説明

駆動装置

【課題】超小型の被作動材を、遠隔操作で回転作動させることができる駆動装置を提供することを課題としている。
【解決手段】被作動材に付設され回転自在に支持される永久磁石12と、前記永久磁石12と非接触に配置される磁界発生用のコイル11と、前記コイル12に交流電圧を給電する電源手段13とを備え、前記コイル11に前記電源手段13より給電を行い、前記被作動材の永久磁石12との間に磁界を発生させて前記被作動材を回転させる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関し、詳しくは、小型の被作動材をコイルが発生する磁界によって非接触で回転作動させるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転力を得る駆動手段としてはモータが用いられる。モータの構造は、例えば特開2005−237175号公報(特許文献1)に示すように固定子と回転子からなり、電機子巻線が巻かれた固定子に電流を流すことで、回転磁界を発生させて回転子を回転させている。
これらのモータは円環状の固定子の内部に回転子を配置する構成であり、固定子から発生する回転磁界により効率よく回転子を回転させることができるように、固定子と回転子の間のギャップを非常に小さくして、固定子と回転子を一体として形成している。
【0003】
【特許文献1】特開2005−237175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際に回転駆動する被作動材は回転子であるが、回転子だけを取り出して、遠隔操作で駆動力を得るということはできず、小型化が困難であるという問題がある。
一方、回転子だけを取り出して駆動力を得ることができるモータとしてリニアモータがある。リニアモータは固定子部に対向して被作動材(モータの回転子に相当)を配置するので、固定子部と被作動材が一体とはならず、被作動材を小型化できる。
しかし、リニアモータは固定子部に沿った推進力を発生させるものであり、回転力を発生させることはできないという問題がある。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、被作動材を小型化しながら、該被作動材を遠隔操作で回転駆動させることができる駆動装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、被作動材に付設される永久磁石と、
前記永久磁石と非接触に配置される磁界発生用のコイルと、
前記コイルに交流電圧を給電する電源手段と、
を備え、
前記コイルに前記電源手段より給電を行い、前記被作動材の永久磁石との間に磁界を発生させて前記被作動材を回転させる構成としていることを特徴とする駆動装置を提供している。
【0007】
前記コイルとしては、U相、V相、W相を並列に並べて結線した三相コイル、2つの単相コイル、1個の単相コイルのいずれでもよい。
【0008】
前記コイルとして、U相、V相、W相を並列に並べて結線した三相コイルとした場合、前記電源手段は三相交流電圧を前記コイルに給電して、前記コイルに移動磁界を発生させている。該三相コイルは、前記被作動材の一側方に軸線方向の一端を並列配置すると共に、前記永久磁石を前記三相コイルの磁場範囲内に配置している。
前記永久磁石は、例えば棒状とし、前記コイルとは非接触であるが移動磁界によって駆動力を発生することができるコイルの磁場範囲内に対向して配置し、さらに、回転自在であるが移動磁界に吸引されて前記コイルと接触しないように支持することが好ましい。
【0009】
前記構成とすると、コイルに移動磁界を発生させると、永久磁石を回転駆動させることができる。即ち、永久磁石のS極が移動磁界の磁極に吸引されると、永久磁石のS極はコイルと最も近い位置まで回転移動する。移動磁界の磁極は移動するので、永久磁石のS極も移動磁界の磁極の移動方向に合わせて移動する。しかし、永久磁石は支持されているので、永久磁石のS極は移動磁界に合わせて移動磁界の進行方向に移動しつづけることはできず、永久磁石のS極はコイルから離れて回転する。一方、永久磁石のS極がコイルから離れると、N極はコイルに近づくので、N極は移動磁界の次の磁極に吸引されて、S極と同様に移動磁界の磁極に吸引され、移動磁界の磁極の移動方向に合わせて移動する。
このように、永久磁石のS極とN極をコイルの磁極に吸引または反発させることで、永久磁石を回転駆動することができる。よって、同期機と同様の原理で、永久磁石が回転することとなる。
【0010】
このように、永久磁石とコイルとを非接触に分離して配置し、永久磁石を遠隔操作で回転させることで、該永久磁石を付設した被作動材を回転させることができ、被作動材をコイルと分離していることで小型化できる。
【0011】
永久磁石の極間(N極とS極の間)の長さは、U相、V相、W相のコイルを1相ずつ並列に並べた場合の長さとほぼ同じとすることが好ましい。
三相コイルの磁極間の長さを永久磁石の極間の長さとほぼ同じとすることで、永久磁石はもっとも強く吸引され、効率良く永久磁石を回転させることができる。
電源手段が印加する三相交流は周波数を変化させてもよい。三相交流の周波数を変化させることで、永久磁石の回転速度を調節することができる。
また、電源手段が印加する三相交流は各相の位相を変化させてもよい。位相を調節することで、永久磁石の回転ムラを少なくすることができる。
【0012】
前記コイルを2つの単相コイルから構成する場合、前記各単相コイルに位相の異なる交流電圧を給電している。
この場合も、被作動材の一側方に、前記2つの単相コイルを軸線方向の一端を並列配置すると共に、前記永久磁石を前記2つの単相コイルの磁場範囲内に配置している。
【0013】
前記2つの単相コイルとした場合、位相の異なる交流電流が2つの単相コイルに給電されるので、夫々の単相コイルの一端には異なる磁極が現れ、磁界の強さも時間により変化する。
被作動材に付設された永久磁石のS極が一方の単相コイルの一端のN極に吸引されると、永久磁石は支持されているので、永久磁石のS極は一方のコイルと最も近い位置まで回転移動する。一方のコイルの一端の磁極がS極となると永久磁石のS極は反発して、さらに回転する。一方で、各単相コイルには位相の異なる交流電圧が給電されるので、他方のコイルの一端の磁極がN極となり永久磁石のS極を吸引する。
このように、永久磁石のS極とN極を交互に各単相コイルの一端の磁極に吸引反発させることで、永久磁石を回転駆動することができる。永久磁石が回転する原理は、三相コイルの場合と同様に、同期機と同じ原理である。
【0014】
前記コイルを1つの単相コイルから構成した場合、前記電源手段は交流電圧を前記1つの単相コイルに給電し、かつ、前記被作動材の一側方に、前記1つの単相コイルの軸線方向の片端を配置すると共に、前記永久磁石を前記1つの単相コイルの磁場範囲内に配置している。
前記構成とすることで、単相コイルの軸線方向の片端には時間の変化により異なる磁極が現れ、被作動材に付設された永久磁石のS極とN極は交互に単相コイルの片端の磁極に吸引もしくは反発して、被作動材を回転させることができる。
あるいは、前記コイルを1つの単相コイルから構成した場合、前記電源手段は交流電圧を前記1つの単相コイルに給電し、前記被作動材の一側方に前記1つの単相コイルの軸線方向の両端を配置すると共に、前記永久磁石を前記1つの単相コイルの磁場範囲内に配置している。
前記構成とすることで、単相コイルの軸線方向の両端には異なる磁極が現れ、被作動材に付設された永久磁石のS極とN極は単相コイルの両端部の磁極にそれぞれ吸引反発され、被作動材を回転させることができる。被作動材が回転する原理は前述した2つの単相コイルの場合と同様である。
【0015】
さらに、前記コイルは、第1巻線部と、前記第1巻線部に直列に接続して前記第1巻線部と巻線方向を逆にした第2巻線部からなるもので構成してもよい。
この場合、前記電源手段は交流電圧を前記コイルに給電し、前記被作動材の一側方に、前記コイルの前記第1巻線部と前記第2巻線部の夫々の軸線方向の一端を配置すると共に、前記永久磁石を前記コイルの磁場範囲内に配置している。
第1巻線部と第2巻線部は巻線方向が逆であるため、被作動材と対向した第1巻線部と第2巻線部の一端には異なる磁極が現れ、被作動材に付設された永久磁石のS極とN極は単相コイルの磁極にそれぞれ吸引される。被作動材が回転する原理は前述した2つの単相コイルの場合と同様である。
【0016】
なお、交流電圧とは、電圧が時間とともに正極から負極へ正弦波状に変化するものだけでなく、一定値の電圧(直流電圧)が所定時間ごとに正極又は負極に切り替わるものも含む。
【0017】
前記コイルは超電導コイルからなることが好ましい。
永久磁石が回転するためには磁界が必要であり、磁界はコイルと永久磁石との間のギャップに反比例して弱くなる。コイルを超電導コイルにすると、コイルは強力な移動磁界を発生させることができ、コイルと永久磁石との間のギャップを大きくすることができる。
なお、コイルは常電導コイルであってもよい。この場合、コイルに鉄心を備えたものとすることが好ましい。
【0018】
さらに、前記コイルを移動させる移動手段を備え、
前記コイルに追従して前記被作動材が移動する構成としていることが好ましい。
【0019】
コイルに交流電圧を印加しつつ前記移動手段で移動させると、永久磁石を付設した被作動材はコイルにより発生する磁界に吸引され、被作動材は回転しながら、コイルの移動に追従して移動する。
このように、永久磁石をコイルに追従して移動させることで、被作業材を移動させるための装置を必要とせず、駆動装置の構成が簡単になる。
【0020】
本発明の駆動装置は、切削加工機の駆動装置とすることができる。
その場合、前記被作動材は切削加工機に用いられる切刃とし、該被作動材を非磁性体の被加工物内に配置し、前記被作動材を前記コイルによる遠隔操作で回転・移動させる構成としている。
【0021】
前記構成とすると、被作動材とする切刃には永久磁石を取り付けるだけでよく、被作動材はコイルと一体ではなく非接触であるため、被作動材を小型とすることができ、精密切削が可能となる。
また、金型等では被加工物の外部の形状しか加工を行うことができないが、本発明の駆動装置を用いると被作動材を被加工物の内部に配置して内部加工を行うことができる。
なお、被加工物は非磁性体に限られる。これは、磁性体であればコイルが発生する磁界で被加工物に渦電流が発生し、永久磁石が回転できないことによる。
【0022】
また、本発明の駆動装置は、人体の挿入される手術用鉗子の駆動装置とすることができる。
その場合、前記被作動材を人体内に挿入される手術用鉗子とし、該被作動材に付設する前記永久磁石は微小とすると共に前記永久磁石を非磁性樹脂からなる保持材中に埋設し、該保持材より前記手術用鉗子を突設し、前記コイルにより遠隔操作で前記被作動材を人体内で回転・移動させる構成としている。
【0023】
前記被作動材の手術用鉗子には微小の永久磁石を付設するだけであるため、全体として微小とでき、よって、人体の血管などに挿入可能となり、コレステロールや血栓を除去するなどの手術用に用いることができる。
【0024】
さらに、本発明の駆動装置は、自動車のタイヤの駆動装置とすることができる。
その場合、前記被作動材をタイヤとし、車体に設けた前記コイルに発生させる磁界により遠隔操作で回転・移動させる構成としている。
タイヤをコイルにより回転させているので、従来の自動車と比べてエンジンの動力をタイヤに伝えるギアなどが不要となるため、自動車の駆動効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
前述したように、本発明の駆動装置によれば、被作動材に付設される永久磁石とコイルとを分離して非接触に配置することで、被作動材を小型化することができる。また、永久磁石がコイルの移動磁界によって回転するので被作動材を回転駆動させることができる。
さらに、これらの駆動装置を切削加工機や手術用の鉗子の駆動、自動車のタイヤの駆動に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に本発明の第1実施形態を示す。
図1は本発明の駆動装置10の概略的な構成を示し、駆動装置10は、U相、V相、W相の超電導コイルを結線した三相コイル11と、永久磁石12と、三相コイル11に接続した三相交流電源13からなる。前記永久磁石12は被作動材100に固定して付設している。該被作動材100は任意の被回転材からなり、図中、簡略化して示している。
【0027】
永久磁石12は棒状とし、長手方向の中心線と長手方向に垂直の方向の中心線との交差点付近に貫通穴をあけ、該貫通穴に支持棒15を貫通させ、支持棒15を支点として永久磁石12を回転可能に支持し、該永久磁石12を回転させることで、該永久磁石12に固定した被作動材100を回転させるようにしている。
前記永久磁石12は三相コイル11と非接触とし、かつ三相コイル11が発生させる磁界の影響を受ける範囲(磁場範囲)に配置している。
三相コイル11は本実施形態では台車14からなる移動手段に取り付けている。
【0028】
次に、駆動装置10の作動原理について、図2(A)〜(E)に基づいて説明する。
三相コイル11に三相交流電源13から三相交流電圧を印加すると、三相コイル11には移動磁界が発生する。図2では移動磁界をU字永久磁石20に模擬して示している。
【0029】
図2(A)に示すように、第1U字永久磁石20Aの両端の一方をS極,他方をN極とし、永久磁石12のN極を第1U字永久磁石20AのS極の近くに配置し、図2(B)のように第1U字永久磁石20Aを少し右方向に移動すると、第1U字永久磁石20AのS極と永久磁石12のN極とが吸引し、回転磁石は反時計方向(右方向)に回転する。
さらに、図2(C)、図2(D)のように第1U字永久磁石20Aを右方向に移動すると、永久磁石12のN極は第1U字永久磁石20AのS極に吸引されて反時計方向に回転する。
さらに、図2(E)に示すように、第2U字永久磁石20Bを第1U字永久磁石20Aと並列に配置することで、永久磁石12のS極を吸引し、永久磁石12は反時計方向に回転する。このようにU字永久磁石20の移動により、永久磁石12は回転する。図2において、第1U字永久磁石20Aが移動する反時計方向が三相コイル11が発生させる移動磁界の移動方向となる。
【0030】
前述した駆動装置10の原理は、同期機の回転原理と同じである。すなわち、同期機では固定子が円環状であり、回転子が固定子に発生する回転磁界と同期して回転するが、本発明では、同期機の固定子に相当する三相コイル11が直線状に移動磁界を発生し、永久磁石は移動磁界に同期して回転する。
【0031】
さらに、台車14により三相コイル11の配置位置を左右方向に移動させると、永久磁石12と三相コイル11との間には吸引力が働いているため、永久磁石12も三相コイル11に追従して左右方向に移動する。一方で、三相コイル11は移動磁界を発生しているため、永久磁石12は回転駆動も継続する。これにより、永久磁石12を固定した被作動材100を回転させながら、移動させることができる。
【0032】
なお、図3に示すように、永久磁石12の支持棒15を中心とした仮想円C上に三相コイル11のU相11a、V相11b、W相11cをそれぞれ配置してもよい。永久磁石12の支持棒15から三相コイル11のU相11a、V相11b、W相11cまでの距離がそれぞれ等しくなり、永久磁石12の両端のS極、N極は三相コイル11の各相が発生させる磁界の影響を等しく受けるため、永久磁石12をより滑らかに回転させることができる。
【0033】
図4に本発明の第2実施形態を示す。
図4は第2実施形態の駆動装置10の概略的な構成を示し、駆動装置10は、超電導コイルからなる2つの単相コイル11A、11Bと、永久磁石12と、単相コイル11A、11Bに接続した単相交流電源13A,13Bからなる。
永久磁石12は単相コイル11A、11Bの磁場範囲内に配置している。
各単相コイル11A、11Bは、永久磁石12の一側方に、前記各単相コイル11A、11Bの軸線方向の一方の端部11dを並列に配置している。
単相交流電源13A,13Bは位相の異なる交流電圧を各単相コイル11A、11Bに給電している。
【0034】
単相コイル11A、11Bに位相の異なる交流電圧を給電することで、単相コイル11A、11Bの端部11dには異なる磁極が現れ、磁界の強さも時間により変化するので、永久磁石のS極とN極を交互に各単相コイル11A、11Bの端部11dに吸引もしくは反発させることで、図2の三相交流電圧を三相コイルに給電した場合と同様の原理で永久磁石を回転駆動することができる。
なお、図示していないが永久磁石12に被作動材を固定している構成は第1実施形態と同様であり、かつ、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図5に本発明の第3実施形態を示す。
図5は第3実施形態の駆動装置10の概略的な構成を示し、駆動装置10は、超電導コイルからなる1つの単相コイル11と、永久磁石12と、単相コイル11に接続した単相交流電源13からなる。
永久磁石12は単相コイル11の磁場範囲内に配置している。
単相コイル11は、永久磁石12の一側方に、前記各単相コイル11の軸線方向の両端部11e、11fが位置するように配置している。
単相交流電源13は交流電圧を各単相コイル11に給電している。
【0036】
単相コイル11に交流電圧を給電することで、単相コイル11の端部11e、11fには異なる磁極が現れ、磁界の強さも時間により変化するので、永久磁石12のS極とN極は単相コイル11の両端部11e、11fにそれぞれ吸引もしくは反発され、永久磁石12を回転させることができる。永久磁石12が回転する原理は第1実施形態の場合と同様である。
なお、第2実施形態と同様に永久磁石12は被作動材に付設しており、かつ、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図6に本発明の第4実施形態を示す。
図6は第4実施形態の駆動装置10の概略的な構成を示し、駆動装置10は超電導コイルからなる1つの単相コイル11と、永久磁石12と、単相コイル11に接続した単相交流電源13からなる。
前記永久磁石12はモータの回転子となる被作動部材101に付設し、該被作動部材101の一側方に、前記1つの単相コイル11の軸線方向の片端11dを配置すると共に、該単相コイル11の磁場範囲内に前記永久磁石12を配置している。
【0038】
単相コイル11に交流電圧を給電することで、単相コイル11の片端11dには、時間の変化により異なる磁極が現れる。永久磁石12のS極とN極は交互に片端11dの磁極に吸引もしくは反発して、永久磁石を回転させることができる。
なお、本実施形態では永久磁石は2極であるため、単相コイルの軸線に対して垂直方向に永久磁石のS極とN極が位置したときは永久磁石は単相コイルから吸引力もしくは反発力を受けることがないが、永久磁石は既に回転しているので、永久磁石の慣性により回転を続けることができる。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
図7は本発明の第5実施形態を示す。
図7は第5実施形態の駆動装置10の概略的な構成を示し、駆動装置10は、超電導コイルからなる単相コイル11と、永久磁石12と、単相コイル11に接続した単相交流電源13からなる。
永久磁石12は単相コイル11の磁場範囲内に配置している。
コイル11は、第1巻線部11gと、第1巻線部11gに直列に接続されて第1巻線部11gと巻線方向を逆にした第2巻線部11hからなり、永久磁石12の一側方に、第1巻線部11gと第2巻線部11hの軸線方向の一方の端部11dを並列配置している。
単相交流電源13A,13Bは位相の異なる交流電圧を各単相コイル11A、11Bに給電している。
【0040】
第1巻線部11gと第2巻線部11hは巻線方向が逆であるため、コイル11に交流電圧を給電することで、各巻線部の端部11dには異なる磁極が現れ、磁界の強さも時間により変化する。このため、永久磁石12のS極とN極は単相コイルの磁極にそれぞれ吸引反発され、永久磁石12を回転させることができる。永久磁石12が回転する原理は第1実施形態の場合と同様である。
なお、第2実施形態と同様に永久磁石12は被作動材に付設しており、かつ、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図8および図9に、前記本発明の第1実施形態の駆動装置10を切削加工機30として用いている第6実施形態を示す。
切削加工機30は、台座31の上にコラム32を取り付け、コラム32の上部に水平に支持板33を取り付けている。前記台座31、支持板33、コラム32それぞれに平行にガイド棒34を取り付けている。ガイド棒34には移動自在に移動部材35を取り付け、移動部材35には回転体36を挟んでワーク収容体37を取り付け、回転体36を回転させることでワーク収容体37を回転させる構成としている。
前記ワーク収容体37には、樹脂等の非磁性体からなる被加工物のワーク38を固定して収容している。
【0042】
前記台座31の内部には、内部の上面に近い位置に三相コイル11を収容した収容器39を配置している。三相コイル11は超電導コイルで形成し、収容器39内に保持している。該収容器39内には冷媒を充填し、三相コイル11を超電導温度に保持している。
該三相コイル11の収容器39は台座31の内部で平面に移動自在としている。また、三相コイル11は三相交流電源13に接続している。
【0043】
前記ワーク38の内部に、被作動材となる切刃40を配置している。図9に示すように、切刃40は円錐状の刃41と、円錐状の刃41と連続して円筒状の鉄心の円周に設けた刃42からなり、円筒状の鉄心の底辺42aには永久磁石12を付設している。
【0044】
前記構成とした切削加工機30における駆動装置10において、三相コイル11に三相交流電圧を印加すると、三相コイル11には移動磁界が発生し、永久磁石12が付設された切刃40が回転してワーク38を切削する。このとき、永久磁石12と三相コイル11との間に吸引力が働くので、切刃40は三相コイル11側に吸引されながらワーク38の切削を行う。すなわち、本実施形態では常に下向きに切刃40を押し付けながら切削を行う。
切削の方向を変えたい場合には、ワーク収容体37を回転させたり、ワーク収容体37を台座31または支持板33のガイド棒34に取り付けたりすることで、切削の方向が下向きになるようにする。
【0045】
このように、切削加工機30の駆動装置10では、被作動材となる切刃40に永久磁石12を取り付けるだけよいため、切刃40は小型になり精密切削加工が可能となる。また、金型等では被加工物の外部の形状しか加工を行うことができないが、本発明の駆動装置10を用いると切刃40をワーク38の内部に配置して内部加工を行うことができる。
なお、本実施形態では三相コイル11を超電導コイルとしたが、超電導ではない常電導コイルを用いても良い。
また、第6実施形態では第1実施形態の駆動装置10を用いたが、第2〜第5実施形態の駆動装置10を用いてもよい。
【0046】
図10乃至図12に、本発明の第1実施形態の駆動装置10を人体52内に挿入される手術用鉗子駆動装置50に用いている第6実施形態を示す。
台51に乗せた人体52を中央に収納できる円筒状のカプセル53を設け、カプセル53の外側の側面53aと内側の側面53bの間の空間(側面空間54と称する)に三相コイル11を収容した三相コイル収容体55を配置している。
三相コイル収容体55はカプセル53の側面空間54内で移動自在とし、カプセル53外に設けた三相交流電源13に接続している。
【0047】
人体52内には被作動材である手術用鉗子材60を挿入している。
手術用鉗子材60は図11に示すように、手術用鉗子61を円筒状の保持材62の先端から突出させている。保持材62は非磁性樹脂からなり、保持材62の直径は1mm以下としている。さらに、微小の永久磁石12を保持材62内にモールドし、該保持材62を介して手術用鉗子61と一体化している。
【0048】
次に、手術用鉗子61の駆動について説明する。
カプセル53内の人体52の血管52aに対して手術用鉗子材60を挿入する。三相コイル11に三相交流電圧を印加すると永久磁石12が回転し、永久磁石12の回転により連動して手術用鉗子材60が回転する。この手術用鉗子61の回転作動で血管52aの壁面に付着しているコレステロールを除去する等の手術を行う。
【0049】
図12はカプセル53と人体52内の血管52aの断面図である。図12では人体52を図示しておらず、血管52aを拡大して図示している。
血管52aに対して手術用鉗子材60が小さい場合には、三相コイル収容体55の位置により血管52a内の手術用鉗子材60の位置が決まる。永久磁石12と三相コイル収容体55の間には吸引力が働くので、三相コイル収容体55が血管52aに対して上方にあれば、手術用鉗子材60も血管52aの上方に位置し、三相コイル収容体55が血管52aに対して下方にあれば、手術用鉗子材60も血管52aの下方に位置する。従って、三相コイル収容体55を血管52aの周方向の任意の位置に配置することで、血管52a内での手術用鉗子材60の位置を制御することができる。
【0050】
また、手術用鉗子材60は三相コイル収容体55に追従しながら移動する。このため、例えば手術用鉗子材60を人体52の頭側から足側へ移動させたい場合には、三相コイル収容体55をカプセル53の側面空間54で頭側から足側へ移動することにより、手術用鉗子材60を必要とする場所まで移動させることができる。
【0051】
前記のように、三相コイル収容体55を移動させると、手術用鉗子材60は回転しながら移動する。手術用鉗子材60が所要位置まで移動する際に、手術用鉗子材60を回転させたくない場合には、三相コイル11のうち一相だけに電圧を印加し、移動磁界を発生させず、永久磁石12の回転を停止している。このように、一相だけに電圧を印加すると、保持材62に固定した永久磁石12と三相コイル収容体55との間には吸引力が働くので、手術用鉗子材60を回転させずに手術用鉗子材60を所要位置まで移動させることができる。所要位置まで手術用鉗子材60が移動した後に回転させたい場合には、三相コイル11に三相交流電圧を印加して手術用鉗子材60を回転作動させている。
【0052】
なお、三相コイル11に代えて、移動用永久磁石をカプセル53の側面空間54に配置し、移動用永久磁石により手術用鉗子材60を移動させてもよい。この場合、移動用永久磁石では移動磁界は発生しないので、手術用鉗子材60は回転せず、保持材62に固定した永久磁石12とカプセル53に配置した移動用永久磁石の吸引力により、手術用鉗子材60を移動させることができる。
カプセル53の移動用永久磁石により手術用鉗子材60を回転させずに手術用鉗子材60を必要とする位置まで移動させると、三相コイル収容体55を手術用鉗子材60に近い位置にまで移動し、三相コイル11に三相交流電圧を印加すると、手術用鉗子材60を所要位置で回転させることができる。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
また、第6実施形態では第1実施形態の駆動装置10を用いたが、第2〜第5実施形態の駆動装置10を用いてもよい。
【0053】
図13は前記第7実施形態の変形例を示す。
被作動材となる手術用鉗子材60は、円筒状の保持材62内に永久磁石12を回転自在に埋没し、該永久磁石12に手術用鉗子61の基端を固定し、該手術用鉗子61の全体を保持材62内に収容している。保持材62の一端面62aは手術用鉗子61の先端の鉗子部分と対向する面としている。該一端面62aは破断しやすい易破断面として成形することが好ましい。保持材62の他端面62bには移動紐63を取り付けている。
【0054】
前記手術用鉗子材60は、移動紐63により保持材62を引っ張たり、押したりすることで所要位置まで移動させる。
次に、三相コイル収容体55をカプセル53の側面空間54内で手術用鉗子材60付近まで移動し、三相交流電圧を印加する。すると、永久磁石12と固定した手術用鉗子61は保持材62内で回転する。保持材62に取り付けた移動紐63を少し永久磁石12の方向に引っ張ると、手術用鉗子61は保持材62より突出する。図13(B)に示すように、手術用鉗子61は保持材62の易破断面の一端面62aを突き破ってもよい。この突出した手術用鉗子61を用いて、血管52aのコレステロールなどを除去する等の手術を行う。
手術用鉗子材60は所要位置に移動されるまでは保持材62の内部に収容されているため、移動途中に血管52aなどを傷つけることを防止できる。
なお、他の構成および作用効果は第6実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
図14に、本発明の第2実施形態の駆動装置10を自動車71の駆動装置70に用いている第8実施形態を示す。
駆動装置70は、自動車71のボディ内であって各タイヤTの上方に2つの単相コイル11A、11Bを収容したコイル収容体72を配置している。単相コイル11A、11Bはそれぞれ自動車71のボディ内に備えた単相交流電源13A、13Bに接続している。なお、単相交流電源13A,13Bは直流電源の正極又は負極を所定の時間ごとに切り替えるものであってもよい。
被作動材であるタイヤTの内部には永久磁石12を付設し、タイヤTの回転中心点Pが永久磁石12の回転の中心点Pとなるようにしている。タイヤTはサスペンション(図示せず)を介して車体と接続しており、タイヤTとコイル収容体72は単相コイル11A、11Bの磁場範囲内に非接触に配置している。
【0056】
コイル収容体72に収容した2つの単相コイル11にそれぞれ位相の異なる交流電圧を供給すると、単相コイル11A、11BのタイヤTと対向した端部11dには異なる磁極が現れると共に、磁界の強さも時間により変化する。永久磁石12のS極とN極を交互に各単相コイル11A、11Bの端部11dに吸引させることで、永久磁石12を付設したタイヤTを回転駆動することができ、自動車71を駆動することができる。
なお、他の構成および作用効果は第2実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
なお、第8実施形態では第2実施形態の駆動装置10を用いたが、第1実施形態、第3〜第5実施形態の駆動装置10を用いてもよい。
【0057】
図15に第9実施形態の変形例を示す。
左右のタイヤT同士をシャフト73で接続し、左右のタイヤTはシャフト73の回転により回転駆動している。シャフト73には永久磁石12を付設しており、永久磁石12とタイヤTの回転中心点Pにシャフト73を接続している。自動車71のボディ内であって永久磁石12の上方にはコイル収容体72を配置している。
永久磁石とコイル収容体72をそれぞれ1つずつ設けることで、自動車を駆動することができるので、部品点数を削減することができる。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の特許請求の範囲内の種々の形態が含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態の駆動装置の概略的な構成を示す図である。
【図2】駆動装置の動作原理の説明図である。
【図3】三相コイルの配置の説明図である。
【図4】第2実施形態の駆動装置の概略的な構成を示す図である。
【図5】第3実施形態の駆動装置の概略的な構成を示す図である。
【図6】第4実施形態の駆動装置の概略的な構成を示す図である。
【図7】第5実施形態の駆動装置の概略的な構成を示す図である。
【図8】切削加工機に本発明の駆動装置を用いた第6実施形態の断面図である。
【図9】切削加工機に用いる切刃の斜視図である。
【図10】手術用鉗子駆動装置に本発明の駆動装置を用いた第7実施形態の斜視図である。
【図11】手術用鉗子材の斜視図である。
【図12】手術用鉗子駆動装置の断面図である。
【図13】第7実施形態の変形例を示し、(A)は配置位置の移動時の手術用鉗子材の斜視図、(B)は回転駆動した時の手術用鉗子材の斜視図である。
【図14】自動車のタイヤに本発明の駆動装置を用いた第8実施形態の斜視図である。
【図15】第8実施形態の変形例である。
【符号の説明】
【0060】
10 駆動装置
11 コイル
12 永久磁石
13 交流電源
14 台車
30 切削加工機
34 ガイド棒
37 ワーク収容体
38 ワーク
39 収容器
40 切刃(被作動材)
50 手術用鉗子駆動装置
52 人体
52a 血管
53 カプセル
54 側面空間
60 手術用鉗子材(被作動材)
61 手術用鉗子
62 保持材
70 自動車駆動装置
72 コイル収容体
100 被作動材
P 回転中心点
T タイヤ(被作動材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被作動材に付設される永久磁石と、
前記永久磁石と非接触に配置される磁界発生用のコイルと、
前記コイルに交流電圧を給電する電源手段と、
を備え、
前記コイルに前記電源手段より給電を行い、前記永久磁石との間に磁界を発生させ前記被作動材を回転させる構成としていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記コイルはU相、V相、W相を備えた三相コイルであり、前記電源手段は三相交流電圧を前記コイルに給電するものである請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記コイルは2つの単相コイルからなり、前記各単相コイルは位相の異なる交流電圧を前記2つの単相コイルに給電するものである請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記被作動材の一側方に前記三相コイルあるいは前記2つの単相コイルの軸線方向の一端を並列配置すると共に、前記永久磁石を前記三相コイルあるいは前記2つの単相コイルの磁場範囲内に配置するものである請求項2または請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記コイルは1つの単相コイルからなり、前記電源手段は交流電圧を前記1つの単相コイルに給電するものであり、前記被作動部材の一側方に前記1つの単相コイルの軸線方向の片端を配置すると共に、前記永久磁石を前記1つの単相コイルの磁場範囲内に配置するものである請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記コイルは1つの単相コイルからなり、前記電源手段は交流電圧を前記1つの単相コイルに給電するものであり、前記被作動材の一側方に前記1つの単相コイルの軸線方向の両端を配置すると共に、前記永久磁石を前記1つの単相コイルの磁場範囲内に配置するものである請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記コイルは、第1巻線部と、前記第1巻線部に直列に接続して前記第1巻線部と巻線方向を逆にした第2巻線部からなり、前記電源手段は交流電圧を前記コイルに給電するものであり、前記被作動材の一側方に前記コイルの前記第1巻線部と前記第2巻線部の夫々の軸線方向の一端を配置すると共に、前記永久磁石を前記コイルの磁場範囲内に配置するものである請求項1に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記コイルは超電導コイルからなる請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記コイルを移動させる移動手段を備え、
前記コイルに追従して前記被作動材を移動させる構成としている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記被作動材は切削加工機に用いられる切刃からなり、
前記被作動材は非磁性体の被加工物内に配置され、
前記被作動材を前記コイルに発生させる磁界により遠隔操作で回転・移動させる構成としている請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記被作動材は人体内に挿入される手術用鉗子からなり、
前記被作動材に付設する前記永久磁石は微小とすると共に前記永久磁石を非磁性樹脂からなる保持材中に埋設し、該保持材より前記手術用鉗子を突設しており、
前記コイルに発生させる磁界により遠隔操作で前記被作動材を人体内で回転・移動させる構成としている請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記被作動材は自動車のタイヤからなり、
前記被作動材を前記コイルに発生させる磁界により遠隔操作で回転・移動させる構成としている請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−104324(P2008−104324A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286373(P2006−286373)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】