説明

高パワー・レベルにおけるカスケード・ラマン・レーザ発振(cascadedRamanlasing)のためのシステムおよび方法

光増幅システムにおいて、ファイバ・ベースの発振器、増幅器およびカスケード・ラマン共振器が、共に直列に結合される。発振器出力が入力として増幅器に供給され、増幅器出力がポンピング入力としてカスケード・ラマン共振器に供給され、カスケード・ラマン共振器が、出力として目標波長におけるシングル・モード放射を供給する。損失素子が、発振器と増幅器との間に接続され、それにより、発振器が、増幅器およびカスケード・ラマン共振器から光学的に離隔される。フィルタが、カスケード・ラマン共振器内で発生された後方伝播ストークス波長をフィルタで取り除くために、アイソレータと増幅器との間に結合される。発振器は、第1のパワー・レベル範囲内で動作可能であり、増幅器およびカスケード・ラマン共振器は、第1のパワー・レベル範囲を超える第2のパワー・レベル範囲内で動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本出願の譲受人によって所有され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、2009年5月11日に出願した米国仮特許出願第61/177,058号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に、光ファイバのデバイスおよび方法に関し、詳細には、高パワー・レベルにおけるカスケード・ラマン・レーザ発振のための改良されたシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、ファイバ・レーザおよびファイバ増幅器は、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、他など、レーザ活性希土類イオンでドープされた光ファイバに基づく。光ファイバ内の誘導ラマン散乱(Stimulated Raman scattering)は、これらのファイバが動作しない波長領域において非線形利得をもたらすために使用されうる有用な効果である。誘導ラマン散乱は、レーザ・ビームがラマン活性ファイバを通って伝播するときに発生し、「ストークス・シフト(Stokes shift)」として知られる、波長の予測可能な増加を結果としてもたらす。ある長さのラマン活性ファイバの入力端および出力端において、一連の波長特定反射器格子を設けることによって、開始波長を選択された目標波長に変換するために、カスケードの一連のストークス・シフトを生成することができる。
【0004】
図1は、従来技術による1つの例示的システム20の図であり、誘導ラマン散乱が、エルビウム・ドープ・ファイバ増幅器(EDFA)をポンピングするための高パワー出力を発生するために使用される。図示のように、システム20は、モノリシックYbファイバ・レーザ(monolithic Yb−fiber laser)40と、カスケード・ラマン共振器(cascaded Raman resonator)(CRR)60との2段を含む。
【0005】
レーザ40では、活性媒体が、1000nm〜1200nmの範囲内で動作する、ある長さの二重クラッドYbドープ・ファイバ42によってもたらされる。高反射器格子44が、ファイバ42の入力端に設けられ、出力カプラ格子46が、ファイバ42の出力端に設けられる。本例では、格子44および46は、ファイバ42に融合された受動ファイバ(passive fiber)の個々のセグメント(segment)に書き込まれる。また、格子44および46を、ファイバ42の入力端および出力端に直接書き込むことも可能であろう。
【0006】
高反射器44、出力カプラ46およびファイバ42は、共に、レーザ空胴48として機能する。テーパ化ファイバ束(tapered fiber bundle)(TFB)52によってファイバ42に結合された複数のポンプ・ダイオード50によって、ポンピング・エネルギーがファイバ42に供給される。本例では、レーザ40は、出力として波長1117nmのシングル・モード放射を供給する。
【0007】
レーザ出力は、入力としてCRR 60に投入される。CRR 60は、その入力端に設けられた第1の複数の高反射器格子64およびその出力端に設けられた第2の複数の高反射器格子66を含む、ラマン活性ファイバ62を備える。また、ラマン・ファイバ62の出力端に、出力カプラ格子68が設けられる。本例では、入力格子64および出力格子66は、ファイバ62に融合された受動ファイバの個々のセグメントに書き込まれる。また、格子64および66を、ファイバ62の入力端および出力端に直接書き込むことも可能であろう。
【0008】
入力高反射器64、出力高反射器66、出力カプラ68およびラマン・ファイバ62は、広範囲にわたってカスケードの一連のストークス・シフトを生成し、1117nmの入力波長を一連のステップで1480nmの目標波長に増加させる、ネストされた一連のラマン空胴70を提供する。出力カプラ68は、1480nmの目標波長におけるシステム出力72を供給し、システム出力は、次いで、基本モード(fundamental mode)において高パワーのエルビウム−ドープ・ファイバ増幅器(EDFA)をポンピングするために使用されてよい。
【0009】
システム20は、1480nm以外の出力波長を必要とする他の用途に使用されてよく、シングル・ステップのみにおいて出力波長を発生するように構成されてよい。
【0010】
図1は、格子64、66および68を使用して構築された、カスケード・ラマン共振器を示すが、融合ファイバ(fused−fiber)カプラ、薄膜フィルタ、およびWDMループ・ミラーなどの他の構造など、他の波長選択素子を使用する類似の共振器がよく知られている。さらに、線形空胴、単方向リング(unidirectional ring)空胴または双方向リング(bidirectional ring)空胴の形状が、考慮されてよい。さらに、図1は、レーザとして動作するように構成された、カスケード・ラマン共振器を示すが、最終組の格子を省き、代わりにその波長の信号を注入することによって、増幅器として動作するように、同様に良好に、構成されうる。図1に示される構成と同様に、これらの付加的な構成が、1117nmの入力波長を一連のステップで1480nmの目標波長に増加させる。
【0011】
従来技術のシステム20は、知られている制約を受ける。例えば、システム20において、種々の波長および位置における複数の反射器が、結合空胴(coupled cavity)を生成するために結合するという事実によって、1つの問題が生じる。例えば、1117nmのレーザ波長における3つの反射器、すなわち、反射器44、46および出力反射器群66の最も左の要素が存在することが見られるであろう。一般に、このことが、比較的低パワーのシステム(例えば、1480nmで5Wの出力)に対して問題を引き起こすことはないが、高パワー・システムに対して問題を引き起こす。最近、ラマン・ファイバ・レーザのパワー・スケーリング(power scaling)に関する調査が実施されており、41Wの高さのパワー・レベルが、CRRから実証されている。類似の状況が、他のよく知られている、WDMループ・ミラーを用いるなどの構造を使用して構築されたカスケード・ラマン共振器において生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
高パワーが、そのようなシステムから実証されてきたが、図1における設定(setup)の結合空胴の性質は、長期間信頼できる動作について重大な影響を有する。特に、結合空胴は、システムを不安定にさせ、構成要素を損傷させるのに十分な高い尖頭パワーを有するパルスを発生する可能性がある。特に、レーザ高反射器44は、おそらくはそこを通して伝播する高パワーによって、システム内で弱連結(weak link)となることが発見されており、例えば、システム20をエルビウム−ドープ・ファイバ増幅器または類似のデバイスをポンピングするために使用することを含む、種々の条件の下で故障することが観測されている。さらに、ラマン・レーザ内で発生された中間のストークス次数からの光がYb増幅器の中、およびポンプ・ダイオードに戻って伝播して、それらの故障を引き起こす可能性がある。さらに、第1のストークス・シフトにおける光がYbの利得帯域幅の中にあり、ダイオードに衝突する前に増幅される。このこともまた、有害であることは、明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来技術の上記および他の問題が、本発明によって対処され、本発明の一態様は、ファイバ・ベースの発振器、増幅器、およびカスケード・ラマン共振器(CRR)が共に直列に結合された光増幅システムに関する。発振器出力が入力として増幅器に供給され、増幅器出力が入力としてCRRにポンピング供給され、CRRが、出力として目標波長におけるシングル・モード放射を供給する。波長依存損失素子(wavelength−dependent loss element)が、発振器への光の後方伝播(backward propagation)を防ぐために、発振器と増幅器との間に接続される。発振器は、第1のパワー・レベルの範囲内で動作可能であり、増幅器および発振器は、第1のパワー・レベルの範囲を超える第2のパワー・レベルの範囲内で動作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】Ybドープ・ファイバ・レーザが、カスケード・ラマン共振器をポンピングするために使用される、従来技術によるシステムの図である。
【図2】親発振器パワー増幅器構成が、カスケード・ラマン共振器をポンピングするために使用される、本発明の一態様によるシステムのブロック図である。
【図3】図2のシステムにおける例示的発振器段を示す図である。
【図4】図2のシステムにおける例示的増幅器段を示す図である。
【図5】図2のシステムにおける例示的カスケード・ラマン共振器段を示す図である。
【図6】半導体レーザ発振器が使用される、本発明の他の態様によるシステムのブロック図である。
【図7】本発明の他の態様による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の態様は、上で説明された従来技術の欠点に対する解決策をもたらす光増幅器システムに関する。
【0016】
図1のシステム20に戻ると、1つの可能性のある解決策は、Ybファイバ・レーザ40とCRR 60との間に光アイソレータを設置することであることが明らかとなろう。図1の構造では、吟味されている高パワーが、重大な難題を引き起こす。というのは、CRR 60からの1480nmで41Wの出力パワーが、1117nmで100Wを超える入力パワーを必要とし、その入力パワーは、現在のファイバ結合アイソレータが耐えうるパワーをはるかに超えるからである。
【0017】
本発明の一態様は、Yb−ファイバ・レーザ、および特にレーザの高反射器が、ラマン・レーザから離隔される、高信頼性を有する高パワー・ラマン・レーザを開発するための解決策を提供する。本発明のこの態様によれば、アイソレーションは、モノリシック高パワーYb−ファイバ・レーザを親発振器パワー増幅器(MOPA)構成に分割することによって達成される。
【0018】
MOPA構成は、他の状況において、十分に制御された光特性を有する高パワー・レーザ源を発生するために使用されてきた。Yb−ドープ・レーザでポンピングされたCRRが、長年の間市販されてきたという事実にもかかわらず、MOPA構成は、カスケード・ラマン共振器(CRR)をポンピングする状況においては、使用されてこなかった。カスケード・ラマン共振器(CRR)をポンピングするためにMOPA構成を使用することは、そのことが、信頼性を犠牲にすることなく、システムのパワー・スケーリングの著しい増加を可能にするので有利である。
【0019】
伝統的に、MOPA構成は、発振器単独では得ることができない光特性を達成するために使用される。例えば、高パワー、狭線幅レーザを構築することは困難なので、発振器/増幅器の構成が、高パワー、狭線幅放射を発生させるために使用される。ラマン用途では、MOPAは、単一レーザの光特性より優れた光特性を有する出力放射を発生しない。200Wまたは300Wの出力パワーにおいて適度な線幅を有するYbドープ・ファイバ・レーザは、重大な難題を提起しない。説明されたMOPA構成は、Yb−レーザの波長と異なる波長で動作する付加的な光素子がシステムに接続されるときに、光構成要素を保護する。以下に説明するように、この保護は、発振器と増幅器との間に設置された波長依存光素子の使用を介して可能にされる。
【0020】
図2は、この手法を示すシステム100のブロック図である。図2に示されるように、システム100は、選択された波長および輝度レベルを有する高パワー出力180を生成する3つの段、すなわち、発振器120と、増幅器140と、カスケード・ラマン共振器(CRR)160とを備える。
【0021】
レーザ高反射器は、発振器段120に置かれ、発振器段は、比較的低パワーで動作し、また、潜在的に有害な高パワー光が後方に発振器120まで伝播するのを防ぐ、1つまたは複数の適切な結合デバイスによって高パワー増幅器140およびCRR 160から分離される。本説明の目的に対して、この種類のデバイスは、一般に、「波長依存損失素子」と呼ばれる。そのような波長依存損失素子は、例えば、融合ファイバもしくはフィルタ・ベースの波長分割多重装置(WDM)、長周期格子、適切にドープされた光ファイバ、フィルタ・ファイバ、または傾斜ブラッグ格子(tilted Bragg grating)を含む。発振器からの放射を通す一方で、増幅器またはCRRからの後方に伝播する波長シフト放射を取り除く、他の波長依存損失素子が、同様に使用されてよい。
【0022】
ラマン散乱の性質によって、CRR内の複数のストークス・シフトによる多くの異なる波長の光が、発振器に向かって後方に伝播する可能性がある。これらの波長は、レーザ発振器が動作する波長とは異なる。それゆえ、1つまたは複数の波長依存損失素子が、これらの波長の光を取り除くために使用されうる。さらに、レーザ発振器の波長と同じ波長の後方伝播光が存在する可能性がある。そのような光は、単純な波長依存損失素子で取り除くことはできない。したがって、前方に進んでいる所与の波長の光の通過を許容する一方で、後方に進んでいる同じ波長の光を取り除く光アイソレータが使用される。それゆえ、波長依存損失素子に加えて、光アイソレータもまた、発振器と増幅器との間に使用されてよい。
【0023】
システム100は、発振器120と増幅器140との間に接続された、WDM192の形の波長依存損失素子を含む。さらに、光アイソレータ191が、発振器120と増幅器140との間に接続される。光アイソレータ191は、そこを通して一方向のみ、すなわち発振器120から増幅器140に、光が伝播するのを許容する。WDM192は、共振器160内で発生された後方伝播ストークス波長をフィルタで取り除いて、これらの波長の光が発振器120に到達するのを防ぐように構成される。WDM192は、例えば、融合ファイバ・カプラもしくは薄膜カプラ、格子型デバイス、または波長依存フィルタの機能をもたらす他のデバイスに基づいてよい。システム100は、発振器120と増幅器140との間に接続された、波長依存損失素子192および光アイソレータ191の使用を示すが、これらの構成要素の一方だけを使用するか、または同様に、1つまたは複数の他の構成要素を単独に、もしくは組み合わせて使用して、本発明の態様を実施することが可能である。
【0024】
したがって、説明された構成は、発振器120が比較的低パワー・レベルで動作される一方で、発振器120の構成要素が潜在的に有害な高パワー光に照射されるのを防がれながら、増幅器140およびCRR 160が比較的高パワー・レベルで動作されうることを可能にする。
【0025】
発振器120、増幅器140およびCRR 160が、図3〜図5により詳細に示される。
【0026】
図3に示されるように、発振器120は、入力端122および出力端123を有する適切なレーザ活性ファイバ121の第1のセグメントを備える。本例では、使用される光ファイバ121は、二重クラッドYb−ドープ・ファイバである。本説明から、他の適切なファイバもまた使用されてよいことが明らかとなろう。例えば、パワー・レベルが十分に低いと、二重クラッド・ファイバを使用する必要はない。
【0027】
高反射器(HR)124が、ファイバ入力端122に設けられ、出力カプラ(OC)125が、ファイバ出力端123に設けられる。高反射器124、出力カプラ125およびファイバ121が、レーザ空胴126として機能する。本例では、高反射器124および出力カプラ125が、ファイバ121に融合された受動ファイバの個々のセグメントに書き込まれる。また、格子124および125をファイバ121の入力端および出力端に直接書くことも可能であろう。
【0028】
図3にさらに示されるように、ダイオード・レーザまたは他の適切なデバイスなど、ポンプ源127が、ファイバセグメント121へのポンピング・エネルギー入力を供給する。ポンプ127は、テーパ化ファイバ束(TFB)128または他の適切なデバイスによってファイバ121に結合される。発振器120は比較的低パワーであるので、図3は、ファイバ121に結合された1つのポンプ127を示す。ポンピングデバイス127の数は、ポンピング・エネルギーの特定の量を達成するために増加されてよい。また、上述のように、ファイバ121は、二重クラッド・ファイバである必要はない。ファイバ121が二重クラッド・ファイバでないならば、テーパ化ファイバ束は、使用されないであろう。
【0029】
次いで、発振器出力130が、入力として増幅器140に供給される。図2に示されるように、後方伝播防止デバイス190、すなわちアイソレータ191およびWDM 192が、発振器120と増幅器140との間の通路内に結合される。上述のように、これらの構成要素のうちの1つだけを使用するか、あるいは、1つもしくは複数の他の類似の構成要素と共に使用するか、または他の類似の構成要素のうちのいくつかの組合せと共に使用して、本発明の態様を実施することが可能である
【0030】
図4は、増幅器140を詳細に示す図である。図4に示されるように、パワー増幅器段140は、入力端142および出力端143を有する個別の第2のファイバセグメント141を含む。本例では、第2のファイバセグメント141を設けるために使用される増幅器ファイバは、レーザ活性の二重クラッドYb−ドープ・ファイバである。複数のレーザ・ダイオード・ポンプ144を含む個々の第2のポンプ源が、第2のテーパ化ファイバ束(TFB)145または類似のデバイスを使用して、第2の光ファイバセグメント141に結合される。ポンプ源は、親発振器のレーザ出力130を、所定のパワー・レベルまで増幅する。次いで、増幅器出力150が、入力としてCRR段160に投入される。
【0031】
図5は、カスケード・ラマン共振器160の一種をより詳細に図示する図を示す。カスケード・ラマン共振器160は、入力端162および出力端163を有する第3の光ファイバセグメント161を含む。第3の光ファイバセグメント161は、適切なラマン活性ファイバである。以下に説明するように、ラマン・ファイバ161は、その出力端に出力カプラを有する共振空胴内に存在する。共振空胴および出力カプラは、カスケード・ラマン共振器入力の中に、カスケードの一連の1つまたは複数のストークス・シフトを生成し、それにより、その波長を、出力として出力カプラに供給される選択された目標波長まで増加させるように構成された波長応答を有する。
【0032】
具体的には、ラマン・ファイバ161は、小さな有効面積および正常分散(すなわち、負分散)を有する。正常分散は、高パワー・レベルにおいて超連続体(super−continuum)の生成をもたらすであろう変調不安定性(modulation instability)を防止する。小さな有効面積は、増幅器150によって供給されるパワー・レベルにおいて、高いラマン利得に導くように選択される一方で、非常に高い光強度によってもたらされる有害な高次の非線形効果を回避する。結果として、複数のストークス次数が、複数のラマン共振器は、ラマン・ストークス・シフトによって波長内で分離された複数のファイバ・ブラッグ格子で構成されている、カスケード・ラマン共振器の中で発生されてよい。
【0033】
したがって、図5に示されるように、第1の一連の波長特定高反射器格子164(HR2、HR4、HR6、HR8、HR10)が、ラマン・ファイバ161の入力端162に設けられ、第2の一連の波長特定高反射器格子165(HR1、HR3、HR5、HR7、HR9)が、ラマン・ファイバ161の出力端163に設けられる。さらに、出力カプラ(OC)166が、ラマン・ファイバ161の出力端163に設けられる。本例では、格子164、165および166が、ラマン・ファイバ161と融合された受動ファイバの個々のセグメント内に書き込まれる。また、格子164、165および166をラマン・ファイバ161の入力端および出力端に直接書くことも可能であろう。
【0034】
入力格子164、出力格子165、166およびラマン・ファイバ161は、ネストされた一連のラマン空胴167を提供する。高反射器164、165は、カスケードの一連のストークス・シフトを生成して、増幅器出力(およびCRR入力)150の波長を目標波長まで引き上げるように構成され、目標波長は、出力カプラ166によってファイバの外と結合され、選択されたパワー・レベル、輝度レベル、および波長を有するシステム出力として供給される。付加的なポンプ反射器(図示せず)が、効率を高めるために、使用されなかったYb放射をリサイクルするために使用されてよい。
【0035】
本発明が、CRR 160内の格子の特定の構成に限定されず、格子のために選択された正確な波長が、選択された目標波長によって決まることが理解されよう。図1の従来技術のシステム20は、1480nmの目標波長を達成するために選択されたCRR格子のための波長の一例を提供する。ネストされた空胴が、周期的な融合ファイバ・カプラまたは薄膜反射器など、ブラッグ格子以外の方法を使用して生成されてよいこともまた理解されよう。CRRが、線形空胴かリング空胴のいずれかとして構成されてよいこともまた理解されよう。CRRが、レーザとして動作するように構成されてよいこと、または、最終組の反射器を省いて、代わりに最終波長においてCRRに信号を注入することによって、CRRが、増幅器として動作するように構成されてよいこともまた理解されよう。
【0036】
上述のように、上で説明したシステムの1つの利点は、発振器120の出力パワーが十分に低く保持されてよく、それにより、アイソレータ191などの構成要素が、発振器120と増幅器140との間に挿入されてよいことである。通常、ファイバ−ピグテイル・アイソレータ(fiber−pigtailed isolator)などの構成要素は、発振器120からの出力パワーの上限に相当する、10W〜20W程度のパワー・レベルに制限される。
【0037】
さらに、波長分割多重装置(WDM)192など、他のデバイスが、CRR 160内で発生された後方伝播ストークス波長をフィルタで取り除くために使用されてよい。これは、第1のストークス・シフトの光が、Yb−ドープ・ファイバ内でイオン利得に遭遇し、その結果、発振器を不安定にさせる可能性があるからである。さらに、低パワー発振器120を有することが、影響されやすい高反射器から熱負荷を取り除く。
【0038】
上で説明されたシステム100は、例えば半導体レーザを含む他の種類の発振器を使用するように一般化されてよいことが理解されよう。図6は、低パワー半導体レーザ発振器220と、それに続く、最終のYb−ドープ・パワー増幅器245への注入を発生する一連のファイバ増幅器240とを使用し、最終のYb−ドープ増幅器245の出力がCRR 260に投入される、例示的システム200を示す図である。図6では、増幅器チェーン240が、3つのファイバ増幅器241〜243を含むように描かれている。また、他の種類および数の増幅器が、本発明の態様の実施において使用されてよいことが理解されよう。
【0039】
CRR 260の出力が、システム出力280として供給される。システム100におけるように、波長依存損失素子すなわちWDM292、および光アイソレータ291が、発振器220を他のシステムの構成要素から離隔するために使用される。
【0040】
図7は、本発明の他の態様による光増幅法300の流れ図を示す。方法300は、以下のステップを含む:
301:ファイバ・ベース発振器、増幅器およびカスケード・ラマン共振器(CRR)を共に直列に結合し、発振器出力が入力として増幅器に供給され、増幅器出力がCRRへのポンピング入力として供給され、CRRが、出力として目標波長におけるシングル・モード放射を供給する、
302:発振器と増幅器との間に1つまたは複数の波長依存損失素子を結合し、発振器が増幅器およびCRRから光学的に離隔される、
303:発振器を第1のパワー・レベル範囲内で動作させ、増幅器およびCRRを、第1のパワー・レベル範囲を超える第2のパワー・レベル範囲内で動作させる。
【0041】
ラマン利得帯域幅は極めて大きく、反射器は、必ずしも利得のピークである必要のない、利得帯域幅内の任意の場所に設置されてよいことに留意されたい。
【0042】
上で説明されたシステムおよび技術は、線形ラマン共振器およびリング・ラマン共振器の両方;ラマン増幅器構造;ラマン空胴のいずれとも非共振であるが、やはりラマン利得帯域幅内にある第2のポンプを含む二重ポンプシステム;狭線幅を有する偏光出力が有利である周波数逓倍(frequency −doubling)結晶を照射すること;例えばパラメトリック・システムにおいて使用されるようなパルス発振動作または変調動作、他を限定されることなく含む多くの他の状況において利用可能である。
【0043】
ラマン増幅器に関して、それらの構造は、通常、増幅器ラマン空胴が、最終のストークス・シフトおよび出力カプラなしに構築されることを除いては、ラマン・レーザの構造に類似することに留意されたい。また、シード・レーザ(seed laser)が、最終のストークス・シフトにおいてラマン空胴内に結合される。シード源からのシード入力が、異なる場所における増幅器に注入されてよい。シード・レーザは、偏光出力、狭線幅、同調性、他など、多くの増幅器特性を制御する。
【0044】
上の説明は、当業者が本発明を実施することを可能にするであろう詳細を含むが、説明は、本来、例示的であり、本発明の多くの改変形態および変形形態が、これらの教示の利益を有する当業者には明らかであろうことを認識されたい。したがって、本明細書の発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲によってのみ定義され、本特許請求の範囲は、従来技術で容認される限り広く解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共に直列に結合されたファイバ・ベースの発振器、増幅器およびカスケード・ラマン共振器を備え、発振器出力が入力として前記増幅器に供給され、増幅器出力がポンピング入力として前記カスケード・ラマン共振器に供給され、前記カスケード・ラマン共振器が、出力として目標波長における放射を供給し、さらに、
前記増幅器および前記カスケード・ラマン共振器から前記発振器の中に光が後方伝播するのを防ぐ、前記発振器と前記増幅器との間に接続された波長依存損失素子を備え、それにより、前記発振器が第1のパワー・レベル範囲内で動作可能であり、前記増幅器および前記カスケード・ラマン共振器が、前記第1のパワー・レベル範囲を超える第2のパワー・レベル範囲内で動作可能である、光増幅システム。
【請求項2】
前記発振器と前記増幅器との間に接続された光アイソレータをさらに備える、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項3】
前記発振器が、
入力端および出力端を有するレーザ活性ファイバのセグメントと、
前記ファイバセグメントの入力端に設けられた高反射器および前記ファイバセグメントの出力端に設けられた出力カプラとを含み、前記高反射器、前記出力カプラおよび前記ファイバがレーザ空胴を提供し、さらに、
ポンピング入力を供給するために前記レーザ活性ファイバに結合されたポンプ源を含む、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項4】
前記レーザ活性ファイバが二重クラッド・ファイバであり、テーパ化ファイバ束が前記ポンプ源と前記二重クラッドとの間の結合を提供する、請求項3に記載の光増幅システム。
【請求項5】
前記増幅器が、
入力端および出力端を有するレーザ活性の二重クラッドの増幅器ファイバの個々のセグメントを含み、前記発振器出力が入力として前記増幅器ファイバの前記入力端に提供され、さらに、
前記増幅器入力を増幅するために前記増幅器ファイバに結合された個々のポンプ源を含み、
前記増幅器が、出力として前記増幅器の前記出力端に前記増幅された入力を提供する、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項6】
前記個々のポンプ源を前記増幅器ファイバに結合するテーパ化ファイバ束をさらに含む、請求項5に記載の光増幅システム。
【請求項7】
前記カスケード・ラマン共振器が、
入力端および出力端を有するラマン・ファイバのセグメントを含み、前記増幅器出力が、ポンピング入力として前記ラマン・ファイバの前記入力端に供給され、
前記ラマン・ファイバが、その出力端に出力カプラを有する共振空胴内に存在し、
前記共振空胴および前記出力カプラが、カスケード・ラマン共振器入力の中にカスケードの一連の1つまたは複数のストークス・シフトを生成して、その波長を、出力として前記出力カプラに供給される選択された目標波長まで増加させるように構成された波長応答を有する、請求項1に記載の光増幅システム。
【請求項8】
前記共振空胴が、前記ラマン・ファイバの前記入力端における第1の複数の高反射器と、前記ラマン・ファイバの前記出力端における第2の複数の高反射器および出力カプラとを含む、請求項7に記載の光増幅システム。
【請求項9】
ファイバ・ベースの発振器、増幅器およびカスケード・ラマン共振器を共に直列に結合することを含み、発振器出力が入力として前記増幅器に供給され、増幅器出力がポンピング入力として前記カスケード・ラマン共振器に供給され、前記カスケード・ラマン共振器が、出力として目標波長におけるシングル・モード放射を供給し、さらに、
前記発振器を前記増幅器および前記カスケード・ラマン共振器から離隔することを含み、
それにより、前記発振器が第1のパワー・レベル範囲内で動作可能であり、前記増幅器および前記カスケード・ラマン共振器が、前記第1のパワー・レベル範囲を超える第2のパワー・レベル範囲内で動作可能である、光増幅法。
【請求項10】
前記発振器が、
入力端および出力端を有するレーザ活性の二重クラッド・ファイバの個々のセグメントを含み、前記発振器出力が入力として前記増幅器ファイバの前記入力端に供給され、さらに、
前記増幅器入力を増幅するために前記増幅器ファイバに結合された個々のポンプ源を含み、
前記増幅器が、出力として前記増幅器の前記出力端に前記増幅された入力を提供する、請求項9に記載の光増幅法。
【請求項11】
前記カスケード・ラマン共振器が、
入力端および出力端を有するラマン・ファイバのセグメントを含み、前記増幅器出力が、ポンピング入力として前記ラマン・ファイバセグメントの前記入力端に提供され、
第1の複数の高反射器が前記ラマン・ファイバセグメントの前記入力端に提供され、第2の複数の高反射器および出力カプラが前記ラマン・ファイバセグメントの前記出力端に提供され、
前記高反射器および前記出力カプラが、前記カスケード・ラマン共振器入力の中にカスケードの一連の1つまたは複数のストークス・シフトを生成して、その波長を、出力として前記出力カプラに供給される選択された目標波長まで増加させるように構成された波長応答を有する、請求項10に記載の光増幅法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−527017(P2012−527017A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510945(P2012−510945)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/034406
【国際公開番号】WO2010/132466
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509094034)オーエフエス ファイテル,エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】