説明

高吸油性合成雲母粉体の製造方法

【課題】高吸油性の合成雲母粉体を製造する方法を提供する。
【解決手段】合成雲母粉体を強酸性水溶液と接触させて処理する。強酸性水溶液のpHが1未満であることが好適である。また、強酸性水溶液の水素イオン濃度が0.25mol/L以上であることが好適である。処理温度は20〜100℃が好適である。また、強酸性水溶液との接触時間が100時間以内であり、高吸油性合成雲母粉体の吸油量が110ml/100g以上であることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成雲母の製造方法、特に合成雲母を強酸性条件下で処理することにより吸油性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成雲母は、塗料や樹脂などの分野において使用されており、また、白色度、光沢などにおいて優れた性質を有し、伸展性や付着性なども良好であるため化粧料の分野で汎用されている。
しかしながら、その吸油能についてはそれほど高くはなく、十分とは言えなかった。このため、ファンデーションなどのメークアップ化粧料の仕上がりや持ちなどにおいて未だ改善の余地があった。
【0003】
一方、特許文献1には、合成雲母粉体を酸またはキレート剤の水溶液と接触させることにより、粒子端面がささくれだち且つ粒子端面が2枚以上にへき開し薄葉化した合成雲母粉体が得られ、この合成雲母粉体が油分散性に優れることが記載されている。
しかしながら、特許文献1には吸油性の向上については記載されておらず、また強酸性条件下で処理することも記載されていない。
【特許文献1】特開昭63−183962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は、吸油能の高められた合成雲母粉体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明者等が鋭意検討を行った結果、合成雲母粉体を強酸性水溶液中で処理することによりその吸油量を大きく向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる高吸油性合成雲母粉体の製造方法は、合成雲母粉体を強酸性水溶液と接触させて処理することを特徴とする。
本発明の方法において、強酸性水溶液のpHが1未満であることが好適である。
また、強酸性水溶液の水素イオン濃度が0.25mol/L以上であることが好適である。
【0006】
また、強酸性水溶液との処理温度が20〜100℃であることが好適である。
また、強酸性水溶液との接触時間が100時間以内であり、高吸油性合成雲母粉体の吸油量が110ml/100g以上であることが好適である。
本発明にかかる化粧料は、前記何れかに記載の方法で得られた吸油量が110ml/100g以上の高吸油性合成雲母粉体を配合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、合成雲母粉体を強酸性水溶液と接触させることにより、合成雲母粉体の吸油量を向上させることができ、110ml/100g以上、さらには120ml/g以上の高吸油性合成雲母粉体を得ることができる。本高吸油性合成雲母粉体をファンデーションなどの化粧料に配合することにより、従来の合成雲母粉体を配合した場合に比べて、仕上がり感や化粧持ちを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
合成雲母粉体の吸油量は、その種類などにもよるが100ml/100g以下であり、通常は60〜80ml/100gである。
本発明においては、合成雲母粉体を強酸性水溶液に接触させて処理することにより、その吸油量を向上させることができる。また、加熱しながら処理すると、より短時間で吸油量を向上することができる。例えば、吸油量約60ml/100gの合成雲母粉体を約50℃の10%塩酸中で約5時間処理することにより、約130ml/100gという非常に高い吸油能を有する合成雲母粉体とすることができる。
【0009】
本発明によれば、酸の強さ、処理温度、処理時間を調節することによって、合成雲母粉体の吸油能を所望のレベルにまで高めることができる。例えば、合成雲母粉体の吸油量を1.5倍以上、さらには2倍以上にまで高めることができる。また、化粧料用粉体としては、110ml/100mg以上、さらには120ml/100g以上とすることが好ましい。
【0010】
処理時間は、酸濃度や処理温度、目的とする吸油量によって変わるが、通常は1時間以上処理する。酸の強さや処理温度は、速やかに110ml/100mg以上、さらには120ml/100g以上の高吸油量にまで向上させることができるように、決定することが望ましい。具体的には100時間以内、好ましくは50時間以内、さらには25時間以内に所望の吸油量とできるように設定することが好適である。
例えば、本発明で用いる強酸性水溶液が塩酸の場合、その濃度が1%以上であることが好適である。1%未満では、加熱条件下で長時間処理しても吸油量がなかなか向上せず、非効率的である。より好ましくは5%以上、さらには10%以上の塩酸である。
【0011】
1%塩酸のpHは約0.6、10%塩酸のpHは約−0.8である(20℃実測値)。このように、本発明で用いる強酸性水溶液のpHをpHメーターにて測定すると1未満、さらには0未満となるが、このような強酸性領域では厳密なpH値の測定は困難となることが多い。1%塩酸の解離度(20℃)は約1、比重は約1g/cm、分子量は36.5であるから、1%塩酸の水素イオン濃度(計算値)は0.27mol/Lと算出できる。このことから、本発明で用いる強酸性水溶液はpH1未満、あるいは水素イオン濃度が0.25mol/L以上とすることが好適である。
なお、本発明において用いる強酸の種類は特に限定されず、塩酸の他にもその水溶液のpHが1未満、あるいはその水素イオン濃度が0.25mol/L以上とできる水溶性の強酸であれば何れも用いることができる。例えば、硫酸、硝酸などが例示できる。また、2種以上の酸を用いてもよい。
【0012】
本発明において、強酸性水溶液で処理する際の温度は、通常20〜100℃の範囲とすることができるが、高温の方が吸油量の向上が速やかに進行するので好ましい。20℃より低温では、強酸水溶液を用いても吸油量の向上に非常に時間がかかり、効率的でない。好ましくは25℃以上、さらには40℃以上である。
【0013】
前記特許文献1では、その製造例において、酸として1mol/Lのクエン酸水溶液、リンゴ酸水溶液などを用いている。これら水溶液のpHはそれぞれ1.4、1.6と弱酸性であり、水素イオン濃度に換算すると0.04mol/L以下に過ぎない。このような弱酸性条件下では、長時間加熱処理しても吸油量はほとんど向上しない。例えば、1mol/L(23wt%)クエン酸水溶液中、100℃で100時間処理しても、吸油量はほとんど変化しない。これは、水素イオン濃度が小さすぎるためと考えられる。
【0014】
また、図1は10%塩酸中50℃で5時間処理した合成フッ素金雲母粉体の電子顕微鏡写真(倍率20,000倍)である。図1のように、本発明で得られる高吸油性合成雲母粉体は、粒子端面に微粒子が単独であるいは連続的に付着したような形跡が認められる。このような形跡は処理前の合成雲母粉体には見られなかったものであり、強酸処理により現れたものである。この微粒子の正体については明確にはなっていないが、合成雲母粉体の端面からの溶出したシリカではないかと思われる。
特許文献1の合成雲母粉体は、粒子端面にささくれ及び薄葉化した特徴を有しているが、本発明で得られた高吸油性合成雲母粉体にはこのような特徴は認められない(図1参照)。よって、本発明にかかる高吸油性合成雲母粉体は、特許文献1の合成雲母粉体と形状的にも異なる。
【0015】
酸の強さあるいは処理温度が高くなるほど、所望の高吸油量にまで達する時間を短縮することができる。本発明者らの検討では、35%塩酸で100時間処理しても、得られた合成雲母粉体の色調や使用感触は処理前の合成雲母粉体と比べて損なわれることはなかった。
【0016】
次に、本発明で出発原料となる合成雲母粉体について説明する。合成雲母とは、溶融法、水熱法若しくは、固体間反応法によって得られるフィロケイ酸塩鉱物である。従来、良質の結晶の合成雲母粉体は、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、フッ素等を含有する化合物を一定の割合で混合し、これを溶融、晶出、冷却後、機械的粉砕を行うことにより得ている。合成雲母は以下の一般式で示される。
1/3〜12〜3(Z10)F
(式中XはNa、K、Li、Ca2+、Rb2+、Sr2+からなる群より選ばれる1種以上のイオンを表わし、YはMg2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Al3+、Fe3+、Li、からなる群より選ばれる1種以上のイオンを表し、ZはAl3+、Si4+、Ge4+、Fe3+、B3+からなる群より選ばれる1種以上のイオンを表す。)
【0017】
このようなものとして例えば、次のようなものが挙げられる。
KMg(AlSi10)F カリウム金雲母
KMg2 1/2(Si10)F カリ四ケイ素雲母
KMgLi(Si10)F カリウムテニオライト
NaMg(AlSi10)F ナトリウム金雲母
NaMgLi(Si10)F ナトリウムテニオライト
NaMg2 1/2(Si10)F ナトリウム四ケイ素雲母
Na1/3Mg2 2/3Li1/3(Si10)F ナトリウムヘクトライト
【0018】
合成雲母粉体の一般的製造方法は、溶融合成法によって得られる数mm〜数cmの層状結晶体を乾式の粉砕機、例えばジョークラッシャー、ハンマークラッシャーで粗粉砕後、さらに微粉砕機で粉砕したものである。例えば合成フッ素金雲母の場合、無水ケイ酸約40部、酸化マグネシウム約30部、酸化アルミニウム約13部及びケイフッ化カリウム約17部を混合した後1,400〜1,500℃で溶融し、更に1,300〜1,400℃で晶出して合成フッ素金雲母を得る。得られた合成フッ素金雲母の鉱塊を粉砕し、要すれば分級して合成フッ素金雲母粉体を得る。このようにして得られる合成雲母粉体の形状は不定形板状で、粒子端面形状は直線的である。
【0019】
本発明においては、上記の一般的製法で得られた合成雲母粉体を出発原料とし、これを前記のように強酸性水溶液と接触させることにより、高吸油性合成雲母粉体とする。
鉱塊を粉砕する場合は、一般的には粗粉砕した後、微粉砕するが、上記強酸性水溶液との接触は粗粉砕後でも、微粉砕後でもいずれでもよいが、微粉砕・分級した後に接触させるのが効果の面で優れている。
本発明において処理される合成雲母粉体の粒径は特に制限されず、用途によって適宜選択すればよい。一般的には厚さ方向が0.05〜2μmであり、面方向は2〜60μmである。
【0020】
合成雲母粉体を強酸性水溶液と接触させる方法は、例えば撹拌機による撹拌、エアレーション浸漬等の公知のあらゆる方法が適用できる。
【0021】
強酸性水溶液と接触処理後は、濾過や遠心分離等の公知の方法により固液分離し、得られた粉体を洗浄、乾燥することにより、高吸油性合成雲母粉体が得られる。
また、高吸油性合成雲母粉体のフッ素溶出量を低減させるために、公知の処理を組み合わせて行ってもよい。例えば、特公平7−115858号公報のように、得られた高吸油性合成雲母粉体を600〜1350℃で熱処理することができる。化粧料分野で使用する合成雲母粉体は、100℃、1時間の熱水溶出試験におけるフッ素イオン溶出量が20ppm以下であることが使用基準とされているので、化粧料分野において使用する場合には、本発明の高吸油性合成雲母粉体もこの基準を満たしていることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の高吸油性合成雲母粉体は必要に応じて公知の表面処理を行うこともできる。例えば、シリコーン処理、金属石鹸処理、脂肪酸処理、界面活性剤処理等の表面処理を1つ以上行ってもよい。
【0023】
本発明の高吸油性合成雲母粉体を化粧料に配合すると、従来の合成雲母粉体を配合した場合に比べて、肌に塗布した際の仕上がりや化粧持ちを向上することができる。
本発明の高吸油性合成雲母粉体の化粧料への配合量は、化粧料全量中の1〜100質量%とすることができる。
【0024】
本発明の化粧料としてはフェーシャル化粧料、メーキャップ化粧料、ヘア化粧料等広い範囲の化粧料が含まれ、特にメーキャップ化粧料、例えばファンデーション、粉白粉、アイシャドー、ブラッシャー、化粧下地、ネイルエナメル、アイライナー、マスカラ、口紅、フェイスパウダー等に好適である。
【0025】
本発明の化粧料には、前記の合成雲母粉体の他に、通常化粧料に用いられる他の成分を必要に応じて適宜配合することができる。例えばタルク、カオリン、セリサイト、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪ソウ土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸ストロンウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、窒化ホウ素、セラミクスパウダー等の無機粉末、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリ四弗化エチレンパウダー、ジスチレンベンゼンポリマーパウダー、エポキシパウダー、アクリルパウダー、微結晶性セルロース等の有機粉体、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料、γ酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラツク等の無機黒色系顔料、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料、群青、紺青等の無機青色系顔料、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色酸化チタン被覆雲母等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号及び青色404号等の有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料、クロロフィル、β−カロチン等の天然色素、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、セレシン、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセロール、トリヤシ油脂肪酸グリセロール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセロール、トリヤシ油脂肪酸グリセロール、オリーブ油、アボガド油、ミツロウ、ミリスチン酸ミリスチル、ミンク油、ラノリン等の各種炭化水素、シリコーン油、高級脂肪酸、油脂類のエステル類、高級アルコール、ロウ類等の油性成分、アセトン、トルエン、酢酸ブチル、酢酸エステル等の有機溶剤、アルキッド樹脂、尿素樹脂等の樹脂、カンファ、クエン酸アセトルトリブチル等の可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、保湿剤、香料、水、アルコール、増粘剤、薬効成分等が挙げられる。
【0026】
本発明による化粧料の形態は、粉末状、ケーキ状、ペンシル状、スチック状、軟膏状、液状、乳液状、クリーム状等であることができ、特に制限されない。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合量は特に指定のない限り質量%で示す。また、本発明で用いた試験方法は次の通りである。
【0028】
(1)吸油量の測定
JISK5101−13−1吸油量(精製あまに油法)に準拠し測定した。具体的にはガラス板に試料粉体を2g測り取り、精製あまに油をビュレットから4,5滴ずつ徐々に加える。その都度、パレットナイフで精製あまに油を試料に練りこむ。これを繰り返し、精製あまに油及び試料の塊ができるまで滴下を続ける。以後、1滴ずつ滴下し、ペーストが滑らかな硬さになったところを終点とする。終点の基準としては、ペーストが割れたり、ぼろぼろになったりせず広げることができ、かつガラス板に軽く付着する程度とする。
【0029】
(2)pHの測定
ガラスビーカーに測定する溶液を計りとり、テフロン(登録商標)コーティングされたスターラーにて均質に攪拌しながら、pH測定器(TOA−DKK製PHL−10)で測定した。
【0030】
試験例1 酸濃度
合成フッ素金雲母粉体(平均粒子径約12μm、アスペクト比約35、吸油量62ml/100g)を、0.01〜35質量%濃度の塩酸水溶液に添加して、10質量%濃度のスラリーを調製した。このスラリーを、50℃で所定の時間加熱した後、脱水し、水で洗浄後、乾燥(120℃、5時間)した。得られた粉体について、吸油量を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
(表1)

【0032】
表1のように、塩酸濃度が小さすぎると100時間加熱処理しても吸油量はほとんど向上せず、吸油量を110ml/100g以上とすることはできなかった。
これに対して、1%塩酸水溶液では50時間以内に120mg/ml以上にまで吸油量が向上し、10%塩酸水溶液では5時間以内に約130ml/100g以上にまで吸油量が向上した。
10%塩酸中50℃で5時間処理した合成フッ素金雲母粉体の電子顕微鏡写真(倍率20,000倍)を図1に示す。図1のように、吸油性が向上した本発明の合成雲母粉体は、粒子端面に微粒子が単独であるいは連続的に付着したような形跡が認められた。
【0033】
試験例2 処理温度
試験例1において、処理温度を変えて同様に試験を行った。酸水溶液としては10質量%濃度塩酸水溶液を用いた。結果を表2に示す。
(表2)

【0034】
表2のように、何れの温度でも吸油量は時間と共に大きくなったが、処理温度が低いと吸油量向上に非常に時間がかかってしまう。従って、速やかに吸油量を向上させるためには、処理温度が20〜100℃、さらには25℃以上、特に40℃以上であることが好適である。
【0035】
試験例3 酸の種類
酸水溶液として1mol/Lクエン酸水溶液(pH=1.4)、1mol/Lリンゴ酸水溶液(pH=1.6)をそれぞれ用い、処理温度100℃で、試験例1と同様に試験を行った。
その結果、表3のように、何れの酸水溶液で100時間処理しても、吸油量はほとんど向上しなかった。このように、弱酸性水溶液中で加熱処理しても、吸油量を効率的に向上させることはできないことが理解される。
【0036】
(表3)

【0037】
表4は、試験例1において、10質量%濃度の塩酸水溶液の代わりに、10質量%硫酸水溶液、10質量%硝酸水溶液あるいは10質量%酢酸水溶液を用いて、50℃で5時間処理を行った場合の結果である。塩酸、硫酸及び硝酸の場合(何れもpH測定値は0未満)には、何れも130ml/100g以上にまで吸油量が向上した。これに対して、酢酸(pH=2.2)では吸油量はほとんど向上せず、100時間の加熱処理でも吸油量は、73ml/100gと低いままであった。
【0038】
(表4)

【0039】
配合例1 パウダーファンデーション
(組成)
(1)合成雲母粉体 61.4質量%
(2)タルク 20.0
(3)酸化チタン 7.0
(4)赤色酸化鉄 0.5
(5)黄色酸化鉄 1.0
(6)黒色酸化鉄 0.1
(7)流動パラフィン 7.0
(8)シリコンオイル 2.0
(9)ソルビタンセスキオレート 1.0
(10)防腐剤 適量
(11)香料 適量
【0040】
上記組成で常法に従って配合例1のパウダーファンデーションを調製した。合成雲母粉体として、試験例1で10%塩酸中50℃5時間処理して得られた高吸油性合成フッ素金雲母粉体(吸油量131ml/100g)を用いた。
また、未処理の合成フッ素金雲母粉体(吸油量62ml/100g)を用いたパウダーファンデーションをコントロールとして同様に調製した。
【0041】
専門パネル20名により、右半分の顔面には配合例1、左半分の顔面にはコントロールを塗布してもらい、仕上がり及び化粧持ちについて下記の基準で評価を行った。
(評価基準)
◎:コントロールに比べてよいと評価したパネルが17名以上。
○:コントロールに比べてよいと評価したパネルが13〜16名。
△:コントロールに比べてよいと評価したパネルが10〜12名。
×:コントロールに比べてよいと評価したパネルが9名以下。
【0042】
表5に示すとおり、本発明で得られた高吸油性合成雲母粉体を配合することにより、化粧持ちや仕上がりが向上した。
(表5)
――――――――――――――――
化粧持ち ◎
仕上がり ◎
――――――――――――――――
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にかかる製造方法(10%塩酸中50℃5時間処理)で得られた高吸油性合成雲母粉体の電子顕微鏡写真(20,000倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成雲母粉体を強酸性水溶液と接触させて処理することを特徴とする高吸油性合成雲母粉体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、強酸性水溶液のpHが1未満であることを特徴とする高吸油性合成雲母粉体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、強酸性水溶液の水素イオン濃度が0.25mol/L以上であることを特徴とする高吸油性合成雲母粉体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の方法において、強酸性水溶液との処理温度が20〜100℃であることを特徴とする高吸油性合成雲母粉体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の方法において、強酸性水溶液との接触時間が100時間以内であり、高吸油性合成雲母粉体の吸油量が110ml/100g以上であることを特徴とする高吸油性合成雲母粉体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の方法で得られた吸油量が110ml/100g以上の高吸油性合成雲母粉体を配合したことを特徴とする化粧料。


【図1】
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【公開番号】特開2008−13407(P2008−13407A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186847(P2006−186847)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】