説明

高性能導電性充填剤およびそれから製造した導電性ポリマー

【課題】向上した物理的および電気的性質をもつ導電性複合材料を製造するための粒状の導電性充填剤の開発。
【解決手段】大きさが350〜1000ミクロンの間の黒鉛のような粗大炭素系コアの上に形成された導電性金属被覆を含む粒状の導電性充填剤をシリコーンエラストマーによって代表されるエラストマーのようなポリマーマトリックスと組み合わせて使用して導電性および電磁混信遮蔽性用途に向く複合材料を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品などの製造に適用するための導電性ポリマー組成物の中に使用される粒状の導電性充填剤に関し、より詳しくは、ポリマーマトリックスの中に均一に分散される、導電性金属被覆を上に有する粗大な炭素系コアに関する。
【背景技術】
【0002】
通常のシールド製品(shielding products)は宇宙航空部品から携帯電話にまで及ぶ電子分野に使用されて電磁混信(electromagnetic interference)(EMI)および高周波混信(radio frequency interference)(RFI)からの保護を提供する。代表的には、かかるシールド製品は低減された体積抵抗(DC抵抗)が遮蔽有効性(shielding effectiveness)の増進になるという前提に基づいて導電性充填剤をポリマーマトリックスの中に導入することによって形成された。業界誌Interference Technology Engineers' Master ITEM 1999の記事"Correlating DC Resistance to the Shielding Effectiveness of an EMI Gasket" Thomas Clupper p.59には、遮蔽有効性を抵抗に関連付ける理論モデルが提示されている。2つのガスケット材料のEMI遮蔽有効性と各ガスケットを横切るDC抵抗は各ガスケットが取付具に搭載されている間に測定された。取付具を横断してガスケットAについては1オームの抵抗が測定され、そしてガスケットBについては0.01オームの抵抗が測定された。ガスケットAおよびBのEMI遮蔽有効性は100MHzにおいてそれぞれ65dBおよび42dBと測定されており、低減された体積抵抗率をもっての遮蔽有効性の増進を示している。
【0003】
初期には、導電性充填剤は固体の貴金属粒子から構成された。しかしながら、かかる充填剤は著しく高価であるので、遮蔽および導電率の諸性質を喪失することなく更に経済的な導電性充填剤を開発することが試みられた。より安価な代替材料はガラス、アルミニウムまたは銅のような比較的安価なコア材料の上にクラッド(clad)された貴金属からなる。貴金属の使用は用途によっては高価過ぎるとされる。その後、この目的に銅およびニッケル粉末が使用され、その後に、ニッケルをクラッドした黒鉛または炭素のコア粒子が使用された。
【0004】
米国特許第5,284,888号明細書には、2つのポリマーから形成されたポリウレタン樹脂の中に安定化された導電性充填剤とアゾールを有して成るEMI/RFI遮蔽性組成物が開示されている。好まれる充填剤は銀安定化銅粉末である。
【0005】
Kalinoski他の米国特許第6,096,413号明細書には、導電性充填剤と組み合わされたシリコーン、ウレタンおよび/または熱可塑性ブロック共重合体を伴ってフォーム・イン・プレイス法(form-in-place process)を通して製造された導電性ガスケットが記載されている。エラストマーに充填するのに使用される導電性充填剤は純銀、貴金属めっき非貴金属、たとえば、銀めっきした銅、ニッケルまたはアルミニウムから選ぶことができる。非貴金属めっき非金属を含めて非貴金属系材料も適しており、その例が銅被覆鉄粒子であろう。さらに、カーボンブラックおよび黒鉛およびその組合せのような非金属が使用されてもよい。
【0006】
Kalinoskiによって、"Corrosion-resistant form-in-place EMI shielding gasket"と題する米国特許第5,910,524号明細書には、10MHz〜10GHzにおいて少なくとも80dBのEMI遮蔽有効性をもつ、75ミクロンの大きさを有するニッケル被覆黒鉛の導電性充填剤を使用するEMI遮蔽性ガスケットが記載されている。この材料の体積抵抗率は約500〜1000ミリオーム−cmであると報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の概要)
本発明の主な目的は350〜1000ミクロンの粗大な粒子サイズをもつ炭素コアの上の導電性金属被覆から構成された粒状の導電性充填剤を提供することである。この粒状の導電性充填剤はポリマーマトリックスと組み合わされて、所期部品を製造できる向上した物理的および電気的性質をもつ導電性複合材料を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の本質的特徴は粒径が先行技術で使用されたもの(100ミクロン以下)よりも有意に大きい(約350〜1000ミクロン)黒鉛のような炭素粒子の上にニッケルまたは別の導電性金属材料を被覆することである。それから、金属被覆黒鉛はエラストマーマトリックスたとえばシリコーンの中に組み込まれ、それを導電性にする。充填エラストマーはドアやパネルのシールのような用途向けの様々なタイプのEMI遮蔽性ガスケットに成形される。効用における驚くべき向上は先行技術で使用されたものよりも有意に大きい金属被覆炭素粒子の使用の結果である。大きい金属被覆炭素粒子を充填剤として使用したことの発明の利益は、より小さい粒子サイズを有する類似組成の現行充填剤に比べて、改善されたプロセスレオロジー(process rheology)、充填剤配合における大きな融通性、改善された導電率と改善された電気安定性および低い密度が挙げられる。
【0009】
その広い態様においては、ポリマーマトリックスと共に使用して導電性ポリマー組成物を形成するための、被覆粒子から構成された粒状の導電性充填剤が提供され、各被覆粒子は、50パーセンタイルに基づいて大きさが少なくとも約350ミクロンの中心の炭素系コアと、前記中心の炭素系コアの上の導電性金属被覆とを含んでいる。中心の炭素系コアは天然黒鉛、合成黒鉛、カーボンブラックおよびそれらの混合物からなる群から選ばれ、そして約350〜1000ミクロンの範囲内の平均サイズ、好ましくは400〜800ミクロンの範囲内の平均サイズ、より好ましくは約600ミクロンの平均サイズを有する。導電性金属は、ニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、亜鉛、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、インジウムおよびそれらの合金からなる群から選ばれた一つまたはそれ以上の金属であり、そして被覆粒子の約20〜90重量%、好ましくは約40〜90重量%を構成する。貴金属、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムおよびそれらの合金は単独で使用されていてもよいし、又は非貴金属、ニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、亜鉛、インジウムおよびそれらの合金の一つまたはそれ以上を被覆していてもよい。粒状の導電性充填剤は好ましくは、ニッケルの導電性金属被覆をもった天然黒鉛または合成黒鉛の中心の炭素系コアであり、ニッケルは被覆粒子の約40〜80重量%を構成しそして炭素系コアを包み込んでいる。被覆粒子の約1〜40重量%を構成する金または銀がニッケルを包み込んでいてもよい。
【0010】
本発明はさらに、炭素コアの上に導電性金属被覆を有して形成された粒子の充填剤をポリマーマトリックスの中に均一に分散して成る複合材料にも及び、その粒状充填剤は代表的には約25〜35容積%の充填剤配合量を有する。ポリマーマトリックスは、炭化水素ゴム(EPM、EPDM、ブチルなど)、ニトリルゴム(nitriles)、ポリクロロプレン、アクリル、フルオロおよびクロロスルホン化ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリスルフィド、ニトロソゴム、シリコーンおよびフルオロシリコーンを含めて天然ゴムおよび合成エラストマーのいずれか単独または組合せから選ばれてもよい。好ましくは、前記エラストマーポリマーマトリックスはシリコーンエラストマーであり、そして前記粒状充填剤はニッケルで被覆されている黒鉛粉末である。より好ましくは、黒鉛粉末は約600ミクロンの平均サイズを有しており、ニッケルは被覆粒子の約60重量%以下を構成し、そして被覆粒子は複合材料の約30容積%を構成する。
【0011】
更なる態様においては、導電性ポリマー組成物は更に、20〜200ミクロンの範囲内の大きさを有する銀被覆ガラス球によって代表される粒状の導電性充填剤約1〜30重量%を含んでいる。
【0012】
更に別の態様においては、被覆粒子の約1〜40重量%の量の金または銀によって代表される貴金属がニッケルのような非貴金属を被覆していてもよい。
【0013】
基体に適用するためのEMI遮蔽を提供する本発明の方法は、ポリマーマトリックスと該ポリマーマトリックスの中に均一に分散された粒状の導電性充填剤との複合体を形成する工程を含み、前記粒状充填剤は、天然黒鉛、合成黒鉛、カーボンブラックおよびそれらの混合物からなる群から選ばれた、約350〜1000ミクロンの範囲内の平均サイズ、好ましくは約400〜800ミクロンの範囲内の平均サイズを有する中心の炭素系コアと、該中心の炭素系コアを包み込むニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、亜鉛、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、インジウムおよびそれらの合金からなる群から選ばれる一つまたはそれ以上の金属の導電性金属被覆を含んでいる。導電性金属、複合金属またはそれらの合金は被覆粒子の約20〜90重量%、好ましくは被覆粒子の約40〜90重量%を構成する。
【0014】
導電性金属は好ましくはニッケルであり、そして中心の炭素系コアは好ましくは、約600ミクロンの平均粒子サイズを有する天然黒鉛または合成黒鉛であり、前記ニッケルは被覆粒子の約40〜80重量%、好ましくは約60重量%を構成する。中心の炭素系コアを包み込んでいるニッケルのような非貴金属被覆の上に被覆を形成する金または銀のような貴金属は被覆粒子の1〜40重量%を構成してもよい。
【0015】
粒状充填剤は更に、20〜200ミクロンの範囲内の大きさを有する銀被覆ガラス球によって代表される粒状の導電性充填剤約1〜30重量%を含んでいてもよい。
【0016】
粒子サイズ350〜1000ミクロン(50パーセンタイルに基づいて)の黒鉛コアの上に金属のまたは複合金属の被覆を付与することによるような本発明の実施の結果として、次のものが提供される:
改善された加工レオロジーを有する導電性充填剤
電気的および機械的性能を達成するのに広範囲の配合レベルを有する導電性充填剤
より少ない金属を使用する導電性充填剤
より低い密度を有する導電性充填剤
より低い価格を有する導電性充填剤
改善された導電度を有する導電性充填剤
改善された電気安定性を有する導電性充填剤
周知の方法によって二次加工できる導電性エラストマー
【0017】
本発明の、粒状の複合充填剤、導電性ポリマー組成物およびEMI遮蔽提供方法は図面と組み合わせてなされた以下の記載からよりよく理解されるであろう。
【0018】
(好ましい態様)
図面を参照すると、図1には、ポリマーマトリックス12の中に充填剤として使用された先行技術ニッケル被覆黒鉛粒子10の例が示されている。導電性粒子は内部の黒鉛コア14の上にニッケル金属被覆16をもって成る。
【0019】
図2はポリマーマトリックス22の中の本発明の導電性充填剤粒子20を描いており、ここでは、黒鉛系コア24は金属被覆26を有する。本発明の600ミクロンの大きさの粒子の例を図解している図2の中に描かれた粒子は図1に描かれた先行技術の100ミクロンの大きさの粒子よりも体積が216倍大きい。
【0020】
図2に図解されている態様においては、内部コアは黒鉛である。ニッケル被覆26は周知の通常技術たとえば無電解めっき、カルボニル法または湿式冶金法(hydrometallurgy)を使用してコア24に、好ましくはコアを連続的に包み込むように、適用される。ニッケルや銀のような金属被覆は粒子から粒子へのバルク導電率(bulk conductivity)を付与するのに機能的である。コアを金属で完全に包み込むことが好ましいけれども、コアを金属によって部分クラッドすることで所期の導電率またはEMI遮蔽有効性が達成されてもよいということは理解されるであろう。
【0021】
内部コア24は、大きさが約350〜1000ミクロンの範囲内の平均サイズ、好ましくは400〜800ミクロンの範囲内の平均サイズ、より好ましくは約600ミクロンの平均サイズを有するいずれの適する天然または合成黒鉛から形成されてもよい。
【0022】
金属被覆26はニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、亜鉛、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、インジウムまたはそれらの合金から選ばれ、そして該組成において導電率を付与するのに必要である量でコアを包み込む。被覆粒子の約20〜90重量%の量での、好ましくは約40〜90重量%の量での金属被覆または複合金属被覆は所期導電率を付与するのに適することが判明した。被覆は非貴金属または貴金属の単独被覆であってもよいし、又は複合被覆、好ましくは、ニッケル上の金または銀のような非貴金属の上の貴金属の複合被覆、であってもよい。ポリマーマトリックスは天然および合成エラストマー、すなわち、炭化水素ゴム(EPM、EPDM、ブチルなど)、ニトリルゴム、ポリクロロプレン、アクリル、フルオロおよびクロロスルホン化ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリスルフィド、ニトロソゴム、シリコーンおよびフルオロシリコーンおよびアクリル樹脂(acrylics)およびそれらの混合物を含めて天然ゴムおよび合成エラストマー、が挙げられる。
【0023】
本発明の粒状導電性充填剤は、導電性充填剤粒子密度およびポリマーマトリックス密度に依存して、複合材料の80重量%以下の量で、好ましくは約50〜70重量%の量で存在する。たとえば、ニッケル20重量%を含有する粒子は複合材料の約35−45重量%以下を構成するであろう、そしてニッケル80重量%を含有する粒子は複合材料の約70−80重量%以下を構成するであろう(ポリマー密度を〜1g/cmと推定して)。
【0024】
該粒状導電性材料は改善された流動特性をポリマーマトリックスに付与するのに20〜200ミクロンのサイズ範囲内の銀被覆ガラス球によって代表されるような1〜30重量%の量でのその他の粒状導電性充填剤と混合されてもよい。
【0025】
EMI遮蔽性およびその他の導電性用途のための従来の導電性充填剤は250ミクロンよりも小さい粒子を使用している。或る種の用途(たとえば、フォーム・イン・プレイス法によって製造されるもの)はガスケットが非常に薄い(1mm未満)か又は小さな断面積を有するので導電性充填剤が小さな粒子サイズを有することを要求する。かかるガスケットは充填剤が100ミクロン未満の大きさの粒子サイズを有することを要求する。他の用途、たとえば、囲いの上のドアやパネルのシールは粒子サイズに対するかかる固有の制約を有しない。かかる比較的厚いガスケット用途は通常150ミクロン未満の大きさである先行技術の導電性充填剤を使用することに制限される必要がない。
【0026】
ポリマーに導電性充填剤を配合する機械的方法は特定された導電率性能を生じるために達成されるべき十分な配合レベルを要求する。配合レベルは代表的には電気パーコレーション閾値(electrical percolation threshold)以上であり、代表的には、25〜35容積%の充填剤配合量の範囲にある。高い配合レベルはしばしば、配合、成形および押出のような機械的加工における困難さの原因になり、そこでは、充填剤があまりに多いと材料が十分に流動できない。かかる流動学的問題はしばしば、より少ない充填剤を使用することによって解決され、それは導電率を減少させる犠牲を伴う。二次加工されると、ポリマー性の導電性ガスケットは硬度および強度について予め特定された機械的性質を有する。ポリマーエラストマーから製造されたガスケットは十分に導電性でもある密封性の耐久性シールを形成するように柔軟で且つ強いことが望まれる。普通の挑戦はエラストマーによって与えられる機械的性質を弱めすぎることなく必要な電気的性質を付与するのに十分な充填剤を使用することである。ポリマーの中に配合された粗大粒子は同じ組成の小さな粒子に比べてポリマーによって湿潤されるべき全体の粒子表面積が小さい。従って、粗大粒子は微細粒子に比べて加工中に流動性またはレオロジーの改善をもたらす。粗大粒子によって付与される改善された流動性は硬化ガスケット材の電気的および機械的性質を最適化するための充填剤配合量の調節における融通性の改善を生じる。微細粒子に比べて単位体積当りの表面積が小さい粗大粒子には更なる固有の利点が存在する:金属被覆の総量が少なくても粗大粒子上では低表面積故に同じ金属被覆厚さを生じる。金属が少量であることは、材料の密度がより低くなるという利点と、より少ない金属を使用することによる充填剤の費用節約という利点になる。金属被覆厚さが変わらないので、金属量の減少という属性は性能を低下させない。
【0027】
また、粗大粒子は同じ組成の微細粒子に比べてエラストマーの中で等しい容積配合量において向上した導電率を提供する。少ない数で粗大粒子はエラストマー内で微細粒子と同じ容積を占め(等しい容積配合量において)、結果として、表面−対−表面の電気接点が少なくなる。粒子充填ポリマーの導電率は主として、粒子−対−粒子の接点抵抗によって決定され、そして容積当りの粒子数が小さいほどエラストマー内の一定距離での電気接点が少なくなるであろう。粗大粉末は同じ配合レベルでは微細粉末に比べて直列回路中の抵抗点が少ないであろう、そして結果としてガスケットの導電率の改善を生じるのである。熱老化(heat aging)に対する改善された電気抵抗は、同じ容積配合レベルにおいて微細なニッケル黒鉛充填剤に比べて粗大なニッケル被覆黒鉛充填剤を配合したシリコーンについて観察された予想外の向上であった。この驚くべき観察は、明確には理解されないが、熱老化の影響によって崩壊されるはずの電気接点の数がより少ない粗大粉末に関連付けてもよい。
【0028】
次に、下記の非限定的な実施例を参照して本発明の粒状導電性充填剤および複合材料を記載する。
【実施例1】
【0029】
611ミクロンの平均粒子サイズの黒鉛粉末は53重量%ニッケルと47重量%黒鉛(真の粒子密度3.7g/cm)の導電性粉末を生じるように湿式冶金法によってニッケルをクラッドされた。比較としては、63.5重量%Niと36.5重量%黒鉛(真の粒子密度4.2g/cm)平均粒子サイズ120ミクロンの組成の従来のニッケル被覆黒鉛粉末(Ni/黒鉛)を基準の導電性粉末充填剤として使用した。導電性シリコーンゴムシートを次のように製造した。2本ロールミル上で各粉末サンプルと熱硬化性シリコーン樹脂を、611ミクロン粉末については粉末配合量60重量%にそして120ミクロン粉末については63.5重量%に、配合した。この、2つの粉末について使用された異なる重量配合量は、約31%の等しい充填剤容積配合量をもつサンプルを製造するために、真の粒子密度の差異を補正するものであった。
【0030】
120ミクロンのニッケル黒鉛粉末は樹脂の中に充填剤を完全に組み入れて均一かつ十分にブレンドされた組成物を形成するのに35分を要した。対照的に、611ミクロンのニッケル黒鉛粉末は同じ作業者および配合手順をもって同じ均一性と十分にブレンドされた組成物を達成するのに15分しか要しなかった。粗大な方の充填剤ではより迅速な配合が観察されたことに加えて、製造された配合物材料は追加の充填剤を受け入れるのにより大きい親和力を有していた。
【実施例2】
【0031】
実施例1で製造された通りの120ミクロンの粒子ならびに611ミクロンの粒子を含有するシリコーン樹脂配合物材料は幅15cmおよび厚さ1.8mmの正方形の導電性シリコーンゴムシートを形成するようにホットプレスで硬化され成形された。導電性硬化シートの体積抵抗率はシートから切り取った直径1cmの円板について、4点抵抗プローブ(Keithely(登録商標)モデル580マイクロオーム計)に接続した2つの電極を通して測定された。体積抵抗率の計算は各導電性シリコーンゴム円板の対端上に押し付けられた2つの電極の間のゴムの体積を考慮した。
【0032】
この方法によって測定された体積抵抗率は120ミクロンおよび611ミクロンのニッケル黒鉛粉末について、それぞれ25mΩ−cmおよび17mΩ−cmであった。これはシリコーンゴムの中に配合されたときに微細粉末に比べて粗大粉末では体積抵抗率の32%減少を表わしている。円板のショアA硬度は120ミクロンおよび611ミクロンのニッケル黒鉛粉末について、それぞれ79および77であると測定された。
【実施例3】
【0033】
実施例2で製造された円板を、150℃に設定された空気循環炉の中に48時間置いた。それから、円板を再び体積抵抗率について測定し、それを表1に報告してある。
【0034】
【表1】

【0035】
120ミクロン粉末をもつサンプルは体積抵抗率が2.3倍増(または124%増)であったが、粗大サンプルをもつサンプルは1.6倍増(または64%増)でしかなかった。
【0036】
勿論、ここに記載された本発明の態様には、特許請求の範囲によって規定されている通りの本発明の範囲を逸脱することなく変更が可能であるということが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ポリマーマトリックスの中に配合されている先行従来のニッケル被覆黒鉛粒子の断面図である。
【図2】ポリマーマトリックスの中に配合されている本発明の導電性充填剤粒子の一態様の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 従来のニッケル被覆黒鉛粒子
12 ポリマーマトリックス
14 黒鉛コア
16 ニッケル金属被覆
20 本発明の導電性充填剤粒子
22 ポリマーマトリックス
24 黒鉛系コア
26 金属被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマー組成物を形成するためにポリマーマトリックスと共に使用される被覆粒子を含む粒状の導電性充填剤であって、各被覆粒子が、50パーセンタイルに基づいて大きさが少なくとも350ミクロンの中心の炭素系コアと該中心の炭素系コアの上の導電性の金属被覆または複合金属被覆を含んでいる、前記粒状充填剤。
【請求項2】
前記中心の炭素系コアが天然黒鉛、合成黒鉛、カーボンブラックおよびそれらの混合物からなる群から選ばれ、そして約350〜1000ミクロンの範囲内の平均サイズ、好ましくは約400〜800ミクロンの範囲内の平均サイズを有し、そして/または前記の導電性の金属被覆はニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、亜鉛、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、インジウム、イリジウムおよびそれらの合金からなる群から選ばれた一つまたはそれ以上の金属を含み、そして複合金属被覆は炭素系コアを被覆するニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれた非貴金属被覆と、該非貴金属被覆を包み込む金、銀、白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムからなる群から選ばれた貴金属とを含み、そして/または導電性金属またはその合金が被覆粒子の約20〜90重量%、好ましくは約40〜90重量%を構成する、請求項1の粒状充填剤。
【請求項3】
前記導電性金属被覆がニッケルであり、そして前記中心の炭素系コアが天然黒鉛または合成黒鉛であり、好ましくは、ニッケルが被覆粒子の約40〜80重量%でありそして炭素系コアを包み込んでいる、請求項1または2の粒状充填剤。
【請求項4】
前記複合金属被覆が炭素系コアを被覆するニッケルと該ニッケル被覆を包み込む金または銀を含んでいる、請求項1〜3のいずれか一項の粒状充填剤。
【請求項5】
50パーセンタイルに基づいて大きさが少なくとも約350ミクロンの中心の炭素系コアと該中心の炭素系コアの上の導電性の金属被覆または複合金属被覆とを含む粒状の導電性複合充填剤をポリマーマトリックスの中に含有している導電性ポリマー組成物であって、前記粒状の導電性充填剤が導電性ポリマー組成物の約25〜35容積%を構成している、前記導電性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマーマトリックスが炭化水素ゴム(EPM、EPDM、ブチルなど)、ニトリルゴム、ポリクロロプレン、アクリル、フルオロおよびクロロスルホン化ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリスルフィド、ニトロソゴム、シリコーンおよびフルオロシリコーンからなる群から選ばれ、そして/または前記中心の炭素系コアが天然黒鉛、合成黒鉛、カーボンブラックおよびそれらの混合物からなる群から選ばれ、かつ約350〜1000ミクロンの範囲内の平均サイズ、好ましくは約400〜800ミクロンの範囲内の平均サイズを有し、そして前記導電性金属がニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、亜鉛、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、インジウムおよびそれらの合金からなる群から選ばれた一つまたはそれ以上の金属であり、そして/または導電性金属またはその合金が、好ましくは、被覆粒子の約20〜90重量%、好ましくは約40〜90重量%を構成する、請求項5の導電性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記導電性金属被覆がニッケルであり、そして前記中心の炭素系コアが約350〜1000ミクロンの範囲内の平均サイズ、好ましくは約400〜800ミクロンの範囲内の平均サイズを有する天然黒鉛または合成黒鉛であり、前記ニッケル被覆が天然または合成黒鉛を包み込み、そして/または前記ポリマーマトリックスが好ましくはシリコーンポリマーであり、そして/または好ましくは、ニッケルが被覆粒子の約40〜80重量%を構成しそして炭素系コアを包み込んでおり、前記粒状充填剤が導電性ポリマー組成物の約30容積%を構成する、請求項5または6の導電性ポリマー組成物。
【請求項8】
複合金属被覆が、炭素系コアを被覆するニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれた非貴金属被覆と、該非貴金属被覆を包み込む金、銀、白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムからなる群から選ばれた貴金属とから構成され、そして/または黒鉛粉末が好ましくは約600ミクロンの平均サイズを有し、そしてニッケルが被覆粒子の約60重量%を構成し、そして/または更に、好ましくは、20〜200ミクロンの範囲の大きさを有する銀被覆ガラス球によって代表される粒状の導電性充填剤を約1〜30重量%含んでいる、請求項5〜7のいずれか一項の導電性ポリマー組成物。
【請求項9】
基体への適用に向くEMI遮蔽を提供する方法であって、ポリマーマトリックスと該ポリマーマトリックスの中に均一に分散された粒状導電性充填剤との複合材料を、複合材料中の約25〜35容積%の粒状導電性充填剤の量で、形成する工程を含み、前記ポリマーマトリックスが炭化水素ゴム(EPM、EPDM、ブチルなど)、ニトリルゴム、ポリクロロプレン、アクリル、フルオロおよびクロロスルホン化ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリスルフィド、ニトロソゴム、シリコーンおよびフルオロシリコーンから選ばれ、前記粒状充填剤が、天然黒鉛、合成黒鉛、カーボンブラックおよびそれらの混合物からなる群から選ばれた約350〜1000ミクロンの範囲内の平均サイズ、好ましくは約400〜800ミクロンの範囲内の平均サイズを有する中心の炭素系コアと、該中心の炭素系コアを包み込むニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、亜鉛、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、インジウムおよびそれらの合金からなる群から選ばれた一つまたはそれ以上の金属の導電性の金属被覆または複合金属被覆とを含んでいる、前記方法。
【請求項10】
金属被覆、複合金属被覆またはそれらの合金が被覆粒子の約20〜90重量%、好ましくは約40〜90重量%を構成し、そして/または、好ましくは、導電性金属がニッケルであり、そして中心の炭素系コアが約600ミクロンの平均粒子サイズを有する天然黒鉛または合成黒鉛であり、前記ニッケルが被覆粒子の約60重量%を構成し、そして導電性充填剤が複合材料の約30容積%を構成し、そして/または、好ましくは、複合金属被覆が、炭素系コアを被覆するニッケル、銅、アルミニウム、錫、コバルト、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれた非貴金属、好ましくはニッケル、と、該非貴金属被覆を包み込む金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムおよびそれらの合金からなる群から選ばれた貴金属、好ましくは金または銀、とから構成され、そして/または、好ましくは、ポリマーはシリコーンであり、そして複合材料が炭素系コアを被覆するニッケルと該ニッケルを包み込む金または銀とを含んでおり、そして/または、好ましくは、粒状充填剤が更に、20〜200ミクロンの範囲の大きさを有する銀被覆ガラス球によって代表される粒状の導電性充填剤約1〜30重量%を含んでいる、請求項9の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−27111(P2007−27111A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189913(P2006−189913)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(504455470)スルザー メテコ(カナダ)インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】