説明

高圧放電ランプ、ランプユニット及び画像表示装置

【課題】小型且つ高効率で配光特性に優れ発光管の破損が生じ難い高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】内部に水銀が封入され且つ一対の電極130の先端が対向配置された略球状の発光部111と、当該発光部111の両側に延設され前記電極130の基端が封止された封止部112とを有する発光管110を備えた高圧放電ランプ101であって、前記水銀の封入量が0.2〜0.4[mg/mm]であり、接点Sから中心Oまでの長さWが3.0〜5.0[mm]であり、接点Tから中心Oまでの長さCが1.5〜3.0[mm]であり、長さCと長さCとが、C/C≧0.8の関係を満たし、最小肉厚X[mm]と最大外径D[mm]とが、X/D≧0.2の関係を満たす構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプ、ランプユニット及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロジェクタなどの画像表示装置には、凹面反射鏡に高圧放電ランプを組み込んだランプユニットが光源として使用されている。このようなランプユニットについて、スクリーン光束を大きくする技術として、特許文献1には、高圧放電ランプから出射された光束を効率良く反射鏡に捕捉させることが可能な発光管の形状が開示されている。当該発光管は、発光部における封止部近傍部分の外面の曲率半径が、前記発光部における中央部分の外面の曲率半径よりも小さいため、前記封止部近傍部分を透過する光束を発光管の管軸に対してより垂直に近い角度で前記発光部から出射させることができる。したがって、高圧放電ランプは、発光管の管軸に対して垂直な方向における光束レベルが高い優れた配光特性を有し、より多くの光束を反射鏡の反射面に集めることができるため、ランプユニットのスクリーン光束を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−285417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年市場で要望されている小型且つ高効率の高圧放電ランプに特許文献1に係る発光管形状を採用しようと試みたところ、熱による発光管の破損が生じた。この破損は、封止部近傍部分の外面の曲率半径を小さくしたために、当該封止部近傍部分のガラスの肉厚が薄くなって発光部から封止部への熱伝導効率が低下し、ランプ点灯中の発光部の熱が封止部を経由して反射鏡側へ逃げ難くなったことが原因であると推測される。すなわち、発光部に熱が溜まって高温になるため、封止部における前記発光部に隣接する部分も高温になり、その部分に封止された電極周辺のガラスにクラックが発生して発光管が破損したものと考えられる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、小型且つ高効率で配光特性に優れ発光管の破損が生じ難い高圧放電ランプを提供することを目的とする。本発明の他の目的は、小型でスクリーン光束が高く故障し難いランプユニット及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る高圧放電ランプは、内部に水銀が封入され且つ一対の電極の先端が対向配置された略球状の発光部と、当該発光部の両側に延設され前記電極の基端が封止された封止部とを有する発光管を備えた高圧放電ランプであって、前記水銀の封入量が0.2〜0.4[mg/mm]であり、前記発光管の管軸Zと前記発光管の内面との接点Sから前記発光部の中心Oまでの長さWが3.0〜5.0[mm]であり、前記中心Oを通り且つ前記管軸Zに直交する垂直軸Yと前記発光管の内面との接点Tから前記中心Oまでの長さCが1.5〜3.0[mm]であり、前記中心Oと前記接点Sとの中間点Mを通り且つ前記管軸Zに直交する垂直軸Yと前記発光管の内面との接点Tから前記中間点Mまでの長さCと、前記長さCとが、C/C≧0.8の関係を満たし、前記発光管における封止部近傍部分の最小肉厚X[mm]と、前記発光部の最大外径D[mm]とが、X/D≧0.2の関係を満たすことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るランプユニットは、前記高圧放電ランプと、当該高圧放電ランプの一方の封止部が取着されるネック部と前記高圧放電ランプから出射された光束を反射する回転楕円曲面とを有する反射鏡とを備えることを特徴とする。
本発明に係る画像表示装置は、前記ランプユニットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る高圧放電ランプは、水銀の封入量が0.2〜0.4[mg/mm]であり、長さWが3.0〜5.0[mm]であり、長さCが1.5〜3.0[mm]であるため、小型且つ高効率である。また、長さCと長さCとが、C/C≧0.8の関係を満たすため、配光特性に優れる。さらに、最小肉厚X[mm]と最大外径D[mm]とが、X/D≧0.2の関係を満たすため、発光管が破損し難い。
【0009】
本発明に係るランプユニット及び画像表示装置は、上記のような小型且つ高効率で配光特性に優れ発光管が破損し難い高圧放電ランプを備えているため、小型でスクリーン光束が高く故障し難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係るランプユニットを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図
【図2】本実施の形態に係るランプユニットを示す断面図
【図3】発光管における発光部周辺を示す断面図
【図4】X/Dと発光管の破損との関係を示す図であって、(a)は水銀密度が0.3[mg/mm]の場合の関係を示す図、(b)は水銀密度が0.4[mg/mm]の場合の関係を示す図
【図5】C/Cと配光特性との関係を示す図
【図6】理想の配光特性を示す図
【図7】C/Cが発光部から出射される光束の光路に与える影響を説明するための図
【図8】反射鏡の仕様を説明するための図であって、(a)は□50mm反射鏡を備えたランプユニットを示す断面図、(b)は□35mm反射鏡を備えたランプユニットを示す断面図
【図9】本実施の形態に係る画像表示装置の一例を示す一部破断斜視図
【図10】本実施の形態に係る画像表示装置の他の一例を示す斜視図
【図11】第1の変形例に係るランプユニットの発光部周辺を示す断面図
【図12】第1の変形例に係るランプユニットの発光部周辺を示す断面図
【図13】第2の変形例に係るランプユニットを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態に係る高圧放電ランプ、ランプユニット及び画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面における部材の縮尺は実際のものとは異なる。また、本発明において、数値範囲を示す符号「〜」は、その両端の数値を含む。
[高圧放電ランプ及びランプユニットの概略構成]
図1は、本実施形態に係るランプユニットを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。図1に示すように、ランプユニット100は、本実施の形態に係る高圧放電ランプ101と、反射鏡102と、ハウジング103とを備える。
【0012】
図2は、本実施の形態に係るランプユニットを示す断面図であって、ハウジングを省略している。図2に示すように、高圧放電ランプ101は、所謂ダブルエンド型の高圧水銀ランプであって、略球状の発光部111と当該発光部111の両側に連設された一対の封止部112とを有する石英ガラス製の発光管110と、一対の電極組立体120とを備え、例えば、定格電力が200[W]、定格電圧が70[V]である。
【0013】
図3は、発光管における発光部周辺を示す断面図であり、電極組立体を省略している。図3に示すように、発光管110の発光部111は、例えば、最大外径Dが約9.0[mm]、外面の曲率半径が約5.45[mm]であり、内部には容積が約60[mm]の放電空間113が形成されている。
また、発光部111は、発光管110の管軸Zと前記発光管110の内面との接点Sから前記発光部111の中心(放電空間113の中心)Oまでの長さWが約4[mm]であり、前記中心Oを通り且つ前記管軸Zに直交する垂直軸Yと前記発光管110の内面との接点Tから前記中心Oまでの長さC(中心Oに相当する部分の内径半径)が約2.0[mm]であり、前記中心Oと前記接点Sとの中間点Mを通り且つ前記管軸Zに直交する垂直軸Yと前記発光管110の内面との接点Tから前記中間点Mまでの長さ(中間点Mに相当する部分の内径半径)Cが約1.7[mm]であり、前記発光管110における封止部近傍部分114の最小肉厚Xが約1.95[mm]である。
【0014】
なお、本実施の形態において、発光部111の中心Oは、管軸Z上であって、発光管の内面また、本願では、発光部111における垂直軸Yよりも封止部112側の部分を封止部近傍部分114と定義し、発光部111における垂直軸Yよりも中心O側を中央部分115と定義する。また、最小肉厚Xは、発光管110の外面における発光部111と封止部112との境界Uから発光管110の内面までの最短長さと定義する。また、発光部111の中心Oは、発光管110の管軸Z上にあり、且つ、当該発光管110の内面によって区切られる
なお、発光部111に関する各寸法は上記に限定されず、高圧放電ランプ101の仕様により適宜変更可能である。但し、高圧放電ランプ101を小型にするために、長さWは3.0〜5.0[mm]、長さCは1.5〜3.0[mm]である。また、配光特性に優れた高圧放電ランプ101とするために、長さCと長さCとは、C/C≧0.8の関係を満たす。さらに、発光管110が破損し難いように、最小肉厚Xと最大外径Dとは、X/D≧0.2の関係を満たす。それらの理由についての詳細は後述する。
【0015】
放電空間113には、例えば、発光物質としての水銀(Hg)が約0.2〜0.4[mg/mm]、始動補助用の希ガスが約30[kPa]、ハロゲン物質としての臭素(Br)が約10−7〜10−2[μmol/mm]封入されており、ランプ点灯中の水銀蒸気圧は20〜30[kPa]程度である。高圧放電ランプ101は、水銀が約0.2〜0.4[mg/mm]封入されているため高効率である。
【0016】
なお、発光物質は水銀に限定されず、アルカリ金属原子などであっても良い。希ガスとしては、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)のいずれか又はそれらの少なくとも2種の混合ガスなどが挙げられる。ハロゲン物質としては、ヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)のいずれか又はそれらの少なくとも2種の混合物質などが挙げられる。また、ランプ点灯中の水銀蒸気圧は20〜30[kPa]程度に限定されず、それよりも低くても高くても構わない。
【0017】
図2に戻って、一対の封止部112は、例えば、略円柱状であって、外径が約5.2[mm]、中心Oからそれぞれの封止部112の先端までの長さが22.5[mm]であって、それぞれに電極組立体120が封止されている。そして、片方の封止部112だけが、反射鏡102のネック部161に例えばセメント162などにより固定されている。なお、封止部112に関する各寸法は上記に限定されず、高圧放電ランプ101の仕様により適宜変更可能であるが、外径は5.0〜6.0[mm]であることが好ましい。
【0018】
各電極組立体120は、電極130、金属箔140および外部リード線150を備え、それら電極130、金属箔140及び外部リード線150がこの順で例えば溶接などにより接合されたものであって、主として金属箔140の部分において封止部112に封止されている。
各電極130は、例えば、タングステン製の電極ピン131と、当該電極ピン131の先端に巻装され融着されたタングステン製のコイル132とを有する。それら電極130は、先端が放電空間113で約0.95[mm]の間隔をあけて互いに対向し、且つ、基端が封止部112に封止された状態で、略一直線上に並べて配設されている。なお、一対の電極130の先端間の間隔すなわちアーク長は、高圧放電ランプを点光源に近づけるために、0.5〜2.0[mm]の範囲であることが好ましい。
【0019】
電極130の先端は、コイル132を巻装することにより径が大きくなっており、これにより熱容量が大きくなっているため、前記電極130の劣化が軽減される。さらに、電極130の先端は、コイル132を巻装することにより表面積も大きくなっており、これにより放熱性が向上しているため、前記電極130が必要以上に高温にならない。なお、電極130による光束ケラレを軽減するために、前記電極130の先端は先細り形状であることが好ましい。
【0020】
各金属箔140は、例えば、モリブデン製の略短冊状であって、長手方向の幅が約14 [mm]、短手方向の幅が約1.5[mm]、肉厚が約20[μm]である。なお、金属箔140に関する各寸法は上記に限定されないが、長手方向の幅は10〜20[mm]、短手方向の幅は1.0〜2.0[mm]、肉厚は10〜30[μm]の範囲であることが好ましい。
【0021】
金属箔140の長尺方向の一端部には電極130が接合され、他端部には外部リード線150が接合されている。そして、金属箔140の全体が封止部112内に埋め込まれている。このように、電極130と外部リード線150との間に金属箔140を介在させ、主に金属箔140の部分において電極組立体120を封止することで、放電空間113の気密性が確保されている。
【0022】
外部リード線150は、例えば、モリブデン製であって、金属箔140側の端部が封止部112内に埋め込まれており、金属箔140とは反対側の端部が封止部112から外部に導出されている。
反射鏡102は、高圧放電ランプ101の一方の封止部112が取着されるネック部161と、前記高圧放電ランプ101から出射された光束をハウジング103側に反射する回転楕円曲面163と、を有する漏斗形状のダイクロイック反射鏡であって、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、又は結晶化ガラスなどの耐熱性に優れた材料をプレス成形したものである。
【0023】
回転楕円曲面163は、真空蒸着、スパッタリング、イオンアシスト法などによって光学的な多層膜を形成して形成されており、多層膜により光を波長別に透過させたり反射させたりすることで、反射鏡温度の上昇を抑制するとともに反射効率を高めている。
また、回転楕円曲面163は、OFRの角度がOFQの角度以下である(図2に示す例では、角OFRと角OFQとは同じ角度である)。ここで、OFRの角度とは、中心Oを前記回転楕円曲面163の第1焦点Fに合わせた場合に、前記中心Oと、前記回転楕円曲面163の第2焦点Fと、前記一対の封止部のうちのネック部161に取着されていない方の封止部112の端面外周縁Rと、がなす角OFRの角度をいう。また、OFQの角度とは、前記中心Oと、前記第2焦点Fと、前記発光部の外面と前記垂直軸Yとの接点Qと、がなす角OFQの角度をいう。また、回転楕円曲面163の長軸半径Aと短軸半径Bとが、0.4≦(A−B)/A≦0.6の関係を満たす。したがって、高圧放電ランプ101は配光特性に優れている。それらの理由についての詳細は後述する。
【0024】
図1に戻って、ハウジング103は、箱状の本体171を有し、当該本体171の反射鏡102とは反対側に平行化レンズ172が例えばシリコーン系の接着剤(不図示)などにより接着されたり、留め金(不図示)により保持されている。
本体171の互いに対向する一対の側壁173には、外気をそれぞれ本体171内に取り込むための冷却窓174が設けられており、反射鏡102とハウジング103とに囲まれた高圧放電ランプ101を効率的に冷却できるようになっている。したがって、高圧放電ランプ101の発光部111及び封止部112の温度を好適に維持することができ、熱による前記発光部111の劣化・破損が起こり難い。なお、各冷却窓174には、防塵のためのフィルター175が取り付けられている。
【0025】
[発光部の形状の詳細]
次に、発光部111に関する各寸法の好適範囲を説明すると共に、その臨界的意義について説明する。
<X/D≧0.2について>
図4は、X/Dと発光管の破損との関係を示す図であって、(a)は水銀密度が0.3[mg/mm]の場合の関係を示す図、(b)は水銀密度が0.4[mg/mm]の場合の関係を示す図である。図中における値は、破損数/評価サンプル数である。
【0026】
X/Dの値が熱による発光管の破損に与える影響を調べるために、X/Dの値が異なる高圧放電ランプを種々作製して、それらの破損の頻度を評価した。具体的には、最大外径D[mm]が8.0[mm]、9.0[mm]及び10.0[mm]の3種の仕様の高圧放電ランプについて、それぞれ発光部の外面の曲率半径を一定にし、最小肉厚Xを調整することによりX/Dの値を異ならしめて評価した。
【0027】
各高圧放電ランプは、電力200[W]で点灯させた。その際、発光部及び封止部の温度がなるべく高くなるように高圧放電ランプの冷却は行わず、ヒートショックの影響度合を高めた。点灯サイクルは1時間ON/30分OFFの繰り返し、累計点灯は30時間とした。肉厚は、X線装置で取り込んだ発光管110の画像を処理することにより求めた。なお、封止部近傍部分は発光部の両側にあるため、両方の封止部近傍部分の肉厚を計測し、より薄い方の肉厚を最小肉厚Xとした。
【0028】
図4(a)に示すように、水銀密度が0.4[mg/mm]の場合は、X/D≧0.20の関係を満たせば発光管の破損は生じなかった。また、図4(b)に示すように、水銀密度が0.4[mg/mm]の場合も、X/D≧0.20の関係を満たせば発光管の破損は生じなかった。
なお、水銀密度が0.4[mg/mm]の場合は、水銀密度が0.3[mg/mm]の場合と比べて、X/D<0.20未満の場合に、発光管の破損数が若干増大した。これは水銀密度が高くなったために水銀蒸気圧が高くなったことが影響していると推察できる。
【0029】
次に、X/D≦0.20の関係を満たす場合に発光管の破損が生じない理由について説明する。
まず、最大外径Dは、放電空間113の大きさと発光部111のガラスの厚みによって決まるが、放電空間には一定の大きさが必要であるため、高圧放電ランプを小型化するためには最大外径Dを小さくせざるを得ず、その結果、封止部近傍部分のガラスの肉厚は薄くならざるを得ない。
【0030】
なお、放電空間に一定の大きさが必要である理由は、発光中心と発光管の内面との距離が近過ぎると、内面にタングステンが付着して、前記発光管が黒化したり、ハロゲンサイクルに異常が生じて電極が劣化したりするからである。また、放電空間が小さいと、発光管の内面の温度が高くなって当該発光管を構成する石英ガラスに白濁が生じ、光束が低下するからである。
【0031】
次に、封止部近傍部分のガラスの肉厚が薄くなると、封止部の発光部近傍部分の温度が上昇するため、クラックが発生するおそれがある。なぜなら、タングステンからなる電極ピンの熱膨張係数が38×10−7[/℃]であるのに対して、石英ガラスからなる封止部の熱膨張係数は5×10−7[/℃]であり、両者の熱膨張係数は大きく異なるため、封止部の発光部近傍部分が高温になると、熱膨張係数の差により応力が発生して、電極ピンの周りのガラスにクラックが発生したり、そのクラックが成長したりするからである。
【0032】
特に、定格電力Pが100〜300[W]であり、最大外径Dと前記定格電力Pとが、D≦0.02×P+6の関係を満たす場合は(一例として、定格電力Pが200[W]で最大外径Dが10.0[mm]以下の場合は)、発光部111が高温になり易いため、応力の発生が顕著で新規にクラックが発生し易く、また高圧放電ランプ101の封止プロセス時に発生していたクラックの成長を助長させる。
【0033】
本実施の形態に係る高圧放電ランプ101の発光部111は、最小肉厚X[mm]と最大外径D[mm]とが、X/D≧0.2の関係を満たしているために、封止部近傍部分114のガラスの肉厚が厚い。したがって、放電空間113内で発生し発光部111に伝播する熱が、前記封止部近傍部分114のガラスを介して封止部112に伝導し易く、前記発光部111の熱が前記封止部112を経由して反射鏡102側に効率良く逃げ易い。そのため、発光部111が高温になり難く、その結果、電極130が封止されている封止部112の発光部近傍部分116も高温になり難いため、前記電極130の周辺のガラスにクラックが発生し難く、発光管110に破損が生じ難い。
【0034】
なお、回転楕円曲面163で反射した光束が発光部111に遮られることによって生じる光束ケラレを抑えるためには、最大外径Dはなるべく小さいことが好ましい。
<C/C≧0.80について>
/Cが配光特性に与える影響を調べるために、C/Cが異なる3種の仕様の高圧放電ランプを作製して、それらの配光特性を評価した。各高圧放電ランプは、いずれも、最大外径Dが9.0[mm]、長さCが2.0[mm]、発光部の外面の曲率半径が5.45mm[mm]である。配光特性は、中心Oを中心に発光管を360°回転させながら、中心Oから約30cm離れた位置に設けた照度計によりランプ点灯時の照度を測定して評価した。
【0035】
図5は、C/Cと配光特性との関係を示す図である。図6は、理想の配光特性を示す図である。図5に示すように、C/Cが0.73の場合、封止部近傍部分の光束レベルが中央部分の光束レベルよりも高いハート型の配光特性を示した。C/Cが0.80の場合、封止部近傍部分の光束レベルと中央部分の光束レベルとは略同じであり、C/Cが0.73の場合と比べると、封止部近傍部分では光束レベルが下がり、中央部分では光束レベルが上がった。C/Cが0.85の場合、封止部近傍部分の光束レベルよりも中央部分の光束レベルの方が高く、図6に示すような理想の配光特性に近似する配光特性を示した。
【0036】
以上のように、C/Cが大きくなるほど配光特性が良好になり、C/C≧0.80の場合、中央部分の光束レベルが封止部近傍部分の光束レベルと同等以上になることがわかった。C/Cが大きくなるほど配光特性が向上する理由は、C/Cが大きくなると、中間部分を透過する光束が発光管の管軸に対してより垂直に近い角度で発光部から出射される(垂直軸Yに対してより平行に近い角度で発光部から出射される)ようになるからであると考えられる。
【0037】
図7は、C/Cが発光部から出射される光束の光路に与える影響を説明するための図である。図7に示すように、C/Cが0.80の場合、発光部111の中央部分115を透過する光束は光路L1を通る。一方、C/Cが0.73の場合、発光管110の内面は仮想線で示すような形状になるため、発光部111の中央部分115を透過する光束は光路L2を通る。このように、C/Cが大きい程、中央部分115を透過する光束は発光管110の管軸Zに対してより垂直に近い角度で発光部111から出射される。言い換えれば、C/Cが大きい程、中央部分115を透過する光束と垂直軸Yとのなす角度は小さくなる。したがって、管軸Zに対して垂直な方向における光束レベルが高くなり、配光特性が向上する。
【0038】
図8は、反射鏡の仕様を説明するための図であって、(a)は□50mm反射鏡を備えたランプユニットを示す断面図、(b)は□35mm反射鏡を備えたランプユニットを示す断面図である。
図8(a)に示すように、従来の反射鏡の一例としての□50mm反射鏡は、例えば、第1焦点距離f1が6.5[mm]、第2焦点距離f2が150[mm]、楕円扁平率(A−B)/Aが0.59であって、発光管から放射された光束に対する有効反射領域は、中心Oからネック部側に48.31[°]、開口側に39.59[°]の幅を有する。
【0039】
□50mm反射鏡を使用する場合は、高圧放電ランプのC/Cが、0.73、0.80、0.85のいずれの場合であっても、開口側において封止部近傍部分を透過した光束は反射鏡の有効反射領域に入るため、光束の集光に大きな問題点は生じない。また、ネック部側においても、配光に対して有効反射領域は8[°]程度の裕度があるので、やはり問題になる可能性は低い。
【0040】
一方、図8(b)に示すように、近年市場で要望されている小型の反射鏡の一例としての□35mm反射鏡は、□50mm反射鏡と比べて開口径及び第1焦点距離f1がそれぞれ2〜3割程度小さく、例えば、第1焦点距離f1が4.8[mm]、第2焦点距離f2が60[mm]、楕円扁平率(A−B)/Aが0.48であって、発光管110から放射された光束の有効反射領域は、ネック部側で30.43[°]、開口側で39.46[°]である。そして、□50mm反射鏡と比べると、ネック部側の有効反射領域が17.88[°]狭い。
【0041】
このように有効反射領域が狭い□35mm反射鏡は、第2焦点Fに集束する光束が低減する傾向にあり、C/Cが0.73cの高圧放電ランプと組み合わせると、封止部近傍部分の10[°]程度の光束が活かされず、その分だけ第2焦点Fに集束する光束が低減する。一方、C/Cが0.80又は0.85の高圧放電ランプとの組み合わせにおいては、それらの高圧放電ランプの配光特性は少なくとも中央部分の光束レベルと封止部近傍部分の光束レベルとが同等以上であるため、全光束に占めるロスとなる光束の割合が低く、若干、封止部近傍部分の光束がロスするだけで済み、スクリーン光束が著しく低下することはない。
【0042】
なお、C/Cが0.85cの高圧放電ランプは、中央部分の光束レベルが高い優れた配光特性を有するため、有効反射領域が狭い小型の反射鏡と組み合わせても光束を十分に活用することができる。
また、一般に、回転楕円曲面は、ネック部側端縁付近においては面精度が悪くなる傾向にあり、開口側端縁付近においては膜厚が他の箇所に比べて薄くなる傾向にあるのに対して、中央付近においてはそのような傾向が少ない。しかも、前記中央付近は、反射効率に対する重み付けが高く、スクリーン光束に対する影響度が高い。このような事情からも、C/Cが0.85cの高圧放電ランプは、反射鏡と組み合わせるのに好適である。
【0043】
但し、C/Cが0.9を超える場合、例えばC/Cが0.93の場合、第2焦点位置f2に相当する照射面に集光する光束については照射面の中央部と周辺部とに大きな輝度差が生じ、多数の小レンズにて均一な光を作るレンズアレイを通して投影させたスクリーン上の光束についてもスクリーン上の中央部と周辺部とに著しい輝度差が生じる。したがって、スクリーン上の中央部と周辺部とにおける輝度差を小さくするために、C/Cは0.9以下であることが好ましい。
【0044】
<長さC及び長さWについて>
図3に示すように、長さCが1.5〜3.0[mm]、且つ、長さWが3.0〜5.0[mm]の場合は、発光部111の内面がなだらかな円弧形状となるため、放電空間113から発光部111のガラスに入射する光束は、垂直軸Yとのなす角度が小さくなる。これにより、配光特性は中央部分にピークを持つ分布になる。そのため、有効反射領域の小さい小型の反射鏡と組み合わせても光束の絶対量が低下し難く、小型・薄型の画像表示装置に有効である。
【0045】
ところが、長さCが1.5[mm]未満の場合は、発光中心と発光部111の内面との距離が近くなり過ぎて、失透や黒化の問題を生じ易い。また、長さCが3.0[mm]を超える場合は、発光部111の肉厚が薄くなり過ぎて耐圧性能の不足で発光管110が破損するおそれがある。
一方、長さWが3.0[mm]未満の場合は、発光中心と封止部112の発光部近傍部分116との距離が近づき過ぎ、封止部112の発光部近傍部分116の温度が高くなり過ぎるため、発光管110に破損が生じるおそれがある。また、始動時に電極のタングステンがスパッタして内面に付き易いなどの不具合を生じる。また、長さWが5.0[mm]を超える場合は、発光部111の封止部近傍部分114が発光中心から離れすぎるために温度が低くなり、水銀が全て気化しなくなるため光束が低下する。
【0046】
<発光部の成形方法>
所望の形状の発光部を得るための発光管の製造方法について説明する。例えば、外径6[mm]、内径2[mm]、長さ1200[mm]の石英管を4等分して、300[mm]のカット管を得る。このカット管の両端を回転式のチャックで保持し、前記カット管を回転させながら前記カット管の中央部分をガスバーナーで過熱して軟化させる。その際、カット管の両端からアルゴンや窒素などの不活性ガスをカット管内に吹き込み、発光部の内面形状を形成する。また、同時に、カット管の中央部分の外周に金型治具を設けて加熱により膨らんだ部分を挟み込んで、発光部の外面形状を形成する。発光管の発光部については、このようにバーナー火力や不活性ガスの圧力、カット管の両端から中央部に押し込む力や速度などの条件を調整して加工形成する。
【0047】
[反射鏡の形状についての詳細]
<角OFRと角OFQの角度について>
図2に示すように、高圧放電ランプ101と反射鏡102とは、中心Oと回転楕円曲面163の第1焦点Fとが一致するように位置合わせされている。そして、発光管110から発せられた光束は回転楕円曲面163における領域G〜Hの範囲で反射する。当該領域G〜Hの範囲で反射する光束は、その全てが回転楕円曲面163の第2焦点Fに集束するのが理想である。
【0048】
しかしながら、第2焦点Fと接点Qとを結ぶ延長線が回転楕円曲面163と交わる点をNとしたとき、領域G〜Nで反射する光束は、発光部111に遮られるためロスとなってしまう。さらに、第2焦点Fと端面外周縁Rとを結ぶ延長線が回転楕円曲面163と交わる点をN’としたとき、角OFRの角度が角OFQの角度よりも大きい場合には、領域N〜N’で反射する光束も、封止部112に遮られるためロスになってしまう。
【0049】
したがって、領域N〜N’で反射する光束をロスしないためにも、角OFRの角度が角OFQの角度以下であることが好ましい。そうすれば、封止部112による光束ケラレがなくなるため、第2焦点Fに効率良く光束を集束することができ、ランプユニット100のスクリーン光束を大きくすることができる。
具体的には、例えば、封止部112の先端の径を小さくすることで、角OFRの角度を角OFQの角度以下にすることができる。すなわち、図2において仮想線で示すように封止部112の先端の径が一定であり、角OFR’の角度が角OFQの角度よりも大きくなってしまう場合において、前記封止部112の先端の径を小さくすれば、角OFRの角度を角OFQの角度以下にすることが可能である。
【0050】
なお、封止部112の長さを短くしても角OFRの角度を角OFQの角度以下にすることができる。しかしながら、定格電力Pが高い場合においては、発光管110の温度を下げるために封止部112を長くしておく必要がある。このような場合は、封止部112の先端の径を小さくする構成が有効である。なお、封止部112の先端は、バーナーやレーザーなどで加熱して小さく加工することができる。
【0051】
<楕円扁平率(A−B)/Aについて>
図2に示すように、回転楕円曲面163は、長軸半径Aと短軸半径Bとが、0.4≦(A−B)/A≦0.5の関係を満たすことが好ましい。例えば、□35mm反射鏡の場合、長軸半径Aを32.4[mm]、短軸半径Bを16.971[mm]、第1焦点距離f1を4.8[mm]、第2焦点距離f2を60[mm]とすれば、小型でスクリーン光束が高い反射鏡を得ることができる。この場合、(A−B)/Aは約0.48となり、平行化レンズ172への入射角は約19[°]となる。
【0052】
(A−B)/A>0.5の場合、上記□35mm反射鏡では、第1焦点距離f1が4.5[mm]以下となるため、発光管110の発光部111と反射鏡102の回転楕円曲面163との距離が近づき過ぎてしまう。そうすると、発光部111及び封止部112の温度が上昇し易くなり、発光管110が破損し易くなるため好ましくない。
一方、(A−B)/A<0.4の場合、回転楕円曲面163の第2焦点Fに設置される平行化レンズ172(図1参照)への入射角が大きくなるため、平行化レンズ172の表面において無駄な反射が生じ光束がロスする。なお、例えば、第1焦点距離f1が約1[mm]の両凹レンズを平行化レンズ172として用いる場合、光束のロスを抑えるためには入射角を26.6[°]以下にしなければならない。
【0053】
以上のような理由から、□30mm反射鏡のような小型反射鏡の場合は、0.4≦(A−B)/A≦0.5の関係を満たすことが好ましい。なお、□50mm反射鏡の場合は、長軸半径A及び短軸半径Bがより大きくなるため、0.4≦(A−B)/A≦0.6の関係を満たせば良い。
[高効率の確認実験]
高効率化に対する本発明の効果を確認するため、以下の実験を行なった。
【0054】
<実験1>
本発明の発光管を備えた高圧放電ランプ(最大外径Dが9.0[mm]、発光管外面の曲率半径が5.45[mm]、長さCが2.0[mm]、C/Cが0.8、長さWが4.0[mm]、水銀密度が0.3[mg/mm])を□35mm反射鏡(第1焦点距離f1が4.8[mm]、第2焦点距離f2が60[mm])に組み込んでランプユニットを作製した。そして、この作製したランプユニットを電力200[W]にて点灯させ、アパーチャー径5φを通過させた出射光を積分球に集めてその照度[lx]を測定した。また、比較のために、従来の発光管を備えた高圧放電ランプ(最大外径Dが10.2[mm]、発光管外面の曲率半径が5.1[mm]、長さCが2.2[mm]、C/Cが0.72、長さWが4.0[mm]、水銀密度が0.3[mg/mm])を□50mm反射鏡(第1焦点距離f1が6.5[mm]、第2焦点距離f2が150[mm])に組み込んでランプユニットを作製し、作製したランプユニットに対して本発明の高圧放電ランプと同じ条件にてその照度を測定した。なお、アパーチャー径5φは各々の反射鏡の第2焦点位置に設け、出射光を通過させている。
【0055】
評価の結果、本発明に係るランプユニットの照度は、従来品に係るランプユニットの照度に比べて約8[%]向上することがわかった。したがって、本発明のランプユニットは従来品に比べて、小型でありながら十分に高効率化が図れたランプであることがわかった。
<実験2>
次に、実験1で用いた従来の発光管を備えた高圧放電ランプを□35mm反射鏡に同様に組み込んでランプユニットを作製し、実験1と同条件でアパーチャーφ5を通過させた出射光による照度を測定した。
【0056】
その結果、実験1で用いた従来の発光管を備えた高圧放電ランプを□50mm反射鏡に組み込んだ従来品に比べて、従来の発光管を備えた高圧放電ランプを□35mm反射鏡に組み込んだランプユニットの照度は約3[%]低下することがわかった。
実験2より、単純に反射鏡を小型化すると反射鏡の有効反射領域が狭くなり、また図8に基づく説明で述べたように、発光管の配光特性に寄与するC/Cが0.8未満であると封止部近傍の光束が照度に活かされなかったことが照度低下の要因であると推定できる。
【0057】
なお、実験1において、本発明の発光管を備えた高圧放電ランプを□35mm反射鏡に組み込んで照度向上ができた要因には、C/Cを0.8にすることで配光特性が改善し、封止部近傍の光束ロスを抑制できたことに加え、発光管の発光部を小さくしたことによる光束ケラレを抑えられたことよる影響と考えられる。
[画像表示装置]
図9は、本実施の形態に係る画像表示装置の一例を示す一部破断斜視図であって、内部の様子がわかるように筐体の天板を取り除いている。図9に示すように、本実施の形態に係る第1の画像表示装置200は、前方に設置したスクリーン(図示しない)に向けて画像を投影する投射型のフロントプロジェクタであって、DLP(登録商標)方式を採用している。当該画像表示装置200は、筐体201内に、光源としてのランプユニット100、DMD(登録商標)や3色のカラーフィルタからなるカラーホイール(いずれも図示しない)などを有する光学ユニット202、前記DMDなどを駆動制御する制御ユニット203、投射レンズ204、冷却ファンユニット205、及び、商用電源から供給される電力を前記制御ユニット203やランプユニット100に適した電力に変換して供給する電源ユニット206などが収納された構成を有する。
【0058】
図10は、本実施の形態に係る画像表示装置の他の一例を示す斜視図である。図10に示すように、本実施の形態に係る第2の画像表示装置300は、投射型のリアプロジェクタであって、光源としてのランプユニット100、光学ユニット(図示しない)、投射レンズ(図示しない)及びミラー(図示しない)などが筐体301内に収納された構成であり、前記投射レンズから投射され前記ミラーで反射された画像が、透過式スクリーン302の裏側から投影されて画像を表示する。
【0059】
第2及び第3の実施形態に係る画像表示装置200,300は、小型且つ高効率で配光特性に優れ発光管110が破損し難い高圧放電ランプ101を使用しているため、従来の画像表示装置に比べて、小型でスクリーン光束が高く故障し難い。
[変形例]
以上、本発明に係る高圧放電ランプ、ランプユニット及び画像表示装置を実施の形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明の内容は、上記の実施の形態に限定されず、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0060】
<第1の変形例>
図11及び図12は、第1の変形例に係るランプユニットの発光部周辺を示す断面図である。なお、図11及び図12における符号「G」、「N」及び「N’」は、図2における符号「G」、「N」及び「N’」と同じ意味をなす。
図11に示すように、第1の変形例に係るランプユニットの反射鏡102には、回転楕円曲面163のネック部側(図11における左側)に、さらに球面反射面164が形成されている。
【0061】
球面反射面164を形成しない場合、回転楕円曲面163は図11に仮想線で示すように領域G〜Nにも形成されるが、当該領域G〜Nで反射した光束は発光管110の発光部111に遮られて第2焦点Fに集束しない。
しかしながら、回転楕円曲面163の第1焦点Fを中心とする球面反射面164を、少なくとも領域G〜Nに相当する領域をカバーするように形成すれば、回転楕円曲面163の領域G〜Nで反射され発光部111に遮られるはずだった光束を、前記球面反射面164で反射させ中心Oに集束させることができる。中心Oに集束した光束は、その後、中心Oを通過し、発光部111を通り抜け、回転楕円曲面163で反射されて、第2焦点Fに集束する。このように、発光部111による光束ケラレでロスするはずであった光束を有効に活用することができるため、ランプユニットの集束効率が向上し、スクリーン光束が大きくなる。
【0062】
また、球面反射面164を形成することによって得られる効果としては、上記以外に、発光管110と反射鏡102との距離が長くなることで、前記発光管110の局所的な温度上昇が抑えられ、高圧放電ランプが長寿命化することが挙げられる。
角OFRの角度が角OFQの角度よりも大きい場合は、図12に示すように、少なくとも領域G〜N’に相当する領域をカバーするように球面反射面164を形成すれば良い。これにより、封止部112による光束ケラレでロスする分の光束も有効に活用することができる。
【0063】
なお、球面反射面164を形成する場合は、当該球面反射面164で反射し中心Oに集束する光束によってネック部161側の電極130の温度が上昇し、当該電極130が劣化するおそれがある。そこで、ネック部161側の電極130の熱容量を他方側の電極130の熱容量よりも大きくして、ネック部161側の電極130の劣化を抑制することが考えられる。電極130の熱容量は、電極ピン131の径や、コイル132の径もしくはターン数などを調整することにより大きくすることができる。なお、それらの方法により電極130の熱容量を大きくする場合は、前記電極130によって光束が遮られないようにすることが好ましい。
【0064】
<第2の変形例>
図13は、第2の変形例に係るランプユニットを示す断面図である。図13に示すように、第2の変形例に係るランプユニットは、高圧放電ランプ101と反射鏡102とがベース104により接合されている。
ベース104は、キャップ状であって、封止部112が挿通される挿通孔181を頂部に有し、外気を前記ベース104内に取り込むための一対の通風窓182を側部に有する。ベース104と反射鏡102とは、前記ベース104を前記反射鏡102のネック部161に外嵌させた状態で接着剤などにより固着されている。また、ベース104と高圧放電ランプ101とは、高圧放電ランプ101の封止部112を挿通孔181に挿通させた状態で接着剤などにより固着されている。高圧放電ランプ101と反射鏡102とをベース104によって接合する構成であるため、ネック部161と封止部112との隙間にはセメントが充填されておらず、前記隙間には空気が通るようになっている。
【0065】
上記構成とすることで、ハウジングの冷却窓(図1参照)から反射鏡102内に流れ込む外気を、ネック部161と封止部112との隙間を通して、通風窓182からベース104外へ抜けさせることができる。これにより、高圧放電ランプ101の発光部111を効率的に冷却することができる。また、発光部111を効率的に冷却することによって、冷却用ファン(不図示)の流量を落とすことができ、画像表示装置の静音化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る高圧放電ランプ、ランプユニット及び画像表示装置は、液晶プロジェクタやDMDプロジェクタなどのプロジェクタに広く利用できる。
【符号の説明】
【0067】
100 ランプユニット
101 高圧放電ランプ
102 反射鏡
103 ハウジング
110 発光管
111 発光部
112 封止部
161 ネック部
163 回転楕円曲面
164 球面反射面
130 電極
174 冷却窓
200,300 画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水銀が封入され且つ一対の電極の先端が対向配置された略球状の発光部と、当該発光部の両側に延設され前記電極の基端が封止された封止部とを有する発光管を備えた高圧放電ランプであって、
前記水銀の封入量が0.2〜0.4[mg/mm]であり、
前記発光管の管軸Zと前記発光管の内面との接点Sから前記発光部の中心Oまでの長さWが3.0〜5.0[mm]であり、
前記中心Oを通り且つ前記管軸Zに直交する垂直軸Yと前記発光管の内面との接点Tから前記中心Oまでの長さCが1.5〜3.0[mm]であり、
前記中心Oと前記接点Sとの中間点Mを通り且つ前記管軸Zに直交する垂直軸Yと前記発光管の内面との接点Tから前記中間点Mまでの長さCと、前記長さCとが、C/C≧0.8の関係を満たし、
前記発光管における封止部近傍部分の最小肉厚X[mm]と、前記発光部の最大外径D[mm]とが、X/D≧0.2の関係を満たす
ことを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
定格電力Pが100〜300[W]であり、
前記最大外径D[mm]と前記定格電力Pとが、D≦0.02×P+6の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高圧放電ランプと、
当該高圧放電ランプの一方の封止部が取着されるネック部と前記高圧放電ランプから出射された光束を反射する回転楕円曲面とを有する反射鏡と
を備えることを特徴とするランプユニット。
【請求項4】
前記反射鏡の前記ネック部側とは反対側に取り付けられたハウジングをさらに備え、当該ハウジングに冷却窓が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のランプユニット。
【請求項5】
前記中心Oを前記回転楕円曲面の第1焦点Fに合わせた場合に、
前記中心Oと、前記回転楕円曲面の第2焦点Fと、前記一対の封止部のうちの前記ネック部に取着されていない方の封止部の端面外周縁Rと、がなす角OFRの角度が、
前記中心Oと、前記第2焦点Fと、前記発光部の外面と前記垂直軸Yとの接点Qと、がなす角OFQの角度以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載のランプユニット。
【請求項6】
前記回転楕円曲面の長軸半径Aと短軸半径Bとが、0.4≦(A−B)/A≦0.6の関係を満たすことを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のランプユニット。
【請求項7】
前記反射鏡は、前記回転楕円曲面の前記ネック部側に、前記回転楕円曲面の第1焦点Fを中心とする球面反射面をさらに有することを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載のランプユニット。
【請求項8】
請求項3から7のいずれかに記載のランプユニットを備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−23149(P2011−23149A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165319(P2009−165319)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】