説明

高インダクタンスを持つインダクタの製造方法

【課題】 高インダクタンスを持つインダクタの製造方法を提供する。
【解決手段】
高インダクタンスを持つインダクタを製造するための方法であり、前記方法は:一時的キャリア上に除去可能なポリマー層を形成し;前記ポリマー層上に、第1のコイル、第2のコイル及び誘電層を含む構造を形成し;前記除去可能なポリマー層及び前記構造上に第1の磁性接着層を形成し;前記一時的キャリアを除去し;及び前記構造及び前記第1の磁性接着層の下に第2の磁性接着層を形成する、ことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年11月25日出願のアメリカ特許仮出願No.61/417221「共通モードフィルタの構造及び製造方法」に基づき35USC119条(e)の優先権を主張するものであり、この内容はここで参照され本明細書の一部となる。本発明は、インダクタの製造方法に関し、具体的には高インダクタンスを持つインダクタを製造するために一時的キャリアと除去可能なポリマー層を用いる、インダクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインダクタは、従来の磁性基材がキャリアとして使用され、誘電層、コイル及び磁性接着層などが従来の磁性基材上に形成されたものである。前記誘電層は前記コイルをカバーし、前記磁性接着層は前記誘電体をカバーする。しかし、従来の磁性基材が高周波で操作される際に、従来の磁性基材の透過性及び透過性損失共に、操作周波数が増加につれてより悪くなる。
【0003】
従って、ユニバーサルシリアルバス(USB)2.0、USB3.0において、高分解能マルチメディアインタフェース(HDMI)及び/又はモバイルインダストリープロセッサインタフェース(MIPI)アプリケーションにおいては、従来の磁性基材は前記インダクタのカットオフ周波数を低減させることとなり得る。従って、これまでの磁性基材を持つ従来のインダクタは、集積回路設計の要求を満たすことができない場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高インダクタンスを持つインダクタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明による第1の側面は、高インダクタンスを持つインダクタを製造する方法であり、前記方法は:一時的キャリア上に除去可能なポリマー層を形成し;前記除去可能なポリマー層上に第1のコイル、第2のコイル及び誘電層を含む構造を形成し;前記除去可能なポリマー層及び前記構造上に第1の磁性接着層を形成し;前記一時的キャリアを除去し;及び前記構造及び前記第1の磁性接着層の下に第2の磁性接着層を形成する、ことを含む方法である。
【0006】
本発明のさらなる適用可能な範囲は、以下詳細な説明により明らかとなろう。しかしここで理解されるべきは、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様として示されてはいるが、その目的は本発明を説明するためだけのためである、ということである。また、本発明の範囲内で種々の変更・変法などについては、以下詳細な説明に基づいて当業者において明らかとなるであろう。
【0007】
本発明はまた、以下詳細な説明及び添付の図面を参照してより完全に理解されるものである。これらの目的は、しかし、本発明を説明するためだけであり、本発明を限定することではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の1つの実施態様による高インダクタンスを持つインダクタを製造するための方法を示す。
【図2A】図2Aは、図1の方法のダイヤグラムを示す。
【図2B】図2Bは、図1の方法のダイヤグラムを示す。
【図2C】図2Cは、図1の方法のダイヤグラムを示す。
【図2D】図2Dは、図1の方法のダイヤグラムを示す。
【図2E】図2Eは、図1の方法のダイヤグラムを示す。
【図2F】図2Fは、図1の方法のダイヤグラムを示す。
【図2G】図2Gは、図1の方法のダイヤグラムを示す。
【図2H】図2Hは、図1の方法のダイヤグラムを示す。
【図3A】図3Aは、図1の方法により製造されるインダクタ600の断面を示すダイヤグラムを示す。
【図3B】図3Bは、図1の方法により製造されるインダクタ600の断面を示すダイヤグラムを示す。
【図3C】図3Cは、図1の方法により製造されるインダクタ600の断面を示すダイヤグラムを示す。
【図3D】図3Dは、図1の方法により製造されるインダクタ600の断面を示すダイヤグラムを示す。
【図3E】図3Eは、図1の方法により製造されるインダクタ600の断面を示すダイヤグラムを示す。
【図4A】図4Aは、図3A〜3Cのインダクタのレイアウトの対応する上面図を示すダイヤグラムを示す。
【図4B】図4Bは、図3Dのインダクタのレイアウトの対応する上面図を示すダイヤグラムを示す。
【図4C】図4Cは、図3Eのインダクタのレイアウトの対応する上面図を示すダイヤグラムを示す。
【図5A】図5Aは、本発明のインダクタのノイズ除去バンド幅及びカットオフ周波数、及び従来のインダクタのノイズ除去バンド幅及びカットオフ周波数を示すダイヤグラムを示す。
【図5B】図5Bは、本発明のインダクタのノイズ除去バンド幅及びカットオフ周波数、及び従来のインダクタのノイズ除去バンド幅及びカットオフ周波数を示すダイヤグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明につき、以下添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図中同じ符号は同じ又は類似のエレメントを示すために使用される。図は、参照符号の示す方向から見られるべきであることに留意すべきである。
【0010】
図1は、本発明の1つの実施態様による高インダクタンスを持つインダクタ600の製造方法を示すフローチャートである。図1の方法の詳細なステップは次のように説明される:
ステップ500: 開始。
ステップ502: 一時的キャリア602上に除去可能なポリマー層604を形成する。
ステップ504: 第1のコイル606、第2のコイル608及び誘電層610を前記除去可能なポリマー層604上に形成する。
ステップ506: 前記除去可能なポリマー層604及び前記誘電層610上で第1の磁性接着層612を充填する。
ステップ508: 前記一時的キャリア602を除去する。
ステップ510: 前記除去可能なポリマー層604を除去する。
ステップ512: 前記第1のコイル606、前記第2のコイル608及び前記誘電層610を第2の磁性接着剤で充填する。
ステップ514: 停止。
【0011】
ステップ502(図2Aに示される)で、前記除去可能なポリマー層604が前記一時的キャリア602上に形成される。ステップ504(図2Bに示される)で、前記第1のコイル606、第2のコイル608及び前記誘電層610を含む構造が、前記除去可能なポリマー層604上に形成される。前記誘電層610は前記第1のコイル606及び第2のコイル608を保護するために使用され、前記第1のコイル及び第2のコイル608の間のカップリング層として機能する。本発明の他の実施態様では、前記誘電層610は前記第1のコイル606及び前記第2のコイル608をカバーし、前記誘電層610はさらに前記誘電層610は前記第1のコイル606及び前記第2のコイル608の内部を充填する。より具体的には、前記誘電層610は前記第1のコイル606及び第2のコイル608により囲まれる内部領域を充填する。本発明の他の実施態様では、前記誘電層610は前記第1のコイル及び第2のコイルをカバーし、前記誘電層610はさらに前記第1のコイル606及び第2のコイル608の外側を充填するが、しかし、前記誘電層610は前記第1のコイル606及び第2のコイル608により囲まれる内部領域は充填しないものである。本発明の他の実施態様では、前記誘電層610は前記第1のコイル及び第2のコイルをカバーし、前記誘電層610はさらに前記第1のコイル606及び第2のコイル608の内部及び外側の両方を充填する。さらに、第1のコイル606、第2のコイル608及び前記誘電層610は、図3A〜3Eに示される異なる様式でスタックされ得る。図2Bは図3Aで示されるスタック様式に基づきステップ504を実施する1つの方法を簡単に示す。
【0012】
ステップ506(図2Cで示される)で、前記第1の磁性接着層612が前記除去可能なポリマー層604及び前記誘電層610上に充填/形成される。本発明の実施態様によると、前記第1の磁性接着層612は複数の磁性粒子及びポリマー系材料を含み、前記第1の磁性接着層612の複数の磁性粒子は、NiZn粒子及び/又はMnZn粒子を含む。本発明の1つの実施態様では、前記磁性粒子の粒子サイズは100μm未満である。本発明の異なる実施態様において、異なる磁性粒子が前記除去可能なポリマー層604及び前記誘電層610上に充填されてもよい。
【0013】
ステップ508及び510(図2Dに示される)で、一時的キャリア602及び前記第1のコイル606、前記第2のコイル608及び前記誘電層610の下に位置する除去可能なポリマー層604は除かれる。ステップ512(図2Eで示される)で、一時的キャリア602及び除去可能なポリマー層604が除かれた後、第2の磁性接着層614が、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層610の下に充填/形成される。本発明の1つの実施態様では、前記第2の磁性接着層614は前記第1の磁性接着層612と同じであってよい。即ち、第2の磁性接着層614はまた、複数の磁性粒子及びポリマー系材料を含むものであり、限定されるものではないが、エポキシ又はエポキシモールド化合物(EMC)が挙げられる。さらに、前記第2の磁性接着層614の磁性粒子はまた、NiZn粒子及び/又はMnZn粒子を含んでよい。さらに、硬化プロセスは前記第1の磁性接着層612及び第2の磁性接着層614で行われ、磁性粒子及び硬化ポリマー系材料から形成される前記磁性材料を形成する。1つの実施態様では、前記第1の磁性接着層612がコーティングされた後、前記第2の磁性接着層614がコーティングされる前に、硬化プロセスが前記第1の磁性接着層612に行われる。従って、前記第2の磁性接着層614がコーティングされた後、他の硬化プロセスが前記第2の磁性接着層614に実行されることとなる。他の実施態様では、前記第1の磁性接着層612がコーティングされた後で、前記第2の磁性接着層614のコーティングがなされる前に、前硬化プロセスが最初に前記第1磁性接着層612になされる。従って、前記第2の磁性接着層614がコーティングされた後で硬化プロセスが、前硬化第1磁性接着層612及び前記第2磁性接着層614に実行され、それにより磁性粒子及び硬化ポリマー系材料からなる磁性材料を形成するものである。さらに上記のように、磁性粒子及び硬化ポリマー系材料からなる磁性材料中の磁性粒子のサイズは100μm未満である。本発明の他の実施態様では、前記第2の磁性接着層614は、前記第1の磁性接着層612とは異なるものである。
【0014】
留意すべきは、上記実施態様の前記第1のコイル606及び第2のコイル608のそれぞれのコイルパターンが前記同じ膜層(図3A〜3Cに示される)に位置するスパイラルパターンである、ということである。他の実施態様では、それぞれのコイルパターンは異なる膜層に位置する区分からなるスパイラルパターンである。他の実施態様では、それぞれのコイルパターンは、お互いにスタックされる上部パターン及び下部パターンを含み、前記上部パターンの端部が電気的に前記下部パターンの端部と接続されており、前記上部パターンの他の端部は電気的に対応するワイヤを通じて対応するものに接続され、前記下部パターンの他の端部は電気的に対応するワイヤを通じて対応するものに接続される(図3D及び3Eに示される)。従って、差動モード電流が前記第1のコイル606及び第2のコイル608内を流れる際に(即ち、相互磁気結合スパイラルコンダクタパターン)、前記第1のコイル606及び第2のコイル608のそれぞれの磁束は前記スパイラルコンダクタパターン内でお互いに消去することとなる。共通モード電流が前記スパイラルコンダクタパターンを流れる場合には、前記第1のコイル及び第2のコイルの磁束は前記スパイラルコンダクタ内でお互いに足し合わされる。
【0015】
図4Aは図3A〜3Cのインダクタ600のレイアウトに対応する上面図を示し、図4B及び4Cは、図3D及び3Eでのインダクタ600のレイアウトに対応する上面図を示す。図3Aに示されるように、第1のコイル及び第2のコイルはお互いにインターレースされている。即ち、前記第2のコイル608の第1の(底部)層6082は、前記第1のコイル606の第1の(底部)層6062の上に位置し、前記第1のコイル606の第2の(トップ(最上部))層6064は、前記第2のコイル608の前記第1(ボトム(底部、最下部))層6082の上に位置し、さらに前記第2のコイル608の第2の(トップ)層6084は前記第1のコイル606の前記第2の(トップ)層6064の上に位置する。さらに、前記第1のコイル606の前記第1層6062の底部(即ち、暴露された底部部分)は前記第2の磁性接着層614に直接接触し、前記誘電層610は、前第2のコイル608の前記第1層6082及び前記第1のコイル606の前記第1層6062間、前記第1のコイルの前記第1層6064及び前記第2のコイル608の前記第1層6082間及び前記第2のコイル608の前記第2層6084及び前記第2のコイル606の前記第2の層6064間を、充填/形成する。さらに、前記第1のコイル606の前記第1の層6062の前記底部を除いて、前記誘電層610は前記第1のコイル及び第2のコイルを完全にカバーする。図3Bに示されるように、前記第2のコイル608の前記第1の(底部)層6082及び第2の(トップ)層6084は、前記第1のコイル606の前記第1の(底部)層6062及び第2の(トップ)層6064の上に位置しており、前記第1のコイル606の前記第1の層6062の前記底部(即ち、暴露された底部部分)は前記第2の磁性接着層614に直接接触し、前記誘電層610は、前記第1のコイル606の前記第1の層6062及び前記第2の層6064間、前記第2のコイル608の前記第1の層6082及び前記第2の層6084間、及び前記第1のコイル606の前記第2の層6064及び前記第2のコイル608の前記第1の層6082間を充填/形成する。さらに、前記第1のコイルの前記第1の層6062の前記底部以外、前記誘電層610は前記第1のコイル606及び前記第2のコイル608を完全にカバーする。図3Cに示されるように、前記第2のコイルの前記第1の(底部)層6082及び前記第2の(トップ)層6084は、前記第1のコイルの前記第1の(底部)層6062及び前記第2の(トップ)層の間に位置するものであり、前記第1のコイル606の前記第1の層6062の前記底部(即ち、暴露された底部部分)は前記第2の磁性接着層614に直接接触する。前記誘電層610は、前記第2のコイルの前記第1の(底部)層6082及び前記第1のコイルの前記第1の(底部)層6062間、前記第2のコイルの前記第2の(トップ)層6084及び前記第1の(底部)層6082間、及び前記第1のコイルの前記第2の(トップ)層6064及び前記第2のコイルの前記第2の(トップ)層608間を充填/形成する。さらに、前記第1のコイル606の前記第1の層6062の前記底部以外、前記誘電層610は前記第1のコイル及び前記第2のコイルをカバーする。図3A〜3Cに示されるように、前記誘電層610は前記第1のコイル及び前記第2のコイルを保護し、前記第1のコイル及び前記第2のコイル間の結合層として機能する。図4に示されるように、インダクタ600のレイアウトの上面図において、第1のビア620が前記第1のコイル606に接続され、前記第2のコイル608の第2のビア622が前記インダクタ600のレイアウトの内部側の2つの対抗側に位置されている前記内部領域(即ち、前記第1のコイル606及び前記第2のコイル608により囲まれる内部領域)に位置する。
【0016】
図3Dに示されるように、前記第2のコイル608は、前記第1のコイル606の上に位置し、前記第1のコイル606の前記第1の層6062は前記第2の磁性接着層614に直接接触し、前記誘電層610は、前記第1のコイル606及び前記第2のコイル608間を充填/形成する。他の実施態様では、絶縁材料が前記第1のコイル606及び前記第2の磁性接着層614間に設けられる。前記絶縁材料は、前記第1のコイル606の底部及び前記第2の磁性接着層614間に直接(エッチングすることなく)形成されることができ、また、前記第1のコイル606の前記底部及び前記第2の磁性接着層614間にコーティングされ得る。しかし絶縁材料なしのインダクタ600のカットオフ周波数は増加され得る。
【0017】
図3Dに示されるように、前記第1のコイル606と接続される第1のビア620及び前記第2のコイルと接続される第2のビア622は前記第2のコイル608上に位置する。しかし本発明は、前記第2のコイル上にある前記第1のビア620及び前記第2のビア622に限定されるものではない。即ち、前記第1のビア620及び前記第2のビア622は前記第2のコイル608及び前記第1のコイル606の外側で前記誘電層610の全ての位置に位置することができる。さらに、前記第1のコイル606の前記底部以外、前記誘電層610は前記第1のコイル606,前記第2のコイル608,前記第1のビア620、及び前記第2のビア622を完全にカバーする。図4Bに示されるように、インダクタ600のレイアウトの上面図において、前記第1のコイル606に接続される前記第1のビア620及び前記第2のコイル608の前記第2のビア622は前記インダクタ600の前記レイアウトの前記内部側(即ち、前記第1のコイル606及び前記第2のコイル608で囲まれた内部領域)の対抗する2つの側に位置する。他の実施態様では、前記第1のコイル606へ接続された前記第1のビア620及び前記第2のコイルの前記第2のビア622は、インダクタ600の前記レイアウトの前記内部側(即ち、前記第1のコイル606と前記第2のコイル608で囲まれた前記内部領域)の同じ側に位置する(図4Cに示される)。
【0018】
図3Eに示されるように、前記第2のコイル608は前記第1のコイル606の上に位置し、前記第1のコイル606の前記第1の層6062の前記底部(即ち、暴露された底部部分)は前記第2の磁性接着層614に直接接触し、前記誘電層610は前記第1のコイル606及び前記第2のコイル間を充填する。他の実施態様では、絶縁材料が前記第1のコイル606の前記底部及び前記第2の磁性接着層614間に設けられる。前記絶縁材料は、前記第1のコイル606の前記底部及び前記第2の磁性接着層614間に直接コーティングされ得る。しかし、絶縁材料なしではインダクタ600のカットオフ周波数が増加する可能性がある。図3Eに示されるように、前記第1のコイル606に接続される第1のビア620及び前記第2のコイル608の第2のビア622は前記第2のコイルの上に位置することができる。しかし、本発明は前記第1のビア620及び第2のビア622が前記第2のコイル620上に位置することに限定されない。即ち、前記第1のビア620及び第2のビア622は、前記第2のコイル608及び前記第1のコイル606の外側のすべての側で位置することができ、前記誘電層610は前記第1のコイルの一部及び前記第2のコイルの一部をカバーすることができる。さらに、前記第1のコイル606の前記底部、前記第1のビアの上部及び前記第2のビア622の上部以外、前記誘電層610は前記第1のコイル、前記第2のコイル、前記第1のビア620の下部及び前記第2のビア622の下部をカバーする。図4Bに示されるように、前記インダクタ600の前記レイアウトの上面図において、前記第1のコイル606と接続される前記第1のビア、及び前記第2のコイルの第2のビア622は、前記インダクタの前記レイアウトの前記内側(即ち、前記第1のコイル606と前記第2のコイル608で囲まれた内部)の対抗する2つの側に位置する。他の実施態様において、前記第1のコイル606に接続された前記第1のビア620及び前記第2のコイル608の第2のビア622はインダクタ600の前記レイアウトの内側(即ち、前記第1のコイル606及び前記第2のコイル608で囲まれた内側領域)の同じ側で位置することができる(図4Cで示される)。
【0019】
図5A及び5Bは本インダクタ600のノイズ除去バンド幅及びカットオフ周波数を示し、さらに従来のインダクタのノイズ除去バンド幅及びカットオフ周波数を示す。図5A及び5Bに示されるように、インダクタ600のノイズ除去バンド幅(図5A)及びカットオフ周波数(図5B)は従来のインダクタに比較して非常に優れたものである。
【0020】
まとめると、高インダクタンスを持つインダクタの製造する方法は、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び誘電層をカバーする前記第1の磁性接着層と前記第2の磁性接着層を利用するものである。前記第1の磁性接着層は前記第2の磁性接着層と同じでも異なっていてもよい。前記第1の磁性接着層及び前記第2の磁性接着層は、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層の組み合わせ構造を完全に包みこむものである。前記第1のコイルの底部は前記第2の磁性接着層に直接接触し、又は前記第1のコイルの底部は前記第2の磁性接着層及び前記第1のビアの上部部分と直接接触し、及び前記第2のビアの上部部分は前記第1の磁性接着層と直接接触する。通常の磁性材料を用いる従来のインダクタとは異なり本発明は以下の利点を有する。
【0021】
第1に、前記第1のコイルの底部が前記第2の磁性接着層に直接接触するか、又は前記第1のコイルの底部が、前記第2の磁性接着層及び前記第1のビアの上部部分と直接接触し、かつ前記第2のビアの上部部分が前記第1の磁性接着層に直接接触し、さらに前記第1のコイル、前記第2のコイル及び誘電層が磁性接着層によりカバーされることとなり、本発明はより広いノイズ除去バンド幅を持つ。
【0022】
第2に、前記第1の磁性接着層及び前記第2の磁性接着層がより低い透過性損失を有することから、本発明はより高いカットオフ周波数を持つ。
【0023】
第3に、前記第1の磁性接着層及び第2の磁性接着層は、熱圧プロセス又はスクリーン印刷プロセスにより容易に実施される。
【0024】
第4に、本発明は、平坦な一時的キャリア及び平坦な除去可能なポリマー層を用いて、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層をスタックするための基材として作用させるものであることから、本発明はより容易なリソグラフプロセスを持ち、かつ前記第1のコイル及び前記第2のコイルがより優れた幾何学的均一性を示す。
【0025】
以上説明された本発明は、同様に多くの種々の変更・変法で実施することができることは明らかである。従ってかかる変更・変法は、本発明の範囲から外れるものではなく、以下の特許請求の範囲に含まれるものであることは、当業者には明らかである。
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
高インダクタンスを持つインダクタを製造するための方法であり、前記方法は:
一時的キャリア上に除去可能なポリマー層を形成し;
前記ポリマー層上に、第1のコイル、第2のコイル及び誘電層を含む構造を形成し;
前記除去可能なポリマー層及び前記構造上に第1の磁性接着層を形成し;
前記一時的キャリアを除去し;及び
前記構造及び前記第1の磁性接着層の下に第2の磁性接着層を形成する、ことを含む方法。
(付記2)
付記1に記載の方法であり、さらに:前記ポリマー層を除去して前記構造の底部を暴露することを含む、方法。
(付記3)
付記2に記載の方法であり、前記第2の磁性接着層を形成するステップが、前記構造の前記底部で前記第1のコイルの暴露された底部部分と直接接触させて、前記第2磁性接着層を形成することを含む、方法。
(付記4)
付記1に記載の方法であり、前記第2の磁性接着層を形成するステップが、前記構造の底部で前記第1のコイルの暴露された底部部分と直接接触するように前記第2の磁性接着層を形成することを含む方法。
(付記5)
付記4に記載の方法であり、前記第1の磁性接着層を形成するステップが、前記構造のトップ表面で第1のビアと直接接触し、前記構造の前記トップ表面で第2のビアと直接接触するように、前記第1の磁性接着層を形成することを含み、前記第1のビアが電気的に前記第1のコイルと接続され、前記第2のビアが電気的に前記第2のコイルと接続される、方法。
(付記6)
付記5に記載の方法であり、前記第1のビア及び第2のビアが、前記第1のコイル及び前記第2のコイルにより囲まれる内部領域内の同じ側で形成される、方法。
(付記7)
付記1に記載の方法で、前記第1の磁性接着層を形成するステップが、前記第11の磁性接着層を、前記構造のトップ表面で第1のビアと直接接触し、かつ前記構造の前記トップ表面で第2のビアと直接接触するように形成することを含み、前記第1のビアが電気的に前記第1のコイルと接続され、及び前記第2のビアが電気的に前記第2のコイルと接続される、方法。
(付記8)
付記7に記載の方法であり、前記第1のビア及び第2のビアが、前記第1のコイル及び前記第2のコイルで囲まれる内部領域内の対抗する側か同じ側で形成される、方法。
(付記9)
付記1に記載の方法であり、前記第1の磁性接着層を形成するステップと、前記第2の磁性接着層を形成するステップとの組み合わせが、前記構造を完全に包み込むことを含む、方法。
(付記10)
付記1に記載の方法であり、前記第1の磁性接着層及び前記第2の磁性接着層のそれぞれが、複数の磁性粒子及びポリマー系材料を含む、方法。
(付記11)
付記10に記載の方法であり、前記第1の磁性接着層及び前記第2の磁性接着層のそれぞれが、同じ材料からなり、前記複数の磁性粒子の粒子サイズが100μm未満である、方法。
(付記12)
付記1に記載の方法であり、前記第1の磁性接着層及び第2の磁性接着層が異なる材料からなる、方法。
(付記13)
付記1に記載の方法であり、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層を含む前記構造を形成するステップが:前記第1のコイルの底部層を前記第2のコイルの底部層の下に設けることを含む、方法。
(付記14)
付記13に記載の方法であり、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層を含む前記構造を形成するステップが:前記第2のコイルの前記底部層の上に前記第1のコイルのトップ層を設け、前記第2のコイルの前記トップ層の下に前記第1のコイルのトップ層を設けることを含む、方法。
(付記15)
付記13に記載の方法であり、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層を含む前記構造を形成するステップが:前記第1のコイルのトップ層を前記第2のコイルの前記底部層の下に設けることを含む、方法。
(付記16)
付記13に記載の方法であり、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層を含む前記構造を形成するステップがさらに:前記第1のコイルのトップ層が前記第2のコイルのトップ層の上に設けることを含む、方法。
(付記17)
付記1に記載の方法であり、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層を含む前記構造を形成するステップがさらに:前記除去可能なポリマー層によりカバーされる前記第1のコイルの底部以外、前記第1のコイル及び前記第2のコイルを前記誘電層で完全にカバーすることを含む、方法。
(付記18)
付記1に記載の方法であり、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層を含む前記構造を形成するステップが:前記第1のコイル及び前記第2のコイルで囲まれる内部領域を前記誘電層で完全に充填することを含む、方法。
(付記19)
付記1に記載の方法であり、前記構造が前記第1のコイル及び前記第2のコイルで囲まれる内部領域を有し、かつ前記第1の磁性接着層を形成するステップが、前記第1の磁性接着層で充填することを含み、前記内部領域を充填する前記第1の磁性接着層が前記第2の磁性接着層と直接接触することを含む、方法。
(付記20)
付記1に記載の方法であり、前記第1のコイル及び前記第2のコイルがスパイラルコンダクタパターンであり、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記誘電層を含む前記構造を前記除去可能なポリマー層上に形成するステップが、前記第1のコイルの前記スパイラルコンダクタパターンを前記第2のコイルの前記スパイラルコンダクタパターンと磁気的に結合させることを含み、前記第1のコイル及び前記第2のコイルに差動モード電流が流れる際に前記第1のコイル及び前記第2のコイルの磁束がお互いに消し合い、また前記第1のコイル及び前記第2のコイルに共通モード電流が流れる際に前記第1のコイル及び前記第2のコイルの磁束がお互いに加え合うことを含む、方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタを製造する方法であって、
一時的キャリア上に除去可能なポリマー層を形成し、
前記除去可能なポリマー層上に、第1のコイル、第2のコイル、及び誘電層を形成し、
前記除去可能なポリマー層及び前記誘電層上に第1の磁性接着層を形成し、
前記一時的キャリアを除去し、及び
前記第1のコイル、前記誘電層、及び前記第1の磁性接着層の下に第2の磁性接着層を生成するステップを含む方法。
【請求項2】
前記第1の磁性接着層及び前記第2の磁性接着層の材質は同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
インダクタであって、
第1のコイル、
前記第1のコイルの上に位置する第2のコイル、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとの間に形成される誘電層、及び
前記第1のコイル、前記誘電層、及び前記第2のコイルを包み覆う磁粉樹脂硬化磁性材料であって、前記第1のコイルの片面は前記磁粉樹脂硬化磁性材料と直接接触するものを含むインダクタ。
【請求項4】
前記第1のコイル及び前記第2のコイルは二つの互いに磁性結合される螺旋形状であり、差動モード電流が前記二つの螺旋形状に流れ込む時に、前記二つの螺旋形状の各自の磁束は相殺し、コモンモード電流が前記二つの螺旋形状に流れ込む時に、前記二つの螺旋形状の各自の磁束は合計する、請求項3に記載のインダクタ。
【請求項5】
インダクタであって、
第1のコイル、
前記第1のコイルの上に位置する第2のコイル、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとの間に形成される誘電層、及び
前記第1のコイル、前記誘電層、及び前記第2のコイルを包み覆う均一的磁粉樹脂硬化磁性材料を含むインダクタ。
【請求項6】
前記均一的磁粉樹脂硬化磁性材料は同じ磁性材料であり、且つ前記同じ磁性材料中の磁性粒子の粒径は全て100μmよりも小さい、請求項5に記載のインダクタ。
【請求項7】
インダクタであって、
第1のコイル、
前記第1のコイルの上に位置する第2のコイル、
前記第1のコイル及び前記第2のコイルを覆う誘電層、
前記第1のコイルに接続される第1のビア、及び
前記第2のコイルに接続される第2のビアを含み、
前記第1のビア及び前記第2のビアは、前記インダクタの内側の同じ片側に位置するインダクタ。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2012−114444(P2012−114444A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255939(P2011−255939)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(501231543)乾坤科技股▲ふん▼有限公司 (19)
【Fターム(参考)】