説明

骨石灰化を増進するNELL−1

ここに提供するものは、骨修復または骨の再生のための骨石灰化を増進する方法、および組成物、およびその移植片である。また、細胞内で、NELL−1遺伝子発現、またはNELL−1蛋白質産生を、増進または調整する作用剤をスクリーニングする方法も提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般には、骨の再生および骨の修復のための骨石灰化を増進するNELL−1ペプチドおよび前記ペプチドもしくはその組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨の修復および再生の過程における欠損は、例えば、骨粗鬆症や骨形成不全症といったヒトの疾患および障害の発生と関係している。骨修復または軟骨修復メカニズムの不全は、例えば、骨折後の繊維性骨癒合不全、移植片接合面の障害、強い同種移植片障害のような、臨床の整形外科診療における重要な合併症と結びついている。骨折修復のプロセスを促進し強化することを目的とした新たな治療法の発展により、多くの個人の生活が改善され得る。
【0003】
骨修復もしくは軟骨修復を促進するどのような新技術も骨折治療における有益な手段となり得る。折骨の大多数は、自然のメカニズムに創傷の修復を任せるギプスによって現在も治療されている。装置の改善を含め、近年の骨折治療は進歩してきているが、創傷修復のメカニズムを促進もしくは補完する新しいプロセスの発達はこの領域における大きな進歩を示すものとなるだろう。例えば、骨形態形成蛋白質(BMP)のような、骨を刺激する蛋白質およびペプチドを用いた骨修復に影響を与える試みは限定的な成功にとどまっている。
【0004】
したがって、骨の再生および修復のために骨石灰化を増進させる作用剤および組成物が必要とされている。
【0005】
そして、軟骨の再生および修復を増進させる作用剤および組成物が必要とされている。
【0006】
以下に記述する実施形態は、上記の問題および必要性に取り組んでいる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、骨石灰化のためのヒトNELL−1遺伝子によってコード化される造骨性ポリペプチド(NELL−1)について記述する。NELL−1遺伝子および遺伝子産物(例えば、mRNA、cDNA、蛋白質等)は、NELL−1発現および/または活性のモジュレーターのため、すなわち骨形成のモジュレーターのため、スクリーニングの良好な標的を提供する。さらに、NELL−1遺伝子は、例えば骨移植片もしくは骨移植片代替材料の構成要素として、あるいは、骨移植片もしくは骨移植片代替材料を用いないスタンドアロンの作用剤として骨折修復の増進に使用できる。
【0008】
いくつかの実施形態においては、本発明は、スクリーニングによって、骨の石灰化を改変する作用剤を得るスクリーニングの方法を提供する。これら方法は、NELL−1遺伝子を含む細胞と試験作用剤とを接触させる工程と、試験作用剤と接触させていない細胞におけるNELL−1遺伝子の発現と比較された場合の、NELL−1遺伝子の発現レベルの変化を検出する工程であって、接触させた細胞と接触させていない細胞内の、NELL−1の発現レベル(例えば、ゲノムDNAのコピー数、mRNAレベル、蛋白質レベル、蛋白質活性など)の差は、作用剤が、骨の石灰化を調整することを示す工程と、を含んでいる。これら方法は、さらに、NELL−1核酸またはNELL−1蛋白質の発現を改変する試験作用剤を、NELL−1活性のモジュレーターのデータベース内に、あるいは、骨の石灰化のモジュレーターのデータベース内に、含んでいる。ある種の実施形態では、NELL−1の発現レベルは、細胞内のNELL−1mRNAのレベルを測定することによって(例えば、mRNAを、NELL−1核酸に特異的にハイブリダイズするプローブと、ハイブリダイズさせることによって)、検出される。好適なハイブリダイゼーション法としては、ノーザンブロット、NELL−1RNAから誘導されたDNAを用いるサザンブロット、アレイハイブリダイゼーション、アフィニティークロマトグラフィー、および、in situハイブリダイゼーションが挙げられるが、それらに限定されない。本発明の方法は、アレイベースの手法に適している。従って、いくつかの実施形態では、プローブは、プローブのアレイを形成する複数のプローブのメンバーである。NELL−1発現のレベルは、核酸増幅反応(例えば、PCR)を用いて特定することもできる。
【0009】
他の実施形態では、NELL−1発現は、生物学的試料内のNELL−1蛋白質の発現レベルを、(例えば、キャピラリー電気泳動、ウェスタンブロット、質量分析、ELISA、免疫クロマトグラフィー、免疫組織化学などを介して)特定することによって、検出できる。細胞は、生体外(ex vivo)で培養してもよく、あるいは、インビボ(in vivo)及び/又はin situで培養してもよい。ある種の実施形態では、試験作用剤は、抗体でなく、かつ(あるいは)、蛋白質でなく、かつ(あるいは)、核酸でない。好適な試験作用剤は、小型の有機分子である。
【0010】
いくつかの他の実施形態では、本発明は、NELL−1発現及び/又は活性の潜在的なモジュレーターのためのプレスクリーニングの方法も提供する。これら方法は、NELL−1核酸またはNELL−1蛋白質と、試験作用剤とを接触させる工程と、NELL−1蛋白質または核酸に対する、試験作用剤の特異的結合を検出する工程と、を含んでいる。この方法は、さらに、NELL−1核酸に、あるいは、NELL−1蛋白質に、特異的に結合する試験作用剤を、NELL−1遺伝子叉は蛋白質活性の候補モジュレーターのデータベース内に、かつ(あるいは)、骨の石灰化の候補モジュレーターのデータベース内に、記録する工程を含んでよい。試験作用剤は、NELL−1核酸及び/又は蛋白質に直接的に、あるいは、該核酸及び/又は蛋白質を含む細胞及び/又は組織及び/又は生命体(例えば、哺乳類)に、接触させてよい。細胞を接触させる場合、細胞は、初代培養であってもよく、あるいは、継代培養であってもよい。ある種の実施形態では、試験作用剤は、抗体でなく、かつ(あるいは)、蛋白質でなく、かつ(あるいは)、核酸でない。好適な試験作用剤は、小型の有機分子である。検定で、核酸に結合する試験作用剤の能力が測定される場合、好適な検定は、ノーザンブロット、DNAを用いたサザンブロット、アフィニティークロマトグラフィー、またはin situハイブリダイゼーションを利用する。検定で、NELL−1蛋白質に結合する試験作用剤の能力が測定される場合、好適な検定は、キャピラリー電気泳動、ウェスタンブロット、質量分析、ELISA、免疫クロマトグラフィー、または免疫組織化学を利用する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、骨の石灰化を増進させる方法を提供する。好適な方法は、造骨性細胞(例えば、造骨細胞、間葉細胞、線維芽細胞、胎性胚細胞、幹細胞、骨髄細胞、硬膜細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞など)内の、あるいは、該細胞が見い出される環境内の、NELL−1遺伝子産物の濃度を増大させる工程を含んでいる。好適な一実施形態では、NELL−1遺伝子産物の濃度は、NELL−1遺伝子の発現をアップレギュレーションすることによって、増大される。これは、(例えば、内在性の制御領域(例えば、プロモーター)を修飾することによって)内在性のNELL−1遺伝子の発現をアップレギュレーションする方法、あるいは、細胞を、NELL−1蛋白質を発現するベクターで形質移入する方法を含むが、それらに限定されない、多種多様な方法のうちのいずれによっても実現することができる。ある種の好適なベクターは、NELL−1蛋白質を恒常的に発現するが、他の好適なベクターは、誘発性である。さらに別の実施形態では、NELL−1遺伝子産物の濃度は、NELL−1ポリペプチドを有する骨によって増大される。
【0012】
本発明は、骨折の修復を促進する方法も提供する。これら方法は、骨折部位の、あるいは、その近くの、NELL−1遺伝子産物の濃度を増大させる工程を含んでいる。好適な実施形態では、NELL−1遺伝子産物は、骨折部位に、あるいは、その近くに存在する、造骨性細胞内または骨前駆細胞内で増大される。これら方法は、NELL−1を過剰発現する造骨性細胞または骨前駆細胞を、骨折部位に導入する工程を含んでよい。別の実施形態では、本発明は、in situで、造骨性細胞内または骨前駆細胞内のNELL−1遺伝子産物の濃度を増大させる工程を含んでよい。NELL−1遺伝子産物のアップレギュレーションは、本明細書で述べるように実現することができる。別の実施形態では、細胞及び/又は骨折部位とNELL−1ポリペプチドとを接触させる。
【0013】
骨折の修復に対する別の手法では、骨折部位とNELL−1蛋白質とを接触させる。該蛋白質は、(例えば、NELL−1蛋白質を過剰発現している細胞の導入によって導入された)細胞によって、かつ(あるいは)、単独の、あるいは、薬理学的賦形剤と組み合わせた、蛋白質の投与によって、かつ(あるいは)、NELL−1を発現することができる「裸のDNA」ベクターの投与によって、産生され得る。NELL−1蛋白質は、骨修復/骨移植片材料の構成要素であってもよく、かつ(あるいは)、補綴装置の一部であってもよい。好適な移植片材料の一つは、NELL−1蛋白質及び/又はNELL−1蛋白質を発現している細胞に加えて、コラーゲン及び/又は、脱灰または非脱灰骨断片を含んでいる。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明は、移植先の動物において骨組織の形成を増強する骨移植片材料もしくは軟骨移植片材料、あるいは、薬学的組成物を提供する。好適な骨移植片材料もしくは軟骨移植片材料は、生体適合性基質とNELL−1蛋白質、NELL−1関連作用剤、もしくはそれらの組合せを含む。また、好適な移植片材料は再吸収可能/生分解性である。好適な移植片材料は合成もしくは自然発生のもの(例えば、同種移植片)であってもよい。基質は生分解性の重合体を含んでもよく、NELL−1蛋白質、NELL−1関連作用剤、および/または、NELL−1蛋白質もしくはNELL−1関連作用剤を発現している細胞が基質に含浸されていてもよい。代表的な骨移植片材料は、実質的に均一に分散したコラーゲン(例えば、約0.001〜約99.999重量%)を含むコラーゲン接合体と、(例えば、約99.999〜約0.001重量%の)NELL−1蛋白質、NELL−1関連作用剤、および/またはNELL−1蛋白質もしくはNELL−1関連作用剤を発現している細胞とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、コントロールとしてβ−ガラクトシダーゼを有する、アデノウイルスを用いたE−14ラット頭蓋冠の初代細胞培養物内のNELL−1の過剰発現を示している。
【図1B】図1Bは、それぞれ、NELL−1およびβ−ガラクトシダーゼによる処置後の時間の関数としての、石灰化のプロットを示している。実験は、3回行われた。StudentのTテストが行われた。NELL−1による石灰化は、β−ガラクトシダーゼコントロールによる石灰化よりも統計的に高かった(*P<0.001)。
【図2】図2はラットのNELL−1蛋白質およびマウスのトロンボスポンジン(TSP−1)の概略構造を示している。全てのNel様分子(Nel−like molecules)は、分泌シグナルペプチド、NH−末端トロンボスポンジン−1(TSP−1)様モジュール、5つのコーディン(chordin)様システインリッチ(CR)ドメイン、および、6つの上皮成長因子(EGF)様ドメインを含む、数種類の高度に保存されたモチーフを含む。130kDaの単量体は、コイルドコイル領域もしくはCRドメインのどちらかを介してホモ三量体に結合すると考えられる。シグナルペプチド領域(黒塗りのボックス)、TSP−Nモジュール(TSP−N、ぼかし入りのボックス)、システインリッチ(CR)ドメイン(CR、白抜きのボックス)、上皮成長因子(EGF)様ドメイン(E、斜線のボックス)、コイルドコイル領域(CC、バー)、Ca2+結合型EGF様ドメイン(*)、およびRGDペプチドドメイン(RGD、白抜きのボックス)が示されている。
【図3】図3は、図2に示す各ドメインを含むアミノ酸配列を示す。
【図4A−4D】図4A〜4Dは、当業者に公知のコンピュータプログラム(例えば、Swiss‐Model)を使用して作成した部分的NELL−1構造(例えば、上記6つのEGF様ドメイン)のコンピュータモデルである。
【図4A】図4A〜4Dは、当業者に公知のコンピュータプログラム(例えば、Swiss‐Model)を使用して作成した部分的NELL−1構造(例えば、上記6つのEGF様ドメイン)のコンピュータモデルである。
【図4B】図4A〜4Dは、当業者に公知のコンピュータプログラム(例えば、Swiss‐Model)を使用して作成した部分的NELL−1構造(例えば、上記6つのEGF様ドメイン)のコンピュータモデルである。
【図4C】図4A〜4Dは、当業者に公知のコンピュータプログラム(例えば、Swiss‐Model)を使用して作成した部分的NELL−1構造(例えば、上記6つのEGF様ドメイン)のコンピュータモデルである。
【図4D】図4A〜4Dは、当業者に公知のコンピュータプログラム(例えば、Swiss‐Model)を使用して作成した部分的NELL−1構造(例えば、上記6つのEGF様ドメイン)のコンピュータモデルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、骨再生もしくは骨修復のために骨石灰化を増進する造骨性ペプチドもしくは蛋白質とそれらの組成物について記述する。また、NELL−1ペプチドもしくは蛋白質、あるいは、NELL−1ペプチドもしくは蛋白質を発現させる遺伝子の活性を改変する作用剤のためのスクリーニングの方法を提供する。
【0017】
定義
本明細書で用いられる用語「抗体」は、無傷の免疫グロブリン、軽鎖および重鎖可変領域のみを含むFv断片、ジスルフィド結合によって連結されたFv断片(Brinkmann et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:547‐551)、可変領域および定常領域の一部を含むFabまたは(Fab)'2断片、単鎖抗体など(Bird et al.(1988)Science242:424‐426;Huston et al.(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA85:5879‐5883)、各種の形態の、修飾され、あるいは、改変された抗体を含んでいる。抗体は、動物(特に、マウスまたはラット)またはヒト由来のものであってよく、あるいは、キメラ型(Morrison et al.(1984)Proc Nat.Acad.Sci.USA81:6851‐6855)またはヒト化(Jones et al.(1986)Nature321:522‐525,および公開された英国特許出願第8707252号)の抗体であってよい。
【0018】
用語「結合相手」、または「捕獲作用剤」、あるいは、「結合対」のメンバーは、他の分子と特異的に結合して、抗体−抗原、レクチン−炭水化物、核酸−核酸、ビオチン−アビジンなどの結合複合体(binding complex)を形成する分子を指す。
【0019】
用語「キャリア」、「薬学的に受容できるキャリア」、「運搬ビヒクル」、もしくは、「ビヒクル」は可換的に用いられる。
【0020】
本明細書で用いられる用語「特異的に結合する」は、生体分子(例えば、蛋白質、核酸、抗体など)を指す場合、分子の異質性個体群(例えば、蛋白質および他の生物製剤)内の生体分子の存在を決定する結合反応を指す。従って、指定の条件(例えば、抗体の場合は免疫検定条件、あるいは、核酸の場合はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)の下では、指定された配位子または抗体は、その特定の「標的」分子に結合し、かつ、試料内に存在する他の分子には有意な量で結合しない。
【0021】
骨粗鬆症という用語は、骨質量の減少および骨折を特徴とする障害の異質性グループを指す。臨床的には、骨粗鬆症は、I型とII型に区別される。I型骨粗鬆症は、主に中年の女性に生じ、閉経時のエストロゲン欠乏に関連しており、一方、骨粗鬆症II型は、加齢に関連している。
【0022】
骨形成不全症(OI)は、骨および軟部結合組織の脆弱性を特徴とする、遺伝性の結合組織疾患のグループを指す(Byers&Steiner(1992)Annu.Rev.Med.43:269‐289;Prockop(1990)J.Biol.Chem.265:15349‐15352)。男性と女性は、等しく影響を受け、全体的な発生率は、現在、出生者5,000〜14,000人に1人と推定されている。聴力損失、象牙質形成不全症、呼吸不全、重度の脊柱側弯症および気腫は、一つまたはそれ以上の型のOIに関連している状態のうちの一部に過ぎない。医療費の正確な推定値は入手不能であるが、OIに関連した罹病率および死亡率は、間違いなく、極度の骨折性向(I〜IV型OI)および骨折修復後の異常な骨の変形(II〜IV型OI)の結果生じる。
【0023】
用語「核酸」または「オリゴヌクレオチド」、あるいは、文法上の等価物は、本明細書において、共有結合で互いに連結された少なくとも二つのヌクレオチドを指す。本発明の核酸は、望ましくは、一本鎖または二本鎖であり、一般に、リン酸ジエステル結合を含むことになるが、場合によっては、以下に概説するように、例えば、ホスホルアミド、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、O−メチルホスホロアミダイト結合、およびペプチド核酸バックボーンおよび結合を含む、交互のバックボーンを有していると思われる核酸類縁体が含まれている。他の類縁体核酸としては、ポジティブバックボーン、非イオンバックボーン、および、非リボースバックボーンを有するもの(米国特許第5,235,033号および第5,034,506号、および、Chapters 6AND7,ASC Symposium Series 580,Carbohydrate Modifications in Antisense Research,Ed.Y.S.Sanghui and P.Dan Cookに記述されたものを含む)、が挙げられる。一つまたはそれ以上の炭素環の糖部を含む核酸も、核酸の定義に含まれている。いくつかの核酸類縁体が、Rawls,C&E News June 2,1997 page35に記述されている。リボース−リン酸バックボーンのこれら修飾は、標識などの追加的な部分の付加を促進するために、あるいは、生理学的環境におけるそのような分子の安定性および半減期を増大させるために行われてよい。
【0024】
本明細書で用いられる用語「に特異的にハイブリダイズする」および「特異的ハイブリダイゼーション」および「に選択的にハイブリダイズする」は、核酸分子を、ストリンジェントな条件下で、特定のヌクレオチド配列に対して、優先的に結合すること、二重化すること、またはハイブリダイズすることを指す。用語「ストリンジェントな条件」は、その下で、プローブが、その標的配列と優先的にハイブリダイズし、かつ、他の配列とは、より低い程度にしか、あるいは、まったく、ハイブリダイズしないような条件を指す。核酸ハイブリダイゼーションの状況でのストリンジェントなハイブリダイゼーションおよびストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件は、配列依存であり、異なる環境パラメータの下では、異なっている。核酸のハイブリダイゼーションに関するより詳細な手引きは、例えば、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology‐‐Hybridization with Nucleic Acid Probes part1,chapt2,Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays,Elsevier,NY(Tijssen)に見い出される。一般に、きわめてストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、定義されたイオン強度およびpHにおいて、特異的な配列の融解温度(Tm)より約5℃低くなるよう選択される。Tmは、標的配列の50%が、(定義されたイオン強度およびpHの下で)完璧にマッチしたプローブにハイブリダイズする温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブのTmに等しくなるよう選択される。サザンブロットまたはノーザンブロットにおいて、アレイ上またはフィルター上に、100を超える相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションに対するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、標準のハイブリダイゼーション溶液(例えば、Sambrook(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd ed.)Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY、および下記の詳細な考察を参照)を用いて、42℃で、ハイブリダイゼーションをオーバーナイトで行うものである。極めてストリンジェントな洗浄条件の一例は、72℃で約15分間の0.15M NaClである。ストリンジェントな洗浄条件の一例は、65℃で15分間の0.2×SSC洗浄である(SSC緩衝液の内容については、例えば、上記Sambrookを参照)。高ストリンジェンシー洗浄は、まず低ストリンジェンシー洗浄を行って、バックグラウンドのプローブ信号を除去する場合が多い。例えば、100を超えるヌクレオチドの二重鎖に対する、中程度ストリンジェンシー洗浄の一例は、45℃で15分間の1×SSCである。100を超えるヌクレオチドの二重鎖に対する、低ストリンジェンシー洗浄の一例は、40℃で15分間の4×〜6×SSCである。
【0025】
用語「造骨性細胞」は、石灰化することができる細胞を指す。造骨性細胞は、造骨細胞、造骨細胞様細胞、間葉細胞、線維芽細胞、胎性胚細胞、幹細胞、骨髄細胞、硬膜細胞、軟骨細胞、および軟骨芽細胞を含む。
【0026】
用語「骨軟骨祖先」は、軟骨を形成することができる細胞を指し、例えば、石灰化および/または軟骨を形成することができる、より未分化な造骨性細胞などである。骨軟骨祖先細胞は、造骨細胞、造骨細胞様細胞、間葉細胞、繊維芽細胞、胎性胚細胞、幹細胞、骨髄細胞、硬膜細胞、軟骨細胞、および軟骨芽細胞を含む。
【0027】
用語「試験作用剤」は、本明細書で述べる検定のうちの一つまたはそれ以上においてスクリーニングすべき作用剤を指す。この作用剤は、実質的にはいかなる化合物であってもよい。それは、単一の単離された化合物として存在してよく、あるいは、ケミカル(例えば、コンビナトリアル)ライブラリーのメンバーであってもよい。特に好適な一実施形態では、試験作用剤は、小型の有機分子であろう。
【0028】
用語「小型の有機分子」は、医薬品に一般に用いられる有機分子に相当する大きさの分子を指す。この用語は、生体高分子(例えば、蛋白質、核酸など)を含まない。好適な小型の有機分子は、大きさが、最大約5000Da、より望ましくは、最大2000Da、および、最も望ましくは、最大約1000Da、最大約500Da、または、最大約200Daの範囲にある。
【0029】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「蛋白質」は、本明細書において、アミノ酸残基の重合体を指すのに可換的に用いられる。これら用語は、アミノ酸重合体において、一つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、対応する自然発生のアミノ酸の人工の化学的類縁体であるアミノ酸重合体に、並びに、自然発生のアミノ酸重合体に、適用される。
【0030】
用語「動物」は哺乳類を指し、雌(女性)が仔(子)に栄養を与えるための母乳を分泌する乳腺を有する、哺乳網の温血脊椎動物を含む。例えば、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ、齧歯類、ウシ、クジラ、コウモリなどがそれに含まれる。用語「蛋白質構造」は、実験的に誘導された、もしくはコンピュータ援用ソフトウェアを用いた予測を介して誘導された蛋白質構造形状を指す。蛋白質構造の特定に用いられる一般的な実験方法は、X線結晶解析および核磁気共鳴分析(NMR)である。X線結晶解析では、科学者は、精製された蛋白質分子の高質な結晶により回折されたX線ビームの方向と強度を測ることにより蛋白質の構造を特定する。NMRでは、原子核のスピン状態を操作するために強い磁場と高周波パルスとを用いる。発生したスペクトルにおけるピークの位置と強度は、分子内の化学的環境および原子核の位置を反映している。
【0031】
1972年のノーベル化学賞を受賞した研究において、Christian Anfinsenは、完全にアンフォールドされた蛋白質が、その生物学的活性状態に自立的にフォールドすることができることを示し、アミノ酸配列が、それ自身の3次元構造を特定するのに必要な全ての情報を内在化していることを示した。したがって、当業者にとっては、蛋白質の全原子と周囲の分子との間に働く分子間力を推定するコンピュータプログラムを利用して、蛋白質の構造を予測するアルゴリズムを開発することが可能である。
(一般的なサイトの例としては、http://restools.sdsc.edu/biotools/biotools9.html#Part1 を参照されたい)
(特定のNELL−1のサイトの例としては、
http://modbase.compbio.ucsf.edu/modbase-cgi/model_details.cgi?queryfile=l163464665_2003&searchmode=default&filtermode=off&displaymode=moddetail&seq_id=&model_id=、http://smart.embl.de/smart/show_motifs.pl?ID=Q92832、もしくは、
http://www.expasy.org/cgi-bin/niceprot.pl?Q4VB90 を参照されたい)
【0032】
用語「ドメイン」は、既に定義された機能、予測される機能、もしくは将来的に定義されるであろう機能を持つNELL−1分子の任意の個別部分を指す。図2および3は予測される機能を持つ、予測上のNELL−1ドメインを例示している。例えば、組換えNell−1とヘパリン硫酸との間の強い結合相互作用が観察されているが、これはTSP−Nにより仲介されている可能性がある(Kuroda,S.,M.Oyasu,et al.(1999).”Biochemical characterization and expression analysis of neural thrombospondin−1−like proteins NELL−1 and NELL2.”Biochem Biophys Res Commun 265(1):79−86)。Nell−1におけるTSP−Nモジュールは、拡散、局所接着、分散、およびエンドサイトーシス等の一般的な細胞機能を仲介するために、細胞表面のヘパリン硫酸プロテオグリカンと相互作用する可能性がある(Bornstein,P.(1995).”Diversity of function is inherent in matricellular proteins:an appraisal of thrombospondin 1.”J Cell Biol 130(3):503−6.)。さらに、NELL−1は、コーディン、kielin、crossveinless、twisted gastrulation(原腸形成)、および結合組織成長因子を含むコーディン様CRドメインファミリーのメンバーである可能性がある(Abreu,J.G.,N.I.Ketpura,et al.(2002).”Connective−tissue growth factor (CTGF) modulates cell signaling by BMP and TGF−beta.”Nat Cell Biol 4(8):599−604)。CRドメインは、前駆または抗配位子のいずれかの様式で、BMPおよびTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーとの特有の相互作用を仲介できる(Abreu,Ketpura et al.2002)。加えて、CRドメインは、受容体結合および三量体形成のような他の機能にも影響を与える。しかしながら、NELL−1において新しいドメインが同定されることも考えられ、図2および3は限定的なものであることを意図していない。概して、NELL−1は、蛋白質分泌、配位子結合、三量体もしくは四量体形成等の特定の機能を遂行する特定のドメインを有すると予測される。
【0033】
用語「立体配座的変化」は、イオン相互作用、疎水性/親水性相互作用、蛋白質相互作用、受容体相互作用、細胞間相互作用等の微小環境における相互作用の結果としてのNELL−1蛋白質構造の変化を指す。例えば、NELL−1に結合するヘパリン硫酸は、ヘパリン硫酸が存在するか、あるいは不在する場合の、抗NELL−1抗体への結合特性の差異に基づいて立体配座的変化を誘発することが知られている。
【0034】
用語「軟骨」は、硝子軟骨、弾性軟骨、および繊維軟骨を含むが、それらに限定されず、全ての軟骨形態を指す。
【0035】
用語プロテオグリカンは、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸を含む各種の細胞外基質分子を指す。
【0036】
用語グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸を含む各種の細胞外基質分子を指す。
【0037】
本発明は、NELL−1遺伝子産物が組織(例えば、骨)の石灰化および軟骨形成を増進するという発見に係るものである。特定の理論にとらわれるものではないが、NELL−1蛋白質は、TGFβスーパーファミリーのメンバーを含む各種の蛋白質、ならびに細胞の分化を促進するグリコサミノグリカンおよびヘパリンもしくはヘパラン硫酸様分子のような、細胞外基質に存在する他の分子との相互作用によってその機能を遂行することができ、これにより所望の細胞機能を増進すると考えられている。
【0038】
用語ヘパリンおよびヘパラン硫酸は、両方とも、GIcUAとGIcNAcとの反復する二糖類からなる同一の基本構造を有する分子を指す。個別の鎖の大きさは100kDaに達することもあるが、通常は50kDa未満である。ヘパリンは、アンチトロンビン IIIとの結合に基づく、その抗凝固作用について広く知られている。構造的および機能的判断基準の両方ともヘパリンとヘパラン硫酸とを区別するのに不十分であるため、これら二つの形態を区別することは難しい。これらの両方とも、多くの異なる硫酸化およびL−エピマー化の変種を有している。主にN−硫酸化が既に発生した領域において追加的な修飾が行われるため、N−脱アセチル化および連続的N−硫酸化が決定的なステップだと思われる。N−硫酸化の量は、ヘパラン硫酸であればN−硫酸化の割合が50%未満であり(Fraansson,L.A.,I.Carlstedt,et al.(1986).”The functions of the heparan sulphate proteoglycans.”Ciba Found Symp, 124:125−42)、一方ヘパリンであれば通常70%以上であるとする(Roden,L.,S.Ananth, et al.(1992).”Heparin‐‐an introduction.”Adv Exp Med Biol, 313:1−20)仕方で、ヘパリンとヘパラン硫酸とを区別するのに時折利用されている。グルクロン酸のエピマー化および連続的2−硫酸化は両グリコサミノグリカンについて典型的である。グルクロン酸の2位における硫酸化は、エネルギー的により好ましい形状への逆行的エピマー化を妨げると思われる。
【0039】
NELL−1ペプチド
NELL−1ペプチドは、810個のアミノ酸からなるペプチドであり、主に骨内に分布している。NELL−1ペプチドは、三量体ペプチドであり、そのアミノ酸配列がTingにより報告されている(Ting et al.(1999)J Bone Mineral Res, 14:80−89;およびGenBank Accession Number U57523)(図2および3)。
【0040】
いくつかの実施形態においては、NELL−1蛋白質は、NELL−1遺伝子もしくはcDNA(SEQ ID NO:1、3、および5)により発現される蛋白質である。このNELL−1遺伝子およびcDNAは、Watanabe et al.(1996) Genomics 38(3):273−276;Ting et al.(1999) J Bone Mineral Res, 14:80−89、およびGenBank Accession Number U57523により開示されたものであり、SEQ ID NO:2、4、および6を含む。NELL−1蛋白質は、骨石灰化を誘発する能力を保持しているNELL−1蛋白質断片を含んでもよい。NELL−1蛋白質は天然のNELL−1蛋白質でもよいし、組換え蛋白質でもよい。用語「NELL−1」蛋白質は、NELL−1ペプチド、その断片、もしくはその誘導体を含む。また、用語NELL−1蛋白質は、NELL−1ペプチドの機能的等価物もしくは立体配座的等価物を含む。NELL−1の機能的等価物もしくは立体配座的等価物は、NELL−1の機能ドメイン構造もしくは立体配座的構造を参照することにより誘導してもよい。コンピュータにより作成されたいくつかのNELL−1構造を図4A〜4Dに示す。
【0041】
NELL−1関連作用剤
他のいくつかの実施形態においては、用語「NELL−1」ペプチドもしくは蛋白質はNELL−1関連作用剤であってもよく、このNELL−1関連作用剤は、NELL−1ペプチドの断片、NELL−1ペプチドの誘導体、NELL−1ペプチドのスプライス変異体、あるいは、NELL−1ペプチドの構造的、機能的もしくは立体配座的等価物であってもよい。
【0042】
NELL−1のコンピュータ構造シミュレーションが報告されている。このペプチドは図4A〜4Dに示す構造を持つことが報告されている。NELL−1の決定的な機能ドメインは、図2、図3、および図4A〜図4Dに示す領域を含むが、それらに限定されるものではない。
【0043】
したがって、一実施形態においては、NELL−1関連作用剤は、上述のように、一つ以上のNELL−1の機能ドメイン、あるいは、これら機能ドメインの任意の機能的等価物もしくは組合せを有するペプチドもしくは蛋白質であってもよい。いくつかの実施形態においては、機能ドメインは、ドメインの機能が実質的に変化していないものであれば、変異配列および/または配列がノックアウトされているものでもよい。
【0044】
いくつかの実施例においては、NELL−1関連作用剤は、NELL−1蛋白質に対して約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約99%の相同性を有するペプチドもしくはポリペプチドであってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、NELL−1関連作用剤は、NELL−1ペプチドの機能ドメインのいずれか、もしくは全ての立体配座的等価物であってもよい。このような立体配座的等価物は、NELL−1蛋白質に対して、例えば、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約99%の相同性を有する、NELLのアミノ酸配列に類似したアミノ酸配列を有してもよい。いくつかの実施形態においては、立体配座的等価物が、NELL−1ペプチドのいずれかもしくは全ての機能ドメインの2次元的もしくは3次元的配座に実質的に類似しているか、あるいは、図2に一例を示している、NELL−1ペプチドの2次元的あるいは3次元的配座に実質的に類似している2次元的もしくは3次元的配座を有するのであれば、このような立体配座的等価物は、NELL−1ペプチドと実質的に異なっているか、あるいは、関連のないアミノ酸配列を有してもよい。2次元的もしくは3次元的配座は、実験もしくはコンピュータ支援ソフトウェアを用いた予測を介して誘導されたNELL−1蛋白質構造形態であってもよいが、それらに限定されるものではない。NELL−1についてはまだ記述されていないが、実質的に異なるアミノ酸配列を有する立体配座的等価物の例としては、骨形態形成蛋白質7および成長分化因子5の例が挙げられる(Schreuder et al.Crystal structure of recombinant human growth and differentiation factor 5:Evidence for interaction of the type I and type II receptor−binding sites.Biochemical and Biophysical Research Communications 329(2005)1076−1086)。
【0046】
いくつかの実施形態においては、NELL−1関連作用剤は、蛋白質の一次構造がNELL−1のものと異なっているとしても、最終構造がNELL−1のものに類似しているか、同一である化合物であってもよい。
【0047】
また、さらにいくつかの実施形態では、NELL−1関連作用剤はNELL−1ペプチドのスプライス変異体を含む。NELL−1ペプチドのスプライス変異体を作成する目的で、NELL−1ペプチドのエクソンがノックアウトされてもよい。例えば、2つのエクソン領域に沿ってNELL−1をスプライスすることにより、NELL−1は、三量体NELL−1ペプチドを形成する2つもしくは3つの断片にスプライスされていてもよい。蛋白質もしくはペプチドのスプライス変異体を作成する方法および手順は当業者に公知である(その内容を参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050148511号を参照されたい)。
【0048】
いくつかの実施例においては、本明細書で記述するNELL−1ペプチドはNELL−1ペプチドの誘導体であってもよい。本明細書で用いる用語「誘導体」は、NELL−1ペプチドから誘導された化学的もしくは生化学的化合物または材料、それらの構造的等価物、あるいは、それらの立体配座的等価物を指す。例えば、このような誘導体は、プロドラッグの形態、ペグ化された形態、あるいは、NELL−1ペプチドをより安定させるか、親骨性もしくは新油性を与えるものであれば、他のいかなるNELL−1ペプチドの形態を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、この誘導体は、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アミノ酸)、C1〜C20の炭素を有する炭水化物の短鎖、もしくは生体適合性の重合体に付加されたNELL−1ペプチドであってもよい。いくつかの実施形態においては、用語「誘導体」はNELL−1ペプチドの模倣体を含む。ペプチドの模倣体の合成についてはこの分野において多くの文献が書かれている。ペプチド模倣体を含む、ペプチド合成の基本的手順の例を以下に記述する。
【0049】
ペプチド合成を始める前に、アミノ酸のアミン末端(出発物質)は、FMOC(9−fluoromethyl carbamate、カルバミン酸−9−フルオロメチル)もしくは他の保護基によって保護することができ、メリフィールド樹脂(遊離アミン)など固体の支持体をイニシエータとして用いる。次に、工程(1)〜工程(3)の反応が行われ、所望のペプチドが得られるまで繰り返される。(1)遊離アミンを、カルボジイミドを用いた化学反応によりカルボキシル末端と反応させ、(2)アミノ酸配列を精製し、さらに(3)保護基、例えば、FMOC保護基を弱酸性の条件下で取り除き、遊離アミンを発生させる。次に、ペプチドを樹脂から切り離し、遊離状態となったペプチドもしくはペプチド模倣体を得る。
【0050】
いくつかの実施形態においては、本明細書で記述するペプチド誘導体は物理的もしくは化学的に修飾されたNELL−1ペプチドを含む。物理的に修飾されたペプチドは、例えば、対イオンとイオン対を形成するようなイオン力による修飾、水素結合による修飾、pHの調整、溶媒の選択による調整を用いる修飾、もしくは、蛋白質のフォールディング/アンフォールディングの異なる手順を用いる修飾等により修飾されたものでもよい。蛋白質のフォールディング/アンフォールディングの異なる手順を用いる修飾は、フォールディング/アンフォールディングの温度、pH、溶媒、フォールディング/アンフォールディングの各段階の持続時間の選択により行ってもよい。
【0051】
いくつかの実施形態においては、ペプチド誘導体は化学的に修飾されたNELL−1ペプチドを含んでもよい。例えば、ペプチドの化学的および/または物理的性質を修飾するために、短い炭化水素基(例えば、メチル基もしくはエチル基)が、NELL−1ペプチド分子の一つもしくは複数の部位に選択的に付加されていてもよい。いくつかの実施形態においては、ペプチドの化学的および/または物理的性質を修飾するために、一般的に知られている蛋白質ペグ化の手順(例えば、Mok,H.,et al.,MoI.Ther.,11(1):66−79(2005)を参照)を用いて、モノ、オリゴ、もしくはポリ(エチレングリコール)(PEG)基がNELL−1ペプチド分子の一つもしくは複数の部位に選択的に付加されていてもよい。
【0052】
V . N E L L − 1 核酸及び/ 又はポリペプチドを用いた骨の石灰化の増進
さらに別の実施形態では、本発明は、骨成長を増強するための方法および組成物を提供する。これは、外傷、癌手術または発生上の異常、骨形成不全症の治療、骨粗鬆症の治療、および、重い、または軽い骨折の治癒の結果として生じる欠損を再構築するために使用されるような、骨の再構築を含むが、それらに限定されない、各種の状況で有用である。
【0053】
いくつかの実施形態においては、骨形態形成蛋白質(例えば、BMP−1〜BMP−24)の使用に類似した仕方で、自然治癒が限定されているか、存在しない状況において、骨折の修復の迅速化や、骨の修復もしくは置換の誘発のためにNELL−1ポリペプチドを用いることができる。一般に、このような方法では、骨内の骨折部位またはその近辺においてNELL−1遺伝子産物の量を増大させることが必要である。NELL−1遺伝子産物の濃度は、多数の方法うちの一つもしくは複数の方法により増大させることができる。一つの手法では、骨折部位もしくはその近辺の細胞において、高レベルなNELL−1の発現を誘発する。これは、例えば、NELL−1発現のモジュレーターの使用、NELL−1プロモーターの改変、もしくはNELL−1を発現する作成物で細胞を形質移入することによって、実現される。これは、インビボ(in vivo)で実現してよく、あるいは、他の実施形態では、そのような細胞を、NELL−1を過剰発現するよう生体外(ex vivo)で修飾し、次いで、対象生物に(例えば、骨折部位に、あるいは、その近辺に)再導入することができる。
【0054】
NELL−1を発現もしくは過剰発現している細胞を、骨移植片材料に組み込むことができ、かつ/または、NELL−1ポリペプチドを、そのような骨移植片材料に組み込むことができる。これらの移植片材料は、骨折の治療に、あるいは、補綴もしくは骨移植片の置換/治癒を促進するために使用できる。
【0055】
これらの方法は、一般に、骨における、あるいは、その近傍の、あるいは、骨祖先細胞(bone progenitor cell)における、あるいは、その内部の、NELL−1蛋白質濃度を上昇させる工程、及び/又は、細胞(例えば、骨祖先細胞)と、NELL−1ポリペプチド、あるいは、NELL−1ポリペプチドをコード化するベクターとを接触させる工程を含んでいる。これは、骨前駆細胞が、高レベルの内在性のNELL−1を発現するよう、あるいは、骨前駆細胞が、外来の形質移入されたNELL−1核酸からのNELL−1を発現するよう、骨前駆細胞を形質転換することによって、あるいは、骨、骨折部位、または骨前駆細胞とNELL−1蛋白質とを接触させる工程、あるいは、NELL−1蛋白質の局所的または全身的投与によって、実現することができる。
【0056】
本明細書で用いられる、用語「骨祖先細胞」は、新しい骨組織を最終的に形成する、あるいは、その形成に寄与する能力を有する細胞のうちのいずれか、または全てを指す。これは、例えば、幹細胞、骨髄細胞、線維芽細胞、血管細胞、造骨細胞、軟造骨細胞、破骨細胞など、分化の異なる段階にある各種の細胞を含んでいる。骨祖先細胞としてはまた、単離され、かつ、インビトロで操作された(例えば、サイトカインまたは成長因子などの作用剤、あるいは、遺伝子操作された細胞によって、刺激を与えられた)細胞も挙げられる。細胞が、活性化され、かつ、インビボな実施形態の状況で、最終的に新しい骨組織を生じるような方法で刺激される限り、本発明の方法および組成物を用いて刺激される骨祖先細胞の特定の型は重要ではない。
【0057】
幹細胞および骨髄細胞は、各種の限定されたインビトロの条件下もしくは不完全な限定のインビボの条件下で、骨細胞もしくは骨祖先細胞に分化することができる。インビボの例としては、骨髄細胞は、簡単な針吸引により哺乳類から得られる。このとき、Nell−1蛋白質は細胞に直接的に適用でき、細胞/蛋白質混合物(追加的キャリア/骨格作成物を加えたもの、あるいは、差し引いたもの)は、直ちに移植もしくは注射することができる。あるいは、単離された骨髄細胞は、造血細胞を取り除くためにまず培養され、次いで、移植もしくは注射の前にNell−1による処理を施される。例えば、この細胞は、10%のウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone,Logan,Utah)と、100U/mLのペニシリンと、100μg/mLのストレプトマイシンと、2mmol/LのL−グルタミン(Sigma,St.Louis,MO)とを含む、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco BRL,Grand Island,NY)にて、遠心分離および懸濁された。フラスコに接着しなかった造血細胞は処分し、接着した細胞が初代BMSCの群である。初代継代細胞の後、50μg/mLのアスコルビン酸と、10mmol/Lのβ−グリセロリン酸と、10〜8mol/Lのデキサメタゾンとを補ったDMEM培地で、実験に使用されるまで、細胞を培養した。実験は2代継代培養からの細胞を用いて行った。
【0058】
用語「骨祖先細胞」はまた、特に、骨祖先組織内に所在する、それと接触している、あるいは、それに向かって遊走(すなわち、「回帰」)し、かつ、成熟した骨の形成を直接的に、あるいは、間接的に刺激する細胞を指すのにも用いられる。そのようなものとして、祖先細胞は、それ自体、最終的に成熟した骨細胞へと分化する細胞、すなわち、新しい骨組織を「直接的に」形成する細胞であってよい。刺激を受けると、一層遠くの祖先細胞を引き寄せ、あるいは、近接する細胞が骨形成細胞へと(例えば、造骨細胞、骨細胞及び/又は破骨細胞へと)分化するのを促進する細胞も、それらの刺激が、「間接的に」骨の修復または再生をもたらすので、この開示の状況では、祖先細胞であると見なされる。骨形成に間接的に影響する細胞は、各種の成長因子またはサイトカインの生成によって、あるいは、他の細胞型との、それらの物理的相互作用によって、間接的に影響すると思われる。祖先細胞が骨修復を刺激する、直接的または間接的なメカニズムは、必ずしも、本発明を実施する際の考慮事項ではない。骨祖先細胞および骨祖先組織は、それらの自然環境において、活発な骨の成長、修復または再生の領域に到達する細胞および組織であってよい。骨祖先細胞に関しては、これらは、そのような領域に引き寄せられる、あるいは、動員される細胞であってもよい。これらは、動物モデル内の人工的に創出された骨切断部位内に存在する細胞であってよい。骨祖先細胞は、動物またはヒトの組織から単離され、かつ、インビトロ環境で維持されてもよい。骨祖先細胞を得るべき適当な身体領域は、骨折または他の骨格の欠損部(これが、人工的に創出された部位か否かに関わらず)を取り囲んでいる骨組織および液体などの領域であり、あるいは、実際、骨髄からである。単離された細胞は、本明細書で開示されている方法および組成物を用いて刺激され、かつ、必要なら、骨修復が刺激されるべき動物の適切な部位に、戻されてよい。そのような場合には、核酸を含む細胞は、それ自体、治療薬の一形態となるであろう。そのような生体外(ex vivo)プロトコルは、当業者には周知である。本発明の好適な実施形態では、骨祖先細胞および組織は、治療したいと望む骨折または骨損傷の領域に到達する細胞および組織ということになる。従って、治療の実施形態では、本治療的な組成物を適用すべき適当な標的祖先細胞の同定に関連した困難はない。そのような場合には、本文書で開示されているような、適切な刺激性の組成物(例えば、NELL−1ポリペプチド)を得て、骨折または骨の欠損の部位と該組成物とを接触させることで、十分である。この生物学的環境の性質は、実施者による、さらなる標的化または細胞同定の不在下で、適切な細胞が活性化状態になるものである。
【0059】
A)NELL−1産生を増大させるための細胞の形質転換
より好適な一実施形態では、NELL−1遺伝子を発現している核酸(例えば、cDNA)は、インビトロ及び/又はインビボで、細胞(ヒトまたは他の哺乳類の細胞など)に形質移入する能力がある遺伝子治療ベクター内にクローニングされ得る。このようなクローニングおよび細胞の形質移入の方法や手段は、1990年10月5日に出願された米国出願番号09/412,297号に記述されており、その教示は、参照することによりそのまま本明細書に組み込まれるものである。
【0060】
B)外来的に産生されたNELL−1の投与
1)標的細胞へのNELL−1蛋白質の運搬
本発明のNELL−1蛋白質または関連作用剤(または、その生物学的に活性な断片)は、細胞分化を促進するのに役立つ。細胞分化を促進するために、NELL−1蛋白質または関連作用剤は、静脈内、非経口、局所的、経口、または(例えば、エアロゾルによる、あるいは、経皮的な)局所投与に有用である。特に好適な投与様式としては、動脈内注射、骨折部位への注射、あるいは、生分解性の基質内での運搬が挙げられる。NELL−1蛋白質作用剤は、一般に、薬学的に受容できる(キャリアまたは賦形剤として引用し得る)キャリアと組み合わせて、薬理学的組成物を形成する。
【0061】
いくつかの実施形態においては、キャリアは、pH、イオン環境、および溶媒濃度の変化により形成された一次結合を含む化学ゲルを含んでもよい。このような化学ゲルの例としては、キトサンのような多糖類、キトサンにβ−グリセロリン酸などのイオン塩を加えたもの、アルギン酸にBa2+、Sr2+、Ca2+、Mg2+、コラーゲン、フィブリン、血漿、もしくはそれらの組合せを加えたものがあるが、それらに限定されるものではない。
【0062】
いくつかの実施形態においては、キャリアは、温度変化により形成された二次結合を含む物理ゲルを含んでも良い。このような物理ゲルの例としては、アルギン酸、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(乳酸−co‐グリコール酸)−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PLGA−PEG)のトリブロック共重合体、アガロース、およびセルロースを用いることができるが、それらに限定されるものではない。いくつかの実施形態においては、本明細書で記述する組成物に使用できる物理ゲルは、高い剪断力の下では液体だが、低い剪断力の下ではゲルないし固体になる物理ゲルを含んでもよい。このような物理ゲルの例としては、ヒアルロン酸もしくはポリエチレンオキシドが含まれるが、それらに限定されるものではない。物理ゲルは、あらかじめ容量や形状を決められた、あらかじめ形成された材料を有してもよい。
【0063】
いくつかの実施形態においては、本明細書で記述するキャリアは、刺激に反応して分解するか、活性作用剤を放出する材料を含んでもよい。このような刺激の例としては、力学的刺激、光、温度変化、pH変化、イオン強度の変化、もしくは電磁場が挙げられる。このような材料は当業者には公知のものである。このような材料の例としては、キトサン、アルギン酸、プルロニック、メチルセルロース、ヒアルロン酸、およびポリエチレンオキシドが挙げられる。その他の例は、Brandl F,Sommer F,Goepferich A.”Rational design of hydrogels for tissue engineering:Impact of physical factors on cell behavior”in Biomaterials.Epub 2006 Sep 29に記述されている。
【0064】
いくつかの実施形態においては、キャリアは、ヒドロキシアパタイト、アパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム、生体活性ガラス、ヒト同種移植骨および軟骨、ウシの骨および軟骨、もしくはそれらの混合物のうちいずれかを含むゲルを含んでもよい。
【0065】
いくつかの実施形態においては、上記のゲルのいずれかを含むキャリアは、分解の反応速度および放出制御をさらに調整するための架橋剤をさらに含んでもよい。あるいは、いくつかの実施形態においては、キャリアは、上記ゲルのいずれかを含む相互貫入相複合材料もしくは相互貫入ネットワーク(IPN)を含んでもよい。架橋剤のいくつかの例としては、一般的な架橋作用剤(ポリアルキレンオキシド、エチレンジメタクリレート、N,N´−メチレンビスアクリルアミド、メチレンビス(4−フェニルイソシアナート)、エチレンジメタクリレート、ジビニルベンゼン、メタクリル酸アリル、カルボジイミダゾール、塩化スルホニル、クロロ炭酸、n−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、ハロゲン化アリール、サルファスクシンイミジルエステル、およびマレイミド)、PEGを用いた架橋剤(例えば、MAL−dPEGx−NHS−エステル、MAL−dPEGx酸、Bis−MAL−dPEGx等)、および光/光線活性化架橋剤、N−ヒドロキシスクシンイミドを用いた架橋剤、ジリシン、トリリシン、およびテトラリシンが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0066】
いくつかの実施形態においては、キャリアは重合体キャリアもしくは非重合体キャリアであってもよい。いくつかの実施形態においては、キャリアは、酵素もしくは加水分解のメカニズムによって分解できるような生分解性のものでもよい。キャリアの例としては、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L−乳酸)(PDLLA)、ポリグリコライド(PGA)、(乳酸−グリコライド)共重合体(PLGA)、ポリ(−カプロラクトン)、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(p−ジオキサノン)、(−カプロラクトン−グリコライド)共重合体、(グリコライド−炭酸トリメチレン)共重合体、(D,L−乳酸−炭酸トリメチレン)共重合体、ポリアリレート、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ酸無水物、(酸無水物−イミド)共重合体、プロピレン−co−フマル酸、ポリラクトン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアニオン重合体、ポリ酸無水物、ポリエステルアミド、ポリ(アミノ酸)、ホモポリペプチド、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(グラキサノン)、多糖類、ポリ(オルトエステル)等のポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリグラクチン、ポリグラクチン酸、ポリアルドン酸、ポリアクリル酸、ポリアルカノエート、それらの共重合体および混合物、ならびに誘導体および修飾物等の、吸収可能な合成重合体が含まれるが、それらに限定されるものではない。例えば、参照により本明細書に引用されている米国特許第4,563,489号およびPCT国際出願第WO/03024316号を参照。キャリアの他の例としては、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびそれらのカチオン塩等のセルロース重合体が含まれるが、それらに限定されるものではない。他のキャリアの例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アパタイト、生体活性ガラス材料、およびサンゴ由来のアパタイト等の、合成および天然のバイオセラミックスが含まれるが、それらに限定されるものではない。例えば、本明細書に参照することにより組み込まれる米国特許出願第2002187104号、PCT国際出願第WO/9731661号、およびPCT国際出願第WO/0071083号を参照されたい。
【0067】
一実施形態においては、キャリアは、さらに、ゾルゲル技法もしくは液浸技法により誘導されたバイオガラスおよび/またはアパタイトを含む組成物によりコーティングされていてもよい。液浸技法の例としては、自然の血漿の1.5〜7倍にかけてのカルシウムおよびリン酸濃度で、各種の手段を用いて、約15〜65°Cで約2.8〜7.8のpHの溶液に調整された模擬体液などが挙げられるが(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第6,426,114号および第 6,013,591号、ならびにPCT国際出願第WO/9117965号を参照)、それらに限定されるものではない。
【0068】
キャリアの他の例としては、コラーゲン(例えば、Collastat、Helistatコラーゲンスポンジ)、ヒアルロナン、フィブリン、キトサン、アルギン酸、およびゼラチンを含む。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるPCT国際出願第WO/9505846号、第WO/02085422号を参照されたい。
【0069】
一実施形態においては、キャリアは、例えば、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、フカン、アルギン酸、もしくはそれらの誘導体等といったヘパリン様重合体を含むヘパリン結合作用剤、およびヘパリン親和性を増大するためにアミノ酸修飾を施したペプチド断片を含むが、それらに限定されるものではない(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるJournal of Biological Chemistry(2003),278(44),p.43229−43235を参照)。
【0070】
一実施形態においては、この組成物は、液体、固体、もしくはゲルの形状でもよい。
【0071】
一実施形態においては、基質は、流動性ゲル形状のキャリアを含んでもよい。ゲルは、軟骨形成が所望されている部位において注射器を介する等の方法で注射可能であるように選択されてもよい。ゲルは、一次結合によって形成可能であり、pH、イオン群、および/または溶媒濃度によって調整可能な化学ゲルであってもよい。また、ゲルは、二次結合によって形成可能であり、温度および粘度によって調整可能な物理ゲルであってもよい。ゲルの例としては、プルロニック、ゼラチン、ヒアルロナン、コラーゲン、ポリ乳酸−ポリエチレングリコール溶液および接合体、キトサン、キトサン&b−グリセロリン酸(BST−gel)、アルギン酸、アガロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリ乳酸/グリコライドのN−メチル−2−ピロリドン溶液などが含まれるが、それらに限定されるものではない。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるAnatomical Record(2001),263(4),342−349を参照されたい。
【0072】
一実施形態においては、キャリアは、少なくとも約250nmの周波数の電磁放射などにより光重合可能なものであってもよい。光重合可能な重合体の例としては、アクリル酸ポリエチレン(PEG)の誘導体、PEGメタクリレートの誘導体、フマル酸プロピレン−co−エチレングリコール、ポリビニルアルコールの誘導体、PEG−co−ポリ(−ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマー、ならびにヒアルロン酸誘導体およびメタクリル酸デキストランのような修飾された多糖類が含まれる。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,410,016号を参照されたい。
【0073】
一実施形態においては、基質は、温度感受性のキャリアを含んでもよい。例としては、N−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM)から、あるいは、より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有し、かつ、メタクリル酸エチルおよびN−アクリルオキシスクシンイミド、もしくは、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルを組み込むことによりペプチド(例えば、NELL−1)結合が増進されている修飾NiPAMから作成されたキャリアが含まれる。PCT国際出願第WO/2001070288号、米国特許第5,124,151号は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0074】
一実施形態において、ここでは、キャリアは、細胞接着分子と、接着ペプチドと、接着ペプチドの類縁体を用いて装飾および/または固定化された表面を含んでもよい。これら細胞接着分子等は、受容体仲介性のメカニズムおよび/または分子部分を介して細胞基質への接着を促進する。この分子部分は、例えば、それに限定されるものではないが、ポリカチオンのポリアミノ酸ペプチド(例えば、ポリリジン)、ポリアニオンのポリアミノ酸ペプチド、Mefp級接着分子および他のドーパリッチペプチド(例えば、ポリリジンドーパ)、多糖類、およびプロテオグリカンへ結合する非受容体仲介性のメカニズムを介して接着を促進する。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるPCT国際出願第WO/2004005421号、第WO/2003008376号、第WO/9734016号を参照されたい。
【0075】
一実施形態においては、キャリアは、各種の自然発生の基質、もしくは、失活させた軟骨基質、鉱質除去した骨基質などの自然発生材料の構成要素、もしくは、同種移植片、異種移植片由来の他の構成要素、もしくは原核生物界、原生生物界、真菌界、植物界、もしくは動物界由来の他の自然発生の材料を含んでもよい。
【0076】
一実施形態においては、キャリアは、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ポリ(エチレングリコール)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースを含むアルキルセルロース(ヒドロキシアルキルセルロースを含む)、血液、フィブリン、ポリオキシエチレンオキシド、硫酸カルシウム半水和物、アパタイト、カルボキシビニール重合体、ならびに、ポリ(ビニールアルコール)等の隔離作用剤を含んでもよいが、それらに限定されるものではない。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第6,620,406号を参照されたい。
【0077】
一実施形態においては、キャリアは、ポリオキシエステル(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、もしくはプルロニックF−68)等のキャリア材料内でのNELL−1の安定性および/または分布を促進する界面活性剤を含んでもよいが、それらに限定されるものではない。
【0078】
一実施形態においては、キャリアは、グリシン、塩酸グルタミン酸、塩化ナトリウム、グアニジン、ヘパリン、塩酸グルタミン酸、酢酸、コハク酸、ポリソルベート、硫酸デキストラン、ショ糖、および、アミノ酸等の緩衝剤を含んでもよいが、それらに限定されるものではない。例えば、参照することによにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,385,887号を参照されたい。一実施形態においては、キャリアは上に列挙された材料の組合せを含んでもよい。一例として、キャリアはPLGA/コラーゲンキャリアメンブレンであってもよい。メンブレンはNELL−1ペプチドを含む溶液に浸積されていてもよい。
【0079】
一実施形態においては、人体に用いる移植片は、その移植片の近接部位で軟骨形成もしくは修復が誘発されるのに十分な量のNELL−1を含む基質を含んでいてもよい。
【0080】
一実施形態においては、人体に用いる移植片は、その移植片の近接部位で軟骨形成もしくは修復が誘発されるのに十分な量のNELL−1を含む表面を有する基質を含んでいてもよい。
【0081】
一実施形態においては、人体に用いる移植片は、軟骨形成細胞と、軟骨形成もしくは修復が誘発されるのに十分な量のNELL−1とを含む表面を有する基質を含んでいてもよい。一実施形態においては、移植片には、それに限定されるものではないが、自己細胞、軟骨形成もしくは造骨細胞、NELL−1もしくは他の軟骨形成分子を発現している細胞を含む細胞が接種されていてもよい。
【0082】
移植片は、メッシュ、ピン、ねじ、プレート、もしくは人工関節の形状に形成されている基質を含んでも良い。一例としては、基質は、歯科的もしくは整形外科的移植片の形状を取ってよく、NELL−1は移植片の近接部位の骨への統合を増進するために用いることができる。移植片は、コラーゲンを含む基質のような再吸収可能な基質を含んでもよい。
【0083】
NELL−1ペプチドは、薬理学的組成物を形成するために、受容できるキャリアと組み合わせてもよい。受容できるキャリアは、例えば、組成物の安定化もしくは作用剤の吸収の増減のために作用する、生理学的に受容できる化合物を含んでもよい。生理学的に受容できる化合物は、例えば、グルコース、ショ糖、もしくはデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンのような抗酸化物、キレート化剤、低分子量蛋白質、抗有糸分裂剤のクリアランスもしくは加水分解を減少させる組成物、あるいは、賦形剤もしくは他の安定剤および/または緩衝剤を含んでもよい。
【0084】
他の生理学的に受容できる化合物は、浸潤剤、乳化剤、分散剤、あるいは、微生物の増殖または活動を阻止するのに特に有用な保存剤を含む。各種の保存剤は周知であり、例えば、これらにはフェノールおよびアスコルビン酸が含まれる。当業者であれば、生理学的に受容できる組成物を含むキャリアの選択は、例えば、投与経路に依拠していると認識するであろう。
【0085】
組成物は、投与方法によって様々な単位投与形態で投与することができる。例えば、適当な単位投与形態としては、粉末、あるいは、注入可能もしくは成形可能なペーストまたは懸濁液を含んでもよい。
【0086】
本発明の組成物は、水溶性ペプチドのための水溶性キャリアのような薬学的に受容できるキャリアに溶解されたNELL−1ペプチドの溶液を含むことを特徴とする。例えば、緩衝生理食塩水などの各種のキャリアを使用することができる。これらの溶液は、無菌であり、一般に、望ましくない物質を含まないものとする。これらの組成物は従来の、公知の滅菌技法により滅菌されてもよい。これらの組成物は、生理学的条件を近似させるために必要であれば、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等のpH調整および緩衝剤、毒性調整剤等の薬学的に受容できる補助物質を含んでもよい。
【0087】
これらの製剤形態におけるNELL−1ペプチド濃度は、大幅に変更可能であり、選択された特定の投与様式および患者の必要性に従って、主に液量、粘度、および体重などに基づいて選択する。
【0088】
投与計画は、対処されている臨床兆候、および、各種の患者変数(例えば、体重、年齢、性別)および臨床症状(例えば、傷害の程度、傷害の部位等)により決定する。
【0089】
しかしながら、NELL−1ペプチドもしくは本発明において有用な作用剤の治療上効果的な投与量は、上述のように、軟骨形成分化を増進する作用剤の能力を測定した場合に、患者への良好な臨床的効果もしくは細胞における所望の効果を奏するものである。各ペプチドもしくは作用剤の治療上効果的な投与量は、有害な副作用を最小化しながら、所望の臨床的効果を実現するよう調整してもよい。特定の患者に対する適正な個別投与計画および投与レベルを決定するときには、ペプチドもしくは作用剤の個別の患者に対する投与量は、投与経路、疾患の重傷度、患者の年齢および体重、患者が使用している他の薬剤、および、担当医によって通常考慮される他の要因に依拠して選択することができる。
【0090】
いくつかの例においては、細胞の分化はキャリアにより誘導され、NELL−1により加速されてもよい。
【0091】
薬学的に受容できるキャリアは、例えば、組成物の安定化もしくは作用剤の吸収の増減のために作用する、生理学的に受容できる化合物を含んでもよい。生理学的に受容できる化合物は、例えば、グルコース、ショ糖、もしくはデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンのような抗酸化物、キレート化剤、低分子量蛋白質、抗細胞分裂剤の浄化もしくは加水分解を減少させる組成物、あるいは、賦形剤もしくは他の安定剤および/または緩衝剤を含んでもよい。
【0092】
他の生理学的に受容できる化合物としては、浸潤剤、乳化剤、分散剤、あるいは、微生物の増殖または作用を阻止するのに特に有用な保存剤が挙げられる。各種の保存剤が周知であり、保存剤としては、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。当業者であれば、生理学的に受容できる化合物を含む、薬学的に受容できるキャリアの選択は、例えば、抗有糸分裂剤の投与経路、および、抗有糸分裂剤の特定の生理化学的特性に左右されることを理解しよう。骨形態形成蛋白質(BMP)の運搬のための好適な製剤形態は、米国特許第5,385,887号に詳細に記述されている。
【0093】
薬学的組成物は、投与方法に応じて各種の単位投与形態で投与されてよい。例えば、経口投与に適した単位投与形態としては、粉末、錠剤、丸剤、カプセルおよびロゼンジが挙げられる。NELL−1蛋白質は、経口投与される場合、消化から保護されなければならないことが認識されている。これは、一般に、該蛋白質を、酸性および酵素加水分解に対する耐性を該蛋白質に持たせるための組成物と複合体を形成させることによって、あるいは、該蛋白質を、リポソームなどの適切な耐性を有するキャリア内にパッケージングすることによって、実現される。化合物をから保護する手段は、この技術分野では周知である(例えば、治療薬の経口運搬のための脂質組成物を記述した、米国特許第5,391,377号を参照)。
【0094】
本発明の薬学的組成物は、例えば、骨の再構築及び/又は修復を促進して治療すべき、外科的創傷における、局所的投与に特に有用である。別の実施形態では、該組成物は、静脈内投与、あるいは、体腔または器官の内腔への投与など、非経口投与に有用である。投与のための組成物は、一般に、薬学的に受容できるキャリア内、望ましくは、水溶性蛋白質のための水溶性キャリア内に、溶解されたNELL−1蛋白質の溶液を含むことになる。例えば、緩衝生理食塩水など、各種のキャリアを使用することができる。これら溶液は、無菌であり、かつ、一般に、望ましくない物質を含んでいない。これら組成物は、従来の周知の滅菌技法によって滅菌されてよい。これら組成物は、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど、pH調整および緩衝剤、毒性調整剤などの、生理学的条件を近似させるための、薬学的に受容できる補助物質を、必要に応じて含んでよい。
【0095】
これら製剤形態内のNELL−1蛋白質の濃度は、大幅に変更可能であり、かつ、選択された特定の投与様式および患者の必要性に従って、主として、液量、粘度、体重などに基づいて、選択されることになる。一般にNELL−1蛋白質は、(凍結乾燥された形態からの再構成を含む)薬学的に受容できる溶液の形態で、利用される。例えば、NELL−1蛋白質は、過度な体積のキャリアを必要とすることなしに、薬学的に有効な量の蛋白質が運搬され得るよう、少なくとも約1mg/ml、望ましくは、約2〜8mg/mlの濃度で、可溶化されてもよい。いくつかのアプリケーションでは、2mg/mlより高い濃度が望ましい。
【0096】
投与計画は、対処されている臨床兆候、および、各種の患者変数(例えば、体重、年齢、性別)および臨床症状(例えば、傷害の程度、傷害の部位等)により決定する。一般的に、NELLペプチドおよび他の作用剤の投与量は、作用剤のタイプ、疾患、年齢や性別などの他の要因に基づいて、この技術分野の公知の方法により決定することができる。
【0097】
一実施形態においては、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドの投与量は一般に、0.001pg/mm〜1pg/mm、より好ましくは、0.001ng/mm〜1ng/mm、より好ましくは、0.001μg/mm〜lμg/mm、より好ましくは、0.001mg/mm〜1mg/mm、より好ましくは、0.001g/mm〜1g/mmである。他の実施形態においては、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドの投与量は一般に、0.001pg/ml〜1pg/ml、より好ましくは、0.001ng/ml〜1ng/ml、より好ましくは、0.001μg/ml〜lμg/ml、より好ましくは、0.001mg/ml〜1mg/ml、より好ましくは、0.001g/ml〜100g/mlである。 さらに他の実施形態においては、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドの投与量は一般に、0.001pg/kg〜1pg/kg、より好ましくは、0.001ng/kg〜1ng/kg、より好ましくは、0.001μg/kg〜lμg/kg、より好ましくは、0.001mg/kg〜1mg/kg、より好ましくは、0.001gm/kg〜1gm/kg、より好ましくは、0.001kg/kg〜1kg/kgである。さらに、全ての投与量は継続的な投与により与えられるか、あるいは、所与の期間毎に与えられる投与量に分割されてもよいとされている。期間の例としては、それに限定されるものではないが、1時間毎、2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎、24時間毎、48時間毎、もしくは、72時間毎、あるいは、毎週、2週間毎、4週間毎、もしくは、毎月、2ヵ月毎、4ヶ月毎などが挙げられる。
【0098】
しかしながら、NELLペプチドは、インビトロで造骨細胞のアポトーシスに影響することがあるので(Zhang,X.,et al.,J Bone Miner Res,2003.18(12):p.2126−34)、最適レンジを有意に上回るNELLの投与量(例えば、NELL−1の投与量)を用いても軟骨形成もしくは修復を増大することはできない。つまり、NELLペプチドのさらにより好適な投与量も最適投与量レンジを有意に上回ることはないと思われる。NELLペプチドのさらにより好適な最適投与量レンジは、対象哺乳類のタイプ、年齢、場所、および性別等の要因、使用されるキャリアもしくはスキャフォールド材料、ならびに、異なるNELLペプチドの純度および作用効力により変化する。一実施形態においては、NELLペプチドのさらにより好適な最適投与量レンジは、それに限定されるものではないが、1ng/mm〜100ng/mm、さらにより好ましくは、100ng/mm〜1000ng/mm、さらにより好ましくは、1μg/mm〜100μg/mm、さらにより好ましくは、100μg/mm〜1000μg/mmである。他の実施形態においては、NELLペプチドのさらにより好適な最適投与量レンジは、それに限定されるものではないが、1ng/ml〜100ng/ml、さらにより好ましくは、100ng/ml〜1000ng/ml、さらにより好ましくは、1μg/ml〜100μg/ml、さらにより好ましくは、100μg/ml〜1000μg/mlである。さらに他の実施形態においては、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドのさらにより好適な最適投与量レンジは、一般的に、1μg/kg〜100μg/kg、さらにより好ましくは、100μg/kg〜1000μg/kg、さらにより好ましくは、1mg/kg〜100mg/kgである。さらに、全ての投与量は継続的な投与により与えられるか、あるいは、所与の期間毎に与えられる投与量に分割されてもよいとされている。期間の例としては、それに限定されるものではないが、1時間毎、2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎、24時間毎、48時間毎、もしくは、72時間毎、あるいは、毎週、2週間毎、4週間毎、もしくは、毎月、2ヵ月毎、4ヶ月毎などが挙げられる。本明細書で用いられる用語「最適レンジを有意に上回る」は、例えば、約1%〜約50%、約5%〜約50%、約10%〜約50%、約20%〜約50%、約30%〜約50%、もしくは、約40%〜50%最適レンジを上回ることを意味する。
【0099】
NELLペプチドの阻害剤の投与量は、阻害剤のタイプ、治療、予防、もしくは寛解される骨または軟骨の状態、ならびに、阻害剤を含む組成物を受け容れる対象哺乳類の年齢、場所、および性別によって変化する。一般的に、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドの阻害剤の投与量は、それに限定されるものではないが、0.001pg/mm〜1pg/mm、より好ましくは、0.001ng/mm〜1ng/mm、より好ましくは、0.001μg/mm〜lμg/mm、より好ましくは、0.001mg/mm〜1mg/mm、より好ましくは、0.001g/mm〜1g/mmである。他の実施形態においては、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドの阻害剤の投与量は一般に、0.001pg/ml〜1pg/ml、より好ましくは、0.001ng/ml〜1ng/ml、より好ましくは、0.001μg/ml〜lμg/ml、より好ましくは、0.001mg/ml〜1mg/ml、より好ましくは、0.001g/ml〜100g/mlである。さらに他の実施形態においては、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドの阻害剤の投与量は一般に、0.001pg/kg〜1pg/kg、より好ましくは、0.001ng/kg〜1ng/kg、より好ましくは、0.001μg/kg〜lμg/kg、より好ましくは、0.001mg/kg〜1mg/kg、より好ましくは、0.001gm/kg〜1gm/kg、より好ましくは、0.001kg/kg〜1kg/kgである。さらに、全ての投与量は継続的な投与により与えらるか、あるいは、所与の期間毎に与えられる投与量に分割されてもよいと考えられる。期間の例としては、それに限定されるものではないが、1時間毎、2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎、24時間毎、48時間毎、もしくは、72時間毎、あるいは、毎週、2週間毎、4週間毎、もしくは、毎月、2ヵ月毎、4ヶ月毎などが挙げられる。
【0100】
NELLペプチドの受容体モジュレーターの投与量は、阻害剤のタイプ、受容体のタイプ、治療、予防、もしくは寛解される骨または軟骨の状態、ならびに、NELLペプチドの受容体モジュレーターを含む組成物を受け容れる対象哺乳類の年齢、場所、および性別によって変化する。一般的に、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドの受容体モジュレーターの投与量は、それに限定されるものではないが、0.001pg/mm〜1pg/mm、より好ましくは、0.001ng/mm〜1ng/mm、より好ましくは、0.001μg/mm〜lμg/mm、より好ましくは、0.001mg/mm〜1mg/mm、より好ましくは、0.001g/mm〜1g/mmである。他の実施形態においては、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドの受容体モジュレーターの投与量は一般に、0.001pg/ml〜1pg/ml、より好ましくは、0.001ng/ml〜1ng/ml、より好ましくは、0.001μg/ml〜lμg/ml、より好ましくは、0.001mg/ml〜1mg/ml、より好ましくは、0.001g/ml〜100g/mlである。さらに他の実施形態においては、特定のキャリアもしくはスキャフォールドを用いた場合でも、あるいは、用いない場合でも、NELLペプチドの受容体モジュレーターの投与量は一般に、0.001pg/kg〜1pg/kg、より好ましくは、0.001ng/kg〜1ng/kg、さらに好ましくは、0.001μg/kg〜lμg/kg、さらに好ましくは、0.001mg/kg〜1mg/kg、さらに好ましくは、0.001gm/kg〜1gm/kg、さらに好ましくは、0.001kg/kg〜1kg/kgである。さらに、全ての投与量は継続的な投与により与えられるか、あるいは、所与の期間毎に与えられる投与量に分割されてもよいとされている。期間の例としては、それに限定されるものではないが、1時間毎、2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎、24時間毎、48時間毎、もしくは、72時間毎、あるいは、毎週、2週間毎、4週間毎、もしくは、毎月、2ヵ月毎、4ヶ月毎などが挙げられる。
【0101】
2)骨移植片材料
骨創傷、並びに、多くの他の創傷モデルは、創傷治癒プロセスにとって重大な生物学的に活性の作用剤の遊離を、惹起する。骨内で自然発生する骨形態形成蛋白質(BMP)は、創傷からひとたび遊離されると、骨誘発を刺激し、かつ、喪失した、あるいは、損傷した骨組織を再生する。精製された形態の、これら同じ蛋白質は、生分解性の基質への骨成長を刺激して、通常の骨格の境界の内部および外部の両方で、骨の人工的創出を可能にするのに用いることができる。特定の理論に拘束されることなしに、NELL−1蛋白質は、骨形態形成蛋白質の使用に類似したやり方で、骨の再石灰化を刺激するのに用いることができると考えられている。
【0102】
NELL−1蛋白質は、上述したように、全身的に投与され得る。加えて、あるいは、別法として、NELL−1蛋白質は、骨または骨折部位に、直接的に適用され得る。これは、外科手術中(例えば、複雑骨折を接骨する時、骨を再構築する時、骨移植を行う時など)に実現することができ、あるいは、直接注射によって実現することができる。
【0103】
ある種の好適な実施形態では、特に、骨の再構築または修復が外科的に行われる場合は、持続性運搬「ビヒクル」を用いてNELL−1蛋白質を投与することが望ましい。持続性運搬ビヒクルとしては、生分解性の運搬ビヒクルが挙げられるが、それらに限定されない。好適な生分解性の運搬ビヒクルは、望ましくは、多孔性である。
【0104】
物質の放出制御を行いながら、細胞付着および組織再生誘導のための場所も提供するための、生分解性多孔性運搬ビヒクルを開発する点では、多くの研究がなされてきた。生分解性の材料は、1)親水性のもの、および2)疎水性のもの、という二つのカテゴリーに分けられることが多い。親水性材料(脱灰凍結乾燥骨、セラミック、フィブリン、ゼラチンなど)は、水に対して高い親和性を有しており、NELL−1蛋白質水溶液を、材料の内部孔内に、容易に取り込む。疎水性材料(L−ポリ乳酸、D,L−ポリ乳酸、ポリグリコール酸など)は、それらの多孔性、全体の大きさ、形状および機械的特性の範囲では潜在的に限界がないが、水溶液で「浸潤する」のがより困難である。そのような材料の内表面への溶液の沈着を増大させるために、疎水性材料は、蛋白質または界面活性剤で含浸して、蛋白質(例えば、NELL−1)による含浸を促進することが多い。
【0105】
フィブリノゲン、ポリ乳酸(PLA)、乳酸の共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)といったポリヒドロキシ酸、多孔性セラミックス、ゼラチン、寒天などの材料を含む、各種の生分解性の運搬材料の詳細な記述は、例えば、米国特許第5,736,160号、第4,181,983号、第4,186,448号、第3,902,497号、第4,442,655号、第4,563,489号、第4,596,574号、第4,609,551号、第4,620,327号、および第5,041,138号に見い出すことができ、それらの教示は、参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0106】
いくつかの実施形態では、運搬ビヒクルは、上記のキャリアと同一であってもよい。
【0107】
他の運搬ビヒクルとしては、骨移植片材料が挙げられるが、それらに限定されない。骨移植片材料は、天然の材料(例えば、移植された骨または骨断片)、合成材料(例えば、各種の重合体及び/又はセラミックス)、あるいは、両方の組合せから誘導することができる。骨移植片材料は、一般に、空隙を埋める、あるいは、さもなければ、喪失した骨材料を置換するのに利用される。そのような移植片材料は、しばしば、補綴の生骨との緊密な結合/アニーリングを促進するため、補綴装置(例えば、骨代替物または支持体)の構成要素としても提供される。
【0108】
生体活性ガラスおよびリン酸カルシウム、コラーゲン、混合物などを用いた骨移植片は、良好な生体適合性を有しており、かつ、場合によっては、骨組織の形成および取込みを生ずる。多くの異なるガラス、ガラスセラミックス、および結晶相材料が、回復目的で、単独で、あるいは、アクリルの重合可能な種、および重合体の他のファミリーと組み合わせて、用いられてきた。これらとしては、ヒドロキシアパタイト、フッ素リン灰石、オキシアパタイト、ウォラストナイト、灰長石、フッ化カルシウム、アグレル石、デビトライト、カナサイト、金雲母、モネタイト、ブラッシュ石、リン酸八カルシウム、ウィットロッカイト、リン酸四カルシウム、コーディエライト、およびベルリナイトが挙げられる。そのような用途を記述した代表的な特許としては、米国特許第3,981,736号、第4,652,534号、第4,643,982号、第4,775,646号、第5,236,458号、第2,920,971号、第5,336,642号、および第2,920,971号が挙げられる。追加的な参照文献としては、日本国特許第87−010939号および独国特許第OS2,208,236号が挙げられる。他の参照文献は、W.F.Brown,“Solubilities of Phosphate & Other Sparingly Soluble Compounds,”Environmental Phosphorous Handbook,Ch.10(1973)に見い出されるはずである。上記に加えて、サンゴおよび真珠貝を含む、ある種の動物由来の材料も、回復目的で、生体材料において、使用されてきた。
【0109】
骨移植片は、約0.001%〜10%のNELL−1ペプチドもしくは関連作用剤を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、骨移植片は、上述の投与量を提供する量のNELL−1を含んでもよい。
【0110】
他の骨移植片材料としては、1〜10重量%の硝子体の鉱物線維と共に15〜75重量%の生体活性ガラスで強化された、可撓性の成形用アクリルベース骨セメント(米国特許第4,239,113号)、および、アミンを混合した過酸化ベンゾイルなどの過酸化システムの作用を通して重合可能な、ビスフェノール−A−ジグリシジルメタクリル酸塩(bisGMA)への、リン酸三カルシウムおよびバイオセラミックA2などの骨充填材(Vuillemin et al.(1987)Arch.Otolygol.Head Neck Surg.113:836−840)が挙げられる。水酸化カルシウムセメント反応を通して硬化された、サリチル酸塩とアクリル酸塩の両方を含む二成分樹脂複合体が、米国特許第4,886,843号に記述されており、一方、米国特許第5,145,520号および第5,238,491号は、充填材およびセメントを開示している。上記の材料は、NELL−1蛋白質を取り込むように製作され得る。
【0111】
さらに、骨形態形成蛋白質を含む移植片材料は、既知である。従って、例えば、米国特
許第4,394,370号は、再構成されたコラーゲンと脱灰した骨粒子との、あるいは
、再構成されたコラーゲンと骨欠損におけるインビボ移植に適した海綿状に製作された可溶化骨形態発生蛋白質との、複合体を記述している。同様に、米国特許第5,824,084号は、望ましくは、帯電した表面を有する、生体適合性の移植可能な移植片材料から作成された基板を記述している。生体適合性の移植可能な移植片材料の例としては、リン酸カルシウムを含む合成セラミックス、いくつかの重合体、脱灰した骨基質、または石灰化した骨基質が挙げられる。これら材料は、追加的に、基板の表面に結合した細胞接着分子を含んでよい。用語「細胞接着分子」は、集合的に、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、血管細胞接着分子(V−CAM)および細胞間接着分子(I−CAM)、およびコラーゲンを指す。特に適当な移植片材料としては、例えば、単離された石灰化した海綿骨切片、石灰化した骨の粉末または顆粒、脱灰した海綿骨切片、脱灰した骨の粉末または顆粒、脱灰した骨基質から抽出されたグアニジン−HCl、焼結された皮質骨または海綿骨、Interpore500という商品名でInterporeによって販売されているサンゴ状ヒドロキシアパタイト、およびZimmerによって販売されている骨移植片代用物Collagraft、あるいは、Orquestによってコラーゲンから作成されたものなどの線維状海綿に組み込まれたものなどの顆粒状セラミックスが挙げられる。NELL−1蛋白質は、これら移植片材料のうちのいずれにも組み込むことができ、あるいは、骨形態形成蛋白質の代わりに代用することができる。
【0112】
V I I . キット
さらに別の実施形態では、本発明は、本明細書で述べる、検定の実施または組成物の使用のための、キットを提供する。好適な一実施形態では、キットは、NELL−1発現及び/又は活性レベルの検出に適した、抗体及び/又は核酸プローブを含む一つまたはそれ以上の容器、及び/又は基板を含んでいる。キットは、オプションとして、本文書で述べる検定の実施を促進するための、いかなる試薬及び/又は装置も含んでよい。そのような試薬としては、緩衝液、標識、標識化抗体、標識化核酸、蛍光標識の描出のためのフィルターセット、ブロッティングメンブレンなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0113】
別の実施形態では、キットは、NELL−1蛋白質、上記の関連作用剤、またはNELL−1蛋白質をコード化するベクター、及び/又はNELL−1蛋白質をコード化するベクターを含む細胞を含む、容器を含んでよい。
【0114】
さらに、キットは、本発明の検定方法の実施、あるいは、禁忌(counter indicatiions)と共に本明細書で述べる組成物の投与のための、指示(すなわち、プロトコル)を含む指図資料を含んでよい。指図資料は、一般に、書面による、あるいは、印刷された材料を含むが、それらに限定されない。そのような指図を記憶し、かつ、それらを最終使用者に伝達することができる、いかなるメディアも、本発明によって企図されている。そのようなメディアとしては、電子的記憶メディア(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学的メディア(例えば、CDROM)などが挙げられるが、それらに限定されない。そのようなメディアは、そのような指図資料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含んでよい。
【0115】
3)NELL−1の骨粗鬆症への適用
いくつかの実施例においては、本明細書に記述するNELL−1蛋白質は、骨粗鬆症の治療、予防、もしくは寛解のために用いることができる。本実施形態では、NELL−1ペプチドは骨粗鬆症の部位に投与することができる。その後、振動もしくは超音波などの物理的な力を投与部位に適用し、NELL−1ペプチドを分散させる。いくつかの実施形態においては、(a)組織(骨)を切開し、(b)この切開部位を介してNELL−1ペプチドを組織へ運搬する作業により、骨粗鬆症の部位へNELL−1ペプチドを投与することができる。いくつかの実施形態においては、NELL−1ペプチドは、持続性運搬のために薬学的に受容できるキャリアに含まれていてもよい。
【0116】
4)NELL−1の軟骨再生への適用
いくつかの実施例においては、本明細書に記述するNELL−1蛋白質は、軟骨変性の治療、予防、もしくは寛解のために用いることができる。一実施形態においては、薬学的に受容できるキャリアを用いても、用いなくても、また、他の装置(例えば、椎間板核置換装置、同種移植片装置、もしくは細胞)もしくは生体因子(例えば、LIM−1蛋白質)を用いても、用いなくても、NELL−1ペプチドを脊椎椎間板疾患のような繊維軟骨症の部位に投与することができる。他の実施形態においては、薬学的に受容できるキャリアを用いても、用いなくても、また、他の装置(例えば、半月板同種移植片、半月板スキャフォールド、補綴、もしくは細胞)もしくは生体因子を用いても、用いなくても、NELL−1ペプチドを半月板等での繊維軟骨症の部位に投与することができる。他の実施形態においては、薬学的に受容できるキャリアを用いても、用いなくても、また、他の装置(例えば、軟骨同種移植片、軟骨スキャフォールド、もしくは補綴)もしくは生体因子を用いても、用いなくても、NELL−1ペプチドを膝関節軟骨等での硝子軟骨症の部位に投与することができる。他の実施形態においては、薬学的に受容できるキャリアを用いても、用いなくても、また、他の装置(例えば、軟骨同種移植片、軟骨スキャフォールド、もしくは補綴)もしくは生体因子を用いても、用いなくても、NELL−1ペプチドを気管軟骨(例えば、気管軟化症)等のその他の部位の硝子軟骨症に投与することができる。
【0117】
他の実施形態においては、薬学的に受容できるキャリアを用いても、用いなくても、また、他の装置(例えば、細胞)もしくは生体因子を用いても、用いなくても、NELL−1ペプチドを耳介もしくは喉頭蓋等での弾性軟骨症の部位に投与することができる。
【0118】
組成物の投与
本明細書に記述する組成物は、対象哺乳類(例えば、ヒト)への投与/運搬に適切な様式の適切な製剤形態に製剤することができる。上記の教示を用いれば、当業者は、例えば、適正な量のNELLペプチドもしくは上記で定義された関連作用剤を含む適正なキャリアを使用することによって、本明細書に記述する組成物を望ましい製剤形態に製剤することができる。
【0119】
組成物運搬のいくつかの例としては、例えば、各種の部位における無傷の皮膚を介する経皮注射、もしくは、無傷ではない皮膚(例えば、外科的に開かれた部位、もしくは外傷部位)を介する直接的注射などが挙げられる。いくつかの実施形態においては、運搬方法は本明細書に記述する組成物の外科的な移植であってもよい。いくつかの実施形態においては、運搬方法は、血管外の運搬、注射もしくはカテーテルを用いた注射、血管内の運搬、注射もしくはカテーテルを用いた注射、静脈内の運搬、注射もしくはカテーテルを用いた注射、動脈内の運搬、注射もしくはカテーテルを用いた注射、髄膜内の運搬、注射もしくはカテーテルを用いた注射、骨内の運搬、注射もしくはカテーテルを用いた注射、軟骨内の運搬、注射もしくはカテーテルを用いた注射、あるいは、膀胱内の運搬、注射もしくはカテーテルを用いた注射のうちの一つであってもよい。
【0120】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記述する組成物の対象哺乳類への運搬は、機械的ポンプを介する、経皮もしくは移植可能なカテーテルを用いた運搬であってもよい。
【0121】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記述する組成物の対象哺乳類への運搬は、カテーテルを用いた体内のいずれの領域/器官への運搬であってもよい。
【0122】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記述する組成物の対象哺乳類への運搬は、組織内の浸透もしくはより広範囲な組織内分布の増大を促進する各種の装置(例えば、超音波、イオン導入、熱、圧力等)を介した分散の拡大による運搬であってもよい。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は、請求項に記載の発明を、限定する目的ではなく例示する目的で提供されている。
【0124】
実施例1.NELL−1は、胎仔の頭蓋冠造骨細胞における石灰化を増進する
本明細書で述べるNELL−1遺伝子の全長cDNAのヌクレオチド配列は、ニワトリNel遺伝子に対して約61%の相同性を有しており、従って、ヒトNELL−1と命名された(Watanabe et al.(1996)Genomics.38(3),273‐276)。NELL−1蛋白質は、シグナルペプチド、NH−末端トロンボスポンジン(TSP)様モジュール(Francois and Bier(1995)Cell.80(1):19‐20)、5つのvon Willebrand因子Cドメイン、および6つのEGF様ドメインを含んでいる。
【0125】
ヒトNELL−1遺伝子の発現は、主として、縫合近傍骨縁部に沿って、骨形成前端の間葉細胞内および造骨細胞内に、かつ、新しく形成された骨の凝縮している間葉細胞内に、局在化されていた。ヒト多臓器組織のmRNAブロットは、ヒトNELL−1遺伝子が、胎仔の脳内では、特異的に発現されたが、胎仔の肺、腎臓または肝臓においては、特異的に発現されなかったことを示した。我々は、また、NELL−1遺伝子が、ラット頭蓋冠の骨祖先細胞内では発現されたが、ラットの脛骨、ストローマ細胞、および線維芽細胞の培養物においては、おおむね不在であったことを実証した。我々のデータは、NELL−1遺伝子が、頭蓋の膜内骨および神経組織(神経冠由来)内で優先的に発現されることを示唆している。
【0126】
図1Aは、コントロールとしてのβ−ガラクトシダーゼと共に、アデノウイルスを用いたE−14ラット頭蓋冠の初代細胞培養物内のNELL−1の過剰発現を示している。図1Bは、それぞれ、NELL−1およびβ−ガラクトシダーゼによる処置後の時間の関数としての、石灰化のプロットを示している。実験は、三重複製によって行われた。StudentのT検定が行われた。NELL−1による石灰化は、β−ガラクトシダーゼコントロールによる石灰化よりも統計的に高かった(*P<0.001)。
【0127】
A)材料および方法
胎仔の妊娠7、11、14、17日目からの全マウス胚RNA分析を行った。NELL−1cDNAを担持するアデノウイルス(El−AノックアウトおよびMCVプロモーターを有するAD5)を構築し、かつ、ラット胎仔の頭蓋冠の初代細胞培養物およびMC3T3細胞ラインに感染させた。ウイルスは、以下のプロトコルに従って構築した:293細胞を、各10mgのpJM17(欠損アデノウイルスゲノムを含む)および(CaPO4を用いた、センスまたはアンチセンスラットNELL−1を含む)pAC−CMVベースのプラスミドで同時形質移入して、10〜14日間でラットNELL−1を発現している組換えアデノウイルスベクターを生成した。ウイルスをプラーク精製し、かつ、サザンブロットを行ってNELL−1遺伝子の取込みを保証した。β−ガラクトシダーゼ遺伝子を含むアデノウイルスを、コントロールとして使用し、かつ、異なる細胞型による感染の有効性について、検査した。MC3T3細胞とNIH3T3細胞の両方で、約80〜90%の感染効率が観察された。
【0128】
感染後14、17、21日目に、Von Kossa染色を行った。ImageProシステムによって、石灰化の領域を定量化した。Studentの両側t検定によって、統計解析を行った。統計的P値*p<0.01を有意と見なした。NELL−1を過剰発現している細胞からのRNAを抽出し、かつ、マウスcDNAアレイ分析を行った。ホスフォイメジャーによって、ハイブリダイゼーション信号を定量化した。
【0129】
B)結果
NELL−1mRNAは、妊娠の14日目からかすかに発現され、妊娠期間にわたって若干増大した。妊娠14日目は、胎仔の頭蓋冠が石灰化し始める時である。NELL−1を過剰発現している、ラット胎仔の頭蓋冠の初代細胞培養物とMC3T3細胞培養物の両方が、β−ガラクトシダーゼコントロールと比べた石灰化の増進を示した。NELL−1の過剰発現は、感染後17日目に、頭蓋冠の造骨性初代細胞培養物における石灰化を、コントロールと比較して、約30倍増進した。これらの結果は、Von Kossa染色に基づいており、かつ、ImageProソフトウェアによって定量化された。この相対的な増大は、感染後21日目までに、2倍にまで減少した。NELL−1を感染させたMC3T3細胞からのマウスcDNAアレイの結果は、コントロールと比較して、BMP−7遺伝子発現における20%のダウンレギュレーション、並びに、SplitHandおよびFoot遺伝子の3倍のアップレギュレーションを示した。これら二つの遺伝子は、骨形成および頭蓋顔面の発生に密接に関連している。
【0130】
C)考察および結論
この研究で、我々は、NELL−1が、骨形成と密接に関連しており、それが、頭蓋冠造骨細胞様細胞の石灰化を増進したことを明らかに確認した。同定された下流のエフェクターのうちのいくつかは、明らかに、骨形成および胎生学的な発生において、重要な役割を果たしている。CSで見られるような早期の頭蓋縫合閉鎖は、頭蓋骨の過剰産生によるものであると思われ、従って、NELL−1分子の過剰発現に関連している可能性がある。これらの結果およびNELL−1の予備的な蛋白質機能分析結果は、この蛋白質を、生物学的に関連する分子として分類する。NELL−1のあり得る役割として、これら蛋白質は、他の成長因子と相互作用する、モジュレーターとして作用することができる。最近、TSP−1は、TGFβ−1の主要な活性化剤であることが示された(Francois and Bier(1995)Cell.80(1):19‐20)。TGFβ−1は、細胞受容体と相互作用することができない、不活性な形態のほとんどの細胞によって分泌される。TGFβ−1の活性は、最初に、潜状関連蛋白質(LAP)と呼ばれる、そのNH−末端プロペプチドの二量体との、その非共有結合的な関連性によってマスクされる。TGFβ−1を細胞外で活性化する際に、TSP−1は、LAPのNH−末端領域と相互作用して、三分子複合体を形成する。この複合体内で、TGFβ−1を受容体にとってアクセス可能にする立体配座的変化が生じる。4つのvWFCドメイン(おそらく、ホモ三量体)を有する、コーディンのような高い相同性を有する分子が、原腸形成中に分泌され、かつ、ゼノパスの背腹パターン形成において中心的な役割を果たしている(Crawford et al.(1998)Cell.93(7):1159‐1170)。最近、コーディンは、腹側BMP−4(骨形態発生蛋白質4、TGFβスーパーファミリーのうちの一つ)に直接的に結合し、かつ、BMP−4活性を中和することが示された(Piccolo et al.(1996)Cell,86(4):589‐598)。これらの結果は、NELL−1蛋白質が、TGFβスーパーファミリーのメンバーのうちのいくつかと相互作用することによって、それらの未同定の機能を細胞外で実行し得ることを示唆している。TGFβ−1は、骨形成の制御因子として既知であるため、石灰化を増進するNELL−1蛋白質の効果は、TGFβスーパーファミリーとのその相互作用に関連し得る。
【0131】
本明細書で述べる例および実施形態は、もっぱら説明の目的にのみ記載されており、その説明に照らした各種の変形または変更は、当業者に示唆されており、かつ、本願の主旨および本文、かつ、添付のクレームの範囲内に含まれるべきであることが理解されよう。本明細書で引用された全ての出版物、特許、および特許出願は、本明細書によって、全ての目的のために、その全部が引用により組み込まれている。
【0132】
[連邦政府より後援された研究開発の下で行われた発明の権利に関する陳述]
この研究は一部において、NIH/NIDR認可番号DE9400、CRC/NIH認可番号RR00865、NIH/NIDCR RO3 DE014649‐01、NIH/NIDCR K23 DE00422、および、NlH DE0l6107‐01により支援された。本発明においては、米国政府が一定の権利を有し得る。
【0133】
[関連出願の相互参照]
また本願は、2006年3月28日に出願された米国出願第11/392,294号の一部継続出願であり、前記出願は、1999年10月5日に出願された米国継続出願第09/412,297号であって、米国特許第7,052,856号となったものである。さらに、本願は、2006年5月15日に出願された米国出願第10/544,553号の一部継続出願であり、前記出願は、2004年2月9日に出願されたPCT出願PCT/US2004/003808の米国国内段階のものであり、これらの教示は、参照により本明細書に組み込まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨の石灰化を増進させる方法であって、前記方法は、造骨性細胞においてNELL−1遺伝子産物の濃度を増大させる工程を備える;
方法。
【請求項2】
前記NELL−1遺伝子産物は、NELL−1蛋白質、NELL−1関連作用剤、またはそれらの組合せである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記造骨性細胞は、成熟造骨細胞、造骨細胞、間葉細胞、繊維芽細胞、胎性胚細胞、幹細胞、骨髄細胞、硬膜細胞、軟骨細胞、および軟骨芽細胞からなるグループより選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記NELL−1関連作用剤は、物理的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記NELL−1関連作用剤は、化学的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、ペグ化されたNELL−1ペプチド、または短い炭化水素基を少なくとも1つ備えるNELL−1ペプチドである、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、NELL−1ペプチドの模倣体である、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
骨折の修復を促進する方法であって、前記方法は、骨折部位の、あるいは、その近くの、NELL−1遺伝子産物の濃度を増大させる工程を備える;
方法。
【請求項9】
NELL−1遺伝子産物の濃度を増大させる工程は、NELL−1蛋白質もしくはNELL−1関連作用剤を発現するベクターで造骨性細胞への形質移入をする工程を備える;
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記NELL−1遺伝子産物は、NELL−1蛋白質、NELL−1関連作用剤、またはそれらの組合せである、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記造骨性細胞は、成熟造骨細胞、造骨細胞、間葉細胞、繊維芽細胞、胎性胚細胞、幹細胞、骨髄細胞、硬膜細胞、軟骨細胞、および軟骨芽細胞からなるグループより選択される、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記NELL−1関連作用剤は、物理的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記NELL−1関連作用剤は、化学的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、ペグ化されたNELL−1ペプチド、または短い炭化水素基を少なくとも1つ備えるNELL−1ペプチドである、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、NELL−1ペプチドの模倣体である、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
骨折の修復を促進する方法であって、前記方法はNELL−1蛋白質もしくはNELL−1関連作用剤を備える組成物を骨折部位へ投与する工程を備える;
方法。
【請求項17】
前記組成物は、薬学的に受容できるキャリアをさらに備える;
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記薬学的に受容できるキャリアは、コラーゲンを備える;
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記NELL−1関連作用剤は、物理的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記NELL−1関連作用剤は、化学的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、ペグ化されたNELL−1ペプチド、もしくは短い炭化水素基を少なくとも1つ備えるNELL−1ペプチドである、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、NELL−1ペプチドの模倣体である、
請求項20に記載の方法。
【請求項23】
動物において骨組織の形成を増強することができる骨移植片であって、生体適合性基質およびNELL−1蛋白質またはNELL−1関連作用剤を備える、
骨移植片。
【請求項24】
前記生体適合性基質は、再吸収可能である、
請求項23に記載の骨移植片。
【請求項25】
前記生体適合性基質は、生分解性の重合体を備える;
請求項23に記載の骨移植片。
【請求項26】
前記生体適合性基質は、コラーゲンを備える;
請求項23に記載の骨移植片。
【請求項27】
前記NELL−1蛋白質またはNELL−1関連作用剤は、前記NELL−1蛋白質またはNELL−1作用剤を発現している前記基質内の細胞により産生され、
前記NELL−1蛋白質およびNELL−1作用剤は、外来性のものである、
請求項23に記載の骨移植片。
【請求項28】
前記NELL−1関連作用剤は、物理的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項23に記載の骨移植片。
【請求項29】
前記NELL−1関連作用剤は、化学的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項23に記載の骨移植片。
【請求項30】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、ペグ化されたNELL−1ペプチド、または短い炭化水素基を少なくとも1つ備えるNELL−1ペプチドである、
請求項29に記載の骨移植片。
【請求項31】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、NELL−1ペプチドの模倣体である、
請求項29に記載の骨移植片。
【請求項32】
動物において骨組織の形成を誘発することができる骨移植片であって、約99.999〜約0.001重量%のコラーゲンと約0.001〜約99.999重量%のNELL−1蛋白質、NELL−1関連作用剤、またはそれらの組合せを含むコラーゲン接合体を備える;
骨移植片。
【請求項33】
生分解性の重合体をさらに備える;
請求項32に記載の骨移植片。
【請求項34】
前記NELL−1関連作用剤は、物理的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項32に記載の骨移植片。
【請求項35】
前記NELL−1関連作用剤は、化学的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項32に記載の骨移植片。
【請求項36】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、ペグ化されたNELL−1ペプチド、または短い炭化水素基を少なくとも1つ備えるNELL−1ペプチドである、
請求項35に記載の骨移植片。
【請求項37】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、NELL−1ペプチドの模倣体である、
請求項35に記載の骨移植片。
【請求項38】
薬学的組成物であって、NELL−1ペプチド、NELL関連作用剤、またはそれらの組合せを備える;
薬学的組成物。
【請求項39】
薬学的に受容できるキャリアをさらに備える;
請求項38に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
前記薬学的に受容できるキャリアは、経口投与、局所的投与、in situ移植片、静脈内投与、非経口投与、局所投与、動脈内注射、骨折部位への注射、および生分解性の基質内での運搬からなるグループより選択された運搬様式のためのキャリアである、
請求項39に記載の薬学的組成物。
【請求項41】
前記NELL関連作用剤は、物理的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項38に記載の薬学的組成物。
【請求項42】
前記NELL関連作用剤は、化学的に修飾されたNELL−1ペプチドである、
請求項38に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、ペグ化されたNELL−1ペプチド、または短い炭化水素基を少なくとも1つ備えるNELL−1ペプチドである、
請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記化学的に修飾されたNELL−1ペプチドは、NELL−1ペプチドの模倣体である、
請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
前記薬学的組成物は、無傷の皮膚を介する部位への経皮注射、外科的に開かれた部位もしくは外傷部位を介する直接注射、外科的移植、血管外運搬、血管外注射、カテーテルを用いた血管外注射、血管内運搬、血管内注射、カテーテルを用いた血管内注射、静脈内運搬、静脈注射、カテーテルを用いた静脈注射、動脈内運搬、動脈注射、カテーテルを用いた動脈注射、髄膜内運搬、髄膜注射、カテーテルを用いた髄膜注射、骨内運搬、骨内注射、カテーテルを用いた注射、軟骨内運搬、軟骨内注射、カテーテルを用いた軟骨内注射、膀胱内運搬、膀胱内注射、カテーテルを用いた膀胱内注射、経皮もしくは移植可能なカテーテルを有する機械的ポンプを介する運搬、体内の領域もしくは器官へのカテーテルを用いた運搬、または、組織内の浸透もしくはより広範囲な組織内分布を増進する装置を介した分散の拡大による運搬より選択された運搬様式に適した製剤形態に製剤された、
請求項38に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
前記装置は、超音波、イオン導入、熱、もしくは圧力を提供する、
請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
予め選択された部位における骨組織に有効量のNELL−1ペプチドを投与することにより、骨粗鬆症を治療、予防、もしくは寛解させる
方法。
【請求項48】
前記NELL−1ペプチドを分散させるために、前記予め選択された部位に物理的な力を加える工程をさらに備える;
請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記投与工程は、前記予め選択された部位において骨組織に切開部を作る工程と;
前記切開部を介して前記予め選択された部位における骨組織へ運搬する工程を備える;
請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記物理的な力は、超音波である、
請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記NELL−1ペプチドは、無傷の皮膚を介する部位への経皮注射、外科的に開かれた部位もしくは外傷部位を介する直接注射、外科的移植、血管外運搬、血管外注射、カテーテルを用いた血管外注射、血管内運搬、血管内注射、カテーテルを用いた血管内注射、静脈内運搬、静脈注射、カテーテルを用いた静脈注射、動脈内運搬、動脈注射、カテーテルを用いた動脈注射、髄膜内運搬、髄膜注射、カテーテルを用いた髄膜注射、骨内運搬、骨内注射、カテーテルを用いた注射、軟骨内運搬、軟骨内注射、カテーテルを用いた軟骨内注射、膀胱内運搬、膀胱内注射、カテーテルを用いた膀胱内注射、経皮もしくは移植可能なカテーテルを有する機械的ポンプを介する運搬、体内の領域もしくは器官へのカテーテルを用いた運搬、または、組織内の浸透もしくはより広範囲な組織内分布を増進する装置を介した分散の拡大による運搬より選択された運搬様式に適した製剤形態に製剤された、
請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記装置は、超音波、イオン導入、熱、もしくは圧力を提供する、
請求項51に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A−4D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公表番号】特表2010−520212(P2010−520212A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551795(P2009−551795)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/054779
【国際公開番号】WO2008/109274
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(301043487)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (15)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【Fターム(参考)】