説明

高屈折率透明粒子及びそれを用いた透明複合体

【課題】樹脂に対する含有率が高く、この樹脂の透明性を損なわずに高屈折率を付与することが可能な高屈折率透明粒子及びそれを用いた透明複合体を提供する。
【解決手段】本発明の高屈折率透明粒子は、結晶子径が15nm以下の透明な金属酸化物からなる板状粒子であり、その一主面の外径(D)が500nm以上、この外径(D)と厚み(t)との比(D/t)が5以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率透明粒子及びそれを用いた透明複合体に関し、更に詳しくは、樹脂の高透明性を維持するとともに屈折率を高めるためのフィラー材として用いて好適な高屈折率透明粒子、及び、この高屈折率透明粒子を樹脂中に分散し複合一体化した透明複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂の屈折率を高めるためには、粒子径が20nm程度以下の屈折率の高い透明酸化物粒子を樹脂に混合するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、透明酸化物粒子の表面積が著しく大きく、樹脂の屈折率をより高めるために透明酸化物粒子を増量しようとすると、樹脂の粘性が極めて高くなり、その結果、ハンドリング性がなくなったり、あるいは樹脂成型ができなくなったりすることとなり、自ずと透明酸化物粒子の混合割合が制限され、樹脂の屈折率を高めるには限界があった。
また、透明酸化物粒子を樹脂中に均一に分散させるためには、この透明酸化物粒子の表面の樹脂親和性を向上させるための表面処理を行う必要がある。しかしながら、表面処理剤の屈折率が透明酸化物粒子に比べて低いために、透明酸化物粒子の粒径を20nm以下とすると、この透明酸化物粒子の比表面積が著しく大きくなり、使用する表面処理剤の量が大幅に増加することとなる。その結果、表面処理を行った透明酸化物粒子の実効屈折率が、この透明酸化物粒子自体の屈折率と比べて大幅に低下し、樹脂に対する透明酸化物粒子の添加効果が大幅に減少するという問題点もあった。
【0003】
そこで本願発明者は、これらの問題点を解消するために、透明性を維持しつつ樹脂の高屈折率化を図ることができる高屈折率透明粒子を提案した(特許文献2)。
この高屈折率透明粒子は、結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ100μm以下の金属酸化物からなる透明な球状粒子であり、金属酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム:イットリア添加酸化ジルコニウム、セリア添加酸化ジルコニウム、ジルコン、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ビスマス等のジルコニア−酸化金属化合物:酸化ハフニウムまたはその化合物:酸化チタン:チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸スズ等のチタニア−酸化金属化合物:酸化スズ:酸化ビスマス:酸化ニオブ:ニオブ酸リチウム等の酸化ニオブ化合物:酸化タンタル:タンタル酸カリウム等の酸化タンタル化合物:酸化タングステン:酸化セリウム:酸化ランタン等の希土類酸化物:酸化ガリウム等が用いられている。
【特許文献1】特開2007−99931号公報
【特許文献2】特開2007−311399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の高屈折率透明粒子では、結晶子径を15nm以下と小さくすることでレイリー散乱を防ぎつつ、粒子自体の比表面積を小さくすることで、透明性を維持しつつ樹脂への粒子混合量を増加させて樹脂の高屈折率化を図ることができるものの、やはり、樹脂に対する高屈折率透明粒子の添加量には限界があり、したがって、樹脂の屈折率を増加させるのにも限界があった。
このため、高屈折率透明粒子の添加量をさらに増加させることにより、樹脂の屈折率をさらに向上させることが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、樹脂に対する含有率が高く、この樹脂の透明性を損なわずに高屈折率を付与することが可能な高屈折率透明粒子及びそれを用いた透明複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、樹脂に添加した場合に、樹脂の透明性を維持しつつ高屈折率を付与することが可能な粒子について鋭意検討を重ねた結果、結晶子径が15nm以下の微結晶からなる透明な板状粒子の一主面の外径(D)を500nm以上とし、さらに、この外径(D)と前記板状粒子の厚み(t)との比(D/t)を5以上とすれば、粒子の透明性を維持しつつ、この粒子自体の屈折率が低下するのを抑制することができ、よって粒子の高屈折率を維持することができることを見いだし、さらに、この透明な板状粒子を透明樹脂中に分散させて透明複合体とすれば、透明樹脂の透明性を維持しながら樹脂自体の高屈折率化が可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の高屈折率透明粒子は、結晶子径が15nm以下の微結晶からなる透明な板状粒子であって、その一主面の外径(D)が500nm以上、この外径(D)と厚み(t)との比(D/t)が5以上であることを特徴とする。
【0008】
この高屈折率透明粒子では、前記板状粒子は、屈折率が2.0以上の金属酸化物からなることが好ましい
前記金属酸化物は、Zr、Ti、Sn、Ce、Ta、Nb、Znの群から選択される1種または2種以上の金属を含む酸化物を含有してなることが好ましい。
前記板状粒子の空隙率は10体積%以下であることが好ましい。
前記板状粒子は、その表面が表面処理剤により処理されてなることが好ましい。
【0009】
本発明の透明複合体は、本発明の高屈折率透明粒子を樹脂中に分散してなることを特徴とする。
【0010】
この透明複合体では、前記高屈折率透明粒子は配向分散していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高屈折率透明粒子によれば、結晶子径が15nm以下の微結晶からなる透明な板状粒子の一主面の外径(D)を500nm以上とし、さらに、この板状粒子の一主面の外径(D)を500nm以上、この外径(D)と厚み(t)との比(D/t)を5以上としたので、粒子自体の透明性を維持しつつ、この板状粒子の空隙率を10体積%以下とすることができ、この粒子自体の屈折率が、この粒子を構成する物質本来の屈折率(理論上の屈折率)より低下するのを抑制することができる。したがって、透明性及び高屈折率を両立させた粒子を提供することができる。
【0012】
本発明の透明複合体によれば、本発明の高屈折率透明粒子を樹脂中に分散したので、この透明複合体中における高屈折率透明粒子の含有率を樹脂の特性を損なうことなく高めることができる。さらに、この高屈折率透明粒子を樹脂中に配向分散させれば、この透明複合体中における高屈折率透明粒子の含有率をより高めることができる。したがって、透明複合体自体の透明性を維持した状態で、高屈折率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の高屈折率透明粒子及びそれを用いた透明複合体を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0014】
「高屈折率透明粒子」
本発明の高屈折率透明粒子は、結晶子径が15nm以下の微結晶からなる透明な平板状の板状粒子であって、その一主面の外径(D)が500nm以上、この外径(D)と厚み(t)との比(D/t)が5以上である。
【0015】
ここで、結晶子径を15nm以下としたのは、レイリー散乱が生じるのは結晶子径が20nm〜200nmの場合であるから、結晶子径を15nm以下とすることでレイリー散乱を生じさせないようにすることができるからである。
ここで、結晶子径とは、ラウエカメラ等でデバイ環を測定したり、あるいはX線回折装置にて回折線を測定したときに得られる結晶子の大きさのことであり、下記に示すシェーラー(Sherrer)の式(1)から結晶子の大きさ(Dhkl)を求めることができる。
hkl=K・λ/(βcosθ)……(1)
ただし、Dhkl=は(hkl)に垂直方向の結晶子の大きさ(nm)、λは測定に用いたX線の波長(nm)、βは結晶子の大きさによる回折線の広がり(rad)、θは回折線のブラッグ角(°)である。
また、Kは定数であり、βに半価幅(FWHM)を用いた場合、0.9となる。
【0016】
また、この板状粒子の一主面の外径(D)を500nm以上、この板状粒子の外径(D)と厚み(t)との比(D/t)を5以上としたのは、外径が500nmより小さく、また、外径と板状粒子の厚みとの比が5より小さい場合には、この板状粒子を樹脂中に分散させた場合に、樹脂中での板状粒子の配向性が低下して配向分散が起こり難くなり、したがって、透明複合体中の粒子の含有率を増加させることが難しくなるばかりでなく、板状粒子が配向せずに様々な方向に無秩序に向くことにより光散乱が生じ易くなり、その結果、樹脂の透明性が低下してしまうからである。
【0017】
ここで、板状粒子の一主面の外径(D)とは、板状粒子の各面のうち最も広い面の1つ(一主面)である表面(あるいは裏面)の外周部の径のことであり、光学顕微鏡、金属顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の顕微鏡観察により直接観察することのできる粒子の外径である。
なお、この板状粒子の外形が多角形状の場合には、その外形形状を円形に近似した場合の直径の値を外径とする。
【0018】
この板状粒子の材質としては、屈折率が2.0以上の金属酸化物が好ましい。
このような金属酸化物としては、Zr、Ti、Sn、Ce、Ta、Nb、Znの群から選択される1種または2種以上の金属を含む酸化物を含有していることが好ましく、例えば、酸化ジルコニウム:イットリア添加酸化ジルコニウム、セリア添加酸化ジルコニウム、ジルコン、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ビスマス等のジルコニア−酸化金属化合物:酸化ハフニウムまたはその化合物:酸化チタン:チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸スズ等のチタニア−酸化金属化合物:酸化スズ:酸化ビスマス:酸化ニオブ:ニオブ酸リチウム等の酸化ニオブ化合物:酸化タンタル:タンタル酸カリウム等の酸化タンタル化合物:酸化タングステン:酸化セリウム:酸化ランタン等の希土類酸化物:酸化ガリウム等を挙げることができる。
【0019】
このような板状粒子としては、その中に空隙が形成されていてもよい。
この空隙の大きさは、粒子の透明性と屈折率の観点から20nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以下である。
また、空隙率は10体積%以下が好ましい。
ここで、空隙率を10体積%以下とする理由は、板状粒子の屈折率は、この板状粒子を構成する物質の屈折率×(1−空隙率/100)で表されるため、空隙率が10体積%以下でなければ、板状粒子自体の屈折率が、この板状粒子を構成する物質本来の屈折率(理論上の屈折率)より低下してしまい、十分に高い屈折率を有する高屈折率透明粒子を得ることができないからである。
【0020】
このような板状粒子は、結晶子径が15nm以下という、レイリー散乱を生じる大きさよりも小さい結晶子からなる多結晶体であり、しかも、粒子内部の空隙率が10体積%以下であるから、可視光線領域における光に対して、高い透明性と高い屈折率を有することとなる。
【0021】
この高屈折率透明粒子の製造方法については、特に制限するものではないが、屈折率が2.0以上の透明な金属酸化物からなる板状粒子を作製する場合、以下のような方法がある。
1次平均粒子径が10nm以下かつ分散粒径が20nm程度以下の金属酸化物ナノ粒子分散液をステンレスシートやガラス板上にコーティングして薄膜を形成し、この薄膜を乾燥させた後、基板から剥離し、この薄膜を300℃程度以上の温度にて加熱処理して粒子を緻密化するとともに焼結させることにより、空隙率が小さく、空隙サイズが小さく、結晶子径が15nm以下、外径(D)と厚み(t)との比(D/t)の大きい板状粒子を得ることができる。
【0022】
例えば、酸化ジルコニウム板状粒子を作製する場合、1次平均粒子径が3nmの酸化ジルコニウム粒子の水分散液(酸化ジルコニウム成分:10質量%、住友大阪セメント(株)製)にメタノールを加えて、酸化ジルコニウムを7質量%含む水−メタノール分散液を作製し、この水−メタノール分散液を40℃に加温したステンレスシート上にスプレーコート法により塗布して乾燥させ、得られた板状粒子の薄膜を乾燥させた後、この薄膜を基板から剥離して板状粒子を回収し、次いで、450℃(基板温度)にて焼成することにより、結晶子径が7nm、外径が0.8μm〜5μm、外径と厚みの比が7〜20、空隙率が4%、比表面積が0.8m/gの緻密な酸化ジルコニウム板状粒子を得ることができる。
【0023】
この方法では、焼成温度を高くすることにより、結晶子径をさらに大きく、空隙率をさらに小さくすることが可能である。
また、スプレーコート法に用いる酸化ジルコニウム分散液における酸化ジルコニウムの含有率、分散媒の成分及び組成比、スプレーコート法の各種条件(基板温度、スプレー圧、スプレーノズルサイズ等)により、板状粒子の外径及び外径と厚みの比を制御することが可能である。
【0024】
この板状粒子は、樹脂中に分散させて透明複合体とする際に、樹脂中における分散性を改善する目的で、粒子の表面を表面処理剤により処理してもよい。
表面処理剤としては、板状粒子を構成する金属酸化物の表面との反応性をもつ結合基を有する表面処理剤を用いることができ、例えば、シラザン、カップリング剤、水酸基、アクリル基、カルボキシル基等の金属酸化物の表面と反応性を有する官能基を含有する変性シリコーン類、界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
カップリング剤のうちシラン系カップリング剤としては、シランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、スチリルシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、アクリロキシシランカップリング剤、メタクロキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等が挙げられる。
【0026】
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。
ビニルシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
エポキシシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
スチリルシランカップリング剤としては、p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N―2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
アクリロキシシランカップリング剤としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
メタクロキシシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
メルカプトシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
また、シラン系カップリング剤以外のカップリング剤としては、チタネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、あるいはアルミネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0029】
また、変性シリコーンとしては、末端や側鎖に水酸基、カルボキシ基等を有するエポキシ変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばポリカルボン酸系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0030】
上記の表面処理剤を用いて板状粒子の表面を処理する方法としては、湿式法、乾式法等が挙げられる。
湿式法とは、表面処理剤と板状粒子とを溶媒に投入し混合することにより、板状粒子の表面を処理する方法である。
乾式法とは、表面処理剤と乾燥した板状粒子とをミキサー等の乾式混合機に投入し混合することにより、板状粒子の表面を処理する方法である。
【0031】
「透明複合体」
本発明の透明複合体は、本発明の高屈折率透明粒子を透明な樹脂中に分散してなる複合体である。この透明複合体の形状は、バルク状、フィルム状、シート状等、用途に応じて適宜選択可能である。
樹脂としては、可視光線、近赤外線、近紫外線等の所定の波長帯域の光に対して透明性を有する樹脂であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0032】
このような樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。また、上記のような有機系樹脂以外に、樹脂骨格内に−Si−O−基、−Ti−O−基、−Zr−O−基等の無機骨格を有する樹脂も用いることができる。
【0033】
この透明複合体では、それに含まれる高屈折率透明粒子の種類及び樹脂の種類により屈折率が異なるので、これら高屈折率透明粒子と樹脂との比率を一律に制限することはできないが、この透明複合体を光学部品やその周辺材料として使用する場合、透明複合体の屈折率が1.6〜1.9の範囲になるように高屈折率透明粒子の含有率を制御するとが好ましい。
【0034】
例えば、屈折率が2.2の板状の透明ジルコニア粒子と屈折率が1.5のフェニルシリコーン樹脂を用いて透明複合体を作製する場合、フェニルシリコーン樹脂に対して、板状の透明ジルコニア粒子を50質量部〜85質量部の範囲で含有することにより、屈折率が1.6〜1.9の高屈折率の透明複合体を作製することができる。
このように、板状の高屈折率透明粒子と樹脂との比率は、透明複合体の屈折率を1.6以上とする比率であれば良く、概ね、透明複合体中に含有する高屈折率透明粒子の含有率は40質量%程度以上とすることが好ましい。
【0035】
この透明複合体では、板状の高屈折率透明粒子は配向分散していることが好ましい。
ここで、配向分散とは、本発明における高屈折率透明粒子が板状粒子であることから、この板状粒子の最も広い面(主面)である表面(もしくは裏面)の垂線が板状粒子間で一定に揃った形で樹脂中に分散している状態、すなわち、換言すれば、この透明複合体中に分散している板状の高屈折率透明粒子の表面(もしくは裏面)が、互いに略平行になっている状態をいう。
【0036】
このような形、すなわち板状粒子が特定方向に揃う形で樹脂中に分散した配向分散の場合、球状粒子が樹脂中に分散した場合と比べて、粒子をより緻密に充填することができることから、樹脂の特性を損なうことなく、樹脂に対する粒子の添加量を増加させることが可能となる。
したがって、本発明の透明複合体においては、板状の高屈折率透明粒子を樹脂中に配向分散させたことにより、球状の高屈折率透明粒子を分散させた場合と比べて、透明複合体の屈折率をより上昇させることができる。
【0037】
ところで、板状の高屈折率透明粒子を樹脂中に配向分散させると、得られた透明複合体の特性に異方性が生じる場合がある。
本発明の透明複合体においては、板状の高屈折率透明粒子が配向分散しているため、この板状の高屈折率透明粒子の表面(もしくは裏面)に垂直な方向から光を入射させて測定した場合、透明複合体の透明度(光の透過度)が高く、屈折率も球状粒子を分散させた場合と比べて高くなる。
その理由は、板状の高屈折率透明粒子の厚み方向に光が透過するために、光が感じる粒子径が大きく散乱が発生し難いこと、また、これらの粒子の表面(もしくは裏面)が互いに略平行になるように緻密に充填することにより、球状粒子を用いた場合と比べて粒子間の空隙が少なくなり、よって、粒子間を充填する樹脂の量が少なくなり、相対的に板状の高屈折率透明粒子の含有率が高くなるからである。
【0038】
一方、この板状の高屈折率透明粒子の表面(もしくは裏面)に平行な方向から光を入射させて測定した場合、透明複合体の透明度(光の透過度)は低下し、屈折率は球状粒子を用いた場合と同程度である。
その理由は、板状の高屈折率透明粒子の厚みが薄いために光の散乱が生じ易いこと、また、この方向においては、粒子の充填率を向上させる方法を取っていないために、特に、板状粒子が円板状粒子の場合、粒子の充填率は球状粒子を用いた場合と比べて差異がなく、その結果、粒子間を充填する樹脂の量の削減を図ることができず、板状の高屈折率透明粒子の含有率を高くすることができないからである。
【0039】
この透明複合体は、その形状によって製造方法が異なる。
(1)フィルム状またはシート状の場合
(本来の工程中に、板状の高屈折率透明粒子を配向分散させる工程が含まれる場合)
上記の板状の高屈折率透明粒子(表面処理が施されたものも含む)と、複合化したい樹脂の原料とを高速ミキサーなどの混合分散機にて機械的に混合分散させて混合物を作製し、次いで、この混合物を重合または縮重合または熱溶融させて透明粒子含有樹脂組成物とし、次いで、この透明粒子含有樹脂組成物を1軸または2軸延伸により所定の形状のフィルム状またはシート状に成形することにより、フィルム状またはシート状の透明複合体(透明複合フィルムまたはシート)とする。
【0040】
また、未硬化の樹脂中に上記の板状の高屈折率透明粒子(表面処理が施されたものも含む)を混合・分散させて未硬化の樹脂複合体を作製し、次いで、この未硬化の樹脂複合体をドクターブレード法等により所定の形状のフィルム状またはシート状に成形し、その後、硬化させることで得ることができる。
この場合、未硬化の樹脂としては、未重合あるいは未縮重合等により硬化していない樹脂の他、樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液であってもよい。
【0041】
これらいずれの方法においても、含まれる板状の高屈折率透明粒子は、1軸または2軸延伸、あるいはドクターブレード法等によりフィルム状またはシート状に成形する際に、このフィルムまたはシートの主面に対して平行な方向に配向するので、配向分散性は良好である。特に、板状粒子の外径を500nm以上、外径と厚みの比を5以上とした場合には、通常、配向分散をさせるための特段の工程を必要としない。
【0042】
(2)膜状またはバルク状の場合
(本来の工程中には、板状の高屈折率透明粒子を配向分散させる工程を含まない場合)
上記の板状の高屈折率透明粒子(表面処理が施されたものも含む)と、未硬化の樹脂とを、高速ミキサー、サンドミル、3本ロールミル等の混合分散機により機械的に分散させて未硬化の樹脂複合体を作製する。この未硬化の樹脂複合体には、粘度やハンドリング性を改善する目的で樹脂と相溶性のある溶媒を添加してもよい。
【0043】
次いで、この未硬化の樹脂複合体を基材上に、印刷機、フローコート機などのコーティング装置、あるいはディスペンサー等を用いて塗布することにより、基材上に樹脂複合体の塗膜を形成し、この塗膜に加熱、光照射、電子線照射等を施すことにより硬化させ、膜状の透明複合体(透明複合膜)とする。
あるいは、この未硬化の樹脂複合体を所定の型に注入し、加熱、光照射、電子線照射等を施すことにより硬化させ、バルク状の透明複合体とする。
【0044】
この膜状またはバルク状の場合においては、板状の高屈折率透明粒子を配向分散させる工程を含まないものの、板状の高屈折率透明粒子の外径を500nm以上、外径と厚みの比を5以上とすることで配向性を高めたので、未硬化の樹脂複合体をそのまま硬化させても、粒子の配向分散を生じさせた透明複合体が得られる。なお、この硬化の過程で1軸方向の加圧、あるいは1軸方向ないし2軸方向への延伸等の工程を加えれば、粒子の配向分散性が向上し、充填率も向上するので好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例に用いられる樹脂やカップリング剤としては、次のものを用いた。
エポキシ樹脂 :ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ等量185)
酸無水物硬化剤 :4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸7質量部と
ヘキサヒドロ無水フタル酸3質量部との混合物
カップリング剤A:エポキシ基含有シランカップリング剤 KBM303
(信越化学工業社製)
カップリング剤B:メタクリロキシ含有シランカップリング剤 KBM503
(信越化学工業社製)
シリコーン樹脂A:メチルハイドロジェンシリコーンオイル KF99
(信越化学工業社製)
シリコーン樹脂B:メチルフェニルシリコーンオイル KF54
(信越化学工業社製)
シリコーン樹脂C:メタクリル変性シリコーンオイル X−22−2404
(信越化学工業社製)
【0046】
「実施例1」
(酸化ジルコニウム板状粒子の作製)
1次粒子径が3nmの酸化ジルコニウム粒子を水に分散させた酸化ジルコニウム分散液100g(酸化ジルコニウム:10質量%、住友大阪セメント(株)製)にメタノール100gを加え、酸化ジルコニウム粒子の濃度が5質量%の水−メタノール分散液を調整した。
次いで、この酸化ジルコニウム粒子の水−メタノール分散液を、平均液滴径が10〜30μmのスプレー装置を用いて、垂直に立てた透明石英基板(基板温度:50℃)上にスプレーノズルを走査させながらスプレーを行った。
このスプレーの後、透明石英基板から粉末状の乾燥固形物を回収し、この乾燥固形物を450℃にて60分間焼成し、酸化ジルコニウム板状粒子Aを作製した。
【0047】
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて酸化ジルコニウム板状粒子AのSEM像を撮影し、このSEM像から任意の100個の粒子を選択して個々の粒子の寸法を測定し、これらの測定結果から酸化ジルコニウム板状粒子Aの粒度分布を求めた。その結果、最小粒子の外径が0.8μm(最小値)、その厚みが約0.1μmであり、最大粒子の外径が7.4μm(最大値)、その厚みが約0.3μmであった。なお、形状は円板状に近い板状粒子であった。
【0048】
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Aの回折線をX線回折装置にて測定し、結晶子径を求めた。その結果は7nmであった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Aの空隙率を水銀圧入法により測定した。その結果は5体積%であった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Aの比表面積をガス吸着法(BET法)により測定した。その結果は0.8m/gであった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Aを光学顕微鏡で観察した結果、粒子は透明であった。
以上により、この酸化ジルコニウム板状粒子Aは、結晶子径が7nm、粒子の外径が0.8〜7.4μm、外径と厚みの比が8〜25の緻密かつ透明な板状粒子であった。
【0049】
(酸化ジルコニウム板状粒子の表面処理)
酸化ジルコニウム板状粒子A 100g
カップリング剤A 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、さらにメタノールを加えて過剰のカップリング剤Aを洗浄除去し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1を作製した。
【0050】
(透明複合体の作製)
表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1 75g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
を自公転式攪拌混練機にて混合・攪拌し、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1をエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、さらに自公転式攪拌混練機を用いて混合・攪拌し、未硬化の樹脂複合体を作製した。
次いで、この未硬化の樹脂複合体を離型剤を塗布したガラス板でくみ上げた型の中にディスペンサーを用いて充填し、さらに厚みが1mmになるように荷重をかけた状態で、150℃にて30分間加熱硬化させ、実施例1の透明複合体Aを作製した。
【0051】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Aの全光線透過率および屈折率を次の方法により測定した。
(1)全光線透過率
日本工業規格:JIS K 7361−1:1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠し、ヘーズメータNDH2000(日本電色工業(株)社製)を用いて測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1を含有しないエポキシ樹脂を上記と同様にして加熱硬化させた透明エポキシ樹脂を基準とし、実施例1の透明複合体Aと基準となる透明エポキシ樹脂との透過率差を求めた。
【0052】
(2)屈折率
日本工業規格:JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法」に準拠し、アッベ屈折率計により測定した。
ここでも「全光線透過率」と同様、実施例1の透明複合体Aと基準となる透明エポキシ樹脂との屈折率差を求めた。
【0053】
なお、この透明複合体Aの配向分散に基づく異方性を考慮して、測定方向を、透明複合体Aの厚み方向と長手方向(表面に沿う方向)の2方向とした。また、測定長は1mmとし、厚み方向の測定は、樹脂複合体Aをそのまま用いて測定し、長手方向の測定は、樹脂複合体Aから1mm角に切り出した試料を用いて測定した。
【0054】
「実施例2」
(酸化ジルコニウム板状粒子の作製)
実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム板状粒子Aを作製した。
【0055】
(酸化ジルコニウム板状粒子の表面処理)
実施例1と同様にして、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1を作製した。
【0056】
(透明複合体の作製)
混合比率を、
表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1 450g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
とした他は、実施例1と同様にして、実施例2の透明複合体Bを作製した。
【0057】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Bの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1を含有しないエポキシ樹脂を本実施例と同様にして加熱硬化させた透明エポキシ樹脂を基準とし、実施例2の透明複合体Bと基準となる透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
【0058】
「実施例3」
(酸化ジルコニウム板状粒子の作製)
実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム板状粒子Aを作製した。
【0059】
(酸化ジルコニウム板状粒子の表面処理)
実施例1と同様にして、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1を作製した。
【0060】
(透明複合体の作製)
混合比率を、
表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1 600g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
とした他は、実施例1と同様にして、実施例3の透明複合体Cを作製した。
【0061】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Cの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A1を含有しないエポキシ樹脂を本実施例と同様にして加熱硬化させた透明エポキシ樹脂を基準とし、実施例3の透明複合体Cと基準となる透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
【0062】
「実施例4」
(酸化ジルコニウム板状粒子の作製)
実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム板状粒子Aを作製した。
【0063】
(酸化ジルコニウム板状粒子の表面処理)
酸化ジルコニウム板状粒子A 100g
カップリング剤B 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、さらにメタノールを加えて過剰のカップリング剤Bを洗浄除去し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A2を作製した。
【0064】
(透明複合体の作製)
表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A2 350g
シリコーン樹脂A 60g
シリコーン樹脂B 60g
シリコーン樹脂C 60g
を自公転式攪拌混練機にて混合・攪拌し、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A2をシリコーン樹脂中に分散させた後、硬化触媒として塩化白金酸0.005gを添加し、さらに自公転式攪拌混練機を用いて混合・攪拌し、未硬化の樹脂複合体を作製した。
次いで、この未硬化の樹脂複合体を離型剤を塗布したガラス板でくみ上げた型の中にディスペンサーを用いて充填し、さらに厚みが1mmになるように荷重をかけた状態で、150℃にて30分間加熱硬化させ、実施例4の透明複合体Dを作製した。
【0065】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Dの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子A2を含有しないシリコーン樹脂を本実施例と同様にして加熱硬化させた透明シリコーン樹脂を基準とし、実施例4の透明複合体Dと基準となる透明シリコーン樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
【0066】
「実施例5」
(酸化ジルコニウム板状粒子の作製)
1次粒子径が3nmの酸化ジルコニウム粒子を水に分散させた酸化ジルコニウム分散液100g(酸化ジルコニウム:10質量%、住友大阪セメント(株)製)にメタノール100gを加え、酸化ジルコニウム粒子の濃度が5質量%の水−メタノール分散液を調整した。
次いで、この酸化ジルコニウム粒子の水−メタノール分散液を、平均液滴径が10〜30μmのスプレー装置を用いて、垂直に立てた透明石英基板(基板温度:50℃)上にスプレーノズルを走査させながらスプレーを行った。
ここでは、スプレーノズルと透明石英基板との距離を実施例1に比べて長くとり、基板に付着した時の液滴が実施例1に比べて乾燥するようにすることで、得られる板状粒子の外径/厚さ比を調整した。
このスプレーの後、透明石英基板から粉末状の乾燥固形物を回収し、この乾燥固形物を450℃にて60分間焼成し、酸化ジルコニウム板状粒子Bを作製した。
【0067】
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて酸化ジルコニウム板状粒子BのSEM像を撮影し、このSEM像から任意の100個の粒子を選択して個々の粒子の寸法を測定し、これらの測定結果から酸化ジルコニウム板状粒子Bの粒度分布を求めた。その結果、最小粒子の外径が0.7μm(最小値)、その厚みが約0.15μmであり、最大粒子の外径が6.5μm(最大値)、その厚みが約0.4μmであった。なお、形状は円板状に近い板状粒子であった。
【0068】
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Bの回折線をX線回折装置にて測定し、結晶子径を求めた。その結果は7nmであった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Bの空隙率を水銀圧入法により測定した。その結果は6体積%であった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Bの比表面積をガス吸着法(BET法)により測定した。その結果は1.4m/gであった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Bを光学顕微鏡で観察した結果、粒子は透明であった。
【0069】
以上により、この酸化ジルコニウム板状粒子Bは、結晶子径が7nm、粒子の外径が0.7〜6.5μm、外径と厚みの比が5〜18の緻密かつ透明な板状粒子であった。
なお、外径が最大の板状粒子(6.5μm径−0.4μm厚)のものでは外径と厚みの比は16となるが、外径が最大径より小さいもので厚みがより薄いものでは、例えば外径5.5μmのもので厚み0.3μmの粒子があるので、外径と厚みの比の最大値は18となる。このように、外径と厚みの比の最大値が、外径が最大の粒子における外形と厚みの比より大きくなる場合があることは、他の実施例や比較例の場合も同様である。
【0070】
(酸化ジルコニウム板状粒子の表面処理)
酸化ジルコニウム板状粒子B 100g
カップリング剤A 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、さらにメタノールを加えて過剰のカップリング剤Aを洗浄除去し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理酸化ジルコニウム板状粒子B1を作製した。
【0071】
(透明複合体の作製)
表面処理酸化ジルコニウム板状粒子B1 450g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
を自公転式攪拌混練機にて混合・攪拌し、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子B1をエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、さらに自公転式攪拌混練機を用いて混合・攪拌し、未硬化の樹脂複合体を作製した。
次いで、この未硬化の樹脂複合体を離型剤を塗布したガラス板でくみ上げた型の中にディスペンサーを用いて充填し、さらに厚みが1mmになるように荷重をかけた状態で、150℃にて30分間加熱硬化させ、実施例5の透明複合体Eを作製した。
【0072】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Eの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子B1を含有しないエポキシ樹脂を本実施例と同様にして加熱硬化させた透明エポキシ樹脂を基準とし、実施例5の透明複合体Eと基準となる透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
【0073】
「実施例6」
(酸化チタン板状粒子の作製)
4塩化チタン溶液をアルカリでにて加水分解した後、酸にてpH調整することにより得られた1次粒子径が3nmの酸化チタンゾル水分散液100g(酸化チタン:10質量%)にメタノール100gを加え、酸化チタン粒子の濃度が5質量%の水−メタノール分散液を調整した。
次いで、この酸化チタン粒子の水−メタノール分散液を、平均液滴径が10〜30μmのスプレー装置を用いて、垂直に立てた透明石英基板(基板温度:50℃)上にスプレーノズルを走査させながらスプレーを行った。
このスプレーの後、透明石英基板から粉末状の乾燥固形物を回収し、この乾燥固形物を500℃にて60分間焼成し、酸化チタン板状粒子Cを作製した。
【0074】
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて酸化チタン板状粒子CのSEM像を撮影し、このSEM像から任意の100個の粒子を選択して個々の粒子の外径を測定し、これらの測定結果から酸化チタン板状粒子Cの粒度分布を求めた。その結果、最小粒子の外径が1.2μm(最小値)、その厚みが約0.2μmであり、最大粒子の外径が9.5μm(最大値)、その厚みが約0.5μmであった。なお、形状は円板状に近い板状粒子であった。
【0075】
また、この酸化チタン板状粒子Cの回折線をX線回折装置にて測定し、結晶子径を求めた。その結果は7nmであった。
また、この酸化チタン板状粒子Cの空隙率を水銀圧入法により測定した。その結果は4体積%であった。
また、この酸化チタン板状粒子Cの比表面積をガス吸着法(BET法)により測定した。その結果は0.7m/gであった。
また、この酸化チタン板状粒子Cを光学顕微鏡で観察した結果、粒子は透明であった。
以上により、この酸化チタン板状粒子Cは、結晶子径が7nm、粒子の外径が1.2〜9.5μm、外径と厚みの比が6〜21の緻密かつ透明な板状粒子であった。
【0076】
(酸化チタン板状粒子の表面処理)
酸化チタン板状粒子C 100g
カップリング剤A 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、さらにメタノールを加えて過剰のカップリング剤Aを洗浄除去し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理酸化チタン板状粒子C1を作製した。
【0077】
(透明複合体の作製)
表面処理酸化チタン板状粒子C1 225g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
を自公転式攪拌混練機にて混合・攪拌し、表面処理酸化チタン板状粒子C1をエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、さらに自公転式攪拌混練機を用いて混合・攪拌し、未硬化の樹脂複合体を作製した。
次いで、この未硬化の樹脂複合体を離型剤を塗布したガラス板でくみ上げた型の中にディスペンサーを用いて充填し、さらに厚みが1mmになるように荷重をかけた状態で、150℃にて30分間加熱硬化させ、実施例6の透明複合体Fを作製した。
【0078】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Fの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化チタン板状粒子C1を含有しないエポキシ樹脂を本実施例と同様にして加熱硬化させた透明エポキシ樹脂を基準とし、実施例6の透明複合体Fと基準となる透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
【0079】
「比較例1」
(酸化ジルコニウム板状粒子の作製)
1次粒子径が20nmの酸化ジルコニウム板状粉末(第1希元素社製)10gを、水95gとメタノール95gを混合した水−メタノール溶液に加えて超音波分散処理を行い、酸化ジルコニウム板状粒子の濃度が5質量%の水−メタノール分散液を調整した。
次いで、この酸化ジルコニウム板状粒子の水−メタノール分散液を、平均液滴径が10〜30μmのスプレー装置を用いて、垂直に立てた透明石英基板(基板温度:50℃)上にスプレーノズルを走査させながらスプレーを行った。
このスプレーの後、透明石英基板から粉末状の乾燥固形物を回収し、この乾燥固形物を450℃にて60分間焼成し、酸化ジルコニウム板状粒子Dを作製した。
【0080】
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて酸化ジルコニウム板状粒子DのSEM像を撮影し、このSEM像から任意の100個の粒子を選択して個々の粒子の外径を測定し、これらの測定結果から酸化ジルコニウム板状粒子Dの粒度分布を求めた。その結果、最小粒子の外径が0.8μm(最小値)、その厚みが約0.1μmであり、最大粒子の外径が7.4μm(最大値)、その厚みが約0.3μmであった。なお、形状は円板状に近い板状粒子であった。
【0081】
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Dの回折線をX線回折装置にて測定し、結晶子径を求めた。その結果は24nmであった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Dの空隙率を水銀圧入法により測定した。その結果は16体積%であった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Dの比表面積をガス吸着法(BET法)により測定した。その結果は36m/gであった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Dを光学顕微鏡で観察した結果、粒子は白濁しており、不透明なものであった。
以上により、この酸化ジルコニウム板状粒子Dは、結晶子径が24nm、粒子の外径が0.8〜7.4μm、外径と厚みの比が8〜25の不透明な板状粒子であった。
【0082】
(酸化ジルコニウム板状粒子の表面処理)
酸化ジルコニウム板状粒子D 100g
カップリング剤A 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、さらにメタノールを加えて過剰のカップリング剤Aを洗浄除去し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理酸化ジルコニウム板状粒子D1を作製した。
【0083】
(透明複合体の作製)
表面処理酸化ジルコニウム板状粒子D1 75g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
を自公転式攪拌混練機にて混合・攪拌し、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子D1をエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、さらに自公転式攪拌混練機を用いて混合・攪拌し、未硬化の樹脂複合体を作製した。
次いで、この未硬化の樹脂複合体を離型剤を塗布したガラス板でくみ上げた型の中にディスペンサーを用いて充填し、さらに厚みが1mmになるように荷重をかけた状態で、150℃にて30分間加熱硬化させ、比較例1の透明複合体Gを作製した。
【0084】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Gの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子D1を含有しないエポキシ樹脂を本比較例と同様にして加熱硬化させた透明エポキシ樹脂を基準とし、比較例1の透明複合体Gと基準となる透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
【0085】
「比較例2」
(酸化ジルコニウム板状粒子の作製)
比較例1と同様にして、酸化ジルコニウム板状粒子Dを作製した。
【0086】
(酸化ジルコニウム板状粒子の表面処理)
酸化ジルコニウム板状粒子D 100g
カップリング剤B 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、さらにメタノールを加えて過剰のカップリング剤Bを洗浄除去し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理酸化ジルコニウム板状粒子D2を作製した。
【0087】
(透明複合体の作製)
表面処理酸化ジルコニウム板状粒子D2 350g
シリコーン樹脂A 60g
シリコーン樹脂B 60g
シリコーン樹脂C 60g
を自公転式攪拌混練機にて混合・攪拌し、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子D2をシリコーン樹脂中に分散させた後、硬化触媒として塩化白金酸0.005gを添加し、さらに自公転式攪拌混練機を用いて混合・攪拌し、未硬化の樹脂複合体を作製した。
次いで、この未硬化の樹脂複合体を離型剤を塗布したガラス板でくみ上げた型の中にディスペンサーを用いて充填し、さらに厚みが1mmになるように荷重をかけた状態で、150℃にて30分間加熱硬化させ、比較例2の透明複合体Hを作製した。
【0088】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Hの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム板状粒子D2を含有しないシリコーン樹脂を本比較例と同様にして加熱硬化させた透明シリコーン樹脂を基準とし、比較例2の透明複合体Hと基準となる透明シリコーン樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
【0089】
さらに、実施例1〜6との比較のために、以下の比較例3〜5では、板状粒子を用いない透明複合体を作製し、評価を行った。
「比較例3」
(酸化ジルコニウム球状粒子の作製)
1次粒子径が3nmの酸化ジルコニウム粒子を水に分散させた酸化ジルコニウム分散液(酸化ジルコニウム:5質量%、住友大阪セメント(株)製)を、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥させ、球状の乾燥物を作製した。
次いで、この乾燥物を450℃にて60分間焼成し、酸化ジルコニウム球状粒子Eを作製した。
【0090】
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて酸化ジルコニウム球状粒子EのSEM像を撮影し、このSEM像から任意の100個の粒子を選択して個々の粒子の外径を測定し、これらの測定結果から酸化ジルコニウム球状粒子Eの粒度分布を求めた。その結果、最小粒子径が1.5μm(最小値)、最大粒子径が40μm(最大値)であった。なお、形状は、ほぼ球状であった。
【0091】
また、この酸化ジルコニウム球状粒子Eの回折線をX線回折装置にて測定し、結晶子径を求めた。その結果は6nmであった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Eの空隙率を水銀圧入法により測定した。その結果は4体積%であった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Eの比表面積をガス吸着法(BET法)により測定した。その結果は0.8m/gであった。
また、この酸化ジルコニウム板状粒子Eを光学顕微鏡で観察した結果、粒子は透明であった。
以上により、この酸化ジルコニウム板状粒子Eは、結晶子径が6nm、粒子径が1μm以上かつ40μm以下の緻密かつ透明な球状粒子であった。
【0092】
(酸化ジルコニウム球状粒子の表面処理)
酸化ジルコニウム球状粒子E 100g
カップリング剤A 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、さらにメタノールを加えて過剰のカップリング剤Aを洗浄除去し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理酸化ジルコニウム球状粒子E1を作製した。
【0093】
(透明複合体の作製)
表面処理酸化ジルコニウム球状粒子E1 450g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
を自公転式攪拌混練機にて混合・攪拌し、表面処理酸化ジルコニウム球状粒子E1をエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、さらに自公転式攪拌混練機を用いて混合・攪拌し、未硬化の樹脂複合体を作製した。
次いで、この未硬化の樹脂複合体を離型剤を塗布したガラス板でくみ上げた型の中にディスペンサーを用いて厚みが1mmになるように充填し、荷重をかけない状態で、150℃にて30分間加熱硬化させ、比較例3の透明複合体Jを作製した。
【0094】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Jの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム球状粒子E1を含有しないエポキシ樹脂を本比較例と同様にして加熱硬化させた透明エポキシ樹脂を基準とし、比較例3の透明複合体Jと基準となる透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
【0095】
「比較例4」
(酸化ジルコニウム球状粒子の作製)
比較例3と同様にして、酸化ジルコニウム球状粒子Eを作製した。
【0096】
(酸化ジルコニウム球状粒子の表面処理)
比較例3と同様にして、表面処理酸化ジルコニウム球状粒子E1を作製した。
【0097】
(透明複合体の作製)
表面処理酸化ジルコニウム球状粒子E1 600g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
を自公転式攪拌混練機にて混合・攪拌し、表面処理酸化ジルコニウム球状粒子E1をエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、さらに自公転式攪拌混練機を用いて混合・攪拌し、未硬化の樹脂複合体を作製した。
次いで、この未硬化の樹脂複合体を離型剤を塗布したガラス板でくみ上げた型の中に、ディスペンサーを用いて厚みが1mmになるように充填し、荷重を掛けない状態で、150℃にて30分間加熱硬化させ、比較例4の透明複合体Kを作製した。
【0098】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Kの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム球状粒子E1を含有しないエポキシ樹脂を本比較例と同様にして加熱硬化させた透明エポキシ樹脂を基準とし、比較例4の透明複合体Kと基準となる透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
【0099】
「比較例5」
(酸化ジルコニウム厚板状粒子の作製)
1次粒子径が3nmの酸化ジルコニウム粒子を水に分散させた酸化ジルコニウム分散液100g(酸化ジルコニウム:10質量%、住友大阪セメント(株)製)にメタノール100gを加え、酸化ジルコニウム粒子の濃度が5質量%の水−メタノール分散液を調整した。
【0100】
次いで、この酸化ジルコニウム粒子の水−メタノール分散液を、平均液滴径が10〜30μmのスプレー装置を用いて、垂直に立てた透明石英基板(基板温度:50℃)上にスプレーノズルを走査させながらスプレーを行った。
ここでは、スプレーノズルと透明石英基板との距離を実施例1に比べて長くとるとともに、雰囲気温度を基板温度と同じ50℃とすることにより、透明石英基板に付着した時の液滴が実施例1及び5と比べて速やかに乾燥するようにし、得られる板状粒子の外径/厚さ比を調整した。
これにより、得られた板状粒子の外径と厚みの比は5未満となった。
このスプレーの後、透明石英基板から粉末状の乾燥固形物を回収し、この乾燥固形物を450℃にて60分間焼成し、酸化ジルコニウム厚板状粒子Fを作製した。
【0101】
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて酸化ジルコニウム厚板状粒子FのSEM像を撮影し、このSEM像から任意の100個の粒子を選択して個々の粒子の外径を測定し、これらの測定結果から酸化ジルコニウム厚板状粒子Fの粒度分布を求めた。その結果、最小粒子の外径が0.7μm(最小値)、その厚みが約0.4μmであり、最大粒子の外径が4.5μm(最大値)、その厚みが約1μmであった。なお、形状は球状に近い略レンズ状の粒子であった。
【0102】
また、この酸化ジルコニウム厚板状粒子Fの回折線をX線回折装置にて測定し、結晶子径を求めた。その結果は8nmであった。
また、この酸化ジルコニウム厚板状粒子Fの空隙率を水銀圧入法により測定した。その結果は9体積%であった。
また、この酸化ジルコニウム厚板状粒子Fの比表面積をガス吸着法(BET法)により測定した。その結果は2.5m/gであった。
また、この酸化ジルコニウム厚板状粒子Fを光学顕微鏡で観察した結果、粒子は透明であった。
以上により、この酸化ジルコニウム厚板状粒子Fは、結晶子径が8nm、粒子の外径が0.7〜4.5μm、外径と厚みの比が1.7〜4.8の透明な厚板状粒子であった。
【0103】
(酸化ジルコニウム厚板状粒子の表面処理)
酸化ジルコニウム厚板状粒子F 100g
カップリング剤A 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、さらにメタノールを加えて過剰のカップリング剤Aを洗浄除去し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理酸化ジルコニウム厚板状粒子F1を作製した。
【0104】
(透明複合体の作製)
表面処理酸化ジルコニウム厚板状粒子F1 450g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
を自公転式攪拌混練機にて混合・攪拌し、表面処理酸化ジルコニウム厚板状粒子F1をエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、さらに自公転式攪拌混練機を用いて混合・攪拌し、未硬化の樹脂複合体を作製した。
次いで、この未硬化の樹脂複合体を離型剤を塗布したガラス板でくみ上げた型の中にディスペンサーを用いて充填し、さらに厚みが1mmになるように荷重をかけた状態で、150℃にて30分間加熱硬化させ、比較例5の透明複合体Lを作製した。
【0105】
(透明複合体の評価)
上記の透明複合体Lの全光線透過率および屈折率を、実施例1と同様にして測定した。
ここでは、表面処理酸化ジルコニウム厚板状粒子F1を含有しないエポキシ樹脂を本比較例と同様にして加熱硬化させた透明エポキシ樹脂を基準とし、比較例5の透明複合体Lと基準となる透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
以上、実施例1〜6および比較例1〜5における金属酸化物粒子の性状及び透明複合体の特性を、表1及び表2に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
表1及び表2によれば、実施例1〜6の金属酸化物粒子は、いずれも結晶子径が15nm以下であり、しかも、外径が500nm以上、この外径と厚みの比が5以上の透明な板状粒子であり、これらの粒子の特性は良好であった。
一方、比較例1、2の金属酸化物粒子は板状粒子であるから、形状は問題無いものの、結晶子径が24nmと大きいためにレイリー散乱が発生し、不透明(白濁)な粒子であった。さらに、これらの金属酸化物粒子は空隙率が高く、粒子としての屈折率も粒子を構成する物質の屈折率と比べて低下しており、高屈折率が維持できないものであった。
【0109】
実施例1〜6の透明複合体は、いずれも樹脂単体に対する透過率の低下は僅かであった。また、金属酸化物粒子の割合が増加するに伴い、透明複合体の屈折率も増加しており、特に、金属酸化物粒子の割合が80質量%まで増加した場合においても、透明複合体としての特性は良好であった。
なお、金属酸化物粒子の割合が33質量%では、厚み方向と長手方向とで特性に差は見られなかったが、60質量%を越えると、配向分散の作用により厚み方向と長手方向との特性に差が見られるようになった。
【0110】
一方、比較例1、2の透明複合体は、金属酸化物粒子自体が白濁しており、透明性が悪いものであった。したがって、透明複合体としての特性も悪いものであった。
比較例3、4は、球状の金属酸化物粒子を用いたものであるが、透明複合体とした場合、比較例3(金属酸化物粒子:75質量%)では特性が良好であったが、比較例4(金属酸化物粒子:80質量%)では、樹脂中における金属酸化物粒子の分散状態を良好に保つことができず、その結果、樹脂単体に対する透過率が低下し、屈折率も比較例3とほぼ同一で増加していなかった。
比較例5は、外径/厚みの比が5未満の厚板状の金属酸化物粒子を用いたものであるが、配向分散性が低下しているために、透明複合体における散乱が増加し、樹脂単体に対しての透過率が低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の高屈折率透明粒子は、結晶子径が15nm以下の透明な板状粒子とし、この板状粒子の一主面の外径(D)を500nm以上、この板状粒子の外径(D)と厚み(t)との比(D/t)を5以上としたことにより、粒子自体の透明性を維持しつつ、この粒子自体の屈折率が、この粒子を構成する物質本来の屈折率より低下するのを抑制し、その結果、樹脂の透明性を損なわずに高屈折率を付与することを可能としたものであるから、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)、表面電界ディスプレイ(SED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の表示部に用いられる前方散乱、反射、集光等の機能性フィルムに適用することはもちろんのこと、マイクロアレイレンズシート、プリズムシート、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等のレンズシート、導光板、拡散フィルム、ホログラフィック基板、調光フィルム等の上記以外の様々な工業分野においても適用可能であり、その効果は大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶子径が15nm以下の微結晶からなる透明な板状粒子であって、
その一主面の外径(D)が500nm以上、この外径(D)と厚み(t)との比(D/t)が5以上であることを特徴とする高屈折率透明粒子。
【請求項2】
前記板状粒子は、屈折率が2.0以上の金属酸化物からなることを特徴とする請求項1記載の高屈折率透明粒子。
【請求項3】
前記金属酸化物は、Zr、Ti、Sn、Ce、Ta、Nb、Znの群から選択される1種または2種以上の金属を含む酸化物を含有してなることを特徴とする請求項2記載の高屈折率透明粒子。
【請求項4】
前記板状粒子の空隙率は10体積%以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の高屈折率透明粒子。
【請求項5】
前記板状粒子は、その表面が表面処理剤により処理されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の高屈折率透明粒子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の高屈折率透明粒子を樹脂中に分散してなることを特徴とする透明複合体。
【請求項7】
前記高屈折率透明粒子は配向分散していることを特徴とする請求項6記載の透明複合体。

【公開番号】特開2010−6647(P2010−6647A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168632(P2008−168632)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】