説明

高周波エネルギを用いた閉塞血管再疎通術

慢性完全閉塞(CTOs)、特に治療が困難な慢性完全閉塞を治療する方法および装置。CTO再疎通は、閉塞の両側に配置された順行性および逆行性ガイドワイヤ間の閉塞に対して行われる高周波焼灼を用いて実現されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して閉塞内腔の治療に関し、より詳しくは高周波エネルギを用いて人体における重度または慢性完全閉塞血管を貫通する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性完全閉塞(CTO)は、血管の完全閉塞であり、また通常は時機を逃さず治療されなければ深刻な結果をもたらす。閉塞は、粥状プラークまたは古い血栓が原因となることがある。冠状動脈のCTOsを治療する一般的な処置の一つは、経皮経管冠動脈形成(PTCA)である。PTCA術中に、小さな切開が通常、鼠径部になされる。ガイドワイヤを通じてカテーテルを誘導することは、大腿動脈内に導入されるとともに、閉塞へ進められる。しばしばゆっくりとした操作でガイドワイヤは閉塞を貫通することができる。次にバルーンが先端に付いた血管形成カテーテルがガイドワイヤを越えて閉塞へ進められる。バルーンが膨らまされ、アテローマを分離または粉砕している。PTCA術に含まれる一般的なステップのいくつかは、対向外側血管における造影剤の同時圧入、バックアップ力を得ることまたはガイドワイヤの安定化(それはカテーテルを操作する追加要員を請うことがある)、プラークを貫通すること、穴を開けること又はガイドワイヤを回転して押し密集プラークを貫くことなどである。密集プラークにより受けるしばしば強い抵抗のため、人は堅いワイヤを使用することを強いられることがある。場合によっては、ワイヤは、治療手段を必要としている血管壁を刺すことがある。
【0003】
CTOsに対する最も一般的な経皮冠動脈インターベーション(PCI)の失敗の様式は、病変を貫通して遠位部血管の真腔内にガイドワイヤをうまく通すことができないことである。今まで、一般的なガイドワイヤの試みが失敗した後の、CTOの最善な治療に関しては意見の一致がない。CTOsに対する異なる対策および特定の装置が開発されており、内膜下の追跡および側枝手法を用いたリエントリー、並列ワイヤ手法、IVUSガイド手法、逆行性アプローチなどを含んでいる。
【0004】
機械的切断または振動、および、レーザ又は超音波又は高周波(RF)エネルギ焼灼のような、機械的およびエネルギ系手法はまた、硬質石灰化閉塞を通してガイドワイヤを通すことに対して提案されている。これらの装置の大部分は、ガイドワイヤまたはカテーテル装置の先端にエネルギを局所的に適用することによって機能し、閉塞に焼灼を生じさせる。それは慎重に行われて、閉塞を貫いてチャネルを形成している。チャネルが形成された時点で、ガイドワイヤがバルーンカテーテルを適所にガイドするのに使用される。
【0005】
RFエネルギは、組織を、凝固、切断又は焼灼するのに広く用いられている。単極および双極の両方の形態において、導電性電極は、治療すべき組織に接触する。単極方式において、アクティブ電極は、治療すべき組織に接触して配置されており、また大きな表面積を有するリターン電極は、アクティブ電極から距離を置いて患者に位置している。双極方式において、前記アクティブおよびリターン電極は、互いに極めて接近しており、治療すべき組織を囲んでいる。しばしば、電極アレイは、RF場の浸透深さのより良い制御、したがって組織が加熱される温度に関する制御を提供するために用いられている。各方式に関しては多くの欠点がある。例えば単極配置において、電極間の大きな物理的分離のために、電極部位での局所的な燃焼に関する多くの報告がある。これは、電極の一つが血管壁の内部にある場合、明らかに望ましくない。別の深刻な問題は、血栓を生じる可能性があることである。電極と接触している組織は、凝固または焼灼されることがある。血管壁内に電極が存在する場合、危険な血栓を生じる可能性は極めて高い。
【0006】
上記問題を解決しようとする試みにおいて、種々の装置および電極構成が下記の特許に記載されている。特許文献1および特許文献2は、カテーテルのRF電極を用いて病変を貫通することを開示している。これらの特許は、閉塞と接触しているカテーテルの遠位端のところにある双極電極アッセンブリを開示している。また特許権者は、RFエネルギの適用が、閉塞を小さくするとともに、ガイドワイヤが閉塞を貫通しやすい状態にすることをクレームしている。この方法は、注意深く閉塞を追跡すること及び焼灼処理が、血管壁または正常組織への外傷を回避するために必要であるという欠点を有する。それは、閉塞の代わりに正常細胞を通して電流が短絡する可能性が高いからである。特許文献2は、複合電極アレイを用いることにより、この欠点をある程度は解決する。しかしながら、この装置は、閉塞を通してチャネルが予め形成されることを必要とする。したがって、前記装置は、このチャネルを横断するガイドワイヤを通すことができる。それは必ずしも簡単ではない。
【0007】
ヒルズマンなどの特許文献3は、血管系内の閉塞の焼灼を可能にするレーザカテーテル装置を開示している。このシステムは、上記のものと同様の欠点、ガイドシステムの必要性、正常細胞に対する焼灼の可能性、装置の複雑さ(したがってコスト)などを有する。
【0008】
既存装置が有する主要問題の一つは、エネルギ配給部材の角度および位置を追跡する機構がない場合、焼灼エネルギが血管系壁にダメージを与えてしまう可能性である。従来技術において、エネルギ配給部材を追跡および操作する問題に取り組むいくつかの装置が存在する。ホールなどの特許文献4は、磁気操作および誘導システムを開示しており、リターン電極が人体と接触して外部に配置されている単極構造において又はリターン電極が中央ワイヤ電極を取り囲んでいる双極構造において、先端に、RFエネルギを運ぶ焼灼装置を向けている。
【0009】
ラフォンテームなどの特許文献5は、機械的切断装置を開示している。ここで、前記誘導は、組織のインピーダンスを接触状態で測定することにより提供されている。前記誘導システムは、狭窄組織と血管壁との間のインピーダンスの違いを検知するとともに、切断要素を閉塞へ向かわせる。
【0010】
しかしながら、これらの代替策は、最も困難なCTOsに対して満足のゆく結果をもたらさない。硬質石灰化閉塞の場合、血管再開通術は、面倒であり、また時間がかかることがある。したがって、閉塞物質を焼灼または破壊する方法の改善の必要性があり、それは安全、効果的な、および迅速なものである。現在の技術の欠点がなくCTOを再疎通させるであろう、代替技術および装置を有することは有益である。
【0011】
再疎通させるのが困難なCTOsは、病変血管の蛇行構造が原因か、狭窄の近位端がガイドワイヤにとって貫通するのが難しいことが原因か、またはCTOの別の特徴であり、それは標準的な方法を失敗しやすいものとし、CTOsを再疎通させる新しいアプローチが有効となるであろう。近年、併用された順行性−逆行性アプローチが慢性閉鎖に対して提案されている(特許文献6)。前記同時継続中の出願に開示された方法は、CTOsを貫通するエネルギの使用が有効であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,366,443号
【特許文献2】米国特許第5,419,767号
【特許文献3】米国特許第5,514,128号
【特許文献4】米国特許第6,911,026号
【特許文献5】米国特許第6,416,523号
【特許文献6】米国出願番号第11/706,041号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
種々の方法および装置が、慢性完全閉塞の治療において、一般に直面する問題の一部を解決するために提供されている。この発明の一態様は、前記閉塞に順行性および逆行性方式でガイドワイヤを組合せて進めることにより、及び、閉塞の近位および遠位端間にRFエネルギを適用することにより、閉塞した血管をうまく再疎通する方法および装置を提供することにある。前記閉塞を貫通して前記RFエネルギを適用することは、双極配置を用いることにより実現されている。ここで、一方の電極は、順行性ガイドワイヤに位置されており、また前記双極配置を構成する他方の電極は逆行性ガイドワイヤに位置されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本発明は、順行性方式で第一縦材を閉塞の近位端を通して進める工程と、逆行性方式で第二縦材を前記閉塞の遠位端を通して進める工程と、前記順行性および逆行性ガイドワイヤの遠位端間にエネルギを適用する工程と、前記閉塞を局所的に焼灼する工程と、ガイドワイヤが進むことのできるチャネルを形成する工程と、を備えた閉塞血管再疎通方法を開示している。別の実施形態において、前記順行性ガイドワイヤは、その遠位端に展開可能な捕捉機構を有することができるとともに、展開時は順行性ガイドワイヤを回収することができる。
【0015】
別の態様において、この発明は、RF電極を含む遠位端を有する順行性縦材と、第二RF電極を含む遠位端を有する逆行性縦材と、を備えた閉塞血管再疎通カテーテルアッセンブリ、及びRF発生器に接続された前記カテーテルアッセンブリの近位端に関する。さらに、温度測定要素は、順行性および逆行性縦材の遠位端に設けることができる。前記RF発生器は、予め定められた時間の間またはセット条件が満たされるまで、組織を治療するようにプログラムすることができる。この条件の一つは、閉塞が、予め定められた温度に達するまでとすることができる。別の条件は、前記閉塞のインピーダンスとすることができる。
【0016】
別の態様において、本発明は、一以上の以下のもの:、順行性ガイドワイヤ、逆行性ガイドワイヤ、拡張装置、捕捉装置、および注入カテーテルを備えた閉塞血管再疎通キットである。ここで、少なくとも一つのこれらの装置は、少なくとも一つの電極を含む。さらに、この装置の近位端は、RF発生器と結合するように構成されている。
【0017】
本発明の別の態様は、前記装置及びシステムに対応する方法を含む。
【0018】
本発明は別の効果および特徴を有し、それは添付図面を併用すると、以下の本発明の詳細な説明及び添付クレームから容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は縦材に接続されたRF発生器の概略図である。
【図2】図2は縦材の特徴を示す。
【図3A】図3Aは、双極RF並びに併用順行性及び逆行性アプローチを用いたCTO再疎通に含まれる工程を示す。
【図3B】図3Bは、双極RF並びに併用順行性及び逆行性アプローチを用いたCTO再疎通に含まれる工程を示す。
【図4】図4は塞栓保護機構を備えた縦材の実施形態の例を示す。
【図5A】狭小血管又は閉塞を通して縦材の前進又は位置決めを可能にするカテーテルの長さの少なくとも一部に沿って構造的に構成された縦材を示す。
【図5B】狭小血管又は閉塞を通して縦材の前進又は位置決めを可能にするカテーテルの長さの少なくとも一部に沿って構造的に構成された縦材を示す。
【図5C】狭小血管又は閉塞を通して縦材の前進又は位置決めを可能にするカテーテルの長さの少なくとも一部に沿って構造的に構成された縦材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明は、多くの特定のものを含むが、これらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の異なる実施例および態様を示しているに過ぎない。当然のことながら、本発明の範囲は、上記の詳細に説明されない別の実施形態を含む。当業者にとって明らかな種々の別の修正、変更、および変化は、本明細書に記載された本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の本発明の方法および装置の配置、動作、および詳細においてなし得る。
【0021】
本実施形態は、閉塞内腔、詳しくは慢性完全閉塞を再疎通する順行性および逆行性部材を通して伝えられるRFエネルギの使用を組合せている。本明細書に記載された方法およびシステムは、閉塞を横切って双極電極配置を構築する順行性および逆行性アプローチを利用することにより、閉塞を貫通するのが困難なものを再疎通する。このアプローチは、RF電極の両方が閉塞の同じ側にある、一般的な双極RF治療法で生じかねないような、血管壁の穴開き又は損傷可能性を最小にする。電極は閉塞の両側に分布しているので、RF治療により剥離された組織(すなわち閉塞)は、電極間にかなり含まれている。これはまた、ユーザが閉塞への治療を局所的とすることを可能にしている。
【0022】
同一発明者による、同時係属中の特許文献6に開示されているように、それは全体が本書に組み込まれるものであり、管理された順行性および逆行性追跡(CART)法において、前記順行性アプローチは、体内のチャネルを利用している。このチャネルは、心外膜チャネル、心房間チャネル、内部中隔チャネル(中隔側枝とも称される)、又はバイパスグラフトとすることができる。CART法の基本コンセプトは、閉塞を通してチャネルを形成することである。それは、好ましくは局所的な切開を用いて、閉塞に順行性および逆行性にアプローチすることによるものである。
【0023】
併用順行性および逆行性アプローチは、病変を貫通するのが困難なものを貫通することにおいて効果的であるものの、エネルギ、例えばRFエネルギを用いて、管理された方式で組織を焼灼又は変化させることは、病変を貫通するのが困難なものを貫通することに役立つことが報告されている。この管理されたエネルギの展開は、電極の双極配置を用いて実現されている。ここで、一方の電極は順行性要素に位置され、かつ、双極配置を構成する他方の電極は逆行性要素に位置されている。これらの電極はまた、リターン電極またはアクティブ電極と称される。それらはまたそれぞれ、アノードおよびカソードと称される。電極はまた、アレイ状(複合電極)に配列されている。ここで、電極配置は、FR場の浸透深さに対して、より良い制御をもたらす。そして、それによって組織温度を制御する能力を提供している。
【0024】
図1は、RFエネルギを用いた閉塞血管再疎通システムを示す。前記システムは、閉塞にRFエネルギを運ぶ縦材100aおよび100bを備える。図1に示されるように、縦材100aは順行性部材としての役割がある。また縦材100bは逆行性部材としての役割がある。RF発生器10(コントローラとも称される)は、縦材100aおよび100bにもたらされるRFエネルギの供給源としての役割がある。縦材100aおよび100bは、ガイドワイヤ、カテーテル、マイクロカテーテル、または拡張カテーテルとすることができる。好適な実施形態において、縦材100aおよび100bは、ガイドワイヤである。したがって、以下の説明では、用語「ガイドワイヤ」は、縦材100aおよび100bを指して用いられる。本明細書で用いられる用語「ガイドワイヤ」は、任意の別のタイプの縦材を含むことが意図されていることが理解される。
【0025】
RF発生器10からガイドワイヤ100aおよび100bへRFエネルギを与えるため、ピグテール20は、その近位端がRF発生器10に接続しているとともに、その遠位端がコネクタ30内で終端している。コネクタ30は、標準コネクタであり、そのコネクタはRF発生器10の入力および出力信号をガイドワイヤ100aおよび100bに結合している。
【0026】
ガイドワイヤ100aおよび100bは、十分なねじれ剛性および縦方向柔軟性を有するように構成されて、他方の縦材に向けてまたはそれらの任意の組合せで、閉塞を通して進むとともに、電極を血管壁から離れる方向に位置決めする。
【0027】
図2に示されるように、順行性および逆行性ガイドワイヤ100aおよび100bはそれぞれ、遠位端に導電性電極105aおよび105bを有している。一実施形態において、電極105aおよび105bは、それぞれのガイドワイヤ100aおよび100bの片側に位置している。したがって、手術医師に自由度を与えることにより、まだRFエネルギを血管壁から離して向けているうちに、ガイドワイヤの電極のない側が血管壁(必要であれば)に接触できるようにする。また、これは、RFエネルギを血管壁から離して向ける構成を可能にし、それによってRFの血管壁への損傷可能性を最小にする。一実施形態において、一以上のガイドワイヤは、アレイ状に配列された、複数の電極を備えている。
【0028】
導電性ワイヤ(図示省略)は、電極105aおよび105bをコネクタ30に接続して、RFエネルギをRF発生器10から電極105aおよび105へ運ぶ。ガイドワイヤの外側はそれぞれ、非導電性層115aおよび115bで被覆されており、それは導電性ワイヤをガイドワイヤと非導電性層との間に挟んでいる。一実施形態において、非導電性層115aおよび115bは、シースまたはコーティングを備えている。
【0029】
一実施形態において、そして、さらに図2に示されるように、ガイドワイヤ100aおよび100bがそれぞれ、順行性および逆行性ガイドワイヤの遠位端に、温度測定要素110aおよび110bを備えている。一実施形態において、温度測定要素110aおよび110bは、コネクタ30に接続された、熱伝対またはサーミスタを備えている。別の実施形態において、圧力測定要素は、ガイドワイヤの遠位端に位置されて、RFエネルギ放射化時の圧力変化を検出している。
【0030】
RF発生器10は、ユーザが、最大温度、処置時間周期、RFパワーレベル、または、これらの制御パラメータの組合せを設定できるように構成されている。処置時間期間は、RFエネルギが電極間を流れる時間の周期を示す。最大温度設定は、電極と接触している組織に対する閾値温度としての役割がある。またRF発生器10は、一つ以上の温度測定要素110aおよび110bが、閾値または閾値近くの組織温度を示すと、パワーを減少または遮断するように設定することができる。
【0031】
一実施形態において、発生器10は、二つの電極105aおよび105b間の組織のインピーダンスを測定することができる。閉塞のタイプ(すなわち石灰化物質の性質)に基づき、ユーザは、組織に与えられる温度、治療時間、およびRFエネルギ量の適切な組合せを選択することができ、安全かつ効果的な治療を実現する。あるいは、治療は、ユーザが再疎通治療中にパラメータを手動管理し、ユーザは再疎通が実現されるまで閉塞を治療し、進めることができる。
【0032】
再疎通処理工程の手順が、図3Aおよび図3Bに図示されている。図3AのダイアグラムAで示されるように、順行性ガイドワイヤ100aおよび逆行性ガイドワイヤ100bはそれぞれ、閉塞310の近位端310aおよび遠位端310bへ進められる。これは、一般的な血管形成術を用いることにより実現することができる。上記の同時継続中の特許文献6に開示されているように、逆行性ガイドワイヤは、中隔などの側枝を用いて、閉塞310bの遠位端へ進めることができる。
【0033】
ユーザは、ガイドワイヤ100aおよび100bが、閉塞310と接触するとともに、血管壁300に触れていないことを確認した時点で、RF治療が始められる。
【0034】
あるいは、ガイドワイヤは、電極間の距離を最小化できるように閉塞にできるだけ深く進められる。その結果、焼灼部位の長さを最小化する。ガイドワイヤ100aおよび100bが適切な位置にあることの確認は、インピーダンス測定により、および/または、介入手順中に使用された蛍光透視法または血管内超音波法などの任意の一般的なイメージング技術を用いることにより、生じさせることができる。その血管内超音波法において、振動子がガイドワイヤの遠位端に装着されている。組織のインピーダンス測定を用いると、石灰化閉塞310は通常、血管壁300よりもかなり高いインピーダンスを示す。インピーダンス測定が低いインピーダンの値を示せば、一方又は両方のガイドワイヤが血管壁300に接触している可能性があり、そしてガイドワイヤの適切な再位置決が必要とされることがある。
【0035】
再疎通RF治療を始めると、閉塞310は、図3AのダイアグラムBに示されるように、閉塞310の端310aおよび310bから閉塞の内部へと小さくされる。ユーザは次に、ゆっくりかつ慎重に、ガイドワイヤ100aおよび100bの一方又は両方を、図3AのダイアグラムCに示されるようなチャネルまたは通路が閉塞310内に形成されるまで進める。図3Aに示されるように、順行性ガイドワイヤ100aは静止を保つことができ、また逆行性ガイドワイヤ100bは閉塞310を通して進めることができる。チャネルが形成された時点で、逆行性ガイドワイヤ100bは引き抜くことができ且つ順行性ガイドワイヤ100aは図3AのダイアグラムDに示されるように、閉塞310を通して進めることができる。また、バルーン血管形成術などの一般的な介入手順は行うことができる。あるいは、逆行性ガイドワイヤ100bはRF治療中は静止を保つことができ、また順行性ガイドワイヤ100aは閉塞310を通して進めることができる。これは、図3BのダイアグラムA〜Dに図示されている。
【0036】
随意に、カテーテルは、RF焼灼がもたらした破片を、除去または回収する手段を備える。例えば、破片を捕獲し回収する機構が提供できる。あるいは焼灼部位近くの破片を積極的に除去する吸引装置が提供できる。このような塞栓保護機構の例が、上記の特許文献6に開示されている。図4は、塞栓保護機構を備えている縦材400の実施形態の例を示す。塞栓保護機構410は、フィルタ、メッシュ、ネット、または同様の要素を備え、焼灼破片を捕獲および回収している。別の実施例として、塞栓保護機構は、バルーンを備え、血管を閉塞するとともに破片が循環するのを防ぎ、また縦材を介してその後の破片吸引をしている。別の実施例としては、シースが提供された場合、このシースはまた、破片捕獲および回収機構または吸引装置を含むように、構成することができる。一実施形態において、縦材は、後退することができる。また残存シースは、捕獲および回収機構または吸引装置として使用することができて、焼灼破片を除去する。別の実施形態において、縦材は、拡張カテーテルの管腔内に収容された焼灼ワイヤを備えている。焼灼時、焼灼ワイヤは後退することができ且つ拡張カテーテルは破片の除去に用いることができる。あるいは、前記システムは、別個のカテーテルを備えて、焼灼部位から破片の、吸引、あるいはその反対で捕獲および除去を提供する。
【0037】
随意に、前記装置は心電図(EKG)装置と接続して、エネルギ放出タイミングを補助することができる。例えば、冠状動脈を通して流れる血液速度は通常、心臓周期内で変動する。収縮期に心臓が収縮していると、動脈を通しての流れは通常、心臓拡張期よりも少ない。一実施形態において、エネルギ放出は心臓拡張期に、例えば心電図R波を検出するアルゴリズムを用いて、タイミングが合わされる。また流れが最大のときにエネルギ放出が起きるようにタイミングが合わされる。それによって、血流によってもたらされる冷却効果を最大とし、そして、その結果、血管への熱の暴露を最小とする。また、冠動脈の大きさは、心周期中に変えることができ、かつ、エネルギ放出は同様に、この事実を利用するように、タイミングを合わすことができる。
【0038】
随意に、前記装置は、電極間の距離を検出または推定し、また電極間の距離が減少するにつれて、運ばれるRFエネルギの量が減少する、機構を備えている。それによって、血管壁へのRF損傷の可能性を最小限にしている。
【0039】
別の実施形態において、前記装置は、焼灼カテーテルであり、遠位端、近位端、およびそれらの間にガイドワイヤ管腔を備えているガイドワイヤシャフトを有する縦材を備えている。縦材は、拡張カテーテルであるとともに、カテーテルの長さの少なくとも一部に沿って構造的に構成されて、狭い直径の血管壁または閉塞を通して、縦材を進めることまたは位置決めすることを可能にする。例えば、縦材を回転またはねじることにより、前進が実現される。図5A〜Cは、本発明のそのような実施形態を示す。例えば、図5Aに示されるように、縦材500は、らせん状の外部501を備え、それは、部材がねじられ又は回転されると、血管を通して進むとともに血管を拡張する。らせん状の外部501は、縦材500の外側本体に彫られた複数の溝502を備えている。縦材500の遠位端は随意に、放射線不透過性マーカ510を備えている。電極520は、カテーテルの遠位端または遠位端近くに位置されている。別の実施例が、図5Bに示されており、その横断面が図5Cに示されている。縦材550は、ライナ565に巻かれた複数のワイヤ551および552を備えることができる。一実施形態において、ワイヤ551および552は、少なくとも二つの異なる直径を含む。縦材550は随意にマーカ570で終端する。電極580は、縦材550の遠位端又はその近くに位置する。焼灼カテーテルは、追加的及び随意に、電極と外部エネルギ源との間にエネルギを伝える導線を備えている。代替的に、複数のワイヤは電極又は導線としての機能を果たすように構成することができる。追加的及び随意に、前記カテーテルは、随意に伸縮自在の絶縁シース560を備えている。
【0040】
前記ガイドワイヤおよび電極は、この分野で一般的に知られている、任意の一以上の適した材料から作ることができる。その適した材料の例としては、ステンレス鋼、ニチノール、エルジロイ、白金、イリジウム、タンタル、チタン、コバルト、クロム、又はそれらの任意の組合せを含む。一実施形態において、一以上のガイドワイヤは、電気エネルギを各電極に運ぶ電気伝導コアを有するポリーマーで作ることができる。
【0041】
上記実施形態は、焼灼のためにRFエネルギの使用について言及しているが、別のエネルギの形態、例えば超音波エネルギが同様に用いることができることは注目すべきである。一実施形態において、本発明の再疎通システムの一以上の縦材が、RF電極に代えて又は加えて、一以上の超音波変換器を備えている。前記超音波変換器は、閉塞を焼灼する超音波エネルギを提供する。一実施形態において、順行性および逆行性縦材はいずれも、超音波変換器を備え、順行性および逆行性方向から病変を小さくしている。別のエネルギの形態は、マイクロ波およびレーザを含むことができる。
【0042】
上述された、併用順行性および逆行性エネルギ伝達技術はまた、一般的な手法の使用と組合せて、CTOs貫通に対する付加技術として使用することができる。前記技術は、閉塞を十分に柔らかく又は弱くするのに用いることができる。
【0043】
上記は、本発明の好適な実施形態の詳細な説明であるものの、種々の代替物、修正物、均等物を用いることができる。したがって、上記説明は、添付クレームにより規定される本発明の範囲を限定するものとして、扱われるべきではない。
【符号の説明】
【0044】
10 高周波発生器
20 ピグテール
30 コネクタ
100a,100b 縦材
105a,105b 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一縦材を閉塞の近位端へ順行性方式で進める工程と、
第二縦材を前記閉塞の遠位端へ逆行性方式で進める工程と、
前記第一および第二縦材との間にエネルギを適用する工程と、
前記閉塞を再疎通する工程と、
を備えている閉塞血管再疎通方法。
【請求項2】
前記エネルギは、高周波エネルギである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギは、レーザエネルギである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギは、マイクロ波エネルギである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギは、超音波エネルギである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらに、血流が最大となるときに前記適用を起こすタイミングをはかる工程を備えており、それによって血流の冷却効果を最大にするとともに前記血管への熱の暴露を最小にする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、心電図(EKG)信号を用いて前記適用のタイミングをはかる工程を備えている請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記タイミングをはかる工程は、前記心電図(EKG)信号のR波を検出する工程を備えている請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、破片を捕獲および回収する工程を備えている請求項1に記載の方法。
【請求項10】
高周波発生器を備えており、
近位端および遠位端を有する順行性縦材を備えており、前記順行性縦材の遠位端が第一導電性電極を備え且つ前記順行性縦材の近位端が前記高周波発生器と結合されるように構成されており、かつ、
近位端および遠位端を有する逆行性縦材を備えており、前記逆行性縦材の遠位端が第二の導電性電極を備え且つ前記逆行性縦材の近位端が前記高周波発生器と結合されるように構成されている再疎通システム。
【請求項11】
前記縦材は、ガイドワイヤまたはカテーテルまたはマイクロカテーテルまたは拡張カテーテルである請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記縦材は、内側ガイドワイヤ内腔を備えている請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記縦材は、十分なねじれ剛性および縦方向柔軟性を有して、閉塞を通して進むと共に、前記電極を前記血管壁から離隔および互いに対向するように配置する請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記電極は、前記縦材の片側に取り付けられている請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記電極は、アレイ状に配列されている請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記縦材は、放射線不透過性マーカを備えている請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
少なくとも一つの前記縦材は、破片を捕獲および回収する塞栓保護機構を備えている請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記塞栓保護機構は、フィルタである請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記塞栓保護機構は、バルーンを備えている請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記塞栓保護機構は、前記縦材の一方を通して吸引ができる管腔を備えている請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記縦材は、カテーテルまたはガイドシース内に配置されるように構成されている請求項10に記載のシステム。
【請求項22】
さらに、高周波エネルギを制御および発生する回路を備えている請求項10に記載のシステム。
【請求項23】
さらに、EKGに接続して、エネルギ放出のタイミングをはかるように構成された接続ポートを備えている請求項10に記載のシステム。
【請求項24】
遠位端、近位端、及びガイドワイヤ管腔を構成しているガイドワイヤシャフトを有している縦材を備えており、前記縦材をねじることにより、狭い内径の血管を通して進めることができるように、前記縦材が少なくともその長さ部分に沿って構成されており、
前記縦材の遠位端に電極を備え、
エネルギを前記電極から外部エネルギ源に伝える一つ以上の導線を備え、かつ
絶縁シースを備えている焼灼カテーテル。
【請求項25】
前記縦材は、らせん状の外部を有するように構成されている請求項24に記載のカテーテル。
【請求項26】
前記縦材は、ライナに巻かれた複数のワイヤを備えている請求項24に記載のカテーテル。
【請求項27】
前記複数のワイヤは、少なくとも二つの異なる直径を有している請求項26に記載のカテーテル。
【請求項28】
前記複数のワイヤは、電極または導線であるように構成されている請求項26に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2010−540099(P2010−540099A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527088(P2010−527088)
【出願日】平成20年9月23日(2008.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/077403
【国際公開番号】WO2009/042614
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(508244304)レトロ・ヴァスキュラー・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】