説明

高性能断熱材

【課題】
本発明が解決しようとする課題は、芯材に独立気泡性の樹脂発泡体を用いることで、真空度だけに依存しない真空断熱材とすることにより、少ない性能変化と高断熱性能、高環境性能を有した高性能断熱材を提供することを目的とする。
【解決手段】
独立気泡性の樹脂発泡体(A)とガスバリアフィルム(B)からなり、樹脂発泡体(A)を芯材としてその全体をガスバリアフィルム(B)で覆ったのち、樹脂発泡体(A)とガスバリアフィルム(B)との空間を10−9Pa以上1.01325×10Pa未満とすることによって前記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少ない性能変化、高断熱性、高環境性能を有した高性能断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高断熱性住宅用断熱材は、かつて、ウレタン樹脂をフロンガスで発泡させた発泡ウレタンが広く用いられてきた。
しかしながら、高まる環境意識の中で、フロンガスによるオゾン層破壊が問題視され、脱フロンの断熱材が強く求められるようになり、フロンガスに代わる発泡ガスを用いた断熱材(特許文献1)や真空断熱材(特許文献2)の開発が行われるようになった。
中でも真空断熱材は、発泡樹脂断熱材と比べて高い断熱性能を有する断熱材であり、建材用途としての利用も進められている。
しかしながら真空断熱材は、外皮材であるガスフィルムのピンホールなどにより経時的に著しく断熱性能が低下することが課題となっている。
【0003】
著しい性能低下の要因の一つに、真空断熱材の多くがグラスファイバーなどの繊維系断熱材を芯材としていることが挙げられる(特許文献3)。すなわち真空がブレイクすることにより樹脂発泡断熱材よりも断熱性能の低い繊維断熱材と同程度の断熱性能となるためである。
この性能低下の課題に対し、ガスバリアフィルムの検討が広く行われているが、十分な結果は得られていない。
【特許文献1】特開2007−332203号
【特許文献2】特開2007−239288号
【特許文献3】特開2006−220214号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、前記課題に鑑み、芯材に独立気泡性の樹脂発泡体を用いることで、真空度だけに依存しない真空断熱材とすることにより、少ない性能変化と高断熱性能、高環境性能を有した高性能断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するために鋭意検討した結果、以下により解決したものである。
1) 独立気泡性の樹脂発泡体(A)とガスバリアフィルム(B)からなり、樹脂発泡体(A)を芯材としてその全体をガスバリアフィルム(B)で覆った構造体の断熱材であり、構造体の内部の減圧度が10−9Pa以上1.01325×10Pa未満である断熱材(V)。
2) 前記樹脂発泡体(A)が、平均孔径1μm以上1000μm以下の空孔(L)と、平均孔径0.01μm以上1μm未満の空孔(S)を有し、空隙率(X)が80%以上であることを特徴とする、前記1)に記載の断熱材(V)。
3) 前記樹脂発泡体(A)の空孔(L)の数密度が10個/mm以上10個/mm以下、空孔(S)の数密度が10個/μm以上10個/μm以下であることを特徴とする、前記2)に記載の断熱材(V)。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、少ない性能変化、高断熱性、高環境性能を有した高性能断熱材を提供することができ、住宅用の断熱材などに好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、独立気泡性の樹脂発泡体(A)について説明する。
本発明における独立気泡性の樹脂発泡体(A)とは、後述する方法により測定された独立気泡率が50%以上100%未満の樹脂発泡体を指す。独立気泡率が50%未満であると芯材の断熱性能が低くなり、性能変化が大きくなる。100%以上の独立気泡率は測定原理上存在し得ない。
より高い断熱性能を求める場合の好ましい独立気泡率は、70%以上100%未満、より好ましくは、80%以上100%未満である。
【0008】
さらに樹脂発泡体(A)の断熱性能を高めるために、後述する方法により測定される空隙率(X)が60%以上100%未満であることが好ましい。空隙率(X)が60%以下では十分な断熱性能が発現されない場合がある。また空隙率(X)が100%以上の発泡体は測定原理上存在し得ない。より高い断熱性能を求める場合の好ましい空隙率(X)は80%以上100%未満である。
【0009】
また、独立気泡率と空隙率の好ましい範囲は、独立気泡率が50%以上100%未満かつ、空隙率(X)が60%以上100%未満で、より好ましくは独立気泡率が80%以上100%未満かつ空隙率(X)が80%以上100%未満である。
上記のような樹脂発泡体(A)を製造する方法は、樹脂粘度や架橋度を制御することにより作成が可能で、用いる樹脂によって公知の方法により作成することができる。
【0010】
用いる樹脂の例を挙げると、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フェノール系樹脂があり、これらを1種類もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0011】
製造方法としては、樹脂原料を混合しながらブタンやペンタンなどの発泡剤を添加し、加熱によるポリマー化と発泡を同時に行う発泡方法や、樹脂を押出機で加熱溶融させながら炭酸ガスなどの発泡剤を圧入し、大気中に押出すことにより発泡させる押出発泡と呼ばれる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
また、樹脂発泡体(A)にさらなる高断熱性能を求める場合、発泡体の断面を顕微鏡などで観察した際に見られる平均孔径が、1μm以上1000μm以下の空孔(L)と、平均孔径が0.01μm以上1μm未満の空孔(S)を有し、空隙率(X)が80%以上の樹脂発泡体(A)であることが好ましい。
【0013】
空孔(L)の平均孔径が1000μmを超えると、空孔内に存在する気体の対流や輻射による伝熱が大きくなり、高い断熱性能が得られない可能性がある。空孔内の気体の伝熱を効果的に抑制するには、空孔(L)の平均孔径は1μm以上500μm以下であることが好ましい。より好ましくは、1μm以上100μm以下である。
【0014】
また空隙率(X)が80%未満であると、発泡体中の樹脂による伝熱が大きくなるため、断熱性が低下しやすくなる。発泡体中の樹脂の伝熱を効果的に抑制する点から、空隙率(X)は90%以上であることが好ましく、より好ましくは空隙率(X)は93%以上である。
また、空孔(S)が小さければ小さいほど、薄い空孔壁面に存在できるため、空孔(S)の平均孔径は1μm未満であることが好ましい。空孔(S)としては、0.05μm以上1μm未満であることが好ましく、より好ましくは、0.10μm以上1μm未満である。
【0015】
空孔(L)の数密度は10個/mm以上10個/mm以下、空孔(S)の数密度は10個/μm以上10個/μm以下であることが好ましい。このようにすることで空孔(L)周辺に微小な空孔(S)を形成可能となり、より高い空隙率と樹脂の伝熱を大幅に低減することが可能となる。より好ましくは、空孔(L)の数密度が10個/mm以上10個/mm以下、孔径(S)の数密度が10個以上/μm10個/μm以下である。
【0016】
また、高い空隙率(X)の樹脂発泡体を得ようとする場合、空孔(S)の面積占有率は0%より大きいほうが好ましい。空孔(S)の面積占有率はより好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、特に好ましくは30%以上である。空孔(S)の面積占有率は大きければ大きいほど有効であるが、実質的な上限は50%程度である。
【0017】
また、空孔(L)及び空孔(S)を含む空孔は、樹脂発泡体(A)中に均質に散在していることが好ましい。
【0018】
上記のような樹脂発泡体(A)を製造する方法としては、発泡剤への溶解度の差が0%を超えて10%未満の範囲で異なる樹脂Cと樹脂Dをナノアロイ化した混合物に発泡剤を含浸して発泡させる方法、あるいは、発泡剤への溶解度の差が10%以上の異なる樹脂Eと樹脂Fをナノアロイ化した混合物に発泡剤を含浸して発泡させたのち、樹脂Fを分解する方法などを挙げることができる。
【0019】
初めに前者の、発泡剤への溶解度の差が0%を超えて10%未満の範囲で異なる樹脂Cと樹脂Dをナノアロイ化した混合物に発泡剤を含浸して発泡させる方法について説明する。
【0020】
この方法は、ナノオーダーで均一に分散した島成分と海成分の間のわずかな溶解度差により、空孔(L)と空孔(S)を生成する方法である。
【0021】
発泡に用いられる樹脂Cと樹脂Dは特に限定しないが、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリエチレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。特に環境性能を重視する場合、樹脂Cとしてポリ乳酸系樹脂、樹脂Dとして上記その他の樹脂が好ましく用いられる。
【0022】
ここでいうポリ乳酸系樹脂とは、ラクチドの開環重合あるいは乳酸の直接重合により得られるポリ乳酸樹脂、およびラクチドの開環重合で得られるポリ乳酸系共重合体を指す。特に、ポリオールにラクチドが開環重合したポリ乳酸系共重合体とポリ乳酸樹脂の混合物が好適に用いられ、ポリオールの分散ドメインが1μm未満のナノアロイ混合物であればより好ましい。
【0023】
前述のナノアロイとは、分散した樹脂からなる島成分が1μm未満の径であることを指す。樹脂Cと樹脂Dをナノアロイ化する手段としては、樹脂Cと樹脂Dをブロック共重合化することにより作成する方法、樹脂Cと樹脂Dからなるブロック共重合体を樹脂C及び/または樹脂Dに添加する方法が挙げられる。上記手法で用いられるブロック共重合体の分子量や、共重合比を変更すれば、より効率的に効果を発現することができる。特に、海成分の共重合比を高めることにより、位置固定されやすくなるため、局在化を抑制でき、より微小で均一な分散状態を作りやすい。
【0024】
このような点から、発泡剤への溶解度の差が0%を超えて10%未満の範囲で異なる樹脂Cと樹脂Dをナノアロイ化した混合物に発泡剤を含浸して発泡させる方法に好ましく用いられる樹脂としては、樹脂Cとしてポリ乳酸系樹脂、樹脂Dとしてポリ乳酸系セグメントを有する共重合体、ポリプロピレン系樹脂、及びメタクリル樹脂から選ばれる1種の樹脂を組み合わせることが好ましい。
【0025】
上記ポリ乳酸系セグメントを有する共重合体としては、ポリエーテル−ポリ乳酸共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
ポリエーテル−ポリ乳酸共重合体の具体例としては、ポリエチレングリコールにラクチドを開環重合して得られるABA型のブロック共重合体が挙げられる。ポリエチレングリコールの分子量は2000〜10000で、共重合化したポリ乳酸セグメントの分子量としては、2000〜3500などで作成できる。
【0027】
なお、用いられる発泡剤としては、ブタンやプロパン、窒素、炭酸ガスなどの物理発泡剤が好適に用いられる。しかしながら、ブタンやプロパンは引火性であるため、安全性や環境性能を重視する場合、窒素、炭酸ガスが好ましく、より好適には、炭酸ガスが用いられる。
【0028】
また樹脂発泡体(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で、製造時の安定性を付与する目的で滑剤、発泡核剤などの粒子を添加することができる。具体的には、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムモンモリロナイト、ゼオライト、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、エルカ酸アミドなどが挙げられる。
【0029】
続いて、発泡剤への溶解度の差が10%以上の異なる2成分(樹脂Eと樹脂F)をナノアロイ化した混合物に発泡剤を含浸して発泡させたのち、1成分(樹脂F)を分解する製造方法について説明する。この方法は、溶解度の高い成分で空孔(L)を生成したのち、溶解度の低い成分を分解させることにより空孔(S)を生成するものである。
【0030】
この方法で用いられる分解反応としては、光分解、加水分解、熱分解、酸またはアルカリによる分解、紫外線照射による分解、微生物などによる生分解が挙げられ、分解対象樹脂によって、種々の方法を用いることができる。例えば、分解対象樹脂がポリメチルメタクリレートであれば、樹脂発泡体に紫外線を照射することで分解することができ、ポリ乳酸であれば、加水分解、生分解などで分解することができる。
【0031】
発泡に用いられる樹脂(樹脂E)は特に限定されず、前述の発泡剤への溶解度の差が0%を超えて10%未満の範囲で異なる2成分の樹脂をナノアロイ化した混合物に発泡剤を含浸して発泡させる方法と同様の樹脂(樹脂Cと樹脂D)を挙げることができる。つまり樹脂Eとしては、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリエチレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。また、分解により空孔を生成する場合に用いられる樹脂(樹脂F)としては、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、または、ポリ乳酸系樹脂に代表されるヒドロキシカルボン酸類や脂肪族ポリエステル類を主体とした生分解性樹脂であることが好ましい。特に環境性能を重視する場合、ポリ乳酸系樹脂が好ましく用いられる。
【0032】
上述した製造方法は、混合する樹脂(樹脂Eと樹脂F)の相溶性が著しく悪い際に用いられ、成分同士の界面で両者と親和性あるいは相互作用を持つ化合物が用いられる。これにより界面エネルギーが低下し、より表面積の大きな分散形態とすることができる。用いられる化合物としては、エチレンビスアミド、エチレンビスラウリル酸アミドなどが挙げられる。
【0033】
また発泡剤については、前述の発泡剤への溶解度の差が0%を超えて10%未満の範囲で異なる2成分の樹脂をナノアロイ化した混合物に発泡剤を含浸して発泡させる方法と同じ発泡剤を使用することができる。
【0034】
また前述の発泡剤への溶解度の差が0%を超えて10%未満の範囲で異なる2成分の樹脂をナノアロイ化した混合物に発泡剤を含浸して発泡させる方法と同様に、発泡剤への溶解度の差が10%以上の異なる2成分(樹脂Eと樹脂F)をナノアロイ化した混合物に発泡剤を含浸して発泡させたのち、1成分(樹脂F)を分解する製造方法における樹脂発泡体にも、本発明の効果を損なわない範囲で、押出安定性を付与する滑剤、発泡核剤などの粒子を添加することができる。
【0035】
樹脂発泡体(A)の発泡方法は、特に限定しないが、次の方法により製造することができる。発泡剤の注入装置を備えた押出機などに、樹脂を供給し、加熱溶融させ、必要に応じて発泡剤を注入もしくは添加したのち、押出吐出の際の急激な圧力開放で樹脂中から発泡剤を気化させることにより発泡体を作成する押出発泡法、オートクレーブなどの耐圧容器に、樹脂と発泡剤を投入したのち、所定の温度・圧力・時間で、樹脂に発泡剤を含浸させ、急激な圧力開放もしくは、含浸樹脂冷却後に再加熱することで発泡体を作成するバッチ式発泡法などである。
【0036】
また、上述した樹脂発泡体(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で、押出安定性を付与する滑剤、発泡核剤などの粒子を添加することができる。具体的には、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムモンモリロナイト、ゼオライト、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、エルカ酸アミドなどが挙げられる。
【0037】
次にガスバリアフィルム(B)について説明する。
【0038】
本発明におけるガスバリアフィルム(B)は、減圧空間を保持するための高いバリア性と外圧に耐える機械的強度をもち、シール性が容易な性質を有するものが好ましく用いられる。
【0039】
具体的には、金属層を有するプラスチックフィルムで構成されたラミネートフィルムを用いることが好ましい。金属層には、金属箔および金属蒸着による金属層などが挙げられ、これらには公知の材料を用いてよい。
【0040】
金属箔としては、アルミニウム箔がよく用いられ、金属蒸着では、アルミニウム、インジウム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケル、クロムあるいは、チタン、ジルコニウム、ケイ素、マグネシウムなどの酸化物も用いることができる。中でも、ガス透過性が低く、幅広く用いられているアルミニウムが好適に用いられる。
【0041】
金属蒸着層の製造方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法、プラズマCVDなどの化学蒸着法などを用いることができるが、生産性の観点からは真空蒸着法が特に好ましく用いられる。
【0042】
ガスバリアフィルム(B)に用いられる樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などを用いることができる。特に環境低負荷の断熱材としたい場合、脂肪族ジカルボン酸とジオールからなる脂肪族ポリエステル樹脂、または、ヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。具体的には、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート/サクシネート共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などが挙げられる。
【0043】
前記樹脂から得られるフィルムを、一方向または直行する二方向に延伸配向させた配向フィルムとすればガスバリア性が向上するため、好ましく用いられる。延伸配向させる方法としては、速度差を設けたロールを通すことで一方向に延伸したのち、幅方向に広がるレール上のクリップにフィルム両端を把持させ、フィルムの幅方向に延伸する逐次二軸配向や、チューブ状に吹き上げたフィルムの内圧により長手方向、幅方向同時に延伸する同時二軸配向が挙げられる。
【0044】
ガスバリアフィルムの成形方法は、ドライラミネーション用の接着剤を用いて行うドライラミネート法やガスバリアフィルムの一部にオレフィン系樹脂を用いて溶融押出するエクストルーションラミネート法などが挙げられる。
【0045】
次に断熱材(V)について説明する。
【0046】
断熱材(V)に用いる、樹脂発泡体(A)を芯材としてその全体をガスバリアフィルム(B)で覆った構造体の製造方法としては、ガスバリアフィルム(B)のサイズより小さいサイズで四角に切り出た樹脂発泡体(A)を、ガスバリアフィルム(B)/樹脂発泡体(A)/ガスバリアフィルム(B)の順番で重ねたのち、三辺をヒートシールし、残りの一辺から減圧しながら、即座にヒートシールし密閉して製造する方法、あるいは、ガスバリアフィルム(B)と樹脂発泡体(A)を減圧設備内で減圧環境下にてヒートシールして製造する方法が挙げられる。加工性や品質の安定性を考慮すると後者の製造方法が好ましい。
【0047】
樹脂発泡体(A)を芯材としてその全体をガスバリアフィルム(B)で覆った構造体の内部の減圧度は、10−9Pa以上1.01325×10Pa未満であることが必要である。10−9Pa未満の真空度は、一般的な真空ポンプやターボ分子ポンプでは達成しにくく、製造が困難となる。また、1.01325×10Pa以上では、大気圧以上の圧力がかかることとなり、十分な断熱性能を達成しにくい。
【0048】
製造のしやすさや、断熱性能の両立した範囲としては、構造体の内部の減圧度が10−3Pa以上200Pa未満が好ましい。特に、断熱性能を重視する場合、10−3Pa以上10Pa未満が好ましく、製造のしやすさを重視する場合、10−1Pa以上200Pa未満が好ましい。
【0049】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂発泡体(A)とガスバリアフィルム(B)の空間に、気体や水分を吸着する吸着剤を添加することができる。具体的な吸着剤としては、ゼオライト、水酸化カルシウム、活性炭、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【実施例】
【0050】
(1)独立気泡率
乾式自動密度計『アキュピック1330』(島津製作所)を用いて、以下の方法で行った。
(A)樹脂発泡体(A)を縦横25mm、厚み3mmの立方体2個に切り出した。
(B)2個の立方体の幾何学体積(Vg)を寸法測定から求めた。
(C)2個の立法体をアキュピック1330で測定し、試料体積(Vp1)を求めた。
(D)2個の立方体それぞれについて3回カッティングを行い、縦横12.5mm厚み1.5mmの立方体を計16個作成した。
(E)16個の立方体をアキュピック1330で測定し、試料体積(Vp2)を求めた。
【0051】
次に以下の計算により独立気泡率を求めた。
【0052】
開放気泡の体積を(Voc)、試料準備の過程で開放された独立気泡の体積を(Vcc)とすると、測定時に得られた体積データ(Vp1、Vp2)と開放気泡率(Co)はASTMから次のように書き換えられる。
Vp1=Vg−Voc−Vcc ・・・(a)
Vp2=Vg−Voc−2Vcc・・・(b)
両式からVcc消去するため、2×(a)−(b)とすると、
2Vp1−Vp2=Vg−Voc
∴Voc=Vg−2Vp1+Vp2
この結果、開放気泡率(Co)は
Co=Voc/Vg×100(%)
ここで、独立気泡率(Cc)は試料の真密度(D)が既知でなければ求められないため、独立気泡だけの体積を(Vc)、試料重量を(W)として、
Vc=Vg−W/D−Voc
従って独立気泡率(Cc)は以下で求められる。
Cc=Vc/Vg×100(%)
(2)空孔(S)の面積占有率
空孔(L)と空孔(S)のような異なる孔径が混在する特徴的な構造の指標として、面積占有率(空孔(S)が発泡体の断面積あたりに占める面積割合)を用いた。
面積占有率は以下のようにして求めた。
【0053】
ここで、空孔(S)とは、円換算直径が0.01μm以上1μm未満の空孔とした。
【0054】
a)日本電子社製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、樹脂発泡体の断面を1辺の測定画像範囲が10μmとなる範囲に拡大し、画像を取り込んだ。
【0055】
b)撮影した写真の上に透明なシート(OHPシートなど)を置き、その上に空孔(L)の部分を黒インキで塗りつぶした。
【0056】
c)画像処理装置((株)ピアス製、品番:PIAS−II)にb)で処理した画像を取り込み、濃色部分と淡色部分を(黒インキで塗られた部分か否か)を識別し、画像解析計算機能中の「FRACTAREA(面積率)」を用い、濃色部分の面積すなわち空孔(L)の面積(La)求めた。
【0057】
e)次に、空孔(L)の部分を黒インキで塗りつぶした透明シートを用いて、空孔(S)の部分を黒インキで塗りつぶした。
【0058】
f)画像処理装置((株)ピアス製、品番:PIAS−II)にb)で処理した画像を取り込み、濃色部分と淡色部分を(黒インキで塗られた部分か否か)を識別し、画像解析計算機能中の「FRACTAREA(面積率)」を用い、濃色部分の面積、すなわち、空孔(L)+空孔(S)の面積(La+Sa)を求めた。そして、次式から空孔(S)の面積(Sa)求めた。
【0059】
空孔(S)の面積=面積(La+Sa)−面積(La)
g)次式により、空孔(S)の面積占有率を算出した。
【0060】
空孔(S)の面積占有率=面積(Sa)/{(画像全体の面積−面積(La))×100
(3)空隙率(X)前項(1)の空孔(S)の面積占有率の画像解析方法において得られた、面積(La+Sa)を用いて、次式で算出した。
値(X)={画像全体の面積−面積(La+Sa)}/画像全体の面積
(4)熱伝導率
Hot Disk社製熱伝導測定装置の7mmφのセンサを用いて測定した。測定箇所は、断熱材(V)の中心部と四隅の5箇所を測定し、それぞれの平均を熱伝導率とした。
(5)性能変化
断熱材サンプルの製造直後の熱伝導率(Vλ1)を測定し、耐圧容器に入れ、温度40℃、湿度65%RHの雰囲気下、圧縮空気を用いて0.2MPaまで加圧した。30日経過後断熱材(V)を取り出し、熱伝導率(Vλ2)を測定した。その際の性能変化を性能変化値として以下の式で規定した。
性能変化値=Vλ1/Vλ2
性能変化値が1であれば性能変化無し、1から小さくなるほど性能変化が大きいことを意味する。性能変化値を用いて以下の評価を行った。
◎:性能変化値が0.5以上1以下
○:性能変化値が0.25以上0.5未満
×:性能変化値が0.25未満
(6)押出発泡による樹脂発泡体の製造方法
超臨界二酸化炭素供給ラインを備えたタンデム式押出機を用いて、ペレットを第1押出機に供給し、140〜220℃の温度で溶融させたのち、押出機先端で超臨界二酸化炭素を供給した。次に、第2押出機で、100〜150℃の温度に降温させ、ガスを十分含浸したのち、サーキュラーダイから中空円筒状の樹脂発泡体を大気中に吐出し、カッター付きのマンドレルで冷却後、円筒を開いてシート状の発泡体を得た。
(7)空孔(L)と空孔(S)の有無の確認法、および数密度
日本電子社製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、樹脂発泡体の厚さ方向断面を1000倍に拡大した画像を取り込んだ。そして該画像から、空孔(L)の有無を確認した。
【0061】
また、取り込んだ画像から空孔(L)の数が20〜40個程度になる範囲をトリミングし、その中の空孔(L)の気泡数を計測した。計測した数にmmとなるよう数字を乗じて数密度を算出した。
【0062】
次に気泡壁面を中心に20000倍に拡大した画像を取り込んだ。そして該画像から、空孔(S)の有無を確認した。
【0063】
また、取り込んだ画像から空孔(S)の数が20〜40個程度になる範囲をトリミングし、その中の空孔(S)の気泡数を計測した。計測した数にμmとなるよう数字を乗じて数密度を算出した。
(8)空孔(L)と空孔(S)の孔径
日本電子社製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、樹脂発泡体の厚さ方向断面を1000倍に拡大した画像を取り込んだ。取り込んだ画像を上下左右4ブロックに分割し、1ブロック当たり1μm以上100μm未満の空孔を選択し、顕微鏡のスケールから採寸し、総数の平均を空孔(L)の孔径とした。
【0064】
次に気泡壁面を中心に20000倍に拡大した画像を取り込んだ。取り込んだ画像を上下左右4ブロックに分割し、1ブロック当たり1μm未満の空孔を選択し、顕微鏡のスケールから採寸し、総数の平均を空孔(S)の孔径とした。
(9)以下使用した樹脂、金属について記述する。
ポリエチレングリコール:三洋化成(株)製「PEG−6000S」数平均分子量8300
ポリ乳酸:重量平均分子量15万、L体96%
ポリスチレン:PSジャパン(株)製「G9401」、MFR=2.2
グラスウール:旭ファイバーグラス(株)「マットエースプラス」
アルミニウム:日本軽金属(株)製「高純度アルミニウムワイヤー」
連通発泡ウレタン:ポリプロピレンオキサイドと有機ポリイソシアネートに触媒としてジブチルチンラウレート、整泡剤としてシリコン界面活性剤、気泡連通化剤としてステアリン酸カルシウム、発泡剤としてシクロペンタンを用いて発泡ウレタンを得た。
〔実施例1〕
減圧ラインと加熱装置を備えた密閉容器に、ポリエチレングリコール0.85kgを投入し、140℃、30分間減圧脱水したのち、L−ラクチド0.5kgを投入した。次に、容器内を不活性ガスに雰囲気を置換し、ポリエチレングリコールとラクチドを溶融攪拌しながら2−エチルヘキサン酸スズ(II)を10g加え、3時間不活性雰囲気下160℃で攪拌を行ったのち、触媒失活剤としてリン酸ジメチルを7.5g加え、30分間攪拌した。次に、揮発物を除去するため、140℃、2時間減圧にし、不活性ガスで大気圧まで戻し、分子量13,500のPLA−PEG−PLA共重合体を得た。
【0065】
得られたPLA−PEG−PLA共重合体0.25kgと、ポリ乳酸4.72kg、タルク0.03kgを用いて、上記「(6)押出発泡による樹脂発泡体の製造方法」により、幅250mm、厚み3mmの樹脂発泡体(A)を得た。
【0066】
ガスバリアフィルム(B)としては、最外層に厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、中間層に厚み6μmのアルミ箔、熱接着層に厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムで構成されたラミネートフィルムを用いた。
次に、樹脂発泡体(A)を100mm角で4つ切り出し、ガスバリアフィルム(B)を250mm角に2枚切り出した。樹脂発泡体(A)4つ厚み方向に重ねてその上下を2枚のガスバリアフィルム(B)で挟み込んだのち、吸着剤として水酸化カルシウムを1g添加し、大気圧下で三辺をインパルスシーラーでヒートシールした。次に、減圧度を調整できるよう圧力計と調圧弁を取り付けた小型真空包装機(FVCII:古川製作所製)を用いて、減圧度が10−1Paとなるよう減圧し、空いた一辺をヒートシールして断熱材(V)を作成した。
〔実施例2〕
実施例1と同様の樹脂発泡体(A)をガスバリアフィルム(B)を用いて、50Paの減圧度で断熱材(V)を作成した。
〔実施例3〕
ポリスチレン樹脂を用いて、上記「(6)押出発泡による樹脂発泡体の製造方法」により、幅250mm、厚み3mmの樹脂発泡体(A)を得た。
ガスバリアフィルム(B)、断熱材(V)は実施例1と同様の方法で作成した。
〔実施例4〕
実施例3と同様の方法で樹脂発泡体(A)を、実施例1と同様の方法でガスバリアフィウム(B)を得たのち、50Paの圧力で断熱材(V)を作成した。
〔比較例1〕
連通発泡ウレタンを芯材にして、比較例1で用いたガスバリアフィルム(B)を用いて、実施例1と同様の方法で断熱材を作成した。
〔比較例2〕
グラスウールを芯材にした以外は、比較例1と同様の方法で断熱材を作成した。
〔比較例3〕
比較例1で用いた連通発泡ウレタンを芯材にして、比較例1で用いたガスバリアフィルム(B)を用いて、50Paの圧力で断熱材を作成した。
【0067】
【表1−1】

【0068】
【表1−2】

【0069】
(略語表記)
PLA :ポリ乳酸
PET :ポリエチレンテレフタレート
PS :ポリスチレン
PEG :ポリエチレングリコール
PU :ポリウレタン
PE :ポリエチレン
Al :アルミニウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立気泡性の樹脂発泡体(A)とガスバリアフィルム(B)からなり、樹脂発泡体(A)を芯材としてその全体をガスバリアフィルム(B)で覆った構造体の断熱材であり、構造体の内部の減圧度が10−9Pa以上1.01325×10Pa未満である断熱材(V)。
【請求項2】
前記樹脂発泡体(A)が、平均孔径1μm以上1000μm以下の空孔(L)と、平均孔径0.01μm以上1μm未満の空孔(S)を有し、空隙率(X)が80%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の断熱材(V)。
【請求項3】
前記樹脂発泡体(A)の空孔(L)の数密度が10個/mm以上10個/mm以下、空孔(S)の数密度が10個/μm以上10個/μm以下であることを特徴とする、請求項2に記載の断熱材(V)。

【公開番号】特開2010−59756(P2010−59756A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229405(P2008−229405)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的ノンフロン系断熱材技術開発プロジェクト」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】