高トリグリセリド血症を誘発することなくコレステロールレベルを低下するための化合物と方法
【課題】哺乳類において高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールを低下し、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延またはアテローム性動脈硬化症を治療する方法を提供する。
【解決手段】アポEポリペプチドまたは核酸を哺乳動物に投与または哺乳動物において発現させる段階を含む方法により、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下することができる。
【解決手段】アポEポリペプチドまたは核酸を哺乳動物に投与または哺乳動物において発現させる段階を含む方法により、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下することができる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
連邦政府資金援助による研究についての言明
本発明は、国立衛生研究所助成金AG12717により一部分資金を供給された。政府は本発明において一定の権利を有することができる。
【0002】
発明の背景
アポリポタンパク質E(アポE(apoE))含有リポタンパク質の細胞受容体による認識および異化を促進するリガンドとして、アポEはコレステロール輸送系の重要な成分である(InnerarityおよびMahley、Biochemistry 17:1440-1447、1978; HerzおよびWillnow、Curr. Opin. Lipidol. 6:97-103、1995; Wolfら、Am. J. Pathol. 141:37-42、1992; Kimら、J. Biol. Chem. 271:8373-8380、1996; Takahashiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9252-9256、1992; Mahleyら、Curr. Opin. Lipidol. 10:207-217、1999; Wardellら、J. Clin. Invest. 80:483-490、1987; Cohnら、Vas. Biol. 16:149-159、1996; Chaitら、Metabolism 27:1055-1066、1978; Huangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1834-1838、1994; Huangら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17:2010-2019、1997)。ヘパリン硫酸プロテオグリカンもまたこの過程に含まれうる(Cullenら、J. Clin. Invest. 101:1670-1677、1998; Lintonら、Science 267:1034-1037、1995; Fazioら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:4647-4652、1997; Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998; van Dijkら、J. Lipid Res. 40:336-344、1999; Huangら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 19:2952-2959、1999; Salahら、J. Lipid Res. 38:904-912、1997; Jiら、J. Biol. Chem. 268:10180-10187、1993; Jiら、J. Biol. Chem. 269:13421-13428、1994; Jiら、J. Lipid Res. 36:583-592、1995; Jiら、J. Biol. Chem. 269:2764-2772、1994)。アポEのLDL受容体およびおそらく他の受容体およびヘパリン硫酸プロテオグリカンへの結合を妨げるアポEにおける突然変異は、III型高リポタンパク血症および早期アテローム性動脈硬化症に関連している(Mahleyら、Curr. Opin. Lipidol. 10:207-217、1999; Dongら、Nature Struc. Biol. 3:718-722、1996; Wardellら、J. Clin. Invest. 80:483-490、1987; Rallら、J. Clin. Invest. 83:1095-1101、1989; Mannら、Biochim. Biophys. Acta 1005:239-244、1989; Wardellら、J. Biol. Chem. 264:21205-21210、1989; van den Maagdenbergら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 165:851-857、1989; Smitら、J. Lipid Res. 31:45-53、1990; Ghiselliら、Science 214:1239-124、198; Lalazarら、J. Biol. Chem. 263:3542-3545、1988; Weisgraberら、J. Biol. Chem. 258:12348-12354、1983; Innerarityら、J. Biol. Chem. 258:12341-12347、1983)。
【0003】
アポEは腎臓、副腎、星状細胞および網内皮細胞を含む、肝臓および様々な末梢組織により合成される34.2 kDAのタンパク質である。アポEは18個のアミノ酸シグナルペプチドを有する前駆体として合成される。アポEは、シグナルペプチドの細胞内での切断後、シアル酸を含む炭水化物鎖でグリコシル化され、シアロアポEとして分泌される。それは続いて、血漿中で脱シアル化される(Zannisら、Adv. Hum. Genet. 21:145-319、1993; Zannisら、J. Biol. Chem. 259:5495-5499、1984; およびZannisら、J. Biol. Chem. 261:13415-13421、1986参照)。
【0004】
当業者にとって容易に明白であるように、本明細書で使用されるアポEタンパク質についてのアミノ酸の番号付けは、シグナルペプチド切断後の成熟したタンパク質を指している。シグナルペプチドのアミノ酸は番号付けされた-18位から-1位までで、タンパク質前駆体のアミノ末端残基を指す-18を有する(Karathansisら、「ヒトアポA-1、アポA-11、アポC1、アポC11、アポC111およびアポEのcDNAクローンのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列(Nucleotide and Corresponding Amino Acid Sequences of Human apoA-1, apoA-11, apoC1, apoC11, apoC111 and apoE cDNA clones)」、血漿タンパク質の生化学と生物学(Biochemistry and Biology of Plasma Proteins)、ScanuおよびSpector編、Marcel Dekker、New York、11巻、475-493ページ、1985)。
【0005】
アポEのいくつかのドメインが記載されてきたが、受容体結合(Heら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:2509-2514、1998; Lalazar、前記; Weisgraber、前記(1983); Innerarityら、J. Biol. Chem. 258:12341-12347、1983; Jiら、J. Lipid Res. 36:583-592、1995; Rallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4696-4703、1982; Westerlundら、J. Biol. Chem. 268:15745-15750、1993; Wilsonら、Structure 2:713-718、1994; Wilsonら、Science 252:1817-1822、1991; Mahley、Biochim. Biophys. Acta 575:81-91、1979)、ヘパリン結合(Lalazar、前記; Fan、前記; Salah、前記; Ji、前記(1993))、脂質結合およびリポタンパク質結合(Cohn、前記; Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998; Salah、前記; Ji、前記(J. Biol. Chem. 269、1994); Ji、前記(1995); Ji、前記(J. Biol. Chem. 289、1994))におそらく関係しているものと思われる(図7C)。受容体結合ドメインは残基136〜152位の間に見出されるが、隣接する残基もまた間接的に受容体結合に作用する。
【0006】
ヘパリン結合ドメインの1つは残基140〜150位の間で受容体結合ドメインと部分的に重複し、一方、2つの他のヘパリン結合ドメインは残基211〜218位および243〜272位の間であると報告された(Weisgraberら、J. Biol. Chem. 261:2068-2076、1986; Cardin、前記)。以前の研究より、140〜150ドメインはアポEを含むリポタンパク質のヘパリン硫酸プロテオグリカンへの結合、およびLRP(LDL受容体関連タンパク質)の関与の有りまたは無しにおいて続いて起こるそれらの内部移行に直接的に関係していることが示されている(Herz、前記; Mahley、前記; Fazio、前記; van Dijk、前記; Huang、前記(1999); Ji、前記(J. Biol. Chem. 289、1995); Cardin、前記; Dongら、J. Biol. Chem. 269:22358-22365、1994)。脂質およびリポタンパク質結合に関する有力な考えとして、アポEのアミノ末端領域がリポタンパク質との結合に必要とされる決定子を欠損していることに対して、アポEの残基244〜266の間の領域がアポEの脂質およびリポタンパク質への結合に寄与しているというものである(He、前記; Dong、前記(1994))。
【0007】
ヒトにおいてアポEをコードする3つの共通の対立遺伝子がある。ε4、ε3およびε2と呼ばれる3つの対立遺伝子は3つのホモ接合表現型(すなわち、E4/E4、E3/E3、およびE2/E2)および3つのヘテロ接合表現型(すなわち、E4/E3、E3/E2、およびE4/E2)を生じさせる(ZannisおよびBreslow、Biochemistry 20:1033-1041、1982; Zannisら、Am. J. Hum. Genet. 33:11-24、1981)。3つの異なるヒトアポEイソプロテイン、アポE4、アポE3、およびアポE2はアミノ酸残基112および158での突然変異から生じる。アポE4は112位にアルギニンおよび158位にアルギニンを含む。アポE3は112位にシステイン、および158位にアルギニンを含む。アポE2は112位および158位にシステインを含む。
【0008】
通常のアポE対立遺伝子に加えて、3つのまれなアポE対立遺伝子(アポE1、アポE2*、およびアポE2**)がある。他のアポEタンパク質と比較して、アポE1は127位にグリシンの代わりにアスパラギン酸、および158位にアルギニンの代わりにシステインを有する。アポE2*は145位にアルギニンの代わりにシステイン、およびアポE2**は146位にリジンの代わりにグルタミンを有する(Karathanasisら、前記)。
【0009】
アポE4欠損症または欠陥のあるアポE型を有するヒトの患者および動物モデルの研究により、コレステロールの恒常性におけるアポEの役割について信じざるを得ない証拠が明確に立証された(Schaeferら、J. Clin. Invest. 78:1206-1219、1986; Cladarasら、J. Biol. Chem. 262:2310-2315、1987; Plumpら、Cell 71:343-353、1992; Zhangら、Science 2588:468-471、1992; Reddickら、Arterioscler. Thromb. 14:141-147、1994; Vanden Maagdenbergら、J. Biol. Chem. 268:10540-10545、1993; Fazioら、J. Clin. Invest. 92:1497-1503、1993; Fazioら、J. Lipid Res. 35:408-416、1994; Fazioら、Arterioscler. Thromb. 14:1873-1879、1994; Vlismenら、J. Biol. Chem. 271:30595、1996)。これらの研究より、VLDLおよびIDL領域に浮かぶコレステロールエステルに富むリポタンパク質残存物を取り除くためにアポEが必要とされることが示されている(Plumpら、Cell 71:343-353、1992; Zhanら、Science 2588:468-471、1992; Reddickら、Arterioscler. Thromb. 14:141-147、1994; Vanden Maagdenbergら、J. Biol. Chem. 268:10540-10545、1993; Fazioら、J. Clin. Invest. 92:1497-1503、1993; Fazioら、J. Lipid Res. 35:408-416、1994; Fazioら、Arterioscler. Thromb. 14:1873-1879、1994; van Vlijmenら、J. Biol. Chem. 271:30595-3062、1994; Cohnら、Arterioscler. Thromb. Vas. Biol. 16:149-159、1996; Chaitら、Metabolism 27:1055-1066、1978)。血漿におけるそのような残存物の蓄積は早発性アテローム性動脈硬化症と関連している(Schaeferら、J. Clin. Invest. 78:1206-1219、1986; Plumpら、Cell 71:343-353、1992; Zhangら、Science 2588:468-471、1992; Reddickら、Arterioscler. Thromb. 14:141-147、1994)。
【0010】
他の研究により、コレステロール流出におけるアポEの重要性が強調され、γ電気泳動移動度(γLp-E)をもつアポE含有リポタンパク質粒子は、コレステロールを詰め込んだマクロファージから過剰なコレステロールを除去する際にかなり有効であり、このようにして細胞および組織のコレステロール恒常性に寄与していることが示されている(Huangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1834-1838、1994; Huangら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17:2010-2019、1997; Zhuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:7585-7590、1998; Cullenら、J. Clin. Invest. 101:1670-1677、1988)。 コレステロール流出におけるアポEの関係から、マクロファージまたは内皮細胞に局所的に発現させた場合、なぜアポEがアテローム性動脈硬化症を防ぐのかを説明できる可能性がある(Lintonら、Science 267:1034-1037、1995; Fazioら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:4647-4652、1997; Shimanoら、J. Clin. Invest. 95:469-476、1995)。
【0011】
ヒトおよびトランスジェニック動物モデルにおいての最近の研究により、アポEが血漿トリグリセリド恒常性に関連する他の機能をもつ可能性が示された。そのような研究により、アポEレベルの増加がトリグリセリドに富むリポタンパク質の脂肪分解を阻害し、結果として高トリグリセリド血症を引き起こすことが示されている(Cohnら、Arterioscler. Thromb. Vas. Biol. 16:149-159、1996; Chaitら、Metabolism 27:1055-1066、1978; Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998; Ehnholmら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:5566-5570、1984; Huangら、J. Biol. Chem. 273:17483-17490、1998; Rensenら、J. Biol. Chem. 271:14791-14799、1996; Jongら、Biochem. J. 328:745-750、1997; van Dijkら、JLR、40:336-344、1999; Salahら、J. Lipid Res. 38:904-912、1997; Jiら、J. Lipid Res. 36:583-592、1995; Jiら、J. Biol. Chem. 289:2784-2772、1994; Rallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4696-4700、1992; Weisgraber、前記(1983); Cardinら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 134:783-789、1986; Dong、前記(1994); Westerlund、前記; Wilsonら、Structure 2:713-718、1994)。インビトロでのVLDLの脂肪分解はアポCIIの添加により部分的に復活させることができた(Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998; Huangら、J. Biol. Chem. 273:17483-17490、1998)。このアポEの機能によりヒト個体群において高トリグリセリドレベルを引き起こす可能性がある(Cohn、前記; Chait、前記; Salah、前記; Ji、前記(1995))。アポEの過剰発現はまた、インビボにおいて(Huang、前記(1999))および細胞培養において(Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998)肝臓のVLDLトリグリセリドの生成を刺激するが、アポB含有リポタンパク質の集合および/または分泌を促進することによるものと思われる。VLDLの集合および分泌におけるこの可能性あるアポEの関与は、膜脂質の流動化を通して行われる可能性がある(Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393 40、1998; Huangら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. (印刷中)、1999; Fanら、J. Clin. Invest. 101:2151-2164、1998; Kulpersら、J. Clin. Invest. 100:2915-2922.893. 1993; Rallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4696-4700、1982)。対照的に、アポEの欠損はVLDLトリグリセリド分泌の減少と関連がある(Kulpersら、J. Clin. Invest. 100:2915-2922、1997)。残基1〜191位および残基1〜244位にわたる125I標識の切断された2つのアポE型のそれぞれの注入により、それらの迅速かつ効率的な血漿からの除去を引き起こした(Westerlund、前記)。
【0012】
コレステロール恒常性におけるアポEの有益な効果にもかかわらず、遺伝子治療的アプローチにおいてのアポEの治療的価値は、動物研究でアポEの過剰発現により誘発されるものと思われる重篤な高トリグリセリド血症およびVLDL蓄積のため、非常に限られたままである。高トリグリセリド血症を引き起こすことなくコレステロールレベルを下げることができる治療が必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
発明の概要
第一局面において、本発明は、哺乳動物に投与または発現させた場合高トリグリセリド血症を引き起こすことなく血漿の総コレステロールレベルを下げる、成熟した天然のヒトアポEポリペプチドのアミノ酸1-299位の対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を特徴とする。好ましくは、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸残基1から始まって、成熟したヒトアポEポリペプチドの対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する。「高トリグリセリド血症」とはトリグリセリド濃度において15%を超える増加を意味する。コレステロールおよびトリグリセリドレベルは本明細書に記載された標準的なアッセイ法を使用して測定される。
【0014】
本発明の核酸は、好ましくは、天然のヒトアポE核酸の部分に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する。一つの好ましい態様において、核酸は、アポE4(配列番号:7)、アポE3(配列番号:8)、アポE2(配列番号:9)、アポE1(配列番号:10)、アポE2*(配列番号:11)、アポE2**(配列番号:12)、または任意の他の天然に生じるヒトアポE核酸(Karathanasisら、前記)のセグメントに少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する配列を有する。
【0015】
本発明のもう一つの好ましい態様は、成熟したヒトアポEポリペプチドの残基1〜185、1〜202、1〜229、または1〜259、好ましくは、成熟したアポE4(配列番号:1)、アポE3(配列番号:2)、アポE2(配列番号:3)、アポE1(配列番号:4)、アポE2*(配列番号:5)、またはアポE2**(配列番号:6)の残基1〜185、1〜202、1〜229、または1〜259をコードする配列を有する核酸である。さらにもう一つの好ましい態様において、核酸は、アポEタンパク質前駆体(配列番号:13)のシグナルペプチドの-18位から-1位までの残基のような、N末端シグナルペプチドをさらにコードする。好ましい核酸は、天然のヒトアポEポリペプチドの-18位から185位、-18位から202位、-18位から229位、または-18位から259位のアミノ酸をコードするが、それぞれ、アポEタンパク質前駆体の最初の203個、220個、247個、または277個の残基に相当している。好ましいタンパク質前駆体は、成熟したアポEタンパク質の配列に加えて18アミノ酸のN末端シグナル配列を含む、アポE4(配列番号:14)、アポE3(配列番号:15)、アポE2(配列番号:16)、アポE1(配列番号:17)、アポE2*(配列番号:18)、またはアポE2**(配列番号:19)を含む。
【0016】
様々な好ましい態様において、本発明の核酸によってコードされるポリペプチドは少なくとも150個のアミノ酸、好ましくは少なくとも160個、180個、200個、220個、または250個のアミノ酸を含む。好ましくは、コードされるポリペプチドは150個〜299個のアミノ酸を含む。他の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは、150個〜215個のアミノ酸のような、216個より少ないアミノ酸を有する。さらに他の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは202個、203個、220個、247個、または277個のアミノ酸から成る。好ましくは、コードされるポリペプチドはポリペプチドの分泌を促進するシグナル配列を機能的に連結されている。好ましくは、該シグナル配列はシグナルペプチダーゼによって切断される。
【0017】
本発明はまた、本発明の任意の核酸によりコードされるポリペプチドを特徴とする。
【0018】
関連した局面において、本発明は、成熟した天然のヒトアポEポリペプチドの対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致するアミノ酸配列を有し、かつ哺乳動物に投与または発現させた場合、高トリグリセリド血症を引き起こすことなく血漿の総コレステロールレベルを下げるポリぺプチドを提供する。好ましくは、ポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸残基1から始まって、天然のヒトアポEポリペプチドの対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する。他の好ましい態様において、ポリペプチドのアミノ酸配列は、天然ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸1〜215、1〜240、または1〜270の対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する。
【0019】
様々な好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、少なくとも150個のアミノ酸、好ましくは、少なくとも160個、180個、200個、220個、または250個のアミノ酸を含む。好ましくは、コードされるポリペプチドは、150個〜299個のアミノ酸を含む。他の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは、150個〜215個のアミノ酸のような、216個より少ないアミノ酸を有する。さらに他の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは、202個、229個、または259個のアミノ酸から成る。まださらに他の好ましい態様において、ポリペプチドは、成熟した天然アポEポリペプチドの残基1〜185、1〜202、1〜229、または1〜259、好ましくは天然アポE4(配列番号:1)、アポE3(配列番号:2)、アポE2(配列番号:3)、アポE1(配列番号:4)、アポE2*(配列番号:5)、またはアポE2**(配列番号:6)の残基1〜185、1〜202、1〜229、または1〜259に一致する配列を有する。他の態様において、ポリペプチドは、アポEタンパク質前駆体(配列番号:13)のシグナルペプチドの残基-18〜-1のような、シグナル配列を機能的に連結されている。
【0020】
本発明のポリペプチドおよび核酸は、哺乳動物に、好ましくはヒトの患者に、高トリグリセリド血症を引き起こすことなく、コレステロールを下げる、アテローム性動脈硬化症の発病を遅らせる、またはアテローム性動脈硬化症を治療するために、投与または発現させることができる。好ましくは、適する患者は、内因的な正常に機能するアポE遺伝子を欠損する、または血流にリポタンパク質残存物の蓄積を引き起こす残存物の除去における欠陥によりアテローム性動脈硬化症を発生させる危険性のある者である。他の特に適する患者はLDL受容体タンパク質のレベルが正常より低い。例えば、患者は、内因的な完全長LDL受容体の発現を低下させるまたは妨げる、LDL受容体についての調節配列、プロモーター配列、またはコード配列に突然変異をもっている可能性がある。または、患者は、LDL受容体のアポEへの結合のような、コードされたLDL受容体の活性を低下させるミスセンス変異をもっている可能性がある。好ましくは、ポリペプチドは、薬学的に許容される担体物質と共に、筋内へ、静脈へ、または皮下へ投与される。好ましくは、ポリペプチドは、動脈のアテローム性動脈硬化斑および/または周辺組織へ直接的に送達される。他の好ましい態様において、ポリペプチドは、ヒト胎児の遺伝子操作のような遺伝子治療の結果として、または骨髄移植の結果として、供給される。好ましくは、本発明の核酸は、リポソームおよびプロタミンと組み合わせて静脈へ投与される。好ましい態様において、核酸は哺乳動物の肝臓、管壁、またはアテローム性動脈硬化斑へ投与または発現させる。他の好ましい態様において、核酸は組換え体ウイルスを使用してアテローム性動脈硬化病変部位へ直接的に送達される。他の好ましい態様において、核酸はヒト胎児の遺伝子操作または骨髄移植の結果として供給される。他の好ましい態様において、核酸は、利用可能にプロモーターに連結され、かつ例えば、プラスミドまたはアデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスのベクターもしくはバキュロウイルスを用いる系のような組換え体ウイルスベクターの発現ベクターに含まれる。
【0021】
もう一つの局面において、本発明は、薬学的に許容される担体物質と混ぜられた本発明のポリペプチドを含む薬学的組成物を特徴とする。
【0022】
さらにもう一つの局面において、本発明は、利用可能にプロモーターに連結された本発明の核酸を含む組換え体DNA分子を提供する。
【0023】
本発明は、アポEのコレステロールを下げる性質を利用し、同時にその高トリグリセリド血症の誘発を避ける。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、それらの好ましい態様の以下の記述から、および特許請求の範囲から明らかであると思われる。
【0025】
詳細な説明
アポEは、別個の領域または重複領域のどちらかがコレステロールおよびトリグリセリド恒常性における役割を媒介するという仮説に基づいて、本発明者らは、インビボにおけるコレステロールおよびトリグリセリド除去に必要なアポEのドメインを詳細に検討するために、アポE欠損マウスにアデノウィルス媒介性遺伝子導入を使用した。アポEのアミノ末端の1〜202位の領域はインビボにおいて細胞受容体を介してアポEがリポタンパク質と結合し、その後除去されるために必要なドメインを含有することを本発明者らは以前に報告した。さらに、アポEのカルボキシ末端の203〜299残基はインビボにおいてアポE誘導型の高トリグリセリド血症に寄与する。さらに、アミノ末端のアミノ酸1〜185位、1〜229位または1〜259位を含有するアポE断片も、高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールを大幅に低下することを本発明者らは最近見出した。従って、アポEのカルボキシ末端の186〜299残基、230〜299残基または260〜299残基の除去もまた、インビボにおいてアポE誘導型高トリグリセリド血症を防止する。
【0026】
野生型アポE4を発現するアデノウィルスの2×109 pfuをアポE欠損マウスに感染させても、リポタンパク質を含有するコレステロールはあまり除去されない。一方、アポE4のアミノ末端の202残基を含有する切断型のアポE4(アポE4-202)を2×109 pfuまたは1×109 pfuを投与すると、血漿中のトリグリセリドレベルをあまり増加させないで、アポE欠損マウスのコレステロールを90%低下した。感染後のマウス肝臓の全RNAのノーザンブロット解析は、同等のレベルのアポE4およびアポE4-202mRNAを示した。その所見は、アポE4のアミノ末端の1〜202領域は、インビボにおいてアポE認識受容体を介してアポEがリポタンパク質と結合し、その後除去されるために必要なドメインを含有することを示唆している。さらに、アポEのカルボキシ末端の203〜299残基はインビボにおけるアポE誘導型高トリグリセリド血症に寄与する。本発明の検討では、142〜147ヘパリン結合ドメインを含有し、211〜218または243〜272ヘパリン結合ドメインを含有しないアポE4-202によるリポタンパク質残存物の除去が極めて効率的である。
【0027】
全RNAのノーザンブロット解析は、同様の定常状態のmRNAレベル条件下では、野生型アポE-4を発現するマウスは高トリグリセリド血症を発症するが、アポE-202を発現するマウスは発症しないことを立証した(図4Aおよび4B)。この解析は、アポE合成の低下がこの作用の一因を担っている可能性がないことを示している。さらに、組織培養実験は、アポE4またはアポE4-202を発現する永久的な細胞系統または組換えアデノウィルスを感染させた細胞はほぼ同じレベルのアポE4およびアポE4-202を分泌することを示し、これは、切断型のアポE4-202型は安定であり、野生型アポE4対応物と同じくらい効率的に分泌されることを示した。
【0028】
正常なC57BL6マウスの肝臓における全長のアポE3またはアポE4の過剰発現は、血漿中の高いコレステロールおよびトリグリセリドレベルを特徴とする複合高脂血症を誘発した。一方、アポE4-202は過剰発現されても高トリグリセリドレベルを誘発しなかった。この結果は、複合高脂血症の誘発はアポEの過剰発現の結果であり、アポE表現型に無関係であることを示している。さらに、複合高脂血症を誘発するには、アポEのカルボキシ末端領域(アミノ酸203〜299位)を必要とする。
【0029】
X線結晶解析法およびコンピュータモデリング法は、アポEのアミノ末端ドメインは逆平行ヘリックスを含有することを示している(Wilsonら、Structure 2: 713-718、1994; Wilsonら、Science 252: 1817-1822、1991; Shimano、前記; Salah、前記)。残基23〜155位にわたるこれらのアミノ末端ヘリックスは、他のタンパク質粒子と共に特定の構造を形成してリポタンパク質表面に結合する可能性があると本発明者らは考えている。臨界アポE濃度では、アポE部位は飽和され、アポE含有リポタンパク質の除去が最適化されると考えられる。血漿アポE濃度がさらに増加すると、トリグリセリドに富むリポタンパク質の他の重要なタンパク質成分は、アポEのカルボキシ末端の203〜299領域を介して特異的に置換される可能性がある。これにより、これらの粒子は脂肪加水分解速度が低下し、血漿トリグリセリドレベルが増加する可能性がある(図7B)。従って、アポE4-202を感染させた後にトリグリセリドレベルの大きな増加が生じないのは、アポE4-202がVLDL粒子由来のタンパク質を置換する能力が大幅に低下したことによると思われる。例えば、トリグリセリドに富むVLDLに存在するタンパク質のなかには(例えば、apoA-IVおよびapoA-I)全長のアポEによって置換されるものもあるが、アポE4-202では置換されない(図7A)。さらに、アポE4-202はトリグリセリドに富むリポタンパク質の分泌を低下する可能性がある。しかし、この領域(203〜299位)が欠損しても、切断型タンパク質がリポタンパク質残存物を効率的に除去する能力を大きく損なわない。
【0030】
アポE4-202に見られる結果と同様に、アポE4-229またはアポE4-259を発現するアデノウィルス4×109 pfuまたはアポE4-185を発現するアデノウィルス1×109 pfuをアポE欠損マウスに投与すると、血清トリグリセリドレベルを増加することなく、血清コレステロールレベルをかなり低下した(図8A、8B、9A〜9D、10A〜10D、11C、11D、16Aおよび16B)。ノーザンブロット解析により、アポE4-229およびアポE4-259 mRNAは野生型アポE4 mRNAと同じレベルで発現することが示され、これはアポE4-229およびアポE4-259が高トリグリセリド血症を誘発しないのはこれらのアポE型の発現レベルが低いことによらないことを示唆した(図11Aおよび11B)。さらに、アポE4-185を発現するアデノウィルス1×109 pfuを感染させたアポE欠損マウスの肝臓におけるアポE-185 mRNAのレベルは、アポE4を発現するアデノウィルス2×109 pfuを感染させたマウスのアポE4 mRNAレベルより高かった。VLDLトリグリセリドの生成速度は、アポE-259は野生型アポEよりかなり低く、これはVLDLトリグリセリド生成のこのような低下は、アポE切断型変異体は高トリグリセリド血症を誘発できない一因となりうることを示唆している(図12)。これらの結果は、インビボにおいてアポE誘導型高トリグリセリド血症にはアポEのカルボキシ末端の260-299残基が必要であることを示している。同様に、アポEを発現するアデノウィルスを感染させたアポE-/-マウスにおける肝臓のVLDL-トリグリセリド分泌速度は、感染5日後には、アポE4-185を発現するアデノウィルスを感染させたマウスにおける肝臓のVLDL-トリグリセリド分泌速度より8倍高かった。切断型アポE4-185を感染させたマウスにおけるVLDL-トリグリセリド分泌速度は、対照のAdGFPアデノウィルスを感染させたマウスにおける対応する速度より50%も低かった。
【0031】
本発明を特定の理論に制限するつもりはないが、切断型アポE-185、アポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259を発現するマウスにおいてカイロミクロンおよびVLDLが形成され、正常に代謝されること、および全長のアポE4を過剰発現するマウスにおいてトリグリセリドに富むリポタンパク質が除去されないことを説明するモデルが提唱されている(図14)。アポEの過剰発現が、細胞受容体によって除去されえないトリグリセリドに富むリポタンパク質の形成に関連していることをこのモデルは示している。一方、アポE-185、アポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259を過剰発現するマウスにおいて形成される正常なカイロミクロンおよびVLDL粒子は細胞受容体によって効率的に除去され、その結果これらのマウスにおいて血漿コレステロールおよびトリグリセリドレベルが低くなる。
【0032】
切断型アポE4を含有する残存物の除去にLRPおよびLDL受容体がおそらく関与することにより、VLDLの取り込みおよびその後のコレステロール除去がより効率的になり、リポタンパク質除去において観察される切断型アポE4の特性を説明している。リポタンパク質残存物が効率的に除去されるとアポE分子も同時に除去され、定常状態の血漿アポEレベルが低下される。本発明の検討において観察される全長のアポEの定常状態の血漿アポEレベルは60〜70 mg/dlの範囲内であり、切断型アポE型の定常状態のレベルは1〜5 mg/dlの範囲内である。
【0033】
または、リポタンパク質は、LDL受容体およびLRP経路に代わる、またはこれに加えたヘパリン硫酸プロテオグリカン経路により除去されうる。切断型アポE4タンパク質の142〜147位のヘパリン結合領域も受容体結合ドメインを含有するので、ヘパリン硫酸プロテオグリカンへのアポEの結合は受容体結合ドメインを遮蔽し、細胞受容体により認識されなくすることができる。得られたヘパリン硫酸プロテオグリカンが結合した残存物は直接的なエンドサイトーシスにより除去されうる。
【0034】
アポE4および切断型アポE4を発現する組換えアデノウィルスの構築
以前に記載されているpUC-アポE4(Aleshokovら、Biochemistry 36: 10571-10580、1997)を鋳型とし、表1に示す4セットのオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、コドン203(GTA)から停止コドン(TGA)までのPCRによる突然変異によってpUC-アポE4-202を作製した。外側のプライマーOUTPR1-センスおよびOUTPR2-アンチセンスセットは、アポEのそれぞれアミノ酸103〜111位および208〜215位をコードするヌクレオチドに相当し、それぞれ制限酵素部位NgoMIおよびBstEIIを含有する。コドン203の5'側9残基と3'側9残基に及ぶ突然変異オリゴヌクレオチドセットは、その配列が停止コドンに改変されている(表1、インターナル-センス-203およびインターナル-アンチセンス-203)。
(表1) 重複伸長PCRに使用したオリゴヌクレオチド
*下線の太字の塩基は突然変異したコドンを示す。
【0035】
コドン203のPCRによる突然変異が2つの別個の増幅反応に関与した。第1の反応は、コドン203に及ぶ5'側の外側のプライマーおよびアンチセンス突然変異プライマーを使用した。第2の反応は、コドン203に及ぶ3'側の外側のプライマーおよびセンス突然変異プライマーを使用した。各PCR反応の4%のアリコートを混合し、5'側および3'側外側のプライマーによって試料を増幅した。次いで、増幅した断片をNgoMIおよびBstEIIで消化し、pUC-E4プラスミドの野生型配列と交換するために使用した。同様に、それぞれコドン186、230または260を停止コドンに変換するために、対応する突然変異プライマーを使用して、pUC-アポE4-185、pUC-アポE4-229およびpUC-アポE4-259を構築した。
【0036】
アポE遺伝子のエキソンIVにPCRで作製した突然変異を組み込むために、2段階の工程を実施した。エキソンIV配列全体を含むヒトアポE4遺伝子のEcoRI断片をpBSベクターのEcoRI部位にクローニングしてpBlue-E4-exIVを作製した。同様に、ヒトアポE3遺伝子のEcoRI断片を使用してベクターpBlue-E3-exIVを構築した。pUC-アポE4-185、pUC-アポE4-202、pUC-アポE4-229およびpUC-アポE4-259プラスミドをStyI/BbsIで消化し、突然変異させた配列をpBlue-E4-exIVプラスミドの野生型配列と交換して、プラスミドpBlue-E4-185-exIV、pBlue-E4-202-exIV、pBlue-E4-229-exIVおよびpBlue-E4-259-exIVを作製した(図1)。
【0037】
組換えアデノウィルスが細菌BJ-5183細胞において作製されるAd-Easy-1系を使用して組換えウィルスを構築した(Heら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 2509-2514、1998)。エキソン2および3を含有するアポEゲノムDNAの1507 bpのMscI-EcoRI断片(ヌクレオチド1853〜3360位)をpGEM7ベクターのSmaI-EcoRI部位にクローニングし、その結果pGEM7 アポE-ExII-IIIベクターを構築した。次いで、アポE3、アポE4、アポE4-185(コドン186に停止突然変異を含有する)、アポE4-202(コドン203に停止突然変異を含有する)、アポE4-229(コドン230に停止コドンを含有する)、およびアポE4-259(コドン230に停止突然変異を含有する)の1,911 bpのEcoRI断片を、それぞれpBlue-E3-Ex IV、pBlue-E4-Ex IV、pBlue-E4-185 Ex IV、pBlue-E4-202-Ex IV、pBlue-E4-229-Ex IVおよびpBlue-E4-259 Ex IVベクターから切り出し、pGEM7-ExII,IIIベクターのEcoRI部位にクローニングした。これは、アポE遺伝子のエキソンII、IIIおよびIVを含有する、それぞれpGEM7-アポE3g、pGEM7-アポE4g、pGEM7-アポEg-185、pGEM7-アポE4g-202、pGEM7-アポE4-229およびpGEM7-アポE4g-259ベクターを作製した。1,911 bpのEcoRI挿入断片の適切な方向は、NotIおよびXbaIによる制限消化によって調べた。pGEM7-アポE3g、pGEM7-アポE4g、pGEM7-アポEg-185、pGEM7-アポE4g-202、pGEM7-アポE4-229およびpGEM7-アポE4g-259ベクターのHindIII-XbaI断片全体をpAd Track-CMVアデノウィルスシャトルプラスミドの対応する部位にクローニングした。
【0038】
各組換えベクターは、pAd Easy-1ヘルパーベクターと共にBJ 5183大腸菌(E. coli)細胞をエレクトロポレーションするために使用した。pAdEasy-1はアデノウィルスのウィルスゲノムおよび長い末端反復を含有し、関心対象の遺伝子を含有する組換えウィルスの相同組換えによる形成を可能にする。ベクターは、緑色の蛍光により細胞および組織の感染を検出することができる緑色蛍光タンパク質遺伝子も含有する。カナマイシンに抵抗性の組換え細菌クローンを選択し、制限エンドヌクレアーゼ解析およびDNA配列決定によって関心対象の遺伝子の存在についてスクリーニングした。野生型アポE3、アポE4、アポE4-185、アポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259を発現するウィルスは、それぞれAdGFP-E3、AdGFP-E4、AdGFP-E4-185、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259と命名する。RecA欠損DH5α細胞において適切なクローンを増殖した。組換えベクターはPacIで直線化し、911細胞に感染させるために使用した。組換えアデノウィルスの作製および増殖に関与するその後の段階はプラークの同定/単離およびその後の911細胞における感染および増殖であった(van Dijk、前記)。これらの段階の次に、CsCl超遠心を2回実施する精製過程を実施し、その次にウィルスを分離し、滴定した。通常、約5×1010 pfu/mlの力価が得られた。
【0039】
細胞培養の検討
10%ウシ胎児血清を含有する培地において集密状態まで増殖させたヒトHTB13細胞(SW1783、ヒト神経膠星状細胞腫)に、感染効率20でAdGFP-E4、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259を感染させた。感染24時間後、細胞をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、無血清培地で2時間あらかじめインキュベーションした。PBSでさらに洗浄した後、新鮮な無血清培地を添加した。24時間のインキュベーション後、培地を回収し、アポE発現について酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)およびSDS-PAGEによって解析した。いくつかの実験では、直径60 mmの培養物に0.5μCiの35Sメチオニンで2時間代謝することにより標識し、この場合には放射標識アミノ酸を添加してから2時間後に培地を回収してさらに解析した。
【0040】
細胞の培地に分泌されたアポE含有リポタンパク質の分離
細胞を35Sメチオニンで標識した後、直径100 mmの培養皿から2 mlの培地を取り、KBrで密度1.35g/mlに調整し、密度1.25g/ml、1.115g/ml、1.06g/mlのKBr溶液各2 mlおよび通常の生理食塩液2 mlを重層した。混合物をSW-41ローターで30,000 rpmにおいて24時間遠心分離した。いくつかの試験管において、密度勾配超遠心によって事前に血漿から分離しておいた密度1.006〜1.21 g/mlのリポタンパク質画分0.8mlを培地に混合した。超遠心後、1 mlの12個の画分を回収し、SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによって解析した。アポE4およびアポE4-202は共に、LDLからHDL領域に浮遊する外因性リポタンパク質に結合することができることをこの解析は示した。
【0041】
アポE欠損マウスにおける動物の検討
20〜25週齢の雌アポE欠損マウス(van Ree et al、Atherosclerosis 111:25、1994)をこれらの検討に使用した。各群の平均コレステロールおよびトリグリセリドレベルを同じにするために、実験開始前に、血漿コレステロールおよびトリグリセリドレベルに基づいて、マウス群を形成した。5×108〜1×1010 pfuの用量範囲のAdGFP(対照アデノウィルス)、AdGFP-E4もしくはAdGFP-E4-202ウイルス、または4×109 pfuのAdGFP-E4-229もしくはAdGFP-E4-259を尾静脈を介してマウスに静脈内注射した。各群は8〜10匹のマウスを含んだ。アデノウィルス注射の前に、4時間の絶食後に尾静脈または後方眼窩叢から採血した。注射後示した日数経過時に、CB300またはCB1000採血管(Sarstedt)に血液を収集した。血漿アリコートを4℃および-20℃において保存した。マウス肝臓のmRNA発現を解析できるように、各群の1匹またはそれ以上の動物を示した経過日数の各時点において屠殺した。
【0042】
血清試料のFPLC分析
AdGFP、AdGFP-E4、AdGFP-E4-185またはAdGFP-E4-202処理マウスの血清試料のFPLC分析では、12μlの血清をPBSで1:5希釈した。次いで、試料をスマートマイクロFPLCシステム(SMART micro FPLC system)(Pharmacia)のセファロース(Sepharose)6カラムにのせ、PBSで溶出した。さらに分析するために各々50μl容量の合計25画分を回収した。AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259処理マウスの試料では、100μlの血清をPBSで1:1希釈し、マイクロFPLCシステムの代わりに通常のFPLCシステムを使用して同様に分析を実施した。各々250μlの合計60画分を回収した。
【0043】
トリグリセリドおよびコレステロール分析
10μlの血清試料を40μlのリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で希釈し、製造業者の指示により、GPO-トリンダーキット(GPO-Trinder Kit)(Sigma)およびCHOL-MPR3キット(Boehringer-Mannheim)を使用してトリグリセリドおよびコレステロールについて分析した。トリグリセリドおよびコレステロール濃度は、それぞれ、540 nmおよび492 nmにおいて分光光度計により測定した。FPLC画分のトリグリセリド分析は、TGバッファー(TG-Buffer)(Sigma)を使用して実施し、製造業者の指示により、492 nmにおいて分光光度計で濃度を測定した。FPLC画分のコレステロール分析は、上記のように実施した。
【0044】
ヒトアポEタンパク質レベルの定量
血清ヒトアポE4濃度は、サンドイッチELISAを使用して測定した(Kimら、J. Biol. Chem. 271:8373-8380、1996)。親和性精製したポリクローナルヤギ抗ヒトアポE抗体をコーティングに使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したポリクローナルヤギ抗ヒトアポEを二次抗体として使用した。西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗ヒトアポEを含む培養皿をインキュベーションした後、テトラメチルベンジジンを基質として用いた免疫ペルオキシダーゼ手法を使用して検出を実施した。アポEレベルが既知の健康なヒト被験者からプールした血漿を標準として使用した。
【0045】
密度勾配超遠心によるVLDLの単離
アデノウィルス感染マウスおよびアポE欠損マウスから採取した500μlの血清試料を、1.21 g/ml KBr 2 ml、1.063 g/ml KBr 2.5 ml、1.019 g/ml KBr 2.5 mlおよびddH2O 2 mlを含むKBr溶液に重層した。試料を40,000 rpmにおいて16時間超遠心し、VLDL画分を含有する濃度勾配の最上層の1 mlを単離した。
【0046】
VLDL粒子のアポE濃縮
アポE欠損マウスの血漿から単離した500μlのVLDLに、それぞれ、AdGFP-E4、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259を感染させたHTB細胞が分泌した250μgのアポE4、アポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259を含有する培地を混合し、最終容量1 mlとした。混合物は、37℃において1時間振とう器上でインキュベーションし、次いで密度勾配遠心分離を実施してVLDL結合アポEから遊離のアポEを分離した。次いで、アポEに富むVLDLおよび遊離のアポE画分を単離し、SDS-PAGEおよびELISAによってアポE濃度を解析した。
【0047】
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェスタンブロット解析
各リポタンパク質画分から、7.5μgのタンパク質の試料を、12%ゲルのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によってアポリポタンパク質について解析した。銀染色またはクーマシーブリリアントブルー染色によってタンパク質を検出した。
【0048】
RNAの単離とハイブリダイゼーション解析
製造業者の指示により、RNAイージー液(RNA Easy Solution)(RNA Insta-Pure、Eurogentec Belgium)を使用して感染マウスの肝臓試料から全RNAを単離した。ノーザンブロット解析では、RNA試料(15μg)を変性させ、1.0%ホルムアルデヒド-アガロースゲルの電気泳動によって分離した。完全性とローディング作業の均等性を立証するためにRNAを臭化エチジウムで染色し、次いでジーンスクリーンプラス(GeneScreen Plus)(DuPont NEN)に移した。RNAは、0.12ジュール/cm2のUVを30秒照射することによって(Stratalinker、Stratagene)膜に架橋した。ランダムプライミングによって調製したプローブを、2.0×106 cpm/ml[32P]-標識DNAと共に以前に記載したように使用した(Kypreosら、J. Cell. Biochem. 68:247-258、1998)。モレキュラー ダイナミクス ホスホリメージャー(Molecular Dynamics phosphorimager)(400B型)を使用して、スキャニング濃度測定による定量を実施した。アポE mRNA発現はGAPDH mRNAレベルについて標準化し、棒グラフの形態で報告した。実験は3通り実施し、平均値としてデータを報告してある(図4A、4B、11Aおよび11B)。
【0049】
アデノウィルスが感染したHTB-13細胞培養物が分泌したリポタンパク質とアポE4-202の結合
内因性アポEを合成しないHTB-13細胞に、それぞれAdGFP-E4およびAdGFP-E4-202と命名した、アポE4またはアポE4-202発現する組換えアデノウィルスを感染効率20で感染させた。SDS-PAGEおよびサンドイッチELISAによる培地の解析は、アポE4およびアポE4-202は共に、AdGFP-E4またはAdGFP-E4-202の感染から24時間後に、1 mlあたり60〜80μgの範囲のかなりのレベルが効率的に分泌されることを示した。大多数のアポEは低脂質または無脂質画分に存在したが、アポE4およびアポE4-202は、密度1.04〜1.21g/ml画分において外因的に添加したリポタンパク質と結合することができることを密度勾配超遠心により示された(図2Aおよび2B)。切断型アポE形態のアポE4-202は、受容体媒介性リポタンパク質除去に必要とされる過程である、事前に存在するリポタンパク質粒子と結合する能力を有することをデータは示している。アポE4およびアポE4-202がリポタンパク質残存物と結合する能力をさらに立証するために、等量のアポE4およびアポE4-202を、アポE欠損マウスの血漿から単離した血清と混合し、37℃において1時間インキュベーションした。次いで、混合物に密度勾配超遠心を実施した。次いで、遊離およびリポタンパク質結合アポEの量はELISAによって定量的に評価され、SDS-PAGEで分画し、次にゲルをクーマシーブリリアントブルー染色し、アポEバンドの強度をウシ血清アルブミン(BSA)標準と比較することによって定性的に評価した。図2Cおよび2Dに示すように、全長のアポE4および切断型アポE4-202は共にVLDLと結合する。
【0050】
HTB-13細胞によるアポE4-185の同様のレベルの発現および分泌
HTB-13細胞によって分泌されるアポE4-185の量を、これらの細胞によって分泌されるアポE3、アポE4およびアポE-202の量と比較した。このアッセイ法では、上記のように、アポE3、アポE4、アポE4-202またはアポE4-185を発現する組換えアデノウィルスを感染効率20でHTB-13細胞に感染させた。全長および切断型アポEは、感染から24時間後には1 mlあたり約60〜70μgの範囲のアポEのかなりのレベルが培地に分泌されることをサンドイッチELISAによる培地の解析は示した。この結果は、アポE4およびアポE4-202について上記の実験から得られる1mlあたり60〜80μgの範囲のアポEとほぼ同じである。既知のBSA標準を使用した分泌タンパク質のSDS-PAGE解析によって同様の定量的評価が得られた(図15)。
【0051】
アポE欠損マウスにおけるアポEのカルボキシ末端186〜299、203〜299、230〜299および260〜299セグメントの高トリグリセリド血症への寄与
インビボにおいてアポE4およびアポE4-202が高脂血症に及ぼす影響を評価するために、アポE欠損マウス(アポE-/-)に、それぞれ組換えアデノウィルスAdGFP-E4またはAdGFP-E4-202を感染させた。ウィルス感染の非特異的と思われる影響を評価するために、一部のマウスには対照AdGFPウィルスを感染させた。アポE4アデノウィルス2×109 pfuをマウスに感染させても対照の感染と比較してマウスにおいてコレステロールレベルをあまり低下させず、重症の高トリグリセリド血症を誘発することを解析は示した(図3Aおよび3B)。高トリグリセリド血症はアポE4の過剰発現の結果である。感染後8日目にアポE4の発現が低下する場合または感染に使用した用量が低い場合には、高トリグリセリド血症も低下するかまたは排除される(図3A)。マウスに2×109または1010 pfuさえのAdGFP-E4-202アデノウィルスを感染させた場合に、高トリグリセリド血症は誘発されなかった(図3A)。対照ウィルスAdGFPは、アポE欠損マウスのコレステロールおよびトリグリセリドレベルに大きな影響を与えるとは思われず、感染過程の非特異的な影響の可能性を除外していた。
【0052】
アポE4-202を使用した場合に観察された結果と同様に、アポE欠損マウスに4×109 pfuのAdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259を感染させると、高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールレベルを低下した(図8Aおよび8B)。さらに、アポE欠損マウスに1×1010 pfuのアポE4-185発現ウィルスを感染させると、高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールレベルを正常化した(図16Aおよび16B)。アポEのアミノ末端残基1〜185は、アポE-/-マウスの血漿中に蓄積するリポタンパク質残存物の除去に必要な決定因子全てを含有することをこの所見は示している。
【0053】
正常なC57BL6マウスにおける高コレステロール血症および高トリグリセリド血症へのカルボキシ末端203〜299の寄与
ヒトアポEのマウスの過剰発現によってアポE-/-マウスに誘発した高トリグリセリド血症は、アポE-/-マウスにおける基礎的な高コレステロール血症の結果と思われる。または、全長のアポEはそれ自体血漿高脂質レベルを誘発すると思われる。これら2つの可能性を見分けるために、正常なC57BL6マウス(アポE+/+)に、アポE3、アポE4またはアポE4-202を発現する1〜2×109 pfuのアデノウィルスを感染させた。アポE3またはアポE4のどちらかの過剰発現は正常なC57BL6において複合高脂血症(高コレステロールおよびトリグリセリドレベル)を誘発するために十分であることをこの解析は示した。一方、アポE4-202の過剰発現はC57BL6マウスのトリグリセリドレベルに検出できるほどの影響を与えなかった(図16Aおよび16B)。この結果は、全長のアポEの過剰発現は正常なC57BL6マウスまたはアポE-/-マウスにおいて複合高脂血症を生じるために十分であることを示している。さらに、高脂血症の誘発には、アポEのカルボキシ末端領域が必要である。本発明を特定の理論に制限するつもりはないが、カルボキシ末端203〜299領域内のアポEのドメインは、肝臓で効率的に除去されないリポタンパク質粒子の分泌の直接的な一因となり、血漿コレステロールおよびトリグリセリドレベルが高くなる可能性がある。
【0054】
インビボにおけるアポE4、アポE4-185、アポE4-202、アポE4-229およびアポE4-259 mRNAの同様な発現
それぞれ、AdGFP-E4、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259を感染させたアポE欠損マウスにおいてアポE4、アポE4-202、アポE4-229およびアポE4-259 mRNAの発現を評価するために、各群の少なくとも3匹の感染マウスを感染後5日目に屠殺し、肝臓を採取した(図8Aおよび8B)。全RNAをこれらの肝臓から単離し、ノーザンブロット解析によってアポE mRNA発現について解析した。図4A、4B、11Aおよび11Bに示すように、2×109 pfu用量のAdGFP-E4を感染させたマウスにおけるアポE mRNAレベルは、1×1010 pfuのAdGFP-E4-202または4×109 pfuのAdGFP-E4-229もしくはAdGFP-E4-259を感染させたマウスにおけるものとほぼ同じである。しかし、アポE4-202、アポE4-229およびアポE4-259は、全長のアポE4と異なり、高トリグリセリド血症を生じないが、高コレステロール血症(血中高コレステロールレベル)を効果的に矯正する。従って、高トリグリセリド血症に対するアポE4とアポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259の影響の差は、これらのアポE型間の発現レベルの差によるのもではない。
【0055】
さらに、AdGFP-E4-185を感染させたアポE欠損マウスにおける定常状態のアポE4-185 mRNAレベルを、AdGFP-E4を感染させたマウスの全長のアポE4 mRNAの対応するレベルと比較した。この比較のために、各群の少なくとも2〜3匹の感染マウスを感染後5日目に屠殺し、上記のように肝臓を採取した。全RNAをこれらの肝臓から単離し、ノーザンブロット法によってアポE mRNAについて解析した。18SリボソームRNAのゲルの臭化エチジウム染色をRNAが等しくのせられ、完全である指標として使用した(図17A)。1×1010 pfuのAdGFP-E4-185を感染させたアポE-/-マウスのアポE mRNAレベルは、2×109 pfuのAdGFP-E4を作用させたマウスのmRNAレベルより大きい(図17A)。しかし、アポE4-185は、高コレステロールおよびトリグリセリドレベルを生じる全長のアポEとは異なり、高脂血症を生じない(図17Bおよび17C)。従って、アポE4-185が高脂血症を誘発しないのは、これら2つのアポE型間の発現の差によらない可能性が高い(図17A-C)。
【0056】
対応するアデノウィルスを感染させた正常なC57BL6マウスにおけるアポE3、アポE4またはアポE4-202のmRNAレベルを比較した。図15の細胞培養データと一致して、アポE3、アポE4またはアポE4-202(アポE3およびアポE4-202は2×109用量で、アポE4は1×1010 pfuの用量)を発現するアデノウィルスを感染させたC57BL6マウスにおけるアポE mRNAレベルは同等である(図17A)。
【0057】
AdGFP-E4、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229、AdGFP-E4-259または対照ウィルスAdGFPを感染させたマウスから単離した血漿のコレステロール、トリグリセリドおよびアポEFPLC特性
アデノウィルスを感染させたアポE欠損マウスの血漿のFPLC分析は、アポE4を発現するマウスでは、感染後5日目には、コレステロールの72%はVLDL画分に分布し、約18%はHDL画分に分布することを示した(図5A)。感染後8日目には、AdGFP-E4を感染させたマウスでは、VLDL/HDLコレステロールの比は約1:1であった(図5C)。AdGFP-E4-202を感染させたマウスでは、2×109または1010 pfuのアデノウィルスを使用した場合、コレステロールはVLDLおよびHDL3画分に分布し、HDLコレステロールに対するVLDLコレステロールの比は感染後5日目および8日目に約3:2であった(図5Bおよび5D)。予測されるように、2×109 pfuの対照ウィルスAdGFPの感染は、アポE欠損マウスのコレステロールおよびトリグリセリド特性にいかなる変化も生じなかった(データは示していない)。
【0058】
AdGFP-E4の感染後5日目および8日目にはマウスにおいてVLDL-トリグリセリドレベルが増加することもFPLC分析は示した(図5E、5F、10Aおよび10B)。一方、VLDL-トリグリセリドレベルは、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229、AdGFP-E4-259またはAdGFPを感染させたマウスでは増加しなかった(図5E、5F、10Cおよび10D)。
【0059】
サンドイッチELISAによるFPLC画分の分析は、2×109 pfuのAdGFP-E4を感染させたマウスでは、感染後5日目に、総アポEの約50%がHDL画分に分布し、25%がVLDL画分に分布し、残りのアポEは他のFPLC画分に分布することを示した(図6)。一方、1010 pfuのAdGFP-E4-202を感染させたマウスでは、タンパク質は全てのリポタンパク質画分に均一に分布した。リポタンパク質を含有する画分のアポE4-202濃度が明らかに低いのは、アポE4-202を含有するリポタンパク質の効率的な異化作用を反映している。アポE4およびアポE4-202のレベルは、無脂質アポEを含有するFPLC画分22〜25においてほぼ同じであり、これは、それぞれ2×1010 pfuのAdGFP-E4または1010 pfuAdGFP-E4-202を感染させたマウスの血漿における無脂質アポE4およびアポE4-202は同様の定常状態レベルであることを示唆している。
【0060】
AdGFP-E4-185を感染させたアポE-/-マウスの血漿のFPLC分析は、コレステロールは低いレベルで存在し、VLDL、LDLおよびHDLに約2:1:1の比で分布することを示した(図18A)。これらのマウスにおけるトリグリセリドレベルはVLDL画分において低く、リポタンパク質画分の残りではほとんど検出されなかった(図18C)。一方、アポE4を発現するマウスは、感染の5日後にコレステロールレベルが高かった。コレステロールの約80%がVLDLに分布し、約20%がHDLに分布した(図18B)。予測されるように、トリグリセリドレベルはVLDL画分では非常に高く、リポタンパク質画分の残りではほとんど検出されなかった(図18D)。追加の対照として、2×109 pfuの対照ウィルスAdGFPの感染は、アポE欠損マウスのコレステロールおよびトリグリセリド特性にいかなる検出可能な変化も生じなかった。
【0061】
血漿総アポEの平均レベルを、同一のアデノウィルスを感染させた3匹のマウスの血漿のプールについてサンドイッチELISAによって測定した。血漿アポEタンパク質の量は、アポE3およびアポE4では60〜70μg/dlであり、アポE4-202およびアポE4-185では1〜5μg/dlであった。
【0062】
対照およびアポE発現アデノウィルスを感染させたマウスにおけるVLDLのアポタンパク質組成
密度勾配超遠心によって単離したVLDLの分析は、対照アポE-/-マウスでは、VLDLはapoB-48、apoA-IおよびapoA-IVを含有することを示した。低い分子量領域の拡散染色も低分子量ペプチドの存在を示した。同様に、アポE4-202を発現するマウスでは、VLDLはapoB-48、apoA-I、apoA-IVおよび低分子量ペプチドを含有した(図7A)。一方、アポE4を発現する高トリグリセリド血症マウスでは、apoB-48およびアポE4だけが存在した。この定量的な描写は、過剰発現されているアポEがリポタンパク質粒子のapoCIIおよび他のタンパク質と交換することを示す以前の検討に一致している。
【0063】
VLDLトリグリセリド生成速度
異なるアポE型を感染させたマウスにおいてVLDLトリグリセリドの生成速度を測定した。アポE切断がVLDLトリグリセリド合成に及ぼす影響を求めるために、アポE欠損マウスに2×109 pfuのAdGFP-E4、4×109 pfuのAdGFP-E4-259または4×109 pfuの対照AdGFPウィルスを感染させた。感染後5日目に、アポE外来遺伝子の発現が最大になった場合に、マウスを4時間絶食させ、VLDL異化作用を完全に阻止することが示されているトライトン-WR1339の500 mg/kg体重量の用量で0.9%NaClの15%溶液(w/v)を使用して(トライトン-WR 1339)注射した(Aalto-Setalaら、J. Clin. Invest.90: 1889-1900、1992)。次いで、トライトン-WR 1339注射後5分、10分、20分、30分、40分、50分および60分経過時に血清試料を単離した。対照として、洗剤を注射した直後の1分経過時に血清試料を単離した。上記のように血清トリグリセリドレベルを測定し、血清トリグリセリド対時間の線グラフを作成した。mg/dl/分単位で表されるVLDL-トリグリセリド分泌速度は、個々のマウス各々の線グラフの傾きから算出した。次いで、傾きを分類し、平均±標準偏差として棒グラフで報告した。野生型アポEは、アポE4-259または対照ウィルスによって誘発されるものと比較して、VLDLトリグリセリド生成の劇的な増加を誘発した(図12)。
【0064】
VLDLトリグリセリド合成および分泌に対するアポE-185の影響を求めるために、アポE欠損マウスに、2×106 pfu用量のAdGFP-E4、2×109 pfu用量のAdGFPまたは1×1010 pfu用量のAdGFP-E4-185を感染させた。アデノウィルス感染後5日目に、上記のように、マウスにトライトン WR 1339を注射した。トライトン WR 1339注射後20分、40分および60分経過時に血清試料を単離した。全長のアポEを発現するアデノウィルスを感染させたマウスにおけるトリグリセリド分泌速度は、1×1010 pfuのAdGFP-E4-185を感染させたマウスにおけるトリグリセリド分泌速度の8倍高かった(図19)。2×109 pfuの対照AdGFPウィルスを感染させたマウスでも、VLDLトリグリセリド分泌速度は、AdGFP-E4-185を感染させたマウスより2倍高かった。
【0065】
アポE4-185またはアポE4-259を発現するマウスのVLDLトリグリセリド生成速度が、アポE4を発現するマウスの対応する速度と比較して低いことは、アポE4のカルボキシ末端領域がVLDLトリグリセリド分泌速度に影響していることを示唆している。VLDLトリグリセリド生成速度がこのように低下することが、切断型アポE突然変異体は高トリグリセリド血症を誘発できないことに寄与している可能性がある。
【0066】
アポEポリペプチドの精製
標準的な分子生物学的技術を使用して、好適な発現系(例えば、原核細胞発現系、真核細胞、遺伝子組換え動物または無細胞系)において使用する天然型ヒトアポE核酸の断片または突然変異体を作製することができる(Ausubelら編、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、Vol. 1-3、1994、John Wiley and Sons, Inc.)。例えば、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)(ATCC)、Rockville、MDから入手可能なハムスター腎臓細胞を含む、組換え哺乳類タンパク質発現に一般的に使用される種々の細胞において組換えアポEを発現することができる。特に、アポE2、アポE3およびアポE4は、ATCC製のベビーハムスター腎臓(BHK-21)細胞(CRL 6282)、Cos-1細胞およびバキュロウィルス発現系(Aleshkovら、Biochemistry 36: 10571-10580)において発現されている。ゲルろ過クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィーまたはポリエチレングリコール分離などの標準的な技術を使用して、アポEポリペプチドをこれらの系から回収し、精製することができる。さらに、アポEポリペプチドは、好ましくはアルブミンの存在下において保存前に凍結乾燥して、保存寿命を延長することができる。
【0067】
エピトープマッピングのローラー(Lollar)らの方法を使用して、免疫原性である可能性のある(すなわち、アポEポリペプチドに対する抗体を産生させる)アポEポリペプチド中のアミノ酸を決定することができる。これらのアミノ酸は、ポリペプチドの免疫原性を低下するために、アラニンに変更することができる(米国特許第5,888,974号)。
【0068】
Leu261、Thr264、Phe265、Leu268、Val269、Trp276、Leu279、Val280およびVal282を含むアポEの疎水性残基がリポタンパク質粒子との疎水性相互作用に関与して、その結果リポタンパク質リパーゼを阻害する可能性がある。従って、アポEのこれらの残基を極性または荷電アミノ酸に突然変異させて、アポEポリペプチドによる高トリグリセリド血症の誘発を阻止することができる。
【0069】
アポEポリペプチドの投与
本発明を特定の投与様式、投与量または投与頻度に限定する意図はなく、本発明の形態は、筋肉内、静脈内、血管内、皮下および経口を含む全ての投与形態を考慮している。用量に応じて、投与容量を約0.2〜2.0ml/kg体重の間で変更することができる。アポEポリペプチドの好ましい投与量は5〜50 mg/kg体重で、必要に応じて、8〜24時間ごと(重症の症例の場合)から2週間ごとに少なくとも6ヶ月間投与される。任意の特定の被験者には、個体の必要性および組成物の投与を実施または監督する人物の専門的な判断により、特定の投与療法を経時的に調節すべきであることが理解されるべきである。
【0070】
マーティン(E. W. Martin)による「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に以前に記載されているように、1種または以上のアポEポリペプチドを含有する薬学的組成物を調製することができる。薬学的な安定化化合物、送達賦形剤および/または担体賦形剤を使用することができる。例えば、第VIII因子調製物を安定化することが見出されているヒト血清アルブミンまたは他のヒトもしくは動物タンパク質を使用することができる。リン脂質小胞またはリポソーム懸濁液は、薬学的に許容される好ましい担体または送達賦形剤である。これらは、当業者に既知の方法により調製することができる。
【0071】
アポEポリペプチドは、第VIII因子について以前に記載されている(米国特許第5,925,739号)、オイルが分散相である水中油型エマルジョン、オイルが連続相である油水型エマルジョンまたは極性脂質の分散物などの添加剤と共に投与することができる。デキストラン、ヒアルロン酸、加水分解コラーゲン、加水分解ゼラチン、ポリ(0-2-ヒドロキシエチル)デンプンまたは大豆エマルジョンも生物学的利用能を増加するために添加することができる(米国特許第5,925,739号)。アポE調製物は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、ポリエチレングリコール、少なくとも0.01 mg/mlのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたは1 mMより多い量のアミノ酸をさらに含有することができる(米国特許第5,925,739号)。
【0072】
アポEポリペプチドの遺伝子治療送達
アポEポリペプチドを、ウィルスベクターなどの手段を使用して遺伝子治療により送達することができる。本発明の好ましい方法において、上記のように、アポE核酸は、アデノウィルス、アデノ関連ウィルス、レトロウィルス、レンチウィルス、バキュロウィルスまたはヘルペスウィルスベクターなどの組換えウィルスのゲノムにクローニングされる。遺伝子は、細胞によって発現させられるウィルス機構によって宿主細胞のゲノムに挿入される。ウィルスベクターは、複製が欠損し、ウィルスを生成せず、宿主をウィルス感染させないように改変されている。この種の治療の一般的な原理は当業者に既知であり、文献に概説されている(Kohnら、Transfusion 29: 812-820、1989)。他の可能な送達方法には骨髄移植、アテローム硬化型病変部位の動脈の直接感染および胎児の遺伝子操作が含まれる。アポE核酸を組み込んだ細胞は直接哺乳類に移植しても、またはコードされるアポEポリペプチドに透過性であるが、細胞に不透過性である植え込み可能な装置に入れ、次いで移植してもよい。
【0073】
骨髄移植を使用した遺伝子送達のためには、内因性アポE産生骨髄細胞を破壊するための放射線に被験者を暴露する。ドナー骨髄細胞に、インビトロにおいて、切断型アポEを発現するレトロウィルスを感染効率約20〜50(骨髄細胞1つあたり20〜50個のウィルス粒子)で感染させ、次いで被験者の内因性骨髄細胞を切断型アポE産生細胞とインビボにおいて交換するために被験者に移植する。この手法は、国立衛生研究所(the National Institutes of Health)が癌患者の骨髄移植のために確立したプロトコールに基づいて、当業者によって実施されうる。被験者の内因性アポEが、アポEを含有するVLDL粒子を異化作用抵抗性にし、血清コレステロールレベルが高くなるIII型高リポタンパク質血症に関連する突然変異を含有する被験者に対しては、この手法は血清コレステロールレベルを低下することができる。組換え骨髄細胞は、アテローム性動脈硬化部位に蓄積し、治療用の切断型アポEタンパク質を発現して、その結果アテローム性動脈硬化症を局所的に退行させる循環性マクロファージを生成することもできる。
【0074】
胎児の遺伝子操作では、1〜8細胞段階の胎児、卵母細胞または卵子の核を取り出し、切断型アポEをコードする核と交換することができる。この手法は、ウシ、ヒツジ、ウサギ、ブタおよびマウスなどの種々の哺乳類をクローニングするために使用されているプロトコールに基づいて当業者によって実施されうる(例えば、Pratherら、Biol. Repord. 37: 859-866、1987: Willadsen、Nature 320: 63-65、1986; SticeおよびRobl、Biol Reprod. 39: 657-664、1989; Pratherら、Biol. Reprod. 41: 414-418、1989; Tsunodaら、J. Exp. Zool. 242: 147-151、1987参照)。
【0075】
アポE核酸の投与
本発明のアポE核酸は、静脈内または血管内にも投与することができる。他の可能な送達方法には、骨髄移植、アテローム硬化型病変部位の動脈への直接感染および/またはトランスフェクション、胎児の遺伝子操作が含まれる。好ましくは、核酸はリポソームおよびプロタミンと組み合わせて投与される。任意の特定の被験者には、個体の必要性および組成物の投与を実施または監督する人物の専門的な判断により、特定の投与療法を経時的に調節するべきである。好ましい用量は、血清1 dlあたり3 mgのアポE核酸である。
【0076】
他の態様
本出願に記載されている文献および特許出願は全て、個々の文献または特許出願各々が参照として組み入れられていることが詳細に且つ個別に示されている場合と同じ程度に、参照として本明細書に組み入れられている。
【0077】
本発明は、本発明の具体的な態様に関連して記載されているが、本発明はさらに改良することができ、本出願は、一般に、本発明の原則に準じ、本発明が属する技術分野において既知または習慣的な実施の範囲内にあり、本明細書に以前に記載した本質的な特徴に適用でき、添付の請求の範囲内で追従される、本発明の開示からのこのような逸脱を含む、本発明の任意の変更、用途または適応を含む意図があることが理解されると思われる。
【0078】
他の態様は本発明の特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明のアポE4-202プラスミドの作製へ導く段階の概要を図示したものである。対応するアポE4-185、アポE4-229、およびアポE4-259プラスミドの作製について、同じ方法が使用された。
【図2】図2Aおよび図2Bは、1.04 g/ml〜1.21 g/mlの密度画分において、アポE4および切断型アポE4-202のリポタンパク質と結合する能力を示すタンパク質ゲルの図である。図2Cおよび図2Dは、アポE4およびアポE4-202のVLDL粒子と結合する能力を示すタンパク質ゲルの図である。
【図3】図3Aは、アポE4を発現する組換え体アデノウイルスがアポE欠損マウスにおいてトリグリセリドレベルを増加させることを示す棒グラフである。対照的に、アポE4-202を発現する組換え体アデノウイルスはこの増加を引き起こさない。図3Bは、アポE4-202を発現する組換え体アデノウイルスが、完全長アポEを発現する対応するウイルスより、アポE欠損マウスにおいてコレステロールレベルに大幅な減少を生じることを示す棒グラフである。
【図4】アポE4またはアポE4-202を発現する組換え体アデノウイルスがmRNAの比較できる量を合成することを示す、図4Aが棒グラフであり、かつ図4Bがゲルの図である。
【図5】図5A〜図5Dは、AdGFP-E4-202で感染させたアポE欠損マウスはAdGFP-E4またはAdGFP対照で感染させたものより感染後5日および8日においてコレステロールレベルが低く、コレステロールの大部分がVLDL領域に見出されたことを示すグラフである。図5Eおよび図5Fは、AdGFP-E4で感染後5日および8日においてマウスにおけるVLDL-トリグリセリドレベルの増加を示すグラフである。対照的に、AdGFP-E4-202での感染ではトリグリセリドレベルを増加させなかった。
【図6】AdGFP-E4またはAdGFP-E4-202で感染させたアポE欠損マウスの血漿は、脂質を含まないアポEタンパク質(画分22〜25)についてはほぼ同じレベルであることを示すグラフである。AdGFP-E4で感染させたマウスの血漿において、ELISAによる測定では、総アポEの約50%がHDL画分に、25%がVLDL画分に分布し、残りのタンパク質が他のFPLC画分にわたって分布している。AdGFP-E4-202で感染させたアポE欠損マウスにおいて、切断型アポEタンパク質はAdGFP-E4で感染させたマウスにおいての完全長アポEより低いレベルで存在し、かつすべてのリポタンパク質画分において一様に分布している。
【図7】図7Aは、アポE4を発現する組換え体アデノウイルスで感染させたアポE欠損マウスにおいて、アポE4がVLDL密度粒子から他のタンパク質を置換することを示すタンパク質ゲルの図である。アポE4-202を発現する組換え体アデノウイルスで感染させたマウスにおいては、VLDL密度粒子から他のタンパク質の置換は検出されない。図7Bは、アポE4によるVLDL密度粒子から他のタンパク質の置換がどのようにして高トリグリセリド血症の原因となりうるかを示す概要図である。図7Cは、アポEの推定されるドメインの概要図である。
【図8】AdGFP対照(アポEなし)、AdGFP-E4、AdGFP-E4-229、またはAdGFP-E4-259で感染させたアポE欠損マウスにおいて、血清のトリグリセリドレベル(図8A)およびコレステロールレベル(図8B)のインビボの時間経過解析を示す棒グラフである。切断されたE4-229型またはE4-259型を発現するアデノウイルスの4×109 pfu投与量でのアポE欠損マウスの感染により、血清トリグリセリドのレベルを増加させることなく、コレステロールのレベルを著しく低下させた。対照的に、野生型E4を発現するアデノウイルスの2×109 pfu投与量での感染では、コレステロールの低下は見られず、かつ血清トリグリセリドレベルにおいて劇的な増加を引き起こす。対照ウイルスAdGFPはアポE欠損マウスの基礎的(日数0)なコレステロールおよびトリグリセリドレベルに少しも影響が見られない。
【図9】2×109 pfuのAdGFP-E4もしくは4×109 pfuのAdGFP対照ウイルス(図9Aおよび図9B)または4×109 pfuのAdGFP-E4-229もしくは4×109 pfuのAdGFP-E4-259(図9Cおよび図9D)で感染させたアポE欠損マウスからの血清試料のコレステロールFPLCリポタンパク質特性を示すグラフである。感染後5日および8日において、血清試料を採取し、かつセファロース6のカラムでFPLCにより分画した。それから画分をコレステロール含有量について分析した。
【図10】2×109 pfuのAdGFP-E4もしくは4×109 pfuのAdGFP対照ウイルス(図10Aおよび図10B)または4×109 pfuのAdGFP-E4-229もしくは4×109 pfuのAdGFP-E4-259(図10Cおよび図10D)で感染させたアポE欠損マウスからの血清試料のトリグリセリドFPLCリポタンパク質特性を示すグラフである。感染後5日および8日において、血清試料を採取し、かつセファロース6のカラムでFPLCにより分画した。それから画分をトリグリセリド含有量について分析した。
【図11】図11Aおよび図11Bは、野生型アポE4、アポE4-229およびアポE4-259のインビボでのmRNA発現を示すノーザンブロットおよび棒グラフである。AdGFP-E4、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259ウイルスの示された投与量で感染させたアポE欠損マウスを感染後5日に屠殺し、肝臓試料を採取した。それから、肝臓試料から全RNAを単離し、アポEおよびGAPDHの発現についてノーザンブロット解析法により解析した;代表的なオートラジオグラムは図11Aに示す。GAPDHのmRNAレベルに対して標準化されたアポEのmRNAレベルは図11Bにグラフ化され、すべての3つのアポEのmRNAは同じようなレベルで発現している。アポE4は高トリグリセリド血症を引き起こし、コレステロールを除去することができず;対照的に、アポE4-229およびアポE4-259は高トリグリセリド血症という望まれない副作用なしに劇的にコレステロールを下げる(図11Cおよび図11D)。
【図12】AdGFP-E4-259、AdGFP-E4、または対照AdGFPウイルスで感染させたアポE欠損マウスについてインビボでのVLDLトリグリセリド生成の平均速度の棒グラフである。野生型アポE4は、VLDLトリグリセリド生成において、アポE4-259または対照ウイルスによって引き起こされるそれに比べて劇的な増加を引き起こす。このアポE4-259がVLDLトリグリセリド生成を引き起こせないことは切断型アポE変異体の高トリグリセリド血症を誘発できないことの一因と思われる。
【図13】アポE4-229およびアポE4-259は大きい(最低密度)アポE欠損VLDL粒子との結合に加えて、より小さい(より高密度)アポE欠損VLDL粒子と結合することができることを示すゲル図である。ゲルの各レーンの下の数は、ELISAにより測定した時の、各レーンに存在するアポE4のmg/dlでの量を表す。アポEのアポE欠損VLDLへの結合度は野生型アポE4およびアポE4-229ならびにアポE4-259の切断型については類似している。アポE4の切断型は、大きさがより小さくかつトリグリセリドの組成がより低いより高密度VLDL粒子に対して、野生型アポEより大量に結合する。
【図14】野生型アポE、アポE-229、またはアポE-259の過剰発現のVLDLおよびカイロミクロンのインビボでの異化における影響のモデル概要図である。
【図15】アポE3、アポE4、アポE4-202またはアポE4-185を発現するアデノウイルスで感染させたHTB-13細胞の培地のSDS-PAGE解析図である。培地の15 μlを解析した。「マーカー」は異なる分子量のタンパク質マーカーを指す。
【図16】対照のアデノウイルスAdGFP、野生型アポEを発現する組換え体アデノウイルス、または切断型アポEを発現する組換え体アデノウイルスのいずれかで感染させたアポE欠損マウスおよびC57BL6マウスのコレステロールおよびトリグリセリドレベルのそれぞれの棒グラフである。マウスは示された組換え体アデノウイルスの示された投与量で3通り感染させ、血清試料を単離し、本明細書に記載のように、感染後の示された日数においてコレステロールおよびトリグリセリドレベルについて分析した。
【図17】図17Aは、対照のアデノウイルスAdGFP、野生型アポEを発現する組換え体アデノウイルス、または切断型アポEを発現する組換え体アデノウイルスの示された投与量で感染させたマウスのノーザンブロット解析の代表的なオートラジオグラムの図である。全RNAを感染後示された日数において感染したマウスの肝臓から単離し、かつアポE mRNAの発現についてノーザンブロット法により解析した。図17Aはまた、完全なものをのせているRNAの対照として18SリボソームRNAについてのゲルのエチジウムブロミド染色を示す。図17Bは、発現された個々のマウスのmg/dlでのトリグリセリドレベルを示す棒グラフである。図17Cは、発現された個々のマウスのmg/dlでのコレステロールレベルを示す棒グラフである。
【図18】アポE4-185(それぞれ図18Aおよび図18C)またはアポE4(それぞれ図18Bおよび図18D)を発現するアデノウイルスで感染させたマウスのコレステロールおよびトリグリセリドのFPLC特性のグラフである。AdGFP-E4を発現する組換え体アデノウイルスの2×109 pfuまたはAdGFP-E4-185を発現する組換え体アデノウイルスの1×1010 pfuのいずれかでのマウスの感染後5日において、血清試料を得た。これらの血清試料をFPLCにより分画し、各FPLC画分のコレステロールおよびトリグリセリドレベルを本明細書に記載のように測定した。
【図19】AdGFP、AdGFP-E4、またはAdGFP-E4-185で感染させたマウスにおいて肝臓のVLDL-トリグリセリド生成解析の平均速度の棒グラフである。棒グラフはウイルス群につきVLDL-トリグリセリド生成の個々の速度の平均の+/-標準偏差を表す。
【背景技術】
【0001】
連邦政府資金援助による研究についての言明
本発明は、国立衛生研究所助成金AG12717により一部分資金を供給された。政府は本発明において一定の権利を有することができる。
【0002】
発明の背景
アポリポタンパク質E(アポE(apoE))含有リポタンパク質の細胞受容体による認識および異化を促進するリガンドとして、アポEはコレステロール輸送系の重要な成分である(InnerarityおよびMahley、Biochemistry 17:1440-1447、1978; HerzおよびWillnow、Curr. Opin. Lipidol. 6:97-103、1995; Wolfら、Am. J. Pathol. 141:37-42、1992; Kimら、J. Biol. Chem. 271:8373-8380、1996; Takahashiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9252-9256、1992; Mahleyら、Curr. Opin. Lipidol. 10:207-217、1999; Wardellら、J. Clin. Invest. 80:483-490、1987; Cohnら、Vas. Biol. 16:149-159、1996; Chaitら、Metabolism 27:1055-1066、1978; Huangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1834-1838、1994; Huangら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17:2010-2019、1997)。ヘパリン硫酸プロテオグリカンもまたこの過程に含まれうる(Cullenら、J. Clin. Invest. 101:1670-1677、1998; Lintonら、Science 267:1034-1037、1995; Fazioら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:4647-4652、1997; Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998; van Dijkら、J. Lipid Res. 40:336-344、1999; Huangら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 19:2952-2959、1999; Salahら、J. Lipid Res. 38:904-912、1997; Jiら、J. Biol. Chem. 268:10180-10187、1993; Jiら、J. Biol. Chem. 269:13421-13428、1994; Jiら、J. Lipid Res. 36:583-592、1995; Jiら、J. Biol. Chem. 269:2764-2772、1994)。アポEのLDL受容体およびおそらく他の受容体およびヘパリン硫酸プロテオグリカンへの結合を妨げるアポEにおける突然変異は、III型高リポタンパク血症および早期アテローム性動脈硬化症に関連している(Mahleyら、Curr. Opin. Lipidol. 10:207-217、1999; Dongら、Nature Struc. Biol. 3:718-722、1996; Wardellら、J. Clin. Invest. 80:483-490、1987; Rallら、J. Clin. Invest. 83:1095-1101、1989; Mannら、Biochim. Biophys. Acta 1005:239-244、1989; Wardellら、J. Biol. Chem. 264:21205-21210、1989; van den Maagdenbergら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 165:851-857、1989; Smitら、J. Lipid Res. 31:45-53、1990; Ghiselliら、Science 214:1239-124、198; Lalazarら、J. Biol. Chem. 263:3542-3545、1988; Weisgraberら、J. Biol. Chem. 258:12348-12354、1983; Innerarityら、J. Biol. Chem. 258:12341-12347、1983)。
【0003】
アポEは腎臓、副腎、星状細胞および網内皮細胞を含む、肝臓および様々な末梢組織により合成される34.2 kDAのタンパク質である。アポEは18個のアミノ酸シグナルペプチドを有する前駆体として合成される。アポEは、シグナルペプチドの細胞内での切断後、シアル酸を含む炭水化物鎖でグリコシル化され、シアロアポEとして分泌される。それは続いて、血漿中で脱シアル化される(Zannisら、Adv. Hum. Genet. 21:145-319、1993; Zannisら、J. Biol. Chem. 259:5495-5499、1984; およびZannisら、J. Biol. Chem. 261:13415-13421、1986参照)。
【0004】
当業者にとって容易に明白であるように、本明細書で使用されるアポEタンパク質についてのアミノ酸の番号付けは、シグナルペプチド切断後の成熟したタンパク質を指している。シグナルペプチドのアミノ酸は番号付けされた-18位から-1位までで、タンパク質前駆体のアミノ末端残基を指す-18を有する(Karathansisら、「ヒトアポA-1、アポA-11、アポC1、アポC11、アポC111およびアポEのcDNAクローンのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列(Nucleotide and Corresponding Amino Acid Sequences of Human apoA-1, apoA-11, apoC1, apoC11, apoC111 and apoE cDNA clones)」、血漿タンパク質の生化学と生物学(Biochemistry and Biology of Plasma Proteins)、ScanuおよびSpector編、Marcel Dekker、New York、11巻、475-493ページ、1985)。
【0005】
アポEのいくつかのドメインが記載されてきたが、受容体結合(Heら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:2509-2514、1998; Lalazar、前記; Weisgraber、前記(1983); Innerarityら、J. Biol. Chem. 258:12341-12347、1983; Jiら、J. Lipid Res. 36:583-592、1995; Rallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4696-4703、1982; Westerlundら、J. Biol. Chem. 268:15745-15750、1993; Wilsonら、Structure 2:713-718、1994; Wilsonら、Science 252:1817-1822、1991; Mahley、Biochim. Biophys. Acta 575:81-91、1979)、ヘパリン結合(Lalazar、前記; Fan、前記; Salah、前記; Ji、前記(1993))、脂質結合およびリポタンパク質結合(Cohn、前記; Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998; Salah、前記; Ji、前記(J. Biol. Chem. 269、1994); Ji、前記(1995); Ji、前記(J. Biol. Chem. 289、1994))におそらく関係しているものと思われる(図7C)。受容体結合ドメインは残基136〜152位の間に見出されるが、隣接する残基もまた間接的に受容体結合に作用する。
【0006】
ヘパリン結合ドメインの1つは残基140〜150位の間で受容体結合ドメインと部分的に重複し、一方、2つの他のヘパリン結合ドメインは残基211〜218位および243〜272位の間であると報告された(Weisgraberら、J. Biol. Chem. 261:2068-2076、1986; Cardin、前記)。以前の研究より、140〜150ドメインはアポEを含むリポタンパク質のヘパリン硫酸プロテオグリカンへの結合、およびLRP(LDL受容体関連タンパク質)の関与の有りまたは無しにおいて続いて起こるそれらの内部移行に直接的に関係していることが示されている(Herz、前記; Mahley、前記; Fazio、前記; van Dijk、前記; Huang、前記(1999); Ji、前記(J. Biol. Chem. 289、1995); Cardin、前記; Dongら、J. Biol. Chem. 269:22358-22365、1994)。脂質およびリポタンパク質結合に関する有力な考えとして、アポEのアミノ末端領域がリポタンパク質との結合に必要とされる決定子を欠損していることに対して、アポEの残基244〜266の間の領域がアポEの脂質およびリポタンパク質への結合に寄与しているというものである(He、前記; Dong、前記(1994))。
【0007】
ヒトにおいてアポEをコードする3つの共通の対立遺伝子がある。ε4、ε3およびε2と呼ばれる3つの対立遺伝子は3つのホモ接合表現型(すなわち、E4/E4、E3/E3、およびE2/E2)および3つのヘテロ接合表現型(すなわち、E4/E3、E3/E2、およびE4/E2)を生じさせる(ZannisおよびBreslow、Biochemistry 20:1033-1041、1982; Zannisら、Am. J. Hum. Genet. 33:11-24、1981)。3つの異なるヒトアポEイソプロテイン、アポE4、アポE3、およびアポE2はアミノ酸残基112および158での突然変異から生じる。アポE4は112位にアルギニンおよび158位にアルギニンを含む。アポE3は112位にシステイン、および158位にアルギニンを含む。アポE2は112位および158位にシステインを含む。
【0008】
通常のアポE対立遺伝子に加えて、3つのまれなアポE対立遺伝子(アポE1、アポE2*、およびアポE2**)がある。他のアポEタンパク質と比較して、アポE1は127位にグリシンの代わりにアスパラギン酸、および158位にアルギニンの代わりにシステインを有する。アポE2*は145位にアルギニンの代わりにシステイン、およびアポE2**は146位にリジンの代わりにグルタミンを有する(Karathanasisら、前記)。
【0009】
アポE4欠損症または欠陥のあるアポE型を有するヒトの患者および動物モデルの研究により、コレステロールの恒常性におけるアポEの役割について信じざるを得ない証拠が明確に立証された(Schaeferら、J. Clin. Invest. 78:1206-1219、1986; Cladarasら、J. Biol. Chem. 262:2310-2315、1987; Plumpら、Cell 71:343-353、1992; Zhangら、Science 2588:468-471、1992; Reddickら、Arterioscler. Thromb. 14:141-147、1994; Vanden Maagdenbergら、J. Biol. Chem. 268:10540-10545、1993; Fazioら、J. Clin. Invest. 92:1497-1503、1993; Fazioら、J. Lipid Res. 35:408-416、1994; Fazioら、Arterioscler. Thromb. 14:1873-1879、1994; Vlismenら、J. Biol. Chem. 271:30595、1996)。これらの研究より、VLDLおよびIDL領域に浮かぶコレステロールエステルに富むリポタンパク質残存物を取り除くためにアポEが必要とされることが示されている(Plumpら、Cell 71:343-353、1992; Zhanら、Science 2588:468-471、1992; Reddickら、Arterioscler. Thromb. 14:141-147、1994; Vanden Maagdenbergら、J. Biol. Chem. 268:10540-10545、1993; Fazioら、J. Clin. Invest. 92:1497-1503、1993; Fazioら、J. Lipid Res. 35:408-416、1994; Fazioら、Arterioscler. Thromb. 14:1873-1879、1994; van Vlijmenら、J. Biol. Chem. 271:30595-3062、1994; Cohnら、Arterioscler. Thromb. Vas. Biol. 16:149-159、1996; Chaitら、Metabolism 27:1055-1066、1978)。血漿におけるそのような残存物の蓄積は早発性アテローム性動脈硬化症と関連している(Schaeferら、J. Clin. Invest. 78:1206-1219、1986; Plumpら、Cell 71:343-353、1992; Zhangら、Science 2588:468-471、1992; Reddickら、Arterioscler. Thromb. 14:141-147、1994)。
【0010】
他の研究により、コレステロール流出におけるアポEの重要性が強調され、γ電気泳動移動度(γLp-E)をもつアポE含有リポタンパク質粒子は、コレステロールを詰め込んだマクロファージから過剰なコレステロールを除去する際にかなり有効であり、このようにして細胞および組織のコレステロール恒常性に寄与していることが示されている(Huangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1834-1838、1994; Huangら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17:2010-2019、1997; Zhuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:7585-7590、1998; Cullenら、J. Clin. Invest. 101:1670-1677、1988)。 コレステロール流出におけるアポEの関係から、マクロファージまたは内皮細胞に局所的に発現させた場合、なぜアポEがアテローム性動脈硬化症を防ぐのかを説明できる可能性がある(Lintonら、Science 267:1034-1037、1995; Fazioら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:4647-4652、1997; Shimanoら、J. Clin. Invest. 95:469-476、1995)。
【0011】
ヒトおよびトランスジェニック動物モデルにおいての最近の研究により、アポEが血漿トリグリセリド恒常性に関連する他の機能をもつ可能性が示された。そのような研究により、アポEレベルの増加がトリグリセリドに富むリポタンパク質の脂肪分解を阻害し、結果として高トリグリセリド血症を引き起こすことが示されている(Cohnら、Arterioscler. Thromb. Vas. Biol. 16:149-159、1996; Chaitら、Metabolism 27:1055-1066、1978; Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998; Ehnholmら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:5566-5570、1984; Huangら、J. Biol. Chem. 273:17483-17490、1998; Rensenら、J. Biol. Chem. 271:14791-14799、1996; Jongら、Biochem. J. 328:745-750、1997; van Dijkら、JLR、40:336-344、1999; Salahら、J. Lipid Res. 38:904-912、1997; Jiら、J. Lipid Res. 36:583-592、1995; Jiら、J. Biol. Chem. 289:2784-2772、1994; Rallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4696-4700、1992; Weisgraber、前記(1983); Cardinら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 134:783-789、1986; Dong、前記(1994); Westerlund、前記; Wilsonら、Structure 2:713-718、1994)。インビトロでのVLDLの脂肪分解はアポCIIの添加により部分的に復活させることができた(Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998; Huangら、J. Biol. Chem. 273:17483-17490、1998)。このアポEの機能によりヒト個体群において高トリグリセリドレベルを引き起こす可能性がある(Cohn、前記; Chait、前記; Salah、前記; Ji、前記(1995))。アポEの過剰発現はまた、インビボにおいて(Huang、前記(1999))および細胞培養において(Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393、1998)肝臓のVLDLトリグリセリドの生成を刺激するが、アポB含有リポタンパク質の集合および/または分泌を促進することによるものと思われる。VLDLの集合および分泌におけるこの可能性あるアポEの関与は、膜脂質の流動化を通して行われる可能性がある(Huangら、J. Biol. Chem. 273:26388-26393 40、1998; Huangら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. (印刷中)、1999; Fanら、J. Clin. Invest. 101:2151-2164、1998; Kulpersら、J. Clin. Invest. 100:2915-2922.893. 1993; Rallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4696-4700、1982)。対照的に、アポEの欠損はVLDLトリグリセリド分泌の減少と関連がある(Kulpersら、J. Clin. Invest. 100:2915-2922、1997)。残基1〜191位および残基1〜244位にわたる125I標識の切断された2つのアポE型のそれぞれの注入により、それらの迅速かつ効率的な血漿からの除去を引き起こした(Westerlund、前記)。
【0012】
コレステロール恒常性におけるアポEの有益な効果にもかかわらず、遺伝子治療的アプローチにおいてのアポEの治療的価値は、動物研究でアポEの過剰発現により誘発されるものと思われる重篤な高トリグリセリド血症およびVLDL蓄積のため、非常に限られたままである。高トリグリセリド血症を引き起こすことなくコレステロールレベルを下げることができる治療が必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
発明の概要
第一局面において、本発明は、哺乳動物に投与または発現させた場合高トリグリセリド血症を引き起こすことなく血漿の総コレステロールレベルを下げる、成熟した天然のヒトアポEポリペプチドのアミノ酸1-299位の対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を特徴とする。好ましくは、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸残基1から始まって、成熟したヒトアポEポリペプチドの対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する。「高トリグリセリド血症」とはトリグリセリド濃度において15%を超える増加を意味する。コレステロールおよびトリグリセリドレベルは本明細書に記載された標準的なアッセイ法を使用して測定される。
【0014】
本発明の核酸は、好ましくは、天然のヒトアポE核酸の部分に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する。一つの好ましい態様において、核酸は、アポE4(配列番号:7)、アポE3(配列番号:8)、アポE2(配列番号:9)、アポE1(配列番号:10)、アポE2*(配列番号:11)、アポE2**(配列番号:12)、または任意の他の天然に生じるヒトアポE核酸(Karathanasisら、前記)のセグメントに少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する配列を有する。
【0015】
本発明のもう一つの好ましい態様は、成熟したヒトアポEポリペプチドの残基1〜185、1〜202、1〜229、または1〜259、好ましくは、成熟したアポE4(配列番号:1)、アポE3(配列番号:2)、アポE2(配列番号:3)、アポE1(配列番号:4)、アポE2*(配列番号:5)、またはアポE2**(配列番号:6)の残基1〜185、1〜202、1〜229、または1〜259をコードする配列を有する核酸である。さらにもう一つの好ましい態様において、核酸は、アポEタンパク質前駆体(配列番号:13)のシグナルペプチドの-18位から-1位までの残基のような、N末端シグナルペプチドをさらにコードする。好ましい核酸は、天然のヒトアポEポリペプチドの-18位から185位、-18位から202位、-18位から229位、または-18位から259位のアミノ酸をコードするが、それぞれ、アポEタンパク質前駆体の最初の203個、220個、247個、または277個の残基に相当している。好ましいタンパク質前駆体は、成熟したアポEタンパク質の配列に加えて18アミノ酸のN末端シグナル配列を含む、アポE4(配列番号:14)、アポE3(配列番号:15)、アポE2(配列番号:16)、アポE1(配列番号:17)、アポE2*(配列番号:18)、またはアポE2**(配列番号:19)を含む。
【0016】
様々な好ましい態様において、本発明の核酸によってコードされるポリペプチドは少なくとも150個のアミノ酸、好ましくは少なくとも160個、180個、200個、220個、または250個のアミノ酸を含む。好ましくは、コードされるポリペプチドは150個〜299個のアミノ酸を含む。他の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは、150個〜215個のアミノ酸のような、216個より少ないアミノ酸を有する。さらに他の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは202個、203個、220個、247個、または277個のアミノ酸から成る。好ましくは、コードされるポリペプチドはポリペプチドの分泌を促進するシグナル配列を機能的に連結されている。好ましくは、該シグナル配列はシグナルペプチダーゼによって切断される。
【0017】
本発明はまた、本発明の任意の核酸によりコードされるポリペプチドを特徴とする。
【0018】
関連した局面において、本発明は、成熟した天然のヒトアポEポリペプチドの対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致するアミノ酸配列を有し、かつ哺乳動物に投与または発現させた場合、高トリグリセリド血症を引き起こすことなく血漿の総コレステロールレベルを下げるポリぺプチドを提供する。好ましくは、ポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸残基1から始まって、天然のヒトアポEポリペプチドの対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する。他の好ましい態様において、ポリペプチドのアミノ酸配列は、天然ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸1〜215、1〜240、または1〜270の対応する領域に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%一致する。
【0019】
様々な好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、少なくとも150個のアミノ酸、好ましくは、少なくとも160個、180個、200個、220個、または250個のアミノ酸を含む。好ましくは、コードされるポリペプチドは、150個〜299個のアミノ酸を含む。他の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは、150個〜215個のアミノ酸のような、216個より少ないアミノ酸を有する。さらに他の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは、202個、229個、または259個のアミノ酸から成る。まださらに他の好ましい態様において、ポリペプチドは、成熟した天然アポEポリペプチドの残基1〜185、1〜202、1〜229、または1〜259、好ましくは天然アポE4(配列番号:1)、アポE3(配列番号:2)、アポE2(配列番号:3)、アポE1(配列番号:4)、アポE2*(配列番号:5)、またはアポE2**(配列番号:6)の残基1〜185、1〜202、1〜229、または1〜259に一致する配列を有する。他の態様において、ポリペプチドは、アポEタンパク質前駆体(配列番号:13)のシグナルペプチドの残基-18〜-1のような、シグナル配列を機能的に連結されている。
【0020】
本発明のポリペプチドおよび核酸は、哺乳動物に、好ましくはヒトの患者に、高トリグリセリド血症を引き起こすことなく、コレステロールを下げる、アテローム性動脈硬化症の発病を遅らせる、またはアテローム性動脈硬化症を治療するために、投与または発現させることができる。好ましくは、適する患者は、内因的な正常に機能するアポE遺伝子を欠損する、または血流にリポタンパク質残存物の蓄積を引き起こす残存物の除去における欠陥によりアテローム性動脈硬化症を発生させる危険性のある者である。他の特に適する患者はLDL受容体タンパク質のレベルが正常より低い。例えば、患者は、内因的な完全長LDL受容体の発現を低下させるまたは妨げる、LDL受容体についての調節配列、プロモーター配列、またはコード配列に突然変異をもっている可能性がある。または、患者は、LDL受容体のアポEへの結合のような、コードされたLDL受容体の活性を低下させるミスセンス変異をもっている可能性がある。好ましくは、ポリペプチドは、薬学的に許容される担体物質と共に、筋内へ、静脈へ、または皮下へ投与される。好ましくは、ポリペプチドは、動脈のアテローム性動脈硬化斑および/または周辺組織へ直接的に送達される。他の好ましい態様において、ポリペプチドは、ヒト胎児の遺伝子操作のような遺伝子治療の結果として、または骨髄移植の結果として、供給される。好ましくは、本発明の核酸は、リポソームおよびプロタミンと組み合わせて静脈へ投与される。好ましい態様において、核酸は哺乳動物の肝臓、管壁、またはアテローム性動脈硬化斑へ投与または発現させる。他の好ましい態様において、核酸は組換え体ウイルスを使用してアテローム性動脈硬化病変部位へ直接的に送達される。他の好ましい態様において、核酸はヒト胎児の遺伝子操作または骨髄移植の結果として供給される。他の好ましい態様において、核酸は、利用可能にプロモーターに連結され、かつ例えば、プラスミドまたはアデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスのベクターもしくはバキュロウイルスを用いる系のような組換え体ウイルスベクターの発現ベクターに含まれる。
【0021】
もう一つの局面において、本発明は、薬学的に許容される担体物質と混ぜられた本発明のポリペプチドを含む薬学的組成物を特徴とする。
【0022】
さらにもう一つの局面において、本発明は、利用可能にプロモーターに連結された本発明の核酸を含む組換え体DNA分子を提供する。
【0023】
本発明は、アポEのコレステロールを下げる性質を利用し、同時にその高トリグリセリド血症の誘発を避ける。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、それらの好ましい態様の以下の記述から、および特許請求の範囲から明らかであると思われる。
【0025】
詳細な説明
アポEは、別個の領域または重複領域のどちらかがコレステロールおよびトリグリセリド恒常性における役割を媒介するという仮説に基づいて、本発明者らは、インビボにおけるコレステロールおよびトリグリセリド除去に必要なアポEのドメインを詳細に検討するために、アポE欠損マウスにアデノウィルス媒介性遺伝子導入を使用した。アポEのアミノ末端の1〜202位の領域はインビボにおいて細胞受容体を介してアポEがリポタンパク質と結合し、その後除去されるために必要なドメインを含有することを本発明者らは以前に報告した。さらに、アポEのカルボキシ末端の203〜299残基はインビボにおいてアポE誘導型の高トリグリセリド血症に寄与する。さらに、アミノ末端のアミノ酸1〜185位、1〜229位または1〜259位を含有するアポE断片も、高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールを大幅に低下することを本発明者らは最近見出した。従って、アポEのカルボキシ末端の186〜299残基、230〜299残基または260〜299残基の除去もまた、インビボにおいてアポE誘導型高トリグリセリド血症を防止する。
【0026】
野生型アポE4を発現するアデノウィルスの2×109 pfuをアポE欠損マウスに感染させても、リポタンパク質を含有するコレステロールはあまり除去されない。一方、アポE4のアミノ末端の202残基を含有する切断型のアポE4(アポE4-202)を2×109 pfuまたは1×109 pfuを投与すると、血漿中のトリグリセリドレベルをあまり増加させないで、アポE欠損マウスのコレステロールを90%低下した。感染後のマウス肝臓の全RNAのノーザンブロット解析は、同等のレベルのアポE4およびアポE4-202mRNAを示した。その所見は、アポE4のアミノ末端の1〜202領域は、インビボにおいてアポE認識受容体を介してアポEがリポタンパク質と結合し、その後除去されるために必要なドメインを含有することを示唆している。さらに、アポEのカルボキシ末端の203〜299残基はインビボにおけるアポE誘導型高トリグリセリド血症に寄与する。本発明の検討では、142〜147ヘパリン結合ドメインを含有し、211〜218または243〜272ヘパリン結合ドメインを含有しないアポE4-202によるリポタンパク質残存物の除去が極めて効率的である。
【0027】
全RNAのノーザンブロット解析は、同様の定常状態のmRNAレベル条件下では、野生型アポE-4を発現するマウスは高トリグリセリド血症を発症するが、アポE-202を発現するマウスは発症しないことを立証した(図4Aおよび4B)。この解析は、アポE合成の低下がこの作用の一因を担っている可能性がないことを示している。さらに、組織培養実験は、アポE4またはアポE4-202を発現する永久的な細胞系統または組換えアデノウィルスを感染させた細胞はほぼ同じレベルのアポE4およびアポE4-202を分泌することを示し、これは、切断型のアポE4-202型は安定であり、野生型アポE4対応物と同じくらい効率的に分泌されることを示した。
【0028】
正常なC57BL6マウスの肝臓における全長のアポE3またはアポE4の過剰発現は、血漿中の高いコレステロールおよびトリグリセリドレベルを特徴とする複合高脂血症を誘発した。一方、アポE4-202は過剰発現されても高トリグリセリドレベルを誘発しなかった。この結果は、複合高脂血症の誘発はアポEの過剰発現の結果であり、アポE表現型に無関係であることを示している。さらに、複合高脂血症を誘発するには、アポEのカルボキシ末端領域(アミノ酸203〜299位)を必要とする。
【0029】
X線結晶解析法およびコンピュータモデリング法は、アポEのアミノ末端ドメインは逆平行ヘリックスを含有することを示している(Wilsonら、Structure 2: 713-718、1994; Wilsonら、Science 252: 1817-1822、1991; Shimano、前記; Salah、前記)。残基23〜155位にわたるこれらのアミノ末端ヘリックスは、他のタンパク質粒子と共に特定の構造を形成してリポタンパク質表面に結合する可能性があると本発明者らは考えている。臨界アポE濃度では、アポE部位は飽和され、アポE含有リポタンパク質の除去が最適化されると考えられる。血漿アポE濃度がさらに増加すると、トリグリセリドに富むリポタンパク質の他の重要なタンパク質成分は、アポEのカルボキシ末端の203〜299領域を介して特異的に置換される可能性がある。これにより、これらの粒子は脂肪加水分解速度が低下し、血漿トリグリセリドレベルが増加する可能性がある(図7B)。従って、アポE4-202を感染させた後にトリグリセリドレベルの大きな増加が生じないのは、アポE4-202がVLDL粒子由来のタンパク質を置換する能力が大幅に低下したことによると思われる。例えば、トリグリセリドに富むVLDLに存在するタンパク質のなかには(例えば、apoA-IVおよびapoA-I)全長のアポEによって置換されるものもあるが、アポE4-202では置換されない(図7A)。さらに、アポE4-202はトリグリセリドに富むリポタンパク質の分泌を低下する可能性がある。しかし、この領域(203〜299位)が欠損しても、切断型タンパク質がリポタンパク質残存物を効率的に除去する能力を大きく損なわない。
【0030】
アポE4-202に見られる結果と同様に、アポE4-229またはアポE4-259を発現するアデノウィルス4×109 pfuまたはアポE4-185を発現するアデノウィルス1×109 pfuをアポE欠損マウスに投与すると、血清トリグリセリドレベルを増加することなく、血清コレステロールレベルをかなり低下した(図8A、8B、9A〜9D、10A〜10D、11C、11D、16Aおよび16B)。ノーザンブロット解析により、アポE4-229およびアポE4-259 mRNAは野生型アポE4 mRNAと同じレベルで発現することが示され、これはアポE4-229およびアポE4-259が高トリグリセリド血症を誘発しないのはこれらのアポE型の発現レベルが低いことによらないことを示唆した(図11Aおよび11B)。さらに、アポE4-185を発現するアデノウィルス1×109 pfuを感染させたアポE欠損マウスの肝臓におけるアポE-185 mRNAのレベルは、アポE4を発現するアデノウィルス2×109 pfuを感染させたマウスのアポE4 mRNAレベルより高かった。VLDLトリグリセリドの生成速度は、アポE-259は野生型アポEよりかなり低く、これはVLDLトリグリセリド生成のこのような低下は、アポE切断型変異体は高トリグリセリド血症を誘発できない一因となりうることを示唆している(図12)。これらの結果は、インビボにおいてアポE誘導型高トリグリセリド血症にはアポEのカルボキシ末端の260-299残基が必要であることを示している。同様に、アポEを発現するアデノウィルスを感染させたアポE-/-マウスにおける肝臓のVLDL-トリグリセリド分泌速度は、感染5日後には、アポE4-185を発現するアデノウィルスを感染させたマウスにおける肝臓のVLDL-トリグリセリド分泌速度より8倍高かった。切断型アポE4-185を感染させたマウスにおけるVLDL-トリグリセリド分泌速度は、対照のAdGFPアデノウィルスを感染させたマウスにおける対応する速度より50%も低かった。
【0031】
本発明を特定の理論に制限するつもりはないが、切断型アポE-185、アポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259を発現するマウスにおいてカイロミクロンおよびVLDLが形成され、正常に代謝されること、および全長のアポE4を過剰発現するマウスにおいてトリグリセリドに富むリポタンパク質が除去されないことを説明するモデルが提唱されている(図14)。アポEの過剰発現が、細胞受容体によって除去されえないトリグリセリドに富むリポタンパク質の形成に関連していることをこのモデルは示している。一方、アポE-185、アポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259を過剰発現するマウスにおいて形成される正常なカイロミクロンおよびVLDL粒子は細胞受容体によって効率的に除去され、その結果これらのマウスにおいて血漿コレステロールおよびトリグリセリドレベルが低くなる。
【0032】
切断型アポE4を含有する残存物の除去にLRPおよびLDL受容体がおそらく関与することにより、VLDLの取り込みおよびその後のコレステロール除去がより効率的になり、リポタンパク質除去において観察される切断型アポE4の特性を説明している。リポタンパク質残存物が効率的に除去されるとアポE分子も同時に除去され、定常状態の血漿アポEレベルが低下される。本発明の検討において観察される全長のアポEの定常状態の血漿アポEレベルは60〜70 mg/dlの範囲内であり、切断型アポE型の定常状態のレベルは1〜5 mg/dlの範囲内である。
【0033】
または、リポタンパク質は、LDL受容体およびLRP経路に代わる、またはこれに加えたヘパリン硫酸プロテオグリカン経路により除去されうる。切断型アポE4タンパク質の142〜147位のヘパリン結合領域も受容体結合ドメインを含有するので、ヘパリン硫酸プロテオグリカンへのアポEの結合は受容体結合ドメインを遮蔽し、細胞受容体により認識されなくすることができる。得られたヘパリン硫酸プロテオグリカンが結合した残存物は直接的なエンドサイトーシスにより除去されうる。
【0034】
アポE4および切断型アポE4を発現する組換えアデノウィルスの構築
以前に記載されているpUC-アポE4(Aleshokovら、Biochemistry 36: 10571-10580、1997)を鋳型とし、表1に示す4セットのオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、コドン203(GTA)から停止コドン(TGA)までのPCRによる突然変異によってpUC-アポE4-202を作製した。外側のプライマーOUTPR1-センスおよびOUTPR2-アンチセンスセットは、アポEのそれぞれアミノ酸103〜111位および208〜215位をコードするヌクレオチドに相当し、それぞれ制限酵素部位NgoMIおよびBstEIIを含有する。コドン203の5'側9残基と3'側9残基に及ぶ突然変異オリゴヌクレオチドセットは、その配列が停止コドンに改変されている(表1、インターナル-センス-203およびインターナル-アンチセンス-203)。
(表1) 重複伸長PCRに使用したオリゴヌクレオチド
*下線の太字の塩基は突然変異したコドンを示す。
【0035】
コドン203のPCRによる突然変異が2つの別個の増幅反応に関与した。第1の反応は、コドン203に及ぶ5'側の外側のプライマーおよびアンチセンス突然変異プライマーを使用した。第2の反応は、コドン203に及ぶ3'側の外側のプライマーおよびセンス突然変異プライマーを使用した。各PCR反応の4%のアリコートを混合し、5'側および3'側外側のプライマーによって試料を増幅した。次いで、増幅した断片をNgoMIおよびBstEIIで消化し、pUC-E4プラスミドの野生型配列と交換するために使用した。同様に、それぞれコドン186、230または260を停止コドンに変換するために、対応する突然変異プライマーを使用して、pUC-アポE4-185、pUC-アポE4-229およびpUC-アポE4-259を構築した。
【0036】
アポE遺伝子のエキソンIVにPCRで作製した突然変異を組み込むために、2段階の工程を実施した。エキソンIV配列全体を含むヒトアポE4遺伝子のEcoRI断片をpBSベクターのEcoRI部位にクローニングしてpBlue-E4-exIVを作製した。同様に、ヒトアポE3遺伝子のEcoRI断片を使用してベクターpBlue-E3-exIVを構築した。pUC-アポE4-185、pUC-アポE4-202、pUC-アポE4-229およびpUC-アポE4-259プラスミドをStyI/BbsIで消化し、突然変異させた配列をpBlue-E4-exIVプラスミドの野生型配列と交換して、プラスミドpBlue-E4-185-exIV、pBlue-E4-202-exIV、pBlue-E4-229-exIVおよびpBlue-E4-259-exIVを作製した(図1)。
【0037】
組換えアデノウィルスが細菌BJ-5183細胞において作製されるAd-Easy-1系を使用して組換えウィルスを構築した(Heら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 2509-2514、1998)。エキソン2および3を含有するアポEゲノムDNAの1507 bpのMscI-EcoRI断片(ヌクレオチド1853〜3360位)をpGEM7ベクターのSmaI-EcoRI部位にクローニングし、その結果pGEM7 アポE-ExII-IIIベクターを構築した。次いで、アポE3、アポE4、アポE4-185(コドン186に停止突然変異を含有する)、アポE4-202(コドン203に停止突然変異を含有する)、アポE4-229(コドン230に停止コドンを含有する)、およびアポE4-259(コドン230に停止突然変異を含有する)の1,911 bpのEcoRI断片を、それぞれpBlue-E3-Ex IV、pBlue-E4-Ex IV、pBlue-E4-185 Ex IV、pBlue-E4-202-Ex IV、pBlue-E4-229-Ex IVおよびpBlue-E4-259 Ex IVベクターから切り出し、pGEM7-ExII,IIIベクターのEcoRI部位にクローニングした。これは、アポE遺伝子のエキソンII、IIIおよびIVを含有する、それぞれpGEM7-アポE3g、pGEM7-アポE4g、pGEM7-アポEg-185、pGEM7-アポE4g-202、pGEM7-アポE4-229およびpGEM7-アポE4g-259ベクターを作製した。1,911 bpのEcoRI挿入断片の適切な方向は、NotIおよびXbaIによる制限消化によって調べた。pGEM7-アポE3g、pGEM7-アポE4g、pGEM7-アポEg-185、pGEM7-アポE4g-202、pGEM7-アポE4-229およびpGEM7-アポE4g-259ベクターのHindIII-XbaI断片全体をpAd Track-CMVアデノウィルスシャトルプラスミドの対応する部位にクローニングした。
【0038】
各組換えベクターは、pAd Easy-1ヘルパーベクターと共にBJ 5183大腸菌(E. coli)細胞をエレクトロポレーションするために使用した。pAdEasy-1はアデノウィルスのウィルスゲノムおよび長い末端反復を含有し、関心対象の遺伝子を含有する組換えウィルスの相同組換えによる形成を可能にする。ベクターは、緑色の蛍光により細胞および組織の感染を検出することができる緑色蛍光タンパク質遺伝子も含有する。カナマイシンに抵抗性の組換え細菌クローンを選択し、制限エンドヌクレアーゼ解析およびDNA配列決定によって関心対象の遺伝子の存在についてスクリーニングした。野生型アポE3、アポE4、アポE4-185、アポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259を発現するウィルスは、それぞれAdGFP-E3、AdGFP-E4、AdGFP-E4-185、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259と命名する。RecA欠損DH5α細胞において適切なクローンを増殖した。組換えベクターはPacIで直線化し、911細胞に感染させるために使用した。組換えアデノウィルスの作製および増殖に関与するその後の段階はプラークの同定/単離およびその後の911細胞における感染および増殖であった(van Dijk、前記)。これらの段階の次に、CsCl超遠心を2回実施する精製過程を実施し、その次にウィルスを分離し、滴定した。通常、約5×1010 pfu/mlの力価が得られた。
【0039】
細胞培養の検討
10%ウシ胎児血清を含有する培地において集密状態まで増殖させたヒトHTB13細胞(SW1783、ヒト神経膠星状細胞腫)に、感染効率20でAdGFP-E4、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259を感染させた。感染24時間後、細胞をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、無血清培地で2時間あらかじめインキュベーションした。PBSでさらに洗浄した後、新鮮な無血清培地を添加した。24時間のインキュベーション後、培地を回収し、アポE発現について酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)およびSDS-PAGEによって解析した。いくつかの実験では、直径60 mmの培養物に0.5μCiの35Sメチオニンで2時間代謝することにより標識し、この場合には放射標識アミノ酸を添加してから2時間後に培地を回収してさらに解析した。
【0040】
細胞の培地に分泌されたアポE含有リポタンパク質の分離
細胞を35Sメチオニンで標識した後、直径100 mmの培養皿から2 mlの培地を取り、KBrで密度1.35g/mlに調整し、密度1.25g/ml、1.115g/ml、1.06g/mlのKBr溶液各2 mlおよび通常の生理食塩液2 mlを重層した。混合物をSW-41ローターで30,000 rpmにおいて24時間遠心分離した。いくつかの試験管において、密度勾配超遠心によって事前に血漿から分離しておいた密度1.006〜1.21 g/mlのリポタンパク質画分0.8mlを培地に混合した。超遠心後、1 mlの12個の画分を回収し、SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによって解析した。アポE4およびアポE4-202は共に、LDLからHDL領域に浮遊する外因性リポタンパク質に結合することができることをこの解析は示した。
【0041】
アポE欠損マウスにおける動物の検討
20〜25週齢の雌アポE欠損マウス(van Ree et al、Atherosclerosis 111:25、1994)をこれらの検討に使用した。各群の平均コレステロールおよびトリグリセリドレベルを同じにするために、実験開始前に、血漿コレステロールおよびトリグリセリドレベルに基づいて、マウス群を形成した。5×108〜1×1010 pfuの用量範囲のAdGFP(対照アデノウィルス)、AdGFP-E4もしくはAdGFP-E4-202ウイルス、または4×109 pfuのAdGFP-E4-229もしくはAdGFP-E4-259を尾静脈を介してマウスに静脈内注射した。各群は8〜10匹のマウスを含んだ。アデノウィルス注射の前に、4時間の絶食後に尾静脈または後方眼窩叢から採血した。注射後示した日数経過時に、CB300またはCB1000採血管(Sarstedt)に血液を収集した。血漿アリコートを4℃および-20℃において保存した。マウス肝臓のmRNA発現を解析できるように、各群の1匹またはそれ以上の動物を示した経過日数の各時点において屠殺した。
【0042】
血清試料のFPLC分析
AdGFP、AdGFP-E4、AdGFP-E4-185またはAdGFP-E4-202処理マウスの血清試料のFPLC分析では、12μlの血清をPBSで1:5希釈した。次いで、試料をスマートマイクロFPLCシステム(SMART micro FPLC system)(Pharmacia)のセファロース(Sepharose)6カラムにのせ、PBSで溶出した。さらに分析するために各々50μl容量の合計25画分を回収した。AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259処理マウスの試料では、100μlの血清をPBSで1:1希釈し、マイクロFPLCシステムの代わりに通常のFPLCシステムを使用して同様に分析を実施した。各々250μlの合計60画分を回収した。
【0043】
トリグリセリドおよびコレステロール分析
10μlの血清試料を40μlのリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で希釈し、製造業者の指示により、GPO-トリンダーキット(GPO-Trinder Kit)(Sigma)およびCHOL-MPR3キット(Boehringer-Mannheim)を使用してトリグリセリドおよびコレステロールについて分析した。トリグリセリドおよびコレステロール濃度は、それぞれ、540 nmおよび492 nmにおいて分光光度計により測定した。FPLC画分のトリグリセリド分析は、TGバッファー(TG-Buffer)(Sigma)を使用して実施し、製造業者の指示により、492 nmにおいて分光光度計で濃度を測定した。FPLC画分のコレステロール分析は、上記のように実施した。
【0044】
ヒトアポEタンパク質レベルの定量
血清ヒトアポE4濃度は、サンドイッチELISAを使用して測定した(Kimら、J. Biol. Chem. 271:8373-8380、1996)。親和性精製したポリクローナルヤギ抗ヒトアポE抗体をコーティングに使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したポリクローナルヤギ抗ヒトアポEを二次抗体として使用した。西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗ヒトアポEを含む培養皿をインキュベーションした後、テトラメチルベンジジンを基質として用いた免疫ペルオキシダーゼ手法を使用して検出を実施した。アポEレベルが既知の健康なヒト被験者からプールした血漿を標準として使用した。
【0045】
密度勾配超遠心によるVLDLの単離
アデノウィルス感染マウスおよびアポE欠損マウスから採取した500μlの血清試料を、1.21 g/ml KBr 2 ml、1.063 g/ml KBr 2.5 ml、1.019 g/ml KBr 2.5 mlおよびddH2O 2 mlを含むKBr溶液に重層した。試料を40,000 rpmにおいて16時間超遠心し、VLDL画分を含有する濃度勾配の最上層の1 mlを単離した。
【0046】
VLDL粒子のアポE濃縮
アポE欠損マウスの血漿から単離した500μlのVLDLに、それぞれ、AdGFP-E4、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259を感染させたHTB細胞が分泌した250μgのアポE4、アポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259を含有する培地を混合し、最終容量1 mlとした。混合物は、37℃において1時間振とう器上でインキュベーションし、次いで密度勾配遠心分離を実施してVLDL結合アポEから遊離のアポEを分離した。次いで、アポEに富むVLDLおよび遊離のアポE画分を単離し、SDS-PAGEおよびELISAによってアポE濃度を解析した。
【0047】
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェスタンブロット解析
各リポタンパク質画分から、7.5μgのタンパク質の試料を、12%ゲルのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によってアポリポタンパク質について解析した。銀染色またはクーマシーブリリアントブルー染色によってタンパク質を検出した。
【0048】
RNAの単離とハイブリダイゼーション解析
製造業者の指示により、RNAイージー液(RNA Easy Solution)(RNA Insta-Pure、Eurogentec Belgium)を使用して感染マウスの肝臓試料から全RNAを単離した。ノーザンブロット解析では、RNA試料(15μg)を変性させ、1.0%ホルムアルデヒド-アガロースゲルの電気泳動によって分離した。完全性とローディング作業の均等性を立証するためにRNAを臭化エチジウムで染色し、次いでジーンスクリーンプラス(GeneScreen Plus)(DuPont NEN)に移した。RNAは、0.12ジュール/cm2のUVを30秒照射することによって(Stratalinker、Stratagene)膜に架橋した。ランダムプライミングによって調製したプローブを、2.0×106 cpm/ml[32P]-標識DNAと共に以前に記載したように使用した(Kypreosら、J. Cell. Biochem. 68:247-258、1998)。モレキュラー ダイナミクス ホスホリメージャー(Molecular Dynamics phosphorimager)(400B型)を使用して、スキャニング濃度測定による定量を実施した。アポE mRNA発現はGAPDH mRNAレベルについて標準化し、棒グラフの形態で報告した。実験は3通り実施し、平均値としてデータを報告してある(図4A、4B、11Aおよび11B)。
【0049】
アデノウィルスが感染したHTB-13細胞培養物が分泌したリポタンパク質とアポE4-202の結合
内因性アポEを合成しないHTB-13細胞に、それぞれAdGFP-E4およびAdGFP-E4-202と命名した、アポE4またはアポE4-202発現する組換えアデノウィルスを感染効率20で感染させた。SDS-PAGEおよびサンドイッチELISAによる培地の解析は、アポE4およびアポE4-202は共に、AdGFP-E4またはAdGFP-E4-202の感染から24時間後に、1 mlあたり60〜80μgの範囲のかなりのレベルが効率的に分泌されることを示した。大多数のアポEは低脂質または無脂質画分に存在したが、アポE4およびアポE4-202は、密度1.04〜1.21g/ml画分において外因的に添加したリポタンパク質と結合することができることを密度勾配超遠心により示された(図2Aおよび2B)。切断型アポE形態のアポE4-202は、受容体媒介性リポタンパク質除去に必要とされる過程である、事前に存在するリポタンパク質粒子と結合する能力を有することをデータは示している。アポE4およびアポE4-202がリポタンパク質残存物と結合する能力をさらに立証するために、等量のアポE4およびアポE4-202を、アポE欠損マウスの血漿から単離した血清と混合し、37℃において1時間インキュベーションした。次いで、混合物に密度勾配超遠心を実施した。次いで、遊離およびリポタンパク質結合アポEの量はELISAによって定量的に評価され、SDS-PAGEで分画し、次にゲルをクーマシーブリリアントブルー染色し、アポEバンドの強度をウシ血清アルブミン(BSA)標準と比較することによって定性的に評価した。図2Cおよび2Dに示すように、全長のアポE4および切断型アポE4-202は共にVLDLと結合する。
【0050】
HTB-13細胞によるアポE4-185の同様のレベルの発現および分泌
HTB-13細胞によって分泌されるアポE4-185の量を、これらの細胞によって分泌されるアポE3、アポE4およびアポE-202の量と比較した。このアッセイ法では、上記のように、アポE3、アポE4、アポE4-202またはアポE4-185を発現する組換えアデノウィルスを感染効率20でHTB-13細胞に感染させた。全長および切断型アポEは、感染から24時間後には1 mlあたり約60〜70μgの範囲のアポEのかなりのレベルが培地に分泌されることをサンドイッチELISAによる培地の解析は示した。この結果は、アポE4およびアポE4-202について上記の実験から得られる1mlあたり60〜80μgの範囲のアポEとほぼ同じである。既知のBSA標準を使用した分泌タンパク質のSDS-PAGE解析によって同様の定量的評価が得られた(図15)。
【0051】
アポE欠損マウスにおけるアポEのカルボキシ末端186〜299、203〜299、230〜299および260〜299セグメントの高トリグリセリド血症への寄与
インビボにおいてアポE4およびアポE4-202が高脂血症に及ぼす影響を評価するために、アポE欠損マウス(アポE-/-)に、それぞれ組換えアデノウィルスAdGFP-E4またはAdGFP-E4-202を感染させた。ウィルス感染の非特異的と思われる影響を評価するために、一部のマウスには対照AdGFPウィルスを感染させた。アポE4アデノウィルス2×109 pfuをマウスに感染させても対照の感染と比較してマウスにおいてコレステロールレベルをあまり低下させず、重症の高トリグリセリド血症を誘発することを解析は示した(図3Aおよび3B)。高トリグリセリド血症はアポE4の過剰発現の結果である。感染後8日目にアポE4の発現が低下する場合または感染に使用した用量が低い場合には、高トリグリセリド血症も低下するかまたは排除される(図3A)。マウスに2×109または1010 pfuさえのAdGFP-E4-202アデノウィルスを感染させた場合に、高トリグリセリド血症は誘発されなかった(図3A)。対照ウィルスAdGFPは、アポE欠損マウスのコレステロールおよびトリグリセリドレベルに大きな影響を与えるとは思われず、感染過程の非特異的な影響の可能性を除外していた。
【0052】
アポE4-202を使用した場合に観察された結果と同様に、アポE欠損マウスに4×109 pfuのAdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259を感染させると、高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールレベルを低下した(図8Aおよび8B)。さらに、アポE欠損マウスに1×1010 pfuのアポE4-185発現ウィルスを感染させると、高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールレベルを正常化した(図16Aおよび16B)。アポEのアミノ末端残基1〜185は、アポE-/-マウスの血漿中に蓄積するリポタンパク質残存物の除去に必要な決定因子全てを含有することをこの所見は示している。
【0053】
正常なC57BL6マウスにおける高コレステロール血症および高トリグリセリド血症へのカルボキシ末端203〜299の寄与
ヒトアポEのマウスの過剰発現によってアポE-/-マウスに誘発した高トリグリセリド血症は、アポE-/-マウスにおける基礎的な高コレステロール血症の結果と思われる。または、全長のアポEはそれ自体血漿高脂質レベルを誘発すると思われる。これら2つの可能性を見分けるために、正常なC57BL6マウス(アポE+/+)に、アポE3、アポE4またはアポE4-202を発現する1〜2×109 pfuのアデノウィルスを感染させた。アポE3またはアポE4のどちらかの過剰発現は正常なC57BL6において複合高脂血症(高コレステロールおよびトリグリセリドレベル)を誘発するために十分であることをこの解析は示した。一方、アポE4-202の過剰発現はC57BL6マウスのトリグリセリドレベルに検出できるほどの影響を与えなかった(図16Aおよび16B)。この結果は、全長のアポEの過剰発現は正常なC57BL6マウスまたはアポE-/-マウスにおいて複合高脂血症を生じるために十分であることを示している。さらに、高脂血症の誘発には、アポEのカルボキシ末端領域が必要である。本発明を特定の理論に制限するつもりはないが、カルボキシ末端203〜299領域内のアポEのドメインは、肝臓で効率的に除去されないリポタンパク質粒子の分泌の直接的な一因となり、血漿コレステロールおよびトリグリセリドレベルが高くなる可能性がある。
【0054】
インビボにおけるアポE4、アポE4-185、アポE4-202、アポE4-229およびアポE4-259 mRNAの同様な発現
それぞれ、AdGFP-E4、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259を感染させたアポE欠損マウスにおいてアポE4、アポE4-202、アポE4-229およびアポE4-259 mRNAの発現を評価するために、各群の少なくとも3匹の感染マウスを感染後5日目に屠殺し、肝臓を採取した(図8Aおよび8B)。全RNAをこれらの肝臓から単離し、ノーザンブロット解析によってアポE mRNA発現について解析した。図4A、4B、11Aおよび11Bに示すように、2×109 pfu用量のAdGFP-E4を感染させたマウスにおけるアポE mRNAレベルは、1×1010 pfuのAdGFP-E4-202または4×109 pfuのAdGFP-E4-229もしくはAdGFP-E4-259を感染させたマウスにおけるものとほぼ同じである。しかし、アポE4-202、アポE4-229およびアポE4-259は、全長のアポE4と異なり、高トリグリセリド血症を生じないが、高コレステロール血症(血中高コレステロールレベル)を効果的に矯正する。従って、高トリグリセリド血症に対するアポE4とアポE4-202、アポE4-229またはアポE4-259の影響の差は、これらのアポE型間の発現レベルの差によるのもではない。
【0055】
さらに、AdGFP-E4-185を感染させたアポE欠損マウスにおける定常状態のアポE4-185 mRNAレベルを、AdGFP-E4を感染させたマウスの全長のアポE4 mRNAの対応するレベルと比較した。この比較のために、各群の少なくとも2〜3匹の感染マウスを感染後5日目に屠殺し、上記のように肝臓を採取した。全RNAをこれらの肝臓から単離し、ノーザンブロット法によってアポE mRNAについて解析した。18SリボソームRNAのゲルの臭化エチジウム染色をRNAが等しくのせられ、完全である指標として使用した(図17A)。1×1010 pfuのAdGFP-E4-185を感染させたアポE-/-マウスのアポE mRNAレベルは、2×109 pfuのAdGFP-E4を作用させたマウスのmRNAレベルより大きい(図17A)。しかし、アポE4-185は、高コレステロールおよびトリグリセリドレベルを生じる全長のアポEとは異なり、高脂血症を生じない(図17Bおよび17C)。従って、アポE4-185が高脂血症を誘発しないのは、これら2つのアポE型間の発現の差によらない可能性が高い(図17A-C)。
【0056】
対応するアデノウィルスを感染させた正常なC57BL6マウスにおけるアポE3、アポE4またはアポE4-202のmRNAレベルを比較した。図15の細胞培養データと一致して、アポE3、アポE4またはアポE4-202(アポE3およびアポE4-202は2×109用量で、アポE4は1×1010 pfuの用量)を発現するアデノウィルスを感染させたC57BL6マウスにおけるアポE mRNAレベルは同等である(図17A)。
【0057】
AdGFP-E4、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229、AdGFP-E4-259または対照ウィルスAdGFPを感染させたマウスから単離した血漿のコレステロール、トリグリセリドおよびアポEFPLC特性
アデノウィルスを感染させたアポE欠損マウスの血漿のFPLC分析は、アポE4を発現するマウスでは、感染後5日目には、コレステロールの72%はVLDL画分に分布し、約18%はHDL画分に分布することを示した(図5A)。感染後8日目には、AdGFP-E4を感染させたマウスでは、VLDL/HDLコレステロールの比は約1:1であった(図5C)。AdGFP-E4-202を感染させたマウスでは、2×109または1010 pfuのアデノウィルスを使用した場合、コレステロールはVLDLおよびHDL3画分に分布し、HDLコレステロールに対するVLDLコレステロールの比は感染後5日目および8日目に約3:2であった(図5Bおよび5D)。予測されるように、2×109 pfuの対照ウィルスAdGFPの感染は、アポE欠損マウスのコレステロールおよびトリグリセリド特性にいかなる変化も生じなかった(データは示していない)。
【0058】
AdGFP-E4の感染後5日目および8日目にはマウスにおいてVLDL-トリグリセリドレベルが増加することもFPLC分析は示した(図5E、5F、10Aおよび10B)。一方、VLDL-トリグリセリドレベルは、AdGFP-E4-202、AdGFP-E4-229、AdGFP-E4-259またはAdGFPを感染させたマウスでは増加しなかった(図5E、5F、10Cおよび10D)。
【0059】
サンドイッチELISAによるFPLC画分の分析は、2×109 pfuのAdGFP-E4を感染させたマウスでは、感染後5日目に、総アポEの約50%がHDL画分に分布し、25%がVLDL画分に分布し、残りのアポEは他のFPLC画分に分布することを示した(図6)。一方、1010 pfuのAdGFP-E4-202を感染させたマウスでは、タンパク質は全てのリポタンパク質画分に均一に分布した。リポタンパク質を含有する画分のアポE4-202濃度が明らかに低いのは、アポE4-202を含有するリポタンパク質の効率的な異化作用を反映している。アポE4およびアポE4-202のレベルは、無脂質アポEを含有するFPLC画分22〜25においてほぼ同じであり、これは、それぞれ2×1010 pfuのAdGFP-E4または1010 pfuAdGFP-E4-202を感染させたマウスの血漿における無脂質アポE4およびアポE4-202は同様の定常状態レベルであることを示唆している。
【0060】
AdGFP-E4-185を感染させたアポE-/-マウスの血漿のFPLC分析は、コレステロールは低いレベルで存在し、VLDL、LDLおよびHDLに約2:1:1の比で分布することを示した(図18A)。これらのマウスにおけるトリグリセリドレベルはVLDL画分において低く、リポタンパク質画分の残りではほとんど検出されなかった(図18C)。一方、アポE4を発現するマウスは、感染の5日後にコレステロールレベルが高かった。コレステロールの約80%がVLDLに分布し、約20%がHDLに分布した(図18B)。予測されるように、トリグリセリドレベルはVLDL画分では非常に高く、リポタンパク質画分の残りではほとんど検出されなかった(図18D)。追加の対照として、2×109 pfuの対照ウィルスAdGFPの感染は、アポE欠損マウスのコレステロールおよびトリグリセリド特性にいかなる検出可能な変化も生じなかった。
【0061】
血漿総アポEの平均レベルを、同一のアデノウィルスを感染させた3匹のマウスの血漿のプールについてサンドイッチELISAによって測定した。血漿アポEタンパク質の量は、アポE3およびアポE4では60〜70μg/dlであり、アポE4-202およびアポE4-185では1〜5μg/dlであった。
【0062】
対照およびアポE発現アデノウィルスを感染させたマウスにおけるVLDLのアポタンパク質組成
密度勾配超遠心によって単離したVLDLの分析は、対照アポE-/-マウスでは、VLDLはapoB-48、apoA-IおよびapoA-IVを含有することを示した。低い分子量領域の拡散染色も低分子量ペプチドの存在を示した。同様に、アポE4-202を発現するマウスでは、VLDLはapoB-48、apoA-I、apoA-IVおよび低分子量ペプチドを含有した(図7A)。一方、アポE4を発現する高トリグリセリド血症マウスでは、apoB-48およびアポE4だけが存在した。この定量的な描写は、過剰発現されているアポEがリポタンパク質粒子のapoCIIおよび他のタンパク質と交換することを示す以前の検討に一致している。
【0063】
VLDLトリグリセリド生成速度
異なるアポE型を感染させたマウスにおいてVLDLトリグリセリドの生成速度を測定した。アポE切断がVLDLトリグリセリド合成に及ぼす影響を求めるために、アポE欠損マウスに2×109 pfuのAdGFP-E4、4×109 pfuのAdGFP-E4-259または4×109 pfuの対照AdGFPウィルスを感染させた。感染後5日目に、アポE外来遺伝子の発現が最大になった場合に、マウスを4時間絶食させ、VLDL異化作用を完全に阻止することが示されているトライトン-WR1339の500 mg/kg体重量の用量で0.9%NaClの15%溶液(w/v)を使用して(トライトン-WR 1339)注射した(Aalto-Setalaら、J. Clin. Invest.90: 1889-1900、1992)。次いで、トライトン-WR 1339注射後5分、10分、20分、30分、40分、50分および60分経過時に血清試料を単離した。対照として、洗剤を注射した直後の1分経過時に血清試料を単離した。上記のように血清トリグリセリドレベルを測定し、血清トリグリセリド対時間の線グラフを作成した。mg/dl/分単位で表されるVLDL-トリグリセリド分泌速度は、個々のマウス各々の線グラフの傾きから算出した。次いで、傾きを分類し、平均±標準偏差として棒グラフで報告した。野生型アポEは、アポE4-259または対照ウィルスによって誘発されるものと比較して、VLDLトリグリセリド生成の劇的な増加を誘発した(図12)。
【0064】
VLDLトリグリセリド合成および分泌に対するアポE-185の影響を求めるために、アポE欠損マウスに、2×106 pfu用量のAdGFP-E4、2×109 pfu用量のAdGFPまたは1×1010 pfu用量のAdGFP-E4-185を感染させた。アデノウィルス感染後5日目に、上記のように、マウスにトライトン WR 1339を注射した。トライトン WR 1339注射後20分、40分および60分経過時に血清試料を単離した。全長のアポEを発現するアデノウィルスを感染させたマウスにおけるトリグリセリド分泌速度は、1×1010 pfuのAdGFP-E4-185を感染させたマウスにおけるトリグリセリド分泌速度の8倍高かった(図19)。2×109 pfuの対照AdGFPウィルスを感染させたマウスでも、VLDLトリグリセリド分泌速度は、AdGFP-E4-185を感染させたマウスより2倍高かった。
【0065】
アポE4-185またはアポE4-259を発現するマウスのVLDLトリグリセリド生成速度が、アポE4を発現するマウスの対応する速度と比較して低いことは、アポE4のカルボキシ末端領域がVLDLトリグリセリド分泌速度に影響していることを示唆している。VLDLトリグリセリド生成速度がこのように低下することが、切断型アポE突然変異体は高トリグリセリド血症を誘発できないことに寄与している可能性がある。
【0066】
アポEポリペプチドの精製
標準的な分子生物学的技術を使用して、好適な発現系(例えば、原核細胞発現系、真核細胞、遺伝子組換え動物または無細胞系)において使用する天然型ヒトアポE核酸の断片または突然変異体を作製することができる(Ausubelら編、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、Vol. 1-3、1994、John Wiley and Sons, Inc.)。例えば、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)(ATCC)、Rockville、MDから入手可能なハムスター腎臓細胞を含む、組換え哺乳類タンパク質発現に一般的に使用される種々の細胞において組換えアポEを発現することができる。特に、アポE2、アポE3およびアポE4は、ATCC製のベビーハムスター腎臓(BHK-21)細胞(CRL 6282)、Cos-1細胞およびバキュロウィルス発現系(Aleshkovら、Biochemistry 36: 10571-10580)において発現されている。ゲルろ過クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィーまたはポリエチレングリコール分離などの標準的な技術を使用して、アポEポリペプチドをこれらの系から回収し、精製することができる。さらに、アポEポリペプチドは、好ましくはアルブミンの存在下において保存前に凍結乾燥して、保存寿命を延長することができる。
【0067】
エピトープマッピングのローラー(Lollar)らの方法を使用して、免疫原性である可能性のある(すなわち、アポEポリペプチドに対する抗体を産生させる)アポEポリペプチド中のアミノ酸を決定することができる。これらのアミノ酸は、ポリペプチドの免疫原性を低下するために、アラニンに変更することができる(米国特許第5,888,974号)。
【0068】
Leu261、Thr264、Phe265、Leu268、Val269、Trp276、Leu279、Val280およびVal282を含むアポEの疎水性残基がリポタンパク質粒子との疎水性相互作用に関与して、その結果リポタンパク質リパーゼを阻害する可能性がある。従って、アポEのこれらの残基を極性または荷電アミノ酸に突然変異させて、アポEポリペプチドによる高トリグリセリド血症の誘発を阻止することができる。
【0069】
アポEポリペプチドの投与
本発明を特定の投与様式、投与量または投与頻度に限定する意図はなく、本発明の形態は、筋肉内、静脈内、血管内、皮下および経口を含む全ての投与形態を考慮している。用量に応じて、投与容量を約0.2〜2.0ml/kg体重の間で変更することができる。アポEポリペプチドの好ましい投与量は5〜50 mg/kg体重で、必要に応じて、8〜24時間ごと(重症の症例の場合)から2週間ごとに少なくとも6ヶ月間投与される。任意の特定の被験者には、個体の必要性および組成物の投与を実施または監督する人物の専門的な判断により、特定の投与療法を経時的に調節すべきであることが理解されるべきである。
【0070】
マーティン(E. W. Martin)による「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に以前に記載されているように、1種または以上のアポEポリペプチドを含有する薬学的組成物を調製することができる。薬学的な安定化化合物、送達賦形剤および/または担体賦形剤を使用することができる。例えば、第VIII因子調製物を安定化することが見出されているヒト血清アルブミンまたは他のヒトもしくは動物タンパク質を使用することができる。リン脂質小胞またはリポソーム懸濁液は、薬学的に許容される好ましい担体または送達賦形剤である。これらは、当業者に既知の方法により調製することができる。
【0071】
アポEポリペプチドは、第VIII因子について以前に記載されている(米国特許第5,925,739号)、オイルが分散相である水中油型エマルジョン、オイルが連続相である油水型エマルジョンまたは極性脂質の分散物などの添加剤と共に投与することができる。デキストラン、ヒアルロン酸、加水分解コラーゲン、加水分解ゼラチン、ポリ(0-2-ヒドロキシエチル)デンプンまたは大豆エマルジョンも生物学的利用能を増加するために添加することができる(米国特許第5,925,739号)。アポE調製物は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、ポリエチレングリコール、少なくとも0.01 mg/mlのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたは1 mMより多い量のアミノ酸をさらに含有することができる(米国特許第5,925,739号)。
【0072】
アポEポリペプチドの遺伝子治療送達
アポEポリペプチドを、ウィルスベクターなどの手段を使用して遺伝子治療により送達することができる。本発明の好ましい方法において、上記のように、アポE核酸は、アデノウィルス、アデノ関連ウィルス、レトロウィルス、レンチウィルス、バキュロウィルスまたはヘルペスウィルスベクターなどの組換えウィルスのゲノムにクローニングされる。遺伝子は、細胞によって発現させられるウィルス機構によって宿主細胞のゲノムに挿入される。ウィルスベクターは、複製が欠損し、ウィルスを生成せず、宿主をウィルス感染させないように改変されている。この種の治療の一般的な原理は当業者に既知であり、文献に概説されている(Kohnら、Transfusion 29: 812-820、1989)。他の可能な送達方法には骨髄移植、アテローム硬化型病変部位の動脈の直接感染および胎児の遺伝子操作が含まれる。アポE核酸を組み込んだ細胞は直接哺乳類に移植しても、またはコードされるアポEポリペプチドに透過性であるが、細胞に不透過性である植え込み可能な装置に入れ、次いで移植してもよい。
【0073】
骨髄移植を使用した遺伝子送達のためには、内因性アポE産生骨髄細胞を破壊するための放射線に被験者を暴露する。ドナー骨髄細胞に、インビトロにおいて、切断型アポEを発現するレトロウィルスを感染効率約20〜50(骨髄細胞1つあたり20〜50個のウィルス粒子)で感染させ、次いで被験者の内因性骨髄細胞を切断型アポE産生細胞とインビボにおいて交換するために被験者に移植する。この手法は、国立衛生研究所(the National Institutes of Health)が癌患者の骨髄移植のために確立したプロトコールに基づいて、当業者によって実施されうる。被験者の内因性アポEが、アポEを含有するVLDL粒子を異化作用抵抗性にし、血清コレステロールレベルが高くなるIII型高リポタンパク質血症に関連する突然変異を含有する被験者に対しては、この手法は血清コレステロールレベルを低下することができる。組換え骨髄細胞は、アテローム性動脈硬化部位に蓄積し、治療用の切断型アポEタンパク質を発現して、その結果アテローム性動脈硬化症を局所的に退行させる循環性マクロファージを生成することもできる。
【0074】
胎児の遺伝子操作では、1〜8細胞段階の胎児、卵母細胞または卵子の核を取り出し、切断型アポEをコードする核と交換することができる。この手法は、ウシ、ヒツジ、ウサギ、ブタおよびマウスなどの種々の哺乳類をクローニングするために使用されているプロトコールに基づいて当業者によって実施されうる(例えば、Pratherら、Biol. Repord. 37: 859-866、1987: Willadsen、Nature 320: 63-65、1986; SticeおよびRobl、Biol Reprod. 39: 657-664、1989; Pratherら、Biol. Reprod. 41: 414-418、1989; Tsunodaら、J. Exp. Zool. 242: 147-151、1987参照)。
【0075】
アポE核酸の投与
本発明のアポE核酸は、静脈内または血管内にも投与することができる。他の可能な送達方法には、骨髄移植、アテローム硬化型病変部位の動脈への直接感染および/またはトランスフェクション、胎児の遺伝子操作が含まれる。好ましくは、核酸はリポソームおよびプロタミンと組み合わせて投与される。任意の特定の被験者には、個体の必要性および組成物の投与を実施または監督する人物の専門的な判断により、特定の投与療法を経時的に調節するべきである。好ましい用量は、血清1 dlあたり3 mgのアポE核酸である。
【0076】
他の態様
本出願に記載されている文献および特許出願は全て、個々の文献または特許出願各々が参照として組み入れられていることが詳細に且つ個別に示されている場合と同じ程度に、参照として本明細書に組み入れられている。
【0077】
本発明は、本発明の具体的な態様に関連して記載されているが、本発明はさらに改良することができ、本出願は、一般に、本発明の原則に準じ、本発明が属する技術分野において既知または習慣的な実施の範囲内にあり、本明細書に以前に記載した本質的な特徴に適用でき、添付の請求の範囲内で追従される、本発明の開示からのこのような逸脱を含む、本発明の任意の変更、用途または適応を含む意図があることが理解されると思われる。
【0078】
他の態様は本発明の特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明のアポE4-202プラスミドの作製へ導く段階の概要を図示したものである。対応するアポE4-185、アポE4-229、およびアポE4-259プラスミドの作製について、同じ方法が使用された。
【図2】図2Aおよび図2Bは、1.04 g/ml〜1.21 g/mlの密度画分において、アポE4および切断型アポE4-202のリポタンパク質と結合する能力を示すタンパク質ゲルの図である。図2Cおよび図2Dは、アポE4およびアポE4-202のVLDL粒子と結合する能力を示すタンパク質ゲルの図である。
【図3】図3Aは、アポE4を発現する組換え体アデノウイルスがアポE欠損マウスにおいてトリグリセリドレベルを増加させることを示す棒グラフである。対照的に、アポE4-202を発現する組換え体アデノウイルスはこの増加を引き起こさない。図3Bは、アポE4-202を発現する組換え体アデノウイルスが、完全長アポEを発現する対応するウイルスより、アポE欠損マウスにおいてコレステロールレベルに大幅な減少を生じることを示す棒グラフである。
【図4】アポE4またはアポE4-202を発現する組換え体アデノウイルスがmRNAの比較できる量を合成することを示す、図4Aが棒グラフであり、かつ図4Bがゲルの図である。
【図5】図5A〜図5Dは、AdGFP-E4-202で感染させたアポE欠損マウスはAdGFP-E4またはAdGFP対照で感染させたものより感染後5日および8日においてコレステロールレベルが低く、コレステロールの大部分がVLDL領域に見出されたことを示すグラフである。図5Eおよび図5Fは、AdGFP-E4で感染後5日および8日においてマウスにおけるVLDL-トリグリセリドレベルの増加を示すグラフである。対照的に、AdGFP-E4-202での感染ではトリグリセリドレベルを増加させなかった。
【図6】AdGFP-E4またはAdGFP-E4-202で感染させたアポE欠損マウスの血漿は、脂質を含まないアポEタンパク質(画分22〜25)についてはほぼ同じレベルであることを示すグラフである。AdGFP-E4で感染させたマウスの血漿において、ELISAによる測定では、総アポEの約50%がHDL画分に、25%がVLDL画分に分布し、残りのタンパク質が他のFPLC画分にわたって分布している。AdGFP-E4-202で感染させたアポE欠損マウスにおいて、切断型アポEタンパク質はAdGFP-E4で感染させたマウスにおいての完全長アポEより低いレベルで存在し、かつすべてのリポタンパク質画分において一様に分布している。
【図7】図7Aは、アポE4を発現する組換え体アデノウイルスで感染させたアポE欠損マウスにおいて、アポE4がVLDL密度粒子から他のタンパク質を置換することを示すタンパク質ゲルの図である。アポE4-202を発現する組換え体アデノウイルスで感染させたマウスにおいては、VLDL密度粒子から他のタンパク質の置換は検出されない。図7Bは、アポE4によるVLDL密度粒子から他のタンパク質の置換がどのようにして高トリグリセリド血症の原因となりうるかを示す概要図である。図7Cは、アポEの推定されるドメインの概要図である。
【図8】AdGFP対照(アポEなし)、AdGFP-E4、AdGFP-E4-229、またはAdGFP-E4-259で感染させたアポE欠損マウスにおいて、血清のトリグリセリドレベル(図8A)およびコレステロールレベル(図8B)のインビボの時間経過解析を示す棒グラフである。切断されたE4-229型またはE4-259型を発現するアデノウイルスの4×109 pfu投与量でのアポE欠損マウスの感染により、血清トリグリセリドのレベルを増加させることなく、コレステロールのレベルを著しく低下させた。対照的に、野生型E4を発現するアデノウイルスの2×109 pfu投与量での感染では、コレステロールの低下は見られず、かつ血清トリグリセリドレベルにおいて劇的な増加を引き起こす。対照ウイルスAdGFPはアポE欠損マウスの基礎的(日数0)なコレステロールおよびトリグリセリドレベルに少しも影響が見られない。
【図9】2×109 pfuのAdGFP-E4もしくは4×109 pfuのAdGFP対照ウイルス(図9Aおよび図9B)または4×109 pfuのAdGFP-E4-229もしくは4×109 pfuのAdGFP-E4-259(図9Cおよび図9D)で感染させたアポE欠損マウスからの血清試料のコレステロールFPLCリポタンパク質特性を示すグラフである。感染後5日および8日において、血清試料を採取し、かつセファロース6のカラムでFPLCにより分画した。それから画分をコレステロール含有量について分析した。
【図10】2×109 pfuのAdGFP-E4もしくは4×109 pfuのAdGFP対照ウイルス(図10Aおよび図10B)または4×109 pfuのAdGFP-E4-229もしくは4×109 pfuのAdGFP-E4-259(図10Cおよび図10D)で感染させたアポE欠損マウスからの血清試料のトリグリセリドFPLCリポタンパク質特性を示すグラフである。感染後5日および8日において、血清試料を採取し、かつセファロース6のカラムでFPLCにより分画した。それから画分をトリグリセリド含有量について分析した。
【図11】図11Aおよび図11Bは、野生型アポE4、アポE4-229およびアポE4-259のインビボでのmRNA発現を示すノーザンブロットおよび棒グラフである。AdGFP-E4、AdGFP-E4-229またはAdGFP-E4-259ウイルスの示された投与量で感染させたアポE欠損マウスを感染後5日に屠殺し、肝臓試料を採取した。それから、肝臓試料から全RNAを単離し、アポEおよびGAPDHの発現についてノーザンブロット解析法により解析した;代表的なオートラジオグラムは図11Aに示す。GAPDHのmRNAレベルに対して標準化されたアポEのmRNAレベルは図11Bにグラフ化され、すべての3つのアポEのmRNAは同じようなレベルで発現している。アポE4は高トリグリセリド血症を引き起こし、コレステロールを除去することができず;対照的に、アポE4-229およびアポE4-259は高トリグリセリド血症という望まれない副作用なしに劇的にコレステロールを下げる(図11Cおよび図11D)。
【図12】AdGFP-E4-259、AdGFP-E4、または対照AdGFPウイルスで感染させたアポE欠損マウスについてインビボでのVLDLトリグリセリド生成の平均速度の棒グラフである。野生型アポE4は、VLDLトリグリセリド生成において、アポE4-259または対照ウイルスによって引き起こされるそれに比べて劇的な増加を引き起こす。このアポE4-259がVLDLトリグリセリド生成を引き起こせないことは切断型アポE変異体の高トリグリセリド血症を誘発できないことの一因と思われる。
【図13】アポE4-229およびアポE4-259は大きい(最低密度)アポE欠損VLDL粒子との結合に加えて、より小さい(より高密度)アポE欠損VLDL粒子と結合することができることを示すゲル図である。ゲルの各レーンの下の数は、ELISAにより測定した時の、各レーンに存在するアポE4のmg/dlでの量を表す。アポEのアポE欠損VLDLへの結合度は野生型アポE4およびアポE4-229ならびにアポE4-259の切断型については類似している。アポE4の切断型は、大きさがより小さくかつトリグリセリドの組成がより低いより高密度VLDL粒子に対して、野生型アポEより大量に結合する。
【図14】野生型アポE、アポE-229、またはアポE-259の過剰発現のVLDLおよびカイロミクロンのインビボでの異化における影響のモデル概要図である。
【図15】アポE3、アポE4、アポE4-202またはアポE4-185を発現するアデノウイルスで感染させたHTB-13細胞の培地のSDS-PAGE解析図である。培地の15 μlを解析した。「マーカー」は異なる分子量のタンパク質マーカーを指す。
【図16】対照のアデノウイルスAdGFP、野生型アポEを発現する組換え体アデノウイルス、または切断型アポEを発現する組換え体アデノウイルスのいずれかで感染させたアポE欠損マウスおよびC57BL6マウスのコレステロールおよびトリグリセリドレベルのそれぞれの棒グラフである。マウスは示された組換え体アデノウイルスの示された投与量で3通り感染させ、血清試料を単離し、本明細書に記載のように、感染後の示された日数においてコレステロールおよびトリグリセリドレベルについて分析した。
【図17】図17Aは、対照のアデノウイルスAdGFP、野生型アポEを発現する組換え体アデノウイルス、または切断型アポEを発現する組換え体アデノウイルスの示された投与量で感染させたマウスのノーザンブロット解析の代表的なオートラジオグラムの図である。全RNAを感染後示された日数において感染したマウスの肝臓から単離し、かつアポE mRNAの発現についてノーザンブロット法により解析した。図17Aはまた、完全なものをのせているRNAの対照として18SリボソームRNAについてのゲルのエチジウムブロミド染色を示す。図17Bは、発現された個々のマウスのmg/dlでのトリグリセリドレベルを示す棒グラフである。図17Cは、発現された個々のマウスのmg/dlでのコレステロールレベルを示す棒グラフである。
【図18】アポE4-185(それぞれ図18Aおよび図18C)またはアポE4(それぞれ図18Bおよび図18D)を発現するアデノウイルスで感染させたマウスのコレステロールおよびトリグリセリドのFPLC特性のグラフである。AdGFP-E4を発現する組換え体アデノウイルスの2×109 pfuまたはAdGFP-E4-185を発現する組換え体アデノウイルスの1×1010 pfuのいずれかでのマウスの感染後5日において、血清試料を得た。これらの血清試料をFPLCにより分画し、各FPLC画分のコレステロールおよびトリグリセリドレベルを本明細書に記載のように測定した。
【図19】AdGFP、AdGFP-E4、またはAdGFP-E4-185で感染させたマウスにおいて肝臓のVLDL-トリグリセリド生成解析の平均速度の棒グラフである。棒グラフはウイルス群につきVLDL-トリグリセリド生成の個々の速度の平均の+/-標準偏差を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟した天然型ヒトアポE(apoE)ポリペプチドのアミノ酸1〜299位の対応領域のアミノ酸配列と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下する、アミノ酸150〜299位のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項2】
成熟した天然型ヒトアポEの対応する領域と少なくとも80%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
成熟した天然型ヒトアポEの対応する領域と100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
コードされるポリペプチドのアミノ酸配列が、成熟した天然型ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸残基1位からはじまる対応する領域と少なくとも80%同一である、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
コードされるポリペプチドが、成熟したアポEの領域に機能的に結合したシグナルペプチドを有する、請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
コードされるポリペプチドがアミノ酸150〜215個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項7】
コードされるポリペプチドがアミノ酸203個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項8】
配列番号:14〜配列番号:19のいずれか1つのアポEタンパク質前駆体の残基1〜203をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項9】
コードされるポリペプチドがアミノ酸220個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
配列番号:14〜配列番号:19のいずれか1つのアポEタンパク質前駆体の残基1〜220位をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項11】
コードされるポリペプチドがアミノ酸247個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項12】
配列番号:14〜配列番号:19のいずれか1つのアポEタンパク質前駆体の残基1〜247位をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項13】
コードされるポリペプチドがアミノ酸227個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項14】
配列番号:14〜配列番号:19のいずれか1つのアポEタンパク質前駆体の残基1〜227位をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項15】
成熟した天然型ヒトアポEのアミノ酸1〜299位の対応領域と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下することができる、アミノ酸150〜299個のポリペプチド。
【請求項16】
成熟した天然型ヒトアポEの対応する領域と少なくとも80%同一なアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
成熟した天然型ヒトアポEの対応する領域と100%同一のアミノ酸配列を有する、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項18】
成熟した天然型ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸残基1位から始まる対応する領域と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項19】
アミノ酸配列150〜215個を含む、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項20】
配列番号:1〜配列番号:6のいずれか1つの成熟した未変性ヒトアポEのアミノ酸1〜185位と同一のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項21】
配列番号:1〜配列番号:6のいずれか1つの成熟した未変性ヒトアポEのアミノ酸1〜202位と同一のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項22】
配列番号:1〜配列番号:6のいずれか1つの成熟した未変性ヒトアポEのアミノ酸1〜229と同一のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項23】
配列番号:1〜配列番号:6のいずれか1つの成熟した未変性ヒトアポEのアミノ酸1〜259位と同一のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項24】
哺乳類において高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールを低下し、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延するまたはアテローム性動脈硬化症を治療する方法であって、成熟した天然型ヒトアポEのアミノ酸1〜299位の対応領域と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下することができる、アミノ酸150〜299個のポリペプチドを哺乳類に投与する段階を含む、方法。
【請求項25】
哺乳類が、正常に機能する内因性のアポE遺伝子を欠損している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
哺乳類が、リポタンパク質残存物が血流中に蓄積することによりアテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある、請求項24に記載の法王。
【請求項27】
哺乳類が、残存物除去不能である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
哺乳類が、正常に機能する内因性のLDL受容体を欠損している、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
ポリペプチドが、哺乳類の筋肉内、静脈内または皮下に投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
哺乳類において高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールを低下し、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延またはアテローム性動脈硬化症を退行させる方法であって、成熟した天然型ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸1〜299位の対応領域のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下する、アミノ酸150〜299個のポリペプチドをコードする核酸を前記哺乳類に投与するか、または該哺乳類において発現させる段階を含む、方法。
【請求項31】
核酸がプロモーターに機能的に結合し、発現ベクター内に含有される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
核酸が、リポソームおよびプロタミンと組み合わされて哺乳類に静脈内投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
核酸が組換えウィルスベクター内に含有される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
ベクターが静脈内投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ベクターが骨髄移植によって投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
ベクターが病変部位の動脈に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
ベクターがアデノウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
ベクターがアデノ関連ウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
ベクターがレンチウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
ベクターがヘルペスウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
ベクターがレトロウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
ベクターがバキュロウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
哺乳類が、正常に機能する内因性のアポE遺伝子を欠損している、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
哺乳類が、リポタンパク質残存物が血流中に蓄積することによりアテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある、請求項30に記載の方法。
【請求項45】
哺乳類が、残存物除去不能である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
哺乳類が、正常に機能する内因性のLDL受容体を欠損している、請求項30に記載の方法。
【請求項47】
核酸が、哺乳類の肝臓に投与されるか、または哺乳類の肝臓において発現させる、請求項30に記載の方法。
【請求項48】
アミノ酸150〜299個を含み、成熟した天然型ヒトアポEのアミノ酸1〜299位の対応領域と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下することができるポリペプチドと、これと混合される薬学的に許容される担体物質とを含む薬学的組成物。
【請求項49】
成熟した天然型ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸1〜299位の対応領域のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下するアミノ酸150〜299個のポリペプチドをコードする核酸がプロモーターに機能的に結合されたものを含む組換えDNA分子。
【請求項1】
成熟した天然型ヒトアポE(apoE)ポリペプチドのアミノ酸1〜299位の対応領域のアミノ酸配列と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下する、アミノ酸150〜299位のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項2】
成熟した天然型ヒトアポEの対応する領域と少なくとも80%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
成熟した天然型ヒトアポEの対応する領域と100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
コードされるポリペプチドのアミノ酸配列が、成熟した天然型ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸残基1位からはじまる対応する領域と少なくとも80%同一である、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
コードされるポリペプチドが、成熟したアポEの領域に機能的に結合したシグナルペプチドを有する、請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
コードされるポリペプチドがアミノ酸150〜215個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項7】
コードされるポリペプチドがアミノ酸203個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項8】
配列番号:14〜配列番号:19のいずれか1つのアポEタンパク質前駆体の残基1〜203をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項9】
コードされるポリペプチドがアミノ酸220個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
配列番号:14〜配列番号:19のいずれか1つのアポEタンパク質前駆体の残基1〜220位をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項11】
コードされるポリペプチドがアミノ酸247個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項12】
配列番号:14〜配列番号:19のいずれか1つのアポEタンパク質前駆体の残基1〜247位をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項13】
コードされるポリペプチドがアミノ酸227個を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項14】
配列番号:14〜配列番号:19のいずれか1つのアポEタンパク質前駆体の残基1〜227位をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項15】
成熟した天然型ヒトアポEのアミノ酸1〜299位の対応領域と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下することができる、アミノ酸150〜299個のポリペプチド。
【請求項16】
成熟した天然型ヒトアポEの対応する領域と少なくとも80%同一なアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
成熟した天然型ヒトアポEの対応する領域と100%同一のアミノ酸配列を有する、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項18】
成熟した天然型ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸残基1位から始まる対応する領域と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項19】
アミノ酸配列150〜215個を含む、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項20】
配列番号:1〜配列番号:6のいずれか1つの成熟した未変性ヒトアポEのアミノ酸1〜185位と同一のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項21】
配列番号:1〜配列番号:6のいずれか1つの成熟した未変性ヒトアポEのアミノ酸1〜202位と同一のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項22】
配列番号:1〜配列番号:6のいずれか1つの成熟した未変性ヒトアポEのアミノ酸1〜229と同一のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項23】
配列番号:1〜配列番号:6のいずれか1つの成熟した未変性ヒトアポEのアミノ酸1〜259位と同一のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項24】
哺乳類において高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールを低下し、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延するまたはアテローム性動脈硬化症を治療する方法であって、成熟した天然型ヒトアポEのアミノ酸1〜299位の対応領域と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下することができる、アミノ酸150〜299個のポリペプチドを哺乳類に投与する段階を含む、方法。
【請求項25】
哺乳類が、正常に機能する内因性のアポE遺伝子を欠損している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
哺乳類が、リポタンパク質残存物が血流中に蓄積することによりアテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある、請求項24に記載の法王。
【請求項27】
哺乳類が、残存物除去不能である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
哺乳類が、正常に機能する内因性のLDL受容体を欠損している、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
ポリペプチドが、哺乳類の筋肉内、静脈内または皮下に投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
哺乳類において高トリグリセリド血症を誘発することなく、コレステロールを低下し、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延またはアテローム性動脈硬化症を退行させる方法であって、成熟した天然型ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸1〜299位の対応領域のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下する、アミノ酸150〜299個のポリペプチドをコードする核酸を前記哺乳類に投与するか、または該哺乳類において発現させる段階を含む、方法。
【請求項31】
核酸がプロモーターに機能的に結合し、発現ベクター内に含有される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
核酸が、リポソームおよびプロタミンと組み合わされて哺乳類に静脈内投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
核酸が組換えウィルスベクター内に含有される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
ベクターが静脈内投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ベクターが骨髄移植によって投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
ベクターが病変部位の動脈に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
ベクターがアデノウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
ベクターがアデノ関連ウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
ベクターがレンチウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
ベクターがヘルペスウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
ベクターがレトロウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
ベクターがバキュロウィルスベクターである、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
哺乳類が、正常に機能する内因性のアポE遺伝子を欠損している、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
哺乳類が、リポタンパク質残存物が血流中に蓄積することによりアテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある、請求項30に記載の方法。
【請求項45】
哺乳類が、残存物除去不能である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
哺乳類が、正常に機能する内因性のLDL受容体を欠損している、請求項30に記載の方法。
【請求項47】
核酸が、哺乳類の肝臓に投与されるか、または哺乳類の肝臓において発現させる、請求項30に記載の方法。
【請求項48】
アミノ酸150〜299個を含み、成熟した天然型ヒトアポEのアミノ酸1〜299位の対応領域と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下することができるポリペプチドと、これと混合される薬学的に許容される担体物質とを含む薬学的組成物。
【請求項49】
成熟した天然型ヒトアポEポリペプチドのアミノ酸1〜299位の対応領域のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有し、哺乳類に投与または哺乳類において発現させる場合、高トリグリセリド血症を誘発することなく血清の総コレステロールレベルを低下するアミノ酸150〜299個のポリペプチドをコードする核酸がプロモーターに機能的に結合されたものを含む組換えDNA分子。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19】
【公開番号】特開2009−171980(P2009−171980A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69530(P2009−69530)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【分割の表示】特願2001−575606(P2001−575606)の分割
【原出願日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願人】(502364121)ケイオウエス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【出願人】(501078557)トルスティーズ オブ ボストン ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【分割の表示】特願2001−575606(P2001−575606)の分割
【原出願日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願人】(502364121)ケイオウエス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【出願人】(501078557)トルスティーズ オブ ボストン ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】
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