骨ホメオスタシスを促進させる方法及び組成物
本方法は、テスト化合物を、骨形成過程に関与するものとして知られている標的遺伝子ポリペプチド又はそのフラグメントに接触させ、化合物ポリペプチド骨形成特性を測定することによって、骨形成促進化合物を同定する方法を開示する。また、前駆体細胞を、骨形成促進有効量の標的遺伝子のアゴニスト又は配列番号:1〜18の発現性核酸を接触させることによって、骨形成を促進させるための方法を開示し、骨ホメオスタシスにおけるアンバランスの治療又は予防のために使用してもよい。さらなる態様は、標的遺伝子アゴニスト又は配列番号:1〜18の発現性核酸を、基質上の骨芽細胞前駆細胞を含む、脊椎動物細胞集団と接触させることによって、インビトロで骨組織を産生する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は骨代謝の分野、特に、ヒト及び他の動物における骨ホメオスタシスのアンバランス又は障害を伴う疾患の予防並びに治療の方法、治療法、及び組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨は、2つの異なる細胞系統:骨芽細胞として知られる骨形成細胞、及び破骨細胞として知られる骨再吸収細胞の間における複雑な相互作用によって、継続的に破壊(再吸収)され、かつ再生される動的組織である。前駆細胞から機能的破骨細胞への分化又は発達に関与する転写因子及び成長因子のカスケードは、かなり確立されている。対照的に、前駆細胞から骨芽細胞の発達に関与する因子については、ほとんど知られていない。間葉前駆体又は間葉幹細胞(MPC)は、破骨細胞及び骨芽細胞の両方の分化の開始点を意味する。インビボでの胚発生の間、骨形成は2つの異なる段階:膜内骨化、及び/又は軟骨内骨化(Nakashima及びde Crombruggheの文献,(2003)から抜粋した図1を参照されたい)を介して起こる。膜内骨化の間、頭蓋骨又は鎖骨などの扁平骨は、間葉細胞の凝集から直接的に形成される。軟骨内骨化の間、四肢骨などの長骨は、中間体が、さらに骨芽細胞及び骨細胞へと分化する内皮細胞、破骨細胞及び間葉細胞による、さらなる発達の間に浸潤される間充織凝集の間に形成される、軟骨中間体から形成される。この後者の骨芽細胞への分化の間、骨アルカリフォスファターゼ活性(BAP)は上方調節される。
【0003】
多くの疾患は、骨再吸収と骨形成との間の微調整されたバランスにおける障害の直接的な結果である。大部分のこれらの疾患は骨疾患であり、多くの患者を苦しめる。典型的な疾患は、悪性の低カルシウム血症、パジェット病、関節リウマチ及び歯周病などの炎症性骨疾患、骨格転移の間に起こる局所性骨形成、クロウゾン症候群、くる病、成熟遅延骨異形成症、濃化異骨症/トゥールーズ−ロートレック病、骨形成不全症、及び骨粗鬆症を含む。単独で最も一般的な骨疾患は、50歳以上の女性5人に1人、及び50歳以上の男性20人に1人を冒す、骨粗鬆症である。
【0004】
(報告された進展)
多くの治療法が開発されており、骨粗鬆症、及び関連する骨疾患に苦しむ患者に提供されている。これらの治療的アプローチは正味の骨形成の増加をもたらし、かつ:ホルモン補充療法(HRT);選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);ビスホスホネート;及びカルシトニンを含む。これらの治療は骨再吸収を減速させるが、失われた骨は十分には補充されないので、該治療は骨折を根絶しない。骨折は、骨形成が十分に増加した場合にのみ阻止される。それゆえ、治療的介入に関する基礎として、骨同化を強化する骨形成経路を同定することに、大きな利益がある。
【0005】
副甲状腺ホルモン(PTH)1-34は、骨粗鬆症治療市場の唯一の骨同化治療である。PTHは、断続的に投与された場合に骨同化作用を示すが、毎日注入する必要があり、また高用量のPTHを用いて治療した動物において腫瘍が形成されたという所見から、腫瘍原性の副作用があり得る。
骨形成タンパク質(BMP)は、骨同化治療学の別の分野であるが、ニッチ市場でのみ承認されてきた。骨形成タンパク質に対する受容体は、骨以外の多くの組織で同定されてきており、またBMP自身は、多種多様な組織において、特定の時間的かつ空間的パターンで発現する。これは、BMPは、全身的に投与された場合、治療剤として有用であると潜在的に限定されるが、骨以外の多くの組織に効力を有し得ることを示唆する。
【0006】
骨形成を促進し、かつ新たな骨同化治療の開発に使用され得る、付加的な標的を同定する明らかな必要性がある。
本発明は、GPCRペプチド及びNHRペプチドを含む、特定の既知のポリペプチドが、骨髄細胞における骨形成分化の上方調節及び/又は誘導因子であり、またこれらのポリペプチドに対する既知のアゴニストは、骨ホメオスタシスを促進するのに効果的であるという発見に基づいている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、骨ホメオスタシスを促進させる方法及び組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、骨芽細胞前駆細胞を含む、脊椎動物細胞の集団において、骨形成を促進する化合物を同定する方法に関するものであり、化合物を配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに接触させること;及び骨形成に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定することを含む。
本発明はまた、骨ホメオスタシスのアンバランスに苦しむ、又は感受性である対象において、骨形成分化を促進させる方法、及びこれらの方法に有用な組成物に関するものであり、対象に、配列番号:101〜118及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む治療的有効量のアゴニスト、又は配列番号:101〜118からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする発現性核酸を投与することを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、骨組織のインビトロ産生の方法に関するものであり、細胞の層状品を形成させるために、基質上に未分化脊椎動物細胞を適用させること、及び前記未分化細胞が骨芽細胞へと分化するのに十分な時間、配列番号:1〜18からなる群から選択される発現性核酸を含むポリヌクレオチドを前記層状品と接触させ、それによって骨芽細胞を含むマトリクスを産生することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(詳細な説明)
下記の用語は、以下に示す意味を有することが意図され、かつ本発明の記載及び意図される範囲を理解することに有用である。
用語「アゴニスト」は、最も広い意味で、リガンドが結合する受容体を活性化させるリガンドをさす。
用語「キャリアー」は、医薬組成物に、培地、容積、及び/又は使用可能な形態を提供するために、医薬組成物の製剤に使用される非毒性物質を意味する。キャリアーは、賦形剤、安定剤、又は水性pH緩衝液などの、1以上のそのような物質を含んでよい。生理的に許容し得るキャリアーの例は、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸を含む、水性緩衝成分又は固体緩衝成分;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0011】
用語「化合物」は、本発明のアッセイに関連して記載される、「テスト化合物」又は「薬剤候補化合物」の文脈で、本明細書に使用される。そのようなものとして、これらの化合物は、合成、又は天然資源由来の有機化合物若しくは無機化合物を含む。化合物は、比較的低分子量で特徴付けられるポリヌクレオチド、脂質、又はホルモン類似体などの、無機化合物若しくは有機化合物を含む。他の生体高分子有機テスト化合物は、約2〜約40アミノ酸からなるペプチド、及び抗体又は抗体複合体などの、約40〜約500アミノ酸からなる、より大きなポリペプチドを含む。
【0012】
用語「接触」又は「接触させること」は、インビトロシステム又はインビボシステムにかかわらず、少なくとも2つの成分を合わせるすることを意味する。
用語「病状(condition)」又は「疾患」は、あるアミロイドベータタンパク質前駆体プロセシングの欠損からもたらされる、症状の明白な表れ(すなわち、疾患)、又は異常な臨床的指標(例えば、生化学的指標)の顕在化を意味する。あるいは、用語「疾患」は、そのような症状の進展、又は異常な臨床的指標の、遺伝的リスク又は環境的リスク、若しくは傾向をさす。
【0013】
用語「有効量」は、医師、又は他の臨床医によって探求されている対象の生物学的又は医学的反応を誘起させる、薬物若しくは医薬品の量を意味する。特に、骨ホメオスタシスのアンバランスの治療に関して、用語「効果的な骨形成刺激量」は、対象の骨組織において、破骨細胞に対する骨芽細胞の割合の生物学的に重要な増加を引き起こす、効果的な量のLXRアゴニスト又はLXRアゴニストのプロドラッグを意味することを意図する。生物学的に重要な増加は、骨密度、骨強度、又は当業者に既知の診断的徴候の方法によって、間接的に検出可能な増加である。
【0014】
用語「発現」は、内因性発現、及び、例えば形質移入、又は安定的形質導入による過剰発現の両方に関するものである。
用語「GPCR」は、G−タンパク質共役受容体を意味する。好ましいGPCRは、骨形成分化を促進するものとして、出願者によって同定されたそれらの受容体を含む。最も好ましいGPCRは、表1に特定したものであり、その天然存在型転写変異体を含む。
【0015】
用語「リガンド」は、内因性の天然存在型受容体に特異的な、内因性天然存在型分子を意味する。
用語「LXR」は、先行技術で知られているようなこの受容体の全ての亜型、及びそのような亜型をコードする対応遺伝子を含む。具体的には、LXRは、LXR−アルファ及びLXR−ベータを含み、LXRのアゴニストは、LXR−アルファ又はLXR−ベータのアゴニストを含むことは理解すべきである。LXR−アルファは、様々な名前に従属するものをさし、本出願の目的において、LXR−アルファは、LXR−アルファ、LXRa、LXRα、RLD−1、NR1H3、又は登録番号U22662に相同性を有する遺伝子、若しくはそのようなポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質に相同性を有するタンパク質として言及される、任意の遺伝子を意味することは理解すべきである。同様に、LXR−ベータは、LXRb、LXR−ベータ、LXRベータ、NER、NER1、UR、OR−1、R1P15、NR1H2、又は登録番号U07132に相同性を有する遺伝子、若しくはそのようなポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質に相同性を有するタンパク質として言及される、任意の遺伝子を含むことは理解すべきである。「相同性」は、ポリヌクレオチドの「相同」配列が、当業者に理解されるような、厳しいハイブリダイゼーション条件下で、LXR配列にハイブリダイズすることができる程度の配列類似性を意味する。
【0016】
用語「NHR」は、核ホルモン受容体を意味する。
用語「骨形成」は、いくつかの連続的事象からなる過程を意味し、細胞における骨アルカリフォスファターゼの初期の上方調節、及び過程の後期段階で起こるカルシウム沈着(石灰化)を含む。
用語「骨形成分化」は、骨関連細胞の系統における未分化細胞が、カルシウムの沈着、及び骨組織の形成をもたらす同化作用を示すことによってより特殊化されるようになる、任意の過程をさす。
【0017】
用語「医薬として許容し得るキャリアー」は、例えば、以下のような医薬として許容し得るキャリアー:ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、石膏、スクロース、滑石、ステアリン酸、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシアなどの固形キャリアー;及び、植物油、ラッカセイ油、及び滅菌水などの液体を含む。しかしながら、医薬として許容し得るキャリアーのこのリスト化は、限定として解釈すべきではない。
【0018】
用語「医薬として許容し得る塩」は、本発明の化合物の、非毒性の無機酸付加塩及び塩基付加塩、並びに非毒性の有機酸付加塩及び塩基付加塩をさす。これらの塩は、本発明に有用な化合物の最終的単離及び精製の間に、インサイチュウで調製され得る。
用語「ポリヌクレオチド」は、二本鎖DNA、又は一本鎖DNA及び(メッセンジャー)RNA、並びに全ての型のオリゴヌクレオチドをさす。ポリヌクレオチドはまた、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの、修飾骨格を有する核酸を含む。「ポリヌクレオチドの誘導体」は、DNA分子、RNA分子、及びオリゴヌクレオチドを意味し、ポリヌクレオチドのストレッチ又は核酸残基、例えば、ポリヌクレオチドの天然存在型形態の核酸配列に比較して、核酸変異を有し得るポリヌクレオチドを含む。誘導体はさらに、PNA、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチル−ホスホロチオエートなどの修飾骨格を有する核酸、非天然存在型核酸残基、又はメチル−、チオ−、硫酸、ベンゾイル−、フェニル−、アミノ−、プロピル−、クロロ−、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、又はその検出を促進するためのレポーター分子を含む。「ポリヌクレオチドのフラグメント」は、完全な配列としての活性に実質的に類似しているが、必ずしも同一ではないことを示す、連続した核酸残基のストレッチを含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0019】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質、 タンパク質性分子、タンパク質の画分、ペプチド、オリゴペプチド、及び酵素(キナーゼ、プロテアーゼ、GCPRなど)をさす。「ポリペプチドの誘導体」は、ポリペプチドの連続的なアミノ酸残基のストレッチを含み、かつタンパク質の生物活性、例えば、ポリペプチドの天然存在型形態のアミノ酸配列に比較してアミノ酸変異を有するポリペプチドを保持する、それらのペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素をさす。誘導体はさらに、ポリペプチドの天然存在型のアミノ酸配列に比較して、付加的な天然存在型アミノ酸残基、変性アミノ酸残基、グリコシル化アミノ酸残基、アシル化アミノ酸残基、又は非天然存在型アミノ酸残基を含んでよい。誘導体はまた、天然存在型のポリペプチドのアミノ酸配列に比較して1以上の非アミノ酸置換基、例えば、アミノ酸配列に共有的に、又は非共有的に結合したレポーター分子、若しくは他のリガンドを含んでよい。「ポリペプチドのフラグメント」は、連続的なアミノ酸残基のストレッチを含み、かつ完全な配列の機能的活性に実質的に類似するが、必ずしも同一ではないことを示す、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素をさす。
【0020】
用語「溶媒和物」は、1以上の溶媒分子と、本発明に有用な化合物の、物理的な関連性を意味する。この物理的な関連性は、水素結合を含む。場合によっては、溶媒和物は、例えば、1以上の溶媒分子が、結晶性固体の結晶格子中に組み込まれる場合に単離することができる。「溶媒和物」は、液相溶媒和物、及び単離可能な溶媒和物の両方を含む。典型的な溶媒和物は、水和物、エタノラート、及びメタノラートを含む。
【0021】
用語「対象」は、ヒト、及び他の哺乳動物を含む。
用語「治療(treating)」は、用語「治療」を適用する、障害又は病状を緩和させることをさし、そのような障害又は病状の1以上の症状を含む。本明細書で使用するように、関連する用語「治療(treatment)」は、用語「治療(treating)」が先に定義されたように、障害、症状、又は病状を治療する行為をさす。
【0022】
用語「ベクター」もまた、組換えウイルス、又は組換えウイルスをコードする核酸などのウイルスベクターと同様に、プラスミドに関するものである。
用語「脊椎動物細胞」は、トリ、爬虫類、両生類、有袋類、及び哺乳動物種を含む、バーテラ(vertera)構造を有する動物由来の細胞を意味する。好ましい細胞は、哺乳動物種由来のものであり、もっとも好ましい細胞は、ヒトの細胞である。哺乳動物細胞は、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、マウス及びラットなどのブタマウス(porcine murine)、及びウサギを含む。
【0023】
(本発明の方法)
本発明は、骨形成、さらに詳しい表現をすれば、骨芽細胞前駆細胞の骨形成分化を増加させる及び/又は誘導する方法に関するものであり、前記方法は、(1)下記の表1に特定される標的遺伝子によってコードされるポリペプチド、又はそのいくつかが下記の表1Aに特定される機能的フラグメント若しくは誘導体を発現している脊椎動物細胞の集団を;(2)そのような標的遺伝子に対するアゴニストと接触させることを含み;かつ、(3)それによって前記細胞集団の骨形成分化のレベルを増加させることを含む。
【0024】
【表1】
【0025】
(標的遺伝子と骨形成分化の間の関連性を同定するために使用される方法)
先に特定した骨形成分化関連標的遺伝子は、下記の様式で、いわゆる「ノックイン」ライブラリーを使用して同定した。組換えアデノウイルスを使用することによって、本発明者は、細胞に、特定の天然遺伝子及び遺伝子産物をコードするcDNA分子を導入した。細胞の各分離亜集団に導入された各cDNAは、細胞内で、対応遺伝子及び遺伝子産物の発現、並びに活性を誘導した。骨形成分化を誘導、又は増加させるcDNAを同定することによって、対応標的遺伝子に直接的なつながりができる。次に、この標的遺伝子を、大抵10マイクロモラーの結合親和性で、骨形成分化を活性化させる、又は刺激するために使用され得る化合物を同定する方法に使用する。実際に、この選別で使用される標的遺伝子に結合することが知られる化合物は、細胞の骨形成分化を増加させることが見出され、これは、この過程におけるこれらの標的遺伝子の役割を示すものである。この方法を使用して、骨芽細胞分化の過程に関与するような、LXR受容体を含むポリペプチド、及び骨芽細胞分化を促進又は誘導するための、そのアゴニストの用途を同定する。
【0026】
骨芽細胞分化が促進されている細胞の集団は、好ましくは、任意の未分化細胞型である。未分化細胞とは、特殊化の初期段階、すなわち、それらの最終的な機能を未だ有していない多能性細胞であり、また誘導することで、ほぼ全ての与えられた細胞型を形成することができる。特にそのような細胞は、脂肪組織由来の細胞と同様に、血液細胞及び骨髄に存在する細胞である。加えて、さらに間葉前駆細胞へと分化し得る細胞、例えば、胚性幹細胞のような全能性細胞などを、本発明において検討する。
【0027】
ノックインライブラリーで使用されるポリペプチドの好ましいクラスは、核ホルモン受容体(NHR)のクラスにある。背景として、ステロイド、レチノイド、チロイド、及びビタミンD2などの脂溶性ホルモンは、細胞内での遺伝子転写を調節する。例えば、ステロイドホルモンは、細胞内に入り、その相補的受容体に結合し、諸現象の複雑なカスケードを開始させる。ホルモン−受容体複合体は、ホルモン応答配列(HRE)と呼ばれるDNA配列に結合する二量体を形成する。この結合は、適切な遺伝子の転写を活性化させ、又はいくつかの場合においては阻害する。そのようなものとして、NHRの活性もまた、適切なホルモン受容体配列(HRE)を含むプロモーターの制御下で、レポーター遺伝子を用いて測定し得る。表1で特定した、最も好ましいNHRポリペプチドは、NR5A2、NR1H3及びNR1H2、並びにESRRGである。
【0028】
ノックインライブラリーで使用されるポリペプチドの別の好ましいクラスは、G−タンパク質共役受容体(GPCR)であり、ここで前記GPCRの発現及び/又は活性は、二次メッセンジャーである、サイクリックAMP、Ca2+、又はその両方の任意の1つのレベルを定量することによって測定してよい。好ましくは、二次メッセンジャーのレベルは、二次メッセンジャーに応答するプロモーターの制御下で、レポーター遺伝子を用いて測定する。より好ましくは、プロモーターは、サイクリックAMP応答性プロモーター、NF−ΚB応答性プロモーター、又はNF−AT応答性プロモーターである。別の好ましい実施態様において、レポーター遺伝子は:アルカリフォスファターゼ、GFP、eGFP、dGFP、ルシフェラーゼ、及びb−ガラクトシダーゼからなる群から選択される。
【0029】
骨形成分化を測定する方法、及び選別における有用性が見出された方法は、骨形態形成に関与し、かつアルカリフォスファターゼ、タイプ−1コラーゲン、オステオカルシン、及びオステオポンチンなどの分化過程の間に誘導される、特定のタンパク質の発現レベルを決定する。これらのマーカータンパク質の活性レベルは、特異的基質を用いたアッセイを介して測定することができる。例えば、骨アルカリフォスファターゼ(BAP、又は骨AP)活性は、メチルウンベリフェリル7リン酸(MUP)溶液を細胞に添加することによって測定できる。AP活性によるMUP基質の切断によって生じる蛍光を、以下の実施例で概説するような、蛍光プレートリーダーで測定する。標的遺伝子の発現はまた、標的遺伝子に対して指示された特異的抗体を用いるウエスタンブロッティング、又は標的遺伝子に対して指示された特異的抗体を用いるELISAなどの、当業者に知られている方法によって測定可能である。あるいは、ノーザンブロッティング及び定量的リアルタイムPCRのような、当業者に知られている方法を用いて、細胞内におけるmRNA発現レベルを解析することができる。
【0030】
前述のマーカータンパク質の発現又は活性が、アゴニスト化合物とのインキュベーションで誘導されるならば、骨形成分化は促進される。タンパク質発現レベルの誘導は、数パーセントの増加から、2、3、又は4桁より高い振幅で変化し得るが、患者(インビボ)において、少なくとも2倍(又はそれ以上)のタンパク質発現の誘導が、好ましいレベルである。それゆえ、前記発現及び/又は活性の好ましい誘導は、インビボでの100%(又はそれ以上)の誘導に匹敵する。しかしながら、アゴニスト化合物を治療的設定に適用した場合、インビトロでのわずかな減少レベルが、インビボにおいて、さらにより高い誘導をもたらし得るので、インビトロで見出されたレベルは、インビボで見出されたレベルに完全には相関しないことは排除できない。それゆえ、少なくとも20%、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは、骨形成マーカータンパク質の発現又は活性の2倍の誘導を意味する、100%以上のインビトロレベルを誘導することが好ましい。
【0031】
表1にリスト化されている任意の標的ポリペプチド、又はその誘導体、若しくは下記の表1Aに特定されているそのタンパク質ドメインフラグメントなどのそのフラグメントに結合することによって、細胞の骨形成分化に影響を与える化合物のスクリーニングのために、ペプチドライブラリー(LOPAP(商標)、Sigma Aldrich社)、脂質ライブラリー(BioMol社)、合成化合物ライブラリー(LOPAC(商標)、Sigma Aldrich社)、又は天然化合物ライブラリー(Specs、TimTec社)などの化合物ライブラリーを使用することができる。
【0032】
【表1A】
【0033】
テスト化合物とポリペプチドとの結合親和性は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore)の使用などの当業者に知られた方法、標識化合物を用いた飽和結合解析(スキャッチャード及びリンドモ解析)、微分紫外分光光度計、蛍光偏光アッセイ、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPRR)システム、蛍光共鳴エネルギー転移、及び生物発光共鳴エネルギー転移で測定できる。
【0034】
化合物の結合親和性はまた、解離定数(Kd)で、又はIC50若しくはEC50として表現することができる。IC50は、ポリペプチドに対する、別のリガンドの結合の50%阻害に必要とされる化合物の濃度を表す。EC50は、受容体機能を測定する任意のアッセイにおいて、最大効率の50%を得るために必要とされる濃度を表す。解離定数Kdは、ポリペプチドに対して、リガンドがどの程度結合するかの尺度であり、該ポリペプチド上の結合部位の正確に半分を飽和させるために必要とされるリガンド濃度に等しい。高い結合親和性を有する化合物は、低いKd、低いIC50値、及び低いEC50を有する、すなわち100nM〜1pMの範囲内であり;中程度から低親和性結合は、高いKd、高いIC50値、及び高いEC50値、すなわちマイクロモラーの範囲内に合致する。結合親和性は、インビトロでの設定と同様に、インビボでの設定でも測定してよい。
【0035】
細胞の骨形成分化の誘導は、様々な方法で達成されてよい。本発明で有用性が見出された化合物は、ポリペプチドを直接的に標的とし、それらの活性を誘導又は促進し得る。これらの化合物はまた、ポリペプチドをコードする核酸からの該ポリペプチドの転写及び/又は翻訳に関与する、転写/翻訳機構を標的とし得る。さらに、化合物は、その各DNA及び各mRNAを標的とし、それによってポリペプチドの産生を誘導し、その結果それらの活性を導き得る。それゆえ、本発明の方法を使用することによって同定された化合物が、異なるレベルでポリペプチドの発現及び/又は活性を標的とし、最終的に細胞の骨形成分化の変化を導き得ることが理解される。本発明のアゴニスト化合物は、これらの機構の任意の1つに従って機能し得る。
【0036】
(本発明のインビトロでの方法)
本発明の特別な実施態様は、骨組織のインビトロ産生の方法に関連し、基質上に骨芽細胞前駆細胞を適用すること、及び前記細胞を、骨マトリクス組織の産生を刺激するのに十分な時間、表1に特定した標的遺伝子の効果的な骨形成刺激量のアゴニスト、又は配列番号:101〜118のアミノ酸配列をコードする発現性ポリヌクレオチドと接触させることを含む。より具体的には、この方法は、基質上に哺乳動物骨芽細胞前駆細胞を適用すること;表1に特定した標的遺伝子のアゴニスト、又は配列番号:101〜118のアミノ酸配列をコードする発現性ポリヌクレオチドを添加すること;細胞が骨形成分化を起こし、骨マトリクスを産生することができるようにさせることによって、骨組織のインビトロ産生に有用である。
【0037】
このインビトロで産生された骨組織は、耐力移植の提供のために使用することができ、人工股関節、人工膝関節、及び人工指関節などの人工関節、及び人工歯根などの顎顔面移植を含む。また、スペーサーなどの特別な外科的装置、又は骨充填剤用に、及び骨欠損、並びに骨損傷又は骨欠失の強化、除去、又は再構成における使用のために利用可能である。本発明の方法はまた、矯正手術との関連において、すなわち、先の外科的装置を交換しなければならない場合に非常に適する。この方法のさらなる態様は、耐力移植(先に記載したようなマトリクスで好ましく被覆された)と、先に記載したようなマトリクスを含む骨充填組成物を混合することを含む。
【0038】
骨組織のインビトロ産生のための使用に好ましい細胞は、未分化細胞である。適切な未分化細胞は骨髄細胞であり、造血細胞、及び特に間質細胞を含む。骨髄細胞、及び特に間質細胞は、それらの本来の環境から採取した場合に、骨産生過程にきわめて効果的であることが見出される。未分化細胞はしばしば大量に入手でき、成熟骨細胞よりもより都合よく利用でき、回復期により低い罹患率を示す。さらに、未分化細胞は、移植する予定の患者から得ることができる。これらの細胞由来の骨は、患者に自家性であり、それゆえ免疫反応は誘導されない。
【0039】
未分化細胞は、基質に直接適用することができる、言い換えれば、未分化細胞は、基質上に適用する前に、基質不在下で有利に増殖させることができる。後者の様式において、未分化細胞は、未だ大部分が未分化である。その次に、未分化細胞は、本明細書に記載されるような発現性ポリヌクレオチド、又は当業者に知られたアゴニスト、若しくは本明細書に記載したいずれかの方法を使用して同定された、表1の1以上の標的遺伝子に対するアゴニストの、少なくとも1つを添加することによって分化させることができる。
【0040】
骨形成は、誘導処理及び伝導処理の両方による、石灰化の変動によって最適化できる。この方法で、100μmまでの厚さのマトリクスを産生できる。例えば、少なくとも0.5マイクロメートル(μm)、好ましくは1〜100μm、及びより好ましくは10〜50μmの厚さを有するマトリクス層を産生するのに十分な時間、未分化細胞を培養する。短時間でも、未分化細胞を該培地と接触させる。
【0041】
基質上に適用された場合、マトリクスの産生は、その表面積の少なくとも50%の基質を覆う、連続的な層、又は準連続的な層を生じる。未分化細胞が適用され得る基質は、チタン、コバルト/クロム合金、ステンレスなどの金属、リン酸カルシウムなどの生体活性表面、ポリエチレンなどのポリマー表面などであり得る。
別の実施態様において、本発明は、本明細書で開示され、本明細書に記載される任意の1つの方法に従って同定可能な化合物を用いた処理によって、骨芽細胞分化を起こす細胞に関するものである。
【0042】
(治療方法及び医薬組成物)
本発明者は、表1にリスト化したポリペプチドが、骨形成分化過程に関与することを発見した。従って、本発明は、細胞内に存在する特定のポリペプチドと、細胞の骨形成分化との間の因果関係に関連し、そのいくつかは、発現、発生、代謝性骨疾患の実証に密接に関するものである。従って、本発明は、これらのポリペプチド(当業者に知られている多くのポリペプチド)を標的化するために使用し得る化合物のみならず、骨代謝疾患に関連した治療目的用の、そのような化合物の使用に関するものである。これらのポリペプチドに結合することがすでに知られている化合物に対して、本発明でのその使用は、新たな(医学的)使用である。
【0043】
本発明の好ましい態様は、骨ホメオスタシスのアンバランスの治療方法、又は予防方法に関連し、表1に特定した1以上の標的遺伝子の効果的な骨形成刺激量のアゴニスト、又は配列番号:101〜118の1以上のアミノ酸配列をコードする発現性ポリヌクレオチドを、前記アンバランスに苦しむ又は感受性である対象に投与することを含む。そのようなアンバランスは、対象の骨組織中で、破骨細胞に対する骨芽細胞の割合の減少によって特徴付けられる。より詳細には、この減少は、骨塩、具体的にはカルシウムを効率的に再吸収する破骨細胞に対して、骨マトリクスを石灰化させる能力を有する骨芽細胞の割合のうちにある。
【0044】
本方法は、(悪性の)低カルシウム血症、パジェット病、関節リウマチ、歯周病、骨格転移の間に起こる局所性骨形成、クロウゾン症候群、くる病、成熟遅延骨異形成症、濃化異骨症/トゥールーズ−ロートレック病、骨形成不全症、及び/又は骨粗鬆症に苦しむ、若しくは感受性である対象の治療に有用である。
対象患者への標的遺伝子アゴニスト、又は前記標的遺伝子をコードする発現性ポリ核酸の投与は、自己投与、及び他人による投与の両方を含む。患者は、現存の疾患又は病状の治療を必要としていてもよく、又は骨代謝の障害に冒された疾患及び病状の危険性を防止、又は減少させるための予防的治療を望んでいてもよい。対象患者に、経口的に、経皮的に、吸入、注入を介して、経鼻的に、直腸的に、又は徐放性製剤を介して、骨形成分化薬を送達してもよい。
【0045】
配列番号:101〜118の1以上のポリペプチドをコードする発現性ポリ核酸を含む、骨形成分化作用物質を発現するポリヌクレオチドは、好ましくはベクター内に含まれる。ポリ核酸は、操作によって核酸配列の発現を可能にさせるシグナルに関連付けられ、好ましくは、いったんベクターを細胞内に導入すると、アンチセンス核酸を発現する組換えベクター構築物を利用して、細胞内に導入する。アデノウイルスベクターシステム、レトロウイルスベクターシステム、アデノ随伴ウイルスベクターシステム、レンチウイルスベクターシステム、単純ヘルペスベクターシステム、又はセンダイウイルスベクターシステムを含む、様々なウイルスを基盤とするシステムが利用可能であり、その全てを、標的細胞内に、配列番号:101〜118の骨形成分化ポリペプチドのポリヌクレオチド配列を導入し、発現させるために使用してよい。
【0046】
好ましくは、本発明の方法に使用されるウイルスベクターは、複製欠損型である。そのような複製欠損型ベクターは通常、感染細胞内でのウイルスの複製に必要な、少なくとも1つの領域を含む。これらの領域は、当業者に既知の任意の手法で、(全体、又は部分的に)削除する、又は非機能的にさせることができる。これらの手法は、全体の削除、置換、(複製の)必須領域への1以上の塩基の部分的削除又は付加を含む。そのような手法は、遺伝子操作技術の使用、又は突然変異誘発物質を用いた処理によって、インビトロ(単離されたDNA上)、又はインサイチュウで実施してよい。好ましくは、複製欠損型ウイルスは、ウイルス粒子のキャプシド形成に必要な、そのゲノム配列を保持する。
【0047】
好ましい実施態様において、 ウイルス成分はアデノウイルス由来である。好ましくは、媒体は、アデノウイルスキャプシド、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体中に梱包されたアデノウイルスベクターを含む。アデノウイルスの生物学はまた、分子レベルで比較的よく知られている。アデノウイルスベクター用の多くのツールが開発され続けており、それゆえアデノウイルスキャプシドを、本発明のライブラリーに組み込むための好ましい媒体とさせている。アデノウイルスは、様々な種類の細胞に感染することができる。しかしながら、異なるアデノウイルス血清型は、異なる細胞の優先度を有する。本発明のアデノウイルスキャプシドが、好ましい実施態様で入ることができる標的細胞集団を結集させ、拡張させるために、媒体は、少なくとも2種類のアデノウイルス由来のアデノウイルス線維タンパク質を含む。好ましいアデノウイルス線維タンパク質配列は、血清型17、血清型45、及び血清型51である。これらのキメラベクターの構築及び発現の手法は、刊行された米国特許出願第20030180258号及び第20040071660号に開示され、これらは引用により本明細書に組み込まれる。
【0048】
好ましい実施態様において、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルス後期タンパク質、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体をコードする核酸を含む。アデノウイルス後期タンパク質、例えばアデノウイルス線維タンパク質を、特定の細胞に媒体を標的化させるために好ましく使用し、該細胞への媒体の強化された送達を誘導してもよい。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、完全なアデノウイルスキャプシド、又はその機能的部分、類似体、及び/又は誘導体の形成を可能にする、本質的に全てのアデノウイルス後期タンパク質をコードする。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルスE2A、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体をコードする核酸を含む。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、細胞において、アデノウイルス由来の核酸の複製を、少なくとも部分的に促進させる、少なくとも1つのE4領域タンパク質、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体をコードする核酸を含む。本出願の実施例で使用したアデノウイルスベクターは、本治療方法発明に有用なベクターの典型である。
【0049】
本発明の特定の実施態様は、レトロウイルスベクターシステムを使用する。レトロウイルスは、分裂細胞に感染する組込みウイルスであり、かつそれらの構成は、当業者に既知である。レトロウイルスベクターは、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)、及びフレンドウイルスなどの、異なった型のレトロウイルスから構築できる。レンチウイルスベクターシステムはまた、本発明の実施に使用してよい。
【0050】
本発明の他の実施態様において、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)を使用する。AAVウイルスは、感染細胞のゲノム内に、安定的かつ部位特異的様式で組み込む、比較的小さなサイズのDNAウイルスである。AAVウイルスは、細胞増殖、形態、又は分化にいかなる影響をも与えずに、幅広い範囲の細胞に感染することができ、かつ該ウイルスは、ヒトの病理には関与していないようである。
【0051】
ベクター構築において、本発明のポリヌクレオチド作用物質を、1以上の制御領域に連結してよい。適切な制御領域の選別は、当業者のレベルで日常的な事柄である。制御領域はプロモーターを含み、またエンハンサー、サプレッサーなどを含んでもよい。
本発明の発現ベクターに使用してよいプロモーターは、構成的プロモーター、及び制御型(誘導性)プロモーターの両方を含む。プロモーターは、宿主次第で、原核生物性又は真核生物性であってよい。原核生物(バクテリオファージを含む)プロモーターの中で、本発明の実施に有用なのは、lacプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、ラムダPrプロモーター、P1プロモーター、及びtrpプロモーターである。真核生物(ウイルスを含む)プロモーターの中で、本発明の実施に有用なのは、遍在性プロモーター(例えば、HPRT、アクチン、チューブリン)、中間径フィラメントプロモーター(例えば、デスミン、神経フィラメント、ケラチン、GFAP)、治療遺伝子プロモーター(例えば、MDR型、CFTR、第VIII因子)、組織特異性を示し、かつ遺伝子導入動物で使用されてきた、動物性転写制御領域を含む、
組織特異的プロモーター(例えば、平滑筋細胞内のアクチンプロモーター、又は内皮細胞において活性なFltプロモーター及びFlkプロモーター):膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftらの論文,(1984)Cell 38:639-46;Ornitzらの論文、(1986)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonaldの論文,(1987)Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞において活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahanの論文,(1985)Nature 315:115-22)、リンパ球において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlらの論文、(1984)Cell 38:647-58;Adamesらの論文、(1985)Nature 318:533-8;Alexanderらの論文、(1987)Mol. Cell. Biol. 7:1436-44)、睾丸、乳腺、リンパ球、及び肥満細胞において活性なマウス乳ガンウイルス制御領域(Lederらの論文,(1986)Cell 45:485-95)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertらの論文,(1987)Genes and Devel. 1:268-76)、肝臓において活性なアルファ−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufらの論文,(1985)Mol. Cell. Biol.,5:1639-48;Hammerらの論文,(1987)Science 235:53-8)、肝臓において活性なアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyらの論文,(1987)Genes and Devel.、1:161-71)、骨髄性細胞において活性なベータ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramらの論文,(1985)Nature 315:338-40;Kolliasらの論文,(1986)Cell 46:89-94)、脳内の乏突起膠細胞において活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadらの論文,(1987)Cell 48:703-12)、骨格筋において活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Saniの論文,(1985)Nature 314.283-6)、視床下部において活性な性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonらの論文,(1986)Science 234:1372-8)である。
【0052】
本発明の実施に使用してよい他のプロモーターは、分裂細胞において優先的に活性化されるプロモーター、刺激(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)に応答するプロモーター、テトラサイクリン制御型転写モジュレーター、サイトメガロウイルス前初期プロモーター、レトロウイルスLTRプロモーター、メタロチオネインプロモーター、SV−40プロモーター、E1aプロモーター、及びMLPプロモーターを含む。
【0053】
付加的なベクターシステムは、患者へのポリヌクレオチド作用物質の導入を促進する、非ウイルス性システムを含む。例えば、所望の配列をコードするDNAベクターは、リポフェクションによって、インビボで導入することができる。リポソーム介在性形質移入が直面する困難を制限するために設計された合成陽イオン性脂質を使用して、マーカーをコードする遺伝子のインビボ形質移入用リポソームを調製できる(Felgner,らの論文,(1987)Proc. Natl. Acad Sci. USA 84:7413-7);Mackeyらの論文,(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-31;Ulmerらの論文,(1993)Science 259:1745-8を参照されたい)。陽イオン性脂質の使用は、負に荷電した核酸の封入を促進し、また負に荷電した細胞膜との融合を促進し得る(Felgner及びRingoldの論文,(1989)Nature 337:387-8)。核酸の輸送に特に有用な脂質化合物及び脂質組成物が、国際特許公報WO 95/18863及びWO 96/17823、並びに米国特許第5,459,127号に記載されている。インビボで、特定の器官に外因性遺伝子を導入するためのリポフェクションの使用は、確かな実用上の利点を有し、また形質移入を特定の細胞型に指示することは、例えば、膵臓、肝臓、腎臓、及び脳などの、細胞の不均質性を有する組織において、特に有益である。標的化の目的のために、脂質を他の分子と化学的に共役してよい。例えばホルモン、神経伝達物質のような標的化ペプチド、及び、例えば抗体のようなタンパク質、又は非ペプチド分子を、リポソームに、化学的に共役させることができる。また、他の分子、例えば、陽イオン性オリゴペプチド(例えば、国際特許公報WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば、国際特許公報WO 96/25508)、又は陽イオン性ポリマー(例えば、国際特許公報WO 95/21931)は、インビボでの核酸の形質移入を促進させるのに有用である。
【0054】
また、裸プラスミドとして、インビボでDNAベクターを導入することが可能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号及び第5,580,859号)。治療目的用の裸DNAベクターは、当業者に既知の方法、例えば形質移入、電子穿孔法、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用、DNAベクター輸送体の使用によって、所望の宿主細胞内に導入できる(例えば、Wilsonらの論文,(1992)J. Biol. Chem. 267:963-7;Wu及びWuの論文,(1988)J. Biol. Chem. 263:14621-4;Hartmutらの論文、1990年3月15日に出願された、カナダ特許出願第2,012,311号;Williamsらの論文(1991). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-30を参照されたい)。受容体介在性DNA送達アプローチもまた使用できる(Curielらの論文、(1992)Hum. Gene Ther. 3:147-54;Wu及びWuの論文,(1987)J. Biol. Chem. 262:4429-32)。
【0055】
本発明はまた、標的アゴニストとして同定された、有効量の1以上の化合物、及び/又は先に記載されたような、配列番号:101〜118のポリペプチドをコードする、有効量の骨形成分化ポリ核酸を含む、生体適合性骨形成分化組成物を提供する。
生体適合性組成物は、本発明の組成物、ポリヌクレオチド、ベクター及び抗体が、活性形態、例えば生物活性に影響し得る形態で維持される、固体、液体、ゲル又は他の形態であり得る組成物である。例えば、本発明の組成物は、標的上で、逆アゴニスト又はアンタゴニスト活性を有する;核酸は、複製、伝達内容の翻訳、又は標的の相補的mRNAにハイブリダイズすることができる;ベクターは標的細胞に形質移入させることができ、先に記載したようなアンチセンス、抗体、リボザイム、又はsiRNAを発現させることができる;抗体は、標的ポリペプチドドメインに結合する。
【0056】
好ましい生体適合性組成物は、例えば、塩イオンを含む、トリスバッファー、リン酸バッファー、又はHEPESバッファーを使用して緩衝化された水溶液である。通常、塩イオン濃度は、生理的レベルと同等である。生体適合性溶液は、安定剤及び防腐剤を含んでよい。より好ましい実施態様において、生体適合性組成物は、医薬として許容し得る組成物である。そのような組成物は、局所、経口経路、非経口経路、鼻腔内経路、皮下経路、及び眼球内経路による投与用に製剤可能である。非経口投与は、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、又は注入技術を含むものを意味する。該組成物を、標準的な、よく知られた非毒性の、生理的に許容し得る、所望のキャリアー、アジュバント、及び媒体を含む用量単位製剤で、非経口的に投与してよい。
【0057】
経口投与用医薬組成物は、経口投与に適した用量で、当業者に周知の医薬として許容し得るキャリアーを使用して製剤することができる。そのようなキャリアーは、該医薬組成物が、患者による経口摂取用に、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液として処方されることを可能にさせる。経口使用用医薬組成物は、所望であれば、錠剤核又は糖衣錠核を得るために適切な助剤を添加した後、活性化合物と固形賦形剤を混合し、選択的にできた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工しることによって調製できる。適切な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖などの、炭水化物若しくはタンパク質充填剤;トウモロコシ、小麦、米、イモ、又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、又はカルボキシメチル−セルロースナトリウムなどのセルロース;アラビア及びトラガカントを含むゴム;及び、ゼラチン並びにコラーゲンなどのタンパク質である。所望であれば、架橋結合されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤又は可溶化剤を添加してもよい。糖衣錠核を、濃縮糖溶液などの適切な被覆剤と合わせて使用してもよく、また、アラビアゴム、滑石、ポリビニル−ピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒又は有機溶媒混合物を含んでよい。染料又は色素を、製品の識別のため、若しくは活性化合物の量、すなわち用量を明らかにするために、錠剤被覆剤又は糖衣錠被覆剤に添加してもよい。
【0058】
経口的に使用され得る医薬製剤は、ゼラチンから作られた軟らかい密封カプセルに加えて、ゼラチンから作られた押し込み型カプセル、及びグリセロール又はソルビトールなどの被覆剤を含む。押し込み型カプセルは、ラクトース又はデンプンなどの充填剤若しくは結合剤、滑石又はステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、及び、選択的に安定剤と混合した活性成分を含み得る。軟らかいカプセル中で、活性化合物は、安定剤を含むか又は含まずに、脂肪油、液体、若しくは液体ポリエチレングリコールなどの、適切な液体中に溶解又は懸濁させてもよい。
【0059】
好ましい滅菌注射製剤は、非毒性の、非経口的に許容し得る溶媒又は希釈剤中の溶液若しくは懸濁液であり得る。医薬として許容し得るキャリアーの例は、生理食塩水、緩衝食塩水、等張食塩水(例えば、リン酸一ナトリウム、又はリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム;塩化カルシウム又は塩化マグネシウム、又はそのような塩の混合物)、リンガー溶液、ブドウ糖、水、滅菌水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせであり、1,3−ブタンジオール及び滅菌固定油を、溶媒又は懸濁培地として都合に合わせて使用する。モノ−グリセリド、又はジ−グリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を使用できる。また、オレイン酸などの脂肪酸も注射製剤での使用が見出される。
【0060】
また、組成物培地は、薬剤吸収スポンジとして機能し得る親水性ポリアクリル酸ポリマーなどの、任意の生体適合性又は非細胞毒性ホモポリマー若しくはヘテロポリマーから調製されるハイドロゲルであり得る。特に、酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンから得られたものなどの、特定のハイドロゲルは市販されている。例えば、外科的介入の間、ハイドロゲルを、治療すべき組織表面上に直接的に付着させることができる。
【0061】
本発明の医薬組成物の実施態様は、本発明の配列番号:1〜18のポリヌクレオチドをコードする複製欠損型組換えウイルスベクター、及びポロクサマーなどの形質移入賦活剤を含む。ポロクサマーの例は、市販のポロクサマー407(BASF社、Parsippany、N.J.)、及び非毒性の生体適合性ポリオールである。組換えウイルスを含浸させたポロクサマーを、例えば、外科的介入の間、治療すべき組織の表面上に、直接的に付着させてもよい。ポロクサマーは、より低い粘度を有しているが、ハイドロゲルと実質的に同じ利点を有する。
【0062】
活性な骨形成分化誘導剤(標的遺伝子をコードするベクター、又は小分子アゴニスト)もまた、コロイド性薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)、又はマクロエマルジョンで、例えば界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース、又はゼラチン−マイクロカプセル、及びポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセル内のそれぞれに封入してよい。そのような手法は、『レミングトンの薬学』(1980)第16版、Osol、A.編に記載されている。
【0063】
持続放出製剤を調製してよい。持続放出製剤の適切な例は、マトリクスが、例えば薄膜又はマイクロカプセルのような造形品の形態中に抗体を含む、固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含む。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル樹脂)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びガンマ−エチル−L−グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体、及び酢酸ロイプロリドからなる、注入可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニル、及び乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日間以上にわたる分子の放出が可能であるが、特定のハイドロゲルは、より短い期間タンパク質を放出する。封入された抗体が長時間体内に存在する場合、37℃での水分への曝露そ結果として変性又は凝集する可能性があり、生物活性の減少、及び免疫原性の変化の可能性をもたらす。関与する機構によって、安定化のための合理的な方法を工夫してよい。例えば、凝集機構が、チオ−ジスルフィド交換を介した、分子間でのS−S結合であることが発見されたならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥させること、含水率を制御すること、適切な添加剤を使用すること、及び特異的なポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成してよい。
【0064】
先に記載したように、治療的有効量は、症状又は病状を緩和させる、タンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はその抗体、アゴニスト若しくはアンタゴニストの量を意味する。そのような化合物の治療効果及び毒性は、培養細胞又は実験動物での標準的な薬学的手法、例えばED50(該集団の50%に治療効果のある用量)、及びLD50(該集団の50%に対する致死用量)によって決定できる。治療効果に対する毒性の用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。培養細胞アッセイ、及び動物実験から得られたデータは、ヒトでの使用の用量範囲を策定することに使用する。そのような化合物の用量は、毒性をほとんど、あるいは全くないED50を含む、血中濃度の範囲内にあるのが好ましい。用量は、実施された投薬形態、患者の感受性、及び投与経路次第で、この範囲内で変化する。
【0065】
任意の化合物に関して、治療的有効量を、培養細胞アッセイ、又は通常は、マウス、ウサギ、イヌ、若しくはブタのいずれかで、はじめに見積もることができる。また、所望の濃度範囲及び投与経路を達成するために、動物モデルを使用する。そのような情報を、それから、ヒトでの投与に有用な用量及び経路を決定するために使用できる。的確な用量は、治療される患者を考慮して、それぞれの医師によって選択される。十分なレベルの活性部分を提供するために、用量及び投与を調整し、所望の効果を維持させる。考慮されてよい付加的な因子は、患者の病状の重篤度、年齢、体重、及び性別;食事、所望の治療の持続時間、投与方法、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、及び治療に対する耐性/反応性を含む。特定の製剤の半減期及びクリアランス速度次第で、長時間作用性医薬組成物を、3〜4日毎、毎週、又は2週毎に1回投与してもよい。
【0066】
本発明にしたがった医薬組成物を、様々な方法で対象に投与してよい。 医薬組成物を、陽イオン性脂質と複合体を形成し、リポソーム内に封入して標的組織に直接的に付加してよく、又は、他の当業者に知られた方法によって標的細胞へと送達してもよい。所望の組織への局所的投与を、直接注入、経皮吸収、カテーテル、輸液ポンプ、又はステントで実施してよい。DNA、DNA/媒体複合体、又は組換えウイルス粒子を、治療部位に局所的に投与する。送達の選択的経路は、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、エアロゾル吸入、経口(錠剤形態、又は丸薬形態)、局所送達、全身送達、眼球送達、腹腔内送達、及び/又はくも膜下腔送達を含むが、これらに限定されない。リボザイム送達及び投与の実施例が、Sullivanらの国際特許公報WO 94/02595で提供されている。
【0067】
本明細書において先に論じたように、本発明で有用なポリヌクレオチド作用物質をコードするDNAを導入するために、組換えウイルスを使用してよい。本発明にしたがった組換えウイルスは、一般的に約104〜約1014pfuの用量形態で処方、及び投与される。AAV及びアデノウイルスの場合、約106〜約1011pfuの用量を使用するのが好ましい。用語pfu(「プラーク形成単位」)は、ウイルス粒子懸濁液の感染力に対応し、適切な培養細胞への感染、及び形成されたプラークの数を測定することによって決定される。ウイルス溶液のpfu力価を決定するための手法は、先行技術中に詳細に説明されている。
【0068】
本発明はまた、本発明の治療的有効量の骨形成分化誘導剤の前記対象への投与を含む、骨形成を促進させる方法を提供する。本発明のさらなる態様は、骨ホメオスタシスのアンバランスを含む疾患の治療又は予防方法に関連し、前記対象に、本明細書の先に記載したような骨形成分化医薬組成物を投与することを含む。
【0069】
本発明の方法に使用されるポリペプチド又はポリヌクレオチドは、溶液中で遊離、固相支持体に固定、細胞表面上に付着、又は細胞内に位置させてよい。本方法を実施するために、表1及び/又は表1Aに特定したポリペプチド、又は本アッセイの自動化に適合させるのに加えて、該ポリペプチドの複合体を形成していない形態から、複合体を分離するのを促進させる化合物のいずれかを固定することは、実現可能である。本発明のポリペプチドと化合物の相互作用(例えば、結合の)は、反応物を含む、任意の適切な容器内で達成できる。そのような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管、及び微小遠心管を含む。ある実施態様において、ポリペプチドをマトリクスに結合させることができるドメインを付加した融合タンパク質が提供可能である。例えば、本発明のポリペプチドに「His」タグを付加し、次にNi−NTAマイクロタイタープレート上に吸着させる、又は本発明のポリペプチドをProtAと融合させてIgGに吸着させることができ、それから該ポリペプチドを細胞溶解物(例えば、(35S標識)及び候補化合物と混合し、複合体系性に有利な条件下(例えば、生理的状態の塩及びpH)で該混合物をインキュベートする。インキュベーションの後、プレートを洗浄して結合していない全ての標識を除去し、マトリクスを固定する。放射能の量を直接的に、又は複合体の解離の後の上清で測定できる。あるいは、複合体をマトリクスから解離させ、SDS−PAGEで分離し、標準的な電気泳動技術を使用して、本発明のタンパク質に結合している該タンパク質のレベルをゲルから定量する。
【0070】
マトリクス上に固定されたタンパク質に関する他の手法もまた、化合物を同定する方法に使用できる。例えば、ポリペプチド、又は化合物のどちらかを、ビオチンとストレプトアビジンとの結合を利用して固定することができる。本発明の、ビオチン化されたタンパク質分子は、当業者に知られた方法(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals社、Rockford、Ill.)を使用するビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製することができ、ストレプトアビジンで被覆した96ウエルプレート(Pierce Chemical社)のウエル内に固定させることができる。あるいは、本発明のポリペプチドと反応するが、化合物へのポリペプチドの結合には干渉しない抗体を、プレートのウエルに誘導体化することができ、抗体結合によって、本発明のポリペプチドをウエル内に補足することができる。先に記載したように、本発明のポリペプチドが存在するプレートのウエル内で、標識候補化合物の調合液をインキュベートし、ウエル内に補足された複合体の量を定量できる。
【実施例】
【0071】
(標的遺伝子アゴニストと骨芽細胞分化を関連づける、詳細な実験的研究)
(実施例1):初代ヒトMPCにおける内因性アルカリフォスファターゼのモジュレーターを得るためのFLeXSelectライブラリーの選別
(材料):
アデノウイルス構築物:
Ad-BMP2:WO 03/018799に記載されている。
Ad-eGFP:WO 02070744中のpIPspAdApt6-EGFPとして参照される。
Ad-LacZ:WO 02070744中のpIPspAdApt6-lacZとして参照される。
Ad-empty:WO 02070744中の空ウイルス(pIPspAdApt 6から生成される)として参照される。
Ad-hCAR:PCRの方法論を使用して、hCAR cDNAを単離する。下記のhCAR特異的プライマーを使用する:HuCAR_for 5'-GCGAAGCTTCCATGGCGCTCCTGCTGTGCTTCG-3'、及びHuCAR_rev 5'-GCGGGATCCATCTATACTATAGACCCATCCTTGCTC-3'。HeLa細胞cDNAライブラリー(Quick clone、Clontech社)から、hCAR cDNAをPCR増幅させる。1119bpの単一フラグメントが得られ、HindIII制限酵素、及びBamHI制限酵素で消化する。同じ酵素を用いてpIPspAdapt6ベクター(WO99/64582)を消化してゲル精製し、これを使用して、消化したPCR hCARフラグメントと連結させる。AdC20(Ad5/Ad51)ウイルスを、WO02/24933に記載されているように生成する。
H4-2:WO03/018799中のDLL4_v1として記載される。
H4-291:SPINT1_v1. cDNAを、ヒト胎盤から単離したRNAから調製しWO02/070744中に記載されているように、SalI−NotI制限酵素認識部位を使用して、pIPspAdapt 6プラスミド内にクローン化する。H4-291によってコードされたタンパク質は、NP_003701と同一である。
【0072】
(アッセイの原理)
間葉前駆細胞(MPC)は、適切な因子(例えば、BMP2)の存在下で、骨芽細胞へと分化する。そのような因子を選別するためのアッセイを、骨芽細胞分化プログラムにおける初期マーカーである、アルカリフォスファターゼ(AP)酵素の活性をモニタリングすることで構築する。MPCを384ウエルプレート内にまき、ヒトコクサッキー及びアデノウイルス受容体(hCAR;Ad-hCAR)をコードするアデノウイルス、並びにGPCR、キナーゼ、プロテアーゼ、ホスホジエステラーゼ、及び核ホルモン受容体(FLeXSelectコレクション)のような、「薬剤となり得る」クラスからの遺伝子に対応するcDNA配列を含む、配列されたアデノウイルスノックインコレクション由来のそれぞれのアデノウイルス(Ad-cDNA)を用いて、1日後に同時に共感染させる。PCRに基づいたアプローチによって、これらのcDNAの大部分を得る。手短に言うと、RefSeqデータベースに存在する配列データに基づき、薬剤となり得る遺伝子の、ATG開始コドンから終止コドンまでの完全な翻訳領域の増幅用に、PCRプライマーを設計する。96ウエルプレート中に、PCR使用準備済みの濃度で配列された型の中に、プライマーを混合する。PCR反応用のテンプレートとして、胎盤のcDNAライブラリー、胎児肝臓のcDNAライブラリー、胎児脳のcDNAライブラリー、及び脊髄のcDNAライブラリーを使用する(Invitrogen社、又はEdge Biosystems社から入手)。単一エキソンでコードされる遺伝子用に、PCR反応を、ヒトゲノムDNA上でも実行する。増幅反応後、PCR産物を、96ウエルPCR精製システム(Wizard magnesil、Promega社、Madison、WI、USA)で精製し、適切な制限酵素(AscI、NotI、又はSalI制限酵素認識部位は、プライマー中に含まれている)で消化し、そしてDNAライゲーションキットバージョン2(TaKaRa社、Berkeley、CA、USA)を使用して、アデノウイルスアダプタープラスミドpIspAdAdapt-10-Zeo(米国特許第6,340,595号に記載される)中に、直接的にクローン化する。形質転換、及び選別段階の後、その1つが配列確認された遺伝子につき複数のクローンを、プラスミドDNAの調製、及びWO99/64582に記載される方法に従う次のアデノウイルスの生成のために使用する。
【0073】
AdC20-hCAR(MOI 250)との共感染は、AdC01-cDNAの感染効率を増加させることが見出される。細胞のAP活性を、感染(又はリガンド添加後−以下を参照されたい)後6日目に測定する。アッセイの原理を、図2に示す。骨髄由来の間葉幹細胞に、Ad5C15-hCARウイルス又はAd5C20-hCARウイルスの存在下で、FLeXSelect(商標)cDNAライブラリーを用いて感染させる。感染、又はリガンド処理の開始後6日目に、4−メチルウンベリフェリル7リン酸(MUP)基質を加えた後に、内因性アルカリフォスファターゼ活性を測定する。
【0074】
(アッセイの開発)
インフォームドコンセントの得られた、健康な被験者の骨髄からMPCを単離する(Cambrex/Biowhittaker社、Verviers、Belgium)。
一連の実験を384ウエルプレート内で行い、いくつかのパラメータ:細胞播種密度、コントロールウイルス(Ad-BMP2又はAd-eGFP)の感染多重度(MOI)、Ad-hCARのMOI、感染継続期間、毒性、感染効率(Ad-eGFPを使用する)、及び読み取りの日程を最適化する。
【0075】
下記の手順は、バックグラウンドシグナル上で、最も低い標準偏差を用いるアッセイに対して、最も高いダイナミックレンジをもたらす:0日目に、384ウエルプレートのウエルあたり1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC20-hCAR及びAdコントロールウイルス 2μlの混合物を使用して共感染させる。Adコントロールウイルスのストックを、96ウエルプレート(コントロールプレート)に生成する。2μlの量は、理論的にMOI5000に一致する。コントロールは:P1=Ad-BMP2;P2=Ad-H4-2;P3=Ad-H4-291;N1=Ad-LacZ;N2=Ad-empty;N3=Ad-eGFPである。アルカリフォスファターゼの上方調節を、感染後6日目(6dpi)に読み取る:4−メチルウンベリフェリル−リン酸(MUP、Sigma社)15μlをそれぞれのウエルに添加し、プレートを37℃で15分間インキュベートし、蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性をモニターする。(コントロールウイルスを含む)96ウエルプレート、又は(FleXSelectウイルス(次段落を参照されたい)を含む)384ウエルプレートから、MPCを含む384ウエルプレートへの、ウイルスのピペット操作は、ロボット(TeMO96、TeMO384、及びRoMaを搭載した96/384 channel dispensor Tecan Freedom 200、Tecan AG社、Switzerland)で実行する。図3は、コントロールプレートを使用しての、自動化された選別手順の結果を示す。ネガティブコントロール(N1〜N3)の平均及び標準偏差を使用して、ヒット解析のカットオフを計算する。ポジティブコントロール(P1、P2、P3)は、常に感染させたウエルの80〜100%を記録した(図3)。ネガティブコントロールウイルスは、常に感染させたウエルの0〜5%を記録した(図3)。
【0076】
(FleXSelectライブラリー)
Galapagos Genomics NV(Galapagos社)は、ヒトゲノム中に存在する、薬剤となり得る遺伝子のほとんどをコードするアデノウイルスライブラリーを配列した、独自のノックイン(FLeXSelect)を構築した。アルカリフォスファターゼアッセイは、例えば、G−タンパク質共役受容体(GPCR)及び核ホルモン受容体(NHR)のような化合物によって活性化され得る、薬剤となり得る標的のそれらのクラスのFLeXSelectコレクション(Ad-cDNA)からウイルスを選別することに有用である。
【0077】
FLeXSelectライブラリーに存在するAd−GPCR用に、リガンドの適合コレクションを、MPCを含む384ウエルプレートの1つのウエル中のそれぞれのストックから、Ad−GPCR及びリガンドの適合対をロボットを使用してピペット操作できるような、96ウエルプレート及び384ウエルプレートを作成する。
(選別)
適合リガンドの存在下又は不在下において、FLeXSelectウイルスを、先に記載した手順に従い、それぞれの1つのサンプルを異なるプレート上に添加した2つの独立な選別で複数回選別する。リガンドが選別に含まれる場合、手順を変更する:Ad−cDNA感染を1日目に実施し、リガンドを2日目に添加し、内因性BAPレベルを8日目に測定する。384ウエルスクリーニングプレートの典型的な結果を、図4に示す。図4に示されているのは、X軸上の384ウエルプレートにおける位置、及びY軸上の相対的アルカリフォスファターゼシグナルである。与えられたサンプルの相対的アルカリフォスファターゼシグナルを、与えられた処理単位(又は実験)の全てのデータ点に対する、平均以上の標準偏差の数として計算する。
【0078】
(実施例2):APアッセイを使用した標的同定
下記の選別基準に従って標的を選別する:
1)APシグナルが、処理単位中の全てのサンプル(データ点)の標準偏差の3倍+平均よりも高い。それぞれの処理単位における2つの各データ点を独立に解析する。
2)2つの独立な実験で複数回選別される、少なくとも4つウイルスサンプルのうちの3つ、又は4つのウイルスサンプルのうちの3つ(ウイルス毎に合計4回の測定)に関して、基準1によって定義されたような陽性APシグナル。
【0079】
表1に、アルカリフォスファターゼアッセイにおける、上記の基準に従って同定された標的をリスト化している。
いくつかの標的に関して、アゴニストリガンドが知られている。これらを使用して、MPCにおける標的遺伝子の、骨形成潜在能力を確認することができる:MPCの培地に、高濃度のリガンドを添加することは(標的タンパク質を過剰発現させる)、内因性アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、用量依存的に増加させるであろう。これは例えば、MPCにAd-NR1H3を感染させ、かつT0901317で処理する場合、及びMPCにAd-GPR65を感染させ、かつ1−b−D−ガラクトシルスフィンゴシンで処理する場合、並びにMPCにAd-AVPR2を感染させ、かつ[デアミノ−Cys1、D−Arg8]−バソプレシンで処理する場合に観測される。
【0080】
(Ad-NR1H3及びT0901317)
これらの用量反応曲線を、図5に示す。MPCにAd-NR1H3を感染させ、かつT0901317で処理する場合のAP活性の用量反応曲線を示す(図5A)。MPCを、0日目に384ウエルプレートのウエルあたり1000個播種し、その翌日にAdC51-hCAR(MOI 250)、及び異なるMOIのAd5-NR1H3(MOI 12000、4000、1333、444)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、0.01%の濃度のDMSOである)と共に、5段階の濃度(1E-10M、1E-9M、1E-8M、1E-7M、1E-6M)の化合物T0901317(Cayman Chemical社、Michigan、USA、カタログ番号71810)をウエルに添加する。37℃、10%CO2の加湿インキュベータでの6日間のインキュベーションの後、アルカリフォスファターゼの上方調節を読み取る:MUP 15μlを各ウエルに添加し、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用してAP活性を測定する。
【0081】
Ad-GPR65を用いて感染させ、かつ1−b−D−ガラクトシルスフィンゴシンで処理するMPC(図5B);Ad-AVPR2を感染させ、かつ[デアミノ−Cys1、D−Arg8]−バソプレシン(DDAVP)で処理するMPC(図5C)に関して、AP活性の用量反応曲線を同様の方法で作成する。
活性型リガンドを異なる濃度で添加する場合、APアッセイおいて、AP活性の、用量依存的上方調節を示す3つの標的を同定する。
【0082】
(AdNR1H3及びGW3965)
MPCを、Ad-NR1H3を用いて感染させ、かつGW3965で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する(図9)。0日目に、384ウエルプレートのウエルあたり1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H3(MOI 2000、666)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.1%のDMSO)と共に、8種類の濃度(3,43E-9M、1,34E-8M、5,35E-8M、1,60E-7M、4,81E-7M、1,43E-6M; 4,29E-6M、13E-6M)の化合物GW3965(Chemovation社、West Sussex)を、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物GW3965を含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図9は、Ad-NR1H3存在下における、GW3965の用量反応活性を示す。
【0083】
(AdNR1H2及びT0901317)
MPCを、Ad-NR1H2を用いて感染させ、かつT0901317で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する(図10)。0日目に、384ウエルプレートの各ウエルに1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H3(MOI 2000、666)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.1%のDMSO)と共に、5種類の濃度(1E-9M、1E-8M、1E-7M、1E-6M、1E-5M)の化合物T0901317(Cayman Chemical社、Michigan、USA、カタログ番号71810)を、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物T0901317を含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図10は、Ad-NR1H2存在下における、T0901317の用量反応活性を示す。
結論として、APアッセイにおいて、LXRアゴニストであるGW3965及びT0901317それぞれを異なる濃度で細胞に添加する場合、AP活性は、用量依存的様式で、NR1H3又はNR1H2のどちらかを用いて形質導入した細胞内で上方調節される。
【0084】
(実施例3):同定した標的のmRNA及びタンパク質発現解析
実施例1に記載したアッセイは、過剰発現下での骨形成潜在能力を有するタンパク質の発見を明示する。これらのタンパク質が、MPC又は初代ヒト骨芽細胞(hOB)などの骨形成細胞で内因的に発現することを確認するために、これらの細胞からmRNAを抽出し、リアルタイムRT−PCRを使用して発現を解析する。
【0085】
標的遺伝子の発現レベルを、MPCの4つの異なる分離株、及びhOBの2つの異なる分離株で測定する。MPC(ヒト骨髄(Cambrex/Biowhittaker社、Verviers、Belgium)から得た)及びhOB(Cambrex/Biowhittaker社、Verviers、Belgiumから得た)を、3000個ずつ播種する。それらが80%の密集度になるまで、T180フラスコ中の5000細胞/cm2を培養する。細胞を、氷冷PBSで洗浄し、SV RNA溶解緩衝液 1050μlをT180フラスコに添加することによって回収する。SV 総RNA isolation System(Promega社、カタログ番号Z3100)を使用して、総RNAを調製する。総RNAの濃度を、Ribogreen RNA Quantification kit(Molecular Probes社、Leiden、The Netherlands、カタログ番号R-11490)を使用して測定する。TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG, kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4324018)を利用し、1反応につき40ngの総RNAを使用して、cDNA合成を実施する。各逆転写(RT)反応に対して、マイナス−RT反応(ネガティブコントロール:反応中に酵素を含まない)を実施する。
【0086】
SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4309155)を使用して、cDNAサンプル及びマイナス−RTサンプルの両方で、遺伝子特異的プライマー(表2)を用いたリアルタイム逆転写酵素(rtRT)−PCR反応を実施する。ヒトゲノムDNA上、及び検討される遺伝子によってコードされるcDNAを含むプラスミド上でのPCR反応を実施することによって、プライマーを品質管理する。品質が不十分である場合、追加のプライマーを設計するか、又は確認プライマーセットを購入する(ABI社)。発現レベルの標準化のために、Human β-actin kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4310881E)を使用して、ヒトβ−アクチン上で、RT−PCR反応を実施する。リアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System)で、下記のプログラムを実施する:25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分。複数のMPC分離株、及び複数のhOB分離株内の標的遺伝子の発現レベルを、β−アクチンの発現レベルに対して比較する。
【0087】
【表2】
【0088】
(実施例4):内因性骨AP mRNAの上方調節対胎盤のAP mRNA又は腸のAP mRNAの上方調節の解析
骨アルカリフォスファターゼ(BAP)は、骨形成に関与する、生理的に関連するアルカリフォスファターゼ(AP)である。測定されたAP活性が、BAP発現の上方調節のためであるか、又は別のAPの上方調節のためであるかを測定するために、全てのAP遺伝子のmRNAレベルを、MPCの感染後に解析する。
【0089】
前節で記載したように、mRNAレベルを測定する。差異は、使用したプライマーセットである(表3):1つのセットは、BAP ALPL(ヒトアルカリフォスファターゼ 肝臓/骨/腎臓)mRNA発現を検出する。別のセットは、3つの他のAP遺伝子(ALPI(ヒトアルカリフォスファターゼ 腸)、ALPP(ヒトアルカリフォスファターゼ 胎盤(PLAP)、ALPPL2(ヒトアルカリフォスファターゼ 胎盤様))の発現を検出する。ALPI、ALPP及びALPPL2はヌクレオチドレベルで高度に類似しており、それゆえ、1つのプライマー対を使用して増幅できる。
【0090】
【表3】
【0091】
はじめに、Ad-eGFP及びAd-BMP2を感染させたMPCから単離したRNAで、プライマー対を確認する。図6は、Ad-BMP2によるBAP mRNAの強い上方調節、及び任意の他のAP遺伝子発現の上方調節がないことを示す。それから両方のプライマー対を使用して、Ad標的化感染MPCから単離したRNAで、全てのAP遺伝子のmRNAレベルを測定する。
【0092】
(実施例5):骨形成に関連する細胞型における、NR5A2、NR1H3、NR1H2、ESRRGの発現レベルの解析
同定された標的遺伝子が、骨形成に関連する細胞型において、内因的に発現しているかを確認するために、これらの遺伝子のmRNAレベルを、関連する細胞型で解析する。
初代細胞又は細胞株(図14A〜D:MPC分離株1〜4、頭蓋冠骨芽細胞(MCOst pop 1+2、3+4))、ヒト骨芽細胞細胞株(SaOS2、U20S)を培養する、又は頭蓋冠頭蓋骨(calvarial skull)組織を、5日齢のマウスから回収する。単層又は頭蓋骨組織を回収して、総RNAを抽出し(SV 総RNA isolation System、Promega社 番号Z3100)、定量する(Ribogreen RNA Quantification kit、Molecular Probes社、Leiden)。TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG, kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4324018)を利用し、1反応あたり20ngの総RNAを使用して、cDNA合成を実施する。各逆転写(RT)反応に対して、マイナス−RT反応(ネガティブコントロール:反応中に酵素を含まない)を実施する。SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4309155)を使用して、cDNAサンプル及びマイナス−RTサンプルの両方で、遺伝子特異的プライマーを用いたリアルタイム逆転写酵素(rtRT)−PCR反応を実施する。可能な場合には、ヒトゲノムDNA上、及び検討される遺伝子によってコードされるcDNAを含むプラスミド上でのPCR反応を実施することによって、プライマーを品質管理する。品質が不十分である場合、追加のプライマーを設計する又は確認する、及びプライマーセットを購入する(ABI社)。発現レベルの標準化のために、Human s-actin kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4310881E)を使用して、ヒトβ−アクチン上で、RT−PCR反応を実施する。リアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System)で、下記のプログラムを実施する:25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分。
【0093】
4つの遺伝子の発現レベルを、ベータアクチンの発現レベルに対して比較し、その結果を図14A〜Dに示す。図は、ベータアクチン又は4つの標的遺伝子の、異なる細胞型若しくは組織内のmRNA発現レベルを解析することで得たCt値を示す;n.a.:解析されず;「サイバーグリーン(Sybrgreen)」又は「ABIプライマー(ABI primer)」は、それぞれプライマーセットが組織内で開発されたかどうかを示し、市販のプライマーセットを使用して、mRNA発現を評価した。また、示しているのは、異なる発現レベルの標的遺伝子対ベータアクチン発現レベルの図解である(値はデータ表の左側の欄からとった)。
結論として、同定した標的遺伝子は、骨形成に関連する複数の細胞型において発現している。標的遺伝子ESRRGは、テストしたMPC分離株において発現していないことは注目すべきである。
【0094】
(実施例6):NR1H2又はNR1H3の過剰発現状態でのBAPアッセイにおけるLXRアゴニストの活性
(Ad-NR1H2及びGW3965)
MPCを、Ad-NR1H2を用いて感染させ、かつGW3965で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する(図11)。0日目に、384ウエルプレートの各ウエルに1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H2(MOI 2000、666)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.161%のDMSO)と共に、9種類の濃度(1.52E-9M、4.57E-9M、1.37E-8M、4.12E-8M、1.23E-7M、3.7E-7M、1.11E-6M、3.33E-6M、1E-5M)の化合物GW3965を、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物GW3965を含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図11は、Ad-NR1H2存在下における、GW3965の用量反応活性を示す。
【0095】
(Ad-NR1H2、Ad-NR1H3及びアセチルポドカルピック二量体(acetyl-podocarpic dimer)(APD))
MPCを、Ad-NR1H2又はAd-NR1H3を用いて感染させ、かつアセチルポドカルピック二量体(APD−図12の化合物構造を参照されたい;APDは、公開されたUA2003/0086923A1において「化合物1」として記載され、そのAPDの調製は、引用により本明細書に組み込まれる)で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する。0日目に、384ウエルプレートの各ウエルに1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H2又はAd-NR1H3(MOI 2000、6000)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.1%のDMSO)と共に、12種類の濃度(5.65E-11M、1.69E-10M、5.08E-10M、1.52E-9M、4.57E-9M、1.37E-8M、4.12E-8M、1.23E-7M、3.7E-7M、1.11E-6M、3.33E-6M、1E-5M)の化合物APDを、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物APDを含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図13は、Ad-NR1H2又はAd-NR1H3存在下における、APDの用量反応活性を示す。
結論として、APアッセイにおいて、LXRアゴニストであるAPD、GW3965及びT0901317それぞれを異なる濃度で細胞に添加する場合、AP活性は、用量依存的様式で、NR1H3又はNR1H2のどちらかを用いて形質導入した細胞内で上方調節される。
【0096】
(実施例7):骨形成経路解析:NR5A2及びNR1H3+T0901317は骨形成マーカーのmRNAレベルを上方調節する
MPCから骨芽細胞への骨形成分化は、骨形成タンパク質の上方調節を伴う。骨形成タンパク質の上方調節は、例えばリアルタイムRT−PCRを使用して、新規標的による骨形成分化の誘導を研究するのに有用である。この研究に使用するMPCを、BMP2による骨形成マーカーの限定されたセットの上方調節で特徴付ける。次に、BMP2の差次的発現を示すマーカーを、Ad-NR5A2感染細胞由来のmRNA、又はAd-NR1H3+T0901317処理細胞由来のmRNAに対してテストする。
【0097】
10%FCSを含むMPC培地2ml中の100,000個のMPCを、6ウエルプレートの各ウエルに播種する。加湿インキュベータ内において、37℃、10%CO2でインキュベーションしたその翌日、AdC15-hCAR(最終MOI 750)、及びAd-NR5A2、Ad-NR1H3+T0901317(1μM)又はAd-BMP2(ポジティブコントロール)、若しくはネガティブコントロールとしてAd-eGFP又は Ad-ルシフェラーゼ(最終MOI 1250及び2500)を用いて、細胞を共感染させる。RNA単離のために細胞を回収済みでない限り、さらに6日間、細胞を加湿インキュベータ内において、37℃、10%CO2でインキュベートする。ウイルスを除去し、新鮮OS培地(10%FCSを含む、商標登録された培地)2mlで置換する。以降3週にわたり、2週につき3回、培地を補給する。1回おきに、培地を半分又は完全に交換する。単層をいくつかの時間点(図15を参照されたい)で回収し、総RNAを回収して定量し、rtRT−PCRを下記のように実施する:単層を氷冷PBSで洗浄し、SV RNA溶解緩衝液を添加することによって回収する。SV Total RNA isolation System(Promega社、カタログ番号Z3100)を使用して、総RNAを調製する。総RNAの濃度を、Ribogreen RNA Quantification kit(Molecular Probes社、Leiden、The Netherlands、カタログ番号R-11490)を使用して測定する。TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG, kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4324018)を利用し、1反応につき20ngの総RNAを使用して、cDNA合成を実施する。各逆転写(RT)反応に対して、マイナス−RT反応(ネガティブコントロール:反応中に酵素を含まない)を実施する。SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4309155)を使用して、cDNAサンプル及びマイナス−RTサンプルの両方で、遺伝子特異的プライマーを用いたリアルタイム逆転写酵素(rtRT)−PCR反応を実施する。可能な場合、ヒトゲノムDNA上、及び検討される遺伝子によってコードされるcDNAを含むプラスミド上でのPCR反応を実施することによって、プライマーを品質管理する。品質が不十分である場合、追加のプライマーを設計するか、又は確認プライマーセットを購入する(ABI社)。発現レベルの標準化のために、Human β-actin kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4310881E)を使用して、ヒトβ−アクチン上で、RT−PCR反応を実施する。リアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System)で、下記のプログラムを実施する:25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分。
【0098】
はじめに、骨形成マーカー遺伝子の発現レベルを、ベータアクチンのレベルに対して標準化する。それからAd-BMP2、Ad-NR5A2及びAd-NR1H3+T0901317(1μM)サンプルの結果データを、同じMOIで感染させた細胞に関して、同じ時間点で回収したAd-eGFP又はAd-ルシフェラーゼネガティブコントロールサンプルのものと比較する。NR5A2又はBMP2過剰発現によって誘導されるマーカー遺伝子mRNAの倍の上方調節を計算し、図15に提示する。BMP2、NR5A2又はNR1H3+T0901317が、ネガティブコントロールサンプル(Ad-eGFP又はAd-ルシフェラーゼ)のものよりも4倍高い場合、骨形成マーカーは、BMP2、NR5A2又はNR1H3+T0901317過剰発現によって上方調節されると考えられる。Ad-NR5A2は、1以上の時間点で調査したPTHR1、BAP、オステオポンチン、アロマターゼ及びRANKLの発現を上方調節した。Ad-NR1H3+T0901317は、1以上の時間点で調査したPTHR1、BAP、オステオポンチン、アロマターゼ及びRANKLの発現を上方調節した。
【0099】
(実施例8):骨形成経路解析:骨形成誘発によるNR5A2及びNR1H3 mRNAレベルの上方調節
確立された骨形成の誘導因子でMPCを処理し、NR5A2又はNR1H3 mRNAレベルを、既知の骨形成経路におけるNR5A2又はNR1H3を配置させるための試みで測定する。
10%FCSを含むMPC培地2ml中の100,000個のMPCを、6ウエルプレートの各ウエルに播種する。加湿インキュベータ内において、37℃、10%CO2でインキュベーションしたその翌日、AdC15-hCAR(最終MOI 750)、及びAd-BMP2、Ad-RUNX2、Ad-MSX2、Ad-PTHR1/PTHLH、若しくはネガティブコントロールとしてAd-eGFP又はAd-ルシフェラーゼ(最終MOI 1250及び2500)を用いて、細胞を共感染させる。あるいは、細胞を、デキサメタゾン(終濃度0.1μM)、VitD3(終濃度0.1μM)、又は媒体コントロール(0.1%EtOH又はDMSO)で処理する。RNA単離のために細胞を回収済みでない限り、さらに6日間、細胞を加湿インキュベータ内において、37℃、10%CO2でインキュベートする。ウイルスを除去し、新鮮OS培地(10%FCSを含む、商標登録された培地)2mlで置換する。以降18週にわたり、2週につき3回、培地を補給する。1回おきに、培地を半分又は完全に交換する。単層をいくつかの時間点(図16を参照されたい)で回収し、総RNAを回収して定量し、rtRT−PCRを先の実施例「NR5A2及びNR1H3+T0901317は骨形成マーカーのmRNAレベルを上方調節する」に記載されているように実施する。ネガティブコントロール(デキサメタゾン又はVitD3処理の媒体)又はAd-感染の)Ad-ルシフェラーゼに比較したNR5A2又はNR1H3 mRNAの倍の上方調節を計算する(図16)。
NR5A2 mRNAレベルは、いくつかの時間点でVitD3処理によって上方調節されるようになり、また、感染4日後の時間点でのAd-PTHR1/PTHLH感染によるNR1H3及びNR5A2レベル。
【0100】
(実施例9):石灰化アッセイ
骨形成の過程は、いくつかの連続的事象からなる。骨形成の初期段階の間、BAPは上方調節されるようになるが、石灰化は、骨形成の後期段階に起こる特異的事象である。
骨組織は、有機物質のマトリクス(例えば、コラーゲン)内に埋め込まれた細胞、及び無機物質(Ca2+及びリン酸)からなる。分化した骨細胞が沈着したマトリクスの該骨細胞を染色することによって、インビトロで骨石灰化を示す。Von Kossa染色及びアリザリンレッドS染色は、沈着したリン酸及びカルシウムのそれぞれの可視化を可能にさせる。
【0101】
1日目に、ウエルあたり50,000〜250,000個、通常はウエルあたり100,000個の細胞密度で、6ウエルプレート(Costar社又はNunc社)内に播種する。1日後、AdC15-hCAR(MOI 750)、及びAd-コントロール(eGFP又はBMP2)又はヒットウイルス(Ad5)(250〜20,000のMOI、通常は5000及び2500のMOIで)を用いて、MPCを共感染させる。Ad-GPCR又はAd-NHR実験に関しては、細胞をさらに特定のリガンドで処理することができる。これらを、EC50濃度、及び5〜10倍高い並びに低い濃度で添加する。リガンドを、1週につき2〜3回添加する。L−アスコルビン酸100μg/ml、及びベータ−グリセロリン酸10mMを補充した培地を、1週に2回補給する。実験開始後20〜30日に、Von Kossa染色又はアリザリンレッドS染色で細胞を染色する。
【0102】
アリザリンレッドS染色を下記のように行う:細胞をPBSで1回洗浄し、10%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で45分間固定し、PBSで2回洗浄する。細胞を、40mM水性アリザリンレッドS溶液、pH4.1〜4.3を用いて10分間インキュベートした後、蒸留水で5回洗浄する。白色光を使用して、染色を評価し、撮影する。図7及び図8に実施例を示す。
【0103】
結論として、2つの標的が、それらのそれぞれのリガンド:NR5A2(図7)及びNR1H3(図8)の存在下又は不在下において、石灰化を誘導したことをすでに同定する。
頭蓋冠頭蓋骨組織を用いて実施した研究において、LXRアゴニスト単独の投与は骨形成を誘導し、それによって、前駆細胞を骨芽細胞へと分化させるための方法、骨組織形成を刺激する方法、及び骨粗鬆症を治療又は予防することを含む骨疾患を治療若しくは予防することを含む、本発明の方法に有用である。
【0104】
図9及び図10に提示したデータは、LXRアゴニストが、Ad-NR1H3又はAd-NR1H2の不在下では、Ad-NR1H3又はAd-NR1H2の存在下と同程度レベルのアルカリフォスファターゼ活性を誘導しないことを示す。頭蓋冠頭蓋骨組織での知見に一致しないような知見は、例えば、NR1H3タンパク質又はNR1H2タンパク質の過剰発現が、内因性NR1H3タンパク質又は内因性NR1H2タンパク質よりも、活性化補助因子タンパク質の異なる集合を補充し得るような、多くの因子の結果であり得る。
【0105】
(実施例10)頭蓋冠頭蓋骨アッセイ:NR1H3アゴニストT0901317の活性
成人の骨は、有機(例えば、タイプ−1コラーゲン)物質、及び無機(リン酸カルシウム)物質、骨形成細胞型(MPC、骨芽細胞及び骨細胞)、及び骨分解細胞型(破骨細胞)からなる。標的ヒットの同定及び最初の検証に使用したMPC単層は、インビボの多細胞3次元環境を模倣していないので、骨器官培養モデルを開発した。インビボの骨環境をよく模倣したすばらしいエクスビボモデルは、中足骨又は頭蓋冠頭蓋骨組織培養モデルなどの、骨器官培養である。前者のモデル(インビボ)では、軟骨内骨化によって形成される足骨を使用する。後者のモデル(エクスビボ)では、膜内骨化によって形成される頭蓋骨を使用する(再び図1を参照されたい)。本実施例は、頭蓋冠頭蓋骨を使用する後者のモデルを記載する。
【0106】
CD1メスマウス(該マウスが妊娠11日目のときに、Janvier社(Le Genest St Isle、France)から受け取った)から、出産前後のCD1仔を回収する。仔の頭部を切除し、頭蓋冠頭蓋骨を解剖し、2つの頭蓋冠半球に分割する。滅菌ガーゼを使用して頭蓋冠半球を拭い取って秤量し、24ウエルプレートで培養する(50μg/ml L−アスコルビン酸(Sigma社、A-4034)、5mM β−グリセロリン酸(Sigma社、G-9891)及びペニシリン−ストレプトマイシン(Invitrogen社 カタログ番号15140-122)を含む、MEMアルファ培地又はBGJb-Fitton-Jackson培地)。小分子(リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト)を、3種類の濃度の最小の少なくとも3倍でテストする。0日目に、各小分子を培地に添加し、培地を補給するとき(2〜3日毎)に再び添加する。実験開始3日〜16日後に、滅菌ガーゼを使用して、乾いた頭蓋骨から拭い取った後に、頭蓋骨を再び秤量する。重量差を計算してパーセント重量変化として表現し、平均及び標準偏差(SD)を3回の測定から計算する。スチューデントのt−検定を使用してデータを解析する。Ad-BMP2及びAd-BMP7ポジティブコントロールの重量増加を、図17に示す。
【0107】
新たな類骨の形成を、組織学的に下記のように解析する:頭蓋冠半球を、少なくとも2日間、緩衝化された10%ホルマリン中で固定し、10%EDTA中で一晩、脱石灰化し、等級付けされたアルコールを通して加工し、パラフィンろう中に包埋する。頭蓋冠の3〜10μmの切片を調製し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色する。正常細胞、死細胞、老骨及び新生骨、並びにコラーゲンを、それらの特徴的形態及びH&E染色後に観察される着色によって識別する。これらによって得られた表面を立体解析学的に測定し(μm2読み取り)、それぞれ、骨芽細胞領域、残骸領域、天然型骨領域、及び新生骨領域、コラーゲン領域、並びに総領域(先の5領域の合計)と名づける。さらに、切片上を均等に間隔をあけた8箇所の位置で厚さを測定する(μM読み取り)。
【0108】
頭蓋冠頭蓋骨アッセイの組織学的読み取りを、既知の骨形成作用物質を使用して構築する。頭蓋冠半球を、組換えヒト副甲状腺ホルモン(rhPTH)で処理した。PTHは骨に対して二重作用を有する:断続的な治療計画は骨形成をもたらすが、継続的な治療計画は骨吸収をもたらすので、PTHはインビボで継続的によりはむしろ断続的に投与する必要性がある。二重作用はまた、予期したように、頭蓋冠頭蓋骨モデルにおいて認められる:10−7MのPTHは骨組織において吸収効果を有するが、10−11Mでは骨形成を誘導する。
【0109】
NR1H3及びT0901317は、AP及び石灰化アッセイにおいて良好な成績であるので、市販のNR1H3アゴニストであるT0901317を頭蓋冠頭蓋骨でテストし、さらにNR1H3活性化作用の骨形成潜在能力を示す。
T0901317を、いくつかの濃度(19.5、78.1及び313nM)で、4分割に解体した日に、解剖した頭蓋冠半球の培地に添加する。溶媒(媒体)であるDMSOの濃度を、終濃度0.05%に固定する。T0901317又は媒体コントロールを含む培地を、2〜3日毎に補給する。実験開始後7日目に頭蓋冠半球を回収し、先に記載した組織学的解析に供する。統計学的に明らかな増加が、骨芽細胞、コラーゲン及び新生骨の領域に観察される。該化合物の用量反応活性を、骨芽細胞、総領域(測定した全ての領域の合計)及び厚さの領域に対して認める(図18)。
【0110】
H&E染色とは別に、他の染色を規定通りに行う。ある方法において、AP活性を、下記のようにして可視化する:スライドを、4%パラホルムアルデヒドを使用して10分間固定し、PBS及びMilliQ水で洗浄する。スライドを、ALP緩衝液(ALP緩衝液:0.1M Tris-HCl pH 9.5、20 mM MgCl2、100 mM NaCl)で5分間インキュベートし、ティッシュペーパーを使用して拭い取り、基質(ALP緩衝液中のNBT/BCIP(塩化ニトロブルーテトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸、Roche))とインキュベートする。染色は、色が黄色から茶色へと変わるとき、MilliQ水で洗浄することによって停止させる。
【0111】
(実施例11):優性阻害RUNX2変異体は、NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGによるAP上方調節に干渉する
RUNX2は、MPC又は骨芽細胞から受け取った多くの骨形成要因を、適切な骨形成の転写的出力へと中継する、重要な骨形成転写因子である。マウスにおけるノックアウト研究は、RUNX2が、発達期の骨格の骨化に重要であることを示す(Franceschi RT及びXiao Gの文献(2003))。
【0112】
RUNX2の生物学及びRUNX2が中継する骨形成シグナルを研究するための有用な手段は、変異体である。N末端のRunt相同性DNA結合ドメインは保持するが、C末端転写促進領域を欠く切断型RUNX2タンパク質は、優性阻害RUNX2(DN-RUNX2)タンパク質として作用する。この型の変異体は、インビトロ及びインビボで、RUNX2活性に干渉できる(Zhangらの文献、2000)。MPCは、有意水準のRUNX2 mRNAを発現する(レベルは、b−アクチン mRNAより、約10倍低い)。
【0113】
BMP2の骨形成活性は、RUNX2を介して機能することが知られているので、Ad-BMP2及びAd-DN-RUNX2ウイルスを使用して、DN-RUNX2アッセイを開発する。全長のヒトRUNX2 cDNAを、MPCから抽出した総RNAからのRT−PCRによって得る。アミノ酸1〜214をコードするcDNAの5'部分を、クローン化したRUNX2 cDNAからPCRで得て、アデノウイルスアダプタープラスミドにサブクローニングする。クローン化したフラグメントの同一性を、配列決定で検証する。このプラスミドを使用して、WO 9964582に記載されるようなアデノウイルスストックを作成する。
【0114】
384ウエルプレートのウエルにつき1000個のMPCを播種し、その翌日に、hCARをコードするアデノウイルス(MOI 250)、Ad-BMP2(MOI 6000、2000、666)及びAd-DN-RUNX2又はAd-ルシフェラーゼ(MOI 2000又は666)のうちの1つを使用して感染させる。アルカリフォスファターゼ活性を、感染後6日目に読み取る。図19(A)から、DN-RUNX2の過剰発現が、BMP2誘導性のAP活性の上方調節を減少させることは明白である。この結果は、使用したDN-RUNX2構築物の機能性を示す。
【0115】
DN-RUNX2アッセイを使用して、NR5A2、NR1H3、及びESRRGによるAP活性の上方調節におけるRUNX2の関与をテストする。384ウエルプレートのウエルにつき1000個のMPCを播種し、その翌日に、hCARをコードするアデノウイルス(MOI 250)、Ad-BMP2、Ad-ESRRG、Ad-NR5A2、Ad-NR1H3(MOI 6000、2000、666)及びAd-DN-RUNX2又はAd-ルシフェラーゼ(MOI 1000、又はMOI 2000及び666)のうちの1つを使用して感染させる(図19(C)を参照されたい)。アルカリフォスファターゼ活性を、感染後6日目に読み取り、生データを解析する。図19(B)から、DN-RUNX2の過剰発現が、ESRRG誘導性及びNR5A2誘導性のAP活性の上方調節を顕著に減少させることは明白である。図19(C)から、DN-RUNX2の過剰発現が、T0901317存在下において、NR1H3によって誘導されるAP活性の上方調節を顕著に減少させることは明白である。
【0116】
(実施例12):MPC分離株と無関係な、NR5A2、NR1H3 + T0901317、ESRRGによるアルカリフォスファターゼ活性の誘導
MPCは、インフォームドコンセントを得て、健常な提供者から分離した新鮮骨髄から単離できる(Cambrex Bioscience/Biowhittaker社、Verviers、Belgium)。MPCは、例えば、APアッセイ(実施例2を参照されたい)を使用して、インビトロで骨形成因子を単離するための、生理的に関連のある細胞である。ただ1つのMPC単離物(すなわち、1人の提供者由来)に機能する標的を除外するために、標的もまたいくつかの異なるMPC分離株でテストし、MPCを使用する標的の発見過程における、遺伝的背景の影響を除外する。
【0117】
骨形成因子NR5A2、NR1H3及びESRRGを、実施例2に記載した手順に従ったAPアッセイで、標的の発見のために使用したものとは異なる、3つの独立したMPC分離株でテストする。384ウエルプレートのウエルにつき1000個のMPCを播種し、その翌日に、hCARをコードするアデノウイルス(MOI 250)、Ad-BMP2、Ad-ESRRG、Ad-NR5A2、及びAd-NR1H3(MOI 10000、2500、625)を使用して感染させる。MOI 2500のAd-NR1H3ウイルスを用いて感染させたMPCも同様に、感染1日後に、異なる濃度のT0901317(図20)又は媒体を用いて処理する。4人の異なる提供者(A,B,C,D)から単離したMPCを、Ad-ルシフェラーゼ又はAd-DN-RUNX2と共に、Ad-hCAR、Ad-BMP2(ポジティブコントロール)、Ad-eGFP(ネガティブコントロール)、Ad-NR5A2、Ad-ESRRG(A,B,C,D の左側のパネルに示したデータ)及びAd-NR1H3 + T0901317(A,B,C,D の右側のパネルに示したデータ)を用いて感染させる。感染開始後6日目に、内因性AP活性を測定する。
図20から、NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGが、テストした全ての4つのMPC分離株において、似た範囲でAP活性を誘導することは明らかである。
【0118】
(実施例13):卵巣切除動物モデルにおける骨粗鬆症の治療用LXRアゴニストの解析
潜在的骨粗鬆症の薬物治療法の解析用の素晴らしい標準動物モデルは、卵巣切除モデルである。卵巣切除(OVX)は、骨粗鬆症の重要な原因因子であるエストロゲン産生の減少をもたらす。本実施例は、動物モデルとしてラットを使用するが、マウス又は霊長類などの他の動物モデルも、当業者に日常的に使用される。
【0119】
適宜、食物と水を得ることができる、温度(20±1℃)及び光(12時間の明暗サイクル)の不変条件下で、3月齢のメスのルイスラットを飼育する。ラットを偽手術する、又はケタミン及びキシラジンで麻酔した後に、両側の卵巣切除を実行した。子宮角の結紮の後に、卵巣を摘出する。
以下のグループを編成する:偽手術コントロールラット(N = 10)、生理食塩水のみを与える卵巣切除ラット(OVX、N = 12)、17β−エストラジオール(Sigma Chemical社、St. Louis、MO、USA)を、体重1kg当たり30μgの濃度になるようにオリーブオイルで調節した体積を少量のエタノールに溶かし、6週間毎日皮下的に投与した与える卵巣切除ラット(OVX-E、N = 11)、LXRアゴニストを、適切な媒体(例えば、水及びレシチン)に懸濁し、体重1kg当たり0.1〜100mgの用量で6週間毎日、経口で投与する卵巣切除ラット(OVX-A、N =8)。全てのラットを、6週間後に使用する。使用前の2日目、3日目及び28日目に、骨の標識用に20mg/kgの用量で筋肉内的に投与したキシテトラサイクリン(xytetracycline)(テラマイシン、Pfizer社)をラットに与える。石灰化した骨の組織学及び組織形態計測用に、大腿骨を得る。小動物での骨塩密度(BMD)の測定に適応する二重エネルギーX線吸収(例えば、CTI Concord Microsystems社からの装置、Knoxville TN http://www.ctimi.com)によって、BMDを測定する。大腿遠位の走査を実施する。約220gの重量の1匹のラットで、毎回、2つの異なる部位でラットを再配置して、5回のBMD測定の変動係数(CV=100×SD/平均)を測定することによって、インビボの再現性を評価する。大腿遠位において、変動は1.4%である。さらに、歯槽骨構造を評価する。全ての変数を、すなわち基線で、6週間後に2回測定する。
【0120】
右の大腿遠位を70%エタノールで固定し、脱水し、メチルメタクリル樹脂に包埋し、Policut S microtome(Reichert-Jung社、Heidelberg、Germany)を使用して、縦方向に薄切する。各検体の中心から、5μm及び10μmの切片を得る。5μmの切片を0.1%トルイジンブルー pH6.4で染色し、各サンプルの少なくとも2つの非連続切片を調査する。骨形成及び骨吸収の静的パラメータ並びに構造パラメータを、二次海綿質骨における成長板より下の標準化した部位で測定する。
【0121】
代謝ケージ中で尿を採取する。尿のデオキシピリジノリンを、第三者的診断研究機関を介して、ELISA及びクレアチニンによって測定する。オステオカルシン、骨シアロタンパク質、BMP(骨形態計測タンパク質)及び異化マーカーであるカルボキシ末端テロペプチドを含む他の血漿マーカーを、ELISAで評価する。
エーテル麻酔をしている間に、放血によってラットを犠牲にする。盲検法で全ての動物データを得る。データを、平均±標準偏差(SD)として報告する。対のスチューデントのt−検定を使用して、同じ群内の基線で、6週間後に値を解析する。ANOVAに続いて、ニューマン−クールズ事後検査を使用し、異なる群を比較する。組織形態計測的変数と非侵襲性骨質量測定との間の直線回帰を計算し、ピアソン検定を適用する。統計的有意性を、0.05より低いP値に設定する。
【0122】
(実施例13):卵巣切除動物モデルにおける骨粗鬆症の治療用標的アゴニストの解析
潜在的骨粗鬆症の薬物治療法の解析用の素晴らしい標準動物モデルは、卵巣切除モデルである。卵巣切除(OVX)は、骨粗鬆症の重要な原因因子であるエストロゲン産生の減少をもたらす。以下の実施例は、動物モデルとしてラットに関連するが、マウス又は霊長類などの他の動物モデルも、当業者によって行われるように規定通りに使用する。
【0123】
適宜、食物と水を得ることができる、温度(20±1℃)及び光(12時間の明暗サイクル)の不変条件下で、3月齢のメスのルイスラットを飼育する。ラットを偽手術する、又はケタミン及びキシラジンで麻酔した後に、両側の卵巣切除を実行した。子宮角の結紮の後に、卵巣を摘出する。
以下のグループを編成する:偽手術コントロールラット(N = 10)、生理食塩水のみを与える卵巣切除ラット(OVX、N = 12)、17β−エストラジオール(Sigma Chemical社、St. Louis、MO、USA)を、体重1kg当たり30μgの濃度になるようにオリーブオイルで調節した体積を少量のエタノールに溶かし、6週間毎日皮下的に投与した与える卵巣切除ラット(OVX-E、N = 11)、本出願の標的アゴニストを、適切な媒体(例えば、水及びレシチン)に懸濁し、体重1kg当たり0.1〜100mgの用量で6週間毎日、経口で投与する卵巣切除ラット(OVX-A、N =8)。全てのラットを、6週間後に使用する。使用前の2日目、3日目及び28日目に、骨の標識用に20mg/kgの用量で筋肉内的に投与したキシテトラサイクリン(xytetracycline)(テラマイシン、Pfizer社)をラットに与える。それから、石灰化した骨の組織学及び組織形態計測用に、大腿骨を得る。小動物での骨塩密度(BMD)の測定に適応する二重エネルギーX線吸収(例えば、CTI Concord Microsystems社からの装置、Knoxville TN)によって、BMDを測定する。大腿遠位の走査を実施する。220gの重量の1匹のラットで、毎回、2つの異なる部位でラットを再配置し、5回のBMD測定の変動係数(CV=100×SD/平均)を測定することによって、インビボの再現性を評価する。大腿遠位において、変動は1.4%である。さらに、歯槽骨構造を評価する。全ての変数を、すなわち基線で、6週間後に2回測定する。
【0124】
右の大腿遠位を70%エタノールで固定し、脱水し、メチルメタクリル樹脂に包埋し、Policut S microtome(Reichert-Jung社、Heidelberg、Germany)を使用して、縦方向に薄切する。各検体の中心から、5μm及び10μmの切片を得る。5μmの切片を0.1%トルイジンブルー pH6.4で染色し、各サンプルの少なくとも2つの非連続切片を調査する。骨形成及び骨吸収の静的パラメータ並びに構造パラメータを、二次海綿質骨における成長板より下の標準化した部位で測定した。
【0125】
代謝ケージ中で尿を採取する。尿のデオキシピリジノリンを、第三者的診断研究機関を介して、ELISA及びクレアチニンによって測定する。オステオカルシン、骨シアロタンパク質、BMP(骨形態計測タンパク質)及び異化マーカーであるカルボキシ末端テロペプチドを含む他の血漿マーカーを、ELISAで評価する。
その後、エーテル麻酔をしている間に、放血によってラットを犠牲にする。盲検法で全ての動物データを得る。データを、平均±標準偏差(SD)として報告する。対のスチューデントのt−検定を使用して、同じ群内の基線で、6週間後に値を解析する。ANOVAに続いて、ニューマン−クールズ事後検査を使用し、異なる群を比較する。組織形態計測的変数と非侵襲性骨質量測定との間の直線回帰を計算し、ピアソン検定を適用する。統計的有意性を、0.05より低いP値に設定する。
【0126】
(実施例14)GPCRに対するリガンドの選別
(実施例14A)レポーター遺伝子の選別
Hek293細胞又はCHO-K1細胞などの哺乳動物細胞を、cAMP依存性プロモーター(CREエレメント)の制御下で、ルシフェラーゼ遺伝子を連結したプラスミドを用いて安定的に形質移入させるか、又はcAMP依存性プロモーターの制御下で、ルシフェラーゼ遺伝子を連結したアデノウイルスを用いて形質導入させる。さらに、レポーター構築物に、Ca2+依存性プロモーター(NF-ATエレメント)、又は活性型NF−κBによって制御されるプロモーターの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を用いることができる。それからレポーター構築物を発現しているこれらの細胞に、表1のGPCRのcDNAを連結したアデノウイルスを用いて形質導入する。形質導入後40時間目に、該細胞を、ペプチド(LOPAP、Sigma Aldrich社)、脂質(Biomol、TimTech社)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs、TimTech社)、低分子化合物(Tocris社)、市販のスクリーニングライブラリー、及び表1のGPCRの配列番号からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに親和性を有することが示されている化合物を含む、膨大な対照化合物のコレクションを用いて処理する。
【0127】
ルシフェラーゼ活性を増加させる化合物は、表1のGPCRに対するアゴニストであると考えられる。これらの化合物を検証のために再び選別し、骨芽細胞前駆細胞においてBAPを上方調節させるそれらの活性を選別する。また、該化合物を選別し、GPCRへの結合を検証する。実質的に全ての化合物で、化合物を選別するための結合活性アッセイ及びレポーター活性アッセイが実施可能である。
【0128】
さらに、NF-ATレポーター遺伝子を発現している細胞に、G15のα−サブユニット又はキメラのGαサブユニットをコードするcDNAを連結したアデノウイルスを用いて形質導入することが可能である。G15は、多くの異なるGPCRに共役するGqクラスの乱交雑的Gタンパク質であり、そのようなものとして、細胞内Ca2+貯蔵の放出に対するそれらのシグナル伝達を再指示する。キメラのGアルファサブユニットは、その最後の5個のC末端残基をGαqの最後の5個のC末端残基で置き換えたGs及びGi/oファミリーのメンバーであり、これらのキメラのGタンパク質もまた、cAMPシグナル伝達をCa2+シグナル伝達へと再指示する。
【0129】
(実施例14B)FLIPR選別
Hek293細胞又はCHO-K1細胞などの哺乳動物細胞に、表1のGPCRのcDNAを連結した発現プラスミド構築物を安定的に形質移入する。細胞を播種し、培養し、十分に安定な細胞を得ることができるまで選択する。Fura3又はFura4などのCa2+依存性蛍光物質を細胞に添加する。余剰の蛍光物質を洗い流した後、細胞を、ペプチド(LOPAP、Sigma Aldrich社)、脂質(Biomol、TimTech社)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs、TimTech社)、低分子化合物(Tocris社)、市販のスクリーニングライブラリー、及び表1のGPCRの配列番号からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに親和性を有することが示されている化合物を含む、膨大な対照化合物のコレクション、及び細胞への化合物に対して選別する。受容体の活性化を、蛍光物質と放出されるCa2+との相互作用に起因する蛍光のほぼ瞬間的な増加として測定する。蛍光を増加させる化合物は、選別する受容体に対するアゴニストであると考えられる。これらの化合物を再び選別し、表1のGPCRへの結合を測定する。
【0130】
(実施例14C)エクオ選別(AequoScreen)
アポエクオリンを安定的に発現するCHO細胞に、表1のGPCRのcDNAを連結したプラスミド構築物を安定的に形質移入する。細胞を播種し、培養し、十分に安定な細胞を得ることができるまで選択する。アポエクオリンの補助因子であるセレンテラジンを細胞に添加する。受容体が活性化すると、細胞内Ca2+貯蔵は空となり、エクオリンは発光過程でセレンテラジンと反応する。発光は、受容体活性化の指標である。アポエクオリン及び受容体の両方を安定的に発現するCHO細胞を、化合物を細胞に添加することによって、ペプチド(LOPAP、Sigma Aldrich社)、脂質(Biomol、TimTech社)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs、TimTech社)、低分子化合物(Tocris社)、市販のスクリーニングライブラリー、及び表1のGPCRの配列番号からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに親和性を有することが示されている化合物を含む、膨大な対照化合物のコレクションに対して選別する。受容体の活性化を、アポエクオリン、セレンテラジン、及び放出されるCa2+の相互作用に起因する蛍光のほぼ瞬間的な増加として測定する。蛍光を増加させる化合物は、選別する受容体に対するアゴニストであると考えられる。これらの化合物を再び選別し、表1のGPCRへの結合を測定する。光を増加させる化合物は、選別する受容体に対するアゴニストであると考えられる。これらの化合物を再び選別し、表1のGPCRへの結合量を測定する。
【0131】
さらに、アポエクオリン遺伝子を発現している細胞に、G15のα−サブユニット又はキメラのGαサブユニットをコードするcDNAを連結したアデノウイルスを用いて形質導入する。G15は、多くの異なるGPCRに共役するGqクラスの乱交雑的Gタンパク質であり、そのようなものとして、細胞内Ca2+貯蔵の放出に対するそれらのシグナル伝達を再指示する。キメラのGアルファサブユニットは、その最後の5個のC末端残基をGαqの最後の5個のC末端残基で置き換えたGs及びGi/oファミリーのメンバーであり、これらのキメラのGタンパク質もまた、cAMPシグナル伝達をCa2+シグナル伝達へと再指示する。
【0132】
(実施例14D)GPCRポリペプチドに結合する化合物の選別(置換実験)
GPCRの表1のポリペプチドへの結合で化合物を選別する。ポリペプチドへの化合物の親和性を、置換実験で測定する。手短に言うと、GPCRポリペプチドを、該ポリペプチドと結合することが知られている標識リガンド(放射性標識、蛍光標識)及び非標識リガンドと共にインキュベートする。ポリペプチド由来の標識リガンドの置換を、それでも該ポリペプチドに会合している標識リガンドの量を測定することによって決定する。ポリペプチドに会合した量を、化合物の濃度に対してプロットし、IC50値を計算する。この値は、その標的、すなわち、GPCRの表1のポリペプチドへの化合物の結合親和性を反映する。強力な結合剤は、ナノモラー及びピコモラーの範囲においてさえ、IC50を有する。少なくとも10マイクロモル又はそれよりよい(nmol〜pmol)でIC50を有する化合物を、例えばアルカリフォスファターゼアッセイに適用し、それらの骨形成への効果をチェックする。GPCRの表1のポリペプチドは、該アッセイを、細胞、細胞画分又は生化学的に精製したタンパク質で実施するかどうかによって、様々な方法で調製可能である。
【0133】
(実施例14E)表1のGPCRへ結合する化合物の選別(一般的なGPCR選別アッセイ)
Gタンパク質受容体が構成的に活性になる場合、Gタンパク質受容体はGタンパク質(Gq、Gs、Gi、Go)に結合し、Gタンパク質へのGTPの結合を促進させる。それからGタンパク質はGTPaseとして機能し、ゆっくりとGTPをGDPへ加水分解し、それによって、通常条件下において、受容体は不活性型となる。しかしながら、構成的に活性化された受容体は、GDPをGTPへと交換し続ける。GTPの非加水分解性類似体である[35S]GTPγSを使用して、構成的に活性化された受容体を発現する膜への、増幅された結合をモニターすることができる。[35S]GTPγSを使用して、リガンドの不在下及び存在下における、膜へのGタンパク質共役をモニターすることができることを報告する。さらに好ましい方法は、GPCR−Gタンパク質融合タンパク質の使用である。表1のGPCR−Gタンパク質融合タンパク質を生成する方法は、当業者によく知られている。表1のGPCR−Gタンパク質融合タンパク質を発現している膜を、候補アゴニスト化合物の直接的同定での使用のために調製する。表1のGPCR−Gタンパク質融合タンパク質を有するホモジナイズした膜を、96ウエルプレート中に移す。ピンツール(pin-tool)を使用して、候補化合物を各ウエルに移して[35S]GTPγSを加え、その後、室温で60分間振盪機上でインキュベーションする。アッセイは、22℃で15分間、4000RPMでプレートを回転させることで停止させる。それからプレートをを吸引し、その後放射能を読み取る。
【0134】
(実施例14F)細胞表面上での受容体リガンド結合
哺乳動物細胞のアデノウイルスを用いた形質導入によって、哺乳動物細胞(Hek293、CHO、COS7)で受容体を発現させる(米国特許第6,340,595号を参照されたい)。10pM〜10μMにわたる様々な濃度(4℃で3時間:pH 7.4に調整した、25 mM HEPES、140 mM NaCl、1 mM CaCl2、5 mM MgCl2及び0.2% BSA)で、標識リガンド(ヨウ化、トリチウム化、又は蛍光)及び非標識化合物の両方を共にインキュベートする。細胞回収機(Packard社)を使用して、反応混合物をPEI処理GF/Bガラスフィルター上に吸引する。フィルターを、氷冷洗浄緩衝液(pH 7.4に調整した、25 mM HEPES、500 mM NaCl、1 mM CaCl2、5 mM MgCl2)で2回洗浄する。シンチラント(MicroScint-10; 35μl)を添加してフィルターを乾かし、(パッカードトップカウント(Packard Topcount))シンチレーションカウンターで該フィルターを計測する。データを解析し、プリズムソフトウエア(Prism software(GraphPad Software社、San Diego、Calif.))を使用してプロットする。競合曲線を解析し、IC50値を計算する。1以上のデータ点が、競合曲線のシグモイド範囲内、又はシグモイド範囲の近傍にこない場合、アッセイを繰り返し、標識リガンドの濃度及び非標識化合物が、競合曲線のシグモイド範囲近傍又はその内により多くのデータ点を有するように適合させる。
【0135】
(実施例14G)膜画分上の受容体リガンド結合調査
哺乳動物細胞(Hek293、CHO、COS7)から膜標本を単離し、前記受容体を過剰発現している細胞を、以下のように使用する:形質導入細胞から培地を吸引し、穏やかに剥がすことによって、細胞を1×PBS中に回収する。細胞を沈殿させ(2500rpm、5分)、50 mM Tris pH 7.4に再懸濁する(10 x 106細胞/ml)。細胞の沈殿を、3×5秒超音波処理(UP50H;sonotrode MS1;最大振幅:140μm;最大超音波力厚さ:125W/cm2)することによってホモジナイズする。最大速度(13,000 rpm〜15,000から20,000g又はrcf)で20分遠心処理することによって、膜画分を調製する。その結果生じた沈殿を、500μlの50 mM Tris pH 7.4に再懸濁し、再び3×5秒超音波処理する。遠心分離によって膜画分を単離し、最終的にPBS中に再懸濁する。結合競合及びIC50値の導出を、先に記載したように決定する。
【0136】
(実施例14H)内在化選別(1)
GPCR関連性シグナル転換経路の活性化は、一般的に、細胞質から原形質膜、又は細胞質から核への、特定のシグナル転換分子の移行を誘導する。Norak社は、細胞質から原形質膜への、アゴニスト誘導性の受容体−β−アレスチン−GFP複合体の移行、及びそれに続いて起こる受容体脱感作の間に起こる、この複合体の内在化に基づいたそれらのトランスフロー(transfluor)アッセイを開発した。同様のアッセイは、β−アレスチンの代わりに、GFPタグを付加した受容体を使用する。Hek293細胞に、表1のGPCR−eGFP融合タンパク質を翻訳する、表1のGPCRのベクターを形質導入する。形質導入の48時間後に、該細胞を60分間血清なしの新鮮培地に沈め、37℃、5%CO2で、15、30、60又は120分間リガンドを処理する。示した曝露時間後、細胞をPBSで洗浄し、室温で20分間、5%パラホルムアルデヒドで固定する。GFP蛍光を、デジタルカメラを搭載するZeiss社の顕微鏡で可視化する。この方法は、原形質膜へのアレスチン融合タンパク質の移行を誘導する化合物の同定を目的とする。
【0137】
(実施例14I)内在化選別(2)
β−アレスチンとβ−ガラクトシダーゼ酵素の相補性、及びエネルギー提供体として受容体及びエネルギー受容体としてβ−アレスチンをもちいたアッセイに基づいたBRETを使用した、転移アッセイの様々な変法が存在する。また、pH感受性色素をもちいて標識した特定の受容体抗体の使用を利用して、アゴニストで誘導された受容体の酸性リソソームへの転移を検出する。全ての転移アッセイを、アゴニスト的に機能するリガンドの選別に使用する。
【0138】
(実施例14J)メラニン細胞アッセイ(Arena Pharmaceutical社)
メラニン細胞アッセイは、アフリカツメガエルのメラニン細胞内におけるメラノソームを含むメラニンの分布を変化させる、GPCRの能力に基づいている。メラノソームの分布は、Gi/o又はGs/qのどちらかに共役する外因性受容体に依存する。光吸収を測定することによって、メラノソームの分布(分散型又は凝集型)を容易に検出する。この型のアッセイを、アンタゴニスト化合物の選別とアゴニスト化合物の選別の両方に使用する。
【0139】
(参考文献)
Cortez-Retamozoらの論文(2004). Cancer Res 64: 2853-7
Lipinsky、CAらの論文、(2001). Adv Drug Deliv Rev 46: 3-26
Nakashima K及びde Crombrugghe Bの論文、(2003). Trends Genet 19(8): 458-66
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】膜内骨化及び軟骨内骨化。
【図2】骨芽細胞分化アッセイの原理。
【図3】APアッセイにおけるノックインコントロールプレートの成績。
【図4】1つのフレックスセレクトスクリーニングプレート(FLeXeSelect screening plate)での生データのドットプロット表示。
【図5】選別した化合物による、AP活性の用量依存的上方調節。
【図6】BAP−mRNAの上方調節対PLAP−mRNA又はIAP−mRNAの上方調節の解析。
【図7】初代ヒトMPCの石灰化。
【図8】初代ヒトMPCの石灰化。
【図9】Ad-NR1H3の存在下における、LXRアゴニストGW3965によるAP活性の用量依存的上方調節。
【図10】Ad-NR1H2の存在下における、LXRアゴニストT0901317によるAP活性の用量依存的上方調節。
【図11】Ad-NR1H2の存在下における、LXRアゴニストGW3965によるAP活性の用量依存的上方調節。
【図12】本出願において使用したアセチルポドカルピック二量体(APD)の構造。
【図13】Ad-NR1H2又はAd-NR1H3の存在下における、LXRアゴニストAPDによるAP活性の用量依存的上方調節。
【図14A−14D】骨形成に関連する細胞型のベータアクチンに比較した、本発明の4つの遺伝子のCt値及び相対的発現レベル。
【図15】NR5A2及びNR1H3+T0901317は、骨形成マーカーのmRNAレベルを上方調節する。
【図16】骨形成誘発による、NR5A2 mRNA及びNR1H3 mRNAレベルの上方調節。
【図17】ポジティブコントロールAd-BMP2及びAd-BMP7によって誘導される、頭蓋冠頭蓋骨外植片の重量増加。
【図18】T0901317によって誘導される、頭蓋冠頭蓋骨外植片の重量増加。
【図19】DN-RUNX2は、NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGによるAP活性の誘導に干渉する。
【図20】NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGは、MPC単離物とは無関係にAP活性を誘導する。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は骨代謝の分野、特に、ヒト及び他の動物における骨ホメオスタシスのアンバランス又は障害を伴う疾患の予防並びに治療の方法、治療法、及び組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨は、2つの異なる細胞系統:骨芽細胞として知られる骨形成細胞、及び破骨細胞として知られる骨再吸収細胞の間における複雑な相互作用によって、継続的に破壊(再吸収)され、かつ再生される動的組織である。前駆細胞から機能的破骨細胞への分化又は発達に関与する転写因子及び成長因子のカスケードは、かなり確立されている。対照的に、前駆細胞から骨芽細胞の発達に関与する因子については、ほとんど知られていない。間葉前駆体又は間葉幹細胞(MPC)は、破骨細胞及び骨芽細胞の両方の分化の開始点を意味する。インビボでの胚発生の間、骨形成は2つの異なる段階:膜内骨化、及び/又は軟骨内骨化(Nakashima及びde Crombruggheの文献,(2003)から抜粋した図1を参照されたい)を介して起こる。膜内骨化の間、頭蓋骨又は鎖骨などの扁平骨は、間葉細胞の凝集から直接的に形成される。軟骨内骨化の間、四肢骨などの長骨は、中間体が、さらに骨芽細胞及び骨細胞へと分化する内皮細胞、破骨細胞及び間葉細胞による、さらなる発達の間に浸潤される間充織凝集の間に形成される、軟骨中間体から形成される。この後者の骨芽細胞への分化の間、骨アルカリフォスファターゼ活性(BAP)は上方調節される。
【0003】
多くの疾患は、骨再吸収と骨形成との間の微調整されたバランスにおける障害の直接的な結果である。大部分のこれらの疾患は骨疾患であり、多くの患者を苦しめる。典型的な疾患は、悪性の低カルシウム血症、パジェット病、関節リウマチ及び歯周病などの炎症性骨疾患、骨格転移の間に起こる局所性骨形成、クロウゾン症候群、くる病、成熟遅延骨異形成症、濃化異骨症/トゥールーズ−ロートレック病、骨形成不全症、及び骨粗鬆症を含む。単独で最も一般的な骨疾患は、50歳以上の女性5人に1人、及び50歳以上の男性20人に1人を冒す、骨粗鬆症である。
【0004】
(報告された進展)
多くの治療法が開発されており、骨粗鬆症、及び関連する骨疾患に苦しむ患者に提供されている。これらの治療的アプローチは正味の骨形成の増加をもたらし、かつ:ホルモン補充療法(HRT);選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);ビスホスホネート;及びカルシトニンを含む。これらの治療は骨再吸収を減速させるが、失われた骨は十分には補充されないので、該治療は骨折を根絶しない。骨折は、骨形成が十分に増加した場合にのみ阻止される。それゆえ、治療的介入に関する基礎として、骨同化を強化する骨形成経路を同定することに、大きな利益がある。
【0005】
副甲状腺ホルモン(PTH)1-34は、骨粗鬆症治療市場の唯一の骨同化治療である。PTHは、断続的に投与された場合に骨同化作用を示すが、毎日注入する必要があり、また高用量のPTHを用いて治療した動物において腫瘍が形成されたという所見から、腫瘍原性の副作用があり得る。
骨形成タンパク質(BMP)は、骨同化治療学の別の分野であるが、ニッチ市場でのみ承認されてきた。骨形成タンパク質に対する受容体は、骨以外の多くの組織で同定されてきており、またBMP自身は、多種多様な組織において、特定の時間的かつ空間的パターンで発現する。これは、BMPは、全身的に投与された場合、治療剤として有用であると潜在的に限定されるが、骨以外の多くの組織に効力を有し得ることを示唆する。
【0006】
骨形成を促進し、かつ新たな骨同化治療の開発に使用され得る、付加的な標的を同定する明らかな必要性がある。
本発明は、GPCRペプチド及びNHRペプチドを含む、特定の既知のポリペプチドが、骨髄細胞における骨形成分化の上方調節及び/又は誘導因子であり、またこれらのポリペプチドに対する既知のアゴニストは、骨ホメオスタシスを促進するのに効果的であるという発見に基づいている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、骨ホメオスタシスを促進させる方法及び組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、骨芽細胞前駆細胞を含む、脊椎動物細胞の集団において、骨形成を促進する化合物を同定する方法に関するものであり、化合物を配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに接触させること;及び骨形成に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定することを含む。
本発明はまた、骨ホメオスタシスのアンバランスに苦しむ、又は感受性である対象において、骨形成分化を促進させる方法、及びこれらの方法に有用な組成物に関するものであり、対象に、配列番号:101〜118及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む治療的有効量のアゴニスト、又は配列番号:101〜118からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする発現性核酸を投与することを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、骨組織のインビトロ産生の方法に関するものであり、細胞の層状品を形成させるために、基質上に未分化脊椎動物細胞を適用させること、及び前記未分化細胞が骨芽細胞へと分化するのに十分な時間、配列番号:1〜18からなる群から選択される発現性核酸を含むポリヌクレオチドを前記層状品と接触させ、それによって骨芽細胞を含むマトリクスを産生することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(詳細な説明)
下記の用語は、以下に示す意味を有することが意図され、かつ本発明の記載及び意図される範囲を理解することに有用である。
用語「アゴニスト」は、最も広い意味で、リガンドが結合する受容体を活性化させるリガンドをさす。
用語「キャリアー」は、医薬組成物に、培地、容積、及び/又は使用可能な形態を提供するために、医薬組成物の製剤に使用される非毒性物質を意味する。キャリアーは、賦形剤、安定剤、又は水性pH緩衝液などの、1以上のそのような物質を含んでよい。生理的に許容し得るキャリアーの例は、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸を含む、水性緩衝成分又は固体緩衝成分;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0011】
用語「化合物」は、本発明のアッセイに関連して記載される、「テスト化合物」又は「薬剤候補化合物」の文脈で、本明細書に使用される。そのようなものとして、これらの化合物は、合成、又は天然資源由来の有機化合物若しくは無機化合物を含む。化合物は、比較的低分子量で特徴付けられるポリヌクレオチド、脂質、又はホルモン類似体などの、無機化合物若しくは有機化合物を含む。他の生体高分子有機テスト化合物は、約2〜約40アミノ酸からなるペプチド、及び抗体又は抗体複合体などの、約40〜約500アミノ酸からなる、より大きなポリペプチドを含む。
【0012】
用語「接触」又は「接触させること」は、インビトロシステム又はインビボシステムにかかわらず、少なくとも2つの成分を合わせるすることを意味する。
用語「病状(condition)」又は「疾患」は、あるアミロイドベータタンパク質前駆体プロセシングの欠損からもたらされる、症状の明白な表れ(すなわち、疾患)、又は異常な臨床的指標(例えば、生化学的指標)の顕在化を意味する。あるいは、用語「疾患」は、そのような症状の進展、又は異常な臨床的指標の、遺伝的リスク又は環境的リスク、若しくは傾向をさす。
【0013】
用語「有効量」は、医師、又は他の臨床医によって探求されている対象の生物学的又は医学的反応を誘起させる、薬物若しくは医薬品の量を意味する。特に、骨ホメオスタシスのアンバランスの治療に関して、用語「効果的な骨形成刺激量」は、対象の骨組織において、破骨細胞に対する骨芽細胞の割合の生物学的に重要な増加を引き起こす、効果的な量のLXRアゴニスト又はLXRアゴニストのプロドラッグを意味することを意図する。生物学的に重要な増加は、骨密度、骨強度、又は当業者に既知の診断的徴候の方法によって、間接的に検出可能な増加である。
【0014】
用語「発現」は、内因性発現、及び、例えば形質移入、又は安定的形質導入による過剰発現の両方に関するものである。
用語「GPCR」は、G−タンパク質共役受容体を意味する。好ましいGPCRは、骨形成分化を促進するものとして、出願者によって同定されたそれらの受容体を含む。最も好ましいGPCRは、表1に特定したものであり、その天然存在型転写変異体を含む。
【0015】
用語「リガンド」は、内因性の天然存在型受容体に特異的な、内因性天然存在型分子を意味する。
用語「LXR」は、先行技術で知られているようなこの受容体の全ての亜型、及びそのような亜型をコードする対応遺伝子を含む。具体的には、LXRは、LXR−アルファ及びLXR−ベータを含み、LXRのアゴニストは、LXR−アルファ又はLXR−ベータのアゴニストを含むことは理解すべきである。LXR−アルファは、様々な名前に従属するものをさし、本出願の目的において、LXR−アルファは、LXR−アルファ、LXRa、LXRα、RLD−1、NR1H3、又は登録番号U22662に相同性を有する遺伝子、若しくはそのようなポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質に相同性を有するタンパク質として言及される、任意の遺伝子を意味することは理解すべきである。同様に、LXR−ベータは、LXRb、LXR−ベータ、LXRベータ、NER、NER1、UR、OR−1、R1P15、NR1H2、又は登録番号U07132に相同性を有する遺伝子、若しくはそのようなポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質に相同性を有するタンパク質として言及される、任意の遺伝子を含むことは理解すべきである。「相同性」は、ポリヌクレオチドの「相同」配列が、当業者に理解されるような、厳しいハイブリダイゼーション条件下で、LXR配列にハイブリダイズすることができる程度の配列類似性を意味する。
【0016】
用語「NHR」は、核ホルモン受容体を意味する。
用語「骨形成」は、いくつかの連続的事象からなる過程を意味し、細胞における骨アルカリフォスファターゼの初期の上方調節、及び過程の後期段階で起こるカルシウム沈着(石灰化)を含む。
用語「骨形成分化」は、骨関連細胞の系統における未分化細胞が、カルシウムの沈着、及び骨組織の形成をもたらす同化作用を示すことによってより特殊化されるようになる、任意の過程をさす。
【0017】
用語「医薬として許容し得るキャリアー」は、例えば、以下のような医薬として許容し得るキャリアー:ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、石膏、スクロース、滑石、ステアリン酸、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシアなどの固形キャリアー;及び、植物油、ラッカセイ油、及び滅菌水などの液体を含む。しかしながら、医薬として許容し得るキャリアーのこのリスト化は、限定として解釈すべきではない。
【0018】
用語「医薬として許容し得る塩」は、本発明の化合物の、非毒性の無機酸付加塩及び塩基付加塩、並びに非毒性の有機酸付加塩及び塩基付加塩をさす。これらの塩は、本発明に有用な化合物の最終的単離及び精製の間に、インサイチュウで調製され得る。
用語「ポリヌクレオチド」は、二本鎖DNA、又は一本鎖DNA及び(メッセンジャー)RNA、並びに全ての型のオリゴヌクレオチドをさす。ポリヌクレオチドはまた、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの、修飾骨格を有する核酸を含む。「ポリヌクレオチドの誘導体」は、DNA分子、RNA分子、及びオリゴヌクレオチドを意味し、ポリヌクレオチドのストレッチ又は核酸残基、例えば、ポリヌクレオチドの天然存在型形態の核酸配列に比較して、核酸変異を有し得るポリヌクレオチドを含む。誘導体はさらに、PNA、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチル−ホスホロチオエートなどの修飾骨格を有する核酸、非天然存在型核酸残基、又はメチル−、チオ−、硫酸、ベンゾイル−、フェニル−、アミノ−、プロピル−、クロロ−、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、又はその検出を促進するためのレポーター分子を含む。「ポリヌクレオチドのフラグメント」は、完全な配列としての活性に実質的に類似しているが、必ずしも同一ではないことを示す、連続した核酸残基のストレッチを含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0019】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質、 タンパク質性分子、タンパク質の画分、ペプチド、オリゴペプチド、及び酵素(キナーゼ、プロテアーゼ、GCPRなど)をさす。「ポリペプチドの誘導体」は、ポリペプチドの連続的なアミノ酸残基のストレッチを含み、かつタンパク質の生物活性、例えば、ポリペプチドの天然存在型形態のアミノ酸配列に比較してアミノ酸変異を有するポリペプチドを保持する、それらのペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素をさす。誘導体はさらに、ポリペプチドの天然存在型のアミノ酸配列に比較して、付加的な天然存在型アミノ酸残基、変性アミノ酸残基、グリコシル化アミノ酸残基、アシル化アミノ酸残基、又は非天然存在型アミノ酸残基を含んでよい。誘導体はまた、天然存在型のポリペプチドのアミノ酸配列に比較して1以上の非アミノ酸置換基、例えば、アミノ酸配列に共有的に、又は非共有的に結合したレポーター分子、若しくは他のリガンドを含んでよい。「ポリペプチドのフラグメント」は、連続的なアミノ酸残基のストレッチを含み、かつ完全な配列の機能的活性に実質的に類似するが、必ずしも同一ではないことを示す、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素をさす。
【0020】
用語「溶媒和物」は、1以上の溶媒分子と、本発明に有用な化合物の、物理的な関連性を意味する。この物理的な関連性は、水素結合を含む。場合によっては、溶媒和物は、例えば、1以上の溶媒分子が、結晶性固体の結晶格子中に組み込まれる場合に単離することができる。「溶媒和物」は、液相溶媒和物、及び単離可能な溶媒和物の両方を含む。典型的な溶媒和物は、水和物、エタノラート、及びメタノラートを含む。
【0021】
用語「対象」は、ヒト、及び他の哺乳動物を含む。
用語「治療(treating)」は、用語「治療」を適用する、障害又は病状を緩和させることをさし、そのような障害又は病状の1以上の症状を含む。本明細書で使用するように、関連する用語「治療(treatment)」は、用語「治療(treating)」が先に定義されたように、障害、症状、又は病状を治療する行為をさす。
【0022】
用語「ベクター」もまた、組換えウイルス、又は組換えウイルスをコードする核酸などのウイルスベクターと同様に、プラスミドに関するものである。
用語「脊椎動物細胞」は、トリ、爬虫類、両生類、有袋類、及び哺乳動物種を含む、バーテラ(vertera)構造を有する動物由来の細胞を意味する。好ましい細胞は、哺乳動物種由来のものであり、もっとも好ましい細胞は、ヒトの細胞である。哺乳動物細胞は、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、マウス及びラットなどのブタマウス(porcine murine)、及びウサギを含む。
【0023】
(本発明の方法)
本発明は、骨形成、さらに詳しい表現をすれば、骨芽細胞前駆細胞の骨形成分化を増加させる及び/又は誘導する方法に関するものであり、前記方法は、(1)下記の表1に特定される標的遺伝子によってコードされるポリペプチド、又はそのいくつかが下記の表1Aに特定される機能的フラグメント若しくは誘導体を発現している脊椎動物細胞の集団を;(2)そのような標的遺伝子に対するアゴニストと接触させることを含み;かつ、(3)それによって前記細胞集団の骨形成分化のレベルを増加させることを含む。
【0024】
【表1】
【0025】
(標的遺伝子と骨形成分化の間の関連性を同定するために使用される方法)
先に特定した骨形成分化関連標的遺伝子は、下記の様式で、いわゆる「ノックイン」ライブラリーを使用して同定した。組換えアデノウイルスを使用することによって、本発明者は、細胞に、特定の天然遺伝子及び遺伝子産物をコードするcDNA分子を導入した。細胞の各分離亜集団に導入された各cDNAは、細胞内で、対応遺伝子及び遺伝子産物の発現、並びに活性を誘導した。骨形成分化を誘導、又は増加させるcDNAを同定することによって、対応標的遺伝子に直接的なつながりができる。次に、この標的遺伝子を、大抵10マイクロモラーの結合親和性で、骨形成分化を活性化させる、又は刺激するために使用され得る化合物を同定する方法に使用する。実際に、この選別で使用される標的遺伝子に結合することが知られる化合物は、細胞の骨形成分化を増加させることが見出され、これは、この過程におけるこれらの標的遺伝子の役割を示すものである。この方法を使用して、骨芽細胞分化の過程に関与するような、LXR受容体を含むポリペプチド、及び骨芽細胞分化を促進又は誘導するための、そのアゴニストの用途を同定する。
【0026】
骨芽細胞分化が促進されている細胞の集団は、好ましくは、任意の未分化細胞型である。未分化細胞とは、特殊化の初期段階、すなわち、それらの最終的な機能を未だ有していない多能性細胞であり、また誘導することで、ほぼ全ての与えられた細胞型を形成することができる。特にそのような細胞は、脂肪組織由来の細胞と同様に、血液細胞及び骨髄に存在する細胞である。加えて、さらに間葉前駆細胞へと分化し得る細胞、例えば、胚性幹細胞のような全能性細胞などを、本発明において検討する。
【0027】
ノックインライブラリーで使用されるポリペプチドの好ましいクラスは、核ホルモン受容体(NHR)のクラスにある。背景として、ステロイド、レチノイド、チロイド、及びビタミンD2などの脂溶性ホルモンは、細胞内での遺伝子転写を調節する。例えば、ステロイドホルモンは、細胞内に入り、その相補的受容体に結合し、諸現象の複雑なカスケードを開始させる。ホルモン−受容体複合体は、ホルモン応答配列(HRE)と呼ばれるDNA配列に結合する二量体を形成する。この結合は、適切な遺伝子の転写を活性化させ、又はいくつかの場合においては阻害する。そのようなものとして、NHRの活性もまた、適切なホルモン受容体配列(HRE)を含むプロモーターの制御下で、レポーター遺伝子を用いて測定し得る。表1で特定した、最も好ましいNHRポリペプチドは、NR5A2、NR1H3及びNR1H2、並びにESRRGである。
【0028】
ノックインライブラリーで使用されるポリペプチドの別の好ましいクラスは、G−タンパク質共役受容体(GPCR)であり、ここで前記GPCRの発現及び/又は活性は、二次メッセンジャーである、サイクリックAMP、Ca2+、又はその両方の任意の1つのレベルを定量することによって測定してよい。好ましくは、二次メッセンジャーのレベルは、二次メッセンジャーに応答するプロモーターの制御下で、レポーター遺伝子を用いて測定する。より好ましくは、プロモーターは、サイクリックAMP応答性プロモーター、NF−ΚB応答性プロモーター、又はNF−AT応答性プロモーターである。別の好ましい実施態様において、レポーター遺伝子は:アルカリフォスファターゼ、GFP、eGFP、dGFP、ルシフェラーゼ、及びb−ガラクトシダーゼからなる群から選択される。
【0029】
骨形成分化を測定する方法、及び選別における有用性が見出された方法は、骨形態形成に関与し、かつアルカリフォスファターゼ、タイプ−1コラーゲン、オステオカルシン、及びオステオポンチンなどの分化過程の間に誘導される、特定のタンパク質の発現レベルを決定する。これらのマーカータンパク質の活性レベルは、特異的基質を用いたアッセイを介して測定することができる。例えば、骨アルカリフォスファターゼ(BAP、又は骨AP)活性は、メチルウンベリフェリル7リン酸(MUP)溶液を細胞に添加することによって測定できる。AP活性によるMUP基質の切断によって生じる蛍光を、以下の実施例で概説するような、蛍光プレートリーダーで測定する。標的遺伝子の発現はまた、標的遺伝子に対して指示された特異的抗体を用いるウエスタンブロッティング、又は標的遺伝子に対して指示された特異的抗体を用いるELISAなどの、当業者に知られている方法によって測定可能である。あるいは、ノーザンブロッティング及び定量的リアルタイムPCRのような、当業者に知られている方法を用いて、細胞内におけるmRNA発現レベルを解析することができる。
【0030】
前述のマーカータンパク質の発現又は活性が、アゴニスト化合物とのインキュベーションで誘導されるならば、骨形成分化は促進される。タンパク質発現レベルの誘導は、数パーセントの増加から、2、3、又は4桁より高い振幅で変化し得るが、患者(インビボ)において、少なくとも2倍(又はそれ以上)のタンパク質発現の誘導が、好ましいレベルである。それゆえ、前記発現及び/又は活性の好ましい誘導は、インビボでの100%(又はそれ以上)の誘導に匹敵する。しかしながら、アゴニスト化合物を治療的設定に適用した場合、インビトロでのわずかな減少レベルが、インビボにおいて、さらにより高い誘導をもたらし得るので、インビトロで見出されたレベルは、インビボで見出されたレベルに完全には相関しないことは排除できない。それゆえ、少なくとも20%、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは、骨形成マーカータンパク質の発現又は活性の2倍の誘導を意味する、100%以上のインビトロレベルを誘導することが好ましい。
【0031】
表1にリスト化されている任意の標的ポリペプチド、又はその誘導体、若しくは下記の表1Aに特定されているそのタンパク質ドメインフラグメントなどのそのフラグメントに結合することによって、細胞の骨形成分化に影響を与える化合物のスクリーニングのために、ペプチドライブラリー(LOPAP(商標)、Sigma Aldrich社)、脂質ライブラリー(BioMol社)、合成化合物ライブラリー(LOPAC(商標)、Sigma Aldrich社)、又は天然化合物ライブラリー(Specs、TimTec社)などの化合物ライブラリーを使用することができる。
【0032】
【表1A】
【0033】
テスト化合物とポリペプチドとの結合親和性は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore)の使用などの当業者に知られた方法、標識化合物を用いた飽和結合解析(スキャッチャード及びリンドモ解析)、微分紫外分光光度計、蛍光偏光アッセイ、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPRR)システム、蛍光共鳴エネルギー転移、及び生物発光共鳴エネルギー転移で測定できる。
【0034】
化合物の結合親和性はまた、解離定数(Kd)で、又はIC50若しくはEC50として表現することができる。IC50は、ポリペプチドに対する、別のリガンドの結合の50%阻害に必要とされる化合物の濃度を表す。EC50は、受容体機能を測定する任意のアッセイにおいて、最大効率の50%を得るために必要とされる濃度を表す。解離定数Kdは、ポリペプチドに対して、リガンドがどの程度結合するかの尺度であり、該ポリペプチド上の結合部位の正確に半分を飽和させるために必要とされるリガンド濃度に等しい。高い結合親和性を有する化合物は、低いKd、低いIC50値、及び低いEC50を有する、すなわち100nM〜1pMの範囲内であり;中程度から低親和性結合は、高いKd、高いIC50値、及び高いEC50値、すなわちマイクロモラーの範囲内に合致する。結合親和性は、インビトロでの設定と同様に、インビボでの設定でも測定してよい。
【0035】
細胞の骨形成分化の誘導は、様々な方法で達成されてよい。本発明で有用性が見出された化合物は、ポリペプチドを直接的に標的とし、それらの活性を誘導又は促進し得る。これらの化合物はまた、ポリペプチドをコードする核酸からの該ポリペプチドの転写及び/又は翻訳に関与する、転写/翻訳機構を標的とし得る。さらに、化合物は、その各DNA及び各mRNAを標的とし、それによってポリペプチドの産生を誘導し、その結果それらの活性を導き得る。それゆえ、本発明の方法を使用することによって同定された化合物が、異なるレベルでポリペプチドの発現及び/又は活性を標的とし、最終的に細胞の骨形成分化の変化を導き得ることが理解される。本発明のアゴニスト化合物は、これらの機構の任意の1つに従って機能し得る。
【0036】
(本発明のインビトロでの方法)
本発明の特別な実施態様は、骨組織のインビトロ産生の方法に関連し、基質上に骨芽細胞前駆細胞を適用すること、及び前記細胞を、骨マトリクス組織の産生を刺激するのに十分な時間、表1に特定した標的遺伝子の効果的な骨形成刺激量のアゴニスト、又は配列番号:101〜118のアミノ酸配列をコードする発現性ポリヌクレオチドと接触させることを含む。より具体的には、この方法は、基質上に哺乳動物骨芽細胞前駆細胞を適用すること;表1に特定した標的遺伝子のアゴニスト、又は配列番号:101〜118のアミノ酸配列をコードする発現性ポリヌクレオチドを添加すること;細胞が骨形成分化を起こし、骨マトリクスを産生することができるようにさせることによって、骨組織のインビトロ産生に有用である。
【0037】
このインビトロで産生された骨組織は、耐力移植の提供のために使用することができ、人工股関節、人工膝関節、及び人工指関節などの人工関節、及び人工歯根などの顎顔面移植を含む。また、スペーサーなどの特別な外科的装置、又は骨充填剤用に、及び骨欠損、並びに骨損傷又は骨欠失の強化、除去、又は再構成における使用のために利用可能である。本発明の方法はまた、矯正手術との関連において、すなわち、先の外科的装置を交換しなければならない場合に非常に適する。この方法のさらなる態様は、耐力移植(先に記載したようなマトリクスで好ましく被覆された)と、先に記載したようなマトリクスを含む骨充填組成物を混合することを含む。
【0038】
骨組織のインビトロ産生のための使用に好ましい細胞は、未分化細胞である。適切な未分化細胞は骨髄細胞であり、造血細胞、及び特に間質細胞を含む。骨髄細胞、及び特に間質細胞は、それらの本来の環境から採取した場合に、骨産生過程にきわめて効果的であることが見出される。未分化細胞はしばしば大量に入手でき、成熟骨細胞よりもより都合よく利用でき、回復期により低い罹患率を示す。さらに、未分化細胞は、移植する予定の患者から得ることができる。これらの細胞由来の骨は、患者に自家性であり、それゆえ免疫反応は誘導されない。
【0039】
未分化細胞は、基質に直接適用することができる、言い換えれば、未分化細胞は、基質上に適用する前に、基質不在下で有利に増殖させることができる。後者の様式において、未分化細胞は、未だ大部分が未分化である。その次に、未分化細胞は、本明細書に記載されるような発現性ポリヌクレオチド、又は当業者に知られたアゴニスト、若しくは本明細書に記載したいずれかの方法を使用して同定された、表1の1以上の標的遺伝子に対するアゴニストの、少なくとも1つを添加することによって分化させることができる。
【0040】
骨形成は、誘導処理及び伝導処理の両方による、石灰化の変動によって最適化できる。この方法で、100μmまでの厚さのマトリクスを産生できる。例えば、少なくとも0.5マイクロメートル(μm)、好ましくは1〜100μm、及びより好ましくは10〜50μmの厚さを有するマトリクス層を産生するのに十分な時間、未分化細胞を培養する。短時間でも、未分化細胞を該培地と接触させる。
【0041】
基質上に適用された場合、マトリクスの産生は、その表面積の少なくとも50%の基質を覆う、連続的な層、又は準連続的な層を生じる。未分化細胞が適用され得る基質は、チタン、コバルト/クロム合金、ステンレスなどの金属、リン酸カルシウムなどの生体活性表面、ポリエチレンなどのポリマー表面などであり得る。
別の実施態様において、本発明は、本明細書で開示され、本明細書に記載される任意の1つの方法に従って同定可能な化合物を用いた処理によって、骨芽細胞分化を起こす細胞に関するものである。
【0042】
(治療方法及び医薬組成物)
本発明者は、表1にリスト化したポリペプチドが、骨形成分化過程に関与することを発見した。従って、本発明は、細胞内に存在する特定のポリペプチドと、細胞の骨形成分化との間の因果関係に関連し、そのいくつかは、発現、発生、代謝性骨疾患の実証に密接に関するものである。従って、本発明は、これらのポリペプチド(当業者に知られている多くのポリペプチド)を標的化するために使用し得る化合物のみならず、骨代謝疾患に関連した治療目的用の、そのような化合物の使用に関するものである。これらのポリペプチドに結合することがすでに知られている化合物に対して、本発明でのその使用は、新たな(医学的)使用である。
【0043】
本発明の好ましい態様は、骨ホメオスタシスのアンバランスの治療方法、又は予防方法に関連し、表1に特定した1以上の標的遺伝子の効果的な骨形成刺激量のアゴニスト、又は配列番号:101〜118の1以上のアミノ酸配列をコードする発現性ポリヌクレオチドを、前記アンバランスに苦しむ又は感受性である対象に投与することを含む。そのようなアンバランスは、対象の骨組織中で、破骨細胞に対する骨芽細胞の割合の減少によって特徴付けられる。より詳細には、この減少は、骨塩、具体的にはカルシウムを効率的に再吸収する破骨細胞に対して、骨マトリクスを石灰化させる能力を有する骨芽細胞の割合のうちにある。
【0044】
本方法は、(悪性の)低カルシウム血症、パジェット病、関節リウマチ、歯周病、骨格転移の間に起こる局所性骨形成、クロウゾン症候群、くる病、成熟遅延骨異形成症、濃化異骨症/トゥールーズ−ロートレック病、骨形成不全症、及び/又は骨粗鬆症に苦しむ、若しくは感受性である対象の治療に有用である。
対象患者への標的遺伝子アゴニスト、又は前記標的遺伝子をコードする発現性ポリ核酸の投与は、自己投与、及び他人による投与の両方を含む。患者は、現存の疾患又は病状の治療を必要としていてもよく、又は骨代謝の障害に冒された疾患及び病状の危険性を防止、又は減少させるための予防的治療を望んでいてもよい。対象患者に、経口的に、経皮的に、吸入、注入を介して、経鼻的に、直腸的に、又は徐放性製剤を介して、骨形成分化薬を送達してもよい。
【0045】
配列番号:101〜118の1以上のポリペプチドをコードする発現性ポリ核酸を含む、骨形成分化作用物質を発現するポリヌクレオチドは、好ましくはベクター内に含まれる。ポリ核酸は、操作によって核酸配列の発現を可能にさせるシグナルに関連付けられ、好ましくは、いったんベクターを細胞内に導入すると、アンチセンス核酸を発現する組換えベクター構築物を利用して、細胞内に導入する。アデノウイルスベクターシステム、レトロウイルスベクターシステム、アデノ随伴ウイルスベクターシステム、レンチウイルスベクターシステム、単純ヘルペスベクターシステム、又はセンダイウイルスベクターシステムを含む、様々なウイルスを基盤とするシステムが利用可能であり、その全てを、標的細胞内に、配列番号:101〜118の骨形成分化ポリペプチドのポリヌクレオチド配列を導入し、発現させるために使用してよい。
【0046】
好ましくは、本発明の方法に使用されるウイルスベクターは、複製欠損型である。そのような複製欠損型ベクターは通常、感染細胞内でのウイルスの複製に必要な、少なくとも1つの領域を含む。これらの領域は、当業者に既知の任意の手法で、(全体、又は部分的に)削除する、又は非機能的にさせることができる。これらの手法は、全体の削除、置換、(複製の)必須領域への1以上の塩基の部分的削除又は付加を含む。そのような手法は、遺伝子操作技術の使用、又は突然変異誘発物質を用いた処理によって、インビトロ(単離されたDNA上)、又はインサイチュウで実施してよい。好ましくは、複製欠損型ウイルスは、ウイルス粒子のキャプシド形成に必要な、そのゲノム配列を保持する。
【0047】
好ましい実施態様において、 ウイルス成分はアデノウイルス由来である。好ましくは、媒体は、アデノウイルスキャプシド、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体中に梱包されたアデノウイルスベクターを含む。アデノウイルスの生物学はまた、分子レベルで比較的よく知られている。アデノウイルスベクター用の多くのツールが開発され続けており、それゆえアデノウイルスキャプシドを、本発明のライブラリーに組み込むための好ましい媒体とさせている。アデノウイルスは、様々な種類の細胞に感染することができる。しかしながら、異なるアデノウイルス血清型は、異なる細胞の優先度を有する。本発明のアデノウイルスキャプシドが、好ましい実施態様で入ることができる標的細胞集団を結集させ、拡張させるために、媒体は、少なくとも2種類のアデノウイルス由来のアデノウイルス線維タンパク質を含む。好ましいアデノウイルス線維タンパク質配列は、血清型17、血清型45、及び血清型51である。これらのキメラベクターの構築及び発現の手法は、刊行された米国特許出願第20030180258号及び第20040071660号に開示され、これらは引用により本明細書に組み込まれる。
【0048】
好ましい実施態様において、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルス後期タンパク質、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体をコードする核酸を含む。アデノウイルス後期タンパク質、例えばアデノウイルス線維タンパク質を、特定の細胞に媒体を標的化させるために好ましく使用し、該細胞への媒体の強化された送達を誘導してもよい。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、完全なアデノウイルスキャプシド、又はその機能的部分、類似体、及び/又は誘導体の形成を可能にする、本質的に全てのアデノウイルス後期タンパク質をコードする。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルスE2A、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体をコードする核酸を含む。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、細胞において、アデノウイルス由来の核酸の複製を、少なくとも部分的に促進させる、少なくとも1つのE4領域タンパク質、又はその機能的部分、誘導体、及び/又は類似体をコードする核酸を含む。本出願の実施例で使用したアデノウイルスベクターは、本治療方法発明に有用なベクターの典型である。
【0049】
本発明の特定の実施態様は、レトロウイルスベクターシステムを使用する。レトロウイルスは、分裂細胞に感染する組込みウイルスであり、かつそれらの構成は、当業者に既知である。レトロウイルスベクターは、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)、及びフレンドウイルスなどの、異なった型のレトロウイルスから構築できる。レンチウイルスベクターシステムはまた、本発明の実施に使用してよい。
【0050】
本発明の他の実施態様において、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)を使用する。AAVウイルスは、感染細胞のゲノム内に、安定的かつ部位特異的様式で組み込む、比較的小さなサイズのDNAウイルスである。AAVウイルスは、細胞増殖、形態、又は分化にいかなる影響をも与えずに、幅広い範囲の細胞に感染することができ、かつ該ウイルスは、ヒトの病理には関与していないようである。
【0051】
ベクター構築において、本発明のポリヌクレオチド作用物質を、1以上の制御領域に連結してよい。適切な制御領域の選別は、当業者のレベルで日常的な事柄である。制御領域はプロモーターを含み、またエンハンサー、サプレッサーなどを含んでもよい。
本発明の発現ベクターに使用してよいプロモーターは、構成的プロモーター、及び制御型(誘導性)プロモーターの両方を含む。プロモーターは、宿主次第で、原核生物性又は真核生物性であってよい。原核生物(バクテリオファージを含む)プロモーターの中で、本発明の実施に有用なのは、lacプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、ラムダPrプロモーター、P1プロモーター、及びtrpプロモーターである。真核生物(ウイルスを含む)プロモーターの中で、本発明の実施に有用なのは、遍在性プロモーター(例えば、HPRT、アクチン、チューブリン)、中間径フィラメントプロモーター(例えば、デスミン、神経フィラメント、ケラチン、GFAP)、治療遺伝子プロモーター(例えば、MDR型、CFTR、第VIII因子)、組織特異性を示し、かつ遺伝子導入動物で使用されてきた、動物性転写制御領域を含む、
組織特異的プロモーター(例えば、平滑筋細胞内のアクチンプロモーター、又は内皮細胞において活性なFltプロモーター及びFlkプロモーター):膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftらの論文,(1984)Cell 38:639-46;Ornitzらの論文、(1986)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonaldの論文,(1987)Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞において活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahanの論文,(1985)Nature 315:115-22)、リンパ球において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlらの論文、(1984)Cell 38:647-58;Adamesらの論文、(1985)Nature 318:533-8;Alexanderらの論文、(1987)Mol. Cell. Biol. 7:1436-44)、睾丸、乳腺、リンパ球、及び肥満細胞において活性なマウス乳ガンウイルス制御領域(Lederらの論文,(1986)Cell 45:485-95)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertらの論文,(1987)Genes and Devel. 1:268-76)、肝臓において活性なアルファ−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufらの論文,(1985)Mol. Cell. Biol.,5:1639-48;Hammerらの論文,(1987)Science 235:53-8)、肝臓において活性なアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyらの論文,(1987)Genes and Devel.、1:161-71)、骨髄性細胞において活性なベータ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramらの論文,(1985)Nature 315:338-40;Kolliasらの論文,(1986)Cell 46:89-94)、脳内の乏突起膠細胞において活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadらの論文,(1987)Cell 48:703-12)、骨格筋において活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Saniの論文,(1985)Nature 314.283-6)、視床下部において活性な性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonらの論文,(1986)Science 234:1372-8)である。
【0052】
本発明の実施に使用してよい他のプロモーターは、分裂細胞において優先的に活性化されるプロモーター、刺激(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)に応答するプロモーター、テトラサイクリン制御型転写モジュレーター、サイトメガロウイルス前初期プロモーター、レトロウイルスLTRプロモーター、メタロチオネインプロモーター、SV−40プロモーター、E1aプロモーター、及びMLPプロモーターを含む。
【0053】
付加的なベクターシステムは、患者へのポリヌクレオチド作用物質の導入を促進する、非ウイルス性システムを含む。例えば、所望の配列をコードするDNAベクターは、リポフェクションによって、インビボで導入することができる。リポソーム介在性形質移入が直面する困難を制限するために設計された合成陽イオン性脂質を使用して、マーカーをコードする遺伝子のインビボ形質移入用リポソームを調製できる(Felgner,らの論文,(1987)Proc. Natl. Acad Sci. USA 84:7413-7);Mackeyらの論文,(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-31;Ulmerらの論文,(1993)Science 259:1745-8を参照されたい)。陽イオン性脂質の使用は、負に荷電した核酸の封入を促進し、また負に荷電した細胞膜との融合を促進し得る(Felgner及びRingoldの論文,(1989)Nature 337:387-8)。核酸の輸送に特に有用な脂質化合物及び脂質組成物が、国際特許公報WO 95/18863及びWO 96/17823、並びに米国特許第5,459,127号に記載されている。インビボで、特定の器官に外因性遺伝子を導入するためのリポフェクションの使用は、確かな実用上の利点を有し、また形質移入を特定の細胞型に指示することは、例えば、膵臓、肝臓、腎臓、及び脳などの、細胞の不均質性を有する組織において、特に有益である。標的化の目的のために、脂質を他の分子と化学的に共役してよい。例えばホルモン、神経伝達物質のような標的化ペプチド、及び、例えば抗体のようなタンパク質、又は非ペプチド分子を、リポソームに、化学的に共役させることができる。また、他の分子、例えば、陽イオン性オリゴペプチド(例えば、国際特許公報WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば、国際特許公報WO 96/25508)、又は陽イオン性ポリマー(例えば、国際特許公報WO 95/21931)は、インビボでの核酸の形質移入を促進させるのに有用である。
【0054】
また、裸プラスミドとして、インビボでDNAベクターを導入することが可能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号及び第5,580,859号)。治療目的用の裸DNAベクターは、当業者に既知の方法、例えば形質移入、電子穿孔法、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用、DNAベクター輸送体の使用によって、所望の宿主細胞内に導入できる(例えば、Wilsonらの論文,(1992)J. Biol. Chem. 267:963-7;Wu及びWuの論文,(1988)J. Biol. Chem. 263:14621-4;Hartmutらの論文、1990年3月15日に出願された、カナダ特許出願第2,012,311号;Williamsらの論文(1991). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-30を参照されたい)。受容体介在性DNA送達アプローチもまた使用できる(Curielらの論文、(1992)Hum. Gene Ther. 3:147-54;Wu及びWuの論文,(1987)J. Biol. Chem. 262:4429-32)。
【0055】
本発明はまた、標的アゴニストとして同定された、有効量の1以上の化合物、及び/又は先に記載されたような、配列番号:101〜118のポリペプチドをコードする、有効量の骨形成分化ポリ核酸を含む、生体適合性骨形成分化組成物を提供する。
生体適合性組成物は、本発明の組成物、ポリヌクレオチド、ベクター及び抗体が、活性形態、例えば生物活性に影響し得る形態で維持される、固体、液体、ゲル又は他の形態であり得る組成物である。例えば、本発明の組成物は、標的上で、逆アゴニスト又はアンタゴニスト活性を有する;核酸は、複製、伝達内容の翻訳、又は標的の相補的mRNAにハイブリダイズすることができる;ベクターは標的細胞に形質移入させることができ、先に記載したようなアンチセンス、抗体、リボザイム、又はsiRNAを発現させることができる;抗体は、標的ポリペプチドドメインに結合する。
【0056】
好ましい生体適合性組成物は、例えば、塩イオンを含む、トリスバッファー、リン酸バッファー、又はHEPESバッファーを使用して緩衝化された水溶液である。通常、塩イオン濃度は、生理的レベルと同等である。生体適合性溶液は、安定剤及び防腐剤を含んでよい。より好ましい実施態様において、生体適合性組成物は、医薬として許容し得る組成物である。そのような組成物は、局所、経口経路、非経口経路、鼻腔内経路、皮下経路、及び眼球内経路による投与用に製剤可能である。非経口投与は、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、又は注入技術を含むものを意味する。該組成物を、標準的な、よく知られた非毒性の、生理的に許容し得る、所望のキャリアー、アジュバント、及び媒体を含む用量単位製剤で、非経口的に投与してよい。
【0057】
経口投与用医薬組成物は、経口投与に適した用量で、当業者に周知の医薬として許容し得るキャリアーを使用して製剤することができる。そのようなキャリアーは、該医薬組成物が、患者による経口摂取用に、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液として処方されることを可能にさせる。経口使用用医薬組成物は、所望であれば、錠剤核又は糖衣錠核を得るために適切な助剤を添加した後、活性化合物と固形賦形剤を混合し、選択的にできた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工しることによって調製できる。適切な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖などの、炭水化物若しくはタンパク質充填剤;トウモロコシ、小麦、米、イモ、又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、又はカルボキシメチル−セルロースナトリウムなどのセルロース;アラビア及びトラガカントを含むゴム;及び、ゼラチン並びにコラーゲンなどのタンパク質である。所望であれば、架橋結合されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤又は可溶化剤を添加してもよい。糖衣錠核を、濃縮糖溶液などの適切な被覆剤と合わせて使用してもよく、また、アラビアゴム、滑石、ポリビニル−ピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒又は有機溶媒混合物を含んでよい。染料又は色素を、製品の識別のため、若しくは活性化合物の量、すなわち用量を明らかにするために、錠剤被覆剤又は糖衣錠被覆剤に添加してもよい。
【0058】
経口的に使用され得る医薬製剤は、ゼラチンから作られた軟らかい密封カプセルに加えて、ゼラチンから作られた押し込み型カプセル、及びグリセロール又はソルビトールなどの被覆剤を含む。押し込み型カプセルは、ラクトース又はデンプンなどの充填剤若しくは結合剤、滑石又はステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、及び、選択的に安定剤と混合した活性成分を含み得る。軟らかいカプセル中で、活性化合物は、安定剤を含むか又は含まずに、脂肪油、液体、若しくは液体ポリエチレングリコールなどの、適切な液体中に溶解又は懸濁させてもよい。
【0059】
好ましい滅菌注射製剤は、非毒性の、非経口的に許容し得る溶媒又は希釈剤中の溶液若しくは懸濁液であり得る。医薬として許容し得るキャリアーの例は、生理食塩水、緩衝食塩水、等張食塩水(例えば、リン酸一ナトリウム、又はリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム;塩化カルシウム又は塩化マグネシウム、又はそのような塩の混合物)、リンガー溶液、ブドウ糖、水、滅菌水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせであり、1,3−ブタンジオール及び滅菌固定油を、溶媒又は懸濁培地として都合に合わせて使用する。モノ−グリセリド、又はジ−グリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を使用できる。また、オレイン酸などの脂肪酸も注射製剤での使用が見出される。
【0060】
また、組成物培地は、薬剤吸収スポンジとして機能し得る親水性ポリアクリル酸ポリマーなどの、任意の生体適合性又は非細胞毒性ホモポリマー若しくはヘテロポリマーから調製されるハイドロゲルであり得る。特に、酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンから得られたものなどの、特定のハイドロゲルは市販されている。例えば、外科的介入の間、ハイドロゲルを、治療すべき組織表面上に直接的に付着させることができる。
【0061】
本発明の医薬組成物の実施態様は、本発明の配列番号:1〜18のポリヌクレオチドをコードする複製欠損型組換えウイルスベクター、及びポロクサマーなどの形質移入賦活剤を含む。ポロクサマーの例は、市販のポロクサマー407(BASF社、Parsippany、N.J.)、及び非毒性の生体適合性ポリオールである。組換えウイルスを含浸させたポロクサマーを、例えば、外科的介入の間、治療すべき組織の表面上に、直接的に付着させてもよい。ポロクサマーは、より低い粘度を有しているが、ハイドロゲルと実質的に同じ利点を有する。
【0062】
活性な骨形成分化誘導剤(標的遺伝子をコードするベクター、又は小分子アゴニスト)もまた、コロイド性薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)、又はマクロエマルジョンで、例えば界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース、又はゼラチン−マイクロカプセル、及びポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセル内のそれぞれに封入してよい。そのような手法は、『レミングトンの薬学』(1980)第16版、Osol、A.編に記載されている。
【0063】
持続放出製剤を調製してよい。持続放出製剤の適切な例は、マトリクスが、例えば薄膜又はマイクロカプセルのような造形品の形態中に抗体を含む、固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含む。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル樹脂)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びガンマ−エチル−L−グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体、及び酢酸ロイプロリドからなる、注入可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニル、及び乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日間以上にわたる分子の放出が可能であるが、特定のハイドロゲルは、より短い期間タンパク質を放出する。封入された抗体が長時間体内に存在する場合、37℃での水分への曝露そ結果として変性又は凝集する可能性があり、生物活性の減少、及び免疫原性の変化の可能性をもたらす。関与する機構によって、安定化のための合理的な方法を工夫してよい。例えば、凝集機構が、チオ−ジスルフィド交換を介した、分子間でのS−S結合であることが発見されたならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥させること、含水率を制御すること、適切な添加剤を使用すること、及び特異的なポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成してよい。
【0064】
先に記載したように、治療的有効量は、症状又は病状を緩和させる、タンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はその抗体、アゴニスト若しくはアンタゴニストの量を意味する。そのような化合物の治療効果及び毒性は、培養細胞又は実験動物での標準的な薬学的手法、例えばED50(該集団の50%に治療効果のある用量)、及びLD50(該集団の50%に対する致死用量)によって決定できる。治療効果に対する毒性の用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。培養細胞アッセイ、及び動物実験から得られたデータは、ヒトでの使用の用量範囲を策定することに使用する。そのような化合物の用量は、毒性をほとんど、あるいは全くないED50を含む、血中濃度の範囲内にあるのが好ましい。用量は、実施された投薬形態、患者の感受性、及び投与経路次第で、この範囲内で変化する。
【0065】
任意の化合物に関して、治療的有効量を、培養細胞アッセイ、又は通常は、マウス、ウサギ、イヌ、若しくはブタのいずれかで、はじめに見積もることができる。また、所望の濃度範囲及び投与経路を達成するために、動物モデルを使用する。そのような情報を、それから、ヒトでの投与に有用な用量及び経路を決定するために使用できる。的確な用量は、治療される患者を考慮して、それぞれの医師によって選択される。十分なレベルの活性部分を提供するために、用量及び投与を調整し、所望の効果を維持させる。考慮されてよい付加的な因子は、患者の病状の重篤度、年齢、体重、及び性別;食事、所望の治療の持続時間、投与方法、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、及び治療に対する耐性/反応性を含む。特定の製剤の半減期及びクリアランス速度次第で、長時間作用性医薬組成物を、3〜4日毎、毎週、又は2週毎に1回投与してもよい。
【0066】
本発明にしたがった医薬組成物を、様々な方法で対象に投与してよい。 医薬組成物を、陽イオン性脂質と複合体を形成し、リポソーム内に封入して標的組織に直接的に付加してよく、又は、他の当業者に知られた方法によって標的細胞へと送達してもよい。所望の組織への局所的投与を、直接注入、経皮吸収、カテーテル、輸液ポンプ、又はステントで実施してよい。DNA、DNA/媒体複合体、又は組換えウイルス粒子を、治療部位に局所的に投与する。送達の選択的経路は、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、エアロゾル吸入、経口(錠剤形態、又は丸薬形態)、局所送達、全身送達、眼球送達、腹腔内送達、及び/又はくも膜下腔送達を含むが、これらに限定されない。リボザイム送達及び投与の実施例が、Sullivanらの国際特許公報WO 94/02595で提供されている。
【0067】
本明細書において先に論じたように、本発明で有用なポリヌクレオチド作用物質をコードするDNAを導入するために、組換えウイルスを使用してよい。本発明にしたがった組換えウイルスは、一般的に約104〜約1014pfuの用量形態で処方、及び投与される。AAV及びアデノウイルスの場合、約106〜約1011pfuの用量を使用するのが好ましい。用語pfu(「プラーク形成単位」)は、ウイルス粒子懸濁液の感染力に対応し、適切な培養細胞への感染、及び形成されたプラークの数を測定することによって決定される。ウイルス溶液のpfu力価を決定するための手法は、先行技術中に詳細に説明されている。
【0068】
本発明はまた、本発明の治療的有効量の骨形成分化誘導剤の前記対象への投与を含む、骨形成を促進させる方法を提供する。本発明のさらなる態様は、骨ホメオスタシスのアンバランスを含む疾患の治療又は予防方法に関連し、前記対象に、本明細書の先に記載したような骨形成分化医薬組成物を投与することを含む。
【0069】
本発明の方法に使用されるポリペプチド又はポリヌクレオチドは、溶液中で遊離、固相支持体に固定、細胞表面上に付着、又は細胞内に位置させてよい。本方法を実施するために、表1及び/又は表1Aに特定したポリペプチド、又は本アッセイの自動化に適合させるのに加えて、該ポリペプチドの複合体を形成していない形態から、複合体を分離するのを促進させる化合物のいずれかを固定することは、実現可能である。本発明のポリペプチドと化合物の相互作用(例えば、結合の)は、反応物を含む、任意の適切な容器内で達成できる。そのような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管、及び微小遠心管を含む。ある実施態様において、ポリペプチドをマトリクスに結合させることができるドメインを付加した融合タンパク質が提供可能である。例えば、本発明のポリペプチドに「His」タグを付加し、次にNi−NTAマイクロタイタープレート上に吸着させる、又は本発明のポリペプチドをProtAと融合させてIgGに吸着させることができ、それから該ポリペプチドを細胞溶解物(例えば、(35S標識)及び候補化合物と混合し、複合体系性に有利な条件下(例えば、生理的状態の塩及びpH)で該混合物をインキュベートする。インキュベーションの後、プレートを洗浄して結合していない全ての標識を除去し、マトリクスを固定する。放射能の量を直接的に、又は複合体の解離の後の上清で測定できる。あるいは、複合体をマトリクスから解離させ、SDS−PAGEで分離し、標準的な電気泳動技術を使用して、本発明のタンパク質に結合している該タンパク質のレベルをゲルから定量する。
【0070】
マトリクス上に固定されたタンパク質に関する他の手法もまた、化合物を同定する方法に使用できる。例えば、ポリペプチド、又は化合物のどちらかを、ビオチンとストレプトアビジンとの結合を利用して固定することができる。本発明の、ビオチン化されたタンパク質分子は、当業者に知られた方法(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals社、Rockford、Ill.)を使用するビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製することができ、ストレプトアビジンで被覆した96ウエルプレート(Pierce Chemical社)のウエル内に固定させることができる。あるいは、本発明のポリペプチドと反応するが、化合物へのポリペプチドの結合には干渉しない抗体を、プレートのウエルに誘導体化することができ、抗体結合によって、本発明のポリペプチドをウエル内に補足することができる。先に記載したように、本発明のポリペプチドが存在するプレートのウエル内で、標識候補化合物の調合液をインキュベートし、ウエル内に補足された複合体の量を定量できる。
【実施例】
【0071】
(標的遺伝子アゴニストと骨芽細胞分化を関連づける、詳細な実験的研究)
(実施例1):初代ヒトMPCにおける内因性アルカリフォスファターゼのモジュレーターを得るためのFLeXSelectライブラリーの選別
(材料):
アデノウイルス構築物:
Ad-BMP2:WO 03/018799に記載されている。
Ad-eGFP:WO 02070744中のpIPspAdApt6-EGFPとして参照される。
Ad-LacZ:WO 02070744中のpIPspAdApt6-lacZとして参照される。
Ad-empty:WO 02070744中の空ウイルス(pIPspAdApt 6から生成される)として参照される。
Ad-hCAR:PCRの方法論を使用して、hCAR cDNAを単離する。下記のhCAR特異的プライマーを使用する:HuCAR_for 5'-GCGAAGCTTCCATGGCGCTCCTGCTGTGCTTCG-3'、及びHuCAR_rev 5'-GCGGGATCCATCTATACTATAGACCCATCCTTGCTC-3'。HeLa細胞cDNAライブラリー(Quick clone、Clontech社)から、hCAR cDNAをPCR増幅させる。1119bpの単一フラグメントが得られ、HindIII制限酵素、及びBamHI制限酵素で消化する。同じ酵素を用いてpIPspAdapt6ベクター(WO99/64582)を消化してゲル精製し、これを使用して、消化したPCR hCARフラグメントと連結させる。AdC20(Ad5/Ad51)ウイルスを、WO02/24933に記載されているように生成する。
H4-2:WO03/018799中のDLL4_v1として記載される。
H4-291:SPINT1_v1. cDNAを、ヒト胎盤から単離したRNAから調製しWO02/070744中に記載されているように、SalI−NotI制限酵素認識部位を使用して、pIPspAdapt 6プラスミド内にクローン化する。H4-291によってコードされたタンパク質は、NP_003701と同一である。
【0072】
(アッセイの原理)
間葉前駆細胞(MPC)は、適切な因子(例えば、BMP2)の存在下で、骨芽細胞へと分化する。そのような因子を選別するためのアッセイを、骨芽細胞分化プログラムにおける初期マーカーである、アルカリフォスファターゼ(AP)酵素の活性をモニタリングすることで構築する。MPCを384ウエルプレート内にまき、ヒトコクサッキー及びアデノウイルス受容体(hCAR;Ad-hCAR)をコードするアデノウイルス、並びにGPCR、キナーゼ、プロテアーゼ、ホスホジエステラーゼ、及び核ホルモン受容体(FLeXSelectコレクション)のような、「薬剤となり得る」クラスからの遺伝子に対応するcDNA配列を含む、配列されたアデノウイルスノックインコレクション由来のそれぞれのアデノウイルス(Ad-cDNA)を用いて、1日後に同時に共感染させる。PCRに基づいたアプローチによって、これらのcDNAの大部分を得る。手短に言うと、RefSeqデータベースに存在する配列データに基づき、薬剤となり得る遺伝子の、ATG開始コドンから終止コドンまでの完全な翻訳領域の増幅用に、PCRプライマーを設計する。96ウエルプレート中に、PCR使用準備済みの濃度で配列された型の中に、プライマーを混合する。PCR反応用のテンプレートとして、胎盤のcDNAライブラリー、胎児肝臓のcDNAライブラリー、胎児脳のcDNAライブラリー、及び脊髄のcDNAライブラリーを使用する(Invitrogen社、又はEdge Biosystems社から入手)。単一エキソンでコードされる遺伝子用に、PCR反応を、ヒトゲノムDNA上でも実行する。増幅反応後、PCR産物を、96ウエルPCR精製システム(Wizard magnesil、Promega社、Madison、WI、USA)で精製し、適切な制限酵素(AscI、NotI、又はSalI制限酵素認識部位は、プライマー中に含まれている)で消化し、そしてDNAライゲーションキットバージョン2(TaKaRa社、Berkeley、CA、USA)を使用して、アデノウイルスアダプタープラスミドpIspAdAdapt-10-Zeo(米国特許第6,340,595号に記載される)中に、直接的にクローン化する。形質転換、及び選別段階の後、その1つが配列確認された遺伝子につき複数のクローンを、プラスミドDNAの調製、及びWO99/64582に記載される方法に従う次のアデノウイルスの生成のために使用する。
【0073】
AdC20-hCAR(MOI 250)との共感染は、AdC01-cDNAの感染効率を増加させることが見出される。細胞のAP活性を、感染(又はリガンド添加後−以下を参照されたい)後6日目に測定する。アッセイの原理を、図2に示す。骨髄由来の間葉幹細胞に、Ad5C15-hCARウイルス又はAd5C20-hCARウイルスの存在下で、FLeXSelect(商標)cDNAライブラリーを用いて感染させる。感染、又はリガンド処理の開始後6日目に、4−メチルウンベリフェリル7リン酸(MUP)基質を加えた後に、内因性アルカリフォスファターゼ活性を測定する。
【0074】
(アッセイの開発)
インフォームドコンセントの得られた、健康な被験者の骨髄からMPCを単離する(Cambrex/Biowhittaker社、Verviers、Belgium)。
一連の実験を384ウエルプレート内で行い、いくつかのパラメータ:細胞播種密度、コントロールウイルス(Ad-BMP2又はAd-eGFP)の感染多重度(MOI)、Ad-hCARのMOI、感染継続期間、毒性、感染効率(Ad-eGFPを使用する)、及び読み取りの日程を最適化する。
【0075】
下記の手順は、バックグラウンドシグナル上で、最も低い標準偏差を用いるアッセイに対して、最も高いダイナミックレンジをもたらす:0日目に、384ウエルプレートのウエルあたり1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC20-hCAR及びAdコントロールウイルス 2μlの混合物を使用して共感染させる。Adコントロールウイルスのストックを、96ウエルプレート(コントロールプレート)に生成する。2μlの量は、理論的にMOI5000に一致する。コントロールは:P1=Ad-BMP2;P2=Ad-H4-2;P3=Ad-H4-291;N1=Ad-LacZ;N2=Ad-empty;N3=Ad-eGFPである。アルカリフォスファターゼの上方調節を、感染後6日目(6dpi)に読み取る:4−メチルウンベリフェリル−リン酸(MUP、Sigma社)15μlをそれぞれのウエルに添加し、プレートを37℃で15分間インキュベートし、蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性をモニターする。(コントロールウイルスを含む)96ウエルプレート、又は(FleXSelectウイルス(次段落を参照されたい)を含む)384ウエルプレートから、MPCを含む384ウエルプレートへの、ウイルスのピペット操作は、ロボット(TeMO96、TeMO384、及びRoMaを搭載した96/384 channel dispensor Tecan Freedom 200、Tecan AG社、Switzerland)で実行する。図3は、コントロールプレートを使用しての、自動化された選別手順の結果を示す。ネガティブコントロール(N1〜N3)の平均及び標準偏差を使用して、ヒット解析のカットオフを計算する。ポジティブコントロール(P1、P2、P3)は、常に感染させたウエルの80〜100%を記録した(図3)。ネガティブコントロールウイルスは、常に感染させたウエルの0〜5%を記録した(図3)。
【0076】
(FleXSelectライブラリー)
Galapagos Genomics NV(Galapagos社)は、ヒトゲノム中に存在する、薬剤となり得る遺伝子のほとんどをコードするアデノウイルスライブラリーを配列した、独自のノックイン(FLeXSelect)を構築した。アルカリフォスファターゼアッセイは、例えば、G−タンパク質共役受容体(GPCR)及び核ホルモン受容体(NHR)のような化合物によって活性化され得る、薬剤となり得る標的のそれらのクラスのFLeXSelectコレクション(Ad-cDNA)からウイルスを選別することに有用である。
【0077】
FLeXSelectライブラリーに存在するAd−GPCR用に、リガンドの適合コレクションを、MPCを含む384ウエルプレートの1つのウエル中のそれぞれのストックから、Ad−GPCR及びリガンドの適合対をロボットを使用してピペット操作できるような、96ウエルプレート及び384ウエルプレートを作成する。
(選別)
適合リガンドの存在下又は不在下において、FLeXSelectウイルスを、先に記載した手順に従い、それぞれの1つのサンプルを異なるプレート上に添加した2つの独立な選別で複数回選別する。リガンドが選別に含まれる場合、手順を変更する:Ad−cDNA感染を1日目に実施し、リガンドを2日目に添加し、内因性BAPレベルを8日目に測定する。384ウエルスクリーニングプレートの典型的な結果を、図4に示す。図4に示されているのは、X軸上の384ウエルプレートにおける位置、及びY軸上の相対的アルカリフォスファターゼシグナルである。与えられたサンプルの相対的アルカリフォスファターゼシグナルを、与えられた処理単位(又は実験)の全てのデータ点に対する、平均以上の標準偏差の数として計算する。
【0078】
(実施例2):APアッセイを使用した標的同定
下記の選別基準に従って標的を選別する:
1)APシグナルが、処理単位中の全てのサンプル(データ点)の標準偏差の3倍+平均よりも高い。それぞれの処理単位における2つの各データ点を独立に解析する。
2)2つの独立な実験で複数回選別される、少なくとも4つウイルスサンプルのうちの3つ、又は4つのウイルスサンプルのうちの3つ(ウイルス毎に合計4回の測定)に関して、基準1によって定義されたような陽性APシグナル。
【0079】
表1に、アルカリフォスファターゼアッセイにおける、上記の基準に従って同定された標的をリスト化している。
いくつかの標的に関して、アゴニストリガンドが知られている。これらを使用して、MPCにおける標的遺伝子の、骨形成潜在能力を確認することができる:MPCの培地に、高濃度のリガンドを添加することは(標的タンパク質を過剰発現させる)、内因性アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、用量依存的に増加させるであろう。これは例えば、MPCにAd-NR1H3を感染させ、かつT0901317で処理する場合、及びMPCにAd-GPR65を感染させ、かつ1−b−D−ガラクトシルスフィンゴシンで処理する場合、並びにMPCにAd-AVPR2を感染させ、かつ[デアミノ−Cys1、D−Arg8]−バソプレシンで処理する場合に観測される。
【0080】
(Ad-NR1H3及びT0901317)
これらの用量反応曲線を、図5に示す。MPCにAd-NR1H3を感染させ、かつT0901317で処理する場合のAP活性の用量反応曲線を示す(図5A)。MPCを、0日目に384ウエルプレートのウエルあたり1000個播種し、その翌日にAdC51-hCAR(MOI 250)、及び異なるMOIのAd5-NR1H3(MOI 12000、4000、1333、444)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、0.01%の濃度のDMSOである)と共に、5段階の濃度(1E-10M、1E-9M、1E-8M、1E-7M、1E-6M)の化合物T0901317(Cayman Chemical社、Michigan、USA、カタログ番号71810)をウエルに添加する。37℃、10%CO2の加湿インキュベータでの6日間のインキュベーションの後、アルカリフォスファターゼの上方調節を読み取る:MUP 15μlを各ウエルに添加し、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用してAP活性を測定する。
【0081】
Ad-GPR65を用いて感染させ、かつ1−b−D−ガラクトシルスフィンゴシンで処理するMPC(図5B);Ad-AVPR2を感染させ、かつ[デアミノ−Cys1、D−Arg8]−バソプレシン(DDAVP)で処理するMPC(図5C)に関して、AP活性の用量反応曲線を同様の方法で作成する。
活性型リガンドを異なる濃度で添加する場合、APアッセイおいて、AP活性の、用量依存的上方調節を示す3つの標的を同定する。
【0082】
(AdNR1H3及びGW3965)
MPCを、Ad-NR1H3を用いて感染させ、かつGW3965で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する(図9)。0日目に、384ウエルプレートのウエルあたり1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H3(MOI 2000、666)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.1%のDMSO)と共に、8種類の濃度(3,43E-9M、1,34E-8M、5,35E-8M、1,60E-7M、4,81E-7M、1,43E-6M; 4,29E-6M、13E-6M)の化合物GW3965(Chemovation社、West Sussex)を、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物GW3965を含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図9は、Ad-NR1H3存在下における、GW3965の用量反応活性を示す。
【0083】
(AdNR1H2及びT0901317)
MPCを、Ad-NR1H2を用いて感染させ、かつT0901317で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する(図10)。0日目に、384ウエルプレートの各ウエルに1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H3(MOI 2000、666)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.1%のDMSO)と共に、5種類の濃度(1E-9M、1E-8M、1E-7M、1E-6M、1E-5M)の化合物T0901317(Cayman Chemical社、Michigan、USA、カタログ番号71810)を、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物T0901317を含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図10は、Ad-NR1H2存在下における、T0901317の用量反応活性を示す。
結論として、APアッセイにおいて、LXRアゴニストであるGW3965及びT0901317それぞれを異なる濃度で細胞に添加する場合、AP活性は、用量依存的様式で、NR1H3又はNR1H2のどちらかを用いて形質導入した細胞内で上方調節される。
【0084】
(実施例3):同定した標的のmRNA及びタンパク質発現解析
実施例1に記載したアッセイは、過剰発現下での骨形成潜在能力を有するタンパク質の発見を明示する。これらのタンパク質が、MPC又は初代ヒト骨芽細胞(hOB)などの骨形成細胞で内因的に発現することを確認するために、これらの細胞からmRNAを抽出し、リアルタイムRT−PCRを使用して発現を解析する。
【0085】
標的遺伝子の発現レベルを、MPCの4つの異なる分離株、及びhOBの2つの異なる分離株で測定する。MPC(ヒト骨髄(Cambrex/Biowhittaker社、Verviers、Belgium)から得た)及びhOB(Cambrex/Biowhittaker社、Verviers、Belgiumから得た)を、3000個ずつ播種する。それらが80%の密集度になるまで、T180フラスコ中の5000細胞/cm2を培養する。細胞を、氷冷PBSで洗浄し、SV RNA溶解緩衝液 1050μlをT180フラスコに添加することによって回収する。SV 総RNA isolation System(Promega社、カタログ番号Z3100)を使用して、総RNAを調製する。総RNAの濃度を、Ribogreen RNA Quantification kit(Molecular Probes社、Leiden、The Netherlands、カタログ番号R-11490)を使用して測定する。TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG, kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4324018)を利用し、1反応につき40ngの総RNAを使用して、cDNA合成を実施する。各逆転写(RT)反応に対して、マイナス−RT反応(ネガティブコントロール:反応中に酵素を含まない)を実施する。
【0086】
SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4309155)を使用して、cDNAサンプル及びマイナス−RTサンプルの両方で、遺伝子特異的プライマー(表2)を用いたリアルタイム逆転写酵素(rtRT)−PCR反応を実施する。ヒトゲノムDNA上、及び検討される遺伝子によってコードされるcDNAを含むプラスミド上でのPCR反応を実施することによって、プライマーを品質管理する。品質が不十分である場合、追加のプライマーを設計するか、又は確認プライマーセットを購入する(ABI社)。発現レベルの標準化のために、Human β-actin kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4310881E)を使用して、ヒトβ−アクチン上で、RT−PCR反応を実施する。リアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System)で、下記のプログラムを実施する:25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分。複数のMPC分離株、及び複数のhOB分離株内の標的遺伝子の発現レベルを、β−アクチンの発現レベルに対して比較する。
【0087】
【表2】
【0088】
(実施例4):内因性骨AP mRNAの上方調節対胎盤のAP mRNA又は腸のAP mRNAの上方調節の解析
骨アルカリフォスファターゼ(BAP)は、骨形成に関与する、生理的に関連するアルカリフォスファターゼ(AP)である。測定されたAP活性が、BAP発現の上方調節のためであるか、又は別のAPの上方調節のためであるかを測定するために、全てのAP遺伝子のmRNAレベルを、MPCの感染後に解析する。
【0089】
前節で記載したように、mRNAレベルを測定する。差異は、使用したプライマーセットである(表3):1つのセットは、BAP ALPL(ヒトアルカリフォスファターゼ 肝臓/骨/腎臓)mRNA発現を検出する。別のセットは、3つの他のAP遺伝子(ALPI(ヒトアルカリフォスファターゼ 腸)、ALPP(ヒトアルカリフォスファターゼ 胎盤(PLAP)、ALPPL2(ヒトアルカリフォスファターゼ 胎盤様))の発現を検出する。ALPI、ALPP及びALPPL2はヌクレオチドレベルで高度に類似しており、それゆえ、1つのプライマー対を使用して増幅できる。
【0090】
【表3】
【0091】
はじめに、Ad-eGFP及びAd-BMP2を感染させたMPCから単離したRNAで、プライマー対を確認する。図6は、Ad-BMP2によるBAP mRNAの強い上方調節、及び任意の他のAP遺伝子発現の上方調節がないことを示す。それから両方のプライマー対を使用して、Ad標的化感染MPCから単離したRNAで、全てのAP遺伝子のmRNAレベルを測定する。
【0092】
(実施例5):骨形成に関連する細胞型における、NR5A2、NR1H3、NR1H2、ESRRGの発現レベルの解析
同定された標的遺伝子が、骨形成に関連する細胞型において、内因的に発現しているかを確認するために、これらの遺伝子のmRNAレベルを、関連する細胞型で解析する。
初代細胞又は細胞株(図14A〜D:MPC分離株1〜4、頭蓋冠骨芽細胞(MCOst pop 1+2、3+4))、ヒト骨芽細胞細胞株(SaOS2、U20S)を培養する、又は頭蓋冠頭蓋骨(calvarial skull)組織を、5日齢のマウスから回収する。単層又は頭蓋骨組織を回収して、総RNAを抽出し(SV 総RNA isolation System、Promega社 番号Z3100)、定量する(Ribogreen RNA Quantification kit、Molecular Probes社、Leiden)。TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG, kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4324018)を利用し、1反応あたり20ngの総RNAを使用して、cDNA合成を実施する。各逆転写(RT)反応に対して、マイナス−RT反応(ネガティブコントロール:反応中に酵素を含まない)を実施する。SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4309155)を使用して、cDNAサンプル及びマイナス−RTサンプルの両方で、遺伝子特異的プライマーを用いたリアルタイム逆転写酵素(rtRT)−PCR反応を実施する。可能な場合には、ヒトゲノムDNA上、及び検討される遺伝子によってコードされるcDNAを含むプラスミド上でのPCR反応を実施することによって、プライマーを品質管理する。品質が不十分である場合、追加のプライマーを設計する又は確認する、及びプライマーセットを購入する(ABI社)。発現レベルの標準化のために、Human s-actin kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4310881E)を使用して、ヒトβ−アクチン上で、RT−PCR反応を実施する。リアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System)で、下記のプログラムを実施する:25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分。
【0093】
4つの遺伝子の発現レベルを、ベータアクチンの発現レベルに対して比較し、その結果を図14A〜Dに示す。図は、ベータアクチン又は4つの標的遺伝子の、異なる細胞型若しくは組織内のmRNA発現レベルを解析することで得たCt値を示す;n.a.:解析されず;「サイバーグリーン(Sybrgreen)」又は「ABIプライマー(ABI primer)」は、それぞれプライマーセットが組織内で開発されたかどうかを示し、市販のプライマーセットを使用して、mRNA発現を評価した。また、示しているのは、異なる発現レベルの標的遺伝子対ベータアクチン発現レベルの図解である(値はデータ表の左側の欄からとった)。
結論として、同定した標的遺伝子は、骨形成に関連する複数の細胞型において発現している。標的遺伝子ESRRGは、テストしたMPC分離株において発現していないことは注目すべきである。
【0094】
(実施例6):NR1H2又はNR1H3の過剰発現状態でのBAPアッセイにおけるLXRアゴニストの活性
(Ad-NR1H2及びGW3965)
MPCを、Ad-NR1H2を用いて感染させ、かつGW3965で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する(図11)。0日目に、384ウエルプレートの各ウエルに1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H2(MOI 2000、666)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.161%のDMSO)と共に、9種類の濃度(1.52E-9M、4.57E-9M、1.37E-8M、4.12E-8M、1.23E-7M、3.7E-7M、1.11E-6M、3.33E-6M、1E-5M)の化合物GW3965を、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物GW3965を含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図11は、Ad-NR1H2存在下における、GW3965の用量反応活性を示す。
【0095】
(Ad-NR1H2、Ad-NR1H3及びアセチルポドカルピック二量体(acetyl-podocarpic dimer)(APD))
MPCを、Ad-NR1H2又はAd-NR1H3を用いて感染させ、かつアセチルポドカルピック二量体(APD−図12の化合物構造を参照されたい;APDは、公開されたUA2003/0086923A1において「化合物1」として記載され、そのAPDの調製は、引用により本明細書に組み込まれる)で処理する場合の、AP活性に対する用量反応的関連を観測する。0日目に、384ウエルプレートの各ウエルに1000個のMPCを播種し、その翌日に、AdC51-hCAR(MOI 250)及び異なるMOIのAd5-NR1H2又はAd-NR1H3(MOI 2000、6000)を使用して共感染させる。1日目に、一定の媒体濃度(媒体は、終濃度0.1%のDMSO)と共に、12種類の濃度(5.65E-11M、1.69E-10M、5.08E-10M、1.52E-9M、4.57E-9M、1.37E-8M、4.12E-8M、1.23E-7M、3.7E-7M、1.11E-6M、3.33E-6M、1E-5M)の化合物APDを、ウエルに添加する。6日後、培地を除去し、同濃度の化合物APDを含む新鮮培地に置換する。実験開始後、主として7日後、10日後、及び13日後の時間点で、AP活性の読み取りを実施する。アルカリフォスファターゼ活性の上方調節を、下記のように読み取る:単層から培地を除去し、MUP 15μlを各ウエルに添加して、該プレートを37℃で15分間インキュベートし、それから蛍光プレートリーダー(Fluostar、BMG社)を使用して、AP活性を読み取る。図13は、Ad-NR1H2又はAd-NR1H3存在下における、APDの用量反応活性を示す。
結論として、APアッセイにおいて、LXRアゴニストであるAPD、GW3965及びT0901317それぞれを異なる濃度で細胞に添加する場合、AP活性は、用量依存的様式で、NR1H3又はNR1H2のどちらかを用いて形質導入した細胞内で上方調節される。
【0096】
(実施例7):骨形成経路解析:NR5A2及びNR1H3+T0901317は骨形成マーカーのmRNAレベルを上方調節する
MPCから骨芽細胞への骨形成分化は、骨形成タンパク質の上方調節を伴う。骨形成タンパク質の上方調節は、例えばリアルタイムRT−PCRを使用して、新規標的による骨形成分化の誘導を研究するのに有用である。この研究に使用するMPCを、BMP2による骨形成マーカーの限定されたセットの上方調節で特徴付ける。次に、BMP2の差次的発現を示すマーカーを、Ad-NR5A2感染細胞由来のmRNA、又はAd-NR1H3+T0901317処理細胞由来のmRNAに対してテストする。
【0097】
10%FCSを含むMPC培地2ml中の100,000個のMPCを、6ウエルプレートの各ウエルに播種する。加湿インキュベータ内において、37℃、10%CO2でインキュベーションしたその翌日、AdC15-hCAR(最終MOI 750)、及びAd-NR5A2、Ad-NR1H3+T0901317(1μM)又はAd-BMP2(ポジティブコントロール)、若しくはネガティブコントロールとしてAd-eGFP又は Ad-ルシフェラーゼ(最終MOI 1250及び2500)を用いて、細胞を共感染させる。RNA単離のために細胞を回収済みでない限り、さらに6日間、細胞を加湿インキュベータ内において、37℃、10%CO2でインキュベートする。ウイルスを除去し、新鮮OS培地(10%FCSを含む、商標登録された培地)2mlで置換する。以降3週にわたり、2週につき3回、培地を補給する。1回おきに、培地を半分又は完全に交換する。単層をいくつかの時間点(図15を参照されたい)で回収し、総RNAを回収して定量し、rtRT−PCRを下記のように実施する:単層を氷冷PBSで洗浄し、SV RNA溶解緩衝液を添加することによって回収する。SV Total RNA isolation System(Promega社、カタログ番号Z3100)を使用して、総RNAを調製する。総RNAの濃度を、Ribogreen RNA Quantification kit(Molecular Probes社、Leiden、The Netherlands、カタログ番号R-11490)を使用して測定する。TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG, kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4324018)を利用し、1反応につき20ngの総RNAを使用して、cDNA合成を実施する。各逆転写(RT)反応に対して、マイナス−RT反応(ネガティブコントロール:反応中に酵素を含まない)を実施する。SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号 4309155)を使用して、cDNAサンプル及びマイナス−RTサンプルの両方で、遺伝子特異的プライマーを用いたリアルタイム逆転写酵素(rtRT)−PCR反応を実施する。可能な場合、ヒトゲノムDNA上、及び検討される遺伝子によってコードされるcDNAを含むプラスミド上でのPCR反応を実施することによって、プライマーを品質管理する。品質が不十分である場合、追加のプライマーを設計するか、又は確認プライマーセットを購入する(ABI社)。発現レベルの標準化のために、Human β-actin kit(Applied Biosystems社、Warrington、UK、製品番号4310881E)を使用して、ヒトβ−アクチン上で、RT−PCR反応を実施する。リアルタイムPCR装置(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System)で、下記のプログラムを実施する:25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分。
【0098】
はじめに、骨形成マーカー遺伝子の発現レベルを、ベータアクチンのレベルに対して標準化する。それからAd-BMP2、Ad-NR5A2及びAd-NR1H3+T0901317(1μM)サンプルの結果データを、同じMOIで感染させた細胞に関して、同じ時間点で回収したAd-eGFP又はAd-ルシフェラーゼネガティブコントロールサンプルのものと比較する。NR5A2又はBMP2過剰発現によって誘導されるマーカー遺伝子mRNAの倍の上方調節を計算し、図15に提示する。BMP2、NR5A2又はNR1H3+T0901317が、ネガティブコントロールサンプル(Ad-eGFP又はAd-ルシフェラーゼ)のものよりも4倍高い場合、骨形成マーカーは、BMP2、NR5A2又はNR1H3+T0901317過剰発現によって上方調節されると考えられる。Ad-NR5A2は、1以上の時間点で調査したPTHR1、BAP、オステオポンチン、アロマターゼ及びRANKLの発現を上方調節した。Ad-NR1H3+T0901317は、1以上の時間点で調査したPTHR1、BAP、オステオポンチン、アロマターゼ及びRANKLの発現を上方調節した。
【0099】
(実施例8):骨形成経路解析:骨形成誘発によるNR5A2及びNR1H3 mRNAレベルの上方調節
確立された骨形成の誘導因子でMPCを処理し、NR5A2又はNR1H3 mRNAレベルを、既知の骨形成経路におけるNR5A2又はNR1H3を配置させるための試みで測定する。
10%FCSを含むMPC培地2ml中の100,000個のMPCを、6ウエルプレートの各ウエルに播種する。加湿インキュベータ内において、37℃、10%CO2でインキュベーションしたその翌日、AdC15-hCAR(最終MOI 750)、及びAd-BMP2、Ad-RUNX2、Ad-MSX2、Ad-PTHR1/PTHLH、若しくはネガティブコントロールとしてAd-eGFP又はAd-ルシフェラーゼ(最終MOI 1250及び2500)を用いて、細胞を共感染させる。あるいは、細胞を、デキサメタゾン(終濃度0.1μM)、VitD3(終濃度0.1μM)、又は媒体コントロール(0.1%EtOH又はDMSO)で処理する。RNA単離のために細胞を回収済みでない限り、さらに6日間、細胞を加湿インキュベータ内において、37℃、10%CO2でインキュベートする。ウイルスを除去し、新鮮OS培地(10%FCSを含む、商標登録された培地)2mlで置換する。以降18週にわたり、2週につき3回、培地を補給する。1回おきに、培地を半分又は完全に交換する。単層をいくつかの時間点(図16を参照されたい)で回収し、総RNAを回収して定量し、rtRT−PCRを先の実施例「NR5A2及びNR1H3+T0901317は骨形成マーカーのmRNAレベルを上方調節する」に記載されているように実施する。ネガティブコントロール(デキサメタゾン又はVitD3処理の媒体)又はAd-感染の)Ad-ルシフェラーゼに比較したNR5A2又はNR1H3 mRNAの倍の上方調節を計算する(図16)。
NR5A2 mRNAレベルは、いくつかの時間点でVitD3処理によって上方調節されるようになり、また、感染4日後の時間点でのAd-PTHR1/PTHLH感染によるNR1H3及びNR5A2レベル。
【0100】
(実施例9):石灰化アッセイ
骨形成の過程は、いくつかの連続的事象からなる。骨形成の初期段階の間、BAPは上方調節されるようになるが、石灰化は、骨形成の後期段階に起こる特異的事象である。
骨組織は、有機物質のマトリクス(例えば、コラーゲン)内に埋め込まれた細胞、及び無機物質(Ca2+及びリン酸)からなる。分化した骨細胞が沈着したマトリクスの該骨細胞を染色することによって、インビトロで骨石灰化を示す。Von Kossa染色及びアリザリンレッドS染色は、沈着したリン酸及びカルシウムのそれぞれの可視化を可能にさせる。
【0101】
1日目に、ウエルあたり50,000〜250,000個、通常はウエルあたり100,000個の細胞密度で、6ウエルプレート(Costar社又はNunc社)内に播種する。1日後、AdC15-hCAR(MOI 750)、及びAd-コントロール(eGFP又はBMP2)又はヒットウイルス(Ad5)(250〜20,000のMOI、通常は5000及び2500のMOIで)を用いて、MPCを共感染させる。Ad-GPCR又はAd-NHR実験に関しては、細胞をさらに特定のリガンドで処理することができる。これらを、EC50濃度、及び5〜10倍高い並びに低い濃度で添加する。リガンドを、1週につき2〜3回添加する。L−アスコルビン酸100μg/ml、及びベータ−グリセロリン酸10mMを補充した培地を、1週に2回補給する。実験開始後20〜30日に、Von Kossa染色又はアリザリンレッドS染色で細胞を染色する。
【0102】
アリザリンレッドS染色を下記のように行う:細胞をPBSで1回洗浄し、10%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で45分間固定し、PBSで2回洗浄する。細胞を、40mM水性アリザリンレッドS溶液、pH4.1〜4.3を用いて10分間インキュベートした後、蒸留水で5回洗浄する。白色光を使用して、染色を評価し、撮影する。図7及び図8に実施例を示す。
【0103】
結論として、2つの標的が、それらのそれぞれのリガンド:NR5A2(図7)及びNR1H3(図8)の存在下又は不在下において、石灰化を誘導したことをすでに同定する。
頭蓋冠頭蓋骨組織を用いて実施した研究において、LXRアゴニスト単独の投与は骨形成を誘導し、それによって、前駆細胞を骨芽細胞へと分化させるための方法、骨組織形成を刺激する方法、及び骨粗鬆症を治療又は予防することを含む骨疾患を治療若しくは予防することを含む、本発明の方法に有用である。
【0104】
図9及び図10に提示したデータは、LXRアゴニストが、Ad-NR1H3又はAd-NR1H2の不在下では、Ad-NR1H3又はAd-NR1H2の存在下と同程度レベルのアルカリフォスファターゼ活性を誘導しないことを示す。頭蓋冠頭蓋骨組織での知見に一致しないような知見は、例えば、NR1H3タンパク質又はNR1H2タンパク質の過剰発現が、内因性NR1H3タンパク質又は内因性NR1H2タンパク質よりも、活性化補助因子タンパク質の異なる集合を補充し得るような、多くの因子の結果であり得る。
【0105】
(実施例10)頭蓋冠頭蓋骨アッセイ:NR1H3アゴニストT0901317の活性
成人の骨は、有機(例えば、タイプ−1コラーゲン)物質、及び無機(リン酸カルシウム)物質、骨形成細胞型(MPC、骨芽細胞及び骨細胞)、及び骨分解細胞型(破骨細胞)からなる。標的ヒットの同定及び最初の検証に使用したMPC単層は、インビボの多細胞3次元環境を模倣していないので、骨器官培養モデルを開発した。インビボの骨環境をよく模倣したすばらしいエクスビボモデルは、中足骨又は頭蓋冠頭蓋骨組織培養モデルなどの、骨器官培養である。前者のモデル(インビボ)では、軟骨内骨化によって形成される足骨を使用する。後者のモデル(エクスビボ)では、膜内骨化によって形成される頭蓋骨を使用する(再び図1を参照されたい)。本実施例は、頭蓋冠頭蓋骨を使用する後者のモデルを記載する。
【0106】
CD1メスマウス(該マウスが妊娠11日目のときに、Janvier社(Le Genest St Isle、France)から受け取った)から、出産前後のCD1仔を回収する。仔の頭部を切除し、頭蓋冠頭蓋骨を解剖し、2つの頭蓋冠半球に分割する。滅菌ガーゼを使用して頭蓋冠半球を拭い取って秤量し、24ウエルプレートで培養する(50μg/ml L−アスコルビン酸(Sigma社、A-4034)、5mM β−グリセロリン酸(Sigma社、G-9891)及びペニシリン−ストレプトマイシン(Invitrogen社 カタログ番号15140-122)を含む、MEMアルファ培地又はBGJb-Fitton-Jackson培地)。小分子(リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト)を、3種類の濃度の最小の少なくとも3倍でテストする。0日目に、各小分子を培地に添加し、培地を補給するとき(2〜3日毎)に再び添加する。実験開始3日〜16日後に、滅菌ガーゼを使用して、乾いた頭蓋骨から拭い取った後に、頭蓋骨を再び秤量する。重量差を計算してパーセント重量変化として表現し、平均及び標準偏差(SD)を3回の測定から計算する。スチューデントのt−検定を使用してデータを解析する。Ad-BMP2及びAd-BMP7ポジティブコントロールの重量増加を、図17に示す。
【0107】
新たな類骨の形成を、組織学的に下記のように解析する:頭蓋冠半球を、少なくとも2日間、緩衝化された10%ホルマリン中で固定し、10%EDTA中で一晩、脱石灰化し、等級付けされたアルコールを通して加工し、パラフィンろう中に包埋する。頭蓋冠の3〜10μmの切片を調製し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色する。正常細胞、死細胞、老骨及び新生骨、並びにコラーゲンを、それらの特徴的形態及びH&E染色後に観察される着色によって識別する。これらによって得られた表面を立体解析学的に測定し(μm2読み取り)、それぞれ、骨芽細胞領域、残骸領域、天然型骨領域、及び新生骨領域、コラーゲン領域、並びに総領域(先の5領域の合計)と名づける。さらに、切片上を均等に間隔をあけた8箇所の位置で厚さを測定する(μM読み取り)。
【0108】
頭蓋冠頭蓋骨アッセイの組織学的読み取りを、既知の骨形成作用物質を使用して構築する。頭蓋冠半球を、組換えヒト副甲状腺ホルモン(rhPTH)で処理した。PTHは骨に対して二重作用を有する:断続的な治療計画は骨形成をもたらすが、継続的な治療計画は骨吸収をもたらすので、PTHはインビボで継続的によりはむしろ断続的に投与する必要性がある。二重作用はまた、予期したように、頭蓋冠頭蓋骨モデルにおいて認められる:10−7MのPTHは骨組織において吸収効果を有するが、10−11Mでは骨形成を誘導する。
【0109】
NR1H3及びT0901317は、AP及び石灰化アッセイにおいて良好な成績であるので、市販のNR1H3アゴニストであるT0901317を頭蓋冠頭蓋骨でテストし、さらにNR1H3活性化作用の骨形成潜在能力を示す。
T0901317を、いくつかの濃度(19.5、78.1及び313nM)で、4分割に解体した日に、解剖した頭蓋冠半球の培地に添加する。溶媒(媒体)であるDMSOの濃度を、終濃度0.05%に固定する。T0901317又は媒体コントロールを含む培地を、2〜3日毎に補給する。実験開始後7日目に頭蓋冠半球を回収し、先に記載した組織学的解析に供する。統計学的に明らかな増加が、骨芽細胞、コラーゲン及び新生骨の領域に観察される。該化合物の用量反応活性を、骨芽細胞、総領域(測定した全ての領域の合計)及び厚さの領域に対して認める(図18)。
【0110】
H&E染色とは別に、他の染色を規定通りに行う。ある方法において、AP活性を、下記のようにして可視化する:スライドを、4%パラホルムアルデヒドを使用して10分間固定し、PBS及びMilliQ水で洗浄する。スライドを、ALP緩衝液(ALP緩衝液:0.1M Tris-HCl pH 9.5、20 mM MgCl2、100 mM NaCl)で5分間インキュベートし、ティッシュペーパーを使用して拭い取り、基質(ALP緩衝液中のNBT/BCIP(塩化ニトロブルーテトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸、Roche))とインキュベートする。染色は、色が黄色から茶色へと変わるとき、MilliQ水で洗浄することによって停止させる。
【0111】
(実施例11):優性阻害RUNX2変異体は、NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGによるAP上方調節に干渉する
RUNX2は、MPC又は骨芽細胞から受け取った多くの骨形成要因を、適切な骨形成の転写的出力へと中継する、重要な骨形成転写因子である。マウスにおけるノックアウト研究は、RUNX2が、発達期の骨格の骨化に重要であることを示す(Franceschi RT及びXiao Gの文献(2003))。
【0112】
RUNX2の生物学及びRUNX2が中継する骨形成シグナルを研究するための有用な手段は、変異体である。N末端のRunt相同性DNA結合ドメインは保持するが、C末端転写促進領域を欠く切断型RUNX2タンパク質は、優性阻害RUNX2(DN-RUNX2)タンパク質として作用する。この型の変異体は、インビトロ及びインビボで、RUNX2活性に干渉できる(Zhangらの文献、2000)。MPCは、有意水準のRUNX2 mRNAを発現する(レベルは、b−アクチン mRNAより、約10倍低い)。
【0113】
BMP2の骨形成活性は、RUNX2を介して機能することが知られているので、Ad-BMP2及びAd-DN-RUNX2ウイルスを使用して、DN-RUNX2アッセイを開発する。全長のヒトRUNX2 cDNAを、MPCから抽出した総RNAからのRT−PCRによって得る。アミノ酸1〜214をコードするcDNAの5'部分を、クローン化したRUNX2 cDNAからPCRで得て、アデノウイルスアダプタープラスミドにサブクローニングする。クローン化したフラグメントの同一性を、配列決定で検証する。このプラスミドを使用して、WO 9964582に記載されるようなアデノウイルスストックを作成する。
【0114】
384ウエルプレートのウエルにつき1000個のMPCを播種し、その翌日に、hCARをコードするアデノウイルス(MOI 250)、Ad-BMP2(MOI 6000、2000、666)及びAd-DN-RUNX2又はAd-ルシフェラーゼ(MOI 2000又は666)のうちの1つを使用して感染させる。アルカリフォスファターゼ活性を、感染後6日目に読み取る。図19(A)から、DN-RUNX2の過剰発現が、BMP2誘導性のAP活性の上方調節を減少させることは明白である。この結果は、使用したDN-RUNX2構築物の機能性を示す。
【0115】
DN-RUNX2アッセイを使用して、NR5A2、NR1H3、及びESRRGによるAP活性の上方調節におけるRUNX2の関与をテストする。384ウエルプレートのウエルにつき1000個のMPCを播種し、その翌日に、hCARをコードするアデノウイルス(MOI 250)、Ad-BMP2、Ad-ESRRG、Ad-NR5A2、Ad-NR1H3(MOI 6000、2000、666)及びAd-DN-RUNX2又はAd-ルシフェラーゼ(MOI 1000、又はMOI 2000及び666)のうちの1つを使用して感染させる(図19(C)を参照されたい)。アルカリフォスファターゼ活性を、感染後6日目に読み取り、生データを解析する。図19(B)から、DN-RUNX2の過剰発現が、ESRRG誘導性及びNR5A2誘導性のAP活性の上方調節を顕著に減少させることは明白である。図19(C)から、DN-RUNX2の過剰発現が、T0901317存在下において、NR1H3によって誘導されるAP活性の上方調節を顕著に減少させることは明白である。
【0116】
(実施例12):MPC分離株と無関係な、NR5A2、NR1H3 + T0901317、ESRRGによるアルカリフォスファターゼ活性の誘導
MPCは、インフォームドコンセントを得て、健常な提供者から分離した新鮮骨髄から単離できる(Cambrex Bioscience/Biowhittaker社、Verviers、Belgium)。MPCは、例えば、APアッセイ(実施例2を参照されたい)を使用して、インビトロで骨形成因子を単離するための、生理的に関連のある細胞である。ただ1つのMPC単離物(すなわち、1人の提供者由来)に機能する標的を除外するために、標的もまたいくつかの異なるMPC分離株でテストし、MPCを使用する標的の発見過程における、遺伝的背景の影響を除外する。
【0117】
骨形成因子NR5A2、NR1H3及びESRRGを、実施例2に記載した手順に従ったAPアッセイで、標的の発見のために使用したものとは異なる、3つの独立したMPC分離株でテストする。384ウエルプレートのウエルにつき1000個のMPCを播種し、その翌日に、hCARをコードするアデノウイルス(MOI 250)、Ad-BMP2、Ad-ESRRG、Ad-NR5A2、及びAd-NR1H3(MOI 10000、2500、625)を使用して感染させる。MOI 2500のAd-NR1H3ウイルスを用いて感染させたMPCも同様に、感染1日後に、異なる濃度のT0901317(図20)又は媒体を用いて処理する。4人の異なる提供者(A,B,C,D)から単離したMPCを、Ad-ルシフェラーゼ又はAd-DN-RUNX2と共に、Ad-hCAR、Ad-BMP2(ポジティブコントロール)、Ad-eGFP(ネガティブコントロール)、Ad-NR5A2、Ad-ESRRG(A,B,C,D の左側のパネルに示したデータ)及びAd-NR1H3 + T0901317(A,B,C,D の右側のパネルに示したデータ)を用いて感染させる。感染開始後6日目に、内因性AP活性を測定する。
図20から、NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGが、テストした全ての4つのMPC分離株において、似た範囲でAP活性を誘導することは明らかである。
【0118】
(実施例13):卵巣切除動物モデルにおける骨粗鬆症の治療用LXRアゴニストの解析
潜在的骨粗鬆症の薬物治療法の解析用の素晴らしい標準動物モデルは、卵巣切除モデルである。卵巣切除(OVX)は、骨粗鬆症の重要な原因因子であるエストロゲン産生の減少をもたらす。本実施例は、動物モデルとしてラットを使用するが、マウス又は霊長類などの他の動物モデルも、当業者に日常的に使用される。
【0119】
適宜、食物と水を得ることができる、温度(20±1℃)及び光(12時間の明暗サイクル)の不変条件下で、3月齢のメスのルイスラットを飼育する。ラットを偽手術する、又はケタミン及びキシラジンで麻酔した後に、両側の卵巣切除を実行した。子宮角の結紮の後に、卵巣を摘出する。
以下のグループを編成する:偽手術コントロールラット(N = 10)、生理食塩水のみを与える卵巣切除ラット(OVX、N = 12)、17β−エストラジオール(Sigma Chemical社、St. Louis、MO、USA)を、体重1kg当たり30μgの濃度になるようにオリーブオイルで調節した体積を少量のエタノールに溶かし、6週間毎日皮下的に投与した与える卵巣切除ラット(OVX-E、N = 11)、LXRアゴニストを、適切な媒体(例えば、水及びレシチン)に懸濁し、体重1kg当たり0.1〜100mgの用量で6週間毎日、経口で投与する卵巣切除ラット(OVX-A、N =8)。全てのラットを、6週間後に使用する。使用前の2日目、3日目及び28日目に、骨の標識用に20mg/kgの用量で筋肉内的に投与したキシテトラサイクリン(xytetracycline)(テラマイシン、Pfizer社)をラットに与える。石灰化した骨の組織学及び組織形態計測用に、大腿骨を得る。小動物での骨塩密度(BMD)の測定に適応する二重エネルギーX線吸収(例えば、CTI Concord Microsystems社からの装置、Knoxville TN http://www.ctimi.com)によって、BMDを測定する。大腿遠位の走査を実施する。約220gの重量の1匹のラットで、毎回、2つの異なる部位でラットを再配置して、5回のBMD測定の変動係数(CV=100×SD/平均)を測定することによって、インビボの再現性を評価する。大腿遠位において、変動は1.4%である。さらに、歯槽骨構造を評価する。全ての変数を、すなわち基線で、6週間後に2回測定する。
【0120】
右の大腿遠位を70%エタノールで固定し、脱水し、メチルメタクリル樹脂に包埋し、Policut S microtome(Reichert-Jung社、Heidelberg、Germany)を使用して、縦方向に薄切する。各検体の中心から、5μm及び10μmの切片を得る。5μmの切片を0.1%トルイジンブルー pH6.4で染色し、各サンプルの少なくとも2つの非連続切片を調査する。骨形成及び骨吸収の静的パラメータ並びに構造パラメータを、二次海綿質骨における成長板より下の標準化した部位で測定する。
【0121】
代謝ケージ中で尿を採取する。尿のデオキシピリジノリンを、第三者的診断研究機関を介して、ELISA及びクレアチニンによって測定する。オステオカルシン、骨シアロタンパク質、BMP(骨形態計測タンパク質)及び異化マーカーであるカルボキシ末端テロペプチドを含む他の血漿マーカーを、ELISAで評価する。
エーテル麻酔をしている間に、放血によってラットを犠牲にする。盲検法で全ての動物データを得る。データを、平均±標準偏差(SD)として報告する。対のスチューデントのt−検定を使用して、同じ群内の基線で、6週間後に値を解析する。ANOVAに続いて、ニューマン−クールズ事後検査を使用し、異なる群を比較する。組織形態計測的変数と非侵襲性骨質量測定との間の直線回帰を計算し、ピアソン検定を適用する。統計的有意性を、0.05より低いP値に設定する。
【0122】
(実施例13):卵巣切除動物モデルにおける骨粗鬆症の治療用標的アゴニストの解析
潜在的骨粗鬆症の薬物治療法の解析用の素晴らしい標準動物モデルは、卵巣切除モデルである。卵巣切除(OVX)は、骨粗鬆症の重要な原因因子であるエストロゲン産生の減少をもたらす。以下の実施例は、動物モデルとしてラットに関連するが、マウス又は霊長類などの他の動物モデルも、当業者によって行われるように規定通りに使用する。
【0123】
適宜、食物と水を得ることができる、温度(20±1℃)及び光(12時間の明暗サイクル)の不変条件下で、3月齢のメスのルイスラットを飼育する。ラットを偽手術する、又はケタミン及びキシラジンで麻酔した後に、両側の卵巣切除を実行した。子宮角の結紮の後に、卵巣を摘出する。
以下のグループを編成する:偽手術コントロールラット(N = 10)、生理食塩水のみを与える卵巣切除ラット(OVX、N = 12)、17β−エストラジオール(Sigma Chemical社、St. Louis、MO、USA)を、体重1kg当たり30μgの濃度になるようにオリーブオイルで調節した体積を少量のエタノールに溶かし、6週間毎日皮下的に投与した与える卵巣切除ラット(OVX-E、N = 11)、本出願の標的アゴニストを、適切な媒体(例えば、水及びレシチン)に懸濁し、体重1kg当たり0.1〜100mgの用量で6週間毎日、経口で投与する卵巣切除ラット(OVX-A、N =8)。全てのラットを、6週間後に使用する。使用前の2日目、3日目及び28日目に、骨の標識用に20mg/kgの用量で筋肉内的に投与したキシテトラサイクリン(xytetracycline)(テラマイシン、Pfizer社)をラットに与える。それから、石灰化した骨の組織学及び組織形態計測用に、大腿骨を得る。小動物での骨塩密度(BMD)の測定に適応する二重エネルギーX線吸収(例えば、CTI Concord Microsystems社からの装置、Knoxville TN)によって、BMDを測定する。大腿遠位の走査を実施する。220gの重量の1匹のラットで、毎回、2つの異なる部位でラットを再配置し、5回のBMD測定の変動係数(CV=100×SD/平均)を測定することによって、インビボの再現性を評価する。大腿遠位において、変動は1.4%である。さらに、歯槽骨構造を評価する。全ての変数を、すなわち基線で、6週間後に2回測定する。
【0124】
右の大腿遠位を70%エタノールで固定し、脱水し、メチルメタクリル樹脂に包埋し、Policut S microtome(Reichert-Jung社、Heidelberg、Germany)を使用して、縦方向に薄切する。各検体の中心から、5μm及び10μmの切片を得る。5μmの切片を0.1%トルイジンブルー pH6.4で染色し、各サンプルの少なくとも2つの非連続切片を調査する。骨形成及び骨吸収の静的パラメータ並びに構造パラメータを、二次海綿質骨における成長板より下の標準化した部位で測定した。
【0125】
代謝ケージ中で尿を採取する。尿のデオキシピリジノリンを、第三者的診断研究機関を介して、ELISA及びクレアチニンによって測定する。オステオカルシン、骨シアロタンパク質、BMP(骨形態計測タンパク質)及び異化マーカーであるカルボキシ末端テロペプチドを含む他の血漿マーカーを、ELISAで評価する。
その後、エーテル麻酔をしている間に、放血によってラットを犠牲にする。盲検法で全ての動物データを得る。データを、平均±標準偏差(SD)として報告する。対のスチューデントのt−検定を使用して、同じ群内の基線で、6週間後に値を解析する。ANOVAに続いて、ニューマン−クールズ事後検査を使用し、異なる群を比較する。組織形態計測的変数と非侵襲性骨質量測定との間の直線回帰を計算し、ピアソン検定を適用する。統計的有意性を、0.05より低いP値に設定する。
【0126】
(実施例14)GPCRに対するリガンドの選別
(実施例14A)レポーター遺伝子の選別
Hek293細胞又はCHO-K1細胞などの哺乳動物細胞を、cAMP依存性プロモーター(CREエレメント)の制御下で、ルシフェラーゼ遺伝子を連結したプラスミドを用いて安定的に形質移入させるか、又はcAMP依存性プロモーターの制御下で、ルシフェラーゼ遺伝子を連結したアデノウイルスを用いて形質導入させる。さらに、レポーター構築物に、Ca2+依存性プロモーター(NF-ATエレメント)、又は活性型NF−κBによって制御されるプロモーターの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を用いることができる。それからレポーター構築物を発現しているこれらの細胞に、表1のGPCRのcDNAを連結したアデノウイルスを用いて形質導入する。形質導入後40時間目に、該細胞を、ペプチド(LOPAP、Sigma Aldrich社)、脂質(Biomol、TimTech社)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs、TimTech社)、低分子化合物(Tocris社)、市販のスクリーニングライブラリー、及び表1のGPCRの配列番号からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに親和性を有することが示されている化合物を含む、膨大な対照化合物のコレクションを用いて処理する。
【0127】
ルシフェラーゼ活性を増加させる化合物は、表1のGPCRに対するアゴニストであると考えられる。これらの化合物を検証のために再び選別し、骨芽細胞前駆細胞においてBAPを上方調節させるそれらの活性を選別する。また、該化合物を選別し、GPCRへの結合を検証する。実質的に全ての化合物で、化合物を選別するための結合活性アッセイ及びレポーター活性アッセイが実施可能である。
【0128】
さらに、NF-ATレポーター遺伝子を発現している細胞に、G15のα−サブユニット又はキメラのGαサブユニットをコードするcDNAを連結したアデノウイルスを用いて形質導入することが可能である。G15は、多くの異なるGPCRに共役するGqクラスの乱交雑的Gタンパク質であり、そのようなものとして、細胞内Ca2+貯蔵の放出に対するそれらのシグナル伝達を再指示する。キメラのGアルファサブユニットは、その最後の5個のC末端残基をGαqの最後の5個のC末端残基で置き換えたGs及びGi/oファミリーのメンバーであり、これらのキメラのGタンパク質もまた、cAMPシグナル伝達をCa2+シグナル伝達へと再指示する。
【0129】
(実施例14B)FLIPR選別
Hek293細胞又はCHO-K1細胞などの哺乳動物細胞に、表1のGPCRのcDNAを連結した発現プラスミド構築物を安定的に形質移入する。細胞を播種し、培養し、十分に安定な細胞を得ることができるまで選択する。Fura3又はFura4などのCa2+依存性蛍光物質を細胞に添加する。余剰の蛍光物質を洗い流した後、細胞を、ペプチド(LOPAP、Sigma Aldrich社)、脂質(Biomol、TimTech社)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs、TimTech社)、低分子化合物(Tocris社)、市販のスクリーニングライブラリー、及び表1のGPCRの配列番号からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに親和性を有することが示されている化合物を含む、膨大な対照化合物のコレクション、及び細胞への化合物に対して選別する。受容体の活性化を、蛍光物質と放出されるCa2+との相互作用に起因する蛍光のほぼ瞬間的な増加として測定する。蛍光を増加させる化合物は、選別する受容体に対するアゴニストであると考えられる。これらの化合物を再び選別し、表1のGPCRへの結合を測定する。
【0130】
(実施例14C)エクオ選別(AequoScreen)
アポエクオリンを安定的に発現するCHO細胞に、表1のGPCRのcDNAを連結したプラスミド構築物を安定的に形質移入する。細胞を播種し、培養し、十分に安定な細胞を得ることができるまで選択する。アポエクオリンの補助因子であるセレンテラジンを細胞に添加する。受容体が活性化すると、細胞内Ca2+貯蔵は空となり、エクオリンは発光過程でセレンテラジンと反応する。発光は、受容体活性化の指標である。アポエクオリン及び受容体の両方を安定的に発現するCHO細胞を、化合物を細胞に添加することによって、ペプチド(LOPAP、Sigma Aldrich社)、脂質(Biomol、TimTech社)、炭水化物(Specs)、天然化合物(Specs、TimTech社)、低分子化合物(Tocris社)、市販のスクリーニングライブラリー、及び表1のGPCRの配列番号からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに親和性を有することが示されている化合物を含む、膨大な対照化合物のコレクションに対して選別する。受容体の活性化を、アポエクオリン、セレンテラジン、及び放出されるCa2+の相互作用に起因する蛍光のほぼ瞬間的な増加として測定する。蛍光を増加させる化合物は、選別する受容体に対するアゴニストであると考えられる。これらの化合物を再び選別し、表1のGPCRへの結合を測定する。光を増加させる化合物は、選別する受容体に対するアゴニストであると考えられる。これらの化合物を再び選別し、表1のGPCRへの結合量を測定する。
【0131】
さらに、アポエクオリン遺伝子を発現している細胞に、G15のα−サブユニット又はキメラのGαサブユニットをコードするcDNAを連結したアデノウイルスを用いて形質導入する。G15は、多くの異なるGPCRに共役するGqクラスの乱交雑的Gタンパク質であり、そのようなものとして、細胞内Ca2+貯蔵の放出に対するそれらのシグナル伝達を再指示する。キメラのGアルファサブユニットは、その最後の5個のC末端残基をGαqの最後の5個のC末端残基で置き換えたGs及びGi/oファミリーのメンバーであり、これらのキメラのGタンパク質もまた、cAMPシグナル伝達をCa2+シグナル伝達へと再指示する。
【0132】
(実施例14D)GPCRポリペプチドに結合する化合物の選別(置換実験)
GPCRの表1のポリペプチドへの結合で化合物を選別する。ポリペプチドへの化合物の親和性を、置換実験で測定する。手短に言うと、GPCRポリペプチドを、該ポリペプチドと結合することが知られている標識リガンド(放射性標識、蛍光標識)及び非標識リガンドと共にインキュベートする。ポリペプチド由来の標識リガンドの置換を、それでも該ポリペプチドに会合している標識リガンドの量を測定することによって決定する。ポリペプチドに会合した量を、化合物の濃度に対してプロットし、IC50値を計算する。この値は、その標的、すなわち、GPCRの表1のポリペプチドへの化合物の結合親和性を反映する。強力な結合剤は、ナノモラー及びピコモラーの範囲においてさえ、IC50を有する。少なくとも10マイクロモル又はそれよりよい(nmol〜pmol)でIC50を有する化合物を、例えばアルカリフォスファターゼアッセイに適用し、それらの骨形成への効果をチェックする。GPCRの表1のポリペプチドは、該アッセイを、細胞、細胞画分又は生化学的に精製したタンパク質で実施するかどうかによって、様々な方法で調製可能である。
【0133】
(実施例14E)表1のGPCRへ結合する化合物の選別(一般的なGPCR選別アッセイ)
Gタンパク質受容体が構成的に活性になる場合、Gタンパク質受容体はGタンパク質(Gq、Gs、Gi、Go)に結合し、Gタンパク質へのGTPの結合を促進させる。それからGタンパク質はGTPaseとして機能し、ゆっくりとGTPをGDPへ加水分解し、それによって、通常条件下において、受容体は不活性型となる。しかしながら、構成的に活性化された受容体は、GDPをGTPへと交換し続ける。GTPの非加水分解性類似体である[35S]GTPγSを使用して、構成的に活性化された受容体を発現する膜への、増幅された結合をモニターすることができる。[35S]GTPγSを使用して、リガンドの不在下及び存在下における、膜へのGタンパク質共役をモニターすることができることを報告する。さらに好ましい方法は、GPCR−Gタンパク質融合タンパク質の使用である。表1のGPCR−Gタンパク質融合タンパク質を生成する方法は、当業者によく知られている。表1のGPCR−Gタンパク質融合タンパク質を発現している膜を、候補アゴニスト化合物の直接的同定での使用のために調製する。表1のGPCR−Gタンパク質融合タンパク質を有するホモジナイズした膜を、96ウエルプレート中に移す。ピンツール(pin-tool)を使用して、候補化合物を各ウエルに移して[35S]GTPγSを加え、その後、室温で60分間振盪機上でインキュベーションする。アッセイは、22℃で15分間、4000RPMでプレートを回転させることで停止させる。それからプレートをを吸引し、その後放射能を読み取る。
【0134】
(実施例14F)細胞表面上での受容体リガンド結合
哺乳動物細胞のアデノウイルスを用いた形質導入によって、哺乳動物細胞(Hek293、CHO、COS7)で受容体を発現させる(米国特許第6,340,595号を参照されたい)。10pM〜10μMにわたる様々な濃度(4℃で3時間:pH 7.4に調整した、25 mM HEPES、140 mM NaCl、1 mM CaCl2、5 mM MgCl2及び0.2% BSA)で、標識リガンド(ヨウ化、トリチウム化、又は蛍光)及び非標識化合物の両方を共にインキュベートする。細胞回収機(Packard社)を使用して、反応混合物をPEI処理GF/Bガラスフィルター上に吸引する。フィルターを、氷冷洗浄緩衝液(pH 7.4に調整した、25 mM HEPES、500 mM NaCl、1 mM CaCl2、5 mM MgCl2)で2回洗浄する。シンチラント(MicroScint-10; 35μl)を添加してフィルターを乾かし、(パッカードトップカウント(Packard Topcount))シンチレーションカウンターで該フィルターを計測する。データを解析し、プリズムソフトウエア(Prism software(GraphPad Software社、San Diego、Calif.))を使用してプロットする。競合曲線を解析し、IC50値を計算する。1以上のデータ点が、競合曲線のシグモイド範囲内、又はシグモイド範囲の近傍にこない場合、アッセイを繰り返し、標識リガンドの濃度及び非標識化合物が、競合曲線のシグモイド範囲近傍又はその内により多くのデータ点を有するように適合させる。
【0135】
(実施例14G)膜画分上の受容体リガンド結合調査
哺乳動物細胞(Hek293、CHO、COS7)から膜標本を単離し、前記受容体を過剰発現している細胞を、以下のように使用する:形質導入細胞から培地を吸引し、穏やかに剥がすことによって、細胞を1×PBS中に回収する。細胞を沈殿させ(2500rpm、5分)、50 mM Tris pH 7.4に再懸濁する(10 x 106細胞/ml)。細胞の沈殿を、3×5秒超音波処理(UP50H;sonotrode MS1;最大振幅:140μm;最大超音波力厚さ:125W/cm2)することによってホモジナイズする。最大速度(13,000 rpm〜15,000から20,000g又はrcf)で20分遠心処理することによって、膜画分を調製する。その結果生じた沈殿を、500μlの50 mM Tris pH 7.4に再懸濁し、再び3×5秒超音波処理する。遠心分離によって膜画分を単離し、最終的にPBS中に再懸濁する。結合競合及びIC50値の導出を、先に記載したように決定する。
【0136】
(実施例14H)内在化選別(1)
GPCR関連性シグナル転換経路の活性化は、一般的に、細胞質から原形質膜、又は細胞質から核への、特定のシグナル転換分子の移行を誘導する。Norak社は、細胞質から原形質膜への、アゴニスト誘導性の受容体−β−アレスチン−GFP複合体の移行、及びそれに続いて起こる受容体脱感作の間に起こる、この複合体の内在化に基づいたそれらのトランスフロー(transfluor)アッセイを開発した。同様のアッセイは、β−アレスチンの代わりに、GFPタグを付加した受容体を使用する。Hek293細胞に、表1のGPCR−eGFP融合タンパク質を翻訳する、表1のGPCRのベクターを形質導入する。形質導入の48時間後に、該細胞を60分間血清なしの新鮮培地に沈め、37℃、5%CO2で、15、30、60又は120分間リガンドを処理する。示した曝露時間後、細胞をPBSで洗浄し、室温で20分間、5%パラホルムアルデヒドで固定する。GFP蛍光を、デジタルカメラを搭載するZeiss社の顕微鏡で可視化する。この方法は、原形質膜へのアレスチン融合タンパク質の移行を誘導する化合物の同定を目的とする。
【0137】
(実施例14I)内在化選別(2)
β−アレスチンとβ−ガラクトシダーゼ酵素の相補性、及びエネルギー提供体として受容体及びエネルギー受容体としてβ−アレスチンをもちいたアッセイに基づいたBRETを使用した、転移アッセイの様々な変法が存在する。また、pH感受性色素をもちいて標識した特定の受容体抗体の使用を利用して、アゴニストで誘導された受容体の酸性リソソームへの転移を検出する。全ての転移アッセイを、アゴニスト的に機能するリガンドの選別に使用する。
【0138】
(実施例14J)メラニン細胞アッセイ(Arena Pharmaceutical社)
メラニン細胞アッセイは、アフリカツメガエルのメラニン細胞内におけるメラノソームを含むメラニンの分布を変化させる、GPCRの能力に基づいている。メラノソームの分布は、Gi/o又はGs/qのどちらかに共役する外因性受容体に依存する。光吸収を測定することによって、メラノソームの分布(分散型又は凝集型)を容易に検出する。この型のアッセイを、アンタゴニスト化合物の選別とアゴニスト化合物の選別の両方に使用する。
【0139】
(参考文献)
Cortez-Retamozoらの論文(2004). Cancer Res 64: 2853-7
Lipinsky、CAらの論文、(2001). Adv Drug Deliv Rev 46: 3-26
Nakashima K及びde Crombrugghe Bの論文、(2003). Trends Genet 19(8): 458-66
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】膜内骨化及び軟骨内骨化。
【図2】骨芽細胞分化アッセイの原理。
【図3】APアッセイにおけるノックインコントロールプレートの成績。
【図4】1つのフレックスセレクトスクリーニングプレート(FLeXeSelect screening plate)での生データのドットプロット表示。
【図5】選別した化合物による、AP活性の用量依存的上方調節。
【図6】BAP−mRNAの上方調節対PLAP−mRNA又はIAP−mRNAの上方調節の解析。
【図7】初代ヒトMPCの石灰化。
【図8】初代ヒトMPCの石灰化。
【図9】Ad-NR1H3の存在下における、LXRアゴニストGW3965によるAP活性の用量依存的上方調節。
【図10】Ad-NR1H2の存在下における、LXRアゴニストT0901317によるAP活性の用量依存的上方調節。
【図11】Ad-NR1H2の存在下における、LXRアゴニストGW3965によるAP活性の用量依存的上方調節。
【図12】本出願において使用したアセチルポドカルピック二量体(APD)の構造。
【図13】Ad-NR1H2又はAd-NR1H3の存在下における、LXRアゴニストAPDによるAP活性の用量依存的上方調節。
【図14A−14D】骨形成に関連する細胞型のベータアクチンに比較した、本発明の4つの遺伝子のCt値及び相対的発現レベル。
【図15】NR5A2及びNR1H3+T0901317は、骨形成マーカーのmRNAレベルを上方調節する。
【図16】骨形成誘発による、NR5A2 mRNA及びNR1H3 mRNAレベルの上方調節。
【図17】ポジティブコントロールAd-BMP2及びAd-BMP7によって誘導される、頭蓋冠頭蓋骨外植片の重量増加。
【図18】T0901317によって誘導される、頭蓋冠頭蓋骨外植片の重量増加。
【図19】DN-RUNX2は、NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGによるAP活性の誘導に干渉する。
【図20】NR5A2、NR1H3 + T0901317及びESRRGは、MPC単離物とは無関係にAP活性を誘導する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨芽細胞前駆細胞を含む脊椎動物細胞集団における骨形成を促進する化合物を同定する方法であって、
(a)化合物を、配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに接触させること;及び、
(b)骨形成に関連する、化合物−ポリペプチド特性を測定することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、インビトロ無細胞調合液中に、配列番号:1〜18、201〜362又は363を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが膜結合型である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、哺乳動物細胞内で、膜貫通細胞受容体として存在する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記特性が、前記ポリペプチドへの、前記化合物の結合親和性である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記特性が、骨形成分化の指標を形成する生物学的経路の活性化である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号:1〜17又は18を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記指標が、サイクリックAMP又はCa2+である二次メッセンジャーである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記指標が、骨アルカリフォスファターゼ、タイプ−1コラーゲン、オステオカルシン、又はオステオポンチンである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記指標が、骨アルカリフォスファターゼである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記指標が、前記哺乳動物細胞内で、レポーターの発現を誘導する、請求項6記載の方法。
【請求項12】
前記レポーターが、アルカリフォスファターゼ、GFP、eGFP、dGFP、ルシフェラーゼ、及びβ−ガラクトシダーゼからなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、市販のスクリーニングライブラリーの化合物、並びに配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに対して結合親和性を有することが示されている化合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、ファージディスプレイライブラリー又は抗体フラグメントライブラリー中のペプチドである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、GPCR又はNHRのアゴニストである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
骨ホメオスタシスのアンバランスを含む病状、又は該病状への感受性の治療若しくは予防のための医薬組成物であって、配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする治療的有効量の発現性核酸配列を含む、前記医薬組成物。
【請求項17】
脊椎動物細胞内のベクターが、前記核酸配列を発現する、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスベクター、又はセンダイウイルスベクターである、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記核酸が、配列番号:1〜18からなる群から選択される、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
骨ホメオスタシスのアンバランスに苦しむ又は感受性である対象における骨形成分化を促進させる方法であって、前記対象に、配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む治療的有効量のポリペプチドのアゴニストを投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
骨ホメオスタシスのアンバランスが、悪性の低カルシウム血症、パジェット病、関節リウマチ及び歯周病などの炎症性骨疾患、骨格転移の間に起こる局所性骨形成、クロウゾン症候群、くる病、成熟遅延骨異形成症、濃化異骨症/トゥールーズ−ロートレック病、骨形成不全症、又は骨粗鬆症に起因する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
骨粗鬆症の治療又は予防のための、請求項21記載の方法。
【請求項23】
骨ホメオスタシスのアンバランス、又は該病状への感受性の治療若しくは予防のための医薬組成物であって、配列番号:1、5〜10、14〜16又は17の1以上のGPCRタンパク質受容体に対するアゴニストであることが既知である、効果的な骨アルカリフォスファターゼ誘導量の化合物を含む、前記医薬組成物。
【請求項24】
前記化合物が、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中で、その医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、又はプロドラッグとして存在する、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
骨ホメオスタシスのアンバランスを含む病状、又は前記病状への感受性の治療若しくは予防のための前記組成物の標識した表示的使用をさらに含む、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
細胞の層状品を形成するために基質上に未分化脊椎動物細胞を適用すること、及び前記未分化細胞が骨芽細胞へと分化するのに十分な時間、配列番号:1〜18からなる群から選択される発現性核酸配列を含むポリヌクレオチドを前記層状品へ接触させ、それによって骨芽細胞を含むマトリクスを産生することを含む、骨組織のインビトロ産生の方法。
【請求項27】
前記骨芽細胞が、前記基質の表面上に、少なくとも0.5μmの厚さからなる骨組織を形成するのに十分なカルシウムを沈着させる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
配列番号:1〜18からなる群から選択される発現性核酸配列を含むポリヌクレオチドを間葉多能性細胞へと接触させることによって、間葉多能性細胞のエクスビボ分化を骨芽細胞へと誘導すること、及びそれによって産生された骨芽細胞を単離することを含む、移植用の骨芽細胞を産生する方法。
【請求項29】
骨芽細胞構成物を形成するために、請求項28で単離された骨芽細胞とマトリクス形成素材を混合すること;及び移植片を産生するために、前記骨芽細胞構成物を合成移植片に適用することを含む、骨組織移植片を産生する方法。
【請求項30】
未分化脊椎動物細胞、及び配列番号:1〜18からなる群から選択される発現性核酸を含むポリヌクレオチドを含む、骨欠損充填マトリクスを含む、骨の欠損の治療用組成物であって、その中で骨前記ポリヌクレオチドが、骨芽細胞分化を誘導するために効果的な濃度で前記マトリクスに存在する、前記組成物。
【請求項31】
形質移入に使用可能なベクターが、前記発現性ポリヌクレオチドを含む、請求項30記載の組成物。
【請求項1】
骨芽細胞前駆細胞を含む脊椎動物細胞集団における骨形成を促進する化合物を同定する方法であって、
(a)化合物を、配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに接触させること;及び、
(b)骨形成に関連する、化合物−ポリペプチド特性を測定することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、インビトロ無細胞調合液中に、配列番号:1〜18、201〜362又は363を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが膜結合型である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、哺乳動物細胞内で、膜貫通細胞受容体として存在する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記特性が、前記ポリペプチドへの、前記化合物の結合親和性である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記特性が、骨形成分化の指標を形成する生物学的経路の活性化である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号:1〜17又は18を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記指標が、サイクリックAMP又はCa2+である二次メッセンジャーである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記指標が、骨アルカリフォスファターゼ、タイプ−1コラーゲン、オステオカルシン、又はオステオポンチンである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記指標が、骨アルカリフォスファターゼである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記指標が、前記哺乳動物細胞内で、レポーターの発現を誘導する、請求項6記載の方法。
【請求項12】
前記レポーターが、アルカリフォスファターゼ、GFP、eGFP、dGFP、ルシフェラーゼ、及びβ−ガラクトシダーゼからなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、市販のスクリーニングライブラリーの化合物、並びに配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに対して結合親和性を有することが示されている化合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、ファージディスプレイライブラリー又は抗体フラグメントライブラリー中のペプチドである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、GPCR又はNHRのアゴニストである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
骨ホメオスタシスのアンバランスを含む病状、又は該病状への感受性の治療若しくは予防のための医薬組成物であって、配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする治療的有効量の発現性核酸配列を含む、前記医薬組成物。
【請求項17】
脊椎動物細胞内のベクターが、前記核酸配列を発現する、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスベクター、又はセンダイウイルスベクターである、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記核酸が、配列番号:1〜18からなる群から選択される、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
骨ホメオスタシスのアンバランスに苦しむ又は感受性である対象における骨形成分化を促進させる方法であって、前記対象に、配列番号:1〜18及び201〜363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む治療的有効量のポリペプチドのアゴニストを投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
骨ホメオスタシスのアンバランスが、悪性の低カルシウム血症、パジェット病、関節リウマチ及び歯周病などの炎症性骨疾患、骨格転移の間に起こる局所性骨形成、クロウゾン症候群、くる病、成熟遅延骨異形成症、濃化異骨症/トゥールーズ−ロートレック病、骨形成不全症、又は骨粗鬆症に起因する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
骨粗鬆症の治療又は予防のための、請求項21記載の方法。
【請求項23】
骨ホメオスタシスのアンバランス、又は該病状への感受性の治療若しくは予防のための医薬組成物であって、配列番号:1、5〜10、14〜16又は17の1以上のGPCRタンパク質受容体に対するアゴニストであることが既知である、効果的な骨アルカリフォスファターゼ誘導量の化合物を含む、前記医薬組成物。
【請求項24】
前記化合物が、医薬として許容し得るキャリアーとの混合物中で、その医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、又はプロドラッグとして存在する、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
骨ホメオスタシスのアンバランスを含む病状、又は前記病状への感受性の治療若しくは予防のための前記組成物の標識した表示的使用をさらに含む、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
細胞の層状品を形成するために基質上に未分化脊椎動物細胞を適用すること、及び前記未分化細胞が骨芽細胞へと分化するのに十分な時間、配列番号:1〜18からなる群から選択される発現性核酸配列を含むポリヌクレオチドを前記層状品へ接触させ、それによって骨芽細胞を含むマトリクスを産生することを含む、骨組織のインビトロ産生の方法。
【請求項27】
前記骨芽細胞が、前記基質の表面上に、少なくとも0.5μmの厚さからなる骨組織を形成するのに十分なカルシウムを沈着させる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
配列番号:1〜18からなる群から選択される発現性核酸配列を含むポリヌクレオチドを間葉多能性細胞へと接触させることによって、間葉多能性細胞のエクスビボ分化を骨芽細胞へと誘導すること、及びそれによって産生された骨芽細胞を単離することを含む、移植用の骨芽細胞を産生する方法。
【請求項29】
骨芽細胞構成物を形成するために、請求項28で単離された骨芽細胞とマトリクス形成素材を混合すること;及び移植片を産生するために、前記骨芽細胞構成物を合成移植片に適用することを含む、骨組織移植片を産生する方法。
【請求項30】
未分化脊椎動物細胞、及び配列番号:1〜18からなる群から選択される発現性核酸を含むポリヌクレオチドを含む、骨欠損充填マトリクスを含む、骨の欠損の治療用組成物であって、その中で骨前記ポリヌクレオチドが、骨芽細胞分化を誘導するために効果的な濃度で前記マトリクスに存在する、前記組成物。
【請求項31】
形質移入に使用可能なベクターが、前記発現性ポリヌクレオチドを含む、請求項30記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2008−503229(P2008−503229A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517303(P2007−517303)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052970
【国際公開番号】WO2006/000576
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(504064364)ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (27)
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052970
【国際公開番号】WO2006/000576
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(504064364)ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (27)
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
【Fターム(参考)】
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