説明

高固形分防汚塗料組成物

【課題】加水分解性シリル基を有するプレポリマーに基づいた新規な低溶剤防汚塗料組成物を提供する。
【解決手段】(a)(i)アルコキシシリル官能基を有し及び/又は(ii)硬化剤/触媒の存在下で硬化性であるプレポリマーを含み、プレポリマーが、式(I):−X−O−(SiRO)−SiR(式中、Xは>C=Oであり、nは0〜5000であり、R、R、R、R及びRはC1−20アルキル及び任意で置換されたフェニルから選択される)の末端基を有する側鎖を有するベース成分と、(b)硬化剤/触媒とを含む自己研磨型防汚塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解性シリル基を有するプレポリマーに基づいた新規な低溶剤防汚塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第1641862号B1明細書には、シリルエステルコポリマー組成物が開示されている。
【0003】
国際公開第2009/100908号パンフレットには、ポリオキサレートをバインダーとして含む防汚組成物が開示されている。
【0004】
国際公開第99/33927号A1パンフレットには、潜在反応性を付与する未反応硬化性ケイ素含有官能基を有する塗膜形成ポリマーを使用した、基体の汚損を阻害するための方法が開示されている。
従来の技術に鑑みるに、代替となる高固形分の防汚組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本願の発明者によって、上記の目標を、本明細書で定義する自己研磨型防汚組成物によって達成できることが判明した。したがって、第1の態様において、本発明は請求項1で定義の自己研磨型防汚組成物に関する。本発明の第2の態様は、本明細書の請求項14で定義のキットに関する。本発明の第3の態様は、本明細書の請求項15で定義のベース成分に関する。本発明の第4の態様は、本明細書の請求項16で定義の海洋構造物に関する。本発明の第5の態様は、本明細書の請求項17で定義の構造物へのコーティング方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
防汚塗料組成物
上述したように、本発明は防汚塗料組成物に関する。この塗料組成物は2種以上の成分を含み、そのうちの一方はプレポリマー、特にはヒドロキシ官能性プレポリマーを含むベース成分であり、成分bは、硬化剤及び/又は硬化触媒、特には1種以上のポリイソシアネートを含む又はそれから成る。実用という観点からすると一般には好ましくはないものの、この塗料組成物は更なる成分を含み得る。塗料組成物のこの2種以上の成分は、以下でより詳細に説明するように、典型的には、塗料組成物を目的とする基体に塗布する直前に組み合わされ混合される。
【0007】
ベース成分
塗料組成物のベース成分は、(i)少なくとも1つのアルコキシシリル官能基を有し並びに/又は(ii)硬化剤及び/若しくは硬化触媒(成分b)の存在下で硬化性であるプレポリマーを含み、このプレポリマーは、一般式(I):
【化1】

(式中、Xはカルボニル基(>C=O)を表し、nは0〜5000の整数であり、R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立してC1-20アルキル及び任意で置換されたフェニルから選択される)の少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有する。
【0008】
本明細書において、C1-20アルキルはその通常の意味で使用され、すなわち1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を範囲に含み、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル等である。
【0009】
その一実施形態において、プレポリマーは少なくとも1つのアルコキシシリル官能基と、少なくとも1つの一般式(I)の末端基を有する少なくとも1つの側鎖とを有する。
【0010】
このプレポリマーが少なくとも1つのアルコキシシリル官能基を有するという事実は、プレポリマーが、湿潤条件下の0〜50℃の範囲の温度で自己硬化性であることを意味する。
【0011】
用語「アルコキシシリル官能基」は、式:
−Si(OR)n(R)m
の基を意味すると意図され、式中、Rは直鎖又は分岐C1-6アルキル基(例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル等)であり、nは1〜3の整数であり、mは0〜2の整数であり、n+mは3である。
【0012】
少なくとも1つのアルコキシシリル官能基をプレポリマーに導入するために含める適切なモノマーの例は以下の通りである。
【0013】
【表1】

#全てShin−Etsu Chemical社から入手可能
【0014】
(上記の実施形態と組み合わせ得る)その別の興味深い実施形態において、プレポリマーは少なくとも1つのヒドロキシ官能基と、少なくとも1つの一般式(I)の末端基を有する少なくとも1つの側鎖とを有する。
【0015】
現在好ましい実施形態において、塗料組成物のベース成分は、少なくとも1つの一般式(I)
【化2】

の末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有するヒドロキシ官能性プレポリマーを含み、式中、Xはカルボニル基(>C=O)を表し、nは0〜5000の整数であり、R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立してC1-20アルキル及び任意で置換されたフェニルから選択される。
【0016】
このプレポリマーがヒドロキシ官能性である場合、プレポリマーは、(平均して)少なくとも硬化剤との反応を可能にするのに十分な数のヒドロキシ基を含んでいなくてはならない。典型的には、このプレポリマーのヒドロキシ価は1〜400、例えば2〜400、好ましくは5〜400(5〜300等)、例えば10〜150、特には10〜100、例えば20〜100mgKOH/g(固形分)の範囲である。ヒドロキシ価は、実施例の項目で説明されるようにして求められる。プレポリマー1分子あたりのヒドロキシル基の数は典型的には1〜10個(1〜5、2〜4個等)であり、例えば1〜4個又は1〜3個である。nは0、1、2、3、4又はそれ以上の最高約5000であり(0〜50等)、例えば0〜10又は1〜15である。一部の特殊な実施形態において、nは0、1又は2〜5である。
【0017】
一部の実施形態において、一般式(I)のnは0であるため、末端基は一般式(II):
【化3】

(式中、Xは上で定義された通りであり、R3〜R5はそれぞれ独立してC1-20アルキル及び任意で置換されたフェニル(例えば、フェニル)から成る群から選択される基である)を有する。
【0018】
上の式(I)、(II)に関し、各アルキル基が最高で約6個の炭素原子を有することが好ましい(すなわち、C1-6アルキル)。任意で置換されるフェニル基の置換基の実例にはハロゲン、スルホニル、ニトロ、アミノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ及びC1-10アルキルカルボニルが含まれる。上述したように、R1〜R5は同一の又は異なる基であり得る。
【0019】
アルキル基には線状、分岐及び環状炭化水素基が含まれ、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、オクタデシル等である。好ましいアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する線状、分岐及び環状炭化水素基である。
【0020】
一般式I、IIの基は、水性媒体(例えば、海水)中で加水分解性のシリルエステルを表す。
【0021】
シリルエステル基が完全に加水分解された後のプレポリマーの酸価は典型的にはプレポリマー1gあたり5〜500mgKOHの範囲であり(mgKOH/g(固形分))、例えば30〜350mgKOH/g(固形分)の範囲(100〜300mgKOH/g(固形分)の範囲等)である。酸価は、実施例の項目で説明されるようにして求められる。
【0022】
完全な加水分解後のプレポリマーの酸価が5未満の場合、本明細書で定義の研磨率試験(polishing rate test)に従って求められる研磨率は典型的には10000海里あたり1μm未満である。他方で、酸価が500を超える場合、研磨率は典型的には高すぎる。
【0023】
大量の溶媒又は希釈液を必要とすることなく、粘度に関して望ましい特性を得やすくするために、プレポリマーの分子量は典型的には比較的低い。このため、典型的には、プレポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1000〜120000g/mol(1000〜50000g/mol等)、例えば2000〜15000g/molの範囲である。
【0024】
一部の興味深い実施形態において、プレポリマーのガラス転移温度Tgは−10〜100℃の範囲である。
【0025】
一部の興味深い実施形態において、プレポリマーの高せん断粘度は、ASTM規格D4287−00に従った測定で最高200ポアズの範囲である。
【0026】
様々な適切なポリマー骨格が上記の側鎖を有するプレポリマーに関係すると考えられる。現在好ましい実施形態において、プレポリマーの骨格は、エチレン性不飽和モノマー(例えば、(メタ)アクリレートタイプモノマー、スチレンタイプモノマー、マレイン酸タイプモノマー、フマル酸タイプモノマー、ビニルアセテートタイプモノマー、ビニルアルコールタイプモノマー等)のものから選択される。
【0027】
このようなエチレン性不飽和モノマーのプレポリマーに関し(例えば、(メタ)アクリレート骨格を有するもの)、上の一般式I及び下の一般式IIの末端基を含むモノマーは、欧州特許第0297505号B1明細書に記載されるようにして合成され得る。
【0028】
プレポリマーは、このようなモノマーとその他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合によって得られる。適切なエチレン性不飽和モノマーの例には、メタクリレートエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及びメトキシエチルメタクリレート;アクリレートエステル、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート及びメトキシエチルアクリレート;マレイン酸エステル、例えばマレイン酸ジメチル及びマレイン酸ジエチル;フマル酸エステル、例えばフマル酸ジメチル及びフマル酸ジエチル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、ビニルアセテート、ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸イソボルニル並びにマレイン酸が含まれる。
【0029】
エチレン性不飽和モノマーの量は典型的には99質量%以下、例えば得られるプレポリマーの総質量の95質量%以下、好ましくは90質量%以下、例えば85質量%以下である。したがって、上の一般式Iの末端基を含むモノマーの量は、プレポリマーの少なくとも1質量%、例えば少なくとも5質量%(1〜80質量%、5〜80質量%等)、特には少なくとも10質量%(10〜65質量%等)又は少なくとも15質量%(15〜60質量%等)である。
【0030】
上の一般式Iの末端基を含むモノマーは典型的には、プレポリマーのモノマー組成の5〜60mol%、好ましくは10〜50mol%(15〜45mol%等)を構成する。
【0031】
ヒドロキシル基を含むモノマーは典型的には、プレポリマーのモノマー組成の0.5〜95mol%、好ましくは0.5〜30mol%(2〜20mol%等)を構成する。
【0032】
一実施形態において、プレポリマーは、一般式Iの末端基を含むモノマー及びヒドロキシル基を含むモノマーに加えて、その他の親水性エチレン性不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーを含む。その例は、メトキシエチル(メタ)アクリレート又は高級ポリエチレンオキシド誘導体、例えばエトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート(ポリオキシエチレン(n=8)グリコールモノメチルエーテルメタクリレート等)又はN−ビニルピロリドンである。
【0033】
本発明の別の興味深い実施形態において、本発明の塗料組成物で使用するバインダー系は、少なくとも1つの一般式II:
【化4】

(式中、X、R3、R4及びR5は、上で定義された通りである)の末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有するシリル化アクリレートコポリマーを含む。
【0034】
(上に示す)一般式IIの末端基を有するモノマーの例は酸官能性ビニル重合性モノマーであり、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸から誘導されるモノマー(好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するモノアルキルエステルの形態)又はフマル酸から誘導されるモノマー(好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するモノアルキルエステルの形態)である。
【0035】
上の式I又はIIに示されるトリオルガノシリル基に関し(すなわち、−Si(R3)(R4)(R5)基)に関し、R3、R4及びR5は同一又は異なり得る。一実施形態において、これらの置換基は同一である。
【0036】
したがって、一般式I又はIIに示される適切なトリオルガノシリル基(すなわち、−Si(R3)(R4)(R5)基)の具体例には、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ−n−プロピルシリル、トリ−n−ブチルシリル、トリ−イソ−プロピルシリル、トリ−n−ペンチルシリル、トリ−n−ヘキシルシリル、トリ−n−オクチルシリル、トリ−n−ドデシルシリル、トリフェニルシリル、トリ−p−メチルフェニルシリル、トリベンジルシリル、トリ−2−メチルイソプロピルシリル、トリ−tert−ブチル−シリル、エチルジメチルシリル、n−ブチルジメチルシリル、ジ−イソ−プロピル−n−ブチルシリル、n−オクチル−ジ−n−ブチルシリル、ジ−イソ−プロプリルオクタデシルシリル、ジシクロヘキシルフェニルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、ドデシルジフェニルシリル及びジフェニルメチルシリルが含まれる。
【0037】
少なくとも1つの一般式I又はIIの末端基を有する適切なメタクリル酸誘導モノマーの具体例には、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−tert−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート及びラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0038】
各プレポリマー鎖内のシリル基の数は、得られる塗膜の自己研磨特性に影響する。このため、シリル基当量(すなわち、1分子あたりのシリル基の平均数で割ったプレポリマーの平均分子量)は好ましくは250〜125000又は270〜11400(300〜1500等)、例えば400〜900又は400〜700の範囲にあると推測される。
【0039】
一実施形態において、プレポリマーは平均して、プレポリマーあたり3〜15個、例えば3〜12個のシリル基を含み、分子量は3000〜8000g/mol、例えば4000〜6000g/molの範囲である。
【0040】
本発明の興味深い実施形態において、バインダー系で使用するプレポリマーは、(上述したような)一般式I又はIIの末端基を有するモノマー単位を、一般式III:
Y−(CH(RA)−CH(RB)−O)p−Z (III)
(式中、ZはC1-20アルキル基又はアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基又はフマロイルオキシ基であり、RA及びRBは独立して水素、C1-20アルキル及びアリールから成る群から選択され、pは1〜25の整数である)の第2のモノマーBと組み合わせて含む。
【0041】
p>2の場合、RA及びRBは好ましくは水素又はCH3であり、すなわちp>2の場合、モノマーBは好ましくはポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールから誘導される。p=1の場合、RA及びRBがより大きい基(C1-20アルキル又はアリール等)のモノマーも、本明細書に記載の目的にとって有用であると考えられる。
【0042】
式IIIに示されるように、モノマーBはその分子内にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基(好ましくは、モノ−C1-6アルキルエステルの形態)又はフマロイルオキシ基(好ましくは、モノ−C1-6アルキルエステルの形態)を不飽和基(Y)として、またアルコキシ−又はアリールオキシポリエチレングリコールを有する。アルコキシ又はアリールオキシポリエチレングリコール基において、ポリエチレングリコールの重合度(p)は1〜25である。
【0043】
分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーBの具体例には、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキソキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート及びエトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートが含まれる。
【0044】
分子内にマレイノイルオキシ又はフマロイルオキシ基を有するモノマーBの具体例には、メトキシエチル n−ブチルマレエート、エトキシジエチレングリコールメチルマレエート、エトキシトリエチレングリコールメチルマレエート、プロポキシジエチレングリコールメチルマレエート、ブトキシエチルメチルマレエート、ヘキソキシエチルメチルマレエート、メトキシエチル n−ブチルフマレート、エトキシジエチレングリコールメチルフマレート、エトキシトリエチレングリコールメチルフマレート、プロポキシジエチレングリコールメチルフマレート、ブトキシエチルメチルフマレート及びヘキソキシエチルメチルフマレートが含まれる。
【0045】
当業者には理解できるように、その他のビニルモノマーも、(上に示す)一般式IIの末端基を有するモノマー単位を含む得られるプレポリマー又は(上に示す)一般式IIIの第2モノマーBと組み合わせて(上に示す)一般式IIの末端基を有するモノマー単位を含む得られるプレポリマーに組み込まれ得る。
【0046】
上記のモノマーと共重合性のその他のモノマーに関し、上述のビニル重合性モノマー等の様々なビニルモノマーを利用し得る。
【0047】
ベース成分は、プレポリマーとは別に1種以上の別の原料を含んでいた可能性がある。しかしながら、望ましくは、このようなその他の原料の一部又は全ては、代わりに硬化剤を構成する成分の一部になり得る及び/又は別個の成分として提示され得る。
【0048】
更なる原料の例はバインダー成分であり、例えばロジン、ロジン誘導体(ロジンの金属塩、すなわちレジネート等)、油(亜麻仁油及びその誘導体、ヒマシ油及びその誘導体、大豆油及びその誘導体等);その他の高分子バインダー成分(飽和ポリエステル樹脂等);ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、ポリビニルクロリド−アセテート、ビニルアセテートとビニルイソブチルエーテルとのコポリマー;ビニルクロリド;ビニルクロリドとビニルイソブチルエーテルとのコポリマー;アルキド樹脂又は変性アルキド樹脂;炭化水素樹脂(石油留分凝縮物等);塩素化ポリオレフィン(塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等);スチレンコポリマー(スチレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/メタクリレート、スチレン/アクリレートコポリマー等);アクリル樹脂(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー等);ヒドロキシ−アクリレートコポリマー;ポリアミド樹脂(二量化トール油脂肪酸等の二量化脂肪酸をベースとしたポリアミド等);環化ゴム;エポキシエステル;エポキシウレタン;ポリウレタン;エポキシポリマー;ポリアミン樹脂及びこれらのコポリマーが含まれる。
【0049】
用語「ロジン」「レジネート」等はガムロジン;グレードB、C、D、E、F、FF、G、H、I、3、K、L、M、N、W−G、W−W(ASTM規格0509による定義)のウッドロジン;ヴァージンロジン;ハードロジン;イエローディップロジン(yellow dip rosin);NFウッドロジン;トール油ロジン又はコロホニー若しくはコロホニウムを意味することを意図する。用語「ロジン」及び「レジネート」等は、適切なタイプの変性ロジンを含むことも意図し、この変性は、特には共役非芳香族二重結合の量を減らすオリゴマー化、水素化、脱水素化/不均化(disproportionation、dismutation)等である。ベース成分へのロジンの添加によって、塗料の機械的性質が改善され得る(例えば、割れやすさが軽減される)。
【0050】
更なるバインダー成分群には高分子柔軟性付与剤(国際公開第97/44401号パンフレットで広くまた具体的に定義されているもの等)が含まれ得ることを理解すべきであり、この文献は参照により本願に組み込まれる。
【0051】
このような更なるバインダー成分の乾燥物は典型的には、塗料組成物の0〜20湿量%、例えば0〜15湿量%を構成する。
【0052】
一部の特に興味深い実施形態において、塗料組成物はロジン及び/又はロジン誘導体を累積量で塗料組成物の1〜40固形分体積%(5〜30固形分体積%等)、例えば5〜25固形分体積%含む。
【0053】
ベース成分は当然のことながら、顔料、フィラー、繊維、防汚剤、染料、添加剤、反応性希釈剤及び溶媒並びに塗料組成物のバインダー相に含めるその他の適切な構成成分も含み得る。
【0054】
しかしながら、このような構成成分(すなわち、顔料、フィラー、繊維、防汚剤、染料、添加剤及び溶媒)は、典型的には、総量で塗料組成物の最高85固形分体積%、例えば最高80固形分体積%又は最高60固形分体積%(最高50固形分体積%等)、例えば20〜50固形分体積%又は35〜50固形分体積%で組み込まれる。塗料組成物全体(すなわち、ベース成分、硬化剤及びその他の成分)の湿量に関し、このような構成成分は典型的には総量で塗料組成物の最高60湿量%(最高50湿量%等)、例えば0.1〜40湿量%又は0.1〜30湿量%で組み込まれる。特定の高固形分実施形態において、このような構成成分は典型的には塗料組成物の60〜85湿量%(75〜80湿量%等)の総量で組み込まれる。
【0055】
顔料の例は、銅、銅合金、例えば銅/ニッケル合金、様々な金属酸化物、例えば酸化第一銅(Cu2O)、酸化第二銅(CuO)、二酸化チタン、赤色酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、黄色酸化鉄、赤色モリブデート、黄色モリブデート、硫化亜鉛、酸化アンチモン、ナトリウムアルミニウムスルホシリケート、キナクリドン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、二酸化チタン、黒色酸化鉄、グラファイト、インダンスロンブルー、コバルトアルミニウム酸化物、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス−アセトアセト−o−トリジオール、ベンズイミダゾロン、キナフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン、キノフタロンイエローである。このような材料は、最終的な塗膜を不透明及び非半透明にすることを特徴とする。例えば銅、銅の合金、酸化第一銅及び酸化第二銅が防汚剤としての特徴を有するとしても、この明細書において、このような構成成分は「顔料」としか見なされないことがわかる。
【0056】
酸化第一銅が塗料組成物中に存在する場合、Cu2O含有量は好ましくは塗料組成物の1〜40固形分体積%、例えば5〜35固形分体積%の範囲である。塗料組成物の湿量で表し、また酸化第一銅が存在する場合、Cu2O含有量は好ましくは塗料組成物の少なくとも5湿量%、例えば10〜75湿量%の範囲である。特定の高固形分実施形態において、Cu2O含有量は好ましくは塗料組成物の少なくとも5湿量%、例えば10〜80湿量%の範囲である。
【0057】
顔料相は更に、顔料様原料(フィラー等)を含み得る。
【0058】
フィラーの例は、炭酸カルシウム、ドロマイト、タルク、マイカ、硫酸バリウム、カオリン、シリカ(熱分解法シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等を含む)、パーライト、酸化マグネシウム、カルサイト、石英粉末(quartz flour)、モレキュラーシーブ、合成ゼオライト、カルシウムシリコホスフェート、水和ケイ酸アルミニウム(ベントナイト)、有機変性クレイ、無水石膏等である。これらの材料は、最終的な塗膜を非半透明にしないことを特徴とするため、最終的な塗膜の下の材料を隠すにはあまり役立たない。
【0059】
一部のフィラー(及び顔料)が、バインダー相の添加剤(例えば、水分に対する安定剤、脱水剤、水捕捉剤、増粘剤、沈降防止剤等)が付与するタイプの特定の有利な特性を付与し得ることは注目に値するが、請求項を伴った本願の目的のために、このような粒子状材料は顔料相の一部であると見なされる。
【0060】
繊維の例は例えば国際公開第00/77102号パンフレットに広くまた具体的に記載されているものであり、この文献は参照により本願に組み込まれる。
【0061】
本明細書において特定の粒子を繊維と見なすためには、縦軸に沿った実質的に全ての地点において、長さ寸法(長さ寸法:最長寸法)に対して垂直の最大寸法と最小寸法との比が2.5:1、好ましくは2:1を超えるべきではない。更に、最長寸法と2つの最短寸法の平均との比は少なくとも5:1であるべきである。このため、繊維は、1つの長い寸法と2つの短い寸法を有することを特徴とし、ここで長い寸法は実質的にこの2つの短い寸法より長く(典型的には1桁又はそれ以上)、2つの短い寸法は実質的に等しい(同じ桁)。完全に標準的な繊維(すなわち、円筒形状を有する繊維)の場合、「長さ」(最長寸法)及び2つの(同一)最短寸法をどのようにして決定するかは明らかである。より不規則な形状の繊維の場合、寸法間の関係を、以下の仮想的な実験によって評価することができると考えられる。すなわち、標準的な直角の箱を繊維の周囲に構築する。この箱は、繊維を完全に納めることができる最小限の容積となるように構築される。繊維が湾曲する範囲で、(ここでも仮想的に)この繊維が可撓性であり、この仮想の箱の容積を、繊維の「屈曲」によって最小限にすることができると考えられる。本明細書において「繊維」をこのように認識するためには、箱の2つの最小寸法の比が最大で2.5:1(好ましくは2:1)であり、箱の最長寸法と箱の最小寸法の平均との比が少なくとも5:1であるべきである。
【0062】
目下、特に好ましい繊維は鉱物繊維、例えばミネラルガラス繊維、ウォラストナイト繊維、モンモリロナイト繊維、トバモライト繊維、アタパルジャイト繊維、焼成ボーキサイト繊維、火山岩繊維、ボーキサイト繊維、ロックウール繊維及びミネラルウール由来の加工鉱物繊維である。
【0063】
存在する場合、この繊維の濃度は通常、塗料組成物の0.5〜15固形分体積%、例えば1〜10固形分体積%の範囲である。
【0064】
組成物全体に対し(湿量)、存在する場合、繊維の濃度は通常は塗料組成物の0.1〜20湿量%、例えば0.5〜10湿量%の範囲である。特定の高固形分実施形態において、繊維の濃度は塗料組成物の0.1〜25湿量%、例えば0.5〜15湿量%の範囲である。
【0065】
上記の範囲は繊維の総量であることから、2種以上の繊維を利用する場合はその2種の繊維の総量が上記の範囲内にあることを理解すべきである。
【0066】
塗料組成物は、当該分野で慣用であるように1種以上の防汚剤も含み得る。防汚剤の例は、メタロ−ジチオカルバメート、例えばビス(ジメチルジチオカルバマト)亜鉛、エチレン−ビス(ジチオカルバマト)亜鉛、エチレン−ビス(ジチオカルバマト)マンガン及びこれらの錯体;ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジン−チオナト−O,S)銅(銅オマジン);アクリル酸銅;ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジン−チオナト−O,S)−亜鉛(亜鉛オマジン);フェニル−(ビスピリジル)−ビスマスジクロリド;金属塩、例えばチオシアン酸第一銅、塩基性炭酸銅、水酸化銅、メタホウ酸バリウム及び硫化銅;複素環式窒素化合物、例えば3a,4,7,7a−テトラヒドロ−2−((トリクロロメチル)−チオ)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、ピリジン−トリフェニルボラン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジン、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミン−s−トリアジン及びキノリン誘導体;複素環式硫黄化合物、例えば2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−オクチル−3(2H)−イソチアゾリン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及び2−(チオシアナトメチルチオ)−ベンゾチアゾール;尿素誘導体、例えばN−(1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)−N,N’ビス(ヒドロキシメチル)ウレア及びN−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N−ジメチルウレア及びN,N−ジメチルクロロフェニルウレア;カルボン酸、スルホン酸及びスルフェン酸のアミド又はイミド、例えば2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、1,1−ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)スルホニル)−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)−メタンスルフェンアミド、2,2−ジブロモ−3−ニトリロ−プロピオンアミド、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド及びN−メチロールホルムアミド;カルボン酸の塩又はエステル、例えば2−((3−ヨード−2−プロピニル)オキシ)−エタノールフェニルカルバメート及びN,N−ジデシル−N−メチル−ポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネート;アミン、例えばデヒドロアビエチルアミン及びココジメチルアミン;置換メタン、例えばジ(2−ヒドロキシ−エトキシ)メタン、5,5’−ジクロロ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン及びメチレン−ビスチオシアネート;置換ベンゼン、例えば2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ベンゼンジカルボニトリル、1,1−ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)−スルホニル)−1−フルオロ−N−フェニルメタンスルフェンアミド及び1−((ジヨードメチル)スルホニル)−4−メチル−ベンゼン;テトラアルキルホスホニウムハロゲニド、例えばトリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウムクロリド;グアニジン誘導体、例えばn−ドデシルグアニジンヒドロクロリド;ジスルフィド、例えばビス−(ジメチルチオカルバモイル)−ジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド;イミダゾール含有化合物、例えばメデトミジン;2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール並びにこれらの混合物である。一実施形態において、防汚剤は、N−(1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)−N,N’−ビス(ヒドロキシメチル)ウレア、ジ(2−ヒドロキシ−エトキシ)メタン及び5,5’−ジクロロ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタンの1つではない。これはこれらの防汚剤がイソシアネートと反応し得るからである。
【0067】
目下、防汚剤が錫を含まない剤であることが好ましい。
【0068】
好ましい一実施形態において、塗料組成物は、ピリジン−トリフェニルボラン、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール及びイミダゾール含有化合物(メデトミジン等)から成る群から選択される防汚剤を含む。
【0069】
防汚剤の総量は(存在する場合)典型的には、塗料組成物の最高30固形分体積%(0.05〜25固形分体積%等)、例えば塗料組成物の0.05〜20固形分体積%の範囲である。
【0070】
塗料組成物の総質量に対して、防汚剤の総量は(存在する場合)典型的には、塗料組成物の0〜40湿量%(0.05〜30湿量%等)、例えば塗料組成物の0.05〜20湿量%の範囲である。特定の高固形分実施形態において、防汚剤の総量は(存在する場合)通常は、塗料組成物の0〜50湿量%、例えば0.05〜25湿量%の範囲である。染料の例は、1,4−ビス(ブチルアミノ)アントラキノン、その他のアントラキノン誘導体;トルイジン染料等である。
【0071】
添加剤の例は(i)可塑剤、例えば塩素化パラフィン;フタレート、例えばジブチルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート及びジイソデシルフタレート;ホスフェートエステル、例えばトリクレシルホスフェート、ノニルフェノールホスフェート、オクチルオキシポリ(エチレンオキシ)エチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、イソオクチルホスフェート及び2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート;スルホンアミド、例えばN−エチル−p−トルエンスルホンアミド、アルキル−p−トルエンスルホンアミド;アジペート、例えばビス(2−エチルヘキシル)アジペート)、ジイソブチルアジペート及びジオクチルアジペート;リン酸トリエチルエステル;ブチルステアレート;ソルビタントリフォリエート;並びにエポキシ化大豆油;(ii)界面活性剤、例えばプロピレンオキシド又はエチレンオキシドの誘導体(アルキルフェノール−エチレンオキシド縮合物等);不飽和脂肪酸のエトキシル化モノエタノールアミド、例えばリノール酸のエトキシル化モノエタノールアミド;ドデシル硫酸ナトリウム;アルキルフェノールエトキシレート;並びに大豆レシチン;湿潤剤及び分散剤;(iii)消泡剤、例えばシリコーン油;(iv)光及び熱に対する安定剤等の安定剤、例えばヒンダードアミン光安定剤(HALS)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(5−クロロ−(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール及び2,4−ジ−tert-ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール;水分に対する安定剤又は水捕捉剤、モレキュラーシーブ、オキサゾリジン、置換シラン及びオルト蟻酸トリエチルエステル;(v)酸化に対する安定剤、例えばブチル化ヒドロキシアニソール;ブチル化ヒドロキシトルエン;プロピルガレート;トコフェロール;2,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノン;L−アスコルビルパルミテート;カロテン;ビタミンA;(vi)腐食に対する阻害剤、例えばアミノカルボキシレート、安息香酸アンモニウム、アルキルナフタレンスルホン酸のバリウム/カルシウム/亜鉛/マグネシウム塩、リン酸亜鉛;メタホウ酸亜鉛;(vii)融合助剤、例えばグリコール、2−ブトキシエタノール及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート;(viii)増粘剤及び沈降防止剤、例えばアルミニウムトリステアレート、アルミニウムモノステアレート、ヒマシ油、キサンタンガム、サリチル酸、水添ヒマシ油、ポリアミドワックス及びポリエチレンワックス;並びに(ix)脱水剤、例えばオルトプロピオン酸エステル、オルト蟻酸エステル、オルト酢酸エステル、アルコキシシラン、硫酸カルシウム、テトラエチルオルトシリケート等のアルキルシリケートである。
【0072】
塗料組成物が染料及び添加剤を累積量で塗料組成物の0〜20固形分体積%、例えば1〜20固形分体積%含むことが好ましい。
【0073】
塗料組成物の総質量に対し、塗料組成物が染料及び添加剤を累積量で塗料組成物の0〜10湿量%、例えば1〜10湿量%含むことが好ましい。特定の高固形分実施形態において、塗料組成物は染料及び添加剤を累積量で塗料組成物の0〜15湿量%、例えば1〜15湿量%含む。
【0074】
成分bと同様に(以下を参照のこと)、ベース成分は更に1種以上の反応性希釈剤を含み得る。
【0075】
ベース成分に含める反応性希釈剤の例はヒドロキシ−ポリエーテル樹脂、例えば式R−(OCH2CH2n−OH(式中、RはC1-6アルキルであり、nは1〜50の整数である)のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルコール等である。
【0076】
成分bが1種以上のイソシアネートを含む場合、ベース成分は1種以上の促進剤を含み得て、例えばテトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、N−アルキルモルホリン、トリエチルアミン(TEA)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート及びジブチル錫オキシドから選択される1種以上である。一部の実施形態において、この1種以上の促進剤は、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート及びジブチル錫オキシドから選択される。特定のケースにおいて、この1種以上の促進剤は別個の成分として提示される(実際には、ベース成分及び成分bに加えた第3の成分)。
【0077】
溶媒の例は脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素、例えばホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン及びナフサ溶媒;ケトン、例えばメチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジアセトンアルコール及びシクロヘキサノン;エチルエーテル;エステル、例えばエチルアセテート、プロピルアセテート、メトキシプロピルアセテート、n−ブチルアセテート及び2−エトキシエチルアセテート;塩素化炭化水素、例えば塩化メチレン、テトラクロロエタン及びトリクロロエチレン;並びにこれらの混合物である。
【0078】
塗料組成物の総質量に対し、塗料組成物が1種以上の溶媒を累積量で塗料組成物の0〜30湿量%、例えば0〜20湿量%含むことが好ましい。特定の高固形分実施形態において、塗料組成物は1種以上の溶媒を累積量で塗料組成物の0〜10湿量%、例えば0〜5湿量%含む。
【0079】
本明細書において、用語「湿量%(% by wet weight)」は、塗料組成物の湿潤物の質量/質量%を意味することを意図する。溶媒が含まれると理解すべきである。
【0080】
本明細書において、用語「固形分体積%(% by solids volume)」は、塗料組成物の固形物(すなわち、非揮発性物質)の体積/体積%を意味すると意図される。溶媒(すなわち、揮発性物質)は無視されると理解すべきである。
【0081】
成分b(硬化剤及び/又は硬化触媒)
塗料組成物は、硬化剤及び/又は硬化触媒を含む又はそれから成る成分bも含み、成分bは好ましくは1種以上のポリイソシアネートを含む。
【0082】
硬化剤として使用するための適切なポリイソシアネートは、ポリウレタン化学の公知のポリイソシアネートを含む。分子量168〜300を有する適切な低分子量ポリイソシアネートの例には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,2,4−及び/又は2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアナト−1−メチル−ベンゼン(トルエンジイソシアネート、TDI)、2,4−ジイソシアナト−1−メチル−ベンゼン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン、2,4−及び/又は4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、これらの異性体のアニリン/ホルムアルデヒド縮合体のホスゲン化による公知のやり方で得られるその高級同族体との混合物、2,4−及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエン並びにこれらの化合物の混合物が含まれる。
【0083】
一実施形態において、この1種以上のポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,2,4−及び/又は2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン並びに2,4−及び/又は4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタンから選択される。その幾つかの変形において、塗料組成物は1種以上の触媒も含み、例えばテトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、N−アルキルモルホリン、トリエチルアミン(TEA)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート及びジブチル錫オキシド、特にはジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート及びジブチル錫オキシドから選択される1種以上である。その他の変形において、塗料組成物は、これらの触媒のいずれも含まない。
【0084】
一実施形態において、この1種以上のポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネート、例えば2,4−ジイソシアナト−1−メチル−ベンゼン(トルエンジイソシアネート、TDI)、2,4−ジイソシアナト−1−メチル−ベンゼン、これらの異性体のアニリン/ホルムアルデヒド縮合体のホスゲン化による公知のやり方で得られるその高級同族体との混合物、2,4−及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエン並びにこれらの化合物の混合物から選択される。
【0085】
一部の実施形態においては、コーティング技術において慣用であるように、これらの単量体ポリイソシアネートの誘導体の使用が興味深いものになり得る。これらの誘導体には、ビウレット基を含むポリイソシアネートが含まれる。
【0086】
変性ポリイソシアネートが特に好ましく、N,N’,N”−トリス−(6−イソシアナトヘキシル)−ビウレット、これらのその高級同族体との混合物、N,N’,N”−トリス−(6−イソシアナトヘキシル)−イソシアヌレート並びにこれらの2つ以上のイソシアヌレート環を含む高級同族体との混合物である。
【0087】
適切な市販の脂肪族ポリイソシアネート樹脂の例は以下の通りである。
Desmodur N3900(かつてのVP2410)、Bayer社(ドイツ)
Desmodur N3600、Bayer社(ドイツ)
Desmodur N3800、Bayer社(ドイツ)
Tolonate HDT−LV2、Rhodia社(フランス)
Desmodur N3390、Bayer社(ドイツ)
Tolonate HDT90、Rhodia社(フランス)
Basonat HI 190 B/S、BASF社(ドイツ)
Desmodur N75、Bayer社(ドイツ)
Bayhydur VP LS 2319、Bayer社(ドイツ)
Tolonate IDT 70B、Rhodia社(フランス)
Desmodur H、Bayer社(ドイツ)
【0088】
適切な市販の芳香族ポリイソシアネート樹脂の例は以下の通りである。
Desmodur L67 BA(Bayer Material Science社)
Desmodur E21(Bayer Material Science社)
Desmodur VL(Bayer Material Science社)
Voratron EC 112(Dow Chemicals社)
Desmodur E23(Bayer Material Science社)
Desmodur E 1660(Bayer Material Science社)
Suprasec 2495(Huntsman Advanced Materials社)
【0089】
この1種以上のポリイソシアネートのイソシアネート当量は典型的には50〜3000(50〜2000等)、例えば80〜1000又は60〜1000(80〜500、100〜500等)の範囲である。
【0090】
プレポリマーのヒドロキシ基とポリイソシアネートのイソシアネート基との比(NCO:OH)は典型的には0.3:1〜1.5:1、例えば0.5:1〜1.5:1又は0.5:1〜1.2:1又は0.3:1〜1.2:1の範囲である。
【0091】
成分bは、ベース成分と同様に(上記を参照のこと)1種以上の反応性希釈剤を更に含み得る。
【0092】
成分bに含められる反応性希釈剤の例はモノイソシアネート等である。
【0093】
塗料組成物が反応性希釈剤を累積量で塗料組成物の0〜40固形分体積%、例えば0〜20固形分体積%(0〜10固形分体積%等)含むことが好ましい。
【0094】
塗料組成物の調製
本発明のベース成分は通常、塗料組成物(塗料)を製造するための慣用の装置(ボールミル、パールミル、スリーロールミル、ハイスピードディスパーサー等)を使用して上記の成分を一度に全て又は分割して混合及び分散することによって調製される。本発明のベース成分は(任意で繊維を含む)、バッグフィルタ、パトロンフィルタ、ワイヤギャップフィルタ、ウェッジワイヤフィルタ、メタルエッジフィルタ、EGLMターノクリーン(turnoclean)フィルタ(Cuno社)、DELTAストレインフィルター(Cuno社)及びJenagストレイナフィルタ(Jenag社)を使用して又は振動濾過によって濾過され得る。塗布前に、ベース成分は成分bと混合される。促進剤が別個の成分として提示される場合、ベース成分は、塗布に先立って成分b及び1種以上の促進剤と混合される。
【0095】
本発明の塗料組成物はそのままで又は希釈溶媒で粘度を調節した後に、錆止めコーティング材料を塗った船舶又は海洋構造物に例えばエアレススプレーコーティング、プルーラルコンポーネントエアレスコーティング、エアスプレーコーティング、ローラーコーティング又はブラシコーティングによってコーティングされ得る。実際にどの技法を選択するかは、保護対象の物体、特定の組成物(その粘度、ポットライフ等)及び特定の状況に左右される。好ましい塗布技法は、スプレーコーティング及び刷毛又はローラを使用した技法である。
【0096】
ベース成分、硬化剤及び更なる成分は別々に調製、出荷され、塗布直前に完全に混合されると理解すべきである。
【0097】
したがって、本発明は、本明細書で定義されるような防汚塗料組成物を含むキットを更に提供し、このキットにおいて第1容器には成分aが(ベース成分)、第2容器には成分b(硬化剤及び/又は硬化触媒)が入っている。
【0098】
更に、本発明は別個の製品としてのベース成分(すなわち、防汚塗料組成物用のベース成分)の特定の実施形態も提供し、この成分は、少なくとも1つの一般式I(上記を参照のこと)の末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有するヒドロキシ官能性プレポリマーを含むベース成分を含み、式中、Xはカルボニル基を表し(>C=O)、nは0〜5000の整数であり、R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立してC1-20アルキル及び任意で置換されたフェニルから選択され、プレポリマーのヒドロキシ価は2〜400mgKOH/g(固形分)の範囲である。
【0099】
塗料組成物の塗布
本発明は更に、表面の少なくとも一部に本明細書で定義の防汚塗料組成物の塗膜を有する海洋構造物に関する。この海洋構造物には、塗料組成物が1層又は数層、特には連続層でコーティングされ得る。
【0100】
本発明の塗料組成物は、保護対象である海洋構造物に1層又は幾つかの連続層、典型的には1〜4層、好ましくは1〜2層塗布され得る。1層あたりの塗膜の乾燥膜厚(dry film thickness:DFT)は典型的には10〜600μm、好ましくは20〜500μm、例えば40〜400μmである。このため、塗膜の総乾燥膜厚は典型的には10〜1800μm、好ましくは20〜1500μm、特には40〜1200μm、例えば80〜800μmになる。
【0101】
本発明の塗料組成物を塗布し得る海洋構造物は、水と接触する多彩な固体物体のいずれであってもよく、例えば船舶(ボート、ヨット、モーターボート、発動機艇、オーシャンライナー、タグボート、タンカー、コンテナ船、その他の貨物船、潜水艦(原子力潜水艦及び従来の潜水艦)並びに全ての形式の海軍艦艇を含むがこれらに限定されない);パイプ;海岸及び海洋で使用する全てのタイプの機械、構造物及び物体、例えば桟橋、杭、橋の下部構造、浮遊装置、水面下油井構造物等;網及びその他の海中養殖設備;冷却プラント;並びにブイであり、特に船及びボートの船体並びにパイプに塗布可能である。
【0102】
海洋構造物に塗料組成物を塗布する前に、この海洋構造物にまず、幾つかの層から構成され得るプライマー系又は海洋構造物への塗料組成物の塗布に関連して使用される慣用のプライマー系をコーティングし得る。したがって、プライマー系は錆止めプライマーを含み得て、任意でその上に接着性向上プライマー層を重ね得る。
【0103】
上記のプライマー系は、例えば、エポキシ当量が160〜600のエポキシ樹脂とその硬化剤(アミノタイプ、カルボン酸タイプ、酸無水物タイプ等)との組み合わせ、ポリオール樹脂とポリイソシアネートタイプ硬化剤との組み合わせ、バインダー系としてビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を含有し、必要なら更に熱可塑性樹脂(塩化ゴム、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等)、硬化促進剤、錆止め顔料、着色顔料、体質顔料、溶剤、トリアルコキシシラン化合物、可塑剤、添加剤(垂れ防止剤、沈殿防止剤等)を含有するコーティング材料又は典型的な例としてタールエポキシ樹脂タイプのコーティング材料であり得る。
【0104】
本明細書に鑑みるに、本発明は構造物をコーティングする方法も提供し、この方法は、構造物の少なくとも一部に本明細書で定義されるような防汚塗料組成物の層を塗布する工程を含む。一部の興味深い実施形態において、この層は、多層塗膜系の最終層である。
【0105】
本発明の具体的な実施形態
好ましい一実施形態において、塗料組成物全体は(すなわち、ベース成分及び成分b)、少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば60〜99%、80〜100%、更には70〜98%又は85〜100%の固形分質量比を有する。
【0106】
更に特定の実施形態において、塗料組成物全体は本質的に100%の固形分質量比を有する。「本質的に100%(essentially 100%)」という表現は、組成物が、塗料組成物の開始材料中に不可避に存在する、考えられる微量の揮発性物質(溶媒、残留モノマー等)以外に溶媒(又はその他の揮発性物質)を含まないことを意味すると理解されるべきである。このため、この実施形態において、溶媒は添加されない。
【0107】
固形分重量比(solids weight ratio:SWR)は、ISO規格3251:2008に従った測定である。
【0108】
防汚塗料組成物の自己研磨特性に関し、本明細書で定義される研磨率試験に従って測定される研磨率は10000海里あたり少なくとも1μmであることが好ましい。
【実施例】
【0109】
酸価の決定
「酸価」は、1グラムのポリマー(例えば、プレポリマー)の中和に必要な水酸化カリウム(KOH;Mw=56.1g/mol)のミリグラム数(mg)として定義される。本発明の目的において、酸価は、シリル基が加水分解で除去されてシリルエステル基の代わりに遊離酸性基を有するプレポリマーに関係する。
【0110】
酸価は、プレポリマーの組成(すなわち、モノマー構成成分及びその相対比についての情報)に基づいて求められ得る。
【0111】
例として、酸価を、50.0gのトリイソプロピルシリルアクリレートモノマー(TIPSA;Mw=228.4g/mol)及び50.0gのメチルメタクリレート(MMA;Mw=100.1g/mol)から成るプレポリマーに関して求める。上述したように、計算は遊離酸類似体に基づいて行われるため、アクリル酸をTIPSAの代わりに計算で使用する。50gのTIPSAは15.79gのアクリル酸に相当する(AA;Mw=72.1g/mol)。
【0112】
酸性官能基は、プレポリマーの24%(15.8g/(15.8g+50.0g)x100%)を構成する。
【0113】
メチルメタクリレートモノマーは、プレポリマーの76%(50.0g/(15.8g+50.0g)x100%)を構成する。
【0114】
1グラムのプレポリマーは、3.33mmolの遊離カルボキシル基(1gx24%/72.1g/mol)を含む。
【0115】
プレポリマーの遊離カルボキシル基を中和するためには187mg(3.33mmolx56.1mg/mmol)のKOHを必要とする。この値が酸価(acid value:AV)である。
【0116】
ヒドロキシ価の決定
ヒドロキシ価(OHV)は原則的に酸価と同じやり方で計算され、ポリマー(例えば、プレポリマー(非加水分解))1グラムあたりのヒドロキシル含有量に等しいKOHのミリグラム数を表し、すなわち単位「mgKOH/g(固形分)」となる。
【0117】
例として、ヒドロキシ価を、(100%)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA;Mw=130.1g/mol)ポリマーについて計算する。
【0118】
1グラムのポリマーは、7.69mmol(1g/130.1g/mol)のヒドロキシ基を含む。
【0119】
431mg(7.69mmolx56.1mg/mmol)のKOHは、1グラムのポリマーのヒドロキシル含有量に等しい。この値がヒドロキシ価(OHV)である。
【0120】
研磨率試験
直径1mの円筒形ドラムの曲率に対応する曲率を有するステンレススチール製の試験板(13.5x7cm2)にまず150μm(DFT)のエポキシプライマー(Hempadur Primer 45141、Hempel A/S社)をコーティングする。24時間後、その試験板に、エアスプレー塗装により100μm(DFT)の市販のエポキシタイコート(HEMPADUR 45182、Hempel A/S社)をコーティングする。
【0121】
室温の実験室での最低でも24時間の乾燥後、試験塗料をエアスプレー塗装によりDFT約250μmで塗布する。試験板を、試験前に室温の実験室で少なくとも1週間に亘って乾燥させる。塗料系の開始時の厚さを、膜厚計(Kett社、LZ−200C)を使用して測定する。
【0122】
試験板を直径1mの円筒形ドラムの凸面に固定し、海水中で回転させる。海水の塩分は、北緯34度東経134度に位置する日本の直島の試験場で、平均温度24℃で31〜35ppthの範囲である。
【0123】
ロータを、少なくとも39000海里の相対距離に対して15ノットの周速で回転させる。
【0124】
厚さを、膜厚計(Kett社、LZ−200C)を使用した定期的な検査で制御する。開始時の検査はロータ試験前に行われる。研磨は、所定の検査時に測定された膜厚と、開始時の検査で測定された膜厚との差である。
【0125】
直島での試験
試験板を直径1mの円筒形ドラムの凸面に固定し、海水中で回転させる。海水の塩分は、北緯34度東経134度に位置する日本の直島の試験場で、平均温度24℃で31〜35ppthの範囲である。
【0126】
ヴィラノヴァ(Vilanova)での試験
試験板を直径1mの円筒形ドラムの凸面に固定し、海水中で回転させる。海水の塩分は、北緯41.13度東経1.43度に位置するスペイン北東部のヴィラノヴァ・イ・ラ・ジェルトル(Vilanova i la Geltru)の試験場で、平均温度17〜18℃で37〜38ppthの範囲である。
【0127】
防汚特性試験
塗膜の接着を促進するために片面にサンドブラスト加工を施したアクリル製試験板(10x45cm2)にまず、エアスプレー塗装により市販のビニルタールプライマー(Hempanyl 16280、Hempel’s Marine Paints A/S社)を80ミクロン(DFT)でコーティングする。室温の実験室での最低でも24時間の乾燥後、試験塗料をエアスプレー塗装でDFT90〜100ミクロンで塗布する。少なくとも72時間に亘る乾燥後、試験板をラックに固定し、海水に浸漬する。
【0128】
鳥羽は日本の太平洋沿岸に位置する。この試験場において、試験板を海水に浸漬する。試験板を検査し、防汚性能を上記の尺度に従って評価する。4〜8週間毎にパネルを検査し、防汚性能を以下の尺度に従って評価する。
【0129】
【表2】

【0130】
実験室ロータ試験
研磨及び浸出特性を、Kiilらが記載の回転装置と同様の回転装置を使用して測定する(Kiil,S,Weinell,CE,Yebra,DM,Dam−Johansen,K,“Marine biofouling protection:design of controlled release antifouling paints.”In:Ng,KM,Gani,R,Dam−Johansen,K(eds.)Chemical Product Design;Towards a Perspective Through Case Studies,23IDBN−13:978−0−444−52217−7.Part II(7),Elsevier.(2006))。この装置はロータリーリグから成り、2個の同心円状のシリンダを有し、内方シリンダ(ロータ、直径0.3m、高さ0.17m)は回転可能である。このシリンダ対を約400〜500リットルの人工海水が入ったタンクに浸漬する。
【0131】
【表3】

【0132】
タンクには液体の流れを分断するバッフルが取り付けられ、このバッフルが乱流を促進し、塗料から放出される種のより素早い混合を可能にし、また恒温系からの熱伝達を促進する。2個のシリンダを使用する目的は、クエットの流れに近いものを作り出すことである(2つの平行な壁面の間の流れ。一方の壁面は一定の速度で移動する)。ロータは(特に指定がない限り)25℃で20ノットで動作し、pHは、1Mの水酸化ナトリウム又は1Mの塩酸を使用して頻繁に8.2に調節される。
【0133】
サンプルを、ドクターブレード(Doctor Blade)アプリケータ(間隙サイズ:200μm)で2成分塗料(Hempadur 4518、Hempel A/S社)を下塗りしたオーバーヘッドプロジェクタ用透明フィルム(3M社 PP2410)を使用して準備する。塗料サンプルを、ドクターブレードアプリケータ(間隙:250μm)を使用して互いに隣接させて塗布する。1日乾燥させた後、コーティングした透明フィルムを2cmの細片に切断し、長い細片(21cm)に1.5x2cm2の8個のサンプルとする。細片をロータに取り付け、1週間に亘って乾燥させる。
【0134】
1週間後、試験を開始する。実験中、12週間で少なくとも2回、サンプルを研磨及び浸出深さの検査のために取り出す。サンプルを3日間に亘って周囲条件で乾燥させ、その後、半分に切断してパラフィンで包埋する。総膜厚及び浸出層厚を光学顕微鏡で測定する前にサンプルの内部正面を削り落とす(塗膜断面の検査)。
【0135】
本発明の具体的なモデル塗料配合物の研磨及び浸出結果を表5に示す。
【0136】
ブリスターボックス試験
試験板の準備
アクリル板(155x100x5mm)にまず、エアスプレー塗装により市販のビニルタールプライマー(Hempanyl 16280、Hempel´s Marine Paints社)を80pm(乾燥膜厚、DFT)でコーティングする。室温の実験室での最低でも24時間の乾燥後、防汚塗料(モデル塗料又は市販の塗料)を、ドクターブレードアプリケータ(間隙サイズ:500μm)を使用して塗布する。試験前に、アクリル板を最低でも7日間に亘って室温の実験室で乾燥させる。
【0137】
試験
試験板を、クリーブランド結露試験機(QCT、Q−Panel社)において結露及びドライオフモードで試験する。QCT試験機は、ASTM標準試験法DI735−92に記載されている(霧状の水を発生させる装置を使用して塗膜の耐水性を試験する)。コーティングを施した試料を密閉したチャンバ内に置き、霧状の水の噴霧(8時間)/乾燥(4時間)のサイクルに供する。チャンバ内の温度は60℃に維持される。霧状の水を噴霧している間、水は塗膜内に浸透し、乾燥中、水は塗膜から「抜ける(escape)」。
【0138】
試験を7週間に亘って行い、塗料を、下記の要領で1日目、3日目、7日目及び21日目に膜欠陥について評価する。
【0139】
ブリスター評価を、ISO規格4628−4に従って行う。
【0140】
塗料組成物の調製
プレポリマー1〜13のプレポリマー合成の手順:モノマー(トリイソプロピルシリルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート)、アゾビス−メチルブチロニトリル及びキシレンのプレミックスを規定の割合(表1を参照のこと)で調製し、攪拌機、還流凝縮器、窒素注入口及びプレミックス供給口を備えた温度制御反応槽に装入した。反応槽を加熱し、125℃で維持し、プレミックスを反応槽に一定速度で4時間に亘って窒素雰囲気下で装入した。更に30分後、開始剤及びキシレンのプレミックスを反応槽に一定速度で1時間に亘って装入した。更に30分後、反応槽の温度を低下させた。
【0141】
硬化剤:HMDI、HMDIのプレポリマー又はMDIのプレポリマー。
【0142】
参考1のポリマー合成の手順:ジエチルオキサレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール及びジブチル錫オキシドの混合物を含む開始材料を、攪拌機、温度計、凝縮器及び窒素注入口を備えた温度制御反応槽に装入した。混合物を窒素下で190℃までゆっくりと加熱し、その間に凝縮物が蒸留された。温度を190℃で15時間に亘って維持した。溶媒(キシレン)を添加し、ポリマー溶液を室温にまで冷却した。
【0143】
表1のプレポリマー1〜13を、これらの調製手順に従って調製する。
【0144】
【表4】



【0145】
ポリマーの特性を、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定する。分子量分布(molecular weight distribution:MWD)を、2個のTSKゲルスーパーマルチポアHZ−Mカラムを備えた機械HLC−8220(Tosoh社)、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を使用して40℃、一定流量0.350mL/分で、屈折率(RI)検出装置を使用して求めた。カラムを、ポリスチレン標準液を使用して較正した。サンプルを、40mgの乾燥ポリマーに相当する量のポリマー溶液を10mLのTHFに溶解することによって調製した。
【0146】
モデル塗料の基本配合
モデル塗料1〜28及び参考塗料1(表2を参照のこと)を、以下の手順に従って調製した。各ケースにおいて、モデル塗料を、全原材料(ベース成分)をガラスビーズの入った閉鎖された缶内で30分間に亘って混合及び粉砕することによって調製した。得られた粒度は約50μmであった。
【0147】
ベース成分及び成分bを、塗布前に25℃で混合した。
【0148】
【表5】











&:HMDI=ヘキサメチレンジイソシアネート;Desmodur H
*:Desmodur N75 MPA/X


&:チキソトロープ剤及び/又は湿潤剤




【0149】
結果
研磨率及び浸出率を、本明細書で定義される試験方法に従って本発明のモデル塗料配合物について求めた。結果を表3、表4及び表5に示す。
【0150】
【表6】

*:Hempel A/S社製の市販の最上級自己研磨型防汚塗料組成物(参考)
#:35週間の試験後に測定。研磨は少なくとも74週間に亘って維持された(最終検査)
【0151】
【表7】

#:剥離のため、研磨率を求めることは不可能であった。これらの組成物の物理的性質は、ロジン及び/又は可塑剤の添加によって改善され、繊維の添加によって更に改善されると考えられる。
【0152】
【表8】

#:1検査のみ
**:モデル塗料21、23と比較して50%の硬化剤
【0153】
モデル塗料及び参考塗料1を、上述したブリスターボックス試験に従ってブリスタリング傾向について試験した。参考塗料1では著しいブリスタリングが観察され、試験したモデル塗料のいずれについてもブリスタリングは観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己研磨型防汚塗料組成物であって、
(a)(i)少なくとも1つのアルコキシシリル官能基を有し並びに/又は(ii)硬化剤及び/若しくは硬化触媒(成分b)の存在下で硬化性であるプレポリマーを含むベース組成物であって、前記プレポリマーが、一般式(I):
【化1】

で表され、式中、Xはカルボニル基(>C=O)を表し、nは0〜5000の整数であり、R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立してC1-20アルキル及び任意で置換されたフェニルから選択される、少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有する前記ベース成分と、
(b)硬化剤及び/若しくは硬化触媒を含む又はそれから成る成分bと
を含むことを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
前記一般式(I)の末端基が、一般式(II):
【化2】

の末端基であり、式中、X、R3、R4及びR5は請求項1で定義された通りである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プレポリマーが少なくとも1つのヒドロキシ官能基を更に有する、請求項1〜2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記硬化剤及び/又は硬化触媒が1種以上のポリイソシアネートを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記1種以上のポリイソシアネートのイソシアネート当量が50〜3000の範囲である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
(a)一般式I:
【化3】

で表され、式中、Xはカルボニル基(>C=O)を表し、nは0〜5000の整数であり、R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立してC1-20アルキル及び任意で置換されたフェニルから選択される、少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有するヒドロキシ官能性プレポリマーを含むべース成分であって、前記プレポリマーのヒドロキシ価が2〜400mgKOH/g(固形分)の範囲である前記ベース成分と、
(b)1種以上のポリイソシアネートを含む硬化剤と
を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記プレポリマーのヒドロキシ価が5〜300mgKOH/g(固形分)の範囲である、請求項3〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
シリルエステル基の完全な加水分解後の前記プレポリマーの酸価が5〜500mgKOH/g(固形分)の範囲である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記プレポリマーの重量平均分子量が1,000〜120,000g/molの範囲である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記プレポリマーのガラス転移温度Tgが−10〜100℃の範囲である、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
全体で少なくとも40%の固形分質量比を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記プレポリマーが少なくとも1つのアルコキシシリル官能基、及び少なくとも1つの一般式(I)の末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
本明細書で定義の研磨率試験に従って求められる研磨率が10000海里あたり少なくとも1μmである、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかで定義の防汚塗料組成物を含むキットであって、
第1容器にベース成分が、第2容器に成分bが入っていることを特徴とする、キット。
【請求項15】
防汚塗料組成物用のベース成分であって、
一般式I:
【化4】

で表され、式中、Xはカルボニル基(>C=O)を表し、nは0〜5000の整数であり、R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立してC1-20アルキル及び任意で置換されたフェニルから選択される、少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有するヒドロキシ官能性プレポリマーを含み、
前記プレポリマーのヒドロキシ価が2〜400mgKOH/g(固形分)の範囲であるベース成分を含む
ことを特徴とする、ベース成分。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成される塗膜をその表面の少なくとも一部に有する海洋構造物。
【請求項17】
構造物をコーティングする方法であって、
構造物の少なくとも一部に請求項1〜12のいずれかで定義の防汚塗料組成物の層を塗布する工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記層が多層塗膜系の最終層である、請求項17に記載の方法。

【公開番号】特開2012−102326(P2012−102326A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−240635(P2011−240635)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【出願人】(501477945)
【住所又は居所原語表記】Lundtoftevej 150,DK−2800 Kongens Lyngby,DENMARK
【Fターム(参考)】