説明

高オクタン価及び低硫黄含量を有する炭化水素フラクションの製造方法

【課題】炭化水素材料から高オクタン価及び低硫黄含量を有する炭化水素フラクションを製造する。
【解決手段】本発明は、炭化水素供給材料の水素化脱硫段階(水素化脱硫装置(C))と、水素化脱硫段階から得られた流出物の全部または一部についての芳香族化合物を抽出するための少なくとも1回の段階であって、該抽出により、パラフィンに富むラフィネートとオクタン価を向上させるためにガソリンプールに送られる芳香族化合物に富む抽出物がもたらされる、段階(芳香族化合物抽出装置(D))とを少なくとも含む。パラフィンラフィネートの一部は、芳香族抽出物との混合物中で用いられ得、他の部分は、芳香族化合物を製造するためのまたはオレフィンを製造するための石油化学ベースとして用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素フラクションのオクタン価改善の分野に関し、より特定的には、高オクタン価及び低硫黄含量を有する炭化水素フラクションの製造方法であって、総硫黄含量を低減させることが可能でありながら、フラクションのオクタン価を増加させ、フラクション全体を品質向上させることが可能である、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製及び石油化学は、現在新たな制約を受けている。実際に全ての国が、厳しい硫黄規格(目標は、5〜10ppmの硫黄に達することである)を徐々に採用している。硫黄含量を減少させる問題は、接触的であれ(FCC:英語の用語によるFluid Catalytic Cracking(流動接触分解))、又は非接触的であれ(コーキング、ビスブレーキング、スチームクラッキング)、クラッキングにより得られるガソリンのガソリンプール中の一時的な(primary)硫黄前駆体に本質的に焦点が当てられる。今日では、接触分解のガソリンに硫黄規格を遵守させる構想がある。これらの構想は、オレフィン損失を制限しようと試みているが、それらは、使用される技術にかかわらず、オクタン損失を不可避的に伴い、このことは、自動車メーカーによって課せられるオクタン制約が次第に強まっている時に、問題を引き起こす。
【0003】
第2の制約は、燃料市場が、ディーゼルを支持して連続的なガソリン需要の減少をもたらす一方で、オクタンの水準、リード蒸気圧(Reid vapor pressure)、硫黄含量に関して、ガソリンの高品質要求を維持するために生じる。それ故に品質が改善されているが、留出物(灯油(kerosene)及びディーゼル)を支持して量が減少したガソリンを製造することが重要である。
【0004】
第3の制約は、石油化学、特に、スチームクラッキング及び接触改質法から生じる。スチームクラッキング及び接触改質法は、それぞれ、最も高い価値を有するオレフィンおよび芳香族化合物(エチレンおよびプロピレン)を製造するために、来る資源の制限が原因で、原料(特にナフサ)の価格が驚く程かつ持続的に上がることが分かり、芳香族化合物が少ない供給材料を要求する。
【0005】
硫黄含量を減少させるための当業者に周知の1つの解決法は、炭化水素フラクション、特に接触分解ガソリンの水素化処理(又は水素化脱硫)を実行することからなる。しかしながら、この方法は、オクタン価の極めて大幅な低下を引き起こすという主な欠点を提供する。
【0006】
オレフィンの水素化を制限し、従ってオクタン価の減少を最小限に抑えることによるオレフィンガソリンを脱硫する他の方法は、多数の特許に記載されている。
【0007】
例えば特許文献1には、低硫黄含量を有するガソリンの製造方法であって、初期ガソリン中に存在するジオレフィンの少なくとも1回の選択的水素化、ガソリン中に存在する軽質硫黄化合物の変換段階、得られたガソリンを分画して少なくとも2つのフラクション:軽質フラクションおよび重質フラクションにする段階、並びに分画において得られた重質フラクションの少なくとも一部の1段階における脱硫処理を含む、方法が示されている。この方法は、従ってガソリン中に存在する硫黄量を減少させ、かつオクタン価が単に1回だけの水素化処理により得ることができたものよりも良好であるガソリンを得ることを可能にする。しかしながら、水素化処理により得られるものと比較してオクタン価が改善されたとしても、それは、結局のところ品質劣化する、すなわち処理された供給材料のオクタン価よりも低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1370627号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故に、本発明は、炭化水素供給材料、例えば接触分解ガソリンフラクションから出発して、炭化水素フラクションを製造する方法であって、上記制約:
− 炭化水素供給材料に硫黄規格を遵守させ、製品オクタン価を供給材料のオクタン価以上としかつ硫黄含量を相当低減させること;
− 炭化水素供給材料の一部を石油化学のベースへ転化すること;
− 場合により、炭化水素供給材料の一部を、低硫黄含量を有する中間留分へ転化すること;および
− 元のガソリンの一部のみをガソリンプールに送ること
を満たすことを可能にする、方法を提案することによって、従来技術の1つ以上の欠点を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、炭化水素供給材料から出発して、高オクタン価及び低硫黄含量を有する炭化水素フラクションを製造する方法であって、
− 炭化水素供給材料の水素化脱硫段階と、
− 水素化脱硫段階から得られた流出物の全部又は一部にわたる芳香族化合物の少なくとも1回の抽出段階であって、該抽出は、パラフィンに富むラフィネートと、ガソリンプールに送られる芳香族化合物に富む抽出物をもたらす、段階と
を少なくとも含む、方法を提案する。
【0011】
本発明の一実施態様において、炭化水素供給材料は、接触分解装置又は熱分解装置又はコーキング装置又はビスブレーキング装置から得られる。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、水素化脱硫段階は選択的であり、1又は2個の反応器内での1段階、又は2段階で実行される。
【0013】
本発明の他の実施態様によれば、水素化脱硫段階は非選択的である。
【0014】
本発明の一実施態様において、パラフィンラフィネートの一部は、軽質オレフィンを生じさせるためのスチームクラッキング装置又は芳香族化合物を生じさせるための接触改質装置に送られる。
【0015】
本発明の一実施態様において、パラフィンラフィネートの一部は、芳香族抽出物との混合物中でガソリンプールに送られる。
【0016】
本発明の一実施形態において、パラフィンラフィネートの少なくとも一部は、分離段階に送られて、軽質ラフィネートおよび重質ラフィネートがもたらされ、軽質ラフネートは、芳香族抽出物との混合物中でガソリンプール、および/または、スチームクラッキング装置または接触改質装置に送られ、重質ラフィネートは、ディーゼルプールまたは灯油プールに送られる。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、本方法は、
− 炭化水素供給材料のジオレフィンの選択的水素化段階と、
− 択的水素化段階で得られる流出物の分離段階であって、少なくとも2つのフラクション:軽質炭化水素フラクションと、水素化脱硫段階からの供給材料として送られる重質炭化水素フラクションとがもたらされる、段階と
を含む。
【0018】
本発明の別の実施態様によれば、本方法は、
− 炭化水素供給材料のジオレフィンの選択的水素化段階と、
− 選択的水素化段階において得られた流出物を分離する段階であって、少なくとも2つのフラクションである軽質炭化水素フラクションと、水素化脱硫段階からの供給材料として送られる中間炭化水素フラクションとがもたらされる、段階と
を含む。
【0019】
本発明の一実施態様において、軽質炭化水素フラクションは、芳香族抽出物およびパラフィンラフィネートの一部との混合物中でガソリンプールに送られる。
【0020】
本発明の一実施態様において、芳香族化合物を抽出する段階は、液−液抽出又は抽出蒸留である。
【0021】
本発明の一実施態様において、芳香族化合物の抽出段階は、1.5〜5の溶媒比による液−液抽出である。
【0022】
本発明はまた、芳香族化合物及び/又はオレフィンが低量であり、かつ石油化学において使用される炭化水素フラクションを、ガソリンフラクションから出発して製造するための、本発明による方法の使用に関する。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、炭化水素フラクションは、スチームクラッキング法において使用される。
【0024】
本発明の別の実施態様によれば、炭化水素フラクションは、接触改質法において使用される。
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照することにより、以下に与えられ、かつ例として提供される説明を読むことからより良く理解され、かつ明瞭になるであろう。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、炭化水素材料から高オクタン価および低硫黄含量を有する炭化水素フラクションを製造する方法であって、
− 炭化水素供給材料の水素化脱硫段階と、
− 水素化脱硫段階から得られた流出物の全部または一部についての芳香族化合物を抽出するための少なくとも1回の段階であって、該抽出により、パラフィンに富むラフィネートとオクタン価を向上させるためにガソリンプールに送られる芳香族化合物に富む抽出物がもたらされる、段階とを少なくとも含む、方法であり、硫黄含量を極めて大幅に減少させながら、得られる炭化水素供給材料のオクタン価を保ち、かつ場合により増加させることを可能にすることができる。
【0027】
パラフィンラフィネートの一部は、芳香族抽出物との混合物中で用いられ得、他の部分は、芳香族化合物を製造するためのまたはオレフィンを製造するための石油化学ベースとして用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による炭化水素フラクションの製造方法の図表示である。
【図2】本発明による炭化水素フラクションの製造方法の変形例の図表示である。
【図3】本発明による炭化水素フラクションの製造方法の別の変形例の図表示である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1、2、及び3に例証される本発明による方法は、高オクタン価及び低硫黄含量を有する炭化水素フラクションを製造することからなる。
【0030】
本発明による方法で使用される供給材料は、硫黄を含有する炭化水素供給材料であって、その沸点が4個の炭素原子を有する炭化水素供給材料(C)の沸点から、ASTM D86標準による300℃の最終沸点まで広がる、ものである。本発明による方法で使用される炭化水素供給材料は、例えば、接触分解装置、熱分解装置(英語の用語によるSteam Cracker(スチームクラッカ))、コーキング装置(英語の用語によるcoker(コーカ))、又はビスブレーキング装置(英語の用語によるvisbreaker(ビスブレーカ))から得られるガソリンフラクションであっても良い。
【0031】
本発明による方法で使用される供給材料は、一般的に以下を含む:
・ オレフィンフラクション:5重量%超、ほとんどの場合10重量%超;
・ 芳香族化合物フラクション:5重量%超、ほとんどの場合10重量%超;
・ 硫黄:少なくとも50重量ppm。
【0032】
図1において例証される、本発明による方法において、炭化水素供給材料は、少なくとも1回の水素化脱硫処理、及び1回の芳香族化合物の抽出処理を受ける。このために、供給材料は、ライン(1)を介して水素化脱硫装置(C)に送られる。水素化脱硫装置(C)から得られる流出物は、ライン(4)を介して流通した後に芳香族化合物抽出装置(D)に送られる。芳香族抽出物(供給材料に対して芳香族化合物に富んだ抽出物とも呼ばれる)は、次にライン(9)を介して流通する。芳香族化合物抽出装置(D)の出口において得られたパラフィンラフィネート(供給材料に対してパラフィンに富んだラフィネートとも呼ばれる)は、ライン(6)を介して流通する。このパラフィンラフィネートの一部は、ライン(7)を介してスチームクラッキング装置に送られる。このパラフィンラフィネートの他の部分は、ライン(8)を介してガソリンプールに送られる。ライン(9)及び(8)内を流通する流出物(芳香族抽出物及びパラフィンラフィネート)の混合物は、ライン(10)を介してガソリンプールに送られる。
【0033】
水素化脱硫及び芳香族化合物抽出の段階の構想は、炭化水素供給材料全体、特にガソリンフラクションを、硫黄含量を減少させ、かつガソリンのオクタン価を最大にすることにより品質向上させることを可能にする。ガソリンの一部は、低硫黄含量を有する中間留分に転化され得る。ガソリンの別の部分は、スチームクラッキング装置に送られることにより、石油化学のベースにおいて使用され得る。
【0034】
本発明による方法は、それ故に、石油化学にとってより良いラフィネートの利益となるように、炭化水素供給材料から製造されるガソリンの量を減少させることによって上記の制約を満たすことを可能にする。
【0035】
本発明による方法の変形例(図2に例証される)によれば、水素化脱硫及び芳香族化合物抽出の段階に先行して、選択的水素化段階を行うことができ、これ自体の後に、分離段階が行われる。この変形例において、供給材料は、ライン(1)を介して選択的水素化装置(A)に送られる。選択的水素化装置(A)から得られる流出物は、ライン(2)を介して流通し、次に分離塔(B)に注入されて、少なくとも2つのフラクション:軽質ガソリンフラクションおよび重質ガスフラクションがもたらされる。軽質ガスフラクションは、ライン(5)を介してガソリンプールに送られる:この軽質フラクションは、160℃、好ましくは120℃、非常に好ましくは90℃の最大ASTM D86最終点を有する。重質ガソリンフラクションは、ライン(3)を介して流通し、場合によっては、中間ガソリンフラクションが、ライン(18)を介して流通する。この中間フラクションは、一般に220℃以下、好ましくは180℃以下、非常に好ましくは160℃以下のASTM D86最終沸点を有する。中間フラクションが生じさせられる時、それは、ライン(18)を介して水素化脱硫装置(C)に送られる。ライン(3)を介して流通する重質フラクションは、必要な場合、水素化処理後に中間留分に送られる。中間フラクションがない場合、重質フラクションは、ライン(3)を介して水素化脱硫装置(C)に送られる。
【0036】
水素化脱硫装置(C)から得られる流出物は、ライン(4)を介して流通し、その後、芳香族化合物抽出装置(D)に送られる。パラフィンラフィネートは、ライン(6)を介して流通する。このパラフィンラフィネートの一部は、ライン(7)を介してスチームクラッキング装置に送られる。このパラフィンラフィネートの他の部分は、ライン(8)を介してガソリンプールに送られる。ライン(9)及び(5)内を流通する流出物(軽質ガソリン及び芳香族抽出物)は、ライン(11)を介して混合され、その後、ライン(8)を介してガソリンプールに流通する流出物(パラフィンラフィネート)との混合物中で送られる。
【0037】
本発明による方法のこの変形例は、分離段階の時点で、10ppm未満の硫黄を含有する軽質ガソリンフラクションと、制御されたオレフィン含量を有する重質ガソリンフラクションとを得ることを可能にし、この重質ガソリンフラクションは、水素化脱硫装置に送られるオレフィンの15〜85%の減少を伴う。
【0038】
スチームクラッキング装置内の供給材料を最大にすることが望ましい場合、提案される形態は、
− 選択的水素化段階、
− 分離段階、
− 重質ガソリンフラクション及び軽質ガソリンフラクションの一部に対する水素化脱硫段階、
− 水素化脱硫装置から得られる流出物全部にわたり芳香族化合物を抽出する段階、
− 得られるパラフィンラフィネートの全部をスチームクラッキング装置に送る段階
からなり得る。
【0039】
パラフィンラフィネートを2つのフラクションである軽質フラクションと重質フラクションに分離することも可能であり、一方の軽質フラクションは、硫黄含量およびオクタン含量が低く、オクタン価に関してマージンが用いられるならばガソリンプールに送られ、その反対の場合には、スチームクラッキング装置内に送られ、重質フラクションは、硫黄含量が低く、引火点が制御され、灯油プールまたはディーゼルプールに送られる。
【0040】
本発明による方法の別の変形例(図3において例証される)によれば、芳香族化合物の抽出段階の後に、分離段階が行われ得る。供給材料は、ライン(1)を介して選択的水素化装置(A)に送られる。選択的水素化装置(A)から得られる流出物は、ライン(2)を介して流通し、次に、分離塔(B)に注入されて、2つのフラクションである軽質ガソリンフラクションと重質ガソリンフラクションがもたらされる。軽質ガソリンフラクションは、ライン(5)を介してガソリンプールに送られ、重質ガソリンフラクションは、ライン(3)を介して水素化脱硫装置(C)に送られる。水素化脱硫装置(C)から得られる流出物は、ライン(4)を経由して流通し、その後、芳香族化合物抽出装置(D)に送られる。
【0041】
パラフィンラフィネートは、ライン(6)を介して流通する。ライン(9)及び(5)内を流通する流出物(軽質ガソリン及び芳香族抽出物)は、ライン(11)を介して混合される。
【0042】
ライン(6)を介して流通するパラフィンラフィネートは、分離塔(E)に送られる。重質ラフィネートは、ライン(13)を介してディーゼルフラクションに送られる。軽質ラフィネートは、ライン(14)を介して流通する。この軽質ラフィネートの一部は、ライン(15)を介してガソリンプールに送られ、他の部分は、ライン(16)を介してスチームクラッキング装置に送られる。ライン(11)を介して流通する流出物は、ライン(15)を介して流通する流出物と混合され、ガソリンプールに送られるライン(17)を介して流通する流出物が提供される。
【0043】
この変形例は、製品を石油化学に送ることなく、留出物の製造を最大にすることが望ましい場合に使用され得る。
【0044】
本発明による方法の別の変形例(図示しない)によれば、炭化水素供給材料は、いかなる先行する選択的水素化段階又は分離もなしに、少なくとも1回の水素化脱硫処理、及び芳香族化合物の抽出処理を受け、その後に分離段階が行われ得る。このために、供給材料は、水素化脱硫装置に送られる。水素化脱硫装置から得られる流出物は、芳香族化合物抽出装置に送られる。芳香族化合物抽出装置の出口において得られるパラフィンラフィネートは、分離塔に送られる。重質ラフィネートは、ディーゼルフラクションに送られる。軽質ラフィネートの一部は、ガソリンプールに送られ、他の部分は、スチームクラッキング装置に送られる。抽出装置から得られる芳香族抽出物は、軽質ラフィネートの他の部分と混合され、その後、ガソリンプールに送られる。
【0045】
本発明による方法の種々の段階は、以下により詳細に記載される。
【0046】
(選択的水素化段階)
本発明による方法は、選択的水素化段階を含むことができる。この段階は、炭化水素供給材料中に存在するジオレフィンをオレフィンに変換することを目的とする。この段階の間、炭化水素供給材料中に存在する軽質硫黄生成物の重量を増加させることも可能である。
【0047】
この選択的水素化段階は、第VIII族からの少なくとも1種の金属、好ましくは白金、パラジウム及びニッケルからなる群から選択される金属、及び支持体(sbstrate)を含有する触媒の存在下に一般的にある反応器内で行われる。例えば、不活性支持体、例えばアルミナ、シリカまたは少なくとも50%のアルミナを含む支持体上に担持されたニッケルまたはパラジウムをベースとする触媒を例えば使用することが可能である。
【0048】
他の金属が主要金属と組み合わされて二元金属触媒を形成してもよい。例えばモリブデン又はタングステンがある。かかる触媒配合の使用は、例えば特許FR2 764 299において特許請求がなされた。
【0049】
操作条件の選択は、特に重要である。一般的に、本段階は、ジオレフィンの水素化に必要である化学量論値を僅かに超える水素量の圧力および存在下に行われる。水素及び処理されるべき供給材料は、一般的に固定触媒床を含む反応器内の上昇又は下降流に注入される。
【0050】
選択的水素化反応中に用いられる圧力は、60重量%超、好ましくは80重量%超、更に好ましくは95重量%超の処理されるべき供給材料が、反応器内で液相に維持するように適切であるべきである。それ故に圧力は、一般的に例えば0.4〜5MPa、好ましくは1MPa超、より好ましくは1〜4MPaである。処理されるべき供給材料の毎時体積流量は、約1〜20h−1(触媒体積及び時間当たりの供給材料体積)、好ましくは2〜10h−1、非常に好ましくは2〜8h−1である。
【0051】
温度は、ジオレフィンの適切な転化を確実にするために、ほとんどの場合約50〜250℃、好ましくは80〜220℃、より好ましくは100〜200℃である。
【0052】
リットルで表現される、水素対供給材料の比は、一般的に3〜50リットル/リットル、好ましくは3〜20リットル/リットルである。
【0053】
接触分解ガソリンの処理の場合、このものは、数重量%までのジオレフィン(0.1〜5%)を含有することができる。水素化の後、ジオレフィン含量は、一般的に3000ppm未満、好ましくは1500ppm未満に減少する。
【0054】
軽質硫黄化合物を重質硫黄化合物に変換するように、この水素化段階は、例えば、最初の炭素供給材料を、ジオレフィンを水素化することができかつ軽質硫黄化合物またはオレフィンをより重質の硫黄化合物に変換することができる触媒、または、別個の触媒(同一または異なる)に通すことにより行われ得るが、水素化段階として同一の反応器内でこの変換を行うことが可能である。
【0055】
(水素化段階から得られる流出物の分離段階)
本発明による方法は、一般的に水素化段階において得られる流出物を少なくとも2つのフラクションに分離する段階を含むことができる。これらのフラクションは:
− 制限された残留量の硫黄を含有する軽質フラクションであって、硫黄含量を低減させることを目的とする他の下流処理なしで、石油化学の供給材料として用いられ得るか、または、ガソリンプールに組み込まれ得るオレフィンを含有する、軽質フラクション、
− 供給材料に対して芳香族化合物に富み、かつ当初供給材料中に存在する硫黄化合物の大部分が濃縮された重質フラクション、
− 場合による、当初供給材料中に存在するBTX(ベンゼン、トルエン、及びキシレン)生成物の大部分を含有する中間フラクション
である。
【0056】
この分離段階は、好ましくは標準的な蒸留/分留塔によって実行される。この分留塔は、水素化から得られる供給材料の軽質フラクションと重質フラクションを少なくとも分離することを可能にする。軽質フラクションは、少量の硫黄を含み、重質フラクションは、当初の供給材料中に最初に存在する大部分の硫黄を含む。
【0057】
この塔は、一般的に0.1〜2MPa、好ましくは0.1〜1MPaの圧力で作動する。この分離塔の理論プレート数は、一般的に10〜100、好ましくは20〜60である。留出物の流量によって除算される塔内の液通過量の比であるとしてkg/hで表現される還流率は、一般的に0.1〜2、好ましくは0.5超である。
【0058】
分離の最後に得られる軽質ガソリンは、一般的に少なくとも50%のCオレフィン、好ましくは少なくとも90%の場合によるC化合物、CオレフィンおよびC化合物を含有する。
【0059】
一般的に、この軽質フラクションは、低硫黄含量を有し、すなわち燃料として使用する前に軽質フラクションを処理することは、一般的に必要でない。
【0060】
しかしながら、ある種の極端な場合に軽質ガソリンの軟化(softening)を検討することができる。
【0061】
(水素化脱硫段階)
本発明による方法は、水素化脱硫段階を含む。この段階は、初期供給材料に対して直接的に、又は分離段階の終わりに得られる重質フラクションに対して実行され得る。
【0062】
本方法の枠内で実行される水素化脱硫は、選択的(オレフィン飽和率が制御される、すなわちオレフィン部分が保存される)又は非選択的(オレフィン飽和)であり得る。この段階は、一般的に第VIII族からの少なくとも1種の元素を含む触媒の存在下に少なくとも1つの反応器内で実行される。
【0063】
(選択的水素化脱硫)
選択的水素化脱硫は、1段階、又は2段階で実行され得る。
【0064】
2段階によって、本発明者らは、HSの中間除去を有する図式を示す。
【0065】
1段階を有する図式の場合、この段階は、異なる操作条件を有する1又は2つの反応器を含むことができる。
【0066】
・ 単一反応器の場合:
使用される触媒は、一般的にコバルト又はニッケルと、モリブデンとを含む触媒である。この段階は、水素の存在下、例えば200〜400℃、好ましくは220〜350℃の温度で、一般的に0.5〜5MPa、好ましくは1〜3MPa、非常に好ましくは1.5〜3MPaの圧力下に実行される。液体体積流量は、例えば0.5〜約10h−1(触媒体積及び時間当たりの液体体積で表現)、好ましくは1〜8h−1である。H/HC比は、所望の水素化脱硫率に基づいて、例えば100〜600リットル/リットル、好ましくは100〜350リットル/リットルの範囲で調整される。
【0067】
・ 2つの反応器の場合:
第1反応器で使用される触媒及び操作条件は、単一反応器の場合に記載されたものと類似する。
【0068】
第2反応器において、使用される触媒は、一般的にコバルトと、モリブデンとを含む触媒、又はニッケルを含む触媒である。
【0069】
第2反応器の温度は、一般的に250〜400℃、好ましくは300〜370℃である。液体体積流量は、例えば0.5〜約10h−1(触媒体積及び時間当たりの液体体積で表現)、好ましくは1〜8h−1である。
【0070】
圧力条件及びH/HC比は、第1段階における第1反応器の圧力条件及びH/HC比と類似する。
【0071】
この構成(特に温度の分断及び触媒連結の使用)は、1つの単一反応器の構成よりも選択的であることを可能にする。HDS段階を通したオレフィンの保存は、それ故、更に良好である。
【0072】
2段階の場合、このものは:
− 第1段階:1反応器による1段階構想の条件と類似する、圧力、温度、LHSV及びH/HCの条件下に操作される;
− 第2段階:HSの除去後、第1段階からの流出物を処理し、第1段階の条件と同じ範囲内にある条件下に操作される。
【0073】
使用される触媒は、一般的に2段階でコバルトと、モリブデンとを含む触媒である。
【0074】
この構成は、2段階の間のHSの中間除去を使用して、一層より選択的にすることを可能にし、これにより、HS分圧が減少する。
【0075】
選択的水素化脱硫の場合、観察される水素化脱硫によるオレフィンの転化は、5〜95%、好ましくは15〜85%、非常に好ましくは15〜50%である。
【0076】
(非選択的水素化脱硫)
この段階は、水素の存在下、例えば200〜400℃、好ましくは220〜350℃の温度で、一般的に0.5〜5MPa、好ましくは1〜3MPa、非常に好ましくは1.5〜3MPaの圧力下に実行される。液体体積流量は、例えば0.5〜約10h−1(触媒体積及び時間当たりの液体体積で表現)、好ましくは1〜8h−1である。H/HC比は、所望の水素化脱硫率に基づき、例えば100〜600リットル/リットル、好ましくは100〜350リットル/リットルの範囲内で調整される。
【0077】
選択的水素化脱硫に対する主な相違は、触媒の選択である。使用される触媒は、一般的にコバルトとモリブデンとを含む触媒、又はニッケルとモリブデンとを含む触媒である。使用される触媒は、選択的水素化脱硫の場合よりも強い水素化活性を有する。
【0078】
本発明による方法において、不飽和硫黄化合物の転化は、15%超、好ましくは90%超である。
【0079】
非選択的水素化脱硫の場合、観察されるオレフィンの減少は、50%超、好ましくは85%超、非常に好ましくは95%超である。
【0080】
(芳香族化合物の抽出段階)
本発明による方法は、芳香族化合物の抽出段階を含む。この抽出は、1種以上の溶媒を用いる液−液抽出又は抽出蒸留のいずれかである。
【0081】
標準的液−液抽出の場合、抽出は、かかる抽出を実行するために当業者に周知であるあらゆるタイプの溶媒、例えばスルホランタイプの溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−ホルミルモルホリン(NFM)、メタノール、アセトニトリル及びこれらの様々な溶媒の混合物によって実行される。水素化脱硫段階後に得られる流出物は、第1抽出塔内の溶媒と接触させられ、第1抽出塔から、芳香族化合物に富む溶媒と、非芳香族化合物からなるラフィネートとが回収される。ラフィネートは、そこから残留痕跡量の溶媒を除去するために下の洗浄塔内で精製される。芳香族化合物に富む溶媒は従来、分離塔内の最後の非芳香族化合物から最初に取り除かれ、次に芳香族化合物の回収のために塔に送られる。溶媒は、再生後に再利用され、他方で芳香族化合物は、抽出物の形態で回収される。
【0082】
抽出蒸留の場合、高沸点で混合可能な不揮発性分離溶媒が、揮発度が非常に近い混合物の成分の相対揮発度(蒸気圧)を改変するために使用される。溶媒は、混合物の種々の成分と別々に相互作用し、それ故に各成分に対する揮発度の差を引き起こし、それらを分離することを可能にする。この技術は、溶媒を有する芳香族化合物を含む流れを、抽出蒸留塔に送ることからなる。非芳香族化合物は、少量の溶媒(これはその後に再生される)と共に塔の頂部を介して排出される。芳香族化合物は、溶媒と共に塔の底部を介して排出される。溶媒/芳香族化合物のユニットは、分離塔に送られるか、又は精製された芳香族化合物が溶媒から分離される。使用される溶媒は当業者に周知であり、例えばN−ホルミルモルホリンである。
【0083】
本発明の利点の1つは、高純度及び高収率で芳香族化合物を製造する石油化学環境におけるこれらの技術の適用条件とは違い、芳香族化合物の抽出段階の終わりに優れた収率も、非常に高い純度も有する必要がないという事実から生じる。オクタン価がより良好であり溶媒比がより高いとしても、生成物の品質は、当業者により従来使用されているものよりも低い溶媒比で許容可能である。従って従来の抽出装置に対して芳香族化合物を抽出する簡略化された装置を使用することが可能である。この場合、好ましくは:
− 分離塔は、除去されるか、あるいはより少ないプレートを含む、
− 溶媒/供給材料比は、比が3〜10である従来の抽出とは違い、1〜10、好ましくは1〜6、非常に好ましくは1〜3.5である。
【0084】
得られる芳香族抽出物は、供給材料中に存在する低オクタン価を有する分子であって、それ故に他の典型的な成分(リフォメート、イソメレート、エーテル、……)との再混合後にガソリンプールのリサーチ法オクタン価(英語の用語によるResearch Octane Number:RON)95、及びモータ法オクタン価(英語の用語によるMotor Octane Number:MON)85の要求規格を超えることに一般的に寄与する、分子を取り除くことを可能にする。
【0085】
得られるパラフィンラフィネートは、一般的にスチームクラッキング又は接触改質装置の優れた供給材料を構成し、かつそれ故に非常に高価なナフサに取って代わる。
【0086】
(芳香族化合物の抽出後に得られるラフィネートの分離段階)
本発明による方法は、芳香族化合物を抽出する段階において得られるラフィネートを、少なくとも2つのフラクションである軽質フラクションおよび重質フラクションに分離する段階を含むことができる。軽質フラクションは、ガソリンプール又は石油化学に送られ得、重質フラクションは、及び灯油プール又はディーゼルに送られ得る。
【0087】
この分離は、好ましくは従来の蒸留塔により実行される。
【0088】
この塔は、一般的に0.01〜2MPa、好ましくは0.01〜0.5MPaの圧力で作動する。この分離塔の理論プレート数は、一般的に10〜100、好ましくは20〜60である。留出物によって除算される塔内液体通過量の比であるとしてkg/hで表現される還流率は、一般的に0.2超、好ましくは0.4超である。
【0089】
以下の実施例は、本発明を例証する。
【0090】
(実施例)
(実施例1(図1))
a)脱硫接触分解ガソリンを得る
出発原料は、接触分解ガソリンであり、供給材料と少なくとも類似する高品質ガソリンと、スチームクラッキング装置に供給することができるラフィネートとが生じさせられる。
【0091】
接触分解ガソリンは、以下の特徴を有する:
ASTM D86蒸留: 出発点:35℃
最終点:220℃
オレフィン含量: 33.6重量%
芳香族化合物含量: 34.6重量%
RON=93.00
硫黄=3,278ppm
初期供給材料(1)は、以下の条件下に、コバルト/モリブデン触媒(HR806型)により選択的に脱硫される:温度:260℃;P=2MPa、VVH(毎時体積流量)=4h−1、水素化脱硫装置(C)内のH/HC比=200L/L(リットル/リットル)。
【0092】
b)脱硫ガソリンの抽出
水素化脱硫段階において得られる流出物は、ライン(4)を介してスルホラン芳香族化合物を抽出する装置(D)に送られる。
【0093】
装置は、従来の抽出装置に対して簡略化される:
− 分離塔が除去される、
− 溶媒/供給材料比が2.7に減少する。
【0094】
ライン(6)を介して流通するパラフィンラフィネートは、供給材料以上のオクタンを有するガソリンが得られるまで、ライン(8)を介して部分的にガソリンプールに送られる。
【0095】
過剰分は、ライン(7)を介してスチームクラッキング装置に送られる。
【0096】
c)生成物の品質
【0097】
【表1】

【0098】
これらの条件下、初期供給材料のオクタン価(RON:93.00)に対してオクタン価が僅かに増加した(RON:93.10)ガソリンが得られる。硫黄含量は、非常に低く(9.5ppm)、かつ初期供給材料の硫黄含量(3,278ppm)に対して極めて大幅に低下した。ラフィネートは、良好なスチームクラッキング供給材料を構成する。
【0099】
(実施例2(図2−選択的様式)
a)脱硫接触分解ガソリンを得る
出発原料は、接触分解ガソリンであり、このものに関して、製造されるガソリンの品質を改善しながら、スチームクラッキングに送るラフィネートを回収することが望ましい。
【0100】
ライン(1)を介して流通する接触分解ガソリンは、以下の特徴を有する:
ASTM D86蒸留: 出発点:35℃
最終点:140℃
オレフィン含量: 34.5重量%
芳香族化合物含量: 19.2重量%
RON=91.40
硫黄=1,112ppm
それは、ニッケル−モリブデン選択的水素化触媒(HR845)により処理される。
【0101】
ガソリンは、以下の条件下に処理される:温度:160℃;圧力:2MPa;VVH=4h−1、H/HC比=5L/L。
【0102】
ライン(2)を介して流通する流出物は、次に塔上で分留される(段階B)。
【0103】
頂部では、最終脱硫ASTM D86沸点60℃を有するフラクションが回収され、ライン(5)を介して流通する。底部では、ASTM D86蒸留間隔フラクション60〜140℃が回収され、ライン(3)を介して流通し、水素化脱硫装置(C)において、以下の条件下にCoMo(HR806)触媒により選択的に脱硫される:温度:260℃;P=2MPa、VVH=4h−1、H/HC比=200L/L。
【0104】
b)脱硫ガソリンの抽出
ライン(4)を介して流通する水素化脱硫からの流出物は、スルホラン芳香族化合物の抽出に送られる。
【0105】
装置は、従来の抽出装置に対して簡略化される:
− 分離塔が除去される、
− 溶媒/供給材料比が2.7に減少する。
【0106】
ライン(6)を介して流通するラフィネートは、一部が供給材料以上のオクタンを有するガソリンが得られるまで、ライン(8)を介してガソリンプールに送られる。過剰分は、ライン(7)を介してスチームクラッキング装置に送られる。抽出物は、ライン(9)を介してガソリンプールに送られる。
【0107】
c)生成物の品質
【0108】
【表2】

【0109】
これらの条件下に、初期供給材料のオクタン価(RON:91.40)に対してオクタン価が僅かに増加した(RON:92.00)ガソリンが得られる。硫黄含量は、非常に低く(<10ppm)、かつ初期供給材料の硫黄含量(1,112ppm)に対して極めて大幅に低下した。ラフィネートは、良好なスチームクラッキング供給材料を構成する。
【0110】
(実施例3(図2−非選択的様式))
a)脱硫接触分解ガソリンを得る
出発原料は、接触分解ガソリンであり、このものに関して、製造されるガソリンの品質を改善しながら、スチームクラッキングに送るラフィネートを回収することが望ましい。
【0111】
ライン(1)を介して流通する接触分解ガソリンは、以下の特徴を有する:
ASTM D86蒸留: 出発点:35℃
最終点:140℃
オレフィン含量: 34.5重量%
芳香族含量: 19.2重量%
RON=91.40
硫黄=1,112ppm
それは、ニッケル−モリブデン選択的水素化触媒(HR845)により処理される。
【0112】
ガソリンは、以下の条件下に処理される:
温度:160℃;圧力:2MPa;VVH=4h−1、H/HC比=5L/L。
【0113】
流出物は、次に、ライン(2)を経て分留される(装置B)。頂部において、最終脱硫ASTM D86沸点60℃を有するフラクションが回収され、ライン(5)を介して流通する。底部では、ASTM D86蒸留間隔フラクション60〜140℃が、ライン(3)を介して流通し、以下の条件下にCoMo触媒により脱硫され、かつ完全に水素化される(装置C):温度:260℃;P=2MPa、VVH=4h−1、H/HC比=200L/L。
【0114】
重質接触分解ガソリンのオレフィンは、事実上完全に水素化された。
【0115】
b)脱硫ガソリンの抽出
ライン(4)を介して流通する水素化脱硫からの流出物は、スルホラン芳香族化合物の抽出に送られる。
【0116】
装置は、従来の抽出装置に対して簡略化される:
− 分離塔が除去される、
− 溶媒/供給材料比が2〜3に減少する。それは、ここでは2.5に設定される。
【0117】
ライン(6)を介して流通するラフィネートは、一部、供給材料以上のオクタンを有するガソリンが得られるまで、ライン(8)を介してガソリンプールに送られる。過剰分は、ライン(7)を介してスチームクラッキング装置に送られる。抽出物は、ライン(9)を介してガソリンプールに送られる。
【0118】
c)生成物の品質
【0119】
【表3】

【0120】
これらの条件下に、供給材料と同じオクタン価(RON:91.4)を有するガソリンが得られる。硫黄含量は、非常に低く(<10ppm)、かつ初期供給材料の硫黄含量(1,112ppm)に対して極めて大幅に低下した。
【0121】
ラフィネートは、より少ないオレフィンを含有するので、先行実施例におけるより一層良好なスチームクラッキング供給材料を構成する。
【0122】
(実施例4(図2−非選択的様式))
a)脱硫接触分解ガソリンを得る
出発原料は、接触分解ガソリンであり、このものに関して製造されるガソリンの品質を改善しながら、最大オクタン価を有するガソリンと、スチームクラッキング装置に送るために非常に良質のラフィネートとを回収することが望ましい。
【0123】
接触分解ガソリンは、以下の特徴を有する:
ASTM D86蒸留: 出発点:35℃
最終点:140℃
オレフィン含量: 34.5重量%
芳香族化合物含量: 19.2重量%
RON=91.40
硫黄=1,112ppm
それは、ニッケル−モリブデン選択的水素化触媒(HR845)により、以下の操作条件下に処理される:
温度:160℃;圧力:2MPa;VVH=4h−1、H/HC比=5L/L。
【0124】
次に、流出物は、ライン(2)を経て分留される(装置B)。頂部において、最終脱硫ASTM D86沸点60℃を有するフラクションが回収され、これはライン(5)を介して循環する。底部では、ASTM D86蒸留間隔フラクション60〜140℃がライン(3)を介して流通し、以下の条件下にCoMo触媒により脱硫され、かつ完全に水素化される(装置(C)):温度:260℃;P=2MPa、VVH=4h−1、H/HC比=200L/L。
【0125】
重質接触分解ガソリンのオレフィンは、事実上完全に水素化された。
【0126】
b)脱硫ガソリンの抽出
ライン(4)を介して流通する水素化脱硫からの流出物は、スルホラン芳香族化合物の抽出に送られる(装置D)。
【0127】
この装置は、従来の芳香族抽出装置と同一である。溶媒/供給材料比は、6である。
【0128】
ラフィネートは、ライン(7)を介してスチームクラッキングに送られる。その事実上完全なパラフィン性質により、それは、優れたスチームクラッキング供給材料を構成する。
【0129】
抽出物は、ライン(9)を経てガソリンプールに送られる。
【0130】
製造されるガソリンは、供給材料に対して極めて大幅に改善されたオクタン価を有する。
【0131】
c)生成物の品質
【0132】
【表4】

【0133】
これらの条件下に、オクタン価(RON:96.90)が、初期供給材料のオクタン価(RON:91.40)に対して高いガソリンが得られる。硫黄含量は、非常に低く(<10ppm)、かつ初期供給材料の硫黄含量(1,112ppm)に対して極めて大幅に低下した。
【0134】
(実施例5(図3))
a)脱硫接触分解ガソリンを得る
出発原料は、接触分解ガソリンであり、このものに関してディーゼルプールに20%を送ることが望ましく、その一方で供給材料に少なくとも類似する品質のガソリンと、スチームクラッキング装置に供給することできるラフィネートとを製造する。
【0135】
接触分解ガソリンは、以下の特徴を有する:
ASTM D86蒸留: 出発点:35℃
最終点:220℃
オレフィン含量: 33.6重量%
芳香族化合物含量: 34.6重量%
RON=93.00
硫黄=3,278ppm
それは、ニッケル−モリブデン選択的水素化触媒(HR845型)により、以下の操作条件下に処理される:
温度:160℃;圧力:2MPa;VVH=4h−1、H/HC比=5L/L。
【0136】
ライン(2)を介して流通する選択的水素化の最後に得られる流出物は、次に分留塔(B)で分留される。塔の頂部において、最終脱硫ASTM D86沸点60℃を有するフラクションが回収され、このものは、ライン(5)を介して流通する。
【0137】
底部では、ASTM D86蒸留間隔60〜220℃を有するフラクションがライン(3)を介して流通し、以下の操作条件下にコバルト/モリブデン触媒(HR806型)により選択的に脱硫される(装置C):温度:260℃;P=2MPa、VVH=4h−1、H/HC比=200L/L。
【0138】
b)脱硫ガソリンの抽出
水素化脱硫段階からの流出物は、ライン(4)を介してスルホラン芳香族化合物の抽出に送られる。この装置は、従来の抽出装置に対して簡略化される:
− 溶媒/供給材料比が3.5に減少する。
【0139】
ライン(6)を介して流通する抽出ラフィネートは、次に蒸留される。最も重質の脱硫フラクション(ASTM D86蒸留間隔150〜220℃を有する)は、ライン(13)を介してディーゼルプールに送られる。
【0140】
ライン(14)を介して流通する軽質ラフィネート(最終ASTM D86蒸留点150℃を有する)は、一部、供給材料以上のオクタンを有するガソリンが得られるまで、ガソリンプール(15)に送られる。
【0141】
過剰分は、ライン(16)を介してスチームクラッキング装置に送られる。
【0142】
c)生成物の品質
【0143】
【表5】

【0144】
これらの条件下に、初期供給材料のオクタン価(RON:93.00)に対してオクタン価が高い(RON:95.70)ガソリンが得られる。硫黄含量は、非常に低く(<10ppm)、かつ初期供給材料の硫黄含量(3,278ppm)に対して極めて大幅に低下した。
【0145】
ASTM D86 150〜220蒸留間隔を有するフラクションは、必要な場合、先行する水素化処理を伴ってディーゼルプール又は灯油プールに送られることになる。
【0146】
軽質ラフィネートは、良好なスチームクラッキング供給材料を構成する。
【0147】
本発明の種々の変形例を例証する一連の実施例は、本発明による方法が、その硫黄含量を極めて大幅に減少させながら、得られる炭化水素供給材料のオクタン価を保ち、かつ場合により増加させることを可能にするという事実を実証する。
【0148】
ガソリンの量も、石油化学のためのより良好なラフィネートの利益になるように、極めて大幅に減少する。
【0149】
本発明が、以上に提供される詳細に限定されるべきでなく、かつ本発明の適用分野から逸脱することなく、多数の他の特定の形態の下に実施態様を可能にすることは、当業者にとって明らかなはずである。従って、これらの実施態様は、例として考えられるべきであり、特許請求の範囲によって規定される範囲を超えることなく改変され得る。
【符号の説明】
【0150】
1 ライン
4 ライン
6 ライン
7 ライン
8 ライン
9 ライン
10 ライン
C 水素化脱硫装置
D 芳香族化合物抽出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給材料から高オクタン価及び低硫黄含量を有する炭化水素フラクションを製造する方法であって、
− 炭化水素供給材料の水素化脱硫段階と、
− 水素化脱硫段階から得られた流出物の全部または一部の芳香族化合物を抽出する少なくとも1回の段階であって、前記抽出により、供給材料に対してパラフィンに富むラフィネートと、ガソリンプールに送られる芳香族化合物に富む抽出物とがもたらされる、段階と
を少なくとも含む、方法。
【請求項2】
前記炭化水素供給材料は、接触分解装置又は熱分解装置又はコーキング装置又はビスブレーキング装置から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素化脱硫段階は選択的であり、1又は2個の反応器内での1段階、又は2段階で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素化脱硫段階は非選択的である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記パラフィンラフィネートの一部が、軽質オレフィンを生じさせるためのスチームクラッキング装置又は芳香族化合物を生じさせるための接触改質装置に送られる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記パラフィンラフィネートの一部が、芳香族抽出物との混合物中でガソリンプールに送られる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記パラフィンラフィネートの少なくとも一部が、分離段階に送られ、該分離段階により、軽質ラフィネートおよび重質ラフィネートがもたらされ、該軽質ラフィネートは、芳香族抽出物との混合物中でガソリンプール、および/またはスチームクラッキング装置または接触改質装置に送られ、該重質ラフィネートは、ディーゼルプールまたは灯油プールに送られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法であって、
− 前記炭化水素供給材料のジオレフィンの選択的水素化段階と
− 選択的水素化段階において得られた流出物を分離する段階であって、少なくとも2つのフラクションである軽質炭化水素フラクションおよび水素化脱硫段階からの供給材料として送られる重質炭化水素フラクションがもたらされる、段階と
を含む、方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法であって、
− 前記炭化水素供給材料のジオレフィンの選択的水素化段階、
− 選択的水素化段階において得られる流出物を分離する段階であって、少なくとも2つのフラクションである軽質炭化水素フラクションと、水素化脱硫段階からの供給材料として送られる中間炭化水素フラクションとがもたらされる、段階と
を含む、方法。
【請求項10】
前記軽質炭化水素フラクションは、芳香族抽出物およびパラフィンラフィネートの一部との混合物中でガソリンプールに送られる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記芳香族化合物抽出段階は、液−液抽出又は抽出蒸留である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記芳香族化合物抽出段階は、1.5〜5の溶媒比による液−液抽出である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ガソリンフラクションから出発して、芳香族化合物及び/又はオレフィンの含量が低く、かつ石油化学において使用される炭化水素フラクションを製造するための、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法の使用。
【請求項14】
前記炭化水素フラクションは、スチームクラッキング法において使用される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記炭化水素フラクションは、接触改質法において使用される、請求項13に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−275550(P2010−275550A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120003(P2010−120003)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】