説明

高剪断式連続分散装置

【課題】全ての原料に剪断エネルギーを確実に与えることにより、効率的な分散を行う連続式分散装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第1のローター1と第2のローター2とを対面に組み合わせ、2つのローター1、2間の空間に原料を外周方向に通過させて原料を分散する剪断式分散装置であって、第1のローター1を第1の方向R1に回転する第1の回転手段8と、第2のローター2を第1の方向R1とは逆の第2の方向R2に回転する第2の回転手段9とを備え、第1のローター1または第2のローター2の回転中心に前記原料が供給される原料排出口20が設けられている剪断式分散装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よく複数の液体またはスラリー(粉末状の物質と液体の混合物)中の粉末状の物質を分散する連続分散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速回転する円形のローターと、回転しないステーターとの間の狭い空間に、複数の液体またはスラリーを通過させ、高速回転によって発生する高い遠心力と剪断力によって、複数の液体またはスラリー中の粉末状の物質を均一に連続的に分散する装置は公知である(例えば、特許文献1参照)。なお、「分散」とは、スラリー中の粉末状の物質を均一に分散する場合、あるいは、複数の液体を均一に混合する場合を意味するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−153167号公報、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回転しないステーターの壁面は速度がゼロであるため、ステーター壁面近傍の原料には剪断エネルギーが与えられにくく、分散効率が悪いという欠点があった。
また、剪断力によって原料は局所的には分散されるが、大きなスケールでみると分散状態が異なる部分が偏在することになり、均一な混合物を得るためには、大きなスケールで再混合する必要があった。このため、後工程にバッチ式の分散装置を別途設ける必要があった。
また、1回の処理では目的の分散状態に達しない場合は、原料を循環させるか、複数台の装置を接続して、繰り返し分散処理を行う必要があり、新たな循環用の設備や複数台の装置にかかるコスト・設置面積、または処理時間が増大するという問題があった。
本発明は、上記の問題に鑑みて成されたもので、全ての原料に剪断エネルギーを確実に与えることにより、また、剪断作用による局所的な分散機能と大きなスケールの分散機能とを組み込むことにより、効率的な分散を行う連続式分散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る剪断式分散装置は、たとえば図1および図2に示すように、第1のローター1と第2のローター2とを対面に組み合わせ、2つのローター1、2間の空間に原料を外周方向に通過させて原料を分散する剪断式分散装置であって、第1のローター1を第1の方向R1に回転する第1の回転手段8と;第2のローター2を第1の方向R1とは逆の第2の方向R2に回転する第2の回転手段9とを備え;第1または第2のローター1の回転中心に前記原料が供給される原料排出口20が設けられている。
【0006】
このように構成すると、第1のローターと第2のローターとが逆の方向に回転するので、全ての原料に剪断エネルギーを確実に与えることができ、効率的な分散を行う連続式分散装置となる。
【0007】
また、本発明の第2の態様に係る剪断式分散装置は、たとえば図1に示すように、第1の態様に係る剪断式分散装置において、原料排出口20の外周側に第1のローター1の平面21と第2のローター2の平面31とにより隙間3が形成され;隙間3の外周側に、隙間3よりも第1のローター1と第2のローター2との間隔が広くなったバッファ部6が形成され;バッファ部6の外周に、第1のローター1と第2のローター2との間隔をバッファ部6より狭くする外周側面32が第2のローター2に形成される。
このように構成すると、隙間が剪断作用による局所的な分散機能を有し、バッファ部が大きなスケールの分散機能を有するので、効率的な分散を行う連続式分散装置となる。
【0008】
また、本発明の第3の態様に係る剪断式分散装置は、たとえば図1に示すように、第2の態様に係る剪断式分散装置において、外周側面32が、第1のローター1の回転軸8と平行に、あるいは、回転中心方向に傾斜して形成される。
このように構成すると、外周側面が第1のローターの回転軸と平行に、あるいは、回転中心方向に傾斜して形成されるので、バッファ部の容量を超える量の原料が流入しない限り、バッファ部から原料が外周側に流れず、バッファ部に滞留する。よって、バッファ部に滞留している原料に向かって、隙間から新たな原料が高速流入し激しく混ざり合うため、原料がバッファ部で、より均一に分散される。
【0009】
また、本発明の第4の態様に係る剪断式分散装置は、たとえば図4に示すように、第2または第3の態様に係る剪断式分散装置において、外周側面32の先端が、回転中心方向に延伸した張り出し62となっている。
このように構成すると、外周側面の先端が、回転中心方向に延伸した張り出しとなっているので、バッファ部の容量を超える量の原料が流入しない限り、バッファ部から原料が外周側に流れず、バッファ部に滞留する。よって、バッファ部に滞留している原料に向かって、隙間から新たな原料が高速流入し激しく混ざり合うため、原料がバッファ部で、より均一に分散される。
【0010】
また、本発明の第5の態様に係る剪断式分散装置は、たとえば図1に示すように、第2ないし第4のいずれかの態様に係る剪断式分散装置において、隙間3が、原料排出口20に隣接して配置される。
このように構成すると、隙間にある原料に第1のローターおよび第2のローターの回転による遠心力が作用して原料は外周側に流れようとして流速が増し、その内側には負圧が生じ、原料を原料排出口から隙間に吸引する。
【0011】
また、本発明の第6の態様に係る剪断式分散装置は、たとえば図1に示すように、第2ないし第5のいずれかの態様に係る剪断式分散装置において、バッファ部6の外周側に、第1のローター1の平面23と第2のローター2の平面33とにより、隙間3の間隔以下の間隔の第2の隙間4が形成され;第2の隙間2の外周側に、第2の隙間4より第1のローター1と第2のローター2との間隔が広くなった第2のバッファ部7が形成され;第2のバッファ部7の外周に、第1のローター1と第2のローター2との間隔を第2のバッファ部7より狭くする第2の外周側面24が第1のローター1に形成される。
このように構成すると、隙間およびバッファ部に加えて、第2の隙間が剪断作用による局所的な分散機能を有し、第2のバッファ部が大きなスケールの分散機能を有するので、繰り返し分散処理を効率的に行う連続式分散装置となる。
【0012】
また、本発明の第7の態様に係る剪断式分散装置は、たとえば図1に示すように、第6の態様に係る剪断式分散装置において、バッファ部6は第1のローター1が窪むことにより形成され;外周側面32は、第2のローター2に形成され;第2のバッファ部7は第2のローター2が窪むことにより形成され;第2の外周側面24は第1のローター1に形成される。
このように構成すると、第1のローターと第2のローターとに交互の窪みを形成することにより、隙間、バッファ部、外周側面、第2の隙間、第2のバッファ部および第2の外周側面が形成されるので、局所的な剪断と、これよりも大きなスケールの平均化混合を、交互に連続的に行う分散装置の製造が容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1のローターと第2のローターとを対面に組み合わせ、2つのローター間の空間に原料を外周方向に通過させて原料を分散する剪断式分散装置であって、第1のローターを第1の方向に回転する第1の回転手段と、第2のローターを第1の方向とは逆の第2の方向に回転する第2の回転手段とを備え、第1のローターの回転中心に前記原料が供給される原料排出口が設けられているので、全ての原料に剪断エネルギーを効率的に与えることにより効率的な分散を行う剪断式分散装置となる。
また、原料排出口の外周側に第1のローターの平面と第2のローターの平面とにより隙間が形成され、隙間の外周側に、隙間よりも第1のローターと第2のローターとの間隔が広くなったバッファ部が形成され、バッファ部の外周に、第1のローターと第2のローターとの間隔をバッファ部より狭くする外周側面が第1のローターおよび/または第2のローターに形成されるので、局所的な剪断作用の後に大きなスケールの平均化混合作用を発生させ、局所的な剪断作用とこれよりも大きなスケールの平均化混合機能を組み込むことで、効率的な分散が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】2つのローターを組み合わせた状態の断面概略図である。
【図2】装置主要部の断面概略図である。
【図3】本発明及び従来装置の、断面速度分布の模式図である。
【図4】バッファ部の容量を増加させる場合の構造例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、図中、互いに同一又は相当する装置等には同一符号を付し、重複した説明は省略する。本発明は、高速回転する2つのローターを互いに逆方向に回転するように組み合わせ、その間の狭い空間に原料を遠心力によって通過させ、複数の原料を均一に分散させる装置である。図1に示すように、凹凸を有する2枚のローター1・2を、回転中心軸を同一にして、鉛直方向に対向するように設置すると、それぞれの凹凸部の組み合わせによって、狭い隙間3〜5と広い空間6・7が交互に配列される構造となる。ここで、高い剪断力を発生させる狭い空間3〜5を剪断力発生部、これより大きなスケールの混合を行う広い空間6・7をバッファ部と呼ぶことにする。図2に示すように、ローター1・2はそれぞれ中空の回転軸8・9に接続され、これらの回転軸8・9は、軸受15を介し強固に固定された軸受箱16で支えられ(固定方法は図示せず)、ベルト、チェーン、歯車などと接続された電動機(図示せず)で駆動され、その回転方向R1・R2は互いに逆となる。ここでは、回転軸8・9をそれぞれ原料供給口12・14の側から見て、時計方向に回転することとする。回転数は、対象原料や目標とする分散の度合によって、任意に設定することができる。原料供給口12・14に供給された原料は、中空回転軸の中空部を貫流してローター1・2の回転中心に設けられた原料排出口20から2枚のローター1・2の間に供給される。なお、ここでは中空回転軸9の原料排出口は栓10によって原料が流入・流出しないようになっている。
【0016】
本分散装置においては、図1でローター1・2の外径Dは200mmであり、高さh1及びh2はそれぞれ55、15mmである。剪断力発生部3〜5の隙間は0.05〜2mmまで調整が可能である。なお、剪断力発生部3〜5の隙間は同一である必要はなく、ローター1・2の形状・寸法の設計により、目的に応じ適宜変更することができる。たとえば、剪断力発生部3、剪断力発生部4、剪断力発生部5と隙間の間隔を順次狭くすることにより、原料の凝集粒子を順次細かく分解すると、均一に分散しやすくなる。バッファ部6・7の外周側面32・24の角度α・βはそれぞれ50度・70度であるが、この角度に限定されるものではなく、ローター1・2の形状・寸法の設計により、鋭角あるいは直角として、すなわち、回転中心方向(中空回転軸8・9の方向)に傾斜してあるいは中空回転軸8・9と平行に、適宜選定することができる。また、本分散装置の場合の回転数はインバーター制御により0〜1720rpmの間で設定ができるが、電動機、プーリー、ギヤなどの選定によって適宜変更することができる。
【0017】
ここで、図1を参照して、剪断力発生部3・4・5とバッファ部6・7の構成を説明する。上部ローター1の、下部ローター2と対面する面は、原料排出口20の外周に回転軸に垂直な平面21として形成される。平面21の外周側に内周側面22と平面21に平行な平面23と外周側面24とで構成された窪みが形成される。外周側面24は、平面21の面よりも下部ローター2側に延伸し、その先端に平面21に平行な平面25が形成される。下部ローター2の上部ローター1と対面する面には、平面21と平行に対向する平面31が形成され、平面31は内周側面22を越えて外周側に延伸する。平面31から外周側面32が上部ローター1に向けて形成され、外周側面32の先端から平面23に平行に対面する平面33が形成される。平面33は、外周側面24よりも内周側に位置する内周側面34と平面25に平行に対面する平面35とで窪みを形成する。
【0018】
上記の面を有する上部ローター1と下部ローター2とを組み合わせることにより、平面21と平面31とで剪断力発生部3を形成し、平面23と平面33とで剪断力発生部4を形成し、平面25と平面35とで剪断力発生部5を形成する。また、内周側面22と平面23と外周側面32と平面31とで囲まれた領域がバッファ部6を、内周側面34と平面23と外周側面24と平面35とで囲まれた領域がバッファ部7を形成する。外周側面24は、平面21の面よりも下部ローター2側に延伸してバッファ部7を形成するので、バッファ部7の容量が大きくなり、より大きなスケールでの分散による均一化が行われる。
【0019】
なお、上記の例では、外周側面24が平面21の面より下部ローター2側に延伸するものとして説明したが、外周側面24は平面21の面と同じ位置までしか延伸せず、すなわち、平面21と平面25とが同一平面上であってもよい。このように構成すると、上部ローター1に1つの窪みを形成し、下部ローター2に1つの突起(外周側面32と平面33と内周側面34で囲まれた部分)を形成することにより、3つの剪断力発生部3〜5と2つのバッファ部6・7を形成することができ、局所的な剪断と、この局所的部分よりも大きなスケールの平均化混合を、交互に連続的に行う分散装置の製造が容易となる。また、外周側面24は平面21の面の手前側までしか延伸していなくてもよい。
【0020】
また、平面21、23、25、31、33、35は、回転軸に垂直で、互いに平行であるとして説明したが、それぞれ回転軸に垂直ではなく、また、互いに平行でなくてもよい。さらに、剪断力発生部3〜5を形成するために対面する平面同士も平行でなくてもよい。剪断力発生部3〜5の隙間が外周側に向けて狭くなるようにすることにより、原料の凝集粒子を順次細かく分解する構造とすることができる。
【0021】
バッファ部6・7は、剪断力発生部3・4にて局所的な分散を受けた原料を混合するために液を貯留する領域であり、大きな容量を有する。そのために、たとえば、バッファ部6を形成するための平面31の半径方向の長さL1は、平面21と対向して剪断力発生部3を形成する半径方向の長さL2の、少なくとも0.5倍以上、通常は1倍以上の長さとする。また、バッファ部6の高さ(剪断力発生部3の隙間の間隔と内周側面22の高さの和)は、剪断力発生部3の隙間の間隔の、少なくとも3倍以上、通常は5倍以上の高さとする。
【0022】
図1において、原料の流れが矢印で示されている。便宜上、一つの流れしか示していないが、実際にはローター1・2によって構成される空間の至るところで同様の流れが発生している。ここで、再び図2も参照する。ローター1・2が回転している状態で、中空回転軸8に接続され回り止め(図示せず)が施された回転継手11の原料供給口12より原料を供給すると、原料は原料排出口20から、2つのローター1・2の間に供給される。原料は2つのローター1・2から構成される剪断力発生部3、バッファ部6、剪断力発生部4、バッファ部7、剪断力発生部5の順に、遠心力の方向に沿って通過し、ローターの外周の原料排出部13から排出される。原料が遠心力により外周方向に流れ、流速が増すので、原料排出口20は負圧となり、原料排出口20からの原料の流れは促進される。
【0023】
なお、中空回転軸9の排出口の栓10を除去し、原料供給口14から別の原料を供給し、原料供給口12から供給した原料とローター部で混合することもできるが、この場合はローター及び中空軸の中心軸を水平に設置するか、または原料供給用のポンプが必要となる。原料排出口20における負圧は、通常、原料を中空回転軸9の高さだけ吸引するほどに大きくはないからである。
【0024】
また、本分散装置では2つの回転軸はそれぞれ別個の電動機から駆動されるが、歯車などで動力を分配し、1台の電動機で駆動してもよい。これらの電動機、ベルト、チェーン、歯車などと、中空回転軸8・9が回転手段を構成する。
【0025】
次に、原料の分散プロセスについて、図1を用いて説明する。まず原料は、1段目の剪断力発生部3を通過するときに高い剪断力を受け、乳化あるいは微粒子の凝集物の分解がなされる。このとき、2つのローター1・2が両方とも同じ速度で回転しているとすれば、剪断力発生部3のA−A矢視及びB部の原料の速度分布は図3(a)に示すようになり、速度ゼロの部分は発生しない。一方、ローター1・2が片側しか回転しない従来の方式では、下部ローター2を固定とすると図3(b)に示すような速度分布となり、下部ローター2の壁面の速度は回転方向でも遠心力による半径方向でもゼロとなるため、下部ローター2壁面近傍の原料は分散されにくい。本発明では、回転方向の速度がゼロとなる2つのローター1・2の中間位置でも遠心力による半径方向の速度はゼロとはならない。それは、その中間位置の両側で遠心力による半径方向の速度が同じ外側を向いて生じており、その剪断力(粘性)を受ける中間位置も同じ外側向きに引っ張られるからである。速度ゼロとなる部分がないため、原料に確実に剪断力を付与することができ、分散効果が得られる。厳密には、図3(a)A−A矢視に示すように、2つのローター壁面の中間位置では剪断力が弱くなるが、全く速度がない固定ローター壁面とは異なり、高速回転するため速度変動が激しく、分散効果に影響を及ぼすものではない。剪断力発生部で高い剪断力を受けて局所的に乳化あるいは微粒子の凝集物の分解および/あるいは分散がなされた原料は、剪断力発生部3から排出されたあと、1段目のバッファ部6に流入する。バッファ部6には、外周側にローター1・2間の間隔を狭くする外周側面32が形成されているため、バッファ部6に流入した原料はバッファ部の容量を超える量の原料が流入しない限り、バッファ部から流出せず、滞留する。バッファ部6内の原料は、遠心力によってバッファ部6内の外周側面32に押し付けられるが、バッファ部6の外周側面32は図1に示すように流れに対し抵抗となるように傾斜がついているため、原料がこのバッファ部6から排出されるにはバッファ部の容量を超える原料がバッファ部6に流入する必要がある。このとき、先にバッファ部6に流入し滞留している原料は、後に剪断力発生部3からバッファ部6に高速流入してくる原料と激しく混じり合うことになり、局所的に乳化・分散した原料は、この局所的部分よりも大きなスケールでの混合によって平均化される。続いて、原料は2段目の剪断力発生部4とバッファ部7を通過して1段目と同様の分散が行われ、最終の3段目の剪断力発生部5を通過し、さらに分散が行われる。
【0026】
ここで、原料の均一な混合を実現するには、本装置に供給される原料は、前工程の予備混合によって、剪断発生部の最小隙間のスケール以下の乳化や凝集物への分解がなされ、かつ、少なくとも最小剪断部の容量(体積=剪断面積×隙間の大きさ)の単位以下の均一な混合がなされているのが好ましい。剪断発生部3の隙間を通過するスケールで液の乳化や凝集物の分解がなされていないと、剪断発生部3への流入時に、隙間よりも大きなスケールの液滴や凝集物が剪断発生部3の隙間に入り込みにくくなるため不均一な分散や詰まりの原因となったり、過大な応力の発生によって装置に損傷を与える原因ともなる。また、最小剪断部の体積単位の均一な混合とは、予備混合された原料を、最小剪断部と同等の体積分だけ任意に取り出した場合、その体積中の複数の原料の割合が一定ということであり、乳化や微粒子の凝集物の分解には無関係な状態である。たとえば、図1においては最小剪断部の容量は隙間3の部分となり、隙間3が0.1mmのとき、その体積は約0.3mlとなる。なお、本発明の分散機を予備混合に利用する場合は、これらの条件が全て当てはまる必要はない。
【0027】
なお、バッファ部6・7の形状は、図1に示すような外周側面32・24が傾斜する形状に限定されるわけではなく、バッファ部6・7の容量をより増加させるためには、図4のように、バッファ部6・7の外周側面32・24の先端に、回転中心方向(中空回転軸8・9方向)に延伸する張り出し部62・54を有する構造にしてもよい。また、張り出し部62の上部ローター41の平面23と対面する平面63も剪断力発生部4を形成するので、剪断力発生部4の半径方向の長さを長くでき、局所的な分散をより多く行うことができる。同様に、張り出し部54の下部ローター42の平面35と対面する平面55もより大きな剪断力発生部5を形成して、局所的な分散をより多く行うことができる。
【0028】
また、本説明では剪断力発生部は3段、バッファ部は2段の構成となっているが、この段数の組み合わせに限定されるわけではなく、対象原料や目標とする分散の度合によって任意の組み合わせをとることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 上部ローター
2 下部ローター
3〜5 剪断力発生部(隙間)
6、7 バッファ部
8、9 中空回転軸(回転手段)
10 内部栓
11 回転継手
12、14 原料供給口
13 原料排出部
15 軸受
16 軸受箱
20 原料排出口
21、23、25、31、33、35、55、63 平面
24、32 外周側面
62、54 張り出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のローターと第2のローターとを対面に組み合わせ、前記2つのローター間の空間に原料を外周方向に通過させて前記原料を分散する剪断式分散装置であって:
前記第1のローターを第1の方向に回転する第1の回転手段と;
前記第2のローターを前記第1の方向とは逆の第2の方向に回転する第2の回転手段とを備え;
前記第1または第2のローターの回転中心に前記原料が供給される原料排出口が設けられた;
剪断式分散装置。
【請求項2】
前記原料排出口の外周側に前記第1のローターの平面と前記第2のローターの平面とにより隙間が形成され;
前記隙間の外周側に、前記隙間より前記第1のローターと前記第2のローターとの間隔が広くなったバッファ部が形成され;
前記バッファ部の外周に、前記第1のローターと前記第2のローターとの間隔を前記バッファ部より狭くする外周側面が前記前記第2のローターに形成された;
請求項1の剪断式分散装置。
【請求項3】
前記外周側面が、前記第1のローターの回転軸と平行に、あるいは、回転中心方向に傾斜して形成された;
請求項2の剪断式分散装置。
【請求項4】
前記外周側面の先端が、回転中心方向に延伸した張り出しとなっている;
請求項2または請求項3の剪断式分散装置。
【請求項5】
前記隙間が、前記原料排出口に隣接して配置される;
請求項2ないし請求項4のいずれか1項の剪断式分散装置。
【請求項6】
前記バッファ部の外周側に、前記第1のローターの平面と前記第2のローターの平面とにより、前記隙間の間隔以下の間隔の第2の隙間が形成され;
前記第2の隙間の外周側に、前記第2の隙間より前記第1のローターと前記第2のローターとの間隔が広くなった第2のバッファ部が形成され;
前記第2のバッファ部の外周に、前記第1のローターと前記第2のローターとの間隔を前記第2のバッファ部より狭くする第2の外周側面が前記第1のローターに形成された;
請求項2ないし請求項5のいずれか1項の剪断式分散装置。
【請求項7】
前記バッファ部は前記第1のローターが窪むことにより形成され;
前記外周側面は、前記第2のローターに形成され;
前記第2のバッファ部は前記第2のローターが窪むことにより形成され;
前記第2の外周側面は前記第1のローターに形成された;
請求項6の剪断式分散装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−67794(P2011−67794A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222997(P2009−222997)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】