説明

骨障害の治療のためのGDF−9/BMP−15モジュレータ

本発明は、骨変性疾患を治療または予防する方法を提供する。治療または予防される障害としては、例えば、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症、骨髄腫、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、ならびに慢性腎疾患、副甲状腺機能亢進症、およびコルチコステロイドの長期使用に関連する骨変性疾患が挙げられる。開示された治療法は、哺乳動物に、GDF−9またはBMP−15の阻害物質を:(1)骨変性疾患の治療または予防;(2)骨の老化の遅延;(3)失われた骨の回復;(4)新生骨形成の刺激;および/または(5)骨量および/または骨質の維持に有効な量で投与することを含む。本発明はまた、増加した骨密度または骨量により特徴づけられる骨障害を治療するために、GDF−9作動物質またはBMP−15作動物質を投与する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年3月28日に出願された米国仮出願番号60/787,246(その開示は出典明示により本発明の一部とされる)について優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明の技術分野は、骨障害、たとえば骨粗鬆症、骨減少症、骨軟化症、骨形成異常症、および骨折の治療におけるGDF−9およびBMP−15モジュレータの治療的使用に関する。
【0003】
形質転換増殖因子−ベータ(TGF−β)超科のメンバーは、重要な増殖調節および形態形成特性を有する(Kingsley et al.、Genes Dev.8:133−146(1994);Hoodless et al.、Curr.Topics Microbiol.Immunol.228:235−272(1998))。近年、2つのTGF−β超科メンバー:成長および分化因子9(GDF−9)および骨形態形成タンパク質−15(BMP−15、GDF−9bとも呼ばれる;McNatty et al.、Reprod.128:379−386(2004);Juengel et al.、Hum Reprod.Upd.11:144−161(2005))の卵巣機能および受胎能における役割に関して大いに注目されている。
【0004】
GDF−9は、はじめて1993年に、卵巣において特異的に発現されるTGF−β超科の新規メンバーとして記載された(McPherron et al.、J.Biol.Chem.268:3444−3449(1993))。TGF−β科の他のメンバーと同様に、GDF−9は、シグナルペプチド、プロ領域、およびフリン様プロテアーゼ群に属する細胞内プロテアーゼにより前駆ペプチドから切断されるC末端成熟領域からなるプレプロペプチドとしてコード化される。GDF−9mRNAは、卵胞発生のすべての段階で卵母細胞中に存在し、一次卵胞段階から排卵後までに発現される(McPherronおよびLee、J.Biol.Chem.268:3444−3449(1993);McGrath et al.、Mol.Endocrinol.9:131−136(1995);Elvin et al.、Mol.Endocrinol.13:1035−1048(1999))。GDF−9が欠失した雌マウスは、一次卵胞段階での卵母細胞の発達の停止のために不妊である(Dong et al.、Nature 383:531535(1996);Carabatsos et al.、Dev.Biol.204:373−384(1998))。
【0005】
BMP−15は、GDF−9bとも呼ばれ、GDF−9の相同体をコード化するX結合遺伝子であって、成熟領域中のGDF−9に対して52%のアミノ酸同一性を有するものであることが判明した(Dube et al.、Mol.Endocrinol.12:1809−1817(1998);Laitinen et al.、Mech.Dev.78:135−140(1998))。BMP−15発現はGDF−9の発現と同じであるが、GDF−9ノックアウトマウスにおけるGDF−9の非存在を補うことができない。BMP−15が欠失した雌マウスは低受胎性であり、産仔サイズおよび月あたりの産仔数が減少する(Yan et al.、Mol.Endocrinol.15:854−866(2001))。ヒツジにおいては、GDF−9およびBMP−15はどちらも受精に必須である(Juengel et al.、Bio.Reprod.67:1777−1789(2002))。ヒツジにおいて天然に存在するBMP−15突然変異は、ホモ接合雌における不妊の原因である。BMP−15はまた、人間の女性の受精において重要な役割を果たす。その理由は、BMP−15突然変異が女性における卵巣発育異常と関連するからである(Di Pasquale et al.、Am.J.Hum.Genet.75:106−111(2004))
【0006】
GDF−9およびBMP−15は、今日まで記載されているTGF−βファミリーのメンバーの内、成熟領域において7つの特徴的な保存システイン残基のうちの4つが欠失している点で独自のものである(Dube et al.、Mol.Endocrinol.12:1809−1817(1998);Laitinen et al.、Mech.Dev.78:135−140(1998))。第四のシステインは特に重要である。その理由は、これがほとんどのTGF−βファミリーの成熟二量体のサブユニット間のジスルフィド結合の形成に関与するためである。GDF−9およびBMP−15は、このシステインが欠失し、共有結合した二量体を形成しないが、研究により、GDF−9およびBMP−15はどちらもインビトロでホモ二量体ならびにヘテロ二量体を形成することが判明している(Liao et al.、J.Biol.Chem.278:3713−3719(2003);Liao et al.、J.Biol.Chem.279:17391−17396(2004))
【0007】
GDF−9およびBMP−15両方の発現は、哺乳動物において増殖する卵胞の卵母細胞に主に限定される。この発現パターンと一致して、これらの遺伝子において突然変位を有する動物、例えばヒツジおよびマウスにおいて、卵巣の外側では影響は見られず、GDF−9またはBMP−15ペプチドで免疫化されたヒツジにおいても見られない(Galloway et al.、Nat.Genet.25:279−283(2000);Hanrahan et al.、Biol.Reprod.121:843−852(2004);Dong et al.、Nature 383:531−535(1996);Yan et al.、Mol.Endocrinal.15:854−866(2001);Juengel et al.、Biol.Reprod.70:557−561(2004);およびElvin et al.、Mol.Endocrinol.13:1018−1034(1999))。このように、これらの因子は、女性不妊の新規臨床的治療法を開発する目的、女性用の新規非ステロイド系避妊薬を開発するため、および農業環境における受胎能を調節するためなどをはじめとする、非卵巣副作用の危険性が低い受胎能の操作の魅力的な目標と考えられてきた(例えば、米国特許第6,030,617号参照)。
【0008】
主に卵巣に限定されるが、GDF−9およびBMP−15発現は、下垂体および睾丸を包含する非卵巣組織において観察されてきた(Fitzpatrick et al.、Endocrinol.139:2571−2578(1998);Aaltonen et al.、J.Clin.Endocrinol.Metab.84:2744−2750(1999);Eckery et al.、Mol.Cell.Endocrinol.192:115−126(2002);OtsukaおよびShimasaki、Endocrinol.143:4938−4941(2002))。しかしながら、これらのタンパク質の発現はおもに卵巣に限定されているので、GDF−9およびBMP−15の非生殖機能および使用はあまり注目を集めなかった。
【0009】
多くの症状は、特に高齢者および/または閉経後の女性において、骨の損失と関連する。例えば、骨粗鬆症は、骨格の骨量およびミネラル密度の減少、骨の構造劣化および対応する骨脆砕性の増加、ならびに骨折しやすさにより特徴づけられる、衰弱性疾患である。ヒトにおける骨粗鬆症は、臨床的骨減少症が先行し、米国において約2500万人においてみられる状態である。
【0010】
成年期全体にわたって、骨は骨形成および吸収の結合プロセスを通してターンオーバーを継続的に経験する。骨吸収には、骨吸収細胞、破骨細胞(単核食細胞により形成される)が関与する。失われた骨と置き換わる新しい骨は、造骨細胞、骨芽細胞(間葉性間質細胞により形成される)により堆積される。再形成プロセスに関与する様々な他の細胞種は、全身性因子(例えば、ホルモン、リンホカイン、成長因子、およびビタミン)および局所因子(例えば、サイトカイン、接着分子、リンホカイン、および成長因子)により厳重に抑制される。骨再形成プロセスの適切な時空調整は、骨量および完全性の維持に必須である。多くの骨変性疾患は、骨再形成サイクルにおける不均衡と関連があり、その結果、骨粗鬆症、骨増殖(骨軟化症)、骨形成異常症、およびパジェット病などの代謝性骨疾患をはじめとする異常な骨量の低下(骨減少症)が起こる。
【0011】
現在、骨粗鬆症の治療に利用可能な2種の薬剤療法が存在する。第一の最も一般的な方法は、骨組織の再吸収を減少させるホルモン療法の使用である。エストロゲン代償療法(ERT)はさらなる劣化を予防し、かくして骨折の可能性を軽減することが知られている。しかしながら、長期エストロゲン療法は子宮癌、子宮内膜癌、乳癌、頻発性膣出血、および血栓症の危険性と関連すると考えられているので、治療薬としてのエストロゲンの使用は限定される。これらの重大な副作用のために、多くの女性はこの治療を回避することを選択する。さらに、この種類の治療法に同意する男性はほとんどいない。骨粗鬆症に対する第二の主な治療法は、ビスホスホネート、特に、アレンドロネート、リセドロネート、およびイバンドロネートの使用である。試験により、これらの化合物は骨粗鬆症の患者において骨ミネラル濃度を一貫して増大させることがわかるが、ビスホスホネートによる骨粗鬆症の治療に関しては、食道および上部胃腸管の刺激をはじめとする重大な問題がある。
【特許文献1】米国仮出願番号60/787,246公報
【特許文献2】米国特許第6,030,617号
【非特許文献1】Kingsley et al.、Genes Dev.8:133−146(1994)
【非特許文献2】Hoodless et al.、Curr.Topics Microbiol.Immunol.228:235−272(1998)
【非特許文献3】McNatty et al.、Reprod.128:379−386(2004)
【非特許文献4】Juengel et al.、Hum Reprod.Upd.11:144−161(2005)
【非特許文献5】McPherron et al.、J.Biol.Chem.268:3444−3449(1993)
【非特許文献6】McPherronおよびLee、J.Biol.Chem.268: 3444−3449(1993)
【非特許文献7】McGrath et al.、Mol.Endocrinol.9:131−136(1995)
【非特許文献8】Elvin et al.、Mol.Endocrinol.13:1035−1048(1999)
【非特許文献9】Dong et al.、Nature 383:531535(1996)
【非特許文献10】Carabatsos et al.、Dev.Biol.204: 373−384(1998)
【非特許文献11】Dube et al.、Mol.Endocrinol.12:1809−1817(1998)
【非特許文献12】Laitinen et al.、Mech.Dev.78:135−140(1998)
【非特許文献13】Yan et al.、Mol.Endocrinol.15:854−866(2001)
【非特許文献14】Juengel et al.、Bio.Reprod.67:1777−1789(2002)
【非特許文献15】Di Pasquale et al.、Am.J.Hum.Genet.75:106−111(2004)
【非特許文献16】Dube et al.、Mol.Endocrinol.12:1809−1817(1998)
【非特許文献17】Laitinen et al.、Mech.Dev.78:135−140(1998)
【非特許文献18】Liao et al.、J.Biol.Chem.278:3713−3719(2003)
【非特許文献19】Liao et al.、J.Biol.Chem.279:17391−17396(2004)
【非特許文献20】Galloway et al.、Nat.Genet.25:279−283(2000)
【非特許文献21】Hanrahan et al.、Biol.Reprod.121:843−852(2004)
【非特許文献22】Dong et al.、Nature 383:531−535(1996)
【非特許文献23】Yan et al.、Mol.Endocrinal.15:854−866(2001)
【非特許文献24】Juengel et al.、Biol.Reprod.70:557−561(2004)
【非特許文献25】Elvin et al.、Mol.Endocrinol.13:1018−1034(1999)
【非特許文献26】Fitzpatrick et al.、Endocrinol.139:2571−2578(1998)
【非特許文献27】Aaltonen et al.、J.Clin.Endocrinol.Metab.84:2744−2750(1999)
【非特許文献28】Eckery et al.、Mol.Cell.Endocrinol.192:115−126(2002)
【非特許文献29】OtsukaおよびShimasaki、Endocrinol.143:4938−4941(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、骨障害を治療し、予防するための新規治療法を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
GDF−9は、皮質骨および骨梁ミネラル濃度の両方を包含する骨密度に影響を及ぼす。従って、本発明は、GDF−9のモジュレータを投与することにより、骨障害を治療または予防するためのGDF−9の調節法を提供する。本発明はさらに、BMP−15のモジュレータを投与することにより、骨障害を治療または予防するための方法も提供する。本発明はさらに、哺乳動物における骨障害の治療または予防用医薬を製造するための、治療上有効な量のGDF−9またはBMP−15のモジュレータを含む組成物の使用を提供する。
【0014】
一つの実施形態においては、骨変性疾患を治療または予防するために、GDF−9の阻害物質が投与される。別の実施形態においては、骨変性疾患を治療または予防するために、BMP−15の阻害物質が投与される。いくつかの実施形態において、GDF−9またはBMP−15のモジュレータは、骨変性疾患を治療または予防するための医薬を製造するために使用される。治療または予防される障害としては、例えば、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症、骨髄腫(osteomyeloma)、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、再生不良性骨障害、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫および転移後に骨が脆くなることが挙げられる。治療または予防される障害としてはさらに、高カルシウム血症、慢性腎疾患(末期腎不全を包含する)、腎臓透析、原発性または二次性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン病、およびコルチコステロイドまたはGnRH作動物質もしくは拮抗物質の長期使用と関連する骨変性疾患が挙げられる。
【0015】
本発明の方法は、GDF−9またはBMP−15阻害物質を:
(1)骨変性疾患の治療または予防;
(2)骨の老化の遅延;
(3)失われた骨の回復;
(4)新生骨形成の刺激;および/または;
(5)骨(骨量および/または骨質)の維持に有効な量で哺乳動物に投与することを含む。本発明はさらに、
(1)骨変性疾患の治療または予防;
(2)骨の老化の遅延;
(3)失われた骨の回復;
(4)新生骨形成の刺激;および/または;
(5)骨(骨量および/または骨質)の維持に有効な医薬を製造するための、GDF−9またはBMP−15の阻害物質を含む組成物の使用を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、モジュレータは、例えば、抗GDF−9抗体、抗BMP−15抗体、抗GDF−9レセプター抗体、抗BMP−15レセプター抗体、可溶性GDF−9レセプター、可溶性BMP−15レセプター、優性阻害GDF−9ペプチド、または優性阻害BMP−15ペプチドをはじめとする、GDF−9またはBMP−15の阻害物質である。ある実施形態において、阻害物質は、例えば、siRNAをはじめとするGDF−9またはBMP−15の発現を減少させる。
【0017】
本発明はさらに、骨変性疾患を治療するためのGDF−9またはBMP−15の阻害物質の有効性を評価するための分析を提供する。本発明の方法において使用される投与法、組成物および装置も提供される。
【0018】
本発明はまた、GDF−9またはBMP−15の作動物質を投与することにより、骨密度を減少させる方法、および骨密度を減少させる医薬を製造するためのGDF−9またはBMP−15の作動物質の使用を提供する。治療される障害としては、例えば、硬化骨形成異常、骨格の骨形成異常、例えば、大理石骨病または骨硬化症および骨内膜骨化過剰症;Camurati−Engelmann病(TGF−βシグナル伝達の増加と関連する);Van Buchen病および骨硬化症(BMPシグナル伝達の増加をもたらす);常染色体優性骨硬化症;常染色体優性大理石骨病I型;ならびにWorth病が挙げられる。従って、本発明の方法および使用は、哺乳動物に、GDF−9またはBMP−15作動物質を、骨形成異常障害を治療または予防するために有効な量で投与することを包含する。
【0019】
本発明のさらなる目的および利点は以下の説明において一部記載され、この記載から一部明らかになるか、あるいは本発明の実施によりわかるであろう。本発明の目的および利点は、添付の請求の範囲において具体的に指摘される要素および組み合わせにより実現され、達成されるであろう。
【0020】
前記の一般的説明および以下の詳細な説明は、例示および説明のみであって、主張されるように、本発明を限定するものではないと理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、骨障害を治療または予防するために、GDF−9またはBMP−15のモジュレータを哺乳動物に投与する方法を提供する。
【0022】
本発明の方法は、骨障害を治療または予防するために、かかる治療を必要とする任意の哺乳動物、具体的には、ヒト、霊長類、サル、齧歯類、ヒツジ、ウサギ、イヌ、モルモット、ウマ、ウシ、およびネコにおいて用いることができる。
【0023】
ある実施形態において、GDF−9阻害物質またはBMP−15阻害物質は、骨変性疾患を治療または予防するために投与される。GDF−9阻害物質またはBMP−15阻害物質の投与により治療または予防される障害としては、例えば、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症(例えば、閉経後、ステロイド誘発性、老年性、またはチロキシン使用誘発性)、骨髄腫、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫および転移後に骨が脆くなることが挙げられる。治療または予防される障害としては、さらに、高カルシウム血症、慢性腎疾患、原発性または二次性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン病、コルチコステロイドまたはGnRH作動物質もしくは拮抗物質の長期使用、および栄養失調に関連する骨変性疾患が挙げられる。
【0024】
他の実施形態において、GDF−9作動物質またはBMP−15作動物質は、例えば、過度の骨成長または骨格の異常増殖により特徴づけられる障害、例えば、硬化骨形成異常をはじめとする骨障害を治療または予防するために投与される。この障害は、「骨硬化症」と称し、一般的な骨格の異常増殖、巨人症、脳神経の取り込み、頭蓋骨の頭蓋冠の拡張による頭蓋内圧の増加、ならびに骨梁および皮質骨両方の厚さおよび密度の増加により特徴づけられる進行性疾患である。過度の骨成長または骨格の異常増殖により特徴づけられる障害としては、これに限定されないが、硬化骨形成異常、骨格の骨形成異常、例えば、骨硬化症、大理石骨病、および骨内膜骨化過剰症;Camurati−Engelmann病;Van Buchen病および骨硬化症;常染色体優性骨硬化症;常染色体優性大理石骨病I型;およびWorth病が挙げられる。Wesenbeck et al.、Am.J.HumanGenet.72:763−771(2003)、およびその引例参照。
【0025】
一つの実施形態において、本発明は、閉経後の女性における骨変性疾患を治療または予防する方法を提供する。本発明の一つの実施形態は、ステロイド誘発性骨粗鬆症の個体における骨変性疾患を治療または予防する方法を提供する。本発明はまた、個体における老年性骨粗鬆症を治療または予防する方法も提供する。本発明の別の実施形態は、個体において、チロキシンの使用またはグルココルチコイドの使用により誘発される骨粗鬆症を治療または予防する方法を提供する。
【0026】
本発明は、哺乳動物において、受胎能を低下させ、同時に、骨の老化を遅らせるか、骨を維持するか、失われた骨を回復するか、または新生骨形成を刺激する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、女性の受胎能を低下させ、骨変性疾患を同時に治療または予防する方法を提供する。
【0027】
本発明はさらに、男性において骨変性疾患を治療または予防する方法も提供する。
【0028】
開示される方法は、哺乳動物に、GDF−9の阻害物質またはBMP−15の阻害物質を:
(1)骨変性疾患の治療または予防;
(2)骨の老化の遅延;
(3)失われた骨の回復;
(4)新生骨形成の刺激;および/または
(5)骨(骨量および/または骨質)の維持に有効な量で投与する方法を包含する。
【0029】
本発明の方法は、骨梁および皮質骨における微細欠陥を治療するために使用できる。骨質は、例えば、骨の微細構造的完全性を評価することにより決定することができる。
【0030】
一般に、GDF−9またはBMP−15のモジュレータは、少なくとも2、4、6、8、10、12、20、もしくは40週間または少なくとも1、1.5、もしくは2年の期間から最高で対象の寿命までの期間、繰り返し投与される。ある実施形態において、単回ボーラス投与を、以下に詳細に記載するように、例えば、注射可能であるかまたは移植可能な組成物の投与により投与することができる。
【0031】
一般に、GDF−9の阻害物質またはBMP−15の阻害物質をはじめとする、本発明の方法において有用なGDF−9およびBMP−15のモジュレータは、10−8から10−7;10−7から10−6;10−6から10−5;または10−5から10−4g/kgの間の用量で投与することができる。1つの動物モデルにおいて達成される治療的に有効な用量は、ヒトを包含する別の動物において使用するために、当該分野において公知の変換係数を用いて変換することができる(例えば、Freireich et al.(1966)Cancer Chemother.Reports、50(4):219−244参照)。
【0032】
本発明の方法において用いられるモジュレータの正確な用量は、所望の結果に基づいて経験的に決定される。結果の例としては:(a)骨変性疾患が治療または予防される、(b)骨の老化が遅延される;(c)失われた骨が回復される;(d)新規骨成長が形成される;および/または(e)骨量および/または骨質が維持される。例えば、モジュレータは、骨の老化(例えば、骨量および/または骨ミネラル濃度の損失)を少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、または500%遅らせるために有効な量で投与される。
【0033】
本発明の一つの実施形態において、モジュレータは、卵巣の血中卵胞バリア(電荷およびサイズ選択的である)を克服しないで、骨密度に対して所望の治療効果をもたらすことができる(Hess et al.、Biol.Reprod.58:705−711(1998))。このようなモジュレータの差動効果は、例えば全身投与後に、異なる組織におけるその電荷、および/またはその相対的有効濃度の関数であり得る。
【0034】
骨の老化に関連する結果は、骨梁の損失(骨梁穿孔);(骨幹端)皮質骨の損失;海綿骨の損失;骨ミネラル濃度の減少、骨ミネラル質の減少、骨再形成の減少;血清アルカリホスファターゼおよび酸ホスファターゼのレベルの増加;骨の脆弱性(骨折率の増加)、骨折治癒機転の減少に関して、GDF−9およびBMP−15のモジュレータの特異的効果により評価することもできる。骨量および骨質を評価する方法は、当該分野において公知であり、これに限定されないが、X線回折;DXA;DEQCT;pQCT、化学分析、密度分画、組織測光法、組織形態計測、および例えば、Lane et al.、J.Bone Min.Res.18:2105−2115(2003)において記載されている組織化学分析を包含する。皮質骨密度を決定するための一つの分析法はMicroCT分析である。pQCT測定後、例えば、大腿骨に関してScanco mCT40(Scanco Medical AG)を用いることにより、microCT評価を行うことができる。
【0035】
本発明はまた、カルセイン標識により骨形成を測定する方法も提供する。例えば、マウスに、組織採取前9日および2日にカルセインを注射(例えば、15mg/kg、0.1ml/マウス、s.c.)することができる。骨組織を、大腿骨と脛骨との両方、ならびに脊椎から集めることができる。カルセイン標識された石灰化骨層間の距離を測定するための骨サンプルの組織学的特性化を用いて、骨形成を評価する。
【0036】
本発明のさらなる用途は、骨インプラント、マトリックス、およびデポーシステムをコーティングするか、またはこれらの中に組み入れて、骨融合を促進するための、GDF−9および/またはBMP−15モジュレータの使用を包含する。かかるインプラントの例としては、歯科インプラントおよび関節置換インプラントが挙げられる。
【0037】
本発明はさらに、骨変性疾患の治療に関するGDF−9モジュレータまたはBMP−15モジュレータの有効性を評価するための分析を含む。
【0038】
このような分析は:
(1)モジュレータを哺乳動物(例えば、OVXラット)に、少なくとも2、4、6、または8週間の期間投与し;
(2)骨に対するモジュレータの効果を決定することを含み、
モジュレータに起因する骨(例えば、骨量および/または骨質)の老化の遅延は、このモジュレータが骨変性疾患の治療に有効であることを示し;モジュレータに起因する骨密度の減少は、このモジュレータが、硬化骨形成異常または不適切に上昇した骨量の障害の治療に有用であることを示す。
【0039】
GDF−9またはBMP−15のモジュレータは、骨変性疾患を包含する骨障害の1以上の動物モデルにおいて、および/またはヒトにおいて評価することができると理解される。骨減少症は、運動不足、低カルシウム食、高リン食、コルチコステロイドの長期使用、またはGnRH作動物質もしくは拮抗物質、卵巣機能の停止、または老化により誘発され得る。例えば、卵巣摘出(OVX)により誘発される骨減少症は、ヒト閉経後骨粗鬆症の十分に確立された動物モデルである。別の十分に有効なモデルは、コルチコステロイドの投与を含む。かかるモデルとしては:カニクイザル、イヌ、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット、ミニブタ、およびヒツジが挙げられる。骨粗鬆症の様々な動物モデルの総説については、例えば、Turner、Eur.CellsおよびMaterials 1:66−81(2001)参照。
【0040】
さらなるインビトロ試験は、培養物における骨芽細胞に対する影響、例えば、コラーゲンおよびオステオカルシン合成に対する影響またはアルカリホスファターゼおよびcAMP誘発のレベルに対する影響の評価を含む。適切なインビボおよびインビトロ試験は、例えば、米国特許第6,333,312号において記載されている。
I.GDF−9およびBMP−15モジュレータ
【0041】
GDF−9は、27アミノ酸シグナル配列および292アミノ酸プロペプチドを含む、約454アミノ酸(aa)(配列番号2)のプレプロポリペプチドとして合成される。GDF−9の成熟C末端フラグメントは、135アミノ酸の長さであり、ヌクレオチド配列分析により測定すると、約15.6kDの非グリコシル化分子量を有することが予想される。GDF−9シグナル伝達には、I型レセプターALK5(Mazerbourg et al.、Mol.Endocrinol.18:653−665(2004))およびII型レセプターBMPRII(Vitt et al.、Biol.Reprod.67:473−480(2002))が関与する。成熟ヒトGDF−9のアミノ酸配列は、配列番号2(GenBank受入番号NP_005251.1)内に含まれる。ヒトGDF−9野生型遺伝子の配列は、例えば、GenBank受入番号NM_005260、米国特許第5,821,056号;第6,191,261号;および第6,365,402号、ならびに米国特許公開番号2002/0127612および2004/0152143において開示されている。マウスGDF−9遺伝子のヌクレオチド配列は、GenBank受入番号NM_008110において見出され;ヌクレオチド29〜1354はマウスGDF−9タンパク質(GenBank受入番号NP_032136.1)をコード化する。ラットGDF−9遺伝子のヌクレオチド配列は、GenBank受入番号NM_021672において見出され;ヌクレオチド1〜1323は、ラットGDF−9タンパク質(GenBank受入番号NP_067704.1http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?val=NP_032136.1)をコード化する。
【0042】
BMP−15は、18アミノ酸シグナル配列および249アミノ酸プロペプチドを含む、約392アミノ酸(配列番号4;GenBank受入番号NP_005439.1)のプレプロポリペプチドとして合成され;ヌクレオチド残基1から1179は配列番号4をコード化する。BMP−15の成熟C末端フラグメントは、125アミノ酸の長さであり、アミノ酸残基268〜392のプレプロポリペプチドからなる。BMP−15シグナル伝達には、I型レセプターALK6およびII型レセプターBMPRIIが関与する(Moore et al.、 J.Biol.Chem.278:304−310(2003))。成熟ヒトBMP−15のアミノ酸配列は、配列番号4内に含まれる。ヒトBMP−15(GDF−9b)野生型遺伝子の配列は、例えば、GenBank受入番号NM_005448、米国特許第5,728,679号および第5,635,372号、および米国特許公開番号2004/0092007において開示されている。マウスBMP−15遺伝子のヌクレオチド配列は、GenBank受入番号NM_009757において見出され;ヌクレオチド358〜1536は、マウスBMP−15タンパク質(GenBank受入番号NP_033887)をコード化する。ラットBMP−15遺伝子のヌクレオチド配列は、GenBank受入番号NM_021670において見出され;ヌクレオチド247〜1422は、ラットBMP−15タンパク質(GenBank受入番号NP_067702.1)をコード化する。
【0043】
「GDF−9」および「BMP−15」なる用語は、本明細書において用いられる場合、それぞれ、GDF−9またはBMP−15の1以上のイソ型を意味する。この用語は、GDF−9またはBMP−15の完全長の未処理前駆体形態、ならびに翻訳後開裂から得られる成熟およびプロペプチド形態を意味する。「プロペプチド」なる用語は、GDF−9またはBMP−15前駆体タンパク質のアミノ末端ドメインから開裂されるポリペプチドを意味する。「成熟タンパク質」なる用語は、GDF−9またはBMP−15前駆体タンパク質のカルボキシ末端ドメインから開裂されるタンパク質を意味する。成熟GDF−9は、モノマー、ホモ二量体、または例えば、BMP−15とのヘテロ二量体として存在し得る。成熟BMP−15は、モノマー、ホモ二量体、またはヘテロ二量体として存在し得る。条件に応じて、成熟タンパク質は、ありとあらゆるこれらの異なる形態間に平衡を確立することができる。その生物学的に活性な形態において、成熟GDF−9は、「活性GDF−9」とも称し、成熟BMP−15は、「活性BMP−15」とも称する。この用語は、本明細書において議論されるように、成熟GDF−9またはBMP−15と関連する少なくともいくつかの生物学的活性を維持するGDF−9またはBMP−15の任意のフラグメントおよび変異体(修飾された配列を包含する)も意味する。本発明は、これに限定されないが、ヒト、ウシ、ニワトリ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、オナガザル、および魚をはじめとする全ての脊椎動物種からのGDF−9およびBMP−15のモジュレータを採用することができる。
【0044】
「GDF−9レセプター」および「BMP−15レセプター」なる用語は、特に指示がない限り、それぞれGDF−9またはBMP−15イソ型の少なくとも1つと結合する任意のレセプターを意味する。GDF−9およびBMP−15、ならびにそのレセプターの、構造的および機能的態様は、当該分野において周知である(例えば、Chang et al.、Endocrine Rev.23:787−823(2002);Moore et al.、Molec.Cell.Endocrinol.234:67−73(2005);Juengel et al.、Hum.Reprod.Update 11:144−161(2004)参照)。
A.GDF−9およびBMP−15阻害物質
【0045】
「GDF−9阻害物質」なる用語およびその同語源語、例えば、「拮抗物質」、「中和」、および「下方制御」とは、GDF−8の生物学的活性の阻害物質として作用する化合物(または必要に応じてその性質)を意味する。GDF−9阻害物質は、例えば、GDF−9と結合し、その活性を中和するか;GDF−9発現レベルを低下させるか;前駆体分子の安定性またはその活性な成熟形態の変換に影響を及ぼすか;1以上のレセプターに対するGDF−9の結合を妨害するか;またはGDF−9レセプターの細胞内シグナル伝達を妨害する。「直接GDF−9阻害物質」なる用語は、一般に、GDF−9の生物学的活性を直接下方制御する任意の化合物を意味する。GDF−9遺伝子、GDF−9転写物、GDF−9リガンド、またはGDF−9レセプターとの相互作用により、活性を下方制御するならば、分子はGDF−9の生物学的活性を「直接、下方制御」する。「中和する」、「中和」、「阻害」およびその同語源語は、同じ阻害物質の非存在下でのGDF−9の活性に比較しての、GDF−9阻害物質によるGDF−9の活性の減少を意味する。活性の減少は、好ましくは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上である。GDF−9の活性を変える化学物質を同定する方法、例えば、メス受胎能を変える方法は、米国特許第6,680,174号に記載されている。
【0046】
GDF−9の活性をブロックできるGDF−9阻害物質は、本発明の方法において有用である。かかる阻害物質は、GDF−9自体と相互作用することができる。別法として、阻害物質は、例えば、GDF−9レセプター(例えば、ALK5またはBMPRII)または他の結合パートナーと相互作用することができる。阻害物質は、GDF−9の結合後に、GDF−9のそのレセプターに対する結合および/またはif they block レセプターの活性を低下またはブロックすることができる。阻害物質は、もちろん、GDF−9および第二の因子(例えばそのレセプター)の両方と相互作用することができる。この点に関して、GDF−9阻害物質は、(GDF−9および/またはGDF−9レセプターに対する)抗体、修飾可溶性レセプター、他のタンパク質(GDF−9および/またはGDF−9レセプターと結合するものを包含する)、GDF−9の修飾形態またはそのフラグメント、プロペプチド、ペプチド、およびこれらの阻害物質の全ての模倣物質を包含する。非タンパク性阻害物質としては、例えば、小分子および核酸が挙げられる。
【0047】
「GDF−9活性」なる用語は、活性GDF−9タンパク質と関連する1以上の生理的成長調節または形態形成活性を意味する。GDF−9活性をインビボまたはインビトロで測定する分析法は当該分野において公知である。より頻繁に用いられるバイオアッセイの数例としては次のものが挙げられる:
(1)顆粒膜細胞におけるプロゲステロン、プロスタグランジンEの合成(米国特許第6,680,174;Elvin et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:10288−10293(2000));
(2)ヒアルロン酸合成酵素、シクロオキシゲナーゼ2(COX2)、ステロイド産生急性調節タンパク質(StAR)、黄体形成ホルモン(LH)レセプター、アクチビン/インヒビンβ、ホリスタチン、およびグレムリン(gremlin)をはじめとするGDF−9誘発性遺伝子の発現の誘発(米国特許第6,680,174号;Elvin et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:10288−10293(2000));
(3)ラット卵巣の顆粒膜細胞の増殖の誘発(Vitt et al.、Biol.Reprod.67:473−480(2002);Liao et al.、J.Biol.Chem.279:17391−17396(2004));
(4)マウス卵丘細胞の粘液分泌期および膨張(Buccione et al.、Dev.Biol.138:16−25(1990);Salustri et al.、Dev.Biol.138:26−32(1990);Elvin et al.、Mol.Endocrinol.13:1035−1048(1999));
(5)P19癌細胞におけるルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合したCAGAプロモーターの誘発(Mazerbourg et al.、Mol.Endocrinol.18:653−665(2004));
(6)機能的に適格な骨芽細胞への間葉性幹細胞の分化に対する影響(Jaiswal et al.、J.Cell.Biochem.64:295−312(1997));
(7)レセプター結合分析(Vitt et al.、Biol.Reprod.67:473−480(2002));
(8)Smadsタンパク質のリン酸化反応(Mazerbourg et al.、Mol.Endocrinol.18:653−665(2004));および
(9)レセプターリン酸化反応(Boyle et al.、Methods Enzymol.201B:110−149(1991);Luo et al.、Methods Enzymol.201:149−152(1991);Wrana et al.、Mol.Cell.Biol.14:944−950(1994);Weiser、et al.、EMBO J.14:2199−2208(1995))。
【0048】
「BMP−15阻害物質」なる用語およびその同語源語、例えば、「拮抗物質」、「中和」、および「下方制御」は、BMP−15の生物活性の阻害物質として作用する化合物(必要に応じてその性質)を意味する。BMP−15阻害物質は、例えば、BMP−15と結合し、その活性を中和するか;BMP−15発現レベルを低下させるか;前駆体分子の安定性またはその活性な成熟形態への変換に影響を及ぼすか;BMP−15の1以上のレセプターへの結合を妨害するか;またはBMP−15レセプターの細胞内シグナル伝達を妨害する。「直接的BMP−15阻害物質」なる用語は、一般に、BMP−15の生物活性を直接的に下方制御する任意の化合物を意味する。BMP−15遺伝子、BMP−15転写物、BMP−15リガンド、またはBMP−15レセプターとの相互作用により、活性を下方制御するならば、分子は、BMP−15の生物活性を「直接的に下方制御」する。用語「中和する」、「中和」、「阻害「およびその同語源語は、同阻害物質の非存在下でのBMP−15の活性と比較して、BMP−15によるBMP−15の活性の減少を意味する。活性の減少は、好ましくは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上である。
【0049】
BMP−15の活性をブロックできるBMP−15阻害物質は、本発明において有用である。かかる阻害物質は、BMP−15自体と相互作用することができる。別法として、阻害物質は、例えば、BMP−15レセプター(例えば、ALK6またはBMPRII)または他の結合パートナーと相互作用することができる。阻害物質は、BMP−15の結合後に、BMP−15のそのレセプターに対する結合および/またはif they block レセプターの活性を減少またはブロックすることができる。阻害物質は、もちろん、BMP−15および第二の因子(例えば、そのレセプター)の両方と相互作用することができる。この点に関して、BMP−15阻害物質としては、抗体(BMP−15および/またはBMP−15レセプター)、修飾可溶性レセプター、他のタンパク質(BMP−15および/またはBMP−15レセプターと結合するものを包含する)、BMP−15の修飾形態またはそのフラグメント、プロペプチド、ペプチド、およびこれらの阻害物質の全てを模倣物質を包含する。非タンパク性阻害物質としては、例えば、小分子および核酸が挙げられる。
【0050】
「BMP−15活性」なる用語は、活性BMP−15タンパク質と関連する1以上の生物的成長調節または形態形成活性を意味する。インビボおよびインビトロでBMP−15活性を測定する分析法は当該分野において公知である。より頻繁に使用されるバイオアッセイの数例としては、次のものが挙げられる:
(1)ラット卵巣顆粒膜細胞の増殖の誘発(Vitt et al.、Biol.Reprod.67:473−480(2002);Liao et al.、J.Biol.Chem.279:17391−17396(2004));
(2)顆粒膜細胞キットリガンドの発現の誘発(Otsuka et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:8060−8065(2002));
(3)卵胞刺激ホルモン(FSH)レセプター発現の阻害(Otsuka et al.、J.Biol.Chem.276:11387−11392(2001));
(4)FSH誘発性プロゲステロン合成の抑制(Otsuka et al.、J.Biol.Chem.275:39523−39528(2000));
(5)ステロイド産生急性調節タンパク質(StAR)、P450側鎖切断酵素(P450scc)、3β−ヒドロキシステロイドデヒドエロゲナーゼ(3β−HSD)、LHレセプター、および顆粒膜細胞におけるインヒビン/アクチビンサブユニット(βA、および登録商標B)のFSH誘発性発現の抑制(Moore et al.、Mol.Cell.Endocrinol.234:67−73(2005));
(6)間葉性幹細胞の機能的に適格な骨芽細胞への分化に対する影響(Jaiswal et al.、J.Cell.Biochem.64:295−312(1997);
(7)レセプター結合分析(Vitt et al.、Biol.Reprod.67:473−480(2002));
(8)Smadsタンパク質のリン酸化反応(Mazerbourg et al.、Mol.Endocrinol.18:653−665(2004));および
(9)レセプターリン酸化反応(Boyle et al.、Methods Enzymol.201B:110−149(1991);Luo et al.、Methods Enzymol.201:149−152(1991);Wrana et al.、Mol.Cell.Biol.14:944−950(1994);Weiser、et al.、EMBO J.14:2199−2208(1995))。
【0051】
GDF−9およびBMP−15阻害物質は、任意にグリコシル化するか、ペギル化(pegylated)するか、または別の非タンパク性ポリマーと結合させてもよい。GDF−9またはBMP−15の阻害物質は、変更されたグリコシル化パターン(即ち、本来の、または天然のグリコシル化パターンから変更された)を有するように修飾してもよい。本明細書において用いられる場合、「変更」とは、本来の阻害物質と比較して、1以上の炭水化物部分が付加または欠失している、および/または1以上のグリコシル化部位が付加または欠失していることを意味する。グリコシル化部位の阻害物質への付加は、当該分野において周知のグリコシル化部位コンセンサス配列を含有するようにアミノ酸配列を変更することにより、達成することができる。炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、阻害物質のアミノ酸残基とグリコシドの化学的または酵素カップリングによる。これらの方法は、WO 87/05330、およびAplin et al.、(1981) Crit.Rev.Biochem.22:259−306(1981)において記載されている。レセプター上に存在する炭水化物部分の除去は、Hakimuddin Sojar et al.、(1987) Arch.Biochem.Biophys.259:52−57(1987);Edge et al.、(1981) Anal.Biochem.118:131−137(1981);およびThotakura et al.、(1987) Meth.Enzymol.138:350−359(1987)により記載されているように化学的または酵素により行うことができる。
【0052】
本発明の方法において有用なGDF−9およびBMP−15阻害物質は、検出可能または機能的標識で標識することもできる。検出可能な標識としては、放射性標識、例えば、125I、131Iまたは99Tcが挙げられ、これらは当該分野において公知の通常の化学反応を用いて阻害物質に結合させることができる。標識は、酵素標識、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含む。標識は、化学部分、例えば、ビオチンをさらに含み、これは、特異的な同種の検出可能な部分、例えば、標識されたアビジンとの結合により検出することができる。
1.抗体
【0053】
GDF−9活性を阻害する抗体を、本発明の方法において用いることができる。BMP−15活性を阻害する抗体も本発明において有用である。
【0054】
「抗体」なる用語は、本明細書において用いられる場合、イムノグロブリンまたはその一部を意味し、供給源、種の起源、産生法、および特性に関係なく、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。非制限的例として、「抗体」なる用語は、ヒト、オランウータン、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、およびニワトリ抗体を包含する。この用語は、これに限定されないが、多クローン性、単クローン性、単一特異性、多特異性、非特異性、ヒト化、ラクダ化(camelized)、一本鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、突然変異、およびCDR−グラフト化抗体を包含する。本発明に関して、特に記載しない限り、抗体フラグメントは、例えば、Fab、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAb、VHH(ナノ抗体(nanobodies)とも称する)、および抗原結合機能を保持する他の抗体フラグメントも包含する。
【0055】
抗体は、伝統的なハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein、Nature 256:495−499(1975))、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)、または抗体ライブラリーを用いたファージディスプレー技術(Clackson et al.、Nature 352:624−628(1991);Marks et al.、J.Mol.Biol.222:581−597(1991))により調製できる。様々な他の抗体産生技術については、Antibody:A Laboratory Manual、eds.Harlow et al.、Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参照。
【0056】
「抗原結合ドメイン」なる用語は、抗原の一部または全部と特異的に結合するか、または相補的である部分を含む抗体分子の一部を意味する。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定の部分とのみ結合する。「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体の抗原結合ドメインとの特異的相互作用に関与する抗原分子の一部である。抗原結合ドメインは、1以上の抗体可変ドメイン(例えば、Vドメインからなる、いわゆるFdフラグメント)により提供される。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(V)および抗体重鎖可変領域V)を含むことができる。ラクダおよびラマ(Camelidae、camelids)から得られる抗体は、重鎖のみにより形成され、軽鎖を欠いている単一種の抗体を包含する。かかる抗体の抗原結合部位は、VHHと称する1つのドメインである。これらは、「ラクダ化抗体」または「ナノ抗体」と称する。例えば、米国特許第5,800,988号、米国特許第6,005,079号、国際出願番号WO94/04678、および国際出願番号WO94/25591を参照(本発明の一部として参照される)。
【0057】
「レパートリー」なる用語は、ヌクレオチドの様々な集団、例えば、DNA、発現されたイムノグロブリンをコード化する配列から全体的にまたは部分的に誘導される配列を意味する。配列は、例えば、H鎖のV、D、およびJセグメントおよび、L鎖の例えば、VおよびJセグメントのインビボ転位により生成される。別法として、配列は、インビトロ刺激により、またどの転位が起こるかに応じて、細胞系から生成させることができる。別法として、配列の一部または全部は、例えば、未配列のVセグメントのDおよびJセグメントとの組み合わせ、ヌクレオチド合成、ランダム化突然変異生成、および米国特許第5,565,332号に開示されているような他の方法により、得ることができる。
【0058】
「特異的相互作用」または「特異的に結合する」などの用語は、2つの分子が生理学的条件下で比較的安定である複合体を形成することを意味する。この用語は、例えば、抗原結合ドメインが、多くの抗原により運ばれる特定のエピトープに対して特異的であり、この場合、抗原結合ドメインを有する抗体は、このエピトープを有する様々な抗原と結合することができる。このように、抗体は、例えば、GDF−9およびBMP−15の両者により媒介されるエピトープと結合する限り、GDF−9およびBMP−15と特異的に結合できる。
【0059】
特異的結合は、高親和性および低から中程度の結合能により特徴づけられる。非特異的結合は、通常、中から高結合能で、低親和性を有する。典型的には、結合は、親和性定数Kが10−1より高いか、または好ましくは10−1より高い場合に特異的と見なされる。必要ならば、非特異性結合は、結合条件を変えることにより、特異的結合に実質的に影響を及ぼすことなく、減少させることができる。このような条件は当該分野において公知であり、当業者は、通常の技術を用いて、適切な条件を選択できる。条件は、通常、抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合に許容される時間、非関連分子(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度等に関して定義される。
【0060】
「実質的に記載したとおりである」という表現は、関連するCDR、V、またはVドメインが、その配列が本明細書において記載されている特定の領域と同一であるか、または非常に類似しているかのいずれかであることを意味する。例えば、かかる置換は、CDR(H1、H2、H3、L1、L2、またはL3)の配列中の任意の5のアミノ酸のうちの1または2を含む。
【0061】
「単離された」なる用語は、その自然環境が実質的にない分子を意味する。例えば、単離されたタンパク質は、細胞物質または由来する細胞もしくは組織源からの他のタンパク質が実質的にない。この用語は、単離されたタンパク質が治療用組成物として投与されるために十分純粋である、即ち、少なくとも70%から80%(w/w)の純度、さらに好ましくは少なくとも80%〜90%(w/w)の純度、なお一層好ましくは90〜95%の純度;最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%(w/w)の純度の調製物を意味する。
A)GDF−9またはBMP−15に対する抗体
【0062】
前述の方法に従って、GDF−9タンパク質自体と特異的に結合する抗体を作製できる。これらの抗体は、GDF−9の活性を阻害するならば、例えば、GDF−9のそのレセプターとの結合をブロックするならば、本発明の方法において有効である。本発明において最も有効な抗体は、GDF−9/GDF−9レセプター複合体のGDF−9と特異的に結合する特性を有する。このような抗体は、成熟GDF−9と高親和力で結合でき、モノマー形態、ホモ二量体形態、および/またはヘテロ二量体形態の成熟タンパク質を、例えば、BMP−15と結合させることができる。
【0063】
GDF−9に対する抗体は、例えば、米国特許第6,191,261号に記載されているように、当該分野において記載されており、本発明において使用されることが想定される。
【0064】
GDF−9の中和抗体は、当該分野において記載されており、本発明において使用されることが想定される。mAb−GDF9−53は、特異的抗ヒトGDF−9中和単クローン性抗体である(Gilchrist et al.、Biol.Reprod.71:732−739(2004))。この抗体の免疫化ペプチドは、ヒトGDF−9のC末端に近いペプチド配列に対応する合成の32アミノペプチドであった。エピトープマッピングにより、mAb−GDF9−53が低分子4−aペプチド配列、EPGD(免疫化ペプチドの中程に位置する)を認識することが明らかになった。いくつかの脊椎動物種からのC末端GDF−9およびBMP−15アミノ酸配列の整列により、EPDG配列が種間で高度に保存されるが、BMP−15における対応する領域との類似性レベルは低いことがわかった。mAB−GDF9−53は、組換えマウスGDF−9について強力な免疫親和性を示し、BMP−15との非常に低い交差反応性を示した。Gilchrist et al.において記載されている中和活性を有する他の抗ヒトGDF−9抗体は、mAb−GDF9−22、mAb−GDF9−19、mAb−GDF9−37を包含する。
【0065】
前述の方法に従って、BMP−15タンパク質自体と特異的に結合する抗体を作製できる。これらの抗体は、BMP−15の活性を阻害するならば、例えば、BMP−15のそのレセプターとの結合をブロックするならば、本発明において有効である。本発明において最も有効な抗体は、BMP−15/BMP−15レセプター複合体のBMP−15と特異的に結合する性質を有する。かかる抗体は、成熟BMP−15を高親和力で結合し、モノマー形態、ホモ二量体形態、および/またはヘテロ二量体形態の成熟タンパク質を、例えば、GDF−9と結合させることができる。
【0066】
BMP−15に対する抗体は、例えば、米国特許公開番号2004/0267003および2004/0092007に記載されているように、当該分野において記載されており、本発明において使用されることが想定される。
B)GDF−9レセプターまたはBMP−15レセプターに対する抗体
【0067】
前述の方法に従って、GDF−9レセプターと結合する抗体を作製できる。これらの抗体は、GDF−9のそのレセプターとの結合をブロックするならば、またはGDF−9の結合後にレセプター活性をブロックするならば、本発明において有効である。抗体は、全レセプタータンパク質、または細胞外ドメインのみに対して作製することができる。抗体は、ALK5(Genbank受入番号NP_004603)、ALK5変異体、BMPRII(Genbank受入番号NP_001195)、BMPRII変異体、およびGDF−9の他のレセプターに対して作製できる。例えば、マウスALK5に対する多クローン性および単クローン性(クローン141229)抗体は、R and D Systems(Minneapolis、MN)から入手可能であり;マウスヒトBMPRIIに対する多クローン性および単クローン性(クローン73805)抗体は、R and D Systemsから入手可能である。
【0068】
同様に、BMP−15レセプターと結合する抗体を作製できる。これらの抗体は、BMP−15のそのレセプターとの結合をブロックするならば、またはBMP−15の結合後のレセプターの活性をブロックするならば、本発明において有効であろう。抗体は、全レセプタータンパク質に対して、または細胞外ドメインのみに対して作製できる。抗体は、ALK6(Genbank受入番号NP_001194)、ALK6変異体、BMPRII(Genbank受入番号NP_001195)、BMPRII変異体、およびBMP−15の他のレセプターに対して作製できる。例えば、マウスALK6多クローン性抗体は、RおよびD Systems(Minneapolis、MN)から入手可能であり、ヒト組換えALK−6/Fcキメラおよびマウス組換えALK−6/Fcキメラ抗体(RおよびD Systems、Minneapolis、MN)、およびヒト/マウスALK−6単クローン性抗体(クローン88614;RおよびD Systems、Minneapolis、MN))も同様である。
2.修飾された可溶性レセプター
【0069】
GDF−9の修飾された可溶性レセプターを本発明において用いることができる。Such modified 可溶性レセプターは、GDF−9レセプターの細胞外ドメイン(外部ドメイン(ectodomain)とも称する)、例えば、ALK5またはBMPRIIの全部または一部を含み得る。細胞外ドメイン、特異性フラグメントおよびレセプターの変異体の説明を包含するALK5レセプターのアミノ酸配列は、Genbank受入番号NP_004603において説明されている。
【0070】
一つの実施形態において、可溶性レセプターは、GDF−9ならびにBMP−15の両方のレセプターである、BMPRIIの細胞外ドメインの全部または一部を含み得る。細胞外ドメイン、特異性フラグメントおよびレセプターの変異体の説明を包含するBMPRIIのアミノ酸配列は、Genbank受入番号NP_001195において説明されている。GDF−9を阻害する、BMPRII外部ドメイン−Fc融合タンパク質は、Vitt et al.、Biol.Reprod.67:473−480(2002)において説明されている。
【0071】
もう一つ別の実施形態において、BMP−15の修飾された可溶性レセプターを本発明において用いることができる。Such modified s可溶性レセプターは、BMP−15レセプター、例えば、ALK6またはBMPRIIの細胞外ドメインの全部または一部を含み得る。細胞外ドメイン、特異性フラグメントおよびレセプターの変異体の記載を包含するALK6レセプターのアミノ酸配列は、例えば、Genbank受入番号NP_001194において説明されている。ALK6外部ドメイン−Fc融合タンパク質は、Vitt et al.、Biol.Reprod.67:473−480(2002)において説明されている。
【0072】
可溶性レセプターは、組換えにより、または無傷レセプターの化学的もしくは酵素的切断により、産生することができる。本発明の修飾可溶性レセプターは、血流中のGDF−9および/またはBMP−15を結合させ、GDF−9および/またはBMP−15が体内でその天然のレセプターと結合する能力を低下させる。このようにして、これらの修飾可溶性レセプターはGDF−9および/またはBMP−15の活性を阻害する。
A)レセプター融合
【0073】
本発明の修飾可溶性レセプターは、別のタンパク質または別のタンパク質の一部との融合により、さらに安定にすることができる。安定性が増大することは、低用量または低頻度で投与できるので、治療法として有利である。イムノグロブリンの少なくとも一部、例えば、抗体の定常領域、任意にイムノグロブリンのFcフラグメントとの融合は、本発明の修飾可溶性レセプターまたは他のタンパク質の安定性を増大させることができる(例えば、Gerburg Spiekermann , et al.、(2002) J.Exp.Med.196: 303−310(2002)参照)。
3.他のタンパク質
【0074】
GDF−9活性を阻害する他のタンパク質を本発明の方法において用いることができる。かかるタンパク質は、GDF−9自体と相互作用することができ、その活性またはそのレセプターとの結合を阻害する。別法として、阻害物質は、GDF−9レセプター(例えば、ALK5またはBMPIIR)と相互作用することができ、GDF−9のそのレセプターとの結合をブロックするならば、またはGDF-−9の結合後にレセプターの活性をブロックするならば、組成物または方法において有効である。阻害物質は、もちろん、GDF−9およびそのレセプターの両方と相互作用できる。BMP−15活性を阻害するタンパク質も、BMP−15自体および/またはそのレセプターとの相互作用により、本発明において用いることができる。
A)GDF−9またはBMP−15と結合するタンパク質
【0075】
GDF−9と結合し、そのレセプターとの結合を包含するその活性を阻害するタンパク質は、本発明の方法において使用できる。いくつかのタンパク質が公知であるが、さらなるタンパク質を、スクリーニング技術、ALK5またはBMPIIR結合分析、または前述のレポーター遺伝子を用いて単離できる。タンパク質のサンプル、ならびにタンパク質のライブラリーをスクリーンすることができる。BMP−15と結合し、その活性を阻害するタンパク質も本発明の方法において用いることができる。
(1)GDF−9およびBMP−15プロペプチド
【0076】
GDF−9プロペプチドは、GDF−9の阻害物質として用いることができる。天然に存在するGDF−9プロペプチドのインビボ半減期を増加させるために、本発明のGDF−9プロペプチド阻害物質を修飾および/または安定化させて、薬物速度論的特性、例えば、循環半減期を改善することができる(Massague、J.、Ann.Rev.Cell Biol.、6:597−641(1990);Jiang、et al.、BBRC 315:525−531(2004);Gregory et al.、J.Biol.Chem.280:27970−27980(2005))。
【0077】
一つの実施形態において、BMP−15プロペプチドは、BMP−15の阻害物質として使用できる。天然に存在するBMP−15プロペプチドのインビボ半減期を増大させるために、薬物速度論的特性、例えば、循環半減期を改善するように本発明のBMP−15プロペプチド阻害物質を修飾および/または安定化することができる。
【0078】
かかる修飾プロペプチドとしては、プロペプチドおよびIgG分子のFc領域を含む融合タンパク質(安定化タンパク質として)が挙げられる。これらの阻害物質は、GDF−9もしくはBMP−15プロペプチドまたはプロペプチドの1以上の生物活性を保持する該プロペプチドのフラグメントもしくは変異体を含むことができる。本発明において用いられるプロペプチドは、天然に存在する(天然の)GDF−9またはBMP−15プロペプチドから合成的に産生し、誘導することができるか、または遺伝子操作の分野において周知である様々な試薬、宿主細胞および方法のいずれかを用いて組換えにより産生することができる。一つの実施形態において、修飾プロペプチドはIgG分子またはそのフラグメントと共有結合したヒトプロペプチドを含む。プロペプチドは、IgG分子のFc領域と直接結合できるか、またはリンカーペプチドを介してIgG分子のFc領域と結合させることができる(Jiang、et al.、BBRC 315:525−531(2004);Gregory et al.、J.Biol.Chem.280:27970−27980(2005))。他の安定化修飾法は、WO02/068650(その全体として本発明の一部として参照される)に記載されている。
(2)優性阻害GDF−9およびBMP−15タンパク質
【0079】
BMP−15突然変異タンパク質は、本発明の方法において阻害物質として用いることができる。天然に存在するBMP−15変異体、Y235C−BMP−15は、BMP−15のプロ領域において非保存性置換を有し、インビボおよびインビトロの両方において野生型BMP−15活性に対して優性阻害効果を有する(Di Pasquale et al.、Am.J.Hum.Genet.75:106−111(2004))。本発明はまた、本発明の方法における、優性阻害タンパク質を包含するGDF−9変異タンパク質の使用も想定する。
(3)ホリスタチンおよびホリスタチンドメイン含有タンパク質
【0080】
ホリスタチンはBMP−15と結合し、BMP−15の阻害物質として使用できる(Otsuka et al.、Biochem.Biophys.Res.Commun.289:961−966(2001))。従って、本発明は、BMP−15のレベルまたは活性を調節するために、少なくとも1つのホリスタチンドメインを含むタンパク質を提供し、BMP−15のレベルまたは活性の調節に関連する障害を治療するために用いることができる。
【0081】
ホリスタチンそれ自体およびホリスタチンドメイン含有タンパク質(米国特許公開番号2003/0162714および2003/0180306に記載)はどちらも、本発明の組成物および方法において用いることができる。
【0082】
少なくとも1つのホリスタチンドメインを含有するタンパク質は、GDF−9と結合し、阻害する。少なくとも1つのホリスタチンドメインを有するタンパク質の例としては、これに限定されないが、ホリスタチン、ホリスタチン様関連遺伝子(FLRG)、FRP(flik、tsc36)、アグリン、オステオネクチン(SPARC、BM40)、ヘビン(SC1、mast9、QR1)、IGFBP7(mac25)、およびU19878が挙げられる。GASP1およびGASP2は、少なくとも1つのホリスタチンドメインを含むタンパク質の他の例である。
【0083】
前述のように、ホリスタチンドメインは、システインリッチな繰り返しにより特徴づけられる、アミノ酸ドメインをコード化するアミノ酸ドメインまたはヌクレオチドドメインとして定義される。ホリスタチンドメインは典型的には、65〜90アミノ酸スパンを含み、10の保存システイン残基およびKazalセリンプロテアーゼ阻害物質ドメインに類似した領域を含有する。一般に、システイン残基間のループ領域はホリスタチンドメインにおいて配列変化を示すが、若干の保存が明らかである。第4および第5のシステイン間のループは、通常、小さく、1または2アミノ酸しか含有しない。第7および第8のシステイン間のアミノ酸は、一般に、最も高度に保存され、(G,A)−(S,N)−(S,N,T)−(D,N)−(G,N)のコンセンサス配列とそれに続く(T,S)−Yモチーフを含有する。第9および第10システイン間の領域は、一般に、別のアミノ酸で隔てられた2つの疎水性残基(具体的には、V、I、またはL)を含有するモチーフを含有する。
【0084】
ホリスタチンドメイン含有タンパク質は、 refers to proteins comprising 少なくとも1であるが、おそらくは1より多いホリスタチンドメインを含むであろう。この用語は、かかるタンパク質の任意の変異体(フラグメント;置換、付加、または欠失突然変異を有するタンパク質;および融合タンパク質を含む)であって、天然のタンパク質、特にBMP−15結合活性に関するもの、例えば、アミノ酸配列に対して保存または非保存性変化を伴って修飾された配列に関する公知生物活性を維持するものを意味する。これらのタンパク質は、任意の供給源(天然または合成)由来であってよい。このタンパク質は、ヒトまたは、ウシ、ニワトリ、ネズミ、ラット、ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、オナガザル、および魚をはじめとする任意の動物源由来であってよい。
【0085】
BMP−15と結合する、少なくとも1つのホリスタチンドメインを含むタンパク質は、様々な方法を用いて単離することができる。例えば、BMP−15を用いたアフィニティー精製を用いることができる。加えて、cDNAライブラリーの低ストリンジェンシースクリーニングを使用することができるか、またはホリスタチンドメインに向けられるプローブを用いた縮重PCR技術を用いることができる。より多くのゲノムデータが入手可能になっているので、多くの配列プロファイリングおよび分析プログラム、例えば、MotifSearch(Genetics Computer Group、Madison、WI)、ProfileSearch(GCG)、およびBLAST(NCBI)を用いた類似性検索および分析を用いて、公知ホリスタチンドメインと顕著な相同性を含有する新規タンパク質を見出すことができる。本発明の一つの実施形態において、成熟BMP−15またはそのフラグメントと特異的に結合する少なくとも1つのホリスタチンドメインを含むタンパク質は、モノマー形態、活性二量体形態、またはBMP−15潜在的複合体に複合体形成しているかのいずれであっても、0.001から100nMの間、または0.01から10nMの間、または0.1から1nMの間の親和性を有する。
B)GDF−9またはBMP−15レセプターと結合するタンパク質
【0086】
GDF−9レセプター(例えば、ALK5またはBMPIIR)と結合し、GDF−9のレセプターとの結合またはレセプター自体の活性を阻害するタンパク質は、本発明の範囲内での使用が可能である。同様に、BMP−15レセプター(例えば、ALK6またはBMPRII)と結合し、レセプター活性自体としてBMP−15のレセプターに対する結合を阻害するタンパク質は、本発明の範囲内での使用が可能である。かかるタンパク質は、前述のスクリーニング技術および分析またはレポーター遺伝子分析を用いて単離できる。一つの実施形態において、レセプター結合タンパク質は抗体である。タンパク質のサンプル、ならびにタンパク質のライブラリーをスクリーンできる。
C)結合タンパク質のいずれかとの融合
【0087】
GDF−9、BMP−15、GDF−9レセプター、またはBMP−15レセプターと結合するタンパク質のいずれかの融合タンパク質は、別のタンパク質または別のタンパク質の部分との融合により、さらに安定にすることができる。安定性が増大することは、低用量または低頻度での投与ができるので、治療法として有利である。イムノグロブリンの少なくとも一部、例えば、定常領域 of an antibody、任意にイムノグロブリンのFcフラグメントとの融合により、これらのタンパク質の安定性を増大させることができる。かかる融合タンパク質の調製は当該分野において周知であり、容易に行うことができる(例えば、Gerburg Spiekermann et al.、(2002) J.Exp.Med.、196: 303−310(2002)参照)。
D)GDF−9およびBMP−15免疫化ペプチド
【0088】
本明細書において用いられる「ワクチン」なる用語は、抗体反応または細胞応答のいずれかを含む、保護免疫応答を誘発する組成物または化合物を意味する。例えば、GDF−9「ワクチン」は、GDF−9機能に拮抗する免疫応答を誘発する。GDF−9ワクチンは、米国特許第6,030,617号に記載されている。ワクチンとして用いられるGDF−9およびBMP−15免疫原は、タンパク質の三次構造を実質的に保存しつつ、1つまたはいくつかの免疫優勢およびプロミスキャス(promiscuous)T細胞エピトープを導入することにより修飾された、相同性GDF−9またはBMP−15タンパク質であり得る;例えば、WO01/05820(本発明の一部として参照される)を参照。GDF−9およびBMP−15ペプチドを短期および長期免疫化でヒツジに投与した(Juengel et al.、Biol.Reprod.70:557−561(2003);Juengel et al.、Biol.Reprod.67:1777−1789(2002);McNatty et al.、Reprod.128:3790386(2004))。
4.GDF−9およびBMP−15阻害物質の模倣物質
【0089】
GDF−9阻害物質の模倣物質を本発明の方法において用いることができる。これらのGDF−9阻害物質の任意の合成類似体、特に改善されたインビボ特性、例えば、より長い半減期を有するもの、または消化系により簡単には分解されないものが有用である。
【0090】
GDF−9に対する抗体、GDF−9に対する抗体レセプター、修飾可溶性レセプターおよびレセプター融合物の模倣物質、およびGDF−9、例えば、GDF−9プロペプチド、変異GDF−9プロペプチド、ホリスタチンおよびホリスタチンドメイン含有タンパク質と結合する他のタンパク質、およびそのFc融合物を本発明においてすべて用いることができる。
【0091】
これらの模倣物質は、GDF−9の活性をブロックするならば、即ち、GDF−9のそのレセプターとの結合をブロックするならば、本発明の方法において有効である。本発明において最も有効な模倣物質は、GDF−9またはGDF−9/GDF−9レセプター複合体と特異的に結合する性質を有する。かかる模倣物質は、成熟GDF−9を高親和力で結合することができ、モノマー形態、活性二量体形態、またはGDF−9潜在複合体の状態で複合体形成されるかどうかにかかわらず、成熟タンパク質と結合できる。本発明の方法において有用な模倣物質は、例えば、ALK5またはBMPIIR結合およびレポーター遺伝子分析の阻害により示されるように、インビボおよびインビトロでGDF−9活性を阻害することができる。さらに、開示された模倣物質は、骨格筋量および骨密度の負の調節に関連してGDF−9活性を阻害できる。
【0092】
BMP−15阻害物質の模倣物質も本発明の方法において用いることができる。これらのBMP−15阻害物質の任意の合成類似体、特に改善されたインビトロ特性を有するもの、例えば、より長い半減期を有するもの、または消化系により簡単には分解されないものが有用である。
【0093】
BMP−15に対する抗体、BMP−15レセプターに対する抗体、修飾可溶性レセプターおよびレセプター融合物、およびBMP−15プロペプチドなどのBMP−15と結合する他のタンパク質、突然変異BMP−15プロペプチド、ホリスタチンおよびホリスタチンドメイン含有タンパク質、およびそのFc融合物は全て本発明において用いることができる。
【0094】
これらの模倣物質は、BMP−15の活性をブロックするならば、即ち、BMP−15のそのレセプターとの結合をブロックするならば、本発明において有効である。本発明において最も有効な模倣物質は、BMP−15またはBMP−15/BMP−15レセプター複合体と特異的に結合する特性を有する。かかる模倣物質は、成熟BMP−15を高親和力で結合させることができ、モノマー形態、活性二量体形態、またはBMP−15潜在複合体の状態で複合体形成されているかどうかにかかわらず、成熟タンパク質と結合できる。本発明の方法において有用な模倣物質は、例えば、ALK6またはBMPIIR結合およびレポーター遺伝子分析の阻害により示されるように、インビトロおよびインビボでBMP−15活性を阻害することができる。さらに、好適な模倣物質は、骨格筋量および骨密度の負の調節に関連してBMP−15活性を阻害できる。
5.非タンパク性阻害物質
【0095】
例えば、小分子および核酸を含む非タンパク性阻害物質も、本発明の方法において使用できる。
A)小分子
【0096】
本発明の方法において有用なGDF−9およびBMP−15阻害物質は、小分子を包含する。小分子は、合成および精製された天然に存在するGDF−9およびBMP−15阻害物質を包含する。小分子は、模倣物質または分泌促進物質であり得る。
【0097】
GDF−9またはBMP−15などの興味のあるタンパク質を特異的に標的とする小分子を同定する方法は当該分野において周知である。小分子および/またはペプチドライブラリーを、これに限定されないが、COS−7、CV−1、A204、または顆粒膜細胞におけるCAGA−ルシフェラーゼ、MSXII−ルシフェラーゼ、またはBRE−ルシフェラーゼの発現を包含する、前述のGDF−9機能分析のいずれかを用いて、GDF−9の阻害についてスクリーンすることができる。小分子および/またはペプチドライブラリーは、GDF−9の、例えば、可溶性レセプターを包含するそのレセプターとの競合性放射性リガンド結合分析においてスクリーンすることもできる。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ベースの分析、例えば、増幅発光近接均一分析(「AlphaScreen」(PerkinElmer、Boston、MA)とも呼ばれる)も、好適な小分子阻害物質を同定するために使用できる。この実施形態において、GDF−9ペプチドまたはBMP−15ペプチドをビーズの第一「ドナー」集団と結合させ、ビーズの第二「アクセプター」集団と結合した集団内の相互作用分子を同定するために使用できる。GDF−9またはBMP−15と相互作用するペプチドも、スクリーニング分析に使用できる。かかる分析において用いられる1つのGDF−9ペプチドは:SQLKWDNWIVAPHRYNPRYCKGDC(配列番号5)である。他のFRETベースの分析の他の例は、リガンド二量化の阻害物質についてスクリーンするため、または規定のGDF−9またはBMP−15ペプチドと相互作用する小分子を同定するための時間分解FRET(例えば、PerkinElmer(Boston、MA)ののLANCEシステム)を包含する。別の実施形態において、小分子またはペプチドのGDF−9またはBMP−15との相互作用を、Biacore systems technology(Biacore International AB、Uppsala、Sweden)を用いてリアルタイムで分析できる。本発明はまた、例えば、前項で詳細に記載された分析を用いて骨細胞分化および機能、ならびに骨密度に対するかかる分子の効果をさらに同定するために、さらなるスクリーニング分析、例えば、二次および三次分析の使用を想定する。
B)核酸
【0098】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸」なる用語は、デオキシリボ核酸(DNA)および、適切な場合には、リボ核酸(RNA)、またはペプチド核酸(PNA)を意味する。この用語は、ヌクレオチド類似体、および一本または二本鎖ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)も包含すると理解されるべきである。ポリヌクレオチドの例としては、これに限定されないが、プラスミドDNAまたはそのフラグメント、ウイルスDNAまたはRNA、RNAiなどが挙げられる。「プラスミドDNA」なる用語は、環状である二本鎖DNAを意味する。「siRNA」および「RNAi」なる用語は、mRNAの分解を誘発し、これにより遺伝子発現を抑制する能力を有する二本鎖RNAである核酸を意味する。
【0099】
GDF−9の活性をブロックできる核酸は、本発明の方法において有用である。かかる阻害物質はGDF−9自体と相互作用するタンパク質をコード化できる。あるいは、かかる阻害物質は、GDF−9レセプター(例えば、ALK5またはBMPIIR)と相互作用できるタンパク質をコード化でき、コード化されたタンパク質がGDF−9のそのレセプターに対する結合をブロックするか、またはGDF−9の結合後にレセプターの活性をブロックするならば、本発明において有効である。阻害物質は、もちろん、GDF−9およびそのレセプターの両方と相互作用するタンパク質をコード化できる。かかる核酸は、本発明のGDF−9阻害物質を発現するために使用できる。
【0100】
同様に、BMP−15の活性をブロックできる核酸は、本発明の方法において有用である。かかる阻害物質は、BMP−15自体と相互作用するタンパク質をコード化することができる。あるいは、かかる阻害物質はBMP−15レセプター(例えば、ALK5またはBMPIIR)と相互作用できるタンパク質をコード化することができ、コード化されたタンパク質がBMP−15のそのレセプターに対する結合をブロックするならば、またはBMP−15の結合後にレセプターの活性をブロックするならば、本発明において有効である。阻害物質は、もちろん、BMP−15およびそのレセプターの両方と相互作用するタンパク質をコード化できる。かかる核酸は、本発明のBMP−15阻害物質を発現するために使用できる。
【0101】
本発明の方法は、GDF−9またはGDF−9のレセプター、例えば、ALK5またはBMPIIRの発現を減少させるためのRNA干渉(RNAi)の使用を包含する。RNAiは、標的遺伝子の発現を阻害または抑制するために、核酸分子、例えば、合成低分子干渉RNA(siRNA)またはRNA干渉剤を導入することにより開始できる。例えば、米国特許公開番号2003/0153519および2003/01674901、および米国特許第6,506,559号、および第6,573,099号参照。
【0102】
本明細書において用いられる「RNA干渉剤」は、標的遺伝子またはゲノム配列の発現をRNA干渉により妨害または阻害する任意の化学物質である。かかるRNA干渉剤としては、これに限定されないが、標的遺伝子またはゲノム配列と相同性であるRNA分子、またはそのフラグメント、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンまたは小ヘアピン(shRNA)、およびRNA干渉により標的遺伝子の発現を妨害または阻害する小分子をはじめとする核酸分子が挙げられる。
【0103】
本明細書において用いられる場合、「標的遺伝子発現の阻害」は、発現またはタンパク質活性または標的遺伝子によりコード化される標的遺伝子もしくはタンパク質のレベルの減少を包含する。この減少は、標的遺伝子の発現またはRNA干渉剤により標的とされない標的遺伝子によりコード化されるタンパク質の活性もしくはレベルと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%またはそれ以上である。
【0104】
siRNAは、化学的に合成できるか、インビトロ転写により産生できるか、または宿主細胞内で産生できる。典型的には、siRNAは、少なくとも15−50ヌクレオチドの長さ、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドの長さである。一つの実施形態において、siRNAは、約15から約40ヌクレオチドの長さ、例えば、約15から約28ヌクレオチドの長さ(約19、20、21、または22ヌクレオチドの長さを含む)の二本鎖RNA(dsRNA)であり、約0、1、2、3、4、5、または6ヌクレオチドの長さを有する各鎖上に、3’および/または5’オーバーハンドを含有し得る。一つの実施形態において、siRNAは、転写サイレンシングにより標的遺伝子を阻害することができる。好ましくは、siRNAは、標的メッセンジャーRNAの分解または特異的転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)により、RNA干渉を促進できる。
【0105】
本発明の方法において有用なsiRNAは、小ヘアピンRNA(shRNA)も包含する。shRNAは、低分子(例えば、約19から約25ヌクレオチド)アンチセンス鎖と、それに続く約5から約9ヌクレオチドのヌクレオチドループ、および類似センス鎖からなる。別法として、センス鎖はヌクレオチドループ構造に先行してもよく、アンチセンス鎖がその後に続いてもよい。これらのshRNAは、プラスミドおよびウイルスベクター中に含まれていてもよい。
【0106】
本発明のsiRNA分子の標的領域は、所定の標的配列から選択できる。例えば、ヌクレオチド配列は、開始コドンの下流約25〜100ヌクレオチドから開始できる。ヌクレオチド配列は、5’または3’未翻訳領域、ならびに開始コドン付近の領域を含有することができる。RNAi試薬として配列を選択するための様々な規則を含む、siNRA分子の設計および調製法は、当該分野において周知である(例えば、Boese et al.、Methods Enzymol.392:73−96(2005)参照)。
【0107】
siRNAは、Hannon、(2002)Nature、418:244−251(2002);McManus et al.、(2002)Nat.Reviews、3:737−747(2002);Heasman、(2002)Dev.Biol.、243:209−214(2002);Stein、(2001)J.Clin.Invest.、108:641−644(2001);およびZamore、(2001)Nat.Struct.Biol.、8(9):746−750(2001)に記載されている標準的技術を用いて産生できる。好ましいsiRNAは、5−プライムリン酸化されている。
【0108】
siRNA阻害物質は、GDF−9、GDF−9レセプター(ALK5およびBMPRIIを含む)、BMP−15、またはBMP−15レセプター(ALK6およびBMPRIIを含む)を標的とするために使用できる。GDF−8作用の用量に依存した抑制に関連するALK5についてのsiRNAの配列は、Mazerbourg et al.、Mol.Endocrinol.18:653−665(2004))に記載されている。
【0109】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、GDF−9、GDF−9レセプター、BMP−15、またはBMP−15レセプターの発現を減少させるためにも使用できる。「アンチセンス」は、本明細書において用いられる場合、配列相補性によりmRNAのコーディングおよび/または非コーディング領域の一部とハイブリダイズでき、これによりmRNAからの翻訳を妨害する核酸を意味する。アンチセンス核酸は、Antisense Drug Technology:Principles、Strategies、およびApplications、1st ed.、eEd.Crooke、Marcel Dekker(2001)に記載されている標準的技術を用いて産生することができる。BMPRIIアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、Vitt et al.、Biol.Reprod.67:473−480(2002)に記載されている。
【0110】
核酸は、症状の重症度および疾患の進行に応じて、約1μg/kgから約20mg/kgの用量で投与できる。適切な有効用量は、治療する医師により、次の範囲から選択される:約1μg/kgから約20mg/kg、約1μg/kgから約10mg/kg、約1μg/kgから約1mg/kg、約10μg/kgから約1mg/kg、約10μg/kgから約100μg/kg、約100μgから約1mg/kg、および約500μg/kgから約1mg/kg。核酸阻害物質は、局所、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下または経皮手段により投与することができる。
【0111】
核酸は、その自然環境から、実質的に純粋または均一な形態で、獲得、単離、および/または精製することができる。様々な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のシステムは周知である。好適な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、並びに酵母およびバクロウイルス系が挙げられる。ヘテロローガスなポリペプチドの発現のために当該分野において利用可能な哺乳動物細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、新生児ハムスター腎臓細胞、NS0マウスメラノーマ細胞および多くの他のものを包含する。一般的な細菌宿主は、イー・コリ(E.coli)である。核酸からタンパク質を産生するために好適な他の細胞については、Gene Expression Systems、eEds.FeRNAndez et al.、Academic Press(1999)参照。
【0112】
必要に応じて、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、選択またはマーカー遺伝子および他の配列を包含する適切な調節配列を含有する好適なベクターを選択または構築できる。ベクターは、必要に応じてプラスミドまたはウイルス、例えば、ファージ、またはファージミドであってよい。さらに詳細には、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Sambrook et al.、2nd ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、(1989)参照。例えば、核酸構築物の調製、突然変異生成、配列決定、DNAの細胞中への導入および遺伝子分析、ならびにタンパク質の分析における核酸の操作についての多くの公知の技術およびプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology、eEds.Ausubel et al.、2nd ed.、John Wiley & Sons(1992)において詳細に記載されている。
【0113】
核酸を、追加のポリペプチド配列をコード化する他の配列、例えば、マーカーまたはレポーターとして機能する配列と融合させることができる。マーカーまたはレポーター遺伝子の例としては、−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(ネオマイシン(G418)耐性に関与する)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(−ガラクトシダーゼをコード化)、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)、ルシフェラーゼ、および当該分野において公知の他のものが挙げられる。
II.医薬組成物および投与方法
【0114】
医薬組成物の投与方法は当該分野において公知である。「投与」は、これに限定されないが、任意の特定の送達システムであり、制限なく、非経口(皮下、静脈内、髄内、関節内、筋肉内、腔内、または腹腔内注射を包含する)、直腸、局所、経皮、または経口(例えば、カプセル、懸濁液、または錠剤で)を包含する。個体への投与は、単回投与または連続もしくは断続的繰り返し投与、および様々な生理学的に許容される塩形態、および/または医薬組成物(前述)の一部として許容される医薬担体および/または添加剤を用いて行われる。
【0115】
GDF−9およびBMP−15のモジュレータは、医薬組成物として処方することができる。生理的に許容される塩形態および標準的医薬処方技術および賦形剤は当業者に周知である(例えば、Physicians’ Desk Reference(PDR)2003、57th ed.、Medical Economics Company、2002;and Remington:The Science and Practice of Pharmacy、eds.Gennado et al.、20th ed、Lippincott、Williams & Wilkins、2000参照)。
【0116】
本発明の方法において有用なモジュレータは、症状の重症度および疾患の進行に応じて、1μg/kgから約20mg/kgの用量で投与できる。適切な有効投与量は、治療を行う医師により次の範囲から選択される:例えば、約1μg/kgから約20mg/kg、約1μg/kgから約10mg/kg、約1μg/kgから約1mg/kg、約10μg/kgから約1mg/kg、約10μg/kgから約100μg/kg、約100μgから約1mg/kg、および約500μg/kgから約1mg/kg。
【0117】
いくつかの実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は、医薬的に許容される賦形剤をさらに含む。本明細書において用いられる場合、「医薬的に許容される賦形剤」なる表現は、医薬投与に適合性のあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを意味する。医薬的に活性な物質についてのかかる媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。組成物は、補助的、付加的、または向上した治療機能を提供する他の活性化合物も含有してよい。医薬組成物は、容器、パック、またはディスペンサー中に投与の説明書とともに入れることもできる。
【0118】
医薬組成物は、その意図される投与経路に適合性であるように処方される。かかる組成物の例は、そのまま、または生分解性ポリマー(例えば、PEG、PLGA)との組み合わせにおいて提供される結晶性タンパク質処方を包含する。
【0119】
本発明のモジュレータは、担体ゲル、マトリックス、賦形剤、またはガイド骨再生および/または骨置換に使用される他の組成物と組み合わせた医薬組成物として投与することができる。かかるマトリックスの例としては、合成ポリエチレングリコール(PEG)−、ヒドロキシアパタイト、コラーゲンおよびフィブリン系マトリックス、tisseelフィブリン接着剤などが挙げられる。賦形剤は、医薬的に許容される塩、多糖類、ペプチド、タンパク質、アミノ酸、合成ポリマー、天然ポリマー、および界面活性剤を含むことができる。
【0120】
本発明のある実施形態において、GDF−9モジュレータおよびBMP−15モジュレータは、注入可能または移植可能な組成物として送達のために処方される。組成物は、体内に固体状態で注入または移植するために適した円柱ロッドの形態をとることができる。一つの実施形態において、注入可能な処方は、米国特許公開番号20050287135(本発明の一部として参照される)に詳細に記載されるように、阻害物質およびヒアルロン酸エステルを含む。例えば、Hyaff11p65は、ヒアルロン酸として使用できる。別の実施形態において、注入可能な処方は、モジュレータおよびリン酸カルシウム材料、例えば、米国特許公開番号20050089579(本発明の一部として参照される)において詳細に記載されるような、アモルファスアパタイトリン酸カルシウム、低結晶性アパタイトリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、フルオロアパタイトおよびその組み合わせを包含する。
【0121】
ある実施形態において、GDF−9阻害物質および/またはBMP−15阻害物質は、他の治療化合物、例えば、ビスホスホネート(窒素含有および非窒素含有)、アポミン、テストステロン、エストロゲン、フッ化ナトリウム、ストロンチウムラネレート、ビタミンDおよびその類似体、カルシトニン、カルシウムサプリメント、選択的エストロゲンレセプターモジュレータ(SERM、例えば、ラロキシフェン)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−2)、スタチン、RANKL阻害物質、性ステロイドの核内転写制御を介さないエストロゲン様シグナル伝達のアクチベーター(ANGELS)、および副甲状腺ホルモン(PTH)と組み合わせて、または同時に投与することができる。(アポミンは新規1,1,−ビスホスホン酸エステルであり、ファーネイオン(farneion)X活性化レセプターを活性化し、HMG CoA(3−ヒドロキシ−3−メチルグリタリル−補酵素A)還元酵素の分解を促進する(例えば、米国特許公開番号2003/0036537およびその引用文献参照)。一つの好ましい実施形態において、GDF−9の阻害物質またはBMP−15は、ビスホスホネート、例えばこれに限定されないが、アレンドロン酸塩、シマドロネート、クロドロネート、EB−1053、エチドロネート、イバンドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、リセドロネート、チルドロネート、YH529、ゾレンドロネート、およびその医薬的に許容される塩、エステル、酸、および混合物と同時投与される。別の好ましい実施形態において、GDF−9および/またはBMP−15の阻害物質は、これに限定されないが、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−9、BMP−10、BMP−12、BMP−13、およびMP52を包含する1以上の骨形成タンパク質と同時投与することができる。一つの実施形態において、GDF−9の阻害物質は、BMP−3の阻害物質と同時投与することができる。
【0122】
治療薬を本発明の方法に従って個体に投与することも、遺伝子療法により行うことができ、モジュレータをコード化する核酸配列を患者にインビボで投与するか、またはインビトロで細胞に投与し、これを次に患者に投与する。具体的な遺伝子療法プロトコルに関しては、Morgan、Gene Therapy Protocols、2nd ed.、Humana Press(2000)参照。
III.スクリーニング法および診断法
【0123】
本発明は、遺伝的に骨密度が変更されやすいか、または現在骨密度が変更されている対象を同定するために使用できる。一つの実施形態において、変更された骨密度をスクリーンおよび/または診断するために、対象からの試験サンプルおよび対照サンプル中のGDF−9またはBMP−15の相対的レベルを比較する。試験サンプル中のGDF−9またはBMP−15のレベルが変更されていることは、対象における骨密度の変化および/または骨密度が変化する傾向を示す。別の実施形態において、本発明は、野生型核酸配列を有する対象と比較して、核酸含有サンプルにおけるGDF−9またはBMP−15変異体核酸配列の存在を検出する方法を提供する。
【0124】
一つの実施形態において、対象におけるGDF−9および/またはBMP−15のレベルは、対照サンプルに対して上昇し、対象は骨密度が減少するか、骨密度が減少する危険性が増加する。別の実施形態において、対象におけるGDF−9またはBMP−15のレベルは対照サンプルに対して減少し、対象は骨密度が増加するか、または骨密度が増加する可能性が増加する。
【0125】
抗GDF−9またはBMP−15特異性抗体または抗GDF−9またはBMP−15変異体特異性抗体を用いて、サンプル中の各タンパク質のレベルを決定することができる。本発明は、スクリーンまたは診断される対象において、GDF−9またはBMP−15またはその変異体を検出する方法であって、抗GDF−9またはBMP−15抗体を細胞またはタンパク質と接触させ、抗体との結合を検出することを含む方法を提供する。抗体は、その抗原との結合の検出を可能にする化合物または検出可能な標識で直接標識することができる。異なる標識および標識法は、当業者に周知である。本発明において使用できる標識の種類の例としては、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド金属、化学発光化合物、リン光化合物、および生物発光化合物が挙げられる。GDF−9またはBMP−15のレベルは、体液および組織から単離されたサンプル中で検出できる。検出可能な量の抗原を含有する任意のサンプルを使用できる。本発明の好ましいサンプルは、骨組織である。疑似細胞中のGDF−9またはBMP−15のレベルを、対象の骨密度が変更され易いかどうかを決定するために、正常な細胞中のレベルと比較することができる。
【0126】
本発明の抗体は、例えば、液相を包含するイムノアッセイにおける使用に適しているか、固相担体に結合される。抗体を使用するイムノアッセイは、直接または間接形式のいずれかの競合的および非競合的イムノアッセイ、例えば、放射免疫測定(RIA)およびサンドイッチ(免疫測定)分析を包含する。抗体は、生理学的サンプルに対する免疫組織化学分析を用いて、GDF−9またはBMP−15を検出するためにも使用できる。
【0127】
もう一つ別の実施形態において、本発明は、野生型核酸配列を有する対照サンプルと比較して、対象から単離された核酸含有試験サンプル中の、GDF−9またはBMP−15変異体核酸配列の存在を検出するための方法を提供する。
【0128】
「変異体」とは、本明細書において用いられる場合、野生型GDF−9またはBMP−15核酸配列に対応しないGDF−9またはBMP−15核酸配列、ならびに対応するアミノ酸配列を意味する。本発明の方法は、野生型GDF−9またはBMP−15配列の対応するセグメントと配列同一性を共有しないGDF−9またはBMP−15のセグメントの変異体を包含する。
【0129】
本発明の方法および分析において有用な変異体は、突然変異、制限フラグメント長さの多型、一塩基変異多型(SNP)、核酸欠失、または自然に存在するか、もしくは意図的に操作された核酸置換により生じる変化を包含する。「欠失」は、1以上のヌクレオチド残基が存在しないヌクレオチド配列における変化である。「置換」は、1以上のヌクレオチド残基の同じでないヌクレオチド残基での置換の結果得られる。
【0130】
変異体は、置換、欠失、またはタンパク質骨格中への挿入を含有するペプチド、または完全長タンパク質であって、対応する部分全体にわたって、元のタンパク質と70%相同性を有するものである。保存的置換の例は、同じかまたは類似した性質を有するアミノ酸を含む。アミノ酸保存的置換の例は:アラニンからセリン;アルギニンからリシン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸塩からグルタミン酸塩;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸塩からアスパラギン酸塩;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンからロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リシンからアルギニン、グルタミン、またはグルタミン酸塩;メチオニンからロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニン;セリンからトレオニン;トレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;バリンからイソロイシンからロイシンを包含する。
【0131】
本明細書において用いられる「単離された」なる用語は、他の核酸、タンパク質、脂質、炭水化物または自然に関連する他の物質が実質的にないポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチド配列は、GDF−9またはBMP−15変異体をコード化するDNAおよびRNA配列を包含する。GDF−9またはBMP−15変異体の全部または一部をコード化する全てのポリヌクレオチド、例えば、天然、合成、および意図的に操作されるポリヌクレオチドも本発明に含まれると理解される。本発明の方法および分析において有用なポリヌクレオチドは、遺伝子コードの結果として退縮である配列を包含する。相補的配列はアンチセンスヌクレオチドを包含する。フラグメントが変異体核酸のDNAと特異的にハイブリダイズするために十分な、少なくとも10〜15塩基の長さである前記核酸配列のフラグメント(一部)も含まれる。
【0132】
本発明の方法および分析において有用な核酸配列は、当該分野において公知の方法により得ることができる。例えば、DNAは:1)相同ヌクレオチド配列を検出するための、ゲノムまたはcDNAライブラリーのプローブでのハイブリダイゼーション、2)興味のあるDNA配列とアニールできるプライマーを用いた、ゲノムDNAまたはcDNAに関するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および3)構造特性を共有するクローンされたDNAフラグメントを検出するための発現ライブラリーの抗体スクリーニングにより単離できる。
【0133】
GDF−9またはBMP−15をコード化する特異的DNA配列、またはその変異体の作製は:1)ゲノムDNAからの二本鎖DNA配列の単離;2)興味のあるポリペプチドの必要なコドンを提供するためのDNA配列の化学的製造;および3)真核ドナー細胞から単離されたmRNAの逆転写による二本鎖DNA配列のインビトロ合成によっても得ることができる。後者の場合、mRNAの二本鎖DNA配列補体が形成され、cDNAと呼ばれる。
【0134】
好ましい実施形態において、本発明は、正常な骨密度および野生型GDF−9またはBMP−15核酸配列を有する対象と比較して、骨密度が変化した対象から単離されたサンプル中の標的GDF−9またはBMP−15変異体核酸配列の存在を検出することにより、変化した骨密度と関連する核酸変異体を同定するための方法を提供する。
【0135】
本発明は、対象において突然変異体を同定する方法を包含する。対象は、GDF−9またはBMP−15変異体に関して、ホモ接合であっても、またはヘテロ接合であってもよい。本明細書において用いられる場合、「対立遺伝子」は、遺伝子またはヌクレオチド配列、例えば、ゲノムにおいて1より多い形態(異なる配列)で存在する一塩基変異多型(SNP)である。「ホモ接合」は、本発明によると、2つの遺伝子またはSNPが、他の対立遺伝子に対して配列において同一であることを示す。例えば、野生型GDF−9またはBMP−15遺伝子に関してホモ接合の対象は、少なくとも2つのGDF−9またはBMP−15野生型配列を含有する。かかる対象は、骨密度が変更されやすくない。
【0136】
「ヘテロ接合」とは、本明細書において用いられる場合、ゲノム中に2つの異なる対立遺伝子、例えば、1つの野生型対立遺伝子と1つの変異型対立遺伝子が存在することを示す。かかるゲノムを有する対象はヘテロ接合である。「ヘテロ接合」は、そのGDF−9またはBMP−15対立遺伝子において2つの異なる突然変異を有する対象も包含する。
【0137】
本発明の一つの実施形態は、GDF−9またはBMP−15遺伝子について対象の対立遺伝子特性を発現させる方法を提供する。「対立遺伝子特性」は、本明細書において用いられる場合、GDF−9またはBMP−15対立遺伝子またはその変異体の存在または非存在、およびコピー数に関する対象のゲノムの組成の判定である。
【0138】
好ましい実施形態において、本発明は、対象の骨密が変化する傾向を決定する方法を提供する。この方法は、GDF−9またはBMP−15配列を含む対象から核酸サンプルを単離し、GDF−9またはBMP−15核酸配列における突然変異の存在または非存在を決定することにより、対象のGDF−9またはBMP−15対立遺伝子特性を決定することを含む。本発明はまた、対象から核酸サンプルを単離し;標的配列をハイブリダイズするプライマーで核酸を増幅することを含む、対象のGDF−9またはBMP−15対立遺伝子特性を決定する診断または予測法も提供する。
【0139】
対立遺伝子多型を検出する任意の方法を用いることができる。例えば、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)を、かかる変異体を同定するためのプローブとして使用できる。ASOプローブは、興味のある配列を検出するために適した任意の長さであってよい。好ましくは、かかるプローブは10〜50ヌクレオチドの長さであり、アイソトープ法または非アイソトープ法により検出可能に標識される。標的配列は、サザンブロッティングによる免疫化の前に、任意に増幅し、ゲル電気泳動により分離することができる。別法として、未増幅核酸を含有する抽出物をニトロセルロースに転写し、ドットブロットとして直接プローブすることができる。
【0140】
加えて、対立遺伝子特異的な変化は、同時に起こる制限部位変化により同定できる。突然変異は、時として、制限酵素開裂部位を変更するか、あるいはそれまでに存在していなかった制限部位を導入する。制限酵素認識部位の変化および付加は、特定の変異体を同定するために使用できる。
【0141】
本発明の方法において使用されるプライマーは、このプライマーを利用する反応のストリンジェンシーの条件下で、標的核酸を含有するかなりの数の核酸分子の重合を特異的に開始する十分な長さおよび適切な配列のオリゴヌクレオチドを包含する。このようにして、興味のある核酸を含有する特異的標的核酸配列を選択的に増幅することが可能である。具体的には、本明細書において用いられる「プライマー」なる用語は、2以上、好ましくは少なくとも8のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む配列であって、標的核酸鎖に対して実質的に相補性であるプライマー伸長生成物の合成を開始できる配列を意味する。オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には、15〜22またはそれ以上のヌクレオチドを含有するが、プライマーが、本質的に特に望ましい標的ヌクレオチド配列の増幅のみを可能にするために十分な特異性を有するものである(即ち、プライマーは実質的に相補性である)かぎり、さらに少ないヌクレオチドを含有し得る。
【0142】
本発明の方法に従って用いられるプライマーは、増幅される突然変異ヌクレオチド配列の各鎖と「実質的に」相補性であるように設計される。実質的に相補性とは、重合剤が機能するような条件下で、プライマーが、その各鎖とハイブリダイズするために十分相補性でなければならないことを意味する。言い換えると、プライマーは、突然変異ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、突然変異ヌクレオチド配列の増幅を許容するために十分なフランキング配列との相補性を有しなければならない。好ましくは、伸長されたプライマーの3’末端は、相補性フランキング鎖と完全塩基対相補性を有する。
【0143】
オリゴヌクレオチドプライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応をはじめとする、増加した量の標的核酸を産生する任意の増幅プロセスにおいて用いることができる。典型的には、1つのプライマーは突然変異ヌクレオチド配列のマイナス(−)鎖に対して相補性であり、他のものはプラス(+)鎖に対して相補性である。プライマーを変性核酸とアニールし、続いて酵素、例えば、DNAポリメラーゼIの大フラグメント(Klenow)またはTaq DNAポリメラーゼおよびヌクレオチドまたはリガーゼにより伸長すると、標的核酸を含有する新たに合成された+および−鎖が得られる。これらの新たに合成された核酸は鋳型でもあり、変性、プライマーアニーリング、および伸長のサイクルを繰り返すと、このプライマーにより定義される領域(即ち、標的突然変異ヌクレオチド配列)が指数的に産生される。増幅反応の生成物は、用いられた特定のプライマーの末端に対応する末端を有する独立した核酸二本鎖である。当業者らは、標的核酸のコピー数を増加させるために用いることもできる他の増幅法を知っているであろう。
【0144】
任意の組織サンプルから得られる核酸(精製形態または未精製形態)は、標的核酸を含有する特定の核酸配列を含有するか、または含有すると考えられるならば、出発核酸として用いることができる。このようにして、プロセスは、例えば、DNAまたはRNA(メッセンジャーRNA(mRNA)を含む)を用いることができ、ここで、DNAまたはRNAは一本鎖または二本鎖であり得る。RNAが、鋳型、酵素、および/または逆転写するために最適な条件として用いられる場合、DNAに対する鋳型を用いることができる。加えて、それぞれの1つの鎖を含有するDNA−RNAハイブリッドを用いることができる。核酸の混合物も用いることができるか、または同じかもしくは異なるプライマーを用いた本明細書において前述の増幅反応において産生された核酸をこのように使用できる。増幅される突然変異ヌクレオチド配列は、より大きな分子のフラクションであるか、または最初は別個の分子として存在できるので、特異的配列が核酸全体を構成する。増幅される配列が最初は純粋な形態で存在する必要はなく、例えば、全ヒトまたは動物DNA中に含まれるような、複合混合物の微量フラクションであってよい。
【0145】
増幅された生成物を、放射性プローブを用いることなく、サザンブロット分析により検出することができる。このようなプロセスにおいて、非常に低レベルの突然変異ヌクレオチド配列を含有するDNAの小サンプルを増幅し、サザンブロッティング技術により分析する。非放射性プローブまたは標識の使用は、高レベルの増幅シグナルにより促進される。
【0146】
標的核酸が増幅されない場合、適切なハイブリダイゼーションプローブを用いた検出は、分離された核酸に関して行うことができる。標的核酸が増幅される場合、適切なハイブリダイゼーションプローブでの検出は、増幅後に行われる。
【0147】
本発明のプローブは、検出された特異性フラグメントの分布、ならびに特異的な強力に結合(ハイブリダイズ)する配列の発生率を決定するためのプローブの結合の定量的(相対的)程度を調べるために使用できる。
【0148】
本発明のプローブは、最も一般的には放射性核種を用いて、原子または無機ラジカルで検出可能に標識することができるが、重金属も使用できる。適切なシグナルを提供し、十分な半減期を有する任意の放射性標識を用いることができる。他の標識は、標識されたリガンドの特異的結合対メンバーとして機能できるリガンドなどを含む。イムノアッセイにおいて一般的に用いられる多種多様の標識を使用できる。蛍光化合物は、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどを包含する。化学発光物としては、ルシフェリン、および2,3−ジヒドロフタラジンジオン(例えば、ルミノール)が挙げられる。
【0149】
本発明の方法により検出されるGDF−9またはBMP−15変異体を有する核酸を、溶液中、または固体支持体に結合させた後のいずれかで、特異的DNA配列の検出に通常適用される任意の方法、例えば、PCR、オリゴマー制限(Saiki、et al.、Bio/Technology、3:1008−1012、1985)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ分析(Conner、et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、80:278、1983)、オリゴヌクレオチド結紮分析(OLAs)(Landegren、et al.、Science、241:1077、1988)などにより、さらに評価、検出、クローン、配列化などすることができる。
【0150】
本発明はさらに、GDF−9および/またはBMP−15におけるレベルの変化または差異を検出するためのキットも提供する。かかるキットは、検出可能に標識されているか、または標識することができるプローブである。かかるプローブは、それぞれ、標的タンパク質について特異的な抗体もしくはヌクレオチド、またはそのフラグメント、または標的核酸、またはそのフラグメントであり、ここで、標的は、GDF−9またはBMP−15、またはその変異体の存在を示すか、または存在と相関する。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドプローブをキット中に含め、GDF−9またはBMP−15変異体の存在、ならびに特異的な強力に結合(ハイブリダイズ)する配列の発生率を決定するためのプローブの結合の定量的(相対的)程度を調べるために使用でき、このように骨密度が変化する、または変化する傾向のある対象の可能性を示す。
【0151】
一つの実施形態において、キットは、標的核酸を検出するために核酸ハイブリダイゼーションを利用し、このキットは、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチドを含有する容器も有し得る。標的核酸配列、例えば、変異核酸配列を増幅することが望ましい場合、これは増幅用プライマーであるオリゴヌクレオチドを使用して行うことができる。
【0152】
一つの実施形態において、キットは、標的タンパク質、またはそのフラグメント、またはかかるタンパク質の変異体、またはそのフラグメントと結合する抗体を含有する容器を提供する。このように、キットは、野生型GDF−9またはBMP−15またはその変異体と結合する抗体を含有し得る。かかる抗体を用いて、特定のGDF−9またはBMP−15変異体の存在またはサンプル中のかかる変異体の発現レベルを識別できる。
【0153】
次の実施例は、本発明の実施形態例を提供する。当業者は、本発明の精神または範囲を変更することなく、多くの修正および変更を行うことができることを認識するであろう。かかる修正および変更は本発明の範囲内に含まれる。実施例は本発明をなんら制限しない。
【実施例】
【0154】
(実施例1:GDF−9ノックアウトマウスにおける骨ミネラル濃度)
GDF−9ゼロ突然変異の骨ミネラル濃度に対する影響を、メスマウスにおいて分析した。GDF−9ノックアウトマウスはすでに記載されている(Dong et al.、Nature 383:531−535(1996))。合計、骨梁、および皮質容量骨ミネラル濃度(vBMD)を次のようにして、16週齢(表1)および10月齢(表2)メスマウスにおいて測定した。左大腿骨の容量骨ミネラル濃度(vBMD、mg/cm)を、XCT Research周辺定量的コンピューター断層撮影密度計(pQCT;Stratec Medizinetechnik、Pforzheim、Germany)を用いて評価した。大腿骨の遠位端から2.5mm近位で得られた厚さ0.5mmのpQCT断片を用いて、遠位大腿骨幹端について、合計および骨梁密度を計算した。大腿骨の末端から6mm近位で得られた第二の断片を用いて、皮質密度を評価した。トモグラフィー断片は、0.07mmの内面画素サイズを有していた。獲得後、画像を表示し、各スキャンに関して全大腿骨を含む興味のある領域の概要を示した。反復アルゴリズムを用いて軟組織を自動的に除去し、第一断片中の残りの骨の密度(合計密度)を測定した。次に、骨の外側の55%を同心らせん状で剥がし、第一断片の残りの骨の密度(骨梁密度)をmg/cmで報告した。第二断片において、反復アルゴリズムを用いて、皮質および骨梁間の境界を決定し、皮質骨密度を決定した。
【表1】


【表2】

【0155】
本明細書は、明細書内に記載されている文献の教唆の観点から、最も十分に理解される。明細所内の実施形態は、本発明の実施形態を説明し、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきでない。当業者は、本発明に含まれる多くの他の実施形態を容易に認識する。この開示において言及されるすべての刊行物、特許、および生物学的配列は、その全体として本発明の一部として参照される。文献に含まれる物質が本出願と矛盾するか、または一致しない場合は、本明細書が任意のかかる物質に優先する。本明細書の任意の文献の記載は、かかる文献が本発明の先行技術であることを承認するものではない。
【0156】
特に指示がない限り、請求の範囲を含む明細書において用いられる、成分の量、細胞培養、処理条件などを表す全ての数値は、「約」という用語により全ての場合において修飾できると理解される。従って、特に反対の指示がない限り、数値パラメータは近似であり、本発明により求められる所望の特性に応じて変化し得る。特に指示がない限り、一連の要素の前の「少なくとも」という用語は、この一連の全ての要素についてであると理解される。当業者らは、単なる所定の実験を用いて、本明細書において記載される本発明の特定の実施形態についての多くの相当物を認識するか、または解明できる。かかる相当物は、以下の請求の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】配列番号1はヒトGDF−9遺伝子のヌクレオチド配列である(Genbank受入番号NM_005260も参照)。
【図2】配列番号2はヒトGDF−9のアミノ酸配列である(Genbank受入番号NP_005251.1も参照)。
【図3】配列番号3はヒトBMP−15遺伝子のヌクレオチド配列である(Genbank受入番号NM_005448も参照)。
【図4】配列番号4はヒトBMP−15のアミノ酸配列である(Genbank受入番号NP_005439も参照)。
【図5】配列番号5はGDF−9ペプチドのアミノ酸配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における骨障害を治療または予防する方法であって、これを必要とする哺乳動物に、GDF−9またはBMP−15のモジュレータを、前記骨障害を治療または予防するために十分な量および期間で投与することを含む方法。
【請求項2】
GDF−9またはBMP−15の前記モジュレータがGDF−9またはBMP−15の阻害物質であり、前記骨障害が骨変性疾患である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記阻害物質がGDF−9阻害物質である請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記阻害物質がBMP−15阻害物質である請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記骨障害が、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症、骨髄腫、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、再生不良性骨障害、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫、および転移後に骨が脆くなることからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記障害が骨粗鬆症である請求項5記載の方法。
【請求項7】
骨粗鬆症が、閉経後、ステロイド誘発性、老年性、またはチロキシンの使用により誘発されるものである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物における前記骨障害が:高カルシウム血症、慢性腎疾患、腎臓透析、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン病、およびコルチコステロイドまたはGnRH作動物質もしくは拮抗物質の長期使用の1以上に関連する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
哺乳動物における骨の老化の遅延、骨の維持、失われた骨の回復、または新生骨形成の刺激の方法であって、これを必要とする哺乳動物に、治療上有効な量のGDF−9またはBMP−15のモジュレータを、老化を遅らせるか、失われた骨を回復するか、または新生骨形成を刺激するために十分な量または期間投与することを含む方法。
【請求項10】
前記モジュレータがGDF−9阻害物質である請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記モジュレータがBMP−15阻害物質である請求項9記載の方法。
【請求項12】
骨の老化が、骨量の低下により特徴づけられる請求項9記載の方法。
【請求項13】
骨量の低下が、骨ミネラル濃度を測定することにより決定される請求項9記載の方法。
【請求項14】
骨の老化が、骨質の変性により特徴づけられる請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記骨質の変性が、骨の微細構造的完全性を評価することにより決定される請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである請求項1または9記載の方法。
【請求項17】
前記モジュレータが、化合物、抗体、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、およびRNA干渉剤からなる群から選択される請求項1または9記載の方法。
【請求項18】
前記モジュレータが抗体である請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、抗GDF−9抗体、抗GDF−9レセプター抗体、抗BMP−15抗体、および抗BMP−15レセプター抗体からなる群から選択される請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記抗体がヒト抗体またはそのヒト化誘導体である請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が単クローン性である請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が成熟GDF−9タンパク質と特異的に結合する請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が成熟BMP−15タンパク質と特異的に結合する請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記モジュレータが、成熟GDF−9タンパク質または成熟BMP−15タンパク質と特異的に結合する請求項17記載の方法。
【請求項25】
前記モジュレータが、GDF−9ポリペプチドおよびそのレセプター間の相互作用が関与するシグナル伝達を阻害するか、または前記モジュレータがBMP−15ポリペプチドおよびそのレセプター間の相互作用が関与するシグナル伝達を阻害する、請求項17記載の方法。
【請求項26】
前記モジュレータが、可溶性GDF−9レセプター、GDF−9レセプターと結合するタンパク質、可溶性BMP−15レセプター、およびBMP−15レセプターと結合するタンパク質からなる群から選択される請求項17記載の方法。
【請求項27】
前記RNA干渉剤が二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)である請求項17記載の方法。
【請求項28】
前記siRNAがGDF−9またはBMP−15を転写サイレンシングにより阻害する請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記モジュレータが全身投与される請求項1または9記載の方法。
【請求項30】
前記モジュレータが、1μg/kgおよび20mg/kg、1μg/kgおよび10mg/kg、1μg/kgおよび1mg/kg、10μg/kgおよび1mg/kg、10μg/kgおよび100μg/kg、100μg/kgおよび1mg/kg、ならびに500μg/kgおよび1mg/kgの範囲から選択される有効用量で投与される請求項1または9記載の方法。
【請求項31】
前記モジュレータが少なくとも2週間の期間にわたって繰り返し投与される請求項1または9記載の方法。
【請求項32】
皮質骨密度を増加させる方法であって、治療上有効な量の請求項17記載のモジュレータを哺乳動物に投与することを含み、これにより皮質骨密度を増大させる方法。
【請求項33】
骨梁密度を増大させる方法であって、治療上有効な量の請求項17記載のモジュレータを哺乳動物に投与することを含み、これにより骨梁密度を増大させる方法。
【請求項34】
ビスホスホネート、カルシトニン、エストロゲン、選択的エストロゲンレセプターモジュレータ、副甲状腺ホルモン、ビタミン、およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の骨障害治療剤を哺乳動物に投与することをさらに含む請求項1または9記載の方法。
【請求項35】
前記骨障害治療剤が選択的エストロゲンレセプターモジュレータである請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記骨障害治療剤がビスホスホネートである請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳動物に1以上の骨形成タンパク質を投与することをさらに含む請求項1または9記載の方法。
【請求項38】
前記骨形成タンパク質が、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−9、BMP−10、BMP−12、BMP−13、およびMP52からなる群から選択される請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記骨形成タンパク質がBMP−3の阻害物質である請求項37記載の方法。
【請求項40】
哺乳動物において、受胎能を低下させ、骨障害を治療または予防する方法であって、受胎能を低下させ、骨変性疾患を治療または予防するために十分な量および期間で、これを必要とする哺乳動物に、GDF−9またはBMP−15の阻害物質を投与することを含む方法。
【請求項41】
前記阻害物質がGDF−9阻害物質である請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記阻害物質がBMP−15阻害物質である請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記骨障害が、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症、骨髄腫、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、再生不良性骨障害、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫、および転移後に骨が脆くなることからなる群から選択される請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記障害が骨粗鬆症である請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記哺乳動物における前記骨障害が:高カルシウム血症、慢性腎疾患、腎臓透析、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症、ならびにコルチコステロイドの長期使用の1以上と関連する請求項40記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物における、受胎能の低下および骨の老化の遅延、骨の維持、失われた骨の回復、または新生骨形成の刺激の方法であって、これを必要とする哺乳動物に、治療上有効な量のGDF−9またはBMP−15の阻害物質を、受胎能を低下させ、劣化を遅らせるか、骨損失を回復するか、または新生骨形成を刺激するために十分な量において投与することを含む方法。
【請求項47】
前記阻害物質がGDF−9阻害物質である請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記阻害物質がBMP−15阻害物質である請求項46記載の方法。
【請求項49】
骨の老化が骨量の損失により特徴づけられる請求項46記載の方法。
【請求項50】
骨量の損失が、骨ミネラル濃度を測定することにより決定される請求項49記載の方法。
【請求項51】
骨の老化が骨質の変性により特徴づけられる請求項46記載の方法。
【請求項52】
骨質の変性が、骨の微細構造的完全性を評価することにより決定される請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記哺乳動物がヒトである請求項40または46記載の方法。
【請求項54】
対象において変化した骨密度をスクリーンおよび/または診断する方法であって:a)前記対象から得られる試験サンプル中のGDF−9またはBMP−15のレベルを決定し;b)試験サンプル中のGDF−9またはBMP−15のレベルを、対象サンプル中のGDF−9またはBMP−15のレベルと比較することを含み、対象サンプルと比較して試験サンプルにおいてGDF−9またはBMP−15のレベルが変化していることが、前記対象における骨密度の変化および/または骨密度の変化が起こる素因を示すものである方法。
【請求項55】
GDF−9またはBMP−15のレベルが、前記対照サンプルと比較して上昇し、前記対象は骨密度が減少しているか、または骨密度が減少する危険性が増大している、請求項54記載の方法。
【請求項56】
GDF−9またはBMP−15のレベルが前記対照サンプルと比較して減少し、前記対象は骨密度が増加しているか、または骨密度が増加する可能性が増大している、請求項54記載の方法。
【請求項57】
捕捉剤を用いてGDF−9またはBMP−15のレベルを決定する請求項54記載の方法。
【請求項58】
前記捕捉剤が抗体である請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記抗体が検出可能な標識を含む請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記の検出可能な標識が、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物および化学発光化合物からなる群から選択される請求項54記載の方法。
【請求項61】
GDF−9ポリペプチドまたはBMP−15ポリペプチドについて特異的な捕捉剤、試薬および使用上の注意を含む診断キット。
【請求項62】
対象において変化した骨密度についてスクリーンする方法であって、前記対象から得られる試験サンプル中のGDF−9またはBMP−15をコード化するポリヌクレオチドにおいて少なくとも1つの核酸変化が存在するか、または存在しないかを決定することを含み、少なくとも1つの核酸変化が存在することは、前記対象における骨密度の変化および/または骨密度が変化する素因を示すものである方法。
【請求項63】
少なくとも1つの核酸変化が存在するか、または存在しないかが、GDF−9またはBMP−15をコード化するポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブと前記サンプルを接触させることにより検出される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号1、および配列番号3として記載されるポリヌクレオチドの群から選択されるGDF−9またはBMP−15ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの少なくとも約15のヌクレオチド部分を含む、請求項63記載の方法。
【請求項65】
ポリヌクレオチドが、DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、およびmRNAからなる群から選択される、請求項62記載の方法。
【請求項66】
ポリヌクレオチドが変異体GDF−9またはBMP−15をコード化する請求項62記載の方法。
【請求項67】
ポリヌクレオチドが突然変異体GDF−9またはBMP−15をコード化する請求項62記載の方法。
【請求項68】
突然変異体GDF−9またはBMP−15が切断されたGDF−9またはBMP−15である請求項67記載の方法。
【請求項69】
これを必要とする哺乳動物における骨障害を治療または予防するための医薬を製造するためのGDF−9またはBMP−15のモジュレータの使用。
【請求項70】
GDF−9またはBMP−15の前記モジュレータがGDF−9またはBMP−15の阻害物質であり、前記骨障害が骨変性疾患である、請求項1記載の使用。
【請求項71】
前記阻害物質がGDF−9阻害物質である請求項70記載の使用。
【請求項72】
前記阻害物質がBMP−15阻害物質である請求項70記載の使用。
【請求項73】
前記骨障害が、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症、骨髄腫、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、再生不良性骨障害、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫、および転移後に骨が脆くなることからなる群から選択される請求項70記載の使用。
【請求項74】
前記骨障害が骨粗鬆症である請求項73記載の使用。
【請求項75】
前記骨粗鬆症が、閉経後、ステロイド誘発性、老年性、またはチロキシンの使用により誘発されるものである、請求項74記載の使用。
【請求項76】
前記哺乳動物における前記骨障害が:高カルシウム血症、慢性腎疾患、腎臓透析、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、クローン病、およびコルチコステロイドまたはGnRH作動物質もしくは拮抗物質の長期使用の1以上と関連する請求項70記載の使用。
【請求項77】
これを必要とする哺乳動物において骨の老化の遅延、骨の維持、失われた骨の回復、または新生骨形成の刺激のための医薬の製造のためのGDF−9またはBMP−15のモジュレータの使用。
【請求項78】
前記モジュレータがGDF−9阻害物質である請求項77記載の使用。
【請求項79】
前記モジュレータがBMP−15阻害物質である請求項77記載の使用。
【請求項80】
骨の老化が骨量の損失により特徴づけられる請求項77記載の使用。
【請求項81】
骨量の損失が、骨ミネラル濃度を測定することにより決定される請求項80記載の使用。
【請求項82】
骨質の変性により骨の老化が特徴づけられる請求項77記載の使用。
【請求項83】
骨の微細構造的完全性を評価することにより骨質の変性が決定される請求項82記載の使用。
【請求項84】
前記哺乳動物がヒトである請求項70または77記載の使用。
【請求項85】
前記モジュレータが、化合物、抗体、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、およびRNA干渉剤からなる群から選択される請求項70または77記載の使用。
【請求項86】
前記モジュレータが抗体である請求項85記載の使用。
【請求項87】
前記抗体が、抗GDF−9抗体、抗GDF−9レセプター抗体、抗BMP−15抗体、および抗BMP−15レセプター抗体からなる群から選択される請求項86記載の使用。
【請求項88】
前記抗体がヒト抗体またはそのヒト化誘導体である請求項86記載の使用。
【請求項89】
前記抗体が単クローン性である請求項86記載の使用。
【請求項90】
前記抗体が成熟GDF−9タンパク質と特異的に結合する請求項86記載の使用。
【請求項91】
前記抗体が成熟BMP−15タンパク質と特異的に結合する請求項86記載の使用。
【請求項92】
前記モジュレータが、成熟GDF−9タンパク質または成熟BMP−15タンパク質と特異的に結合する請求項85記載の使用。
【請求項93】
前記モジュレータが、GDF−9ポリペプチドおよびそのレセプター間の相互作用が関与するシグナル伝達を阻害するか、または前記モジュレータが、BMP−15ポリペプチドおよびそのレセプター間の相互作用が関与するシグナル伝達を阻害する、請求項85記載の使用。
【請求項94】
前記モジュレータが、可溶性GDF−9レセプター、GDF−9レセプターと結合するタンパク質、可溶性BMP−15レセプター、およびBMP−15レセプターと結合するタンパク質からなる群から選択される請求項85記載の使用。
【請求項95】
前記RNA干渉剤が二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)である請求項85記載の使用。
【請求項96】
siRNAがGDF−9またはBMP−15を転写サイレンシングにより阻害する請求項95記載の使用。
【請求項97】
前記モジュレータが全身投与される請求項70または77記載の使用。
【請求項98】
前記モジュレータが、1μg/kgおよび20mg/kg、1μg/kgおよび10mg/kg、1μg/kgおよび1mg/kg、10μg/kgおよび1mg/kg、10μg/kgおよび100μg/kg、100μg/kgおよび1mg/kg、ならびに500μg/kgおよび1mg/kgの範囲から選択される有効な用量で投与される、請求項70または77記載の使用。
【請求項99】
前記モジュレータが少なくとも2週間の期間にわたって繰り返し投与される請求項70または77記載の使用。
【請求項100】
これを必要とする哺乳動物において皮質骨密度を増加させるための医薬を製造するためのGDF−9またはBMP−15のモジュレータの使用であって、前記モジュレータが、化合物、抗体、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、およびRNA干渉剤からなる群から選択される使用。
【請求項101】
これを必要とする哺乳動物において骨梁密度を増加させるための医薬を製造するためのGDF−9またはBMP−15のモジュレータの使用であって、前記モジュレータが、化合物、抗体、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、およびRNA干渉剤からなる群から選択される使用。
【請求項102】
前記組成物が、ビスホスホネート、カルシトニン、エストロゲン、選択的エストロゲンレセプターモジュレータ、副甲状腺ホルモン、ビタミン、およびその組み合わせからなる群から選択される1以上の骨障害治療剤をさらに含む、請求項70または77記載の使用。
【請求項103】
前記骨障害治療剤が選択的エストロゲンレセプターモジュレータである請求項34記載の使用。
【請求項104】
前記骨障害治療剤がビスホスホネートである請求項34記載の使用。
【請求項105】
前記組成物が1以上の骨形成タンパク質をさらに含む請求項70または77記載の使用。
【請求項106】
前記骨形成タンパク質が、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−9、BMP−10、BMP−12、BMP−13、およびMP52からなる群から選択される請求項105記載の使用。
【請求項107】
前記骨形成タンパク質がBMP−3の阻害物質である請求項105記載の使用。
【請求項108】
これを必要とする哺乳動物において、受胎能を低下させ、骨障害を治療または予防するための医薬を製造するためのGDF−9またはBMP−15のモジュレータの使用。
【請求項109】
前記阻害物質がGDF−9阻害物質である請求項108記載の使用。
【請求項110】
前記阻害物質がBMP−15阻害物質である請求項108記載の使用。
【請求項111】
前記骨障害が、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症、骨髄腫、骨形成異常症、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、再生不良性骨障害、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫、および転移後に骨が脆くなることからなる群から選択される、請求項108記載の使用。
【請求項112】
前記障害が骨粗鬆症である請求項111記載の使用。
【請求項113】
前記哺乳動物における前記骨障害が:高カルシウム血症、慢性腎疾患、腎臓透析、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症、およびコルチコステロイドの長期使用の1以上と関連する請求項108記載の使用。
【請求項114】
これを必要とする哺乳動物における、受胎能の低下および骨の老化の遅延、骨の維持、失われた骨の回復、または新生骨形成のための医薬を製造するためのGDF−9またはBMP−15の阻害物質の使用。
【請求項115】
前記阻害物質がGDF−9阻害物質である請求項114記載の使用。
【請求項116】
前記阻害物質がBMP−15阻害物質である請求項114記載の使用。
【請求項117】
骨の老化が骨量の損失により特徴づけられる請求項114記載の使用。
【請求項118】
骨量の損失が、骨ミネラル濃度を測定することにより決定される、請求項117記載の使用。
【請求項119】
骨の老化が骨質の変性により特徴づけられる、請求項114記載の使用。
【請求項120】
骨質の変性が骨の微細構造的完全性を評価することにより特徴づけられる請求項119記載の使用。
【請求項121】
前記哺乳動物がヒトである請求項108または114記載の使用。

【公表番号】特表2009−531459(P2009−531459A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503212(P2009−503212)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/065012
【国際公開番号】WO2007/112386
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】