説明

骨形成促進剤、骨粗鬆症予防剤及びコラーゲン合成促進剤

【課題】 骨形成を促進させる骨形成促進剤、骨形成を促進させることにより骨粗鬆症の予防に有用な骨粗鬆症予防剤及びコラーゲンの合成を促進させるコラーゲン合成促進剤を提供する。
【解決手段】 骨形成促進剤、骨粗鬆症予防剤及びコラーゲン合成促進剤はいずれも、ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする。骨粗鬆症予防剤は、骨形成を促進させ、特に老人性骨粗鬆症の予防又は改善作用を発揮する。骨粗鬆症予防剤はさらに骨吸収抑制剤及び/又はカルシウム補充作用を有する食品素材を含有することが好ましい。コラーゲン合成促進剤は、通常飼料に混ぜてマウスに経口摂取させることにより、プロコラーゲン1α1遺伝子の発現量を増加させる(図1の実施例1参照)。前記遺伝子は、骨芽細胞の分化マーカーとして知られ、かつ骨の主要蛋白質であるI型コラーゲンの前駆体であるI型プロコラーゲンをコードするため、骨形成機能の増強に重要な役割を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症の予防や治療に有用な骨形成促進剤、骨粗鬆症予防剤及びコラーゲン合成促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症を基礎疾患に基づいて分類すると、明らかな原因となる病気等がみられない原発性骨粗鬆症と、ステロイド剤の投与、糖尿病、卵巣摘出といった病気や疾患等が原因となり、子供や若者でもかかる続発性骨粗鬆症とに分けられる。原発性骨粗鬆症はさらに、年齢等に基づいて、若年性骨粗鬆症と、退行期骨粗鬆症(老人性/閉経後)とに分類される。若年性骨粗鬆症は、発生率は非常に低く、思春期に発症して自然に治ったり、青年期に発生して骨折を繰り返したりするケースもみられ、現在のところ原因が不明とされている。
【0003】
退行期骨粗鬆症は、閉経後骨粗鬆症(I型)と、老人性骨粗鬆症(II型)とに分類される。閉経後骨粗鬆症は、骨からのカルシウム吸収(破骨)を抑える女性ホルモン(エストロゲン)の欠乏が原因と考えられている。老人性骨粗鬆症は、加齢によって腸の働きが衰え、カルシウムの吸収率が落ちたり、腎臓の働きが弱まって、カルシウム吸収に必要な活性型ビタミンDの合成量が低下したりすることが原因と考えられている(非特許文献1参照)。
【0004】
近年、急速に進む高齢化に伴って退行期骨粗鬆症が大きな社会問題となってきている。
骨組織は、自身の形態変化や血中カルシウム濃度の恒常化を図るために、骨形成と骨吸収とによるリモデリング(骨代謝)を常に行っている。通常、健康な成人では、骨形成量と骨吸収量とのバランスが保たれており、骨重量の変化はほとんど見られない。骨粗鬆症は、骨形成量の低下又は骨吸収量の増加により骨重量の減少を起き起こし、それによって骨折を引き起こしやすくなる疾患である。骨粗鬆症の発症メカニズムを骨組織のリモデリングという観点から検討すると、(1)骨吸収の亢進による骨重量の減少(閉経早期の骨粗鬆症、甲状腺機能亢進に起因する骨粗鬆症等)、(2)骨形成の低下による骨重量の減少(老人性骨粗鬆症、糖尿病性骨粗鬆症等)、(3)骨吸収及び骨形成は正常であるが、カルシウム摂取不足等に起因して骨吸収量が骨形成量を上回ることによる骨重量の減少の3種類に分けられる。
【0005】
(1)に対する治療薬としてはエストロゲン、カルシトニン、ビスホスホネート誘導剤が主に使用されている。食品による予防という観点からは、エストロゲン様作用を持つ食用キノコ抽出物(特許文献1参照)、骨吸収抑制作用を示すざくろ抽出物(特許文献2参照)、カワラケツメイ抽出物(特許文献3参照)等が提案されている。また、特許文献4には、エストロゲン受容体に親和性を示す物質を1重量%以上含有するローヤルゼリー抽出物が開示されている。(2)に対する治療薬としてはパラトルモン、アナボリック剤、フッ化物剤が主に使用されている。(3)に対する治療としてはカルシウムの補充が行われる。食品による予防という観点からは、カルシウム高含有食品、カルシウム吸収促進作用をもつ様々な素材が提案されている。
【0006】
ローヤルゼリーは、蜜蜂のうち日齢3〜12日の働き蜂の下咽頭腺及び大腮腺から分泌される分泌物を混合して作られる乳白色のゼリー状物質であり、古くから健康食品として利用されてきた。近年、ローヤルゼリーの抗菌作用、免疫増強作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用等に関する数多くの学術報告がなされている。上記のとおり、ローヤルゼリーは、健康食品の原料として広く使用されており、骨粗鬆症に関連した使用例としては、例えば特許文献4,5に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2004−277414号公報
【特許文献2】特開2000−247896号公報
【特許文献3】特開2001−72598号公報
【特許文献4】特開2004−75543号公報
【特許文献5】特開平11−269078号公報
【非特許文献1】“骨粗鬆症について”、[online]、財団法人 骨粗鬆症財団、[平成17年3月18日検索]、インターネット<URL:http://www.jpof.or.jp/content/frame_word.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記(1)及び(3)に対しては、上記の食品等を摂取することにより、日々の骨粗鬆症予防を手軽に実施することができる一方で、上記(2)に対しては、予防効果の期待される食品素材に関する提案がなされていないのが現状である。骨形成を促進して骨代謝全体を活性化させることは、老人性骨粗鬆症や糖尿病性骨粗鬆症の予防や治療に限らず、閉経後骨粗鬆症を含む退行期骨粗鬆症全般に有効な予防効果をもたらし、明るい高齢化社会の実現に向けて大きく貢献することが期待される。
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ローヤルゼリーに骨形成を促進させる作用を見出した。さらに、ローヤルゼリーに、骨基質の主要な蛋白質であり骨芽細胞の分化マーカーとして知られるプロコラーゲン1α1遺伝子の発現を高める作用があることも見出した。そして、これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的とするところは、骨形成を促進させることができる骨形成促進剤、骨形成を促進させることにより骨粗鬆症の予防に有用な骨粗鬆症予防剤、並びにコラーゲンの合成を促進させることができるコラーゲン合成促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の骨形成促進剤は、ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とすることを要旨とする。
請求項2に記載の骨粗鬆症予防剤は、ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とし、骨形成促進作用を有することを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の骨粗鬆症予防剤は、請求項2に記載の発明において、老人性骨粗鬆症の予防又は改善作用を有することを要旨とする。
請求項4に記載の骨粗鬆症予防剤は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、さらに骨吸収抑制剤及び/又はカルシウム補充作用を有する食品素材を含有することを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載のコラーゲン合成促進剤は、ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とすることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、骨形成を促進させることができる骨形成促進剤、骨形成を促進させることにより骨粗鬆症の予防に有用な骨粗鬆症予防剤、並びにコラーゲンの合成を促進させることができるコラーゲン合成促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の骨形成促進剤、骨粗鬆症予防剤及びコラーゲン合成促進剤を具体化した一実施形態について説明する。なお、以下、ローヤルゼリーをRJと略記する。
本実施形態の骨形成促進剤は、RJ又はその抽出物を有効成分とする。骨形成促進剤は、投与された生体に対して骨形成を促進させる作用を有しているため、老人性骨粗鬆症の予防及び改善(治療)に有用である。さらに、この骨形成促進剤は、例えば骨吸収の亢進に特徴付けられる閉経後骨粗鬆症等において、骨形成を促進させることにより、該骨粗鬆症の発症を遅延させる作用も発揮し得る。即ち、RJ又はその抽出物を有効成分とする骨形成促進剤は、退行期骨粗鬆症の予防にも有用である。
【0015】
本実施形態のコラーゲン合成促進剤は、RJ又はその抽出物を有効成分とする。コラーゲン合成促進剤は、投与された生体に対してプロコラーゲン1α1遺伝子の発現を高める作用を有する。プロコラーゲン1α1遺伝子は、骨芽細胞の分化マーカーとして知られているため、該遺伝子の発現量の増大は骨形成の促進をもたらすことが可能である。さらに、プロコラーゲン1α1遺伝子は、骨の主要な蛋白質であるI型コラーゲンの前駆体であるI型プロコラーゲンをコードする遺伝子であるため、該遺伝子の発現量の増大は骨形成の促進をもたらすことが可能である。従って、コラーゲン合成促進剤は、投与された生体の骨形成能を高めるため、前記骨形成促進剤の場合と同様に、老人性骨粗鬆症の予防及び改善に有用であるうえ、退行期骨粗鬆症の予防にも有用である。
【0016】
有効成分としてのRJは、生RJ及び乾燥RJのいずれも使用可能である。また、RJの産地は、中国、台湾、日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国及び南アメリカ諸国のいずれの地域であってもよい。有効成分としてのRJ抽出物は、生RJ又は乾燥RJをアルコール等の極性溶媒に浸漬させることによって抽出される。極性溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等の低級アルコール、水又はその混合液が使用可能であるが、飲食品等として経口摂取する際には、エタノール、水又は含水エタノールが特に好適に使用される。また、必要に応じて、RJ又はRJ抽出物を公知の分離・精製手段にて精製しても構わない。
【0017】
本実施形態の骨粗鬆症予防剤は、RJ又はその抽出物を有効成分としているため、前記骨形成促進剤の場合と同様に、老人性骨粗鬆症の予防及び改善に有用であるうえ、退行期骨粗鬆症の予防にも有用である。骨粗鬆症予防剤には、有効成分としてのRJ又はその抽出物に加えてさらに、骨吸収抑制剤又はカルシウム補充作用を有する食品素材が含まれていることが好ましく、骨吸収抑制剤及びカルシウムの両方が含まれていることが特に好ましい。
【0018】
骨吸収抑制剤としては、エストロゲン、カルシトニン、ビスホスホネート誘導剤を始めとして、ゲニステイン、ダイゼイン、ダイズインのようなイソフラボン類、胎盤エキス、キノコ抽出物、ざくろ抽出物、カワラケツメイ抽出物等の閉経後骨粗鬆症の予防や治療に有効な任意の成分が使用される。骨吸収抑制剤を含有する骨粗鬆症予防剤は、RJ又はその抽出物により骨形成を促進させるとともに、骨吸収抑制剤により骨吸収を抑えることにより、骨代謝のバランスを造骨側に大幅にシフトさせ、骨重量の増加を図ることが可能であり、老人性骨粗鬆症及び閉経後骨粗鬆症を含む退行期骨粗鬆症全般に対し予防及び改善効果を発揮する。
【0019】
カルシウム補充作用を有する食品素材としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等のカルシウム塩、焼成カルシウム(焼成した貝殻、卵殻、骨、乳清、牡蠣殻、うに殻、サンゴ等)、未焼成カルシウム(未焼成の貝殻、サンゴ、卵殻、骨、真珠等)、ドロマイト鉱石、石膏等が挙げられ、骨の材料を供給して骨形成を促進させることを可能にする。またこのとき、カルシウム摂取不足に起因する骨重量の減少(上記(3)のタイプの骨粗鬆症)を抑えることも可能となる。その他、本実施形態の骨粗鬆症予防剤には、必要に応じて、マグネシウム、鉄、マンガン、銅、亜鉛等のミネラル、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンE、ユビキノン等のビタミン類、フラボノイド類、カゼインホスホペプチド等のペプチド類、蛋白質、脂質、糖類、オリゴ糖等が含まれていることが好ましい。
【0020】
骨粗鬆症予防剤は、医薬品、医薬部外品又は飲食品として利用される。
医薬品の場合、経口剤又は非経口剤として投与される。経口剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。非経口剤の剤形としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に注射剤等が挙げられる。医薬部外品の場合、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等の剤形で利用される。一方、飲食品の場合、ドリンク等の飲料品、飴、せんべい、クッキー等の食品、又は食品製剤として経口摂取される。飲食品には、食品製造上許容される基材、担体、賦形剤、添加剤、副素材、増量剤、着色剤、香料等が含有されていてもよい。食品製剤の剤形としては、粉末、錠剤、ドリンク剤、カプセル剤等が挙げられる。
【0021】
医薬品、医薬部外品及び飲食品中の有効成分の含有量はいずれも、好ましくは0.001〜100質量%、より好ましくは0.001〜50質量%、さらに好ましくは0.01〜30質量%である。前記有効成分の含有量が0.001質量%未満では骨形成を十分に促進することができない。また、飲食品は、骨粗鬆症の予防のために定期的に経口摂取されることが好ましく、一日数回に分けて経口摂取されることが特に好ましい。一日の摂取量は、特に限定されるものではないが、ローヤルゼリーとしての重量換算で、好ましくは0.001〜30g、より好ましくは0.001〜20g、さらに好ましくは0.01〜10gである。飲食品の一日の摂取量が0.001g未満では、骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮されない。逆に、飲食品の一日の摂取量が30gを超えると、骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮される一方で、摂取量の増加分に見合う程の予防効果の増大が見られないため不経済である。
【0022】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の骨形成促進剤、骨粗鬆症予防剤及びコラーゲン合成促進剤は、いずれもRJ又はその抽出物を有効成分とする。前記有効成分は、投与された生体内で骨形成及びコラーゲンの合成を促進させることから、老人性骨粗鬆症の予防及び改善に優れた効果を発揮するとともに、閉経後骨粗鬆症を含む様々なタイプの骨粗鬆症の予防に優れた効果を発揮し得る。特に、骨粗鬆症を予防する上で、骨形成を促進させることは、骨量が減少し始める前の最大骨量を増加させる点、及び骨量の減少を遅延させる点で極めて有効である。また、老人性骨粗鬆症は、男女ともに罹患する可能性のある疾患であるため、閉経後骨粗鬆症のみに効果を有する骨粗鬆症予防剤よりも汎用性が高い点も重要である。
【0023】
・ 本実施形態の有効成分に加えて、骨吸収抑制剤を含有させることによって、骨形成の促進及び骨吸収の抑制の両作用を介して、骨代謝のバランスを造骨側にシフトさせることが可能となり、骨粗鬆症の予防及び改善に対する相乗効果が期待され得る。また、本実施形態の有効成分に加えて、カルシウム補充作用を有する食品素材を含有させることによって、骨形成の材料を供給するとともに、上記(3)のタイプの骨粗鬆症を抑える効果も期待される。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示すが、これらの実施例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
<RJによる骨形成能の評価>
(実施例1)
中国産RJ凍結乾燥粉末をマウス・ラット・ハムスター用粉末飼料CRF−1(オリエンタル酵母株式会社製)に4%加えることにより、RJ混餌飼料を調製した。
【0025】
(実施例2)
中国産生RJ1kgに95%容量エタノール2.5Lを加えて室温で2時間撹拌した後、吸引濾過した。この濾液を一次抽出液とする。一方、一次抽出液を採取した後の残渣に95%容量エタノール2Lを加えて室温で2時間撹拌した後、吸引濾過した。この濾液を二次抽出液とする。一次抽出液と二次抽出液とを混合し、減圧蒸留することにより溶媒を除去した後、CRF−1に4%加えることにより、RJ抽出物混餌飼料を調製した。
【0026】
(試験例1:正常マウスに対する骨形成能評価)
C57BLマウス(9週齢のメス)を日本エスエルシー株式会社より購入した。CRF−1による1週間の予備飼育後、マウスを4群(各群10匹)に分け、うち3群のマウスに対しそれぞれ、CRF−1からなる通常の飼料、4%RJ混餌飼料(実施例1)又は4%RJ抽出物混餌飼料(実施例2)を2ヶ月間与えて自由に摂取させた。試験期間中、各群間で餌の摂取量に有意な差は認められなかった。なお、陽性対照として、通常の飼料を与えつつ、17βエストラジオール(シグマ社製、#E8875)を3μg/kg/日の投与量で2ヶ月間皮下投与(5日/週)した群も設けた。
【0027】
2ヶ月後、各群のマウスをそれぞれエーテル麻酔下で屠殺し、脛骨を摘出して真空乾燥した後、乾燥骨重量を測定した。さらに乾燥骨を600℃で3時間かけて灰化し、灰化重量を測定した。各群のマウス(各群10匹)について乾燥骨重量及び灰化重量の平均値±標準偏差を求め、結果を下記表1に示した。また、通常飼料群に対して各群のt−検定を行った結果も表1に示した。
【0028】
(比較例1:卵巣摘出マウスに対する骨形成能評価)
C57BLマウス(7週齢のメス)を日本エスエルシー株式会社より購入した。CRF−1による1週間の予備飼育後、両側の卵巣を外科的に摘出することによって、閉経後骨粗鬆症のモデルマウス(卵巣摘出群)を作製した。また、偽手術群として、卵巣を摘出しない偽手術(開腹手術)のみを施した。卵巣摘出群のマウスをそれぞれCRF−1にて2週間飼育した後、CRF−1からなる通常飼料又は4%RJ混餌飼料(実施例1)をそれぞれ2ヶ月間与えて自由に摂取させた。偽手術群のマウスについても同様にCRF−1にて2週間飼育した後、CRF−1からなる通常飼料を2ヶ月間与えて自由に摂取させた。試験期間中、各群間で餌の摂取量に有意な差は認められなかった。なお、陽性対照として、通常の飼料を与えつつ、17βエストラジオールを3μg/kg/日の投与量で2ヶ月間皮下投与(5日/週)した群も設けた。
【0029】
2ヶ月後、各群のマウスをそれぞれエーテル麻酔下で屠殺し、脛骨を摘出して乾燥骨重量及び灰化重量をそれぞれ測定した。各群のマウス(各群10匹)について乾燥骨重量及び灰化重量の平均値±標準偏差を求め、結果を下記表1に示した。また、通常飼料群に対して各群のt−検定を行った結果も表1に示した。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示すように、閉経後骨粗鬆症のモデルである比較例1では、RJ混餌飼料(実施例1)を与えても、灰化重量(カルシウム等のミネラル成分の重量)の増加は認められなかった。これに対し、試験例1では、RJ混餌飼料(実施例1)を与えることによって灰化重量の増加傾向が認められ、RJ抽出物混餌飼料(実施例2)を与えることによって灰化重量の有意な増加が認められた。従って、実施例1のRJ混餌飼料及び実施例2のRJ抽出物混餌飼料は、骨吸収の亢進(即ち閉経後骨粗鬆症)を抑える作用は強くなく、むしろ骨形成の低下を抑える作用、つまり老人性骨粗鬆症を予防及び改善する作用に優れていた。以上より、RJ及びRJ抽出物はいずれも、骨形成の促進を介して、骨粗鬆症の予防に優れた効果を発揮するとともに、老人性骨粗鬆症の予防及び改善に優れた効果を発揮することができる。
【0032】
さらに、本実施例では、大腿骨等に比べて測定時の骨重量のバラツキが小さく、個体全体の骨重量の増減を的確に反映し得る脛骨の乾燥骨重量及び灰化重量を測定した。このため、試験例1の実施例1,2で脛骨の骨重量(特に灰化重量)が増加したことは、特定の骨の重量のみが増加したことを意味するのではなく、個体全体の骨重量が生理的に増加したことを意味している点で極めて重要である。なお、表1に示す乾燥骨重量は、灰化重量と蛋白質等の有機物の重量との和からなり、同じ群内のマウスでも個体間に大きなバラツキが見られたことに加え、骨粗鬆症では通常、骨密度(灰化重量)が問題にされることにより、参考程度に参酌すべきであると考えられる。
【0033】
<RJによるプロコラーゲン1α1遺伝子発現量の評価>
SAMRマウス(9週齢のメス)を日本エスエルシー株式会社より購入した。CRF−1による1週間の予備飼育後、マウスを3群(各群8匹)に分け、うち2群のマウスに対しそれぞれ、CRF−1からなる通常飼料又は4%RJ混餌飼料(実施例1)を2ヶ月間与えて自由に摂取させた。試験期間中、各群間で餌の摂取量に有意な差は認められなかった。なお、陽性対照として、通常の飼料を与えつつ、17βエストラジオールを3μg/kg/日の投与量で、2ヶ月間皮下投与(5日/週)した群も設けた。
【0034】
2ヶ月後、各群のマウスをそれぞれエーテル麻酔下で屠殺し、大腿骨を摘出して液体窒素中で凍結した。続いて、Trizol試薬(Invitrogen社製)を用いて大腿骨からトータルRNAを抽出した後、逆転写キット(Invitrogen社製のSuperScript First-Strand Synthesis System for RT-PCR)を用いてcDNAに変換し、定量PCRを行った。
【0035】
用いたプライマーの配列を配列番号1〜4に示す。配列番号1,2で表される配列は、グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子に結合するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示し、配列番号3,4で表される配列は、プロコラーゲン1α1遺伝子に結合するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。PCR反応には定量PCR用試薬(Invitrogen社製のPlatinum SYBR Green qPCR SuperMix UDG)を用い、反応及び検出には定量PCR装置(Applied Biosystems社製の7300 Real Time PCR System)を用いた。PCRの反応条件は、50℃、2分、95℃、10分につづき、(95℃、15秒→60℃、1分)の反応サイクルを40回行った。
【0036】
プロコラーゲン1α1遺伝子のmRNA相対量は、定量PCR装置付属の説明書(Applied Biosystems 社、User Bulletin #2)に記載の比較Ct法により算出した。各群におけるプロコラーゲン1α1遺伝子のmRNA量は、内部標準GAPDHのmRNA量を測定することにより標準化した。標準化後のプロコラーゲン1α1遺伝子のmRNA量(発現量)について、通常飼料を与えた群を1.00とし、それに対する相対値で示した。結果を図1に示す。また、通常飼料を与えた群に対して各群のt−検定を行い、危険率が5%未満である場合には図中に*印を付した。
【0037】
図1に示すように、4%RJ混餌飼料(実施例1)を与えると、プロコラーゲン1α1遺伝子の発現量が有意に増加したことが示された。プロコラーゲン1α1遺伝子は、骨芽細胞の分化マーカーとして知られているだけでなく、骨の主要な蛋白質であるI型コラーゲンの前駆体であるI型プロコラーゲンをコードする遺伝子であるため、骨形成能の増強に重要な役割を果たしている。
【0038】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 骨粗鬆症予防剤は、若年性骨粗鬆症や続発性骨粗鬆症に対しても利用可能である。
・ 骨粗鬆症予防剤に、パラトルモン、アナボリック剤、フッ化物剤等を含有させてもよい。また、骨粗鬆症予防剤にカルシウム吸収促進作用をもつ素材(カルシウム吸収促進剤)を含有させてもよい。
【0039】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ コラーゲン合成促進作用を有する請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の骨粗鬆症予防剤。
【0040】
・ 前記抽出物は極性溶媒抽出物である請求項1に記載の骨形成促進剤。前記抽出物はエタノール抽出物である請求項1に記載の骨形成促進剤。
・ ローヤルゼリー又はその抽出物を含有し、骨粗鬆症の予防作用を有する飲食品。ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とし、骨粗鬆症の予防作用を有する食品製剤。ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とし、骨粗鬆症の予防作用を有する医薬品。ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とし、老人性骨粗鬆症の予防及び改善作用を有する医薬品。ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とし、骨粗鬆症の予防作用を有する医薬部外品。これらの場合、骨粗鬆症の予防等に有用な飲食品、食品製剤、医薬品又は医薬部外品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例のプロコラーゲン1α1遺伝子発現量を調べた結果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする骨形成促進剤。
【請求項2】
ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とし、骨形成促進作用を有する骨粗鬆症予防剤。
【請求項3】
老人性骨粗鬆症の予防又は改善作用を有する請求項2に記載の骨粗鬆症予防剤。
【請求項4】
さらに骨吸収抑制剤及び/又はカルシウム補充作用を有する食品素材を含有する請求項2又は請求項3に記載の骨粗鬆症予防剤。
【請求項5】
ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とするコラーゲン合成促進剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−290813(P2006−290813A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114778(P2005−114778)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(591045471)アピ株式会社 (59)
【Fターム(参考)】