することができる。また、上述した実施形態では、被駆動部材3が最も圧電素子1に近い位置から処理を開始する例を説明したが、被駆動部材3の開始位置はどこでもよい。
【0098】
また、上述した実施形態では、被駆動部材3の移動領域を8つの領域に分割する例を説明したが、この領域の数は8以外であってもよく、より細かく領域を分けることで被駆動部材3の移動を正確に制御することができる。また、移動領域を等分して領域を生成してもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、単位時間当たりのパルス数を変更することにより駆動信号の変更を行う例を説明したが、分割した領域ごとに駆動周波数又は駆動電圧を変更することにより、駆動信号を変更してもよい。また、分割した領域ごとに、単位時間当たりのパルス数、駆動周波数若しくは駆動電圧を組み合わせたものを制御して、駆動信号を変更してもよい。さらに、分割した領域ごとに、単位時間当たりのパルス数、駆動周波数若しくは駆動電圧又はこれらの組み合わせたものを予め制御パターンとして用意しておき、用意した速度パターンを用いて駆動制御を実行する構成としてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態では、アクチュエータ10の駆動特性、被駆動部材3に取り付けられたレンズの光学特性を予め取得する例を説明したが、被駆動部材3の摩擦係合位置及び移動速度をセンサ等により取得し、被駆動部材3の移動中に計測してフィードバックし、パルス数を変更する構成や、被駆動部材3の摩擦係合位置及び画角変化量を、被駆動部材3の移動中に計測してフィードバックし、パルス数を変更する構成としてもよい。
【0101】
さらに、上述した実施形態では、撮像装置及び光学装置のアクチュエータとして圧電素子を用いたものを採用しているが、モータ、高分子アクチュエータ、形状記憶合金などの他の駆動部品を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置を採用した撮像装置の撮像光学系の概要図である。
【図2】本発明の実施形態に係る駆動装置を示す断面図である。
【図3】図2のIII−IIIにおける被駆動部材の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る駆動装置におけるホトリフレクタのA/D変換回路図である。
【図5】本発明の実施形態に係る駆動装置におけるホトリフレクタの出力イメージである。
【図6】本発明の実施形態に係る駆動装置におけるホトリフレクタのA/D出力のズーム位置依存性を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る駆動装置における駆動回路を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る駆動装置の圧電素子に入力される駆動信号の波形図である。
【図9】本発明の実施形態に係る駆動装置のアクチュエータの駆動特性を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御、駆動信号の概要を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態に係る駆動装置の圧電素子に入力される駆動信号の波形図である。
【図13】本発明の実施形態に係る駆動装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図15】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図16】本発明の実施形態に係る駆動装置の移動速度制御、駆動信号の概要を説明する図である。
【図17】従来の駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図18】従来の駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【図19】従来の駆動装置の移動速度制御の概要を説明する図である。
【符号の説明】
【0103】
1…圧電素子、2…駆動軸、3…被駆動部材、10…アクチュエータ、81…制御部(駆動信号制御手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータを有し、駆動信号により前記圧電素子を伸縮させ、前記圧電素子の伸縮動作に応じて前記駆動軸を往復運動させて、前記駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させる駆動装置であって、
前記被駆動部材が移動する移動範囲内を複数の範囲に分割し、分割されたそれぞれの範囲ごとに所定の駆動信号に対する平均移動速度を求め、前記平均移動速度が同一となるように、前記分割されたそれぞれの範囲ごとに前記駆動信号の波形を変更する駆動信号制御手段を備える駆動装置。
【請求項2】
圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータを有し、駆動信号により前記圧電素子を伸縮させ、前記圧電素子の伸縮動作に応じて前記駆動軸を往復運動させて、前記駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させる駆動装置であって、
前記被駆動部材が移動する移動範囲内を複数の範囲に分割し、分割されたそれぞれの範囲ごとに所定の駆動信号に対する平均移動速度を求め、前記分割されたそれぞれの範囲ごとに定められた目標移動速度と前記平均移動速度が同一となるように、前記分割されたそれぞれの範囲ごとに前記駆動信号の波形を変更する駆動信号制御手段を備える駆動装置。
【請求項3】
前記駆動信号制御手段は、前記駆動信号としてパルス信号を用い、前記分割されたそれぞれの範囲内の単位時間あたりのパルス数を変更して前記駆動信号の波形を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動信号制御手段は、前記アクチュエータの駆動と休止とを繰り返させて前記被駆動部材を移動させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の駆動装置を備え、
前記駆動装置により光学部材を駆動させることを特徴とする光学装置。
【請求項6】
前記光学部材はレンズであり、
前記駆動信号制御手段は、前記レンズのレンズ特性、及び前記レンズを保持する前記被駆動部材の前記摩擦係合位置に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更すること、
を特徴とする請求項5に記載の光学装置。
【請求項1】
圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータを有し、駆動信号により前記圧電素子を伸縮させ、前記圧電素子の伸縮動作に応じて前記駆動軸を往復運動させて、前記駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させる駆動装置であって、
前記被駆動部材が移動する移動範囲内を複数の範囲に分割し、分割されたそれぞれの範囲ごとに所定の駆動信号に対する平均移動速度を求め、前記平均移動速度が同一となるように、前記分割されたそれぞれの範囲ごとに前記駆動信号の波形を変更する駆動信号制御手段を備える駆動装置。
【請求項2】
圧電素子に駆動軸を取り付けたアクチュエータを有し、駆動信号により前記圧電素子を伸縮させ、前記圧電素子の伸縮動作に応じて前記駆動軸を往復運動させて、前記駆動軸に摩擦係合させた被駆動部材を移動させる駆動装置であって、
前記被駆動部材が移動する移動範囲内を複数の範囲に分割し、分割されたそれぞれの範囲ごとに所定の駆動信号に対する平均移動速度を求め、前記分割されたそれぞれの範囲ごとに定められた目標移動速度と前記平均移動速度が同一となるように、前記分割されたそれぞれの範囲ごとに前記駆動信号の波形を変更する駆動信号制御手段を備える駆動装置。
【請求項3】
前記駆動信号制御手段は、前記駆動信号としてパルス信号を用い、前記分割されたそれぞれの範囲内の単位時間あたりのパルス数を変更して前記駆動信号の波形を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動信号制御手段は、前記アクチュエータの駆動と休止とを繰り返させて前記被駆動部材を移動させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の駆動装置を備え、
前記駆動装置により光学部材を駆動させることを特徴とする光学装置。
【請求項6】
前記光学部材はレンズであり、
前記駆動信号制御手段は、前記レンズのレンズ特性、及び前記レンズを保持する前記被駆動部材の前記摩擦係合位置に基づいて単位時間あたりのパルス数を変更すること、
を特徴とする請求項5に記載の光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−51059(P2010−51059A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210845(P2008−210845)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】
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