説明

骨間隙充填剤

骨間隙充填剤のための新規組成物およびキットが提供される。改良された骨間隙充填剤には、リン酸カルシウムおよび少なくとも1種の安定化剤と混合される多孔質のコラーゲン足場材料が含まれる。場合によっては、骨間隙充填剤にはさらに少なくとも1種の生物活性剤が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸カルシウムおよび少なくとも1種の安定化剤と混合された多孔質のコラーゲン足場材料が含まれる、改良された骨間隙充填剤に関する。
【背景技術】
【0002】
骨損傷/骨疾患の治療のための骨移植片代替物の使用は、益々活発で年齢の高い集団により持続的に広がりつつある。中でも、骨移植片代替物が使用されている臨床所見は、骨折、骨嚢胞、骨量の減少が関連する人工関節補正術、大腿骨頭の虚血壊死、変性円板疾患による脊椎固定術、口腔顎顔面骨欠損および再構成、および骨粗しょう症性骨折である。全てのこれらの臨床所見は運動性の限定を引き起こす可能性があり、そしてしばしば、特に高齢者において、極端な場合には死を招く可能性もある。これらの臨床所見はしばしば、遷延治癒または偽関節が生じないように、外科的骨移植を必要とする。遷延治癒または偽関節が生じてしまった後には、骨治癒速度が一般にゆっくりとなるため、補正手術は可能ならば避けなければならない。従って、有効な骨移植片代替物は、骨欠損および骨折を修復するための重要な治療選択肢である。
【0003】
骨再生に関連する主要な問題点は、形状を保持し続けることができ、そして治癒プロセスの間骨欠損部に残存することができるが生体と適合性でもある適切な足場物質が存在しない点である。所望の部位、量、および体積で骨の着実な再生を促進するため、骨再生物質が保持しなければならない特性には、生体適合性、多孔性、強度、結束性、形状維持、耐久性、および弾力性が含まれる。従って、そのような物質は、正常な骨とほぼ同一の多孔性および構造を有していなければならないが、しかし過剰水和および外科的部位からの拡散の影響を受けやすくてはいけない。
【0004】
現在の研究は、不規則な骨欠損に容易にパッキングすることができそしていったん適所に移植したら粘着性塊中で維持することができる骨移植片代替物を開発することに焦点が当てられている。移植片代替物は、血液などの体液により希釈されない様に、そしてそのもともとの移植された形状を失わない様に、固有の粘着性の堅さを有している。
【0005】
キャリアマトリクスを使用して患者ににおける部位での骨の形成を促進することは、周知であり、そして関連する生成物は、Medtronic Sofamor Danek(Memphis、TN)によるMastergraft(登録商標)パテなど、市場で現在入手可能である。これらのマトリクスは、典型的には相対的に大型の軟コラーゲンスポンジまたはドライケーキの形状である。標的部位への挿入の前に、通常は滅菌水または患者から吸引された骨髄を用いて約1:1〜約1:2の体積比でスポンジを湿らせる。骨髄はスポンジにより提供される足場中に浸潤させることができ、そしてその後スポンジを手でこね、それにより整形しやすいパテの堅さを得て、それを引き続いて標的部位中に穏やかにパッキングすることができる。スポンジ中のコラーゲンは、正確な位置取りおよび移植部位での生物学的因子の保持を可能にする非-水溶性キャリアである、展性のあるパテを提供する。しかしながら、外科医がパテを操作しすぎると、または標的部位に過剰量の血液が存在すると、パテはその結束性をいくらか失う可能性があり、それにより移植物のいくらかが標的部位から流れ出てしまう可能性がある。
【0006】
従って、骨欠損を修復するために適切な改良された骨間隙充填剤を求める要求が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一側面において、コラーゲン、リン酸カルシウム、および少なくとも1種の安定化剤が含まれる骨間隙充填剤を提供することにより、当該技術分野におけるこれらの必要性そしてその他の必要性に対応する。一態様において、コラーゲンは、骨間隙充填剤の重量の約5%〜約30%となり;リン酸カルシウムは、骨間隙充填剤の重量の約55%〜約94%となり;1またはそれ以上の安定化剤は、骨間隙充填剤の重量の約1%〜約15%を構成する。この安定化剤は、水分過剰条件の存在下でパテの結束性を高めるかおよび/またはパテを実際にセットアップさせる。一態様において、1またはそれ以上の安定化剤には、硫酸カルシウムが含まれる。
【0008】
別の態様において、骨間隙充填剤には、少なくとも1種の生物活性剤がさらに含まれてもよい。適切な生物活性剤には、成長因子、抗炎症性化合物、抗生物質、鎮痛剤化合物、核酸配列、細胞、およびこれらの組合せが含まれる。
【0009】
別の側面において、本発明は、骨間隙充填剤が含まれるキットを提供する。骨間隙充填剤には、コラーゲン、リン酸カルシウム、および少なくとも1種の安定化剤が含まれる。このキットにはまた、説明書セットも含まれる。一態様において、コラーゲンの乾燥重量は、骨間隙充填剤の重量の約5%〜約30%となり;リン酸カルシウムは、骨間隙充填剤の重量の約55%〜約94%となり;そして安定化剤は、骨間隙充填剤の重量の約1%〜約15%となる。一態様において、安定化剤には、硫酸カルシウムが含まれる。さらに、さらなる態様において、このキットには、少なくとも1種の生物活性因子が含まれる。適切な生物活性剤には、成長因子、抗炎症性化合物、抗生物質、鎮痛剤化合物、核酸配列、細胞、およびこれらの組合せが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、具体的なキットを示す。
【図2】図2は、具体的なスポンジを水和することについて示す。
【図3】図3は、骨間隙を充填するために標的部位に注入された具体的なインプラントを示す。
【図4】図4は、骨間隙を充填するために標的部位に注入された具体的なインプラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
安定化剤が含まれる改良された骨間隙充填剤が開示される。具体的には、一態様は、コラーゲン、リン酸カルシウム、および安定化剤が含まれる骨間隙充填剤を提供する。
用語“患者”は、治療をもたらすことができる生体系のことをいう。生体系には、例えば、個別の細胞、一組の細胞(例えば、細胞培養物)、器官、または組織が含まれてもよい。さらに、用語“患者”は、ヒトを含む動物のことをいうことができるが、これには限定されない。
【0012】
定義
様々な開示された態様を理解する補助のため、以下の限定的ではない定義を提示する:
損傷または疾患について用語“治療する”または“治療”は、骨損傷を修復しまたは疾患の症状または兆候を緩和することを目的として、1またはそれ以上の薬剤、インプラントなどを患者(ヒトまたはそれ以外)に対して投与することが含まれていてもよいプロトコルを実行することをいう。緩和は、疾患の症状または兆候が表れる前に、およびそれらが現れた後に、行うことができる。従って、“治療する”または“治療”には、疾患について“予防する”または“予防”が含まれる。さらに、“治療する”または“治療”には、症状または兆候の完全な緩和が必要とされず、治癒が必要とされず、そして具体的には患者に対して限界効果のみを有するプロトコルが含まれる。
【0013】
一態様において、骨間隙充填剤は、パテの形状であってもよい。そのような骨間隙充填剤には、コラーゲン(乾燥重量で10〜30%)およびリン酸カルシウム(重量で55〜89%)が含まれる。好ましくは、リン酸カルシウムは、0.1〜5 mmの直径、またはより好ましくは0.5〜1.6 mmの直径を有する顆粒中で提供される。リン酸カルシウムを、1またはそれ以上の化学形態で提供することができる。一態様において、二相性リン酸カルシウムを使用する。場合によっては、リン酸カルシウムがヒドロキシアパタイトを含有していてもよい。一態様において、二相性リン酸カルシウム(BCP)バイオセラミックを使用する。BCPには、様々なHA/β-TCP比でヒドロキシアパタイト(HA)、Ca10(PO46(OH)2、およびβ-トリリン酸カルシウム(β-TCP)、Ca3(PO42の緊密な混合物が含まれる。一態様において、好ましいHA/β-TCP比は、約15/85〜約25/75の範囲である。
【0014】
コラーゲンの組成物は、異なる態様においては変化することもできる。一態様において、コラーゲンは、線維状コラーゲンから構成される。線維状コラーゲンは、皮膚や靱帯などの消化されたコラーゲンドナー組織を処理する間に、高度に組織化された比較的強力な線維状に沈殿されたコラーゲンである。
【0015】
別の態様において、コラーゲンには、約20〜40重量%の可溶性コラーゲンと約60〜80重量%のより組織化された不溶性型の線維状コラーゲンが含まれる。可溶性コラーゲンは、骨間隙充填剤の流動性および結束性を高めることができる。
【0016】
図1に示されるように、リン酸カルシウムと混和されたコラーゲンは、パッケージング、輸送および保存のため、キット10中でスポンジ12の形状で凍結・乾燥をさせることができる(すなわち、凍結乾燥)。このキット10には、例えば、スポンジ10を水和しそして得られたパテを標的部位に送達するためのシリンジ14、15、場合によってスポンジ12をより小片に切断するためのナイフまたは同様な切断手段、シリンジ14、15を一緒に流体連通するための連結チューブ17、そしてシリンジ14、15の一方と連結することができそしてパテを標的部位に注入するために使用することができる送達デバイス18、をさらに含んでもよい。図2に示されるように、脱水したスポンジ12を、パッケージング10から取り出すことができ、場合によってはナイフ16を用いて切断し、そして第1シリンジ14中に配置することができる。第2シリンジ15を、滅菌水(場合によってはBMP-2またはrhBMP-2などの生物活性剤、抗-炎症剤、鎮痛剤などを含有してもよい)、骨髄吸引物などの適切な水和物質20で充填することができる。次いで、シリンジ14、15を連結チューブ17と連結することができ、その後それらのそれぞれの構成成分を出し入れしてスポンジ12を水和することができる。
【0017】
あるいは、外科医は、スポンジ12を単純に手作業で水和しそしてこねることを選択することができる。特定の態様において、スポンジ12を、凹面または陥凹表面11とすることができる。凹面または陥凹表面11は、第2シリンジ15を使用するのではなく、水和物質20を受容することができる容器として機能することができる。水和物質20は、凹面または陥凹表面11中に浸すことができ、そして外科医はその後スポンジ12をこねてパテ-様の堅さにすることができる。
【0018】
図3および図4に示されるように、スポンジ12中へのコラーゲンの水和は、流動性のパテ-様物質60を生じ、それを外科医が骨30における不規則な欠損部32に配置することができる。例えば、外科医は、第1シリンジ14に連結された送達デバイス18を使用して、パテ60を欠損部32に注入することができる;あるいは、外科医は手作業でパテ60を欠損部32に対して適用することができる。しかしながら、安定化剤がない場合、この物質60は、欠損部32からの血液浸出を吸収し続ける可能性があり、そしてそれにより外科的部位32に配置した後のその結束性のいくらかが失われる可能性がある;このことは、外科医がパテ60を操作しすぎた場合に特に当てはまる可能性がある。本発明の発明者らは、安定化剤の添加によりこれらの極端な条件下でパテ物質60の結束性が向上することを見出し、そして、必要に応じて、適所に、例えば標的部位32に、パテ60を“セットアップ”することができることを見出した。好ましい態様において、安定化剤を操作時にパテに対して添加して、そしてコラーゲンおよびリン酸カルシウムを混合して、その後凍結乾燥する。
【0019】
適切な安定化剤には、硫酸カルシウム、アルギネート、キトサン、ヒアルロン酸、ゼラチン、フィブリン、エラスチン、シルク、またはこれらのいずれかの組合せが含まれるが、これらには限定されない。一態様において、安定化剤は、結束性またはセットアップ特性を提供する反応化学を伴う、カルシウムに基づく薬剤である。特定の態様において、安定化剤は硫酸カルシウムである。添加される硫酸カルシウム量は、乾燥重量で骨間隙充填剤の約1%および約15%(すなわち、乾燥スポンジ12の重量の1%および約15%)、好ましい量としては乾燥重量で約2%〜約5%、である。硫酸カルシウムが線維状コラーゲン束どうしを結合する様に作用するため、大量のもの(例えば、約15%を超える)は必要とされない。水和の後、硫酸カルシウムはゆっくりと反応し、血液希釈の影響をそれほど受けない凝集塊中にパテ60を保持し、そしてパテ60を骨欠損部32から洗い流す。安定化剤を物質60が外科医の手袋にはそれほど接着性ではないように作製することもでき、そしてパテ60のシリンジ14から外への流動性を向上させることもできる。硫酸カルシウムの量を低く維持することにより、骨間隙充填剤60はその多孔性を維持し、その結果迅速な細胞浸潤と骨形成を可能にする。
【0020】
本発明の骨間隙充填剤を調製する方法は当該技術分野において知られていることを、当業者は認識するだろう。骨間隙充填剤のための化合物は、商業的に購入することができる。例えば、硫酸カルシウムは、Noah Technology Corp.(San Antonio、TX)より入手することができる。線維状コラーゲン、可溶性コラーゲンおよびリン酸カルシウムの適切な混合物はMedtronic Sofamor Danek, Inc.(Memphis、TN)により供給されるMASTERGRAFT(登録商標)パテの形態で入手することができる。あるいは、線維状コラーゲン、可溶性コラーゲンおよびリン酸カルシウムは、別々に入手することもできる。例えば、キット10には、スポンジ12から別個に由来する安定化剤が含まれていてもよく、その結果、外科医は、スポンジ12を水和する際に適切な量の安定化剤中に混合して、パテ60を形成してもよい。
【0021】
MASTERGRAFT(登録商標)パテは、舟形の乾燥ケーキとして供給され、5種の容量すなわち、0.75 cc、1.5 cc、3 cc、6 cc、そして9 ccにする。MASTERGRAFT(登録商標)パテを、滅菌水または骨髄吸引物を用いて水和することができる。BMP-2などの成長因子をさらに含んでいてもよい滅菌水溶液は、ケーキにゆっくりと吸収され、そしていったん全ての溶液が吸収されるとパテの堅さにまで手作業でこねられる。少なくとも1種の安定化剤(例えば、硫酸カルシウム)が、スポンジ12を製造する際に添加されることが好ましい。スポンジ12を形成するため、安定化剤を溶解して、コラーゲンおよびリン酸カルシウムとブレンドすることができる。次いで、得られた組成物を所望の形状で凍結乾燥して、スポンジ12を形成することができる。骨間隙充填剤を製造するこの態様により、構成成分のより均一な混合物を確保することができる。外科手術の前に、凍結乾燥させた物質12を溶媒20(例えば、水、塩類溶液、または骨髄吸引物)で湿らせ、それは場合によっては少なくとも1種の生物活性剤を含有していてもよく、患者の骨間隙32中に注入するかまたは手作業でパッキングすることができる粘着性塊60を形成する。
【0022】
当業者であれば、本発明の骨間隙充填剤もまた、生物活性剤、例えば、成長因子または細胞などを含むその多孔質構造の最適な負荷を可能にすることを理解するだろう。適切な生物活性剤には、成長因子(骨形成性物質および軟骨形成性物質を含む)、抗-炎症性物質、疼痛抑制物質、抗生物質、細胞、核酸配列、およびそれらのいずれかの組合せが含まれるが、これらには限定されない。
【0023】
本発明の実施に使用するために適切な成長因子には、骨形態形成タンパク質、例えば、BMP-2、rhBMP-2、BMP-4、rhBMP-4、BMP-6、rhBMP-6、BMP-7[OP-1]、rhBMP-7、GDF-5、そしてrhGDF-5が含まれるが、これらには限定されず、例えば、U.S. Patent Nos. 4,877,864;5,013,649;5,661,007;5,688,678;6,177,406;6,432,919;6,534,268、および6,858,431、そしてWozney、J. M.、et al.(1988) Science、242(4885):1528-1534中に開示される。一態様において、骨間隙充填剤は、有効量のBMP-2タンパク質、rhBMP-2タンパク質、それらの機能性フラグメント、またはそれらの組合せを含有する。
【0024】
適切な抗生物質には、ニトロイミダゾール抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、カルボペネム(carbopenems)系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、リンコマイシン系抗生物質、4-キノロン、リファマイシンおよびニトロフラントインが含まれるが、これらには限定されない。適切な具体的な化合物には、アンピシリン、アモキシシリン、ベンジルペニシリン、フェノキシメチルペニシリン、バカンピシリン、ピバンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、オキサシリン、ピペラシリン、チカルシリン、フルクロキサシリン、セフロキシム、セフェタメト、セフェトラム(cefetrame)、セフィキシム(cefixine)、セフォキシチン、セフタジジム、セフチゾキシム、ラタモキセフ、セフォペラゾン、セフトリアキソン、セフスロジン、セフォタキシム、セファレキシン、セファクロル、セファドロキシル、セファロチン、セファゾリン、セフポドキシム、セフチブテン、アズトレオナム、チゲモナム(tigemonam)、エリスロマイシン、ジリスロマイシン、ロキシスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、パルジマイシン(paldimycin)、リンコマイシン(lincomycirl)、バンコマイシン、スペクチノマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、メトロニダゾール、チニダゾール、オルニダゾール、アミフロキサシン、シノキサシン、シプロフロキサシン、ジフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、テマフロキサシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ロリテトラサイクリン、ニトロフラントイン、ナリジクス酸、ゲンタマイシン、リファンピシン、アミカシン、ネチルミシン、イミペネム、シラスタチン、クロラムフェニコール、フラゾリドン、ニフロキサジド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール(sulfametoxazol)、次サリチル酸ビスマス、コロイド状次クエン酸ビスマス、グラミシジン、メシリナム、クロキシキン(cloxiquine)、クロルヘキシジン、ジクロロベンジルアルコール、メチル-2-ペンチルフェノールまたはこれらのいずれかの組合せが含まれるが、これらには限定されない。
【0025】
適切な抗炎症性化合物には、ステロイド性構造および非-ステロイド性構造の両方が含まれる。ステロイド性抗炎症性化合物の適切な限定的ではない例は、ヒドロコルチゾン、コルチゾール、ヒドロキシルトリアムシノロン(hydroxyltriamcinolone)、α-メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン(dichlorisone)、酢酸ジフロラゾン(diflorasone diacetate)、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン(fluadrenolone)、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル(flucortine butylesters)、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン(fluprednylidene))、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド(flucetonide)、フルドロコルチゾン、酢酸ジフルオロゾン(difluorosone diacetate)、フルラドレノロン(fluradrenolone)、フルドロコルチゾン、酢酸ジフロラゾン(diflurosone diacetate)、フルオシノロン、フルラドレノロン(fluradrenolone)アセトニド、メドリゾン、アムシナフェル(amcinafel)、アムシナフィド、βメタゾンおよびそのエステルの平衡、クロロプレドニゾン、酢酸クロロプレドニゾン(chlorprednisone)、クロコルテロン(clocortelone)、クレスシノロン(clescinolone)、ジクロリゾン(dichlorisone)、ジフルプレドナート、フルクロロニド(flucloronide)、フルニソリド、フルオロメトロン(fluoromethalone)、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸ヒドロコルチゾンシクロペンチル、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンなどのコルチコステロイドである。上述したステロイド性抗炎症性化合物の混合物もまた使用することができる。
【0026】
非-ステロイド性抗炎症性化合物の限定的ではない例には、ナブメトン、セレコキシブ、エトドラク、ニメスリド、アパゾン(apasone)、金;ピロキシカム、イソキシカム(isoxicam)、メロキシカム、テノキシカム、スドキシカム(sudoxicam)、およびCP-14,304などのオキシカム;アスピリン、ジサルシド、ベノリラート、トリリサート、サファピリン(safapryn)、ソルプリン(solprin)、ジフルニサル、およびフェンドサール(fendosal)などのサリチル酸;ジクロフェナク、フェンクロフェナック、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク(furofenac)、チオピナック、ジドメタシン、アセメタシン(acematacin)、フェンチアザク、ゾメピラック、クリンダナック(clindanac)、オキセピナック、フェルビナク、およびケトロラックなどの酢酸誘導体;メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム(niflumic)酸、およびトルフェナム酸などのフェナム酸;イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン(indopropfen)、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、およびチアプロフェン酸などのプロピオン酸誘導体;およびフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、およびトリメタゾン(trimethazone)などのピラゾール;が含まれる。
【0027】
抗-炎症物質により包含される様々な化合物は、当業者に周知である。非-ステロイド性抗炎症性化合物の化学構造、合成、副作用などの詳細な開示については、Anti-inflammatory and Anti-Rheumatic Drugs, K. D. Rainsford, Vol. I-III, CRC Press, Boca Raton, (1985)、およびAnti-inflammatory Agents, Chemistry and Pharmacology 1, R. A. Scherrer, et al., Academic Press, New York (1974)を含む標準的なテキストを参照することができ、これらのそれぞれを参考文献として本明細書中に援用する。
【0028】
これらの非-ステロイド性抗炎症性化合物の混合物を、これらの化合物の薬理学的に許容可能な塩およびエステルとともに、利用することもできる。
さらに、いわゆる“天然”抗炎症性化合物が有用である可能性がある。その様な化合物は、天然供給源(例えば、植物、菌類、微生物の副産物)からの適切な物理的分離および/または化学的分離により、抽出物として適切に得ることができる。そのような化合物の適切な限定的ではない例には、キャンデリラワックス、αビサボロール、アロエベラ、マンジスタ(ルビア(Rubia)属の植物、特にRubia cordifoliaから抽出したもの)、およびグガル(Guggal)(コンミフォラ(Commiphora)属の植物、特にCommiphora mukulから抽出したもの)、コーラ(kola)抽出物、カモミール、カリブヤギ(sea whip)抽出物、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、およびこれらの誘導体(例えば、塩およびエステル)を含むリコリス(植物属/種Glycyrrhiza glabra)科の化合物、が含まれる。上述した化合物の適切な塩には、金属塩およびアンモニウム塩が含まれる。適切なエステルには、これらの酸のC2〜C24飽和または不飽和エステル、好ましくはC10〜C24、より好ましくはC16〜C24が含まれる。上記の具体的な例には、油溶性リコリス抽出物、グリチルリチン酸およびグリチルレチン酸それ自体、グリチルリチン酸1アンモニウム、グリチルリチン酸1カリウム、グリチルリチン酸2カリウム、1-β-グリチルレチン酸、ステアリルグリチルレチン酸、および3-ステアリルオキシ-グリチルレチン酸、および3-スクシニルオキシ-β-グリチルレチン酸2ナトリウムが含まれる。
【0029】
一般的に、抗-炎症性非-ステロイド性薬剤は、疼痛緩和をもたらすため、疼痛抑制物質の定義に含まれる。さらに、適切な疼痛抑制物質には、その他のタイプの化合物、例えば、オピオイド(例えば、モルヒネおよびナロキソンなど)、局所麻酔薬(例えば、リドカインなど)、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、α-アドレナリン受容体アゴニスト、アデノシン、カンナビノイド(canabinoids)、コリン作動性受容体アゴニストおよびGABA受容体アゴニスト、および様々なニューロペプチドが含まれる。様々な鎮痛剤についての詳細な検討は、Sawynok et al., (2003) Pharmacological Reviews, 55:1-20に提示され、この文献の内容を参照として本明細書に援用する。
【0030】
適切な細胞には、幹細胞、例えば、胚性幹細胞、または成体幹細胞であって都合よくは患者の血液または骨髄に由来するか、または患者と免疫学的に適合することが好ましい同種異系供給源に由来することができるもの、が含まれるが、これらには限定されない。その他の適切な細胞には、軟骨形成性前駆細胞または骨形成性前駆細胞が含まれてもよい。当業者であれば、細胞が遺伝子的に修飾されていてもよいことを理解するだろう(例えば、特定のタンパク質を過剰発現するもの、または特定のタンパク質の発現が阻害されるもの)。そのような遺伝的に修飾された細胞を作製する方法は、当業者の知識および経験の範囲内である。
【0031】
適切な核酸配列には、タンパク質性の性質の少なくとも1種の生物活性因子をコードするcDNA配列が含まれるが、これらには限定されない。これらのcDNAは、それぞれのベクター中(例えば、AAV)に含まれる可能性がある。別の態様において、核酸配列は、siRNAまたはshRNAまたはそのようなsiRNAまたはshRNAをコードする核酸配列であってもよい。これらのsiRNAおよびshRNAは、特定の遺伝子(例えば、TNF、IL-1、IL-6、NogginおよびChordin等のBMP阻害剤タンパク質などの炎症性タンパク質遺伝子や、細胞内BMP阻害剤SMADSなど)の発現を阻害することが好ましい態様において使用することができる。当業者であれば、それらの遺伝子についてのヌクレオチド配列が、Genbankを含む(しかしこれに限定されない)公衆に利用可能なデータベースにおいて利用可能であることを理解するだろう。さらに、siRNA選択のための基準もまた、当該技術分野において記載されてきた。従って、当業者であれば、そのようなsiRNAまたはshRNAを調製する際に十分な知識および経験を有しているだろう。
【0032】
少なくとも1種の生物活性因子を組み込む方法は、当該技術分野において既知である。一態様において、骨間隙充填剤12は、移植前に、少なくとも1種の生物活性因子の溶液中に浸漬させることができる。いくつかの態様において、少なくとも1種の生物活性因子の特徴に依存して、骨間隙充填剤を、移植前に1〜60分間、この溶液中に浸漬させることができる。少なくとも1種の生物活性因子を本発明の骨間隙充填剤の上に滴下し、ふりかけ、またはスプレーすることもできる。
【0033】
少なくとも1種の生物活性因子に細胞が含まれる場合、細胞を一定量の培養液(例えば、Dulbecco改変イーグル培地)中に再懸濁し、そして本発明の骨間隙充填剤とともに培養することができる。骨間隙充填剤の表面の特性および骨間隙充填剤の多孔性のため、細胞は、骨間隙充填剤の外部表面およびその内部空間に生息するだろう。最適な負荷条件(必要ならば、例えば、培養液組成、震盪)は、当業者により容易に決定することができる。さらに、骨間隙充填剤を患者の骨髄からの吸引物を用いて浸潤させ、その結果、骨髄細胞を骨間隙充填剤内部の空間または孔に生息させることができる。
【0034】
上述した態様のいずれかによる骨間隙充填剤を含むキット10には、さらに説明書セットが含まれていてもよい。場合によっては、供給される骨間隙充填剤12に少なくとも1種の生物活性剤が含まれない場合、このキット10は少なくとも1種の生物活性剤とともに別個に供給することができる。骨間隙充填剤12のための保存条件と少なくとも1種の生物活性因子のための保存条件が異なる可能性があるため、そのような態様が好ましい場合もある。
【0035】
説明書セットには、このキットの安全性についての情報、および効果的な調製および使用についての情報が含まれる。例えば、この情報には、骨間隙充填剤の送達のためのガイドラインおよび少なくとも1種の生物活性因子を骨間隙充填剤中に取り込むためのガイドラインが含まれていてもよい。当業者であれば、説明書セットを、書面の説明書、録音の説明書、ビデオ記録の説明書、デジタル媒体、およびこれらの組合せを含む(しかしこれらに限定されない)複数の形式で提供することができることを理解するだろう。
【0036】
特定の側面において、本明細書中に記載される骨間隙充填剤を、椎体間固定術などの脊椎固定術用途、顎増強(ridge augmentation)などの口腔顎顔面用途、頭蓋欠損の修復、腸骨稜埋め戻し、寛骨臼欠損、および脛骨プラトーおよび長骨欠損の修復、において送達することができる。そのような方法を使用して、外傷(開放骨折および閉鎖骨折を含む)、疾患、または先天性(cogenital)欠損、などによって生じる、これらの骨またはその他の骨における大きなまたは小さな欠損を治療することができる
本願明細書中で引用される全ての特許文献および非特許文献は、全ての文献が個別に参照により援用されるのと同様の効果で、参照により明細書中に援用される。
【0037】
本明細書中の発明は、特定の態様を参照して記載されたが、これらの態様は、本発明の原理および応用について単に説明に役立つのみのものであることを理解すべきである。従って、実例としての態様に対して多数の修飾を施すことができること、そして以下の特許請求の範囲により定義された本発明の思想および範囲から離れることなく、その他の配置を創作することができること、を理解すべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン、リン酸カルシウム、および少なくとも1種の安定化剤を含む、骨間隙充填剤。
【請求項2】
コラーゲンの乾燥重量が、骨間隙充填剤の重量の約5%〜約30%であり;
リン酸カルシウムの重量が、骨間隙充填剤の重量の約55%〜約94%であり;そして
少なくとも1種の安定化剤の重量が、骨間隙充填剤の重量の約1%〜約15%である;
請求項1の骨間隙充填剤。
【請求項3】
少なくとも1種の安定化剤が、硫酸カルシウム、アルギネート、キトサン、ヒアルロン酸、ゼラチン、フィブリン、エラスチン、シルク、およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項1の骨間隙充填剤。
【請求項4】
少なくとも1種の安定化剤の重量が、骨間隙充填剤の重量の約2%〜約5%である、請求項1の骨間隙充填剤。
【請求項5】
有効量の少なくとも1種の生物活性剤をさらに含む、請求項1の骨間隙充填剤。
【請求項6】
少なくとも1種の生物活性剤が、成長因子、抗炎症性化合物、抗生物質、鎮痛剤化合物、細胞、核酸配列、およびこれらのいずれかの組合せ、からなる群から選択される、請求項5の骨間隙充填剤。
【請求項7】
成長因子が、BMP-2タンパク質またはその機能的フラグメントである、請求項6の骨間隙充填剤。
【請求項8】
細胞が遺伝的に修飾された細胞を含む、請求項6の骨間隙充填剤。
【請求項9】
骨間隙充填剤が多孔質構造を提供する、請求項1の骨間隙充填剤。
【請求項10】
コラーゲンが可溶性コラーゲンおよび線維状コラーゲンを含む、請求項1の骨間隙充填剤。
【請求項11】
可溶性コラーゲンの乾燥重量が、コラーゲンの乾燥重量の約20%〜約40%であり;そして
不溶性線維状コラーゲンの乾燥重量が、コラーゲンの乾燥重量の約60%〜約80%である;
請求項10の骨間隙充填剤。
【請求項12】
コラーゲン;
リン酸カルシウム材料;および
安定化剤;
を含むキット。
【請求項13】
コラーゲンの乾燥重量が、骨間隙充填剤の重量の約5%〜約30%であり;
リン酸カルシウムの重量が、骨間隙充填剤の重量の約55%〜約94%であり;そして
少なくとも1種の安定化剤の重量が、骨間隙充填剤の乾燥重量の約1%〜約15%である;
請求項12のキット。
【請求項14】
有効量の少なくとも1種の生物活性剤をさらに含む、請求項12のキット。
【請求項15】
少なくとも1種の生物活性剤が、成長因子、抗炎症性化合物、抗生物質、鎮痛剤化合物、核酸配列、細胞、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項14のキット。
【請求項16】
成長因子が、BMP-2タンパク質、その機能的フラグメント、rhBMP-2タンパク質、その機能的フラグメント、またはそれらの組合せである、請求項15のキット。
【請求項17】
送達手段をさらに含む、請求項12のキット。
【請求項18】
送達手段がシリンジを含む、請求項17のキット。
【請求項19】
コラーゲンおよびリン酸カルシウム材料が、凍結乾燥されたスポンジの形状で一緒に混合される、請求項12のキット。
【請求項20】
凍結乾燥されたスポンジが安定化剤をさらに含む、請求項18のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−520788(P2010−520788A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552903(P2009−552903)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/056169
【国際公開番号】WO2008/109807
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】