説明

高圧ガス容器

【課題】容器から内部の高圧ガスを徐々に排出する。
【解決手段】金属製の容器本体1の出入口部2は薄肉金属板3により密封されている。出入口部2の内側には多孔質の棒状の焼結金属体5が固定され、容器本体1の内部に十分に挿入されている。容器本体1内の空間には、高圧液化ガスを十分に吸着する液化ガス吸着剤6が充填されている。このように構成した容器本体1内に、高圧液化ガスを充填して、液化ガス吸着剤6に含浸させる。
出入口部2に管体等を連結し、薄肉金属板3を破ると、液化ガス吸着剤6に含浸されている高圧液化ガスが気化され、気化されたガスは焼結金属体5中を通り出入口部2に達するので、ガスが急激に容器本体1から排出されることなく、出入口部2から徐々に放出されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に高圧液化ガスを充填し、外部に徐々にガスを放出し得る高圧ガス容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスなどの高圧液化ガスを充填した高圧ガス容器は、多種の用途に使用されている。
【0003】
しかし、使用に際して容器からガスが急速に排出されるので、短時間に排出が終了してしまうことがある。また、容器の向き方向によって吐出状態が異なる問題もある。これを防止するために、例えばビール吐出装置では液化ガスが急激に吐出しないように、容器の取り付けに角度を付するなどの取付上の各種の工夫がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1〜3には、容器内に高圧ガスの液化ガス吸着剤を充填したものが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−89598号公報
【特許文献2】特開平11−90497号公報
【特許文献3】特開2002−349792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの特許文献1〜3は可燃性の高圧液化ガスを使用しており、高圧液化ガスを液化ガス吸着剤に充填し、容器が転倒しても液が流出しないようにしている。
【0007】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、容器からガスを徐々に排出し得る高圧ガス容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するための本発明に係る高圧ガス容器は、容器本体の出入口部から内部に棒状の多孔質体を挿入し、前記容器本体内の空間に液化ガス吸着剤を充填し、該液化ガス吸着剤に高圧液化ガスを含浸させ、ガス排出時には前記多孔質体を介して前記液化ガス吸着剤からガスを放出させて容器本体の外部に排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る高圧ガス容器によれば、容器内において液化ガス吸着剤に吸着されたガスは、多孔質体を介して安定した排出量で長時間に渡って徐々に排出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は断面図であり、金属製の容器本体1の出入口部2は薄肉金属板3により密封されている。出入口部2の内側には接続ソケット4が取り付けられ、この接続ソケット4には多孔質の棒状の焼結金属体5が固定され、容器本体1の内部に十分に挿入されている。
【0011】
そして、容器本体1内の空間には、高圧液化ガスを十分に吸着する活性炭、モレキュラーシーブ等の液化ガス吸着剤6が充填されている。
【0012】
このように構成した容器本体1内に、炭酸ガス等の高圧液化ガスを充填して、液化ガス吸着剤6に含浸させる。
【0013】
使用に際しては、ガスを充填した高圧ガス容器の出入口部2に管体等を連結し、薄肉金属板3を破る。これにより容器本体1内に圧力が急速に降下し、液化炭酸ガスは短時間で膨張し、伝熱時間が殆どないので断熱膨張する。この断熱膨張により温度が低下するため、液化炭酸ガスはこのときドライアイスに変化する。これにより、熱量の減少を抑制し、液化ガス吸着剤6に含浸されている高圧液化ガスが気化される。
【0014】
しかし、気化されたガスは焼結金属体5中を通り出入口部2に達するので、ガスが急激に容器本体1から排出されることなく、出入口部2から徐々に放出されることになる。
【0015】
本実施例の高圧ガス容器と、通常の内部に何も設けない標準容器の場合に、それぞれ液化高圧炭酸ガスを充填し、ガス放出時間を比較すると、次のような数値が得られた。
【0016】
実施例容器 標準容器
充填圧力 9MPa 9MPa
充填量 13g 15g
ガス放出時間 9分〜10分 5秒
【0017】
なお、焼結金属体5は径5mm、長さ43mmであり、ガス放出は減圧弁により0.9MPaに減圧して吐出している。この結果によれば、本実施例の場合は、極めて緩慢にガスが放出され、用途によって有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】高圧ガス容器の断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 容器本体
2 出入口部
3 薄肉金属板
4 接続ソケット
5 燃結金属体
6 液化ガス吸着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の出入口部から内部に棒状の多孔質体を挿入し、前記容器本体内の空間に液化ガス吸着剤を充填し、該液化ガス吸着剤に高圧液化ガスを含浸させ、ガス排出時には前記多孔質体を介して前記液化ガス吸着剤からガスを放出させて容器本体の外部に排出することを特徴とする高圧ガス容器。
【請求項2】
前記多孔質体は焼結金属体としたことを特徴とする請求項1に記載の高圧ガス容器。
【請求項3】
前記液化ガス吸着剤は活性炭又はモレキュラーシーブとしたことを特徴とする請求項1に記載の高圧ガス容器。
【請求項4】
前記高圧液化ガスは液化高圧炭酸ガスとしたことを特徴とする請求項1に記載の高圧ガス容器。

【図1】
image rotate