説明

高周波信号処理装置および無線通信システム

【課題】高周波信号処理装置およびそれを備えた無線通信システムにおいて、受信系回路で生じ得る2次の相互変調歪みを低減する。
【解決手段】例えば、テストモードにおいて、テスト信号生成回路TSGENによって生成したf_tx±0.5MHzのテスト用信号RFtstをミキサ回路MIXrx_I(MIXrx_Q)に入力し、MIXrx_I(MIXrx_Q)で生じたIM2成分を補正回路ブロックCALBKで検出する。CALBKは、MIXrx_I(MIXrx_Q)の差動バランスを変更しながら、MIXrx_I(MIXrx_Q)で生じたIM2成分の位相を監視し、当該位相の略180°遷移が生じる遷移点に対応する差動バランスを探索する。MIXrx_I(MIXrx_Q)は、当該探索結果となる差動バランスを用いて通常モードの動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号処理装置および無線通信システムに関し、特にダイレクトコンバージョン受信機を備えた高周波信号処理装置および無線通信システムに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ダイレクトコンバージョン受信機において、ミキサで生じる二次歪みを低減するため、ミキサに所定の周波数間隔を持つ試験信号を入力する回路と、ミキサで生じた二次歪を検出する回路と、その検出結果に基づいてミキサのパラメータを制御する回路とを備えた構成が示されている。この構成によって、ミキサの二次歪を最小にするためのミキサのパラメータが探索される。ここで、ミキサの二次歪を検出する際、当該受信機は、二次歪が現れる所定の周波数を対象として、ミキサの出力振幅レベルの大きさを検出する。
【0003】
また、特許文献2には、ダイレクトコンバージョン送信機において、第1変調器(I信号用ミキサ回路)および第2変調器(Q信号用ミキサ回路)で生じるキャリア漏洩を低減する技術が示されている。例えば、第1変調器でのキャリア漏洩を低減する場合、当該送信器は、第1変調器の差動バランスを変えながら、第1変調器と第2変調器の加算出力信号と、第1変調器用ローカル信号との位相差を検出し、この位相差が所定の値(90°)となる(すなわち第2変調器のみからのキャリア漏洩が残存する)差動バランスを探索する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−336822号公報
【特許文献2】特開2009−212869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図15は、本発明の前提として検討した無線通信システムにおいて、その概略構成例を示すブロック図である。例えば、携帯電話機を代表とする無線通信システムは、図15に示すように、主にベースバンドの周波数帯と高周波数帯(RF(Radio Frequency)帯)との間の周波数変換を担う高周波信号処理チップ(高周波信号処理装置)RFIC’が備わっている。RFIC’は、受信系回路として、アンテナANTで受信した高周波信号を増幅するロウノイズアンプ回路LNAと、その後段に設けられ、高周波数帯をベースバンドに変換するミキサ回路MIXを含んでいる。また、送信系回路として、高周波電力増幅回路HPAの前段に配置されるドライバ回路(可変増幅回路)DRVを含んでいる。
【0006】
ここで、例えばLNAとMIXの間には、受信帯域以外の不要な周波数帯を除去するためのSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタSAWrx等がチップの外付け部品として備わっている。また、ここでは、DRVとHPAの間にも、送信帯域以外の不要な周波数帯を除去するためのSAWフィルタSAWtx等がチップの外付け部品として備わっている。近年、このような高周波信号処理チップを含んだ無線通信システムでは、小型化、低コスト化が強く要求されている。このため、高周波信号処理チップでは、前述したSAWフィルタの削減が望まれる。
【0007】
しかしながら、SAWフィルタを削減した場合、特に、送信系回路からの漏洩信号が受信系回路での2次の相互変調歪み(IM(Inter Modulation)2)を介して所望のベースバンド信号に重畳することが問題となり得る。図16(a)〜図16(c)は、本発明の前提として検討した高周波信号処理装置において、その問題点の一例を示す説明図である。例えばW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)やLTE(Long Term Evolution)等のFDD(Frequency Division Duplex)方式では、前述した図15の高周波電力増幅回路HPAから出力される比較的大電力の送信信号がデュプレクサDPXを介して受信系回路に漏洩することがある。図16(a)は、この際における受信系回路内のLNAの出力周波数スペクトルを表したものである。
【0008】
図16(a)に示すように、LNAは、アンテナANTによって受信された受信帯域内の高周波信号(希望波信号)RFrxに加えて前述したHPAからの送信漏れ信号RFtx_Lが入力され、これらの増幅結果を出力する。RFrxは、所定(例えば数MHz程度)の信号帯域(2・f_BB)を持ち、同様に、RFtx_Lも所定の信号帯域を持つ。ただし、ここでは、RFtx_Lの信号帯域を所定(例えば1MHz程度)の周波数間隔(f_int)を持つ2個の周波数スペクトルで代表的に例示している。ここで、RFtx_Lは、SAWtx,SAWrxが有る場合には、LNAの入力と出力において十分に抑圧される。一方、RFtx_Lは、SAWtxおよび/またはSAWrxが無い場合には、抑圧されずにミキサ回路MIXに入力される。
【0009】
ミキサ回路MIXは、図16(b)に示すような受信帯域内の所定のチャネル周波数に設定されたローカル信号(局部発振信号)LOrxと、希望波信号RFrxとを乗算する。これにより、MIXは、図16(c)に示すように、RFrxを、直接、ベースバンドの周波数帯(f_BB)にダウンコンバート(周波数変換)し、その結果となる受信ベースベンド信号BBrxを出力する。ただし、この際に、ミキサ回路MIXは、デバイスミスマッチなどに起因してIM2成分を発生することがある。MIXが送信漏れ信号RFtx_Lに対してIM2成分を発生した場合、f_intの周波数を持つベースバンドの周波数帯の妨害波が生成される。当該妨害波(f_int)は、図16(c)に示すように、受信ベースバンド信号BBrxの周波数帯(f_BB)に重畳し、その結果、正常な受信動作が困難となる恐れがある。
【0010】
そこで、このようなIM2の問題を解決するため、例えば特許文献1に記載されているような技術を用いることが考えられる。特許文献1では、IM2成分の振幅レベルの大きさを観測し、それが最小となる補正パラメータを探索する方式が用いられる。また、この際には、I信号用ミキサ回路と、Q信号用ミキサ回路を別個独立に探索する方式か、あるいはいずれか一方のミキサ回路で探索し、その探索結果を、他方のミキサ回路でも同じ結果が得られると仮定してそのまま適用する方式が用いられる。このため、例えば次のようなことが懸念される。
【0011】
第1に、(1)IM2が最小となる点(補正最適点)近傍ではIM2成分の振幅レベルは非常に小さくなるため、その検出自体が困難となる恐れがある。また、仮に検出できたとしても、振幅レベルの検出精度に応じて補正最適点にある程度のばらつき範囲が生じてしまう場合があるため、補正最適点を高精度で定める(言い換えれば、IM2の最小点を高精度で探索し、IM2をより低減する)ことが困難となる恐れがある。第2に、(2)I信号用ミキサ回路の補正を行うことでQ信号用ミキサ回路の補正最適点が変化し、逆にQ信号用ミキサ回路の補正を行うことでI信号用ミキサ回路の補正最適点が変化するというIQ干渉の問題に対処できない恐れがある。
【0012】
第3に、(3)IM2最小点(補正最適点)の探索に時間を要する恐れがある。すなわち、IM2の振幅レベルの最小点を探索する動作は、例えるならば、U字カーブ(又はV字カーブ)の極小点を探索する動作と言える。このため、実際の探索方法としては、例えば、補正変数を、可変範囲全体に渡って大雑把に変えることで最小点の目星をつけ、その後、目星の近傍を詳細に変化させるという方法が考えられる。ただし、このような探索方法では、多くの処理ステップが必要とされる恐れがある。加えて、(2)で述べたようなIQ干渉の問題に対処することを前提とした場合、例えば、I信号用ミキサ回路の補正とQ信号用ミキサ回路の補正を何度か繰り返して行う必要があり、その結果、探索時間が大幅に増大する恐れがある。
【0013】
本発明は、このようなことを鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、高周波信号処理装置およびそれを備えた無線通信システムにおいて、受信系回路で生じ得る2次の相互変調歪みを低減することにある。本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
本実施の形態による高周波信号処理装置は、第1および第2動作モードを備え、テスト信号生成回路と、第1スイッチと、ミキサ回路と、位相検出部と、制御部とを有している。テスト信号生成回路(TSGEN)は、第1周波数成分と第2周波数成分を持つテスト信号を生成する。第1スイッチ(SWr)は、第1動作モードの際に、第1信号としてアンテナによって受信される信号を伝送し、第2動作モードの際に、第1信号としてテスト信号を伝送する。ミキサ回路(MIXrx_I,MIXrx_Q)は、差動バランスを所定の可変範囲内で補正可能な差動回路で構成され、第1信号を第1信号よりも低い周波数帯の第2信号にダウンコンバートする。位相検出部(PHDET等)は、第2動作モードの際に、第2信号から第1周波数成分と第2周波数成分の差分の周波数成分を持つ第3信号を抽出し、第3信号の位相を検出する。制御部(DGCTL)は、位相検出部の検出結果に応じて、ミキサ回路の差動バランスを変更する。ここで、ミキサ回路は、第1動作モードの際に、差動バランスが可変設定範囲内の第1補正値に設定された状態で動作する。そして、制御部は、第2動作モードの際に、差動バランスを変動させながら、当該差動バランスを最小変動幅で変動させた場合の前後で第3信号の位相が略180°遷移する遷移点を探索し、当該遷移点に対応する差動バランスを第1補正値としてミキサ回路に設定する。
【0016】
このような構成を用いると、ミキサ回路の差動バランスを補正することで、ミキサ回路で生じる2次の相互変調歪み(IM2)成分を低減することが可能になる。この際には、ミキサ回路から出力されるIM2成分の位相情報を監視しながら差動バランスの最適な補正値を探索するため、補正の容易化や、高精度化や、あるいは補正時間の短縮等が図れる。特に、差動バランスの探索に際し、二分探索法を用いると、より補正時間の短縮が図れる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、高周波信号処理装置およびそれを備えた無線通信システムにおいて、受信系回路で生じ得る2次の相互変調歪みを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1による無線通信システムにおいて、その主要部の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の無線通信システムにおいて、その高周波信号処理装置の主要部の詳細な構成例を示す回路ブロック図である。
【図3】(a)は、図2の高周波信号処理装置におけるIM2特性の一例を示す説明図であり、(b)は、(a)の特性メカニズムの一例を示す概念図である。
【図4】図2の高周波信号処理装置において、そのテスト信号生成回路および補正回路ブロックのより詳細な構成例を示す回路ブロック図である。
【図5】図2の高周波信号処理装置において、その受信用ミキサ回路の構成例を示す回路図である。
【図6】図5のミキサ回路において、差動バランス(IM2補正パラメータ)の調整方式の一例を示す概念図である。
【図7】図5のミキサ回路において、差動バランス(IM2補正パラメータ)の調整方式の他の一例を示す概念図である。
【図8】図5のミキサ回路において、差動バランス(IM2補正パラメータ)の調整方式の更に他の一例を示す概念図である。
【図9】図2の高周波信号処理装置において、その補正回路ブロックによる補正最適点の探索動作方法の一例を示すフロー図である。
【図10】図9のフローによる実動作の一例を示す補足図である。
【図11】(a)、(b)は、本発明の実施の形態2による高周波信号処理装置において、その問題点の一例を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態2による高周波信号処理装置において、その補正最適点の探索方法の一例を示す説明図である。
【図13】(a)、(b)は、図12の補足図である。
【図14】本発明の実施の形態3による高周波信号処理装置において、その補正最適点の探索方法の一例を示すフロー図である。
【図15】本発明の前提として検討した無線通信システムにおいて、その概略構成例を示すブロック図である。
【図16】(a)〜(c)は、本発明の前提として検討した高周波信号処理装置において、その問題点の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0020】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0021】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。なお、実施の形態では、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の一例としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(MOSトランジスタと略す)を用いるが、ゲート絶縁膜として非酸化膜を除外するものではない。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
(実施の形態1)
《無線通信システムの全体構成》
図1は、本発明の実施の形態1による無線通信システムにおいて、その主要部の概略構成例を示すブロック図である。図1に示す無線通信システムは、特に限定はされないが、代表的には、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)用、LTE(Long Term Evolution)用等の携帯電話システムである。図1の無線通信システムは、高周波信号処理チップ(高周波信号処理装置)RFICと、高周波電力増幅装置HPAと、アイソレータISOと、デュプレクサDPXと、アンテナANTを備えている。RFICは、例えば、1個の半導体チップによって構成される。RFICは、受信系回路としてロウノイズアンプ回路LNAや受信用ミキサ回路MIXrx等を備え、送信系回路としてドライバ回路(可変増幅回路)DRVや送信用ミキサ回路MIXtx等を備え、送受信系回路としてバックエンド回路BE等を備える。BEは、例えば、CPU(Central Processing Unit)やアプリケーションプロセッサ等といったベースバンドプロセッサを含む。
【0024】
RFIC内の送信用ミキサ回路MIXtxは、送信動作に際し、BEからの送信ベースバンド信号を所定の周波数(送信周波数帯の中の特定の周波数)を持つローカル信号(局部発振信号、キャリア信号)LOtxを用いてアップコンバート(周波数変換)する。DRVは、MIXtxからの出力信号を所定のゲインで線形増幅し、HPAに向けて出力を行う。HPAは、例えば、1個の半導体チップによって構成され、特に限定はされないが化合物半導体を用いたHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)等を備えている。HPAは、DRVからの出力信号を電力増幅し、その増幅された高周波信号RFtxをISOを介してDPXに向けて出力する。ISOは、HPAからDPXに向けた信号を通過させ、その逆方向の信号を遮断する。
【0025】
DPXは、送信周波数帯と受信周波数帯の分離を行う。具体的には、ISOを介して出力された高周波信号RFtxから所定の送信周波数帯を選択し、それを送信電力信号TXとしてANTに伝送し、また、ANTで受信した受信電力信号RXから所定の受信周波数帯を選択し、それを高周波信号RFrxとしてRFIC内のLNAに向けて伝送する。LNAは、このDPXからの高周波信号RFrxを増幅し、受信用ミキサ回路MIXrxに出力する。MIXrxは、LNAの出力信号を、所定の周波数(受信周波数帯の中の特定の周波数)を持つローカル信号(局部発振信号、キャリア信号)LOrxを用いてベースバンドの周波数帯に直接的にダウンコンバート(周波数変換)し、その変換結果を受信ベースバンド信号BBrxとしてバックエンド回路BEに向けて出力する。BEは、BBrxを受けて、所定のベースバンド処理を行う。
【0026】
なお、特に限定はされないが、RFIC,HPA,ISO,DPXは、それぞれ個々の部品として同一の配線基板上に実装される場合や、あるいは、HPA,ISO,DPXが1個のモジュール配線基板上に実装され、当該モジュール配線基板とRFICが同一の配線基板上に実装されるような場合などがある。配線基板やモジュール配線基板は、代表的にはセラミック基板等である。
【0027】
このように、図1の無線通信システムは、前述した図15の構成例と比較して、主にSAWフィルタSAWtx,SAWrxが削除されたような構成を備えている。これによって、無線通信システムの小型化、低コスト化が可能となる。しかしながら、特に図1のように送信動作と受信動作が同一期間で行われるFDD方式の無線通信システムでは、SAWフィルタの削除によって図16で述べたような問題が生じ得る。すなわち、実際には、HPAからの高周波信号RFtxがDPXを介して送信漏れ信号(RFtx_L)としてLNAの入力側に周り込む場合がある。この際に、MIXrx(例えば差動型)等では、通常、差動ペアのばらつき等が存在するため、当該送信漏れ信号に対して2次の相互変調歪み(IM2)が生じる。その結果、ベースバンドの周波数帯に妨害波が重畳する。
【0028】
また、このようなIM2に伴う妨害波は、送信漏れ信号からのみならず、通常の高周波信号(希望波信号)RFrxからも生じ得るため、FDD方式に限らず場合によってはGSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)等を代表とするTDD(Time Division Duplex)方式でも問題となり得る。ただし、通常、RFrxの電力レベルに比べてRFtxの電力レベルが非常に大きいため、送信漏れ信号の方がより問題とされる。そこで、このようなIM2の問題を解決するため、後述するような本実施の形態による高周波信号処理チップ(高周波信号処理装置)を用いることが有益となる。
【0029】
《高周波信号処理装置の構成(主要部)》
図2は、図1の無線通信システムにおいて、その高周波信号処理装置の主要部の詳細な構成例を示す回路ブロック図である。図2には、図1の高周波信号処理装置RFICにおける受信系回路周りの詳細な構成例が示されている。図2に示すRFICは、ロウノイズアンプ回路LNA、ローカル信号生成回路LOGEN、ミキサ回路MIXrx_I,MIXrx_Q、フィルタ回路FLTi,FLTq、可変増幅回路PGAi,PGAq、アナログ・ディジタル変換回路ADCi,ADCq、バックエンド回路BEを備えている。更に、図2のRFICは、これらに加えて、スイッチSWr,SWi,SWq、テスト信号生成回路TSGEN、補正回路ブロックCALBKを備えたことが主要な特徴となっている。
【0030】
SWrは、LNAからの出力信号かTSGENからの出力信号のいずれか一方を選択してMIXrx_I,MIXrx_Qに出力する。MIXrx_IはLOGENからのローカル信号LOrx_Iを用いて当該SWrからの出力信号をベースバンドの周波数帯にダウンコンバートし、MIXrx_QはLOGENからのLOrx_Qを用いて当該SWrからの出力信号をベースバンドの周波数帯にダウンコンバートする。LOrx_IとLOrx_Qは位相が90°異なる直交信号であり、MIXrx_I,MIXrx_Qによってダイレクトコンバージョンならびに直交復調が行われる。なお、図示は省略するが、MIXrx_I,MIXrx_Qのそれぞれは、差動回路で構成され、正極側の出力と負極側の出力を生成する。
【0031】
FLTi(例えばロウパスフィルタ)は、MIXrx_Iの出力信号から不要な高調波成分を除去する。PGAiは、FLTiの出力信号をADCiの入力レンジに応じたゲインで増幅し、ADCiは、PGAiの出力信号をディジタル信号に変換する。同様に、FLTq(例えばロウパスフィルタ)は、MIXrx_Qの出力信号から不要な高調波成分を除去する。PGAqは、FLTqの出力信号をADCqの入力レンジに応じたゲインで増幅し、ADCqは、PGAqの出力信号をディジタル信号に変換する。SWiは、ADCiの出力信号をBEかCALBKのいずれか一方に向けて出力し、SWqは、ADCqの出力信号をBEかCALBKのいずれか一方に向けて出力する。
【0032】
ここで、図2のRFICは、通常動作モードとキャリブレーション動作モードとを備えている。通常動作モードの際、SWrは入力元としてLNA側を選択し、SWi,SWqは出力先としてBE側を選択する。この場合、通常の受信動作として、図1のアンテナANTからの受信電力信号RXがベースバンドの周波数帯に変換されたのち、BEに入力される。一方、キャリブレーション動作モードは、前述した通常動作モード以外の期間(例えば、電源投入時等)で適宜行われる。キャリブレーション動作モードの際、SWrは入力元としてTSGEN側を選択し、SWi,SWqは出力先としてCALBK側を選択する。
【0033】
TSGENは、例えば所定の周波数f_txを持つ高周波信号を0.5MHzの信号で変調したテスト用信号RFtstを生成する。これにより、RFtstは、f_tx±0.5MHzの周波数成分を持つ。f_txは、例えば図1に示したローカル信号LOtxと同じ周波数に設定される。当該RFtstは、SWrを介してMIXrx_I,MIXrx_Qに入力される。ここで、MIXrx_I,MIXrx_Qは、前述したように、LOrx_I,LOrx_Qを用いてダウンコンバート処理を行うが、MIXrx_I,MIXrx_Qのそれぞれにおいて差動バランスのズレ等が存在した場合、2次の相互変調歪み(IM2)を発生する。当該IM2の周波数成分は、ここでは1MHzとなる。この1MHzのIM2成分は、ADCi,ADCqでディジタル信号に変換されたのち、SWi,SWqを介してCALBKに入力される。
【0034】
補正回路ブロックCALBKは、アンプ回路LAMPi,LAMPqと、位相検出回路PHDETと、ディジタル補正回路DGCTLを備えている。LAMPiは、SWiからの出力信号(ここでは1MHz)を増幅し、LAMPqは、SWqからの出力信号(ここでは1MHz)を増幅する。PHDETは、LAMPiの出力信号の位相と、LAMPqの出力信号の位相とをそれぞれ検出する。DGCTLは、PHDETによるLAMPiの出力信号の位相検出結果に応じてMIXrx_Iの差動バランスを変更し、PHDETによるLAMPqの出力信号の位相検出結果に応じてMIXrx_Qの差動バランスを変更する。
【0035】
ここで、CALBKは、DGCTLを介してMIXrx_Iの差動バランスを適宜変更しながら、LAMPiの出力信号において位相の略180°反転が生じる際の遷移点に該当する差動バランスを探索する。同様に、CALBKは、DGCTLを介してMIXrx_Qの差動バランスを適宜変更しながら、LAMPqの出力信号において位相の略180°反転が生じる際の遷移点に該当する差動バランスを探索する。前述した通常動作モード時には、MIXrx_I,MIXrx_Qは、このCALBKの探索結果となる差動バランスを用いて動作を行う。
【0036】
以上のように、本実施の形態1による高周波信号処理装置は、IM2成分の大きさが最小値となる差動バランスにおいてIM2成分の位相が180°反転する特性を利用し、この位相の180°反転を検出することで差動バランスの補正を行うことが主要な特徴となっている。これによって、IM2成分の最小値を容易に探索可能となり、またIM2成分の最小値を高精度に検出可能となる。仮に、前述したように、IM2成分の振幅レベルを検出する方式を用いた場合、IM2成分の振幅レベルの微小な大小関係を比較する必要があるため、その検出動作自体が困難となる問題や、高精度な検出が困難となる問題が生じる恐れがある。この際には、検出を容易化又は高精度化するため、アンプ回路(例えば図2のLAMPi,LAMPqに対応)によって予め当該振幅レベルを増幅することも可能であるが、振幅レベルの大小関係を比較する方式であるため、アンプ回路には高い線形性が求められ、その結果、ゲインも制限される。
【0037】
一方、本実施の形態1による位相検出方式を用いた場合、位相の180°反転という明らかな変化を検出すればよいため、このような問題を解決することが可能になる。すなわち、IM2成分の振幅レベルが微小であっても、それを図2のLAMPi,LAMPqによって十分なレベルに増幅したのち、位相検出を行えばよい。この際に、LAMPi,LAMPqには、特に線形性は求められず、リミットアンプのような高いゲインの増幅回路を用いることが可能である。
【0038】
図3(a)は、図2の高周波信号処理装置におけるIM2特性の一例を示す説明図であり、図3(b)は、図3(a)の特性メカニズムの一例を示す概念図である。図3(a)のF301に示すように、IM2の補正パラメータ(例えば図2のMIXrx_Iの差動バランス)を変化させていくと、IM2が最小値となる補正パラメータが存在し、当該補正パラメータが補正最適点(図2のMIXrx_Iの最適な差動バランス)となる。この補正最適点への到達前後では、図3(a)のF302に示すように、位相が急減に180°反転する。図2の補正回路ブロックCALBKは、当該F302の位相特性を利用して補正最適点を探索する。
【0039】
図3(b)では、IM2成分が概念的にベクトルで表されている。図3(b)において、ベクトル「I」は図2のミキサ回路MIXrx_I(又はMIXrx_Q)が発生したIM2成分の正極側を表し、ベクトル「IB」は図2のMIXrx_I(又はMIXrx_Q)が発生したIM2成分の負極側を表す。初期状態では、図3(b)のF303に示すように、ベクトル「I」とベクトル「IB」は位相が異なっており、差動出力に伴いベクトル「I−IB」となる第1位相の合成IM2ベクトル「IM2」が発生する。この状態からIM2の補正パラメータを変化させていくと、例えばベクトル「I」の位相が反時計回りに、ベクトル「IB」の位相が時計回りに回転し、「I」と「IB」が共に近づいていく。その結果、合成IM2ベクトル「IM2」の位相は変わらぬまま、その大きさが減少していく。
【0040】
そして、図3(a)に示した補正最適点において、図3(b)に示すベクトル「I」および「IB」は理想的には「I」=「IB」となり、その結果、合成IM2ベクトル「IM2(=I−IB)」はゼロとなる。その後、更に、IM2の補正パラメータを変化させていくと、図3(b)のF304に示すように、ベクトル「I」の位相が反時計回りに、ベクトル「IB」の位相が時計回りに回転する結果、「I」と「IB」が共に離れていく。この段階では、合成IM2ベクトル「IM2(=I−IB)」は、F303での第1位相とは180°異なる第2位相を持ち、IM2の補正パラメータの変化に伴い第2位相を維持したまま、その大きさが増大していく。なお、ここでは、ベクトル「I」と「IB」の大きさは、共に等しいものとしたが、実際には、若干異なる場合がある。この場合でも、合成IM2ベクトル「IM2」の位相は補正最適点を境に約180°程度変化することになる。
【0041】
《テスト信号生成回路および補正回路ブロックの詳細》
図4は、図2の高周波信号処理装置において、そのテスト信号生成回路および補正回路ブロックのより詳細な構成例を示す回路ブロック図である。図4では、図2におけるテスト信号生成回路TSGENおよび補正回路ブロックCALBKの詳細構成例が示されると共に、LNA,MIXrx_I,MIXrx_Q,LOGEN,FLTi,FLTq,PGAi,PGAqが差動構成で示されている。ここでは、ADCi,ADCqが、それぞれ、PGAi,PGAqからの差動出力信号を受けて、それをシングルのディジタル信号に変換するものとする。
【0042】
図4において、TSGENは、テスト用ローカル信号生成回路LOTSGと、テスト用ベースバンド信号生成回路BBTSGと、分周回路DIVNとテスト用ミキサ回路MIXtstを備えている。LOTSGは、所定の周波数f_txを持つテスト用キャリア信号を生成する。f_txは、図1における送信用のローカル信号LOtxの周波数と同一の周波数に設定されることが望ましい。この場合、LOTSGは、当該LOtxを生成する送信用のローカル信号生成回路(図示せず)を共通使用することで実現すればよく、これによって回路面積の増大等を抑制することが可能になる。
【0043】
BBTSGは、ベースバンドの帯域に応じた所定の周波数(ここでは1MHz)の発振信号を生成する。DIVNは、BBTSGからの発振信号を所定の分周比(ここでは2分周)で分周する。MIXtstは、LOTSGからのキャリア信号とDIVNの出力信号(ここでは0.5MHzの発振信号)とを乗算する。言い換えれば、DIVNの出力信号をLOTSGからのキャリア信号を用いてアップコンバートする。その結果、MIXtstからは、f_tx±0.5MHzの周波数成分を持つテスト用信号RFtstが生成される。なお、ここでは、LOTSG,BBTSG,DIVN,MIXtstは、差動構成となっている。
【0044】
RFtstは、図2で説明したように、スイッチSWrを介してミキサ回路MIXrx_I,MIXrx_Qに入力され、MIXrx_I,MIXrx_Qの出力信号がADCi,ADCqを介してディジタル信号に変換される。ADCi,ADCqからの各ディジタル信号は、それぞれスイッチSWi,SWqを介して補正回路ブロックCALBKに入力される。CALBKは、バンドパスフィルタBPFi,BPFqと、アンプ回路LAMPi,LAMPqと、位相検出回路PHDETと、ディジタル補正回路DGCTLと、アナログ・ディジタル変換回路ADCtstを備える。DGCTLは、ディジタル処理を行う論理演算回路であり、特に限定はされないが、例えば、ステートマシーンや小規模のプロセッサ等で実現することが可能である。
【0045】
BPFiは、ADCiからSWiを介して入力されたディジタル信号を対象にMIXrx_Iで生じたIM2成分(ここでは1MHz成分)を抽出し、BPFqは、ADCqからSWqを介して入力されたディジタル信号を対象にMIXrx_Qで生じたIM2成分(ここでは1MHz成分)を抽出する。LAMPiは、BPFiの出力信号を十分なレベルに増幅し、LAMPqは、BPFqの出力信号を十分なレベルに増幅する。ここでは、BPFi,BPFqはディジタルフィルタとなっており、LAMPi,LAMPqはディジタルアンプとなっている。ADCtstは、BBTSGからの発振信号(ここでは1MHz)をディジタル信号に変換し、ディジタル信号となるテスト用基準発振信号REFtstを生成する。
【0046】
PHDETは、REFtst(ここでは1MHz)の位相を基準として、LAMPiからの出力信号の位相と、LAMPqからの出力信号の位相をそれぞれ検出する。DGCTLは、PHDETによるLAMPi側の位相検出結果に応じてMIXrx_Iの差動バランスを変更し、PHDETによるLAMPq側の位相検出結果に応じてMIXrx_Qの差動バランスを変更する。具体例として、DGCTLは、まず、MIXrx_I側を対象としてある差動バランス(設定[1]とする)を設定し、その際のLAMPi側の位相検出結果(REFtstの位相との間の位相差)(結果[1]とする)を取得する。次いで、DGCTLは、MIXrx_Iの差動バランスを適宜変更し(設定[2]とする)、その際のLAMPi側の位相検出結果(REFtstの位相との間の位相差)(結果[2]とする)を取得する。
【0047】
ここで、DGCTLは、前述した結果[2]と結果[1]の間の位相差を求める。図3(a)のF302から判るように、仮に、前述した設定[2]と設定[1]の間の差動バランス(IM2補正パラメータ)の変動幅が最小変動幅の場合で、結果[2]と結果[1]の間の位相差が略180°であった場合、当該設定[2]又は設定[1]が補正最適点となる。一方、DGCTLは、結果[2]と結果[1]の間の位相差が略0°であった場合、更に別の差動バランスにおいて補正最適点が存在することが判るため、適宜差動バランスの変更を行う。このような処理を繰り返しながら、DGCTLは、MIXrx_Iの補正最適点を探索する。そして、MIXrx_Iの補正最適点が得られると、同様にして、MIXrx_Q側を対象として補正最適点の探索を行う。
【0048】
ここでは、差動バランス(IM2補正パラメータ)の最小変動幅に対する位相差が略180°又は略0°としたが、実際には、ある程度の誤差が生じ得る。例えば、当該最小変動幅が非常に小さいような場合には、補正最適点であっても略180°よりもある程度小さい位相差しか得られない事態が考えられる。そこで、特に限定はされないが、DGCTLは、実際には、例えば90°等を判定しきい値とすることが可能である。すなわち、最小変動幅に対する位相差が90°以上であれば、補正最適点と判断し、90°未満であれば、更に別の差動バランスにおいて補正最適点が存在すると判断する。なお、勿論、このような方式に限らず、例えば、判定しきい値を1個ではなく複数個設け、最も位相差が大きい箇所を探索するような方式も考えられる。いずれの方式を適用する場合でも、差動バランスが補正最適点からズレていれば、最小変動幅に対する位相差は明らかに小さくなるため(理想的には0°)、この性質を利用して補正最適点を早期に絞り込むことができる。また、補正最適点では位相差が明らかに増大するため(理想的には180°)、この性質を利用して補正最適点を高精度に定めることができる。
【0049】
なお、図4および図2では、CALBKに対する入力は、ADCi,ADCqの後段となっているが、必ずしもこの位置に限定されるものではなく、MIXrx_I,MIXrx_Qの後段であればよい。具体的には、例えば、PGAi,PGAqの出力等とすることも可能である。ADCi,ADCqの後段とする場合、CALBKは、ディジタル処理によって増幅動作や位相検出動作等を行うのに対して、PGAi,PGAqの出力等とした場合、アナログ処理によって増幅動作や位相検出動作等を行うことになる。ただし、CALBKでは、前述したように、ある時点での位相(結果[2])と別の時点での位相(結果[1])とを比較することになるため、アナログ処理よりもディジタル処理による実現の方がより適していると考えられる。また、スイッチSWi,SWqによって生じ得るノイズの観点からも、ADCi,ADCqの後段とした方が望ましい。また、SWrの設置箇所に関しても、MIXrx_I,MIXrx_Qの前段であればよいが、ノイズ(雑音指数NF(Noise Figure))の観点でLNAの後段とする方が望ましい。
【0050】
《受信用ミキサ回路の詳細》
図5は、図2の高周波信号処理装置において、その受信用ミキサ回路の構成例を示す回路図である。図5に示すミキサ回路MIXrx(図2のMIXrx_I,MIXrx_Qのそれぞれに該当)は、2組の差動対トランジスタMNDP1,MNDP2と、位相シフト回路PHSFTと、バックゲート(基板電位)制御回路BGCTLを備え、ここでは併せて図2のローカル信号生成回路LOGENが示されている。PHSFTは、LOGENからのローカル信号に対して所定の位相差(例えば180°)を加えた信号を生成する。MNDP1は、ソースが共通接続された2個のNMOSトランジスタMN1a,MN1bを備え、当該ソースに正極側の高周波信号RFinが入力される。MNDP2は、ソースが共通接続された2個のNMOSトランジスタMN2a,MN2bを備え、当該ソースに負極側の高周波信号(/RFin)が入力される。RFin,/RFinは、図2におけるSWrの出力信号に該当する。
【0051】
MN1a,MN2bのゲートには、LOGENからのローカル信号が入力され、MN1b,MN2aのゲートには、LOGENからPHSFTを介したローカル信号が入力される。MN1aのドレインは、MN2aのドレインに共通接続され、当該ドレインから正極側の出力信号(電流信号)Iが生成される。MN1bのドレインは、MN2bのドレインに共通接続され、当該ドレインから負極側の出力信号(電流信号)IBが生成される。BGCTLは、MN1a,MN1b,MN2a,MN2bのバックバイアス(基板電位)を適宜制御する。図5のMIXrxは、受動型のダブル・バランスド・ミキサ(DBM)等と呼ばれる。ただし、図2のMIXrx_I,MIXrx_Qは、図5のような構成例に限らず、所謂ギルバートセル等のような能動型のDBMや、場合によってはシングル・バランスド・ミキサ等であってもよい。ただし、消費電力、線形性、高速性等の観点からは図5のような構成例を用いることが望ましい。
【0052】
図6〜図8は、図5のミキサ回路において、差動バランス(IM2補正パラメータ)のそれぞれ異なる調整方式の一例を示す概念図である。図6〜図8には、図5の構成例と位相検出回路PHDETおよびディジタル補正回路DGCTLとの関係が概念的に示されている。図6〜図8において、ミキサ回路MIXrxの差動出力信号(I,IB)には、図3(b)に示したように、IのIM2成分とIBのIM2成分とのベクトル差(I−IB)によって与えられる合成IM2ベクトルが含まれる。PHDETは、この合成IM2ベクトルの位相を検出し、DGCTLは、PHDETによる合成IM2ベクトルの位相検出結果を監視し、位相の反転が生じたか否かを判定しながら、差動バランス(IM2補正パラメータ)を適宜変更する。
【0053】
図6の例では、DGCTLが差動バランス(IM2補正パラメータ)の変更を位相シフト回路PHSFTに対して行っている。具体的には、例えば、PHSFTによる位相のシフト量を180°の前後の範囲で変動させる。これによって、MN1aとMN1bの間の差動バランスと、MN2aとMN2bの間の差動バランスとをそれぞれ変更している。図7の例では、DGCTLが差動バランスの変更をバックゲート制御回路BGCTLに対して行っている。具体的には、例えば、MN1a,MN1bならびにMN2a,MN2bのバックゲートの制御を介して各トランジスタのしきい値電圧を変更し、これによって差動バランスを変更している。
【0054】
図8の例では、DGCTLが差動バランスの変更を負荷回路LOADに対して行っている。ミキサ回路MIXrxは、実際には、図8に示すように、出力信号(電流信号)I,IBをそれぞれ電圧信号に変換するための負荷(例えば抵抗素子)を備えている。そこで、DGCTLは、I側の負荷の大きさとIB側の負荷の大きさとの相対的なバランスを変更することで、差動バランスを変更している。図6〜図8の例を代表として、MIXrxの差動バランスは様々な方式で変更可能である。本実施の形態では、差動バランスの変更方式は特に限定されず、ミキサ回路の回路方式等に応じて適宜定めればよい。例えば、図5のような受動型のダブル・バランスド・ミキサを用いる場合には、図6〜図8の方式のいずれかを用いたり、あるいはこれらを組み合わせて用いるようなことも可能である。また、例えば能動型のダブル・バランスド・ミキサ等を用いる場合には、各差動対トランジスタに対するバイアス電流のバランスを変更する方式等を用いてもよい。
【0055】
《補正最適点の探索動作(二分探索法)》
図9は、図2の高周波信号処理装置において、その補正回路ブロックによる補正最適点の探索動作方法の一例を示すフロー図である。図10は、図9のフローによる実動作の一例を示す補足図である。図2の補正回路ブロックCALBK(例えばディジタル補正回路DGCTL)は、前述したように、補正最適点において合成IM2ベクトルの位相が略180°遷移することを利用して補正最適点の探索を行う。このため、CALBKは、図9および図10に示すような所謂二分探索法を用いた探索を行うことが可能となる。
【0056】
図9においては、IM2補正パラメータをmビット幅で制御する(すなわち2ビットの可変範囲を持つ)ものとして、まず、補正回路ブロックCALBKは、基準位相を取得する(ST[0])。基準位相は、可変範囲の両端のいずれか一方に対応する位相であればよく、ここでは例えば0点目を判定ポイントとした場合の位相とする。次いで、CALBKは、IM2補正パラメータを可変範囲の中間点となる2(m−1)点目に設定し、1回目の判定として、当該判定ポイント(2(m−1)点目)の位相と基準位相とを比較する(ST[1])。ST[1]での比較結果において、位相反転(例えば略180°遷移)が生じた場合にはST[2]aへ移行して2回目の判定を行い、位相が非反転(例えば略0°遷移)の場合にはST[2]bへ移行して2回目の判定を行う。なお、位相の反転有無の判定は、前述したように、特に限定はされないが基準位相との位相差が90°以上か90°未満か等によって行えばよい。
【0057】
続いて、CALBKは、ST[2]aの場合には、1回目の判定ポイントから2(m−2)を差し引いた判定ポイント((2(m−1)−2(m−2))点目)にIM2補正パラメータを設定し、当該判定ポイントの位相と基準位相とを比較する。一方、ST[2]bの場合には1回目の判定ポイントに2(m−2)を足し合わせた判定ポイント((2(m−1)+2(m−2))点目)にIM2補正パラメータを設定し、当該判定ポイントの位相と基準位相とを比較する。すなわち、1回目の判定において位相反転が生じた場合には、1点目〜2(m−1)点目の間に位相遷移点が存在することになるため、ST[2]aにおいてその中間点の位相を検証し、位相が非反転の場合には、2(m−1)点目〜2点目の間に位相遷移点が存在することになるため、ST[2]bにおいてその中間点の位相を検証する。
【0058】
ST[2]a,ST[2]bにおいて位相反転が生じた場合には同様にしてST[3]a(図示せず)へ移行して3回目の判定を行い、位相が非反転の場合にはST[3]b(図示せず)へ移行して3回目の判定を行う。以降同様にして、CALBKは、n回目の判定として、ST[n]aの場合には(n−1)回目の判定ポイントから2(m−n)を差し引いた判定ポイントの位相と基準位相とを比較し、ST[n]bの場合には(n−1)回目の判定ポイントに2(m−n)を足し合わせた判定ポイントの位相と基準位相とを比較する。ST[n]a,ST[n]bにおいて位相反転が生じた場合にはST[n+1]a(図示せず)へ移行して(n+1)回目の判定を行い、位相が非反転の場合にはST[n+1]b(図示せず)へ移行して(n+1)回目の判定を行う。
【0059】
そして、最後に、CALBKは、m回目の判定として、ST[m]aの場合には(m−1)回目の判定ポイントから2(m−m)を差し引いた判定ポイントの位相と基準位相とを比較し、ST[m]bの場合には(m−1)回目の判定ポイントに2(m−m)を足し合わせた判定ポイントの位相と基準位相とを比較する。ST[m]a,ST[m]bにおいて位相反転が生じた場合にはST[m+1]aへ移行し、位相が非反転の場合にはST[m+1]bへ移行する。その結果、CALBKは、ST[m+1]aの場合にはm回目の判定における判定ポイントを補正最適点として登録し、ST[m+1]bの場合にはm回目の判定における判定ポイントに1を加えた点を補正最適点として登録する。
【0060】
具体例として、図10に示すように、例えばIM2補正パラメータの可変範囲がm=6(2=64点)の場合で、52点目が補正最適点の場合を想定する。まず、1回目の判定では基準位相(ここでは0点目の位相とする)と32点目の位相が非反転の関係であるため、32点目〜64点目の間に補正最適点があると判別され、その中間点となる48点目を判定ポイントとして2回目の判定が行われる。2回目の判定では基準位相と48点目の位相が非反転の関係であるため、48点目〜64点目の間に補正最適点があると判別され、その中間点となる56点目を判定ポイントとして3回目の判定が行われる。
【0061】
3回目の判定では基準位相と56点目の位相が反転の関係であるため、48点目〜56点目の間に補正最適点があると判別され、その中間点となる52点目を判定ポイントとして4回目の判定が行われる。4回目の判定では基準位相と52点目の位相が反転の関係であるため、48点目〜52点目の間に補正最適点があると判別され、その中間点となる50点目を判定ポイントとして5回目の判定が行われる。5回目の判定では基準位相と50点目の位相が非反転の関係であるため、50点目〜52点目の間に補正最適点があると判別され、その中間点となる51点目を判定ポイントとして6回目の判定が行われる。6回目の判定では基準位相と51点目の位相が非反転の関係であるため、結果として、52点目が補正最適点であると判断される。
【0062】
このように、図9のフローでは、IM2補正パラメータの2ビット分の可変範囲を2等分した上でどちら側の範囲に補正最適点(位相遷移点)があるかを判別し、補正最適点が存在する範囲を更に2等分した上でどちら側の範囲に補正最適点があるかを判別するといった処理がm回行われる。そして、このm回の判定処理によって、1ビットの補正最適点が絞り込まれる。このような二分探索法を用いると、2ビットの探索範囲に対して、m回の判定処理を行えばよいため、短い探索時間で補正最適点を見つけ出すことが可能になる。
【0063】
一方、比較例として、例えば、図3(a)のF301に示したような振幅レベルの検出を用いて補正最適点を探索する場合を想定する。この場合、二分探索法を用いることは困難となり、例えば次のような探索方式を用いる必要がある。まず、可変範囲を64ビットとして、例えば、その範囲を8ビットずつ8等分した各判定ポイントでIM2の振幅レベルを比較し、その中で最も振幅が小さかった判定ポイントを探索する。次いで、当該判定ポイントの±4ビットの範囲を1ビットずつスイープさせながら、振幅レベルの最小点を探索する。仮にこのような探索方式を用いた場合、計16回の判定処理が必要とされるが、図9の探索方式を用いた場合、計6回の判定処理で足りる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態1による高周波信号処理装置および無線通信システムを用いることで、代表的には、補正回路ブロックによる補正処理によって、受信系回路で生じ得る2次の相互変調歪みを低減することが可能になる。この際に、補正回路ブロックは、IM2ベクトルの位相の遷移点を検出することで補正最適点を探索するため、当該探索動作の容易化または高精度化や、当該探索時間の短縮等が図れる。
【0065】
(実施の形態2)
図11(a)、(b)は、本発明の実施の形態2による高周波信号処理装置において、その問題点の一例を示す説明図である。図11(a)には、前述した図2と同様の構成例を持つ高周波信号処理装置RFICが示されている。前述した実施の形態1では、図11(a)におけるIサイド(ミキサ回路MIXrx_I)の補正とQサイド(ミキサ回路MIXrx_Q)の補正とをそれぞれ独立して行う例を示した。しかしながら、実動作上は、MIXrx_IとMIXrx_Qは同時に動作する場合があり、図11(a)に示すように、MIXrx_IとMIXrx_Qとの間のIM2成分のリーク信号LK_IM2に伴い、IQ干渉が生じる場合がある。
【0066】
すなわち、図11(b)に示すように、例えば、Iサイド(MIXrx_I)を対象としたIM2補正パラメータの変動に伴い、Iサイドのみならず、Qサイド(MIXrx_Q)にも補正最適点が生じたり、あるいは、そのIサイドとQサイドを逆にしたような状況が生じる場合がある。具体的には、例えば、MIXrx_Iで生じたIM2成分がMIXrx_Q側にリークし、これがMIXrx_Qで生じたIM2成分に重畳する事態や、そのIサイドとQサイドを逆にしたような事態が生じる場合がある。IQ干渉が生じると、Iサイドの補正パラメータがQサイドに影響を及ぼし、Qサイドの補正パラメータがIサイドに影響を及ぼすため、Iサイドの補正とQサイドの補正を独立に行っただけでは、実動作上の補正最適点が得られない場合がある。また、IQ干渉を考慮してIサイドの補正とQサイドの補正を交互に何度か繰り返すような場合には、探索時間の増大が生じる恐れがある。そこで、本実施の形態2では、このような問題を鑑みて、IQ干渉の影響を考慮した補正最適点の探索方式について説明する。
【0067】
図12は、本発明の実施の形態2による高周波信号処理装置において、その補正最適点の探索方法の一例を示す説明図である。まず、S1201において、図11(a)の補正回路ブロックCALBKは、IサイドのIM2補正パラメータ(Pi)を変動させ、IサイドのIM2成分(IM2_I)の値が最小になる補正最適点(Ii)を探索する。このときIQ干渉によってQサイドのIM2成分(IM2_Q)にも変化が起こり、IM2_Qが最小になる点(Qi)が存在する。そこで、CALBKは、前述したIiに加えてこのQiも探索する。なお、このS1201の際には、QサイドのIM2補正パラメータ(Pq)は変化させずに、デフォルト設定(=0)に固定する。
【0068】
次いで、S1202において、CALBKは、QサイドのIM2補正パラメータ(Pq)を変動させ、QサイドのIM2成分(IM2_Q)の値が最小になる補正最適点(Qq)を探索する。このときIQ干渉によってIサイドのIM2成分(IM2_I)にも変化が起こり、IM2_Iが最小になる点(Iq)が存在する。そこで、CALBKは、前述したQqに加えてこのIqも探索する。なお、このS1202の際には、IサイドのIM2補正パラメータ(Pi)は変化させずに、デフォルト設定(=0)に固定する。なお、図12では、便宜上、IM2_I,IM2_Qを振幅レベルで示しているが、実際の探索方法は、実施の形態1で述べたように位相情報を用いて行われる。
【0069】
最後に、S1203において、CALBKは、S1201およびS1202で探索したIi,Qi,Iq,Qqを用いて、式(1)の演算を行うことでIQ干渉を考慮したIサイドの補正最適点Icalを算出し、式(2)の演算を行うことでIQ干渉を考慮したQサイドの補正最適点Qcalを算出する。
【0070】
Ical=Ii・Qi・(Iq−Qq)/(Iq・Qi−Ii・Qq) (1)
Qcal=Qq・Iq・(Qi−Ii)/(Qi・Iq−Qq・Ii) (2)
ここで、式(1)および式(2)の導出方法について説明する。図13(a)、(b)は、図12の補足図である。まず、図13(a)、(b)に示すように、縦軸をIM2_I[V]として、横軸をIサイドのIM2補正パラメータ(Pi)(図13(a))およびQサイドのIM2補正パラメータ(Pq)(図13(b))とした際に、その依存性に線形関係があると仮定する。また、IQ干渉を考慮した後のIM2_Iが最小となるPi値をIcal、IM2_Qが最小となるPq値をQcalとしたとき、Ical,Qcalの間には式(3)の関係があると仮定する。
【0071】
【数1】

【0072】
一方、図13(a)、(b)の幾何学的な関係から式(4)が得られる。式(3)に式(4)を反映させると、式(5)が導出される。Qサイドに関しても同様にして式(6)が導出され、式(5)と式(6)の連立方程式によって、前述した式(1)および式(2)が得られる。
【0073】
【数2】

【0074】
【数3】

【0075】
【数4】

【0076】
以上、本実施の形態2の高周波信号処理装置を用いることで、代表的には、実施の形態1で述べた各種効果に加えて、更に、IQ干渉の影響を考慮したより高精度な補正最適点を探索することが可能になる。この際に、特に、図12におけるQiやIqは、振幅レベルが小さくなり得るため振幅レベルでの検出が困難となる恐れがあるが、本実施の形態では位相を用いて検出を行うため、図11(a)のアンプ回路LAMPi,LAMPqで十分な増幅を行うことができ、容易な又は高精度な検出が可能となる。また、探索時間に関しても、前述した図10の例(m=6)の場合、Ii,Qi,Iq,Qqの各探索に伴い計24回の判定処理を行えばよく、短い探索時間で足りる。一方、比較例として例えばIQ干渉を考慮してIサイドの補正とQサイドの補正とを交互に何度か繰り返して行うような場合には、収束するまでに24回以上の判定処理が必要とされる場合がある。
【0077】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、実施の形態2とは異なる補正最適点の探索方式について説明する。図14は、本発明の実施の形態3による高周波信号処理装置において、その補正最適点の探索方法の一例を示すフロー図である。本実施の形態3による高周波信号処理装置の構成例は、前述した図2および図4の高周波信号処理装置RFICと同様である。図14において、まず、高周波信号処理装置RFICは、受信フロントエンドブロック(すなわち図1における受信系回路(LNA,MIXrx,BE)や、図2におけるTSGEN以外の回路に該当)をオン(活性状態)に制御する(S1401)。次いで、RFICは、テスト信号生成回路(図2および図4のTSGEN)をオン(活性状態)に制御する(S1402)。
【0078】
続いて、RFIC(例えば補正回路ブロックCALBK)は、Qサイドのミキサ回路(図2および図4のMIXrx_Q)をオフ(非活性状態)に制御し、この状態でテスト信号生成回路TSGENおよびCALBKを用いてIサイドのIM2補正(すなわち図2および図4のMIXrx_IのIM2補正パラメータの探索)を行う(S1403)。次いで、RFIC(例えばCALBK)は、Iサイドのミキサ回路(図2および図4のMIXrx_I)をオフに制御し、Qサイドのミキサ回路をオンに制御し、この状態でTSGENおよびCALBKを用いてQサイドのIM2補正(すなわち図2および図4のMIXrx_QのIM2補正パラメータの探索)を行う(S1404)。なお、ミキサ回路は、特に限定はされないが、例えばローカル信号LOrx_I又はLOrx_Qの入力を停止する(具体的には例えばLOrx_I又はLOrx_Qを出力するバッファ回路の動作を停止する)ことでオフ(非活性状態)に制御される。
【0079】
そして、RFICは、S1403およびS1404で探索されたMIXrx_IのIM2補正パラメータおよびMIXrx_QのIM2補正パラメータをMIXrx_I,MIXrx_Qに登録し、IM2補正を完了する(S1405)。このような探索方法を用いると、IQ干渉の影響を受けないIM2補正を容易に又は短時間で実現することが可能になる。実施の形態2の方式と比較すると、実動作上でMIXrx_IとMIXrx_Qが同時に動作する場合には、実施の形態3の方式では補正最適点に誤差が生じる恐れがあるため、この観点では、実施の形態2の方式を用いる方が望ましい。ただし、実施の形態2の方式では、例えば図12のQiやIqがIM2補正パラメータの可変範囲内に存在しないような場合も考えられるため、この観点では、実施の形態3の方式を用いる方が望ましい。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本実施の形態による高周波信号処理装置および無線通信システムは、特に、ダイレクトコンバージョン方式の受信回路を備え、FDD方式で送受信を行う高周波信号処理装置や、当該高周波信号処理装置を備えた携帯電話機等に適用して有益なものである。ただし、これに限らず、TDD方式で送受信を行う高周波信号処理装置や、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等といった様々な無線通信システムを含めて広く適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
ADC アナログ・ディジタル変換回路
ANT アンテナ
BBTSG テスト用ベースバンド信号生成回路
BE バックエンド回路
BGCTL バックゲート(基板電位)制御回路
BPF バンドパスフィルタ
CALBK 補正回路ブロック
DGCTL ディジタル補正回路
DIVN 分周回路
DPX デュプレクサ
DRV ドライバ回路(可変増幅回路)
FLT フィルタ回路
HPA 高周波電力増幅回路
ISO アイソレータ
LAMP アンプ回路
LNA ロウノイズアンプ回路
LOAD 負荷回路
LOGEN ローカル信号生成回路
LOTSG テスト用ローカル信号生成回路
MIX ミキサ回路
MN NMOSトランジスタ
MNDP 差動対トランジスタ
PGA 可変増幅回路
PHDET 位相検出回路
PHSFT 位相シフト回路
RFIC,RFIC’ 高周波信号処理チップ(高周波信号処理装置)
SAW SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ
SW スイッチ
TSGEN テスト信号生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1動作モードおよび第2動作モードを備え、
第1周波数成分と第2周波数成分を持つテスト信号を生成するテスト信号生成回路と、
前記第1動作モードの際に、第1信号としてアンテナによって受信される信号を伝送し、前記第2動作モードの際に、前記第1信号として前記テスト信号を伝送する第1スイッチと、
差動バランスを所定の可変範囲内で補正可能な差動回路で構成され、前記第1信号を前記第1信号よりも低い周波数帯の第2信号にダウンコンバートするミキサ回路と、
前記第2動作モードの際に、前記第2信号から前記第1周波数成分と前記第2周波数成分の差分の周波数成分を持つ第3信号を抽出し、前記第3信号の位相を検出する位相検出部と、
前記位相検出部の検出結果に応じて、前記ミキサ回路の前記差動バランスを変更する制御部とを有し、
前記ミキサ回路は、前記第1動作モードの際に、前記差動バランスが可変設定範囲内の第1補正値に設定された状態で動作し、
前記制御部は、前記第2動作モードの際に、前記差動バランスを変動させながら、当該差動バランスを最小変動幅で変動させた場合の前後で前記第3信号の位相が略180°遷移する遷移点を探索し、当該遷移点に対応する前記差動バランスを前記第1補正値として前記ミキサ回路に設定することを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の高周波信号処理装置において、
前記制御部は、二分探索法により前記差動バランスの可変範囲を順次2等分しながら前記遷移点に対応する前記差動バランスを探索することを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の高周波信号処理装置において、さらに、
前記ミキサ回路の後段に設けられるアナログ・ディジタル変換回路と、
所定のベースバンド処理を行うベースバンド回路と、
前記アナログ・ディジタル変換回路の出力を前記ベースバンド回路側に伝送するか、前記位相検出部側に伝送するかを選択する第2スイッチとを備え、
前記位相検出部は、前記第2信号を前記第2スイッチを介してディジタル信号として受けることを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の高周波信号処理装置において、
前記テスト信号生成回路は、
所定の周波数を持つテスト用ローカル信号を生成するテスト用ローカル信号生成回路と、
前記第1周波数成分と前記第2周波数成分の差分の周波数を持つテスト用ベースバンド信号を生成するテスト用ベースバンド信号生成回路と、
前記テスト用ベースバンド信号を2分周する分周回路と、
前記分周回路の出力信号を前記テスト用ローカル信号を用いてアップコンバートするテスト用ミキサ回路とを有し、
前記位相検出部は、
前記第3信号を抽出するディジタルフィルタ回路と、
前記ディジタルフィルタ回路の出力信号を増幅するディジタルアンプ回路と、
前記テスト用ベースバンド信号をディジタル信号に変換するテスト用アナログ・ディジタル変換回路と、
前記ディジタルアンプ回路の出力信号の位相を前記テスト用アナログ・ディジタル変換回路の出力信号の位相を基準として検出する位相検出回路とを有することを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項5】
請求項3記載の高周波信号処理装置において、
さらに、前記アンテナから前記第1スイッチまでの経路上に設けられるロウノイズアンプ回路を有することを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項6】
第1動作モードおよび第2動作モードを備え、
第1周波数成分と第2周波数成分を持つテスト信号を生成するテスト信号生成回路と、
前記第1動作モードの際に、第1信号としてアンテナによって受信される信号を伝送し、前記第2動作モードの際に、前記第1信号として前記テスト信号を伝送する第1スイッチと、
差動バランスを所定の可変範囲内で補正可能な差動回路で構成され、第1Aローカル信号を用いて前記第1信号を前記第1信号よりも低い周波数帯の第2A信号にダウンコンバートする第1Aミキサ回路と、
差動バランスを所定の可変範囲内で補正可能な差動回路で構成され、前記第1Aローカル信号とは位相が90°異なる第1Bローカル信号を用いて前記第1信号を第2B信号にダウンコンバートする第1Bミキサ回路と、
前記第2動作モードの際に、前記第2A信号から前記第1周波数成分と前記第2周波数成分の差分の周波数成分を持つ第3A信号を抽出し、前記第2B信号から前記第1周波数成分と前記第2周波数成分の差分の周波数成分を持つ第3B信号を抽出し、前記第3A信号の位相と前記第3B信号の位相とをそれぞれ検出する位相検出部と、
前記位相検出部による前記第3A信号の位相検出結果に応じて前記第1Aミキサ回路の前記差動バランスを変更し、前記位相検出部による前記第3B信号の位相検出結果に応じて前記第1Bミキサ回路の前記差動バランスを変更する制御部とを有し、
前記第1Aミキサ回路は、前記第1動作モードの際に、前記第1Aミキサ回路の前記差動バランスが可変設定範囲内の第1A補正値に設定された状態で動作し、
前記第1Bミキサ回路は、前記第1動作モードの際に、前記第1Bミキサ回路の前記差動バランスが可変設定範囲内の第1B補正値に設定された状態で動作し、
前記制御部は、前記第2動作モードの際に、
前記第1Aミキサ回路の前記差動バランスを変動させながら、当該差動バランスを最小変動幅で変動させた場合の前後で前記第3A信号の位相が略180°遷移する第1A遷移点を探索する第1処理と、
前記第1Bミキサ回路の前記差動バランスを変動させながら、当該差動バランスを最小変動幅で変動させた場合の前後で前記第3B信号の位相が略180°遷移する第1B遷移点を探索する第2処理と、
前記第1A遷移点に対応する前記差動バランスを前記第1A補正値として前記第1Aミキサ回路に設定し、前記第1B遷移点に対応する前記差動バランスを前記第1B補正値として前記第1Bミキサ回路に設定する第3処理とを実行することを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の高周波信号処理装置において、
前記制御部は、二分探索法により前記第1Aミキサ回路の前記差動バランスの可変範囲を順次2等分しながら前記第1A遷移点に対応する前記差動バランスを探索し、二分探索法により前記第1Bミキサ回路の前記差動バランスの可変範囲を順次2等分しながら前記第1B遷移点に対応する前記差動バランスを探索することを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の高周波信号処理装置において、
前記制御部は、
前記第1処理の際に、前記第1Bミキサ回路の前記差動バランスを固定した状態で前記第1Aミキサ回路の前記差動バランスを変動させながら、前記第1A遷移点に対応する前記差動バランスを探索することに加えて、さらに当該差動バランスを最小変動幅で変動させた場合の前後で前記第3B信号の位相が略180°遷移する第2B遷移点に対応する前記差動バランスを探索し、
前記第2処理の際に、前記第1Aミキサ回路の前記差動バランスを固定した状態で前記第1Bミキサ回路の前記差動バランスを変動させながら、前記第1B遷移点に対応する前記差動バランスを探索することに加えて、さらに当該差動バランスを最小変動幅で変動させた場合の前後で前記第3A信号の位相が略180°遷移する第2A遷移点に対応する前記差動バランスを探索し、
前記第3処理の際に、さらに、前記第1A遷移点に対応する前記差動バランスを「Ii」、前記第2B遷移点に対応する前記差動バランスを「Qi」、前記第1B遷移点に対応する前記差動バランスを「Iq」、前記第2A遷移点に対応する前記差動バランスを「Qq」として、
Ical=Ii・Qi・(Iq−Qq)/(Iq・Qi−Ii・Qq)
で算出されるIcalを前記第1A補正値として前記第1Aミキサ回路に設定し、
Qcal=Qq・Iq・(Qi−Ii)/(Qi・Iq−Qq・Ii)
で算出されるQcalを前記第1B補正値として前記第1Bミキサ回路に設定することを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項9】
請求項7記載の高周波信号処理装置において、
前記制御部は、前記第1処理の際には前記第1Bミキサ回路を非活性状態に制御し、前記第2処理の際には前記第1Aミキサ回路を非活性状態に制御することを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項10】
請求項7記載の高周波信号処理装置において、さらに、
前記第1Aミキサ回路の後段に設けられる第1Aアナログ・ディジタル変換回路と、
前記第1Bミキサ回路の後段に設けられる第1Bアナログ・ディジタル変換回路と、
所定のベースバンド処理を行うベースバンド回路と、
前記第1Aアナログ・ディジタル変換回路の出力を前記ベースバンド回路側に伝送するか、前記位相検出部側に伝送するかを選択する第2Aスイッチと、
前記第1Bアナログ・ディジタル変換回路の出力を前記ベースバンド回路側に伝送するか、前記位相検出部側に伝送するかを選択する第2Bスイッチとを備え、
前記位相検出部は、前記第2A信号を前記第2Aスイッチを介してディジタル信号として受け、前記第2B信号を前記第2Bスイッチを介してディジタル信号として受けることを特徴とする高周波信号処理装置。
【請求項11】
ベースバンドの周波数帯から所定の送信周波数帯にアップコンバートを行う送信回路と所定の受信周波数帯からベースバンドの周波数帯にダウンコンバートを行う受信回路とを含む高周波信号処理部と、
アンテナと、
前記アンテナに結合されるアンテナノードと、送信ノードおよび受信ノードとを備え、送信信号と受信信号とを周波数帯によって分離するデュプレクサと、
前記送信回路の出力信号を増幅し、前記送信ノードに向けて出力する電力増幅回路とを有し、
前記高周波信号処理部の前記受信回路は、
第1動作モードおよび第2動作モードを備え、
前記受信ノードからの前記受信信号を増幅するロウノイズアンプ回路と、
第1周波数成分と第2周波数成分を持つテスト信号を生成するテスト信号生成回路と、
前記第1動作モードの際に、第1信号として前記ロウノイズアンプ回路の出力信号を伝送し、前記第2動作モードの際に、前記第1信号として前記テスト信号を伝送する第1スイッチと、
差動バランスを所定の可変範囲内で補正可能な差動回路で構成され、前記第1信号を前記第1信号よりも低い周波数帯の第2信号にダウンコンバートするミキサ回路と、
前記第2動作モードの際に、前記第2信号から前記第1周波数成分と前記第2周波数成分の差分の周波数成分を持つ第3信号を抽出し、前記第3信号の位相を検出する位相検出部と、
前記位相検出部の検出結果に応じて、前記ミキサ回路の前記差動バランスを変更する制御部とを有し、
前記ミキサ回路は、前記第1動作モードの際に、前記差動バランスが可変設定範囲内の第1補正値に設定された状態で動作し、
前記制御部は、前記第2動作モードの際に、前記差動バランスを変動させながら、当該差動バランスを最小変動幅で変動させた場合の前後で前記第3信号の位相が略180°遷移する遷移点を探索し、当該遷移点に対応する前記差動バランスを前記第1補正値として前記ミキサ回路に設定することを特徴とする無線通信システム。
【請求項12】
請求項11記載の無線通信システムにおいて、
前記制御部は、二分探索法により前記差動バランスの可変範囲を順次2等分しながら前記遷移点に対応する前記差動バランスを探索することを特徴とする無線通信システム。
【請求項13】
請求項12記載の無線通信システムにおいて、
前記高周波信号処理部の前記受信回路は、さらに、
前記ミキサ回路の後段に設けられるアナログ・ディジタル変換回路と、
所定のベースバンド処理を行うベースバンド回路と、
前記アナログ・ディジタル変換回路の出力を前記ベースバンド回路側に伝送するか、前記位相検出部側に伝送するかを選択する第2スイッチとを備え、
前記位相検出部は、前記第2信号を前記第2スイッチを介してディジタル信号として受けることを特徴とする無線通信システム。
【請求項14】
請求項12記載の無線通信システムにおいて、
前記無線通信システムは、
前記高周波信号処理部の前記送信回路の出力ノードから前記送信ノードまでの経路上にSAWフィルタを備えず、
前記ロウノイズアンプ回路の出力ノードから前記ミキサ回路の入力ノードまでの経路上にSAWフィルタを備えないことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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