説明

高圧処理装置及び高圧処理装置の運転方法

本発明の目的は、水分を10質量%以上含有する被処理物を高圧下で処理する高圧反応器に対して、高圧反応器からの高圧雰囲気の逆流を抑えると共に連続的に被処理物を供給することにある。 具体的な解決手段としては、一端側及び他端側に夫々被処理物供給部及び排出口が設けられたスクリューフィーダの排出口に接続され、2MPa以上の圧力に加圧される高圧雰囲気を形成する高圧反応器に対して、スクリューフィーダの他端側にて圧縮された堆積物による密閉作用により高圧雰囲気とスクリューフィーダの一端側との間の気密が維持されるようにして被処理物を供給する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば木屑(建設廃材含む)、紙、食品廃棄物などの被処理物をスクリューフィーダで高圧雰囲気に供給して高圧下で処理するための高圧処理装置および当該高圧処理装置の運転方法に関する。
【背景技術】
近年、例えば木材、農産物、食品、汚泥、紙などの廃棄物(廃材)はバイオマスの原料として使用されており、例えば亜臨界状態の水と接触させて改質せしめることにより燃料としての品質を高め、例えば発電用燃料としての適用可能性について検討が進められている。当該改質反応は、例えば高温、高圧の熱水が満たされた反応容器に、バイオマスの原料例えば粉粒状又は塊状の木屑を供給して、この熱水と木屑とを接触させて行われている。従来においては、このような高圧状態の反応容器に被処理物を供給する手段として、スラリーポンプ、スクリューフィーダ、ロータリーフィーダおよび振動フィーダなどが用いられることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】 特開2000−189781(第14頁、第11図)
上述の供給手段にスクリューフィーダを用いて例えば木屑を供給する場合の装置構成について図6を用いて簡単に述べておく。図中10は例えば木屑を改質するための反応容器であり、その内部には高温、高圧の熱水が満たされている。また11は木屑を反応器10に供給するためのスクリューフィーダである。このスクリューフィーダ11は、本体部をなすケーシング12と、このケーシング12の内部に設けられ、回転することにより木屑を移送するためのスクリュー機構13と、を備えており、当該ケーシング12の一端側に接続されたホッパ14を介してケーシング12内に投入された木屑を、当該ケーシング12の他端側から排出して反応容器10に供給するように構成されている。
しかしながら上述の供給手段にスラリーポンプを用いた場合には、その機構上、前記木屑を例えば水と混合してスラリー状態にしなければ移送することができず、そのため木屑を水分の少ない高濃度な状態で反応容器10に供給することができないという問題があり、更には木屑と混合した水を熱水にするための加熱量が大きくコスト的に割高になる。一方、スクリューフィーダ、ロータリーフィーダ、振動フィーダを用いた場合、水分の少ない高濃度な状態で木屑を移送することができるが、これらの供給手段は圧力差の大きい高圧側に向かって木屑を圧送するのが難しく、例えば図6の記載の例ではスクリューフィーダ12の背圧を維持するために、スクリューフィーダ12とホッパ14との間に例えば開閉機構15を設けるなどしてスクリューフィーダ12の前後をある程度均圧にしなくては反応容器10内の熱水がスクリューフィーダ12内に逆流してしまう場合があり、そのため装置構成が複雑になり、また連続供給するためには熱水が逆流しないように開閉機構15の開閉動作を制御するのが難しいといった問題がある。
【発明の開示】
本発明はこのような事情に基づいてなされたものであり、その目的は例えばバイオマスの原料である被処理物をスクリューフィーダで例えば高圧反応器内に高濃度な状態で連続供給することのできる高圧処理装置、および当該高圧処理装置の運転方法を提供することにある。
本発明の高圧処理装置は、水分を10質量%以上含有する被処理物を高圧下で処理する高圧処理装置において、
一端側及び他端側に夫々被処理物供給部及び排出口が設けられたスクリューフィーダと、
このスクリューフィーダの排出口に接続され、スクリューフィーダから供給される被処理物を2MPa以上の圧力下で加圧処理可能な高圧雰囲気を形成する処理室と、を備え、
前記スクリューフィーダは、処理室への被処理物の供給時にその他端側にて圧縮された堆積物による密閉作用により前記高圧雰囲気とスクリューフィーダの一端側との間の気密を維持して処理室への連続供給を可能とすることを特徴とする。
前記被処理物は、例えば少なくともセルロース、リグニンの一方を含んでいてもよい。また前記スクリューフィーダは、さらに排出口を開閉する第1のバルブと、排出口の近傍に設けられた空気抜き孔と、この空気抜き孔を開閉する第2のバルブと、を備えた構成であってもよい。更に前記制御手段は、第2のバルブを徐々に閉じ、スクリューフィーダの他端側における被処理物の圧力が処理室内の圧力と同程度以上になったときに、第2のバルブを一気に閉じると同時に第1のバルブを開くようにしてもよい。
前記スクリューフィーダのスクリュー軸には、例えば被処理物を粉砕するための粉砕部材が設けられたようにしてもよい。またスクリューフィーダのスクリュー軸は、例えば互いの羽根部材がかみ合うようにして2軸設けられたようにしてもよい。更にまた、スクリューフィーダ内の被処理物に水を供給するための給水手段が設けられたようにしてもよい。
本発明の高圧処理装置の運転方法は、スクリューフィーダの他端側の排出口を第1のバルブにより閉じてスクリューフィーダと処理室との間を遮断しかつ当該他端側の空気抜き孔を開いた状態で、水分を10質量%以上含有する被処理物をスクリューフィーダの一端側から供給する工程と、
スクリューフィーダの他端側にて圧縮された被処理物の堆積物による密閉作用により、前記処理室とスクリューフィーダの一端側との間の気密を維持しながら、被処理物をスクリューフィーダの一端側から連続的に処理室に供給する工程と、
スクリューフィーダから処理室内に供給された被処理物を2MPa以上の圧力下で処理する工程と、を有することを特徴とする。
また他の発明は、スクリューフィーダの他端側の排出口を第1のバルブにより閉じてスクリューフィーダと処理室との間を遮断しかつ当該他端側の空気抜き孔を開いた状態で、水分を10質量%以上含有する被処理物をスクリューフィーダの一端側から供給する工程と、
前記空気抜き孔からスクリューフィーダ内の空気を抜きながら、当該空気抜き孔を第2のバルブにより徐々に閉じてスクリューフィーダの他端側の圧力を立ち上げる工程と、
スクリューフィーダの他端側における被処理物の圧力が処理室内の圧力と同じかそれよりも高くなったときに前記第1のバルブを開いて前記排出口を処理室内に連通させる工程と、
スクリューフィーダの他端側にて圧縮された被処理物の堆積物による密閉作用により前記高圧雰囲気とスクリューフィーダの一端側との間の気密を維持しながら、被処理物をスクリューフィーダの一端側から処理室に連続的に供給する工程と、
スクリューフィーダから処理室内に供給された被処理物を2MPa以上の圧力下で処理する工程と、を備えたことを特徴とする。
「スクリューフィーダの他端側における被処理物の圧力が処理室内の圧力と同じかそれよりも高くなったときに」の「同じ」の意味は、両者の圧力が一致している場合のみならず、前記他端側における被処理物の圧力の方が処理室内の圧力に比べて多少低くても、その圧力の低い程度がスクリューフィーダの他端側から被処理物を処理室内に供給できる範囲である場合も含む。前記排出口を処理室内に連通させる工程は、スクリューフィーダの他端側における被処理物の圧力が処理室内の圧力と同じかそれよりも高くなったときに、第2のバルブを閉じて第1のバルブを開く工程であってもよい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態に係るスクリューフィーダの断面図である。
図2は、上記のスクリューフィーダの先端部を示す斜視図である。
図3は、上記のスクリューフィーダのスクリュー軸を示す説明図である。
図4は、上記のスクリューフィーダを用いて木屑を供給する様子を示す説明図である。
図5は、上記のスクリューフィーダの他の例を示す説明図である。
図6は、従来のスクリューフィーダを示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の高圧処理装置の実施の形態について図1及び図2を参照しながら説明する。図中20はスクリューフィーダの本体部をなすシリンダであり、このシリンダ20は例えば必要に応じた個数のブロック状のシリンダ20を一方向に接続している。またシリンダ20の内部には、当該シリンダ20の長手方向の一端側から他端側に亘って、例えば互いの側周面が連通する2つの円筒形からなる開口部21が平行に並んで形成されている。この開口部21は例えば粉粒状又は塊状の被処理物を前記シリンダ20の一端側から他端側へと移送するための移送路として構成されている。この被処理物は例えば水分を10質量%以上、好ましくは10〜50質量%含有する少なくともセルロース、リグニンの一方を含んでいるバイオマスの原料であり、例えば3〜100mmの例えばチップ状の木屑である。またシリンダ20の一端側の上面には、被処理物をシリンダ20内に供給するための被処理物供給部である供給口22が設けられ、この供給口22には被処理物の投入手段例えばホッパ23が接続されている。
またシリンダ20の他端側の先端部には、被処理物を排出するための排出口24が設けられており、この排出口24は被処理物を例えば2MPa以上の圧力下で加圧処理可能な高圧雰囲気を形成する処理室、例えば木屑を改質せしめるための例えば亜臨界状態の高圧な熱水が満たされた高圧反応器200と連通されている。更に排出口24と対向するようにして第1のバルブ30が設けられており、この第1のバルブ30は軸部31を介して駆動機構32と接続され、当該排出口24に外側から第1のバルブ30が密合されて排出口24が閉じられるように構成されている。更にまた、シリンダ20の他端側の側壁面の排出口24近傍には、当該シリンダ20内の空気を排出するための空気抜き孔25が設けられており、この空気抜き孔25と対向するようにして第2のバルブ34が設けられている。この第2のバルブ34は軸部35を介して駆動機構36と接続されており、空気抜き孔25に第2のバルブ34が外側から密合されて閉じられるように構成されている。更にシリンダ20の他端側先端には、圧力を検知するための圧力検知部40例えば圧力センサが設けられている。更にまた、シリンダ20の他端側の表面温度を検知するための温度検知部41例えば温度センサが設けられている。
また前記開口部21内には、被処理物をシリンダ20の一端側から他端側へと移送するための、例えば軸径69mmの2軸のスクリュー軸5a(5b)が開口部21の各円筒状開口領域に夫々割り当てられるようにして、図示しない軸受け部に支持されて設けられている。この2軸のスクリュー軸5について図3を用いて詳しく説明すると、当該スクリュー軸5a(5b)の軸表面には、その回転軸方向に向かって螺旋状に形成されたその断面が概ね楕円もしくは三角形状の羽根部材であるスクリュー羽根50a(50b)が設けられている。そしてスクリュー羽根50aとスクリュー羽根50bとが隙間を介して互いにかみ合うようにして2軸のスクリュー軸5が並んで配置されている。なおスクリュー羽根50a(50b)は、高圧雰囲気に向かう被処理物の押し出し力を高めるために、隣り合う羽根のピッチPおよびスクリュー羽根50a(50b)の外縁とシリンダ20の内壁面との隙間を狭く設定するのが好ましく、この例では例えばピッチPを24〜52mmとしている。
前記スクリュー軸5a(5b)は、同期に回転することにより被処理物をシリンダ20の一端側から他端側へと移送する機能を有している。更にスクリュー軸5a(5b)は、他端部領域にて水分を含んだ被処理物を圧縮して高密度化することにより、スクリュー軸5a(5b)とシリンダ20の内壁面との間に圧縮された被処理物の堆積層を形成して、その密閉作用により排出口24に連通する高圧容器200内の高圧雰囲気とシリンダ20の一端側との間の気密を維持する機能を有している。また被処理物が例えば前記したチップ状である場合など、必要ならばスクリュー軸5a(5b)の例えば中心付近に被処理物を細かく粉砕するための粉砕部材である粉砕刃51a(51b)を設けるようにしてもよい。
またスクリュー軸5a(5b)の一端は、当該スクリュー軸5a(5b)を回転軸回りに回動させるための駆動機構例えばモータ52と接続されている。このモータ52には、被処理物の移送時のトルクを間接的に把握するために、モータ52に流れる電流を検知するための電流検知部53例えば電流計が設けられている。なお本例では同方向に螺旋するようにスクリュー羽根50a(50b)が設けられた2軸のスクリュー軸5を配置して、各スクリュー軸5を同方向に回転させる構成を記載しているが、各スクリュー軸5のスクリュー羽根50a(50b)が互いに対称方向に螺旋するように設けられたものを配置して、各スクリュー軸5を互いに異なる方向に回転させるようにしてもよい。
更にまた、図中6は制御手段である制御部であり、圧力検知部40、温度検知部41および電流検知部53のいずれかの検知結果に基づいて第1のバルブ30、第2のバルブ34の開閉動作、モータ52の回転動作を制御する機能を有している。特に例えば所定の間隔でサンプリングする電流検知部53の検出結果が所定の電流値例えば前回サンプリングした検出結果の値よりも例えば20%以上低下した場合に被処理物の逆流の兆候があると判断して例えば第1のバルブ30を閉じて被処理物の逆流を防止するといったインターロック制御をする機能を有している。
続いて水分を10質量%以上含有する被処理物である例えばチップ状の木屑を高圧反応器200に供給する手法について説明する。先ず温度が例えば300℃、圧力が例えば2MPa以上、好ましくは7〜12MPaの熱水が満たされた高圧反応器200に対して、図4(a)に示すように、第1のバルブ30が閉じられ、必要に応じて第2のバルブ34が開かれた状態とし、モータ52を稼動させて2軸のスクリュー軸5を回転軸回りに同時に回転させながら、供給口22を介してホッパ23からシリンダ20の一端側に木屑を投入する。シリンダ20内に投入された木屑は、回旋するスクリュー羽根50a(50b)に解されながら、その押出し作用によりシリンダ20の開口部21内を他端側(先端側)に向かって順次移送される。このとき当該シリンダ20内に充満される木屑により、シリンダ20内の雰囲気例えば空気が圧縮されてその温度が上昇し、そのため木屑に含まれる水が蒸発して水蒸気となり、この水蒸気によりシリンダ20内の空気が空気抜き孔25から押し出されるようにして排出される。
更にシリンダ20内を他端側へ移送される木屑は、粉砕領域を通過する際に粉砕刃51a(51b)により細かく粉砕されて微細な粉砕物となり、更にスクリュー羽根50a(50b)により解されながら他端側に移送される。そして例えば予め決められた時間が経過してシリンダ20内が概ね木屑で充満されると、図4(b)に示すように、第2のバルブ34を除々に閉じて、最終的に排出口24部分の圧力を立ち上げる。そのためシリンダ20の先端側にある木屑が圧縮され、密な状態例えば圧縮後の密度が1.2〜1.3となり、更には予め含んでいた水がバインダとして作用して細かい繊維状の木屑同士が密に絡み合う高密度化された木屑の堆積物(堆積層)が形成される。なお本発明者らは、シリンダ20の長手方向の圧力分布を測定した結果、シリンダ20の先端部にて急激に圧力が立ち上がっていたことからこの堆積層はシリンダ20の先端側領域例えば軸径69mmのスクリュー軸5の先端付近に例えば50〜250mm程度の厚みをもって形成されていると推測している。
しかる後、圧力検知部40の検出結果が高圧反応器200内の圧力と同じになるかそれ以上になると、図4(c)に示すように、第2のバルブ34を一気に閉じると同時に第1のバルブ30を開いて木屑を高圧反応器200に供給する。高圧反応器200内に供給された木屑は熱水との接触反応により改質された後、当該高圧反応器200から排出され、脱水/乾燥などの処理が施されてバイオマス燃料となる。このようにして得られた改質バイオマス燃料は例えば発電用燃料として使用される。
上述の実施の形態においては、スクリューフィーダの先端側(他端側)の領域に圧縮されて高密度化された木屑の堆積層を形成することにより、当該堆積層がいわばシール層として作用する。このため例えばスタートアップ時において第1のバルブ30を開いてスクリューフィーダと高圧反応器200とを連通した際に、その密閉作用によりスクリューフィーダの一端側と高圧反応器200との間の気密が維持されるので、高圧反応器200から高圧流体である熱水が逆流することが抑えられる。更にその後の定常状態においても堆積層の中の先端側にある木屑が排出される一方で、一端側から送られてくる木屑が順次堆積層に継ぎ足されてこの堆積層を維持形成することができる。即ち供給先である高圧反応器200が高圧状態にあることから、スクリューフィーダと高圧反応器200とが連通されればスクリューフィーダ側に木屑を押し戻そうとする作用と、それに対向してスクリュー軸5a(5b)の高圧反応器200側に木屑を押し出そうとする作用とが相俟って当該木屑の堆積層が圧縮されてそのシール性を失わず高圧反応器200からの逆流を抑えることができる。その結果、高圧状態の高圧反応器200に対して木屑を高濃度な状態で連続供給することを可能にした。
なお、木屑に含まれる水は、前記したようにバインダとして作用するので、堆積層の密閉作用をより確実なものとするためには木屑が10質量%以上の水を含んでいることが望ましい。しかしながら製造コストの面から見れば木屑は水の少ない高濃度な状態で供給する方が望ましい。更に木屑の元となる生木は一般に50質量%程度の水分を含んでいることから、乾燥又は給水等の余分な処理を省くといった理由から本例では原料として投入される木屑の水分の濃度は例えば10質量%以上、好ましくは10〜50質量%に設定される。
更に上述の実施の形態においては、スタートアップ時においてシリンダ20の他端側から空気を抜きながらシリンダ20の一端側から木屑を供給し、その際木屑から蒸発した水蒸気によりシリンダ20内の空気を押し出して排出することにより、シリンダ20内にある圧縮された空気が爆発することが少なく、スタートアップ動作の制御が簡単に行うことができ、更に作業者にとって安全である。
更に上述の実施の形態においては、2軸のスクリュー軸を設けることで、互いにかみ合いながら回転するスクリュー羽根50a(50b)により木屑が解されながら移送される。そのためその後にシリンダ20の先端側で圧縮した際に、当該細かい木屑の繊維が密に絡み合う空隙の少ない堆積層を形成することができるので、より確実に逆流を抑えることのできる高い密閉作用を得ることができる。更に木屑が解されることにより移送時の摩擦抵抗が小さくなるのでモータ52にかかるにトルクが少なくてすみ、そのため小型のモータ52を選定して設備コストの低下を図ることができるといった利点がある。
更に上述の実施の形態においては、電流検知部53の検知結果に基づいて第1のバルブ30を閉じる制御を行うことにより、例えばホッパ23に木屑が投入されず当該ホッパ23が空になるなどの予期しない事態が生じても高圧反応器200側の熱水が逆流するのが抑えられる。即ち、ホッパ23が空になった場合に、それに気付かずに高圧反応器200への供給動作を続けていると、シリンダ20内の木屑がなくなって堆積層が崩れてしまい、熱水が逆流してしまう場合があるが、既述のようなインターロック制御を行うことにより、逆流の兆候を素早く察知して防ぐことができる。なお、スクリュー軸5a(5b)に粉砕刃51a(51b)を設けた場合、粉砕刃51a(51b)が積極的に木屑を粉砕しているときにはモータ52にかかるトルクが大きくなり、そのためモータ52に流れる電流が大きくなる。反対に木屑を粉砕していないときにはモータ52を流れる電流が小さくなるといったことによって電流値が変化する場合があるので、この変化により誤ってインターロック動作が作動しないように、例えば電流を検出する場合にはサンプリングされる電流の検出結果が所定の電流値、例えば前回サンプリングされた検出結果よりも例えば20%以上も低下した場合にインターロック動作が作動させるなどの制御を行うのが好ましい。
本発明の高圧処理装置においては、図5に示すように、シリンダ20の例えば他端側に給水口を設け、給水手段8により例えば水又は水蒸気を供給するようにしてもよい。このような構成において、例えば所定量の水を供給して木屑の水分の濃度を例えば既述の濃度に調整することにより、木屑の堆積層の密閉作用をより確実に維持することができる。更にスタートアップ時に供給すればシリンダ20内の空気を押し出しすることができるので逆流および爆発の危険をより確実に少なくすることができる。なお給水口はシリンダ20の他端側に設ける構成に限られず例えば被処理物の種類などに応じて中央部あるいは一端側に設けるようにしてもよく、更には複数の給水口を配置するようにしてもよい。
また本発明の高圧処理装置においては、スクリュー軸5a(5b)は2軸に限られず3軸以上、例えば3〜6軸であってもよい。このような構成であっても上述と同様の効果を得ることができる。更に本発明の高圧処理装置においては、被処理物を供給する処理室の高圧雰囲気は熱水などの液体に限られず、例えば水蒸気などの気体であってもよい。
以上のように本発明によれば、高圧雰囲気が形成された処理室と接続されたスクリューフィーダの他端側に圧縮されて高密度化された被処理物の堆積物を形成することにより、その密閉作用により処理室の高圧雰囲気とスクリューフィーダの一端側との間の気密が維持される。そのため処理室の高圧雰囲気が逆流するのが抑えられるので、処理室に対して被処理物を高濃度な状態で連続供給することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を10質量%以上含有する被処理物を高圧下で処理する高圧処理装置において、
一端側及び他端側に夫々被処理物供給部及び排出口が設けられたスクリューフィーダと、
このスクリューフィーダの排出口に接続され、スクリューフィーダから供給される被処理物を2MPa以上の圧力下で加圧処理可能な高圧雰囲気を形成する処理室と、を備え、
前記スクリューフィーダは、処理室への被処理物の供給時にその他端側にて圧縮された堆積物による密閉作用により前記高圧雰囲気とスクリューフィーダの一端側との間の気密を維持して処理室への連続供給を可能とすることを特徴とする高圧処理装置。
【請求項2】
被処理物は、少なくともセルロース、リグニンの一方を含んでいることを特徴とする請求の範囲第1項記載の高圧処理装置。
【請求項3】
前記スクリューフィーダは、さらに、排出口を開閉する第1のバルブと、排出口の近傍に設けられた空気抜き孔と、この空気抜き孔を開閉する第2のバルブと、を備えていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の高圧処理装置。
【請求項4】
スクリューフィーダのスクリュー軸には、被処理物を粉砕するための粉砕部材が設けられたことを特徴とする請求の範囲第1項記載の高圧処理装置。
【請求項5】
スクリューフィーダのスクリュー軸は、互いの羽根部材がかみ合うようにして2軸設けられたことを特徴とする請求の範囲第1項記載の高圧処理装置。
【請求項6】
スクリューフィーダ内の被処理物に水を供給するための給水手段が設けられたことを特徴とする請求の範囲第1項記載の高圧処理装置。
【請求項7】
スクリューフィーダの他端側の排出口を第1のバルブにより閉じてスクリューフィーダと処理室との間を遮断しかつ当該他端側の空気抜き孔を開いた状態で、水分を10質量%以上含有する被処理物をスクリューフィーダの一端側から供給する工程と、
スクリューフィーダの他端側にて圧縮された被処理物の堆積物による密閉作用により、前記処理室とスクリューフィーダの一端側との間の気密を維持しながら、被処理物をスクリューフィーダの一端側から連続的に処理室に供給する工程と、
スクリューフィーダから処理室内に供給された被処理物を2MPa以上の圧力下で処理する工程と、を有することを特徴とする高圧処理装置の運転方法。
【請求項8】
スクリューフィーダの他端側の排出口を第1のバルブにより閉じてスクリューフィーダと処理室との間を遮断しかつ当該他端側の空気抜き孔を開いた状態で、水分を10質量%以上含有する被処理物をスクリューフィーダの一端側から供給する工程と、
前記空気抜き孔からスクリューフィーダ内の空気を抜きながら、当該空気抜き孔を第2のバルブにより徐々に閉じてスクリューフィーダの他端側の圧力を立ち上げる工程と、
スクリューフィーダの他端側における被処理物の圧力が処理室内の圧力と同じかそれよりも高くなったときに前記第1のバルブを開いて前記排出口を処理室内に連通させる工程と、
スクリューフィーダの他端側にて圧縮された被処理物の堆積物による密閉作用により前記高圧雰囲気とスクリューフィーダの一端側との間の気密を維持しながら、被処理物をスクリューフィーダの一端側から処理室に連続的に供給する工程と、
スクリューフィーダから処理室内に供給された被処理物を2MPa以上の圧力下で処理する工程と、を備えたことを特徴とする高圧処理装置の運転方法。
【請求項9】
排出口を処理室内に連通させる工程は、スクリューフィーダの他端側における被処理物の圧力が処理室内の圧力と同じかそれよりも高くなったときに、第2のバルブを閉じて第1のバルブを開く工程であることを特徴とする請求の範囲第7項または8項記載の高圧処理装置の運転方法。

【国際公開番号】WO2004/105927
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506595(P2005−506595)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007998
【国際出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】