説明

高圧受電設備の絶縁劣化診断装置

【課題】高圧受電設備内の絶縁劣化に伴う部分放電の初期状態を精度良く診断できる高圧受電設備の絶縁劣化診断装置を提供するものである。
【解決手段】高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線に流れる高周波電流を高周波電流検出器36で検出し、高周波電流検出器36の検出信号を増幅器37で増幅し、増幅器37で増幅されたシースアース線に流れる高周波電流の検出信号の包絡線の信号を検波回路38で整流検波し、信号分離回路39は検波回路の出力信号を予め定めた2つの帯域の信号に分離する。そして、分離された2つの帯域の信号の論理積をゲート回路43で取り、ゲート回路43の出力信号に基づいて高圧受電設備内の部分放電の発生を判定回路44で判定し、判定回路44が高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定したときは警報出力回路45に警報出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧受電設備内の部分放電を検出して、高圧受電設備の絶縁劣化を診断する高圧受電設備の絶縁劣化診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送受配電設備の高圧受電設備は、絶縁体の経年劣化や塵埃が湿気を含むことで絶縁劣化を起こし、重大な絶縁破壊の前駆現象としての部分放電を起こすことが知られている。この部分放電により、高周波の電流変化及び可聴周波や超音波の音波が発生する。高周波電流変化は一部は電路の電流として放出され、一部は電波として放出される。
【0003】
高圧受電設備に使用されている絶縁物の劣化は、グロー放電から始まり、部分放電の初期段階を経て、中期段階、後期段階と進み、やがて火花放電から橋絡に移行し、さらに劣化が進むと絶縁破壊に至ることが知られている。
【0004】
この高周波の電流変化、可聴周波や超音波の音波を捉え、これらが一定レベル以上になったときに、部分放電を初期状態で検出し、部分放電が発生したとして警報を出力することにより、高圧受電設備が重大な事故に到る前に対策を採ることが行われている。
高圧受電設備の引込みケーブルの両端、高圧母線の分岐部や高圧機器の前後などに高周波CTを取付け、放電信号の波高値の減衰方向を測定器で検出することによって、高圧受電設備内の劣化機器の特定又は外来ノイズとの弁別を行い、需要家を停電にしないで電気機器の劣化を特定することができるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−352177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものでは、高圧受電設備内の劣化機器の特定又は外来ノイズとの弁別を行うことはできるが、部分放電を初期状態で検出することは困難である。部分放電を初期状態で検出し、絶縁破壊に至る前により適切に対応をとるためには、部分放電が発する高周波電流や音波の検出感度を上げなければならないが、そうすると、電源から電線を通して入ってくる高周波ノイズ、ラジオ等の電波ノイズ、周辺の音波の雑音も検出してしまうことになり、部分放電を正確に検出できない不都合があった。
【0007】
本発明の目的は、高圧受電設備内の絶縁劣化に伴う部分放電の初期状態を精度良く診断できる高圧受電設備の絶縁劣化診断装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係わる高圧受電設備の絶縁劣化診断装置は、高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線に流れる高周波電流を高周波電流検出器で検出し前記高周波電流検出器で検出された高周波電流の検出信号を増幅する増幅器と、前記増幅器で増幅された前記シースアース線に流れる高周波電流の検出信号の包絡線の信号を整流検波する検波回路と、前記検波回路の出力信号を予め定めた2つの帯域の信号に分離する信号分離回路と、前記信号分離回路で分離された前記2つの帯域の信号の論理積をとるゲート回路と、前記ゲート回路の出力信号に基づいて高圧受電設備内の部分放電の発生を判定する判定回路と、前記判定回路が高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定したときは警報を出力する警報出力回路とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係わる高圧受電設備の絶縁劣化診断装置は、請求項1の発明において、前記信号分離回路の予め定めた2つの帯域のうち、一方の帯域は、175Hz〜275Hzであり、他方の帯域は、2kHz〜3.5kHzであることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係わる高圧受電設備の絶縁劣化診断装置は、高圧受電設備内の電線に重畳する音波を音波検出器で検出し前記音波検出器で検出された音波の検出信号を増幅する増幅器と、前記増幅器で増幅された電線に重畳する音波の検出信号の包絡線の信号を整流検波する検波回路と、前記検波回路の出力信号を予め定めた2つの帯域の信号に分離する信号分離回路と、前記信号分離回路で分離された2つの帯域の信号の論理積をとるゲート回路と、前記ゲート回路の出力信号に基づいて高圧受電設備内の部分放電の発生を判定する判定回路と、前記判定回路が高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定したときは警報を出力する警報出力回路とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係わる高圧受電設備の絶縁劣化診断装置は、請求項3の発明において、前記信号分離回路の予め定めた2つの帯域のうち、一方の帯域は、120Hz〜175Hzであり、他方の帯域は、3kHz〜5kHzであることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明に係わる高圧受電設備の絶縁劣化診断装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項の発明において、前記判定回路は、前記ゲート回路の出力信号であるパルス数が所定期間内に所定個数以上である状態が一定時間以上継続したときは、高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明に係わる高圧受電設備の絶縁劣化診断装置は、高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線に流れる高周波電流を高周波電流検出器で検出し前記高周波電流検出器で検出された高周波電流の検出信号を増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器で増幅された前記シースアース線に流れる高周波電流の検出信号の包絡線の信号を整流検波する第1の検波回路と、前記第1の検波回路の出力信号を予め定めた2つの帯域の信号に分離する第1の信号分離回路と、前記第1の信号分離回路で分離された前記2つの帯域の信号の論理積をとる第1のゲート回路と、前記第1のゲート回路の出力信号に基づいて高圧受電設備内の部分放電の発生を判定する第1の判定回路と、高圧受電設備内の電線に重畳する音波を音波検出器で検出し前記音波検出器で検出された音波の検出信号を増幅する第2の増幅器と、前記増幅器で増幅された電線に重畳する音波の検出信号の包絡線の信号を整流検波する第2の検波回路と、前記第2の検波回路の出力信号を予め定めた2つの帯域の信号に分離する第2の信号分離回路と、前記第2の信号分離回路で分離された2つの帯域の信号の論理積をとる第2のゲート回路と、前記第2のゲート回路の出力信号に基づいて高圧受電設備内の部分放電の発生を判定する第2の判定回路と、前記第1の判定回路または第2の判定回路にいずれかが高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定したときは警報を出力する警報出力回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、部分放電によって生じる高周波電流や音波について、検波回路により高周波電流や音波の波形の包絡線の信号を取り出し、予め定めた2つの帯域の信号に分離してノイズの影響を小さくし、その2つの信号の双方が一定レベルに達したときに警報を発生するので、絶縁異常の初期段階に伴う微弱な部分放電を的確に検出できる。
【0015】
その結果、絶縁異常による電気事故の発生の要因を初期状態で検知することで、高圧受電設備を含む送受配電線設備の損壊の防止、他の配電線に波及することによる停電事故の防止に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置が適用された高圧受電設備の構成図。
【図3】高圧受電設備に実際に1000ピコクーロンに相当する擬似部分放電を起こしそれを観測した高周波電流の波形図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置の構成図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置が適用された高圧受電設備の構成図。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置の構成図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置が適用された高圧受電設備の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置の構成図、図2は本発明の第1の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置が適用された高圧受電設備の構成図である。
【0018】
図2において、柱状開閉器11を介して送配電設備の配電線12から引き込みケーブル13にて高圧受電設備14内に電力が供給される。高圧受電設備14内では、引き込みケーブル13に接続された電力受給用計器用変成器15、断路器16、遮断器17を介して受電母線18に電力が供給される。
【0019】
断路器16と遮断器17との間から、高圧限流ヒューズ19、計器用変圧器20、ヒューズ21を介して、電圧計切替スイッチ22で3相各相の電圧を切り替えて計測する電圧計23が接続されている。また、遮断器17と受電母線18との間には計器用変流器24が設けられ、計器用変流器24で検出された電流が過電流であるときは遮断器17を開放する過電流継電器25が設けられている。さらに、計器用変流器24で検出された電流を電流計切替スイッチ26で3相各相の電流を切り替えて計測する電流計27が接続されている。
【0020】
受電母線18には、電力限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器28を介して受電変圧器29が接続され、受電変圧器29の二次側に配電用遮断器30を介して負荷31にそれぞれ電力が供給される。また、受電母線18には、電力限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器28を介して直列リアクトル32や進相コンデンサ33が接続される。
【0021】
また、絶縁劣化診断装置34は、高圧受電設備14の引き込みケーブル13のシースアース線35に流れる高周波電流を検出する高周波電流検出器36からの高周波電流を入力し、高圧受電設備14内の部分放電の発生を診断するものである。図1に示すように、高周波電流検出器36で検出された高周波電流は、絶縁劣化診断装置34の増幅器37に入力される。増幅器37は、高周波電流検出器36で検出された高周波電流の検出信号を増幅する。
【0022】
ここで、高周波電流検出器36で引き込みケーブル13のシースアース線35に流れる高周波電流を検出するようにしたのは、引き込みケーブル13のシースアース線35には、引き込みケーブル13の劣化による漏洩電流のほか、電線との静電容量を通して、高圧受電設備内の回路の部分放電に伴う微小な高周波電流も流れるためである。すなわち、部分放電が発生すると、引き込みケーブル13のシースアース線35に広い帯域を持つ微弱な高周波電流が流れるためである。そこで、このシースアース線35から高周波電流検出器36を通して高周波電流を捉え、絶縁劣化診断装置34に入力する。
【0023】
高周波電流検出器36で検出する高周波電流の周波数帯域は、比較的外来電波の影響が少なく、部分放電によって放出されている10MHz〜30MHzの周波数を使用する。図3は、実際に1000ピコクーロンに相当する擬似部分放電を起こし、それを観測した高周波電流の波形図である。図3から分かるように、10kHz〜30MHzの高周波電流が観測されたが、これらの周波数のうち値の大きい周波数を使用する。例えば、22MHzあるいは30MHzの周波数を使用する。これにより、外来ノイズの影響を受けない高周波電流により部分放電の発生を診断できることになる。増幅器37は、図示は省略しているが、スーパーヘテロダイン方式を採用し、増幅し易い中間周波数(例えば、445kHz)に変換して高感度の増幅を行う。
【0024】
部分放電による高周波電流の振幅は、複雑な信号によって変調を受けており、高周波電流は一見ノイズのような広帯域の周波数成分を含む不規則な動きをしているので、本発明では、この高周波電流の波形の包絡線に着目し、包絡線の動きを解析することにより部分放電の発生を検出する。検波回路38は、増幅器37で増幅されたシースアース線35に流れる高周波電流の検出信号の包絡線の信号を整流検波する。この高周波電流の検出信号の波形を整流することにより振幅の変化を取り出す。
【0025】
検波回路38の出力信号は信号分離回路39に入力され、予め定めた2つの帯域の信号に分離される。すなわち、信号分離回路39は2つのバンドパスフィルタ40a、40bを有し、2つのバンドパスフィルタ40a、40bの出力信号は、それぞれ増幅器41a、41bで増幅され、それぞれのレベル判定回路42a、42bで所定値以上の信号がゲート回路43に出力される。
【0026】
例えば、バンドパスフィルタ40aは175Hz〜275Hzを通過させるバンドパスフィルタであり、バンドパスフィルタ40bは3kHz〜5kHzを通過させるバンドパスフィルタである。このように、部分放電による高周波電流の包絡線信号を2つの信号を分けて取り出し、狭帯域(175Hz〜275Hz、3kHz〜5kHz)で増幅することにより、ノイズの影響を小さくして信号を増幅できる。そして、増幅器41a、41bにより増幅した信号のうち、所定値以上の信号をレベル判定回路42a、42bで取り出しゲート回路43に出力する。これにより、2つの信号の双方がある一定のレベル以上になった信号がゲート回路43により論理積されてパルス信号として判定回路44に出力される。
【0027】
ここで、部分放電による高周波電流の包絡線信号の動きを2周波数(175Hz〜275Hz、3kHz〜5kHz)に分解し、所定値以上の信号の論理積を取ることにより部分放電との関係が良く把握できることを実験的に確認した。
【0028】
ゲート回路43の出力信号はオンオフのパルス信号になっているので、判定回路44では、所定期間内のパルス数のカウントを行い、パルス数が所定期間内に所定個数以上である状態が一定時間以上継続したときは、高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定し、警報出力回路45に警報信号を出力する。
【0029】
警報出力回路45が警報の自己保持回路を有している場合には、一旦、警報出力されると、警報が継続して出力されることになる。この場合、元の状態に復帰した場合には警報出力を復帰させるようにしてもよい。例えば、パルス数が所定期間内に所定個数以下となり、その状態が一定時間以上継続したときは、警報出力を復帰させる。この場合のパルス数や一定時間は、警報発生時の判定値と同じ値にしても良いし、安全を見込んだ値としてもよい。
【0030】
このように、判定回路44はパルス信号を扱うため、例えば、マイクロコンピュータで構成する。マイクロコンピュータを用いることにより、複雑な信号発生状況を演算して記録でき、また、過去のデータとの比較演算も容易に行うことができる。従って、過去のデータと比較しながら的確な警報を出すことができる。例えば、警報を出すパルス発生パターンを実測データの積み重ねで最適なものに修正することが容易である。
【0031】
第1の実施の形態によれば、ノイズの影響の少ない帯域の高周波電流を検出して増幅するとともに、検出信号が時間で変化する振幅の変化に着目し、検出信号を整流検波することにより包絡線の信号を取り出し、整流検波された信号を信号分離回路39により2つの帯域の信号に分けて増幅し、ノイズの影響を少なくして増幅し、2つに分けた信号が同時にあるレベルに達したとき警報信号を出すようにしたので、部分放電の初期状態を精度良く検出できる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図4は本発明の第2の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置の構成図、図5は本発明の第2の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置が適用された高圧受電設備の構成図である。この第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、高圧受電設備14の引き込みケーブル13のシースアース線35に流れる高周波電流を検出する高周波電流検出器36に代えて、高圧受電設備14内の電線に重畳する音波を検出する音波検出器46を設け、増幅器37は音波検出器46で検出された音波の検出信号を増幅し、検波回路38は増幅器37で増幅された電線に重畳する音波の検出信号の包絡線の信号を整流検波するようにしたものである。
【0033】
図5において、図2に示した第1の実施の形態に対し、高周波電流検出器36に代えて、高圧受電設備14内の電線に重畳する音波を検出する複数の音波検出器46が設けられている。図5では、高圧受電設備14内に3個の音波検出器46が設けられた場合を示している。各々の音波検出器46で検出された高圧受電設備14内の電線に重畳する音波は、絶縁劣化診断装置34に入力される。
【0034】
図4に示すように、各々の音波検出器46で検出された音波は、絶縁劣化診断装置34の増幅器37に入力される。増幅器37は、各々の音波検出器46で検出された音波の検出信号を増幅する。各々の音波検出器46で検出する音波は超音波域の音波とする。これは、音波は可聴域や超音波域で空気振動により発生しているが、検出や増幅の容易さ及び周辺ノイズの除去の容易さから超音波域の音波を検出することとしている。
超音波の振幅は、複雑な信号によって変調を受けており、超音波は一見ノイズのような広帯域の周波数成分を含む不規則な動きをしているので、第1の実施の形態と同様に、この超音波の波形の包絡線に着目し、包絡線の動きを解析することにより部分放電の発生を検出する。検波回路38は、増幅器37で増幅された超音波の検出信号の包絡線の信号を整流検波する。この超音波の検出信号の波形を整流することにより振幅の変化を取り出す。
【0035】
そして、超音波についても信号分離回路39で2つの信号に分離し、2つ信号のレベルが一定値に達したときゲート回路43からパルス信号を出力し、判定回路44に送る。判定回路44は、第1の実施の形態と同様に、マイクロコンピュータにより構成され、パルス信号の演算を行い警報を出力する。この場合、バンドパスフィルタ40aのバンド幅は120Hz〜175Hzとし、バンドパスフィルタ40bのバンド幅は3kHz〜5kHzとした。これにより、部分放電との関係が良く把握できることを実験的に確認した。第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様な効果が得られる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図6は本発明の第3の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置の構成図、図7は本発明の第3の実施の形態に係わる絶縁劣化診断装置が適用された高圧受電設備の構成図である。この第3の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、第2の実施の形態の音波検出器46を設けたものである。
【0037】
図7において、図2に示した第1の実施の形態に対し、高周波電流検出器36に加え、高圧受電設備14内の電線に重畳する音波を検出する複数の音波検出器46が追加して設けられている。図6では、高圧受電設備14内に3個の音波検出器46が追加して設けられた場合を示している。各々の音波検出器46で検出された高圧受電設備14内の電線に重畳する音波は、絶縁劣化診断装置34に入力される。
【0038】
図6に示すように、高周波電流検出器36で検出された高周波電流は、絶縁劣化診断装置34の増幅器37に入力される。増幅器37は、高周波電流検出器36で検出された高周波電流の検出信号を増幅する。増幅器37は、高周波電流検出器36で検出された高周波電流の検出信号を増幅する。
【0039】
高周波電流検出器36で検出する高周波電流の周波数帯域は、比較的外来電波の影響が少なく、部分放電によって放出されている10MHz〜30MHzの周波数を使用する。高周波電流の振幅は、複雑な信号によって変調を受けており、高周波電流は一見ノイズのような広帯域の周波数成分を含む不規則な動きをしているので、この高周波電流の波形の包絡線に着目し、包絡線の動きを解析することにより部分放電の発生を検出する。検波回路38は、増幅器37で増幅されたシースアース線35に流れる高周波電流の検出信号の包絡線の信号を整流検波する。この高周波電流の検出信号の波形を整流することにより振幅の変化を取り出す。
【0040】
そして、信号分離回路39で2つの信号に分離し、2つ信号のレベルが一定値に達したときゲート回路43からパルス信号を出力し判定回路44に送る。判定回路44は、第1の実施の形態と同様に、マイクロコンピュータにより構成され、パルス信号の演算を行いOR回路47を介して警報を出力する。この場合、バンドパスフィルタ40aのバンド幅は175Hz〜275Hzとし、バンドパスフィルタ40bのバンド幅は3kHz〜5kHzとしている。これは、部分放電との関係が良く把握できることを実験的に確認した結果に基づくものである。
【0041】
同様に、各々の音波検出器46で検出された音波は、絶縁劣化診断装置34の増幅器37に入力される。増幅器37は、各々の音波検出器46で検出された音波の検出信号を増幅する。各々の音波検出器46で検出する音波は超音波域の音波とする。これは、音波は可聴域や超音波域で空気振動により発生しているが、検出や増幅の容易さ及び周辺ノイズの除去の容易さから超音波域の音波を検出することとしている。
超音波の振幅は、複雑な信号によって変調を受けており、超音波は一見ノイズのような広帯域の周波数成分を含む不規則な動きをしているので、第1の実施の形態と同様に、この超音波の波形の包絡線に着目し、包絡線の動きを解析することにより部分放電の発生を検出する。検波回路38は、増幅器37で増幅された超音波の検出信号の包絡線の信号を整流検波する。この超音波の検出信号の波形を整流することにより振幅の変化を取り出す。
【0042】
そして、超音波についても信号分離回路39で2つの信号に分離し、2つ信号のレベルが一定値に達したときゲート回路43からパルス信号を出力し、判定回路44に送る。判定回路44は、第2の実施の形態と同様に、マイクロコンピュータにより構成され、パルス信号の演算を行いOR回路47を介して警報を出力する。この場合、バンドパスフィルタ40aのバンド幅は120Hz〜175Hzとし、バンドパスフィルタ40bのバンド幅は3kHz〜5kHzとしている。これは、部分放電との関係が良く把握できることを実験的に確認した結果に基づくものである。
【0043】
第3の実施の形態によれば、高周波電流検出器36で検出された高周波電流あるいは音波検出器46で検出された音波のいずれか一方で部分放電を検出できるので、より部分放電の検出の精度が向上する。
【符号の説明】
【0044】
11…柱状開閉器、12…配電線、13…引き込みケーブル、14…高圧受電設備、15…電力受給用計器用変成器、16…断路器、17…遮断器、18…受電母線、19…高圧限流ヒューズ、20…計器用変圧器、21…ヒューズ、22…電圧計切替スイッチ、23…電圧計、24…計器用変流器、25…過電流継電器、26…電流計切替スイッチ、27…電流計、28…電力限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器、29…受電変圧器、30…配電用遮断器、31…負荷、32…直列リアクトル、33…進相コンデンサ、34…絶縁劣化診断装置、35…シースアース線、36…高周波電流検出器、37…増幅器、38…検波回路、39…信号分離回路、40…バンドパスフィルタ、41…増幅器、42…レベル判定回路、43…ゲート回路、44…判定回路、45…警報出力回路、46…音波検出器、47…OR回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線に流れる高周波電流を高周波電流検出器で検出し前記高周波電流検出器で検出された高周波電流の検出信号を増幅する増幅器と、前記増幅器で増幅された前記シースアース線に流れる高周波電流の検出信号の包絡線の信号を整流検波する検波回路と、前記検波回路の出力信号を予め定めた2つの帯域の信号に分離する信号分離回路と、前記信号分離回路で分離された前記2つの帯域の信号の論理積をとるゲート回路と、前記ゲート回路の出力信号に基づいて高圧受電設備内の部分放電の発生を判定する判定回路と、前記判定回路が高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定したときは警報を出力する警報出力回路とを備えたことを特徴とする高圧受電設備の絶縁劣化診断装置。
【請求項2】
前記信号分離回路の予め定めた2つの帯域のうち、一方の帯域は、175Hz〜275Hzであり、他方の帯域は、2kHz〜3.5kHzであることを特徴とする請求項1に記載の高圧受電設備の絶縁劣化診断装置。
【請求項3】
高圧受電設備内の電線に重畳する音波を音波検出器で検出し前記音波検出器で検出された音波の検出信号を増幅する増幅器と、前記増幅器で増幅された電線に重畳する音波の検出信号の包絡線の信号を整流検波する検波回路と、前記検波回路の出力信号を予め定めた2つの帯域の信号に分離する信号分離回路と、前記信号分離回路で分離された2つの帯域の信号の論理積をとるゲート回路と、前記ゲート回路の出力信号に基づいて高圧受電設備内の部分放電の発生を判定する判定回路と、前記判定回路が高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定したときは警報を出力する警報出力回路とを備えたことを特徴とする高圧受電設備の絶縁劣化診断装置。
【請求項4】
前記信号分離回路の予め定めた2つの帯域のうち、一方の帯域は、120Hz〜175Hzであり、他方の帯域は、3kHz〜5kHzであることを特徴とする請求項3に記載の高圧受電設備の絶縁劣化診断装置。
【請求項5】
前記判定回路は、前記ゲート回路の出力信号であるパルス数が所定期間内に所定個数以上である状態が一定時間以上継続したときは、高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の高圧受電設備の絶縁劣化診断装置。
【請求項6】
高圧受電設備の引き込みケーブルのシースアース線に流れる高周波電流を高周波電流検出器で検出し前記高周波電流検出器で検出された高周波電流の検出信号を増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器で増幅された前記シースアース線に流れる高周波電流の検出信号の包絡線の信号を整流検波する第1の検波回路と、前記第1の検波回路の出力信号を予め定めた2つの帯域の信号に分離する第1の信号分離回路と、前記第1の信号分離回路で分離された前記2つの帯域の信号の論理積をとる第1のゲート回路と、前記第1のゲート回路の出力信号に基づいて高圧受電設備内の部分放電の発生を判定する第1の判定回路と、高圧受電設備内の電線に重畳する音波を音波検出器で検出し前記音波検出器で検出された音波の検出信号を増幅する第2の増幅器と、前記増幅器で増幅された電線に重畳する音波の検出信号の包絡線の信号を整流検波する第2の検波回路と、前記第2の検波回路の出力信号を予め定めた2つの帯域の信号に分離する第2の信号分離回路と、前記第2の信号分離回路で分離された2つの帯域の信号の論理積をとる第2のゲート回路と、前記第2のゲート回路の出力信号に基づいて高圧受電設備内の部分放電の発生を判定する第2の判定回路と、前記第1の判定回路または第2の判定回路にいずれかが高圧受電設備内の部分放電の発生であると判定したときは警報を出力する警報出力回路とを備えたことを特徴とする高圧受電設備の絶縁劣化診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−230497(P2010−230497A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78626(P2009−78626)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(592208806)財団法人関東電気保安協会 (14)
【Fターム(参考)】