説明

高効率フラーレン基材ラジカル・スカベンジャー

化学的に官能化されたフラーレンは、ラジカル・スカベンジャーとして種々の用途で有用である。これらの化学的に官能化されたフラーレンは、フラーレンケージの高い固有のラジカル捕捉効率の保存の利点、および望ましく改変された化学的および物理的特性を示すフラーレン誘導体と単一異性体の合成の容易さを供する。さらに、それらは、共通の中間体化学に基づいており、そして中間体は、容易に官能化され、そして種々の必要要件に適応される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル・スカベンジャーとして有用なフラーレン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
未誘導フラーレンおよび一部のフラーレン誘導体は、有効なラジカル・スカベンジャーであることが知られている。溶液中のC60およびC60誘導体のラジカルに対する反応性の同一条件下比較は、溶解性の差によるラジカルに対する実際の影響(例えば、反応性酸素種またはROS)のために行われなかった。データ処理され、そしてラジカル・スカベンジャーとして試験されたフラーレン誘導体は、水溶性誘導体であったのに対して、C60は、水不溶性である。したがって、溶媒、移動および他の効果によって、C60に対するこれら水溶性C60誘導体のラジカル捕捉効率の直接比較をすることはできない。
【0003】
60の生来のラジカル捕捉効率は、誘導体化フラーレンにおける付加末端の特性および/または数によって明らかに変化する。特に、誘導体化フラーレンは、フリー・ラジカル・捕捉効率が減少したことを示す。ラジカル捕捉効率は、フラーレン・ラジカル・スカベンジャー分子当たりのラジカル捕捉される反応速度または数に反映される。フラーレン誘導体のラジカル捕捉効率と、付加末端の型および数との間には何ら明瞭な関係が、成立していなかった。誘導体化フラーレンで観察されるラジカル捕捉効率における下降が、反応速度の低下、またはフラーレン当たりのラジカル捕捉数の減少によるかどうかも十分に分かっていない。
【0004】
Chiangら(Chem. Lett., 465-466 (1998))は、低濃度で、平均18個の付加末端を有する水溶性ポリヒドロキシル化フラーレン誘導体が、6個の付加末端を有するヘキサスルホブチル化フラーレンより高いラジカル捕捉効率を有することを報告している。しかし、高濃度では、ヘキサスルホブチル化フラーレンは、はるかに高いラジカル捕捉効率を示す。Chiangは、高濃度でのヘキサスルホブチル化フラーレン誘導体の高ラジカル捕捉効率は、付加末端が少なくなりフラーレンケージの電子親和性変化が小さくなったためと仮定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ラジカル捕捉効率は、置換の増大による活性部位の数の変化、フラーレンケージにおけるひずみの損失による反応性低下、または分子内および/または分子間電子相互作用によるフラーレン反応性部位の電子親和性変化を含めた、多様な要因子、またはこれらの効果の組合わせによって影響されることがある。フラーレンケージにおける付加末端の型および/または数の相異により、フラーレンケージは対する変化し、著しく異なるラジカル捕捉効率を付与しうる。
【0006】
ラジカル捕捉をする炭素−炭素二重結合の周辺での電子求引(例えば、アルコール、カルボニルなど)とオレフィンとの接合は、ラジカル付加速度(および生じたラジカル捕捉効率)を低下させることがある。この低下は、電子求引性誘起により起こると考えられ、そしてそれは、炭素−炭素二重結合の電子密度を変化させ、引き続いて、炭素−炭素二重結合の特性が減少しラジカル付加反応化する。
【0007】
相異するフラーレン誘導体間におけるラジカル捕捉性能の差は、よく分かっていない。ある条件下では、付加末端の多い誘導体は、付加末端の少ない方よりよく作用し、そして他の条件下では、付加末端の少ない方が、付加末端の多い方よりよく機能する。同様に、ある種の条件下では、電子求引基は、非電子求引基よりよく機能する。そのケージに対するフラーレンケージおよび付加末端の相互作用の特性は、現在、フラーレンケージの性能に比べて異なるフラーレン誘導体の関連する性能を技術的に明白に予測するには至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様では、極めて高いラジカル捕捉効率を示すある分野の化合物を特定する。その化合物は、誘導体化への順応性を備えつつ、フラーレン分子の高いラジカル捕捉効率を維持するように、フラーレンケージ固有の物理的および化学的特性を維持する。このような柔軟性は、使用条件で、溶解性、輸送およびその他の特性制御の助けとなる。
【0009】
本発明の別の態様では、目的物からのフリーラジカルの捕捉(または還元)についての方法を提供する。目的物を、ある分野のフラーレン誘導体と反応させ目的物内のフリーラジカルのレベルを減少させる。フリーラジカル・スカベンジャーとして有用なある種の化合物維持を、化学的成分で官能基化し得て、その結果、フラーレンケージのラジカル捕捉効率を維持するために、フラーレンケージの固有の物理的および化学的特性が大きく変化させることなく、置換基フラーレンの化学的および/または物理的特性を変化させうる。
【0010】
本発明の1つの態様では、目的物内で、または目的物上でフリーラジカルを捕捉する方法は、式:
【0011】
【化13】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子より成るフラーレンから構成され、Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、独立して、Xが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホン酸塩および同等物より構成される群から選択される電子求引基である。)
を示す化合物に、目的物を反応させることを含む。
【0012】
1つまたは複数の実施態様では、C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択される。
【0013】
1つまたは複数の実施態様では、C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル炭素であり、そしてR’’は、独立して、いずれかの異種または官能基を保持するアルキルおよびアルキル部分より構成される群から選択される。
【0014】
1つまたは複数の実施態様では、Zは、少なくとも7個の炭素、または少なくとも12個の炭素、または少なくとも16個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分である。
【0015】
1つまたは複数の実施態様では、化合物は、式(F)(C)(X)(Z)(式中、X=
【0016】
【化14】

Fは、フラーレン環であり、そしてnは、1から20までの範囲にあり、そしてRは、いずれかの化学基である)
を示す。
【0017】
1つまたは複数の実施態様では、化合物は、フラーレン環上に2から4個までのC(X)(Z)付加物を含む。
【0018】
1つまたは複数の実施態様では、フラーレンは、約60個から約120個までの炭素原子を含む。フラーレン化合物は、[5,6]フレロイドまたは[6,6]メタノフラーレンでありうる。XおよびZは、異なる。
【0019】
1つまたは複数の実施態様では、Xおよび/またはZは、親油性部分であり、そして親油性部分は、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸アルコール、および脂肪酸アミンより構成される群から選択され、そして化合物は、生体系中で油相じゅうを移動させる能力がある。
【0020】
1つまたは複数の実施態様では、Xおよび/またはZは、親水性部分であり、そして化合物は、生体系中で水相じゅうを移動させる能力がある。
【0021】
1つまたは複数の実施態様では、Xおよび/またはZは、フリーラジカル・スカベンジャーとして独立して有効である化学的部分である。
【0022】
1つまたは複数の実施態様では、Xおよび/またはZは、両親媒性部分である。
【0023】
1つまたは複数の実施態様では、Xは、親油性であり、そしてZは、親水性部分であるか、またはその逆である。
【0024】
1つまたは複数の実施態様では、Xは、親油性であり、そしてZは、フラーレン化合物が両親媒性であるような親水性部分であるか、またはその逆である。
【0025】
本発明の1つの態様では、目的物内または上からフリーラジカルを捕捉する方法は、生体系中に存在するラジカル種を、式:
【0026】
【化15】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子より成るフラーレンから構成され、X’は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより構成される群から選択され;Aは、1個から20個までの炭素原子、または3個から12個までの炭素原子を含有する脂肪族である;Q’は、O、NまたはSであり、そしてQ’が、Nである場合、Nは、いずれの基にも結合されうる;Z’は、C’に結合され、そしてハロゲン、O、NまたはSであり、そしてY’は、Z’に結合され、そのいずれかの化学基またはいずれかの塩である)
を示す化合物と反応させることを含む。
【0027】
1つまたは複数の実施態様では、Z’およびQ’は、Oである。
1つまたは複数の実施態様では、Y’は、少なくとも7個の炭素、または少なくとも8個の炭素、または少なくとも12個の炭素、または少なくとも18個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分である。
【0028】
1つまたは複数の実施態様では、Y’は、フリーラジカル・スカベンジャーとして独立して有効である化学的部分であるか、Y’は、両親媒性部分であるか、またはY’は、糖、ヒスタミン、アミノ酸およびカロテノイドより構成される群から選択される。
【0029】
1つまたは複数の実施態様では、組合わせで−(C’=Q’)(Z’)(Y’)は、カルボン酸(またはカルボン酸塩)、エステル、アミド、無水物、酸ハロゲン化物、ラクトン、またはラクタム種を含む。
【0030】
1つまたは複数の実施態様では、化合物としては、[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)(式中、X’は、フェニルであり、Aは、(CH23であり、Q’は、Oであり、Z’は、Oであり、そしてY’は、CH3である。)が挙げられる。
【0031】
1つまたは複数の実施態様では、化合物としては、フラーレン環を伴うC(X’)((A)(C’=Q’)(Z’)(Y’)の複数付加物が挙げられる。
【0032】
1つまたは複数の実施態様では、フリーラジカルを捕捉する方法は、さらに、目的物を、少なくとも1つの追加のラジカル捕捉化合物と反応させることを含む。
【0033】
1つまたは複数の実施態様では、フリーラジカルを捕捉する方法は、さらに、化合物の有効性を増強または維持するために選択される添加剤を包含する。
【0034】
1つの態様では、生体系中の脂質過酸化を保存または減少させるか、生体系中の酸化的ストレスを減じるか、または生体系中のラジカル媒介化学経路を変える方法を提供する。
【0035】
本発明の1つの態様では、式:
【0036】
【化16】

(式中、環F炭素原子Xは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、少なくとも7個の炭素、または8個の炭素、または12個の炭素、または16個の炭素、または18個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分を含む。)
を示す化合物を提供する。
【0037】
本発明の1つの態様では、式:
【0038】
【化17】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子より成るフラーレンから構成され、Xは、(C’)(R’)nであり、C’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、Xが非電子求引基であるように独立して選択され、そしてn=1、2または3であり、そしてZは、O(CH2CH2O)mCH2CH2OP(式中、Pは、Hまたはアルキルまたはアリールであり、そしてmは、1から100までの範囲にある)を含む。)
を示す化合物を提供する。1つまたは複数の実施態様では、Xは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択される。
【0039】
本発明の1つの態様では、化合物は、式:
【0040】
【化18】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子より成るフラーレンから構成され、Xは、式:
【0041】
【化19】

(式中、Rは、いずれかの化学基であり、そしてnは、1から20までの範囲にあり;そしてZは、(C”)(R”)nであり、そしてC”は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR”は、Zが非電子求引基であるように独立して選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホン酸塩および同等物より構成される群から選択される電子求引基である。)を示す。1つまたはそれより多くの実施態様では、Rは、アルキルであるか、またはRは、少なくとも7個の炭素、または少なくとも8個の炭素、または少なくとも12個の炭素、または少なくとも16個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分である。
【0042】
本発明の1つの態様では、化合物は、式:
【0043】
【化20】

(式中、Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、Xが非電子求引基であるように独立して選択され、そしてn=1、2または3であり、そしてZは、カロテノイド、フラボノイド、アントシアニジン、リポ酸、ユビキノイド、およびレチノイドより構成される群から選択されるラジカル捕捉部分を含む。)を示す。1つまたはそれより多くの実施態様では、Xは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択される。
【0044】
本発明の別の態様では、組成物は、式:
【0045】
【化21】

(式中、Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、Xが非電子求引基であるように独立して選択され、そしてn=1、2または3であり、そしてZは、O(CH2CH2CH2O)mCH2CH2CH2OP(式中、Pは、Hまたはアルキルまたはアリールであり、そしてmは、1から100までの範囲にある)を含む。)を示す。1つまたはそれより多くの実施態様では、Xは、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール部分の群から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明の種々の実施態様は、図面に関して記述され、そしてそれは、例示の目的のために供され、そして本発明を限定することは意図されず、そしてその全範囲は、下で請求項で説明される。
【0047】
種々の設定でのラジカル・スカベンジャーとしてのフラーレンの用途として、それは、フラーレンケージの電子親和性、エネルギーひずみ、反応性部位の数、立体利用性などを決定的に変化させることなく、フラーレンゲージのラジカル捕捉特性の高効率を、可能な最高の範囲まで維持するフラーレン誘導体を形成するのに有用である。さらに、それは、ラジカル・スカベンジャー効率の点で、それらのフラーレン基体と有意差があるとは言えない種々の官能性を示す多様な新たなフラーレン誘導体、例えば親油性、親水性または両親媒性フラーレンの形成に対処するフラーレン誘導体中間体を形成するために有用である。
【0048】
メタノ炭素に対する置換基として1つまたは複数の非電子求引基を有する種々のメタノフラーレンが開示される。フラーレンケージ上の電子求引の欠如または減少は、フラーレン分子のフリーラジカル捕捉能力を維持する助けになる。フラーレンの化学的および/または物理的機能は、フラーレンケージの代わりに、メタノ炭素付加物の変態により調節される。変態は、メタノフラーレンの親油性、親水性、両親媒性または他の特性向上用に供される。
【0049】
メタノフラーレンに関して使用される用語の場合、「付加物」については、それは、フラーレンケージにメチレン基を付加させて、シクロプロパン環を形成させることを意味する。シクロプロパニル付加物中の炭素原子は、メタノ炭素と称される。官能基を、メタノ炭素上の利用可能な部位に結合させうる。
【0050】
用語「フラーレン」は、サイズに関係なく5員または6員炭素環の両方を含むいずれかの閉鎖籠炭素化合物を総称するためにここで使用され、そして限定されないが、フラーレンC60、C70、C72、C76、C78、C82、C84、C86、C90、C92、およびC94を含むことが意図される。
【0051】
電子求引基は、O、N、PまたはSを含む基のようなメタノ炭素原子よりいっそう負に帯電している基である。メタノ炭素に近接近しており、それらは、フラーレンケージ上に電子求引性誘起効果を示しうる。メタノ炭素から除去される1個の炭素である電子求引基も、フラーレン炭素原子に誘起効果を付与することができ、そしてフラーレンから更に遠い距離にあるある種の官能基は、空間で電子求引効果を示しうることが可能である。電子求引基としては、アルファ炭素と二重または三重結合を形成するメタノ炭素に直接結合した炭素原子(「アルファ−炭素」)を有する基が挙げられる。電子求引基としては、COOH、COOR、C(O)SR、CON(H)R、C(O)N(R1)(R2)、CHO、COR、CSR、CN、P(O)(OR)、SO2R、NO2などのようなO、N、PまたはS原子を含有する基が挙げられる。
【0052】
メタノ炭素にぶら下がる1つまたはそれより多くの官能基中にO、NまたはSのような負に帯電している原子に対する二重および三重結合を欠くアルファ炭素を含むことによって例示の非電子求引基を得る。芳香族、アルキル、アルケニルおよびアルキニル・アルファ−炭素を、追加の化学的部分またはHに連結させる。メタノ炭素で電子供与または電子中性部分を直接的に連結させることによって、フラーレンケージの電子的および化学的無欠性は、いっそうよく維持される。電子求引基または他の部分は、フラーレンの固有のラジカル捕捉効率を維持するように、これらの基がフラーレンケージに近接近することなく、フラグメントから少し距離をおいてフラーレンに結びつけられうる。このような電子求引官能基は、所望の溶解性、輸送または結合特性を保有するといった、その分子の他の目的を達成するために望ましいことがある。
【0053】

【0054】
【化22】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子、または約60個から約120個までの炭素原子から成るフラーレンであり;Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、Xが非電子求引基であるように独立して選択され、そしてn=1、2または3であり、そしてZは、(C”)(R”)nであり、そしてC”は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR”は、Zが非電子求引基であるように独立して選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホン酸塩および同等物より構成される群から選択される電子求引基である。)
を示す化合物に、目的物を反応させることにより、フリーラジカルを、目的物上または目的物内で捕捉しうる。
【0055】
1つまたは複数の実施態様では、C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール部分の群から選択され、そしてZは、(C”)(R”)nであり、そしてC”は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR”は、Zが非電子求引基であるように独立して選択される。
【0056】
1つまたは複数の実施態様では、C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール部分の群から選択され、そしてZは、(C”)(R”)nであり、そしてC”は、アルキル炭素であり、そしてR”は、いずれかの異種基または官能基を担持するアルキルおよびアルキル部分より構成される群から選択される。
【0057】
基(C’)(R’)nおよび(C”)(R”)nは、非電子求引官能部分の範囲を明確にする。実施例の代わりに、その基としては、アルキル、環状アルキル、および置換アルキル、アルキルアリール、アルキルエーテル、アルキルアリールエーテル、アルキルチオエーテル、アルキルアリールチオエーテル、アルキルエステル、アルキルアリールエステル、アルキルチオエステル、アルキルアリールチオエステル、アルキルアミド、アルキルアリールアミド、アルキルアミン、アルキルアリールアミン、アルキル無水物、アルキルアリール無水物、炭酸アルキル(またはカルボン酸)および炭酸アルキルアリールが挙げられる。実施例の代わりに、基としては、アリールアルキル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテル、アリールチオエーテル、アリールアルキルチオエーテル、アリールエステル、アリールアルキルエステル、アリールチオエステル、アリールアルキルチオエステル、アリールアミド、アリールアルキルアミド、アリールアミン、アリールアルキルアミン、アリール無水物、アリールアルキル無水物、炭酸アリール(またはカルボン酸)および炭酸アリールアルキルのような置換アリールが挙げられうる。他の置換基は、本発明の範囲内に入ることが意図される。
【0058】
1つまたはそれより多くの実施態様では、化合物1のXおよび/またはYは、親油性(または疎水性)官能性を供する、すなわち、脂質様物質についての親和性を有する化学的部分を含む。脂質としては、水不溶性であること、そしてアルコール、エーテル、クロロホルム、ベンゼンなどのような非極性(または有機)溶媒によって抽出可能であることによって特徴づけられる脂肪様物質が挙げられる。全ては、主要な構成要素として脂肪族炭化水素を含有する。フリーラジカル捕捉で使用するための適切な親油性部分としては、分岐していてもよく、そして、脂質と親和性を示す種々の他の化学基を含みうる長鎖アルカンまたは置換長鎖アルカン(6個またはそれより多くの炭素原子、好ましくは12またはそれより多くの炭素原子)が挙げられる。親油性部分を含有する化合物は、生体系での脂質相、または化学的系での疎水性相を通して、フリーラジカル捕捉化合物の移動に有用である。
【0059】
例示の親油性基としては、脂肪アルコールおよび脂肪エステル、脂肪アミド、イソステアリン酸誘導体のような脂肪アミン部分、またはパルチミン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、アジピン酸ジイソプロピル、パルチミン酸オクチル、パルチミン酸イソプロピル、乳酸セチル、リノシール酸セチル、酢酸トコフェリル、アセチル化ラノリンアルコール、酢酸セチル、オレイン酸グリセリル、オレイン酸メチル、オレイン酸イソブチル、リノレン酸トコフェリル、プロピオン酸アラキジル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ラノリン酸イソプロピル、ネオペンチルグリコール、ジカプリレート/ジカプレート、イソノニルイソノナノエート、イソトリデシルイソノナノエート、ミリスチン酸ミリスチル、オクチルドデカノール、脂肪酸のショ糖エステル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ステアラミド、オレアミド、およびエルカミドのような分子から誘導される官能基が挙げられる。
【0060】
1つまたはそれより多くの実施態様では、化合物1のXおよび/またはYは、親水性官能性を供する、すなわち、水または親水性材料に対して親和性を示す化学的部分を包含する。親水性官能性を供しうる基としては、ポリ−(エチレンオキシド)、モノ−、ジ−またはポリ−ヒドロキシル化アルカン、モノ−、ジ−またはポリ−ヒドロキシル化シクロアルカン、アミノ、アルカン、ジアミノアルカン、モノ−、ジ−またはポリ−サッカイライド、アンモニウム基、アルキル化アンモニウム基、リン酸塩、アルキルリン酸塩、スルホン酸塩、およびアルキルスルホン酸塩が挙げられる。親水性部分を含有する化合物は、生物学的または化学的系での水相じゅうをフリーラジカル捕捉化合物の移動するのに有用である。
【0061】
1つまたはそれより多くの実施態様では、化合物1のXおよび/またはYは、両親媒性官能性を供する化学的部分を包含する。両親媒性官能性は、親油性および親水性の両方を示す分子に該当する。両親媒性官能性を供する基としては、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールn−アルカノール、および他のグリコールが挙げられる。代わりに、両親媒性特性は、それぞれ、化合物1のX−およびY−置換基についての親油性および親水性特性を選択すること、またはその逆によって得ることができる。
【0062】
さらに他の実施態様では、化合物1のXおよび/またはYは、生物機能性を供する化学的部分を含む。したがって、Xおよび/またはYは、糖、ヒスタミン、アミノ酸またはカロテノイドなどでありうる。化合物1のXおよび/またはY基は、フリーラジカルとして独立に有効である化学的部分、例えば、フラベノイド、カロテノイド、アントシアニジン、リポ酸、ユビキノイド、レチノイド、またはビタミンE部分も含みうる。
【0063】
最小限の数の付加物、例えばモノ付加物または2−3個の付加物を有するメタノフラーレンは、かなりの程度まで、フラーレンケージのオレフィン結合のひずみおよび数、立体構造の可用性、および他の特性を維持しつつ、所望の方法でのフラーレンの化学的および物理的特性の変化を可能にする。フラーレンケージに隣接の電子求引基の欠如または減少も、フリーラジカル捕捉効率を維持または増強する。
【0064】
立体障害も、フラーレンケージの少数付加末端を通して最小限にされる。同時に、ここで記述される分子は、フラーレンケージに隣接した一定の配置(メタノ架橋)を維持しつつ、都合よく、フラーレン分子の化学的および物理的機能に対する種々の変態に対処し、そして多様な設定での用途のための新たな高効率フラーレン基材のラジカル・スカベンジャーの信頼性のある合成に対処する。
【0065】
特に、モノ付加物は、フラーレンケージの化学的および物理的特性の低下を最小限とし、そして単一異性体の都合のよい合成に対処する。しかし、ジ、トリ、および高次の付加物は、ここに記述されるラジカル捕捉方法で使用されうる。
【0066】
さらになお、種々の官能性を示す化学的部分がフラーレンに付加されうる共通の付加反応を有するのは有用である。
【0067】
種々のメタノフラーレンは、技術的に周知であり、そしてジアゾアルカン付加反応を通してのこれらの化合物の合成は、簡単な合成化学であり、そして高収量でモノ付加物を提供する利点を有する。この反応は、図1で略図で示される。フラーレン化合物を、ジアゾ化合物2と反応させて、官能化メタノフラーレン1を提供する。ジアゾアルカン付加は、最初に、N2を放出することができ、そして[5,6]フレロイドを得る[6,6]ジアゾリンアダクトを生じ、そしてそれは、[6,6]メタノ架橋フラーレンに異性化されうる。ジアゾアルカン前駆体は、特にその場で形成される。実施例の代わりに、ジアゾ化合物2のXおよびZは、メタノフラーレン化合物としてここに記述されるとおり部分でありうるか、またはそれらは、メタノ炭素の所望のX、Z官能基を形成する別の反応の能力のある反応性基を含有する中間体でありうる。さらに、類似のジアゾアルカン付加反応は、フラーレン籠上に多重メタノ炭素アダクトを形成するために使用でき、そしてフラーレン誘導体は、同じか、または異なるジアゾアルカン前駆体のいずれかを使用する。これは、ここに記述されるフリーラジカル捕捉方法で使用されうる種々に置換されたメタノフラーレン化合物に対する合成経路を供する。
【0068】
フラーレン誘導体[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)3は、ジアゾアルカンが1−フェニル−1−(3−メトキシカルボニル)プロピル)ジアゾメタンである、ジアゾアルカン付加反応を通して形成されるフラーレン誘導体の例である。PCBM3のようなシクロプロパニル基材のフラーレン誘導体(メタノフラーレン)のジアゾアルカン付加による合成は、攪拌しながら、ジアゾ化合物およびフラーレンC60を合わせることによって達成されうる。
【0069】
【化23】

エステル官能基(例えば、化合物3中のメチルエステル)は、図2の反応略図で示される置換経路、図3で示されるトランスエステル化を通して、多量の化合物の都合のよい合成に対処する。PCBM3は、種々の官能性を示す無制限の量の新たなフラーレン誘導体を合成する化学的中間体として使用されうる。化合物3を、最初に、反応段階(a)[水性HCl/ACoH/1,2−ジクロロベンゼン(ODCB)]および(b)[SOCl2/CS2]を使用して、対応の酸塩化物3aに変換させる。その後、酸塩化物3aを、種々の基によって置換して、広範な官能化エステル誘導体を形成する。これの例は、文献から見出されうる(例えば、Hummelenら、J.Org.Chem.1995年、60巻532頁を参照)。したがって、図2では、メチル基を置換して、反応段階(c)[ROH/ピリジン;R=C12]を使用して、C12アルキルエステル4を、あるいは、反応段階(d)[ROH/ピリジン;R=C8174]を使用してポリエチレングリコールエステル5を形成する。代わりに、反応段階(e)[ROH/Bu2SuO/1,2−ジクロロベンゼン/熱]を使用して、PCBM3を、トランスエステル化させて、トランスエステル化化合物6を得る。この方法による化合物4および5を含めた数種の化合物の合成は、下に記述される。
【0070】
いずれかの場所に、またはいずれかの数でカルボン酸エステルを有するいずれかのフラーレン化合物のトランスエステル化についての好ましい方法は、反応のための触媒としてジブチルチンオキシドの使用である。この反応は、1つのエステル基から別のエステル基への高い変換を与え、そして軽度の脱保護条件(例えば、別のエステル部分の存在下でアセテート基を除去する場合)のためにも使用されうる。化合物3aについて示されるような酸ハロゲン化物を使用する経路に勝る直接的トランスエステル化の利点は、所望のカルボン酸エステル基を作製するために要求される反応の数の減少である。酸触媒のようなフラーレンエステルで試した他のトランスエステル化技術は、満足な変換を与えない。陰イオン性トランスエステル化も、フラーレンが陰イオンと反応し、そして副産物を得るので、フラーレンエステルに十分でない。ジブチルチンオキシドは、予期以上に、フラーレンのトランスエステル化についての温和な条件下で、非常に十分な収量を示す。
【0071】
代わりに、ジアゾアルカン付加反応は、フラーレン分子との反応の前に、所望の官能化ジアゾ化合物を形成することによって使用されうる。図4Aおよび4Bを参照、適切なジアゾ化合物が、アルキルエステル官能化メタノフラーレン7、およびアリール基8の置換基に結合したエステル基を含有するアリール官能化メタノフラーレンを供するように選択される。エステル基も、アリール基に直接的に結合されうる。
【0072】
上記方法は、全てジアゾアルカン付加反応を通して、以下の一般型1
【0073】
【化24】

(式中、環Fは、約20個から約240個の炭素原子を包含するフラーレンを包含し、Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、Xが非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そしてZは、(C”)(R”)nであり、そしてC”は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR”は、Zが非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホネートおよび同等物より構成される群から選択される電子求引基である。)
のフラーレン分子に付加された付加物の一部(例えば、図2および3に示されるとおり)または全て(例えば、図4Aおよび4Bで示されるとおり)を形成することに対処する。
【0074】
Y’が、アリール基上のいずれかの置換基であり;Arは、いずれかのアリール基であり;mは、ゼロより大きいか、または等しく、そしてアリール基上の独立の置換基Y’の総数を示し;n=1から20まで;Z’は、いずれかの異種原子(例えば、O、N、S)であり;X’は、いずれかの化学基であり;そしてFは、20から240個まで(好ましくは60個から120個まで)の炭素原子を有する閉鎖籠全炭素分子(フラーレン)である化合物1の特定の実施態様は、下に(化合物7)示される。
【0075】
【化25】

化合物1中のX位置にアリール官能基を含有するメタノフラーレンは、フリーデルクラフトのアシル化のような一般芳香族化学が、ジアゾ前駆体を製造するために使用されうるので、前駆体ジアゾアルカンから都合よく合成されうる。さらに、アリール置換メタノフラーレンは、[5,6]フレロイドから[6,6]メタノ架橋に光異性化するのにいっそう扱いやすいことが観察された。
【0076】
化合物1の別の特定の実施態様は、下に示される(化合物8)。長および短アルキル鎖が予想され、そしてアルキル鎖は、約2から20個までの間の炭素原子を含みうる。さらに、Rは、アリールまたは1−20個の炭素を有する長鎖の分岐状または線状の飽和または不飽和炭素鎖でありうる。
【0077】
【化26】

本発明に使用されるフラーレン分子は、いずれかのフラーレン、好ましくは、一般にC60、C70、C72、C76、C78、C82、C84、C86、C90、C92、およびC94のような合成されたフラーレンでありうる。様々のフラーレンが、異なる用途のために他のものよりいっそう望ましい可能性がある。
【0078】
上に記述される分子は、限定されないが、反応性酸素種:・OH、・O-2、ROO-・、NOXラジカルのような、生物学上重要なラジカル;トコフェロール、ユビキノールおよびアスコルビルラジカルのような、ラジカルと反応する生物学的ラジカル・スカベンジャーの産物;食品のような、重合体および他の系での自己酸化および自己酸化の産物;タバコの煙のような環境源のラジカル;および自動車排気ガスのような環境燃焼源のようないずれかの型のラジカルを捕捉するのに有用である。さらに、本発明の分子は、ラジカル重合反応におけるラジカルを捕捉して、共重合体を形成するか、架橋結合を増強するか、または重合体安定化剤として作用するために使用されうる。
【0079】
種々の用途で、例えば、生体系での用途のために、フラーレンを、特定の環境に向けるか、または目的物にすることが望ましい。例えば、目的物は、皮膚または他の膜表面または臓器でありうる。本発明は、このような方向づけについての化学的官能性を示す新たな分子を合成するのに都合のよい手段を提供する。例としては、それに限定されないが、親油性、親水性、両親媒性、またはバイオサイト特異的(酵素または抗体)化合物が挙げられる。例えば、化合物4は、親油性であり、そしてフラーレンを、細胞膜のような親油性環境に方向付けるために、および/または細胞膜を通過させるため、および/または皮膚の角質層に、哺乳類の皮膚の親油性相を通して浸透させるために使用されうる。化合物を、担体伝搬体中の目的物に送出することができる。適切な担体伝搬体としては、製薬および化粧用材料の皮膚用途で特に使用されるものが挙げられる。
【0080】
別の例として、さらに高度に親水性の部分を、哺乳類皮膚の親水性相中のような親水性領域に対するフラーレンの方向付けのために、または血流における生物分布、および/または胃腸管を通しての吸収に対処するために、化合物5(またはポリ−(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、モノ−、ジ−、またはポリ−サッカライド、または増強された親水性について他の親水性部分)中でと同様に接着させうる。さらに別の例として、化合物1におけるX部分にある親水性部分、そしてY位置にある親油性部分を、あるいはその逆で、または化合物7または9における置換の代替点のいずれかで、結合させることによって、両親媒性分子を、都合よく合成しうる。
【0081】
上の親水性および親油性部分を含めた、方向付けのいずれかの構成要素、または他のいずれかのこのような部分を、X、Z、X’、Y’、またはZ’でのような化合物1、7または9における置換位置のいずれかで置換させうる。代わりに、それに限定されないが、モノクローナル抗体のような生物学上の方向付けのために重要な他の部分を、化合物1、7または9における、X、Z、X’、Y’、またはZ’で置換させうる。
【0082】
同様に、他の化学的または物理的官能性は、以下の:
1.油、アルコール、水、または芳香族化合物などのような媒体における溶解性が増強されること;
2.二価分子の形態での合わせた抗酸化剤の形成のために、他の抗酸化剤(例えば、カロテノイド、フラビノイド、アントシアニジン、リポ酸、ユビキノイド、レチノイド)のような、別の化学的反応性、例えば、他のラジカル捕捉分子の添加、
3.所定のラジカルに対するラジカル捕捉効率が増強されたこと、または様々のラジカル(例えば、フラーレンがそれに対して効果的である、一重酸素およびペルオキシルの両方に対して、有効な単一ラジカル捕捉分子を供するために化合物1、7または9におけるX、Z、X’、Y’またはZ’で置換されたペルオキシルでなく一重の酸素の効果的なスカベンジャーであるβ−カロテン)に対して効果的な有効な多官能性ラジカル・スカベンジャーを提供すること。
4.共重合体の形成のために、ラジカル重合反応でラジカルを捕捉すること、共重合体を形成するか、架橋結合を増強させること、または重合体安定化剤として作用すること;
5.光学的吸収が増強されることのような物理的特性の変態;
6.一重励起状態のフラーレンを急冷し、その結果、フラーレンの励起三重状態に対する系間架橋は、起こらず、そしてそれにより一重項酸素は発生されないこと
のような、化合物1、7または9における、X、Z、X’、Y’、またはZ’での置換により、フラーレン・ラジカル捕捉分子に付加されうる。
【0083】
本発明の分子を、それに限定されないが、本発明の分子の塩;本発明の分子を含有する配合物のような、これらの分子を含有する組成物中で使用でき、そしてそれに限定されないが、油/水または水/油エマルジョンのような個人的手入れで使用される組成物;リポソーム配合物など;シクロデキストリン複合体などのような宿主−ゲスト封入物が挙げられる。
【0084】
本発明の分子は、トコフェロール、アスコルベート、ユビキノン、カロテノイド、アントシアニジン、フラビノイド、リポ酸などのような、他の反応性化合物、特に他のラジカル・スカベンジャーとの組合わせで組成物中に使用されうる。本発明のフラーレン分子は、相乗的化学的効果を提供でき、それによりフラーレンは、組成物の他の置換基ラジカル・スカベンジャーの内の1つまたはそれより多くの効率を増強または保存する。さらに、ここに記述されるフラーレンは、種々の環境に対して、上の化合物1、7または9における、X、Z、X’、Y’、またはZ’でのラジカル・スカベンジャーの化学的置換によりここに明記されるもののような別のラジカル・スカベンジャーを方向付けるために、および/または種々の環境での効率を保存または増強させるために使用されうることが予想される。本発明のフラーレンは、安定化剤、界面活性剤、乳化剤、保存剤、UV吸収剤、抗炎症剤、または抗微生物剤のような他の配合剤と合わせても使用されうる。
【実施例1】
【0085】
タバコの煙中に存在するラジカル(優勢に、ペルオキシル・ラジカル)に対するメタノフラーレン誘導体の有効性を調査するために、試験を行った。タバコの煙を、ガラスフィットを通して、ラジカル・スカベンジャーを溶解させた溶媒(デカリン)中に通気させた。その後、その煙は、この溶媒を励起し、そしてラジカルによる酸化により蛍光を放つ蛍光プローブ(ジヒドロロダミン6G(DHR 6G)、モレキュラー・プローブズから購買した)が使用された第二のフラスコを通過させた。図5を参照。蛍光信号の変動は、タバコの煙のラジカル含有量に直接的に対応し、そしてしたがって、ラジカル・スカベンジャーによるラジカルの減少の基準を測定する。10秒毎に信号を測定した。図6Aは、モレキュラーA、すなわち、PCBM(化合物3)と、一般に使用されるラジカル・スカベンジャーであり、そしてペルオキシル・ラジカルに対して有効であることも知られているビタミンEとについてと同一条件下で測定された蛍光信号の比較を示す。
【0086】
PCBMは、ビタミンEより、タバコの煙の中に存在する明らかに多くのラジカルを明確に捕捉することを理解しうる。ペルオキシル・ラジカルは、タバコの煙中に存在する主要なラジカル種であるので、本発明の分子は、ペルオキシル・ラジカル酸化が脂質過酸化での主要な経路である生物系での酸化的損傷を防止するのにも有効である。水酸ラジカルも、タバコの煙に存在し、そして同様に、生体系内の酸化的ストレスの主な原因である。
【実施例2】
【0087】
タバコの煙中に存在するラジカル(優勢に、ペルオキシル・ラジカル)を捕捉するラジカル・スカベンジャーとしてビタミンEの変化する濃度に対して、実施例1での試験装置の感度を調査するために、試験を行った。タバコの煙を、円筒形の粗いガラスフィットを通して、ラジカル・スカベンジャーを溶解させた溶媒(デカリン)中に通気させた。その後、その煙は、この溶媒を励起し、そしてラジカルによる酸化により蛍光を放つ蛍光プローブが使用された(ジヒドロロダミン6G(DHR 6G)、モレキュラー・プローブズから購買した)第二のフラスコを通過させた。図6Bを参照。蛍光信号の変動は、タバコの煙のラジカル含有量に直接的に対応し、そしてしたがって、ラジカル・スカベンジャーによるラジカルの減少の基準を測定する。10秒毎に信号を測定した。図6Bは、一般に使用されるラジカル・スカベンジャーであり、そしてペルオキシル・ラジカルに対して有効であることも知られている150μMと300μMとのビタミンEについてと同一条件下で測定された蛍光信号の比較を示す。ビタミンE濃度を150μMから300μMまでに倍増することで、非常に小さな歪みを与えることが、明らかに見出されうる。したがって、300μMPCBMと300μMビタミンEとの間の蛍光信号における差は、ラジカル捕捉効率における非常に大きな差に対応する。
【実施例3】
【0088】
PCBMのトランスエステル化によるPCB−C18([6,6]−フェニルC16−酪酸オクタデシルエステル)の合成を記述する。
【0089】
1.90gのPCBM(化合物3)、6.0gの1−オクタデカノール、250mgのジブチルチンオキシド、および50mLのオルト−ジクロロベンゼンの混合物を、3日間、N2雰囲気下で80℃で加熱した。反応液を、冷却させ、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶出液としてシクロヘキサン/トルエン=1:1(v/v))によって粗製物を単離した。二次カラム・クロマトグラフィー(シリカゲル;溶出液としてシクロヘキサン/トルエン=1:1(v/v))によって、粗製フラーレン誘導体を、さらに精製した。>99%純度である分画を(HPLC解析)を合わせ、そして真空で濃縮した。残渣を、オルト−キシレン中に再溶解させ、フラーレン誘導体を、メタノールで沈殿させ、そして遠心分離により単離した。沈殿物を、メタノールおよび少量のペンタンで繰り返し洗浄し、各回、遠心分離により材料を沈殿させた。真空での乾燥後、822mgのPCB−C18を得た。
【実施例4】
【0090】
PCBMのトランスエステル化によるPCB−C12(化合物4)の合成を記述する。
【0091】
1.83gのPCBM(化合物3)、4.6gの1−オクタデカノール、148mgのジブチルチンオキシド、および20mLのオルト−ジクロロベンゼンの混合物を、24時間、N2雰囲気下で80℃で加熱した。反応液を、冷却させ、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶出液としてシクロヘキサン/トルエン=1:1(v/v))によって生成物を単離した。PCB−C12を含有する分画を合わせ、そして真空で濃縮した。得られた材料を、15mLのクロロベンゼン中に再溶解させ、フラーレン誘導体を、メタノールで沈殿させ、そして遠心分離により単離した。沈殿物を、メタノールで洗浄し、真空での乾燥させた。洗浄および乾燥のこの手段を、もう一回繰り返した。その後生成物を、20mLのクロロホルム中に再溶解させ、メタノールで沈殿させ、そして遠心分離により単離した。沈殿物を、メタノールで洗浄し、そして真空で乾燥させた。これで、微細な黒色粉末として1.58gのPCB−C12(化合物4)を得た。
【実施例5】
【0092】
PCBMのトランスエステル化によるPCB−EO4(化合物5)の合成を記述する。
【0093】
182mgのPCBM(化合物3)、2.0mLのテトラエチレングリコール、11mgのジブチルチンオキシド、および5mLのオルト−ジクロロベンゼンの混合物を、3日間、N2雰囲気下で95℃で加熱した。反応液を、冷却させ、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶出液としてクロロホルム)によって生成物を単離した。その後、それを、二次カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶出液として最初にクロロホルム/酢酸エチル=95:5(v/v)、その後クロロホルム/酢酸エチル(9:1(v/v)、その後クロロホルム/酢酸エチル(4:1(v/v))によってさらに精製した。その生成物を含有する分画を合わせ、そして真空で濃縮した。得られた材料を、15mLのトルエン中に再溶解させ、メタノールで沈殿させ、メタノールで洗浄し、真空で乾燥させた。続いて、フラーレン誘導体を、もう一度メタノールで洗浄し、そして真空で乾燥させた。これで、105mgのPCB−EO4(化合物5)を得た。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】ジアゾ化合物との反応による置換メタノフラーレンの製造についての全般的図式である。
【図2】アシルハロゲン化物置換によるメタノフラーレンの誘導体化に関する反応図式を示す。
【図3】PCBM分子からトランスエステル化によるメタノフラーレンの誘導体化に関する反応図式を示す。
【図4A】本発明の1つまたはそれより多くの実施態様による誘導体化メタノフラーレンの直接形成に関する反応図式を示す。
【図4B】本発明の1つまたはそれより多くの実施態様による誘導体化メタノフラーレンの直接形成に関する反応図式を示す。
【図5】フリーラジカル・スカベンジャーを測定するために使用される装置の図解である。
【図6A】種々のフリーラジカル捕捉分子の存在下で、ラジカルとの反応により蛍光を発する染料との、タバコの煙に含まれるラジカルの反応から得られる蛍光のプロットである。
【図6B】種々のフリーラジカル捕捉分子の存在下で、ラジカルとの反応により蛍光を発する染料との、タバコの煙に含まれるラジカルの反応から得られる蛍光のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子を包含するフラーレンを包含し、
Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、独立して、Xが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そして
Zは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホネートより構成される群から選択される電子求引基である。)
を示す化合物に、目的物と反応することを包含する、目的物内で、または目的物上でフリーラジカルを捕捉する方法。
【請求項2】
C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より成る群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル炭素であり、そしてR’’は、独立して、異種基または官能基を保持するアルキルおよびアルキル部分より構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Zは、少なくとも8個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Zは、少なくとも12個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
Zは、少なくとも16個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
【化2】

(式中、nは、1から20までの範囲にあり、そしてRは、いずれかの化学基である)
である請求項3、4、5、または6に記載の方法。
【請求項8】
化合物は、フラーレン環上に2から4個までのC(X)(Z)付加物を包含する請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項9】
フラーレンは、約60個から約120個までの炭素原子を包含する請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項10】
フラーレン化合物は、[5,6]フレロイドを包含する請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項11】
フラーレン化合物は、[6,6]メタノフラーレンを包含する請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項12】
XおよびZは、異なる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
XおよびZの内の1つまたはそれより多くは、親油性部分を包含する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
親油性部分は、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸アルコール、および脂肪酸アミンより構成される群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
化合物は、生体系で油相内を移動させる能力がある請求項13に記載の方法。
【請求項16】
XおよびZの内の1つまたはそれより多くは、親水性部分を包含する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
化合物は、生体系で水相内を移動させる能力がある請求項16に記載の方法。
【請求項18】
XおよびZの内の1つまたはそれより多くは、フリーラジカル・スカベンジャーとして独立して有効である化学的部分である請求項1に記載の方法。
【請求項19】
XおよびZの内の1つまたはそれより多くは、両親媒性部分である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
X=X’およびZ=(A)(C’=Q’)(Z’)(Y’)、そして
X’は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより構成される群から選択され;
Aは、1個から20個までの炭素原子を含有する脂肪族基であり;
Q’は、O、NまたはSであり;
Z’は、ハロゲン、O、NまたはSであり、そしてZ’は、C’に結合され、そして
Y’は、Z’に結合されるいずれかの化学基であり;
またはそれのいずれかの塩である請求項1に記載の方法。
【請求項21】
フラーレンは、約60個から約120個までの炭素原子を包含する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
フラーレン化合物は、[5,6]フレロイドを包含する請求項20に記載の方法。
【請求項23】
フラーレン化合物は、[6,6]メタノフラーレンを包含する請求項20に記載の方法。
【請求項24】
Aが、3個から12個までの炭素原子を含有する請求項20に記載の方法。
【請求項25】
Z’およびQ’は、Oである請求項20に記載の方法。
【請求項26】
Y’は、少なくとも8個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
Y’は、少なくとも12個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分である請求項25に記載の方法。
【請求項28】
Y’は、少なくとも16個の炭素を有する線状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素部分である請求項25に記載の方法。
【請求項29】
Y’は、フリーラジカル・スカベンジャーとして独立して有効である化学的部分である請求項20に記載の方法。
【請求項30】
Y’は、両親媒性部分である請求項20に記載の方法。
【請求項31】
Y’は、糖、ヒスタミン、アミノ酸およびカロテノイドより構成される群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項32】
組合わせで−(C’=Q’)(Z’)(Y’)は、カルボン酸(またはカルボン酸塩)、エステル、アミド、無水物、酸ハロゲン化物、ラクトン、またはラクタム種を包含する請求項20に記載の方法。
【請求項33】
化合物は、[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)を包含する請求項20に記載の方法。
【請求項34】
化合物は、フラーレン環とのC(X’)((A)(C’=Q’)(Z’)(Y’)の2つまたはそれより多くの付加物を包含する請求項20に記載の方法。
【請求項35】
さらに、目的物を、少なくとも1つの追加のラジカル捕捉化合物にさらすことを包含する請求項1、2、3または20に記載の方法。
【請求項36】
化合物が、さらに、化合物の効力を増強または保存するために選択される添加剤を包含する請求項1、2、3または20に記載の方法。
【請求項37】
生体系に存在するラジカル種を、式:
【化3】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子を包含するフラーレンを包含し、
Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、独立して、Xが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そして
Zは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホン酸塩および同等物より構成される群から選択される電子求引基である。)
を示す化合物と反応させることを包含する、生体系におけるラジカル指向性化学的経路を変化させる方法。
【請求項38】
C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル炭素であり、そしてR’’は、独立して、異種基または官能基を保持するアルキルおよびアルキル部分より構成される群から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項40】
X=X’およびZ=(A)(C’=Q’)(Z’)(Y’)、そして
X’は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより構成される群から選択され;
Aは、1個から20個までの炭素原子を含有する脂肪族基であり;
Q’は、O、NまたはSであり;
Z’は、ハロゲン、O、NまたはSであり、そしてZ’は、C’に結合され、そして
Y’は、Z’に結合されるいずれかの化学基であり;
またはそれのいずれかの塩である請求項37に記載の方法。
【請求項41】
生体系に存在するラジカル種を、式:
【化4】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子を包含するフラーレンを包含し、
Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、独立して、Xが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そして
Zは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホン酸塩および同等物より構成される群から選択される電子求引基である。)
を示す化合物と反応させることを包含する、生体系における酸化的ストレスを減じる方法。
【請求項42】
C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル炭素であり、そしてR’’は、独立して、アルキルおよび置換アルキル部分より構成される群から選択される請求項41に記載の方法。
【請求項44】
X=X’およびZ=(A)(C’=Q’)(Z’)(Y’)、そして
X’は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより構成される群から選択され;
Aは、1個から20個までの炭素原子を含有する脂肪族基であり;
Q’は、O、NまたはSであり;
Z’は、ハロゲン、O、NまたはSであり、そしてZ’は、C’に結合され、そして
Y’は、Z’に結合されるいずれかの化学基であり;
またはそれのいずれかの塩である請求項41に記載の方法。
【請求項45】
生体系を、式:
【化5】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子を包含するフラーレンを包含し、
Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、独立して、Xが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そして
Zは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホン酸塩および同等物より構成される群から選択される電子求引基である。)
を示す化合物にさらすことを包含する、生体系における脂質過酸化を防止または減じる方法。
【請求項46】
C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立に、Zが、非電子求引基であるように選択される請求項45に記載の方法。
【請求項47】
C’は、アリール炭素であり、そしてXは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル炭素であり、そしてR’’は、独立して、アルキルおよび置換アルキル部分より構成される群から選択される請求項45に記載の方法。
【請求項48】
X=X’およびZ=(A)(C’=Q’)(Z’)(Y’)、
X’は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより構成される群から選択され;
Aは、1個から20個までの炭素原子を含有する脂肪族基であり;
Q’は、O、NまたはSであり;
Z’は、ハロゲン、O、NまたはSであり、そしてZ’は、C’に結合され、そして
Y’は、Z’に結合されるいずれかの化学基であり;
またはそれのいずれかの塩である請求項45に記載の方法。
【請求項49】
生物学的に適合性のある担体;および
式:
【化6】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子を包含するフラーレンを包含し、
Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、独立して、Xが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そして
Zは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホン酸塩および同等物より構成される群から選択される電子求引基である。)
を示す化合物を包含する組成物。
【請求項50】
X=X’およびZ=(A)(C’=Q’)(Z’)(Y’)、
X’は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより構成される群から選択され;
Aは、1個から20個までの炭素原子を含有する脂肪族基であり;
Q’は、O、NまたはSであり;
Z’は、ハロゲン、O、NまたはSであり、そしてZ’は、C’に結合され、そして
Y’は、Z’に結合されるいずれかの化学基であり;
またはそれのいずれかの塩である請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
担体が、皮膚に対する用途のために選択される請求項49に記載の組成物。
【請求項52】
XまたはZは、皮膚に対する用途、および皮膚の角質層中に、または角質層を通って皮膚の深層までの送出のために選択される請求項49に記載の組成物。
【請求項53】
化合物が、いずれかの利用可能な程度まで、角質層を浸透しない請求項49に記載の組成物。
【請求項54】
XまたはZが、重合体を包含する請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
XまたはZが、重合体を包含する請求項1に記載の方法。
【請求項56】
【化7】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子を包含するフラーレンを包含し、
Xは、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択され、そしてZは、少なくとも7個の炭素を有する線状または分岐状で飽和または不飽和炭化水素部分を含有する。)
を包含する化合物。
【請求項57】
【化8】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子を包含するフラーレンを包含し、
Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、独立して、Xが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そして
Zは、O(CH2CH2O)mCH2CH2OP(式中、Pは、Hまたはアルキルまたはアリールであり、そしてmは、1から100個までの範囲内にある。)を含有する。)
を包含する化合物。
【請求項58】
Xは、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択される請求項57に記載の化合物。
【請求項59】
【化9】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子を包含するフラーレンを包含する。)
【化10】

(式中、Rは、いずれかの化学基であり、そしてnは、1から20個までの範囲内にあり;および
Zは、(C’’)(R’’)nであり、そしてC’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、そしてR’’は、独立して、Zが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であるか、またはZは、アルデヒド、ケトン、エステル、無水物、ニトリル、アミド、チオアルデヒド、チオケトン、チオエステル、アミド化エステル、イソシアニド、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン、スルホネートおよび同等物より構成される群から選択される電子求引基である。)
を包含する化合物。
【請求項60】
Rは、アルキルである請求項59に記載の化合物。
【請求項61】
Rは、少なくとも7個の炭素を有する線状または分岐で飽和または不飽和炭化水素部分である請求項59に記載の化合物。
【請求項62】
【化11】

(式中、環Fは、約20個から約240個までの炭素原子を包含するフラーレンを包含し、
Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、独立して、Xが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そして
Zは、カロテノイド、フラボノイド、アントシアニジン、リポ酸、ユビキノイド、およびレチノイドより構成される群から選択されるラジカル捕捉部分を含む。)
を包含する組成物。
【請求項63】
Xは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択される請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
【化12】

(式中、Xは、(C’)(R’)nであり、そしてC’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族炭素より構成される群から選択される炭素原子であり、R’は、独立して、Xが、非電子求引基であるように選択され、そしてn=1、2または3であり、そして
Zは、O(CH2CH2CH2O)mCH2CH2CH2OP(式中、Pは、Hまたはアルキルまたはアリールであり、そしてmは、1から100までの範囲内にある。)を含有する。)
を包含する組成物。
【請求項65】
Xは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリール部分より構成される群から選択される請求項64に記載の化合物。
【請求項66】
トランスエステル化反応のための触媒としてジブチルチンオキシドを使用し、反応混合物中のフラーレン誘導体の溶解性を増大する助溶媒または溶媒を使用して、または使用せず、いずれかの場所に、いずれかの置換基またはいずれかの数でカルボン酸エステルを有するいずれかのフラーレン化合物をトランスエステル化する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2007−520458(P2007−520458A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544136(P2006−544136)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/042327
【国際公開番号】WO2005/058002
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(504068384)ナノ−シー,インク. (7)
【Fターム(参考)】