説明

骨密度改善組成物及び飲食物

【課題】 骨密度低下抑制作用や骨密度上昇作用を有する組成物、及びこれらを配合した飲食物を提供する。
【解決手段】 カテキン類を有効成分とする骨密度改善組成物、特に、(A)総カテキン類、(B)エピ体カテキン類、(C)非エピ体カテキン類の重量比率が、以下の要件を満たすことを特徴とする骨密度改善組成物を提供する。
(1) (C)/(A)=0.5〜1
(2) (C)/(B)=1〜100
異性化カテキン類の割合が高いカテキン類組成物は、骨密度上昇作用において顕著な効果を示した。また本発明は、かかる骨密度改善組成物を配合した飲食物を提供するものでもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテキン類を有効成分とする骨密度改善組成物及び飲食物に関する。具体的には、カテキン類を有効成分とする骨密度低下抑制組成物や骨密度上昇組成物やこれらを含有する飲食物に関する。さらには、カテキン類組成物中における異性化カテキン類の含有割合が高い骨密度低下抑制組成物や骨密度上昇組成物やこれらを含有する飲食物に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では近年、いわゆる高齢化社会問題が深刻となってきている。高齢化社会問題には、社会保障費の増加や、世代間負担のアンバランスや、労働人口の減少等の社会レベルに関わるものと、加齢による健康問題や生活の質(Quality of Life)低下等の個人的レベルに関わるものとがある。
【0003】
加齢による健康問題の一つとして、骨密度の低下が挙げられる。骨密度は、加齢により低下するといわれているが、骨密度の低下は骨粗鬆症の原因ともなる。また一方で、例えば糖尿病といった生活習慣病に罹患している場合、骨密度低下のリスクはさらに高まる。骨密度の低下を予防するには、適度な運動や日光浴、乳製品や魚等のカルシウムを豊富に含む食品の摂取等が挙げられる。しかし、多忙な現代人にとって運動等に時間を割くことが難しいことや、乳製品や魚が苦手な人にとっては、継続的に上記食品を摂取することが困難であるという問題がある。
【0004】
近年、骨の機能を強化する天然由来成分についての研究が広くなされている。茶由来の成分であるカテキン類もかかる成分の一つである。例えば、特許文献1には、カテキンを有効成分とする吸収性骨疾患の予防・治療剤について開示されている。また、特許文献2には、カテキンを有効成分とする骨形成促進剤について開示されており、中でも特に(−)エピカテキンガレート(ECg)が骨形成促進作用において優れていることが指摘されている。しかし、カテキン類のなかでも特定のカテキン種の含有比率を高めると、骨密度低下抑制作用や骨密度上昇作用を享受することができることは知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−183985
【特許文献2】特開2004−161669
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、骨密度低下抑制作用や骨密度上昇作用を有する組成物、及びこれらを配合した飲食物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、カテキン類が骨密度低下抑制作用や骨密度上昇作用を有し、さらにカテキン類組成物中の異性化カテキン類が高割合であると顕著に優れた骨密度低下抑制作用や骨密度上昇作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
1. カテキン類を有効成分とする骨密度改善組成物、
2. (A)総カテキン類、(B)エピ体カテキン類、(C)非エピ体カテキン類の重量比率が、以下の要件を満たすことを特徴とする上記1記載の骨密度改善組成物、
(1) (C)/(A)=0.5〜1
(2) (C)/(B)=1〜100
3. ガレート体率が50〜100%であることを特徴とする上記1又は2に記載の骨密度改善組成物、
4. 生活習慣病による骨密度の低下を抑制することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の骨密度改善組成物、
5. 生活習慣病が糖尿病又は肥満であることを特徴とする請求項4に記載の骨密度改善組成物、
6. 上記1〜5のいずれかに記載の骨密度改善組成物を添加してなる飲食物、
7. (A)総カテキン類、(B)エピ体カテキン類、(C)非エピ体カテキン類の重量比率を、以下の要件を満たすように調整することを特徴とする骨密度改善組成物の製造方法、
(1) (C)/(A)=0.5〜1
(2) (C)/(B)=1〜100
8. さらにガレート体率を50〜100%に調整することを特徴とする上記7に記載の骨密度改善組成物の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、骨密度低下抑制作用や骨密度上昇作用を有する組成物、及びこれらを配合した飲食物を提供できる。より具体的には、カテキン類を有効成分とする骨密度低下抑制用組成物や骨密度上昇用組成物及びこれらを配合した飲食物を提供することが可能となった。これらの組成物や飲食物の摂取は、日常生活の中で無理なく行えるばかりでなく、摂取形態が比較的自由であるため嗜好により摂取困難という問題を解消できる。また本発明品は、尿中のカルシウムの排泄を増やして骨量を低下させると言われているカフェイン含有量も低減していることから、より高い効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】糖尿病・肥満発症モデルマウスにカテキン類組成物を投与することにより、骨密度低下が抑制されたことを示す図である。
【図2】カテキン類組成物中の異性化率が異なると、骨密度上昇効果が異なることを示す図である。高週齢のマウスにカテキン類組成物を投与すると、骨密度が上昇したことを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において骨密度とは、骨に含まれるカルシウム等のミネラル成分が含まれている程度や、これを測定して得られえる値をいう。骨密度は、加齢により低下し、特に女性でその傾向が観察されると言われている。骨密度の測定は、エックス線や血液検査等の公知の方法により測定することができる。一般には、脆弱骨折が無い場合、若年成人平均値(YAM)の70〜80%で骨量が減少していると判断され、70%未満で骨粗鬆症と診断される。
【0012】
本発明においてカテキン類とは、エピ体カテキン類と非エピ体カテキン類との両方を総称するものである。本発明においてエピ体カテキン類とは、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECG)、エピガロカテキンガレート(EGCG)を総称するものであり、非エピ体カテキン類とは、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(CG)、ガロカテキンガレート(GCG) を総称するものである。
【0013】
本発明の骨密度改善組成物は、総カテキン類における非エピ体カテキン類の占める重量割合が50%以上(50〜100%)を特徴とする。総カテキン類における非エピ体カテキン類の占める重量割合は、好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜100%、最も好ましくは80〜100%である。総カテキン類における非エピ体カテキン類の占める重量割合が50%を下回ると、非エピ体カテキン類が有する優れた骨密度改善が十分に享受できなくなる。なお、総カテキン類における非エピ体カテキン類の占める重量割合を増やすには、カテキン類組成物を加熱処理してカテキン類の異性化を促したり、各種カテキン類の精製度が高い組成物を適宜調合するなどして得ることができる。
【0014】
本発明の骨密度改善組成物における(B)エピ体カテキン類と(C)非エピ体カテキン類との重量比率は、(C)/(B)=1〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜10、最も好ましくは1〜5である。(B)エピ体カテキン類と(C)非エピ体カテキン類との重量比率が1未満であると、非エピ体カテキン類が有する優れた骨密度改善が十分に享受できなくなる。なお、B)エピ体カテキン類と(C)非エピ体カテキン類との重量比率を調整するには、カテキン類組成物を加熱処理してカテキン類の異性化を促したり、各種カテキン類の精製度が高い組成物を適宜調合するなどして得ることができる。
【0015】
本発明の骨密度改善組成物におけるガレート型カテキン類(エピカテキンガレート(ECG)、エピガロカテキンガレート(EGCG)、カテキンガレート(CG)、ガロカテキンガレート(GCG))の含有量(ガレート体率)は、本発明の効果を享受できる限りにおいて特に限定されるものではないが、総カテキン類量におけるガレート型カテキン類の重量比率が50〜100%、好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜100%であることが好ましい。
【0016】
カテキン類は、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica及び、やぶきた種、又はそれらの雑種から得られる茶葉から製茶された茶葉から水や熱水、場合によってはこれに抽出助剤を添加したもので抽出することができる。当該製茶された茶葉には、(1)煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜入り茶等の緑茶類;(2)総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶などの半発酵茶;(3)紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマン等の発酵茶が含まれる。茶を抽出する方法については、撹拌抽出など従来の方法により行うことができる。また抽出時の水に、あらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。また煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。また、茶葉から直接抽出するかわりに、茶抽出物の濃縮物又は精製物が配合されてもよい。
【0017】
ここでいう茶抽出物の濃縮物とは、茶葉から熱水もしくは水溶性有機溶剤により抽出された抽出物を濃縮したものであり、茶抽出物の精製物とは溶剤やカラムを用いて精製したものである。例としては、特開昭59−219384号、特開平4−20589号、特開平5−260907号、特開平5−306279号等に詳細に例示されている方法で調製したものが挙げられる。市販品としては、東京フードテクノ(株)「ポリフェノン」、(株)伊藤園「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」、サントリー(株)「サンウーロン」等が挙げられる。そのほか、カテキン類は他の原料起源、例えばブドウ、及びワイン、ジュース類等のブドウを原料とする加工品やカカオ豆、及びこれを原料とする加工品由来のもの、更には化学合成品でも使用できる。茶抽出物の濃縮物及び茶抽出物の精製物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等種々のものが挙げられる。茶抽出物の濃縮物又は茶抽出物の精製物を溶解、希釈する液は、水、炭酸水、一般に抽出された茶類抽出液等が挙げられる。カテキン類としては、茶抽出物の濃縮物又は茶抽出物の精製物、特に緑茶抽出物の濃縮物又は緑茶抽出物の精製物を用いるのが好ましい。
【0018】
本発明においてテアニンとは、緑茶等に含まれるグルタミン酸の誘導体であり、例えばL−グルタミン酸−γ−エチルアミド(L−テアニン
)、L−グルタミン酸−γ−メチルアミド、D−グルタミン酸−γ−エチルアミド(D−テアニン )、D−グルタミン酸−γ−メチルアミド等のL−またはD−グルタミン酸−γ−アルキルアミド、L−またはD−グルタミン酸−γ−アルキルアミドを基本構造に含む誘導体(例えばL−またはD−グルタミン酸−γ−アルキルアミドの配糖体など)などをいう。
【0019】
本発明品は単独で用いることもできるが、本発明の効果が享受できる限りにおいてこれらの作用が既に知られた他の成分と混合して有効成分とすることもできる。本発明は、医薬品や医薬部外品としても提供することができる。
【0020】
本発明品の形態としては、凍結乾燥或いは噴霧乾燥等により乾燥させて乾燥粉末として提供することも、液剤、錠剤、散剤、顆粒、糖衣錠、カプセル、懸濁液、乳剤、アンプル剤、注射剤、その他任意の形態に調製して提供することができる。医薬品として提供する場合、例えば、有効成分をそのまま精製水又は生理食塩水などに溶解して調製することも可能である。医薬部外品として提供する場合、容器詰ドリンク飲料等の飲用形態、或いはタブレット、カプセル、顆粒等の形態とし、できるだけ摂取し易い形態として提供するのが好ましい。
【0021】
また、本発明品は、飲食物素材として、又は飲食物に添加して用いることもできる。なお、本明細書中において飲食物とは、飲料及び食品を意図する。また、このような飲食物は、健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品としても提供することができる。
【0022】
例えば、本発明品を、各種食品素材(果実やゼリーなども含む)、乳成分、炭酸、賦形剤(造粒剤含む)、希釈剤、或いは更に甘味剤、フレーバー、小麦粉、でんぷん、糖、油脂類等の各種タンパク質、糖質原料やビタミン、ミネラル、その他の生理活性成分、ホルモン、栄養成分などから選ばれた一種又は二種以上に加えて、スポーツ飲料、果実飲料、茶飲料、野菜ジュース、乳性飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料、炭酸飲料などの各種飲料、ゼリー、チューインガム、チョコレート、アイスクリーム、キャンディ、ビスケットなどの菓子類、スナック、パン、ケーキなどの澱粉系加工食品、魚肉練り製品、畜肉製品、豆腐、チーズなどのタンパク質系加工食品、味噌やしょうゆ、ドレッシングなどの調味料、その他、サプリメント、飼葉、ペットフードなど様々な飲食物の形態として提供することができる。
【0023】
本発明品の添加量は、本発明が目的とする効果を損なわない限り特に限定するものではないが、例えば投与対象の体重1kg当たり1〜500mg添加するのが好ましく、特に1〜200mg添加するのが好ましい。
【実施例】
【0024】
次に、試験例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0025】
[実施例1:カテキン類の骨密度低下抑制作用(II型糖尿病モデルマウスに対する影響)]
試験にはII型糖尿病モデルマウス(BKS.Cg-m+/+Leprdb/J)を使用した。該マウスの血漿インスリン値は10〜14日齢で急上昇し、血糖値は4〜8週齢で急上昇する。また、該マウスは、3〜4週齢から肥満症状も呈するようになり、糖尿病に加え生活習慣病様の症状を併せ持つマウスである。本試験では血糖上昇、肥満症状が認められている5週齢のマウスを試験に用いた。
【0026】
雄性5週齢のII型糖尿病モデルマウス(Leprdb/ Leprdb)13匹、健常マウス(Leprdb/ +)7匹を日本チャールズリバー社から入手し、1週間馴化飼育した後、表1に示すカテキン類組成物(テアフラン90S,伊藤園社製)を0.3%添加した飲用水を16日間自由に摂取させた。試験最終日にジエチルエーテル麻酔下失血屠殺し、右大腿骨を採取し骨密度の測定に供した。末梢骨密度測定装置pQCT(peripheral Quantitative Computed
Tomography、Stratec社製)を用いて骨密度を測定し、pQCTソフトウェアRev6.00f(Stratec社製)を用いてさらに解析を行った。
【0027】
【表1】

【0028】
II型糖尿病モデルマウス(図1中の「対照群」)では、健常マウス(図1中の「Leprdb/+」)と比較して有意な骨密度の低下が認められた。一方、発明品を摂取したマウス群(図1中の「発明品」)では皮質骨密度の低下を抑制し、対照群と比べて有意に高い値を示した。
【0029】
[実施例2:異性化カテキン類の骨密度低下抑制作用]
カテキン類組成物中における異性化カテキン類の占める割合が、骨密度低下抑制作用に影響するか調べた。異性化カテキン類とは、加熱等の処理によりエピ体カテキン類(エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート)が、非エピ体カテキン類(カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン、ガロカテキンガレート)に変化したものを総称するものである。
【0030】
異性化率が異なる2種類のカテキン類組成物を試験に用いた。具体的には、発明品としてカテキン類組成物(テアフラン90S;伊藤園社製)を加熱処理したものを、比較例としてカテキン類組成物(テアフラン90S;伊藤園社製)を加熱処理しないものを試験に用いた。なお、本発明品のカテキン類組成物の加熱処理は、以下の手順で行った。
【0031】
テアフラン90Sが20w/v%となるように水溶液を調製し、テアフラン90Sの10%分のアスコルビン酸ナトリウムを添加し、レトルト処理(120℃、30分)を行った。レトルト後の溶液を濃縮、凍結乾燥した後に、得られた粉体を10w/v%となるように酢酸エチルに分散させ、水にアスコルビン酸を転溶させた後に、酢酸エチル相を減圧留去、凍結乾燥し、得られた粉末をテアフラン90EPとした。
【0032】
これら2種類のカテキン類組成物をそれぞれ0.1g、イオン交換水100mLに溶解し、飲用水として5ヶ月間自由に摂取させた。結果を表2に示す。なお、得られたカテキン類水溶液の総カテキン量、エピ体カテキン類量、非エピ体カテキン類量(それぞれ単位はmg/100ml)の測定方法は、以下に記載の条件でHPLC(島津製作所社製)により測定し、異性化率[(非エピ体÷総カテキン)×100]を算出した。
【0033】
HPLC分析方法
<総カテキンの定量:HPLC分析条件>
HPLC装置:Shimadzu LC-10AD ニ液高圧グラジエントシステム
カラム:YMC J'sphere
ODS-H80 250×3.0 mmI.D.
移動相A: 水
移動相B: アセトニトリル
移動相C: 1%リン酸
検出:UV検出器 230nm
試料注入量:5μL
送液量:0.43ml/分

送液グラジエント
時間 移動相A 移動相B 移動相C
0分
82.7% 7.3% 10.0%
5分
82.7% 7.3% 10.0%
10分 80.5% 9.5% 10.0%
15分 80.5% 9.5% 10.0%
25分 76.0% 14.0% 10.0%
40分 76.0% 14.0% 10.0%
45分 49.0% 41.0% 10.0%
55分 49.0% 41.0% 10.0%
60分 82.7% 7.3% 10.0%
74分
82.7% 7.3% 10.0%

【0034】
(−)−カテキン、(−)−カテキンガレート(Cg)、(−)−エピカテキン(EC)、(−)−エピカテキンガレート(ECg)、(−)−ガロカテキン(GC)、(−)−ガロカテキンガレート(GCg)、(−)−エピガロカテキン(EGC)及び(−)−エピガロカテキンガレート(EGCg)を各10mgずつ100mlのメスフラスコに秤取し、0.5質量%アスコルビン酸と0.01質量%EDTA二ナトリウム水溶液とを用いて溶解し、100mlに定容した。この溶液の一部を用いて、2倍又は4倍に前記アスコルビン酸と0.01質量%EDTA二ナトリウム水溶液とで希釈した希釈液を調製して、1倍、2倍及び4倍の標準液とした。
【0035】
上記3種の標準液を、各々、0.2μmのバーサポアフィルターを通過させた後に、HPLC分析を下記の条件で行い、得られたクロマトグラムにおける各成分のピーク面積を測定して、ピーク面積と各成分の濃度とから検量線を作成した。上記の検量線を用いて、HPLC分析による分析試料の各成分濃度を求めた。
【0036】
【表2】

【0037】
次に、雌B6C3F1マウスを日本SLCから24匹入手し、マウスを3群に分けた。第1群を対照群としてイオン交換水を摂取させた。また、第2群には異性化率の低いカテキン類組成物(表2の「発明品1」)をイオン交換水に溶解させたものを、第3群には異性化率の高いカテキン類組成物(表3の「発明品2」)をイオン交換水に溶解させたものをそれぞれ自由に摂取させた。飼育終了後にジエチルエーテル麻酔下失血屠殺し、右大腿骨を採取し骨密度の測定に供した。
【0038】
末梢骨密度測定装置pQCT(peripheral Quantitative Computed
Tomography、Stratec社製)を用いて骨密度を測定し、pQCTソフトウェアRev6.00f(Stratec社製)を用いてさらに解析を行った。その結果、イオン交換水を摂取させた対照群と比較して、カテキン類を摂取させた発明品1群のマウスと発明品2群のマウスとでは骨密度上昇効果が確認された。また、異性化率の高いカテキン類組成物を摂取させた発明品2群のマウスでは、異性化率の低いカテキン類組成物を摂取させた発明品1群のマウスと比較して、骨密度上昇効果が有意に高かった。このことから、カテキン類には骨密度上昇効果が認められるが、カテキン類組成物中における異性化カテキン類の占める割合が高いと、骨密度上昇効果が顕著であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン類を有効成分とする骨密度改善組成物。
【請求項2】
(A)総カテキン類、(B)エピ体カテキン類、(C)非エピ体カテキン類の重量比率が、以下の要件を満たすことを特徴とする請求項1記載の骨密度改善組成物。
(1) (C)/(A)=0.5〜1
(2) (C)/(B)=1〜100
【請求項3】
ガレート体率が50〜100%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨密度改善組成物。
【請求項4】
生活習慣病による骨密度の低下を抑制することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の骨密度改善組成物。
【請求項5】
生活習慣病が糖尿病又は肥満であることを特徴とする請求項4に記載の骨密度改善組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の骨密度改善組成物を添加してなる飲食物。
【請求項7】
(A)総カテキン類、(B)エピ体カテキン類、(C)非エピ体カテキン類の重量比率を、以下の要件を満たすように調整することを特徴とする骨密度改善組成物の製造方法。
(1) (C)/(A)=0.5〜1
(2) (C)/(B)=1〜100
【請求項8】
さらにガレート体率を50〜100%に調整することを特徴とする請求項7に記載の骨密度改善組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−6355(P2011−6355A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151461(P2009−151461)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】