説明

駆動装置

【課題】高出力を維持しつつ、駆動装置の小型化を図ることが可能な技術を提供する。
【解決手段】駆動装置であって、固定部と、該固定部の所定部から突設される板状の可動部と、該所定部の近傍に設けられ、可動部に対して電圧を印加する電極部と、を備える。そして、可動部が、所定部から突設される突設部と、突設部上に設けられ、電圧の印加に応じて伸縮する薄膜状の第1変位素子部と、該第1変位素子部上に設けられる薄膜状の絶縁部と、該絶縁部上に設けられ且つ絶縁部を第1変位素子部とともに挟み、電界の印加に応じて伸縮する薄膜状の第2変位素子部と、第1変位素子部と第2変位素子部とを、所定部とは反対側の端部近傍において電気的に接続する導電部と、を有する。更に、電極部が、第1および第2変位素子部に対して、電気的に接続されるとともに電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ズーム機能やオートフォーカス(AF)機能を有するカメラユニットが搭載された携帯電話機が市販されている。このカメラユニットでは、光学レンズを駆動させるための小型のアクチュエータが必要とされている。そして、カメラユニットの更なる小型化が指向される中、アクチュエータについても更なる小型化が要求されている。
【0003】
ところで、アクチュエータについては、一般的に体積が小さくなるにつれて発生可能な出力が小さくなる傾向にある。例えば、現在市販されている小型の撮像レンズユニットを駆動させるタイプのAF機構については、移動対象物である撮像レンズユニットは軽いものでも0.2g程度の重量を有する。それに加えて、部品間に生じる摩擦やバネによる負荷、更には、絞り機構からの電気信号を外部に伝達するためのフレキシブル基板の負荷なども考慮すると、アクチュエータに対して合計で1gf程度の負荷が生じるのが一般的である。そして、これらの負荷に抗して撮像レンズユニットを駆動させるためには、アクチュエータの体積を概ね50mm3程度まで大型化しなければならない。
【0004】
このような現状において、小型のカメラユニットの更なる小型化を図る上では、上述したアクチュエータのサイズが障害となるため、駆動装置に対する負荷の低減が必要不可欠である。
【0005】
このような負荷の低減が要求されている駆動装置については、形状記憶合金の薄膜に金属薄膜が形成された簡単な構造の形状記憶合金素子(例えば、特許文献1など)や、形状記憶合金とばね部材とが薄膜形状に形成された積層構造を有する小型で高出力のアクチュエータが提案されている(例えば、特許文献2など)。
【0006】
【特許文献1】特開平9−170071号公報
【特許文献2】特開平9−126116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1で提案された形状記憶合金素子については、駆動装置において、配線経路も含めて形状記憶合金素子をどのように配置するのかについては全く触れられていない。また、上記特許文献2で提案されたアクチュエータについては、同一面内に複数の形状記憶合金の薄膜が配置されるため、アクチュエータの小型化を十分に図れているとは言い難い。
【0008】
このような問題は、撮像レンズユニットを駆動させる小型の駆動装置に限られず、種々の移動対象物を移動させるための駆動装置一般に共通する。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高出力を維持しつつ、駆動装置の小型化を図ることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、固定部と、前記固定部の所定部から突設される板状の可動部と、前記所定部の近傍に設けられ、前記可動部に対して電圧を印加する電極部と、を備え、前記可動部が、前記所定部から突設される突設部と、前記突設部上に設けられ、電圧の印加に応じて伸縮する薄膜状の第1変位素子部と、前記第1変位素子部上に設けられる薄膜状の絶縁部と、前記絶縁部上に設けられ且つ前記絶縁部を前記第1変位素子部とともに挟み、電界の印加に応じて伸縮する薄膜状の第2変位素子部と、前記第1変位素子部と前記第2変位素子部とを、前記所定部とは反対側の端部近傍において電気的に接続する導電部と、を有し、前記電極部が、前記第1および第2変位素子部に対して、電気的に接続されるとともに電圧を印加することを特徴とする駆動装置である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の駆動装置であって、前記第1および第2変位素子部が、形状記憶合金で形成されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、前記第1および第2変位素子部による移動対象物が光学レンズを含むことを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の駆動装置であって、前記可動部が、前記固定部の第1所定部から突設される第1可動部と、前記固定部の第2所定部から突設される第2可動部とを含み、前記光学レンズの光軸が、前記第1可動部のうちの前記第1所定部とは反対側の端部と、前記第2可動部のうちの前記第2所定部とは反対側の端部とを結ぶ線分の略中央に配置されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3の何れかに記載の駆動装置であって、前記可動部が、前記固定部の第1所定部から突設される第1可動部と、前記固定部の第2所定部から突設される第2可動部とを含み、前記電極部が、前記第1可動部を構成する前記第1変位素子部のうちの前記第1所定部側の端部近傍において電気的に接続する第1電極部と、前記第2可動部を構成する前記第1変位素子部のうちの前記第2所定部側の端部近傍において電気的に接続する第2電極部とを含み、前記固定部上に設けられ、前記第1可動部を構成する前記第2変位素子部のうちの前記第1所定部側の端部近傍の部分と、前記第2可動部を構成する前記第2変位素子部のうちの前記第2所定部側の端部近傍の部分とを電気的に接続する接続部、を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1から請求項5の何れに記載の発明によっても、1つの可動部を構成する第1および第2変位素子部が同一平面内に配置されておらず、第1および第2変位素子部に電圧を供給する電極部が、大きく変位する部分に形成されていないため、駆動装置の小型化と駆動装置に掛かる負荷の低減とを両立させることができる。したがって、高出力を維持しつつ、駆動装置の小型化を図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、光学レンズの光軸方向をずらすことなく、複数の可動部の変位によって光学レンズを移動させることが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、複数の変位素子部を均一に生成するとともに、複数の可動部を同一出力で容易に駆動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るカメラモジュール400を搭載した携帯電話機100の概略構成を例示する模式図である。なお、図1および図1以降の図では方位関係を明確化するために、XYZの相互に直交する3軸が適宜付されている。
【0020】
図1(a)で示すように、携帯電話機100は、画像取得再生部200と本体部300とを備える。画像取得再生部200は、カメラモジュール400や表示ディスプレイ(不図示)を有し、本体部300は、携帯電話機100の全体を制御する制御部とテンキーなどの各種ボタン(不図示)とを有する。なお、画像取得再生部200と本体部300とが、回動可能なヒンジ部によって連結され、携帯電話機100が折り畳み可能となっている。
【0021】
図1(b)は、携帯電話機100のうちの画像取得再生部200に着目した断面模式図である。図1(a),(b)で示すように、カメラモジュール400は、XY断面のサイズが約5mm四方であり、厚さ(Z方向の奥行き)が約3mm程度である小型の撮像装置、すなわち所謂マイクロカメラユニット(MCU)となっている。
【0022】
以下、カメラモジュール400の構成、およびその製造工程について順次説明する。
【0023】
<カメラモジュールの構成>
図2は、カメラモジュール400の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【0024】
図2で示すように、カメラモジュール400は、撮像素子層10、撮像センサホルダ層20、赤外カットフィルタ層30、第1レンズ層40、第2レンズ層50、アクチュエータ層60、平行バネ下層70、第3レンズ層80、平行バネ上層90、および保護層CBの10層がこの順番で積層されて形成されている。そして、10層に含まれる相互に隣接する各2層の間が、エポキシ樹脂などの樹脂によって接合されているため、各層間に樹脂が介在している。また、各層10〜90,CBは、±Z方向の面において略同一の矩形状(ここでは、一辺が約5mmの正方形)の外形を有する。なお、後述するが、第3レンズ層80については、カメラモジュール400の製造途中で、連結部84(図4(b)参照)が図中の太破線で描かれた部分84a,84bで切断され、枠部F8とレンズ部81とが分離された状態となる。
【0025】
<各層の構成>
図3および図4は、撮像素子層10、撮像センサホルダ層20、赤外カットフィルタ層30、第1レンズ層40、第2レンズ層50、アクチュエータ層60、平行バネ下層70、第3レンズ層80、平行バネ上層90、および保護層CBの構成例をそれぞれ示す平面図である。
【0026】
○撮像素子層10:
図3(a)で示すように、撮像素子層10は、例えば、COMSセンサまたはCCDセンサなどで形成される撮像素子部11、その周辺回路、および撮像素子部11を囲む外周部F1を備えるチップである。なお、ここでは図示を省略しているが、撮像素子層10の裏面(−Z側の面)には、撮像素子部11に対する信号の付与、および撮像素子部11からの信号の読み出しを行うための配線を接続するための各種端子が設けられる。
【0027】
また、外周部F1の所定の2箇所にZ方向に沿って貫通する微小な孔(貫通孔)Ca1,Cb1が設けられ、該貫通孔Ca1,Cb1には導電性を有する素材(導電材料)が充填される。この微小な貫通孔Ca1,Cb1の内径は、例えば、数十μm程度に設定される。更に、撮像素子部11の+Z側の面は、被写体からの光を受光する面(撮像面)として機能し、外周部F1が、撮像素子層10の+Z側に隣接する撮像センサホルダ層20に対して接合される。
【0028】
○撮像センサホルダ層20:
図3(b)で示すように、撮像センサホルダ層20は、例えば、樹脂などの素材によって形成され、接合によって取り付けられる撮像素子層10を保持するチップである。具体的には、撮像センサホルダ層20の略中央には、断面が略正方形の開口21がZ方向に沿って設けられ、該開口21の断面は+Z側に行くに従って小さくなる。なお、図3(b)の破線で描かれた四角形は、−Z側の面における開口21の外縁を示す。
【0029】
また、撮像素子層10と同様な態様で、撮像センサホルダ層20の外周部の所定の2箇所にZ方向に沿って貫通する微小な孔(貫通孔)Ca2,Cb2が設けられ、該貫通孔Ca2,Cb2には導電材料が充填される。更に、撮像センサホルダ層20の外周部の−Z側の面が隣接する撮像素子層10と接合され、該外周部の+Z側の面が隣接する赤外カットフィルタ層30と接合される。
【0030】
○赤外カットフィルタ層30:
図3(c)で示すように、赤外カットフィルタ層30は、透明基板上に屈折率の異なる透明薄膜が多層化されて構成された赤外線をカットするフィルタのチップである。具体的には、赤外カットフィルタ層30は、例えば、ガラスまたは透明樹脂で構成される基板の上面に屈折率の異なる多数の透明薄膜をスパッタリングなどで形成したもので、薄膜の厚みおよび屈折率の組合せにより、透過する光の波長帯が制御される。例えば、赤外カットフィルタ層30としては、600nm以上の波長帯の光を遮断するものが好ましい。
【0031】
また、撮像素子層10などと同様な態様で、赤外カットフィルタ層30の外周部の所定の2箇所にZ方向に沿って貫通する微小な孔(貫通孔)Ca3,Cb3が設けられ、該貫通孔Ca3,Cb3には導電材料が充填される。更に、赤外カットフィルタ層30の外周部の−Z側の面が隣接する撮像センサホルダ層20と接合され、該外周部の+Z側の面が隣接する第1レンズ層40と接合される。
【0032】
○第1レンズ層40:
図3(d)で示すように、第1レンズ層40は、正のレンズパワーを有する光学レンズからなるレンズ部41と、該レンズ部41を囲み且つ該第1レンズ層40の外周部を構成する枠部F4とが同一の素材で一体成型されて形成されたチップである。そして、第1レンズ層40を構成する素材としては、フェノール系の樹脂やアクリル系の樹脂、あるいはガラスなどが挙げられる。なお、レンズ部41は、第1〜3レンズ層40,50,80による焦点が撮像素子部11に対応したものとなるように光を屈折させる光学レンズとなっている。
【0033】
また、撮像素子層10などと同様な態様で、枠部F4の所定の2箇所にZ方向に沿って貫通する微小な孔(貫通孔)Ca4,Cb4が設けられ、該貫通孔Ca4,Cb4には導電材料が充填される。更に、枠部F4の−Z側の面が隣接する赤外カットフィルタ層30と接合され、該枠部F4の+Z側の面が隣接する第2レンズ層50と接合される。
【0034】
○第2レンズ層50:
図3(e)で示すように、第2レンズ層50は、負のレンズパワーを有する光学レンズからなるレンズ部51と、該レンズ部51を囲み且つ該第2レンズ層50の外周部を構成する枠部F5とが同一の素材で一体成型されて形成されたチップである。そして、第2レンズ層50を構成する素材としては、第1レンズ層40と同様に、フェノール系の樹脂やアクリル系の樹脂、あるいはガラスなどが挙げられる。なお、レンズ部51は、レンズ部41と同様に、第1〜3レンズ層40,50,80による焦点が撮像素子部11に対応したものとなるように光を屈折させる光学レンズとなっている。
【0035】
また、撮像素子層10などと同様な態様で、枠部F5の所定の2箇所にZ方向に沿って貫通する微小な孔(貫通孔)Ca5,Cb5が設けられ、該貫通孔Ca5,Cb5には導電材料が充填される。更に、枠部F5の−Z側の面が隣接する第1レンズ層40(具体的には、枠部F4)と接合され、該枠部F5の+Z側の面が隣接するアクチュエータ層60と接合される。
【0036】
○アクチュエータ層60:
図3(f)で示すように、アクチュエータ層60は、撮像素子層10の撮像面側に配置されるとともに、第3レンズ層80のレンズ部81を移動させる薄板状のアクチュエータ部61a,61b(本発明の「可動部」に相当する)を備えるユニット(駆動装置ユニット)を構成するチップである。このアクチュエータ層60は、シリコン(Si)製の基板上に変位用の素子(アクチュエータ素子)が薄膜状に形成される。本実施形態では、アクチュエータ素子として、形状記憶合金(SMA)を用いるものとする。
【0037】
また、アクチュエータ層60は、外周部を構成し且つ固定部として機能する枠部F6と、該枠部F6の内側の中空部分に対して該枠部F6から突設される2枚の板状のアクチュエータ部61a,61bとを備える。つまり、2枚のアクチュエータ部61a,61bの一端がそれぞれ枠部F6に固設され、枠部F6が2枚のアクチュエータ部61a,61bを囲むように形成されている。
【0038】
より具体的には、枠部F6は、X軸に対して略平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材と、Y軸に対して略平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材とからなる4枚の板状部材がロの字型に配置されて形成される。また、該4枚の板状部材のうちの1枚の板状部材(ここでは、−Y側の板状部材)が形成する枠部F6の内縁のうち、−X側の端部(一端)近傍の所定部(以下「一方所定部」と称する)にアクチュエータ部61aの一端が固設され、+X側の端部(他端)近傍の所定部(以下「他方所定部」と称する)にアクチュエータ部61bの一端が固設される。つまり、2枚のアクチュエータ部61a,61bの各一端が枠部F6に対して固定された端部(固定端)となり、2枚のアクチュエータ部61a,61bの各他端が枠部F6に対する相対的な位置が自由に変更される端部(自由端)となっている。
【0039】
また、枠部F6の所定の2箇所(撮像素子層10などと同様な位置)にZ方向に沿って、枠部F6の裏面(ここでは、−Z側の面)から該枠部F6の途中まで微小な孔部Ca6,Cb6が設けられる。更に、枠部F6の−Z側の面が隣接する第2レンズ層50(具体的には、枠部F5)と接合され、該枠部F6の+Z側の面が隣接する平行バネ下層70と接合される。
【0040】
ここで、アクチュエータ層60の詳細な構成ならびに動作について説明する。
【0041】
図5は、アクチュエータ層60の詳細な構成を説明するための図である。
【0042】
アクチュエータ層60は、図5(a)で示すベース層601上に、図5(b)で示す絶縁層602、図5(c)で示す第1アクチュエータ素子層603、図5(d)で示す絶縁・導電層604、および図5(e)で示す第2アクチュエータ素子層605がこの順番で積層されて構成される。
【0043】
図5(a)で示すように、ベース層601は、例えば、適度な剛性を有する素材(例えば、シリコンや金属など)で構成され、枠部F61と、突設部611a,611bとを有する板状のベース部材によって構成される。
【0044】
枠部F61は、第2レンズ層50に対して接合されて固定される部分である。突設部611aは、枠部F61の一方所定部から突設される板状で且つ腕状の部分であり、突設部611bは、枠部F61の他方所定部から突設される板状で且つ腕状の部分である。突設部611a,611bは、枠部F61に固設された一端近傍を支点として、他端側が変位するように、変形可能に形成されている。なお、ここでは、枠部F61と突設部611a,611bとが一体的に形成されたが、これに限られず、例えば、枠部F61に対して突設部611a,611bが取り付けられることで固設されても良い。
【0045】
つまり、このベース層601では、突設部611a,611bの各一端が枠部F61に固設されて固定端となるとともに、突設部611a,611bの各他端が自由端となっており、枠部F61が突設部611a,611bを囲むように形成されている。また、枠部F61の所定の2箇所(撮像素子層10などと同様な位置)にZ方向に沿って、微小な貫通孔Ca61,Cb61が設けられ、該貫通孔Ca61,Cb61には導電材料が充填される。
【0046】
図5(b)で示すように、絶縁層602は、導電性を有しない材料(例えば、有機物)で構成され、ベース層601と略同一の形状を有する。この絶縁層602は、例えば、ベース層601の上面(+Z側の面)の全域に渡って、所定厚の有機物がマスクを用いた蒸着などにより形成される。したがって、絶縁層602は、枠部F61の上面に形成される膜状の枠部F62と、突設部611a,611bの上面にそれぞれ形成される突設部612a,612bとを有する。ここでは、アクチュエータ層60の枠部F6は、主に上下に積層する枠部F61,F62によって構成される。また、枠部F62の所定の2箇所(撮像素子層10などと同様な位置)においてZ方向に沿った微小な貫通孔Ca62,Cb62が設けられ、該貫通孔Ca62,Cb62には導電材料が充填される。
【0047】
なお、製造の容易性を考慮すると、貫通孔Ca61,Cb61が設けられていないベース層601上に絶縁層が形成された後に、型押しなどの手法によって、微小な貫通孔Ca61,Cb61,Ca62,Cb62が同時に形成される手法が好適である。
【0048】
図5(c)で示すように、第1アクチュエータ素子層603は、2つの変位素子部613a,613bと、2つの電極部Ta,Tbとを有する。
【0049】
変位素子部613aは、突設部611a,612a上に設けられ、電圧の印加に応じて伸縮する薄膜状の素子(ここでは、形状記憶合金)によって構成される。つまり、ここでは、突設部611a,612aが、変位素子部613aを支持する支持部として機能する。また、変位素子部613bは、変位素子部613aと同様な形状を有し、突設部611b,612b上に設けられ、電圧の印加に応じて伸縮する薄膜状の素子(ここでは、形状記憶合金)によって構成される。つまり、ここでは、突設部611b,612bが、変位素子部613bを支持する支持部として機能する。そして、変位素子部613a,613bの素材(ここでは、形状記憶合金)は、ベース層601の素材(例えば、シリコン)と比較して温度の上昇に対応して長さが変化する割合が異なる。なお、変位素子部613a,613bは、例えば、スパッタリングで成膜するか、または箔状に薄く延伸された素子を接着剤などで接合することで形成される。なお、成膜方法としては、メッキや蒸着なども考えられる。
【0050】
電極部Taは、例えば、導電性に優れた金属などによって構成されるとともに、変位素子部613aのうちの一方所定部側の端部(固定端)近傍に対して電気的に接続され、貫通孔Ca61,Ca62に充填された導電材料から供給される電圧を変位素子部613aに対して印加する部分である。ここでは、電極部Taが、枠部F61,F62上のうちの貫通孔Ca62の直上に設けられる。また、電極部Tbは、電極部Taと同様に、例えば、導電性に優れた金属などによって構成されるとともに、変位素子部613bのうちの他方所定部側の端部(固定端)近傍に対して電気的に接続され、貫通孔Cb61,Cb62に充填された導電材料から供給される電圧を変位素子部613bに対して印加する部分である。ここでは、電極部Tbが、枠部F61,F62上のうちの貫通孔Cb62の直上に設けられる。
【0051】
図5(d)で示すように、絶縁・導電層604は、絶縁膜614a,614bと、導電部Cna,Cnbとを有する。
【0052】
絶縁膜614aは、電極部Taの上面、および変位素子部613aの上面のうちの固定端から自由端の若干手前までの全域に渡って薄膜状に設けられた電気伝導性を有しない膜状の部分(絶縁部)である。また、絶縁膜614bは、電極部Tbの上面、および変位素子部613bの上面のうちの固定端から自由端の若干手前までの全域に渡って薄膜状に設けられた電気伝導性を有しない膜状の部分(絶縁部)である。これらの絶縁膜614a,614bは、例えば、マスクを用いた有機物の蒸着などにより形成される。
【0053】
導電部Cnaは、変位素子部613aの上面のうち、一方所定部とは反対側の端部(自由端)近傍に設けられた電気伝導性を有する膜(導電膜)である。また、導電部Cnbは、変位素子部613bの上面のうち、他方所定部とは反対側の端部(自由端)近傍に設けられた導電膜である。これらの導電部Cna,Cnbは、例えば、スパッタリングによる成膜などで形成される。
【0054】
図5(e)で示すように、第2アクチュエータ素子層605は、2つの変位素子部615a,615bと、配線部615cとを有する。
【0055】
変位素子部615a,615bは、変位素子部613a,613bと同様な素材で構成され、例えば、スパッタリングによる成膜、または箔状に薄く延伸された素子を接着剤などで接合することで形成される。なお、変位素子部615a,615bの成膜方法としては、メッキや蒸着なども考えられる。
【0056】
そして、変位素子部615aが、絶縁膜614aおよび導電部Cnaの上面のほぼ全域に設けられ、変位素子部615bが、絶縁膜614bおよび導電部Cnbの上面のほぼ全域に設けられる。したがって、変位素子部613aと変位素子部615aとが絶縁膜614aおよび導電部Cnaを挟むように形成され、変位素子部613aと変位素子部615aとが、自由端近傍において導電部Cnaによって電気的に接続される。また、変位素子部613bと変位素子部615bとが絶縁膜614bおよび導電部Cnbを挟むように形成され、変位素子部613bと変位素子部615bとが、自由端近傍において導電部Cnbによって電気的に接続される。ここで、別の観点から言えば、突設部611a,612aが、変位素子部615aを支持する支持部として機能し、突設部611b,612bが、変位素子部615bを支持する支持部として機能する。
【0057】
配線部615cは、枠部F61の上面側(具体的には、枠部F62の上面)に設けられ、変位素子部615aと変位素子部615bとを固定端近傍において電気的に接続する配線である。つまり、配線部615cは、変位素子部615aの一方所定部側の端部近傍の部分と、変位素子部615bの他方所定部側の端部近傍の部分とを電気的に接続する接続部として機能する。この配線部615cは、例えば、導電性に優れた金属などによって構成され、スパッタリングによる成膜などで形成される。この配線部615cによって変位素子部613a,613b,615a,615bが電気的に直列に接続されるため、アクチュエータ部61a,61bに電界を付与する構成の簡略化が図られる。
【0058】
なお、変位素子部613a,613b,615a,615bについては、ともに加熱時に縮むように形状を記憶する熱処理(記憶熱処理)が適時施されているものとする。
【0059】
ここで、アクチュエータ部61a,61bの動作について、アクチュエータ部61bの動作を例に挙げて説明する。
【0060】
図6は、アクチュエータ部61bの動作を説明するための図である。図6(a)は、図3(f)と同様に、アクチュエータ層60の構成を示す平面図であり、図6(b),(c)は、アクチュエータ部61bに着目して、図6(a)の切断面線6A−6Aから見た断面模式図である。
【0061】
なお、図6(b),(c)では、貫通孔Cb1〜Cb5,Cb61,Cb62に導電材料が充填されて形成される貫通配線部CTbが図示されている。貫通配線部CTbは、電極部Tbを介して変位素子部613bに電気的に接続され、本体部300の電源回路(不図示)から貫通配線部CTbを介してアクチュエータ部61bに電圧が印加される。なお、変位素子部613aに対しても同様に、貫通孔Ca1〜Ca5,Ca61,Ca62に導電材料が充填されて形成される貫通配線部CTaが電極部Taを介して変位素子部613aに電気的に接続され、電源回路から貫通配線部CTaを介してアクチュエータ部61aに電圧が印加される。
【0062】
ここでは、2つのアクチュエータ部61a,61bを構成する9つの部分、すなわち電極部Ta、変位素子部613a、導電部Cna、変位素子部615a、配線部615c、変位素子部615b、導電部Cnb、変位素子部613b、および電極部Tbが、この順番で貫通配線部CTa,CTbの間で直列に接続される。
【0063】
図6(b)では、アクチュエータ部61bが変形していない状態(初期状態)が示されている。初期状態では、変位素子部613b,615bに電圧が印加されておらず、変位素子部613b,615bが常温状態にある。このため、ベース層601の突設部611bの弾性力によって変位素子部613b,615bが平板状とされ、アクチュエータ部61bがほぼ平坦な形状を呈する。
【0064】
図6(b)で示した初期状態から、変位素子部613b,615bに電圧が印加されると、変位素子部613b,615bに電流が流れ、変位素子部613b,615bは、ジュール熱により加熱される。そして、変位素子部613b,615bが、所定の変態開始温度を超えると、変位素子部613b,615bが縮小する。このとき、変位素子部613b,615bの延設距離と、突設部611bの延設距離とに差が生じ、図6(c)で示すように、アクチュエータ部61bの自由端が上方にシフトするように、アクチュエータ部61bが変形する。
【0065】
また、変位素子部613b,615bへの電圧の印加が終了されると、自然冷却により、変位素子部613b,615bの延設距離が初期状態に戻り、アクチュエータ部61bは変形していない初期状態に戻る。このように、アクチュエータ部61bは、電界の付与により、枠部F6と接する場所を支点として、自由端が変位するように変形することで、駆動力を発生させる駆動部として機能する。そして、アクチュエータ部61bが、移動対象物に対して直接または間接的に当接することで、移動対象物に対して外力を及ぼして該移動対象物を移動させる。
【0066】
なお、ここでは、2つのアクチュエータ部61a,61bが配線部615cによって電気的に接続されており、同時に通電加熱される。このため、2つのアクチュエータ部61a,61bが略同一のタイミングおよびメカニズムで略同一に変形する。
【0067】
○平行バネ下層70:
図4(a)で示すように、平行バネ下層70は、りん青銅などの金属材料で構成され、枠部F7と、弾性部71とを有するチップであり、バネ機構を形成する層(弾性層)となっている。
【0068】
枠部F7は、平行バネ下層70の外周部を構成する。そして、枠部F7の−Z側の面が隣接するアクチュエータ層60(具体的には、枠部F6)と接合され、該枠部F7の+Z側の面が隣接する第3レンズ層80と接合される。
【0069】
弾性部71は、3つの略直線状に伸びる板状部材71a,71b,71cがコの字型に連結されて形成され、3つの板状部材71a,71b,71cのうちの両側の2本の板状部材71a,71cの各一端、すなわち弾性部71の両端が、枠部F7の2箇所に固設される。ここでは、弾性部71は、枠部F7の内側の中空部分に配置されるため、枠部F7が、弾性部71を囲むように形成される。
【0070】
より具体的には、枠部F7は、枠部F6と同様に、X軸に対して略平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材と、Y軸に対して略平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材とからなる4枚の板状部材がロの字型に配置されて形成される。また、該4枚の板状部材のうちの1枚の板状部材(ここでは、−Y側の板状部材)が形成する枠部F7の内縁のうち、−X側の端部(一端)近傍の所定部(以下「一方所定部」と称する)に弾性部71の一端(具体的には、板状部材71aの一端)が固設され、+X側の端部(他端)近傍の所定部(以下「他方所定部」と称する)に弾性部71の他端(具体的には、板状部材71cの一端)が固設される。
【0071】
また、弾性部71を構成する3つの板状部材71a,71b,71cのうち、両側の2つの板状部材71a,71cの下面(−Z側の面)が、アクチュエータ部61a,61bの上面(+Z側の面)に当接する。したがって、図6で示したアクチュエータ部61a,61bの変形に応じて、枠部F7に対する板状部材71bの相対的な位置が+Z側にシフトされるように、2つの板状部材71a,71cが弾性変形する。
【0072】
○第3レンズ層80:
図4(b)で示すように、第3レンズ層80は、枠部F8と、レンズ部81と、レンズ保持部83とを有するチップである。この第3レンズ層80を構成する素材としては、第1および第2レンズ層40,50と同様に、フェノール系の樹脂やアクリル系の樹脂、あるいはガラスなどが挙げられる。
【0073】
枠部F8は、第3レンズ層80の外周部を構成する。具体的には、枠部F8は、X軸に対して略平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材と、Y軸に対して略平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材とからなる4枚の板状部材がロの字型に配置されて形成される。そして、枠部F8の内側に形成される中空部分に、レンズ部81およびレンズ保持部83が配置され、レンズ部81およびレンズ保持部83が枠部F8に囲まれた状態となっている。また、枠部F8の−Z側の面が隣接する平行バネ下層70(具体的には、枠部F7)と接合され、該枠部F8の+Z側の面が隣接する平行バネ上層90と接合される。
【0074】
レンズ部81は、撮像素子部11からの距離が変更可能な光学レンズであり、ここでは、正のレンズパワーを有する。
【0075】
レンズ保持部83は、レンズ部81を保持し、平行バネ下層70の弾性部71と、後述する平行バネ上層90の弾性部91とによって挟持される。具体的には、例えば、レンズ保持部83は、レンズ部81と一体的に成型され、レンズ保持部83の+Y側の端部のうち、−Z側の面に弾性部71が接合され、+Z側の面に弾性部91が接合される。
【0076】
なお、第3レンズ層80については、カメラモジュール400の製造途中で、図4(b)で示すように、連結部84が図中の太破線で描かれた部分84a,84bで切断されて、枠部F8と、レンズ部81およびレンズ保持部83とが分離された状態となり、第3レンズ層80が形成される。この連結部84の切断については、更に後述する。
【0077】
○平行バネ上層90:
図4(c)で示すように、平行バネ上層90は、平行バネ下層70と同様な構成を有し、りん青銅などの金属材料で構成され、枠部F9と、弾性部91とを有するチップであり、バネ機構を形成する層(弾性層)となっている。
【0078】
枠部F9は、平行バネ上層90の外周部を構成する。そして、枠部F9の−Z側の面が隣接する第3レンズ層80(具体的には、枠部F8)と接合され、該枠部F9の+Z側の面が隣接する保護層CBと接合される。
【0079】
弾性部91は、弾性部71と同様に、3つの略直線状に伸びる板状部材91a,91b,91cがコの字型に連結されて形成され、3つの板状部材91a,91b,91cのうちの両側の2本の板状部材91a,91cの各一端、すなわち弾性部91の両端が、枠部F9の2箇所に固設される。ここでは、弾性部91は、枠部F9の内側の中空部分に配置されるため、枠部F9が、弾性部91を囲むように形成されている。枠部F9のより具体的な構成については、上述した枠部F7と同様となるため、ここでは、説明を省略する。
【0080】
なお、弾性部91を構成する3つの板状部材91a,91b,91cのうち、中央の1つの板状部材91bの下面(−Z側の面)が、レンズ保持部83に接合されることで、レンズ保持部83が、弾性部71と弾性部91とによって挟持される。そして、図6で示したアクチュエータ部61a,61bの変形に応じて、枠部F9に対する板状部材91bの相対的な位置が+Z側にシフトされるように、2つの板状部材91a,91cが弾性変形する。
【0081】
○保護層CB:
図4(d)で示すように、保護層CBは、盤面が略正方形の板状の透明部材であり、例えば、樹脂やガラスなどによって構成される。そして、保護層CBの外周部の−Z側の面が隣接する平行バネ上層90(具体的には、枠部F9)と接合される。なお、保護層CBの外周部は、例えば、外周に沿って凸形状を持つ構造にして、凸形状の上端面で接合するようにしても良い。
【0082】
<カメラモジュールの完成型の構造>
図7は、カメラモジュール400の構造を示す図である。詳細には、図7(a)は、カメラモジュール400を保護層CB側(上方)から見た平面図であり、図7(b)は、図7(a)の切断面線7A−7Aから見た断面模式図である。なお、図7(b)では、切断面よりも−Y側に位置している貫通孔Ca1〜Ca5,Ca61,Ca62が繋がって形成される1つの貫通孔Cva、および貫通孔Cb1〜Cb5,Cb61,Cb62が繋がって形成される1つの貫通孔Cvbの位置関係が分かるように、それぞれが破線で示されている。
【0083】
図7(b)で示すように、撮像素子層10、撮像センサホルダ層20、赤外カットフィルタ層30、第1レンズ層40、第2レンズ層50、アクチュエータ層60、平行バネ下層70、第3レンズ層80、平行バネ上層90、および保護層CBの10層がこの順番で積層されてカメラモジュール400が形成されている。また、貫通孔Cva,Cvbには、それぞれ導電材料が充填され、撮像素子層10の裏面(−Z側の面)から供給される電圧をアクチュエータ層60の各アクチュエータ部61a,61bに付与する。
【0084】
なお、このカメラモジュール400は、例えば、微細装置の集積化のために使用されるマイクロマシニング(micromachining)技法により製作される。この技法は、半導体加工技術の一種として、一般にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と称される。なお、MEMSという加工技術の名称が使用される分野としては、半導体工程、特に、集積回路技術を応用したマイクロマシニング技術を利用してサイズがμmオーダーのマイクロセンサ、アクチュエータ、および電気機械的構造物を製作する分野が含まれる。カメラモジュール400の製造方法については、更に後述する。
【0085】
<レンズ部の駆動の態様>
図8は、第3レンズ層80に含まれるレンズ部81の駆動態様を説明するための図である。図8では、レンズ部81と弾性部71,91の状態を側方から見た模式図が示されている。なお、実際にはレンズ保持部83を弾性部71,91が挟持しているが、図8では、説明の簡略化のために、弾性部71,91がレンズ部81を点Pu,Pdで保持しているように示されている。また、図8(a)では、弾性部71,91が変形していない状態(初期状態)が示され、図8(b)では、弾性部71,91が変形している状態(変形状態)が示されている。
【0086】
上述したように、弾性部71,91は、ともに同様な構成を有し、それぞれ同様に枠部F7,F9に対して2箇所で固設される。そして、アクチュエータ部61a,61bの変形により、板状部材71bが上昇するように弾性部71が変形する際には、レンズ部81を介して弾性部91も同様に変形する。このとき、レンズ部81が、所定距離離隔して並設される板状部材71a,91aおよび板状部材71c,91cによって挟持された状態と同視することができ、板状部材71a,91aおよび板状部材71c,91cが略同一のタイミングで略同一の変形を行う。このため、レンズ部81は、光軸が傾くことなく、上下方向(ここでは、Z軸に沿った方向)に移動する。すなわち、レンズ部81の光軸の方向をずらすことなく、レンズ部81と撮像素子部11との距離を変更することができる。その結果、撮像素子部11とレンズ部81との距離が変更され、焦点調整が実行される。
【0087】
<カメラモジュールの製造工程>
図9は、カメラモジュール400の製造工程の手順を例示するフローチャートである。図9で示すように、(工程A)複数のシートの準備(ステップS1)、(工程B)複数のシートの接合(ステップS2)、(工程C)ダイシング(ステップS3)、(工程D)光軸の偏芯の検査(ステップS4)、および(工程E)撮像素子層の結合(ステップS5)が順次に行われることで、カメラモジュール400が製造される。以下、各工程について説明する。
【0088】
○複数のシートの準備(工程A):
図10および図11は、準備する10枚のシートU2〜U9,UCBの構成例を示す平面図である。ここでは、各シートU2〜U9,UCBが、円盤状である例を示して説明する。
【0089】
図10(a)は、図3(b)で示した撮像センサホルダ層20に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(撮像センサホルダシート)U2を例示する図である。なお、ここでは、「所定配列」という文言を、多数のチップを所定の方向に所定の間隔で配列した状態を含む意味で使用している。また、この撮像センサホルダシートU2は、例えば、樹脂材料を素材として、金属金型を用いたプレス加工によって製作される。なお、貫通孔Ca2,Cb2は、例えば、型押し加工またはエッチングなどによって形成される。ここで、各撮像センサホルダ層20は、撮像素子部11を有する撮像素子層10の取り付け先となる所定部材に相当する。
【0090】
図10(b)は、図3(c)で示した赤外カットフィルタ層30に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数配列されたシート(赤外カットフィルタシート)U3を例示する図である。この赤外カットフィルタシートU3は、例えば、透明基板上に屈折率の異なる透明薄膜を多層化することで製作される。具体的には、まず、フィルタの基板となるガラスあるいは透明樹脂の基板を用意し、該基板の上面に屈折率の異なる透明薄膜をスパッタリングや蒸着などの手法によって多数積層させることで製作される。なお、透明薄膜の厚みや屈折率の組合せを適宜変更することで、透過する光の波長帯が設定される。ここでは、例えば、600nm以上の波長帯の光を透過させないように設定することで、赤外光が遮断される。なお、貫通孔Ca3,Cb3は、例えば、型押し加工またはエッチングなどによって形成される。
【0091】
図10(c)は、図3(d)で示した第1レンズ層40に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(第1レンズシート)U4を例示する図であり、図10(d)は、図3(e)で示した第2レンズ層50に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(第2レンズシート)U5を例示する図である。第1および第2レンズシートU4,U5は、例えば、フェノール系の樹脂、アクリル系の樹脂、または光学ガラスを素材として、成型またはエッチングなどの手法で製作される。なお、貫通孔Ca4,Ca5,Cb4,Cb5は、例えば、型押し加工またはエッチングなどによって形成される。ところで、カメラモジュール400に絞りを形成する場合は、例えば、第2レンズ層50などに、シャドウマスクを用いて遮光材料の薄膜を形成したり、別途黒色に色づけされた樹脂材料などで絞りを形成したりすれば良い。
【0092】
図10(e)は、図3(f)で示したアクチュエータ層60に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数かつ一体的に形成されたシート(アクチュエータシート)U6を例示する図である。アクチュエータシートU6は、例えば、シリコン(Si)などの基板上に、MEMSなどの手法でアクチュエータ素子に相当する形状記憶合金(SMA)の薄膜などを形成することで製作される。なお、多数のアクチュエータ層60のチップは、MEMSなどの手法により同時期に形成される。以下、具体例を挙げて説明する。
【0093】
まず、シリコン(または金属)の薄板に対して適宜エッチング処理を行うことで、上記ベース層601(図5(a))が所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたベース板が形成される。なお、ベース層601は、シリコンの薄板(シリコン基板)の代わりに、ポリイミドなどで構成される薄板状のもので形成されても良い。
【0094】
次に、フォトリソ法などを用いてベース板上に絶縁膜が形成され、各ベース層601上に絶縁層602(図5(b))が形成された状態となる。なお、貫通孔Ca61,Ca62,Ca61,Cb61は、例えば、型押し加工またはエッチングなどによって形成される。また、このとき、貫通孔Ca61,Ca62が一体的に繋がって形成される孔部Ca6と、貫通孔Cb61,Cb62が一体的に繋がって形成される孔部Cb6とに対して、金属(例えば、金)がめっきされる。なお、貫通孔Ca61,Cb61については、例えば、シリコンの薄板に対して、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)などのエッチングが施されて形成されても良い。
【0095】
次に、例えば、スパッタリング法(または蒸着法)を用いてアクチュエータ素子層603(図5(c))が形成される。このとき、各絶縁層602上に変位素子部613a,613bおよび電極部Ta,Tbが形成された状態となる。
【0096】
次に、フォトリソ法を用いた絶縁膜の形成と、スパッタリング法(または蒸着法)を用いた金属薄膜の形成により、絶縁・導電層604(図5(d))が形成される。このとき、変位素子部613a,613bおよび電極部Ta,Tb上に、絶縁膜614a,614bおよび導電部Cna,Cnbが形成された状態となる。
【0097】
次に、例えば、スパッタリング法(または蒸着法)を用いて第2アクチュエータ素子層605(図5(e))が形成される。このとき、絶縁膜614a,614bおよび導電部Cna,Cnb上に、変位素子部615a,615bが形成されるとともに、変位素子部615a,615bを導電可能に接続する配線部615cが形成された状態となる。そして、記憶させたい形状の型にアクチュエータ部61a,61bをセットし、所定温度(例えば、600℃)程度で加熱する処理(形状記憶処理)が行われる。
【0098】
図12は、アクチュエータシートU6の一部領域を拡大した平面模式図である。なお、図12では、アクチュエータシートU6のうちの6つのアクチュエータ層60に相当するチップが形成された一部領域が示されている。
【0099】
図10(e)および図12では、外形が略円形の板状のシート本体部6に複数のアクチュエータ層60に相当するチップが所定配列で形成されている状態が示され、その境界線が破線で示されている。そして、各チップに相当する部分には、表面から裏面まで貫通する開口部69が形成され、各開口部69において、2つのアクチュエータ部61a,61bがシート本体部6からそれぞれ突設される。そして、図5で示したように、各アクチュエータ部61aは、変位素子部613a,615aと、該変位素子部613a,615aを支持する突設部611aとを有し、各アクチュエータ部61bは、変位素子部613b,615bと、該変位素子部613b,615bを支持する突設部611bとを有する。
【0100】
別の観点から言えば、図5で示したように、アクチュエータシートU6の状態では、アクチュエータ層60の各チップが、開口部69を囲み且つシート本体部6によって形成される枠部F6と、該枠部F6から突設されるアクチュエータ部61a,61bとを含む。そして、図5で示したように、変位素子部615aと変位素子部615bとを電気的に接続する配線部615cが、シート本体部6上に配置される。また、図6で示したように、各開口部69の近傍には、シート本体部6のうちの枠部F61,F62を貫通する貫通配線部CTbが、変位素子部613a,613b,615a,615bに対して電界の付与が可能に設けられている。
【0101】
図10(f)は、図4(a)で示した平行バネ下層70に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(平行バネ下シート)U7を例示する図であり、図11(b)は、図4(c)で示した平行バネ上層90に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(平行バネ上シート)U9を例示する図である。平行バネ下シートU7および平行バネ上シートU9は、りん青銅などの金属材料の薄板に対して、例えばエッチングなどを施すことで製作される。
【0102】
図11(a)は、図4(b)で示した第3レンズ層80に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(第3レンズシート)U8を例示する図である。第3レンズシートU8は、例えば、フェノール系の樹脂、アクリル系の樹脂、または光学ガラスを素材として、成型およびエッチングなどの手法で製作される。
【0103】
図11(c)は、図4(d)で示した保護層CBに相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(保護シート)UCBを例示する図である。保護シートUCBは、例えば、透明の材料である樹脂(またはガラス)を所望の厚みとし、適宜エッチングを施すことで製作された平板状のシートである。
【0104】
なお、ここで準備される10枚のシートU2〜U9,UCBには、シートの接合工程における位置合わせのためのマーク(アライメントマーク)が、略同一の位置に付される。アライメントマークとしては、例えば、十字などのマークなどが挙げられ、各シートU2〜U9,UCBの上面の外周部近傍であって比較的離隔した2箇所以上の位置に設けられることが好ましい。
【0105】
○複数のシートの接合(工程B):
図13は、複数のシートU2〜U9,UCBを順次に積層させて接合する工程を模式的に示す図である。
【0106】
まず、撮像センサホルダシートU2、赤外カットフィルタシートU3、第1レンズシートU4、および第2レンズシートU5について、シートU2〜U5の各チップが、それぞれ直上に積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。なお、レンズ部41,51,81によって形成される光学系の精度を保つためには、3つのレンズ部41,51,81の光軸のズレ量(すなわち偏芯精度)が5μm以内であることが望ましい。
【0107】
具体的には、公知のアライナー装置に、まず、撮像センサホルダシートU2および赤外カットフィルタシートU3がセットされ、予め形成しておいたアライメントマークを用いたアライメントが行われる。この際、事前に、撮像センサホルダシートU2と赤外カットフィルタシートU3とが接合される面(接合面)に、いわゆるエポキシ樹脂系の接着剤、または紫外線硬化接着剤が塗布されており、両シートU2,U3が接合される。なお、接合面にO2プラズマを照射することで、接合面を活性化して、両シートU2,U3を直接接合する方法を用いても良い。但し、複数の層を短時間で簡単に接合して、カメラモジュール400の生産性の向上と製造コストの低減とを図ることを考慮すれば、上記樹脂の接着剤を用いる方が好ましい。
【0108】
続いて、上記と同様なアライメントならびに接合方法により、赤外カットフィルタシートU3上に第1レンズシートU4が接合され、更に、第1レンズシートU4上に第2レンズシートU5が接合される。
【0109】
このとき、各シートU2〜U5には、各チップにおいて所定位置を貫通する貫通孔Ca2〜Ca5,Cb2〜Cb5がそれぞれ設けられており、4つのシートU2〜U5の積層および接合により、上下に積層されるチップ毎に、貫通孔Ca2〜Ca5が一体的に繋がった貫通孔と、貫通孔Cb2〜Cb5が一体的に繋がった貫通孔とが形成される。そして、4つのシートU2〜U5の各チップの2つの貫通孔に対して、該貫通孔以外の部分にシャドーマスクなどを施して、例えば、無電解メッキなどといった金属(例えば、金など)をメッキする手法で、上下方向に導電可能な配線がそれぞれ形成される。この配線は、アクチュエータ部61a,61bに電界を付与する配線部を形成する。
【0110】
次に、4つのシートU2〜U5が積層されて形成された積層体の上面に対して、アクチュエータシートU6、平行バネ下シートU7、第3レンズシートU8、および平行バネ上シートU9がこの順番で下から順に積層および接合される。アライメントならびに接合方法については、上述したシートU2,U3に係る手法と同様であり、このとき、シートU2〜U9の各チップが、それぞれ直上に積層される。
【0111】
なお、アクチュエータシートU6については、シート本体部6の上下面の略全部(または一部)が、隣接する第2レンズシートU5および平行バネ下シートU7に対して結合される。なお、平行バネ下シートU7は、移動対象物に含まれる所定部材(ここでは、弾性部71)が所定配列で設けられたものであり、弾性部71に対して、アクチュエータシートU6のアクチュエータ部61a,61bが当接される。
【0112】
また、この際、第3レンズシートU8のレンズ部81が、平行バネ下シートU7の弾性部71を介して、アクチュエータシートU6のアクチュエータ部61a,61bによって支持された状態となる。また、シートU7〜U9が積層されて結合されることで、レンズ保持部83が上下面から弾性部71,91によって挟持され、弾性部71,91によってレンズ部81が支持された状態となる。そして、2本の腕部に相当するアクチュエータ部61a,61bが、レンズ部41,51,81に係る光軸を挟んで配置される。このとき、第3レンズシートU8の各チップにおいて、枠部F8とレンズ部81とをレンズ保持部83を介して連結する連結部84(図4(b)参照)がいわゆるフェムト秒レーザなどによって切断され、枠部F8とレンズ部81とが分離される。なお、ここでは、各連結部84が枠部F8側の一部分84a,84b(図4(b)の太破線部)で切断される。
【0113】
このように、複数のチップが形成されたシートの状態で、各チップのレンズ部81が弾性部71,91によって支持された後に、レンズ部81が移動可能な状態とされる。このため、レンズ部81とアクチュエータ部61a,61bとの位置合わせを精度良く行うことができる。すなわち、例えば、各光学ユニット(後述)におけるレンズ部の光軸の偏芯などを防ぐことが可能となる。
【0114】
最後に、平行バネ上シートU9の上面に対して、保護シートUCBが、上述した手法と同様な方法で、アライメントされて接合される。このとき、9つのシートU2〜U9,UCBが積層した部材(積層部材)が形成される。
【0115】
○ダイシング(工程C):
9つのシートU2〜U9,UCBが積層されて形成された積層部材が、ダイシング装置によってチップ毎に切り離されて、9つの層20〜90,CBが積層された光学系のユニット(光学ユニット)が多数生成される。なお、このとき、アクチュエータシートU6に着目すると、図12で示した破線に沿ってシート本体部6が切断され、アクチュエータ層60のチップ毎に切り離されて、複数のアクチュエータ層60のチップが形成される。
【0116】
○光軸の偏芯の検査(工程D):
上記ダイシングによって生成された多数の光学ユニットについて、レンズ偏芯測定機によって、3つのレンズ部41,51,81の光軸のズレ量(すなわち偏芯)が所定の許容値域範囲(例えば、5μm以内)に入っているのか否か検査される。
【0117】
ここで、光軸の偏芯の検査を行う理由について簡単に説明する。一般に、カメラモジュール400を構成する部品のうち、最も高価となるのは撮像素子層10である。そして、光軸の偏芯が所定の許容値域範囲から外れたカメラモジュール400は、不良品として扱われる。このため、光学ユニットの段階で不良品と良品とを選別し、良品に対してのみ撮像素子層10を取り付けるようにすることで、カメラモジュール400の製造コストならびに資源の無駄使いの低減を図ることが可能となる。
【0118】
○撮像素子層の結合(工程E):
光軸の偏芯の検査によって良品であると判別された各光学ユニットの下面(具体的には、撮像センサホルダ層20の裏面)に対して、撮像素子層10のチップが、いわゆるエポキシ樹脂系の接着剤、または紫外線硬化接着剤を用いた接合によって取り付けられて、カメラモジュール400が完成される。
【0119】
以上のように、本発明の実施形態に係るカメラモジュール400では、各アクチュエータ部61a,61bにおいて、変位素子部613a,613b,615a,615bが同一平面内に配置されておらず、上下に積層されている。そして、変位素子部613a,613b,615a,615bに電圧を供給する電極部Ta,Tbが、大きく変位する部分に形成されていない。このため、アクチュエータ層60を含んで構成される駆動装置の小型化と該駆動装置に掛かる負荷の低減とを両立させることができる。したがって、高出力を維持しつつ、駆動装置の小型化を図ることができる。
【0120】
また、変位素子部615a,615bが、固定端側で配線部615cによって電気的に接続されている。このため、複数の変位素子部615a,615bを均一に生成するとともに、複数のアクチュエータ部61a,61bを同一出力で容易に駆動させることができる。
【0121】
また、カメラモジュール400を構成する各層10〜90,CBは、各外周部で接着剤によってそれぞれ接合されているため、アクチュエータ部61a,61b、弾性部71,91、レンズ部81、およびレンズ保持部83を含む内部構成は、密閉された状態になる。したがって、駆動機構が非常に小さな隙間を有して構成されているが、例えば、クリーンルーム内でカメラモジュール400の組み立てを行うと、撮像素子部11と保護層SBと各層の外周部によって作られる空間へのゴミの進入が防がれ、密封により駆動機構の動作精度が高まる。また、密封により、空気の対流も防止されるため、駆動機構に対する負荷のバラツキも低減される。
【0122】
<変形例>
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0123】
◎例えば、上記実施形態では、複数の層を貫通する貫通配線部CTa,CTbによってアクチュエータ部61a,61bに電圧を印加したが、これに限られない。例えば、アクチュエータ層60の外縁部に設けられた端子部と、アクチュエータ部61a,61bとを電気的に接続する配線を設けても良い。このとき、端子部は、アクチュエータ層60の外部からアクチュエータ部61a,61bに電界を付与するための配線を電気的に接続するための端子として機能する。このような構成を採用すると、撮像素子層10とアクチュエータ層60との間に配置される各層の作成が容易になる。
【0124】
◎また、上記実施形態では、枠部F6の内縁を成す一辺から2枚のアクチュエータ部61a,61bが突設されていたが、これに限られない。例えば、枠部F6の内縁を成す4辺のうちの対向する2辺からそれぞれ1枚ずつアクチュエータ部が突設される構成や、枠部F6の内縁を成す一辺から1枚のアクチュエータ部が突設されるような構成など、種々の構成が採用されても良い。つまり、アクチュエータ層では、枠部F6から1以上のアクチュエータ部が突設されれば良い。ここで、2つの具体例(具体的には、具体例1,2)を挙げて説明する。
【0125】
図14(a)は、具体例1に係るアクチュエータ層60Aの構成例を示す平面図であり、図14(b)は、具体例2に係るアクチュエータ層60Bの構成例を示す平面図である。ここでは、上記実施形態に係るアクチュエータ層60と同様な部分については同じ符号を付して、適宜説明を省略する。以下、具体例1に係るアクチュエータ層60Aおよび具体例2に係るアクチュエータ層60Bについて順次説明する。
【0126】
○具体例1:
図14(a)で示すように、アクチュエータ層60Aは、図3(f)で示したアクチュエータ層60と比較して、2本のアクチュエータ部61a,61bが、異なる配置の2本のアクチュエータ部61Aa,61Abに変更されたものとなっている。そして、この変更に伴って、孔部Cb6の位置が、枠部F6のうちのアクチュエータ部61Abの固定端近傍に変更されている。なお、この構成では、孔部Cb6の位置の変更に合わせて、他の層10〜50の貫通孔Cb1〜Cb5の位置も変更する必要性がある。
【0127】
図15は、アクチュエータ層60Aの詳細な構成を説明するための図である。なお、ここでは、上記実施形態に係るアクチュエータ層60と同様な部分については同じ符号を付して、適宜説明を省略する。
【0128】
アクチュエータ層60Aは、図15(a)で示すベース層601A上に、図15(b)で示す絶縁層602A、図15(c)で示す第1アクチュエータ素子層603A、図15(d)で示す絶縁・導電層604A、および図15(e)で示す第2アクチュエータ素子層605Aがこの順番で積層されて構成される。
【0129】
図15(a)で示すように、ベース層601Aは、上記実施形態に係るベース層601と同様な素材で構成され、突設部611Aa,611Abと、該突設部611Aa,611Abを囲む枠部F61Aとを有する板状のベース部材によって構成される。枠部F61Aは、上記実施形態に係る枠部F6と同様な構成を有する。突設部611Aaは、枠部F61Aの内縁を構成する4辺のうちの一辺(−Y側の一辺)の一端(−X側の端部)近傍から突設される板状で且つ腕状の部分であり、一端(−Y側の端部)が固定端となり、他端(+Y側の端部)が自由端となっている。突設部611Abは、枠部F61Aの内縁を構成する4辺のうちの突設部611Aaが設けられた一辺に対向する他辺(+Y側の一辺)の一端(+X側の端部)近傍から突設される板状で且つ腕状の部分であり、一端(+Y側の端部)が固定端となり、他端(−Y側の端部)が自由端となっている。そして、枠部F61Aのうちの突設部611Abの固定端近傍に貫通孔Cb61が設けられている。
【0130】
図15(b)で示すように、絶縁層602Aは、上記実施形態に係る絶縁層602と同様な素材で構成され、ベース層601Aと同一の形状を有する。この絶縁層602Aは、例えば、ベース層601Aの上面(+Z側の面)の全域に渡って、所定厚の有機物がマスクを用いた蒸着などにより形成される。したがって、絶縁層602Aは、枠部F61Aの上面に形成される膜状の枠部F62Aと、突設部611Aa,611Abの上面にそれぞれ形成される突設部612Aa,612Abとを有する。そして、枠部F62Aのうちの突設部612Abの固定端近傍に貫通孔Cb62が設けられている。ここでは、アクチュエータ層60Aの枠部F6Aは、主に上下に積層する枠部F61A,F62Aによって構成される。
【0131】
図15(c)で示すように、第1アクチュエータ素子層603Aは、2つの変位素子部613Aa,613Abと、2つの電極部TAa,TAbとを有する。変位素子部613Aa,613Abは、上記実施形態に係る変位素子部613a,613bと同様な素材によって構成されるとともに、同様な手法によって形成される。そして、変位素子部613Aaは、突設部611Aa,612Aa上に設けられ、変位素子部613Abは、突設部611b,612b上に設けられる。
【0132】
また、電極部TAa,TAbは、上記実施形態に係る電極部Ta,Tbと同様な素材によって構成されるとともに、同様な手法によって形成される。そして、電極部TAaは、変位素子部613Aaのうちの固定端近傍に対して電気的に接続され、貫通孔Ca61,Ca62に充填された導電材料から供給される電圧を変位素子部613Aaに対して印加する部分である。ここでは、電極部TAaが、枠部F61A,F62A上のうちの貫通孔Ca61,Ca62の直上に設けられる。また、電極部TAbは、変位素子部613Abのうちの固定端近傍に対して電気的に接続され、貫通孔Cb61,Cb62に充填された導電材料から供給される電圧を変位素子部613Abに対して印加する部分である。ここでは、電極部TAbが、枠部F61A,F62A上のうちの貫通孔Cb61,Cb62の直上に設けられる。
【0133】
図15(d)で示すように、絶縁・導電層604Aは、絶縁膜614Aa,614Abと、導電部CnAa,CnAbとを有する。絶縁膜614Aa,614Abは、上記実施形態に係る絶縁膜614a,614bと同様な素材によって構成されるとともに、同様な手法によって形成される。そして、絶縁膜614Aaは、電極部TAaの上面、および変位素子部613Aaの上面のうちの固定端から自由端の若干手前までの全域に渡って薄膜状に設けられ、絶縁膜614Abは、電極部TAbの上面、および変位素子部613Abの上面のうちの固定端から自由端の若干手前までの全域に渡って薄膜状に設けられる。また、導電部CnAa,CnAbは、上記実施形態に係る導電部Cna,Cnbと同様な素材によって構成されるとともに、同様な手法によって形成される。そして、導電部CnAaは、変位素子部613Aaの上面のうちの自由端近傍に設けられ、導電部CnAbは、変位素子部613Abの上面のうちの自由端近傍に設けられる。
【0134】
図15(e)で示すように、第2アクチュエータ素子層605Aは、2つの変位素子部615Aa,615Abと、配線部615Acとを有する。変位素子部615Aa,615Abは、上記実施形態に係る変位素子部615a,615bと同様な素材で構成されるとともに、同様な手法によって形成される。そして、変位素子部615Aaが、絶縁膜614Aaおよび導電部CnAaの上面のほぼ全域に設けられ、変位素子部615Abが、絶縁膜614Abおよび導電部CnAbの上面のほぼ全域に設けられる。したがって、変位素子部613Aaと変位素子部615Aaとが絶縁膜614Aaおよび導電部CnAaを挟むように形成され、変位素子部613Aaと変位素子部615Aaとが、自由端近傍において導電部CnAaによって電気的に接続される。また、変位素子部613Abと変位素子部615Abとが絶縁膜614Abおよび導電部CnAbを挟むように形成され、変位素子部613Abと変位素子部615Abとが、自由端近傍において導電部CnAbによって電気的に接続される。
【0135】
また、配線部615Acは、枠部F61Aの上面側(具体的には、枠部F62Aの上面)に設けられ、変位素子部615Aaと変位素子部615Abとを各固定端近傍において電気的に接続する配線である。この配線部615Acは、上記実施形態に係る配線部615cと同様な素材によって構成されるとともに、同様な手法によって形成される。なお、変位素子部613Aa,613Ab,615Aa,615Abについては、上記実施形態に係る変位素子部613a,613b,615a,615bと同様に、加熱時に縮むように形状を記憶する熱処理(記憶熱処理)が適時施されている。
【0136】
そして、具体例1に係るアクチュエータ層60Aが組み込まれたカメラモジュールでは、アクチュエータ部61Aaの自由端と、アクチュエータ部61Abの自由端とを結ぶ線分の略中央に、レンズ部41,51,81に係る光軸が配置される。このような構成が採用されれば、レンズ部81の光軸方向をずらすことなく、複数のアクチュエータ部61Aa,61Abの変位によってレンズ部81を移動させることが可能となる。
【0137】
○具体例2:
図14(b)で示すように、アクチュエータ層60Bは、図3(f)で示したアクチュエータ層60と比較して、1枚のアクチュエータ部61bが除かれ、孔部Ca6,Cb6が、孔部CBa6,CBb6に変更されたものとなっている。
【0138】
図16は、アクチュエータ層60Bの詳細な構成を説明するための図である。なお、ここでは、上記実施形態に係るアクチュエータ層60と同様な部分については同じ符号を付して、適宜説明を省略する。
【0139】
アクチュエータ層60Bは、図16(a)で示すベース層601B上に、図16(b)で示す絶縁層602B、図16(c)で示す第1アクチュエータ素子層603B、図16(d)で示す絶縁・導電層604B、および図16(e)で示す第2アクチュエータ素子層605Bがこの順番で積層されて構成される。
【0140】
図16(a)で示すように、ベース層601Bは、上記実施形態に係るベース層601(図5(a))と比較して、突設部611bが取り除かれるとともに、貫通孔Ca61,Cb61が貫通孔CBa61,CBb61に変更されたものとなっている。ここで、貫通孔CBa61,CBb61は、上記実施形態に係る貫通孔Ca61,Cb61と同様な形状を有し、枠部F61のうちの突設部611aの固定端近傍において、枠部F61の延設方向に沿って空間順次に設けられる。
【0141】
また、図16(b)で示すように、絶縁層602Bは、上記実施形態に係る絶縁層602(図5(b))と比較して、突設部612bが取り除かれるとともに、貫通孔Ca62,Cb62が貫通孔CBa62,CBb62に変更されたものとなっている。ここで、貫通孔CBa62,CBb62は、上記実施形態に係る貫通孔Ca62,Cb62と同様な形状を有し、枠部F62のうちの突設部612aの固定端近傍において、枠部F62の延設方向に沿って空間順次に設けられる。
【0142】
また、図16(c)で示すように、第1アクチュエータ素子層603Bは、上記実施形態に係る第1アクチュエータ素子層603(図5(c))と比較して、変位素子部613bおよび電極部Tbが取り除かれるとともに、電極部Taが電極部T3Bに変更されたものとなっている。ここで、電極部T3Bは、例えば、変位素子部613aの固定端の−X側の一部(ここでは4割程度の部分)に対して電気的に接続され、電極部T3Bの上面の領域が、上記実施形態に係る電極部Taの上面の領域の所定割合(ここでは、4割程度)の大きさになっている。そして、電極部T3Bが、枠部F61,F62上のうちの貫通孔CBa61,CBa62の直上に設けられ、貫通孔CBa61,CBa62に充填された導電材料から供給される電圧を変位素子部613aに対して印加する部分として機能する。
【0143】
また、図16(d)で示すように、絶縁・導電層604Bは、上記実施形態に係る絶縁・導電層604(図5(d))と比較して、絶縁膜614bおよび導電部Cnbが取り除かれたものとなっている。
【0144】
また、図16(e)で示すように、第2アクチュエータ素子層605Bは、上記実施形態に係る第1アクチュエータ素子層603(図5(e))と比較して、変位素子部615bおよび配線部615cが取り除かれるとともに、電極部T5Bが設けられたものとなっている。ここで、電極部T5Bは、例えば、変位素子部615aの固定端の+X側の一部(ここでは、4割程度の部分)に対して電気的に接続され、電極部T5Bの上面の領域が、上記電極部T3Bの上面の領域と同等な大きさを有する。つまり、枠部F61,F62上において、電極部T3Bと電極部T5Bとが、相互に接触しないように離隔して形成される。そして、電極部T5Bが、枠部F61,F62上のうちの貫通孔CBb61,CBb62の直上に設けられ、貫通孔CBb61,CBb62に充填された導電材料から供給される電圧を変位素子部615aに対して印加する部分として機能する。
【0145】
なお、具体例2に係るアクチュエータ層60Bを採用する場合には、貫通孔CBa61,CBa62,CBb61,CBb62の位置に合わせて、他の層10〜50の貫通孔Ca1〜Ca5,Cb1〜Cb5の位置も変更する必要性がある。また、レンズ部81の光軸がずれ難くなる様に、弾性部71,91の構成ならびにレンズ保持部83の形状を変更するようにしても良い。
【0146】
◎また、上記実施形態では、アクチュエータ層60において、突設部611a上に、突設部612a、変位素子部613a,615a、絶縁膜614a、および導電部Cnaを積層させるとともに、突設部611b上に、突設部612b、変位素子部613b,615b、絶縁膜614b、および導電部Cnbを積層させて、アクチュエータ部61a,61bを形成したが、これに限られない。例えば、突設部612a、変位素子部613a,615a、絶縁膜614a、および導電部Cnaの積層物を1つの積層構造として、該積層構造を突設部611a上に複数積層させるとともに、突設部612b、変位素子部613b,615b、絶縁膜614b、および導電部Cnbの積層物を1つの積層構造として、該積層構造を突設部611b上に複数積層させることで、アクチュエータ部の変形による出力(駆動力)の向上を図っても良い。
【0147】
また、例えば、突設部612a、変位素子部613a,615a、絶縁膜614a、および導電部Cnaの積層物を1つの積層構造として、該積層構造を突設部611aの上下面にそれぞれ設けるとともに、突設部612b、変位素子部613b,615b、絶縁膜614b、および導電部Cnbの積層物を1つの積層構造として、該積層構造を突設部611bの上下面にそれぞれ設けることで、アクチュエータ部の自由端が上下に変位可能となるようにしても良い。
【0148】
◎また、上記実施形態では、カメラモジュール400が、10層が積層されて形成されたが、これに限られない。例えば、第3レンズ層80について、レンズパワーを有するレンズ部81と枠部F8とを、レンズ部81と同じ材料で形成された薄板状の弾性部材によって、レンズ部81の周囲の少なくとも2箇所において連結することで、平行バネ下層70および平行バネ上層90を省略する構成などが考えられる。
【0149】
但し、レンズ部81の光軸のずれを抑制するためには、第3レンズ層80を、枠部F8とレンズ部81とが、レンズ部81の周囲の異なる方向から少なくとも3つの弾性部材によって連結されたものに変更することが好ましい。そして、3以上の弾性部材が設けられる場所は、レンズ部81の光軸を中心とした周方向に沿った略等間隔の位置など、枠部F8がレンズ部81を偏りなく支持可能である場所であることが望ましい。
【0150】
このように、レンズ部81の周囲に配置される3以上の弾性部材によってレンズ部81が支持されれば、レンズ部81の光軸をずらすことなく、レンズ部81と、アクチュエータ部61a,61bとを精度良く組み合わせて、カメラモジュール400を製造することができる。そして、例えば、レンズ部81を保持するための弾性部71,91を有する他の層70,90が不要となるため、カメラモジュール400の構造の簡略化による組み立て精度の向上と、カメラモジュール400の薄型化および小型化とを図ることができる。
【0151】
また、光学系の設計によっては、第1および第2レンズ層40,50も適宜省略可能となる。したがって、レンズ部81をアクチュエータ部61a,61bで精度良く支持する観点から言えば、カメラモジュール400が、移動するレンズ部81を有するレンズ層80と、レンズ部81を移動させるアクチュエータ層60と、を少なくとも含む複数の層が積層されて形成されれば良い。
【0152】
なお、上述した平行バネ下層70および平行バネ上層90を省略する構成では、上記実施形態と比較して、連結部84をレーザーなどで切断する必要性がないため、レンズ部81における光軸の偏芯の発生を抑制しつつ、高精度にカメラモジュールを組み立てることができる。
【0153】
◎また、上記実施形態では、ダイシング後に、光学ユニットの光軸の偏芯を検査して、良品の光学ユニットに対して撮像素子層10を取り付けたが、これに限られない。例えば、9つのシートU2〜U9,UCBを積層させる精度が高い様な場合には、図3(a)で示した撮像素子層10が所定の基板(例えば、シリコン基板)上に所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(撮像素子シート)を形成しておき、9つのシートU2〜U9,UCBを積層させる際に、併せて撮像素子シートもアライメントしつつ積層および接合させた後に、ダイシングを行うことで、多数のカメラモジュール400を完成させても良い。このような構成を採用することで、撮像素子層10を接合する際のアライメントも容易となるため、撮像素子部11を含む複数の機能を実現する部材を容易に精度良く組み合わせることが可能となる。
【0154】
◎また、上記実施形態では、4つのシートU2〜U5が積層された状態で、貫通孔Ca2〜Ca5が一体的に繋がって形成される貫通孔、および貫通孔Cb2〜Cb5が一体的に繋がって形成される貫通孔に対して、金属をメッキすることで配線が形成されたが、これに限られない。例えば、ダイシング前に撮像素子シートを積層および接合する場合には、複数のシートU2〜U9,UCBが積層させて接合された後に、貫通孔Ca1〜Ca5,Ca61,Ca62が一体的に繋がって形成される貫通孔、および貫通孔Cb1〜Cb5,Cb61,Cb62が一体的に繋がって形成される貫通孔に対して、金属をメッキすることで貫通配線部CTa,CTbが形成されても良い。
【0155】
また、5つのシートU2〜U6について、シート毎に貫通孔Ca2〜Ca5,Ca61,Ca62,Cb2〜Cb5,Cb61,Cb62に金属をメッキするなどして導電材料を充填させておき、5つのシートU2〜U6を積層した時点で、貫通配線部CTa,CTbが形成されるようにしても良い。なお、各層間における接触抵抗の低減を図るためには、貫通孔Ca2〜Ca5,Ca61,Ca62,Cb2〜Cb5,Cb61,Cb62から若干はみ出る程度に導電材料を充填させることが好ましい。このように、アクチュエータ層60に枠部F61,F62を貫通する配線が予め作製されておれば、小型の駆動機構を含む装置を製造する際に、アクチュエータシートU6と積層および接合される他のシート(ここでは、第2レンズシートU5など)にも同様な貫通する配線を設けることで、アクチュエータ部61a,61bに電界を付与するための貫通配線部CTa,CTbを容易に精度良く形成することができる。
【0156】
◎また、上記実施形態では、カメラモジュール400を構成する10層のうちの5層を貫通する電圧供給用の貫通配線部CTa,CTbが設けられたが、これに限られない。例えば、撮像素子層10については、貫通する配線を設けず、撮像素子層10内に配置された信号用の各種配線と同様に、撮像素子層10内に適宜電圧供給用の配線を設けて、撮像素子層10の裏面または側面から該配線に対して電気的に接続可能な端子部を設けても良い。このような構成を採用しても、上記実施形態と同様に、アクチュエータ部に電界を付与するための配線部を容易に精度良く形成することができる。そして、アクチュエータシートU6の作製が容易となる。
【0157】
ところで、上述したように、光学系の設計によっては、第1および第2レンズ層40,50も適宜省略可能となる。したがって、アクチュエータ部61a,61bに電界を付与するための配線部を容易に精度良く形成するといった観点から言えば、カメラモジュール400を構成する複数の層のうち、撮像素子層10とアクチュエータ層60との間に配置される1層以上を貫通し、且つアクチュエータ層60に電界を付与する配線が設けられれば良い。
【0158】
◎また、上記実施形態では、ベース層601に貫通孔Ca61,Cb61を設けた上で導電材料を充填したが、これに限られず、例えば、ベース層601の素材となるシリコンの薄板にイオンドーピングを施すことで、導通可能な領域を形成するようにしても良い。
【0159】
◎また、上記実施形態では、複数のシートU2〜U5を貫通する貫通孔Ca2〜Ca5,Cb2〜Cb5をシート毎に形成したが、これに限られない。例えば、シートU2〜U5を積層して接合した後に、いわゆるフェムト秒レーザ、エキシマレーザ、またはイオン性エッチング法などを用いて、数10μm程度の径を有する4つのシートを貫通する貫通孔を形成しても良い。
【0160】
◎また、上記実施形態では、ベース層601上に、絶縁層602、および絶縁膜614a,614bを介してアクチュエータ素子の薄膜を成膜することで、アクチュエータ部61a,61bが形成されたが、これに限られない。例えば、アクチュエータ部61a,61bが、ベース層601上に、該ベース層601の素材と比較して温度の上昇に対応して長さが変化する割合(線膨張率、または線膨張係数)が異なる金属薄膜を成膜することで、アクチュエータ部が形成されても良い。なお、線膨張係数の異なる素材の組合せとしては、例えば、ベース層をシリコン(Si)で構成し、金属薄膜をアルミニウム(Al)で構成するような態様が考えられる。
【0161】
具体的には、シリコン基板によって構成されるベース層上に、チタン(Ti)などの薄膜、および白金(Pt)の薄膜を順次積層させてヒーターを形成し、該ヒーター上にアルミニウム(Al)またはニッケル(Ni)などのメタル層を形成したアクチュエータ部が考えられる。そして、このような構成では、ヒーターへ電力が印加されていない状態(OFF状態)では、メタル層は常温状態にあるため、シリコン基板の弾性力により、メタル層が平面状とされ、アクチュエータ部がほぼ平坦な形状を呈する。一方、ヒーターへ電力が印加された状態(ON状態)では、ヒーターに電流が流れ、ヒーターは、自身のジュール熱によって加熱される。このとき発生する熱によりメタル層も加熱され、該メタル層が膨張し、該メタル層の長さとシリコン基板の長さとの間に差が生じ、アクチュエータ部の反りが生じる。
【0162】
◎また、上記実施形態では、弾性部71,91がそれぞれ枠部F7,F9の2箇所に固設されたが、これに限られず、種々の構成を採用しても良い。但し、上述の如くレンズ部81の光軸を傾けることなく、レンズ部81を移動させるためには、弾性部71,91がそれぞれ枠部F7,F9の2箇所以上で固設されることが好ましい。
【0163】
◎また、上記実施形態では、弾性部71の両端が、枠部F7の合計2箇所に固設され、弾性部91の両端が、枠部F9の合計2箇所に固設されていたが、これに限られない。例えば、弾性部71,91をそれぞれ中央部分で2分割して、2分割された弾性部71の一方および他方の一端を枠部F7にそれぞれ固設することで合計2箇所に固設するとともに、2分割された弾性部91の一方および他方の一端を枠部F9にそれぞれ固設することで合計2箇所に固設するような構成も考えられる。
【0164】
◎また、上記実施形態では、アクチュエータ部61a,61bによって移動される対象物(移動対象物)が、オートフォーカス装置を構成する光学レンズであったが、これに限られない。例えば、移動対象物は、手振れ補正機構を構成する光学レンズや光ピックアップ装置を構成する光学レンズなど、その他の光学レンズであっても良いし、更に、光学レンズ以外の種々の小型の物体であっても良い。つまり、本発明は、移動対象物を移動させる小型の駆動装置一般に適用することができる。なお、手振れ補正機構としては、例えば、アクチュエータ部の動きにより、移動対象物である光学レンズが上下左右に2次元的に駆動する構成を挙げることができる。
【0165】
以下、本発明を適用して製造された駆動装置を含む他の具体例について簡単に説明する。
【0166】
図17は、対物レンズ705を駆動させる駆動装置を含む光ピックアップ装置700の構成例を示す断面模式図である。
【0167】
この光ピックアップ装置700では、光源701から射出される光ビームを光ディスク706の情報記録面707に集光させ、該情報記録面707で反射される光ビームを受光素子708で受光して、情報を読み取るものである。そして、この光ピックアップ装置700では、情報記録面707の形状に合わせて、光ビームのフォーカス位置を調節する必要がある。そこで、本具体例に係る光ピックアップ装置700には、上記実施形態に係るアクチュエータ層60、平行バネ下層70、および平行バネ上層90を用いて対物レンズ705を駆動することで光ビームの焦点を調節する駆動装置が搭載されている。
【0168】
図17で示すように、光源701から射出された光ビームは、ビームスプリッター702を透過し、コリメータレンズ703で略平行光とされ、反射プリズム704にて反射されて、対物レンズ705に入射する。そして、対物レンズ705を保持する部分が、平行バネ下層70の弾性部71と、平行バネ上層90の弾性部91とによって挟持され、弾性部71の下面にアクチュエータ層60のアクチュエータ部61a,61bが当接されている。このため、アクチュエータ部61a,61bの変形により、弾性部71の押し上げ、ならびに弾性部71の弾性力による押し下げが生じ、対物レンズ705が光軸に沿って上下に駆動可能とされている。また、対物レンズ705で屈折された光は、光ディスク706に入射し、情報記録面707に集光される。そして、情報記録面707で反射された光は、入射してきた光路を逆に辿り、ビームスプリッター702で反射されて受光素子708に至る。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の実施形態に係るカメラモジュールを含む携帯電話機の概略構成を例示する図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカメラモジュールの構成例を示す分解斜視図である。
【図3】カメラモジュールを構成する各層の構成例を示す平面図である。
【図4】カメラモジュールを構成する各層の構成例を示す平面図である。
【図5】アクチュエータ層の詳細な構成例を説明するための図である。
【図6】アクチュエータ部の動作例を説明するための図である。
【図7】カメラモジュールの構造を例示する図である。
【図8】第3レンズ層に含まれるレンズ部の駆動態様を説明するための図である。
【図9】カメラモジュールの製造工程の手順を示すフローチャートである。
【図10】準備するシートを例示する平面図である。
【図11】準備するシートを例示する平面図である。
【図12】アクチュエータシートの一部領域を例示する拡大図である。
【図13】複数のシートの結合を説明するための図である。
【図14】具体例1,2に係るアクチュエータ層の構成を例示する平面図である。
【図15】具体例1に係るアクチュエータ層の構成を説明するための図である。
【図16】具体例2に係るアクチュエータ層の構成を説明するための図である。
【図17】変形例に係る光ピックアップ装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0170】
41,51,81 レンズ部
50 第2レンズ層
60,60A,60B アクチュエータ層
61a,61Aa,61b,61Ab アクチュエータ部
611a,611b,611Aa,611Ab,612a,612b,612Aa,612Ab 突設部
613a,613b,613Aa,613Ab,615a,615b,615Aa,615Ab 変位素子部
614a,614Aa,614b,614Ab 絶縁膜
400 カメラモジュール
615c,615Ac 配線部
700 光ピックアップ装置
Cna,CnAa,CnAb,Cnb 導電部
CTa,CTb 貫通配線部
T3B,T5B,Ta,Tb 端子部
F4〜F9,F61,F61A,F62,F62A 枠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
前記固定部の所定部から突設される板状の可動部と、
前記所定部の近傍に設けられ、前記可動部に対して電圧を印加する電極部と、
を備え、
前記可動部が、
前記所定部から突設される突設部と、
前記突設部上に設けられ、電圧の印加に応じて伸縮する薄膜状の第1変位素子部と、
前記第1変位素子部上に設けられる薄膜状の絶縁部と、
前記絶縁部上に設けられ且つ前記絶縁部を前記第1変位素子部とともに挟み、電界の印加に応じて伸縮する薄膜状の第2変位素子部と、
前記第1変位素子部と前記第2変位素子部とを、前記所定部とは反対側の端部近傍において電気的に接続する導電部と、
を有し、
前記電極部が、
前記第1および第2変位素子部に対して、電気的に接続されるとともに電圧を印加することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置であって、
前記第1および第2変位素子部が、
形状記憶合金で形成されることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、
前記第1および第2変位素子部による移動対象物が光学レンズを含むことを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置であって、
前記可動部が、
前記固定部の第1所定部から突設される第1可動部と、前記固定部の第2所定部から突設される第2可動部とを含み、
前記光学レンズの光軸が、
前記第1可動部のうちの前記第1所定部とは反対側の端部と、前記第2可動部のうちの前記第2所定部とは反対側の端部とを結ぶ線分の略中央に配置されることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れかに記載の駆動装置であって、
前記可動部が、
前記固定部の第1所定部から突設される第1可動部と、前記固定部の第2所定部から突設される第2可動部とを含み、
前記電極部が、
前記第1可動部を構成する前記第1変位素子部のうちの前記第1所定部側の端部近傍において電気的に接続する第1電極部と、前記第2可動部を構成する前記第1変位素子部のうちの前記第2所定部側の端部近傍において電気的に接続する第2電極部とを含み、
前記固定部上に設けられ、前記第1可動部を構成する前記第2変位素子部のうちの前記第1所定部側の端部近傍の部分と、前記第2可動部を構成する前記第2変位素子部のうちの前記第2所定部側の端部近傍の部分とを電気的に接続する接続部、
を更に備えることを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−251373(P2009−251373A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100483(P2008−100483)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】