説明

高分子電解質膜とその製造方法及び燃料電池

【課題】イオン伝導度が改善され、メタノールクロスオーバーを効率的に防止することが可能な高分子電解質膜とその製造方法及びこれを備えた燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明によれば、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体及びイオン伝導性高分子を含む高分子電解質膜とその製造方法及びこれを備えた燃料電池が提供される。本発明による高分子電解質膜は、優れたイオン伝導度及びメタノールクロスオーバー抑制能力を有するので、燃料電池の電解質膜、特に、直接メタノール燃料電池用の電解質膜として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質膜とその製造方法及び燃料電池に係り、さらに詳細には、イオン伝導度及びメタノールクロスオーバー抑制能が改善された高分子電解質膜とその製造方法及びこれを備えた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、知られている燃料電池は、用いられる電解質の種類によって、高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane:PEM)、リン酸方式、溶融炭酸塩方式、固体酸化物方式などに分類される。そして、用いられる電解質によって燃料電池の動作温度及び構成部品の材質が変わる。
【0003】
燃料電池は、アノードに対する燃料供給方式によって、燃料改質器を通じて燃料を水素富化ガスに転換させた後、アノードに供給する外部改質型と、ガスまたは液状の燃料を直接アノードに供給する燃料直接供給型または内部改質型とに分類される。
【0004】
燃料直接供給型の代表的な例は、直接メタノール燃料電池(DMFC:direct methanol fuel cell)である。直接メタノール燃料電池は、一般的に燃料としてメタノール水溶液を、電解質として水素イオン伝導性高分子電解質膜を使用する。したがって、DMFCもPEMFCに属する。
【0005】
PEMFCは、小型及び軽量であるが、高出力密度を具現できる。さらに、PEMFCを使用すれば、発電システムの構成が簡単になる。
【0006】
PEMFCの基本構造は、一般的に、アノード(燃料電極)、カソード(酸化剤電極)、及びアノードとカソードとの間に配置された高分子電解質膜を含む。PEMFCのアノードには、燃料の酸化を促進させるための触媒層が備えられており、PEMFCのカソードには、酸化剤の還元を促進させるための触媒層が備えられている。
【0007】
PEMFCにおいて、高分子電解質膜は、アノードからカソードへの水素イオンの移動のためのイオン伝導体の役割を行うだけでなく、アノードとカソードとの機械的接触を遮断する隔離膜の役割も行う。したがって、高分子電解質膜に対して要求される特性は、優れたイオン伝導度、電気化学的安定性、高い機械的強度、作動温度での熱安定性、薄膜化の容易性などである。
【0008】
特許文献1には、分岐型ポリアルコキシシロキサン化合物を含む電解質膜が開示されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第2004/0062966号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これまで知られた高分子電解質膜は、イオン伝導度、メタノールクロスオーバー抑制能などの特性が満足できるほどのレベルに至っていないため、改善の余地が多いという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、イオン伝導度が改善され、メタノールクロスオーバーを効率的に防止することが可能な、新規かつ改良された高分子電解質膜とその製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明が達成しようとする他の技術的課題は、上記の高分子電解質膜を採用してメタノールクロスオーバー程度が低下し、効率が向上した燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体と、イオン伝導性高分子と、を含む高分子電解質膜が提供される。
【0014】
上記のポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体におけるポリシルセスキオキサンと共重合されたポリマーは、ポリプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリt−ブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリt−ブチルスチレン、ポリ3−メチルスチレン、ポリ4−メチルスチレン、ポリsec−ブチルスチレン、ポリ−メチルスチレン、ポリtrans−メチルスチレン、ポリ2−クロロスチレン、ポリ3−クロロスチレン、ポリ4−クロロスチレン、及びこれらをなす単量体のうち一つ以上のコポリマーからなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0015】
上記のポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体におけるポリシルセスキオキサン基のシリコンは、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C20のアルコキシ基、およびハロゲン原子からなる群から選択された一つ以上の疎水性置換基を有してもよい。
【0016】
上記のポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体は、下記化学式1で表される構造を有してもよい。
【0017】

【化1】

【0018】
ここで、上記の化学式1において、R、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して水素、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C20のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、Z及びZは、互いに独立して置換または非置換のC−C20のアルキレン基であり、Rは、置換または非置換のC−C20のアルキル基であり、Bは、下記化学式2及び化学式3のうち一つ以上で表示される反復単位である。
【0019】

【化2】

【0020】

【化3】

【0021】
なお、化学式2及び化学式3において、R、R10及びR11は、互いに独立して置換または非置換のC−C20のアルキル基であり、Z及びZは、置換または非置換のC−C20のアルキレン基であり、Arは、置換または非置換のC−C30のアリール基または置換または非置換のC−C30のヘテロアリール基であり、a及びbはモル分率であって、それぞれ0.05〜0.95であり、a+b=1である。
【0022】
上記の化学式1で表される構造を有するポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の質量平均分子量は、1000〜20000であってもよい。
【0023】
上記のポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体は、下記化学式4で表される構造を有してもよい。
【0024】

【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
なお、上記の化学式4、化学式11および化学式12において、a及びbは、モル分率であって、それぞれ0.05〜0.95であり、a+b=1である。
【0028】
上記の化学式4、化学式11および化学式12で表される構造を有するポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の質量平均分子量は、1000〜20000であってもよい。
【0029】
上記のポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体におけるポリシルセスキオキサン基の含量は、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体100質量部を基準として、10質量部〜70質量部であってもよい。
【0030】
上記のイオン伝導性高分子は、ポリイミド、ポリアルキルエーテル、ポリエチレンカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ナフィオン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)、スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、パーフルオロ化された高分子、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンフルオライド−co−ヘキサフルオロプロピレン、末端がキャッピングされたポリアミド酸、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルケトン)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)、及びこれらをなす単量体のうち一つ以上の共重合体からなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0031】
上記のポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の含量は、イオン伝導性高分子100質量部を基準として、1質量部〜95質量部であってもよい。
【0032】
また、上記の高分子電解質膜は、固体酸をさらに含んでもよい。
【0033】
上記の固体酸は、下記化学式9または10で表される構造を有してもよい。
【0034】

【化7】

【0035】

【化8】

【0036】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体、イオン伝導性高分子、及び溶媒を含む高分子電解質膜形成用の組成物を生成する段階と、高分子電解質膜形成用の組成物を塗布する段階と、塗布された高分子電解質膜形成用の組成物を熱処理する段階と、を含む高分子電解質膜の製造方法が提供される。
【0037】
上記の高分子電解質膜形成用の組成物に含まれる溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、及びN,N’−ジメチルアセトアミドからなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0038】
上記の高分子電解質膜形成用の組成物に含まれるイオン伝導性高分子の含量は、高分子電解質膜形成用の組成物を基準として、1質量%〜99質量%であってもよい。
【0039】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に配設された高分子電解質膜と、を備え、高分子電解質膜は、上記の高分子電解質膜であることを特徴とする燃料電池が提供される。
【0040】
上記のカソードは、白金担持カーボン触媒層を有し、上記のアノードは、白金−ルテニウム担持カーボン触媒層を有してもよい。
【0041】
以上説明したように、本発明は、高分子電解質膜とその製造方法及び燃料電池に係り、さらに詳細には、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体を含むことによって、イオン伝導度及びメタノールクロスオーバー抑制能が改善された高分子電解質膜とその製造方法及びこれを備えた燃料電池に関する。
【発明の効果】
【0042】
本発明にかかる高分子電解質膜は、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体を含むため、イオン伝導度が改善され、メタノールクロスオーバー抑制能力に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0044】
本発明の第1の実施形態は、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体及びイオン伝導性高分子を含む高分子電解質膜を提供する。
【0045】
本明細書において「ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体」とは、ポリシルセスキオキサン基がポリマー主鎖の一部として導入された形態、またはポリマー主鎖と連結された側鎖として導入された形態のいずれをも含む。
【0046】
ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体は、高分子電解質膜に含まれて、膜中の空き空間(free volume)を縮小させて、さらに堅く緻密な膜構造を形成できるようにする。また、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体を通じて電解質膜に疎水性置換基を追加的に導入できるので、電解質膜の疎水性を増加させることができる。これにより、高分子電解質膜のイオン伝導度が向上し、メタノールクロスオーバーが減少できる。さらに、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体は、高分子電解質膜形成用の組成物に均一に分散できるので、イオン伝導性高分子からなるマトリックスに無機粒子であるポリシルセスキオキサンを均一に分散させる役割も行うことができる。
【0047】
ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体のうち、ポリシルセスキオキサン基を含む反復単位(ポリマー)は、高分子電解質膜との相溶性を増加させる役割を果たす。ポリシルセスキオキサン基は、ポリマー主鎖をなす反復単位として導入されることもあり、ポリマー主鎖に対する側鎖として導入されることもある。ポリマーは、例えば、ポリプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリt−ブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及びポリスチレン(PS)、ポリt−ブチルスチレン、ポリ3−メチルスチレン、ポリ4−メチルスチレン、ポリsec−ブチルスチレン、ポリ−メチルスチレン、ポリtrans−メチルスチレン、ポリ2−クロロスチレン、ポリ3−クロロスチレン、ポリ4−クロロスチレンなどである。または、これらをなす単量体のうち一つ以上を含むコポリマーでありうる。例えば、本実施形態によるポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体のうちポリマーは、PMMAホモポリマーまたはPMMA−PSコポリマーのように、多様な変形が可能である。
【0048】
一方、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体のうちポリシルセスキオキサン基は、高分子電解質膜中の空き空間を縮小させて、高分子電解質膜の構造を緻密にする役割を果たす。ポリシルセスキオキサン基は、−Si−O−結合を有し、線形、環形またはカゴ形のような多様な構造を有し、前述したようにポリマーに対してポリマー主鎖をなす反復単位として導入されるか、ポリマー主鎖に対する側鎖として導入されうる。
【0049】
一方、ポリシルセスキオキサン基のうちシリコンは、高分子電解質膜の疎水性を増加させるように、高分子電解質膜に疎水性置換基を導入する。例えば、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C20のアルコキシ基、及びハロゲン原子からなる群から選択された一つ以上の置換基を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
一方、本実施形態に係るポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体は、下記化学式1で表される構造を有してもよい。
【0051】

【化9】

【0052】
上記の化学式1において、R、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して水素、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C20のアルコキシ基またはハロゲン原子である。
【0053】
上記の化学式1において、Z及びZは、互いに独立して置換または非置換のC−C20のアルキレン基である。
【0054】
上記の化学式1において、Rは、置換または非置換のC−C20のアルキル基である。
【0055】
上記の化学式1において、Bは、下記化学式2及び化学式3のうち一つ以上で表示される反復単位である。
【0056】

【化10】

【0057】

【化11】

【0058】
上記の化学式2及び化学式3において、R、R10及びR11は、互いに独立して置換または非置換のC−C20のアルキル基であり、Z及びZは、置換または非置換のC−C20のアルキレン基であり、Arは、置換または非置換のC−C30のアリール基または置換または非置換のC−C30のヘテロアリール基である。この際、Arで表示された置換のアリール基または置換のヘレロアリール基は、シルセスキオキサンのR〜Rのうち一つ以上と追加で結合しうる官能基を置換基として有してもよい。
【0059】
一方、化学式1において、a及びbは、反復単位のモル分率であって、それぞれ0.05〜0.95、望ましくは、0.1〜0.9であり、a+b=1を満足する。a及びbを調節することによって、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体のフレキシブル特性を調節できる。
【0060】
一方、化学式1で表される構造を有するポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の質量平均分子量は、例えば1000〜20000範囲であってもよい。
【0061】
上記の化学式2及び3において、「*」の表示は、他の反復単位との結合部位を示す。
【0062】
上記の化学式1で表示されたポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体のうち、ポリマー主鎖は、互いに異なる2以上の反復単位を含むことができ、反復単位の配列は多様に変形されうる。
【0063】
本実施形態に係るポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の一具現例は、下記化学式4で表される構造を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0064】

【化12】

【0065】
【化13】

【0066】
【化14】

【0067】
上記の化学式4、化学式11および化学式12において、a及びbと化学式4で表される構造を有するポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の質量平均分子量は、化学式1について記載されたものを参照する。すなわち、a及びbと化学式4で表される構造を有するポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の質量平均分子量は、例えば1000〜20000範囲であってもよい。
【0068】
本実施形態に係る化学式1〜化学式3のうち非置換のC−C20のアルキル基の具体的な例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル基、ペンチル、iso−アミル、ヘキシルなどが挙げられ、前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒオラゾン、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸またはその塩、またはC−C20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C−C20のヘテロアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のアリールアルキル基、C−C20のヘテロアリール基、またはC−C20のヘテロアリールアルキル基に置換されうる。
【0069】
本実施形態に係る化学式1〜3のうち非置換のC−C20のアルコキシ基の具体的な例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、ペントキシなどが挙げられ、アルコキシ基のうち一つ以上の水素原子は、上述したアルキル基の場合と同様に置換基に置換可能である。
【0070】
本実施形態に係る化学式1〜3のうち非置換のC−C30アリール基は、単独または組み合わせて使われ、一つ以上の環を含む炭素原子数6〜30個の炭素環芳香族システムを意味し、環は、ペンダント方法で共に付着されるか、または融合されうる。その例として、例えば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルなどが含まれる。アリール基のうち一つ以上の水素原子は、上述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換可能である。
【0071】
本実施形態に係る化学式1〜3の非置換のC−C30ヘテロアリール基は、O、PまたはSのうちから選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである単環式または二環式芳香族有機化合物を意味する。その例として、例えば、ピリジニル、ピラジニルなどが含まれる。ヘテロアリール基のうち一つ以上の水素原子は、上述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換可能である。
【0072】
上記のポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体のうちポリシルセスキオキサン基の含量は、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体100質量部を基準として例えば10質量部〜70質量部、望ましくは、10質量部〜50質量部であってもよい。ポリシルセスキオキサン基の含量が、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体100質量部を基準として10質量部未満である場合、高分子電解質膜の緻密度が満足するほどに向上せず、ポリシルセスキオキサン基の含量が、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体100質量部を基準として70質量部を超える場合、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体のうちポリマー主鎖の含量が相対的に低くなって、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体が高分子電解質膜形成用の組成物に容易に分散されない。
【0073】
本実施形態に係る高分子電解質膜は、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の以外にマトリックスとしてイオン伝導性高分子を含む。イオン伝導性高分子として、高分子電解質膜用に利用可能な公知の高分子から選択されうる。例えば、イオン伝導性高分子は、ポリイミド、ポリアルキルエーテル、ポリエチレンカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ナフィオン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)、スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、パーフルオロ化されたポリマー、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンフルオライド−co−ヘキサフルオロプロピレン、末端がキャッピングされたポリアミド酸、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルケトン)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)及びこれらをなす単量体のうち一つ以上の共重合体からなる群から選択された一つ以上であるが、これに限定されるものではない。
【0074】
上記のポリイミドの非制限的な例として、下記化学式5のポリイミドが挙げられる。
【0075】

【化15】

【0076】
上記の化学式5において、mおよびnは、モル分率であって、nは、0.1〜0.9、特に、0.3〜0.7であり、nは、0.1〜0.9、特に、0.3〜0.7であり、m+n=1である。
【0077】
上記のポリイミドの重合度は、5〜1000の範囲である。
【0078】
上記のスルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)の非制限的な例として、下記化学式6が挙げられる。
【0079】

【化16】

【0080】
上記の化学式6において、pおよびqは、モル分率であって、pは、例えば0.2〜0.8、望ましくは、0.3〜0.7であり、qは、例えば0.2〜0.8、望ましくは、0.3〜0.7であり、p+q=1である。
【0081】
上記のスルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)の質量平均分子量は、例えば20000〜100000の範囲である。
【0082】
上記のスルホン化ポリ(エーテルエーテルスルホン)の非制限的な例として、下記化学式7が挙げられる。
【0083】

【化17】

【0084】
上記の化学式7において、rおよびsは、モル分率であって、rは、例えば0.1〜0.9、望ましくは、0.3〜0.7であり、sは、例えば0.1〜0.9、望ましくは、0.3〜0.7であり、r+s=1である。
【0085】
上記のスルホン化ポリ(エーテルエーテルスルホン)の質量平均分子量は、例えば20000〜50000の範囲である。
【0086】
上記の末端がキャッピングされたポリアミド酸の非制限的な例として、下記化学式8のポリアミド酸が挙げられる。
【0087】
【化18】

【0088】
上記の末端がキャッピングされたポリアミド酸の重合度は、例えば5〜20の範囲である。
【0089】
本実施形態に係る高分子電解質膜のうちポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の含量は、イオン伝導性高分子100質量部を基準として、例えば1質量部〜95質量部、望ましくは、1質量部〜90質量部でありうる。ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の含量がイオン伝導性高分子100質量部を基準として1質量部未満である場合、イオン伝導度及びメタノール透過度抑制能がほとんど向上せず、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の含量がイオン伝導性高分子100質量部を基準として95質量部を超える場合、高分子電解質膜のイオン伝導度が低くなってしまう。
【0090】
本実施形態に係る高分子電解質膜は、前述したようなポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体及びイオン伝導性高分子の以外に、固体酸をさらに含みうる。固体酸は、例えば、下記化学式9または化学式10で表される構造を有しうる。
【0091】

【化19】

【0092】

【化20】

【0093】
固体酸の含量は、イオン伝導性高分子100質量部を基準として、例えば0.1質量部〜40質量部、望ましくは、1質量部〜30質量部でありうる。固体酸の含量がイオン伝導性高分子100質量部を基準として0.1質量部未満である場合、固体酸としての効果がごくわずかであり、固体酸の含量がイオン伝導性高分子100質量部を基準として40質量部を超える場合、固体酸が漏出してしまう。
【0094】
以下、高分子電解質膜の製造方法を説明する。
【0095】
本実施形態に係る高分子電解質膜の製造方法は、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体、イオン伝導性高分子、及び溶媒を含む高分子電解質膜形成用の組成物を提供する段階と、高分子電解質膜形成用の組成物を塗布する段階と、塗布された高分子電解質膜形成用の組成物を熱処理する段階とを含む。
【0096】
まず、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体、イオン伝導性高分子及び溶媒を混合して、高分子電解質膜形成用の組成物を得る。この際、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体及びイオン伝導性高分子の具体的な物質及び含量範囲は、前述した通りである。一方、高分子電解質膜形成用の組成物は、前述したような固体酸をさらに含んでもよい。
【0097】
高分子電解質膜形成用の組成物における溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシドなどを使用できるが、これに限定されない。これらのうち2以上の組み合わせを使用することも可能である。溶媒の含量は、高分子電解質膜形成用の組成物を基準として、例えば1質量%〜99質量%でありうる。溶媒の含量が高分子電解質膜形成用の組成物を基準として1質量%未満である場合、高分子電解質膜形成用の組成物のコーティング性、粘度などが低下し、溶媒の含量が高分子電解質膜形成用の組成物を基準として99質量%を超える場合、固形分の含量が低過ぎて望ましくない。
【0098】
高分子電解質膜形成用の組成物を基板上に塗布する。この際、塗布方法としては特別に限定されず、スピンコーティング、バーコーティングなどの公知の多様な方法が利用できる。
【0099】
次に、塗布された高分子電解質膜形成用の組成物を熱処理する。
【0100】
熱処理段階は、120〜250℃で行われるハードベーキング過程であり、もし、熱処理段階の温度が120℃未満であれば、高分子膜の硬化が十分でなく、250℃を超過すれば、高分子電解質膜自体に含まれているスルホン酸基が分解されて望ましくない。熱処理時間は、熱処理温度によって可変的であり、望ましくは、5分〜24時間実施することが望ましい。
【0101】
本実施形態では、前述したハードベーキング段階以前に予熱処理段階をさらに経てもよい。ここで、予熱処理段階は、高分子電解質膜形成用の組成物が塗布された結果物から溶媒を一部除去する過程であって、60〜110℃で行われるソフトベーキング過程であり、もし、予熱処理段階の温度が60℃未満であれば、溶媒乾燥に非常に長時間がかかり、110℃を超過すれば、溶媒除去があまり急速に行われてフィルムの不均一性を引き起こして望ましくない。
【0102】
熱処理時間は、熱処理温度によって可変的であり、望ましくは、5分〜4時間実施することが望ましい。
【0103】
上記の過程によって得た高分子電解質膜は、燃料電池の電解質膜として使用可能である。
本実施形態に係る高分子電解質膜の厚さは、例えば5〜200μmであることが望ましい。もし、高分子電解質膜の厚さが5μm未満であれば、薄過ぎて裂ける危険性があり、200μmを超過すれば、膜に亀裂が発生しうるので望ましくない。
【0104】
本実施形態に係る燃料電池は、カソード、アノード、及びこれらの間に介在した高分子電解質膜を備える。
【0105】
上記のカソード及びアノードは、ガス拡散層と触媒層とから構成される。
【0106】
触媒層は、関連反応(水素の酸化及び酸素の還元)を触媒的に補助する、いわゆる金属触媒を含むものであって、例えば、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金、または白金−M合金(Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnのうちから選択された1種以上の転移金属である)のうちから選択された1種以上の触媒を含むことが望ましい。そのなかでも、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−ルテニウム合金、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金、白金−コバルト合金、及び白金−ニッケルのうちから選択された1種以上の触媒を含むことがさらに望ましい。
【0107】
また、一般的に、金属触媒としては、担体に支持されたものが使われる。担体としては、アセチレンブラック、黒鉛のような炭素を使用してもよく、アルミナ、シリカなどの無機物微粒子を使用してもよい。担体に担持された貴金属を触媒として使用する場合には、商用化された市販されているものを使用してもよく、担体に貴金属を担持させて製造して使用してもよい。
【0108】
ガス拡散層としては、カーボン紙やカーボンクロスが使われうるが、これに限定されるものではない。ガス拡散層は、燃料電池用の電極を支持する役割を行うと共に、触媒層に反応ガスを拡散させて、触媒層に反応ガスが容易に接近できるようにする役割を行う。また、このガス拡散層は、カーボン紙やカーボンクロスをポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系の樹脂で撥水処理したものを使用することが、燃料電池の駆動時に発生する水によってガス拡散効率が低下することを防止できるので望ましい。
【0109】
また、電極は、ガス拡散層と触媒層との間にガス拡散層のガス拡散効果をさらに増進させるために、微細多孔層をさらに備えてもよい。前記微細多孔層は、炭素粉末、カーボンブラック、活性炭素、アセチレンブラックなどの導電性物質、ポリテトラフルオロエチレンのようなバインダー、及び必要に応じてアイオノマーを含む組成物を塗布して形成される。
【0110】
本実施形態に係る燃料電池は、リン酸型、高分子電解質型、またはアルカリ型燃料電池であり、特に、直接メタノール燃料電池であることが望ましい。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を下記製造例及び実施例を挙げて説明するが、本発明が下記製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0112】
(実施例1)
ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体としてポリ[プロピルメタアクリル−ヘプタイソブチル−POSS−co−メチルメタクリレート](aldrich社製)3質量部、イオン伝導性高分子としてポリイミド10質量部、及び溶媒としてN−メチルピロリドン87質量部を混合して、高分子電解質膜形成用の組成物を製造した。
【0113】
高分子電解質膜形成用の組成物をスピンコーティングし、これを100℃で約10分間予熱処理した。
【0114】
次に、上記の結果物を約200℃で約1.5時間熱処理を実施して、高分子電解質膜(膜厚:約17μm)を製造した。
【0115】
(実施例2)
イオン伝導性高分子としてポリイミドの代わりにスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)を使用し、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体3質量部、SPEEK10質量部、及びN−メチルピロリドン87質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、実施例1と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約67μm)を製造した。
【0116】
(実施例3)
ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体6質量部、SPEEK10質量部、及びN−メチルピロリドン84質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、実施例2と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約87μm)を製造した。
【0117】
(実施例4)
イオン伝導性高分子としてポリイミドの代わりにスルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)を使用し、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体3質量部、SPES10質量部、及びN−メチルピロリドン87質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、実施例1と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約14μm)を製造した。
【0118】
(実施例5)
ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体6質量部、SPES10質量部、及びN−メチルピロリドン84質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、前記実施例1と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約48μm)を製造した。
【0119】
(実施例6)
イオン伝導性高分子としてポリイミドの代わりにスルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)及びポリアミド酸(PA)を使用し、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体3質量部、SPES10質量部、PA10質量部、及びN−メチルピロリドン77質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、実施例1と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約56μm)を製造した。
【0120】
(実施例7)
SPEEK10質量部、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体6質量部、固体酸として化学式9を有する化合物2質量部、及びN−メチルピロリドン82質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、実施例1と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約36μm)を製造した。
【0121】
(実施例8)
SPES10質量部、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体6質量部、固体酸として化学式9を有する化合物2質量部、及びN−メチルピロリドン82質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、前記実施例4と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約54μm)を製造した。
【0122】
(比較例1)
イオン伝導性高分子としてSPEEK10質量部及び溶媒としてN−メチルピロリドン90質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、実施例1と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約33μm)を製造した。
【0123】
(比較例2)
イオン伝導性高分子としてSPES15質量部及びN−メチルピロリドン85質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、実施例1と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約32μm)を製造した。
【0124】
(比較例3)
イオン伝導性高分子としてSPES10質量部、PA10質量部、及びN−メチルピロリドン80質量部を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、実施例1と同じ方法によって実施して、高分子電解質膜(膜厚:約32μm)を製造した。
【0125】
<評価例1:イオン伝導度及びメタノール透過度の測定>
実施例1〜実施例8及び比較例1〜比較例3によって得た高分子電解質膜において、イオン伝導度及びメタノール透過度を測定して下記表1に示した。ここで、イオン伝導度は、製造された高分子電解質膜を蒸溜水に24時間浸した後、両電極の間に膜を入れて2−ポイントプローブ法インピーダンス分析器で1Hz〜4MHzのACを加えて(振幅10mV)、各周波数で複素インピーダンスを測定し、測定された膜の抵抗値として下記の式1を利用して計算した。
【0126】
【数1】

【0127】
式1において、σはイオン伝導度であり、lはサンプルの厚さで、Rは膜抵抗であり、Sは電極断面積を示す。
【0128】
一方、メタノール透過度は、拡散セルを利用して室温で測定した。二つのセルの間に一定サイズの高分子電解質膜を挿入し、連続的に二溶液を攪拌しつつ、膜を透過する一定濃度のメタノールと水の量を15分間隔で2時間採取して、ガスクロマトグラフィ分析によって評価した。
【0129】

【表1】

【0130】
上記の表1から、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体を含む高分子電解質膜は、従来の高分子電解質膜より優れたイオン伝導度及びメタノール透過度を有するということを確認することができる。
【0131】
一方、実施例1、3及び4から得た高分子電解質膜の温度変化によるプロトン伝導度は、図1〜図3をそれぞれ参照する。この時、図3には、実施例4から得た高分子電解質膜の湿度変化によるプロトン伝導度が追加で示されている。
【0132】
図1〜図3によれば、本発明による高分子電解質膜は、温度または湿度が増加するほどプロトン伝導度が増加することが分かる。
【0133】
図4は、比較例1、実施例1、比較例2、実施例4、比較例3、及び実施例6から得た高分子電解質膜のメタノール透過度を示すグラフである。図4によれば、本発明による高分子電解質膜は、従来の高分子電解質膜に比べて顕著に低いメタノール透過度を有するということを確認することができる。
【0134】
以上説明したように、本発明の高分子電解質膜は、燃料電池の電解質膜、特に、直接メタノール燃料電池用電解質膜において有用である。
【0135】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、燃料電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の実施例1によって製造された高分子電解質膜の温度変化によるイオン伝導度特性を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例3によって製造された高分子電解質膜の温度変化によるイオン伝導度特性を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例4によって製造された高分子電解質膜の温度変化および湿度変化によるイオン伝導度特性を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施例をよる高分子電解質膜及び従来の高分子電解質膜のメタノール透過度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体と、
イオン伝導性高分子と、
を含むことを特徴とする、高分子電解質膜。
【請求項2】
前記ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体におけるポリシルセスキオキサンと共重合されたポリマーは、ポリプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリt−ブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリt−ブチルスチレン、ポリ3−メチルスチレン、ポリ4−メチルスチレン、ポリsec−ブチルスチレン、ポリ−メチルスチレン、ポリtrans−メチルスチレン、ポリ2−クロロスチレン、ポリ3−クロロスチレン、ポリ4−クロロスチレン、及びこれらをなす単量体のうち一つ以上のコポリマーからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項3】
前記ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体におけるポリシルセスキオキサン基のシリコンは、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C20のアルコキシ基、およびハロゲン原子からなる群から選択された一つ以上の疎水性置換基を有することを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜
【請求項4】
前記ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体は、下記化学式1で表される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。

【化1】

ここで、前記化学式1において、
、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して水素、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C20のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、
及びZは、互いに独立して置換または非置換のC−C20のアルキレン基であり、
は、置換または非置換のC−C20のアルキル基であり、
Bは、下記化学式2及び化学式3のうち一つ以上で表示される反復単位であり、

【化2】

【化3】

前記化学式2及び化学式3において、
、R10及びR11は、互いに独立して置換または非置換のC−C20のアルキル基であり、
及びZは、置換または非置換のC−C20のアルキレン基であり、
Arは、置換または非置換のC−C30のアリール基または置換または非置換のC−C30のヘテロアリール基であり、
a及びbはモル分率であって、それぞれ0.05〜0.95であり、a+b=1である。
【請求項5】
前記化学式1で表される構造を有するポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の質量平均分子量は、1000〜20000であることを特徴とする、請求項4に記載の高分子電解質膜。
【請求項6】
前記ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体は、下記化学式4で表される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。

【化4】

【化5】

【化6】

前記化学式4、前記化学式11および前記化学式12において、
a及びbは、モル分率であって、それぞれ0.05〜0.95であり、a+b=1である。
【請求項7】
前記化学式4、前記化学式11および前記化学式12で表される構造を有するポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の質量平均分子量は、1000〜20000であることを特徴とする、請求項6に記載の高分子電解質膜。
【請求項8】
前記ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体におけるポリシルセスキオキサン基の含量は、ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体100質量部を基準として、10質量部〜70質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項9】
前記イオン伝導性高分子は、ポリイミド、ポリアルキルエーテル、ポリエチレンカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ナフィオン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、パーフルオロ化された高分子、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンフルオライド−co−ヘキサフルオロプロピレン、末端がキャッピングされたポリアミド酸、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルケトン)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)、及びこれらをなす単量体のうち一つ以上の共重合体からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項10】
前記ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体の含量は、前記イオン伝導性高分子100質量部を基準として、1質量部〜95質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項11】
固体酸をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項12】
前記固体酸は、下記化学式9または10で表される構造を有することを特徴とする、請求項11に記載の高分子電解質膜。

【化7】

【化8】

【請求項13】
ポリシルセスキオキサン基が導入された共重合体、イオン伝導性高分子、及び溶媒を含む高分子電解質膜形成用の組成物を生成する段階と、
前記高分子電解質膜形成用の組成物を塗布する段階と、
前記塗布された高分子電解質膜形成用の組成物を熱処理する段階と、
を含むことを特徴とする、高分子電解質膜の製造方法。
【請求項14】
前記高分子電解質膜形成用の組成物に含まれる溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、及びN,N’−ジメチルアセトアミドからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項13に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項15】
前記高分子電解質膜形成用の組成物に含まれるイオン伝導性高分子の含量は、高分子電解質膜形成用の組成物を基準として、1質量%〜99質量%であることを特徴とする、請求項13に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項16】
カソードと、
アノードと、
前記カソードと前記アノードとの間に配設された高分子電解質膜と、
を備え、
前記高分子電解質膜は、請求項1〜請求項12のうちいずれかに記載の高分子電解質膜である
ことを特徴とする、燃料電池。
【請求項17】
前記カソードは、白金担持カーボン触媒層を有し、
前記アノードは、白金−ルテニウム担持カーボン触媒層を有する
ことを特徴とする、請求項16に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−220672(P2007−220672A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25769(P2007−25769)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】