説明

高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナート並びにそれらの製造及び使用

ジアルキルカーボナート又はジアリールカーボナート又はホスゲン、ジホスゲン又はトリホスゲン及び脂肪族、脂肪族/芳香族及び芳香族のジオール又はポリオールをベースとする高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナート並びに塗装系の製造のためのそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルキルカーボナート又はジアリールカーボナート又はホスゲン、ジホスゲン又はトリホスゲン及び脂肪族、脂肪族/芳香族又は芳香族のジオール又はポリオールをベースとする高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナート並びに塗装系の製造のための前記ポリカーボナートの使用に関する。
【0002】
本発明による高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートは、とりわけ、接着促進剤(Haftvermittler)、チキソトロープ剤、流動性向上剤として又は重付加ポリマー又は重縮合ポリマー、例えば塗料、被覆、接着剤、シーラント、注型エラストマー又はフォームの製造のための構成要素として工業的に有利に使用されることができる。
【0003】
ポリカーボナートは、通常、アルコール又はフェノール類とホスゲンとの反応からか、又はアルコール又はフェノール類とジアルキルカーボナート又はジアリールカーボナートとのエステル交換反応から得られる。例えばビスフェノール類から製造される芳香族ポリカーボナートが工業的に重要であり;脂肪族ポリカーボナートは、市場売買高からみてこれまでそれほど役割を果たしていない。これらについてはBecker/Braun, Kunststoff-Handbuch 第3/1巻, Polycarbonate, Polyacetale, Polyester, Celluloseester, Carl-Hanser-Verlag, Muenchen 1992, p.118 - 119, 及び"Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry", 第6版、2000 Electronic Release, Verlag Wiley-VCHも参照。
【0004】
文献に記載されている芳香族又は脂肪族のポリカーボナートは、通例、線状であるか又は単に低い分岐度で合成されている。
【0005】
例えば、米国特許(US)第3,305,605号明細書には、ポリビニルポリマー用の可塑剤としての、15000Daを上回るモル質量を有する固体の線状脂肪族ポリカーボナートの使用が記載されている。
【0006】
米国特許(US)第4,255,301号明細書には、ポリエステル用の光安定剤としての線状環式脂肪族ポリカーボナートが記載されている。
【0007】
さらに、線状脂肪族ポリカーボナートは、好ましくは熱可塑性プラスチックの製造のため、例えばポリエステルにか又はポリウレタンエラストマー又はポリ尿素ウレタンエラストマー用に使用される、これらについては欧州特許(EP)第364052号明細書、欧州特許(EP)第292772号明細書、欧州特許(EP)第1018504号明細書又は独国特許(DE)第10130882号明細書も参照。これらの線状ポリカーボナートに特徴的であるのは、一般的に、それらの高い固有粘度である。
【0008】
欧州特許出願公開(EP-A)第896 013号明細書には、ジオール及び少なくとも3個のOH基を有するポリオールからなる混合物と有機カーボナート、ホスゲン類又はそれらの誘導体との反応により得ることができる架橋ポリカーボナートが開示されている。好ましくは、ジオール少なくとも40%が使用される。前記明細書には、挙げられた出発製品から出発して、架橋されていない超分岐ポリカーボナートも製造されうるにしても、そのような如何なる指摘も含まれていない。
【0009】
定義されて合成された高官能性ポリカーボナートは、少し前にはじめて知られている。
【0010】
S. P. Rannard及びN. J. Davis, J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 11729には、ホスゲン類似化合物としてのカルボニルビスイミダゾールと、ビス−ヒドロキシエチルアミノ−2−プロパノールとの反応による、完璧に分岐したデンドリティックポリカーボナートの製造が記載されている。
【0011】
完璧なデンドリマーへの合成は多段階であり、故に費用集約的であり、かつ工業的規模への移行にはそれゆえ不適である。
【0012】
D.H. Bolton及びK. L. Wooley, Macromolecules 1997, 30, 1890には、1,1,1−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)エタンとカルボニルビスイミダゾールとの反応による、高分子量で極めて硬い超分岐の芳香族ポリカーボナートの製造が記載されている。
【0013】
超分岐ポリカーボナートは、国際公開(WO)第98/50453号パンフレットに従っても製造されうる。そこに記載された方法によれば、トリオールは再びカルボニルビスイミダゾールと反応される。まず最初にイミダゾリドが生じ、これらはついで分子間でさらに反応してポリカーボナートに変換される。挙げられた方法によれば、ポリカーボナートは、無色又は淡黄色のゴム状生成物として生じる。
【0014】
Scheel及び共同研究者, Macromol. Symp. 2004, 120, 101には、トリエタノールアミン及びカルボニルビスイミダゾールをベースとするポリカーボナートの製造が記載されているが、しかしながらこの製造は熱不安定な生成物をもたらす。
【0015】
多分岐又は超分岐のポリカーボナートへの前記合成は次の欠点を有する:
a)超分岐生成物は、高融点であるか、ゴム状であるか又は熱的に不安定であり、それによりその後の加工性は明らかに制限されている。
b)反応の間に遊離するイミダゾールは、費用をかけて反応混合物から除去されなければならない。
c)反応生成物は常に末端イミダゾリド基を有する。これらの基は、不安定であり、かつ二次工程を経て、例えばヒドロキシル基へ変換されなければならない。
d)カルボニルジイミダゾールは、原料コストを著しく高める比較的高価な化学薬品である。
【0016】
故に、技術的に単純でかつ安価な方法を用いて、構造が用途の必要条件に容易に適合されることができ、かつそれらの定義された構成に基づいて有利な性質、例えば高い官能性、高い反応性、僅かな粘度及び良好な溶解度が一体にされることができる、芳香族の、好ましくは芳香族/脂肪族の及び特に好ましくは脂肪族の、高官能性及び多分岐のポリカーボナート、これらの高官能性で多分岐又は超分岐のポリカーボナートの製造方法、並びにそれらの使用を提供するという課題が本発明の基礎となっていた。
【0017】
前記課題は本発明によれば、ジアルキルカーボナート又はジアリールカーボナートを、二官能性又は多官能性の脂肪族及び/又は芳香族のアルコールと反応させたことによって、解決されることができた。
【0018】
本発明の選択的な一実施態様において、ホスゲン、ジホスゲン又はトリホスゲンが、カーボナートの代わりに出発物質として使用される。
【0019】
それゆえ、本発明の対象は、高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートの製造方法であって、次の工程:
a)1つ又はそれ以上の縮合生成物(K)を、
(a1)一般式RO[(CO)O]nRの少なくとも1つの有機カーボナート(A)を、少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1つの脂肪族、脂肪族/芳香族又は芳香族のアルコール(B1)と、アルコールROHの脱離下に反応させる[上記式中、Rはその都度互いに独立して炭素原子1〜20個を有する直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族、芳香族/脂肪族又は芳香族の炭化水素基であり、かつ前記基Rは互いに結合されて環を形成していてもよく、かつnは1〜5の整数を表す]か、
又は
(a2)ホスゲン、ジホスゲン又はトリホスゲンを、前記の脂肪族、脂肪族/芳香族又は芳香族のアルコール(B1)と、塩化水素の遊離下に反応させる
のいずれかにより製造する工程及び
(b)縮合生成物(K)を分子間反応させて高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートに変換する工程
を少なくとも含み、その際に、反応混合物中のOH基対ホスゲン又はカーボナートの量比は、縮合生成物(K)が1個のカーボナート基又は塩化カルバモイル基及び1個よりも多いOH基、又は1個のOH基及び1個よりも多いカーボナート基又は塩化カルバモイル基のいずれかを平均して有するように選択される。
【0020】
さらに、本発明の対象は、この方法により製造された高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナート及びそれらの使用である。
【0021】
超分岐ポリカーボナートは、本発明の範囲内で、構造的に並びに分子的に不均一であり、ヒドロキシル基及びカーボナート基又は塩化カルバモイル基を有する架橋されていない高分子であると理解される。これらは、一方では、中心分子から出発してデンドリマーに類似して、しかしながら、枝の不均一な連鎖長を有して構成されていてよい。これらは、他方では、官能性で分枝鎖状の側基を有して線状で構成されていてもよく、又はしかし、両極端の組合せとして、線状及び分枝鎖状の分子部分を有していてよい。デンドリティックポリマー及び超分岐ポリマーの定義については、P.J. Flory, J. Am. Chem. Soc. 1952, 74, 2718及びH. Frey他, Chem. Eur. J. 2000, 6, No. 14, 2499も参照。
【0022】
"多分岐"及び"超分岐"は、本発明に関連して、分岐度(Degree of Branching、DB)、すなわち、1分子当たりのデンドリティック結合の平均数プラス末端基の平均数が、10〜99.9%、好ましくは20〜99%、特に好ましくは20〜95%であると理解される。
【0023】
"デンドリティック"は、本発明に関連して、分岐度が99.9〜100%であると理解される。"分岐度(Degree of Branching)"の定義については、H. Frey他, Acta Polym. 1997, 48, 30を参照。
【0024】
本発明の一利点は、本発明によるポリカーボナートが架橋されていないことである。本明細書の範囲内の"架橋されていない"は、ポリマーの不溶性含分を介して決定される15質量%未満、好ましくは10質量%未満の架橋度が存在していることを意味する。
【0025】
ポリマーの不溶性含分は、溶剤中にポリマーがより良好に可溶性であるかどうかに応じて、ゲル浸透クロマトグラフィーのために使用されるのと同じ溶剤、すなわちテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド又はヘキサフルオロイソプロパノールでのソックスレー装置中での4時間の抽出、及び恒量までの残留物の乾燥後に残留している残留物の秤量により決定された。
【0026】
さらに、本発明の対象は、接着促進剤(Haftvermittler)、チキソトロープ剤、流動助剤としてか又は重付加ポリマー又は重縮合ポリマーの製造のための構成要素として、例えば塗料、被覆、接着剤、シーラント、注型エラストマー又はフォームにおける、本発明による高官能性の多分岐ポリカーボナートの使用である。
【0027】
本発明については、次のことが詳細に説明されうる:
出発物質として、ホスゲン、ジホスゲン又はトリホスゲン、これらの中では好ましくはホスゲンが使用されることができるが、しかしながら好ましくは有機カーボナート(A)が使用される。
【0028】
出発物質として使用される一般式RO[(CO)O]nRの有機カーボナート(A)の基Rは、その都度互いに独立して、炭素原子1〜20個を有し、直鎖状又は分枝鎖状の、脂肪族、芳香族/脂肪族(芳香脂肪族)又は芳香族の炭化水素基である。2つの基Rは、互いに結合されて環を形成していてもよい。2つの基Rは、同じか又は異なっていてよく、好ましくはこれらは同じである。好ましくは、脂肪族炭化水素基及び特に好ましくは炭素原子1〜5個を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基であるか、又は置換又は非置換のフェニル基である。
【0029】
Rは、その際に、炭素原子1〜20個、好ましくは炭素原子1〜12個、特に好ましくは1〜6個及び極めて特に好ましくは1〜4個を有し、直鎖状又は分枝鎖状の、好ましくは直鎖状の、(環式)脂肪族、芳香族/脂肪族又は芳香族の、好ましくは(環式)脂肪族又は芳香族の、特に好ましくは脂肪族の炭化水素基を表す。
【0030】
これらの例は、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、フェニル、o−又はp−トリル又はナフチルである。メチル、エチル、n−ブチル及びフェニルが好ましい。
【0031】
前記基Rは、その際に、同じか又は異なっていてよく、好ましくはこれらは同じである。
【0032】
前記基Rは、互いに結合されて環を形成していてもよい。そのような二結合性基Rの例は、1,2−エチレン、1,2−プロピレン及び1,3−プロピレンである。
【0033】
一般的に、nは、1〜5、好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜2の整数である。
【0034】
カーボナートは、好ましくは、一般式RO(CO)ORの単純なカーボナートであってよく、すなわちこの場合にnは1を表す。
【0035】
ジアルキルカーボナート又はジアリールカーボナートは、例えば、脂肪族、芳香脂肪族又は芳香族のアルコール、好ましくはモノアルコールと、ホスゲンとの反応から製造されることができる。さらに、これらは、貴金属、酸素又はNOxの存在でのCOを用いるアルコール又はフェノール類の酸化カルボニル化によっても製造されることができる。ジアリールカーボナート又はジアルキルカーボナートの製造方法については、"Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry", 第6版, 2000 Electronic Release, Verlag Wiley-VCHも参照。
【0036】
本発明によれば、カーボナートがどのようにして製造されているかは有意な役割を果たさない。
【0037】
適したカーボナートの例は、脂肪族、芳香族/脂肪族又は芳香族のカーボナート、例えばエチレンカーボナート、1,2−又は1,3−プロピレンカーボナート、ジフェニルカーボナート、ジトリルカーボナート、ジキシリルカーボナート、ジナフチルカーボナート、エチルフェニルカーボナート、ジベンジルカーボナート、ジメチルカーボナート、ジエチルカーボナート、ジ−n−プロピルカーボナート、ジ−n−ブチルカーボナート、ジイソブチルカーボナート、ジペンチルカーボナート、ジヘキシルカーボナート、ジシクロヘキシルカーボナート、ジヘプチルカーボナート、ジオクチルカーボナート、ジデシルカーボナート又はジドデシルカーボナートを含む。
【0038】
nが1よりも大きいカーボナートの例は、ジアルキルジカーボナート、例えばジ(t−ブチル)ジカーボナート又はジアルキルトリカーボナート、例えばジ(t−ブチル)トリカーボナートを含む。
【0039】
好ましくは、脂肪族カーボナート、特に前記基が炭素原子1〜5個を含むそのようなカーボナート、例えばジメチルカーボナート、ジエチルカーボナート、ジ−n−プロピルカーボナート、ジ−n−ブチルカーボナート又はジイソブチルカーボナートが使用される。好ましい芳香族カーボナートの1つは、ジフェニルカーボナートである。
【0040】
有機カーボナートは、少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1つの脂肪族又は芳香族のアルコール(B1)と、又は2つ又はそれ以上の異なるアルコールの混合物と反応される。
【0041】
アルコール(B1)は、分枝鎖状又は非分枝鎖状であってよく、置換又は非置換であってよく、かつ炭素原子3〜26個を有していてよい。好ましくは、(環式)脂肪族の、特に好ましくは脂肪族のアルコールである。
【0042】
少なくとも3個のOH基を有する化合物の例は、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,2,4−ブタントリオール、トリス(ヒドロキシ−メチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシ−プロピル)アミン、ペンタエリトリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ビス(トリ−メチロール−プロパン)、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌラート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラート、フロログルシノール、トリヒドロキシトルエン、トリヒドロキシジメチルベンゼン、フロログルシド類、ヘキサヒドロキシベンゼン、1,3,5−ベンゼントリメタノール、1,1,1−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン、糖、例えばグルコース、糖誘導体、例えばソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリトリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、マルチトール、イソマルト、三官能性又はより高官能性のアルコール及びエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド又はそれらの混合物をベースとする三官能性又はより高官能性のポリエーテロール、又はポリエステロールを含む。
【0043】
挙げた少なくとも3個のOH基を有するアルコールは、場合によりアルコキシル化されていてもよい、すなわち、ヒドロキシ基1個当たり1〜30個、好ましくは1〜20個、特に好ましくは1〜10個及び極めて特に好ましくは1〜5個のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はイソブチレンオキシドの分子と反応されていてよい。
【0044】
その際、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリトール、並びにそれらのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドベースのポリエーテロールが特に好ましい。
【0045】
これらの多官能性アルコールは、二官能性アルコール(B2)との混合物でも使用されることができるが、但し、使用される全てのアルコールの平均OH官能性は合わせて2よりも大きい。2個のOH基を有する適した化合物の例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,2−、1,3−及び1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−又は1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−、1,2−、1,3−又は1,4−シクロ−ヘキサンジメタノール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ビス(4−ヒドロキシシクロ−ヘキシル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−5−トリメチルシクロ−ヘキサン、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)トルエン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ジヒドロキシベンゾフェノン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はそれらの混合物をベースとする二官能性ポリエーテルポリオール、162〜2000のモル質量を有するポリテトラヒドロフラン、ポリカプロラクトン又はジオール及びジカルボン酸をベースとするポリエステロールを含む。
【0046】
ジオールは、ポリカーボナートの性質を細かく調節するのに役立つ。二官能性アルコールが使用される場合には、二官能性アルコール(B2)対少なくとも三官能性のアルコール(B1)の比は、ポリカーボナートの所望の性質に応じて当業者により規定される。通例、1つ又は複数のアルコール(B2)の量は、合わせた全てのアルコール(B1)及び(B2)の全量を基準として0〜39.9mol%である。好ましくは、前記量は0〜35mol%、特に好ましくは0〜25mol%及び極めて特に好ましくは0〜10mol%である。
【0047】
アルコール(B1)及び(B2)は、ここでは合わせて(B)と呼ぶ。
【0048】
ホスゲン、ジホスゲン又はトリホスゲンと、アルコール又はアルコール混合物との反応は通例、塩化水素の脱離下に行われ、カーボナートと、アルコール又はアルコール混合物との反応による本発明による高官能性の多分岐ポリカーボナートへの変換は、カーボナート分子からの単官能性アルコール又はフェノールの脱離下に行われる。
【0049】
本発明による方法により形成された高官能性の多分岐ポリカーボナートは、反応後に、すなわちさらに変性することなく、ヒドロキシル基、及びカーボナート基もしくは塩化カルバモイル基を末端基としている。これらは多様な溶剤中へ良好に溶解する。
【0050】
そのような溶剤の例は、芳香族及び/又は(環式)脂肪族の炭化水素及びそれらの混合物、ハロゲン化炭化水素、ケトン、エステル及びエーテルである。
【0051】
芳香族炭化水素、(環式)脂肪族炭化水素、アルカン酸アルキルエステル、ケトン、アルコキシル化されたアルカン酸アルキルエステル及びそれらの混合物が好ましい。
【0052】
モノアルキル化又はポリアルキル化されたベンゼン及びナフタレン、ケトン、アルカン酸アルキルエステル及びアルコキシル化されたアルカン酸アルキルエステル並びにそれらの混合物が特に好ましい。
【0053】
芳香族炭化水素混合物として、主に芳香族C7−〜C14−炭化水素を含んでおり、かつ110〜300℃の沸点範囲を含みうるそのような炭化水素混合物が好ましく、トルエン、o−、m−又はp−キシレン、トリメチルベンゼン異性体、テトラメチルベンゼン異性体、エチルベンゼン、クメン、テトラヒドロナフタレン及びそのようなものを含有している混合物が特に好ましい。
【0054】
これらの例は、ExxonMobil Chemical社のSolvesso(登録商標)銘柄、特にSolvesso(登録商標) 100(CAS-No. 64742-95-6、主にC9及びC10−芳香族化合物、沸点範囲約154〜178℃)、150(沸点範囲約182〜207℃)及び200(CAS-No. 64742-94-5)、並びにShell社のShellsol(登録商標)銘柄である。パラフィン、シクロパラフィン及び芳香族化合物からなる炭化水素混合物は、名称Kristalloel(例えばKristalloel 30、沸点範囲約158〜198℃又はKristalloel 60:CAS-No. 64742-82-1)、ホワイトスピリット(Testbenzin)(例えば同様にCAS-No. 64742-82-1)又はソルベントナフサ(軽質:沸点範囲約155〜180℃、重質:沸点範囲約225〜300℃)でも商業的に入手可能である。そのような炭化水素混合物の芳香族化合物含量は通例、90質量%を上回り、好ましくは95質量%を上回り、特に好ましくは98質量%を上回り及び極めて特に好ましくは99質量%を上回る。特に低下されたナフタレン含量を有する炭化水素混合物を使用することが有意義でありうる。
【0055】
脂肪族炭化水素含量は通例、5質量%未満、好ましくは2.5質量%未満及び特に好ましくは1質量%未満である。
【0056】
ハロゲン化炭化水素は、例えばクロロベンゼン及びジクロロベンゼン又はその異性体混合物である。
【0057】
エステルは、例えば酢酸n−ブチル、酢酸エチル、酢酸1−メトキシ−2−プロピル及び酢酸2−メトキシエチルである。
【0058】
エーテルは、例えばTHF、ジオキサン並びにエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール又はトリプロピレングリコールのジメチルエーテル、ジエチルエーテル又はジ−n−ブチルエーテルである。
【0059】
ケトンは、例えばアセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、ヘキサノン、イソブチルメチルケトン、ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又はシクロヘプタノンである。
【0060】
(環式)脂肪族炭化水素は、例えばデカリン、アルキル化されたデカリン及び直鎖状又は分枝鎖状のアルカン及び/又はシクロアルカンの異性体混合物である。
【0061】
さらに、酢酸n−ブチル、酢酸エチル、酢酸1−メトキシ−2−プロピル、酢酸2−メトキシエチル、2−ブタノン、イソブチルメチルケトン並びにそれらの混合物、特に前記の芳香族炭化水素混合物との混合物が好ましい。
【0062】
そのような混合物は、5:1〜1:5の体積比で、好ましくは4:1〜1:4の体積比で、特に好ましくは3:1〜1:3の体積比で及び極めて特に好ましくは2:1〜1:2の体積比で調製されることができる。
【0063】
好ましい溶剤は、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、イソブチルメチルケトン、2−ブタノン、Solvesso(登録商標)銘柄及びキシレンである。
【0064】
さらに、カーボナートのためには、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水−混合物、アセトン、2−ブタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、エチレンカーボナート又はプロピレンカーボナートが適している。
【0065】
高官能性ポリカーボナートは、本発明の範囲内で、ポリマー骨格を形成するカーボナート基に加えて、末端又は側位にさらに少なくとも3個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個の官能基を有する生成物であると理解されるべきである。官能基は、カーボナート基もしくは塩化カルバモイル基及び/又はOH基である。末端又は側位の官能基の数は、原則的に上限がないが、しかしながら、極めて高い数の官能基を有する生成物は、望ましくない性質、例えば高い粘度又は劣悪な溶解度を有しうる。本発明の高官能性ポリカーボナートは、たいてい500以下の末端又は側位の官能基、好ましくは100以下の末端又は側位の官能基を有する。
【0066】
高官能性ポリカーボナートの製造の際に、生じる最も単純な縮合生成物(以下において縮合生成物(K)と呼ぶ)が平均して、1個のカーボナート基又は塩化カルバモイル基及び1個よりも多いOH基、又は1個のOH基及び1個よりも多いカーボナート基又は塩化カルバモイル基のいずれか、好ましくは平均して、1個のカーボナート基又は塩化カルバモイル基及び少なくとも2個のOH基、又は1個のOH基及び少なくとも2個のカーボナート基又は塩化カルバモイル基のいずれかを有するようにOH基を有する化合物対ホスゲン又はカーボナート(A)の比を調節することが必要である。
【0067】
さらに、ポリカーボナートの性質を細かく調節するために少なくとも1つの二価カルボニル反応性化合物(A1)を使用することが有意義でありうる。これらは、2個のカーボナート基及び/又はカルボキシル基を有するそのような化合物であると理解される。
【0068】
カルボキシル基は、その際に、カルボン酸、カルボン酸塩化物、無水カルボン酸又はカルボン酸エステル、好ましくは無水カルボン酸又はカルボン酸エステル及び特に好ましくはカルボン酸エステルであってよい。
【0069】
そのような二価化合物(A1)が使用される場合には、(A1)対カーボナートもしくはホスゲン(A)の比は、ポリカーボナートの所望の性質に応じて当業者により規定される。通例、1つ又は複数の二価化合物(A1)の量は、合わせて全てのカーボナート/ホスゲン(A)及び化合物(A1)の全量を基準として0〜40mol%である。好ましくは、前記量は0〜35mol%、特に好ましくは0〜25mol%及び極めて特に好ましくは0〜10mol%である。
【0070】
化合物(A1)の例は、ジオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,1−ジメチルエタン−1,2−ジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパン−ジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、1,2−、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキサン)イソプロピリデン、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、ノルボルナンジオール、ピナンジオール、デカリンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−オクタン−1,3−ジオール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールS、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)プロパン、1,1−、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオールのジカーボナート又は塩化ジカルバモイルである。
【0071】
これらは、例えば、これらのジオールを、例えば、前記のカーボナートRO(CO)OR又はクロロ炭酸エステルの過剰量と反応させることによって製造されることができるので、こうして得られたジカーボナートは両側で基RO(CO)−で置換されている。別の可能性は、ジオールをまず最初にホスゲンと反応させてジオールの相応するクロロ炭酸エステルに変換し、引き続いてアルコールと反応させることである。
【0072】
別の化合物(A1)は、ジカルボン酸、ジカルボン酸のエステル、好ましくはメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル又はt−ブチルエステル、特に好ましくはメチルエステル、エチルエステル又はn−ブチルエステルである。
【0073】
そのようなジカルボン酸の例は、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はテトラヒドロフタル酸、スベリン酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、脂肪酸二量体、それらの異性体及び水素化生成物である。
【0074】
カーボナート(A)とジアルコール又はポリアルコール(B)との反応の例で説明される縮合生成物(K)の最も単純な構造は、その際、配置XYm又はYmXとなり、ここでXは、カーボナート基又はカルバモイル基を表し、Yはヒドロキシル基を表し、かつmは通例、1より大きく6まで、好ましくは1より大きく4まで、特に好ましくは1より大きく3までの整数を表す。その際に単独の基として生じる反応性基は、以下に一般的に"フォーカルグループ(fokale Gruppe)"と呼ぶ。
【0075】
例えば、カーボナート及び二価アルコールからの最も単純な縮合生成物(K)の製造の際に、モル反応比が1:1である場合には、一般式(I)により図示されるタイプXYの分子が平均して生じる。
【0076】
【化1】

【0077】
カーボナート及び三価アルコールからの縮合生成物(K)の製造の際に、1:1のモル反応比で、一般式(II)により図示されるタイプXY2の分子が平均して生じる。フォーカルグループはここではカーボナート基である。
【0078】
【化2】

【0079】
同様にモル反応比1:1でのカーボナート及び四価アルコールからの縮合生成物(K)の製造の際に、一般式(III)により図示されるタイプXY3の分子が平均して生じる。フォーカルグループはここではカーボナート基である。
【0080】
【化3】

【0081】
式(I)〜(III)中で、Rは、冒頭に定義された意味を有し、かつR1は、脂肪族又は芳香族の基を表す。
【0082】
さらに、一般式(IV)により図示され、例えばまたカーボナート及び三価アルコールからの縮合生成物(K)の製造が行われることができ、その際に反応比は、モルで2:1である。ここではタイプX2Yの分子が平均して生じ、フォーカルグループはここではOH基である。式(IV)中で、R及びR1は、上記の式(I)〜(III)と同じ意味を有する。
【0083】
【化4】

【0084】
前記成分に加えて二官能性化合物、例えばジカーボナート又はジオールが添加される場合には、例えば一般式(V)に図示されるような連鎖の延長を生じさせる。再びタイプXY2の分子が平均して生じ、フォーカルグループはカーボナート基である。
【0085】
【化5】

【0086】
式(V)中で、R2は脂肪族又は芳香族の基を表し、R及びR1は、前記のように定義されている。
【0087】
複数の縮合生成物(K)も合成に使用されることもできる。この場合に、一方では複数のアルコールもしくは複数のカーボナートが使用されることができる。さらに、使用されるアルコール及びカーボナートもしくはホスゲンの比の選択により、異なる構造の異なる縮合生成物の混合物が得られうる。これは、カーボナートと三価アルコールとの反応の例で例示的に説明することができる。(II)に示されるように、出発製品が比1:1で使用される場合には、分子XY2が得られる。(IV)に示されるように、出発製品が比2:1で使用される場合には、分子X2Yが得られる。1:1〜2:1の比の場合に、分子XY2及びX2Yの混合物が得られる。
【0088】
(A)と(B)との反応による縮合生成物(K)への変換の典型的な反応条件は以下に説明されている:
成分(A)及び(B)の化学量論は一般的に、生じる縮合生成物(K)が、1個のカーボナート基又は塩化カルバモイル基及び1個よりも多いOH基、又は1個のOH基及び1個よりも多いカーボナート基又は塩化カルバモイル基のいずれかを有するように選択される。これは、第一の場合に、1molのカーボナート基:>2molのOH基の化学量論、例えば1:2.1〜8、好ましくは1:2.2〜6、特に好ましくは1:2.5〜4及び極めて特に好ましくは1:2.8〜3.5の化学量論により達成される。
【0089】
第二の場合に、これは、1molよりも多いカーボナート基:<1molのOH基の化学量論、例えば1:0.1〜0.48、好ましくは1:0.15〜0.45、特に好ましくは1:0.25〜0.4及び極めて特に好ましくは1:0.28〜0.35の化学量論により達成される。
【0090】
温度は、アルコールと相応するカルボニル成分との反応に十分であるべきである。通例、ホスゲンとの反応のためには、−20℃〜120℃、好ましくは0〜100℃及び特に好ましくは20〜80℃の温度で十分である。カーボナートの使用の場合に、温度は、60〜180℃、好ましくは80〜160℃、特に好ましくは100〜160℃及び極めて特に好ましくは120〜140℃であるべきである。
【0091】
溶剤として、既に前記の溶剤が考慮の対象となる。好ましい実施態様は、反応を溶剤を用いずに実施することである。
【0092】
個々の成分の添加の順序はたいてい、それほど役割を果たさない。通例、2つの反応相手の過剰量の成分を装入し、かつ不足量の成分を添加することは有意義である。選択的に、2つの成分を反応開始前に互いに混合し、これらの混合物を引き続いて必要な反応温度に加熱することは同様に可能である。
【0093】
式(I)〜(V)に例示的に記載された単純な縮合生成物(K)は、本発明によれば、以下に重縮合生成物(P)と呼ぶ高官能性の重縮合生成物の形成下に、好ましくは分子間で、反応する。縮合生成物(K)及び重縮合生成物(P)への変換は通常、0〜300℃、好ましくは0〜250℃、特に好ましくは60〜200℃の温度で及び極めて特に好ましくは60〜160℃で、バルク(溶剤なし)で又は溶液中で行われる。その際に、一般的に、それぞれの出発物質に対して不活性である全ての溶剤が使用されることができる。好ましくは、有機溶剤、例えば前記の有機溶剤及び特に好ましくはデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド又はソルベントナフサが使用される。
【0094】
好ましい一実施態様において、縮合反応はバルクで実施される。反応の際に遊離する単官能性アルコール又はフェノールROHは、反応の促進のために反応平衡から、例えば蒸留により、場合により減圧で、取り除かれることができる。
【0095】
アルコール又はフェノールの分離は、反応条件下で本質的に不活性なガス流、例えば窒素、水蒸気、二酸化炭素又はまた酸素含有ガス、例えば空気又は希薄気(Magerluft)を導通させることによっても(ストリッピング)、促進されることができる。
【0096】
留去しようとする場合には、通例、反応の際に当該圧力で140℃未満の沸点を有するアルコール又はフェノールROHが遊離するそのようなカーボナートを使用することが推奨される。
【0097】
反応の促進のために、触媒又は触媒混合物が添加されることもできる。適した触媒は、エステル化反応又はエステル交換反応を触媒する化合物、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、好ましくはナトリウム、カリウム又はセシウムの化合物、第三級アミン、グアニジン、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物又は有機ビスマス化合物、さらに、例えば独国特許(DE)第10138216号明細書又は独国特許(DE)第10147712号明細書に記載されているようないわゆる二重金属シアン化物(Doppelmetallcyanid)(DMC)触媒である。
【0098】
好ましくは、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、イミダゾール類、例えばイミダゾール、1−メチルイミダゾール又は1,2−ジメチルイミダゾール、チタン−テトラ−ブチラート、チタンテトライソプロピラート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウラート、スズジオクトアート、ジルコニウムアセチルアセトナート又はそれらの混合物が使用される。
【0099】
触媒の添加は一般的に、使用されるアルコール又はアルコール混合物の量を基準として50〜10000質量ppm、好ましくは100〜5000質量ppmの量で行われる。
【0100】
さらに、適した触媒の添加により、並びに適した温度の選択により、分子間重縮合反応を制御することも可能である。さらに、出発成分の組成を介して及び滞留時間を介して、ポリマー(P)の平均分子量は調節されうる。
【0101】
高められた温度で製造された縮合生成物(K)もしくは重縮合生成物(P)は、室温で通常、より長い期間にわたって、例えば少なくとも6週間にわたって、混濁、沈殿及び/又は粘度上昇を示すことなく安定である。
【0102】
縮合生成物(K)の性質に基づいて、縮合反応から、分岐を有するがしかし架橋を有しない、異なる構造を有する重縮合生成物(P)が生じうることが可能である。さらに、重縮合生成物(P)は、理想的な場合には、フォーカルグループとして1個のカーボナート基又は塩化カルバモイル基及び2個よりも多いOH基、あるいはしかしフォーカルグループとして1個のOH基及び2個よりも多いカーボナート基又は塩化カルバモイル基のいずれかを有する。反応性基の数は、その際に、使用される縮合生成物(K)の性質及び重縮合度からもたらされる。
【0103】
例えば、一般式(II)による縮合生成物(K)は、一般式(VI)及び(VII)で描写される2つの異なる重縮合生成物(P)への三重の分子間縮合により反応することができる。
【0104】
【化6】

【0105】
式(VI)及び(VII)中で、R及びR1は前記のように定義されている。
【0106】
分子間重縮合反応の中断のためには、多様な可能性が存在する。例えば、温度は、反応が停止状態となり、かつ生成物(K)又は重縮合生成物(P)が貯蔵安定である範囲に低下されることができる。これは、通例、60℃未満、好ましくは50℃未満、特に好ましくは40℃未満及び極めて特に好ましくは室温である場合である。
【0107】
さらに、触媒を、塩基性触媒の場合に例えば、酸性成分、例えばルイス酸又は有機又は無機のプロトン酸の添加により、失活させることができる。
【0108】
さらに、反応を、予め冷却された溶剤での希釈により停止することが可能である。このことは、特に、反応混合物の粘度を溶剤の添加により適合させなければならない場合に好ましい。
【0109】
本発明による高官能性の多分岐又は超分岐のポリカーボナートは、通例、50℃未満、好ましくは30℃未満及び特に好ましくは10℃未満のガラス転移温度を有する。
【0110】
OH価は、たいてい100mg KOH/g又はそれ以上、好ましくは150mg KOH/g又はそれ以上である。
【0111】
質量平均モル質量Mwは、たいてい1,000〜150,000、好ましくは2000〜120,000g/molであり、数平均モル質量Mnは、500〜50,000、好ましくは1,000〜40,000g/molである。
【0112】
別の一実施態様において、縮合生成物(K)の分子間反応に基づいて所望の重縮合度を有する重縮合生成物(P)が存在すると同時に、生成物(P)に、反応の中断のために、(P)のフォーカルグループに対して反応性の基を有する生成物が添加されることができる。
【0113】
例えば、フォーカルグループとしてカーボナート基もしくはカルバモイル基の場合に、例えばモノアミン、ジアミン又はポリアミンが添加されることができる。
【0114】
フォーカルグループとしてのヒドロキシル基の場合に、生成物(P)に、例えば、モノイソシアナート、ジイソシアナート又はポリイソシアナート、エポキシド基を有する化合物又はOH基と反応性の酸誘導体が添加されることができる。
【0115】
本発明による高官能性ポリカーボナートの製造はたいてい、0.1mbar〜20barの圧力範囲内で、好ましくは1mbar〜5barで、バッチ運転で、半連続的又は連続的に運転される反応器又は反応器カスケード中で行われる。
【0116】
反応条件の前記の調節により、かつ場合により適した溶剤の選択により、本発明による生成物は、製造後にさらに精製することなくさらに加工されることができる。
【0117】
必要な場合には、反応混合物は、例えば、活性炭又は金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素又はそれらの混合物で、例えば0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜10質量%の量で、例えば10〜100℃、好ましくは20〜80℃及び特に好ましくは30〜60℃の温度で処理することにより脱色されることができる。
【0118】
場合により、反応混合物は、場合により存在している沈殿の除去のためにろ過されることもできる。
【0119】
別の好ましい一実施態様において、生成物はストリッピングされる、すなわち低分子の揮発性化合物が取り除かれる。そのためには、所望の転化度の達成後に、触媒は場合により失活され、かつ低分子の揮発性成分、例えばモノアルコール、フェノール類、カーボナート、塩化水素又は易揮発性のオリゴマー化合物又は環式化合物は、蒸留により、場合によりガス、好ましくは窒素、二酸化炭素又は空気の導通下に、場合により減圧で、除去されることができる。
【0120】
別の好ましい一実施態様において、本発明によるポリカーボナートは、既に反応により含有されている官能基に加えて、別の官能基を含有していてよい。官能化は、その際に、分子量増成の間に又はまたその後に、すなわち実際の重縮合の終了後に行われることができる。
【0121】
分子量増成の前又はその間に、ヒドロキシル基又はカーボナート基に加えて、別の官能基又は官能性構成要素を有する成分を添加する場合には、ランダムに分布され、カーボナート基もしくは塩化カルバモイル基及びヒドロキシル基とは異なる官能性を有するポリカーボナートポリマーが得られる。
【0122】
そのような効果は、例えば、重縮合の間に、ヒドロキシル基、カーボナート基又は塩化カルバモイル基に加えて、別の官能基又は官能性構成要素、例えばメルカプト基、第一級、第二級又は第三級のアミノ基、エーテル基、カルボン酸基又はそれらの誘導体、スルホン酸基又はそれらの誘導体、ホスホン酸基又はそれらの誘導体、シラン基、シロキサン基、アリール基又は長鎖アルキル基を有する化合物の添加により達成されうる。
【0123】
カルバマート基での変性のためには、例えばエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、2−(ブチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−(2′−アミノ−エトキシ)エタノール又はアンモニアの高級アルコキシル化生成物、4−ヒドロキシ−ピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノール−アミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン又はイソホロンジアミンが使用されうる。
【0124】
メルカプト基での変性のためには、例えば、メルカプトエタノールが使用されうる。第三級アミノ基は、例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン又はN,N−ジメチルエタノールアミンの導入により生じうる。エーテル基は、例えば、二官能性又はより高官能性のポリエーテロールの縮合導入により発生されることができる。ジカルボン酸、トリカルボン酸、ジカルボン酸エステル、例えばテレフタル酸ジメチルエステル又はトリカルボン酸エステルの添加により、エステル基が生じうる。長鎖のアルカノール又はアルカンジオールとの反応により、長鎖アルキル基が導入されうる。アルキルジイソシアナート又はアリールジイソシアナートとの反応は、アルキル基、アリール基及びウレタン基を有するポリカーボナートを発生させ、第一級又は第二級のアミンの添加は、ウレタン基又は尿素基の導入をもたらす。
【0125】
その後の官能化は、得られた高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートが、さらに付加的な処理工程(工程c))において、ポリカーボナートのOH基及び/又はカーボナート基又は塩化カルバモイル基と反応させることができる適した官能化試薬と反応させることによって、得られることができる。
【0126】
ヒドロキシル基を有する高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートは、例えば、酸基又はイソシアナート基を有する分子の添加により、変性されることができる。例えば、酸基を有するポリカーボナートは、無水物基を有する化合物との反応により得られることができる。
【0127】
さらに、ヒドロキシル基を含有している高官能性ポリカーボナートは、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドとの反応によっても、高官能性ポリカーボナートポリエーテルポリオールへ変換されることができる。
【0128】
このことは、例えば、水溶性の増大のため又は水乳化能の発生のために有意義でありうる。そのためには、ヒドロキシ基は、少なくとも1つのアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド及び/又はスチレンオキシド、好ましくはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び特に好ましくはエチレンオキシドと反応される。ヒドロキシ基につき、そのためには1〜200、好ましくは2〜200、特に好ましくは5〜100、極めて特に好ましくは10〜100及び特に20〜50のアルキレンオキシド単位が使用される。
【0129】
本発明の好ましい一実施態様は、本発明によるポリカーボナートを少なくとも部分的に、少なくとも1つの単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールと反応させることである。それにより、改善された水乳化能が引き起こされる。
【0130】
単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、適したスターター分子と、ポリアルキレンオキシドとの反応生成物である。
【0131】
一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールの製造のための適したスターター分子は、チオール化合物、一般式
5−O−H
で示されるモノヒドロキシ化合物又は一般式
67N−H
で示される第二級モノアミンであり、
上記式中、
5、R6及びR7は、互いに独立してその都度C1〜C18−アルキル、場合により1つ又はそれ以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1つ又はそれ以上の置換又は非置換のイミノ基により中断されたC2〜C18−アルキル、C6〜C12−アリール、C5〜C12−シクロアルキル又は酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を有している五ないし六員のヘテロ環を表すか、又はR6及びR7は一緒になって不飽和、飽和又は芳香族でありかつ場合により1つ又はそれ以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1つ又はそれ以上の置換又は非置換のイミノ基により中断された環を形成し、その際に挙げた基はその都度、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されていてよい。
【0132】
好ましくはR5、R6及びR7は互いに独立してC1−〜C4−アルキル、すなわちメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル又はt−ブチルであり、特に好ましくはR5、R6及びR7はメチルである。
【0133】
例えば適した一価スターター分子は、飽和モノアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、異性体ペンタノール類、ヘキサノール、オクタノール類及びノナノール類、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、異性体メチルシクロヘキサノール類又はヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシ−メチルオキセタン、又はテトラヒドロフルフリルアルコール;不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、1,1ジメチル−アリルアルコール又はオレイルアルコール、芳香族アルコール、例えばフェノール、異性体クレゾール類又はメトキシフェノール類、芳香脂肪族アルコール、例えばベンジルアルコール、アニスアルコール又はシンナミルアルコール;第二級モノアミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ビス−(2−エチル−ヘキシル)−アミン、N−メチルシクロヘキシルアミン及びN−エチルシクロヘキシルアミン又はジシクロヘキシルアミン、ヘテロ環式第二級アミン、例えばモルホリン、ピロリジン、ピペリジン又は1H−ピラゾール、並びにアミノアルコール、例えば2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジイソプロピル−アミノエタノール、2−ジブチルアミノエタノール、3−(ジメチルアミノ)−1−プロパノール又は1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノールであってよい。
【0134】
アミンでスタートされたポリエーテルの例は、アミノ官能基を有し、メチルキャップされたポリアルキレンオキシドであるいわゆるJeffamine(登録商標) Mシリーズ、例えば、約9:1のプロピレンオキシド(PO)/エチレンオキシド(EO)比及び約600のモル質量を有するM-600 (XTJ-505)、M-1000 (XTJ-506):PO/EO比3:19、モル質量約1000、M-2005 (XTJ-507):PO/EO比29:6、モル質量約2000又はM-2070:PO/EO比10:31、モル質量約2000である。
【0135】
アルコキシル化反応に適しているアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルオキシラン及び/又はスチレンオキシドであり、これらはアルコキシル化反応の際に任意の順序で又は混合物でも使用されることができる。
【0136】
好ましいアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びそれらの混合物であり、エチレンオキシドが特に好ましい。
【0137】
好ましいポリエーテルアルコールは、製造の際に前記の種類の飽和の脂肪族又は環式脂肪族のアルコールがスターター分子として使用されたポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールをベースとするそのようなものである。アルキル基中に炭素原子1〜4個を有する飽和の脂肪族アルコールの使用下に製造されたポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールをベースとするそのようなものが極めて特に好ましい。メタノールでスタートされたポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールが殊に好ましい。
【0138】
一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは統計学的に平均して1分子あたり、通例、アルキレンオキシド単位少なくとも2個、好ましくはエチレンオキシド単位5個を有し、特に好ましくは少なくとも7個、極めて特に好ましくは少なくとも10個及び殊に少なくとも15個である。
【0139】
一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは統計学的に平均して1分子あたり、通例、50個までのアルキレンオキシド単位、好ましくはエチレンオキシド単位を有し、好ましくは45個まで、特に好ましくは40個まで及び極めて特に好ましくは30個までである。
【0140】
一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールのモル質量は、好ましくは4000まで、特に好ましくは2000g/mol以下、極めて特に好ましくは500以上及び殊に1000±200g/molである。
【0141】
それゆえ、好ましいポリエーテルアルコールは、式
5−O−[−Xi−]k−H
で示される化合物であり、
上記式中、
5は前記の意味を表し、
kは、5〜40、好ましくは7〜45及び特に好ましくは10〜40の整数を表し、かつ
i=1〜kのそれぞれXiは互いに独立して、−CH2−CH2−O−、−CH−CH(CH3)−O−、−CH(CH3)−CH2−O−、−CH2−C(CH32−O−、−C(CH32−CH2−O−、−CH2−CHVin−O−、−CHVin−CH2−O−、−CH2−CHPh−O−及び−CHPh−CH2−O−の群から、好ましくは−CH2−CH2−O−、−CH2−CH(CH3)−O−及び−CH(CH3)−CH2−O−の群、及び特に好ましくは−CH−CH2−O−から選択されていてよく、
ここで、Phはフェニルを表し、かつVinはビニルを表す。
【0142】
ポリカーボナートの反応の実施のためには、ポリカーボナート(K)及び/又は(P)は、40〜180℃、好ましくは50〜150℃の温度で、1:1〜100:1、好ましくは1:1〜50:1、特に好ましくは1.5:1〜20:1のカーボナートもしくは塩化カルバモイル/OH当量比の遵守下に互いに反応される。
【0143】
本発明による方法の大きな利点は、その経済性にある。縮合生成物(K)又は重縮合生成物(P)への変換並びにポリカーボナートへの(K)又は(P)とその他の官能基又は構成要素との反応が1つの反応装置中で行われることができ、このことは技術的及び経済的に有利である。
【0144】
本発明による方法により得られる高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートは、例えば、接着促進剤(Haftvermittler)、チキソトロープ剤、流動性向上剤として又は重付加ポリマー又は重縮合ポリマーの製造のための構成要素として、例えば、塗料、被覆、接着剤、シーラント、注型エラストマー又はフォームの製造のための成分として並びに接着剤、印刷インキ、コーティング(Beschichtungen)、フォーム、被覆(Ueberzuegen)及び塗料における、場合によりその他の成分、例えばイソシアナート、エポキシ基を有する結合剤又はアルキド樹脂と共に、結合剤の成分として使用されることができる。
【0145】
本発明の別の好ましい一実施態様において、本発明によるポリカーボナートは、塗料、例えば透明塗料及び上塗塗料のレオロジーの改善のための流動助剤として、使用されることができる。
【0146】
本発明によるポリエステルは、結合剤成分として、例えばコーティング組成物において、場合によりその他のヒドロキシ基又はアミノ基を有する結合剤、例えばヒドロキシ(メタ)アクリラート、ヒドロキシスチリル(メタ)アクリラート、線状又は分枝鎖状のポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボナート、メラミン樹脂又は尿素−ホルムアルデヒド樹脂と共通して、カルボキシ官能基及び/又はヒドロキシ官能基に対して反応性の化合物、例えばイソシアナート、キャップされたイソシアナート、エポキシド及び/又はアミノプラスト、好ましくはイソシアナート、エポキシド又はアミノプラスト、特に好ましくはイソシアナート又はエポキシド及び極めて特に好ましくはイソシアナートと一緒に使用されることができる。
【0147】
イソシアナートは、例えば、少なくとも1.8、好ましくは1.8〜5及び特に好ましくは2〜4の平均NCO官能価を有する脂肪族、芳香族及び環式脂肪族のジイソシアナート及びポリイソシアナート、並びにそれらのイソシアヌラート、オキサジアジントリオン、イミノオキサジアジンジオン、尿素、ビウレット、アミド、ウレタン、アロファナート、カルボジイミド、ウレトンイミン及びウレトジオンである。
【0148】
ジイソシアナートは、好ましくは、炭素原子4〜20個を有するイソシアナートである。常用のジイソシアナートの例は、脂肪族ジイソシアナート、例えばテトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート(1,6−ジイソシアナトヘキサン)、オクタメチレンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、テトラデカメチレンジイソシアナート、リシンジイソシアナートの誘導体、トリメチルヘキサンジイソシアナート又はテトラメチルヘキサンジイソシアナート、環式脂肪族ジイソシアナート、例えば1,4−、1,3−又は1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4′−又は2,4′−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート)、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は2,4−又は2,6−ジイソシアナト−1−メチル−シクロヘキサン並びに芳香族ジイソシアナート、例えば2,4−又は2,6−トルイレンジイソシアナート及びそれらの異性体混合物、m−又はp−キシリレンジイソシアナート、2,4′−又は4,4′−ジイソシアナトジフェニルメタン及びそれらの異性体混合物、1,3−又は1,4−フェニレン−ジイソシアナート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、ジフェニレン−4,4′−ジイソシアナート、4,4′−ジイソシアナト−3,3′−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、1,4−ジイソシアナトベンゼン又はジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアナートである。
【0149】
挙げたジイソシアナートの混合物も存在していてよい。
【0150】
ポリイソシアナートとして、イソシアヌラート基を有するポリイソシアナート、ウレトジオンジイソシアナート、ビウレット基を有するポリイソシアナート、アミド基を有するポリイソシアナート、ウレタン基又はアロファナート基を有するポリイソシアナート、オキサジアジントリオン基又はイミノオキサジアジンジオン基を有するポリイソシアナート、直鎖状又は分枝鎖状のC4〜C20−アルキレンジイソシアナート、全部で炭素原子6〜20個を有する環式脂肪族ジイソシアナート又は全部で炭素原子8〜20個を有する芳香族ジイソシアナートのカルボジイミド変性又はウレトンイミン変性されたポリイソシアナート又はそれらの混合物が考慮に値する。
【0151】
使用可能なジイソシアナート及びポリイソシアナートは好ましくは、ジイソシアナート及びポリイソシアナート(混合物)を基準として、1〜60質量%のイソシアナート基含量(NCO、分子量=42として計算)、好ましくは2〜60質量%及び特に好ましくは10〜55質量%を有する。
【0152】
脂肪族もしくは環式脂肪族のジイソシアナート及びポリイソシアナート、例えば前記の脂肪族もしくは環式脂肪族のジイソシアナート、又はそれらの混合物が好ましい。
【0153】
ヘキサメチレンジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアナート及びジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが特に好ましく、イソホロンジイソシアナート及びヘキサメチレンジイソシアナートが極めて特に好ましく、ヘキサメチレンジイソシアナートが殊に好ましい。
【0154】
さらに好ましくは、
1)イソシアヌラート基を有しており、芳香族、脂肪族及び/又は環式脂肪族のジイソシアナートのポリイソシアナート。この場合に、相応する脂肪族及び/又は環式脂肪族のイソシアナト−イソシアヌラート、及び特にヘキサメチレンジイソシアナート及びイソホロンジイソシアナートをベースとするものが特に好ましい。その際に存在しているイソシアヌラートは、特に、ジイソシアナートの環式三量体であるトリス−イソシアナトアルキル−イソシアヌラートもしくはトリス−イソシアナトシクロアルキル−イソシアヌラート、又はそれらの1よりも多いイソシアヌラート環を有する高級同族体との混合物である。イソシアナト−イソシアヌラートは、一般的に、10〜30質量%、特に15〜25質量%のNCO含量及び2.6〜4.5の平均NCO官能価を有する。
【0155】
2)芳香族、脂肪族及び/又は環式脂肪族に結合されているイソシアナート基、好ましくは脂肪族及び/又は環式脂肪族に結合されているイソシアナート基を有し、かつ特にヘキサメチレンジイソシアナート又はイソホロンジイソシアナートから誘導されるウレトジオンジイソシアナート。ウレトジオンジイソシアナートは、ジイソシアナートの環式二量化生成物である。
【0156】
ウレトジオンジイソシアナートは、本発明による調製物中で、唯一の成分として又はその他のポリイソシアナート、特に1)に挙げられたポリイソシアナートとの混合物で、使用されることができる。
【0157】
3)芳香族、環式脂肪族又は脂肪族に結合されている、好ましくは環式脂肪族又は脂肪族に結合されているイソシアナート基を有し、ビウレット基を有するポリイソシアナート、特にトリス(6−イソシアナトヘキシル)ビウレット又はそれらとその高級同族体とのその混合物。ビウレット基を有するこれらのポリイソシアナートは一般的に、18〜23質量%のNCO含量及び2.8〜4.5の平均NCO官能価を有する。
【0158】
4)芳香族、脂肪族又は環式脂肪族に結合されている、好ましくは脂肪族又は環式脂肪族に結合されているイソシアナート基を有し、ウレタン基及び/又はアロファナート基を有するポリイソシアナート、これらは例えば、過剰量のヘキサメチレンジイソシアナート又はイソホロンジイソシアナートと、一価又は多価のアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノール(ラウリルアルコール)、2−エチルヘキサノール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,3−プロパンジオールモノメチルエーテル、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロドデカノール又は例えば上記でポリエステロールで記載されているような、多価アルコール又はそれらの混合物との反応により得られることができる。ウレタン基及び/又はアロファナート基を有するこれらのポリイソシアナートは一般的に、12〜20質量%のNCO含量及び2.5〜4.5の平均NCO官能価を有する。
【0159】
5)好ましくはヘキサメチレンジイソシアナート又はイソホロンジイソシアナートから誘導される、オキサジアジントリオン基を有するポリイソシアナート。そのようなオキサジアジントリオン基を有するポリイソシアナートは、ジイソシアナート及び二酸化炭素から製造可能である。
【0160】
6)好ましくはヘキサメチレンジイソシアナート又はイソホロンジイソシアナートから誘導される、イミノオキサジアジンジオン基を有するポリイソシアナート。そのようなイミノオキサジアジンジオン基を有するポリイソシアナートは、特別な触媒を用いてジイソシアナートから製造可能である。
【0161】
7)カルボジイミド変性及び/又はウレトンイミン変性されたポリイソシアナート。
【0162】
ポリイソシアナート1)〜7)は、混合物で、場合によりジイソシアナートとの混合物でも、使用されることができる。
【0163】
ジイソシアナート又はポリイソシアナートのイソシアナート基は、キャップされた形で存在していてもよい。NCO基のためのキャップ剤として、例えばオキシム類、フェノール類、イミダゾール類、ピラゾール類、ピラゾリノン類、トリアゾール類、ジケトピペラジン類、カプロラクタム、マロン酸エステル又はZ.W. Wicks, Prog. Org. Coat. 3 (1975) 73 - 99及びProg. Org. Coat 9 (1981), 3 - 28、D.A. Wicks及びZ.W. Wicks, Prog. Org. Coat. 36 (1999), 148 - 172及びProg. Org. Coat. 41 (2001), 1 - 83並びにin Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, XIV/2巻, 61以降, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1963の刊行物に挙げられているような化合物が適している。
【0164】
キャップ剤もしくはブロッキング剤は、その際、イソシアナート基を、いわゆる脱ブロッキング温度未満で遊離イソシアナート基の通常の反応を示さないブロックされた(キャップされたもしくは保護された)イソシアナート基へ変換する化合物であると理解される。ブロックイソシアナート基を有するそのような化合物は、通常、イソシアナート基硬化を介して最終硬化されるデュアルキュアコーティング剤又は粉体塗料において使用される。
【0165】
エポキシド化合物は、分子中に少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、特に好ましくは2〜10個のエポキシド基を有するそのようなものである。
【0166】
例えば、エポキシ化オレフィン、飽和又は不飽和のカルボン酸のグリシジルエステル(例えばグリシジル(メタ)アクリラート)又は脂肪族又は芳香族のポリオールのグリシジルエーテルが考慮に値する。そのような生成物は多数が商業的に販売されている。ビスフェノールA、F又はB型のポリグリシジル化合物及び多官能性アルコール、例えばブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン及びペンタエリトリトールのグリシジルエーテルが特に好ましい。そのようなポリエポキシド化合物の例は、Resolution社のEpikote(登録商標) 812(エポキシド価:約0.67mol/100g)及びEpikote(登録商標) 828(エポキシド価:約0.53mol/100g)、Epikote(登録商標) 1001、Epikote(登録商標) 1007及びEpikote(登録商標) 162 (エポキシド価:約0.61mol/100g)、Bakelite AG社のRuetapox(登録商標) 0162(エポキシド価:約0.58mol/100g)、Ruetapox(登録商標) 0164(エポキシド価:約0.53mol/100g)及びRuetapox(登録商標) 0165(エポキシド価:約0.48mol/100g)、Vantico AG社のAraldit(登録商標) DY 0397(エポキシド価:約0.83mol/100g)である。
【0167】
さらに、活性なメチロール基又はアルキルアルコキシ基、特にメチルアルコキシ基を有する化合物、例えばホルムアルデヒドとアミン、例えばメラミン、尿素等とのエーテル化された反応生成物、フェノール/ホルムアルデヒド付加物、シロキサン又はシラングループ及び無水物が考慮の対象になり、これらは例えば米国特許(US)第5,770,650号明細書に記載されている。
【0168】
工業的に広く行きわたっておりかつ公知である、好ましいアミノプラストの中では、特に好ましくは尿素樹脂及びメラミン樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂又はメラミン−尿素−ホルムアルデヒド樹脂が使用可能である。
【0169】
尿素樹脂として、尿素とアルデヒドとの反応により得ることができ、かつ場合により変性されていてよいそのようなものが適している。
【0170】
尿素として、尿素、N−置換又はN,N′−二置換尿素、例えばN−メチル尿素、N−フェニル尿素、N,N′−ジメチル尿素、ヘキサメチレン二尿素、N,N′−ジフェニル尿素、1,2−エチレン二尿素、1,3−プロピレン二尿素、ジエチレン三尿素、ジプロピレン三尿素、2−ヒドロキシプロピレン二尿素、2−イミダゾリジノン(エチレン尿素)、2−オキサヘキサヒドロピリミジン(プロピレン尿素)又は2−オキソ−5−ヒドロキシヘキサヒドロピリミジン(5−ヒドロキシプロピレン尿素)が適している。
【0171】
尿素樹脂は、場合により、例えば、単官能性又は多官能性のアルコール、アンモニアもしくはアミン(カチオン性に変性された尿素樹脂)と、又は亜硫酸(水素)塩(アニオン性に変性された尿素樹脂)との反応により、部分的に又は完全に変性されていてよく、アルコール変性された尿素樹脂が特に適している。
【0172】
アルコールとして、変性のためには、C1〜C6−アルコール、好ましくはC1〜C4−アルコール及び特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール及びs−ブタノールが考慮の対象となる。
【0173】
メラミン樹脂として、メラミンとアルデヒドとの反応により得ることができ、かつ場合により部分的に又は完全に変性されていてよいそのようなものが適している。
【0174】
アルデヒドとして、特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、イソブチルアルデヒド及びグリオキサールが適している。
【0175】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は、メラミンとアルデヒド、例えば前記のアルデヒド、特にホルムアルデヒドとの反応の反応生成物である。場合により、得られたメチロール基は、前記の一価又は多価のアルコールでのエーテル化により変性される。さらに、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は、前記のようにアミン、アミノカルボン酸又は亜硫酸塩との反応により変性されることもできる。
【0176】
メラミン及び尿素の混合物もしくはメラミン及びフェノールからなる混合物にホルムアルデヒドを作用させることにより、本発明により同様に使用可能なメラミン−尿素−ホルムアルデヒド樹脂もしくはメラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂が生じる。
【0177】
挙げたアミノプラストの製造は、それ自体として知られた方法に従い行われる。
【0178】
特に挙げられる例は、モノマーメラミン樹脂又はポリマーメラミン樹脂及び部分的に又は完全にアルキル化されたメラミン樹脂を含めて、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、例えばメチロール尿素、例えばホルムアルデヒド−尿素樹脂、アルコキシ尿素、例えばブチル化されたホルムアルデヒド−尿素樹脂、しかしまたN−メチロールアクリルアミド乳濁液、イソブトキシメチルアクリルアミド乳濁液、ポリ無水物、例えばポリコハク酸無水物、及びシロキサン又はシラン、例えばジメチルジメトキシシランである。
【0179】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂又はホルムアルデヒド−尿素樹脂のようなアミノプラスト樹脂が特に好ましい。
【0180】
さらに、本発明によるヒドロキシ基含有ポリカーボナートは、α,β−エチレン系不飽和カルボン酸又はそれらの誘導体、例えば(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルで、少なくとも部分的にエステル化もしくはエステル交換されることもできるので、α,β−エチレン系不飽和カルボン酸を有するヒドロキシ基含有ポリエステルのカーボナートが生じ、これらは例えばモノマー又は架橋剤として、放射線硬化可能なコーティング組成物中で使用されることができる。
【0181】
本発明によるポリカーボナートが結合剤として使用可能である塗料は、常用の下塗塗料、水性塗料、本質的には溶剤不含及び水不含の液状下塗塗料(100%系)、本質的には溶剤不含及び水不含の固体下塗塗料(粉体塗料及び顔料着色された粉体塗料)又は本質的には溶剤不含の、場合により顔料着色された粉体塗料分散液(粉末スラリー下塗塗料)であってよい。これらは、熱硬化、放射線硬化又はデュアルキュア硬化可能であってよく、かつ自己架橋性又は外部架橋性であってよい。
【0182】
本発明によるコーティング組成物は、特に、基体、例えば木材、紙、テキスタイル、革、不織布、プラスチック表面、ガラス、セラミック、鉱物質建築材料、例えばセメントモールド(Zement-Formsteine)及びファイバーセメントボード、及び特に金属又はコート金属のコーティングに適している。
【0183】
コーティングのためには、通常、本発明によるコーティング組成物を用いて本来公知の方法でコーティングされ、引き続いて、場合により存在している溶剤の除去のために乾燥され、かつ硬化される。
【0184】
基体のコーティングは、常用の、当業者に公知の方法に従って行われ、その際に、少なくとも1つの本発明によるコーティング組成物を、コーティングすべき基体上に所望の厚さで塗布し、かつ揮発性成分を除去する。この過程は、所望の場合には一度又は何度も繰り返されることができる。基体上への塗布は、公知の方法で、例えば吹付け塗、へら塗、ナイフ塗、刷毛塗、ロール塗、ローラー塗又は流し塗により行われることができる。コーティング厚さは、通例、約3〜1000g/m2及び好ましくは10〜200g/m2の範囲内である。
【0185】
本発明による方法により形成された高官能性の多分岐ポリカーボナートは、反応後に、すなわちさらに変性することなく、ヒドロキシル基、及び/又はカーボナート基又は塩化カルバモイル基と末端基としている。これらは、多様な溶剤中、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水混合物、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸メトキシエチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカーボナート又はプロピレンカーボナート中へ良好に溶解する。
【0186】
本発明は、次の例に基づいてより詳細に説明される。
【0187】
一般的な作業規定:
多官能性アルコール又はアルコール混合物、カーボナート、並びに場合によりその他のモノマー、及び触媒として炭酸カリウム(アルコールの量を基準とした量[質量%])を、第1表によるバッチ化量に従い、撹拌機、還流冷却器及び内部温度計を備えた三つ口フラスコ中に装入し、混合物を140℃に加熱し、この温度で2h撹拌した。反応期間が進行すると共に、その際、反応混合物の温度は、遊離されたモノアルコールの蒸発冷却が始まることにより低下した。目下、還流冷却器を下向性冷却器と交換し、触媒の当量を基準としてリン酸1当量を添加し、モノアルコールを留去し、反応混合物の温度をゆっくりと160℃までに高めた。留去されたアルコールを、冷却された丸底フラス中に捕集し、計量し、転化率を理論的に可能な完全転化に比較して百分率で算出した(第1表参照)。
引き続いて、モノマーのなお存在している残量を除去するために、1hの期間にわたって160℃で乾燥窒素を反応混合物に導通した。その後、反応混合物を室温に冷却した。
【0188】
生成物を、塗料配合物中へ純粋な形で添加するか、又はしかし酢酸ブチルで希釈した。それらについては第2、4及び5表に記載されている。
【0189】
【表1】

【0190】
【表2】

【0191】
TMP=トリメチロールプロパン
EO=エチレンオキシド
PO=プロピレンオキシド
DEC=ジエチルカーボナート
TDME=テレフタル酸ジメチルエステル
IPDC=2,2−イソプロピリデン−ジシクロヘキサノール(水素化されたビスフェノールA)。
【0192】
名称"TMP × 3 EO"は、上記表中で、トリメチロールプロパン1molあたりエチレンオキシド平均3molと反応されている生成物を記載する。
【0193】
n.b.=測定されない
【0194】
本発明による生成物の分析:
ポリカーボナートを、ゲル浸透クロマトグラフィーにより検出器として屈折計を用いて分析した。移動相としてジメチルアセトアミドを使用し、分子量の決定のための標準としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を使用した。
【0195】
ガラス転移温度の決定を、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて行い、二番目の加熱曲線を評価した。
OH価の決定をDIN 53240第2部に従い行った。
【0196】
塗料の製造:
全ての塗料混合物を、イソシアナート基対アルコール基の化学量論比(示数100)を用いて室温で仕込んだ。粘度を酢酸ブチル中で、DIN 4カップ中でISO 2431及びEN 535による20sの流下時間に調節した。塗料を室温で、ボックス型バーコータ(Kastenrakel)を用いて湿潤180μmで基体としての金属薄板上にナイフ塗布した。乾燥後の塗料層厚は、平均して約40μmであった。
【0197】
比較例として、市販原料から得られた塗料を考察した。
【0198】
試験方法:
塗料特性の調査を、23℃及び50%相対空気湿度での恒温恒湿室中での塗装した金属薄板の24時間貯蔵後に行った。
【0199】
調べた全ての塗料は、130℃での硬化後に澄明であり、かつ透明であった。
【0200】
不揮発性含分(nfA):塗料混合物1gを、循環空気乾燥器中で125℃で1時間乾燥させ、初期値(=100%)を基準として残存質量を決定した。
【0201】
流下時間:ISO 2431及びEN 535に基づいてDIN 4カップ中で室温で測定した。糸状の液体の流出が始まってからちぎれるまでの期間が、秒で示されている。
【0202】
DIN EN ISO 1522に基づく、Koenigによる剛体振子[振動の数]。
【0203】
エリクセン耐カッピング:DIN EN ISO 1520によるカッピング試験[mmカッピング]。
【0204】
DIN 53151によるクロスカットを用いる付着性、評点0は最良の評点を表し、評点5は最悪の評点を表す。それについては、Goldberg及びStreitberger、BASF Handbuch Lackiertechnik、Vincentz-Verlag Hannover、2002、p.395も参照。
【0205】
アセトン−往復行程−試験:アセトンに浸漬した綿球を用いて、塗料層が金属薄板にまで摩耗落ちするまで、手で往復行程で摩耗させた。そのために必要な往復行程の数が示されている。100行程で試験を中断した。
【0206】
1%硫酸でのエッチング試験:ピペットを用いて、25μmの滴を勾配炉金属薄板上に添加し、これを勾配炉中で30〜75℃で30分間加熱した。金属薄板をその後、水で洗い流し、乾燥させた。眼でエッチングが確認されることができた最低温度が示されている。
【0207】
硬化温度130℃での塗料調査の結果
一般的に、超分岐ポリカーボナートの使用は、不揮発性含分の増大、匹敵しうる硬さでの弾性の改善及びクロスカットにおけるより良好な付着性をもたらす(第3、6及び7表参照)。さらに、表面の耐クラッチ性及び塗料の化学薬品及び酸に対する抵抗性が改善される(第3表参照)。
【0208】
【表3】

【0209】
Macrynal(登録商標) SM 636、UCB社、ポリアクリラートポリオール、酢酸ブチル中70%、OH価約135mg KOH/g
Vestanat(登録商標) T 1890 L:イソホロンジイソシアナートのイソシアヌラートベースのDegussa社のポリイソシアナート、官能価3〜4、酢酸n−ブチル/Solvesso 100 1:2中70%溶液
Basonat(登録商標) HI 100:1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラートベースのBASF社のポリイソシアナート、官能価3〜4
【表4】

【0210】
【表5】

【0211】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1つ又はそれ以上の縮合生成物(K)を、
(a1)一般式RO[(CO)O]nRの少なくとも1つの有機カーボナート(A)を、少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1つの脂肪族、脂肪族/芳香族又は芳香族のアルコール(B1)と、アルコールROHの脱離下に反応させる[上記式中、Rはその都度互いに独立して炭素原子1〜20個を有する直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族、芳香族/脂肪族又は芳香族の炭化水素基であり、かつ前記基Rは互いに結合されて環を形成していてもよく、かつnは1〜5の整数を表す]か、
又は
(a2)ホスゲン、ジホスゲン又はトリホスゲンを、前記の脂肪族、脂肪族/芳香族又は芳香族のアルコール(B1)と、塩化水素の遊離下に反応させる
のいずれかにより製造し、かつ
b)縮合生成物(K)を分子間反応させて高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートに変換する
ことにより得ることができ、その際、反応混合物中のOH基対ホスゲン又はカーボナートの量比は、縮合生成物(K)が、1個のカーボナート基又は塩化カルバモイル基及び1個よりも多いOH基、又は1個のOH基及び1個よりも多いカーボナート基又は塩化カルバモイル基のいずれかを平均して有するように選択される、
高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートの、流動助剤としての使用。
【請求項2】
塗料、被覆、接着剤、シーラント、注型エラストマー又はフォームにおける、並びに結合剤の成分としての、50℃未満のガラス転移温度を有する請求項1記載の高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートの使用。
【請求項3】
流動助剤、接着促進剤(Haftvermittler)、チキソトロープ剤としてか又は重付加ポリマー又は重縮合ポリマーの製造のための構成要素としての、請求項2記載の高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートの使用。
【請求項4】
高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートが、1,000〜150,000の質量平均モル質量Mwを有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートが、アルコール(B1)に加えて、少なくとも1つの二官能性アルコール(B2)を構成成分として有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
1つ又は複数のアルコール(B2)の量が、合わせて全てのアルコール(B1)及び(B2)の全量を基準として0〜39.9mol%である、請求項5記載の使用。
【請求項7】
高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナートが、カーボナート(A)に加えて、少なくとも1つの二価カルボニル反応性化合物(A1)を構成成分として有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
請求項1記載の少なくとも1つの高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナート並びに任意にさらにブロックされた又はブロックされていないイソシアナート、エポキシ基を有する結合剤又はアルキド樹脂を含有している、コーティング組成物。
【請求項9】
請求項5記載のコーティング組成物を基体上に塗布し、引き続いて、場合により存在している溶剤の除去のために、乾燥させ、かつ硬化させることを特徴とする、基体をコーティングする方法。
【請求項10】
請求項1記載のポリカーボナートを、少なくとも部分的に少なくとも1つの単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールと反応させることを特徴とする、水乳化可能な高官能性、多分岐又は超分岐のポリカーボナート。

【公表番号】特表2008−531781(P2008−531781A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556614(P2007−556614)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060240
【国際公開番号】WO2006/089940
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】