説明

骨の成長を刺激する組成物および方法

【課題】骨の形成を刺激するのに有用な化合物を提供すること。
【解決手段】式(1)および(2)の化合物(ここで、変数X、YおよびR’は、本明細書中で規定されている)は、骨の形成を促進し、それゆえ、骨粗鬆症、骨折または骨欠乏、一次または二次副甲状腺機能亢進症、歯周疾患または欠陥、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患、形成外科手術後、人工関節手術後および歯科治療後移植を治療する際に、有用である。図面は、インビボBMP-プロモーターベースアッセイで試験した、本発明のいくつかの化合物(すなわち、ネバスタチン、ロバスタチンおよびプラバスタチン)の構造および活性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1996年12月13日に出願した暫定出願番号第60/032,893から、米国特許法第119条に基づいて優先権を主張しており、この出願の全内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0002】
技術分野
本発明は、望ましくない骨の損失の危険に晒されている脊椎動物において、このような骨の損失を制限する際、望ましくない骨の損失または骨の成長の必要により特徴付けられる病態を処置する際、骨折を処置する際、および軟骨障害を処置する際に使用する組成物および方法に関する。さらに特定すると、本発明は、高処理量スクリーニングアッセイにより同定され、さらなる生物学的アッセイにより特徴付けられる特定の種類の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
骨は、静的な組織ではない。それは、骨芽細胞(これは、新しい骨を生じる)および破骨細胞(これは、骨を破壊する)により媒介された複雑なプロセスにおいて、絶え間ない分解および再合成を受けている。これらの細胞の活性は、多数のサイトカインおよび成長因子により制御され、その多くは、現在、同定されクローン化されている。Mundyは、これらの因子に関連した現在の知見を記述している(Mundy,G.R. Clin Orthop 324:24〜28, 1996;Mundy, G.R. J Bone Miner Res8:S505-10, 1993)。
【0004】
骨の分解および吸収に影響を与える因子に関して入手できる情報は多いものの、新しい骨の形成を刺激する成長因子に関する情報はより限られている。研究者は、このような活性の源を探しており、骨組織自体が、骨細胞を刺激する性能を有する因子の宝庫であることを発見した。それゆえ、屠殺場から得たウシ骨組織の抽出物は、骨の構造的な完全性を維持することに関与している構造タンパク質だけでなく、骨細胞を増殖させるために刺激できる生体活性骨成長因子も含有する。これらの後者の因子には、形質転換成長因子β、ヘパリン結合成長因子(例えば、酸性および塩基性線維芽細胞成長因子)、インシュリン様成長因子(例えば、インシュリン様成長因子Iおよびインシュリン様成長因子II)、および骨形態形成タンパク質(BMP)と呼ばれる最近記述されたタンパク質ファミリーがある。これらの成長因子の全ては、骨細胞だけでなく、他のタイプの細胞にも効果がある。
【0005】
これらのBMPは、拡大した形質転換成長因子βのスーパーファミリーにおける新規因子である。それらは、まず、無機質を除去した(demineralized)骨の抽出物における生体活性を特徴付ける先の記述(UristM. Science (1965) 150:893-99)に従って、遺伝子クローニング技術を用いて、Wozney J.ら(Science (1988) 242:1528-34)により同定された。組み換えBMP2およびBMP 4は、ラットの皮下組織に局所的に注射したとき、新しい骨の形成を誘発できる(Wozney J. Molec Reprod Dev (1992)32:160-67)。これらの因子は、それらが分化するにつれて、正常な骨芽細胞により発現されており、骨芽細胞の分化、およびインビボでの骨形成だけでなくインビトロでの小節骨形成を刺激することが明らかとなった(HarrisS.ら、J. Bone Miner Res (1994) 9:855-63)。この後者の性質は、骨損失に至る疾患に治療剤としての潜在的な有用性を示唆している。
【0006】
骨形成に関与している細胞は、骨芽細胞である。骨芽細胞が前駆体から成熟骨形成細胞へと分化すると、それらは、骨マトリックスの多数の酵素および構造タンパク質(1型コラーゲン、オステオカルシン、オステオポンチンおよびアルカリ性ホスファターゼを含めて)を発現し分泌する(Stein G.ら、CurrOpin Cell Biol (1990) 2:1018-27;Harris S.ら (1994)、前出)。それらはまた、骨マトリックス内に保存されていて正常な骨の形成に関与しそうな多数の成長制御ペプチドを合成する。これらの成長制御ペプチドには、BMP(HarrisS.ら (1994)、前出)が挙げられる。ラット胎児頭蓋冠骨芽細胞の一次培養の研究では、無機化した骨小節の形成前に、BMP 1、2、3、4および6は、培養細胞により発現された(HarrisS.ら (1994)、前出)。アルカリ性ホスファターゼ、オステオカルシン、およびオステオポンチンと同様に、これらのBMPは、培養骨芽細胞により、それらが増殖し分化するにつれて、発現される。
【0007】
BMPは、インビトロおよびインビボでの骨形成の強力な刺激物質であるものの、骨の治癒を高める治療剤としてのそれらの使用には、欠点がある。これらの骨形態形成タンパク質のためのレセプターは、多くの組織で同定されており、BMPそれ自体は、特定の一時的な空間的パターンで、多様な組織において、発現される。このことは、BMPが、全身投与したときの治療剤としてのそれらの有用性を潜在的に制限しつつ、骨に加えて、多くの組織に影響があり得ることを示唆している。さらに、それらはペプチドであるので、注射により投与しなければならない。これらの欠点により、治療剤としてのBMPの開発に対して、いくつかの制限が課されている。
【0008】
骨の形成を高める必要により特徴付けられる多数の病態がある。おそらく、最も明らかなものは、骨折であり、この場合、骨の成長を刺激し、骨の修復を早め完成されることが望まれている。骨の形成を高める試薬はまた、顔面の再構築法で有用である。他の骨欠乏病態には、骨分節の欠陥、歯周疾患、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患、および結合組織の修復が有益となる病態(例えば、軟骨の欠陥または傷害の治癒または再生)が挙げられる。慢性骨粗鬆症病態(年齢に関連した骨粗鬆症、および閉経後ホルモン状況に関連した骨粗鬆症を含めて)もまた、非常に重要である。骨の成長の必要ににより特徴付けられる他の病態には、一次および二次副甲状腺機能亢進症、不使用(disuse)骨粗鬆症、糖尿病に関連した骨粗鬆症、および糖質コルチコイドに関連した骨粗鬆症が挙げられる。
【0009】
現在、これらの病態を管理する充分な薬学的アプローチはない。骨折は、依然として、もっぱら、鋳型、装具、固定装置および他の厳密に機械的な手段を用いて、処置されている。閉経後骨粗鬆症に付随したさらなる骨の劣化は、エストロゲンまたはビスホスホネートで処置されているが、これらは、既知の副作用がある。
【0010】
特許文献1は、骨粗鬆症の処置に有用として記述された化合物を開示している。これらの化合物は、骨の吸収を防止することにより、この結果を達成すると推定されている。
【0011】
Wang,G.-J.ら(J. Formos Med Assoc (1995) 94:589〜592)は、ロバスタチンおよびベザフィブレート(bezafibrate)により例示される、ある種の脂質透明化剤が、ウサギにおけるステロイドの投与から生じた骨の吸収を阻害できたと報告している。ステロイド処置なしでは、これらの2種の化合物による骨形成に対する効果はなかった。ステロイドの存在下で認められた骨吸収の阻害の機構(および骨それ自体に対するステロイドの効果の機構)は、知られていない。この文献の著者は、ステロイド誘発骨損失が、骨芽細胞の活性に対するコルチコステロイドの阻害効果に起因する骨形成の減少、および副甲状腺ホルモンの産生の二次増加を伴う腸のカルシウム吸収の直接的破骨細胞と間接的阻害とに起因する骨吸収の増加に関係していると述べている。言及されている他の機構には、脂質異常および高脂血症(これらは、循環障害、副軟骨血管の閉塞、骨細胞の壊死および骨粗鬆症に至る)に起因するものが挙げられる。ロバスタチンおよびベザフィブレートの公知の活性に照らして、この文献の著者は、骨損失に対する効果は、脂質レベルを低下させかつ大腿ヘッド内の循環の障害を克服するそれらの性能のせいであると考えている。Wangらには、ロバスタチンが直接、骨の形成を高めるとの示唆はない。
【0012】
Cui, Q.らによる「LovastatinPrevents Steroid-Induced Adipogenesis and Osteoporosis」の表題の要約は、the Reports ofthe ASBMR 18th Annual Meeting (1996年9月) J. Bone Mineral Res. (1996) 11(S1):S510に載っていた。この要約は、ロバスタチンが、ニワトリの骨髄ストローマからクローン化した骨芽前駆細胞を培養物中にてデキサメタゾンで処理したときに蓄積されるトリグリセリド小胞を減らすことを報告している。ロバスタチンは、特定のmRNAの発現を減少させ、そして細胞が骨形成表現型をデキサメタゾン処理後に維持するのを可能にすると報告されている。さらに、デキサメタゾン処理の結果としての大腿ヘッドにおける骨損失を被ったニワトリは、ロバスタチンでの治療により、改善した。再度、ステロイド処置なしで、ロバスタチンが骨の形成を直接高めるとの示唆はない。
【0013】
いずれにしても、これらのデータは、デキサメタゾンおよび他の誘発剤(例えば、BMP)が骨芽細胞の分化を誘発しオステオカルシンmRNAを刺激するという報告とは矛盾する(Bellows, C.G.,ら、DevelopBiol (1990) 140:132-38;Rickard, D.J.,ら、Develop Biol (1994) 161:218-28)。さらに、Ducy,P.ら、Nature (1996) 382:448-52は、最近、オステオカルシン欠乏マウスが、骨の吸収に悪影響を及ぼすことなく、骨の形成の増加および改良された機能特性の骨により特徴付けられる表現型を示すことを報告した。Ducyらは、それらのデータにより、オステオカルシンアンタゴニストが、(骨粗鬆症の予防または処置のために)、エステロゲン代替療法と組み合わせて、治療に使用できることを示唆していると述べている。
【特許文献1】米国特許第5,280,040号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、骨の欠乏状態の現在既知の処置と関連した欠点なしに、骨の形成を刺激するのに有用な化合物を開示する。本発明の化合物が、吸収を単に阻害したり骨塊を安定化するのとは反対に、骨の成長を積極的に刺激する能力は、重要な利点である。
【0015】
発明の開示
本発明は、通常の医薬品として投与できる化合物を提供し、これは、骨の成長を直接高める代謝効果を有する。本発明の化合物は、それらが骨の成長を刺激する内生的な因子に付随した調節要素を活性化する性能に関して、アッセイを用いて同定できる。それゆえ、本発明は、骨格(骨)組織の成長を刺激する方法および組成物に関し、この方法および組成物は、活性成分の少なくとも1種として、次式の化合物を使用する:
【0016】
【化13】

ここで、式(1)および(2)のそれぞれのXは、2〜6Cの置換されたまたは非置換のアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンリンカーを表わす;
Yは、1個またはそれ以上の炭素環式または複素環式の環を表わし、ここで、Yが2個またはそれ以上の環を含有するとき、該環は、必要に応じて縮合されていてもよい;そして
R’は、カチオン、H、または1〜6Cの置換または非置換アルキル基を表わす;そして
該点線は、任意のπ結合を表わす。
【0017】
それゆえ、本発明は、記述の化合物を用いて骨の形成を直接刺激することにより骨の障害を処置する方法、およびこの用途のための薬学的組成物に関する。
【0018】
本発明は、さらに以下を提供する。
(項目1)脊椎動物における骨形成を高める方法であって、該方法は、このような処置を必要とする脊椎動物被験者に、一定量の次式の化合物を投与する工程を包含する:
【0019】
【化1】

ここで、式(1)および(2)のそれぞれのXは、2〜6Cの置換または非置換のアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンリンカーを表わす;
Yは、1個またはそれ以上の炭素環式または複素環式の環を表わし、ここで、Yが2個またはそれ以上の環を含有するとき、該環は、縮合されていてもよい;そして
R’は、カチオン、H、または1〜6Cの置換または非置換アルキル基を表わす;そして
点線は、任意のπ結合を表わす、
ここで、骨形成が達成される。
(項目2)前記化合物が、次式である、項目1に記載の方法:
【0020】
【化2】

ここで、XおよびYは、項目1で定義したとおりである。
(項目3)Xが、置換されていない、項目1に記載の方法。
(項目4)Xが、-CHCH-;-CH=CH-;および-C≡C-からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)Yが、以下である、項目1に記載の方法:
【0021】
【化3】

ここで、Rは、置換または非置換アルキルである;
各Rは、独立して、非干渉置換基である;
Rは、H、ヒドロキシまたはアルコキシ(1〜6C)である;
各mは、独立して、0〜6の整数であり、ここで、各Rは、2〜7の任意の位置に存在し得る;そして
pは、前記点線により示される任意のπ結合の位置に依存して、0または1である。
(項目6)各mが、独立して、1または2であり、各Rが、2、5または6の位置に存在する、項目5に記載の方法。
(項目7)Xが、-CHCH-;-CH=CH-;および-C≡C-からなる群から選択される、項目6に記載の方法。
(項目8)Yが、次式である、項目7に記載の方法:
【0022】
【化4】

(項目9)Yが、次式である、項目8に記載の方法:
【0023】
【化5】

(項目10)Yが、以下である、項目1に記載の方法:
【0024】
【化6】

ここで、各nは、0または1であるが、式(5)および式(9)の少なくとも1個のnは、1でなければならない;
Zは、その環外置換基に関連したnが1のとき、CHまたはNであり、そして該nが0のとき、SまたはOである;
各Kは、置換または非置換で芳香族または非芳香族の炭素環式または複素環式の環系を含み、該系は、必要に応じて、1〜2Cのリンカーによって、式(5)〜(9)で示した結合位置から間隔を置いて配置してもよい;
各RおよびRは、独立して、H、または直鎖または分枝鎖アルキルである。
(項目11)前記化合物が、ロバスタチン、メバスタチン(mevastatin)、シンバスタチンもしくはフルバスタチン(fluvastatin)またはそれらの加水分解形態であるか、あるいはプラバスタチンである、項目1に記載の方法。
(項目12)脊椎動物における骨形成を高める単位投薬形態の薬学的組成物であって、該組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤、および骨形成を促進するのに有効な量の次式の化合物を包含する:
【0025】
【化7】

ここで、式(1)および(2)のそれぞれのXは、2〜6Cの置換または非置換のアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンリンカーを表わす;
Yは、1個またはそれ以上の炭素環式または複素環式の環を表わし、ここで、Yが2個またはそれ以上の環を含有するとき、該環は、縮合されていてもよい;そして
R’は、カチオン、H、または1〜6Cの置換もしくは非置換アルキル基を表わす;そして
点線は、任意のπ結合を表わす、
ここで、骨形成が達成される。
(項目13)前記化合物が、次式である、項目12に記載の組成物:
【0026】
【化8】

ここで、XおよびYは、項目12で定義したとおりである。
(項目14)Xが、置換されていない、項目12に記載の組成物。
(項目15)Xが、-CHCH-;-CH=CH-;および-C≡C-からなる群から選択される、項目14に記載の組成物。
(項目16)Yが、以下である、項目12に記載の組成物:
【0027】
【化9】

ここで、Rは、置換または非置換アルキルである;
各Rは、独立して、非干渉有機置換基である;
Rは、H、ヒドロキシまたはアルコキシ(1〜6C)である;
各mは、独立して、0〜6の整数であり、ここで、各Rは、2〜7の任意の位置に存在し得る;そして
pは、前記点線により示される任意のπ結合の位置に依存して、0または1である。
(項目17)各mが、独立して、1または2であり、各Rが、2、5または6の位置に存在する、項目16に記載の組成物。
(項目18)Xが、-CHCH-;-CH=CH-;および-C≡C-からなる群から選択される、項目17に記載の組成物。
(項目19)Yが、次式である、項目18に記載の組成物:
【0028】
【化10】

(項目20)Yが、次式である、項目19に記載の組成物:
【0029】
【化11】

(項目21)Yが、以下である、項目12に記載の組成物:
【0030】
【化12】

ここで、各nは、0または1であるが、式(5)および式(9)の少なくとも1個のnは、1でなければならない;
Zは、その環外置換基に関連したnが1のとき、CHまたはNであり、そして該nが0のとき、SまたはOである;
各Kは、置換または非置換で芳香族または非芳香族の炭素環式または複素環式の環系を含み、該系は、必要に応じて、1〜2Cのリンカーによって、式(5)〜(9)で示した結合位置から間隔を置いて配置してもよい;
各RおよびRは、独立して、H、または直鎖もしくは分枝鎖アルキルである。
(項目22)前記化合物が、ロバスタチン、メバスタチン、シンバスタチンまたはフルバスタチンまたはそれらの加水分解形態であるか、またはプラバスタチンである、項目12に記載の組成物。
(項目23)前記被験者が、骨粗鬆症、骨折または骨欠乏、一次または二次上皮小体機能亢進症、歯周疾患または欠陥、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患、形成外科手術後、人工関節手術後および歯科移植後からなる群から選択した病態により特徴付けられる、項目1に記載の方法。
(項目24)さらに、前記被験者に、骨の成長を促進するかまたは骨の吸収を阻害する1種またはそれ以上の試薬を投与する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目25)前記試薬が、骨形態発生因子、抗吸収剤、骨原性因子、軟骨誘導形態形成タンパク質、成長ホルモンおよび分化因子からなる群から選択される、項目24に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
発明の実施の様式
BMPプロモーターと連結したレポーター遺伝子(内生的に産生する骨形態形成因子の産生のための代理物)の発現を刺激できることを立証することによる、骨の形成を刺激する化合物のための急速なスループットスクリーニング試験は、1995年6月2日に出願された米国特許出願第08/458,434号に記述されており、その全内容は、本明細書中で参考として援用されている。このアッセイはまた、Ghosh-Choudhery,N.らのEndocrinology (1996) 137:331-39において、(T抗原の発現を駆動するBMP2プロモーターから構成した導入遺伝子を発現するマウス由来)不死化マウス骨芽細胞の研究の一部として、記述されている。この研究では、この固定化細胞は、マウスBMP2プロモーター(-2736/114bp)により駆動されたルシフェラーゼレポーター遺伝子を含むプラスミドで、安定に形質移入され、そして用量依存様式で、組み換えヒトBMP2に応答された。
【0032】
要約すると、骨形態形成タンパク質のプロモーター(具体的には、BMP2またはBMP4)がレポーター遺伝子(典型的には、ルシフェラーゼ)と結合した構成で、永久的または一時的に形質転換した細胞をこのアッセイで使用する。これらの形質転換細胞は、次いで、レポーター遺伝子産物の産生について、評価する。このBMPプロモーターを活性化する化合物は、このレポータータンパク質の産生を駆動し、これは、容易にアッセイされ得る。数千にも及ぶ化合物を、この急速スクリーニング法にかけて、非常に僅かな割合だけが、ビヒクルにより産生したものよりも5倍高いレポーター遺伝子発現レベルを引き出すことができる、BMPプロモーターを活性化する化合物を群に分類し、この場合、各群のメンバーは、不活性化合物には存在しないある種の構造的特性を共有している。これらの活性化合物(「BMPプロモーター活性化合物」または「活性化合物」)は、骨または軟骨の成長を促進するのに有用であり、それゆえ、骨または軟骨の成長を必要としている脊椎動物の処置に有用である。
【0033】
BMPプロモーター活性化合物は、特異性および毒性を試験する種々の他のアッセイで試験できる。例えば、非BMPプロモーターまたは応答エレメントは、レポーター遺伝子に連結されて、適切な宿主細胞に挿入できる。細胞毒性は、例えば、BMPプロモーター-および/または非BMPプロモーター-レポーター遺伝子含有細胞の可視検査または顕微鏡検査により、測定できる。あるいは、これらの細胞による核酸および/またはタンパク質合成がモニターできる。インビボアッセイについては、組織を取り出し、そして可視的または顕微鏡的に試験し、必要に応じて、組織学的な検査を容易にする色素または染料と組み合わせて、検査し得る。インビボアッセイの結果を評価する際には、また、通常の薬化学/動物モデル法を用いて、試験化合物の生体分布を検査するのも有用であり得る。
【0034】
本明細書中で使用する「制限する」または「制限すること」および「処置する」または「処置」とは、交換可能な用語である。これらの用語には、骨欠乏症状の発生の遅延および/または発生すると予想されるこのような症状の重症度の低減が含まれる。これらの用語には、さらに、既存の骨または軟骨の欠乏症状を改善すること、追加の症状を予防すること、症状の基礎となっている代謝上の原因を軽減または予防すること、骨の吸収を防止または反転、および/または骨の成長の助長が含まれる。それゆえ、これらの用語は、軟骨、骨または骨格の欠乏がある脊椎動物被験体、またはこのような欠乏を発生する可能性がある脊椎動物被験体に対して、有益な結果を与えることを表わす。
【0035】
「骨の欠乏」とは、この被験体が、変性されていない場合、望ましい量より少ない骨を示すか、または被験体の骨が、望ましいものよりも無傷度および密着度が少ないような、骨形成と骨吸収との比の不均衡を意味する。骨の欠乏はまた、骨折、手術による介入、または歯科疾患または歯周疾患からも生じ得る。「軟骨の欠損」とは、損傷を受けた軟骨、望ましい量よりも少ない軟骨、または望ましいものよりも無傷度および密着度が少ない軟骨を意味する。
【0036】
本発明の化合物の代表的な使用には、以下が挙げられる:骨の欠損および欠乏の修復(例えば、閉鎖骨折、開放骨折および非癒合性骨折において生じるもの);閉鎖骨折および開放骨折の低減での予防的な使用;形成外科手術における骨の治癒の促進;セメントで固めていない人工関節および歯科インプラントへの骨の内部成長(ingrowth)の刺激;閉経前の女性におけるピーク骨塊の上昇;成長欠乏の処置;歯周疾患および欠損、および他の歯の修復過程の処置;延伸骨形成中の骨形成の増加;および他の骨格障害(例えば、年齢に関連した骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、糖質コルチコイド誘発性骨粗鬆症または不活動性骨粗鬆症および関節炎、または骨形成の刺激から得られる任意の病態)の処置。本発明の化合物はまた、(例えば、癌の処置用の)骨の先天的、外傷誘発性または手術切除の修復、および美容外科手術において、有用であり得る。さらに、本発明の化合物は、軟骨の欠損または障害を制限または処置するのに使用でき、また、創傷の治癒または組織の修復に有用であり得る。
【0037】
骨または軟骨の欠乏または欠損は、脊椎動物被験体において、ある種の構造的および機能的特徴を示す本発明の化合物を投与することにより、処置できる。本発明の組成物は、全身的または局所的に投与できる。全身用途については、本明細書中の化合物は、通常の方法に従って、非経口的(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内または経皮)または経腸的(例えば、経口または直腸)送達のために処方される。静脈内投与は、一連の注射かまたは長期間にわたる連続的な注入により、行うことができる。不連続な投与間隔の注射または他の経路による投与は、週1回から1日1回〜3回に及ぶ間隔で、実施できる。あるいは、本明細書中で開示した化合物は、循環様式(開示化合物の投与;続いて、投与なし;続いて、開示化合物の投与など)で投与し得る。処置は、所望の結果が達成されるまで、継続される。一般に、薬学的処方物は、薬学的に受容可能なビヒクル(例えば、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、水中の5%デキストロース、微量金属を含むホウ酸塩緩衝化生理食塩水など)と組み合わせた本発明の化合物を含有する。処方物は、さらに、1種またはそれ以上の賦形剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質損失を防止するためのアルブミン、潤滑剤、充填剤、安定剤などを含有できる。処方方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、Remington’sPharmaceutical Sciences, Gennaro著、Mack Publishing Co., Eaton PA, 1990で開示されており、その内容は、本明細書中で参考として援用されている。本発明の範囲内で使用するための薬学的組成物は、無菌で非発熱性の液状溶液または懸濁液の形状、コーティングカプセルの形状、坐剤の形状、凍結乾燥粉末の形状、経皮パッチの形状、または当該技術分野で公知の他の形状のいずれかであり得る。局所投与は、傷害または欠損部位での注射、またはその部位での固体キャリアの挿入または付着、または粘稠液の直接の局所塗布などにより、行うことができる。局所投与については、その送達ビヒクルは、好ましくは、成長している骨または軟骨にマトリックスに与え、さらに好ましくは、悪影響なしに被験体に吸収できるビヒクルである。
【0038】
創傷部位への本明細書中の化合物の送達は、放出を制御した組成物(例えば、審査中の米国特許出願第07/871,246号(これは、WIPO公報WO 93/20859号に対応しており、その内容は、本明細書中で参考として援用されている))の使用により、増強され得る。このタイプのフィルムは、人工器官および手術用移植片のためのコーティングとして、特に有用である。これらのフィルムは、例えば、手術用のネジ、ロッド、ピン、プレートなどの外面を包むことができる。このタイプの移植可能器具は、日常的に、形成外科手術で使用される。これらのフィルムはまた、骨充填材料(ヒドロキシアパタイト、無機質除去した骨マトリックスプラグ、コラーゲンマトリックスなど)を被覆するのに使用できる。一般に、本明細書中で記述のフィルムまたは装置は、骨折部位の骨に適用される。適用は、一般に、標準的な手術手順を用いて、この骨への移植またはこの表面への付着により行われる。
【0039】
上で述べた共重合体およびキャリアに加えて、これらの生体分解性フィルムおよびマトリックスは、他の活性または不活性成分を含有し得る。組織の成長または浸潤を促進する試薬(例えば、成長因子)は、特に重要である。この目的のための代表的な成長因子には、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、白血病抑制因子(LIF)、インシュリン様成長因子(IGF)などが挙げられる。骨の成長を促進する試薬、例えば、骨形態形成タンパク質(米国特許第4,761,471号;PCT公報WO90/11366)、骨形成原(osteogenin)(Sampathら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1987) 84:7109-13)およびNaF(Tencerら、J.Biomed. Mat. Res. (1989) 23:571-89))もまた、好ましい。生物分解性フィルムまたはマトリックスには、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリ無水物、骨または皮膚コラーゲン、純粋なタンパク質、細胞外マトリックス成分など、およびそれらの組み合わせが挙げられる。このような生物分解性材料は、所望の機械的特性、美容的特性、または組織またはマトリックス界面特性を与えるために、非生物分解性材料と組み合わせて、使用し得る。
【0040】
本発明の化合物を送達するための代替方法には、ALZET浸透圧ミニポンプ(Alza Corp.、Palo Alto, CA);徐放マトリックス材料(例えば、Wangら(PCT公報WO90/11366)で開示のもの);Baoら(PCT公報WO 92/03125)で開示された電気的に荷電したデキストランビーズ;例えば、Ksanderら、Ann.Surg. (1990) 211(3):288-94で開示されたコラーゲンベースの送達系;Beckら、J. Bone Min. Res. (1991)6(11):1257-65で開示のメチルセルロースゲル系;Edelmanら、Biomaterials (1991) 12:619-26で開示のアルギン酸塩ベースの系などの使用が挙げられる。骨での持続的な局所送達のための当該技術分野で周知の他の方法には、含浸できる多孔性被覆金属人工器官、およびその中に治療用組成物を混合した固形状プラスチックロッドであり得る多孔性被覆金属人工器官が挙げられる。
【0041】
本発明の化合物はまた、骨の吸収を阻害する試薬と共に使用できる。抗吸収剤(例えば、エストロゲン、ビスホスホネートおよびカルシトニン)は、この目的に好ましい。さらに具体的には、本明細書中で開示した化合物は、骨の欠乏状態を矯正するのに充分な時間(例えば、数ヶ月〜数年)にわたって、投与できる。一旦、骨の欠乏状態が矯正されると、脊椎動物には、矯正した骨の状態を維持するために、抗吸収化合物が投与され得る。あるいは、本明細書中で開示した化合物は、循環様式(本明細書中で開示した化合物の投与に続いて、抗吸収化合物の投与に続いて、開示化合物の投与など)で、抗吸収化合物と共に投与し得る。
【0042】
さらなる処方物では、以下で記述のもののような通常の調製物が使用できる。
【0043】
水性懸濁液は、薬理学的に受容可能な賦形剤(これは、懸濁剤(例えば、メチルセルロース);および湿潤剤(例えば、レシチン、リゾレシチンまたは長鎖脂肪アルコール)を含有する)と混合した活性成分を含有できる。上記懸濁液はまた、工業標準に従って、防腐剤、着色剤、芳香剤、甘味剤などを含有できる。
【0044】
局所および局所適用用の調製物は、薬学的に適切なビヒクル(これは、低級脂肪族アルコール、ポリグリコール(例えば、グリセロール)、ポリエチレングリコール、脂肪酸のエステル、オイルおよび脂肪、ならびにシリコーンを含有し得る)中に、エアロゾル噴霧液、ローション、ゲルおよび軟膏を含有する。これらの調製物は、さらに、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸またはトコフェロール)、および防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル)を含有し得る。
【0045】
非経口調製物は、特に無菌のまたは滅菌した製品を含有する。注射可能組成物は、活性化合物および任意の周知の注射可能キャリアを含有して、提供され得る。これらは、その浸透圧を調節するための塩を含有してもよい。
【0046】
望ましいなら、骨原性試薬は、種々の発病状態を治療する際に使用するリポソームを調製する報告された方法のいずれかにより、リポソームに取り込まれ得る。本発明の組成物は、これらの化合物を、マクロファージ、単核細胞、ならびにリポソーム組成物を吸収する他の細胞および組織および器官に向けるために、リポソーム内に含入された上述の化合物を使用し得る。本発明のリポソーム含入化合物は、これらの化合物の低用量の有効な使用を可能にするために、非経口投与により、使用され得る。リガンドもまた、リポソームの特異性にさらに焦点を当てるために、含入してもよい。
【0047】
リポソーム調製の適切な通常方法には、Bangham, A.D.ら、J Mol Biol (1965) 23:238〜252、Olson, F.らBiochimBiophys Acta (1979) 557:9〜23、Szoka, F.らProc Natl Acad Sci USA (1978) 75:4194〜4198,Mayhew, E.ら (1984) 775:169175, Kim, S.ら Biochim Biophys Acta (1983)728:339:348、およびMayerらBiochim Biophys Acta (1986) 858:161〜168により開示されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
これらのリポソームは、通常の合成および天然リン脂質リポソーム物質(卵、植物または動物源のような天然源に由来のリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、またはホスファチジルイノシトールなどを含めて)と組み合わせて、本発明の化合物から製造され得る。また、使用され得る合成リン脂質には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリン、および対応する合成ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロール。コレステロールまたは他のステロール、コレステロールヘミスクシネート、糖脂質、セレブロシド、脂肪酸、ガングリオシド、スフィンゴリピド、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジオレオイル)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド](DOTMA)、および他のカチオン性脂質は、当業者に公知のように、リポソームに含入され得る。リポソーム中で使用されるリン脂質および添加剤の相対量は、望ましい場合、変更してもよい。好ましい範囲は、約60〜90モル%のリン脂質である。コレステロール、コレステロールヘミスクシネート、脂肪酸またはカチオン性脂質は、0〜50モル%の範囲の量で、使用され得る。リポソームの脂質層に含入される本発明の化合物の量は、約0.01〜約50モル%の範囲の脂質濃度で、変更され得る。
【0049】
上記処方のリポソームは、標的に特異的なモノクローナル抗体または他の配位子(リガンド)を含入した、意図された標的に対してさらにより特異的としてもよい。例えば、BMPレセプターに対するモノクローナル抗体は、Leserman,L.らNature (1980) 288:602〜604の方法により、リポソームに含入されたホスファチジルエタノールアミン(PE)との結合により、リポソームに含入させてもよい。
【0050】
開示化合物の獣医学的な用途もまた、考慮される。このような用途には、ペット、家畜およびサラブレッドの馬における骨または軟骨の欠損または欠陥の処置が挙げられる。
【0051】
本発明の化合物は、インビトロまたはエクスビボ(ex vivo)のいずれかにて、骨形成細胞またはそれらの前駆体の成長を刺激するため、または骨形成細胞前駆体の分化を誘発するために、使用され得る。本明細書中で記述の化合物はまた、骨形成細胞を、このような細胞を必要とする環境に引きつけるために、標的組織または器官の環境を改変し得る。本明細書中で使用する用語「前駆体細胞」とは、分化経路に関与している細胞であるが、一般に、マーカー(marker)を発現しないかまたは完全に分化した成熟細胞として機能しない細胞を意味する。本明細書中で使用する「間葉細胞」または「間葉幹細胞」との用語は、何回も分裂し得る多能性先祖細胞であって、その子孫が、骨格組織(軟骨、骨、腱、靱帯、骨髄間質および結合組織を含めて)を生じるものを意味する(A.Caplan J. Orthop. Res. (1991) 9:641-50を参照)。本明細書中で使用する「骨原細胞」との用語は、骨芽細胞および骨芽細胞前駆体細胞を包含する。さらに具体的には、開示化合物は、骨髄間葉細胞を含む細胞集団を刺激して、それにより、その細胞集団内の骨原細胞数を増やすのに有用である。好ましい方法では、開示化合物による刺激の前後のいずれかにて、細胞集団から、造血細胞が取り除かれる。このような方法の実施によって、骨原細胞は拡大され得る。拡大した骨原細胞は、それらを必要とする脊椎動物被験者に、注入(または再注入)され得る。例えば、被験者自体の間葉幹細胞は、エクスビボで、本発明の化合物に曝され得、そして得られた骨原細胞は、被験者内の所望の部位に注入または指示され得、この場所で、免疫拒絶なしに、さらなる骨原細胞の増殖および/または分化が起こり得る。あるいは、開示化合物に曝された細胞集団は、不朽化した(immortalized)ヒト胎児骨芽細胞または骨原細胞であり得る。このような細胞を脊椎動物被験者に注入または移植するなら、移植および骨または軟骨の修復を高めるために、これらの非自己細胞を「免疫保護する」か、またはそのレシピエントを(好ましくは、局所的に)免疫抑制するのが、有利であり得る。
【0052】
本発明の範囲内では、組成物の「有効量」とは、統計的に有意な効果を生じる量である。例えば、治療用途のための「有効量」とは、骨折修復における治癒速度の臨床的に有意な上昇;骨粗鬆症における骨損失の逆転(reversal);軟骨の欠陥または障害の逆転;骨粗鬆症の開始の防止または遅延;骨折の偽関節およびかく乱骨形成における骨形成の刺激および/または増強;補てつ器具への骨成長の増加および/または促進;ならびに歯科欠陥の修復を提供するのに必要な本明細書中の活性化合物を含有する組成物の量である。このような有効量は、日常的な最適化技術を用いて決定される(これは、処置すべき特定の状態、患者の状態、投与経路、処方、および医師の判断、および当業者に明らかな他の要因に依存する)。(例えば、骨形成の増加が望ましい骨粗鬆症では)、本発明の化合物に必要な投薬量は、処置群および対照群の間の骨質量の統計的に有意な差として、明らかにされる。骨質量の差は、例えば、治療群での骨質量の5〜20%またはそれ以上の増加として、見られ得る。治癒における臨床的に有意に増加する他の測定には、例えば、破断強度および張力、破断強度および捻れ、4点曲げ、骨生検での上昇した結合性および当業者に周知の他の生物機械学的な試験を挙げ得る。処置レジメンの一般的な指針は、問題の疾患のある動物モデルにおいて行った実験から、得られる。
【0053】
本発明の化合物の投薬量は、処置を必要とする程度および重症度、投与される化合物の活性、被験者の一般的な健康状態、および当業者に周知な他の要件に従って、変わる。一般に、それらは、1日ベースで、約0.1 mg/kg〜1000 mg/kg、さらに好ましくは、約1mg/kg〜約200 mg/kgの経口用量として、典型的なヒトに投与され得る。その非経口用量は、適切には、経口用量の20〜100%である。大ていの場合には、(容易性、患者の受容能力などの理由から)、経口投与が好ましいとされ得るものの、選択した化合物および選択した欠陥または疾患に対して、別の投与方法が適切であり得る。比較アッセイでは、正の対照(ポジティブコントロール)化合物または他の骨活性試験化合物は、皮下投与され得るのに対して、スタチン(statin)型試験化合物は、経口投与される。
【0054】
スクリーニングアッセイ
本発明の方法で使用する化合物の骨形成活性は、上記のように、インビトロスクリーニング技術(例えば、骨形態発生タンパク質関連プロモーターにカップリングしたレポーター遺伝子の転写の評価)を用いて、または以下のような代替アッセイにて、証明され得る:
新生児マウスの頭蓋冠アッセイのための技術(インビトロ)
骨吸収または骨形成のためのアッセイは、Gowen M.およびMundy G. J. Immunol (1986) 136:2478-82に記述のものと類似している。要約すると、出生の4日後、ICRSwiss white mouseの子供の前部および頭頂骨を、顕微解剖により取り出し、矢状縫合に沿って分割する。吸収についてのアッセイでは、骨を、BGJb培地(IrvineScientific, Santa Ana, CA)+0.02%(またはそれより低い濃度の)β-メチルシクロデキストリン中でインキュベートするが、ここで、培地はまた、試験物質または対照物質を含有する。骨の形成を評価するためにアッセイを行うときに使用する培地は、Fittonand Jackson Modified BGJ培地(Sigma)であり、これは、6μg/mlのインシュリン、6μg/mlのトランスフェリン、6ng/mlの亜セレン酸(selenousacid)、それぞれ、1.25 mMおよび3.0 mMのカルシウム濃度およびリン酸塩濃度で補充され、2日ごとに、100μg/mlまでの濃度のアスコルビン酸を添加する。インキュベーションは、5%COおよび95%空気の加湿雰囲気中にて、37℃で、96時間行う。
【0055】
これに続いて、インキュベーション媒体から、骨を取り出し、そして10%緩衝化ホルマリン中で24〜48時間固定し、14% EDTA中で1週間脱石灰し、等級化された(graded)アルコールで処理し、そしてパラフィンワックス中に包埋する。頭蓋冠の3μm切片を調製する。骨形成または骨吸収の組織形態計測的な評価のために、代表的な切片を選択する。骨の変化は、200μmの間隔を開けて切断された切片で測定する。骨芽細胞および破骨細胞は、それらの特有の形態により、確認される。
【0056】
他の補助的なアッセイは、試験化合物の非BMPプロモーター媒介効果を決定するための対照として、使用され得る。例えば、マイトジェン活性は、プロモーターとしての血清応答要素(SRE)およびルシフェラーゼレポーター遺伝子を特徴とするスクリーニングアッセイを用いて、測定され得る。さらに具体的には、これらのスクリーニングアッセイは、SRE媒介経路(例えば、タンパク質キナーゼC経路)を通る情報伝達を検出し得る。例えば、骨芽細胞の活性化剤であるSRE-ルシフェラーゼスクリーンおよびインシュリン擬態SRE-ルシフェラーゼスクリーンは、この目的に有用である。同様に、cAMP応答要素(CRE)媒介経路の試験化合物刺激もまた、アッセイされ得る。例えば、PTHおよびカルシトニン(2骨活性剤)のためのレセプターでトランスフェクトされた細胞は、高いcAMPレベルを検出するためのCRE-ルシフェラーゼスクリーンで使用され得る。それゆえ、試験化合物のBMPプロモーター特異性は、これらのタイプの補助アッセイの使用により、検査され得る。
【0057】
マウス頭蓋冠の骨成長についての化合物の効果のインビボアッセイ
雄性ICRSwiss white mouse(4〜6週齢、体重13〜26 gm)を使用し、1群あたり4〜5匹のマウスを用いる。頭蓋冠骨成長アッセイは、PCT出願WO95/24211で記述のように実施し、その内容は、本明細書中で参考として援用される。要約すると、試験化合物または適切な対照ビヒクルを、正常なマウスの右頭蓋冠上の皮下組織に注射する。典型的には、対照ビヒクルは、この化合物を可溶化したビヒクルであり、そして、5%DMSO含有PBSまたはTween(2μl/10 ml)含有PBSである。動物を14日目で屠殺し、骨の成長を組織形態計測により測定する。定量化のための骨試料は、隣接組織からクリーニングし、10%緩衝化ホルマリン中で24〜48時間固定し、14%EDTA中で1〜3週間脱石灰し、等級化されたアルコールで処理し、そしてパラフィンワックスに包埋する。頭蓋冠の3〜5μm切片を調製し、そして骨形成および骨吸収への組織形態計測的な評価のために、代表的な切片を選択する。切片を、カメラルシダーアタッチメントを用いて測定し、顕微鏡画像をデジタル化プレート上に直接追跡する。頭蓋冠の注射および非注射側面の両方にて、4個の隣接1×1mmフィールドで、200μmの間隔を開けて切断した切片で、骨変化を測定する。新しい骨は、その特徴的な織布(woven)構造により同定され、そして骨芽細胞および破骨細胞は、それらの異なる形態により同定される。組織形態計測ソフトウェア(OsteoMeasure,Osteometrix, Inc., Atlanta)を使用してデジタイザ入力を処理して、細胞数を決定し、そして面積または外周を測定する。
【0058】
さらなるインビボアッセイ
主要な化合物は、インビボ投薬アッセイを用いて、無傷の動物中で、さらに試験され得る。プロトタイプの投薬は、皮下投与、腹腔内投与または経口投与により達成され得、そして注射、持続的放出または他の送達技術により、実施され得る。試験化合物の投与のための時間期間は、変更され得る(例えば、28日間および35日間が適切であり得る)。代表的なインビボ経口または皮下投薬アッセイは、以下のようにして、行い得る:
典型的な研究では、70匹の3ヶ月齢メスSprague-Dawleyラットの重量を調節(weight-match)し、そして7個の群に分割する(各群に、10匹の動物)。これには、研究の初期に屠殺したベースライン対照群の動物;ビヒクルのみを投与された対照群;PBS処置対照群;および骨の成長を促進するのが知られている化合物(非タンパク質またはタンパク質)を投与した正対照群が含まれる。残りの3群には、3個の投薬量レベルの試験化合物を投与する。
【0059】
要約すると、テスト化合物、正対照化合物、PBS、またはビヒクルのみを、1日1回、35日間にわたって、皮下投与する。全ての動物に、屠殺の9日前および2日前に、カルセイン(calcein)を注射する(各指定日に、カルセインの2回の注射投与をする)。毎週、体重を測定する。35日サイクルの最後に、動物を計量し、そして眼窩および心臓の穿孔により、採血する。血清カルシウム、リン酸塩、オステオカルシンおよびCBCを測定する。両足の骨(大腿骨および脛骨)および腰椎を取り出し、接着軟組織をクリーニングし、そして末梢定量化コンピューター断層撮影法(pQCT;Ferretti,J. Bone (1995) 17:353S-64S)、二重エネルギーX線吸光光度分析法(DEXA;Laval-Jeantet AらCalcif TissueIntl (1995) 56:14〜18;J. CasezらBone and Mineral (1994) 26:61〜68)および/または組織形態計測法により実施したように、評価のために、70%エタノール中に保存する。骨のリモデリングに対する試験化合物の効果は、そのようにして、評価され得る。
【0060】
主要化合物はまた、インビボ投薬アッセイを用いて、急性(acute)卵巣切除された動物で試験され得る。このようなアッセイには、また、対照として、エストロゲン処置群を挙げ得る。代表的な皮下投薬アッセイは、以下のようにして、実施される:
典型的な研究では、80匹の3ヶ月齢メスSprague-Dawleyラットの重量を調節し、そして8個の群に分割する(各群には、10匹の動物)。これには、研究の初期に屠殺されたベースライン対照群の動物;3個の対照群(偽卵巣切除(偽OVX)+ビヒクルのみ;卵巣切除(OVX)+ビヒクルのみ;PBS処置OVX);および対照OVX群(これには、骨の成長を促進することが知られている化合物が投与される)が含まれる。OVX動物の残りの3群には、テストされる3個の投薬量レベルの化合物を投与する。
【0061】
卵巣切除(OVX)は、過食を誘発するので、全てのOVX動物は、35日間の研究の最初から最後まで、偽OVX動物とペア給餌する。要約すると、テスト化合物、正対照化合物、PBS、またはビヒクルのみを、1日1回、35日間にわたって、経口投与または皮下投与する。あるいは、試験化合物は、35日間移植される移植可能ペレットに処方され得、または例えば、胃管栄養補給により、経口投与してもよい。全ての動物(偽OVX/ビヒクルおよびOVX/ビヒクル群を含めて)に、屠殺する9日前および2日前に、カルセインを腹腔内注射する(各指定日に、カルセインの2回の注射投与をして、新たに形成される骨の適切な標識を確実にする)。毎週、体重を測定する。35日サイクルの最後に、上記のようにして、動物の血液および組織を処理する。
【0062】
主要化合物はまた、慢性OVX動物(処置モデル)で試験され得る。アナボリック剤の有効性を評価するのに使用され得る卵巣切除動物で確立した骨損失の処置のための代表的なプロトコルは、以下のようにして、実施され得る。要約すると、80〜100匹の6ヶ月齢メスSprague-Dawleyラットに、時間0で、偽手術(偽OVX)または卵巣切除(OVX)を行い、10匹のラットを屠殺して、ベースライン対照として供する。実験中、毎週、体重を記録する。骨の欠乏のおよそ6週(42日)またはそれ以上の後、10匹の偽OVXラットおよび10匹のOVXラットを、欠乏期間対照として屠殺するために、ランダムに選択する。残りの動物のうち、10匹の偽OVXラットおよび10匹のOVXラットを、偽薬処置された対照として使用する。残りのOVX動物は、5週間(35日間)にわたって、3〜5用量の試験薬剤で処置される。正対照として、一群のOVXラットは、PTH(このモデルで公知のアナボリック剤)のような試薬で処置され得る(Kimmellら、Endocrinology(1993) 132:1577-84)。骨形成に対する効果を決定するために、以下の操作に従う。大腿骨、脛骨および腰椎1〜4を切除し、そして集める。基部の左および右脛骨は、pQCT測定、海綿質骨ミネラル密度(BMD)(重量測定)および組織学的研究のため使用されるのに対して、各脛骨の中間シャフトは、皮質BMDまたは組織学的研究にかけられる。大腿骨は、生物機械学的な試験の前に、中間シャフトのpQCT走査のために調製される。腰椎(LV)に関して、LV2は、BMD(pQCTもまた、実施され得る)のために処理される;LV3は、脱石灰していない骨の組織学的研究のために調製される;そしてLV4は、機械的な試験のために、処理される。
【0063】
本発明で有用な化合物の性質
本発明の方法および組成物で有用な化合物は、次式である:
【0064】
【化14】

ここで、式(1)および(2)のそれぞれのXは、2〜6Cの置換または非置換のアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンリンカーを表わす;
Yは、1個またはそれ以上の炭素環式または複素環式の環を表わし、ここで、Yが2個またはそれ以上の環を含有するとき、この環は、必要に応じて縮合されていてもよい;そして
R’は、カチオン、H、または1〜6Cの置換または非置換アルキル基を表わす;そして
点線は、任意のπ結合を表わす。もし、R’が、複数の正電荷を有するカチオンを表わすなら、適切な数のアニオンが、それと結合されることが分かる。X上またはR’上で好ましい置換基には、R’がアルキルのとき、ヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、アミノおよびアルキル-またはジアルキルアミノがある。
【0065】
本発明で有用な化合物は、少なくとも1個(一般に、数個)のキラル中心を有する。本発明で有用な化合物には、種々の立体異性体の混合物および立体異性体形態の個々の化合物が挙げられる。π結合を含まない形態での、式(I)の化合物に関する好ましい立体異性体には、次式のものおよび式(2)の開鎖(非ラクトン)形態の対応する立体配置がある:
【0066】
【化15】

(XまたはY以外では)π結合を含まない式(1)または(2)の形態は、それ自体、好ましい。
【0067】
1組の好ましい実施態様のセットでは、Xは、非置換であり、最も好ましくは、Xは、-CHCH-;-CH=CH-;およびおよび-C≡C-からなる群から選択され、特に、-CHCH-である。
【0068】
Yの好ましい実施態様には、環系(例えば、ナフチル、ポリヒドロ-ナフチル、モノヒドロ-またはジヒドロフェニルキノリル、ピリジル、キナゾリル、プテリジル(pteridyl)、ピロリル、オキサゾイルなど)およびそれらの還元形態または部分還元形態が含まれる。
【0069】
置換基Yの好ましい実施態様には、次式のものが挙げられる:
【0070】
【化16】

ここで、Rは、置換または非置換アルキルである;
各Rは、独立して、非干渉置換基である;
Rは、H、ヒドロキシまたはアルコキシ(1〜6C)である;
各mは、独立して、0〜6の整数であり、ここで、各Rは、2〜7の任意の位置に存在し得る;そして
pは、前記点線により示される任意のπ結合の位置に依存して、0または1である。
【0071】
特に好ましい実施態様には、式(4a)〜(4f)のものが挙げられ、ここで、nの上限は、特定の環系に適切な原子価要件に従って、調整される:
【0072】
【化17】

Rは、置換アルキル(ここで、置換基には、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオール、フェニル、フェニルアルキルおよびハロを挙げ得る)であり得、非置換アルキルが好ましい。Rの特に好ましい実施態様には、1〜6Cアルキル(プロピル、第二級ブチル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、1-メチルブチルおよび2-メチルブチルを含めて)がある。プロピルおよび第二級ブチルが特に好ましい。
【0073】
Rに対する好ましい実施態様には、ヒドロキシ、=Oおよび低級アルキル(1〜4C)が挙げられ、特に、メチルおよびヒドロキシメチルが挙げられる。好ましい実施態様では、各nは、独立して、1または2であり、置換基の好ましい位置は、2位置および6位置(式(4)を参照)である。
【0074】
上で指摘したように、本発明の化合物は、個々の立体異性体として、または立体異性体の混合物として供給され得る。好ましい立体異性体には、式(4a)〜(4f)により表わされるものに対する典型的で適切なものとして、式(4g)および(4h)のものがある。
【0075】
【化18】

式(4g)および(4h)の立体配置を有する化合物であって、記した置換基がそのポリヒドロナフチル系の唯一の置換基(必要に応じて、5位置に追加置換基を含む)であるものは、特に好ましい。好ましい実施態様には、各Rが、独立して、OH、CHOH、メチルまたは=Oであるものが挙げられる。これらの好ましい形態におけるRの好ましい実施態様には、プロピルおよび第二級ブチルがある。
【0076】
Yのさらなる好ましい実施態様には、以下が挙げられる:
【0077】
【化19】

ここで、Zは、その環外置換基に関連したnが1のとき、CHまたはNであり、あるいは該nが0のとき、SまたはOである。各Kは、置換または非置換で芳香族または非芳香族の炭素環式または複素環式の環系を含み、この系は、必要に応じて、1〜2Cのリンカー(例えば、-CHOH-;-CO-;および-CHNH-を含めて)によって、式(5)〜(9)で示した結合位置から間隔を置いて配置してもよい。芳香族系が好ましい。式(7)の化合物が特に好ましく、特に、両方のnが1の場合である。
【0078】
各RおよびRは、独立して、H、直鎖または分枝鎖の置換または非置換アルキルであり、ここで、置換基は、好ましくは、ヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、アミノおよびアルキル-またはジアルキルアミノである。各nは、独立して、0または1であるが、しかしながら、式(5)および式(9)の少なくとも1個のnは、1でなければならない。
【0079】
本発明の芳香族環系または非芳香族環系上の置換基は、任意の非干渉(non-interfering)置換基であり得る。一般に、非干渉置換基は、多種多様であり得る。処置される被験者での骨形成に対する本発明の化合物の有益な効果に干渉しない置換基のうちには、アルキル(1〜6C、好ましくは、低級アルキル1〜4C)(それらの直鎖形態または分枝鎖形態を含めて)、アルケニル(2〜6C、好ましくは、2〜4C)、アルキニル(2〜6C、好ましくは、2〜4C)が挙げられ、これらの全ては、直鎖または分枝鎖であり得、追加の置換基(ハロゲン(F、Cl、BrおよびIを含めて);シリルオキシ、OR、SR、NR、OOCR、COOR、NCOR、NCOOR、およびベンゾイル、CF、OCF、SCF、N(CF)、CN、SO、SORおよびSORであって、Rは、(1〜6C)アルキルまたはHである)を含有していてもよい。2個の置換基が、芳香族系または非芳香族系において、隣接位置にある場合、それらは、環を形成し得る。さらに、芳香族系または非芳香族系に縮合していない環は、この可能性を与えるのに充分な炭素原子およびヘテロ原子を含有する置換基に含まれ得る。
【0080】
好ましい非干渉置換基には、1〜6Cのヒドロカルビル基(飽和または不飽和で直鎖または分枝ヒドロカルビルならびに環系を含むヒドロカルビル基を含めて);ハロ基、アルコキシ、ヒドロキシ、CN、CFおよびCOOR、アミノ、モノアルキル-およびジアルキルアミノ(ここで、アルキルは、1〜6Cである)が挙げられる。
【0081】
Kの記号により表わされる環上の置換基の数は、典型的には、利用可能な位置に依存して、0〜4または0〜5であり得るものの、好ましい実施態様は、単一環上の置換基数が、0、1または2であるものを含み、好ましくは、0または1であるものを含む。
【0082】
本発明の方法および組成物で有用な化合物は、それらが抗高コレステロール血症剤として挙動する当該技術分野で公知の種類の化合物と似ているので、当該技術分野で公知の方法により合成され得る。これらのうちの典型的なものには、Mevacor(登録商標)としてMerckにより販売されているロバスタチンがある。ロバスタチンおよびそれらの種々のアナログの合成は、米国特許第4,963,538号で述べられており、その内容は、本明細書中で参考として援用されている。さらに、ロバスタチンおよび類似化合物(例えば、コンパクチン(メバスタチン)、シンバスタチンおよびパラバスタチン)の合成方法は、米国特許第5,059,696号;第4,873,345号;第4,866,186号;第4,894,466号;第4,894,465号;第4,855,456号;および第5,393,893号に述べられており、これらの全ての内容は、本明細書中で参考として援用されている。これらの化合物の一部はまた、米国特許第5,362,638号;第5,409,820号;第4,965,200号;および第5,409,820号(これらの全ての内容もまた、本明細書中で参考として援用されている)で記述のように、微生物により製造される。これらの文献にて最終生成物として記述されている化合物は、本発明の方法で有用である。
【0083】
米国特許第5,316,765号(その内容は、本明細書中で参考として援用されている)では、別のアナログ(Yの芳香族実施態様を含有するものを含む)が記述されている。例えば、フルバスタチンの調製は、PCT出願WO84/02131に記述されている。他の化合物は、例えば、Roth,B.D.ら、J Med Chem (1991) 34:357〜366;Krause, R.ら、J Drug Dev (1990) 3(Suppl. 1):255〜257;Karanewsky,D.S.ら、J Med Chem (1990) 33:2952〜2956に記述されている。
【0084】
図1で示すロバスタチン(59-0326)、メバスタチン(59-0327)、シンバスタチン(59-0328)およびフルバスタチン(59-0342)は、特に好ましい。
【0085】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、本発明を限定する意図はない。
【実施例】
【0086】
実施例1
ハイスループットスクリーニング
米国特許出願第08/458,434号(1995年6月2日に出願され、本明細書中で参考として援用される)で記載されたアッセイ系にて、何千もの化合物を試験した。本発明の代表的な化合物は、ポジティブ応答を与えたのに対して、(無関係の)化合物の大部分は不活性である。このスクリーニングでは、その標準ポジティブコントロールは、次式の化合物59-0008(これはまた、「OS8」で表わされる)であり、これは以下の式を有する:
【0087】
【化20】

さらに詳細には、2T3-BMP-2-LUC細胞(上で参照したGhosh-Choudhuryら、Endocrinology(1996) 137:331-39で記述の安定に形質転換した骨芽細胞株)を使用した。細胞を、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1%グルタミンと共にα-MEM,10% FCS(「植え付け培地」)を用いて培養し、そして週1回、1:5に分割した。アッセイ用に、細胞を、4% FCSを含む植え付け培地に再懸濁し、5×10細胞(50μl中)/ウェルの濃度でマイクロタイタープレートにプレートし、そして5%CO中、37℃で24時間インキュベートした。アッセイを開始するために、DMSO中の試験化合物またはコントロール50μlを2×の濃度で、各ウェルに添加し、その結果最終容量は100μlであった。最終血清濃度は、2%FCSであり、そして最終DMSO濃度は、1%であった。ポジティブコントロールとして、化合物59-0008(10μM)を使用した。
【0088】
処理した細胞を、37℃および5%COで、24時間インキュベートした。次いで培地を取り除き、細胞をPBSで3回リンスした。過剰のPBSを除去した後、各ウェルに、1×細胞培養溶解試薬(Promega#E153A)25μlを添加し、そして少なくとも10分間インキュベートした。必要に応じて、プレート/試料を、この時点で凍結し得た。各ウェルに、50μlのルシフェラーゼ基質(Promega#E152A;Promegaルシフェラーゼアッセイ基質7mgあたり、Promegaルシフェラーゼアッセイ緩衝液10 ml)を添加した。自動化96ウェル照度計で、発光を測定し、1ウェルあたりのルシフェラーゼ活性のピコグラムまたはタンパク質1マイクログラムあたりのルシフェラーゼ活性のピコグラムのいずれかとして、表わした。
【0089】
このアッセイでは、化合物59-0008(3-フェニルアゾ-1H-4,1,2-ベンゾチアジアジン)は、およそ3〜10μMの濃度で最大であるパターンの反応性を示す。従って、他の試験化合物を種々の濃度で評価し、その結果を、10μMでの59-0008について得た結果(この値は、100に基準化される)と比較し得る。あるいは、試験した化合物の反応性は、化合物を含まないネガティブコントロールと直接比較し得る。
【0090】
種々のスタチン化合物(OS114または59-0328と命名したシンバスタチン、加水分解したシンバスタチン、59-0327と命名したメバスタチン、59-0326と命名したロバスタチン、59-0342と命名したフルバスタチン、および59-0329と命名したプラバスタチン)を、インビトロBMP-プロモーターベース(「ABA」と命名する)アッセイで(上記のように)試験し、いくつかの実験ではまた、コントロール骨芽細胞/血清応答配列(OBSRE)細胞ベースアッセイおよび/またはコントロールグルカゴンアッセイで試験した。ネガティブコントロールOBSREアッセイでは、マウス骨芽細胞株(例えば、血清応答配列(SRE)-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するCCC-4)を使用する(WO96/07733を参照)。ネガティブコントロールグルカゴンアッセイでは、CRE-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するグルカゴンレセプター陽性BHK細胞を使用する(米国特許第5,698,672号を参照)。
【0091】
ABAアッセイの3個の別々の判定結果を、以下に示す。殆どのスタチン(すなわち、シンバスタチン、加水分解したシンバスタチン、メバスタチン、ロバスタチンおよびフルバスタチン)は、ABAアッセイでは、用量依存性の刺激性効果を示したが、コントロールアッセイでは、このような効果を示さなかった。1つの実験では、シンバスタチンは、非スタチンであるABA刺激性化合物59-0008と比較して、ABAアッセイにおいて20倍を越える誘導を示した。
【0092】
【化21】

【0093】
【化22】

【0094】
【化23】

【0095】
【化24】

試験したプラバスタチンは、用量依存性の刺激性効果を示さなかったが、この化合物はプラバスタチン製剤から抽出したので、不充分および/または不活性な化合物を試験した可能性がある。
【0096】
実施例2
インビボ頭蓋冠骨成長データ
先述の手順(「マウス頭蓋冠骨成長に対する化合物の効果のインビボアッセイ」(上記)を参照)に従って、ロバスタチンおよびシンバスタチンをインビボでアッセイした。シンバスタチンは、骨芽細胞数を1.5倍増加させた。
【0097】
1つの実験では、ビヒクルコントロールであるbFGFおよび種々の用量のシンバスタチン(59-0328)およびロバスタチン(59-0326と命名した)を、インビボ頭蓋冠骨成長アッセイで試験した。結果を、以下で示すように、全骨面積(およびビヒクルコントロールに対する面積の%増加)の測定値として、報告する。
【0098】
【化25】

シンバスタチンおよびロバスタチンの両方とも、全骨面積の用量依存性の増加を刺激した。10 mg/kg/日では、これらのスタチンの骨刺激性効果は、同じアッセイで12.5μg/kg/日のbFGFを試験した場合に観察された骨成長効果に匹敵していた。
【0099】
実施例3
インビトロ骨形成
選択した化合物および適当なコントロールを、骨形成活性についてインビトロ(エクスビボ)でアッセイした(「新生仔マウスの頭蓋冠アッセイ(インビトロ)のための技術で上記)。エクスビボ頭蓋冠の組織形態計測的評価を、説明書に従って、OsteoMetrics骨形態計測プログラムを用いて行った。測定は、標準的せん端計数接眼グラティキュール(standardpoint counting eyepiece graticule)を備えた10倍または20倍のいずれかの対物レンズを用いて、判定した。
【0100】
新しい骨形成を、各骨(1群あたり4個の骨)の3個の代表的な部分の1領域で形成された新しい骨面積を測定することにより、(10×の対物レンズを用いて)決定した。各測定は、縫合の末端から1/2の距離の領域で行った。全骨面積および古い骨の面積の両方を測定した。データを、新しい骨の面積(mm)として表わした。
【0101】
骨芽細胞の数は、せん端計数により決定した。骨の両側の骨表面に沿って整列している骨芽細胞の数は、20×の対物レンズを用いて、1領域で計数した。データを、骨芽細胞数/骨表面1mmとして表わした。
【0102】
上記のようにして、ロバスタチンおよびシンバスタチンおよびコントロール化合物/因子bFGFおよびBMP-2、およびビヒクルコントロールを、インビトロ骨形成アッセイで試験し、そして頭蓋冠を組織形態計測的に分析した。数組の実験データを以下に提示するが、ビヒクルコントロール値に対する増加%は、括弧で示している。
【0103】
【化26】

これらのデータは、ロバスタチンおよびシンバスタチンが、骨形成の誘導について、BMP-2およびbFGF(骨成長のための2個の「非常に信頼できる標準」;Wozney J. Molec Reprod Dev(1992) 32:160-67;WO95/24211を参照)と同程度に良好か、またはそれらよりも優れていることを示している。実施例2で示したように、ロバスタチンおよびシンバスタチンを用いたインビボ頭蓋冠研究は、これらのインビトロ観察と合致した骨成長データが得られた。
【0104】
実施例4
再吸収に対する効果
スタチン類およびコントロールを、抗再吸収アッセイで試験した。手短に言うと、妊娠15日のCD-1メスマウスに、45Ca(25μCi/マウス)を注射した。4日齢の仔の頭蓋冠を解体し、半分に切断した。切除した半頭蓋冠を、0.1%BSAにグルタミンおよびPen/Strepを添加したBGJ培地(Sigma)1mlにて、金属グリッド(の表面)に置いた。骨を、5%加湿インキュベーター中にて、37℃で、24時間インキュベートし、次いで、因子(IL-1、PTHおよび/または試験化合物)を加えた培地1mlを含むウェルに移した。処理した骨を、上記条件下にて、さらに72時間インキュベートした。このインキュベート期間後、骨を取り除き、シンチレーションバイアル中の20%TCA中に1.5時間置き、次いで、シンチレーション液で計数した。培地のアリコート(0.4 ml)も計数した。結果を、45Ca放出%として、表わした。
【0105】
このアッセイは、試験化合物/因子またはコントロール化合物/因子をプレインキュベーション培地(すなわち、最初の24時間)に含めることにより、改変され得る。殆どの破骨細胞は、プレインキュベーション期間に続いて、頭蓋冠で形成されるので、破骨細胞形成に影響を及ぼす化合物または因子は、プレインキュベーション期間中に、より大きな効果を有し得る。
【0106】
このアッセイでは、化合物毒性は、骨器官培養物の骨膜領域および骨髄腔内での細胞の明らかな死により示される。これらの細胞は、ピクノーゼ核(pyknoic nuclei)および空胞のある細胞質により特徴付けられ、細胞壊死に特徴的であり、アポトーシスとは異なる。
【0107】
このアッセイを用いて、シンバスタチンを、IL-1誘導骨再吸収を阻害するその能力について試験した。手短に言うと、IL-1(10-10M)を、72時間のインキュベーション期間中に、シンバスタチン(0.1、1または10μM)と同時に添加した。骨再吸収は、45Ca放出を測定することにより決定した。IL-1は、シンバスタチンなしでは、IL-1またはシンバスタチンなしでインキュベーションしたコントロール頭蓋冠よりも約2倍、45Ca放出を増加した。0.1または1μM濃度のシンバスタチンは、IL-1誘導45Ca放出を変化しなかった。しかしながら、10μM濃度のシンバスタチンは、IL-1誘導45Ca放出を減少させた。
【0108】
組織学的評価は、10μMシンバスタチンでは、毒性を示した。先行研究では、45Ca放出の減少と相関した毒性があった。
【0109】
これらのデータは、シンバスタチンが、実施例1の一次スクリーニングアッセイで有効な用量では、骨再吸収を阻害しないことを示唆している。これらの結果は、メバスタチンがインビトロでマウス頭蓋冠での骨再吸収を阻害するというR.G.G. Russellおよび同僚の報告に反する。
【0110】
実施例5
OVXモデルでのスタチン類の全身投与
ロバスタチンおよびシンバスタチンを、急性OVX(予防モデル)および/または慢性(治療モデル)OVXモデル系を用いて、「さらなるインビボアッセイ」で上記のように、インビボで分析した。
【0111】
急性OVX研究にて、ロバスタチンを試験した。手短に言うと、59-0326を、卵巣切除の直後に経口投与した(35、7または1.4mg/kg/日;1日1回で35日間)。この研究の最後に、動物の血液および組織試料をプロセスし、以下のデータを得た。
【0112】
7mg/kg/日の用量を与えられた動物から取り出した試料のpQCT分析から、小柱密度の20%の増加および皮質厚さの14%の増加が明らかとなった。2匹の個体の組織形態計測分析では、近位脛骨での小柱骨容量の110%(p<0.001)または25%(p=0.0503)の増加、および遠位大腿骨での23%の増加(有意ではない)が明らかとなった。遠位大腿骨での骨形成速度は、7mg/kg/日の動物では、40%(p=0.052)上昇した。
【0113】
同様に、ロバスタチンを、卵巣切除直後に経口投与した(0.1、1、5、10、20または40 mg/kg/日;1日1回で35日間)。2匹の個体の組織形態計測的分析試料を、10 mg/kg/日の用量を与えられた動物から取り出した。これらの分析により、近位脛骨での小柱骨容量の38%(有意ではない)または90%(p<0.02)の増加が明らかとなった。近位脛骨での骨形成速度を測定したところ、10mg/kg/日の用量を与えられた動物では、74%(p=0.004)上昇し、または1mg/kg/日の用量を与えられた動物では、37%(p<0.008)上昇した。1mg/kg/日の用量を与えられた動物から得た試料では、近位脛骨での無機質付着速度は、22%上昇した。
【0114】
シンバスタチンもまた、慢性OVX研究で試験した。手短に言うと、シンバスタチンを、卵巣切除後6週間のラットに経口投与した(0.1、1、10または50 mg/kg/日;1日1回で10週間)。10mg/kg/日の用量では、近位脛骨での骨形成速度の114%の上昇(有意ではない)を測定した。50 mg/kg/日の用量では、近位脛骨での骨形成速度の86%の上昇(有意ではない)を測定した。
【0115】
実施例6
試験化合物のスタチン媒介骨折修復効果
シンバスタチンを、ウサギの橈骨における外科的欠陥に対する効果について試験した。これらの欠陥の治癒は、X線、組織像および生物機械的強度により、評価され得る。
【0116】
試験化合物を微小遠心管で秤量し、キャリアとして、1.5%アルギン酸ナトリウム溶液50μlを添加した。この試験試料をボルテックスし、全ての粉体を濡らした。試料を20〜30分間超音波処理し、次いで、再度、ボルテックスした。微小遠心管の頂部にて(この管の蓋またはストッパー側を下に置くことにより)、ディスクを形成した。ストッパーの頂部(すなわち、蓋)のくぼみを用いて、ディスク(直径7.5mm)を形成した。アルギン酸ナトリウム/薬物溶液に、CaCl2溶液(100 mMを100μl)を添加した。試料を5〜10分間放置し、次いで、カルシウム-アルギン酸ディスクを慎重に取り除いた。ディスクを、水を満たしたビーカー中でリンスして、過剰のカルシウム溶液を洗い落とし、ビヒクルとして水を用いて、管内に保管した。全ての溶液および容器は滅菌し、ディスク調製の全ての操作は、無菌条件下での層流フードで実施した。
【0117】
以下のようにして、骨の治癒を試験した。手短に言うと、6ヶ月齢のオスのウサギを得、4つの処理群(n=3匹/群)に分割した。処理群に、以下のいずれかを与えた:1)プラセボ;2)試験化合物(5mg/ディスク);3)試験化合物(10mg/ディスク);または4)自己骨移植片。動物に、ウサギカクテル(1ml/1.5 kg、筋肉内)で麻酔をかけ、右前肢をクリップで留め、無菌手術用に準備し、布で覆った。フェースマスクで送達するイソフルオランを用いて、麻酔を維持した。右の中間橈骨に20mmのギャップ欠陥を形成するために、前肢の側面に切り込みを入れ、揺動骨ノコギリを用いて、骨切断を実施した。シンバスタチンまたはビヒクルを欠陥に適用して、欠陥を層状に閉じた。橈骨が尺骨と対になっており、ウサギが正常な歩行運動をできるように機能するので、外部の副木は必要ではなかった。ディスクを細長片に切断して、骨折に挿入して、全ての欠陥を覆った。0時間および4週間で、放射線学的な評価を実施した。
【0118】
コントロール群では、このビヒクル(プラセボ処理群)が完全な治癒を阻害したので、X線の結果だけを得て、分析した。従って、治療開始後4週間でのX線分析により、処理(両方の用量)群では、骨治療部位での仮骨の形成が明らかとなったが、プラセボ(ビヒクルまたは自己骨移植片)群では、そのような形成はなかった。
【0119】
上述のことから、本発明の特定の実施態様が、例示の目的上、本明細書中で記述されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変をなし得ることが理解される。従って、本発明は、添付の請求の範囲によること以外は、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、本発明のいくつかの化合物の(実施例1のABAスクリーニングアッセイでの)構造および活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−44956(P2008−44956A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243125(P2007−243125)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【分割の表示】特願平10−527020の分割
【原出願日】平成9年12月12日(1997.12.12)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】