説明

高度に通気性の生分解性フィルムバッグ

10〜40μmの厚さ及び950 g 30μm/m2 24hより大きい透水性を有する通気性で生分解性の均質なフィルムで作られたバッグであって、該生分解性のフィルムがデンプンを含みかつ水不溶性で60〜150℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを任意に含むバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的堆肥化(composting)の目的に特に適したものとする高いレベルの通気性を特徴とする生分解性の均質な(uniform)フィルムで作られたバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
堆肥化は、自然界で有機物を生活環に戻すプロセスを、制御されかつ加速された形で再生して模倣する工業的プロセスである。自然界では、生産され生活のためにもはや「有用」でない有機物(乾燥した葉、枝、動物の残渣など)は、土の中に存在してそれを自然の環に返す微生物により分解される。残存する分解性の小さい成分は、腐食質を構成し、これが、ゆっくりとしかし安定して栄養素(窒素、リン、カリウムなど)を放出するその能力があれば植物への重要な食物の供給を示し、土壌の一定の肥沃さを確実にする。よって、工業的堆肥化は、ある種類の腐食質、すなわち堆肥を得るのに必要な時間を減少させる狙いと同時に本質的に起こり、自然に得られる産物に関して最終産物の質を向上させる微生物活性の合理的な管理のために体系が提供されるプロセスである。工業的堆肥化は、多くの研究の主題であり、多くの堆肥化植物が非常に洗練されたプロセス及び装置に採用されている。しかし、有機廃棄物の工業的堆肥化の普及の主要な経済的障害の一つは、変換される有機物の重量に依存する堆肥化の高いコストにある。本発明による高度に通気性で生分解性の均質なフィルムで作られたバッグは、有機廃棄物の分別回収(differentiated collection)の開発を促進する。なぜなら、バッグが均質で通気性が高いので、廃棄される有機部分は、バッグ内にある間にかなりの重量減損を受けるからである。
【0003】
このことは、有機物含量が5%を超える廃棄物を捨てないことを2006年末までに義務付ける欧州規則の結果としても、有機廃棄物の分別回収の必要性が増大してきているという事実を考えると、なおさら重要である。
【0004】
上記の規則の観点において、イタリアのみの都市部の廃棄物の全量が約24 Mlトン程度、腐敗しやすい(putrescible)物質の含量が11.4 Mlトン程度であると見積もられることを心に留めるならば、廃棄物を安定化し、迅速な堆肥化又は生物安定化によりそれを促進することの重要性は明らかである。
【0005】
この種の廃棄物が捨てられている現在のシナリオにおいてさえも、本発明による生物分解性バッグの有用性は著しい。腐敗しやすい廃棄物は、その内容物の60%を超える水分からなり、重量の10%の減損でさえ、国のレベルで全体として数十万トンの水分の減損をもたらす。直接的な経済的節約とは別に、このことは、とりわけ、ごみ中の水分を数千トン少なくし、においの問題が低減された安定化された廃棄物及びゴミ捨て場との間の何千台のトラックの運行を節約することを意味する。買い物袋(shopper)の形でのスーパーマーケットによるこれらの特徴を有するバッグの販売は、自治体の廃棄物処理コストの著しい低減を許容し、同時に、腐敗しやすい廃棄物の分別回収の管理をより単純にするだろう。
【0006】
本発明の生分解性バッグは、その有用な寿命の最後で、食物のくずの回収のためのバッグとしての再利用のために設計された買い物袋の形でもあり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の説明
本発明は、通気性で生分解性の均質なフィルムで作られたバッグに関し、該フィルムは、10〜40μmの厚さ及びASTM E96-90に従って測定して950 g 30μm/m2 24hより大きい透水性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書において、均質なフィルムは、微視的及び巨視的なレベルの両方で欠陥が実質的にないフィルムを意味する。
【0009】
通気性で生分解性の均質なフィルムは、生分解性材料から作られる。好ましい材料は、生分解性ポリエステル及び生分解性デンプンベースのブレンドである。二酸−ジオールの種類の脂肪族−芳香族ポリエステルは、ポリエステルの中で特に好ましい。デンプンと脂肪族−芳香族ポリエステルとのブレンドは、デンプンベースのブレンドの中で特に好ましい。
二酸−ジオールタイプの生分解性ポリエステルに関して、ジカルボン酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びブラッシル酸を含む。
多価芳香族化合物の例は、フタル酸、特にテレフタル酸、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどを含む。
ジオールの例は、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオールを含む。
【0010】
ジカルボン酸及びジオールの他に、生分解性ポリエステルは、開始モノマーとして、天然又は合成のいずれかの起源の不飽和コモノマーを有利に含み得る。不飽和コモノマーの量は、ジカルボン酸/ジオールの合計の0.5〜45%の範囲内である。
合成起源の不飽和酸の例は、マロン酸、フマル酸、酢酸ビニル、アクリル酸及びメタクリル酸、ヒドロキシアルキルアクリレート及びヒドロキシアルキルメタクリレートを含む。
天然起源の不飽和コモノマーの例は、イタコン酸、モノ不飽和ヒドロキシ酸、例えばリシノール酸及びレスケロール酸(lesquerolic acid)、並びに一価又は多価不飽和のモノカルボン酸、例えばオレイン酸、エルカ酸、リノール酸及びリノレン酸である。
【0011】
脂肪族−芳香族ポリエステルは、ベースモノマーの他に、脂肪族ジカルボン酸のモル数に基づいて0〜30モル%の範囲の量のヒドロキシ酸を少なくとも含み得る。適切なヒドロキシ酸の例は、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ吉草酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、8-ヒドロキシカプロン酸、9-ヒドロキシノナン酸及び乳酸を含む。
【0012】
デンプンベースのブレンドに関して、デンプンの用語により、いずれの種類の天然のデンプン、例えばトウモロコシ、バレイショ、小麦、タピオカ、エンドウのデンプンなどを意味する。デンプンの用語は、化学的又は物理的に修飾されたデンプンをも含み、例えば、0.2〜2.5の範囲内の置換度のデンプンエステル、ヒドロキシプロピル化デンプン及び脂肪鎖で修飾されたデンプンを挙げることができる。デンプンは、分解された(destructurized)か又はゼラチン化された形のいずれかで用いることもできる。
特に好ましいデンプンベースのブレンドフィルムにおいて、該デンプンは、ポリマーマトリックス中に共連続(co-continuous)相又は分散された相として存在する。後者の場合において、デンプンは、1μm未満、好ましくは0.6μm未満の寸法を有する粒子として分散される。
【0013】
今回、分別廃棄物回収は、特にデンプンベースのフィルムで製造されると、材料の親水性の性質のために水分を失うことができる生分解性バッグを用いて行われる場合が多い。
【0014】
10〜40μmの厚さ、及び950 g 30μm/m2 24hより大きい、好ましくは1000 g 30μm/m2 24hより高い、さらに好ましくは>1100 g 30μm/m2 24hの透過性を有する生分解性の均質なフィルムに由来する本発明によるバッグは、特に密閉された容器内に入れなければ、7日未満で、好ましくは4日未満で廃棄物自体の重量の15重量%を超えて、好ましくは20%を超えて有機廃棄物を減少させることができる。
【0015】
フィルムが4000 g 30μm/m2 24hを超える通気性を有する場合、本発明によるバッグの製造に用いるにはもはや適さないことが見出されている。好ましくは、通気性は、3000 g 30μm/m2 24h未満であり、より好ましくは2500 g 30μm/m2である。
【0016】
バッグの特性を試験するために、バッグを、完全に水を吸収させたおがくず(通常、約20%のおがくずと80%の水)を充填し、バッグの底の下方からも通気を可能にする充分に広いメッシュを有する格子(grille)上で放置することができる。バッグは、23℃及び55% RHに調節された環境下に置くことができ、重量減損を秤量により測定することができる。
【0017】
容積に対して高い表面積を有するバッグは、この目的のために特に適する。5〜40 l、好ましくは10〜30 lの容積のバッグは、この目的のために特に適する。通気性である特性は、非分別の廃棄物回収のための大きいバッグにおいて有用である場合もあり得る。なぜなら、これは、ある量の水分の減損を許容し、結果として廃棄物の熱量の増加を許容するからである。
【0018】
本発明は、フィルムの透過性の値が>950 g 30μm/m2 24hに到達する充分に親水性の材料で作られた生分解性バッグだけでなく、マイクロ孔を形成可能であるレーザ又は無機もしくは有機の充填剤を用いて伸長することによるマイクロ穿孔プロセスにより、950 g 30μm/m2 24h又はそれより多い通気性レベルに到達する、より通気性の少ないフィルムで作られたバッグをも含む。マイクロ孔の用語により、フィルムを水蒸気に対して透過性にするが、大気圧で液体の水に対して実質的に非透過性にする孔を意味する。デンプンベースのフィルムにより作られたバッグは、室温においてさえも良好な生分解能力を特徴とするので特に好ましい(いわゆる「家庭堆肥化可能(home compostability)」。
【0019】
本発明によるデンプンベースのフィルムは、熱可塑性のデンプンを全組成物の20〜90%、より好ましくは25〜60%の量で含有しなければならない。デンプンと良好な適合性を有するという条件で、60〜150℃の融点を有する水不溶性の可塑性ポリマー(水の吸収が5%未満、好ましくは2%未満)は、別の必須の成分である。該ポリマーは、マイクロ穿孔により得られるバッグの基本的な原材料であり得る。
【0020】
機械的特性は、用途のために充分でなければならない。このことは、16 MPaより大きい極限引張強さ、>50 MPaのモジュラス、>300%の極限伸び、好ましくは22 MPaより大きい極限引張強さ、>100 MPaのモジュラス、>350%の極限伸びである、25〜30μmのフィルムで23℃、55% RHで測定した引張特性を意味する。
【実施例】
【0021】
実施例1
− 36.4%のデンプンGlobe 03401 Cerestar
− 50%のEcoflex(登録商標)(BASF)
− 13.6%のグリセリン
− 0.2部のErucamide
を含有する組成物を二軸押出機OMC、D = 50 mm、L/D = 36に入れ、温度プロフィール60/140/175/180×4/155×2で300 rpmにて操作し、脱気して最終水分含量を1%未満にした。
このようにして得られたグラニュールを、温度プロフィール120/135/145×7で64 rpmにて操作するGhioldiフィルム形成装置、D = 40 mm、L/D = 30に供給した。ASTM E 96-90により1460 g 30μm/m2 24hの通気性を有するフィルムを得た。
【0022】
種々の容積のバッグをこのフィルムで製造した。
均質のバッチから無作為に採取した3つのバッグを、以下の試験に用いた。
質量比1:4のおがくずと水の混合物を、適切な容器内で準備した。次いで、バッグに、準備した湿ったおがくずを充填した。表1は、バッグの容積による充填荷重を示し、2種の典型的な市販のバッグのサイズを表す。異なる容積のバッグを用いて、用いられるおがくず−水混合物の量を、比例的に変化させなければならない。
例えば、バッグが15リットルに等しい容積を有すると、おがくず−水混合物の重量は:
【数1】

に等しくなければならない。
【0023】
【表1】

【0024】
充填の後、開口部から約5 cmで、バッグに備えられた固定部(tie)又はひもの一片を用いてバッグを閉じる。次いで、バッグを、金属又はプラスチックのワイヤでできた1.5〜5 cmのサイズのセルを有する格子の上に放置した。次いで、格子を少なくとも地面から5 cmに吊るした。試験は、23℃(±2)及び55% RH(±2)に調節された環境で行った。次いで、バッグを試験の最初と7日後とに秤量した。
【0025】
各バッグの初期重量T0と最終重量Tfとの差を、D = (T0−Tf)のように決定し、それぞれの差の平均Dmを:
【数2】

のようにして決定した。
バッグは、試験期間全体にわたって無傷であり、DmとDの間の偏差(variation)は10%を超えない。
重量減損の値を、表2及び3に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
実施例2(比較)
実施例1を、以下の組成物:
− 28.0%のデンプンGlobe 03401 Cerestar
− 65.7%のEcoflex(登録商標)(BASF)
− 6.0%のグリセリン
− 0.3%部のErucamide
を用いて繰り返した。
ASTM E 96-90による850 g 30μm/m2 24hの通気性を有するフィルムを得た。該フィルムを用いて、20μmの厚さ及び10 lの容積のバッグを製造した。実施例1の試験を繰り返して、7日後に検出された重量減損の平均値は157.3 gであり、約10.48%の重量減損%に相当した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜40μmの厚さ及び950 g 30μm/m2 24hより大きい透水性を有する通気性で生分解性の均質なフィルムで作られたバッグ。
【請求項2】
前記通気性で生分解性の均質なフィルムの透水性が、1000 g 30μm/m2 24hより大きい請求項1に記載のバッグ。
【請求項3】
前記通気性で生分解性の均質なフィルムの透水性が、1100 g 30μm/m2 24hより大きい請求項1に記載のバッグ。
【請求項4】
前記通気性で生分解性の均質なフィルムがデンプンを含む請求項1〜3のいずれか1つに記載のバッグ。
【請求項5】
前記デンプンの量が、全組成物の20〜90重量%である請求項4に記載のバッグ。
【請求項6】
前記デンプンの量が、全組成物の25〜60%である請求項5に記載のバッグ。
【請求項7】
前記デンプンが、60〜150℃の融点を有する熱可塑性ポリマーと混合される請求項4に記載のバッグ。
【請求項8】
前記デンプンが、二酸−ジオールの種類の脂肪族−芳香族ポリエステルと混合される請求項4に記載のバッグ。
【請求項9】
前記通気性で生分解性の均質なフィルムが、マイクロ孔を含む請求項1に記載のバッグ。
【請求項10】
前記通気性で生分解性の均質なフィルムの透水性が、4000 g 30μm/m2 24hより小さい請求項1に記載のバッグ。

【公表番号】特表2007−532413(P2007−532413A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506741(P2007−506741)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003865
【国際公開番号】WO2005/097875
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(592081988)ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ (19)
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】