説明

高密度リポタンパク質に関連する血清コレステロールを測定するためのアッセイデバイス中の多孔性および生物学的活性を保持する接着膜

サンプル中のHDL関連コレステロールの濃度を測定するためのアッセイパッド、このパッドを用いるための方法、およびこの方法を実施するための診断アッセイデバイスが記載される。このアッセイパッドは、ポリマーパッドは、ポリマー接着剤または熱積層結合を含む。このアッセイ設計は、上記HDL定量反応またはこの同じサンプルに対して実施されるその他のアッセイに対する、このような除去の使用のために用いられる試薬による妨害を防ぐ。所望であれば、非HDLリポタンパク質の除去およびHDLコレステロールのアッセイが、アッセイの中断なくして実施され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、高密度リポタンパク質(HDL)関連コレステロールアッセイパッド、このパッドを用いる方法、およびこの方法を実施するための診断アッセイデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(2.発明の背景)
血液中に存在するコレステロールの量は、冠状動脈疾患のリスクに関連していることが知られている。コレステロールは、主に、血液中を、タンパク質結合形態で循環する。コレステロールを輸送するタンパク質は、リポタンパク質であり、これらは、それらの密度を基に3つのクラスに分割される。非常に低い密度のリポタンパク質(VLDL)は、肝臓中で合成されそして最終的に低密度リポタンパク質(LDL)に変換されるトリグリセリドリッチのリポタンパク質であり、これは、ヒトにおいて大部分の血漿コレステロールを輸送する。高密度リポタンパク質(HDL)は、トリグリセリドリッチなリポタンパク質の異化、ならびに末梢組織からのコレステロールの除去および肝臓への輸送に関与しているリポタンパク質である。血清HDLレベルと冠状動脈疾患との間の逆の関係が確立されている。特に、HDLと関連する血清コレステロールの比率が低いと、冠状動脈疾患のリスクは増加する。
【0003】
アテローム生成疾患のリスク評価および管理における相対的血清コレステロールレベルの重要性を考慮して、相当な努力が費やされ、HDL、LDL、および総コレステロールならびにトリグリセリドの血清レベルに対する、正常個体および高リスク個体の両方の大集団をスクリーニングしている。高リスク個体の処置の有効性は、種々のリポタンパク質区画におけるコレステロールの血清レベルの定期的試験によってモニターされている。
【0004】
特異的HDLコレステロール試験の1つの方法は、代表的には、Mg2+、Mn2+、またはCa2+のような第2族カチオンの存在下の、硫酸デキストラン、ヘパリン、またはホスホタングステートのようなポリアニオン性化合物による血清中の非HDLリポタンパク質の選択的沈殿を基にしている。沈殿の特異性および程度は、種々の因子に依存し、沈殿試薬のタイプおよび濃度を含む。一般に、血清コレステロール粒子の沈殿の順序は、ポリアニオンの濃度の増加とともに、VLDL、LDL、およびHDLである。HDLの少量のapoE種は、低密度粒子と共沈殿され得るが、HDLは、通常、低密度粒子を完全に沈殿させるヘパリンまたは硫酸デキストランの濃度で可溶性のままである。低密度粒子の選択的沈殿により、HDL血清コレステロールレベルが決定され得る。
【0005】
代表的な脂質アッセイ手順では、小容量の血液が採取され、そして遠心分離されて透明な血漿または血清サンプル流体を生成する。このサンプル流体は、次いで、(a)総血清コレステロール、(b)トリグリセリド、および(c)HDLコレステロールの決定のために、いくつかのアッセイチューブ中でアリコートにされる。HDLサンプルは、上記のように沈殿され、そして低密度粒子は、コレステロール検出の前に濾過または遠心分離によって除去される。次いで、これらサンプルは、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、およびHの存在下で別個の着色産物に酸化され得る色素を含む酵素混合物と反応される。これらチューブは、分光光度計で読み取られ、そして所望の総、HDLおよびLDLコレステロール値が決定され得る。
【0006】
まさに記載された液相コレステロールアッセイで達成され得る精度および信頼性にかかわらず、このアッセイは、広範なスクリーニングでの使用のためには多くの制限を有している。第1に、この方法は、静脈血サンプルを使用し、血液サンプルを採取および分画するため、および個々のアッセイチューブに処理血液をアリコートとするために訓練された技術者を必要とする。(HDL決定のための)少なくとも1つのサンプルチューブは、沈殿剤で処理され、そして沈殿した物質を除去するために、さらに処理されなければならない。これら手順のいくつかは自動化され得るが、この目的のために設計された分析機械は高価であり、そして大病院の外では広く利用可能ではない。
【0007】
本明細書中にそれら各々が参考として援用される、同時所有の米国特許第5,213,964号、同第5,213,965号、同第5,316,196号および同第5,451,370号は、血清コレステロールレベルを測定するための液体アッセイ手順にともなう上記の問題の多くを実質的に克服する方法およびアッセイデバイスを開示している。1つの実施形態では、このデバイスは、LDLおよびVLDL粒子をもまた含む血液サンプル中のHDL関連コレステロールの濃度を測定するために設計されている。このデバイスは、流体サンプルがマトリックスを通じて移動するとき、可溶性リポタンパク質と沈殿したリポタンパク質とを分離し得る篩マトリックスを備える。このマトリックスと関連するリザーバーが、流体サンプルがこのマトリックス中に引かれ、かつそれを通るとき、LDLとVLDLとを選択的に沈殿するための可溶性沈殿剤を放出するように設計されている。これは、この篩マトリックスを通るより速いHDL移動を基に、沈殿したリポタンパク質からのHDL分離を可能にする。上記流体サンプルは、それ故、非HDLリポタンパク質が枯渇し、次いで試験表面に移され、そこで、それはコレステロールについてアッセイされる。
【0008】
上記で参照したデバイスは、液体相アッセイを超える利点を提示するが、沈殿試薬での流れ輸送経路の汚染の可能性を提示する。このような試薬は、HDL定量化、または複数アッセイデバイスのその他の領域で起こるその他のアッセイ化学を妨害し得る。本発明は、これらの問題を取り扱い、かつ克服する。
【0009】
血液サンプル中のHDLコレステロールを測定するためのさらなる方法およびデバイスは、EP 0408223およびEP 0415298(Rittersdorfら)に開示され、これは、以下のステップおよび対応する要素を備える試験片上で実施される連続的アッセイ方法を記載している。血液サンプルは、細胞血液成分を分離するために分離層に付与される。毛細管力または重力により駆動され、サンプルは、可溶性沈殿剤を含むさらなるキャリアを通って流れ、これは、血清サンプル中に溶解した後、このサンプル中に含まれる非HDLリポタンパク質を沈殿する。さらなるキャリア中では、上記の沈殿された成分は、血清サンプルから濾過され、後のHDL定量をそれらが妨害することを防ぐ。同じキャリア中で、サンプルは、HDL定量キャリアに隣接する位置に輸送され、そしてHDL定量ステップが開始されるまで貯蔵される。最後に、サンプルは、HDL定量層に移され、そこで血清サンプル中のHDLコレステロールが、酵素反応によって定量される。
【0010】
このアッセイ設計の欠点は、リザーバーとして機能するキャリアが、沈殿成分または可溶性試薬のサンプル中への移動を可能にし、これが、HDL定量を妨害し得ることである。さらに、血清サンプルの貯蔵の間に、HDLが、キャリア繊維への付着により捕獲され得、沈殿試薬が、さらなる所望されない反応を引き起こし得、そして上記キャリアが、血清サンプルを乾燥することにより凝集するようになり得る。
【0011】
米国特許第5,135,716号(Thakore)は、血液流体サンプル中のHDL定量のためのさらなるデバイスおよび方法を開示している。これらのデバイスでは、流体サンプルが、HDL定量のために、入口ウェルからキャリアに、非破壊経路を通って、連続的に流れる。従って、HDL試験キャリアに入るサンプル容量を制御する、およびHDLアッセイのための環境条件を制御する能力は、制限される。上記いずれのデバイスも、単一の流体サンプルからの種々の分析物の同時アッセイを提供しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、上記に記載した先行技術の欠点を克服するHDLアッセイデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
1つの局面では、本発明は、HDL試験パッドと試薬パッドを結合することによって形成されるアッセイパッドを含み、ここで、このアッセイパッドは、サンプルが、試薬パッドからHDL試験バッドに通過するに十分な多孔度を保持している。このアッセイパッドは、さらに、上記試薬パッドおよびHDL試験パッド上の試薬の生物学的活性を保持している。
【0014】
別の局面では、本発明は、高密度リポタンパク質(HDL)以外のリポタンパク質を含む血液サンプル中のHDLと関連する血清コレステロールを測定するためのアッセイデバイスおよび方法を含む。このデバイスは、サンプル分与アレイ、HDL、HDL濃度がアッセイされ得るHDL試験パッド;およびこの血液サンプルから非HDLを選択的に結合し、かつ除去するに有効な結合試薬を含む試薬パッドを備える。このHDL試験パッドおよび試薬パッドは、接着層により、またはこれらパッドを加熱することにより接合されている。
【0015】
なお別の局面では、本発明は、上記接合されたHDL試験パッドおよび試薬パッドを調製するための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
以下の用語は、他であることが示されなければ、以下の意味を有している。
【0017】
流体が、1つ要素からその他の要素に毛細管作用および/または重力によって移動し得るとき、要素は、別の要素と、「流体連通」にある。これら要素は、直接接触している必要はない;すなわち、上記流体は、その他の要素を通過して介入され得る。
【0018】
「サンプル分与パッド」、「試験パッド」、「HDL試験パッド」、および「試薬パッド」の文脈で用いられるとき、「パッド」は、吸収剤材料の薄い、平坦なマットもしくはクッション、またはその一片を意図する。パッドは、多孔性膜または繊維性細片(strip)のような任意の材料から構成され得、それは、含浸または固定化された試薬を含み得、そしてそれを通り流体が毛細管作用および/または重力により移動し得る。
【0019】
(II.アッセイデバイス)
本発明によるデバイスは図1〜3に示され、これらは、以下に論議される。便宜のため、類似の要素の番号付けは、同様の構造特徴を識別するためにすべての図1〜3で保持される。このデバイスは、代表的には10〜50μlの小容量の血液または血清サンプルを用い、特に、HDLに関連する血清コレステロール(HDL関連コレステロール、または単にHDLコレステロールとも称される)を決定するために設計されている。総コレステロール、トリグリセリド、グルコース、アラニントランスフェラーゼレベル(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、血中尿素窒素(BUN)、またはクレアチニンのようなその他のアッセイは、同じサンプルから同時に決定され得る。HDL関連コレステロールの決定はまた、単に、HDLの決定またはHDLアッセイとも呼ばれ得る。
【0020】
図1〜3を最初に参照して、複数分析物アッセイデバイスの種々の実施形態が示され、図2は分解された様式で示される。図1で最も良く観察されるように、この複数分析物アッイデバイス14は、本体または支持体15を含み、これは、一定量、代表的には、約25〜50μLの間の血液サンプルを受容する寸法およびサイズのウェル16を規定する。このウェルは、随意篩パッド22と流体接触され得、これは、上記支持体の上エッジ中に形成されたノッチ領域20中に保持され得る。この流体接触は直接であり得るか、または図1に示されるデバイスにおけるように、ウェルのベースでプレート中に形成される毛細導管18によって提供される。この支持体は、好ましくは、標準的な鋳型または機械加工方法よって形成される、ウェル、ノッチのある領域および/または毛細管を有する。プラスチックプレートである。
【0021】
領域20に保持される篩パッド22は、サンプルが、このパッドマトックスを通って、この図に示されるように、底から上の方向に移動するとき、(血液細胞を含む)大きな粒子状物質を部分的に除去するように作用する。パッド22は、好ましくは、血液サンプルが上記マトリックスを通じて引かれるとき、表面湿潤によって水性流体を引き、そして血液細胞の移動を遅らすように設計されたガラス繊維状のマトリックス材料から形成される。1つの例示のパッドは、約0.16g/cmの充填密度、および約1mmの厚みを有する、Whatmanから入手可能な、GF/D、PD008、またはF145−02フィルターのようなガラス繊維フィルターである。このパッドは、規定された容量、好ましくは約15〜25μLの間のサンプル流体を吸収するような寸法である。篩パッド22は、レクチン、赤血球細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体、トロンビン、またはイオン交換剤のような、赤血球捕獲試薬をさらに含み得る。1つの実施形態では、上記パッドは、以下にさらに詳細に論議されるように、非HDLリポタンパク質の除去のための試薬を含み得る。
【0022】
上記サンプルは、細長い細片またはサンプル分与アレイ26と接触する。上記篩パッド22は、ウェル16とアレイ26との間でアレイ26と流体接触し得る。好ましい実施形態では、アレイ26は、流体連通している3つ以上の別個の膜から形成される。図2に見られるように、アレイ26が流体連通している3つの膜から形成される実施形態では、中央サンプル付与膜28は、サンプル流体をサンプル回収膜30および32に分与する。このアレイ26は、図示されてはいないが、サンプル付与膜28とサンプル回収膜30との間に配置された1つ以上の試薬膜をさらに備え得る。この試薬膜は、1以上の試薬を含み得る。1つの実施形態では、この試薬膜は、以下にさらに記載されるように、LDLおよびVLDLを選択的に除去するための1つ以上の試薬を含み得る。別の実施形態では、試薬膜は、複数試験のためのサンプルを引く芯(wick)として機能し得る。アレイ26はまた、図2に示されるように、発泡クッション27またはその他の支持体によって支持され得る。アレイ26は、好ましくは、ガラス繊維のマトリックスから形成される複数の膜である。上記マトリックスの充填密度および厚みは、上記サンプル付与膜およびサンプル回収膜に供給されるサンプル流体の容量、例えば、10〜25μLを吸収および分与するようである。このマトリックスは、約0.16g/cmと、4.0g/cmの間の好ましい充填密度を有する。1つの例示的な細片材料は、約0.2g/cmの充填密度おび約0.12mmの厚みを有する、Whatmanから入手可能な、F−165−25Aガラス繊維フィルターである。
【0023】
上記デバイスはさらに、湿潤可能な吸収剤反応試験パッドである、4つ以上の試験パッド64、66、68、および70を含む。特定のアッセイで用いられる各試験パッドは、以下にさらに記載されるように、公知の様式で検出され得るパッド中の分析物依存性変化を生成するために有効な分析物依存性試薬を含む。試験パッドのすべてのまたは任意の完全なサブセットは、特定のアッセイ中で採用され得る。
【0024】
所望であれば、これらの試験パッドは多孔性ポリマー膜であり、好ましくは、約100〜150μmの厚み、および約3mmの側方寸法を有する。各パッドの吸収容量は、好ましくは、約0.5〜1.0μLの間である。1つの実施形態では、いくつかまたはすべての反応パッドは非対照的な膜であり;すなわち、膜は、膜の厚みを横切る多孔度の勾配を有する。
【0025】
1つの実施形態では、試験パッド64は、HDLの存在に応答して、パッド中に変化を生成するために有効な試薬を含むHDL試験パッドである。別の実施形態では、このHDL試験パッド64はまた、HDLレベルをアッセイするための試薬を含むポリマー膜である。1つの例示の細片材料は、Pall Corporation(East Hills、NY)から入手可能なBTS−83非対称ポリスルホン膜である。所望であれば、ペルオキシダーゼのようなHDLアッセイ試薬は、酵素固定化のための周知の方法に従って試験パッド膜に固定化され得る(例えば、米国特許第4,999,287号;米国特許第5,419,902号;Blum、L.J.ら、Anal.Lett.20(2):317〜26(1987);Kiang、S.W.ら、Clin.Chem.22(8):1378〜82(1976);Guilbault、G.G.編、Modern Monographs in Analytical Chemistry、第2巻:Analytical Uses of Immobilized Enzymes(1984);Torchilin、V.P.Progress in Clinical Biochemistry and Medicine、第11巻:Immobilized Enzymes in Medicine(1991)を参照のこと)。
【0026】
試薬パッド74は、上記HDL試験パッド64と接触し、そして非HDLコレステロールの沈殿のための化学薬品を含む。1つの実施形態では、この試薬パッドは、上記HDL試験パッドと同じ材料、すなわち、非対称ポリスルホン膜である。このましい実施形態では、試薬パッド74は、約1μm以下のポアサイズを有する多孔性ポリマー膜から構成される。図1に示されるデバイスでは、試薬パッド74は単一の膜からなるが、本発明はまた、複数、すなわち約6までの積み上げられた膜の使用を企図し、そこでは、少なくとも1つ、そして好ましくは各々の膜か、非HDLリポタンパク質を結合するために試薬を含む。
【0027】
上記試薬パッドは、好ましくは、約100〜150μmの厚み、約3×6mmの側方寸法、および約0.5〜1.0μLの吸収容量を有する。それは、流体サンプルからLDLおよびVLDL粒子を選択的に除去するのに有効な少なくとも1つの試薬を含む。この試薬は、例えば、抗体、または好ましくは、ポリアニオン性LDL−およびVLDL結合試薬であり得る。当該技術分野で公知であるこのような試薬は、Mg2+、Mn2+、またはCa2+のような第2族カチオンの存在または非存在下の、スルホン化多糖、ヘパリン、およびホスホタングステートを含む。好ましい試薬は、必要に応じて酢酸マグネシウムまたは塩化マグネシウムと組み合わせ、必要に応じて中性pHを維持するよう緩衝化された、50,000〜500,000ダルトンの代表的な分子量を有する、硫酸デキストランのようなスルホン化多糖である。この試薬は、流体サンプルから、非HDLリポタンパク質を結合、および除去するに有効な固定化試薬であり得る。上記試薬パッドは、この試薬パッド内に結合された非HDLリポタンパク質を包括し、そしてそれらがHDL試験パッド64に入ることを防ぐために有効である。1つの実施形態では、HDL試験パッド64から下流に拡散し得る任意の発生過酸化水素を分解するために有効である、カタラーゼのような試薬が、試薬パッド74中に固定化され得る。
【0028】
HDL試験パッド64および試薬パッド74は、実施例6に記載のように、熱単独、または実施例1〜3に記載のように、熱活性化接着剤として溶融され得るアクリル酸コポリマーを用いて一緒に接着され得る。この組合せられたHDL試験パッドおよび試薬パッドは、アッセイパッドと呼ばれる。
【0029】
デバイス14はまた、透明であり得るか、または、ウインドウ、例えばウインドウ76(図2)を有し得る細長い支持体である反応バー60を含む。このウインドウ(単数または複数)は、試験パッド64、66、68、および70が、上記支持体を通して見られることを可能にする。これらのウインドウは、透明材料であり得るか、または単に支持体中の開口であり得る。これら試験パッドおよびアッセイバッドは、上記反応バーに、透明または半透明接着剤材料により、音波溶接により、またはその他の適切な結合方法により取り付けられる。
【0030】
上記反応バーは、支持体15上に、(a)上記デバイスを、試験パッドおよびアッセイパッドが、サンプル分与アレイ、篩パッドまたはウェルから間隔をおいて離れるサンプル分与位置に維持するため、および(b)上記デバイスを、試験パッドおよびアッセイパッドが、サンプル分与アレイ、篩パッドおよびウェルと流体連通にある試験位置に移動するために有効な取り付け手段により取り付けられる。この取り付け手段はまた、このような流体連通を、所望の量のサンプルがアッセイパッドおよび/または試験パッドに入ったのち、および/または所定の接触時間の後、このデバイスを、試験位置から、アッセイパッドおよび/または試験パッドがサンプルウェルと流体連通していない位置(これは、「サンプル分与」位置と同じであり得る)へ移すことによって破壊するために用いられ得る。このような移動は、その内容が本明細書中に参考として援用される共有に係る米国特許第5,114,350号に記載のように、湿潤の程度を反映する、試験パッドの上表面における反射率をモニターすることにより制御され得る。あるいは、パッド材料の吸収能力およびサンプル取り込み速度が既知であるとき、サンプルの量は、単に所定の接触時間を用いることにより十分な正確さで制御され得る。
【0031】
この取り付け手段は、例えば、エラストマーブロック71、72のような、一対の弾力性部材を含み得、これらは、アッセイパッドを、非移動またはサンプル分与位置に向かって付勢するように作用し、そこで、これらパッドは、サンプル分与アレイ、篩パッド、毛細導管またはサンプルウェルから間隔を置いて離れる。図3に示されるように、この弾力性部材の圧縮または解放により、アッセイパッド間の流体連通が選択的に確立かつ分離され得る。この流体連通は、直接接触によるか、または中間要素を通じてであり得る。支持体ブロックは、スプリングまたはピストン様作用により圧縮され得る。あるいは、外部の機械的デバイスは、本体15および/または反応バー60と係合し得、そして1つをその他に向かって移動する。このようなデバイスは、クランプ、ピストン、ステッピングモーター、ウォームギアなどのような従来コンポーネントを含み得る。例示のシステムは、本明細書に記載されるようなアッセイデバイスとの使用のために有利な、内蔵タイプの自動化分析器であるCholestech LDX(登録商標) Analyzerである。
【0032】
さらなる実施形態では、上記HDL試験パッドは、例えば、PCT公開番号WO99/58966(Dobsonら)に記載のようなバイオセンサーを備え、これは、本明細書中に参考として援用される。この文献は、伝導性表面、この伝導性表面を重層する誘電性材料、およびこの誘電層を通じて延びる複数のポアを備えるマイクロスケールのバイオセンサーデバイスを開示している。これらポアの各々は、上記伝導性表面と接触するバイオポリマーを含み、そして化学的応答を電気信号に変換する微小電極として作用し得る。使用において、アッセイされるべき分析物を含む流体は、上記ポアに上記バイオポリマーと接触するように付与される。本発明のHDLアッセイデバイスでは、これは、HDL試験パッド64がサンプルと流体連通している、すなわち、図3に示されるような試験位置にあるとき達成される。
【0033】
上記微小電極ポア内のバイオポリマーは、代表的には、例えば、HDL関連コレステロールの測定のための、コレステロールオキシダーゼのような酵素である。コレステロールは、コレステロールオキシダーゼによって対応するケトンに酸化され、過酸化水素を放出し、これは、次いで、酵素ペルオキシダーゼによって水および酸素に変換され得る。酸素または過酸化水素のいずれかが、次いで、電気化学的に測定され得る。用いられ得る電気化学的方法は、Clark酸素電極におけるように、酸素の還元または過酸化水素の酸化によって生成される電流を測定する電流測定方法、または電圧測定を含む。微小電極におけるサイクリックボルタンメトリーの使用は、種々の分析物の測定について記載されており(例えば、R.J.Forster、Chem.Soc.Rev.289〜297(1994)を参照のこと)、例えば、ドーパミン(Pihelら、Anal.Chem.68(13):2084〜9(1996))およびフラーレン(Soucaze−Guillousら、Anal.Chem.65(6):669〜72(1993))ならびに過酸化水素(Horrocksら、Anal.Chem.65(24):3605〜14(1993);Nowallら、Electroanalysis 9(2):102〜9(1997);Dequaireら、J.Am.Chem.Soc.124(2):240〜53(2002))がある。
【0034】
(III.接着層を用いるアッセイパッドの調製)
図1に見られるように、1つの実施形態では、アッセイパッドは、実施例1〜3に記載されるように、試薬パッド74とHDL試験パッド64との間に接着層80を形成することにより調製される。接着層80によって接合され、試薬パッド74とHDL試験パッド64とは、アッセイパッドと称されるコンポジット構造体を形成する。この接着層は、例えば、周縁シールによって対向するパッドを固定するために十分であることのみが必要であるか、または対向するパッドの全体表面の上に延び得ることが認識される。
【0035】
この接着層は、好ましくは、アクリル酸コポリマーから形成される。このコポリマーは、必ずしもそうである必要はないが、代表的には、用いられるHDLアッセイ試薬の変性温度未満の融点を有し、すなわち、そうでなければ、HDLアッセイ試薬に損傷を与える。1つの例示のコポリマーは、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)である。EAAは、Michelman(Cincinnati OH、約75℃の融点をもつP/N MP 4990R)から異なる粒径分散物として入手可能である。1つの好ましい粒子サイズは、30〜500nmであり、平均粒子サイズは約90nmである。ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、およびポリビニルアルコールを含むその他のポリマーもまた、この接着層としての使用を見出し得る。これらのコポリマーは、架橋され得、そして第2の異なるポリマーとさらに共重合され得る。別の実施形態では、上記接着層は、感圧接着剤またはワックスエマルジョンから形成される。なお別の実施形態では、上記接着層は、本明細書に参考として援用される米国特許第6,596,112号に記載のようなホットメルト接着剤から形成される。上記アッセイパッドが、上記サンプルが試薬パッドからHDL試験パッドに流れるために適正な多孔度を保持する接着層のために任意の物質が用いられ得ることが認識される。
【0036】
上記コンポジットアッセイパッドは、代表的には、上記コポリマーを、しばしば水ベースの溶液である適切な溶媒中に溶解することにより調製される。コポリマーエマルジョンまたは溶液の層が試薬パッド74に付与される。パッドを被覆するための任意の適切な-方法が利用され得、これらパッドをエマルジョン中または溶液に浸漬すること、パッドをスプレーコーティングすること、または芯をもつパッドにポリマー溶液を付与することを含む。パッドは、一方の側面のみ、または両方の側面上にコートされ得る。このパッドは、適切な時間、すなわち、約20分間、50℃で乾燥される。沈殿試薬が、次いで、非対称膜の大ポア(鈍い(dull))側面上に分与される。
【0037】
上記試薬パッドおよびHDL試験パッドが両方とも非対称膜から形成されるとき、この試薬パッドおよびHDL試験パッドは、試薬パッドの小ポア(ピカピカ(shiny))側面が、HDL試験パッドの開放ポア(鈍い(dull))側面に接触するように配向される。
【0038】
上記HDL試験パッド64と試薬パッド74との間のコポリマー接着層は、コートされた試薬パッド74およびHDL試験パッド64に熱および/または圧力を付与することにより形成され、それによって、このコポリマーは、隣接するパッド材料との結合を形成する。これらパッドは、必要な温度および圧力で熱を提供する任意の適切なデバイスを用いて加熱され得る。これらパッドを加熱するための好ましい温度は、約80℃である。任意の適切な積層機械が用いられ得る。
【0039】
試薬パッド上のコポリマーの濃度は、上記アッセイパッドが、上記サンプルが試薬パッドからHDL試験パッドに流れる多孔度を保持するようでなれればならない。接着を提供するためのコポリマーの適正な濃度は、約4.0%〜約10.0%のエマルジョンである。ポリマーコーティングの好ましい濃度は、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%である。1つの好ましいエマルジョンは、5.5%EAAエマルジョンである。
【0040】
上記HDL試薬は、HDL試験パッド64上に、試験パッドを試薬パッドに接着する前または後に任意の適正な方法によって分与され得る。このHDL試薬は、好ましくは、試験パッドを試薬パッドに接着した後、試験パッド上に分与される。
【0041】
(IV.熱を用いるアッセイパッドの調製)
1つの実施形態では、アッセイパッドは、実施例6に記載のように、試薬パッドまたはHDL試験パッドの少なくとも1つを少なくとも部分的に溶融するに十分な温度で付与された熱を用いて、試薬を含む試薬パッド74をHDL試験パッド64に接着することにより調製される。この試薬パッドおよびHDLパッドは、本明細書に参考として援用される米国特許第6,596,112号に記載されるように、約65℃を超えて約220℃まで加熱される。好ましい実施形態では、試薬パッドおよびHDL試験パッドが約165℃を超えて加熱されるとき、これらパッドは、互いに接着するようになる。その他の好ましい実施形態では、試薬パッドおよびHDL試験パッドは、約93℃、121℃、148℃、165℃、200℃、または205℃を超えて加熱される。これらパッドは、上記のように配向される。HDL試薬は、試験パッドを試薬パッドに接着する前、または後にHDL試験パッド上に分与される。好ましい実施形態では、試験パッドが試薬パッドに接着した後、上記HDL試薬が、HDL試験パッド上に分与され、および/または非HDLコレステロールの沈殿のための化学薬品が、試薬パッド上に分与される。特に好ましい実施形態では、HDL試薬および沈殿のための化学薬品の両方が、試験パッドおよび試薬パッドが一緒に接着された後、HDL試験パッドおよび試薬パッド上にそれぞれ分与される。
【0042】
(V.プリントプロセスを用いてアッセイパッド上に試薬を分与すること)
別の実施形態では、食刻されたGravureシリンダーまたはAniloxシリンダーを取り込むプリントプロセスを用いて、1つ以上の試薬が予備積層された膜の対向する側面に付与される。この実施形態では、飽和容量より少ないHDL試薬および沈殿試薬が用いられる。非飽和容量を用いることにより、これら試薬は、それらの個々の膜に閉じ込められ得る。約80ml/1000インチ(80ml/0.645m)の容量が、代表的な飽和容量である。試薬の25〜55ml/1000インチ(25〜55ml/0.645m)の容量が適切であるが、1つの実施形態では、20ml/1000インチ(20ml/0.645m)の試薬が用いられる。沈殿試薬は、このHDL試薬の前または後に付与され得る。このプリンティングプロセスのその他の実施形態では、別個に維持されなければならない2つの成分を含むその他の試薬が、HDL試薬について記載されるのと同様の様式で付与され得る。あるいは、単一の試薬が、単一の積層されていない膜に付与され得る。
【0043】
(VI.アッセイ方法)
操作においては、血液サンプルがウェル16中に配置され、そして篩パッド22を通って吸収され、そこで、赤血球細胞を含む大きな粒子が除去され、そしてそれから、サンプル分与アレイ26に入る。1つの実施形態では、これらのステップは、上記デバイスが、アッセイパッドが、サンプル分与アレイ、篩パッド、毛細導管、またはサンプルウェルと流体連通していないような、「サンプル分与」ステージにある間に起こる。
【0044】
血漿サンプルは、サンプル付与膜28からサンプル回収膜30および32に移動する。血漿サンプルがサンプル回収膜に到達するとき、デバイスは、好ましくは反応バー60を移動することによって、例えば、図3に示されるような試験位置に調節され、アッセイパッドを、サンプル分与アレイとの流体連通に置く。この位置では、サンプル分与アレイ中のサンプル流体は、毛細管流れによって試薬パッド中に引かれる。このサンプル流体は、さらに、毛細管流れによってHDL試験パッド(単数または複数)中に引かれる。上記反応バーは、この位置に、試験パッド(単数または複数)の所望の程度の湿潤が達成されるまで、この位置に保持される。このバーは、次いで、所望であれば移動され、所望の量のサンプル流体がアッセイパッド(単数または複数)に入った後、および/または適切な接触時間の後、サンプル分与アレイとアッセイパッドとの間の流体連通を断絶する。
【0045】
HDL試験パッド64を接触させる前に、サンプル血漿は、別個の試薬パッド74中に含まれる沈殿試薬または結合試薬と、非HDLリポタンパク質が個々のキャリアに結合されるように接触する。このデバイスは、従って、液体相HDLを含むサンプル流体の、これらの要素(例えば、図2)でのHDL試験パッド64への通過を可能にしながら、血清から非HDLリポタンパク質を除去するために有効である。この実施形態の1つの利点は、上記サンプル分与アレイおよび上流要素が非HDL結合試薬を含まないことであり;このような試薬は、試薬パッド74中にのみ存在する。従って、HLD以外の分析物のアッセイにおけるこれらの試薬からの妨害の可能性は排除される。
【0046】
操作の間、図1〜3に示されるような実施形態では、サンプルがパッド74および64を含むHDLアッセイパスを通過するとき、その先導エッジは、非HDLリポタンパク質が反応かつ包括されるパッド74を通って上方方向に、そしてHDL関連コレステロールの測定のために、HDLがその中でアッセイ試薬と反応する隣接試験パッド64に直接通過する。サンプルのさらなる部分は、この時間の間、パッド74と接触することを継続し、そしてパッド64の吸収能力に到達するまで、パッド74からパッド64に同様の様式で進行する。従って、試験パッド64中のHDL関連コレステロールの定量が、試薬パッド74で起こる結合反応と同時に生じる。好ましくは、サンプル分与マトリックスからHDLアッセイ経路(パッド74および64を含む)に移されるサンプル流体の容量は、試験パッド64の吸収能力と等しいかまたはそれより大きく、そして試験パッド64と試薬パッド74の合わせた吸収能力より小さいかまたはそれに等しい。
【0047】
これらの実施形態では、サンプル流体が結合試薬を含む試薬パッド74と接触するとき、後者がHDL試験パッド64と直接接触し、従って、HDL反応の前に、血液サンプルの結合試薬との一時的接触を制限する。サンプル調製およびHDL評価は、従って、別個のステップで実施され、そこでは、サンプル調製は、例えば、細胞血液成分の濾過、そして必要に応じて、血液サンプルの一時的貯蔵、および温度、圧力および環境雰囲気のような試験要求または条件への血液サンプルの適応を含む。血液サンプルの異なる試薬との一時的接触が減少されるので、HDL評価に関する任意の化学的妨害が防がれる。所望であれば、上記アッセイは、試験を支持するために、例えば、周囲雰囲気を調製または環境温度を適応するために、サンプル付与および細胞成分の除去の後ではあるが、結合試薬と接触する前に、所望の時間の間中断され得る。これは、サンプル分与位置にデバイスを維持することにより達成される。この目的のために、必要であれば、サンプル分与マトリックスは、さらにリザーバーとして供するように設計される。
【0048】
上記HDL試験パッドは、HDL関連コレステロールの定量のための試薬を含む。好ましくは、これらは、HDLから遊離のコレステロールを放出するためのコレステロールエステラーゼ、遊離のコレステロールとの反応によりHを生成するためのコレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ならびにペルオキシダーゼおよびHの存在下で独特の着色信号反応産物に変換されるカップルされる色素システムを含む。この試験パッドはまた、上記のように、Hおよび/またはOを電気化学的に定量するために有効なバイオセンサーを含み得る。
【0049】
残りの試験パッド66、68、および70はまた、公知の様式で、目視により、または検出器により光学的に検出され得るパッド中の変化を生成するアッセイ試薬を含む。本発明のデバイスおよび方法の好ましい実施形態では、上記非HDL結合試薬は、サンプル分与アレイまたは篩パッド中ではなく、試薬パッド74中に位置する。この実施形態では、HDL以外の分析物のアッセイで、これら試薬からの妨害の可能性が排除される。
【0050】
好ましくは、これら試験パッドの各々は、酵素を用いた分析物の反応を経由してHを生成するための反応成分を含み;このHは、引き続き、上記のように、基質試薬を着色信号反応産物に変換するか、または電気化学的に測定される。Hの酵素的生成のための種々の基質特異的オキシダーゼ、および着色反応産物を形成するための色素の引き続く酸化を採用する酵素着色反応は周知である。
【0051】
4つ以上の試験パッドを有するデバイスを用いて、HDLコレステロール(HDL)、グルコース、総コレステロール(TC)、トリグリセリド脂質(TRG)、ALT、AST、BUN、および/またはクレアチニンを同時に測定し得る。各パッドは、上記に記載の共通経路成分(ペルオキシダーゼおよびカップルされた色素システム)を、発生したHが、別個の着色信号反応産物を生成するように含む。沈殿試薬または結合試薬に曝されることなく血清に曝される総コレステロール試験パッド、およびHDL試験パッドは、各々、共通経路成分に加え、上記に記載のような、HDL、LDL、およびVLDL粒子を含む血清リポタンパク質から遊離のコレステロール形態にあるエステル化コレステロールを放出するためのコレステロールエステラーゼ、ならびにサンプル流体中の遊離のコレステロールとの反応によりHを生成するためのコレステロールオキシダーゼを含む。グルコースアッセイパッドは、上記共通経路成分に加え、グルコースオキシダーゼを含む。トリグリセリドバッドは、上記共通経路成分に加え、中間体L−グリセロール−3−リン酸を経由して、トリグリセリドからHを生成するために、リパーゼ、L−グリセロールキナーゼ、およびL−グリセロール−3−リン酸オキシダーゼを含む。このTRGパッド中に引かれた血清サンプルは、沈殿試薬または結合試薬に曝されず、そしてそれ故、血清リポタンパク質のすべてを含むので、このTRG信号は、総血清トリグリセリドを表す。
【0052】
参照標準パッドもまた、採用され得る;例えば、本明細書中に参考として援用される、共有に係るの米国特許第5,114,350号に記載のシステムを参照のこと。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は、本発明を示すが、いかなる様式においても、本発明を限定する意図はない。
【0054】
(実施例1:HDL試験パッドの調製)
BTS−83ポリスルホン膜に、77μl/インチの充填容量でHDL試薬を充填し、そして連続ロールプロセスで20分間50℃で乾燥した。以下のHDL試薬を含む試験パッドを調製した:コレステロールオキシダーゼ36.5単位/ml、コレステロールエステラーゼ215単位/ml、ペルオキシダーゼ200単位/ml、4−アミノアンチピリン1.88mg/ml、およびTOOS(3−[エチル(3−メチルフェニル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)12.05mg/ml。例えば、100フィートの長さが、この様式で調製され得、そしてアッセイデバイスに適合するために切断され得る。
【0055】
(実施例2:結合試薬をもつ試薬パッドの調製)
5.5%の濃度でEAA分散物を含む試薬水溶液を、浸漬タンク内でBTS−83ポリスルホン膜に付与し、そして連続ロールプロセスで20分間50℃で乾燥した。次いで、1〜5mg/mlの硫酸デキストラン(500,000MW)および35mMのMg(OAc)を含む試薬水溶液を、上記膜の1つの表面上への試薬を計測するためにシリンジポンプを用いて、同じ膜上に分散した。例えば、100フィートの長さが、この様式で調製され得、そしてアッセイデバイスに適合するために切断され得る。
【0056】
(実施例3:アッセイパッドの調製)
HDL試験パッドおよび試薬パッドを、それぞれ、実施例1および2に従って、調製した。これらパッドは配向されて、試薬パッドのピカピカの側面(小ポアサイズ)を有する層は、HDL試験パッドの鈍いまたは開放ポア側面に接触している。これら2つの膜は、これら膜を80℃に20秒間連続ロールプロセスで加熱した積層機械を通過させた。
【0057】
(実施例4:代表的なアッセイ手順)
代表的なアッセイを、本質的に実施例3に記載のように調製されたアッセイパッドを用い、LDX(登録商標)分析器中で実施した。接着されたパッドのセクションを、反応膜サイズに手で切断し、そして反応バーに接着した。あるいは、積層されたアッセイパッドは、超音波溶接を用いる連続ロールプロセスで反応バーに付与され得る。血清サンプルをサンプルウェル中に充填した。サンプル分与の後、反応バーを、血清がHDL試験パッドを充填するに十分な血清を移動させるに十分な時間である約4秒間、接着されたパッドと接触し、その後、このバーをその元の位置に戻した。色を3分間発色させ、そして反射率をLDX(登録商標)分析器でモニターした。
【0058】
(実施例5:試薬パッド上のアクリル酸コポリマー濃度)
試薬パッド上のEAAの濃度を変動させて膜の多孔度を決定した。試薬パッドは、本質的に実施例2に従って調製した。EAAの系列希釈を、20%溶液で開始して試薬パッドに付与した。これら試薬パッドは、実施例3に従って、HDL試験パッドに接着した。試薬パッドの鈍い側面をEvans blueの希釈水溶液を用いて試験し、HDL試験パッドまで、この試薬パッドを通る着色溶液の透過および/または拡散を決定した。この溶液の容易な透過および/または拡散を可能にしたEAAの最高の濃度は、約10%EAAであった。
【0059】
(実施例6:熱を用いるアッセイパッドの調製)
BTS83の2つの層を、付与される任意の試薬なしで、連続ロールプロセスで一緒に積層する。膜の配向は、実施例3について記載されるようである。硫酸デキストラン(50,000MW)およびMg(OAc)の水溶液を、標準的なグラビアコーター(gravure coater)を用いてこの積層体の開放ポア側面上にコートする。このグラビアコーターは、非飽和容量の試薬をこの積層体の単一層上に分与するよう選択される。乾燥後、HDL試薬は、同様の様式で対向する膜に付与される。これら試薬は、実施例1および2に示されるレベルから濃縮され、付与される減少した容量を補償する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、複数分析物アッセイデバイスの1つの実施形態の側面図である。
【図2】図2は、本発明の1つの実施形態に従って構成された複数分析物アッセイデバイスの分解された形態の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の1つの実施形態による複数分析物アッセイデバイスの部分側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度リポタンパク質(HDL)以外のリポタンパク質を含む血液サンプル中のHDLと関連する血清コレステロールを測定するためのアッセイデバイスであって:
サンプル分与アレイ;
HDL濃度がアッセイされ得るHDL試験パッド;および
該血液サンプルから非HDLを選択的に結合し、かつ除去するに有効な結合試薬を含む試薬パッドを備え、ここで、該HDL試験パッドおよび該試薬パッドが接合されている、デバイス。
【請求項2】
前記HDL試験パッドおよび該試薬パッドが、熱形成結合よって接合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記HDL試験パッドおよび該試薬パッドが、アクリル酸コポリマー接着剤結合によって接合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記アクリル酸コポリマーが、エチレンアクリル酸コポリマーである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記HDL試験パッドまたは前記試薬パッドの少なくとも1つがポリスルホン層から構成される、請求項1〜4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記血液サンプルから、細胞成分を、該サンプルが前記分与サンプルアレイに接触する前に除去するに有効な篩パッドをさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記篩パッドを含むためのカセット本体をさらに備え、該カセット本体が、前記血液サンプルを含むための、かつ該篩パッドと流体連通するウェルを備える、請求項1〜6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記カセット本体に反応バーを取り付けるために有効な取り付け手段を備える反応バーさらに備える、請求項1〜7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記試薬が、結合性ポリアニオン試薬を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記結合性ポリアニオン試薬が、スルホン化多糖を含む、請求項9に記載のデハイス。
【請求項11】
前記HDL試験パッドが、HDLコレステロールの存在下で検出可能な変化を生成する試薬を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
前記変化が、光学的に検出され得る、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記HDL試験パッドが、バイオセンサーを備える、請求項1〜12のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
前記バイオセンサーが酸素または過酸化水素の産生を電気化学的に測定するために有効である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
血清コレステロールを測定するために適したデバイスを調製する方法であって:
試薬パッド、および小ポア側面および開放ポア側面を有する非対称ポリスルホン膜から形成されたHDL試験パッドを提供する工程;
該試薬パッドを、HDL試験パッドと、該試薬パッドの小ポア側面が該HDL試験パッドの開放ポア側面と接触するように配向する工程;
該HDL試験パッドと該試薬パッドとを接着するために加熱する工程;および
該デバイスを形成するために、(i)該試験パッドにHDL試験試薬を、そして(ii)流体サンプルから非HDLを選択的に結合および除去するために有効な試薬を該試薬パッドに付与する工程、を包含する、方法。
【請求項16】
前記加熱が165℃を超える温度である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
血清コレステロールを測定するために適切なデバイスを調製する方法であって:
試薬パッドをアクリル酸コポリマーで被覆する工程;
(i)HDL試験パッドにHDL試験試薬を、そして(ii)流体サンプルから非HDLを選択的に結合および除去するために有効な試薬を該試薬パッドに付与する工程;
該デバイスを形成するために、該HDL試験パッドと該試薬パッドとを接着するために加熱する工程;を包含する、方法。
【請求項18】
前記アクリル酸コポリマーが、エレチンアクリル酸コポリマーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エレチンアクリル酸コポリマーが、約4.0%〜約10.0%のエマルジョンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記被覆する工程の後に、前記試薬パッドを乾燥する工程をさらに包含する、請求項17から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記HDL試験パッドおよび試薬パッドの各々が、小ポア側面および開放ポア側面を有し;該HDL試験パッドと該試薬パッドを、該試薬パッドの小ポア側面が、該HDL試験パッドの開放ポア側面に面するように配向する工程をさらに包含する、請求項17から20のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱工程が、75℃と90℃との間の温度を付与することを包含する、請求項17から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
高密度リポタンパク質(HDL)以外のリポタンパク質を含む血液サンプル中のHDLに関連する血清コレステロールを測定する方法であって:
該サンプルを、(i)HDLコレステロールの検出可能インジケータを有するHDL試験パッド、(ii)該血液サンプルから非HDLを選択的に結合かつ除去するために有効な試薬を含む試薬パッドを含む積層体と接触させる工程を包含し、
ここで、該血液サンプルが、該積層体を、該積層体を通る毛細管作用および/または重力によって通過し、HDL濃度の測定を可能にする、方法。
【請求項24】
前記篩パッドと、前記サンプル分与パッドと間の接触が、所望の量のサンプルが移動したとき断絶する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記試薬が、スルホン化多糖を含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記HDL試験パッドまたは前記試薬パッドの少なくとも1つが、多孔性ポリマー膜を備える、請求項23から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記試薬パッドが複数のスタック層を備え、その少なくとも1つが非HDLを結合するに有効な試薬を含む、請求項23から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記HDL濃度の測定が光学的検出による、請求項23から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記HDL試験パッドがバイオセンサーを備える、請求項23から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記バイオセンサーが、酸素または過酸化水素の産生を電気化学的に測定するために有効である、請求項29に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度リポタンパク質(HDL)以外のリポタンパク質を含む血液サンプル中のHDLと関連する血清コレステロールを測定するためのアッセイデバイスであって:
サンプル分与アレイ;
HDL濃度がアッセイされ得るHDL試験パッド;および
取り付け手段に固定された、該血液サンプルから非HDLを選択的に結合し、かつ除去するに有効な結合試薬を含む試薬パッドを備え、ここで、該HDL試験パッドおよび該試薬パッドが接合され
ここで、該取り付け手段が、該デバイスを、試験位置から、該HDL試験パッドが該サンプル分与アレイと流体連通していない位置に移すために有効である、デバイス。
【請求項2】
前記HDL試験パッドおよび該試薬パッドが、熱形成結合よって接合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記HDL試験パッドおよび該試薬パッドが、アクリル酸コポリマー接着剤結合によって接合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記アクリル酸コポリマーが、エチレンアクリル酸コポリマーである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記HDL試験パッドまたは前記試薬パッドの少なくとも1つがポリスルホン層から構成される、請求項1〜4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記血液サンプルから、細胞成分を、該サンプルが前記サンプル分与アレイに接触する前に除去するに有効な篩パッドをさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記篩パッドを含むためのカセット本体をさらに備え、該カセット本体が、前記血液サンプルを含み、該篩パッドと流体連通するウェルを備える、請求項1〜6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記カセット本体に反応バーを取り付けるために有効な取り付け手段を備える反応バーさらに備える、請求項1〜7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記試薬が、結合性ポリアニオン試薬を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記結合性ポリアニオン試薬が、スルホン化多糖を含む、請求項9に記載のデハイス。
【請求項11】
前記HDL試験パッドが、HDLコレステロールの存在下で検出可能な変化を生成する試薬を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
前記変化が、光学的に検出され得る、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記HDL試験パッドが、バイオセンサーを備える、請求項1〜12のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
前記バイオセンサーが酸素または過酸化水素の産生を電気化学的に測定するために有効である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
血清コレステロールを測定するために適したデバイスを調製する方法であって:
試薬パッド、および小ポア側面および開放ポア側面を有する非対称ポリスルホン膜から形成されたHDL試験パッドを提供する工程;
該試薬パッドを、HDL試験パッドと、該試薬パッドの小ポア側面が該HDL試験パッドの開放ポア側面と接触するように配向する工程;
該HDL試験パッドと該試薬パッドとを接着するために加熱する工程;および
該デバイスを形成するために、(i)該試験パッドにHDL試験試薬を、そして(ii)流体サンプルから非HDLを選択的に結合および除去するために有効な試薬を該試薬パッドに付与する工程、を包含する、方法。
【請求項16】
前記加熱が165℃を超える温度である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
血清コレステロールを測定するために適切なデバイスを調製する方法であって:
試薬パッドをアクリル酸コポリマーで被覆する工程;
(i)HDL試験パッドにHDL試験試薬を、そして(ii)流体サンプルから非HDLを選択的に結合および除去するために有効な試薬を該試薬パッドに付与する工程;
該デバイスを形成するために、該HDL試験パッドと該試薬パッドとを接着するために加熱する工程;を包含する、方法。
【請求項18】
前記アクリル酸コポリマーが、エレチンアクリル酸コポリマーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エレチンアクリル酸コポリマーが、約4.0%〜約10.0%のエマルジョンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記被覆する工程の後に、前記試薬パッドを乾燥する工程をさらに包含する、請求項17から19のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項21】
前記HDL試験パッドおよび試薬パッドの各々が、小ポア側面および開放ポア側面を有し;該HDL試験パッドと該試薬パッドを、該試薬パッドの小ポア側面が、該HDL試験パッドの開放ポア側面に面するように配向する工程をさらに包含する、請求項17から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱工程が、75℃と90℃との間の温度を付与することを包含する、請求項17から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
高密度リポタンパク質(HDL)以外のリポタンパク質を含む血液サンプル中のHDLに関連する血清コレステロールを測定する方法であって:
該サンプルを、(i)HDLコレステロールの検出可能インジケータを有するHDL試験パッド、(ii)該血液サンプルから非HDLを選択的に結合かつ除去するために有効な試薬を含む試薬パッドを含む積層体と接触させる工程を包含し、
ここで、該血液サンプルが、該積層体を、該積層体を通る毛細管作用および/または重力によって通過し、HDL濃度の測定を可能にする、方法。
【請求項24】
前記篩パッドと、前記サンプル分与パッドと間の接触が、所望の量のサンプルが移動したとき断絶する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記試薬が、スルホン化多糖を含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記HDL試験パッドまたは前記試薬パッドの少なくとも1つが、多孔性ポリマー膜を備える、請求項23から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記試薬パッドが複数のスタック層を備え、その少なくとも1つが非HDLを結合するに有効な試薬を含む、請求項23から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記HDL濃度の測定が光学的検出による、請求項23から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記HDL試験パッドがバイオセンサーを備える、請求項23から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記バイオセンサーが、酸素または過酸化水素の産生を電気化学的に測定するために有効である、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−521823(P2006−521823A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509571(P2006−509571)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/010001
【国際公開番号】WO2004/090555
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(504276727)コレステック コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】