説明

高品質サーモンジャーキーとその製造方法

【課題】酒のおつまみや珍味として食して好適な秋鮭に塩味または調味液の味付けをしたうえ乾燥してなるサーモンジャーキー(秋鮭の味付き乾物)の品質を改良して商品価値の高い商品を製造する方法を提供する。
【解決手段】冷凍した秋鮭のフィレ身肉を皮付きのまま厚さ7mm〜13mmにスライスした切身を、着色料を含む塩水又は着色料と塩分と砂糖とを含む調味液に浸漬して、その切身の身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで均一に浸透させ、55℃〜75℃のお湯又は塩水中で加熱殺菌するとともに、乾燥して身肉の水分量を20%〜50%にするとともに、その水分活性を0.25以下にしたことを特徴とする高品質サーモンジャーキーとその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒のおつまみや珍味として食すると好適な秋鮭に、塩味または調味液の味付けをしたうえ、乾燥してなるサーモンジャーキー(秋鮭の味付き乾物)の品質を改良して商品価値の高い商品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
秋鮭は、秋に北海道や東北地方の生まれた川の沿岸へ産卵のために戻ってくる鮭のことである。その種類は、サケ科のシロサケである。その成熟度合いによってランク別に、メジカ、ギンケ、Aブナ、Bブナ、Cブナなどと進行する。このような産卵回遊期の秋鮭は、産卵が近づけば近づくほど長い回遊による体成分の消耗で、脂肪含量が索餌回遊期よりも少なくなるとともに、筋肉の肉質や色調や香味が劣ってくる。その程度は漁獲の場所、時期などで異なるのみでなく、成熟度の違いによる固体差も大きい。このように食品としての品質が不安定であるうえ、脂肪含量が少なく、筋肉が軟化し、色調や香味も劣ってくるので、消費者の肉質評価が低く、その魚価も安価である。このように秋鮭は、肉質面で劣っており原料として不利なため、昔からその利用態様が限られていた。伝統的には、セミドレスやフィレの秋鮭を山漬け、改良山漬け、新巻、トバ(乾製品)、などの塩蔵品や乾燥品に加工されてきたが、いずれも安価な普及品として流通するものであって、人気のある高級品にはなり得なかった。このような秋鮭の需要を増大させるために、その肉質特性を把握して肉質を改良する方法を工夫しているが、近年は河川の汚染から秋鮭が大腸菌やビブリオ菌などの下痢性菌に汚染されている虞があることが判明して、秋鮭加工製品の人気はいまひとつであった。
【0003】
そこで発明者は、これまでの伝統的な加工方法で製造した秋鮭塩蔵品や乾燥品では、需要を増大させることができないと考え、肉質面で劣っており品質が不安定な秋鮭であっても、美味しく外観も良好で人気の出る秋鮭乾燥品を開発しようとして、秋鮭の肉質特性と変化要因と、秋鮭塩蔵品における塩や調味成分の浸透要因を研究し、その結果に基づいて従来の秋鮭の乾製品トバよりも味が良く、色調も美しいサーモンジャーキーという新しい珍味食品を開発した(特願2002−27707号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、各方面でサーモンジャーキーという発想の鮭乾燥品が各方面で製造販売されるようになった。しかし、秋鮭は原料としてその品質が不安定であるうえ、その肉質の評価が低いため、味や色調が良好で、肉質も良好な鮭乾燥品にするのは難しい。このため、既存のサーモンジャーキー(鮭乾燥品)は、伝統商品トバよりも需要があるが、もうひとつヒット商品にはなっていない。そのうえ近年市場に出回っている秋鮭の乾燥品(トバやサーモンジャーキー)のなかには、大腸菌汚染されているものが発見され報道されたため社会的問題になり、急激に需要が低下してしまった。この秋鮭の大腸菌汚染は、近年、生活廃水などにより河川の汚染が進んだため、海から河川に溯上してきた秋鮭を原料とする場合には、大腸菌が安全基準以上に付着していることが多い。そのため、当業者は秋鮭を良く洗って乾燥品に加工するようにしているが、大腸菌が一部残っていることがあって、食品としての安全性を確保することが難しかった。本発明者は、このような秋鮭乾燥品の大腸菌汚染を完全に解消し、食品としての安全性を確保できるようにすることが、優先して解決すべき第1の技術的課題である。
【0005】
また、秋鮭は、そもそも肉質評価が低く肉質が安定していないうえに、これを乾燥処理するとその魚肉の褐変が進行し、魚肉の旨み成分が変化し、脂質が酸化して品質が更に劣化する。このような乾燥に伴う品質劣化を防止しすることにより、サーモンジャーキーの品質改善を実現しようというのが第2の技術的課題である。
【0006】
更に、魚肉の肉質や色調や香味が劣っている秋鮭に、調味液により味付けをし、色付けをして色調を整え、美味しく、見た目にも食欲のわく魅力的な鮭乾燥品にする方法について工夫するのが第3の技術的課題である。
【0007】
本発明者は、このように肉質評価が低く品質の安定していない秋鮭を原料として、この肉質の味を良くし、色調を良くし、大腸菌汚染を殺菌により解消して安全性を確保し、保存性の良い高品質サーモンジャーキー製品を実現するための手段について鋭意研究した。
【0008】
その結果、本発明者は、第1の技術的課題に対しては、食品保存の安全温度帯を研究して肉質を出来るだけ変化させずに大腸菌を殺菌する方法を見出した。また、第2の技術的課題に対しては、水分活性に着目してこれを調整することにより、乾燥処理に伴う品質劣化を防ぎながら保存性の良い乾燥品を具現化する技術を見出した。更に、第3の技術課題に対しては、秋鮭の肉質特性を研究して、原料を冷凍することにより食塩や調味料が浸透し易い肉質に変性し、これを薄切りした切身状又はステック状の成形身肉にすることにより、塩分や着色料や調味料が切身のほぼ全体に均一にむらなく浸透するようになし、切り方によって身崩れしやすい場合には皮付きにして身崩れを防ぐようにする。このように加工することによって、秋鮭の身肉に調味液を効率的に良好な味付けをし、更に切身全体に色むらのない色付けを実現する方法を見出した。
【0009】
本発明は、このような技術的知見と解決すべき手段を組み合わせることにより、不利な条件の秋鮭であっても、美味しくて、色調が良く、乾燥による肉質の劣化もなく、大腸菌などの細菌汚染も解消した安全性の高い魅力的な高品質サーモンジャーキー(秋鮭味付き乾燥品)を具現化したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特許を受けようとする第1発明は、冷凍した秋鮭のフィレ身肉を皮付きのまま又はスキンレスにした厚さ4mm〜13mmの切身状又はステック状の成形身肉にし、当該成形身肉に着色料と塩分を含む調味料又は着色料と塩分と糖分とを含む調味液を、その成形身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまでほぼ均一に浸透させたうえ、調味液漬成形身肉を乾燥するとともに、55℃〜75℃のお湯又は塩水中で調味液漬成形身肉を加熱殺菌し、乾燥により調味液漬成形身肉の水分量を20%〜50%になすとともに、その際の成形身肉が塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30になるように調製したことを特徴とする高品質サーモンジャーキーである。
【0011】
当該第1発明の特徴は、第1に、冷凍した秋鮭のフィレ身肉を皮付きのまま又はスキンレスにした厚さ4mm〜13mmの切身状又はステック状の成形身肉にしたことである。このような処理は、秋鮭の特性を充分に考慮し、身肉のほぼ中心部まで均一に塩水または調味液を浸透し得るようにするための処理である。特に、イ)塩水または調味液が浸透しやすいように秋鮭の身肉を一旦冷凍変性したうえ浸漬処理したこと、ロ)皮付きのままにするのは、薄い切身にしたとき身くずれしないようにするためである。しかし、縦長のスティク状に切断成形した場合には、スキンレスにしても身崩れを起こすことがない。ハ)身肉を厚さ4mm〜13mmの切身状又はステック状の成形身肉にしたことにより、身肉のほぼ中心部にまで塩水または調味液と着色料が浸透するようにしたことである。この成形切身体の厚さを4mm〜13mmとしたのは、鮭の身肉の特性を調査研究した結果で、塩水または調味液の実質的な浸透力を考慮して定めた厚さである。その結果、塩味や調味液や着色料が身肉のほぼ中心部まで均一にむらなく浸透し、予定した通りの味付けと色付けを実現することができるようになるのである。これによって秋鮭の乾燥品を味覚的にも外観的にも付加価値の高い製品となすことができるようになったのである。また、成形身肉の厚さを所定の薄さに限定したので、薄塩仕様でも短時間に均一な味付けと乾燥ができ、秋鮭の旨味が引き出された製品となったり、乾燥度を自由に調製した製品を容易に製造できることになった。
【0012】
第2の特徴は、切身を、着色料と塩分を含む調味料又は着色料と塩分と砂糖とを含む調味液に浸漬して、その成形身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで均一に浸透したことである。鮭の成形身肉の厚さを4mm〜13mmであるから、その成形身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで着色料や塩水や糖分を含む調味液に浸透すると、ほぼ成形身肉の中心部まで調味液が浸透していることになる。その結果、成形身肉への着色料や塩味や糖分などの調味液の浸透はほぼ均一となり、色むらもでない。このような処理をすることによって、当該サーモンジャーキーに設計通りの味付けと色付けができ、製品としての付加価値を最適のものに調整できることになった。この製法は、次のような秋鮭塩蔵品や乾燥品の調査、研究から着想したものである。
【0013】
従来のトバ(乾製品)の製造方法は、秋鮭を3枚に卸し・尾柄をつなぎ、側線に沿って3〜8本割りをし、10%塩水に15〜30分間浸漬した後、乾燥したものである。天日乾燥で行う場合には、乾燥とあん蒸(セイロにいれてねかし、内側にある水分を表面に拡散させる)を繰り返しながら30〜40日で製了となるが、機械乾燥の場合には、25℃、2時間程度の乾燥を繰り返し、15日目にあん蒸し、その後も乾燥を繰り返し延べ25〜30日で製了し、最後に整形して製品化する。
【0014】
また、従来の調味トバの製造方法は、秋鮭を3枚に卸し・尾柄をつなぎ、側線に沿って3〜8本割りをし、水10リットル、食塩200g、砂糖100g、グルタミン酸ナトリウム50gの溶解された調味液に一晩漬込み、乾燥する。天日乾燥で行う場合には、乾燥とあん蒸を繰り返しながら30〜40日で製了となるが、機械乾燥の場合には、20℃の場合乾燥とあん蒸を繰り返しながら11〜13日程度乾燥をおこなって製了し、最後に整形して製品化する。
【0015】
<秋鮭塩蔵品や乾燥品の特性を調査>
まず第1に、市販秋鮭塩蔵品の製品特性について、呈味成分分析と塩分分析を調査研究した。その調査結果のデータを図5、図6に示した。図5は、呈味成分分析の結果で、各種秋鮭塩蔵品の成分特性を示すものであり、図6は、塩分分析の結果で、各種秋鮭塩蔵品の塩分分布を示すものである。
【0016】
イ) 呈味成分分析
秋鮭塩蔵品のうち、山漬け、改良山漬け、新巻についての成分特性を測定した。その結果は、図5に示すように、得られた秋鮭塩蔵品の成分特性は、塩分は山漬けで平均3.8%、改良山漬けと新巻は平均0.8%であった。粗脂肪は、どの製法でも平均で2%未満であった。また、塩分と水分の間には、山漬けで負の相関関係が認められた。グルタミン酸とイノシン酸については、グルタミン酸は山漬けに多く含まれ改良山漬けや新巻では少ない傾向がみられた。これに対し、イノシン酸は新巻が多く山漬けでは少なかった。トバや調味トバは、塩分の平均が0.3%で、粗脂肪はどの製法でも平均で2%未満であった。
【0017】
ロ) 塩分分析分布
図6は、各種の塩分分布を示すものである。図6から明らかなように、新巻と改良山漬けとも、腹肉部分では5〜10%の高塩分であった。背肉部分では、皮に沿って多少の塩分が浸透していたが、内部にはほとんど浸透していなかった。山漬けでは背肉部分にも2%以上の食塩が浸透しており、しかも比較的均一な分布であった。一方、腹肉部分では新巻や改良山漬けと同様な傾向であった。しかし、腹肉部分の方が背肉部分よりも低塩分の製品や、全体が10%以上という高塩分の製品もあった。しかもトバや調味トバは、10%の塩分は、表面から2〜3mmしか浸透していなかった。
【0018】
ハ) 塩味などの浸透に対する因子
秋鮭は背肉部分、腹肉部分、尾部分では、浸透状態が変わる。皮側は浸透しにくく、身肉側からの浸透は早く、内部にはほとんど浸透していなかった。腹肉部分では新巻や改良山漬けと同様な傾向であった。しかも、塩分の浸透状態は、方法が変わっても不均一で、斑も多い。このように、塩味などの浸透に対する因子の影響を検討すると、秋鮭のフィレの部位によってその食塩の浸透速度が異なることが解った。中でも背肉部分の浸透速度が一番遅い。その際、特に皮側から身肉への浸透が遅く、肉側から皮側への浸透速度は速いことも解った。その他、浸漬液の食塩濃度が上昇するにしたがって食塩浸透量が多くなり、浸漬時間は一定しておらず、浸漬液の食塩濃度と肉中の塩分量の変化によって大きく変化する(図8)。尚、秋鮭肉の熟成度によって浸透速度は殆ど変わらないし、グルタミン酸ナトリウムやサッカロースやソルビトール等の水溶性成分がある場合の食塩の浸透量に影響が無いことも解った。更に、生原料と冷凍原料では、冷凍原料の方が生原料より浸透量が多いこともわかった(図7)。
【0019】
このように、秋鮭の食塩浸透は種々の因子に影響されて複雑であり、従来の塩蔵味付け手段では、普通は肉厚に対して2〜5mmしか浸透しないうえ、斑が大きく、腹や胴の部分と尻尾の部分とで味バラツキが出る特性がある。また当該秋鮭を乾燥すると茶色や黄褐色に仕上がるが、その色は酸化した色で、今ひとつ食欲のわく色には仕上がらない。しかも原料秋鮭は、それ自体、身肉の色のバラツキが多く、加工に際し常に均一の美しい色に仕上るのは困難である。
【0020】
更に、浸漬液の食塩濃度が上昇するにしたがって食塩浸透量が多くなることは解るが、近年の消費者の健康志向の高まりと、嗜好性の変化から、低塩分、高水分の製品が好まれる傾向がある。そこで、本製品の場合、食塩濃度を低くすると、身肉の奥深くまで塩分を浸透させることが難しい。
【0021】
このように従来の秋鮭塩蔵品は、薄味仕様にすることが難しいだけでなく、味付きや色付きに斑やバラツキがあって均一ではなくなるので、市場では商品価値が低くなる。その結果、従来の秋鮭塩蔵品は、商品としてその需要がもうひとつ伸びない理由になっている。
【0022】
本発明は、このような秋鮭の特性の調査分析によって得た技術知見に基づいて、まず秋鮭を冷凍にしてフィレ身肉の細胞を冷凍変性させ、塩分や砂糖などの調味液を浸透し易くしたうえ、秋鮭のフィレ身肉を厚さ4mm〜13mmにスライスした切身状又はステック状の成形身肉にした。これによって着色料を含む塩水又は着色料と塩分と砂糖とを含む調味液に浸漬しただけで確実に切身の身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで均一に浸透することができるようになった。これによって、製品サーモンジャーキー全体に予定通りの味付けと色付けが最適のものに調整できることとり、製品として高い付加価値をつけることができることとなったのである。
【0023】
更に、本発明の第3の特徴は、55℃〜75℃のお湯又は塩水中で加熱殺菌したことである。この加熱殺菌工程の目的は、近年顕著になっている河川の汚れにより秋鮭に付着している大腸菌を殺菌することである。
【0024】
本発明者は、前記第1の技術的課題を解消するための方法として魚介類の食品保存と安全温度帯や安全温度帯について研究した。その結果、37℃が一般細菌の増殖最適温度であり、10℃〜45℃が一般細菌の増殖危険温度であること。大腸菌の死滅温度は55℃であり、ブドウ球菌、腸炎ビブリオの死滅温度は60℃であるとの知見を得た。したがって、本発明に係る秋鮭の場合、55℃以上で加熱すれば、一般細菌や大腸菌を殺菌することができ、60℃以上に加熱すれば、ブドウ球菌や腸炎ビブリオまで殺菌できることなどが解った。
【0025】
そこで本発明では、原料秋鮭の切身を55℃〜75℃のお湯又は塩水中で加熱殺菌することにし、たとえ大腸菌汚染した秋鮭であっても一般細菌や大腸菌を確実に殺菌でき、製品サーモンジャーキーの安全性を確保できるようになった。もし、原料秋鮭がブドウ球菌や腸炎ビブリオに汚染されている場合には、60℃以上の塩水やお湯で加熱殺菌すれば完全な殺菌ができるので、当該製品サーモンジャーキーの安全性を確実に確保することが出来る。
【0026】
同時に、本発明に係る前記のような加熱殺菌を行うことによって、鮮度低下に関与する自己消化酵素作用を阻止することができるし、肉たんぱく質の熱凝固による脱水と肉中水分の拡散を容易にした乾燥を促進することができ、しかもイノシン酸などの呈味成分の溶出を防ぐことができるため、美味しくて肉質のしっかりした製品にすることが出来るという副次的効果も生じる。
【0027】
第4の特徴は、乾燥して水分量20%〜50%に乾燥するとともに、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30になるようにしたことである。このような技術要素は、秋鮭のサーモンジャーキーの水分活性についての調査研究で得た知見に基づいて経験的に想起されたものである。
【0028】
一般に、食品を保存する場合、その食品が腐敗するか、カビが生えるか、吸湿するのか、乾燥するのかを判断するのに、水分活性(Water Activity)という数値を用いることが多い。食品中の水分は、食品中に存在する形態から、結合水、溶解水、自由水の3つに分類される。水分活性というのは、食品に含まれる水の中の自由水の割合を示すもので、乾燥によって自由水が減少したり、食塩の添加などで結合水の割合が増加すると、水分活性は低下する。当該結合水は食品成分と化学的に結合しているため、一般の乾燥法では蒸発しないし微生物は利用できない。また、溶解水は食品中の可溶成分が溶存しており、その結合力は結合水よりも弱いが、この溶解水を微生物は利用できない。このように、微生物は、自由水しか利用できないので、微生物の増殖は、自由水の存在に大きく影響をうける。含水率がひくくても自由水の比率が多ければ微生物は増殖し生育するし、逆に含水率が高くても自由水がなければ増殖することができない。つまり微生物の増殖のし易さを表現するのに含水率よりも水分活性を用いるほうが適当である。微生物が繁殖できる水分活性の目安は、一般細菌の場合で0.94〜0.99、酵母は最低0.88以上、カビは0.80以上であるといわれている。
【0029】
そこで、本発明者は、魚肉乾燥品を適当な水分活性を調整して貯蔵することは有効栄養成分や外観の変化を抑制するために有効な手段であると考えて、高品質サーモンジャーキーの製造に際しての品質の変化と水分活性の関係を研究した。
【0030】
本発明者は、既存の秋鮭の乾燥燻製品とトバの場合、乾燥を主な手段として行う水分活性であるため、これを分析調査したところ0.67〜0.72で、その水分活性は平均0.7であった。しかし、この水分活性では品質劣化は避けられず、これをさらに低下させて品質低下や変化をできるだけ抑制するように工夫することが必要であることに気付いた。そこで研究の結果、サーモンジャーキーの場合水分活性が2.5以下であれば、酵素活性を抑制してイノシン酸などの旨み成分の変化を防止できるとともに、有効栄養成分(EPA、DHA)の変化、減少を防止し、更に脂質酸化を防止することによって褐変(色調変化)を防止することも出来ることが解った。本来、水分活性は、食品を入れた一定温度の密閉容器内の蒸気圧(P)と、その湿度における最大蒸気圧(P0)との比 P/ P0=Awとして表される。これが一定環境下のその食品の水分活性である。当該食品の水分活性は、乾燥によって水分含量を小さくすれば当然低くなるが、砂糖や食塩の呼応濃度添加によっても低下し、その結果、微生物の増殖は抑制され、食品の貯蔵性は増加する。食品の保存性においては、水分含量よりも水分活性が微生物危害を防ぐためには重要である。
【0031】
本発明者は、食品加工業者として、その食品も美味しさと食感と保存性の両立した高品質サーモンジャーキーを商品化する必要がある。当該サーモンジャーキーの製造に際して用いる塩分や砂糖の含量は身肉の味付けに影響し、水分含量は身肉の硬さや食感に影響を与えるし、両者は水分活性に大きな影響を与える。しかも、秋鮭を原料とする場合、秋鮭自体には独特の肉質と味と風味がある。本発明者は、これらの要素には相関関係があると考えた。本発明者は、その食感や硬さからサーモンジャーキーの水分含量を商品特性に適応した所定の水分範囲に特定する必要がある。同時に、塩分や砂糖を主体とする可溶性成分を調製することによって、その食品の水分活性をコントロールすることができ、美味しさと保存性とを確保させることができる。そこで、水分含量を所定範囲内に特定したうえで、塩分や砂糖を主体として調整することにより、美味しさと保存性の両立した高品質サーモンジャーキーを製造できることの知見を得た。しかし、サーモンジャーキーの製造現場では、水分量と塩分と砂糖の使用量を具体的に調整したとき、水分活性が保存性を確保できる範囲のものであるか否かを簡便に確認することは難しい。発明者は、多くの実験例や実施例から「特定の材料において、塩分や砂糖主体とする可溶性成分量を含水量で割った値は、水分活性の値との間に正の高い相関(所定の水分活性相関指数)がある」ことに着目した。そして、本件サーモンジャーキーの場合には、水分含量が20%〜50%の範囲内であれば、塩分や砂糖主体とする可溶性成分量を含水量で割った値である水分活性相関指数が0.12〜0.30であれば、美味しさと保存性とが両立した製品を調製できるとの知見を見出したのである。
【0032】
特に近年は、ソフトタイプのサーモンジャーキーの方が人気があるので、水分量を20%〜50%の範囲内と高い値に設定しても、砂糖と塩分の濃度を調整することにより、水分活性相関指数を0.12〜0.30に調整すれば、これを目安に当該サーモンジャーキーの食品活性を2.5以下に調整することが可能であり、常温で流通には充分な長期保存性と賞味期限を確保することができた。
【0033】
すなわち本発明は、肉質評価の低い秋鮭を原料にしながら冷凍し、薄切り処理をすることにより確実に良好な味付け、色付けをするとともに、乾燥処理に基づく肉質の変化を、水分活性相関指数を目安にして水分活性を低く調整することにより防止したことと、原料の細菌汚染を加熱殺菌することにより解消して食品としての安全性を確保するように改良を施した。更に本発明は、これによって美味しくて、見た目の色合いも良く、乾燥による品質劣化も防止され、安全性も高いという数多くの特徴を有する高品質のサーモンジャーキーを具現化したものである。
【0034】
特許を受けようとする第2発明は、冷凍した秋鮭のフィレ身肉を皮付きのまま又はスキンレスにした厚さ4mm〜13mmの切身状又はステック状の成形身肉に成形し、着色料と塩分を含む調味料又は着色料と塩分と糖分とを含む調味液を、成形身肉の水分量が20%〜50%に乾燥したとき、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調整し、当該成形身肉をその調整した調味液に浸漬して、その成形身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで均一に浸透させて調味液漬成形身肉となし、当該調味液漬成形身肉を乾燥するとともに、55℃〜75℃のお湯又は塩水中に30秒〜2分間浸漬して調味液漬成形身肉を加熱殺菌し、調味液漬成形身肉の水分量が20%〜50%となるように乾燥するとともに、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調製したことを特徴とする高品質サーモンジャーキーの製造方法である。
【0035】
当該第2発明は、美味しくて、見た目の色合いも良く、乾燥による品質劣化も防止され、安全性も高いという高品質のサーモンジャーキーの製造方法である。その発想と技術的思想は、前記第1発明と同様であり、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数を目安にすることにより、簡便に水分活性を調製することができる。
【0036】
特許を受けようとする第3発明は、請求項2に記載する高品質サーモンジャーキーの製造方法において、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調製する方法として、調味液の塩分と糖分と水分量とを、下記の関係式となるように調整したことを特徴とする高品質サーモンジャーキーの製造方法である。
1A(%)+0.3B(%)/C(%)=0.12〜0.30AwS
(ただし、Aは塩分、Bは糖分、Cは水分量であり、AwSは水分活性相関指数である。)
【0037】
当該第3発明は、請求項2に記載する発明の従属発明である。本発明は、高品質サーモンジャーキーの製造方法において、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調整することにより、水分活性を2.5以下にする。これによって細菌や酵母やカビなど微生物の増殖を抑制して保存性を高めるとともに、酵素の活性を抑制してイノシン酸などの旨味成分の溶出を防止し、EPAやDHAなどの有効栄養成分の劣化を防止し、脂質酸化を防止し、褐変を防止するのである。
【0038】
本発明は、魚肉の水分含量にのみ依存することなく、可溶性成分の濃度を組合せ調整することによって、水分活性をコントロールできるとの技術的知見を得て開発したものである。調味液の可溶性成分である塩分と糖分の濃度をつぎのような指数で調整するとともに、乾燥処理によって水分含量を調整すると水分活性が特定できるのである。つまり、調味液の塩分と砂糖の濃度と魚肉の含水量との間には、次の関係式のような相関があることが解ったからである。
1A(%)+0.3B(%)/C(%)=0.12〜0.30AwS
(ただし、Aは塩分、Bは糖分、Cは水分量、Awは水分活性相関指数である。)
【発明の効果】
【0039】
第1発明は、冷凍した秋鮭のフィレ身肉を皮付きのまま又はスキンレスにした厚さ4mm〜13mmの切身状又はステック状の成形身肉にし、当該成形身肉を着色料と塩分を含む調味料又は着色料と塩分と糖分とを含む調味液に浸漬して、その成形身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで均一に浸透させて調味液漬成形身肉にしたうえ、55℃〜75℃のお湯又は塩水中で調味液漬成形身肉を加熱殺菌し、乾燥して当該調味液漬成形身肉の水分量を20%〜50%にするとともに、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数を0.12〜0.30にしたことを特徴とする高品質サーモンジャーキーである。本発明に係る高品質サーモンジャーキーは、このように構成することにより、美味しくて、見た目の色合いも良く、乾燥に伴う品質劣化もなく、安全性も高い高品質サーモンジャーキーになったのである。
【0040】
第2発明は、冷凍した秋鮭のフィレ身肉を皮付きのまま又はスキンレスにした厚さ4mm〜13mmの切身状又はステック状の成形身肉に成形する。次に、当該成形身肉を着色料と塩分を含む調味料又は着色料と塩分と糖分とを含む調味液を、その水分量が20%〜50%に乾燥したとき、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調整したものとなす。そのうえで当該成形身肉を調整した調味液に浸漬して、その身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで均一に着色料を含む塩水、または着色料と塩分と糖分とを含む調味液を浸透して、調味液漬成形身肉とする。その上で55℃〜75℃のお湯又は塩水中に30秒〜2分間浸漬して調味液漬成形身肉を加熱殺菌する。それから、調味液漬成形身肉の水分量が20%〜50%となるように乾燥することによって、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調製して、保存性を高めるようにしたことを特徴とする高品質サーモンジャーキーの製造方法である。このような製造方法により、簡便に美味しくて、見た目の色合いも良く、乾燥に伴う品質劣化もなく、安全性も高い高品質サーモンジャーキーを製造できるのである。
【0041】
第3発明は、調味液の塩分と糖分含量と水分量との関係を、下記の関係式が成立するように調整して水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調製したことを特徴とする高品質サーモンジャーキーの製造方法である。その際、可溶成分の含有量は、塩分と糖分は1:0.3の割合で計算することにより、実質的に水分活性を調整きるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明にかかる高品質サーモンジャーキーを図示実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る高品質サーモンジャーキーの製造工程を示す説明図であり、図2は、冷凍したままのフィレ身肉を皮付きのまま厚さ7〜13mmの切身にスライスする状態を示す説明図であり、図3は、フィレ身肉を皮付きのまま厚さ7〜13mmにスライスした切身を示す斜視図であり、図4は、皮付きのまま厚さ7〜13mmにスライスした切身に調味液が浸透した状態を示す縦断側面図であり、 図4は、フィレ身肉をスキンレスにした厚さ4mm〜13mmのステック状の成形身肉に成形したことを示す斜視図であり、図5は、本発明により製造された高品質サーモンジャーキーを示す正面図である。
<実施例1>
【0043】
第1工程: 北海道東沿岸で10月に漁獲されたシロサケのギンケとBブナランクの生鮮秋鮭のセミドレスを原料として購入し、フィレ身肉1に卸し、その身肉を冷凍し、−20℃以下で保存した。
【0044】
第2工程: 1週間後冷凍したままのフィレ身肉1を皮付き2のまま厚さ7〜13mmの切身3,3、…にスライスAした成形身肉にした(図1)。当該フィレ身肉1が凍結しているので、切身3,3、…の厚さが薄くても安定してスライスAすることができた。フィレ身肉1の特性から皮付き2のままスライスしたことにより、切身が薄くても解凍しても切身の形状がくずれることがなくなった(図2)。
【0045】
他方、1週間後冷凍したままのフィレ身肉1を魚体の長さ方向に細く切断Bし、スキンレスで厚さ7〜13mmのステック状の成形身肉にした(図4)。このように魚体の長さ方向に細く切断B加工した場合には、スキンレス状態でも、身崩れは起こさない。
【0046】
第3工程: 調味液を調製する。水1kgに対し、食塩100〜200gを溶解した塩水、又はこれを水1kgに対し、グルタミン酸ソーダ10g、食塩60g、砂糖40g、赤色の着色料0.5g、黄色の着色料0.5gを溶解して調味液を調製した。当該調味液は、その水分量が20%〜50%に乾燥したとき、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調整した調味液とした。
【0047】
第4工程: 当該調味液を漬け込み原料として同量用意し、7℃〜20℃の当該調味液に第2工程でスライスした切身を10〜20分間浸漬し、その身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで均一に調味液を浸透した。その結果、12mm以下の厚みにスライスした切身3の場合には、身肉の中心部まで均一に塩水または調味液が浸透した調味液漬成形身肉となった(図3a)。これに対し、13mmの厚みにスライスした切身3の場合には、身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで均一に着色料を含む調味液が浸透しており、中心部に未浸透部が形成されていた(図3b)が、この部分にも時間経過にともなって次第に浸透が進むうえ、乾燥することにより、未浸透部が縮小するので、当該未浸透部の存在は、商品価値に対して殆ど影響を与えない程度となる。尚、調味液には、着色料が含まれているため、ピンクサーモンのように赤色若しくはピンク色に着色され、その外観が改良されている。
【0048】
第5工程:そのうえ当該調味液漬成形身肉を70〜80℃で30分〜3時間30分間機械乾燥して水分含量が20〜50%となるように調製してサーモンジャーキー4を調製した(図4)。この乾燥工程中に調味液が充分浸透した切身を55℃〜75℃のお湯又は塩水中に30秒〜2分間浸漬して加熱殺菌した。原料秋鮭の汚染状態を調べると、一般細菌数は1.5×10であり、大腸菌数が6.8×10ほど汚染されていた。これを水分含量が20〜50%となるように乾燥調製してサーモンジャーキー4にしたものを、75℃のお湯に1分間浸漬殺菌処理すると一般細菌数は5.2×10となり、70℃のお湯に1分間浸漬殺菌処理すると一般細菌数は1.6×10となり、65℃のお湯に1分間浸漬殺菌処理すると一般細菌数は9.7×10となり、60℃のお湯に1分間浸漬殺菌処理すると一般細菌数は3.4×10となり、55℃のお湯に1分間浸漬殺菌処理すると一般細菌数は9.5×10となった。しかもこのような条件で加熱殺菌処理をすると、いずれの場合も大腸菌は0になった。これらの結果、一般細菌数は基準以下に減少し、大腸菌数は死滅して、食品としての安全性が確保されることになった。
【0049】
第6工程:更に乾燥処理して、調味液漬成形身肉の水分含量が20〜50%に調整すると、その水分活性は確実に2.5以下となり、少なくとも3ヶ月〜1年間は常温保存が可能となる。このように、所定の範囲に乾燥するだけで、水分活性を確実に2.5以下になるのは、調味液漬成形身肉に浸透させる調味液の塩の濃度と砂糖の濃度を下記の関係式に基づいて調整したからである。本発明は、このようにサーモンジャーキーとして好ましい食感(乾燥度)にするために、調味液漬成形身肉の水分量を20〜50%に調製することが要請されるが、このような乾燥度にしたとき、その水分活性が2.5以下となって常温流通下でも3ヶ月〜1年間の保存が可能となるようにすることが望まれる。その要請を満足させるために味液漬成形身肉の水分量と調味液の塩の濃度と砂糖の濃度との相関を下記の関係式に基づいて水分活性相関指数として認識し、その水分活性相関指数を0.12〜0.30の範囲となるように調整するだけで、水分活性は確実に2.5以下にすることが出来ることが解った。すなわち、実際の作業工程においては、塩分の量と砂糖の量を調整するだけで、に味付けと水分活性の両方を好ましいものに調整できることになったのである。
1A(%)+0.3B(%)/C(%)=0.12〜0.30AwS
(ただし、Aは塩分、Bは砂糖、Cは水分量、AwSは水分活性相関指数となる。)
【0050】
例えば、高品質サーモンジャーキーの水分量を50%にする場合には、塩4%、砂糖20%とすることにより、水分活性相関指数を0.2に調整することができる。また、高品質サーモンジャーキーの水分量を30%にする場合には、塩分7.5%の塩水を浸透させれば、水分活性を0.25に調整することができる。これを目安にすれば、当該商品は、3ヶ月〜1年間は常温保存が可能となった。
【0051】
更に、高品質サーモンジャーキーの水分量を40%にする場合には、塩6%、砂糖20%とすることにより、水分活性相関指数を0.3に調整することができる。また、高品質サーモンジャーキーの水分量を30%にする場合には、塩分7.5%の塩水を浸透させれば、水分活性相関指数を0.25に調整することができる。
【0052】
このような製造法により出来たサーモンジャーキー4(図4)は、ほぼ身肉の中心部まで均一に塩水または調味液が浸透しており、斑も無く安定したものになっている。その結果、秋鮭であっても、旨味、風味が良好で、その色も紅鮭のように赤色又はピンク色となり、商品価値の高い商品を具現化することができた。尚、この際、良い香りを付けるために、乾燥時にスモークを施すようにしても良いこと勿論である。
【0053】
叙上のように、本発明は秋鮭の特性の調査分析と、食品保存の安全温度帯の研究と、水分活性の調整研究によって得た技術知見に基づいて、原料として問題のある秋鮭の欠点や技術課題を解決して、美味しい味付と魅力的な色付けがなされ、しかも乾燥による品質変化を防ぎ、安全性の確保された高品質のサーモンジャーキーを具現化したところに特色がある。本発明は、原料として不利な条件の秋鮭であっても高付加価値の付与された高品質の珍味(鮭乾燥品)の商品化に成功したのである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る高品質サーモンジャーキーの製造工程を示す説明図である。
【図2】冷凍したままのフィレ身肉を皮付きのまま厚さ7〜13mmの切身にスライスする状態を示す説明図である。
【図3】フィレ身肉を皮付きのまま厚さ7〜13mmにスライスした切身を示す斜視図である。
【図4】フィレ身肉をスキンレスにした厚さ4mm〜13mmのステック状の成形身肉に成形したことを示す斜視図である。
【図5】皮付きのまま厚さ7〜13mmにスライスした切身に調味液が浸透した状態を示す縦断側面図である。
【図6】本発明に係るサーモンジャーキーを示す正面図である。
【図7】呈味成分分析の結果で、各種秋鮭塩蔵品の成分特性を示す表である。
【図8】塩分分析の結果で、各種秋鮭塩蔵品の塩分分布を示すものである。
【図9】生原料と冷凍原料に対する食塩浸透量の変化を示すグラフである。
【図10】浸漬液の食塩濃度の違いによる秋鮭肉中への食塩浸透量の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
1…フィレ
2…皮
3…切身
4…サーモンジャーキー
A…スライス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍した秋鮭のフィレ身肉を皮付きのまま又はスキンレスにした厚さ4mm〜13mmの切身状又はステック状の成形身肉にし、
当該成形身肉に着色料と塩分を含む調味料又は着色料と塩分と糖分とを含む調味液を、その成形身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまでほぼ均一に浸透させたうえ、
調味液漬成形身肉を乾燥するとともに、55℃〜75℃のお湯又は塩水中で調味液漬成形身肉を加熱殺菌し、
乾燥により調味液漬成形身肉の水分量を20%〜50%になすとともに、その際の成形身肉が塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30になるように調製したことを特徴とする高品質サーモンジャーキー。
【請求項2】
冷凍した秋鮭のフィレ身肉を皮付きのまま又はスキンレスにした厚さ4mm〜13mmの切身状又はステック状の成形身肉に成形し、
着色料と塩分を含む調味料又は着色料と塩分と糖分とを含む調味液を、成形身肉の水分量が20%〜50%に乾燥したとき、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調整し、
当該成形身肉をその調整した調味液に浸漬して、その成形身肉の表面から内部に約4mm〜6mmの深さまで均一に浸透させて調味液漬成形身肉となし、
当該調味液漬成形身肉を乾燥するとともに、55℃〜75℃のお湯又は塩水中に30秒〜2分間浸漬して調味液漬成形身肉を加熱殺菌し、
調味液漬成形身肉の水分量が20%〜50%となるように乾燥するとともに、塩分と糖分の含有量を水分量で割った水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調製したことを特徴とする高品質サーモンジャーキーの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載するサーモンジャーキーの製造方法において、調味液の塩分と糖分含量と水分量との関係を、下記の関係式が成立するように調整して水分活性相関指数が0.12〜0.30となるように調製したことを特徴とする高品質サーモンジャーキーの製造方法。
1A(%)+0.3B(%)/C(%)=0.12〜0.30AwS
(ただし、Aは塩分であり、Bは糖分であり、Cは水分量であり、AwSは水分活性相関指数とする。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−143426(P2007−143426A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339015(P2005−339015)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(502043237)あけぼの食品株式会社 (3)
【Fターム(参考)】