説明

高い引裂き強度および低い稠度を有する硬化性シリコーン印象材

本発明は、シランベースの架橋剤と、異なるオルガノポリシロキサンの混合物と、を含有する硬化性シリコーン組成物に関する。この組成物は、歯科用途における硬化性印象材として特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランベースの架橋剤と、異なるオルガノポリシロキサンの混合物と、を含有する硬化性シリコーン組成物に関する。その組成物は、歯科用途において硬化性印象材として、特にウォッシュ印象材(wash impression material)として特に適している。
【背景技術】
【0002】
歯科用材料の場合には、様々な指示に対して高い引裂き強度を有する材料が非常に求められている。硬化製品の高い引裂き強度は重要な役割を果たし、歯科用途に対してほぼすべての種類の硬化性材料において望まれているが、硬化材料の硬度および未硬化前駆物質の粘度に関して違いがある。
【0003】
咬合記録、一時的および永久的な充填材料、歯冠材およびブリッジ材料ならびにセメントおよびエナメルの材料は、高い引裂き強度、高い硬度および前駆材料のかなり高い粘度が望ましい材料の例として挙げられる。最終硬度は上記の使用のすべてにおいて重要な役割を果たし、例えば、それは印象材の寸法安定性、切断性(cuttability)および可鋳性を決定する。
【0004】
しかしながら、確実に口腔硬組織および軟部組織を正確に再現して、続いて歯冠、ブリッジ、義歯および他の口腔補綴物の作製を補助し、それを可能にする印象材に関しては、状況が異なる。一般に、歯科学の上記の分野の1つまたは複数での使用のために設計される材料は、口腔補綴作業のプレパレーション(preparation)において細かい再現性を可能にするために、口腔硬組織および軟部組織の細部の構造的再現を最善にしなければならない。
【0005】
咬合記録、一時的および永久的充填材料、歯冠およびブリッジ材料ならびにセメントおよびエナメルの分野における硬化性材料の使用、および確実に口腔硬組織および軟部組織を正確に再現するための印象材の分野における硬化性材料の使用と関係する環境が異なるため、前駆物質ならびに硬化材料に対する要求条件は異なる。
【0006】
歯科印象材としてポリオルガノシロキサンを使用する場合、多くの困難が生じている。まず第一に、引裂き強度が低い傾向がある。印象を効果的に採得するためには、精密な細部を保存するために、特に薄い縁領域で引き裂くことなく、印象材を歯列から容易に除去できることが必要である。従来から、様々な種類の充填剤が、引裂き強度を向上させるために添加されてきた。かかる添加によって、いくらかの改善は得られたが、かかる改善は、粘度の増大に関しては不十分であることが判明している。
【0007】
従来の大部分の2成分親水性シリコーンの流動学的挙動のために、かかる化合物において高い降伏応力が認められる。材料を放出するための低い力を提供するために、それらを使用する前に2つの成分を混合するための大きな静的ミキサーを使用しなければならない。しかしながら、材料の多くが大きなミキサーに残る場合が多いため、これによって高い割合で無駄が生じる。したがって、ペーストをカートリッジから除去するために必要とされる力を最小限に抑えるために、単一成分と混合物の両方の低い降伏応力を達成することが望まれる。
【0008】
従来のいわゆる低粘稠度配合物に関しては、プレパレーション(preparation)の精密な細部への印象材の流れが得られるように、高い応力をかけなければならない。したがって、低粘度タイプの材料(「低粘稠度」)は、いわゆる「パテ/ウォッシュ(putty/wash)」技術または「二重混合(double mix)」技術において高粘度タイプの材料と組み合わせて使用されることが多い。特に上記の「パテ/ウォッシュ」技術で採取されるインプリント(imprint)の場合には、この材料がインプリントの最も精密な細部を保存することを担うため、引裂き強度はウォッシュ材にとって重要である。しかしながら、従来技術に従って利用可能な多くのインプリント材料は、応力下で、特に、口腔内のプレパレーションの難しい領域、例えばブリッジを含むプレパレーションから硬化インプリントを除去する際に発生する応力下にて、裂ける傾向を示す。このような裂ける傾向によって、インプリントの重要な細部が失われ、そのため、口腔補綴作業の質が劣る。
【0009】
上述の問題を改善するために、従来技術では、ビニル基を有するQM樹脂およびビニル基を有するVQM樹脂の使用に傾注した。QおよびMの文字は、その樹脂を構成する、四官能および単官能モノマーを表す。一般に、かかるQMまたはVQM樹脂は、四官能シリコーンと、ビニル基含有単官能シリコーンとの反応の反応生成物として説明することができ、「官能価」という用語は、反応中にSi−O−Si−結合の形成が結果として生じる、官能基の数に関する。四官能要素と単官能要素の関係に応じて、反応生成物中のビニル基の数は変動し、一般的に四官能要素の量が増加すると共に増加する。
【0010】
Hareは(特許文献1)および(特許文献2)において、Fiedlerは(特許文献3)において、歯科用印象材の製造に使用される2成分重合性ポリオルガノシロキサン組成物を記述している。記載の組成物は、HareおよびFiedlerよれば、ビニル含有量0.16〜0.24mmole/gを有する四官能ポリシロキサンを含有させることから得られる、向上した引裂き強度を示す。その組成物は、HareおよびFiedlerよれば、3分後に水との接触角50度未満となる、HLB8〜11を有する界面活性剤も含有する。
【0011】
しかしながら、上記の調合物はいくつかの不利点を有する。上記の従来技術に記載の材料の滴下(dripping)稠度が低い場合が多く、それによって、上顎のインプリントを採得する際に問題が生じる。滴下稠度が低いことによって、硬化性材料が減少し、材料の量が少なすぎる部位の細部が失われるか、または引裂き強度が不十分となり得る。
【0012】
従来技術に記載の調合物の他の不利点は、ポリオルガノシロキサンの量に対して少なくとも20重量%の量でVQM樹脂を使用することである。従来の調合物と比較して、硬化性組成物中の多官能性要素がこのように高い量であることによって、多くの欠点が生じる。引裂き強度は、かかる多官能性要素の導入により向上するが、多量の調合物の化学的性質が固定化されるために、「注文通りの」組成物を製造する可能性が減る。しかしながら、望ましい特性を有する硬化性印象材の注文製作(tailoring)は、構成成分の選択における最大の自由度を有し、これらの特性に影響を及ぼす、開発者の可能性に大きく依存する。印象材中に大量に存在し得る充填材に依存する場合が多い、最終硬度および流動学的挙動などの特性に影響を及ぼすには、これは特に重要である。
【0013】
低粘稠度および超低粘稠度材料の他の重要な態様は、滴下に関してのかかる材料の稠度である。しばしば、低粘稠度または超低粘稠度材料は、プレパレーション部位から滴り落ちる傾向を示し、その結果、材料が減少し、したがって印象材の細部が損なわれる。
【0014】
Zechは(特許文献4)に、オレフィン性不飽和二重結合を保持するオルガノポリシロキサンおよびシランデンドリマーを含有する硬化性歯科用印象材を記述している。Zechによれば、シランデンドリマーを使用することによって、上記の構成成分を含有する硬化材料の硬度が増加する。Zechにより記述される調合物は、例えば、Zechにより記述される、比較的脆い材料を与える高いショアDの調合物での咬合記録として有用であり、例えば、高いショアD硬度を有する咬合記録として有用である。しかしながら、記載の材料の弾性は、最大伸び率が50%未満であることから、印象材で使用するには不十分である。
【0015】
Zechは(特許文献5)に、オレフィン性不飽和二重結合を保持するオルガノポリシロキサンを含有する硬化性歯科用印象材を記述している。この文献には、2つの異なる粘度を有するオルガノポリシロキサンの混合物の使用が記載されている。しかしながら、開示されている材料は、ISO4823による35mm以下の稠度を示す。
【0016】
従来技術から知られている調合物には上記の欠陥があるために、これらの欠陥を克服する、硬化性オルガノポリシロキサン含有調合物が大変求められている。
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,661,222号明細書
【特許文献2】米国特許第5,955,513号明細書
【特許文献3】米国特許第5,830,951号明細書
【特許文献4】米国特許第6,335,413号明細書
【特許文献5】国際公開第02/078647号パンフレット
【特許文献6】米国特許第4,035,453号明細書
【特許文献7】米国特許第3,715,334号明細書
【特許文献8】米国特許第3,775,352号明細書
【特許文献9】米国特許第3,814,730号明細書
【特許文献10】米国特許第3,933,880号明細書
【特許文献11】DE 43 06 997 A号明細書
【特許文献12】国際公開第87/03001号パンフレット
【特許文献13】EP−B−0 231 420号明細書
【特許文献14】EP−B−0 480 238号明細書
【特許文献15】国際公開第96/08230号パンフレット
【特許文献16】EP−B−0 268 347号明細書
【特許文献17】DE−A−196 03 242号明細書
【特許文献18】DE−A−195 17 838号明細書
【特許文献19】EP−A−0 743 313号明細書
【特許文献20】米国特許第3,661,744号明細書
【特許文献21】EP−A−0 188 880号明細書
【特許文献22】米国特許第6,335,413 B1号明細書
【非特許文献1】W.Noll、Chemie und Technologie der Silikone、Verlag Chemie Weinheim 2.edition 1964、p.162−206
【非特許文献2】J.Burghardt、Chemie und Technologie der Polysiloxane、「Silikone,Chemie und Technologie」、Vulkan Verlag、Essen、1989、p.23−37
【非特許文献3】W.Noll、Chemie and Technologie der Silikone、Verlag Chemie Weinheim、1968、p.212 ff
【非特許文献4】A.W.van der MadeおよびP.W.N.M.van Leeuwen、J.Chem.Soc.Commen.(1992)、p.1400
【非特許文献5】A.W.van der MadeおよびP.W.N.M.van Leeuwen、Adv.Mater.(1993)、5、第6号、p.366 ff
【非特許文献6】D.Seyferth loおよびD.Y Son、Organometallics(1994)、13、2682−2690
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このように、本発明の目的は、架橋用モノマーの調合物の構成成分の大部分を犠牲にすることなく、硬化後に良好な引裂き強度を有するエラストマーを製造するための調合物を提供することである。本発明の他の目的は、調合物が向上した滴下稠度を有する場合に、硬化すると良好な引裂き強度を有するエラストマーを提供する、硬化性オルガノポリシロキサン含有調合物を提供することである。本発明の他の目的は、印象を、特に口腔内から印象を採得するために、低粘稠度もしくは超低粘稠度ウォッシュ材料のような調合物を使用することを可能にする粘度を調合物が有する場合に、硬化した後に良好な引裂き強度を有するエラストマーが得られる硬化性オルガノポリシロキサン含有調合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的の1つまたは複数が、以下の文章に記載の硬化性材料によって達成される。
【0020】
驚くべきことに、A2の粘度値がA1の粘度値と異なる、A1およびA2の2種類のオルガノポリシロキサンの少なくとも混合物を含有する硬化性材料に、少なくとも2つのアルケニル基を有するシランを添加することによって、これらの材料の引裂き強度が増大し、同時に、非硬化材料のISO4823による稠性値の低下に対して働き、調合物の最大の自由によって注文通りの特性を有する印象材を提供することができることが見出された。
【0021】
このように、本発明は、
(A)1分子当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも2つの異なる種類のオルガノポリシロキサンA1およびA2と、
(B)1分子当たり少なくとも3つのSiH基を有するオルガノ水素ポリシロキサンと、
(C)任意に、反応性基を含有しないオルガノポリシロキサンと、
(D)AとBとの反応を促進する触媒と、
(E)任意に、親水化剤と、
(F)充填剤と、
(G)任意に、従来の歯科用添加剤、補助剤および着色剤と、
(H)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのシランと、
を含む硬化性材料であって、
1分子当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する、その少なくとも2つの異なる種類のオルガノポリシロキサンA1およびA2が異なる粘度を有し、ISO4823による硬化性材料の稠度が>35mmまたは>40mmまたは>43mmである、硬化性材料に関する。
【0022】
本発明による成分Aは一般に、少なくとも2つのトリオルガノシロキシ側基または末端基を有するオルガノポリシロキサンを含有し、その3つの有機基の少なくとも1つがエチレン性不飽和二重結合を有する基である。一般に、エチレン性不飽和二重結合を有する基は、オルガノポリシロキサンのいずれかのモノマー単位に位置する。しかしながら、エチレン性不飽和二重結合を有する基は、オルガノポリシロキサンのポリマー鎖の末端モノマー単位上に、またはその単位の少なくとも付近に位置する場合が好ましい。他の好ましい実施形態において、エチレン性不飽和二重結合を有する基の少なくとも2つが、ポリマー鎖の末端モノマー単位上に位置する。
【0023】
本明細書を通して使用される「モノマー単位」という用語は、別段の指定がない限り、ポリマー主鎖を形成するポリマーにおける反復構造要素に関する。
【0024】
この一般構造の好ましいオルガノポリシロキサンは、以下の式I:
【化1】

(式中、ラジカルRは互いに独立して、脂肪族多重結合を含有しないことが好ましい、炭素原子1〜6個を有する非置換または置換一価炭化水素基を表し、nは一般に、オルガノポリシロキサンの粘度が4〜100,000mPasまたは6〜50,000mPasであるように選択される)によって表される。
【0025】
一般に、ラジカルRは、炭素原子1〜6個を有する非置換または置換一価炭化水素基を表すことができる。炭素原子1〜6個を有する、相当する非置換または置換一価炭化水素基は直鎖状であるか、または炭素原子の数が2を超える場合には、分枝鎖または環状である。一般に、ラジカルRは、組成物の残りの構成成分の少なくとも1つを妨げない、かつ硬化反応を妨げない、すべての種類の置換基を備え得る。本明細書の内容において使用される「妨げる」という用語は、組成物の残りの構成成分の少なくとも1つまたは硬化反応、またはその両方に対するかかる置換基の、硬化製品の特性に不利な影響に関する。本明細書の内容において使用される「不利な」という用語は、前駆物質または硬化製品の意図される使用に関連する、前駆物質または硬化製品の有用性にマイナスに影響する、前駆物質または硬化製品の特性の変化に関する。
【0026】
本発明の他の好ましい実施形態において、ラジカルRの少なくとも50%は、メチル基を表す。式Iによるオルガノポリシロキサン中に存在し得る他のラジカルRの例としては、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル異性体、ヘキシル異性体、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、2−および3−n−ブテニル、ペンテニル異性体、ヘキセニル異性体、3,3,3−トリフルオロプロピル基のようなフッ素置換基脂肪族ラジカル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基、シクロペンテニルまたはシクロヘキセニル基、または芳香族またはヘテロ芳香族基、例えばフェニルもしくは置換フェニル基が挙げられる。かかる分子の例は、その開示内容、特に上記の分子、その化学的構造およびその製法に関する後半の文書の開示内容が本発明の開示内容の一部として特別にみなされ、参照により本明細書に包含される、(特許文献6)に記載されている。
【0027】
上記の式Iの分子の製造は一般に、当業者に公知である。相当する分子の製造は、例えば、(非特許文献1)または(非特許文献2)に記述されている標準手順に従って達成することができる。
【0028】
その末端基がジメチルビニルシロキシ単位からなり、鎖における他のラジカルRがメチル基からなる、指定の粘度範囲を有する上記の構造の直鎖状ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0029】
本発明による上記の成分Aは、少なくとも2つの異なる構成成分A1およびA2からなる。成分Aは、2つを超える異なる構成成分から、例えば、n個の全構成成分のn番目の構成成分についてAnまで、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9およびA10と表示される、3、4、5、6、7、8、9または10種類以上の構成成分からなることは、本発明の内容にある。
【0030】
本発明の利点を達成するために、成分Aを構成する構成成分の少なくとも2つは、それらの粘度が、好ましくは少なくとも2倍違わなければならない。これは、成分A、少なくともA1およびA2の構成成分としての異なる種類のオルガノポリシロキサンの、本発明による材料は異なる粘度であり、A2の粘度の値が、同じ種類の粘度測定においてA1の粘度の値の少なくとも2倍高いことを意味する。
【0031】
成分Aの構成成分に関して本明細書で使用される「構成成分」という用語は、測定可能な程度まで、製造後にその多分散性に関連して、少なくともその重量平均分子量が異なるオルガノポリシロキサンに関する。したがって、本発明は、その製造方法がポリマー鎖長の単峰性分散を生じさせるという条件で、異なる構成成分として、選択された方法の達成された多分散性内の1種類のポリマーを製造するプロセス内で得られる異なる鎖長のポリマーは考慮しない。
【0032】
粘度の違いは、2倍を超える、例えば5、10、20、30、40、50、60、70、80、90または100倍であることが好ましい。粘度の違いはさらに、200、300、500、800、1000または5000倍と高くなり得るが、約10000の値を超えないほうがよい。上記の値は、粘度の違いの係数に関するものであり、粘度値自体に関するものではないことに留意されたい。
【0033】
Aのすべての構成成分のうち最も低い粘度を有するAの構成成分が、範囲約10〜約7000mPas、または約10〜約2000、または約10〜約1000、または約50〜約500mPasまたは約100〜約300mPasの粘度を有する場合が、本発明の他の好ましい実施形態である。最も低い粘度を有するAの最も好ましい構成成分は、範囲約150〜約250mPasの粘度を有する。
【0034】
Aのすべての構成成分のうち最も高い粘度を有するAの構成成分が、約500〜約45000mPas、例えば約1000〜約30000mPasまたは約3000〜約15000mPasの粘度を有することが、本発明の他の好ましい実施形態である。良い結果は例えば、Aのすべての構成成分のうち最も高い粘度を有するAの構成成分が約4000〜約10000mPas、例えば約5000〜約9000mPasまたは約6000〜約8000mPasの粘度を有する場合に達成された。
【0035】
本発明の他の好ましい実施形態において、成分Aは、少なくとも3種類の構成成分A1、A2およびA3を含む。この場合には、最も高い粘度を有する構成成分および最も低い粘度を有する構成成分、A3およびA1の粘度の関係についての上記の定義もまた当てはまる。残りの構成成分A2は一般に、A1およびA3の粘度値の間の値の粘度を有する。しかしながら、A2の粘度の値が、A3の粘度の値の1/2未満およびA1の粘度の値の2倍を超える場合が好ましい。本発明の他の好ましい実施形態において、構成成分A2(3種の構成成分A1、A2およびA3の組み合わせで)の粘度は、約500〜約10.000、特に約1000〜約5000または約1500〜約3000である。
【0036】
このように、成分Aが異なる粘度値を有する少なくとも3種の構成成分A1、A2およびA3を含み、A1が最も低い粘度値を有し、A3が最も高い粘度値を有する場合もまた、本発明による好ましい実施形態である。成分Aにおける構成成分の数が2〜約5、特に2、3または4である場合に、さらに好ましい。2種の構成成分、A1およびA2、または3種の構成成分A1、A2およびA3が最も好ましい。
【0037】
しかしながら、好ましい測定方法は、Haake Rotovisco RV20(スピンドルMV、計量カップNV)で行われる。粘度は23℃で測定される。システムを活性化し、調整した後、スピンドルMVを取り付ける。続いて、測定される材料を計量カップNVに充填する。過度に遅れることなく、スピンドルを計量カップNV中に下げる。スピンドルは最大1mmの層で覆われるほうがよい。測定される材料は23℃で20分間調質される。測定を開始し、測定開始から20秒後に開始して、粘度値(mPas)を記録する。計量カップNV自体が決して回転または移動しないことに注意を払わなければならない。粘度の値はmPasで得られる。上記の測定方法はDIN 53018−1に対応する。
【0038】
成分Aの構成成分は、その粘度以外のより多くのパラメーターが異なり得る。構成成分の例えば粘度および化学構造が異なることも可能であり、かつ本発明の一般的な教示内である。
【0039】
一般的に、最も低い粘度を有する構成成分の量と、最も高い粘度を有する構成成分の量との比は、前駆物質および硬化樹脂の所望の特性に応じて、比較的自由に選択することができる。しかしながら、最も低い粘度を有する構成成分の量と、最も高い粘度を有する構成成分の量との比が、約1:20〜20:1、特に1:10〜10:1または1:5〜5:1の範囲内である場合に、有利であることが証明されている。良い結果は、約1:3〜3:1または1:2〜2:1の比で得られている。さらに、場合によっては、最も高い粘度を有する構成成分の量が、最も低い粘度を有する構成成分の量以上であり、その結果、最も高い粘度を有する構成成分の量と、最も低い粘度を有する構成成分の量との比が約0.9:1〜3:1となる場合に適切であることが証明されている。示されるすべての比は、構成成分の量に対するものである。
【0040】
成分(B)は好ましくは、1分子当たり少なくとも3つのSi結合水素原子を有するオルガノ水素ポリシロキサンである。このオルガノ水素ポリシロキサンは好ましくは、ケイ素結合水素約0.01〜約1.7重量%、または約1.0〜約1.7重量%を含有する。水素または酸素原子で飽和されていないケイ素原子価は、エチレン性不飽和結合を含有しない一価炭化水素ラジカルRで飽和される。
【0041】
1分子当たりのSi結合水素原子は、mmol/gで示すこともできる。この点に関して、成分(B)は、ケイ素結合水素約1〜約8.5mmol/gまたはケイ素結合水素約2〜約6mmol/gを含有する。
【0042】
成分(B)は通常、範囲約15〜約600mPasまたは範囲約50〜約250mPasの粘度を有する。
【0043】
成分(B)は、1種類を超える、任意に2または3種類の異なるオルガノ水素ポリシロキサン構成成分(B1、B2、B3)を含むこともできる。
【0044】
炭化水素ラジカルは、エチレン性不飽和結合を持たないラジカルを含まない、上記で定義されるラジカルRに相当する。本発明の好ましい実施形態において、ケイ素原子に結合する成分Bにおける炭化水素ラジカルの少なくとも50%、好ましくは100%がメチルラジカルである。かかる成分は、構造および製法に関して上記の文献にも記載されている。
【0045】
適切な成分(C)は、例えば(非特許文献3)に記載の反応性置換基を含有しないオルガノポリシロキサンである。これらは、酸素原子、または置換される、または置換されない炭素原子1〜18個を有する一価炭化水素ラジカルによって、すべてのケイ素原子が囲まれる、直鎖状、分枝鎖または環状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。その炭化水素ラジカルは、メチル、エチル、C2〜C10脂肪族、トリフルオロプロピル基、ならびに芳香族C6〜C12ラジカルである。成分(C)は、ゴム網状構造を薄くし、かつ広げるのに寄与することができ、硬化材料の可塑剤としての役割も果たす。
【0046】
トリメチルシロキシ末端基を有するポリジメチルシロキサンが、成分(C)として特に好ましい。成分(C)は、好ましくは0〜40重量%、好ましくは0〜20重量%または0.1〜10重量%の量で、本発明に従って材料中で使用される。
【0047】
成分(D)は、テトラメチルジビニルジシロキサンでの還元によってヘキサクロロ白金酸から製造することができる白金錯体であることが好ましい。かかる化合物は当業者に公知である。エチレン性不飽和二重結合とのシランの付加架橋を触媒または促進する他のいずれかの白金化合物も適している。例えば、(特許文献7)、(特許文献8)および(特許文献9)に記載の白金−シロキサン錯体が適している。白金錯体およびそれらの製造に関するこれらの特許の開示内容は、明確に記述され、本明細書の開示内容の一部として特別にみなされる。
【0048】
白金触媒は好ましくは、0.00005〜0.05重量%、特に0.0002〜0.04重量%の量で使用され、それぞれが元素状態で存在する白金として計算され、成分(A)〜(H)と共に存在する材料の全重量に関係する。
【0049】
付加反応の反応性を制御するため、および早すぎる硬化を防ぐために、特定の時間、付加反応を防ぐか、または付加反応を減速する抑制剤を添加することが有利である。かかる抑制剤は公知であり、例えば、かかる抑制剤およびその製造に関する開示内容が本発明の開示内容の一部として特別に見なされる、(特許文献10)に記載されている。かかる抑制剤の例は、アセチレン性不飽和アルコール、例えば3−メチル−l−ブチン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサン−l−オール、3,5−ジメチル−l−ヘキシン−3−オールおよび3−メチル−l−ペンチン−3−オールが挙げられる。ビニルシロキサンをベースとする抑制剤の例は、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルシロキサンおよびビニル基を含有するポリ−、オリゴ−およびジシロキサンである。抑制剤は、成分Dの一部とみなされる。
【0050】
成分(E)は、一般に組成物に親水性特性を付与することができる薬剤、または親水化剤であり、成分Eを含有しない元のケイ素組成物と比較して、水または組成物を含有する水(例えば、プラスター懸濁液等)の液滴の濡れ角を低減し、したがって、湿潤な口腔領域において全組成物のより良い湿潤性を促進し、その結果、ペーストのより良い流れ挙動が促進される。
【0051】
印象材の親水性を決定するための濡れ角の測定は、例えば、(特許文献11)の5ページに記述されている、この測定方法に関するこの文書の開示内容が参照により特に記述され、本明細書の開示内容の一部としてみなされる。
【0052】
親水化剤は、反応性基がポリシロキサン網状構造に組み込まれないように、反応性基を備えないことが好ましい。適切な親水化剤は、硬化したポリマー網状構造中に共有結合で組み込まれることができない親水性シリコーン油の群からの湿潤剤であることが好ましい。適切な親水化剤は(特許文献12)および(特許文献13)に記載されており、親水化剤に関するその開示内容は参照により特に記述され、本明細書の開示内容の一部としてみなされる。
【0053】
さらに、例えば(特許文献14)に記載のエトキシ化脂肪アルコールが好ましい。さらに、好ましい親水化剤は、例えば(特許文献15)から知られるポリエーテルカルボシランである。(特許文献12)に記載の非イオン性パーフルオロアルキル化界面活性物質も好ましい。(特許文献16)に記載の非イオン性界面活性物質、つまり、ノニルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール−モノエステルおよびジエステル、ソルビタンエステルならびに本明細書に示されるポリエチレングリコール−モノエーテルおよびジエーテルもまた好ましい。親水化剤およびその製法に関する後者の文書の内容は、参照により特に記述され、本明細書の開示内容の一部としてみなされる。
【0054】
使用される親水化剤の量は、すべての成分の全重量に対して、0〜約10重量%、好ましくは0〜2重量%、特に好ましくは0.2〜1重量%である。本発明による硬化材料の表面上の、3分後に測定された水滴の濡れ角は、好ましくは60°未満、特に好ましくは<50°、特に<40°である。
【0055】
本発明の組成物は、成分Fとして充填剤、好ましくは疎水性充填剤の混合物も含む。シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、無機塩、金属酸化物およびガラスなどの多種多様な無機、疎水性充填剤を用いることができる。微粉石英(4〜6μm)などの結晶質二酸化ケイ素;珪藻土(4〜7μm)などの非晶質二酸化ケイ素;およびキャボット社(Cabot Corporation)製のCab−o−Sil TS−530(160〜240m2/g)などのシラン化ヒュームドシリカから誘導されるものを含む、二酸化ケイ素の混合物を使用することが可能であることが見出された。
【0056】
上述の材料のサイズおよび表面積は制御され、得られた組成物の粘度およびチキソトロピーが制御される。上述の疎水性充填剤の一部またはすべては、当業者には公知のように、1種または複数種のシラン化剤で表面処理される。かかるシラン化は、公知のハロゲン化シランまたはシラジド(silazide)を使用することによって行うことができる。かかる充填剤は、組成物に対して、約5〜約65重量%、特に約10〜約60または約20〜約50重量%の量で存在する。
【0057】
成分(F)に従って使用することができる充填剤の中では、非強化充填剤、例えば石英、クリストバライト、ケイ酸カルシウム、珪藻土、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウムナトリウムなどの分子ふるいを含むベントナイト、ゼオライトなどのモンモリロナイト、金属酸化物粉末、例えば酸化アルミニウムまたは酸化亜鉛、またはその混合酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、プラスター、ガラスおよびプラスチック粉末が挙げられる。
【0058】
適切な充填剤は、例えば熱分解法または沈降ケイ酸およびシリカアルミニウム混合酸化物などの強化充填剤でもある。上記の充填剤は、例えば、オルガノシランもしくはシロキサンで処理することによって、またはヒドロキシル基をアルコキシ基にエーテル化することによって、疎水化することができる。1種類の充填剤または少なくとも2種類の充填剤の混合物も使用することができる。粒径分布は、50μmを超える粒径を有する充填剤が存在しないように選択されることが好ましい。
【0059】
充填剤(F)の総含有率は、成分A〜Hに関して、10〜90%、好ましくは30〜80%の範囲である。
【0060】
強化充填剤と非強化充填剤の組み合わせが特に好ましい。この点に関して、強化充填剤の量は、約1〜約10重量%、特に約2〜約5重量%の範囲である。
【0061】
指定される範囲全体における差、つまり約9〜約70重量%、特に約28〜約55重量%が非強化充填剤によって占められる。
【0062】
表面処理により疎水化されていることが好ましい、発熱的に製造された高分散ケイ酸が強化充填剤として好ましい。表面処理は、例えばジメチルジクロロシラン、へキサメチルジシラザン、テトラメチルシクロテトラシロキサンまたはポリメチルシロキサンを用いて行うことができる。
【0063】
特に好ましい非強化充填剤は、表面処理することができる、石英、クリストバライトおよびケイ酸アルミニウムナトリウムである。この表面処理は一般に、強化充填剤の場合に記載される方法と同じ方法で行うことができる。
【0064】
さらに、本発明による歯科用材料は、成分(G)として可塑剤、顔料、酸化防止剤、剥離剤等の添加剤を任意に含有することができる。例えば、化学系(chemical system)を用いて、一般にビニル重合の結果として生じる、水素ガス発生の存在または程度を低減することができる。このように、組成物は、かかる水素を除去および吸収する微細白金金属を含有してもよい。Pt金属は、表面積約0.1〜40m2/gを有する実質的に不溶性の塩上に付着される。適切な塩は、適切な粒径の硫酸バリウム、炭酸バリウムおよび炭酸カルシウムである。他の支持体としては、珪藻土、活性アルミナ、活性炭などが挙げられる。それらを組み込み、得られた材料に向上した安定性を付与するのに、無機塩が特に好ましい。触媒成分の重量に対して、白金金属約0.2〜2ppmが塩上に分散される。無機塩粒子上に分散された白金金属の使用によって、歯科用シリコーンの硬化中の水素ガス発生が実質的に解消される、または低減されることが見出された。
【0065】
本発明による材料は、0〜2重量%、好ましくは0〜1重量%の量でかかる添加剤を含有する。
【0066】
本発明による成分(H)は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種類のシラン化合物を含有する。好ましいシラン化合物は、一般式II:
Si(R1n(R24-n (II)
(式中、R1は、SiH基との付加反応を受けることができる、炭素原子2〜12個を有する直鎖状、分枝鎖または環状一価エチレン性不飽和置換基であり、R2は、SiHとの付加反応を受けることができる、またはかかる反応に不利な影響を及ぼす基を含まない、炭素原子1〜12個を有する一価ラジカルであり、nは2、3または4である)に従う。特に好ましいラジカルR1は、ビニル、アリルおよびプロパギルであり、特に好ましいラジカルR2は、直鎖状または分枝鎖C1〜C12アルキル基である。
【0067】
さらに好ましいシラン化合物は、
一般式III:
(R1m(R23-mSi−A−Si−(R1n(R23-n (III)
(式中、R1およびR2およびnは互いに独立して、上記で定義されるとおりであり、aは、窒素または酸素原子を含有することができる、炭素原子1〜10000個を有する二価直鎖状または分枝鎖または脂環式、複素環式、芳香族またはヘテロ芳香族基であり、mは2または3、好ましくは3である)に従う。二価ラジカルAの例は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペニレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、−H2C−Ar−CH2−、−C24−Ar−C24−(Arが芳香族二価ラジカルである)、好ましくはフェニル、または一般的な種類の二価ポリエーテルラジカル−CH2CH2CH2−O−[Ca2aO]b−CH2CH2CH2−(1≦a≦5および0≦b≦2000)である。
【0068】
シランデンドリマーも成分Hとして適している。一般に、三次元、高秩序(highly−ordered)オリゴマーおよびポリマー化合物が、デンドリマーとして記述されており、絶えず反復する反応のシーケンスによって小さなコア分子から開始して合成される。少なくとも1つの反応部位を有するモノマーまたはポリマー分子がコア分子として適している。これは、コア分子の反応部位で蓄積し、それとしては、新たな2つの反応部位を有する反応物との一段または多段反応で転化される。コア分子と反応物との転化によって、コアセルが生じる(世代0)。反応を繰り返すことによって、第1反応物層における反応部位は更なる反応物で転化され、再び、少なくとも2つの新たな分岐部位がそのたびに分子中に導入される(第1世代)。
【0069】
順送りの分岐によって、それぞれの世代に対して原子の数が幾何学的に増加する。反応物によって特定される可能な共有結合の数のために、全体のサイズは直線的に成長することから、分子は世代から世代へとさらに密に充填され、ヒトデ形から球形へとそれらの形状を変化させる。ゼロ世代およびそれぞれの更なる世代のデンドリマーは、本発明による成分(H)として使用されるデンドリマーであることができる。かなり高い世代のデンドリマーを使用することができるが、第1世代のデンドリマーが好ましい。
【0070】
第1世代以上のデンドリマーは、水素クロロ−シランを用いた第1段階においてトリアルケニルシランまたはテトラアルケニルシラン(好ましくは、アルキルおよびビニル)を転化することによって、コア分子として得られる。これらの生成物は、アルケニル−グリニャール化合物を用いた更なる段階において転化される。
【0071】
この場合に特に好ましいのは、以下の式IV:
SiR2x((CH2,,−Si−((CH2m−CH=CH234-x (IV)
(式中、R2は上記で定義されるとおりであり、n=2、3、4または5であり、m=0、1、2または3であり、x=0または1である)の第1世代のデンドリマーである。
【0072】
この一般式による特に好ましいデンドリマーは、
Me−Si((CH2−CH2−Si(ビニル)33
Si((CH2−CHZ−Si(ビニル)34
Me−Si((CH2−CH2−CH2−Si(アリル)33
Si((CH2−CH2−CH2−Si(アリル)34
Me−Si((CH2−CH2−Si(アリル)33
Si((CH2−CH2−Si(アリル)34
Me−Si((CH2−CH2−CH2−Si(ビニル)33
Si((CH2−CH2−CH2−Si(ビニル)34
である。
【0073】
A.W.van der MadeおよびP.W.N.M.van Leeuwenは(非特許文献4)および(非特許文献5)において、これらのシランデンドリマーの主要な合成を記述している。この合成は、例えばジエチルエーテル中の10%過剰な臭化アリルマグネシウムを使用して、テトラクロロシランをテトラアリルシランに完全にアリル化することから始まる。さらに、アリル基は、白金触媒の存在下にてトリクロロシランでヒドロシリル化される。
【0074】
最後に、ジエチルエーテル中の臭化アリルマグネシウムを用いて転化が行われる。その結果、12個のアリル末端基を有するデンドリマーが得られる。第1世代は、第2世代に転化することもでき、36個のアリル基が得られる。同じ論題が(非特許文献6)においても論じられている。
【0075】
トリ−もしくはテトラ−もしくはペンタ−もしくはヘキサ−もしくはヘプタ−もしくはオクタアルケニル(シクロ)シロキサンと水素クロロシランとの転化生成物は、コア分子としてさらに可能である。これらは、アルケニル−グリニャール化合物を用いた更なる段階で転化され、環状または直鎖状シロキサンコアを有するデンドリマーが形成される。
【0076】
精製トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−もしくはオクタシロキサンデンドリマー、ならびにそれらのデンドリマーのいずれかの混合物のどちらも、本発明に従って使用することができる。
【0077】
シランデンドリマー、そのワニスとしての製造および使用が、(特許文献17)および(特許文献18)ならびに(特許文献19)から知られる。それに記載のデンドリマーもまた、本発明による目的に適している。多官能性アルケニル化合物は、コアとしてさらに適している。
【0078】
トリメチロールプロパントリアリルエーテル、テトラアリルペンタエリトリト、Santolink XI−100(モンサント社(Monsanto))、テトラアリルオキシエタン、1,3,5−ベンゾールトリカルボン酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゾールトリカルボン酸トリアリルエステル、1,2,4,5−ベンゾールテトラカルボン酸テトラアリルエステル、リン酸トリアリル、トリアリルシトレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルオキシトリアジン、ヘキサアリルイノシト、ならびに任意に置換することができる、少なくとも2つのエチレン性不飽和基、例えばO−アリル、N−アリル、O−ビニル、N−ビニルまたはp−ビニルフェノールエーテル基を有する一般的な化合物が特に適している。
【0079】
可能なポリエンも、(特許文献20)および(特許文献21)に記載されている。ポリエンは、例えば以下の構造:(Y)−(X)m(mは、2以上の整数、好ましくは2、3または4であり、Xは、−[RCR]f、−CR=CRR、−O−CR=CR−R、−S−CR=CR−R、−NR−CR=CR−R基から選択され、fは、1〜9の整数であり、Rラジカルは、H、F、Cl、フリル、チエニル、ピリジル、フェニルおよび置換フェニル、ベンジルおよび置換ベンジル、アルキルおよび置換アルキル、アルコキシおよび置換アルコキシならびにシクロアルキルおよび置換シクロアルキルの意味を有し、それぞれが同一または異なることができる)を有する。(Y)は、C、O、N、Cl、Br、F、P、SiおよびH基から選択される原子から構成される少なくとも二官能性の有機ラジカルである。
【0080】
少なくとも二官能性のカルボン酸のアリル−および/またはビニルエステルは、例えば非常に適しているポリエン化合物である。これに適切なカルボン酸は、炭素原子2〜20個、好ましくは5〜15個の炭素鎖を有するカルボン酸である。フタル酸またはトリメリト酸などの芳香族ジカルボン酸のアリルまたはビニルエステルも非常に適している。多官能性アルコール、好ましくは少なくとも三官能性のアルコールのアリルエーテルも適している。トリメチルプロパンのアリルエーテル、ペンタエリトリトトリアリルエーテルまたは2,2−ビス−オキシフェニルプロパン−ビス−(ジアリルホスフェート)が例として挙げられる。シアヌル酸トリアリルエステル、トリアリルトリアジントリオンの種類および同様な種類の化合物も適している。
【0081】
上記の種類のデンドリマーおよびその製造が(特許文献22)に記載されている。かかるデンドリマーおよびその製造に関するこの文書の開示内容は特に、本発明の開示内容の一部として見なされる。
【0082】
本発明の更なる好ましい実施形態において、一般式IIもしくはIIIの化合物またはその混合物が成分Hとして使用される。好ましくは、一般式II(nは3または4、特に4であり、ラジカルR1は、ビニル、アリルおよびプロパギルであり、R2は、メチルまたはエチルである)の化合物が使用される。
【0083】
歯科用材料の望まれる特性に従って、成分(H)は、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%または0.1〜1重量%の量で存在する。少量の添加でさえ、印象材の引裂強度のかなりの増大をもたらす。好ましい実施形態において、成分Hは、0.1〜約2重量%、例えば0.15〜1重量%未満の量で歯科用材料に存在する。
【0084】
成分(A)、(B)および(H)の量の比は、成分(A)および(H)の不飽和二重結合1モル当たり、0.5〜10モルの成分(B)のSiH単位が存在するように選択されることが好ましい。歯科用材料における成分(A)、(H)、および(B)の量は、すべての成分の全重量に対して5〜70重量%の範囲である。好ましくは、その量は、10〜60重量%の範囲、特に15〜50重量%の範囲である。
【0085】
本発明による材料は、成分(A)〜(H)を混合し、続いて、白金触媒(D)の影響下にて成分(B)のSiH基が成分(A)および(H)の不飽和基それぞれに付加される、ヒドロシリル化と呼ばれる付加反応において、それを硬化することによって製造される。
【0086】
好ましい実施形態において、本発明による材料は、
成分(A)+(B)+(H)5〜70重量%、
成分(C)0〜40重量%、
元素状態で存在する白金として計算され、化合物(A)〜(H)と共に存在する材料の全重量に関係する、成分(D)0.00005〜0.05重量%、
成分(E)0〜10重量%、
成分(F)10〜90重量%、
成分(G)0〜5重量%、および
成分(H)0.1〜50重量%、を含む。
【0087】
他の好ましい実施形態において、本発明による材料は、
成分(A)+(B)+(H)10〜60重量%、
成分(C)0〜20重量%、
元素状態で存在する白金として計算され、化合物(A)〜(H)と共に存在する材料の全重量に関係する、成分(D)0.0002〜0.04重量%、
成分(E)0〜2重量%、
成分(F)30〜80重量%、
成分(G)0〜2重量%、および
成分(H)0.1〜20重量%、を含む。
【0088】
貯蔵安定性の理由から、成分(B)全体がいわゆるベースペーストで存在する2成分剤形で材料を配合することが好ましい。成分(D)全体は、いわゆる触媒ペースト状でベースペーストから物理的に分離されて存在する。成分(A)または(H)またはどちらも、それぞれ触媒ペーストまたはベースペースト中に存在することができ、好ましくは成分(A)および(H)のそれぞれの一部が個々にベースペースト中に存在し、成分(A)または(H)の一部が触媒ペースト中に存在する。
【0089】
このように、本発明は、本発明による材料であって、前記材料がベースペースト状およびそれから物理的に分離された触媒ペースト中に存在し、成分(B)全体がベースペースト中に存在し、成分(D)全体が触媒ペースト中に存在し、残りの成分が任意に2つのペースト中に分配される材料にも関する。
【0090】
成分(C)、(E)、(F)および(G)は、触媒またはベースペースト中にその全量で存在することができるが、それぞれの成分の一部が触媒ペースト中に存在し、一部がベースペースト中に存在することが好ましい。
【0091】
触媒ペーストとベースペーストとの体積比は10:1〜1:10であることができる。ベースペースト:触媒ペーストの特に好ましい体積比は約1:1〜約5:1(ベースペースト5部:触媒ペースト1部)である。1:1の体積比の場合には、ベースペーストおよび触媒ペーストとして以下のように成分(A)〜(H)を分配することができる。
【0092】
【表1】

【0093】
ベースペースト5部対触媒ペースト1部の体積比の場合には、以下のように好ましい量の比を用いることができる。
【0094】
【表2】

【0095】
体積比5:1の場合には、両方のペーストを管状フィルムバッグに充填し、後に使用直前に、ペンタミックス(PENTAMIX)(登録商標)(3Mエスペ社(3M ESPE AG))などの混合および計量装置を使用して混合することができる。
【0096】
ダブルチャンバーカートリッジ(double−chambered cartridge)またはカプセルの形での調剤も可能である。
【0097】
本発明による化合物は一般に、上記の量でそれぞれの成分を混合することによって得ることが可能である。
【0098】
したがって、本発明は、本発明による材料の製造方法であって、成分A、B、D、F、H、および任意に成分C、EおよびGのうちの1つまたは複数が混合される、方法にも関する。
【0099】
本発明は、2成分調剤で材料を製造する方法であって、成分B、ならびに成分A、CおよびEからHの1つまたは複数を混合してベースペーストを形成し、成分D、ならびに成分A、CおよびEからHの1つまたは複数を混合して触媒ペーストを形成する方法にも関する。
【0100】
本発明による材料は、歯科用材料として特に適しており、約2.1〜約6MPa、または約2.2〜約5MPa、特に約2.4〜約4MPaの著しく良い引裂き強度を特徴とする。しかしながら、引裂き強度が約8MPaを超える値を超えない場合には有利であることが見出されている。一般に、約2.1〜3.5MPa、特に約2.4〜3.2MPaの引裂き強度の値は、硬化後にインプリントの滑らかな除去性を提供し、さらにプレパレーションの細部が保存される。
【0101】
本発明による材料は、優れた低加工粘度および非滴下(non−dripping)稠度と共に、好ましくはショア硬度A≧40、好ましくは≧45、特に好ましくはショア硬度A≧50の最終硬度を有する。本発明による硬化材料のショアA硬度の上限は、約70または約65の値にある。
【0102】
本発明による材料は、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約70%の伸び率によって測定可能な向上した弾性を示す。本発明による材料の伸び率の上限は、約300%、好ましくは約250%未満または約200%未満である。
【0103】
ISO4823によるそれらの稠度は、36mmを超える、好ましくは37mmを超えるまたは38mmを超えるまたは40mmを超えることが、この材料の好ましい特徴でもある。本発明による最も好ましい材料は、41mmを超える稠度、例えば42〜48mmの稠度を示す。ISO4823による稠度の上限は約50mmである。
【0104】
配合に自由があるため、流動学的挙動が広範囲で影響を受けることができることから、本発明による材料は、向上した滴下挙動(dripping behavior)も示す。未硬化であるが混合された本発明による前駆物質は、以下に示される測定方法に従って、少なくとも十分な滴下挙動(滴下稠度)を有することが好ましい。
【0105】
したがって、本発明は、
(A)1分子当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する、少なくとも2つの異なる種類のオルガノポリシロキサンA1およびA2と、
(B)1分子当たり少なくとも3つのSiH基を有するオルガノ水素ポリシロキサンと、
(C)任意に、反応性基を含有しないオルガノポリシロキサンと、
(D)AとBとの反応を促進する触媒と、
(E)任意に、親水化剤と、
(F)充填剤と、
(G)任意に、従来の歯科用添加剤、補助剤および着色剤と、
(H)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのシランと、
を含む硬化性材料の使用であって、1分子当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する、その少なくとも2つの異なる種類のオルガノポリシロキサンA1およびA2が異なる粘度を有し、かつISO4823による硬化性材料の稠度が>35mmである、歯科用途における印象材を製造するための硬化性材料の使用にも関する。
【0106】
本発明は以下の実施例によってさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0107】
以下の実施例において、いくつかのベースペーストおよび触媒ペーストを配合し、材料の引裂き強度、硬度および稠度に対するテトラアリルシランおよびオルガノポリシロキサンの組み合わせの効果を示した。
【0108】
実施例A(成分A);
化合物 量[重量%]
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 19.250
200cSt
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 24.750
7000cSt
ポリメチル水素シロキサン 6.000
(1.78mmol/g SiH、50cSt)
ポリメチル水素シロキサン 7.000
(4.00mmol/g SiH、100cSt)
ポリジメチルシロキサン、 7.000
10cSt
疎水化ヒュームドシリカ 4.000
(100m2/g)
疎水化クリストバライト充填剤 29.500
(平均粒径:3μm)
黄色顔料 0.500
ポリエーテル界面活性剤 1.500
テトラアリルシラン 0.500
【0109】
実施例B(成分A)
化合物 量[重量%]
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 19.750
200cSt
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 24.750
7000cSt
ポリメチル水素シロキサン 6.000
(1.78mmol/g SiH、50cSt)
ポリメチル水素シロキサン 7.000
(4.00mmol/g SiH、100cSt)
ポリジメチルシロキサン、 7.000
10cSt
疎水化ヒュームドシリカ 4.000
(100m2/g)
疎水化クリストバライト充填剤 29.500
(平均粒径:3μm)
黄色顔料 0.500
ポリエーテル界面活性剤 1.500
【0110】
実施例C(成分A)
化合物 量[重量%]
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 19.000
200cSt
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 24.750
7000cSt
ポリメチル水素シロキサン 6.000
(1.78mmol/g SiH、50cSt)
ポリメチル水素シロキサン 7.000
(4.00mmol/g SiH、100cSt)
ポリジメチルシロキサン、 7.750
10cSt
疎水化ヒュームドシリカ 4.000
(100m2/g)
疎水化クリストバライト充填剤 29.500
(平均粒径:3μm)
黄色顔料 0.500
ポリエーテル界面活性剤 1.500
【0111】
実施例D(成分A)
化合物 量[重量%]
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 10.000
200cSt
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 15.750
7000cSt
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 18.000
1000cSt
ポリメチル水素シロキサン、 6,000
(1,78mmol/g Si−H;50cSt)
ポリメチル水素シロキサン、 7,000
(4,0mmol/g Si−H;100cSt)
疎水化ヒュームドシリカ 4.000
(100m2/g)
疎水化クリストバライト充填剤 29,500
(平均粒径:3μm)
黄色顔料 0.500
ポリエーテル界面活性剤 1,500
テトラアリルシラン 0,750
【0112】
実施例E(成分B)
化合物 量[重量%]
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 13,500
200cSt
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 28,000
7000cSt
ポリジメチルシロキサン、 5,000
10cSt
クリストバライト充填剤 50,000
(平均粒径:3μm)
疎水化ヒュームドシリカ 2,600
(100m2/g)
【0113】
実施例F(成分B)
化合物 量[重量%]
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 13.641
200cSt
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、 27.778
7000cSt
ポリジメチルシロキサン、 4.216
10cSt
疎水化ヒュームドシリカ 2.579
(100m2/g)
疎水化クリストバライト充填剤 49.603
(平均粒径:3μm)
黄色顔料 0.099
白金触媒溶液 1.578
テトラアリルシラン 0.496
【0114】
実施例G(成分B)
化合物 量[重量%]
ビニル−末端ポリジメチルシロキサン、 29,000
1000cSt
ビニル−末端ポリジメチルシロキサン、 12,500
7000cSt
ポリジメチルシロキサン、 5,000
10cSt
クリストバライト充填剤 50,000
(平均粒径:3μm)
疎水化ヒュームドシリカ 2,600
(100m2/g)
黄色顔料0,100 0,100
白金触媒溶液 0,800
【0115】
【表3】

【0116】
標準カートリッジに充填した後、これらの実験的なペーストを体積比1:1(ベースペーストおよび触媒ペースト)で静的ミキサーによって混合した。
【0117】
測定:
引裂き強度:
引裂き強度データを、B 6×50 DIN 50125に従って、ツヴィック1435ユニバーサル試験機(Zwick 1435 Universal testing machine)において6つのダンベル形試験片を引裂くことによって、評価した。試料の直径は6mmであり、長さは50mmであった。ベースペーストおよび触媒ペーストを静的ミキサーで混合し、黄銅製金型に充填した。23℃で24時間後、試験片を取り出し、測定を6回行い、平均値を決定した。
【0118】
硬化時間
硬化時間データは室温に対して得られ、Shawburry Curometerを使用して評価した。硬化時間の終わりは、その時間の後に、硬化曲線が10mmラインより下になる時間として定義された。
【0119】
3種類のシリコーン材料の滴下挙動(dripping behaviour)を決定するために、1.0±0.2gの材料を混合し、標準凸形ガラス板(d=60mm)に添加する。特別なカートリッジ(v/v=1:1)および特別な静的混合先端(static mixing tip)において、材料を自動混合する。材料は、平均直径15±1mmにてガラスとの円形接触領域を形成しなければならない。混合して15秒後、材料が下へ落ちることができるように、材料を有するガラス板を上下反対の位置に固定する。滴り落ちる材料の量を測定する。0%は(+)と評価され;>0%<20%は(0)と評価され;>20%は(−)と評価される。
【0120】
引裂き強度および最大伸び率
【0121】
【表4】

【0122】
市販の材料およびB/Eの組み合わせは、本発明による実施例ではない。
【0123】
本発明の材料によって、従来技術に見られない引裂き強度、ショア硬度および稠度の固有の組み合わせが得られることが、この結果から示されている。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも2つの異なる種類のオルガノポリシロキサンA1およびA2と、
(B)1分子当たり少なくとも3つのSiH基を有するオルガノ水素ポリシロキサンと、
(C)任意に、反応性基を含有しないオルガノポリシロキサンと、
(D)AとBとの反応を促進する触媒と、
(E)任意に、親水化剤と、
(F)充填剤と、
(G)任意に、従来の歯科用添加剤、補助剤および着色剤と、
(H)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのシランと、
を含む硬化性材料であって、
1分子当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する、前記少なくとも2つの異なる種類のオルガノポリシロキサンA1およびA2が異なる粘度を有し、ISO4823による硬化性材料の稠度が>35mmである、硬化性材料。
【請求項2】
前記異なる種類のオルガノポリシロキサンのうち、少なくともA1およびA2が異なる粘度を有し、かつA2の粘度の値が、同じ種類の粘度測定おいてA1の粘度の値の少なくとも2倍高い、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
A1が10〜7000mPasの粘度を有する、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
A2が500〜60.000.000mPas未満の粘度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
成分(A)+(B)+(H)5〜70重量%、
成分(C)0〜40重量%、
元素状態で存在する白金として計算され、前記化合物(A)〜(H)と共に存在する材料の全重量に関係する、成分(D)0.00005〜0.05重量%、
成分(E)0〜10重量%、
成分(F)10〜90重量%、
成分(G)0〜5重量%、および
成分(H)0.1〜50重量%、
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
成分(A)+(B)+(H)10〜60重量%、
成分(C)0〜20重量%、
元素状態で存在する白金として計算され、前記化合物(A)〜(H)と共に存在する材料の全重量に関係する、成分(D)0.0002〜0.04重量%、
成分(E)0〜2重量%、
成分(F)30〜80重量%、
成分(G)0〜2重量%、および
成分(H)0.1〜20重量%、
を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
成分(A)+(H)と成分(B)との量の比が、成分(A)および(H)の不飽和二重結合1モル当たり、0.5〜10モルの成分(B)のSiH基が存在するように選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
前記材料が、成分(H)として以下の式II:
Si(R1n(R24-n (II)
(R1は、SiH基との付加反応を受けることができる、炭素原子2〜12個を有する直鎖状、分枝鎖または環状一価エチレン性不飽和置換基であり、R2は、SiH基との付加反応を受けることができる、またはかかる反応に不利な影響を及ぼす基を含まない、炭素原子1〜12個を有する一価ラジカルであり、nは2、3または4である)のシラン、または
一般式III:
(R1m(R23-mSi−A−Si−(R1n(R23-n (III)
(式中、R1およびR2およびnは互いに独立して、上記で定義されるとおりであり、aは、窒素または酸素原子を含有することができる、炭素原子1〜10000個を有する二価直鎖状または分枝鎖または脂環式、複素環式、芳香族またはヘテロ芳香族基であり、mは2または3、好ましくは3である)のシラン化合物、または
成分(H)として以下の式III:
(R1m(R23-mSi−A−Si−(R1n(R23-n (III)
(式中、R1およびR2およびnは互いに独立して、上記で定義されるとおりであり、aは、窒素または酸素原子を含有することができる、炭素原子1〜10000個を有する二価直鎖状または分枝鎖または脂環式、複素環式、芳香族またはヘテロ芳香族基であり、mは2または3である)のデンドリマー、
を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記材料が、ベースペースト状およびそれから物理的に分離された触媒ペースト状で存在し、成分(B)全体が前記ベースペースト中に存在し、成分(D)全体が前記触媒ペースト中に存在し、残りの成分が任意に2つのペースト中に分配される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
ベースペーストと触媒ペーストとの体積比が10:1〜1:10である、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
成分Aが、異なる粘度値を有する、少なくとも3つの構成成分A1、A2およびA3を含み、A1が最も低い粘度値を有し、A3が最も高い粘度値を有する、請求項10に記載の材料。
【請求項12】
成分A、B、D、F、H、および任意に、成分C、EおよびGのうちの1つまたは複数が混合される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の材料の製造方法。
【請求項13】
成分Bと、成分A、CおよびE〜Hのうちの1つまたは複数とを混合して、ベースペーストを形成し、成分Dと、成分A、CおよびE〜Hのうちの1つまたは複数とを混合して、触媒ペーストを形成する、請求項9に記載の材料の製造方法。
【請求項14】
(A)1分子当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する、少なくとも2つの異なる種類のオルガノポリシロキサンA1およびA2と、
(B)1分子当たり少なくとも3つのSiH基を有するオルガノ水素ポリシロキサンと、
(C)任意に、反応性基を含有しないオルガノポリシロキサンと、
(D)AとBとの反応を促進する触媒と、
(E)任意に、親水化剤と、
(F)充填剤と、
(G)任意に、従来の歯科用添加剤、補助剤および着色剤と、
(H)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する少なくとも1つのシランと、
を含む硬化性材料の使用であって、
1分子当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する、前記少なくとも2つの異なる種類のオルガノポリシロキサンA1およびA2が異なる粘度を有し、かつISO4823による硬化性材料の稠度が>35mmである、歯科用途における印象材を製造するための硬化性材料の使用。


【公表番号】特表2006−525971(P2006−525971A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505393(P2006−505393)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004861
【国際公開番号】WO2004/098542
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(504169278)スリーエム イーエスピーイー アーゲー (43)
【Fターム(参考)】