説明

高出力リチウム二次バッテリー

本発明は、スピネル構造を有する特定のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)、および層状構造を有する特定のリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の混合物をカソード活性材料として含んでなる、耐用寿命が長く、室温および高温の両方で、高電流充電および放電を繰り返した後でも、優れた安全性を有する、非水性電解質系の高出力リチウム二次バッテリーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、耐用寿命が長く、室温および高温の両方で、高電流充電および放電を繰り返した後でも、優れた安全性を有する、非水性電解質系の高出力リチウム二次バッテリーに関する。
【発明の背景】
【0002】
最近、米国およびヨーロッパを始めとする多くの国々で自動車の排気規制が厳しくなっているために、電気自動車(EV)および動力源として内燃機関とバッテリーを使用するハイブリッド電気自動車(HEV)の開発が促進されており、一部は商業化されている。
【0003】
現在、EVまたはHEVに使用できるバッテリーは、高出バッテリーであり、例えば、安全性が確認されているNi−MH二次バッテリーが市販されている。さらに、出力密度およびエネルギー密度がNi−MH二次バッテリーより優れているリチウム二次バッテリーの開発も、鋭意進められている。
【0004】
しかし、EVに使用するリチウム二次バッテリーには、高いエネルギー密度および短期間における大きな発電力のみならず、短時間で高電流充電/放電サイクルを繰り返す苛酷な条件下でも、10年間を超える長い耐用寿命も必要であり、従って、従来の小型リチウム二次バッテリーと比較して、著しく優れた安全性および長い耐用寿命特性が必要である。
【0005】
従来の小型バッテリーに使用されているリチウムイオンバッテリーは、一般的にカソード材料としてリチウムコバルト複合酸化物の層状構造およびアノード材料としてグラファイト系材料を使用する。しかし、リチウムコバルト複合酸化物の主要構成元素であるコバルトは、非常に高価であり、安全性の問題から電気自動車に使用するには不適当である。従って、EV用リチウムイオンバッテリーのカソード材料として、マンガンから形成されたスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物が、コストおよび安全性の両方から理想的である。しかし、リチウムマンガン複合酸化物は、高温で高電流充電/放電させた時に、電解質の影響により、マンガンイオンが溶離して電解質の中に入るために、バッテリー特性および性能が損なわれる。そのため、そのような問題を阻止するための対策が必要である。さらに、リチウムマンガン複合酸化物には、従来のリチウムコバルト複合酸化物またはリチウムニッケル複合酸化物と比較して、充電密度が非常に低いという欠点がある。従って、バッテリーの充電密度に制限があり、EV、HEV、等の電源として実用化するためには、そのような欠点を克服するための、バッテリーの特別な設計を共に行う必要がある。
【0006】
上記のそれぞれの欠点を回避するために、混合カソード活性材料を使用して電極を製造するための様々な研究および試みがなされている。例えば、公開日本国特許出願第2002−110253号明細書および第2003−168430号明細書は、リチウムマンガン酸化物および/またはリチウムコバルト酸化物、およびリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の混合物を使用して回復出力を強化する技術を開示している。しかし、これらの技術は、リチウムマンガン酸化物のサイクル寿命期間が劣っており、安全性の改良が限られているのが難点である。
【発明の概要】
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記の、および他の、なお解消すべき技術的な問題を解決することである。
【0008】
より詳しくは、本発明の目的は、スピネル構造を有し、特定の金属元素組成物から構成されたリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)、および層状構造を有し、特定の金属元素組成物から構成されたリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の混合物を含んでなり、リチウムマンガン酸化物の改良された特性のために、カソード活性材料が、室温および高温の両方で、高電流充電および放電を繰り返した後でも、優れた安全性および長期間の耐用寿命を有する、二次バッテリー用のカソード活性材料を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、上記のカソード活性材料を含んでなるリチウム二次バッテリーを提供することである。そのようなリチウム二次バッテリーは、好ましくは、特に電気自動車(EV)およびハイブリッド電気自動車(HEV)用の、高出力、大容量バッテリーとして使用することができる。
【0010】
本発明の一態様により、上記の、および他の目的は、スピネル構造を有し、下記の一般式1により表されるリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)、および層状構造を有し、下記の一般式2により表されるリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)を含んでなる、二次バッテリー用のカソード活性材料を提供することにより、達成することができる。
【0011】
一般式1
Li1+xMn2−x−y
式中、
0<x<0.2、
0<y<0.1、および
Mは、Al、Mg、Ni、Co、Fe、Ti、V、ZrおよびZnからなる群から選択された少なくとも一種の元素である。
【0012】
一般式2
Li1−aNiMnCo1−b−c
式中、
−0.1≦a≦0.1、
0.3<b<0.5、および
0.3<c<0.5
である。
【0013】
本発明の別の態様では、上記のカソード活性材料を含むカソード、アノード、セパレータおよび電極を含んでなるリチウム二次バッテリーを提供する。
以下に、本発明をさらに説明する。
【0014】
本発明は、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)、および層状構造および特定の金属元素組成物を有するリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の混合物をカソード活性材料として使用し、スピネル構造を有する該リチウムマンガン酸化物中のマンガンの一部が他の元素で置換されていることを特徴とする。
【0015】
特に、リチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)において、上記のニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の組成物比範囲は、下記の例および比較例で明らかに確認されるように、バッテリーの高温サイクル特性および容量保持特性および安全性にとって不可欠である。
【0016】
本発明のカソード活性材料中の、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)において、Mnを他の金属(M=Al、Mg、Ni、Co、Fe、Ti、V、ZrまたはZn)で置換することにより、金属元素で置き換えないリチウムマンガン酸化物と比較して、高温サイクル特性がさらに改良される。これは、Mn3+を他の金属で置換することにより、高温におけるMnの溶解に直接関連する、Jahn-Teller効果を引き起すMn3+濃度が下がり、それによって、構造的に安定した酸化物を形成するためである。金属(M)は、好ましくはMg、Al、CoおよびNiからなる群から選択される。
【0017】
リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)において、xが0より大きい場合、リチウムイオンはMn3+の一部を置き換え、構造的に不安定な元素、すなわちJahn-Teller効果を引き起すことができるMn3+、の減少につながり、3価のマンガンが電解質中に溶離するのも抑制する。他方、xが0未満である場合、バッテリーの高温サイクル特性が悪くなる。さらに、xが0.2を超えると、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)中で、活性材料の容量に関与する3価マンガンイオンの濃度が著しく低下し、そのために活性材料の充電密度が低下する。
【0018】
いずれの場合も、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)中の構成元素の組成物比を調整することにより、バッテリーの高温サイクル特性および容量保持特性を、ある程度は改良することができるが、バッテリーの高温安定性および充電密度に関して、ある限界がある。従って、本発明は、複合酸化物(A)との混合物中に、活性材料、すなわちより安定しており、従って、耐用寿命を増加すると期待されるリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)を使用する。
【0019】
本発明者らは、そのような混合カソード活性材料中のリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の重量比が増加するにつれて、酸性度(pH)が増加することを見出した。従って、そのようなpH増加が、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)により引き起こされる欠点であった、バッテリー中の電解質の影響によるマンガンイオンの溶離を抑制することにより、バッテリー耐用寿命の改善を支援すると考えられる。高温におけるバッテリーの安全性および耐用寿命を考えると、カソード活性材料のpHは、好ましくは8.9〜10.4の範囲内である。
【0020】
特に、妥当なバッテリーの安全性を確保するには、本発明のカソード活性材料におけるリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)とリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の混合比が、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)が50重量%を超えるような比であるのが好ましい。この事実は、以下に説明する下記の例および比較例で確認することができる。リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)の重量比が、混合物全体の80〜95重量%になるような混合比が、より好ましい。
【0021】
金属元素の組成、例えばリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)およびリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)、を変えることにより、リチウム金属複合酸化物を製造する方法は、この分野で良く知られており、本明細書では説明しない。
【0022】
本発明の別の態様により、上記のカソード活性材料を含むカソード、アノードおよびセパレータから構成される電極組立構造、および非水性電解質を含んでなる、リチウム二次バッテリーを提供する。
【0023】
本発明のリチウム二次バッテリーは、電極組立構造の形態に応じて、例えばゼリー−ロール型および積重型に、大きく分けることができる。さらに、リチウム二次バッテリーは、その外側形状に応じて、円筒、プリズムおよび小袋形バッテリーに分けることができる。
【0024】
本発明の上記の、および他の目的、特徴および他の利点は、添付の図面を参照する下記の詳細な説明から、より深く理解される。
【本発明の好ましい実施態様】
【0025】
以下に本発明を、好ましい実施態様および添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のリチウム二次バッテリーに使用できる代表的な積重型電極組立構造を図式的に示し、図2は、そのような積重型電極組立構造が小袋型ケースの中に収容されている、代表的なリチウム二次バッテリーを図式的に示す。
【0026】
図1および2に関して、積重型電極組立構造は、薄いシート状のカソード1およびアノード2が互いに隣接して配置され、それらの間にセパレータ3が配置されている構造を有する。バッテリーの外側ケースとして、従来のリチウム重合体バッテリーに使用されているアルミニウムラミネートシートを使用することができる。本発明は、積重型または巻き上げ型に関係なく、すべての内部構造型に応用できる。
【0027】
カソード1は、例えば、本発明のカソード活性材料、導電性材料および結合剤の混合物をカソード集電装置に塗布し、続いて乾燥させることにより、製造される。所望により、上記の混合物に充填材をさらに加えることができる。
【0028】
カソード集電装置は、一般的に厚さが約3〜500μmになるように製作する。カソード集電装置には、バッテリー中に化学的変化を引き起こさずに、高い導電性を有する限り、特に制限は無い。カソード集電装置の例としては、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結した炭素、および炭素、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されたアルミニウムまたはステンレス鋼を挙げることができる。集電装置は、カソード活性材料に対する密着性を強化するために、表面上に微小凹凸を有するように製造することができる。さらに、集電装置は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質構造、フォームおよび不織布を包含する様々な形態を取ることができる。
【0029】
本発明で使用する導電性材料は、典型的にはカソード活性材料を包含する混合物の総重量に対して1〜50重量%の量で添加する。導電性試剤には、バッテリー中に化学的変化を引き起こさずに、好適な導電性を有する限り、特に制限は無い。導電性材料の例には、グラファイト、例えば天然または人造グラファイト、カーボンブラック類、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、Ketjenブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックおよびサーマルブラック、導電性繊維、例えば炭素繊維および金属繊維、フッ化炭素、金属粉末、例えばアルミニウムまたはニッケル粉末、導電性髭状結晶、例えば酸化亜鉛およびチタン酸カリウム、導電性金属酸化物、例えば酸化チタン、ポリフェニレン誘導体、等が挙げられる。
【0030】
結合剤は、活性材料と導電性材料との間の結合、および集電装置との結合を支援する成分である。本発明で使用する結合剤は、典型的にはカソード活性材料を包含する混合物の総重量に対して1〜50重量%の量で添加する。結合剤の例には、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、循環使用されるセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フルオロゴム、および各種共重合体が挙げられる。
【0031】
充填材は、カソードの膨脹を抑制する成分であり、所望により使用する。充填材には、バッテリー中で化学的変化を引き起こさない限り、特に制限は無く、繊維状材料でもよい。充填材の例としては、オレフィン重合体、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、および繊維状材料、例えばガラス繊維および炭素繊維、を使用できる。
【0032】
アノード2は、アノード材料をアノード集電装置に塗布し、続いて乾燥させることにより製造される。必要であれば、他の成分、例えば上記のような導電性材料および結合剤、をさらに添加することができる。
【0033】
アノード集電装置は、一般的に厚さが3〜500μmになるように製作する。アノード集電装置には、バッテリー中で化学的変化を引き起こさずに、好適な導電性を有する限り、特に制限は無い。アノード集電装置の例には、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結した炭素、および炭素、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理された銅またはステンレス鋼を挙げることができる。カソード集電装置と同様に、アノード集電装置も、アノード活性材料に対する密着性を強化するために、表面上に微小凹凸を有するように製造することができる。さらに、アノード集電装置は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質構造、フォームおよび不織布を包含する様々な形態を取ることができる。
【0034】
本発明で使用できるアノード活性材料の例には、炭素、例えば非グラファイト化炭素およびグラファイト系炭素、金属複合酸化物、例えばLiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)およびSnMe1−xMe’(MeはMn、Fe、Pb、Geであり、Me’はAl、B、P、Si、周期律表I、IIおよびIII族の元素、ハロゲン原子、であり、0<x≦1、1≦y≦3、1≦z≦8)、リチウム金属、リチウム合金、ケイ素系合金、スズ合金、金属酸化物、例えばSnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、およびBi、導電性重合体、例えばポリアセチレン、およびLi−Co−Ni系材料が挙げられる。
【0035】
カソード1とアノード2の間には、セパレータ3が配置される。セパレータとしては、イオン透過性が高く、機械的強度を有する絶縁性の薄いフィルムを使用する。セパレータは、典型的には細孔径が0.01〜10μmであり、厚さが5〜300μmである。本発明で使用できるセパレータには、オレフィン重合体、例えば耐薬品性で疎水性のポリプロピレン、およびガラス繊維またはポリエチレン製のシートまたは不織布が挙げられる。固体の電解質、例えば重合体、を電解質として使用する場合、その固体電解質は、セパレータおよび電解質の両方として作用することができる。
【0036】
リチウム塩を含む非水性電解質は、非水性電解質およびリチウムから構成される。非水性電解質としては、非水性電解質溶液、有機固体電解質、無機固体電解質、等を使用できる。
【0037】
非水性電解質溶液には、例えば非プロトン性有機溶剤、例えばN−メチル−2−ピロリドン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、ガンマ−ブチロラクトン、2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1.3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、炭酸プロピレン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、等が挙げられる。
【0038】
本発明で使用する有機固体電解質の例には、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、ホスフェート重合体、ポリアジテーション(agitation)リシン、ポリエステルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリ(フッ化ビニリデン)、イオン系解離基を含む重合体、等が挙げられる。
【0039】
本発明で使用する無機固体電解質には、リチウムの窒化物、ハロゲン化物および硫酸塩、例えばLiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiS、等が挙げられる。
【0040】
リチウム塩は、非水性電解質に容易に溶解し得る材料であり、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、リチウムクロロボレート、低級カルボン酸リチウム、リチウムテトラフェニルボレート、イミド、等が挙げられる。
【0041】
さらに、充電/放電特性および難燃性を改良するために、例えばピリジン、亜リン酸トリエチル、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換されたオキサゾリジノン、N,N−置換された、または置換されていないイミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、等を、非水性電解質に添加することができる。必要であれば、不燃性を付与するために、非水性電解質は、ハロゲン含有溶剤、例えば四塩化炭素および三フッ化エチレン、をさらに含むことができる。さらに、非水性電解質は、高温保存性を改良するために、二酸化炭素ガスをさらに包含することができる。
【実施例】
【0042】
ここで、下記の例を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。これらの例は、本発明を例示するだけであって、本発明の範囲および精神を制限するものではない。
【0043】
例1
リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)Li1.1Mn1.85Al0.05およびリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)LiNi0.4Mn0.4Co0.2を、90:10の重量比で混合した。得られた混合物1.25gを3回蒸留した水25mLに加え、次いで、これを30分間超音波処理し、続いてpH計を使用してpHを測定した。結果を下記の表1に示す。
【0044】
例2〜5
Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi0.4Mn0.4Co0.2の混合比を変えた以外は、例1と同じ手順を使用して実験を繰り返し、得られた物質のpHを測定した。結果を下記の表1に示す。
【0045】
比較例1
Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi0.4Mn0.4Co0.2の混合比(重量)を100:0にした以外は、例1と同じ手順を使用して実験を繰り返し、得られた物質のpHを測定した。結果を下記の表1に示す。
【0046】
比較例2
Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi0.4Mn0.4Co0.2の混合比(重量)を0:100にした以外は、例1と同じ手順を使用して実験を繰り返し、得られた物質のpHを測定した。結果を下記の表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
例6
例1と同様に、Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi0.4Mn0.4Co0.2を90:10の重量比で混合し、カソード活性材料を調製した。このカソード活性材料、カーボンブラックおよび結合剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、有機溶剤NMP中、重量比85:10:5で混合し、スラリーを調製した。得られたスラリーを、厚さ20μmのアルミニウムホイルの両側に塗布し、乾燥させてカソードを調製した。このようにして調製したカソード、アノードとしてリチウム金属、セパレータとして多孔質ポリエチレンフィルム、および電解質として1M−LiPFEC/EMC溶液を使用し、ボタン型バッテリーを組み立てた。
このようにして調製したバッテリーの高温耐用寿命を評価するために、このバッテリーを、電流密度0.2Cおよび温度50℃で、50充電/放電サイクルにかけた。このバッテリーの放電容量保持率を下記の等式により計算した。結果を下記の表2に示す。
【0049】
等式1
放電容量保持率(%)=(100充電/放電サイクル後の放電容量/1充電/放電サイクル後の放電容量)x100
注 100充電/放電サイクルは、相対的に比較するのに最適な条件を見出すために設定されている。
【0050】
例7〜10
Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi0.4Mn0.4Co0.2の混合比(重量)を下記の表2に示すように調整した以外は、例6と同じ手順を使用してバッテリーを組み立て、これらのバッテリーの高温耐用寿命を評価した。結果を下記の表2および図3にそれぞれ示す。
【0051】
比較例3
Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi0.4Mn0.4Co0.2の混合比(重量)を100:0にした以外は、Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi0.4Mn0.4Co0.2の混合比(重量)を100:0にした以外は、例6と同じ手順を使用してバッテリーを組み立て、このバッテリーの高温耐用寿命を評価した。結果を下記の表2および図3にそれぞれ示す。
【0052】
比較例4
Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi0.4Mn0.4Co0.2の混合比(重量)を0:100にした以外は、Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi0.4Mn0.4Co0.2の混合比(重量)を0:100にした以外は、例6と同じ手順を使用してバッテリーを組み立て、このバッテリーの高温耐用寿命を評価した。結果を下記の表2および図3にそれぞれ示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表1および2から分かるように、Li1+xMn2−x−yのリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)およびLi1−aNiMnCo1−b−cのリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)を混合することにより、カソード活性材料のpHは、複合酸化物(B)の混合比が増加するにつれて増加する。そのようなpH増加は、マンガンイオンがスピネル構造の複合酸化物(A)から電解質中に溶離するのを抑制し、それによって、高温におけるバッテリーの耐用寿命が増加すると考えられる。さらに、リチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)と混合することにより、スピネル構造のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)により示される、不利な低充電密度に関連する問題も解決できる。比較例4のカソード活性材料は、より優れた放電容量保持率を示すが、この活性材料には、比較例6から分かるように、安全性の問題があるのが難点である。
【0055】
例11
Li1.1Mn1.85Al0.05のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)およびLiNi1/3Mn1/3Co1/3のリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)を重量比90:10で使用し、カソード活性材料を製造した。このカソード活性材料、カーボンブラック、および結合剤としてPVDFを、有機溶剤NMP中、重量比85:10:5で混合し、スラリーを調製した。得られたスラリーを、厚さ20μmのアルミニウムホイルの両側に塗布し、乾燥させてカソードを調製した。
【0056】
結晶化度が高く、平均粒子径が12μmである球形人造グラファイト粉末、および結合剤のPVDFを、NMP中、重量比90:10で混合し、スラリーを調製した。得られたスラリーを、厚さ10μmの銅ホイルの両側に塗布し、乾燥させ、続いて厚さ60μmにロールプレスし、アノードを調製した。
【0057】
このようにして調製したカソードおよびアノード、および電解質として1M−LiPFEC/EMC溶液を使用し、図1に示すような積重型リチウムバッテリーを製造した。
【0058】
アノードとしてリチウム金属を使用する場合、リチウム金属の拡散速度が遅いために、5Cを超える高い出力を確認することは困難である。従って、アノードとして炭素を使用し、充電/放電の際の、高電流パルスによるバッテリーの寿命期間性能を試験した。
【0059】
充電/放電の際のバッテリーの寿命期間性能を高電流パルスで評価するために、電流50A、室温および40〜60%DOD(放電深度)で、非常に多くの充電/放電を繰り返した。バッテリーの高電流充電/放電による放電容量保持率は、下記の等式2により計算した。結果を下記の表3および図4にそれぞれ示す。
【0060】
等式
高電流充電/放電による放電容量保持率(%)=(初期電流密度1Cにおける放電容量/50Aサイクル充電/放電後の電流密度1Cにおける放電容量)x100
【0061】
さらに、バッテリーの安全性を試験した。結果を下記の表4に示す。バッテリーの安全性試験は、SOC(充電状態)200まで、または20Vx高電流32Aに過充電し、バッテリー発火の存在を確認することにより、行った。
【0062】
例12〜15
Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi1/3Mn1/3Co1/3の混合比(重量)を変えた以外は、例11と同じ手順を使用してバッテリーを組み立てた。バッテリーの、高電流パルス充電/放電寿命期間性能(高負荷放電率)を評価し、バッテリーの安全性試験も行った。結果を下記の表3および4、および図4にそれぞれ示す。
【0063】
比較例5
Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi1/3Mn1/3Co1/3の混合比(重量)を100:0にした以外は、例11と同じ手順を使用してバッテリーを組み立てた。バッテリーの、高電流パルス充電/放電寿命期間性能(高負荷放電率)を評価し、バッテリーの安全性試験も行った。結果を下記の表3および4、および図4にそれぞれ示す。
【0064】
比較例6
Li1.1Mn1.85Al0.05とLiNi1/3Mn1/3Co1/3の混合比(重量)を0:100にした以外は、例11と同じ手順を使用してバッテリーを組み立てた。バッテリーの、高電流パルス充電/放電寿命期間性能(高負荷放電率)を評価し、バッテリーの安全性試験も行った。結果を下記の表3および4、および図4にそれぞれ示す。
【0065】
【表3】

【0066】
表3から分かるように、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)およびリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)を混合する際、バッテリーの高電流充電/放電寿命期間は、リチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の混合比が増加するにつれて、増加する。これは、リチウム二次バッテリーの高電流充電/放電により、バッテリーの温度が高くなっても、スピネル構造のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)および層状構造のリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の混合電極は、高温で高いpHおよび基本的に安定した構造を有し、それによって、先行する例においても示されるように、バッテリーの寿命期間を増加するためであると考えられる。
【0067】
【表4】

【0068】
表4の結果から、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)とリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の重量混合比において、複合酸化物(A)の比が50%を超えると、バッテリーの安全性を確保できることが分かる。この効果は、スピネル構造のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)の安全性によるものであると考えられる。比較例5のカソード活性材料は、実験で発火しないので、優れた安全性を示しているが、表3から分かるように、充電/放電サイクル後の放電容量保持率が低いことに関連する問題が難点である。
【0069】
例16
リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)として、Li1.1Mn1.85Al0.05の代わりにLi1.08Mn1.87Al0.05を使用した以外は、例6と同じ手順を使用してバッテリーを組み立て、バッテリーの高温耐用寿命を評価した。結果を下記の表5に示す。
【0070】
比較例7
リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)として、Li1.08Mn1.87Al0.05の代わりにLi1.08Mn1.92を使用した以外は、例16と同じ手順を使用してバッテリーを組み立て、バッテリーの高温耐用寿命を評価した。結果を下記の表5に示す。
【0071】
【表5】

【0072】
表5から分かるように、Mnを他の金属Mで置き換えているために、Li1+xMn2−x−y[ただし、0<x≦0.2、0<y≦0.1、Mは、Al、Mg、Ni、Co、Fe、Ti、V、ZrおよびZnからなる群から選択された少なくとも一種の元素である]のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)は、高温で、金属元素を置き換えていないスピネル構造のLi1+xMn2−x(ただし、0<x<0.2)リチウムマンガン酸化物より安定している。これは、Mnを他の金属Mで置き換えることにより、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)の高温におけるマンガン溶離が、金属元素で置き換えていないリチウムマンガン酸化物と比較して、低下したためであると考えられる。
【0073】
例17および18
Li1−aNiMnCo1−b−cのリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)において、ニッケル、コバルト、およびマンガンの組成比を下記の表6に記載するように調整した以外は、例11と同じ手順を使用してカソードを調製した。カソード活性材料の安全性を確認するために、DSC(示差走査熱量測定)を行った。開始温度および熱量を下記の表6に示す。
【0074】
比較例8〜10
Li1−aNiMnCo1−b−cのリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)において、ニッケル、コバルト、およびマンガンの組成比を下記の表6に記載するように調整した以外は、例11と同じ手順を使用して実験を繰り返した。結果を下記の表6に示す。
【0075】
【表6】

【0076】
表6から分かるように、リチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)中のマンガンの比が増加し、対応してコバルトの比が減少するにつれて、開始温度が上昇し、熱量が著しく低下する。特に、マンガンの組成が約0.3である場合、そのような変化は顕著である。この事実は、材料中のマンガン反応性が、コバルトと比較して、高温で低くなるので、カソードの安全性が改良されることを意味する。比較例10のカソード活性材料は、開始温度が高く、熱量が低い結果を示しているが、そのような活性材料はニッケル含有量が高く、バッテリーの不利な膨潤を引き起こす。
【0077】
例19
Li1.1Mn1.85Al0.05のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)およびLiNi1/3Mn1/3Co1/3のリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)を、混合比(重量)70:30で使用することにより、カソード活性材料を製造した以外は、例11と同じ手順を使用してバッテリーを組み立て、次いで、バッテリーの安全性試験を行った。結果を下記の表7に示す。
【0078】
比較例11
Li1.1Mn1.85Al0.05のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)およびLiNi0.15Mn0.15Co0.7のリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)を、混合比(重量)70:30で使用することにより、カソード活性材料を製造した以外は、例11と同じ手順を使用してバッテリーを組み立て、次いで、バッテリーの安全性試験を行った。結果を下記の表7に示す。
【0079】
比較例12
Li1.1Mn1.85Al0.05のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)およびLiNi0.3Mn0.3Co0.4のリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)を、混合比(重量)70:30で使用することにより、カソード活性材料を製造した以外は、例11と同じ手順を使用してバッテリーを組み立て、次いで、バッテリーの安全性試験を行った。結果を下記の表7に示す。
【0080】
【表7】

【0081】
表7から分かるように、スピネル構造のリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)と層状構造のリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の重量混合比が70:30であっても、Li1−aNiMnCo1−b−cのリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)におけるMnの組成比が0.3未満である場合、あるいはCoの組成比が0.4を超える場合、バッテリーの安全性を確保することは不可能である。従って、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)とリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の混合物において、特にリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)中のニッケル、コバルトおよびマンガンの組成比が、バッテリーの安全性にとって非常に重要である。
産業上の利用可能性
【0082】
上記の様に、本発明により、リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)とリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)の混合物をカソード活性材料として使用する非水性電解質系二次バッテリーは、高電流、短期間充電/放電条件下で、および高温条件下でも、バッテリーの安全性を確保し、その耐用寿命を改良することができる。
【0083】
本発明の好ましい実施態様を例示のために開示したが、当業者には明らかなように、請求項に記載する本発明の範囲および精神から離れることなく、様々な修正、追加および置き換えが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明のリチウム二次バッテリーで使用できる積重型電極組立構造を図式的に示す。
【図2】図2は、図1の積重型電極組立構造が小袋型ケース中に含まれているリチウム二次バッテリーを図式的に示す。
【図3】図3は、例7および8、および比較例3および4で製造されたバッテリーの50℃におけるサイクル寿命期間特性をそれぞれ示すグラフである。
【図4】図4は、例11および15、および比較例5および6で製造されたバッテリーの室温における高電流充電/放電サイクル寿命期間特性をそれぞれ示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピネル構造を有し、かつ、下記一般式(1)により表されるリチウムマンガン−金属複合酸化物(A)と、及び
層状構造を有し、かつ、下記一般式(2)により表されるリチウムニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物(B)を含んでなる、二次バッテリー用のカソード活性材料。
Li1+xMn2−x−y (1)
Li1−aNiMnCo1−b−c (2)
(上記式中、
0<x<0.2、
0<y<0.1、
Mは、Al、Mg、Ni、Co、Fe、Ti、V、ZrおよびZnからなる群から選択された少なくとも一種の元素であり、
−0.1≦a≦0.1、
0.3<b<0.5、及び
0.3<c<0.5
を表す。)
【請求項2】
前記リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)の含有量が、前記混合物の総重量に対して50%超過である、請求項1に記載のカソード活性材料。
【請求項3】
前記リチウムマンガン−金属複合酸化物(A)の含有量が、前記混合物の総重量に対して80〜95%である、請求項2に記載のカソード活性材料。
【請求項4】
前記活性材料のpHが8.9〜10.4である、請求項1に記載のカソード活性材料。
【請求項5】
前記金属(M)が、Mg、Al、CoおよびNiからなる群から選択される、請求項1に記載のカソード活性材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記カソード活性材料を含んでなる、リチウム二次バッテリー。
【請求項7】
前記バッテリーが、高出力、大容量電源として使用される、請求項6に記載のリチウム二次バッテリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−531216(P2007−531216A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504892(P2007−504892)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000909
【国際公開番号】WO2006/004279
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】