説明

高圧放電ランプ点灯装置およびプロジェクタ

【課題】水銀封入量が0.20mg/mm以上の高圧放電ランプを極めて低い電力で動作させる場合において、放電ランプのアーク起点位置を安定させ、電極の変形を抑制すること。
【解決手段】高圧放電ランプ10に、降圧チョッパ回路1とフルブリッジ回路2を有する点灯装置から給電して点灯させる。定格点灯や調光電力(定格電力に対して60〜80%程度の電力)で点灯させる場合には放電ランプ10に矩形波交流電流を供給し点灯させる。また、動作最大電力P(W)に対して0.5×P(W)以下の待機電力点灯の場合、放電ランプ10に矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の極性期間TbがTb≦5ms、かつ駆動期間の比率をTb/Ta≦0.1となるような駆動期間が非対称な矩形波交流電流を供給して点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧放電ランプ点灯装置および当該高圧放電ランプ点灯装置を搭載したプロジェクタに関する。特に、本発明は、発光管内に0.2mg/mm以上の水銀が封入され点灯時の水銀蒸気圧が高い、例えば110気圧以上の交流点灯型の高圧放電ランプであって、投射型プロジェクタ装置やリアプロジェクションテレビなどの投射用光源として使用するに好適な高圧放電ランプとその点灯装置からなる高圧放電ランプ点灯装置および当該高圧放電ランプを搭載したプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
投射型プロジェクタ装置は、矩形状のスクリーンに対して均一に、しかも十分な演色性を追って画像を照明させることが要求され、このため、光源としては水銀や金属ハロゲン化物を封入させたメタルハライドランプが使われている。また、最近は、より一層の小型化、点光源化が進められ、電極間距離も極めて小さいものが実用化されてきている。
このような背景のもと、近時、メタルハライドランプに代わり、極めて高い水銀蒸気圧、
例えば20MPa(約197気圧)以上をもつ高圧放電ランプが使用されている。これは、水銀蒸気圧を高くすることで、アークの広がりを絞り込むとともに、一層の光出力の向上を図ったランプである。
【0003】
上記ランプとしては、例えば、石英ガラスからなる発光管に一対の電極を2mm以下の間隔で対向配置し、この発光管に0.20mg/mm以上の水銀と、希ガスと10−6μmol/mm〜10−2μmol/mmの範囲でハロゲンを封入した高圧放電ランプが使用される(例えば特許文献1参照)。
この種の放電ランプおよびその点灯装置は、例えば特許文献2 に開示されている。
特許文献3 に開示される高圧放電ランプは、定常点灯時の管内水銀蒸気圧が15MPa〜35MPaで、発光管内に10−6μmol/mm〜10−2μmol/mmの範囲でハロゲン物質を封入したものであり、発光管内に一対の電極を設け、電極先端部の中心付近に突起部を設けることにより電極間に発生する放電アークの位置が電極先端の中央部や周辺部の間で安定せず、移動する所謂アークジャンプ現象の発生を抑制するようにしたものである。
そして、DC/DCコンバータとDC/ACインバータと高圧発生装置から構成される点灯装置により、上記一対の電極間に交流電圧を印加して点灯させる。
【0004】
一方、近年のようにプロジェクタが小型化され、一般家庭でも用いられるようになるに伴い、使用環境の明るさや、投影する映像の種類に合わせて、画面が明るくなりすぎないような配慮が必要となってきた。かかる要請に応えるべく、いわゆる調光機能と称される機能を有するプロジェクタが考案されている(例えば、特許文献3)。ここで、調光機能とは、高圧放電ランプを定格電力よりも低い電力で点灯させることにより、ランプの明るさ調整、低消費電力化等を図ろうとする機能をいう。以下、定格電力よりも低い電力で点灯させることを「調光電力点灯」という。
現在の高圧放電ランプ点灯装置では、「定格電力点灯」と「調光電力点灯」の両方を備えたものが一般的であり、本明細書では、「定格電力点灯」と「調光電力点灯」でランプを点灯させることを定常点灯と規定する。また、「調光電力点灯」は「定格電力点灯」の60〜80%の電力で動作されるのが一般的である。
図17に調光機能を有する点灯装置で高圧放電ランプを点灯させたときの電流波形の一例を示す。
同図に示すように、定格電力点灯をしているときに調光電力点灯指令信号がオンになると、電極を定格電力点灯の60−80%程度に低下させて、ランプを点灯させる。
【0005】
更には最近において画面への投射そのものを必要としない場合には一時的に投射させない、例えばAVミュートといった機能を持ったプロジェクタも考案されている。
こういった機能は放電ランプが消灯直後は内部圧力が高いために再点灯が出来ないため、機械的にシャッターする場合や液晶パネルに印可される電圧を調整し、スクリーンに投射される光を遮断するなどして対応している。以下、画面を意図的に投射させない状態でランプを点灯させることを「待機電力点灯」という。
【0006】
待機電力点灯において電力は極限まで低い電力であることが望ましい。なぜならば、極限まで低い電力で点灯することにより、ランプからの発熱が激減し、プロジェクタからの騒音の主原因である冷却ファンの駆動を停止、または、低下することができ、プロジェクタからの騒音を極限まで小さくすることが出来るからである。更には低い電力で点灯させることでランプの熱的な負荷を軽減することが出来るため、投射が必要な場合と必要としない場合を組み合わせることで実質的なランプ寿命を伸ばすことが可能である。ここでランプの熱的な負荷とは発光管及び電極に対する熱的な負荷であり、これらは投入電力が低いほど小さくすることが出来る。
【0007】
また、プロジェクタの性能の一つにコントラスト比がある。これは投影された画面が白の状態(明状態)と黒状態(暗状態)で画面上の輝度を比較し、その比率を指すものである。コントラスト比が高いことで明暗のはっきりした画像を投影することが出来るため、明るさとともにプロジェクタの重要な性能とされている。現在、コントラスト比を高くするために前述した機械的なシャッター機能などを取り付けて黒状態を作り出す技術(アイリス機能)が採用されている。
上記のように定格電力では一定以上の明るさが必要であるとともに調光電力点灯が可能であり、更に調光電力を究極に絞った待機電力点灯が可能な高圧水銀ランプが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−148561号公報
【特許文献2】特開2001−312997号公報
【特許文献3】特開2000−131668号公報
【特許文献4】特開2006−332015号公報
【特許文献5】特表2005−522818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、電力を究極に絞った待機電力点灯が可能な高圧水銀ランプが求められているが、矩形波交流電流を供給した状態でそのまま大きく電力を下げて使用した場合、下記の問題が発生した。
この種の高圧水銀ランプは、点灯中、電極先端部に突起を形成させて、当該突起を起点として安定なアーク放電を形成させることが例えば特許文献4に記載されている。
特許文献4によれば、ランプ電圧に応じて或いはランプ点灯電力に応じて定常周波数及び間欠的(周期的)に挿入する低周波の周波数や波の数を変化させることでアーク起点となる突起を維持することで安定した動作が出来ると記載されている。
【0010】
しかしながら、上記技術によって、高圧放電ランプを例えば定格電力180Wのランプを90Wで点灯した場合、如何なる周波数を組み合わせた場合においてもアーク起点が安定せず、いわゆるフリッカー現象および立ち消えが多々発生した。特に定格電力180Wに対して70W以下では顕著にフリッカーが発生し、30W以下では立ち消えが発生した。
この発明が解決しようとする課題は、ランプ点灯電力が極めて低い、定常点灯状態における動作最大電力P(W)に対して0.5×P(W)以下の電力で動作させる場合においても放電ランプのアーク起点を位置的に安定させて、いわゆるフリッカーの発生を防止し、更には電極の変形を抑制することで画面投射モードでの点灯動作に影響を与えることの無く、極めて低い電力においても安定して動作させることができる点灯装置および当該高圧放電ランプ点灯装置を搭載したプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
まず、本願発明者らは、上記した従来の調光点灯電力よりも更に低い電力で動作させた場合について交流駆動動作でフリッカー現象が発生する様子を観察する為、電力を徐々に低下させた場合のアーク起点部分を観察した。例えば180Wで定格動作しているランプを徐々に電力を変化させていくと定格動作と同じ周波数(これを定格周波数と呼ぶ)であれば、140Wでアーク起点部を形成している突起部分が変形していくことを見出した。更には特許文献4に基づき、調光時の動作周波数(これを調光周波数)を定格動作周波数よりも低い周波数を選択し、更には間欠的に低周波を挿入することで130Wまでは安定して動作する周波数を見出すことが出来たが、更に電力を下げた場合にはどの周波数を選択しても突起部分が変形していくことが判明した。
【0012】
この突起部分の変形について図3を用いて説明する。図3は高圧放電ランプの発光管部分を模式的に示したものであり、20は電極、Aは電極20間に形成されているアークである。高圧放電ランプを定格電力で点灯する場合においては、電極材料であるタングステンが点灯時の熱で蒸発し、発光管の管壁に付着することによる発光管黒化現象を抑制するため、ハロゲンサイクルを促進すべく発光管内にハロゲン物質を封入している。蒸発したタングステンはハロゲンと化合し、対流でアークプラズマに戻ってきたときに解離してプラスイオンとなる。プラスイオンとなったタングステンは、陰極フェーズ側の電極先端の電界集中点であるアークスポットを中心とする領域に引き寄せられ、そこへ堆積する。次に、この電極が陽極フェーズに反転すると、電極先端の全体に電子が衝突し、電極温度は上昇し、陰極フェーズで堆積したタングステンは再び蒸発する。
【0013】
定格電力点灯時は、この堆積と蒸発のバランスが、電極先端に適度な突起を維持できるレベルで安定している(図3(a))。しかしながら、調光動作時、即ち定格電力よりも低い電力で点灯している場合には、陰極フェーズ状態の電極先端部の温度が定格電力点灯時よりも低くなるため、電極先端の電界集中点であるアークスポットが突起先端の一部分に限定されるようになる(図3(b))。即ち、突起部の中でも特に電界集中しやすいポイントとそうではないポイントが生じる。アークスポット部分は極めて高温であるため、陰極フェーズであるがタングステンが蒸発し、形状が変形する(図3(c))。変形した形状によってはアークスポット部分の温度が低下し、次にアークスポットを形成しやすい場所へと移動する(図3(d))。こういった現象を繰り返すことで突起全体が台形状に変形し、アークジャンプを繰り返すことが投射画面上のフリッカーとして認識されるものと考えられる。
【0014】
こういった現象を回避する為には、そういった観点から低周波を間欠的に挿入することは電極先端の温度を上昇させることは有効であり、挿入する波の数を増やすことでより電極温度を上昇させることが出来るのは容易に想像される。しかしながら、交流駆動の場合、必ず電極温度が上昇する陽極フェーズと低下する陰極フェーズが交互に発生することから温度上昇量にも限界があることが推測される。更には低周波の周波数を低くしすぎた場合、例えば10Hz程度とした場合、極性が反転するときの電流の変化が視認されることで投影した画面が明滅したように見える別事象のフリッカー現象が発生してしまう。
【0015】
次に電力を30W程度まで絞ったときに立ち消え現象がどのように発生するかを確認した。電力を定常点灯から待機点灯に切り替えた直後は問題なく点灯するが、およそ10秒程度で立ち消えが発生した。ランプ電圧を確認するとランプ電圧が200V程度まで上昇し、その結果、バラストが異常電圧と判断してランプを消灯していることが分かった。一方、電極の様子を観察すると電極温度が極めて低くなることで熱電子放出できず、電極全体で放電する所謂グロー放電が持続していることが分かった。一般的に電極先端部の突起で放電するアーク放電に比べてグロー放電はランプ電圧が高くなり、およそ150〜200V程度に至ることが分かっている。
本願発明者らは、以上のように調光電力が非常に低い場合に発生するフリッカー現象および立ち消えの原因を解明し、更にこの問題を解決する方法について鋭意検討した結果、本願発明に係る高圧放電ランプの点灯方法等に到達したものである。
【0016】
即ち、上記目的を達成するために、本願発明に係る第1の高圧放電ランプの点灯方法は、石英ガラスからなる放電容器に体積のほぼ等しい一対の電極を電極間距離2mm以下で対向配置して、この放電容器に0.2mg/mm以上の水銀と、10 μmol/mm〜10−2μmol/mmの範囲のハロゲンと所定量の希ガスが封入される高圧放電ランプと、この放電ランプに対して矩形波交流電流を供給して点灯させる給電装置とから構成される高圧放電ランプ点灯装置において、始動直後の初期点灯期間を除いた定常点灯状態のおける動作最大電力P(W)に対して0.5×P(W)以下の電力で動作させる場合、矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)とすると、前記第2の極性の駆動期間TbがTb≦5msであり、かつ前記2つの駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるように動作することを特徴としている。
【0017】
定格点灯の50%以下の電力において、第2の極性期間TbがTb≦5msであり、かつ駆動期間の比率Tb/Taを0.1以下にすることで安定した動作が可能なのかは必ずしも定かでは無いが下記のように推測される。50%以下の極めて低い電力では電極先端部の温度が低くなる為、陰極フェーズで熱電子放出をする領域が定常点灯動作時よりも小さくなり、非常に狭いスポットに限定される。通常の交流駆動動作、即ち、Tb/Ta=1の状態では陽極フェーズと陰極フェーズが同じ時間だけ交互に動作することになる。このときスポットとなる領域が陰極フェーズ毎に異なる場合が生じる。仮にスポットとなる領域が異なると前回の陰極フェーズでスポットとなった部分も温度が下がり、次のフェーズではスポットとなりにくい。こうなると常に陰極フェーズではスポット動作しやすい領域を探してアークが動き回るのでフリッカー現象に至ってしまう。しかしながら、第2の駆動期間TbがTb≦5msの極めて短い期間だけ極性を反転させ、かつ駆動期間の比Tb/Taが0.1以下の場合には陰極動作をする電極が駆動期間Tbが非常に短い為にスポットが固定されるので動き回ることが無く、更には陽極側の電極の温度が必要以上に下がらないために安定した放電を持続することができる。
【0018】
更には本願の高圧放電ランプには0.2mg/mm以上の水銀が封入されている。このような高圧放電ランプにおいて定格点灯の50%以下の電力では仮に全く冷却を行なわなかったとしても蒸発できない水銀即ち、未蒸発水銀が発生する。これは本来、照度寿命、明るさといった性能を引き出すために定常点灯に耐えうる発光管設計が決まるが、50%以下の電力では冷却が無い環境下においても水銀を蒸発させるに足る発光管温度にはならないためである。従来、未蒸発水銀は放電アークや放電起点を絞るといった作用の働きも低く、動作圧力も低下する結果、光出力を低下させるために好ましくないものと考えられていた。しかしながら、定格点灯の50%以下の電力で動作させたときには放電アーク及び放電起点を絞らない為、一定の電極温度を保つ役割に寄与するため、陰極動作する電極の熱電子放出させ易くしていると推測される。
【0019】
ここで一定の時間、極性が固定される点灯方法として直流点灯が考えられる。特にはランプ調光方法として電流が低い場合には直流点灯とすることが特許文献5に記載されている。
【0020】
特許文献5によれば、直流点灯の場合、ランプが消灯してしまうことなく、充分低い電流まで動作が可能であることが記載されている。そこで本願の高圧放電ランプを0.5×P(W)よりも低い電力で直流点灯駆動させて確認をした。この場合、30分程度は安定して動作をするものの陰極側の電極先端が変形し、そのあと定常動作に切り替えたときに電圧が大幅に上昇し、スクリーン照度が大きく低下していることが確認された。ここでこの現象が如何にして生じるのか推察してみた。直流点灯の場合、陰極側の電極先端の温度が交流駆動する定常動作時の温度に比べると著しく低いために電極先端の一部でのみ放電する所謂スポットモードで動作することが特許文献5にも記載されている。安定してスポットモードで動作するため、交流駆動とは違い、アークスポットが移動することは無い。しかしながら、アークスポットとなる部分は非常に狭い領域で溶融しており、非常に高温となっている。数秒といった短時間の動作であれば、大きな影響は無いが、暫く点灯を継続するとアークスポットとなっていた部分が変形する。次に定常動作として例えば定格点灯した場合、変形した電極先端が定格点灯時の電流に耐えられず、更に変形して電圧が大きく上昇する。
このような現象は電極間距離が長く、また水銀密度が低い種類のHIDランプでは発生し得ないかもしれない。しかしながら、本願のように電極間距離が2mm以下と短く、また、0.20mg/mm以上の水銀が封入された高圧放電ランプの場合、未蒸発水銀があるもののアークは絞られており、定常動作時に比べると低いとしても電極先端部の電流密度は無視できないため、アークスポットの集中が電極の変形を招くものと推察される。
【0021】
一方、本願のように交流駆動の駆動期間Ta及びTbを非対称とし、更には第2の駆動期間TbがTb≦5msで、かつTb/Ta≦0.1とすることでTbの期間、陰極動作する電極先端のアークスポットが固定されるとともに適当な期間、極性が反転されることで陽極動作する電極先端温度を適正に保つことができるため、長時間安定した動作ができる。
【0022】
Tb/Taが0.1以下であった場合、動作最大電力P(W)に対して0.5×P(W)の極めて低い電力であってもフリッカーの発生を抑制し、安定して動作させることができる。しかしながら、長時間に亘って点灯した場合、僅かながら電極先端が変形し、先端部の突起の位置が変化(ずれ)する場合がある。特にTb/Ta≦0.1であってもTbおよびTaの期間が長い場合、例えばTbが5ms、Taが50msの場合などは突起部は非常に狭い領域で溶融するものの、溶融部はある大きさを有しており、長時間の点灯なの中で僅かながら突起の先端部が変形し、狭い領域で徐々に突起の位置が変化(ずれ)していく。わずかな突起位置のずれは電極間距離が2.0mmよりも長い場合はその変形量の問題は相対的に大きくない。しかしながら、電極間距離が2.0mm以下の極めて短い電極間距離の場合、突起の位置がずれることが、スクリーン照度に影響を及ぼし始める。特にはLCDパネルやDMD(デジタルミラーデバイス)の小型化により、このような僅かな変形も長時間の使用に影響することが分かった。このような結果から、更に長寿命を確保するためにTb/Taの比率を更に厳密に調査した。その結果、Tb/Ta≦0.05であれば、僅かな突起の位置ずれもなく、長時間に亘って安定して電極先端部を保つことが出来ることが分かった。一方、Tbの期間が非常に短く、かつTb/Taの比率が小さい場合にも電極先端部の突起位置がずれる現象が観察された。この現象が発生した状態の電流波形を観察したところ、極性の切り替わりの際、特に駆動期間の長いTaの期間で過剰のオーバーシュート電流が流れていることが分かった。このオーバーシュート電流は後述する回路(図4)において以下のような理由で発生する。フルブリッジ回路2のスイッチング素子Q1、Q4、スイッチング素子Q2、Q3を交互にオンすることによって矩形波状の交流電圧を発生させるが、降圧チョッパ回路1のリアクトルLxは電流を瞬時に遮断することが出来ず、電流が流れ続けてしまう。即ち、スイッチング素子Qxにより、電圧を遮断したとしてもリアクトルLxによる電流成分が極性切り替え時に重畳される。この重畳される電流値および重畳期間はリアクトルLxと平滑コンデンサCxによって決まる時定数によって定まる。この重畳分を小さくする為にスイッチング素子Qxのデューティを細かく制御するなどしてオーバーシュート電流値並びにオーバーシュート期間を小さくすることが出来るが、完全に抑えることは出来ない。また、リアクトルLxに抵抗だけを使用した場合、上記のオーバーシュート電流は抑制されるが、発熱などのロスが生じる。従って、実際の回路構成では完全な矩形波ではなく、極性が切り替わるときにオーバーシュート電流が重畳されるのが一般的である。このオーバーシュート電流が流れる期間よりも期間Tbが短い場合、オーバーシュート電流の一部が期間Taに重畳される。この反転したオーバーシュート電流に加えて本来発生が不可避な極性切り替え時のオーバーシュート電流が重畳されるために、Taの期間にはより大きなオーバーシュート電流が供給されることになる。このようにTbの期間が非常に短い場合には、回路上、Taの期間に過剰なオーバーシュート電流が流れることになり、Tb/Taが0.05以下であっても電極先端の突起が僅かながら変形し、突起の位置ずれを発生させる場合があることが分かった。このような突起の位置ずれは例えば、Tbが0.05msでTaが100ms、即ち、Tb/Ta=0.0005程度までは発生しなかったが、Tbが0.05ms未満の場合にはTa期間が100ms以上保持されると突起の位置ずれが発生した。以上のように詳細に調査した結果、電極先端の変形に伴うフリッカーを抑制し、尚且つ長時間に亘ってスクリーン照度の減衰を抑制するためにはTbが0.05ms〜5msであるとともに、駆動期間の比率Tb/Taが0.0005〜0.05でなければならないことが分かった。
【0023】
以上に基づき、本発明においては、以下のようにして上記目的を達成する。
(1)石英ガラスからなる放電容器に体積のほぼ等しい一対の電極を電極間距離2.0mm以下で対向配置して、この放電容器に0.20mg/mm以上の水銀と、10 μmol/mm〜10−2μmol/mmの範囲のハロゲンと所定量の希ガスが封入される高圧放電ランプと、この放電ランプに対して矩形波交流電流を供給して点灯させる給電装置とから構成される高圧放電ランプ点灯装置において、始動直後の初期点灯期間を除いた定常点灯状態における動作最大電力P(W)に対して、0.5×P(W)以下の電力で動作させるときには矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間をTa(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の駆動期間TbがTb≦5msで駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるように動作させる。
(2)上記(1)において、0.05ms≦Tb≦5msであるとともに、0.0005≦Tb/Ta≦0.05とする。
(3)上記(1)、(2)において、0.5×P(W)以下の電力で動作させた後に再度0.5×P(W)よりも高い電力で動作させる場合に、矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の極性期間TbがTb≦5msであり、かつ駆動期間の比率をTb/Ta≦0.1の状態から、周波数または電力のいずれか又はその両方を変化させながら、定常点灯動作に移行させる。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの高圧放電ランプ点灯装置を画像を投影する機能を備えたプロジェクタに搭載する。
(5)上記(4)のプロジェクタにおいて、0.5×P(W)よりも高い電力で前記放電ランプを点灯中に、一定の期間、プロジェクタの画像信号に変化が無い場合に0.5×P(W)以下の電力モードに移行させる。
(6)上記(4)のプロジェクタにおいて、0.5×P(W)以下の電力で前記放電ランプを点灯中に、一定の期間、プロジェクタの画像信号に変化が無い場合に自動的に高圧放電ランプを消灯する。
(7)上記(4)のプロジェクタにおいて、0.5×P(W)以下の電力で前記放電ランプを点灯中に、検知手段と連動して自動的に高圧放電ランプを点灯させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)動作最大電力P(W)に対して0.5×P(W)以下の、ランプ点灯電力が極めて低い待機電力で動作させるとき、矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の極性期間TbがTb≦5msであり、かつ駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるように動作させたので、放電ランプのアーク起点を位置的に安定させて、いわゆるフリッカーの発生を防止することができ、極めて低い電力でも立ち消えることなく、安定して点灯させることができる。
(2)矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の極性期間Tbが0.05≦Tb≦5msであり、かつ駆動期間の比率が0.0005≦Tb/Ta≦0.05となるように動作させたので、電極に対する熱的な負荷に偏りが生じるのを防止することで、電極先端部の突起の位置ずれを防止でき、長時間に亘り待機電力で動作させても、照度寿命特性を確保することができる。
(3)0.5×P(W)以下の電力で動作させた後に再度0.5×P(W)よりも高い電力で動作させる場合に、矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の極性期間TbがTb≦5msであり、かつ駆動期間の比率をTb/Ta≦0.1の状態から、周波数または電力のいずれか又はその両方を変化させながら、定常点灯動作に移行させることにより、電極に対する熱的負荷をいっそう小さくし、徐々に電極温度を上げることができる。このため、熱ストレスなどにより、電極先端部の損傷などを防ぐことができる。
(4)本発明の高圧放電ランプ点灯装置をプロジェクタに搭載し、0.5×P(W)よりも高い電力で前記放電ランプを点灯中に、一定の期間、プロジェクタの画像信号に変化が無い場合に0.5×P(W)以下の電力モードに移行させることにより、無駄な電力の消費を防ぎ、省電力化を図ることができる。
(5)本発明の高圧放電ランプ点灯装置をプロジェクタに搭載し、0.5×P(W)以下の電力で前記放電ランプを点灯中に、一定の期間、プロジェクタの画像信号に変化が無い場合に自動的に高圧放電ランプを消灯することにより、プロジェクタの消し忘れを防止することができる。
(6)本発明の高圧放電ランプ点灯装置をプロジェクタに搭載し、0.5×P(W)未満の電力で前記放電ランプを点灯中に、検知手段と連動してプロジェクタを点灯させることで無駄な電力の消費を防ぎ、省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の高圧放電ランプ点灯装置の対象となる高圧放電ランプを示す図である。
【図2】本発明の高圧放電ランプ点灯装置の対象となる高圧放電ランプの電極を示す図である。
【図3】高圧放電ランプの電極突起が変形する様子を示す。
【図4】本発明の実施例の高圧放電ランプ点灯装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例の高圧放電ランプ点灯装置を搭載したプロジェクタの構成例を示す図である。
【図6】待機電力点灯モードへの切り替え制御を行なう場合の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図7】定常点灯動作時における放電ランプの電流波形の一例を示す図である。
【図8】定常点灯動作から待機電力点灯に切り替わったときの点灯電力指令信号と電力・電流波形の一例を示す図である。
【図9】定常点灯時の交流電流波形にパルスを重畳した波形例を示す図である。
【図10】待機電力点灯モードにおける、その他の波形例を示す図である。
【図11】待機電力点灯から定常点灯に移行する際の熱的負荷を小さくするための波形例を示す図である。
【図12】画像信号に所定時間以上変化が無い場合に待機電力点灯モードに移行させるようにした実施例の動作を示すフローチャートである。
【図13】画像信号に所定時間以上変化が無い場合に待機電力点灯モードに移行させるようにした実施例の点灯電力指令信号、電力、電流のタイムチャートである。
【図14】待機電力点灯モードの状態が所定時間以上継続した場合にランプを消灯させるようにした実施例の動作を示すフローチャートである。
【図15】待機電力点灯モードの状態が所定時間以上継続した場合にランプを消灯させるようにした実施例の点灯電力指令信号、電力、電流のタイムチャートである。
【図16】検知手段と連動して待機点灯モードから定常点灯モードに移行させるようにした実施例の検知信号、点灯電力指令信号、電力、電流のタイムチャートである。
【図17】従来の放電ランプに流れる電流波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に本発明の対象となる高圧放電ランプを示す。
高圧放電ランプ10は、石英ガラスからなる放電容器によって形成された概略球形の発光部11を有する。この発光部11の中には一対の電極20が2mm以下の間隔で対向配置している。また、発光部11の両端部には封止部12が形成される。この封止部12には、モリブデンよりなる導電用金属箔13が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設される。金属箔13の一端には電極20の軸部が接合しており、また、金属箔13の他端には外部リード14が接合して外部の給電装置から給電が行なわれる。
発光部11には、水銀と、希ガスと、ハロゲンガスが封入されている。水銀は、必要な可視光波長、例えば、波長360〜780nmの放射光を得るためのもので、0.20mg/mm以上封入されている。この封入量は、温度条件によっても異なるが、点灯時200 気圧以上で極めて高い蒸気圧となる。また、水銀をより多く封入することで点灯時の水銀蒸気圧250気圧以上、300気圧以上という高い水銀蒸気圧の放電ランプを作ることができ、水銀蒸気圧が高くなるほどプロジェクタ装置に適した光源を実現できる。
【0027】
希ガスは、例えば、アルゴンガスが約13kPa封入される。その機能は点灯始動性を改善することにある。ハロゲンは、沃素、臭素、塩素などが水銀あるいはその他の金属と化合物の形態で封入される。ハロゲンの封入量は、10−6μmol/mm〜10−2μmol/mmの範囲から選択される。ハロゲンの機能は、いわゆるハロゲンサイクルを利用した長寿命化であるが、本発明の高圧放電ランプのように極めて小型できわめて高い点灯蒸気圧のものは、放電容器の失透防止をいう作用もある。
高圧放電ランプの数値例を示すと、例えば、発光部の最大外径9.4mm、電極間距離1.0mm、発光管内容積55mm、定格電圧70V、定格電力180Wであり交流点灯される。
【0028】
また、この種の放電ランプは、小型化するプロジェクタ装置に内蔵されるものであり、全体寸法として極めて小型化が要請させる一方で高い発光光量も要求される。このため、発光部内の熱的影響は極めて厳しいものとなる。ランプの管壁負荷値は0.8〜2.5W/mm、具体的には2.4W/mmとなる。
このような高い水銀蒸気圧や管壁負荷値を有することがプロジェクタ装置やオーバーヘッドプロジェクタのようなプレゼンテーション用機器に搭載された場合に、演色性の良い放射光を提供することができる。
【0029】
図2は電極先端と突起を示すことを目的として、図1に示す電極20の先端を模式化して表したものである。電極20は、それぞれ球部20aと軸部20bから構成され、球部20aの先端に突起21が形成されている。
ここで、上記突起21は、本発明に係る放電ランプのように電極間距離2mm以下であって発光部に0.2mg/mm以上の水銀を含むプロジェクタ装置の光源として用いられる場合は不可欠となる。なぜなら、発光部に0.2mg/mm以上の水銀を含み、動作圧力が200気圧以上に達する放電ランプにおいては、高い蒸気圧によって、アーク放電が小さく絞られ、結果として放電起点も小さく絞られるからである。
また、電極先端に突起21が形成されることで、そこを起点としてアーク放電が発生するため、アークからの光が電極の球部20aによって遮られにくくなる。このため、光の利用効率が向上し、より明るい映像が得られるという利点も生じる。なお、図2は模式化した図面ではあるが、通常、軸部20bの先端には、軸径より大きい径を有する球部に相当する要素を有している。
【0030】
次に上記放電ランプを点灯させる給電装置を図4示す。
点灯装置は放電ランプ10と給電装置から構成される。給電装置は、直流電圧が供給される降圧チョッパ回路1と、降圧チョッパ回路1の出力側に接続され直流電圧を交流電圧に変化させて放電ランプ10に供給するフルブリッジ型インバータ回路2(以下、「フルブリッジ回路」ともいう)と、放電ランプに直列接続されたコイルL1、コンデンサC1、およびスタータ回路3と、上記フルブリッジ回路2のスイッチング素子Q1〜Q4を駆動するドライバ4と、制御部5から構成される。
制御部5は例えばマイクロプロセッサ等の処理装置で構成することができ、図4ではその機能構成をブロック図で示している。
【0031】
図4において、降圧チョッパ回路1は、直流電圧が供給される+側電源端子に接続されたスイッチング素子QxとリアクトルLxと、スイッチング素子QxとリアクトルLxの接続点と−側電源端子間にカソード側が接続されたダイオードDxと、リアクトルLxの出力側に接続された平滑コンデンサCxと、平滑コンデンサCxの−側端子とダイオードDxのアノード側の間に接続された電流検出用の抵抗Rxから構成される。
上記スイッチング素子Qxを所定のデューティで駆動することにより、入力直流電圧Vdcをこのデューティに応じた電圧に降圧する。降圧チョッパ回路1の出力側には、電圧検出用の抵抗R1,R2の直列回路が設けられている。
フルブリッジ回路2は、ブリッジ状に接続したスイッチング素子Q1〜Q4から構成され、スイッチング素子Q1、Q4、スイッチング素子Q2、Q3を交互にオンにすることにより、スイッチング素子Q1、Q2の接続点と、スイッチング素子Q3、Q4の接続点間に矩形波状の交流電圧が発生する。
スタータ回路3は、抵抗R3とスイッチング素子Q5の直列回路と、コンデンサC2とトランスT1から構成される。
スイッチング素子Q5をオンにすると、コンデンサC2に充電されていた電荷がスイッチング素子Q5、トランスT1の一次側巻線を介して放電し、トランスT1の二次側にパルス状の高電圧が発生する。この高電圧は、放電ランプ10の補助電極Etに印加され、ランプを点灯する。
【0032】
上記回路において、矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の極性期間TbがTb≦5msであり、かつ駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるように動作させるにはフルブリッジ回路2のスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング周期を調整することで達成でき、また、出力電圧は降圧チョッパ回路1のスイッチング素子Qxの動作デューティを調整することで達成できる。
降圧チョッパ回路1のスイッチング素子Qxは、ゲート信号Gxのデューティに応じてオン/オフし、ランプ10に供給される電力が変化する。すなわち、電力アップならQxのデューティを下げるなどして、その入力された電力調整信号値に合致する電力値になるようにゲート信号Gxの制御を行う。
【0033】
制御部5は、駆動信号発生手段51とコントローラ52から構成される。
駆動信号発生手段51は、例えば交流信号発生部51a〜51c、第2の極性期間TbがTb≦5msであり、かつ駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるように駆動期間が非対称な矩形波を発生させる非対称矩形波信号発生部51cと、これらの出力を選択するセレクタ51dから構成される、交流信号発生部51a〜51b、非対称矩形波発生部51cの出力を選択的に出力し、フルブリッジ回路2のスイッチング素子Q1〜Q4を駆動するための駆動信号を発生する。
コントローラ52は、ランプ10の点灯動作を制御する点灯動作制御部52aと、外部からの点灯電力指令に応じて、降圧チョッパ回路1のスイッチング素子Qxを設定されたデューティで駆動し、ランプ電力を制御する電力制御部52cを備える。
また、上記スイッチング素子Q1〜Q4の駆動信号を設定するため、定常点灯か、0.5×P(W)以下の電力で動作させる待機電力点灯かに応じて上記駆動信号発生手段51のセレクタに周波数選択指令を送出する周波数選択部52bを備える。
【0034】
電力制御部52cは、電流検出用の抵抗Rxの両端電圧と、電圧検出用の抵抗R1、R2により検出された電圧から、ランプ電流I、ランプ電圧Vを求めてランプ電力を演算し、この電力が点灯電力指令に一致するような降圧チョッパ回路1のスイッチング素子Qxのデューティを制御する。また、定常点灯か待機電力点灯かに応じて、周波数選択部52bに周波数/非対称矩形波選択信号を送出する。
セレクタ51dは、周波数選択部52bからの指令に応じて、交流信号発生部51a〜51b、非対称矩形波信号発生部51cの出力を選択的にドライバ4に送出する。
例えば、定常点灯のときは、定常点灯周波数を出力する交流信号発生部51aと低周波数を出力する交流信号発生部51bの出力が交互に選択され、例えば後述する図7に示すように波形の信号が出力される。
また、待機電力点灯の場合は、非対称矩形波信号発生部51cの出力が選択され、例えば後述する図8に示す波形の信号が出力される。
なお、周波数選択部52bから出力される非対称比率増減信号に応じて、非対称矩形波信号発生部51cから出力される矩形波の非対称率(Tb/Ta)をTbの値に応じて増減してもよい。
ここで定常点灯から待機点灯に移行する際には0.5×P(W)以下の電力から徐々に電力を低下させながら待機点灯電力に移行しても良い。そうすることで電極温度の急激な変化を更に抑えることが出来る。この場合には降圧チョッパ回路1のスイッチング素子Qxのデューティを制御して電力を徐々に減じながら、待機電力点灯に移行することで実現される。
また、後述するように、待機電力点灯から定常点灯に移行する際、徐々に動作電力を増大させたり、陽極動作していた電極側の陽極駆動期間を徐々に小さくしながら(Tb/Taを変化させながら)、定常点灯に移行させる場合には、電力制御部52cでランプに供給する電力を徐々に増加させたり、非対称矩形波信号発生部51cに送出される非対称比率増減信号により、矩形波の非対称率を制御する。
【0035】
ここで本実施例に係る高圧放電ランプ点灯装置を搭載したプロジェクタの構成例を図5に示す。
プロジェクタは、上述した高圧放電ランプ点灯装置30及び高圧放電ランプ10と、プロジェクタ制御部31と、液晶表示装置等から構成される画像表示装置32と、画像表示装置32に表示された画像を拡大表示する拡大装置33から構成され、拡大装置33により拡大された画像は、スクリーン32に投影表示される。
プロジェクタ制御部31は、パソコン35あるいはテレビなどの外部装置から与えられる画像信号を処理する画像制御部31aと、上述した高圧放電ランプ点灯装置30に、点灯指令及び点灯電力指令を送出する点灯制御部31bを備える。
【0036】
次に、定常点灯動作モードから本実施例の待機電力点灯モードへの切り替え制御について説明する。図6は、図4に示した制御部5による切り替え処理の一例を示すフローチャートである。ここで定常点灯モードとは、「定格電力」、「調光電力」で動作させる場合を指す。なお、「調光電力」の点灯電力は高圧放電ランプ及び給電装置の設計によって決まるものであるが、「調光電力」とは「定格電力」に対しておよそ60〜80%程度の電力で動作させることである。
図6において、制御部5に与えられる点灯電力指令信号により、待機電力モードが選択されると、図4に示す制御部5は第2の極性期間TbがTb≦5msであり、かつ駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるような駆動期間が非対称な矩形波を発生させる、非対称矩形波を選択する。すなわち、周波数選択部52bは、セレクタ51dにより非対称矩形波信号発生部51cの出力を選択させ、ドライバ4は、スイッチング阻止Q1〜Q4に非対称矩形波の駆動信号を与え、Q1、Q4、或いはQ3、Q2を交互にオンする時間を非対称にすることで、高圧放電ランプ10を非対称矩形波駆動する。
また、点灯電力指令信号が定常点灯モードを選択した場合には、矩形波交流点灯で点灯動作する。すなわち、周波数選択部52bは、セレクタ51dにより交流信号発生部51a、51bの出力を選択させ、ドライバ4は、スイッチング素子Q1〜Q4に交流駆動信号を与え、スイッチング素子Q1、Q4、或いはQ3、W2を交互にオンにして高圧放電ランプ10に交流矩形波電流を供給する。
【0037】
図7は定常点灯動作時における放電ランプ10の電流波形の一例を示し、縦軸は電流値、横軸は時間を表す。
図4に示した給電装置は次のように動作し、定常点灯時、図7に示すパターンの電流をランプに供給する。
(1)点灯指令が与えられると、ランプ10への給電が開始されるとともに、コントローラ52の点灯動作制御部52aは、始動回路駆動信号を発生し、スタータ回路3をトリガーして、ランプ10を点灯させる。
(2)ランプ10が点灯すると、電力制御部52cにおいて、分圧抵抗R1、R2により検出される電圧値Vと、抵抗Rxにより検出される電流値Iにより点灯電力が演算される。(3)コントローラ52の電力制御部52cは、点灯電力指令信号と、上記演算された電力値に基づき、降圧チョッパ回路1のスイッチング素子Qxを制御して、点灯電力を制御する。
【0038】
(4)定常点灯時には、コントローラ52の周波数選択部52bは、駆動信号発生手段51のセレクタ51dにより、交流信号発生部51aの出力と交流信号発生部51bの出力を選択し、セレクタ51dから定常点灯周波数信号f1と低周波信号f2を交互に出力させる。
セレクタ51dの出力はドライバ4を介してフルブリッジ回路2のスイッチング素子Q1〜Q4に与えられる。
スイッチング素子Q1〜Q4は上記定常点灯時、定常点灯周波数信号f1(60〜1000Hz)で駆動されるが、前述したように、第1の所定時間(0.01秒〜120秒)毎に、定常点灯周波数よりも低い周波数である低周波信号f2(5〜200Hz)で、第2の所定時間(該低周波信号の半サイクル〜5サイクルの期間)、駆動される(図7の定常点灯時の波形参照)。
【0039】
図8は、定常点灯動作から待機電力点灯に切り替わったときの点灯電力指令信号と電力・電流波形の一例を示し、縦軸は信号レベル・電流値、電力値を示し、横軸は時間を示す。定常点灯動作時は、前述したように高圧放電ランプに対して、60〜1000Hzの範囲から選択された周波数を定常点灯周波数として、この周波数の交流電流が供給されている。
そして、待機電力点灯の信号を検知すると、前記したように制御部5は第2の極性期間TbがTb≦5msであり、かつ駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるような駆動期間が非対称な矩形波を発生させる非対称矩形波駆動を選択し、非対称矩形波電流で点灯させる。
定常点灯時と、待機電力点灯時の具体的な波形例を表1に示す。なお、表1の(a)、(b)は図8中に示した(a)、(b)の区間の波形に対応している。
【0040】
【表1】

【0041】
ここで定常点灯時の交流電流を単純な矩形波としたが、これは単なる例示であり、この駆動波形に限定されるわけではない。例えば、この定常点灯周波数よりも低い周波数であって、5〜200Hzの範囲から選択された周波数を組み合わせた波形でも良いし、図9に示すように、パルス等が重畳された波形でも構わない。
【0042】
待機電力点灯における本発明の非対称矩形波動作の電力値の範囲について実験したところ、表2の結果となった。
表2は、定格点灯電力180Wのランプを用い、本発明の非対称矩形波動作電力値を10W〜140Wの範囲で変化させ、各電力値における点灯の可否、電極磨耗、フリッカー及び突起の位置ずれの有無を調べたものである。ここで表中の判定基準は以下のとおりとしている。◎とは点灯可能な状態でフリッカーがなく、かつ電極先端部の磨耗が無いだけでなく、突起の位置ずれもなく、長時間に亘って安定して動作が可能なことを示す。○とは点灯可能な状態でフリッカーがなく、かつ電極先端部の磨耗は無いが、長時間の点灯では突起の位置ずれを生じ、4000時間超の照度維持特性が必要な長寿命ランプへの適用は困難であることを示す。×は点灯そのもの不可能な状態、または点灯可能な状態であっても電極磨耗が大きい、フリッカーなどの現象により正常な使用が出来ないことを示す。以降の表についてもこの判定基準に準ずる。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示されるように、定格電力の11%よりも低い電力では、点灯を持続することが出来なかった。これは駆動期間Taの際に、極性が陰極側で動作する側の電極温度が極端に低くなるために、充分な熱電子放出が出来ない為に放電を持続できなくなり、グロー放電となることで上述したように異常電圧と検知され、立ち消える或いは電流値が低い為にそもそも極性反転の際に放電が途切れてしまうといったことが推測される。
また、定格電力の50%よりも高い電力では、長時間、即ち駆動期間Ta極性が陽極側で動作する電極の温度が高すぎて突起が消失した。このような理由により、非対称矩形波駆動電力は、定格電力の11〜50%の範囲から選択した電力で点灯させる場合のみフリッカーも無く、また電極先端部の突起の消失も無い良好な点灯状態を作ることが出来た。
しかしながら、定格電力の39〜50%、即ち、70〜90Wの間では、長時間待機電力点灯を行なうと突起の位置ずれが発生していることが分かった。この突起位置ずれはフリッカーなど大きな問題ではないが、照度減衰を引き起こすために極力そのずれ量は小さい方が望ましい。
【0045】
なお、以上の例では180Wで定格点灯させるランプについて示したが、定格電力の値は180Wに限定されず、他のランプにも同様に適用することが出来る。この場合、ランプの設計にもよるが、定格電力に耐えうる大きさを有した電極を設計したとしてもその定格電力の50%よりも高い電力で第2の極性期間TbがTb≦5msであっても駆動期間の比率がTb/Ta>0.1となるような駆動期間が非対称な矩形波点灯動作または直流点灯動作させた場合には上記に示したとおり、突起の消失により、フリッカー現象が発生することが分かった。一方、ランプ設計の異なるランプであって駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるような駆動期間が非対称な矩形波駆動においておよそ20W程度までは安定して動作するが、10Wでは放電が維持できないことも分かった。
【0046】
次に、第1の極性期間Taが100ms、第2の極性期間Tbが0.05msのとき(Tb/Ta=0.0005)、及び第1の極性期間Taが100ms、第2の極性期間Tbが5msのとき(Tb/Ta=0.05)のとき、更には第1の極性期間Taが150ms、第2の極性期間Tbが0.05msの場合(Tb/Ta=0.0003)に、それぞれ電力範囲を10W〜140Wまで変化させた場合の各電力値における点灯の可否、電極磨耗、フリッカー、電極突起の位置ずれを調べた。その結果を表3から表5に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
表3及び表4から、第2の駆動期間TbがTb≦5msであってTb/Taが0.0005〜0.05の範囲であれば、安定して動作するとともに突起の位置ずれもなく、高い照度維持率を得ることが出来ることが分かった。
一方、表5に示すように、Tb≦5msであってTb/Taが0.0005未満の場合には、90Wで電極の突起位置のずれが確認された。
【0051】
次に、定格点灯電力180Wのランプを用い、従来の駆動方法である交流駆動(Tb/Ta=1.0)で電力値を70W〜140Wの範囲で変化させ、各電力値における点灯の可否、電極磨耗、フリッカー突起の位置ずれの有無を調べた。その結果を以下の表6に示す。
表6に示すように、点灯電力120W以下では、電極先端表面の温度が低いため、アークスポットが安定せず、電極が損耗するとともに、フリッカーが観察された。
【0052】
【表6】

【0053】
図10(a)(b)に、待機電力点灯モードにおける、その他の波形例について示す。同図は点灯電力指令信号と電力・電流波形の一例を示したものであり、縦軸は信号レベル・電流値、電力値を示し、横軸は時間を示す。
図10(a)は待機電力指令信号に応じて第2の極性期間TbがTb≦5ms、かつ駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるような駆動期間が非対称な矩形波駆動し、所定の時間で期間Taと期間Tbの極性を反転させる。これは本来、交流駆動にて定常点灯される高圧放電ランプを駆動期間の比率がTb/Ta>0.1となるような駆動期間が非対称な矩形波点灯動作または直流点灯動作させた場合、前述したように入力が高い場合には突起の消失が発生する。定格電力の50%以下の電力であっても損耗は必ずしも全く無いわけではなく、その損耗量が極めて軽微であり、例えば待機電力点灯といった比較的短時間(例えば1時間程度)であれば問題はないが、画面に投射させる投影モードで使用する場合には僅かな損耗量であっても例えば5000時間を超える照度維持率を満足させるためには問題となることが想定される。特に駆動期間Tbが極めて小さい場合、直流駆動動作に近いため、特許文献4で示されるように突起を生成するプロセスが無いために損耗量の大きさが照度特性に大きく影響を与えることは容易に想像される。これを回避するために例えば第2の極性期間TbがTb≦5ms、かつ駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるような駆動期間が非対称な矩形波点灯動作の途中で極性を反転させる場合(図10(a))や点灯モードの切り替わりの度に駆動期間Ta、Tbの極性を反転させる(図10(b))ことで電極に対する熱的な負荷に偏りが生じることを回避し、50%以下の電力であっても照度寿命特性を確保することが出来る。
【0054】
ところで、待機電力点灯時には、ランプに非対称な矩形波電流を供給する必要があり、図4に示したフルブリッジ回路2のスイッチング素子Q1〜Q4に非対称矩形波の駆動信号を与え、Q1、Q4、或いはQ3、Q2を交互にオンする時間を非対称にする必要がある。
実際の回路構成においては、例えばコンデンサを充電することで、スイッチング素子Q1、Q2へのハイレベルのゲート駆動信号を生成している。この場合、上記コンデンサが放電してしまうので、長時間に亘り、スイッチング素子Q1、Q3をオン状態に保つことは難しく、周期的にコンデンサを充電する必要がある。このようなコンデンサを用いた駆動回路を用いた場合、コンデンサを充電する期間、スイッチング素子Q1、Q3は一時的にオフとなり、周期的な極性反転動作が行われることとなる。ここでコンデンサが充電される期間はコンデンサの容量にもよるが、およそ0.1ms程度である。したがって、極性反転期間、即ち駆動期間Tbはおよそ0.1ms程度が望ましい。
仮に直流点灯駆動をしようとした場合には、図4に示したフルブリッジ回路2のスイッチング素子Q1〜Q4に直流の駆動信号を与え、スイッチング素子Q1、Q4、或いはQ3、Q2をオン状態に保つ必要がある。
そのため、スイッチング素子Q1、Q4のゲートG1、G4、或いはQ3、Q2のゲートG3、G2にハイレベルの信号を継続的に与える必要があり、スイッチング素子Q1、Q3のゲート駆動信号には、スイッチング素子Q2、Q4のゲート駆動信号より、ハイレベルの電圧を印加する必要がある。
スイッチング素子Q1、Q3のゲートG1、G3に供給するハイレベルの駆動信号は、別電源を用いるか、或いは、チャージポンプ回路などを用いて生成することも考えられるが、部品点数も増加し、コストも増加する。
したがって、第2の極性期間TbがTb≦5ms、かつ駆動期間の比率がTb/Ta≦0.1となるような駆動期間が非対称な矩形波点灯駆動させることは、実際の回路構成においても、特別に部品点数を増やすことなく、安価に点灯回路を構成することができる。
【0055】
次に待機電力点灯などの定常点灯の50%以下の動作電力から定常点灯に移行する場合を考える。この場合において、矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の極性期間TbがTb≦5ms、かつ駆動期間の比率をTb/Ta≦0.1の状態から、周波数または電力を徐々に変化させながら定常点灯で動作させることが望ましい。なぜなら定常点灯電力に移行するまでには水銀が蒸発し、一定の圧力動作になるには一定の時間が必要であるが、この移行期間をTb/Ta≦0.1の非対称矩形波点灯で動作させると前述したように相対的に駆動期間の長い第1の極性駆動期間Taにおいて陽極動作する側の電極の突起が消失することが容易に想像されるからである。こういった観点から定常点灯に移行する際は徐々に動作電力が高くなるとともに交流駆動動作に移ることが望ましい(図11)。更には周波数の高い、即ち第2の極性期間Tbと同じ程度の時間周期で動作する交流駆動動作に移ってから徐々に周波数を定常点灯動作に近づけながら、動作電力を高くする方が、それぞれ陽極、陰極動作していた電極に対して比較的低い電力で交流駆動動作することによって反対極性を経験する方が、熱的な負荷を急激に与えることなく、徐々に電極温度を上げることが出来るので熱ストレスによる電極先端部の割れなどを防止することが出来る。ここで第1の極性期間Taと同程度の周波数で徐々に電力を上げることは上述したように電極の突起が消失する問題が発生することは明白である。
【0056】
一般的に高圧放電ランプに使用される電極は主にタングステンで構成されており、照度寿命特性を改善する目的で99.999%以上の極めて高純度のタングステンが使用される。高純度のタングステンは不純物が少ないという意味で長寿命を期待できる半面、結晶粒が粗大化するため、脆いという欠点を有している。特に先端部は極めて高温になることから結晶粒が粗大化しやすい。熱的なストレスが急激に加わることで熱応力により結晶粒界間で割れが生じるなどの不具合が生じる。従って、定常点灯に移行する場合は交流駆動に移行してから電力を移行させることが望ましい。
【0057】
こういった見地に立つと定常点灯に移行する場合には定格動作する交流駆動周波数と必ずしも同じ周波数である必要は無い。むしろ電力移行とともに周波数を変化させることで上述する熱的負荷を極限まで小さくすることが出来る。
図11は、待機電力点灯から定常点灯に移行する際、点灯電力を徐々に大きくして定常点灯に移行させ、同図(a)に示すように、陰極動作側の電極と陽極動作側の電極温度差が、少なくなるように、陰極動作と陽極動作の時間幅を変えながら定常点灯動作に近づける。
あるいは、同図(b)の変形例に示すように、周波数、交流電流を徐々に大きくしながら定常点灯動作に近づけたり、同図(c)の変形例に示すように、陰極動作側の電極と陽極動作側の電極温度差が、少なくなるように、陰極動作と陽極動作の時間幅を変えながら定常点灯動作に近づける。
【0058】
次に、本実施例の高圧放電ランプ点灯装置を、図5に示したプロジェクタに搭載した場合における制御動作例について説明する。
図12に、画像制御部に予め設定された一定の期間T1よりも長い期間において画像信号に変化が無い場合の動作フローチャートを示し、図13に、この場合の点灯電力指令信号、電力、電流のタイムチャートを示す。
図12、図13において、定常点灯時、一定の期間T1よりも長い期間画像信号に変化が無いと、プロジェクタ制御部31の点灯制御部31bから待機電力点灯モードを選択する信号が送信され、この信号に基づいて点灯装置30は待機電力点灯モードに移行する。
そして、画像信号がオンになると、待機電力点灯モードから再び定常点灯モードに移行する。
【0059】
上記のように制御することで、例えば、パソコンなどの外部信号を通じてプロジェクタからスクリーン面に画像を投影している状態で、画面に変化が無い状態が継続された際などに自動的に待機電力点灯モードに移行させることができ、省電力化を図ることができる。 更には、待機電力点灯モードへ移行すると共に、高圧水銀ランプの冷却を止めるなどにより、更に省電力を図ることが出来る。また、短い点灯時間で繰り返し使用される環境の場合、始動時のダメージにより高圧放電ランプの寿命時間に悪影響を及ぼすことがある。待機電力点灯モードを利用することで高圧放電ランプを消すことなく、連続点灯動作させることで実質的に寿命特性を改善されると共に瞬時に画面を投影することが出来るなどの利点が考えられる。
【0060】
図14に、予め設定された一定の期間T2よりも長い期間、待機電力点灯動作が継続された場合の制御フローチャートを示し、図15に、この場合の点灯電力指令信号、電力、電流のタイムチャートを示す。
図14、図15に示すように、定常点灯時、一定期間T1よりも長い期間画像信号に変化が無いと、プロジェクタ制御部31の点灯制御部31bから待機電力点灯モードに移行する。さらに、一定期間T2を超えて、待機電力点灯が継続された場合、プロジェクタ制御部31の点灯制御部31bから高圧放電ランプを消灯する信号が送信される。
この機能により、例えば待機点灯動作をしたままプロジェクタの使用を終了したときにプロジェクタの消し忘れを防止することが出来る。即ち、待機点灯動作の場合、点灯電力が低いこと、画像表示手段において例えば液晶表示装置の偏光方向をオフにすることであたかも消灯したかのように錯覚する。特に手元にプロジェクタが配置されない天井に吊り下げた使用方法(天吊り使用)の場合にこのような状況が考えられる。
【0061】
図16に、検知信号と点灯電力指令信号、電力、電流のタイムチャートを示す。
図16に示すように、待機点灯した状態で検知信号がオンすると点灯指令信号が連動してオンされることで定常点灯に移行し、一定の時間定常点灯で動作した後、再び待機点灯に移行する。検知信号がオンされるとプロジェクタ制御部31の点灯制御部31bから定常点灯モードに移行する信号が送信され、一定期間継続した後、プロジェクタ制御部31の点灯制御部31bから待機電力モードが送信される。
この機能により、例えば赤外線センサー等で人物が通ったときのみ画面を表示させるといった使用が可能であり、常に画面表示をしているときに比べると省電力化することが可能である。
【0062】
ここで待機電力点灯は画面に投射しないことを主としているが、これに限ったことではない。即ち、投射モードにおいて暗い画面をより暗く映し出すために定格点灯電力の50%未満の電力で動作させることは非常に有効である。所謂コントラスト比の改善効果も期待できる。
【0063】
待機電力点灯のもう一つの効果として前述したコントラスト比の改善も挙げられる。ここでコントラスト比が高いということはそれだけくっきりとした画像を表現することが出来ることからスクリーン照度と併せてプロジェクタの重要な性能である。例えば画像表示手段として液晶素子を使用した場合、液晶素子の性能にもよるが概ねコントラスト比は500:1程度である。ここで500:1とは白画面を投影したときのスクリーン面の照度と黒画面を投影したときのスクリーン面の照度の比率で表される。例えば、黒画面投影時に待機電力点灯として定格点灯の25%の電力で動作させることで実質的に2000:1のコントラスト比を達成することが可能となる。実際には前述したように水銀の未蒸発による動作圧力の低下に伴って電力比以上に光量が低下することから2000:1を上回るコントラスト比を実現することが出来る。
【0064】
以上の実施例では、画像表示手段として液晶素子の例を示したが、DMD(デジタルミラーデバイス) を使ったDLP(デジタルライトプロセッサ)を使用しても良い。DLPプロジェクタの場合、概ね液晶素子を使用したプロジェクタに比べてコントラスト比を大きくすることが出来るが、本発明と組み合わせることで更なるコントラスト比の改善が可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 降圧チョッパ回路
2 フルブリッジ回路
3 スタータ回路
4 ドライバ
5 制御部
51 駆動信号発生手段
51a、51b 交流信号発生部
51c 非対称矩形波信号発生部
51d セレクタ
52 コントローラ
52a 点灯動作制御部
52b 周波数選択部
52c 電力制御部
10 高圧放電ランプ
11 発光部
12 封止部
13 導電用金属箔
14 外部リード
20 電極
20a 球部
20b 軸部
21 突起
30 高圧放電ランプ点灯装置
31 プロジェクタ制御部
31a 画像制御部
31b 点灯制御部
32 画像表示装置
33 拡大装置
34 スクリーン
35 パソコン
Cx、C2 コンデンサ
Dx ダイオード
Lx リアクトル
R1、R2、R3、Rx 抵抗
Q1〜Q4、Q5、Qx スイッチング素子
T1 トランス
Et 補助電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスからなる放電容器に一対の電極が電極間距離2mm以下で対向配置して、この放電容器に0.20mg/mm以上の水銀と、10−6μmol/mm〜10−2μmol/mmの範囲のハロゲンと所定量の希ガスが封入される高圧放電ランプと、この高圧放電ランプに対して矩形波交流電流を供給して点灯させる給電装置とから構成される高圧放電ランプ点灯装置において、
始動直後の初期点灯期間を除いた定常点灯状態における動作最大電力P(W)に対して0.5×P(W)以下の電力で動作させる場合は、矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の極性期間TbがTb≦5msであり、駆動期間の比率Tb/TaがTb/Ta≦0.1となるように動作させることを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
第2の極性期間Tbが0.05≦Tb≦5msであるとともに、かつ駆動期間の比率Tb/Taが0.0005≦Tb/Ta≦0.05であることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
0.5×P(W)以下の電力で動作させた後に再度0.5×P(W)よりも高い電力で動作させる場合に、矩形波交流電流の第1の極性の駆動期間Ta(秒)、第2の極性の駆動期間をTb(秒)としたとき、第2の極性期間TbがTb≦5msであり、かつ駆動期間の比率をTb/Ta≦0.1の状態から、周波数または電力のいずれか又はその両方を変化させながら定常点灯動作に移行することを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載の高圧放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の高圧放電ランプ点灯装置を搭載した画像を投影するプロジェクタ。
【請求項5】
0.5×P(W)よりも高い電力で一定の期間、プロジェクタの画像信号に変化が無い場合に0.5×P(W)以下の電力モードに移行する機能を具備することを特徴とする請求項4に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
0.5×P(W)以下の電力で一定の期間、プロジェクタの画像信号に変化が無い場合に自動的に高圧放電ランプを消灯する機能を具備することを特徴とする請求項4に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
0.5×P(W)未満の電力で一定の期間動作させた後、検知手段と連動して定常点灯動作に移行する機能を具備することを特徴とする請求項4に記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−44258(P2011−44258A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190231(P2009−190231)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】