高度に揮発性のシリコーンを含有する医薬製剤
本発明の主題は、医薬有効成分を含有する経皮製剤であって、有効成分の粒子が高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆されており、これらの被覆された粒子がゲル又はクリーム基剤中に分散されていることを特徴とする経皮製剤にある。本発明の他の主題は、このような医薬組成物の製法にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、医薬有効成分を含有する経皮製剤であって、有効成分の粒子が高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆されており、これらの被覆された粒子がゲル又はクリーム基剤中に分散されていることを特徴とする経皮製剤にある。本発明の他の主題は、このような医薬組成物の製法にある。
【背景技術】
【0002】
薬剤におけるシリコーン誘導体の応用は1930年代から始まり、それ以後、シリコーン誘導体は広範囲に利用されている。
【0003】
シリコーン誘導体のグループに関して、調剤学の分野では、シリコーンポリマーは、いくつかの有利な特性、例えば、高度の柔軟性、耐熱性、有益な耐薬品性を有し、人体に対して不活性であり、薬学上の応用の過程で、医薬品との相互作用を持たないため、シリコーンポリマーの適用が現実に広く知られている。
【0004】
シリコーンポリマー(ポリオルガノシロキサン)は、シロキサン鎖(-Si-O-Si-)に有機性の化学基が結合しているポリマー化合物である。
【0005】
クロロシランモノマーの加水分解又は縮合によって、各種のシリコーンポリマーが調製される。これらのポリマーは、その構造に応じて、3つの主グループを有する:
‐直鎖構造を持つシリコーンオイル及び天然エラストマー
‐分枝構造を持つケイ素樹脂
‐架橋構造を持つケイ素樹脂(ケイ素樹脂の多くは架橋構造を有する)。
【0006】
各種の粘度を持つシリコーンオイルだけでなく、脂肪シリコーン、消泡剤、離型剤及び疎水性化剤も、シリコーンポリマーから調製される。シリコーンゴムは、各種の加硫及び架橋プロセスによって、ケイ素ゴムから調製される。
【0007】
樹脂は、圧縮粉末、圧縮樹脂、樹脂エマルジョン、ラッカー(各種の溶媒による溶液)及び着色塗料又は有機成分にて変性した樹脂として使用される。
【0008】
シリコーンポリマーは、治療及び各種の経皮治療システム(TTS)において使用される感圧性接着剤(PSA)、薬用又は外科用インプラント、プロテーゼの重要な基礎材料である。
【0009】
シリコーンオイルの中でも、治療では、ジメチルポリシロキサンが最も頻繁に利用される。これらのシリコーンオイルは、非常に強力な消泡特性を有しており、これは、その低い表面張力(約20mN/m;これに対して、水の表面張力は85mN/mである)によるものである。この利点は、肺水腫の治療のために、シリコーンオイルを噴霧状で適用することによって利用される。肺水腫の場合、肺を源とし、正常な通気及び酸素の摂取におけるバリヤーを形成する強力に泡沫性粘液が、処置しなければ、酸素欠乏症又は窒息の原因となる。シリコーンオイルの疎水性は、長期間、1つの臥位位置に留まらなければならない患者の褥蒼又は潰瘍の治療のための医薬品に利用される。
【0010】
シリコーンオイルの1つのサブグループは、高度に揮発性のシリコーンである。高度に揮発性のシリコーンは、6時間内で、ヒトの皮膚表面から完全に蒸発できる医薬キャリヤーである。これらキャリヤーの医薬上の用途は、今のところ、必ずしも可能性が尽くされてはいない。
【0011】
本発明の主題は、経皮製剤であって、有効成分の粒子が、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン又はデカメチルペンタシクロシロキサンにて被覆されている経皮製剤にある。これらの高度に揮発性のシリコーンオイルは、化粧品工業では広く使用されており、その薬学上の適用も知られている。
【0012】
米国特許第4,355,046号及び米国特許第5,336,692号には、ワセリン基剤を有する軟膏におけるヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン又はデカメチルペンタシクロシロキサン溶媒の使用が開示されている。軟膏は化粧品又は医薬品において適用される。これらの特許によれば、高度に揮発性のシロキサンは、ヒトの皮膚表面において良好な分配を達成するだけでなく、化学的及び微生物学的安定性を達成するために、もっぱら機能する。医薬品及び上記記載において引用された軟膏基剤のタイプ及び組成は、本発明の主題とは相違するものである。米国特許第5,210,103号では、外用(例えば、膣剤)のスキンフォームにおける動力ガスとしてヘキサメチルジシロキサンが使用されている。
【0013】
欧州特許第914082号は、揮発性シロキサンを含有する制汗組成物に関する。これらのシリコーンは、組成物の好適なコンシステンシーを保証し、パッケージからの製品の漏出を完全に阻止する。
【0014】
Diprolene cream(登録商標;Schering Plough)及びDexeryl Cream(登録商標;Pierre Fabre Sante)の製造では、製品の審美性を確保するために、デカメチルペンタシクロシロキサンが使用される。
【0015】
上述の文献は、いずれも、組成物の好適なコンシステンシー及び製品の審美性を確保するために揮発性のシロキサンが使用されている化粧品組成物を開示している。
【0016】
揮発性のシロキサンは、医薬組成物では、めったに成分として使用されることはない。文献に引用されている医薬品の組成は、本発明の主題とは相違するものであり、最新技術の医薬組成物では、化粧品と同様に、揮発性シロキサンは、皮膚表面における良好な分配を達成するように機能する。
【0017】
同時に、本発明では、揮発性シリコーンオイルは、本発明に係る組成物に対して、化学的及び微生物学的安定性及び良好な生物学的利用能を保証する。
【0018】
有効成分を含有する医薬用軟膏及びクリーム剤についての基本的な要件は、良好な安定性、長い保存期間、経皮システムからの有効成分の好適な浸透性、良好なコンシステンシー及び皮膚への容易な適用性である。
【0019】
脂肪性又は油性基剤を有する軟膏の欠点は、脂質親和性相では、特に有効成分が低水溶性を有する場合、軟膏の溶解度はより高く、従って、分配は均等ではなく、軟膏はより多量の有効成分を含有するため、有効成分の浸透が遅く、放出される有効成分の量が少ないことである。低水溶性を持つ有効成分の例としては、アシクロビル、ピロキシカム、メロキシカム、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム又はカリウム塩、クロトリマゾール、ビホナゾール、メトロニダゾール、ニフェジピン、ニトログリセリン及びセチリジンがある。上記有効成分を含有するクリーム剤の例としては、Zovirax(登録商標;アシクロビル)、Feldene(登録商標;ピロキシカム)、Hotemin(登録商標)クリーム(ピロキシカム)、Cancesten(登録商標)クリーム(クロトリマゾール)、Mycospor(登録商標)クリーム(ビホナゾール)又はRozex(登録商標)クリーム(メトロニダゾール)がある。
【0020】
懸濁した形の有効成分を含有するゲル組成物は各種文献から知られており、組成物では、有効成分の放出は適切であるが、保存の間に安定性についての課題が生ずることがある。これらの課題は、各種表面の接触区域における化学的及び微生物学的反応(有効成分の化学条件を変化させる)によるものである。この種の安定性に関する課題は、例えば、ピロキシカムを含有するHotemin(登録商標)クリーム、Voltaren(登録商標;ジクロフェナク)又はメトロニダゾールを含有するRozex(登録商標)クリームを保存する間に生ずることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目標は、脂肪性又は油性基剤及び少量のゲルを含有する軟膏よりも良好な生物学的利用能を有する医薬品を開発すること、及び懸濁した形の有効成分を含有するエマルジョン又はゲルを保存する間に生ずる安定性に関する課題を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くべきことには、上記目標が、アジュバントとして揮発性シリコーンオイルを使用した医薬品によって達成されるとの知見を得た。この知見に基づき、上述の有効成分を含有する軟膏又はゲルの安定性及び浸透性を改善するために、各種の揮発性を持つシリコーンオイルの好適に選択した割合の混合物を使用する。
【0023】
本発明の主題は、医薬有効成分を含有する経皮製剤であって、有効成分の粒子が高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆されており、これらの被覆された粒子がゲル又はクリーム基剤中に分散されていることを特徴とする経皮製剤にある。
【0024】
本発明の医薬品は、有効成分として、アシクロビル、ピロキシカム、メロキシカム、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム又はジクロフェナクカリウム塩、クロトリマゾール、ビホナゾール、メトロニダゾール、ニフェジピン、ニトログリセリン、又はセチリジン;揮発性シロキサンアジュバントとして、ヘキサメチルシロキサン及び/又はオクタメチルトリシロキサン及び/又はデカメチルペンタシクロシロキサン;軟膏基剤として、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピル‐メチルセルロース又はその混合物を含有する。
【0025】
本発明の他の主題は、このような医薬組成物を製造する方法であって、有効成分の粒子を、高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆し、得られた混合物をゲル又はクリーム基剤に分散させ、このようにして、ゲル又はクリーム基剤中の粒子がシリコーンコーティングによって包囲されることを特徴とする医薬品の製法にある。
【0026】
本発明の要点は、ゲル中に配合される有効成分の固体粒子が、使用の過程で皮膚表面から蒸発する揮発性シリコーンオイルによって被覆されることである。有効成分及びゲルの他の成分は、皮膚表面の上に留まり、皮膚の物理的輸送システム(拡散、侵入、浸透)を介して迅速に吸着される。
【0027】
ゲル内において、いわゆる「第3の相」を形成するシリコーンコーティングによって安定性が増大される。この「第3の相」は、有効成分とは作用しないし、ゲルの他のアジュバントとも作用しない。シリコーンオイルは、有効成分粒子の周囲でコーティングを形成し、化学的及び微生物学的衝撃から有効成分を保護して、医薬品の良好な化学的及び微生物学的安定性を確保する。
【0028】
皮膚にゲルを塗付すると、シリコーン化合物が蒸発し、このように、シリコーン化合物は人体に対する相互作用を全く有していない。有効成分の粒子は皮膚表面に留まり、人体に放出される。アジュバントの蒸発後、有効成分粒子は容易にかつより効果的に皮膚層に放出される。
【0029】
本発明の経皮組成物の有効成分を被覆するための最も好適なシリコーンオイルは、ヘキサメチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン又はデカメチルペンタシクロシロキサンである。
【0030】
本発明の医薬品の有利な特性は、下記の実験によって証明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、質量減少実験において検討したシラン含有システムからの蒸発速度を表すものである。サンプル5個を標準のデシケーター内に保存し、特定の間隔で、分析天秤にて測定した。5個の測定結果を曲線によって示す。黒いポットは、平均値を示す曲線を表す。
【0032】
【図2】図2は、質量減少実験において検討したシラン含有システムからの蒸発速度を表すものである。サンプル3個を標準のデシケーター内に保存し、特定の間隔で、分析天秤にて測定した。3個の測定結果を曲線によって示す。黒いポットは、平均値を示す曲線を表す。
【0033】
【図3】図3は、脂質親和性膜を通るシラン組成物からのピロキシカムの放出に関するものである。無極性膜を通る拡散実験の結果を、ここに示す。黒いポットは、6個の測定の平均値を示す曲線を表す。
【0034】
【図4】図4は、脂質親和性膜を通るHotemin(登録商標)軟膏からのピロキシカムの放出に関するものである。無極性膜を通る拡散実験の結果を、ここに示す。黒いポットは、3個の測定の平均値を示す曲線を表す。
【0035】
【図5】図5は、脂質親和性膜を通るシランシステムから及びHotemin(登録商標)クリームからのピロキシカムの放出を表す比較テストに関するものである。図5は、2つの組成物の場合の全体量に対する有効成分の放出パーセンテージを示す。
【0036】
【図6】図6は、脂質親和性膜を通るシランシステムから及びHotemin(登録商標)クリームからのピロキシカムの放出を表す比較テストに関するものである。図6は、2つの組成物の場合の皮膚の単位表面積当たりの有効成分の放出量(mg/cm2)を示す。
【0037】
【図7】図7は、半極性膜を通るシラン組成物からのピロキシカムの放出に関するものである。半極性膜を通る拡散実験の結果を、ここに示す。黒いポットは、5個の測定の平均値を示す曲線を表す。
【0038】
【図8】図8は、半極性膜を通るHotemin(登録商標)軟膏からのピロキシカムの放出に関するものである。半極性膜を通る拡散実験の結果を、ここに示す。黒いポットは、3個の測定の平均値を示す曲線を表す。
【0039】
【図9】図9は、半極性膜を通る「シランシステム」から及びHotemin(登録商標)組成物からのピロキシカムの放出を表す比較実験に関するものである。
【0040】
【図10】図10は、半極性膜を通る「シランシステム」から及びHotemin(登録商標)組成物からのピロキシカムの放出を表す比較テストに関するものである。図10は、拡散の半分の時間に関する皮膚の単位表面積当たりの有効成分の放出量(mg/cm2)を示す(Qルート(t))。
【0041】
【図11】図11は、6種の異なる医薬品からのピロキシカムの放出を測定した比較テストに関するものである。拡散時間は6時間である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
化学安定性テスト
分散された状態の有効成分を含有するゲルタイプ医薬製剤の化学安定性に関する課題の1つは、表面の接触ポイントで生ずる反応によるものであり、有効成分の化学条件の変化を引き起こす。
【0043】
ピロキシカムの同質異晶形Iは、結晶構造を持つ白色の物質であり、水又は他の溶媒に溶解すると、明るい黄色に変色する。この有効成分を含有する従来の軟膏又はゲルでは、上述の化学反応が医薬製剤の色の強度を変化させる。
【0044】
当分野の現状のクリーム又はゲル製剤に対して、揮発性シリコーンオイル(ヘキサメチルジシロキサン及び/又はオクタメチルトリシロキサン、又はこれらの割合1:1の混合物)にて被覆された有効成分を含有する本発明の水性ゲルの色は変化しない。本発明の医薬製剤を、現在のICH(日米欧医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議)ルールに基づく安定性テストにより試験したところ、製剤の白色は実験の間に変化しなかった。
【0045】
有効成分を揮発性シリコーンオイルにて被覆して、ゲル製剤の他の成分が有効成分と接触しないようにすると、この製剤は良好な化学安定性を有する。
【0046】
質量減少に関する実験
良好な生物学的利用能の基本的な要件は、有効成分が医薬品からの良好な放出性を有していなければならないことである。本発明の組成物の有効成分は、コーティングとして機能するシリコーンオイルの蒸発の後に放出される。このプロセスは、製剤の質量減少によって表される。対照として、脂肪基材のクリームであるHoteminクリームを使用した。
【0047】
Hotemin(登録商標)クリーム1%の成分は、パラヒドロキシ安息香酸メチル、マクロゴールセチルステアリルエーテル、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、セチルステアリルアルコール、白色ワセリン、流動パラフィン、純水である。
【0048】
サンプルを標準のデシケーター内に保存し、特定の間隔で、分析天秤にて測定した。図1及び2は、質量減少及びその時間経過を示す。
【0049】
測定結果は、蒸発が、対照製剤からよりも、揮発性シリコーンを含有するシステムからのほうが速いことを示した。24時間後では、有効成分及び少量のポリマーアジュバント
のみが天秤上に残っていた。
【0050】
生体膜を通る輸送に関する実験
良好な生物学的利用能の他の基本的な要件は、放出後の有効成分が、能動輸送によって、生体膜を通って容易に拡散することである。
【0051】
無極性又は半極性の生体膜(例えば、皮膚)を通る有効成分の輸送を、Hanson Companyによって開発された垂直型拡散セル(Hanson Microette TM Topical & Transdermal Diffusion Cell System, Hanson Research Corporation)の操作原理によって作動する装置を利用して検討した。
【0052】
実験の対照組成物はHotemin(登録商標)軟膏である。
【0053】
無極性膜を通る拡散
皮膚の上層(角質層)は、その成分の化学特性により脂質親和、無極性を有するため、無極性膜を通る拡散を検討した。従って、最初に、無極性を有する薬剤のみならず、角質層に溶解する能力を有する薬剤も含まれる。
【0054】
図3は、ミリスチン酸イソプロピルを含浸した膜を使用して行った実験の結果を表す。
【0055】
図4は対照組成物の放出を表し、図5及び6は比較実験に関する。
【0056】
図5は全体量に対する有効成分の放出パーセンテージを示し、図6は皮膚の単位表面積当たりの有効成分の放出量(mg/cm2)を示す。
【0057】
通常、経時的に生ずるプロセスは、ルート関数をもって説明される。ルート関数の一般式は次のとおりである:
Q=Q0t (1)
ここで、Qは時間tの間の有効成分の放出量を表し、Q0はt=0(通常0である)における有効成分の放出量を表し、mは線形化した関数の勾配を表す。mが1である場合、放出される有効成分の量は経時的に直線的に増大するが、通常、mは1より小さい値を有する。mが約0.5である場合、Qはt0.5関数における一次関数によって表される。線形(角度係数)の勾配は、放出の速度常数である。
【0058】
関数を数学的に評価すると、等式(1)のルート関数は測定ポイントに正確にマッチすることが言える。表1は、Q0の常数、m及び回帰度を表すR2を示す。
【表1】
【0059】
表1の数値は、プロセスの速度がルート関数によって正確に表されることを示している。Q0の値はほぼ0であり、mの値は0.5〜1であり、従って、プロセスは経時的に線形ではないが、プロセスの速度は連続的に減少している。mの値が0.5とは異なるため、ルート変換を行っていない。
【0060】
6時間の実験では、シリコーンオイルを含有するサンプルからの有効成分の放出は約5%であった。対照組成物からは、実験の間に1%未満が放出された(有効成分の最大放出は約0.2%であった)。
【0061】
発明者らの実験の結果について、本発明に従って調製された組成物は、対照組成物よりもかなり多量の有効成分を放出できると結論付けることができる。
【0062】
半極性膜を通る拡散
半極性膜を通る輸送の実験は生体細胞に入るモデルを使用し、生体細胞の通過は薬理学的効力の要件である。
【0063】
生体細胞にエチルアルコールを含浸させることによって半極性膜を調製した。実験の結果を図7〜10によって示す。
本発明の組成物及びHotemin(登録商標)軟膏の間における有効成分の放出の比較
プロセスの速度を検討することによって、等式(1)のmは〜0.5であることが判明したため、ルート変換を行った。図11によって示される結果及び回帰線のR2値はクロスマッチを示した。表2は、Q0、m及びR2を示す。
【表2】
【0064】
シリコーンを含有する組成物と対照Hotemin(登録商標)軟膏との間の比は50:1であり、すなわち、放出された有効成分は、対照組成物からの有効成分の放出量より50倍多い。
【0065】
ピロキシカムを含有する本発明の組成物及び他の経皮医薬製剤の間における有効成分の放出の比較
本発明の組成物の半極性膜を通る拡散を、下記の製剤:
Erazon(登録商標)1%クリーム
Erazon(登録商標)1%ゲル
Fledene(登録商標)0.5%ゲル
Feldene-top Cr・me(登録商標)
Hotemin(登録商標)軟膏
と比較した。
【0066】
上記組成物はピロキシカムを含有するが、そのキャリヤー及び成分は本発明の組成物とは異なる。
【0067】
揮発性シリコーンを含有する組成物からの有効成分の放出が、上述のテストしたクリーム及びゲルよりも大きいことが認められた(図11参照)。
【0068】
さらに、下記の実施例によって本発明の組成物を詳述するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0069】
実施例において、Silicone Fluidキャリヤーは、メチルシロキサン、すなわち、ヘキサメチルジシロキサン及び/又はオクタメチルトリシロキサン、又はそれらの1:1混合物である。実施例において、シロキサン溶液の粘度は0.65 cSt又は100 cStである。
【実施例1】
【0070】
有効成分としてピロキシカムを含有するゲル組成物:
ピロキシカム 0.500g
Silicone Fluid 0.65 cSt 0.500g
Silicone Fluid 100 cSt 2.150g
Carbopol 980 NF 0.250g
トリエタノールアミン 0.200g
ヒドロキシプロピル-メチルセルロース 1.000g
純水 (添加して全体として) 50.000g
上記レシピに従って、軟膏の調製に好適なBrogtech装置にて、ゲルをバッチサイズ7kgで調製した。
1.1. 有効成分を含有する懸濁液の調製法:
800 mlガラスビーカーにおいて、微粉末状ピロキシカム(70.0g)を、Silicone Fluid 0.65 cSt(301.0g)及びSilicone Fluid 100 cSt(70.0g)と混合し、混合物をUltra-Turrax装置において、4000回転/分で5分間混合した。調製した懸濁液を、使用時まで、気密性部位において保存した。
1.2. ゲル基材の調製法:
純水(6000g)をBrogtech装置に注入し、温度を25℃にセットした。ポジション4のアンカー形ミキサーにおいて、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(140.0g)を、徐々に、混合物に添加し、軟膏基材が完全に溶解するまで(約1.5時間)、同じ速度(回転/分)で撹拌した。溶解後、Carbopol 980 NF(35.0g)を反応混合物に添加し、4時間撹拌した。混合物を、トリエタノールアミン(28.0g)及び純水(100.0g)の溶液で中和し、混合物がゲルコンシステンシーを有するまで撹拌を続けた。
1.3. 最終製品(薬剤‐ゲル組成物)の調製法:
上記1.2. に従って調製したゲル基材に、上記1.1. に従って得た薬剤の懸濁液を徐々に添加し、純水を加えてゲルを7.00 kgとした。得られたゲルをBrogtech装置のビルトインホモジナイザーにおいて、1200回転/分、スリットの最大径(1.5mm)で5分間均質化した。
【実施例2】
【0071】
有効成分としてクロトリマゾールを含有するゲル組成物:
クロトリマゾール 0.200g
Silicone Fluid 0.65 cSt 1.000g
Silicone Fluid 100 cSt 0.200g
Carbopol 980 NF 0.100g
トリエタノールアミン 0.200g
ヒドロキシプロピル-メチルセルロース 0.400g
純水 (添加して全体として) 20.000g
上記レシピに従って、軟膏の調製に好適なBrogtech装置にて、ゲルをバッチサイズ7kgで調製した。
2.1. 有効成分を含有する懸濁液の調製法:
800 mlガラスビーカーにおいて、微粉末状クロトリマゾール(70.0g)を、Silicone Fluid 0.65 cSt(350.0g)及びSilicone Fluid 100 cSt(70.0g)と混合し、混合物をUltra-Turrax装置において、4000回転/分で5分間混合した。調製した懸濁液を、使用時まで、気密性部位において保存した。
2.2. ゲル基材の調製法:
純水(6000g)をBrogtech装置に注入し、温度を25℃にセットした。ポジション4のアンカー形ミキサーにおいて、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(140.0g)を、徐々に、混合物に添加し、軟膏基材が完全に溶解するまで(約1.5時間)、同じ速度(回転/分)で撹拌した。溶解後、Carbopol 980 NF(35.0g)を反応混合物に添加し、4時間撹拌した。混合物を、トリエタノールアミン(28.0g)及び純水(100.0g)の溶液で中和し、混合物がゲルコンシステンシーを有するまで撹拌を続けた。
2.3. 最終製品(ゲル組成物)の調製法:
上記2.2. に従って調製したゲル基材に、上記2.1. に従って得た薬剤の懸濁液を徐々に添加し、純水を加えて、ゲルを7.00 kgとした。得られたゲルをBrogtech装置のビルトインホモジナイザーにおいて、1200回転/分、スリットの最大径(1.5mm)で5分間均質化した。
【実施例3】
【0072】
有効成分としてメトロニダゾールを含有するゲル組成物:
メトロニダゾール 1.000g
Silicone Fluid 0.65 cSt 2.000g
Silicone Fluid 100 cSt 0.200g
Carbopol 980 NF 0.250g
トリエタノールアミン 0.200g
ヒドロキシプロピル-メチルセルロース 0.400g
純水 (添加して全体として) 20.000g
上記レシピに従って、軟膏の調製に好適なBrogtech装置にて、ゲルをバッチサイズ7kgで調製した。
3.1. 有効成分を含有する懸濁液の調製法:
800 mlガラスビーカーにおいて、微粉末状メトロニダゾール(350.0g)を、Silicone Fluid 0.65 cSt(700.0g)及びSilicone Fluid 100 cSt(70.0g)と混合し、混合物をUltra-Turrax装置において、4000回転/分で5分間混合した。調製した懸濁液を、使用時まで、気密性部位において保存した。
3.2. ゲル基材の調製法:
純水(5500g)をBrogtech装置に注入し、温度を25℃にセットした。ポジション4のアンカー形ミキサーにおいて、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(140.0g)を、徐々に、混合物に添加し、軟膏基材が完全に溶解するまで(約1.5時間)、同じ速度(回転/分)で撹拌した。溶解後、Carbopol 980 NF(35.0g)を反応混合物に添加し、4時間撹拌した。混合物を、トリエタノールアミン(28.0g)及び純水(100.0g)の溶液で中和し、混合物がゲルコンシステンシーを有するまで撹拌を続けた。
3.3. 最終製品(ゲル組成物)の調製法:
上記3.2. に従って調製したゲル基材に、上記3.1. に従って得た薬剤の懸濁液を徐々に添加し、純水を加えて、ゲルを7.00 kgとした。得られたゲルをBrogtech装置のビルトインホモジナイザーにおいて、1200回転/分、スリットの最大径(1.5mm)で5分間均質化した。得られたゲルを、気密性部位において保存するか、又は気密性パッケージ(金属製チューブ)内に入れた。
【実施例4】
【0073】
有効成分としてセチリジンを含有するゲル組成物:
セチリジン 0.200g
メントール 0.200g
エチルアルコール 0.200g
Silicone Fluid 0.65 cSt 1.000g
Silicone Fluid 100 cSt 0.200g
Carbopol 980 NF 0.250g
トリエタノールアミン 0.200g
純水 (添加して全体として) 20.000g
上記レシピに従って、軟膏の調製に好適なBrogtech装置にて、ゲルをバッチサイズ7kgで調製した。
4.1. 有効成分を含有する懸濁液の調製法:
800 mlガラスビーカーにおいて、微粉末状セチリジン(70.0g)を、Silicone Fluid 0.65 cSt(350.0g)及びSilicone Fluid 100 cSt(70.0g)と混合し、混合物をUltra-Turrax装置において、4000回転/分で5分間混合した。調製した懸濁液を、使用時まで、気密性部位において保存した。
4.2. メントール溶液の調製法:
300 mlガラスビーカーにおいて、メントール(70.0g)をエチルアルコールに溶解した。溶液を、使用時まで気密で保存した。
4.3. ゲル基材の調製法:
純水(6000g)をBrogtech装置に注入し、温度を25℃にセットした。ポジション4のアンカー形ミキサーにおいて、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(140.0g)を、徐々に、混合物に添加し、軟膏基材が完全に溶解するまで(約1.5時間)、同じ速度(回転/分)で撹拌した。溶解後、Carbopol 980 NF(35.0g)を反応混合物に添加し、4時間撹拌した。混合物を、トリエタノールアミン(28.0g)及び純水(100.0g)の溶液で中和し、混合物がゲルコンシステンシーを有するまで撹拌を続けた。
4.4. 最終製品(ゲル組成物)の調製法:
上記4.3. に従って調製したゲル基材に、上記4.1. に従って得た薬剤の懸濁液を徐々に添加し、純水を加えて、ゲルを7.00 kgとした。得られたゲルをBrogtech装置のビルトインホモジナイザーにおいて、1200回転/分、スリットの最大径(1.5mm)で5分間均質化した。得られたゲルを、気密性部位において保存するか、又は気密性パッケージ(金属製チューブ)内に入れた。
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、医薬有効成分を含有する経皮製剤であって、有効成分の粒子が高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆されており、これらの被覆された粒子がゲル又はクリーム基剤中に分散されていることを特徴とする経皮製剤にある。本発明の他の主題は、このような医薬組成物の製法にある。
【背景技術】
【0002】
薬剤におけるシリコーン誘導体の応用は1930年代から始まり、それ以後、シリコーン誘導体は広範囲に利用されている。
【0003】
シリコーン誘導体のグループに関して、調剤学の分野では、シリコーンポリマーは、いくつかの有利な特性、例えば、高度の柔軟性、耐熱性、有益な耐薬品性を有し、人体に対して不活性であり、薬学上の応用の過程で、医薬品との相互作用を持たないため、シリコーンポリマーの適用が現実に広く知られている。
【0004】
シリコーンポリマー(ポリオルガノシロキサン)は、シロキサン鎖(-Si-O-Si-)に有機性の化学基が結合しているポリマー化合物である。
【0005】
クロロシランモノマーの加水分解又は縮合によって、各種のシリコーンポリマーが調製される。これらのポリマーは、その構造に応じて、3つの主グループを有する:
‐直鎖構造を持つシリコーンオイル及び天然エラストマー
‐分枝構造を持つケイ素樹脂
‐架橋構造を持つケイ素樹脂(ケイ素樹脂の多くは架橋構造を有する)。
【0006】
各種の粘度を持つシリコーンオイルだけでなく、脂肪シリコーン、消泡剤、離型剤及び疎水性化剤も、シリコーンポリマーから調製される。シリコーンゴムは、各種の加硫及び架橋プロセスによって、ケイ素ゴムから調製される。
【0007】
樹脂は、圧縮粉末、圧縮樹脂、樹脂エマルジョン、ラッカー(各種の溶媒による溶液)及び着色塗料又は有機成分にて変性した樹脂として使用される。
【0008】
シリコーンポリマーは、治療及び各種の経皮治療システム(TTS)において使用される感圧性接着剤(PSA)、薬用又は外科用インプラント、プロテーゼの重要な基礎材料である。
【0009】
シリコーンオイルの中でも、治療では、ジメチルポリシロキサンが最も頻繁に利用される。これらのシリコーンオイルは、非常に強力な消泡特性を有しており、これは、その低い表面張力(約20mN/m;これに対して、水の表面張力は85mN/mである)によるものである。この利点は、肺水腫の治療のために、シリコーンオイルを噴霧状で適用することによって利用される。肺水腫の場合、肺を源とし、正常な通気及び酸素の摂取におけるバリヤーを形成する強力に泡沫性粘液が、処置しなければ、酸素欠乏症又は窒息の原因となる。シリコーンオイルの疎水性は、長期間、1つの臥位位置に留まらなければならない患者の褥蒼又は潰瘍の治療のための医薬品に利用される。
【0010】
シリコーンオイルの1つのサブグループは、高度に揮発性のシリコーンである。高度に揮発性のシリコーンは、6時間内で、ヒトの皮膚表面から完全に蒸発できる医薬キャリヤーである。これらキャリヤーの医薬上の用途は、今のところ、必ずしも可能性が尽くされてはいない。
【0011】
本発明の主題は、経皮製剤であって、有効成分の粒子が、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン又はデカメチルペンタシクロシロキサンにて被覆されている経皮製剤にある。これらの高度に揮発性のシリコーンオイルは、化粧品工業では広く使用されており、その薬学上の適用も知られている。
【0012】
米国特許第4,355,046号及び米国特許第5,336,692号には、ワセリン基剤を有する軟膏におけるヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン又はデカメチルペンタシクロシロキサン溶媒の使用が開示されている。軟膏は化粧品又は医薬品において適用される。これらの特許によれば、高度に揮発性のシロキサンは、ヒトの皮膚表面において良好な分配を達成するだけでなく、化学的及び微生物学的安定性を達成するために、もっぱら機能する。医薬品及び上記記載において引用された軟膏基剤のタイプ及び組成は、本発明の主題とは相違するものである。米国特許第5,210,103号では、外用(例えば、膣剤)のスキンフォームにおける動力ガスとしてヘキサメチルジシロキサンが使用されている。
【0013】
欧州特許第914082号は、揮発性シロキサンを含有する制汗組成物に関する。これらのシリコーンは、組成物の好適なコンシステンシーを保証し、パッケージからの製品の漏出を完全に阻止する。
【0014】
Diprolene cream(登録商標;Schering Plough)及びDexeryl Cream(登録商標;Pierre Fabre Sante)の製造では、製品の審美性を確保するために、デカメチルペンタシクロシロキサンが使用される。
【0015】
上述の文献は、いずれも、組成物の好適なコンシステンシー及び製品の審美性を確保するために揮発性のシロキサンが使用されている化粧品組成物を開示している。
【0016】
揮発性のシロキサンは、医薬組成物では、めったに成分として使用されることはない。文献に引用されている医薬品の組成は、本発明の主題とは相違するものであり、最新技術の医薬組成物では、化粧品と同様に、揮発性シロキサンは、皮膚表面における良好な分配を達成するように機能する。
【0017】
同時に、本発明では、揮発性シリコーンオイルは、本発明に係る組成物に対して、化学的及び微生物学的安定性及び良好な生物学的利用能を保証する。
【0018】
有効成分を含有する医薬用軟膏及びクリーム剤についての基本的な要件は、良好な安定性、長い保存期間、経皮システムからの有効成分の好適な浸透性、良好なコンシステンシー及び皮膚への容易な適用性である。
【0019】
脂肪性又は油性基剤を有する軟膏の欠点は、脂質親和性相では、特に有効成分が低水溶性を有する場合、軟膏の溶解度はより高く、従って、分配は均等ではなく、軟膏はより多量の有効成分を含有するため、有効成分の浸透が遅く、放出される有効成分の量が少ないことである。低水溶性を持つ有効成分の例としては、アシクロビル、ピロキシカム、メロキシカム、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム又はカリウム塩、クロトリマゾール、ビホナゾール、メトロニダゾール、ニフェジピン、ニトログリセリン及びセチリジンがある。上記有効成分を含有するクリーム剤の例としては、Zovirax(登録商標;アシクロビル)、Feldene(登録商標;ピロキシカム)、Hotemin(登録商標)クリーム(ピロキシカム)、Cancesten(登録商標)クリーム(クロトリマゾール)、Mycospor(登録商標)クリーム(ビホナゾール)又はRozex(登録商標)クリーム(メトロニダゾール)がある。
【0020】
懸濁した形の有効成分を含有するゲル組成物は各種文献から知られており、組成物では、有効成分の放出は適切であるが、保存の間に安定性についての課題が生ずることがある。これらの課題は、各種表面の接触区域における化学的及び微生物学的反応(有効成分の化学条件を変化させる)によるものである。この種の安定性に関する課題は、例えば、ピロキシカムを含有するHotemin(登録商標)クリーム、Voltaren(登録商標;ジクロフェナク)又はメトロニダゾールを含有するRozex(登録商標)クリームを保存する間に生ずることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目標は、脂肪性又は油性基剤及び少量のゲルを含有する軟膏よりも良好な生物学的利用能を有する医薬品を開発すること、及び懸濁した形の有効成分を含有するエマルジョン又はゲルを保存する間に生ずる安定性に関する課題を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くべきことには、上記目標が、アジュバントとして揮発性シリコーンオイルを使用した医薬品によって達成されるとの知見を得た。この知見に基づき、上述の有効成分を含有する軟膏又はゲルの安定性及び浸透性を改善するために、各種の揮発性を持つシリコーンオイルの好適に選択した割合の混合物を使用する。
【0023】
本発明の主題は、医薬有効成分を含有する経皮製剤であって、有効成分の粒子が高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆されており、これらの被覆された粒子がゲル又はクリーム基剤中に分散されていることを特徴とする経皮製剤にある。
【0024】
本発明の医薬品は、有効成分として、アシクロビル、ピロキシカム、メロキシカム、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム又はジクロフェナクカリウム塩、クロトリマゾール、ビホナゾール、メトロニダゾール、ニフェジピン、ニトログリセリン、又はセチリジン;揮発性シロキサンアジュバントとして、ヘキサメチルシロキサン及び/又はオクタメチルトリシロキサン及び/又はデカメチルペンタシクロシロキサン;軟膏基剤として、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピル‐メチルセルロース又はその混合物を含有する。
【0025】
本発明の他の主題は、このような医薬組成物を製造する方法であって、有効成分の粒子を、高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆し、得られた混合物をゲル又はクリーム基剤に分散させ、このようにして、ゲル又はクリーム基剤中の粒子がシリコーンコーティングによって包囲されることを特徴とする医薬品の製法にある。
【0026】
本発明の要点は、ゲル中に配合される有効成分の固体粒子が、使用の過程で皮膚表面から蒸発する揮発性シリコーンオイルによって被覆されることである。有効成分及びゲルの他の成分は、皮膚表面の上に留まり、皮膚の物理的輸送システム(拡散、侵入、浸透)を介して迅速に吸着される。
【0027】
ゲル内において、いわゆる「第3の相」を形成するシリコーンコーティングによって安定性が増大される。この「第3の相」は、有効成分とは作用しないし、ゲルの他のアジュバントとも作用しない。シリコーンオイルは、有効成分粒子の周囲でコーティングを形成し、化学的及び微生物学的衝撃から有効成分を保護して、医薬品の良好な化学的及び微生物学的安定性を確保する。
【0028】
皮膚にゲルを塗付すると、シリコーン化合物が蒸発し、このように、シリコーン化合物は人体に対する相互作用を全く有していない。有効成分の粒子は皮膚表面に留まり、人体に放出される。アジュバントの蒸発後、有効成分粒子は容易にかつより効果的に皮膚層に放出される。
【0029】
本発明の経皮組成物の有効成分を被覆するための最も好適なシリコーンオイルは、ヘキサメチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン又はデカメチルペンタシクロシロキサンである。
【0030】
本発明の医薬品の有利な特性は、下記の実験によって証明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、質量減少実験において検討したシラン含有システムからの蒸発速度を表すものである。サンプル5個を標準のデシケーター内に保存し、特定の間隔で、分析天秤にて測定した。5個の測定結果を曲線によって示す。黒いポットは、平均値を示す曲線を表す。
【0032】
【図2】図2は、質量減少実験において検討したシラン含有システムからの蒸発速度を表すものである。サンプル3個を標準のデシケーター内に保存し、特定の間隔で、分析天秤にて測定した。3個の測定結果を曲線によって示す。黒いポットは、平均値を示す曲線を表す。
【0033】
【図3】図3は、脂質親和性膜を通るシラン組成物からのピロキシカムの放出に関するものである。無極性膜を通る拡散実験の結果を、ここに示す。黒いポットは、6個の測定の平均値を示す曲線を表す。
【0034】
【図4】図4は、脂質親和性膜を通るHotemin(登録商標)軟膏からのピロキシカムの放出に関するものである。無極性膜を通る拡散実験の結果を、ここに示す。黒いポットは、3個の測定の平均値を示す曲線を表す。
【0035】
【図5】図5は、脂質親和性膜を通るシランシステムから及びHotemin(登録商標)クリームからのピロキシカムの放出を表す比較テストに関するものである。図5は、2つの組成物の場合の全体量に対する有効成分の放出パーセンテージを示す。
【0036】
【図6】図6は、脂質親和性膜を通るシランシステムから及びHotemin(登録商標)クリームからのピロキシカムの放出を表す比較テストに関するものである。図6は、2つの組成物の場合の皮膚の単位表面積当たりの有効成分の放出量(mg/cm2)を示す。
【0037】
【図7】図7は、半極性膜を通るシラン組成物からのピロキシカムの放出に関するものである。半極性膜を通る拡散実験の結果を、ここに示す。黒いポットは、5個の測定の平均値を示す曲線を表す。
【0038】
【図8】図8は、半極性膜を通るHotemin(登録商標)軟膏からのピロキシカムの放出に関するものである。半極性膜を通る拡散実験の結果を、ここに示す。黒いポットは、3個の測定の平均値を示す曲線を表す。
【0039】
【図9】図9は、半極性膜を通る「シランシステム」から及びHotemin(登録商標)組成物からのピロキシカムの放出を表す比較実験に関するものである。
【0040】
【図10】図10は、半極性膜を通る「シランシステム」から及びHotemin(登録商標)組成物からのピロキシカムの放出を表す比較テストに関するものである。図10は、拡散の半分の時間に関する皮膚の単位表面積当たりの有効成分の放出量(mg/cm2)を示す(Qルート(t))。
【0041】
【図11】図11は、6種の異なる医薬品からのピロキシカムの放出を測定した比較テストに関するものである。拡散時間は6時間である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
化学安定性テスト
分散された状態の有効成分を含有するゲルタイプ医薬製剤の化学安定性に関する課題の1つは、表面の接触ポイントで生ずる反応によるものであり、有効成分の化学条件の変化を引き起こす。
【0043】
ピロキシカムの同質異晶形Iは、結晶構造を持つ白色の物質であり、水又は他の溶媒に溶解すると、明るい黄色に変色する。この有効成分を含有する従来の軟膏又はゲルでは、上述の化学反応が医薬製剤の色の強度を変化させる。
【0044】
当分野の現状のクリーム又はゲル製剤に対して、揮発性シリコーンオイル(ヘキサメチルジシロキサン及び/又はオクタメチルトリシロキサン、又はこれらの割合1:1の混合物)にて被覆された有効成分を含有する本発明の水性ゲルの色は変化しない。本発明の医薬製剤を、現在のICH(日米欧医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議)ルールに基づく安定性テストにより試験したところ、製剤の白色は実験の間に変化しなかった。
【0045】
有効成分を揮発性シリコーンオイルにて被覆して、ゲル製剤の他の成分が有効成分と接触しないようにすると、この製剤は良好な化学安定性を有する。
【0046】
質量減少に関する実験
良好な生物学的利用能の基本的な要件は、有効成分が医薬品からの良好な放出性を有していなければならないことである。本発明の組成物の有効成分は、コーティングとして機能するシリコーンオイルの蒸発の後に放出される。このプロセスは、製剤の質量減少によって表される。対照として、脂肪基材のクリームであるHoteminクリームを使用した。
【0047】
Hotemin(登録商標)クリーム1%の成分は、パラヒドロキシ安息香酸メチル、マクロゴールセチルステアリルエーテル、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、セチルステアリルアルコール、白色ワセリン、流動パラフィン、純水である。
【0048】
サンプルを標準のデシケーター内に保存し、特定の間隔で、分析天秤にて測定した。図1及び2は、質量減少及びその時間経過を示す。
【0049】
測定結果は、蒸発が、対照製剤からよりも、揮発性シリコーンを含有するシステムからのほうが速いことを示した。24時間後では、有効成分及び少量のポリマーアジュバント
のみが天秤上に残っていた。
【0050】
生体膜を通る輸送に関する実験
良好な生物学的利用能の他の基本的な要件は、放出後の有効成分が、能動輸送によって、生体膜を通って容易に拡散することである。
【0051】
無極性又は半極性の生体膜(例えば、皮膚)を通る有効成分の輸送を、Hanson Companyによって開発された垂直型拡散セル(Hanson Microette TM Topical & Transdermal Diffusion Cell System, Hanson Research Corporation)の操作原理によって作動する装置を利用して検討した。
【0052】
実験の対照組成物はHotemin(登録商標)軟膏である。
【0053】
無極性膜を通る拡散
皮膚の上層(角質層)は、その成分の化学特性により脂質親和、無極性を有するため、無極性膜を通る拡散を検討した。従って、最初に、無極性を有する薬剤のみならず、角質層に溶解する能力を有する薬剤も含まれる。
【0054】
図3は、ミリスチン酸イソプロピルを含浸した膜を使用して行った実験の結果を表す。
【0055】
図4は対照組成物の放出を表し、図5及び6は比較実験に関する。
【0056】
図5は全体量に対する有効成分の放出パーセンテージを示し、図6は皮膚の単位表面積当たりの有効成分の放出量(mg/cm2)を示す。
【0057】
通常、経時的に生ずるプロセスは、ルート関数をもって説明される。ルート関数の一般式は次のとおりである:
Q=Q0t (1)
ここで、Qは時間tの間の有効成分の放出量を表し、Q0はt=0(通常0である)における有効成分の放出量を表し、mは線形化した関数の勾配を表す。mが1である場合、放出される有効成分の量は経時的に直線的に増大するが、通常、mは1より小さい値を有する。mが約0.5である場合、Qはt0.5関数における一次関数によって表される。線形(角度係数)の勾配は、放出の速度常数である。
【0058】
関数を数学的に評価すると、等式(1)のルート関数は測定ポイントに正確にマッチすることが言える。表1は、Q0の常数、m及び回帰度を表すR2を示す。
【表1】
【0059】
表1の数値は、プロセスの速度がルート関数によって正確に表されることを示している。Q0の値はほぼ0であり、mの値は0.5〜1であり、従って、プロセスは経時的に線形ではないが、プロセスの速度は連続的に減少している。mの値が0.5とは異なるため、ルート変換を行っていない。
【0060】
6時間の実験では、シリコーンオイルを含有するサンプルからの有効成分の放出は約5%であった。対照組成物からは、実験の間に1%未満が放出された(有効成分の最大放出は約0.2%であった)。
【0061】
発明者らの実験の結果について、本発明に従って調製された組成物は、対照組成物よりもかなり多量の有効成分を放出できると結論付けることができる。
【0062】
半極性膜を通る拡散
半極性膜を通る輸送の実験は生体細胞に入るモデルを使用し、生体細胞の通過は薬理学的効力の要件である。
【0063】
生体細胞にエチルアルコールを含浸させることによって半極性膜を調製した。実験の結果を図7〜10によって示す。
本発明の組成物及びHotemin(登録商標)軟膏の間における有効成分の放出の比較
プロセスの速度を検討することによって、等式(1)のmは〜0.5であることが判明したため、ルート変換を行った。図11によって示される結果及び回帰線のR2値はクロスマッチを示した。表2は、Q0、m及びR2を示す。
【表2】
【0064】
シリコーンを含有する組成物と対照Hotemin(登録商標)軟膏との間の比は50:1であり、すなわち、放出された有効成分は、対照組成物からの有効成分の放出量より50倍多い。
【0065】
ピロキシカムを含有する本発明の組成物及び他の経皮医薬製剤の間における有効成分の放出の比較
本発明の組成物の半極性膜を通る拡散を、下記の製剤:
Erazon(登録商標)1%クリーム
Erazon(登録商標)1%ゲル
Fledene(登録商標)0.5%ゲル
Feldene-top Cr・me(登録商標)
Hotemin(登録商標)軟膏
と比較した。
【0066】
上記組成物はピロキシカムを含有するが、そのキャリヤー及び成分は本発明の組成物とは異なる。
【0067】
揮発性シリコーンを含有する組成物からの有効成分の放出が、上述のテストしたクリーム及びゲルよりも大きいことが認められた(図11参照)。
【0068】
さらに、下記の実施例によって本発明の組成物を詳述するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0069】
実施例において、Silicone Fluidキャリヤーは、メチルシロキサン、すなわち、ヘキサメチルジシロキサン及び/又はオクタメチルトリシロキサン、又はそれらの1:1混合物である。実施例において、シロキサン溶液の粘度は0.65 cSt又は100 cStである。
【実施例1】
【0070】
有効成分としてピロキシカムを含有するゲル組成物:
ピロキシカム 0.500g
Silicone Fluid 0.65 cSt 0.500g
Silicone Fluid 100 cSt 2.150g
Carbopol 980 NF 0.250g
トリエタノールアミン 0.200g
ヒドロキシプロピル-メチルセルロース 1.000g
純水 (添加して全体として) 50.000g
上記レシピに従って、軟膏の調製に好適なBrogtech装置にて、ゲルをバッチサイズ7kgで調製した。
1.1. 有効成分を含有する懸濁液の調製法:
800 mlガラスビーカーにおいて、微粉末状ピロキシカム(70.0g)を、Silicone Fluid 0.65 cSt(301.0g)及びSilicone Fluid 100 cSt(70.0g)と混合し、混合物をUltra-Turrax装置において、4000回転/分で5分間混合した。調製した懸濁液を、使用時まで、気密性部位において保存した。
1.2. ゲル基材の調製法:
純水(6000g)をBrogtech装置に注入し、温度を25℃にセットした。ポジション4のアンカー形ミキサーにおいて、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(140.0g)を、徐々に、混合物に添加し、軟膏基材が完全に溶解するまで(約1.5時間)、同じ速度(回転/分)で撹拌した。溶解後、Carbopol 980 NF(35.0g)を反応混合物に添加し、4時間撹拌した。混合物を、トリエタノールアミン(28.0g)及び純水(100.0g)の溶液で中和し、混合物がゲルコンシステンシーを有するまで撹拌を続けた。
1.3. 最終製品(薬剤‐ゲル組成物)の調製法:
上記1.2. に従って調製したゲル基材に、上記1.1. に従って得た薬剤の懸濁液を徐々に添加し、純水を加えてゲルを7.00 kgとした。得られたゲルをBrogtech装置のビルトインホモジナイザーにおいて、1200回転/分、スリットの最大径(1.5mm)で5分間均質化した。
【実施例2】
【0071】
有効成分としてクロトリマゾールを含有するゲル組成物:
クロトリマゾール 0.200g
Silicone Fluid 0.65 cSt 1.000g
Silicone Fluid 100 cSt 0.200g
Carbopol 980 NF 0.100g
トリエタノールアミン 0.200g
ヒドロキシプロピル-メチルセルロース 0.400g
純水 (添加して全体として) 20.000g
上記レシピに従って、軟膏の調製に好適なBrogtech装置にて、ゲルをバッチサイズ7kgで調製した。
2.1. 有効成分を含有する懸濁液の調製法:
800 mlガラスビーカーにおいて、微粉末状クロトリマゾール(70.0g)を、Silicone Fluid 0.65 cSt(350.0g)及びSilicone Fluid 100 cSt(70.0g)と混合し、混合物をUltra-Turrax装置において、4000回転/分で5分間混合した。調製した懸濁液を、使用時まで、気密性部位において保存した。
2.2. ゲル基材の調製法:
純水(6000g)をBrogtech装置に注入し、温度を25℃にセットした。ポジション4のアンカー形ミキサーにおいて、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(140.0g)を、徐々に、混合物に添加し、軟膏基材が完全に溶解するまで(約1.5時間)、同じ速度(回転/分)で撹拌した。溶解後、Carbopol 980 NF(35.0g)を反応混合物に添加し、4時間撹拌した。混合物を、トリエタノールアミン(28.0g)及び純水(100.0g)の溶液で中和し、混合物がゲルコンシステンシーを有するまで撹拌を続けた。
2.3. 最終製品(ゲル組成物)の調製法:
上記2.2. に従って調製したゲル基材に、上記2.1. に従って得た薬剤の懸濁液を徐々に添加し、純水を加えて、ゲルを7.00 kgとした。得られたゲルをBrogtech装置のビルトインホモジナイザーにおいて、1200回転/分、スリットの最大径(1.5mm)で5分間均質化した。
【実施例3】
【0072】
有効成分としてメトロニダゾールを含有するゲル組成物:
メトロニダゾール 1.000g
Silicone Fluid 0.65 cSt 2.000g
Silicone Fluid 100 cSt 0.200g
Carbopol 980 NF 0.250g
トリエタノールアミン 0.200g
ヒドロキシプロピル-メチルセルロース 0.400g
純水 (添加して全体として) 20.000g
上記レシピに従って、軟膏の調製に好適なBrogtech装置にて、ゲルをバッチサイズ7kgで調製した。
3.1. 有効成分を含有する懸濁液の調製法:
800 mlガラスビーカーにおいて、微粉末状メトロニダゾール(350.0g)を、Silicone Fluid 0.65 cSt(700.0g)及びSilicone Fluid 100 cSt(70.0g)と混合し、混合物をUltra-Turrax装置において、4000回転/分で5分間混合した。調製した懸濁液を、使用時まで、気密性部位において保存した。
3.2. ゲル基材の調製法:
純水(5500g)をBrogtech装置に注入し、温度を25℃にセットした。ポジション4のアンカー形ミキサーにおいて、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(140.0g)を、徐々に、混合物に添加し、軟膏基材が完全に溶解するまで(約1.5時間)、同じ速度(回転/分)で撹拌した。溶解後、Carbopol 980 NF(35.0g)を反応混合物に添加し、4時間撹拌した。混合物を、トリエタノールアミン(28.0g)及び純水(100.0g)の溶液で中和し、混合物がゲルコンシステンシーを有するまで撹拌を続けた。
3.3. 最終製品(ゲル組成物)の調製法:
上記3.2. に従って調製したゲル基材に、上記3.1. に従って得た薬剤の懸濁液を徐々に添加し、純水を加えて、ゲルを7.00 kgとした。得られたゲルをBrogtech装置のビルトインホモジナイザーにおいて、1200回転/分、スリットの最大径(1.5mm)で5分間均質化した。得られたゲルを、気密性部位において保存するか、又は気密性パッケージ(金属製チューブ)内に入れた。
【実施例4】
【0073】
有効成分としてセチリジンを含有するゲル組成物:
セチリジン 0.200g
メントール 0.200g
エチルアルコール 0.200g
Silicone Fluid 0.65 cSt 1.000g
Silicone Fluid 100 cSt 0.200g
Carbopol 980 NF 0.250g
トリエタノールアミン 0.200g
純水 (添加して全体として) 20.000g
上記レシピに従って、軟膏の調製に好適なBrogtech装置にて、ゲルをバッチサイズ7kgで調製した。
4.1. 有効成分を含有する懸濁液の調製法:
800 mlガラスビーカーにおいて、微粉末状セチリジン(70.0g)を、Silicone Fluid 0.65 cSt(350.0g)及びSilicone Fluid 100 cSt(70.0g)と混合し、混合物をUltra-Turrax装置において、4000回転/分で5分間混合した。調製した懸濁液を、使用時まで、気密性部位において保存した。
4.2. メントール溶液の調製法:
300 mlガラスビーカーにおいて、メントール(70.0g)をエチルアルコールに溶解した。溶液を、使用時まで気密で保存した。
4.3. ゲル基材の調製法:
純水(6000g)をBrogtech装置に注入し、温度を25℃にセットした。ポジション4のアンカー形ミキサーにおいて、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(140.0g)を、徐々に、混合物に添加し、軟膏基材が完全に溶解するまで(約1.5時間)、同じ速度(回転/分)で撹拌した。溶解後、Carbopol 980 NF(35.0g)を反応混合物に添加し、4時間撹拌した。混合物を、トリエタノールアミン(28.0g)及び純水(100.0g)の溶液で中和し、混合物がゲルコンシステンシーを有するまで撹拌を続けた。
4.4. 最終製品(ゲル組成物)の調製法:
上記4.3. に従って調製したゲル基材に、上記4.1. に従って得た薬剤の懸濁液を徐々に添加し、純水を加えて、ゲルを7.00 kgとした。得られたゲルをBrogtech装置のビルトインホモジナイザーにおいて、1200回転/分、スリットの最大径(1.5mm)で5分間均質化した。得られたゲルを、気密性部位において保存するか、又は気密性パッケージ(金属製チューブ)内に入れた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬有効成分を含有する経皮製剤であって、有効成分の粒子が高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆されており、これらの被覆された粒子がゲル又はクリーム基剤中に分散されていることを特徴とする経皮製剤。
【請求項2】
有効成分が、アシクロビル、ピロキシカム、メロキシカム、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム又はカリウム塩、クロトリマゾール、ビホナゾール、メトロニダゾール、ニフェジピン、ニトログリセリン又はセチリジンである請求項1記載の経皮製剤。
【請求項3】
高度に揮発性のシリコーン成分が、ヘキサメチルジシロキサン及び/又はオクタメチルトリシロキサン及び/又はデカメチルペンタシクロシロキサンである請求項1記載の経皮製剤。
【請求項4】
軟膏基剤が、カルボキシカルボニルポリマー、ヒドロキシプロピル‐メチルセルロース又はその混合物である請求項1記載の経皮製剤。
【請求項5】
請求項1記載の組成物を製造する方法であって、有効成分の粒子を、高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆し、得られた混合物をゲル又はクリーム基剤に分散させ、このようにして、ゲル又はクローム基剤中の粒子がシリコーンコーティングによって包囲されていることを特徴とする組成物の製法
【請求項1】
医薬有効成分を含有する経皮製剤であって、有効成分の粒子が高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆されており、これらの被覆された粒子がゲル又はクリーム基剤中に分散されていることを特徴とする経皮製剤。
【請求項2】
有効成分が、アシクロビル、ピロキシカム、メロキシカム、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム又はカリウム塩、クロトリマゾール、ビホナゾール、メトロニダゾール、ニフェジピン、ニトログリセリン又はセチリジンである請求項1記載の経皮製剤。
【請求項3】
高度に揮発性のシリコーン成分が、ヘキサメチルジシロキサン及び/又はオクタメチルトリシロキサン及び/又はデカメチルペンタシクロシロキサンである請求項1記載の経皮製剤。
【請求項4】
軟膏基剤が、カルボキシカルボニルポリマー、ヒドロキシプロピル‐メチルセルロース又はその混合物である請求項1記載の経皮製剤。
【請求項5】
請求項1記載の組成物を製造する方法であって、有効成分の粒子を、高度に揮発性のシリコーン又はその混合物によって被覆し、得られた混合物をゲル又はクリーム基剤に分散させ、このようにして、ゲル又はクローム基剤中の粒子がシリコーンコーティングによって包囲されていることを特徴とする組成物の製法
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−533163(P2010−533163A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515607(P2010−515607)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際出願番号】PCT/HU2008/000083
【国際公開番号】WO2009/007764
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(507333074)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際出願番号】PCT/HU2008/000083
【国際公開番号】WO2009/007764
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(507333074)
【Fターム(参考)】
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