説明

高ジグリセリド構造性組成物ならびにこれを用いる製品および方法

新規な構造性組成物およびこれら組成物を含む食品生産物が提供されている。組成物はモノ−およびジグリセリド混合物を含有し高レベルのβ’結晶類および小さい平均結晶子サイズを持っている。これらは中間食品生産物、例えばショートニングおよびマーガリンなどに組み込むことができ、それからこれらを用いて最終食品、例えばペーストリー(例えば、パフペーストリー、デーニッシュ、ドーナッツ)、ドウ(例えば、クッキー、パイクラスト用)、模造チーズ、アイシング、冷凍ポテト(例えば、フレンチフライ)、および/または構造性を与えるため脂肪を必要とする他の食品をつくるために用いることができる。都合のよいことに、組成物は不健康な脂肪を置き替えることで最終食品に構造性を与えるが、この脂肪は本来同じ食品内に構造性をもたらすために用いられたはずのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高レベルのジグリセリド類、高β’結晶レベル、および小さい平均結晶子サイズを有する新規の構造性組成物ならびに、これらの組成物を含む食品生産物、および用いる方法に広く関係する。
【背景技術】
【0002】
油脂は種々の食料品の準備および製造において重要である。これらは食品を滑らかにする、構造性にする、柔らかくする、および空気を含ませることを助長すると共に貯蔵期間中の防湿層として、および揚げるための加熱媒体として作用する。パン、ケーキ、ペーストリー、およびアイシングのような幾つかの食品生産物には伝統的なショートニングまたはマーガリンのような構造性の脂肪が含まれ、これらの製品に好ましい可塑性および官能刺激特性を与える。ヤシ油または綿実油のような幾つかの油はトリ−またはジ飽和物(ステアリン類)をベースとした相当量のトリグリセリド類を含み、これらは他のトリグリセリド類より高融解であるため、結果的に半固体の性質となり構造特性をもたらす。殆どの油、例えばカノーラ、大豆、ヒマワリ、高オレイン酸ヒマワリ、中オレイン酸ヒマワリ、高オレイン酸カノーラ、高オレイン酸大豆などにはそのような構造性トリグリセリド類がなく結果的に室温および未満で液状のままである。
【0003】
精製後、食用油脂は残渣レベルの遊離脂肪酸類、リン脂質類、トコフェロール類、ならびにモノ−およびジグリセリド類と共に、主としてトリグリセリド類を含む。油脂内のトリグリセリド類は分別、エステル交換、およびまたは水素添加を介して改質し構造特性を与えることができる。脂肪類(通常はヤシ)の分別は油をゆっくり冷却することによりステアリン成分を結晶させ次いでフィルタープレスを介した分離により行われる。結晶化したトリグリセリド部分(ステアリン)はプレスで捕捉され、一方で液体部分(オレイン)は通過する。できたステアリン部分は主としてより高い融点の結晶化したトリグリセリド類で、したがって開始時の油に比べてより高い固形(飽和)脂肪含有量および融解曲線を持つ。ステアリン部分の融解特性はこれに2度目の分別ステップを課すことにより増加させることができる。ステアリンおよびオレイン部分を異なる比率でブレンドすることにより広い範囲の製品を生産することが可能になる。
【0004】
エステル交換は特定の脂肪または脂肪の混合物の脂肪酸をトリグリセリド分子上の位置に関して再分配またはランダム化する処理である。この処理により脂肪酸の組成または分析結果(プロファイルまたは概要、以下プロファイルという)は変化しない。この処理は化学的に(例えば、ナトリウムメトキシドにより)または酵素的に実行することできるが、酵素的処理が好適である。分別と同様に、できた製品は出発した油または脂肪とは異なる融解および結晶化特性を持つ。
【0005】
水素添加とは不飽和脂肪酸が化学的に還元して結果的に対応する飽和脂肪酸となる過程である。さらに飽和脂肪酸は酸化安定性も増加しこれにより製品の貯蔵期間が長くなる。場合によっては、水素添加は十分に、つまり最高度まで進むに任されそこでは殆どの不飽和結合が減少して飽和形態となり、結果として十分に水素添加された脂肪または油となる。しかしながら、部分的な水素添加の方が一般により官能刺激的に魅力的な脂肪となり、一方で酸化安定性も維持する。これらの望ましい特性を考慮して、油脂、例えば大豆、綿実油、トウモロコシ、カノーラ、およびヒマワリなどの部分的水素添加が歴史的に液状の油脂を食料品用に固体または准固体形態に転換するために用いられてきている。部分的に水素添加された脂肪は化学的に膨らませたおよびイーストで発酵させた焼き製品(すなわちクラッカー、クッキー、ケーキ)、ショートニング、マーガリン、揚げ食品(すなわちスライスまたはみじん切りにしたポテト、肉製品)、模造チーズ、ピーナツバター、アイシング、および同様のものを含む多くの食料品の生産に用いられた。しかしながら、部分的な水素添加処理には残りの不飽和脂肪酸がトランス型に異性化するという望ましくない副作用があり、しかも焼きまたは揚げた製品に使用される一般的なショートニングには用いた脂肪の総重量を重量で100%としたものをベースとして、トランス異性体が15%から40%の範囲で含まれる。多くの臨床研究によりトランス脂肪酸の摂取による健康への悪影響が報告されている。幾つかの国では食品からトランス脂肪酸を追放しているが、一方で他国、例えば合衆国では今ではトランス脂肪の含有量を栄養情報に含むことを必要としている。その結果、多くの食品製造者はその処方からトランス脂肪を完全に除去してしまっている。
【0006】
最もありふれた取り組みは切断、シート化、および押出用のドウが構成する種々の焼き製品において、または可塑性ショートニング、およびマーガリンの層状ロール、模造チーズ、および菓子(すなわち、フィリング、アイシング)において、部分的に水素添加された油をヤシ油および/またはヤシ留分で置き換えることであった。しかしながら、この様なブレンドはしばしば高レベルの悪い(すなわち、飽和した)脂肪を含み、多くのブレンドでは総脂肪をベースとして48%以上の飽和脂肪を含んでいる。その上ヤシ油は良い(すなわち、多価不飽和)脂肪に乏しい。健康上の因果関係に加え、ヤシベースの脂肪は部分的に水素添加された脂肪と比較した場合に構造化するのが遅い傾向があり、かつこの様に形成された構造体は経時的に「後硬化」と称される現象に悩まされ、結果的に脆く可塑性の少ない構造体となる。さらにヤシ油は果実のような香りを持つと特徴づけることができ、これは多くの適用には望ましくない。最後に、ヤシ油を含む食料品は口中でロウっぽいまたはベタつく感じがあると報告されているが、これは油の高融解成分の緩やかな溶解特性によるものとすることができる。
【0007】
最近になって、部分的に水素添加された油を十分に精製した非水素添加、ヤシ不含液体油またはブレンド油に置き替える試みが行われてきている。十分に精製された油、例えば大豆油、カノーラ、トウモロコシ、ヒマワリ、および綿実などは主として多価不飽和脂肪酸を含み、健康的な観点からは非常に好都合な飽和に対する多価不飽和脂肪比率で構成されている。さらに多くのより新しい油、例えば高オレイン酸カノーラまたは低リノレイン酸大豆油などは水素添加無しでより高い酸化安定性を自然に提供する。不幸にも、これらの油には構造特性が無くそれら自身では部分的に水素添加した油に置き換えることには適さない。
【0008】
構造性の脂肪に対する他の取り組みには液体油(すなわち、大豆)をヤシおよび/またはヤシ留分とブレンドするものが含まれる。もう一つの取り組みは部分的に水素添加された油を液体油および十分に水素添加された油から成るエステル交換脂肪と置き換えるものである。さらに別の取り組みは十分に精製した液体油を少部分の十分に水素添加された綿実油のような十分に水素添加された油とブレンドするものである。これらの取り組みはトランス脂肪を防ぎながらある程度の構造性を達成するが、それらはなお乏しい結晶化および構造性挙動と同時に、他の欠点、例えば飽和脂肪含有量および乏しい官能刺激性などに悩んでいる。これらは未だ高レベルの飽和または水素添加脂肪を含むため、良脂肪の悪脂肪に対する比率をわずかに改善したに過ぎない。
【0009】
食品生産物の準備および貯蔵期間に関係するもう一つの問題は脂肪の移動である。脂肪の移動は特定の油脂が食品生産物内で浸透または可動性となる現象で、製品の不安定性となり得る。脂肪の移動性は結晶性の程度、結晶形状(例えば、アルファ;ベータ−ダッシュもしくはβ’;またはベータもしくはβ)および脂肪内の結晶の粒度分布の様な因子に関係している。ショートニングではベータ−ダッシュが望まれるがそれはこれが滑らかな、クリーミーな質感をもたらし焼いた製品の良好な風合いに寄与するからである。アルファ結晶は非常に細かい針状結晶であるが不安定で速やかにより安定なベータ−ダッシュ結晶に転換する。ベータ結晶はずっと粗く、粒状の結晶であり多くの用途では望まれていない。殆どの油脂は多形性の挙動を示し、1つ以上の形(多形)または結晶構造で存在する。機械的または熱的調質を用いることによりベータ−ダッシュ結晶構造を持つショートニングをつくることができる。脂肪の熱的調質(制御加熱および後続する冷却)においては、液体脂質種の一部が過飽和となり核を形成する。核生成は結晶の形成につながる。冷却速度により結晶寸法、数、および多形性が決まるため、混合結晶の形成に影響をおよぼす。結晶は種々の温度で異なる安定性を示すため、可能ならメタ安定形状から安定形状へ転換しようとする。調質によりアルファ結晶がベータ−ダッシュ形状に転換するために必要な活性化エネルギーが供給される。大豆またはカノーラのような幾つかの油に対して、この転換は非常に速やかに進む(すなわち、数秒で)。他の油、例えば綿実またはヤシなどに対してはこの転換はずっとゆっくり行われ、分単位で測定できる。特定の条件の下では、ベータ−ダッシュ結晶はさらにベータ結晶形状にまで転換する。結晶構造は幾つかの分析的方法により判定でき、結晶の多形性を広角で、および結晶子サイズを小角で特性化する粉末X線回折が含まれる。
【0010】
モノ−およびジグリセリドは油脂の結晶改質剤として用いることができる。これらは広範囲の脂肪または油から生産することができ、十分に水素添加された大豆またはヤシ油/ヤシ留分、部分的に水素添加された大豆油、および/または十分に精製された大豆油、ヤシ油/ヤシ留分、ヒマワリ油、綿実油、カノーラ油、ココナッツ油、および/またはこれらの全ての組合せまたはこれらから誘導された脂肪酸が含まれる。モノ−およびジグリセリドは通常トリグリセリドまたは脂肪酸をグリセロールと共にアルカリ性金属触媒の存在の元で反応させ、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドと少量レベルのグリセロールを、全て平衡状態に形成することにより生産する。モノグリセリドの代表的な含有量は40〜60重量%の範囲である。原料油に見られる脂肪酸の天然の分布とは異なり、できたモノグリセリド類、ジグリセリド類、およびトリグリセリド類に見られる脂肪酸の分布はランダム化または再分布されている。分子蒸留を用いることによりさらにモノグリセリド留分を残りの留分(ジグリセリドおよびトリグリセリド)から加工することができる。この加工の結果、モノグリセリドの含有量は90重量%より大きく、および残渣のジグリセリドの含有量が約5重量%となる。
【0011】
それ自体として、コーティング用およびピーナツバターのような多くの用途の脂肪にモノ−およびジグリセリドは加えられていて急速な結晶成長を促進し、より大きな平均寸法を助成し、および硬化時間を短縮している。しかしながら、存在するショートニングはβ結晶状態に向けた強い多形性の傾向(β>>β’)を示すモノグリセリドを含み、その結果ベータ形状の望ましくない大きな、粗い結晶の形成となっている。
【0012】
斯くして、ショートニングに対する先の試みでは粗悪な脂肪を減らしながら、一方で部分的に水素添加された脂肪系に見いだされる十分な構造性の特性を保つことを同時に達成することに失敗している。さらに現存する方法およびショートニング系はパン、ケーキ、ペーストリー、アイシング、および同様のものに望ましい高含有量の安定した、ベータ−ダッシュ結晶構造を達成することにも失敗している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は食品内の不健康な脂肪のレベルを下げながら一方で食品の構造を維持する方法を提供する。本方法はそうでなければ食品内に存在している多量の不健康な脂肪をマーガリンではない構造性組成物に置き替えることを含み、ここに構造性組成物はグリセリド類の混合物を含む脂肪系を含有する。構造性組成物は組成物内のグリセリド類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約50%のジグリセリド類および重量で約25%未満のモノグリセリド類を含有する。さらに、脂肪系は脂肪系内の結晶の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約30%のβ’結晶を含有する。
【0014】
本発明内ではさらに食用に適した製品が提供されている。製品は非水素添加植物油およびマーガリンではない構造性組成物を含有し、ここに構造性組成物はグリセリド類の混合物を含む脂肪系を含有する。構造性組成物は組成物内のグリセリド類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約50%のジグリセリド類および重量で約25%未満のモノグリセリド類を含有する。さらに脂肪系は、脂肪系内の結晶類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約30%のβ’結晶類を含有する。さらに本発明は食用に適した製品を含む食品を提供する。
【0015】
別の実施例では、本発明は食品内の不健康な脂肪のレベルを減少しながら一方で食品の構造性を維持する方法を提供する。本方法はそうでなければ食品内に存在する多量の不健康な脂肪を構造性組成物でグリセリド類の混合物を含む脂肪系を含有するもので置き換えることを含む。構造性組成物は組成物内のグリセリド類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約50%のジグリセリド類および重量で約25%未満のモノグリセリド類を含有する。さらに、脂肪系は脂肪系内の結晶の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約75%から約100%のβ’結晶を含有する。
【0016】
本発明はさらに食用に適した製品を提供している。製品は非水素添加植物油およびグリセリド類の混合物を含む脂肪系を有する構造性組成物を含有する。構造性組成物は組成物内のグリセリド類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約50%のジグリセリド類および重量で約25%未満のモノグリセリド類を含有する。さらに、脂肪系は脂肪系内に存在する結晶の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約75%から約100%のβ’結晶を含有する。本発明はさらに食用に適した製品を含有する食品を提供する。
【0017】
最後に、本発明はさらに構造性組成物を形成する方法を提供し、ここに本方法は混合物を約60℃から約72℃まで(約64℃から約68℃が好ましく、および約66℃がより好ましい)加熱することを含む。本混合物は次のものを含有する:
非水素添加の植物油;および
グリセリド組成物でグリセリド組成物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約35%のジグリセリド類および重量で約50%未満のモノグリセリド類を含有するもの。
脂肪系は次いで約35℃/分から約45℃/分の速度(約40℃/分が好ましい)で約26℃から約28℃(約27℃が好ましい)の温度まで冷却され脂肪系内に結晶形成を開始させると共に構造性組成物を生じさせる。構造性の系はここに記載した特性を有するショートニングまたはマーガリンであることが好ましい。本方法はさらに構造性組成物を約40時間から約60時間(約48時間が好ましい)の間、約25℃から約27℃(約26℃が好ましい)の温度の調質を含むことが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<発明によるグリセリド混合物>
<1.発明によるグリセリド混合物の準備>
グリセリド混合物は脂肪(飽和脂肪が好ましい)または脂肪酸のグリセロール分解またはエステル化により準備される。好適な脂肪類は植物油で、十分に水素添加された大豆油、十分に水素添加されたヤシ油、十分に水素添加されたパームステアリン、十分に水素添加されたココナッツ油、十分に水素添加されたカノーラ油、十分に水素添加された綿実油、十分に水素添加された高エルカ酸菜種油、および上述の混合物から成る群から選択されたものを含む。
【0019】
反応は脂肪または脂肪酸をグリセロールおよび触媒の存在の元で約225℃から約265℃の温度まで加熱して実施されることが好ましい。好適な触媒にはアルカリ金属、アルカリ土金属、Zn2+、およびSn2+の水酸化物;前述のカルボン酸塩;および前述のグリセロキシドから成る群から選択されたものが含まれる。反応物が平衡に達した後、当モルの何らかの食品グレードで熱安定性の酸(リン酸が好ましい)で触媒を不活性化するために中和される。次いで過剰なグリセロールは従来からある処理により取り除かれ、残りの部分はジグリセリド含有量をモノグリセリドのジグリセリドに対する比率で約0.05:1から約0.2:1,好ましくは約0.1:1まで濃縮するために分子蒸留のような工程で処理することができる。
【0020】
<2.発明によるグリセリド混合物の成分と特性>
準備方法に拘わらず、発明によるグリセリド混合物はモノグリセリド類およびトリグリセリド類も存在するとしても、ジグリセリドの高い混合物であることが好ましい。モノグリセリド類は混合物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約50%未満、好ましくは重量で約25%未満、より好ましくは重量で約8%未満、およびさらにより好ましくは重量で約1%から約5%未満、のレベルで混合物中に存在する。
【0021】
ジグリセリド類は混合物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で少なくとも約35%、好ましくは重量で少なくとも約50%、より好ましくは重量で少なくとも約60%、およびさらにより好ましくは重量で約60%から約80%、のレベルで混合物中に存在する。
【0022】
グリセリド混合物中のトリグリセリドレベルは最小化されることが好ましい。一般に、トリグリセリド類は混合物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約40%未満、好ましくは重量で約35%未満、およびより好ましくは重量で約30%未満、のレベルで混合物中に存在する。
【0023】
混合物中の自由グリセロールのレベルも同様に最小限化されることが好ましい。一般に、グリセロールは混合物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約5%未満、好ましくは重量で約3%未満、およびより好ましくは重量で約1%未満、のレベルで混合物中に存在する。
【0024】
発明によるグリセリド混合物は主として飽和脂肪酸を含有するという脂肪酸の分析結果がある。より具体的には、混合物中の全ての脂肪酸の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で少なくとも約80%の飽和脂肪酸を、好ましくは重量で少なくとも約90%の飽和脂肪酸を、そしてより好ましくは重量で少なくとも約95%の飽和脂肪酸を含有するということである。混合物中に存在する飽和脂肪酸は通常C14からC22飽和脂肪酸で、およびより好ましくはC16からC18飽和脂肪酸である。とりわけ好適な実施態様においては、混合物はパルミチン酸およびステアリン酸を含有し、これらを合わせた重量は上に記載した範囲内にある。
【0025】
不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸およびエライジン酸)は、混合物中の全ての脂肪酸の総重量を重量で100%としたものをベースとして、グリセリド混合物中に重量で約20%未満の不飽和脂肪酸、好ましくは重量で約10%未満の不飽和脂肪酸、および好ましくは重量で約5%未満の不飽和脂肪酸のレベルで存在する。
【0026】
さらに、グリセリド混合物のヨウ素価は約20wijs未満、好ましくは約10wijs未満、より好ましくは約5wijs未満、およびさらにより好ましくは約1wijsから約3wijsであることが好ましい。ここに用いたヨウ素価はAOCS(米国油化学会)公定法Cd1−25により決定される。
【0027】
さらにグリセリド混合物の酸価は約0.05mg KOH/グラムから約3mg KOH/グラム、好ましくは約0.1mg KOH/グラムから約1.5mg KOH/グラム、さらに好ましくは約0.1mg KOH/グラムから約0.5mg KOH/グラムである。
【0028】
<発明による構造性組成物>
構造性組成物は上述したグリセリド混合物を用いて形成することができる。とりわけ、構造性組成物はグリセリド混合物を含む、または本質的にこれから成る脂肪系を含有するものである。脂肪系内にグリセリド混合物を用いることは不健康な脂肪の少なくとも一部をグリセリド混合物に置き換えることになり不健康な脂肪(例えば、トランス脂肪、飽和脂肪)の使用を減少および/または防止することになる。
【0029】
発明によるグリセリド混合物を含む脂肪系は高いβ’結晶レベルおよび小さい平均結晶子サイズを有する。このことが在来脂肪の構造性、味覚、および質感特性を維持しながら、しかも在来脂肪の不健康な特質のない脂肪系をもたらす。マーガリンを除く製品内の脂肪系は、脂肪系内の結晶の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約30%のβ’結晶を、好ましくは少なくとも重量で約40%のβ’結晶を、より好ましくは少なくとも重量で約50%のβ’結晶を、およびさらにより好ましくは重量で約60%から約100%のβ’結晶を含む。本発明によるマーガリンの脂肪系は、脂肪系内の結晶の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で41%のβ’結晶を、好ましくは少なくとも重量で約50%のβ’結晶を、より好ましくは少なくとも重量で約60%のβ’結晶を、およびさらにより好ましくは重量で約75%から約100%のβ’結晶を含む。サンプル内のβ’結晶の重量%は実施例3で定義されるようにして決定される。最後に、脂肪系の平均結晶寸法(3回のXRDスキャンによる)は約400Å未満、好ましくは約350Å未満、およびより好ましくは約150からÅ約300Åである。
【0030】
<1.発明によるグリセリド混合物を含むショートニング>
ショートニングは焼いた製品の質感特性を滑らかにする、軟らかくする、および/または口当たりを軽くする機能を備えた脂肪である。ここに記載したグリセリド混合物を使用しこれに食用油(非水素添加の植物油が好ましい)を組み合わせることによりショートニングを準備することができる。これはグリセリド混合物の溶融状態をつくり出すのに十分な温度(例えば、約62℃から約68℃が好ましい)まで加熱し、次いでこれを予め約60℃から約66℃の温度まで予熱されている食用油内に直接加えることによりなされることが好ましい。この混合は機械的撹拌および窒素シールを行いながら実施されることが好ましい。ブレンドはグリセリド混合物と食用油とを混ぜ合わせた後に続けるべきでこれにより完全に溶解させかつ均一な組成物をもたらすことができる。一般的なブレンド時間は約30分から約50分で、約35分から約45分が好ましい。
【0031】
これで発明によるショートニング組成物はこれが用いられる特定の食料品の生産の際に直接用いることも、またはこの様な状態で必要となるまで維持することもできる。使用に際しては、ショートニングをそこで食料品の生産中にこの温度で直接加えることができる。あるいは、食料品に用いる前に徐々に(ジャケット付容器で容易になる)または急激に(何らかの形の熱交換器を用いて)の何れかにより約18℃から約32℃の温度まで冷却し食料品の他の材料に加える前に油内に分散する結晶の形成を開始させる場合がある。代わりに後で使用するために包装する場合もある。
【0032】
もう一つの実施態様においては、グリセリド混合物を食料品内に存在する他の材料と組み合わせ、続いてそのまま処理中に食用油内に可溶化することも可溶化中に少なくとも60℃の温度が確保できるならば可能である。
【0033】
特別なショートニングによっては、ショートニングの総重量を重量で100%としたものをベースとして、グリセリド混合物は一般に重量で約3%から重量で約35%のレベル、好ましくは重量で約5%から重量で約23%のレベル、およびより好ましくは重量で約5%から重量で約17%のレベルで存在する。食用油は、ショートニングの総重量を重量で100%としたものをベースとして、一般に重量で約77%から重量で約97%のレベル、および好ましくは重量で約83%から重量で約95%のレベルで存在する。ショートニングに用いられる代表的な食用油には大豆油、カノーラ油、コーン油、ヒマワリ油、サフラワー油、および中および高オレイン酸IP油から成る群から選択されたものが含まれる。
【0034】
1つの実施態様においては、ショートニングは本質的にグリセリド混合物および食用油から成る。もう一つの実施態様においては、グリセリド混合物および食用油に加え、ショートニングは次の材料を1つ以上含む場合がある:脂肪酸のプロピレングリコールエステル、ステアロイルラクチラートナトリウム、酸化防止剤または抗酸化系(例えば、TBHQ、BHA、BHT、プロピルガレート、パルミチン酸アスコルビル)、およびキレート成分(例えば、クエン酸またはEDTA)。これら付加的な材料の含有量は用途次第であるが一般的にはTBHQ、BHT、またはパルミチン酸アスコルビルのような酸化防止剤はプロピレングリコールのようなキャリヤー内でクエン酸またはEDTAのようなキレート剤と共に約200ppmまで加えることができる。
【0035】
さらに、発明によるショートニング系は他の乳化剤の運搬系として使用できる。この様な乳化剤は発明によるショートニングと機械的混合によりブレンドすることが可能で、レシチン、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、ステアロイルラクチラートナトリウム、モノグリセリド類のジアセチル酒石酸エステル、ならびにモノ−およびジグセリド類の乳酸エステルを含む場合がある。
【0036】
上の処理方法は可塑性ショートニングをつくるためと同様に溶融ショートニングまたは高比率ケーキショートニングをつくるためにも用いることができる。当然ながら、使用されるグリセリド混合物および植物油のレベルは希望するショートニングのタイプにより調整される。さらに、高比率ケーキショートニングをつくるためには材料に乳化剤が加えられる。表Aには異なるグリセリド混合物の量を示し、一方で表B〜Dには本発明による異なるタイプのショートニングの脂肪酸の分析結果の範囲を示している。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
<2.発明によるグリセリド混合物を含有するマーガリン>
発明によるマーガリンは同時に2つの相を準備することにより生産される:(i)水相;および(ii)発明による脂肪相で一人前当たり0.5グラム未満のトランス脂肪および従来技術によるマーガリンに比べて一人前当たり少ない還元飽和脂肪酸をもたらす。
【0043】
水相は構成要素(水、塩、ショ糖、ポリソルベート60、およびクエン酸)を物理的なブレンドまたは混ぜて準備されることが好ましく、機械的撹拌によることが好ましい。混合物は全ての材料が水により溶媒和するまで軽く加熱し均質となるまで混合する。
【0044】
発明による脂肪相は構成要素(RBDヤシ油、パームステアリン、非水素添加植物油、およびグリセリド混合物)を物理的ブレンドまたは混ぜて調合することが好ましく、機械的撹拌が好ましい。この混合に先立って、グリセリド混合物は材料が十分溶解する高い温度(例えば、約62℃から約68℃)まで加熱されることが好ましく、それから約60℃から約66℃に予熱されている油および他の材料と直接ブレンドする。できたブレンドは均一になるまで連続的に混合する。
【0045】
両方の相が均質になってから、水相を発明による脂肪相と撹拌により混ぜ油中水型のエマルジョンに到達させる。均質なエマルジョンは低温殺菌(例えば、約73℃で約16秒間)した後で、表面掻き取り熱交換器または同様の機構にエマルジョンを通過させることによりエマルジョンを約21℃から約27℃まで急速に冷却する。この急速冷却により脂肪相の結晶化が開始され、これが存在する液体油を同伴するために必要な構造をもたらし連続脂肪相内を通じて水相を均一に分散させ続ける。結晶化したマーガリンは次いでポリコートした貯蔵段ボール箱内に包装され約21℃から約27℃の温度で約48時間から約72時間の間調質され希望する可塑性を達成する。マーガリンのテンパリングが達成されると、これは希望する食料品に加えたり、または後で使用するために貯蔵したりできる。
【0046】
グリセリド混合物は脂肪相の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約9%から重量で約20%、および好ましくは重量で約13%から重量で約15%のレベルで存在する。食用油は脂肪相の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約80%から重量で約91%、および好ましくは重量で約85%から重量で約87%のレベルで存在する。好適な食用油の例はショートニングに関して上で論じたものと類似している。さらに、ショートニングに関して論じた追加的な材料は発明によるマーガリンにも使用できる。
【0047】
表Fは発明によるマーガリンの脂肪酸の分析結果(プロファイル)を従来技術によるマーガリンと比較して示している。
【0048】
【表6】

【0049】
<3.発明によるショートニングまたはマーガリンを含有する食品>
当然のことながら、上述したショートニングおよびマーガリンは脂肪を通常含む全ての食品生産物に組み入れることができる。発明によるショートニングおよびマーガリンが普通なら用いられるはずの脂肪を全面的に置き換えることが好ましいが、希望するならば普通なら用いられる脂肪の一部だけを置き換えることも実現可能である。食品は従来の準備方法にしたがって準備されるが、ただし脂肪系の供給には発明によるショートニングまたはマーガリンが用いられる。
【0050】
発明による構造性組成物と共に用いることができる食品の例には、ペーストリー(例えば、パフペーストリー、デーニッシュ、ドーナッツ)を含む焼き製品、ドウ(例えば、クッキー、パイクラスト用)、ケーキ、およびマッフィンから成る群から選択されたものを含む。他の例には模造チーズ、アイシング、冷凍ポテト製品(例えば、フレンチフライ、テイター・トッツのような成形ポテト製品)、ポップ油、および/または構造性、コーティング(例えば、湿気遮蔽、芳香坦体)を提供するために脂肪を必要とする他の食品、および/または熱伝導媒体(例えば、フライ用脂肪)から成る群から選択されたものを含む。
【0051】
<実施例>
以下の実施例では本発明による好適な方法について説明する。しかしながら、これらの実施例は説明のために提供されるものであり内容の如何なるものも本発明全体の範囲を制限するものと見なされるべきではないと理解されるべきである。
【0052】
<実施例1>
<発明によるモノ−およびジグリセリドAの準備>
この手順において、重量で91.4%の十分に水素添加された大豆油(ADM社から入手)および重量で8.6%のグリセロール(Cargill社より入手)を反応容器内に混ぜ合わせ245℃まで加熱した。重量で0.01%の触媒量の水酸化カルシウムを加えグリセロール分解反応を開始した。反応物を平衡に達するまで放置してから当モル(重量で0.01%)の85%のリン酸で中和した。過剰なグリセリンを掻き取りまたは落下薄膜蒸発により製品から除去してから分子蒸留を用いてジグリセリドを濃縮した。できた製品は表1に記載した属性を持ち脂肪酸の分析結果(プロファイル)は表2に示してある。
【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
この実施例に示したように、ジグリセリドの含有量は60%より高い重量に保たれた。
【0056】
<実施例2>
<発明によるモノ−およびジグリセリドBの準備>
この手順において、重量で91.4%の十分に水素添加されたパームステアリン(Loaders Croklaan社から入手)および重量で8.9%のグリセロール(Cargill社より入手)を反応容器内に混ぜ合わせ245℃まで加熱した。重量で0.01%の触媒量の水酸化カルシウムを加えグリセロール分解反応を開始した。反応物を平衡に達するまで放置してから当モル(重量で0.01%)の85%のリン酸で中和した。過剰なグリセリンを掻き取りまたは落下薄膜蒸発により製品から除去してから分子蒸留を用いてジグリセリドを濃縮した。できた製品は表3に記載した属性を持ち脂肪酸の分析結果は表4に示してある。
【0057】
【表9】

【0058】
【表10】

【0059】
この実施例に示されるように、ジグリセリド含有量は60%より高い重量に保たれた。
【0060】
<実施例3>
<発明による可塑性ショートニングの準備>
「可塑性」という用語は直ちに混合または加工ができる脂肪類、または広げることができる稠度のそれに適用される。ショートニングは焼いた製品の質感特性を滑らかにする、軟らかくする、および/または口当たりを軽くする機能を備えた脂肪である。可塑性ショートニングは半固体である。それらは通常ポリコートした段ボール箱に包装されるが、これらは指定された温度範囲にわたり必要な性能特性である貯蔵安定性、クリーム状の稠度、ならびに液体油および空気を組み込む能力を提供しなくてはならない。
【0061】
この手順において、重量で84.0%の十分に精製された大豆油(ADM社より入手)および重量で16.0%の実施例2で準備した発明によるモノ−およびジグリセリドの混合物をスチームジャケット付の釜内で66℃まで加熱し平衡に達するまで放置した。発明によるショートニングに窒素を加えながら2胴式、表面掻き取り熱交換器(Armfield社モデルFT25)に高圧ピストンポンプで送り材料を27℃の温度まで急激に(40℃/分)冷却し、油内に分散した結晶の形成を開始した。結晶化した半固体塊をピンワーカー内に通し均一な熱伝達および窒素の分散を促進した。窒素ガス気泡が含まれる半固体塊を次いで押出弁の中に通すことにより製品をポリコートした段ボール箱内に包装する際の背圧を正確に制御できるようにした。製品を48時間にわたり制御された温度環境(26℃)内で調質した。
【0062】
調質工程の後、ショートニングは特徴付けられ幾つかの特性が決定した。
【0063】
<1.結晶のタイプと寸法>
結晶のタイプおよび寸法はRigaku Multiflex 自動シータ−シータ粉末X線回折装置を用いて決定した。サンプルを8℃でガラスのX線スライド上に広げた。サンプル当たり2回のスキャンを実施した。最初のスキャンは小角度域SAXS(0°から8°)内で、および2回目のスキャンは広角度域WAXS(15°〜25°)内で実施した。回折装置は40kVおよび44mAで、銅X線管により操作し、さらにデータ解析には MIDI Jade 6.5ソフトウェアを用いた。この手順による結果、3.8Åおよび/または4.2Åにピークがあり、これはβ’結晶レベルを示し、同様に4.6Åのピークがあり、これはβ結晶レベルを示している。これら各々のピークの高さを(cmで)測定した。β’ピークについては、これら2つのピークの大きい方が用いられる。ピークが同じ高さなら、その場合どちらのピークも使用できる。これらの高さを次の式に用いることによりサンプルの%β’結晶を決定する。
【0064】
【数1】

【0065】
<2.堅さ>
発明によるショートニングの堅さはTA−XT2質感解析装置(Stable Micro System 社による)で測定した。トリガーの設定は「自動5.0グラム」であった。円錐形のプローブをショートニングサンプル内に1mm/秒の速度で、総深さ35mmまで貫入させながら垂直抗力をグラムで測定した。次いでプローブを2mm/秒の速度で後退させた。正のピーク値がサンプルの「堅さ」であった。
【0066】
<3.固形脂肪含有量>
固形脂肪含有量はBruker minispec pNMR を用いてAOCS法Cd 16b−93にしたがって測定した。
【0067】
<4.粘弾性特性>
粘弾性またはレオロジー特性はペルチェ加熱および冷却付の同心円筒を附属する ATS Rheosystems 社のViscoanalyzerを用いて測定した。温度設定は70℃〜27℃で、400/秒の回転剪断を用いた。手順は27℃の等温の30分を含み、4.5x10−3の振動ひずみを用いて結晶ネットワークの発達を観察した。
【0068】
上の特性の結果を表5に示す。
【0069】
【表11】

【0070】
<実施例4>
<高比率ケーキショートニングの準備>
高比率ケーキショートニングは小麦粉より高レベルの砂糖を含むケーキの衣用生地を補強するための特別に設計されたショートニングである。そのような衣用生地は焼き工程でタンパク質が凝固しおよびデンプンがアルファ化するまでは落下(崩壊)しやすい。一般にこの様なショートニングはポリプロピレングリコールエステルを伴ったモノ−およびジグリセリドから成る乳化剤系を含むものであるが、さらにレシチン、ラクチル酸ステアロイルナトリウム、ラクチル化モノ−およびジグリセリド、および/またはポリソルベート60を含む場合もある。この様なショートニングは貯蔵安定性、規程の温度範囲を通じたなめらかな稠度、および液体油および空気を組み込む能力という要求性能特性をもたらさなくてはならない。
【0071】
表6に記述してある材料をスチームジャケット付容器内に混ぜ合わせここで撹拌および窒素シールしながら63℃まで加熱した。材料を入念に混合し乳化剤が均一かつ完全に溶解することを確かなものにした。発明によるショートニング組成物を窒素ガスと共に高圧ピストンポンプを用いて2つの晶析装置から成る表面掻き取り熱交換器内へ送り込んだ。熱交換器内で冷却が急激に行われ油内に分散する結晶の形成が開始した。次いで組成物をピンワーカーユニットに搬送し均一な加熱および窒素分散を促進するように加工した。窒素ガス気泡が含まれる半固体塊を押出弁の中に通すことにより後続の製品をポリコートした段ボール箱内に包装する際の背圧を正確に制御できるようにした。次いで製品を使用する前に48時間にわたり制御された温度環境内で調質した。
【0072】
【表12】

【0073】
できたショートニングは良好な堅さおよび可塑性を示した。さらに、脂肪を他のケーキ材料の上にクリーミングする際、発明による組成物これら材料の表面の上にきわめて均一に広がった。
【0074】
<実施例5>
<発明による溶融ショートニングAの準備>
ショートニングは多くの食料品の準備に用いられ、例えば滑らかにする、質感をサクサクする、液体を乳化する、揚げる、および/または空気混和など用途に応じ、液状(非結晶化)または半固体状(可塑性)で組み込むことができる。
【0075】
この手順では、重量で85%の十分に精製した大豆油(ADM社より入手)および重量で15%の実施例2で準備した発明によるモノ−&ジグリセリドをスチームジャケット付容器内に混ぜ入れここで撹拌と共におよび窒素シールの元で63℃の温度まで加熱を行った。材料を入念に混合しモノ−およびジグリセリドの均一かつ完全な溶解を確かなものにしてから、下に記載するように特定の製品に組み込むまでこの状態で維持した。
【0076】
<実施例6>
<発明による溶融ショートニングBの準備>
この手順では、重量で95%の十分に精製した大豆油(ADM社より入手)および重量で5%の実施例1で準備した発明によるモノ−&ジグリセリドをスチームジャケット付容器内に混ぜ入れここで撹拌と共に窒素シールの元で63℃の温度まで加熱を実施した。材料を入念に混合しモノ−およびジグリセリドの均一かつ完全な溶解を確かなものにしてから、下に記載するように特定の製品に組み込むまでこの状態で維持した。
【0077】
<実施例7>
<発明による溶融ショートニングCの準備>
この手順では、重量で88%の十分に精製した大豆油(ADM社より入手)および重量で12%の実施例2で準備した発明によるモノ−&ジグリセリドをスチームジャケット付容器内に混ぜ入れここで撹拌と共に窒素シールの元で63℃の温度まで加熱を実施した。材料を入念に混合しモノ−およびジグリセリドの均一かつ完全な溶解を確かなものにしてから、下に記載するように特定の製品に組み込むまでこの状態で維持した。
【0078】
<実施例8>
<ロールインマーガリンの準備>
ロールインマーガリンはパフペーストリー、デーニッシュペーストリー、ブリオッシュ、およびクロワッサンの生産に普通に用いられる。マーガリンは機能し続けるために幾つかの特性を維持しなければならない。第1に、マーガリンは層状化工程の間に経験するはずの温度範囲を通してその可塑性を保持しなければならない。第2に、マーガリンのレオロジー特性は層状化(脂肪およびドウの分離した層が形成される工程)温度のドウのそれと同等でなければならない。さらにマーガリンの溶融温度も十分に高く、層状化工程の間にドウ内に組み込まれることなくかつ発酵段階でその稠度を維持できるようでなくてはならない。最後に、β’結晶形態が維持されなくてはならず、これにより小結晶が供給されることで製品内の多量の液体油の動きを止められる。
【0079】
発明によるマーガリンは脂肪相および水相を表7に示したそれぞれの材料で同時に準備することにより生産した。脂肪相はRBDヤシ油、パームステアリン、カノーラ油、および実施例1によるモノ−およびジグリセリドAを撹拌しながら物理的にブレンドして準備した。ブレンド品は均質になるまで連続的に混合し66℃の温度に達した。
【0080】
水相は水、塩、ショ糖、ソルビン酸カリウム、およびクエン酸を機械撹拌により物理的にブレンドして準備した。混合物を全ての材料が水により溶媒和するまで軽く加熱し均質に達するまで混合した。
【0081】
【表13】

【0082】
水相および脂肪相の双方が均質に到達した後、水相を撹拌しながら脂肪相内にブレンドし希望する油中水型エマルジョンを達成した。均質なエマルジョンを73℃で16秒低温殺菌してから表面掻き取り熱交換器を通して27℃まで急激に冷却(40℃/分)した。この冷却により脂肪相の結晶化が開始され、これが存在する液体油を同伴し連続脂肪相のいたる所に水相を均一に分散させるために必要な構造をもたらす。結晶化したマーガリンはポリコートした段ボール箱に包装されほぼ26℃でほぼ48時間のあいだ調質されることで要求される可塑性に到達する。
【0083】
調質工程の後、マーガリン内の脂肪を上の実施例3に記載した技法を用いて特徴づけた。結果を表8に示す。
【0084】
【表14】

【0085】
β’結晶のパーセンテージおよび平均結晶子サイズ次第で調合物内に存在する多量の油の封入が決まる。このことは発明による製品が比較的高い堅さ値であることに寄与している。固体脂肪の含有量は伝統的なロールインマーガリンと同等であった。粘弾性特性はブレンド内に存在するモノ−およびジグリセリド組成物の構造性の特性をさらに示している。
【0086】
<実施例9>
<クッキードウの準備>
汎用ショートニングをクッキードウ内に組み込むことにより質感が軽くなりこのため完成した製品が十分に柔らかくなる。ドウを混合している間は、水相および脂肪の間で小麦粉の表面を巡り競り合いが起きている。水相は小麦粉のタンパク質と相互に作用して粘着性および伸張性のあるグルテンネットワークをつくり出そうとする。しかしながら、小麦粉の表面が脂肪で覆われると、吸収性が減少するため粘着性の少ないグルテンネットワークが形成される。この意味において、脂肪は質感を軽くするのに役に立つ。
【0087】
【表15】

【0088】
実施例3で準備したショートニング、グラニュー糖、塩、および重曹を混ぜ合わせパドルアタッチメント付の5クォートホーバートミキサー内でスピード1で3分間混合した。混合1分後ごとにボウルを掻き落とした。それからブドウ糖溶液および蒸留水をボウルに加えスピード1で1分間混合した。ボウルを掻き落としスピード2でさらに1分間混合を継続した。小麦粉をボウルに加え、スピード1で2分間混合を続けた。30秒ごとに混合を停止しボウルを掻き落とした。
【0089】
ドウをボウルからそっと掻き落とし、6コ分のドウを薄く油を引いたクッキーシート上に置いた。ドウの頭を手のひらで軽く平にした。ゲージ帯(0.25インチ)を用い、ドウをのし棒で前方へ一押しおよび戻りの一押しにより厚みまで伸した。ドウをクッキーカッターで切り余分のドウはカッターを取り除く前に処分した。ドウを計量し、次いで400°Fで10分間焼いた。クッキーをオーブンから取りだし30分間放冷した。
【0090】
<1.水分蒸散>
これらのクッキーを準備するために使用したドウの重量と比べ水分蒸散量を計算するために焼けたクッキーの全体重量を計った。この計算には焼いた後のクッキー全体の重さを焼く前のドウ重量から差し引きそれからその差を焼く前のクッキードウ重量で割ることを意味する。
【0091】
<2.幅、厚み、および展開比>
6つのクッキーを縁と縁を寄せて並べ、幅を測定した。次いでクッキーを90°回転して再度測定し、これで平均幅(W)を計算した。次に、6つのクッキーを縦に積み、その積み重ねた高さを測定した。クッキーを異なる順序で再度積み、積み重ねた高さを再測定した。平均厚み(T)をこれら2つの測定から計算した。平均(W)および平均(T)を決めた後、展開比は平均(W)を平均(T)で割って計算した。
【0092】
<3.堅さおよび破砕性>
クッキーの堅さおよび破砕性は3点曲げ装置を装備した TA−XT2 質感分析装置を用いて測定した。トリガー設定は「自動50.0グラム」、および風袋モードは「自動」であった。プローブを3mm/秒の速度で、全深さ5mmまでサンプルに貫通させながら、垂直抗力をグラムで測定した。次いでプローブを10mm/秒の速度で後退させた。最大力の平均がサンプルの堅さ、および破砕性は壊れた時の平均距離であった。
【0093】
上の全ての試験結果を表10に示す。
【0094】
【表16】

【0095】
発明による可塑性ショートニングはいくらか展開比が低くかついくらか水分蒸散が大きいクッキーをつくり出した。発明による可塑性ショートニングの堅さおよび破砕性はコントロールに極めて類似していた。さらに発明による可塑性ショートニングはコントロールクッキーよりいくらか表面割れが少なくかついくらか色が明るいクッキーをつくり出した。
【0096】
<実施例10>
<パイドウの準備>
汎用ショートニングをパイのドウ内に組み込むことで質感を軽くしこのためできたパイ皮がフレーキーになりサクサクした食感がある。上で実施例9のクッキーのドウに関して論じたように、小麦粉の表面を巡りドウを混合する際に水相および脂肪の間で競り合いが起きている。水相は小麦粉のタンパク質と相互に作用して粘着性および伸張性のあるグルテンネットワークをつくり出そうとする。しかしながら、小麦粉の表面が脂肪で覆われると、吸収性が減少するため粘着性の少ないグルテンネットワークが形成される。この結果として口当たりの軽い質感となり望ましい食感となる。
【0097】
パイのドウを表11の材料を用いて準備した。冷却した小麦粉および実施例3の発明によるショートニングを塩と5クォ−トのホバーとミキサー内に混ぜ入れそしてパイパドルを用いて速度1で豆からクルミ大のショートニング塊ができるまで混合した。水を加え速度1で75秒間、ドウが粘着性になるまで混合を継続したが、一方でドウを混ぜすぎないように注意した。油のしみ出しはなく、かつ眼に見える脂肪粒子も存在しなかった。次いでドウを予め3.5時間冷蔵してからドウを3/16インチのシートに伸ばした。ドウは柔らかく、25/8インチのクッキーカッターを用いて円形のドウを切り出し、続いて425°Fでおよそ13分間焼いた。発明によるドウは望ましいフレーキーなパイ皮を生産し異臭または臭気はなかった。
【0098】
【表17】

【0099】
<実施例11>
<模造モッツァレラチーズの準備>
時にアナログチーズと称されるが、模造チーズはカゼインと植物油との組合せをベースとした多くのバラエティーのプロセスチーズの中の1つである。しばしばこれは対応するチーズよりも長い貯蔵期間および低価格により特徴づけられる。これは塊、スライスとして売られ、またはピザ、カセロール、他のトッピングを含む様々な用途のためにすり下ろされる。この用途では貯蔵の間およびすり下ろしやスライスする後処理の間に油が漏れ出すことを防ぐために模造チーズを構成するショートニングを必要とする。
【0100】
<1.チーズA>
この模造チーズを準備するために用いられる材料を表12に示している。水、リン酸塩、顆粒状塩、澱粉、およびカラギーナンをスチームジャケット付の、高剪断ミキサーに加え、これに続いて混合をおこない加水反応を開始した。混合中にレンネットカゼイン、着色剤、および実施例6で準備したショートニングを加え、90.5℃の温度までの加熱を開始した。この温度に到達してから15分間混合を継続し、この混合中に乳酸、クエン酸、およびソルビン酸カリウムを加えた。ジャケットの冷却をおこないポリコートした段ボール箱に包装できるように79℃まで製品温度を下げた。製品を次いで4℃に温度制御された環境内で調質し、そこで使用まで貯蔵した。
【0101】
【表18】

【0102】
模造チーズは包装中および調質後に良好な安定性を示した。さらに良好なすり下ろし特性を持っていた。すり下ろした片は乾燥していて堅く優れた焼きおよび溶融特性を伴っていた。
【0103】
<2.チーズB>
このチーズは製造者が十分に精製されたサラダ油を室温で受け取りかつ貯蔵できる方法を提供するために準備された。上で論じたような発明によるモノ−およびジグリセリド製品を撹拌および熱を用いて油内に溶融することを伴う前段階を必要としない。この実施例においては、油および発明によるモノ−およびジグリセリド類は別々に加えられ、したがって模造チーズの準備で材料、例えば澱粉およびカラギーナンなどを正常に水和するために加熱が行われている間にモノ−およびジグリセリドをその場で油内に溶解する。
【0104】
この模造チーズBを準備するために用いられる材料を表13に示している。水、リン酸塩類、顆粒状塩、澱粉、およびカラギーナンをスチームジャケット付の、高剪断ミキサーに加え、これに続いて混合をおこない加水反応を開始した。混合中、レンネットカゼイン、着色剤、大豆油、および実施例1のモノ−およびジグリセリド調合物を加え、次いで90.5℃の温度に達するまで加熱した。この温度に到達してから15分間混合を継続し、この混合中に乳酸、クエン酸、およびソルビン酸カリウムを加えた。ジャケットの冷却をおこないポリコートした段ボール箱に包装できるように79℃まで製品温度を下げた。製品を次いで4℃に温度制御された環境内で調質し、そこで使用まで貯蔵した。
【0105】
【表19】

【0106】
模造チーズは包装中および調質後に良好な安定性を示した。これはさらに良好なすり下ろし特性を持っていた。すり下ろした片は乾燥していて堅く優れた焼きおよび溶融特性を伴っていた。脂肪ベースの栄養素の申告は以下の通りであった:飽和物21.2%;一価不飽和物17.9%;および多価不飽和物60.9%。このように、製品の多価不飽和の飽和に対する比率(2.9:1)は優れたものであった。
【0107】
<実施例12>
<冷凍した、部分揚げポテトの準備>
小売りおよび外食産業向けフレンチフライは異なる切り方および香辛料のオプションと共にある程度(標準に)揚げた形の冷凍状態で流通している。新鮮なポテトの皮を剥き、切り、糖質を減らすために湯通しし、乾燥し、そして1から2分揚げる。揚げ鍋を出てから、過剰な油を強制空気により除去する。次いで揚げ物に随意的に種々の調味料をつけ、氷点下の空気を用いた送風冷凍にさらし、そして包装する。この適用では調味料を保持するための体制およびクランピングの発生を減らすための連続的なバリヤーを個々の片の周りに形成するためにショートニングを必要とする。個々の片がクランピングすると揚げが不均一になる。
【0108】
実施例7で準備した溶融ショートニングを揚げ鍋に入れ190.5℃の温度まで加熱した。ポテトを洗い、皮を剥き、スライスし、それから160℃で2分間揚げて準備した。揚げ鍋から取り出した後、過剰な油を1分間間欠的に揺すって取り除いた。それから揚げ物を平鍋に移し送風冷凍庫内に20分間置きこの後ポリ袋に包装した。次いで揚げ物を2日間−15℃に放置して調質させておいてから評価した。冷凍された標準揚げポテトの評価は許容できるレベルのクランピングであった。消費のための最終揚げに際しては、識別できるような性状は観察できなかった。
【0109】
<実施例13>
<パフペーストリーの準備>
パフペーストリーは層状化し、発泡した、パン種を入れていない焼き製品で幾つかのロールインマーガリンの分離した層を備えている。マーガリンの分離した層によりペーストリーがオーブン内で膨らみ、その結果フワフワ、シャキシャキした製品となる。パフペーストリーはターンオーバー、ペーストリーシェル、およびクリームホーンをつくるためとして最も知られている。
【0110】
表14の材料を標準的なドウミキサー内でスピード1で1分間、続いてスピード3で5分間混合した。ドウの温度は混合後68〜72°Fに維持された。混合したドウをおおよそ3mmの厚さのシートに伸ばした。次に、1050.0gの実施例8で準備した発明によるロールインマーガリンを同じ厚さに伸ばし、伸ばしたドウの半分の中央部の上に置いた。ドウの外側の帯部をマーガリンの上に折り、中央の継ぎ目を封じた。ドウを3分の1に折り再度3mmに伸ばした。次いでドウを4分の1に折り(縦二つ折り)また3mmに再伸ばしした。これらの手順(3分の1折りその後縦二つ折り)を2回繰り返し128の脂肪層をつくりだした。次いで層状のドウをおおよそ10インチx15インチの片に切断した。個々の片は各々約100gの重さであった。
【0111】
これらの片を製パン用天板上に置きプラスチックで覆い、−15℃で少なくとも2時間冷凍した。ドウを室温で30分放置して寝かせてから375°Fで17分間焼いた。パフペーストリーをオーブンから取りだし放冷してからパフの高さを測定した(表15)。
【0112】
【表20】

【0113】
【表21】

【0114】
発明によるパフペーストリーは試験した市販されているパフペーストリーマーガリンと同等であった。このことは発明によるマーガリンが従来のパフペーストリーマーガリンと同等に機能的であることを示す。
【0115】
<実施例14>
<デーニッシュペーストリーの準備>
デーニッシュはイースト種入りの層状の甘いペーストリーでフレーキーな食感がある。ドウはロールインマーガリンと共に重ね合わせドウの中に分離した脂肪層をつくり出す。
【0116】
表16の材料を混ぜ合わせドウフック(ドウ用のフック型捏ね金具)で速度1で2分、その後速度2で8分混合し、一方でドウ温度を72°Fに維持した。
【0117】
ドウを双方向シーターを用いて厚さ8mmのシートにした。次に、重量で25%の実施例8で準備したロールインマーガリン(ドウの重量を重量で100%としたものをベースとして)をドウ表面の2/3に塗った。マーガリンを2層のドウの間に閉じこめるために残りのドウを折り返した。次いでドウを8〜10mmの厚さのシートにした。1枚のドウを三つ折りにし再度8〜10mmの厚さのシートにした。折りたたみおよびシート化をさらに2回繰り返しそれから半分に折り54の分離した脂肪層をつくり上げた。次いでドウを冷蔵庫内で16から18時間寝かせた。
【0118】
寝かせたドウを幅10から11インチおよび厚さ10mmのシートにした。ドウを幅方向に1/2インチの帯状に切り、これをねじってから最終的なデーニッシュ形状(かたつむり)にカールさせた。デーニッシュを90°F/85%相対湿度(RH)の発酵槽に45から60分間置いた。最後に、デーニッシュを380°Fで11分間焼き、包装する前に放冷した。
【0119】
【表22】

【0120】
発明によるロールインマーガリンは良好な層状化品質および優れた耐発酵性を示した。できあがった製品は甘いフレーキーな質感があり、通常これはデーニシュペーストリーに付きものである。
【0121】
<実施例15>
<ドーナッツの準備>
ドーナッツは甘い、ドウまたは衣用生地を揚げた一品である。ドーナッツの主な2つのカテゴリーはイーストで膨らませたドーナッツとケーキドーナッツである。ドーナッツは揚げ用ショートニング内で揚げられ、これらのショートニングは高い酸化安定性を持ちショートニングが曝される高温(180℃)に耐えられなければならない。
【0122】
標準的なケーキドーナッツはGrupo Bimbo 社(メキシコ)の DONASのケーキドーナッツ処方品で準備した。
【0123】
実施例5で準備した溶融ショートニングを揚げ鍋に加え180℃の揚げ温度まで加熱した。ドーナッツがくっつかないように注意しながら5つのドーナッツを揚げ鍋に加えた。ドーナッツが揚げ終わり次第(片側45秒ずつ)、これらを放冷した後でシナモンおよび砂糖で盛大にまぶした。それからドーナツをさらなる試験のため包装した。
【0124】
ドーナッツをその16〜18日間の貯蔵期間の間に3回官能分析で試験した。さらに脂肪吸収、水分活性、水分量、固さ、および接着性を測定した。発明による溶融ショートニング内で揚げたドーナッツおよび、同じケーキドーナッツであるが部分的に水素添加した大豆油内で揚げたコントロールの間に明らかな異臭または質感の差はなかった。
【0125】
さらにドーナッツはコントロールと比較して色の差は全く示さなかったが、発明による溶融ショートニング内で揚げたドーナッツはその表面に残っているシナモンおよび砂糖は確かに少なかった。特定の理論に縛られることを望むものではないが、これは発明によるショートニングに関して結晶化温度が高くなったためドーナッツに表面に残る液体油の量が少ないことによるものと考えられる。この差はドーナッツをより暖かい温度でコーティングすることにより排除できる。
【0126】
さらに発明によるドーナッツおよびコントロール双方の脂肪の吸収も重量測定法を用いて測定した。具体的には、ドーナッツ重量を測定し、その後クロロホルムを用いてドーナッツから脂肪を抽出した。次いで脂肪を量り脂肪の含有量を計算した。これらの結果を表17に示す。総脂肪吸収は発明によるドーナッツでわずかに高かったが、コントロールと比較した場合、全体の栄養学的な分析結果は向上していた。
【0127】
次いで抽出した脂肪を脂肪酸メチルエステルをつくるためにメチル化し、これをガスクロマトグラフィーを介して分析し脂肪酸含有量を判定した。結果もまた表17に示した。
【0128】
【表23】

【0129】
<1.水分活性>
コントロールおよび発明によるドーナッツ双方のそれぞれの水分活性をDecagon Aqualab Lite を用いて測定した。
【0130】
<2.水分含有量>
コントロールおよび発明によるドーナッツ双方のそれぞれの水分を揚げた12日後に測定した。これは先ずドーナッツ5gを挽いて、それからAND MX−50 水分分析装置内で160℃に加熱した。水分ロスは毎分当たりのロスが重量で0.02%未満になるまで連続的に測定した。次いでこの手順の間に得られた総水分ロスを用いて水分含有量を計算した。
【0131】
<3.質感分析>
コントロールおよび発明によるドーナッツ双方の質感分析を揚げた12日後にTA−XT2 質感分析装置を用いて行った。トリガーセットは「自動5.0グラム」であった。13mmの円柱状プローブを5mm/秒の速度で、総深さ6mmまでサンプル内に貫通させ、一方で垂直抗力をグラムで測定した。次いでプローブを5mm/秒で後退させた(これにより接着性が判る)。試験時間は5秒であった。正のピーク値がサンプルの「固さ」であった。
【0132】
上のテスト結果を表18に示す。
【0133】
【表24】

【0134】
2つの製品は質感分析により統計的には等しい固さおよび接着性の値を持っていたが、生の値ではコントロールドーナッツの方がより高い接着性を持っていたかもしれない。2つの製品は似たような水分活性を持っていたが、コントロールの含水率がわずかに高めであった。
【0135】
さらに貯蔵期間の16〜18日に亘りドーナッツの官能分析を実施した。テスト期間を通じ、発明によるショートニングで揚げたドーナッツを好んだのと同じ数の人がコントロールを好んだ。
【0136】
<実施例16>
<即席チョコレートアイシングの準備>
アイシングはケーキ、ペーストリー、およびドーナッツを含む種々の焼き製品を飾るために用いることができる。アイシングは焼き製品に見た目にも好ましい外観と共に質感および香りの両方を与える。即席(RTU)アイシングは最終消費者に利便性を与える。アイシング内の脂肪は最終製品に構造性を与えると共に製品の食感および香りの放出を高めるものでなくてはならない。
【0137】
発明によるアイシングを調合するために用いる材料を表19に示す。実施例7で準備した溶融ショートニングを70℃まで加熱し60℃に予熱しておいた残りの材料に加えた。材料を混合してからホッパーに移し、さらに500psigにセットした単段ホモジナイザー内にポンプ注入した。均質化後、混合物を2胴表面掻き取り熱交換機、その後ピンワーカー内を通過させて冷却した。アイシングは直ちに使用することもまたは包装して後日使用することもできる。
【0138】
できたアイシングは容易に焼き製品に適用でき、快い食感およびよい香りの放出を与えた。
【0139】
【表25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品中の不健康な脂肪のレベルを下げながら同時に食品の構造性を維持する方法で、前記方法にはそうでなければ食品の中に存在している多量の不健康な脂肪をマーガリンではない構造性組成物と置き換えることが含まれ、前記構造性組成物はグリセリド類の混合物を含み、ここに:
前記構造性組成物は組成物内のグリセリド類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約50%のジグリセリド類および重量で約25%未満のモノグリセリド類を含有する;および
前記脂肪系が脂肪系内に存在する結晶類の類総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約30%のβ’結晶類を含有する。
【請求項2】
前記脂肪系の平均結晶子サイズが約400Å未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グリセリド混合物がグリセロールおよび植物油、またはグリセロールおよび脂肪酸の反応生成物であり、前記植物油が十分に水素添加された大豆油、十分に水素添加されたヤシ油、十分に水素添加されたパームステアリン、十分に水素添加されたココナッツ油、十分に水素添加されたカノーラ油、十分に水素添加された綿実油、十分に水素添加された高エルカ酸菜種油、および前記の混合物から成る群から選択されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記グリセリド混合物の分析結果が脂肪酸であり、かつ前記脂肪酸の分析結果がグリセリド混合物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約80%の飽和脂肪酸類を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記飽和脂肪酸類がパルミチン酸およびステアリン酸を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記不健康な脂肪類がトランス脂肪類および/または飽和脂肪類を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記構造性組成物がさらに非水素添加の植物油を含有しかつショートニングである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記脂肪系が実質的に前記グリセリド混合物から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
食用に適した製品で:
非水素添加の植物油;および
マーガリンではない構造性組成物、前記構造性組成物がグリセリド類の混合物を含む脂肪系を含有し、ここに:
前記構造性組成物が組成物内のグリセリド類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で少なくとも約50%のジグリセリド類および重量で約25%未満のモノグリセリド類を含み;および
前記脂肪系が脂肪系内に存在する結晶類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約30%のβ’結晶類を含有する、
を含む、食用に適した製品。
【請求項10】
前記脂肪系の平均結晶子サイズが約400Å未満である、請求項9に記載の食用に適した製品。
【請求項11】
前記グリセリド混合物がグリセロールおよび植物油、またはグリセロールおよび脂肪酸の反応生成物であり、前記植物油が十分に水素添加された大豆油、十分に水素添加されたヤシ油、十分に水素添加されたパームステアリン、十分に水素添加されたココナッツ油、十分に水素添加されたカノーラ油、十分に水素添加された綿実油、十分に水素添加された高エルカ酸菜種油、および前記の混合物から成る群から選択されている、請求項9に記載の食用に適した製品。
【請求項12】
前記グリセリド混合物の分析結果が脂肪酸であり、かつ前記脂肪酸の分析結果がグリセリド混合物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約80%の飽和脂肪酸類を含有する、請求項9に記載の食用に適した製品。
【請求項13】
前記飽和脂肪酸類がパルミチン酸およびステアリン酸を含有する、請求項12に記載の食用に適した製品。
【請求項14】
前記構造性組成物がさらに非水素添加の植物油を含有しかつショートニングである、請求項9に記載の食用に適した製品。
【請求項15】
前記脂肪系が実質的に前記グリセリド混合物から成る、請求項9に記載の食用に適した製品。
【請求項16】
請求項9に記載の食用に適した製品を含む食品。
【請求項17】
前記食品生産物が焼き製品、模造チーズ、アイシング、冷凍ポテト製品、およびポップ油から成る群から選択される、請求項16に記載の食品。
【請求項18】
食品中の不健康な脂肪のレベルを下げながら同時に食品の構造性を維持する方法で、前記方法にはそうでなければ食品の中に存在している多量の不健康な脂肪をグリセリド類の混合物を含む構造性組成物と置き換えることが含まれ、ここに:
前記構造性組成物は組成物内のグリセリド類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約50%のジグリセリド類および重量で約25%未満のモノグリセリド類を含有する;および
前記脂肪系が脂肪系内に存在する結晶類の類総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約75%から約100%のβ’結晶類を含有する。
【請求項19】
前記脂肪系の平均結晶子サイズが約400Å未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記グリセリド混合物がグリセロールおよび植物油、またはグリセロールおよび脂肪酸の反応生成物であり、前記植物油が十分に水素添加された大豆油、十分に水素添加されたヤシ油、十分に水素添加されたパームステアリン、十分に水素添加されたココナッツ油、十分に水素添加されたカノーラ油、十分に水素添加された綿実油、十分に水素添加された高エルカ酸菜種油、および前記の混合物から成る群から選択されている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記グリセリド混合物の分析結果が脂肪酸であり、かつ前記脂肪酸の分析結果がグリセリド混合物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約80%の飽和脂肪酸類を含有する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記飽和脂肪酸類がパルミチン酸およびステアリン酸を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記不健康な脂肪類がトランス脂肪類および/または飽和脂肪類を含有する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記構造性組成物がさらに水を含有しかつマーガリンである、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記脂肪系が実質的に前記グリセリド混合物から成る、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
食用に適した製品で:
非水素添加の植物油;および
グリセリド類の混合物を含む脂肪系を含有する構造性組成物、ここに:
前記構造性組成物が組成物内のグリセリド類の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で少なくとも約50%のジグリセリド類および重量で約25%未満のモノグリセリド類を含み;および
前記脂肪系が脂肪系内に存在する結晶の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約75%から約100%のβ’結晶類を含有する、
を含む食用に適した製品。
【請求項27】
前記脂肪系の平均結晶子サイズが約400Å未満である、請求項26に記載の食用に適した製品。
【請求項28】
前記グリセリド混合物がグリセロールおよび植物油、またはグリセロールおよび脂肪酸の反応生成物であり、前記植物油が十分に水素添加された大豆油、十分に水素添加されたヤシ油、十分に水素添加されたパームステアリン、十分に水素添加されたココナッツ油、十分に水素添加されたカノーラ油、十分に水素添加された綿実油、十分に水素添加された高エルカ酸菜種油、および前記の混合物から成る群から選択されている、請求項26に記載の食用に適した製品。
【請求項29】
前記グリセリド混合物の分析結果が脂肪酸であり、かつ前記脂肪酸の分析結果がグリセリド混合物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で約80%の飽和脂肪酸類を含有する、請求項26に記載の食用に適した製品。
【請求項30】
前記飽和脂肪酸類がパルミチン酸およびステアリン酸を含有する、請求項29に記載の食用に適した製品。
【請求項31】
前記構造性組成物がさらに水を含有しかつマーガリンである、請求項26に記載の食用に適した製品。
【請求項32】
前記脂肪系が実質的に前記グリセリド混合物から成る、請求項26に記載の食用に適した製品。
【請求項33】
請求項26に記載の食用に適した製品を含む食品。
【請求項34】
前記食品生産物が焼き製品、模造チーズ、アイシング、冷凍ポテト製品、およびポップ油から成る群から選択される、請求項33に記載の食品。
【請求項35】
構造性組成物を形成する方法で、前記方法が:
混合物を約60℃から約72℃の温度に加熱し脂肪系を形成し、前記混合物は以下のものを含む:
非水素添加の植物油;および
グリセリド組成物で、グリセリド組成物の総重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で少なくとも35%のジグリセリド類および重量で約50%未満のモノグリセリドを含むもの;
前記脂肪系を約35℃/分から約45℃/分の速度で約26℃から約28℃の温度まで冷却し脂肪系内の結晶形成を開始させかつ構造性組成物を生じる
ことを含む、構造性組成物を形成する方法。
【請求項36】
さらに構造性組成物を約40時間から約60時間の間、約25℃から約27℃の温度で調質することを含む、請求項35に記載の方法。


【公表番号】特表2013−512693(P2013−512693A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543239(P2012−543239)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059431
【国際公開番号】WO2011/071999
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(509346106)
【Fターム(参考)】