説明

高周波誘電加熱定着装置、画像形成装置

【課題】電極と紙の間が回転可能な搬送ガイドにより位置が規制されるので高周波電力が一様に伝わり、その結果均一な定着性能が得られる高周波誘電加熱定着装置、画像形成装置を提供する。
【解決手段】紙3の搬送手段2、4、5と高周波発生装置14を有し、紙3上のトナーやインクを加熱して定着させる定着装置である。複数の棒状電極1を紙面に平行にかつ紙搬送方向に直行する方向に設ける。電極1に高周波発生装置14から高周波電力を印加し、トナーやインクを溶解または乾燥させて紙に定着させる。電極1を誘電損失の低い材質で作られた被覆材で被覆し、複数の回転可能な搬送ガイド7を設け、搬送手段2と搬送ガイド7で紙3を挟持し、電極1と紙3の距離Lを一定に保ちながら搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ等の画像形成装置と、これに用いるのに適する高周波誘電加熱定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波誘電加熱を定着に利用する試みは古くからあり、数十MHz高周波の掛かった一対の平板電極間に紙を通し、トナーの誘電損失による熱で定着させる例がある(例えば特許文献1参照)。しかし実際には一対の電極であると薄いものには充分に高周波電力が伝わらず、トナーを溶解、定着させる温度には達しない。薄い物に高周波電力を効率良く伝えるためには、複数の棒状電極の構成が良い(例えば特許文献2参照)。これを定着に応用すると、図2に示すように、電極1a、1bの近傍を、未定着トナーまたは未乾燥インク6を載せた紙3が通過し、電磁力線15の作用により定着される。但しこの構成は、紙3と電極1との距離(電極−紙間距離)によって効率が非常に変化し、この距離が小さいとショートの原因となり、大きいと電力が伝わらず定着不良となる。この点に着目し、マイクロ波の照射口と紙の間にスペース保持手段を設けたものがある(例えば特許文献3参照)。しかしこれでは確かに前記距離が小さくなる方向は防げても、大きくて定着不良になることは防げない。
【特許文献1】特公昭49−38171号公報
【特許文献2】特許第3534840号公報
【特許文献3】特開昭57−97559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記従来の問題点にかんがみ、紙を両側から押さえることで紙の位置を規制し、上述の不具合を無くすことを可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る高周波誘電加熱定着装置は、紙の搬送手段と高周波の発生手段を有し、紙上のトナーやインクを加熱して定着させる定着装置であって、複数の棒状電極を紙面に平行にかつ紙搬送方向に直行する方向に設け、該電極に前記高周波発生手段から高周波電力を印加し、トナーやインクを溶解または乾燥させて紙に定着させる定着装置において、前記電極を誘電損失の低い材質で作られた被覆材で被覆するとともに、複数の回転可能な搬送ガイドを設け、前記搬送手段と前記回転可能な搬送ガイドで紙を挟持しかつ電極と紙の距離を一定に保ちながら搬送可能としてなることを特徴とする。
【0005】
前記被覆材の一部が棒状電極を軸として回転可能で、前記搬送ガイドを形成している構成とすることができる。
【0006】
前記棒状電極が、誘電損失の低い材質からなる被覆用の板状体内に前記回転可能な搬送ガイドが取り付けてある構成とすることができる。
【0007】
前記板状体に溝を設けて前記棒状電極と前記回転可能な搬送ガイドが取り付けてある構成とすることができる。
【0008】
前記回転可能な搬送ガイドが、紙との接触部の面積が小さくしかも断続的に接触するよう拍車形状である構成とすることができる。
【0009】
また本発明に係る画像形成装置は、前記定着手段が前記のいずれかの高周波誘電加熱定着装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、電極と紙の間が回転可能な搬送ガイドにより位置が規制されるので高周波電力が一様に伝わり、その結果均一な定着性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の第1実施例を示す図である。図中1(1a、1b)は高周波印加電極で、電極1a、1bはそれぞれ極性が異なるように交互に並び、この間で図示していない高周波発生装置より3〜100MHz程度の高周波を印加する。なお図示の例では電極1aが3本、電極1bが2本の構成となっているが、勿論本数はその所望の特性に合わせて変える必要がある。
【0013】
図中7は、誘電損失の低い材質、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等で作られ、電極1に回転自在に取り付けられた搬送ガイドで、搬送手段2の搬送ベルト上の紙3を挟持して搬送する。
【0014】
図4は電極1への取り付け例である。電極1にパイプ材12を回動可能に被せ、数本のパイプ材の間に回転可能な搬送ガイド7を挟む形で入れる。このようにすることで、回転可能な搬送ガイド7が電極1に対して回転可能となる。勿論パイプ材12は誘電損失の低い材質で構成する。図中4は搬送のための駆動ローラ、5は従動ローラである。
【0015】
図2は電極部の拡大図である。電極1a、1bの間に高周波による電場が力線15で示されている。紙3上に載った未定着トナーまたは未乾燥インク6は、この交番する電場の影響で高周波誘電加熱の原理で熱せられ紙上に定着される。図3において、電極1の下部と紙間の距離をLとしているが、高周波電力の紙への伝達効率は距離Lが近いほど高く、離れると著しく低下する。伝達効率が下がると定着に必要な温度に上がらず、定着不良の原因となる。また距離Lが0となり、紙が電極に接触すると放電が起こりショートによるダウンに繋がる。ゆえに良好な定着品質を得るためには、距離Lが常に一定に保たれている必要がある。本例の装置は、回転可能な搬送ガイド7と搬送ベルト2の間に紙3が挟持されて搬送される形式なので、電極−紙間距離Lが一定に保たれる。そのため、一様な定着性能を得ることができる。
【0016】
図5はショートを防ぐため電極1を誘電損失が低い材質で作った板状の被覆材9で覆った例を示す。この場合、図6に示すように被覆板9に回転可能な搬送ガイド7及び軸8が入り込む形状の穴を設け、その穴に挿入後に電極−紙間距離Lが所定の距離になるように構成しておく。勿論、軸8も誘電損失が低い材質で作る必要がある。図6中の符号10は固定爪で、軸8は挿入するだけで固定される。
【0017】
以上のように、図3または図5のように回転可能な搬送ガイド7とこの例の場合の搬送手段である搬送ベルト2に紙3が挟持され、電極1からの距離Lを一定に保ちながら搬送されることで、紙3上のトナーまたはインク6は均一に加熱され良好な定着状態を得ることができる。
【実施例2】
【0018】
図7は前述の回転可能な搬送ガイド7の形状が拍車の形状である実施例である。図1の実施例の搬送ガイド7と同様に、電極1に回転可能に取り付けられている拍車11は、周縁部がギザギザ状の薄い円盤である。この実施例は、例えばインクジェットプリンタの作像直後の画像面側に使われる。紙との接触部分の面積が小さい点々になり画像への悪影響が少ない。本実施例でも、未定着状態のトナーまたはインクを直接押さえるので、拍車11は画像への悪影響を押さえるために非常に有効である。
【0019】
図8は拍車11の電極1への取り付け例を示す図である。電極1にパイプ材12を回動可能に被せ、数本のパイプ材の間に拍車11を挟む形で入れる。このようにすることで、拍車11は電極1に対し回転可能となる。勿論、拍車11は誘電損失の低い材質で構成する。
【0020】
図10は、上述の図5の例と同様に、ショートを防ぐために電極1を誘電損失が低い材質で作った板状の被覆材9で覆った例である。図11に示すように、被覆板9に回転可能な搬送ガイド11及び軸13が入り込む形状の穴を設け、穴に挿入後に電極−紙間距離Lが所定の距離になるように構成しておく。勿論、軸13も誘電損失が低い材質で作られている必要がある。なお、図11中の10も固定爪で、軸13は挿入するだけで固定される。
【0021】
以上のように、図9または図10のように回転可能な搬送ガイド拍車11とこの例の場合の搬送手段である搬送ベルト2に紙3が挟持され、電極1からの距離Lを一定に保ちながら搬送されることで、紙3上のトナーまたはインクは均一に加熱され良好な定着状態を得ることができる。
【実施例3】
【0022】
図12は本発明に係る高周波誘電加熱定着装置の一例を電子写真プロセスに使用した例を示す概念図である。図中20は感光ドラムであり、チャージャ16で電荷をチャージし、露光し(符号17)、現像装置18で現像し、ついで紙3上に転写して未定着画像を形成し、定着部の搬送機構(搬送ベルト2と、ローラ4、5)へ送る。すると、高周波発生装置14で発生させた高周波が電極1を通じて紙3上に照射し、紙3上のトナーを定着させる。
【実施例4】
【0023】
また図13は本発明に係る高周波誘電加熱定着装置の一例をインクジェトプリンターに応用した例を示す概念図である。図中19はインクジェットヘッドであり、未乾燥の画像を紙3上に作成し、定着部の搬送機構へ送り、高周波発生装置14で発生させた高周波が電極1を通じて紙3上に照射し、紙3上の未乾燥インクを乾燥、定着させる。
【0024】
すなわち本発明では、電極と紙の間が回転可能な搬送ガイドにより位置が規制されるので高周波電力が一様に伝わり、その結果均一な定着性能が得られる。また、電極自体を軸にして回転可能な搬送ガイドが取り付けられているため、回転のための軸を設ける必要がなくコストダウンに繋がる。また、ショートを防ぐための電極被覆板に直接回転可能な搬送ガイドが取り付けて、他の部品を介さないため、精度良く位置を規制することができる。また回転可能な搬送ガイドを拍車状に構成して、未定着画像への悪影響を最小にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例の斜視図
【図2】高周波誘電加熱による定着装置における電極部の拡大図
【図3】高周波誘電加熱による定着装置における電極の下部と紙間の距離を示す図
【図4】図3の構成での電極への搬送ガイドの取り付け例を示す図
【図5】図3の構成で電極を誘電損失が低い材質で作った板状の被覆材で覆った例を示す図
【図6】図5の構成での電極への搬送ガイドの取り付け例を示す図
【図7】本発明の第2実施例の斜視図
【図8】図7の構成での電極への拍車の取り付け例を示す図
【図9】拍車を用いた高周波誘電加熱による定着装置の構成を示す図
【図10】図7の構成で電極を誘電損失が低い材質で作った板状の被覆材で覆った例を示す図
【図11】図10の構成での電極への拍車の取り付け例を示す図
【図12】本発明に係る高周波誘電加熱定着装置の一例を電子写真プロセスに使用した例を示す概念図
【図13】本発明に係る高周波誘電加熱定着装置の一例をインクジェトプリンターに応用した例を示す概念図
【符号の説明】
【0026】
1(1a、1b) 高周波印加電極
2 搬送手段
3 紙
4 駆動ローラ
5 従動ローラ
6 未乾燥インク
7 搬送ガイド
8 軸
9 被覆材
10 固定爪
11 拍車
12 パイプ材
13 軸
14 高周波発生装置
15 力線
16 チャージャ
17 露光
18 現像装置
19 インクジェットヘッド
20 感光ドラム
L 電極の下部と紙間の距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙の搬送手段と高周波の発生手段を有し、紙上のトナーやインクを加熱して定着させる定着装置であって、複数の棒状電極を紙面に平行にかつ紙搬送方向に直行する方向に設け、該電極に前記高周波発生手段から高周波電力を印加し、トナーやインクを溶解または乾燥させて紙に定着させる定着装置において、前記電極を誘電損失の低い材質で作られた被覆材で被覆するとともに、複数の回転可能な搬送ガイドを設け、前記搬送手段と前記回転可能な搬送ガイドで紙を挟持しかつ電極と紙の距離を一定に保ちながら搬送可能としてなることを特徴とする高周波誘電加熱定着装置。
【請求項2】
前記被覆材の一部が棒状電極を軸として回転可能で、前記搬送ガイドを形成していることを特徴とする請求項1の高周波誘電加熱定着装置。
【請求項3】
前記棒状電極が、誘電損失の低い材質からなる被覆用の板状体内に前記回転可能な搬送ガイドが取り付けてあることを特徴とする請求項1の高周波誘電加熱装置。
【請求項4】
前記板状体に溝を設けて前記棒状電極と前記回転可能な搬送ガイドが取り付けてあることを特徴とする請求項3の高周波誘電加熱装置。
【請求項5】
前記回転可能な搬送ガイドが、紙との接触部の面積が小さくしかも断続的に接触するよう拍車形状であることを特徴とする請求項2または3の高周波誘電加熱定着装置。
【請求項6】
未定着画像を形成する画像形成手段と未定着画像を定着させる定着手段を備えた画像形成装置において、前記定着手段が請求項1から5のいずれかの高周波誘電加熱定着装置であることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−129540(P2008−129540A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317624(P2006−317624)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】