説明

高周波熱処理方法、及び高周波熱処理装置

【課題】大径軸部と小径軸部とを有する軸状部材の焼入処理を行う際に、1台の高周波熱処理装置を用いて各軸部の誘導加熱条件を最適化することができる高周波熱処理方法、及び高周波熱処理装置を提供する。
【解決手段】高周波熱処理装置1の制御装置16は、内軸10の大径軸部10aに対して焼入処理を行うときには、高周波発振機11から出力される電力が大径軸部用変成器14を介して大径軸部加熱コイル12に供給されるように制御し、内軸10の小径軸部10bに対して焼入処理を行うときには、高周波発振機11から出力される電力が小径軸部用変成器15を介して小径軸部加熱コイル13に供給されるように制御する。各軸部10a,10bの誘導加熱条件は、制御装置16により最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大径軸部と小径軸部とを有する軸状部材の表層を誘導加熱して焼入処理する高周波熱処理方法、及び高周波熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪用の転がり軸受装置として、外輪、玉、内輪を備えた複列玉軸受装置が広く知られている。こうした複列玉軸受装置としては、内輪を固定支持する内軸に対して、一列側の玉の軌道面を一体的に形成したものが多く採用されている(例えば特許文献1参照)。このため、軸状部材である内軸は、軌道面が形成される大径軸部と、内輪を固定支持するための小径軸部とを有している。
【0003】
また、この内軸には、玉や内輪を支持する剛性を確保するために、その表層に焼入処理が施されている。こうした焼入処理は、高周波熱処理装置を用いて行われる。図4は内軸100の焼入処理を行う高周波熱処理装置の概略構成図である。高周波熱処理装置は、高周波発振機101と変成器102と加熱コイル103とを備える。高周波発振機101から出力される電力は、変成器102を介して加熱コイル103に供給される。図5は内軸100と加熱コイル103との配置を示す概略断面図である。内軸100の大径軸部100aの外周側には、大径軸部100aを加熱するための加熱コイル部103aが配置されている。一方、内軸100の小径軸部100bの外周側には、小径軸部100bを加熱するための加熱コイル部103bが配置されている。そして、内軸100を回転させた状態で、内軸の表層を加熱コイル103の高周波誘導加熱により所定温度に加熱した後、冷却液にて急冷することで大径軸部100a及び小径軸部100bに焼入硬化層104を形成するようにしている。
【0004】
ところで、内軸100のような軸状部材の焼入処理を行う際、1台の高周波熱処理装置により大径軸部100aや小径軸部100bといった肉厚差のある部分を同時に焼入れしているため、各軸部に合わせた誘導加熱条件の設定が困難となっている。すなわち、各軸部の肉厚や形状による熱容量の差によって各軸部に加熱むらが生じるため、焼入硬化層104の深さがばらついて、表層の硬さが不均一になり易いという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献2に示されるように、大径軸部100aを誘導加熱するための加熱コイル部103aの長さを、小径軸部100bを誘導加熱するための加熱コイル部103bの長さよりも長くした高周波熱処理装置が提案されている。この高周波熱処理装置では、熱容量の大きい大径軸部100aの加熱度合いを、熱容量の小さい小径軸部100bの加熱度合いよりも大きくし、各軸部の加熱バランスをとっている。これにより、各軸部に発生する加熱むらを抑制し、表層の硬さが均一になるようにしている。
【特許文献1】特開2003−074569号公報
【特許文献2】特開2002−180128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に示されるような高周波熱処理装置では、大径軸部100aを誘導加熱するための加熱コイル部103aと、小径軸部100bを誘導加熱するための加熱コイル部103bとが一体の加熱コイル103として形成されているため、発振周波数、加熱時間、加熱出力、軸状部材の回転速度が所定の条件に設定されてしまう。このため、各軸部の誘導加熱条件を最適化することが、やはり困難なものとなっている。また、軸状部材の広範囲を一度に焼入処理するため、出力の大きい高周波発振機が必要となる。これらの課題に対応するために、個別の高周波熱処理装置を用いて別工程で焼入処理することが考えられるが、焼入処理の所要時間や設備費用が増加してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、大径軸部と小径軸部とを有する軸状部材の焼入処理を行う際に、1台の高周波熱処理装置を用いて各軸部の誘導加熱条件を最適化することができる高周波熱処理方法、及び高周波熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、1台の高周波熱処理装置を用いて、大径軸部と小径軸部とを有する軸状部材の表層を、前記軸状部材を回転させた状態で誘導加熱して焼入処理する高周波熱処理方法において、前記大径軸部を焼入処理する第1熱処理工程と、前記小径軸部を焼入処理する第2熱処理工程とを有し、第1熱処理工程と第2熱処理工程とで、加熱出力、加熱時間、及び前記軸状部材の回転速度の少なくとも1つを変更することをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、軸状部材の大径軸部と小径軸部とは、個別の第1熱処理工程と第2熱処理工程とによりそれぞれ焼入処理が行われるため、大径軸部の焼入処理と小径軸部の焼入処理とが1台の高周波熱処理装置を用いて時系列的に行われる。そして、第1熱処理工程と第2熱処理工程とで、加熱出力、加熱時間、及び前記軸状部材の回転速度の少なくとも1つが変更されるため、各軸部の誘導加熱条件を最適化することができる。すなわち、大径軸部及び小径軸部を誘導加熱する際に、各軸部に最適な加熱出力、加熱時間、及び前記軸状部材の回転速度を設定しておくことができ、焼入品質を向上させることができる。例えば、熱容量の大きい大径軸部を誘導加熱するときには、加熱出力を相対的に大きく設定するとともに、加熱時間を相対的に長く設定する一方、熱容量の小さい小径軸部を誘導加熱するときには、加熱出力を相対的に小さく設定するとともに、加熱時間を相対的に短く設定する。
【0010】
このように誘導加熱条件を変更することによって、1台の高周波熱処理装置を用いて各軸部の誘導加熱条件の最適化を図ることができるため、各軸部の焼入処理に対応して複数台の高周波熱処理装置を用いる必要がなくなる。また、各軸部の誘導加熱条件が最適化されることから、加熱効率を上昇させることができるため、各軸部の加熱時間を短縮することができ、加熱に起因する軸状部材の変形を極力抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、大径軸部と小径軸部とを有する軸状部材の表層を誘導加熱して焼入処理する高周波熱処理装置において、高周波発振機と、前記大径軸部を誘導加熱する大径軸部加熱コイルと、前記小径軸部を誘導加熱する小径軸部加熱コイルと、大径軸部加熱コイルに電流を供給する大径軸部用変成器と、小径軸部加熱コイルに電流を供給する小径軸部用変成器と、前記高周波発振機の電力を大径軸部用変成器及び小径軸部用変成器のいずれか一方に選択的に出力する切換手段とを備えることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、高周波熱処理装置は、大径軸部を誘導加熱する大径軸部加熱コイルと小径軸部を誘導加熱する小径軸部加熱コイルとのそれぞれに対応して個別に変成器が設けられ、高周波発振機の電力を大径軸部用変成器及び小径軸部用変成器のいずれか一方に選択的に出力する切換手段を備える。このため、切換手段によって軸状部材の大径軸部を誘導加熱する状態と小径軸部を誘導加熱する状態との切換えを行うことができる。従って、各軸部をそれぞれ誘導加熱する際に、加熱出力、加熱時間、及び前記軸状部材の回転速度といった誘導加熱条件を個別に最適化しておくことができ、焼入品質を向上させることができる。また、切換手段の切換えにより、各軸部の加熱コイルに対応した変成器ごと切換えられるように構成されるため、1つの高周波発振機を使用しつつ、変成器の仕様を各軸部の誘導加熱態様に整合させたものに設定しておくことができる。
【0013】
このようにして、1台の高周波熱処理装置を用いて各軸部の誘導加熱条件を最適化することができるため、各軸部の焼入処理に対応して複数台の高周波熱処理装置を用いる必要がなくなる。また、各軸部の誘導加熱条件が最適化されることから、加熱効率を上昇させることができるため、各軸部の加熱時間を短縮することができ、加熱に起因する軸状部材の変形を極力抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸状部材の大径軸部の焼入処理工程と、軸状部材の小径軸部の焼入処理工程とが、1台の高周波熱処理装置を用いて時系列的に行われ、各焼入処理工程で、加熱出力、加熱時間、及び前記軸状部材の回転速度の少なくとも1つが変更されるため、各軸部の誘導加熱条件を最適化することができ、焼入品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜3を参照して、本発明に係る高周波熱処理方法、及び高周波熱処理装置を具体化した一実施形態について説明する。図1は高周波熱処理装置1の概略構成図である。高周波熱処理装置1は、複列玉軸受装置の内軸10を誘導加熱して焼入処理するものである。高周波熱処理装置1の対象ワークとなる内軸10には、複列玉軸受の一列側の玉の内周軌道面と、他列側の玉の内周軌道面を備えた内輪を固定支持する支持部とが形成されている。このため、軸状部材としての内軸10は、軌道面が形成される大径軸部10aと、支持部が形成される小径軸部10bとを有している。
【0016】
高周波熱処理装置1は、高周波発振機11と、内軸10の大径軸部10aを誘導加熱する大径軸部加熱コイル12と、内軸10の小径軸部10bを誘導加熱する小径軸部加熱コイル13と、大径軸部加熱コイル12に電流を供給する大径軸部用変成器14と、小径軸部加熱コイル13に電流を供給する小径軸部用変成器15とを備える。
【0017】
高周波発振機11は、図示しない電源から供給される電流を変換して、高周波電力を出力する。大径軸部加熱コイル12は、内軸10の大径軸部10aの外周側に設けられ、大径軸部10aと同軸上に所定の隙間をもって配置される。一方、小径軸部加熱コイル13は、内軸10の小径軸部10bの外周側に設けられ、小径軸部10bと同軸上に所定の隙間をもって配置される。
【0018】
大径軸部用変成器14は、高周波発振機11から出力される高周波電力を、大径軸部10aの焼入処理に必要な電圧及び電流に整合し、大径軸部加熱コイル12に電流を供給する。小径軸部用変成器15は、高周波発振機11から出力される高周波電力を、小径軸部10bの焼入処理に必要な電圧及び電流に整合し、小径軸部加熱コイル13に電流を供給する。
【0019】
高周波熱処理装置1は、焼入処理の制御を行う制御装置16を備える。制御装置16は、高周波発振機11の周波数及び電力を制御することにより、焼入処理を行う際の加熱出力を設定する。また、制御装置16は、高周波発振機11が高周波電力を出力する時間を制御することにより、焼入処理を行う際の加熱時間を設定する。さらに、制御装置16は、内軸10を保持する回転治具17を駆動制御することで、焼入処理が行われるときに内軸10を所定の回転速度で回転させる。このようにして、高周波熱処理装置1の制御装置16は、内軸10の各軸部10a,10bの誘導加熱条件が最適化されるように、加熱出力、加熱時間、及び内軸10の回転速度を設定する。また、制御装置16は、内軸10の各軸部10a,10bを誘導加熱した後に各軸部10a,10bを冷却するための冷却装置18を駆動制御する。
【0020】
また、制御装置16は、高周波発振機11の電力を大径軸部用変成器14及び小径軸部用変成器15のいずれか一方に選択的に出力する切換制御を行う。すなわち、切換手段としての制御装置16は、内軸10の大径軸部10aに対して焼入処理を行うときには、高周波発振機11から出力される電力が大径軸部用変成器14を介して大径軸部加熱コイル12に供給されるように制御する。一方、内軸10の小径軸部10bに対して焼入処理を行うときには、高周波発振機11から出力される電力が小径軸部用変成器15を介して小径軸部加熱コイル13に供給されるように制御する。
【0021】
図2は高周波熱処理装置1の電気回路構成を示す概略図である。高周波発振機11から出力される高周波電力は、スイッチ21,22を介して大径軸部用変成器14又は小径軸部用変成器15に供給される。スイッチ21,22は、制御装置16によりON/OFF状態の切換えが行われるように構成され、これにより前述の切換制御が行われる。高周波発振機11から各変成器14,15に供給された高周波電力は、各変成器14,15を構成するトランス23,24でそれぞれ整合される。そして、整合された電流が、大径軸部用変成器14から大径軸部加熱コイル12に、又は小径軸部用変成器15から小径軸部加熱コイル13に供給される。
【0022】
次に、高周波熱処理装置1を用いて内軸10の各軸部10a,10bを焼入処理する高周波熱処理方法について説明する。図3は高周波熱処理方法の手順を示すフローチャートである。内軸10に対して焼入処理を行う際には、回転治具17で内軸10を保持して、内軸10の各軸部10a,10bがそれぞれ大径軸部加熱コイル12及び小径軸部加熱コイル13に対向するように位置決めする(ステップS110)。
【0023】
次いで、高周波熱処理装置1は、内軸10の大径軸部10aに対して焼入処理(第1熱処理工程)を実行する(ステップS120)。大径軸部10aの焼入処理が行われるときには、制御装置16は、スイッチ21がON状態となりスイッチ22がOFF状態となるように制御する。そして、制御装置16は、大径軸部10aの形状等に基づいて誘導加熱条件が最適化されるような、加熱出力、加熱時間、及び内軸10の回転速度を以って大径軸部10aの誘導加熱を行う。誘導加熱を行った後は、冷却装置18を駆動制御して大径軸部10aを冷却する。
【0024】
次いで、制御装置16は、スイッチ21がOFF状態となりスイッチ22がON状態となるようにスイッチ21,22の状態を切換えて、電流が供給される加熱コイルを大径軸部加熱コイル12から小径軸部加熱コイル13に切換える(ステップS130)。そして、高周波熱処理装置1は、内軸10の小径軸部10bに対して焼入処理(第2熱処理工程)を実行する(ステップS140)。制御装置16は、小径軸部10bの形状等に基づいて誘導加熱条件が最適化されるような、加熱出力、加熱時間、及び内軸10の回転速度を以って小径軸部10bの誘導加熱を行う。誘導加熱を行った後は、冷却装置18を駆動制御して小径軸部10bを冷却する。
【0025】
以上のように、大径軸部10aの焼入処理と小径軸部10bの焼入処理とが時系列的に実行され、内軸10の焼入処理が終了する。なお、大径軸部10aは、小径軸部10bに比べて肉厚に形成されて熱容量が大きくなることから、焼入処理が実行される際に設定される誘導加熱条件や冷却条件は、大径軸部10aを焼入処理する場合と小径軸部10bを焼入処理する場合とで異なるものとなっている。
【0026】
すなわち、ステップS120において大径軸部10aの誘導加熱が行われる際には、加熱出力が相対的に大きく設定されるとともに、加熱時間が相対的に長く設定され、冷却装置18による冷却時間も加熱時間に合わせて長く設定される。一方、ステップS140において小径軸部10bの誘導加熱が行われる際には、加熱出力が相対的に小さく設定されるとともに、加熱時間が相対的に短く設定され、冷却装置18による冷却時間も加熱時間に合わせて短く設定される。このようにして、焼入処理される箇所の形状等に基づいて誘導加熱条件や冷却条件を切換えることができるため、1台の高周波熱処理装置1を用いながら、各軸部10a,10bの誘導加熱条件や冷却条件の最適化を図ることができる。
【0027】
上記実施形態の高周波熱処理方法、及び高周波熱処理装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、高周波熱処理装置1は、制御装置16がスイッチ21,22の切換えを行うことで、内軸10の大径軸部10aの焼入処理と内軸10の小径軸部10bの焼入処理とを時系列的に実行する。すなわち、大径軸部10aに対して焼入処理を行うときには、高周波発振機11から出力される電力が大径軸部用変成器14を介して大径軸部加熱コイル12に供給されるようにし、小径軸部10bに対して焼入処理を行うときには、高周波発振機11から出力される電力が小径軸部用変成器15を介して小径軸部加熱コイル13に供給されるようにする。このため、各軸部10a,10bをそれぞれ誘導加熱する際に、加熱出力、加熱時間、及び内軸10の回転速度といった誘導加熱条件を個別に最適化しておくことができ、焼入品質を向上させることができる。また、スイッチ21,22の切換えにより、各加熱コイル12,13に対応して設けられる変成器14,15も切換えられるため、各変成器14,15の仕様を各軸部10a,10bの誘導加熱態様に整合させたものに設定しておくことができる。
【0028】
(2)上記実施形態では、内軸10の大径軸部10aに対する焼入処理と内軸10の小径軸部10bに対する焼入処理とは個別の工程で時系列的に行われ、各工程では加熱出力、加熱時間、及び内軸10の回転速度といった誘導加熱条件が最適となるように変更される。このため、各工程で焼入処理される箇所の形状や熱容量に応じて、最適な誘導加熱条件を設定しておくことができ、焼入品質を向上させることができる。また、各軸部10a,10bの誘導加熱条件が最適化されることから、加熱効率を上昇させることができるため、各軸部10a,10bの加熱時間を短縮することができ、加熱に起因する内軸10の変形を極力抑えることができる。
【0029】
(3)上記実施形態では、1台の高周波熱処理装置1を用いて、内軸10の各軸部10a,10bの誘導加熱条件を最適化することができるため、各軸部10a,10bの焼入処理を、焼入品質を確保しながら同一のステージで行うことができる。このため、各軸部10a,10bの焼入処理に対応して複数台の高周波熱処理装置を用いる必要がなくなり、内軸10の位置決め工程の短縮化や設備費用の削減を図ることができる。
【0030】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、高周波熱処理装置1の対象ワークとして、複列玉軸受装置の内軸10を用いているが、大径軸部と小径軸部とを有する軸状部材であれば、他の部材を対象ワークとして用いてもよい。例えば、長軸のピニオンシャフトを焼入処理する高周波熱処理装置についても、本発明と同様の原理を適用することができる。
【0031】
・上記実施形態では、大径軸部と小径軸部とを有する軸状部材の焼入処理を行う高周波熱処理装置について記載したが、例えば大径軸部と中径軸部と小径軸部とを有するような多段の軸状部材の焼入処理を行う高周波熱処理装置についても、複数の加熱コイルを切換えて誘導加熱することにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0032】
・また、大径軸部と小径軸部とが交互に配置される軸状部材の焼入処理を行う高周波熱処理装置についても、各大径軸部及び各小径軸部に設けられる2組の加熱コイルを切換えて誘導加熱することにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
・上記実施形態では、図3に示す高周波熱処理方法の手順において、大径軸部10aの焼入処理工程の後に小径軸部10bの焼入処理工程を行うようにしているが、小径軸部10bの焼入処理工程の後に大径軸部10aの焼入処理工程を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】高周波熱処理装置の概略構成図。
【図2】高周波熱処理装置の電気回路構成を示す概略図。
【図3】高周波熱処理方法の手順を示すフローチャート。
【図4】従来例における高周波熱処理装置の概略構成図。
【図5】従来例における高周波熱処理装置の加熱コイルの配置を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0035】
1…高周波熱処理装置、10…内軸、11…高周波発振機、12…大径軸部加熱コイル、13…小径軸部加熱コイル、14…大径軸部用変成器、15…小径軸部用変成器、16…制御装置、17…回転治具、18…冷却装置、21,22…スイッチ、23,24…トランス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の高周波熱処理装置を用いて、大径軸部と小径軸部とを有する軸状部材の表層を、前記軸状部材を回転させた状態で誘導加熱して焼入処理する高周波熱処理方法において、
前記大径軸部を焼入処理する第1熱処理工程と、前記小径軸部を焼入処理する第2熱処理工程とを有し、
第1熱処理工程と第2熱処理工程とで、加熱出力、加熱時間、及び前記軸状部材の回転速度の少なくとも1つを変更する
ことを特徴とする高周波熱処理方法。
【請求項2】
大径軸部と小径軸部とを有する軸状部材の表層を誘導加熱して焼入処理する高周波熱処理装置において、
高周波発振機と、前記大径軸部を誘導加熱する大径軸部加熱コイルと、前記小径軸部を誘導加熱する小径軸部加熱コイルと、大径軸部加熱コイルに電流を供給する大径軸部用変成器と、小径軸部加熱コイルに電流を供給する小径軸部用変成器と、前記高周波発振機の電力を大径軸部用変成器及び小径軸部用変成器のいずれか一方に選択的に出力する切換手段とを備える
ことを特徴とする高周波熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−179847(P2008−179847A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12948(P2007−12948)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】