説明

高所作業車

【課題】移動規制領域内への作業台の移動を規制しつつ、要求に応じて作業台を下げることができる高所作業車を提供する。
【解決手段】高所作業車は、車体と、旋回動、伸縮動および起伏動が可能に構成されたブーム5と、常に垂直に位置するように揺動される垂直ポスト6と、垂直ポスト6に上下にスライド移動可能に設けられた作業台8とを有し、ブーム5の旋回、伸縮、起伏操作をするための上部操作装置と、作業台8の上下スライド位置を検出するリミットスイッチ9と、ブーム5および作業台8と運転キャブ2aとの干渉を防止するために予め設定された移動規制領域内Aに、ブーム5および作業台8が移動される作動を規制するコントローラとを備え、コントローラが、移動規制領域A内へのブーム5および作業台8の移動を規制しつつブーム5の倒伏が許容されるブーム限界倒伏角を、リミットスイッチ9で検出される作業台8の上下スライド位置に対応させて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業台を所望の高所に移動させて高所作業を行う高所作業車に関し、さらに詳細には、予め設定された移動規制領域への作業台の移動を規制する作動制御手段を備えた高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記高所作業車の一例として、前方に運転キャブを備えた車体に旋回、起伏および伸縮自在にブームが取り付けられ、このブームの先端部に作業者搭乗用の作業台を備えて構成されるブーム式の高所作業車が良く知られている。このように構成される高所作業車は、作業台に搭乗した作業者がブーム操作装置を操作することで、所望の高所に作業台を移動させて高所作業を行うことができるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。また、高所作業車においては、所望の高所に作業台を移動させることができるのであるが、一方で、ブームを下方へ大きく起伏(倒伏)させた場合には、作業台またはブームが車体の一部(例えば運転キャブ)に干渉する虞がある。そのため、高所作業車には一般的に、運転キャブの周囲等に作業台およびブームが移動されて入り込むことを規制する移動規制領域が予め設定されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
また、高所作業車の中には、ブームの先端部に、ブームの起伏面内でブームの起伏動に応じて揺動され常時垂直に位置する垂直ポストを設け、この垂直ポストに作業台が上下にスライド移動可能に設けた構成のものがある。このように、作業台を上下にスライド移動可能に設けることで、例えばブームを旋回、伸縮または起伏させて所望の高所に移動させた後で、ブームを起伏等させることなく作業台の位置を上下方向に微調整することができ、使い勝手が良くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−7273号公報
【特許文献2】特開2000−191298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作業台が上下にスライド移動可能に構成された高所作業車において、移動規制領域に近づくようにブームを倒伏させる場合、従来は作業台の上下スライド位置に拘らず、作業台が最も下方にスライド移動した状態を想定し、この状態で倒伏されたとしても作業台が移動規制領域に入り込まないブーム限界倒伏角を設定することで、作業台の上下スライド位置に拘らず作業台が移動規制領域に入り込む倒伏動を規制していた。そのため、例えば作業台が上端にスライド移動したままの状態でブームを倒伏させた場合には、作業台と運転キャブとが上下に比較的離れた状態でブームの倒伏が規制されて、さらに作業台を下方へ下げたいという要求に応えることが難しいという課題があった。また、ブームの倒伏が規制された状態で作業台をさらに下げるためには、ブームを倒伏させる操作に代えて作業台を下げる操作を行わなければならず、操作が煩雑になりがちであった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、移動規制領域内への作業台の移動を規制しつつ、要求に応じて作業台を下げることができる高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る高所作業車は、走行可能に構成された車体と、前記車体に基端部が取り付けられて、旋回動、伸縮動および起伏動が可能に構成されたブームと、前記ブームの先端部に設けられて、前記ブームの起伏面内で前記ブームの起伏動に応じて常に垂直に位置するように上下に揺動される垂直ポスト部材(例えば、実施形態における垂直ポスト6)と、前記垂直ポスト部材に上下移動装置を介して取り付けられて、前記上下移動装置によって前記垂直ポスト部材に対して上下移動される作業台とを有する高所作業車であって、前記ブームを旋回、伸縮および起伏操作するためのブーム操作手段(例えば、実施形態における上部操作装置11)と、前記上下移動装置を操作するための作業台操作手段(例えば、実施形態における上部操作装置11)と、前記垂直ポスト部材に対する前記作業台の上下移動位置を検出する上下位置検出手段(例えば、実施形態におけるリミットスイッチ9)と、前記ブーム操作手段および前記作業台操作手段に対する操作に応じて前記ブームおよび前記作業台を作動させる制御を行うとともに、前記ブームおよび前記作業台と前記車体との干渉を防止するために予め設定された移動規制領域内に、前記ブームおよび前記作業台が移動される作動を規制する作動制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ20)とを備えて構成されており、前記作動制御手段が、前記ブーム操作手段に対する前記ブームを倒伏させる操作に応じて前記移動規制領域に近づくように前記ブームが倒伏動されて前記移動規制領域の上方に前記作業台が移動されるとき、前記ブームの旋回位置および伸縮状態において前記移動規制領域内への前記ブームおよび前記作業台の移動を規制しつつ前記ブームの倒伏が許容されるブーム限界倒伏角を、前記上下位置検出手段において検出される前記作業台の上下位置に対応させて設定し、前記ブーム限界倒伏角を越えて前記ブームが倒伏動されることを規制するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
なお、前記上下移動装置が、上下に延びて設けられたガイド部材(例えば、実施形態におけるアーム側スライドガイド7a、作業台側スライドガイド8a)から構成され、前記作業台は、前記ガイド部材により前記垂直ポスト部材に対して上下にスライド移動可能に設けられており、前記上下位置検出手段は、前記作業台が上端部近傍の上端スライド位置に位置するか否かを検出可能に構成されており、前記上下位置検出手段により、前記作業台が前記上端スライド位置に位置していないことが検出されているときには、前記作動制御手段は、前記作業台が最も下動した下端スライド位置に位置する状態で前記移動規制領域内への前記作業台の移動を規制可能な前記ブームの限界倒伏角を前記ブーム限界倒伏角として設定することが好ましい。
【0009】
また、前記上下位置検出手段により、前記作業台が前記上端スライド位置に位置していないことが検出されている状態において、前記作動制御手段は、前記ブーム操作手段が倒伏操作されたときに、前記ブームを前記ブーム限界倒伏角まで前記ブーム操作手段への倒伏操作に応じて倒伏作動させることを許容し、前記ブームが前記ブーム限界倒伏角に達したときに前記ブームの倒伏作動を規制し、その時から前記ブーム操作手段への倒伏操作が継続されたときには、前記ブームの倒伏作動を規制したまま前記作業台を下げる制御を行うことが好ましい。
【0010】
なお、前記上下移動装置が、複数のリンク部材(例えば、実施形態における上側リンク部材102、下側リンク部材103)を用いて構成されるリンク機構から構成され、前記作業台は、前記リンク機構により前記垂直ポスト部材に対して上下に揺動可能に設けられており、前記上下位置検出手段は、前記作業台が上端部近傍の上端揺動位置に位置するか否かを検出可能に構成されており、前記上下位置検出手段により、前記作業台が前記上端揺動位置に位置していないことが検出されているときには、前記作動制御手段は、前記作業台が最も下方に揺動した下端揺動位置に位置する状態で前記移動規制領域内への前記作業台の移動を規制可能な前記ブームの限界倒伏角を前記ブーム限界倒伏角として設定することも好ましい。
【0011】
また、前記上下位置検出手段により、前記作業台が前記上端揺動位置に位置していないことが検出されている状態において、前記作動制御手段は、前記ブーム操作手段が倒伏操作されたときに、前記ブームを前記ブーム限界倒伏角まで前記ブーム操作手段への倒伏操作に応じて倒伏作動させることを許容し、前記ブームが前記ブーム限界倒伏角に達したときに前記ブームの倒伏作動を規制し、その時から前記ブーム操作手段への倒伏操作が継続されたときには、前記ブームの倒伏作動を規制したまま前記作業台を下方に揺動させる制御を行うことが好ましい。
【0012】
さらに、前記作業台が、前記垂直ポスト部材を回転中心として首振り自在に構成されており、前記作動制御手段が、前記ブームの旋回位置、前記ブームの伸縮状態および前記作業台の首振り位置に基づいて前記ブーム限界倒伏角を設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る高所作業車は、移動規制領域内へのブームおよび作業台の移動を規制しつつブームの倒伏が許容されるブーム限界倒伏角を、作業台の上下位置に対応させて設定するように構成されている。このようにしてブーム限界倒伏角を設定することで、例えば作業台の上下位置に拘らず、ブームを倒伏させることで移動規制領域に対して所定距離だけ離れた位置にまで常にブームを近づけることが可能となる。よって、移動規制領域内への作業台の移動を規制しつつ、作業台を下げたいという要求(操作)に応じて作業台を下げることが可能になる。
【0014】
なお、作業台が最も下動した下端スライド位置に位置する状態で移動規制領域内への移動を規制可能なブームの限界倒伏角をブーム限界倒伏角として設定することが好ましい。このように構成した場合、作業台が上端スライド位置以外のどの上下スライド位置に位置していたとしても、ブームを倒伏させた場合における移動規制領域内への作業台の移動を確実に規制できる。
【0015】
また、作業台が上端スライド位置に位置していないとき、ブームがブーム限界倒伏角に達したときにブームの倒伏作動を規制し、その時からブーム操作手段への倒伏操作が継続されたときには、ブームの倒伏作動を規制したまま作業台を下げる制御を行うことが好ましい。このように構成した場合、移動規制領域内への作業台の移動を規制しつつ、作業台をさらに下動させたいという要求に応じて作業台を下動させることができるので、使い勝手の良い高所作業車を提供可能になる。
【0016】
一方、作業台が最も下方に揺動した下端揺動位置に位置する状態で移動規制領域内への移動を規制可能なブームの限界倒伏角をブーム限界倒伏角として設定することも好ましい。この場合、作業台が上端揺動位置以外のどの揺動位置に位置していたとしても、ブームを倒伏させた場合における移動規制領域内への作業台の移動を確実に規制できる。
【0017】
また、作業台が上端揺動位置に位置していないとき、ブームがブーム限界倒伏角に達したときにブームの倒伏作動を規制し、その時からブーム操作手段への倒伏操作が継続されたときには、ブームの倒伏作動を規制したまま作業台を下方に揺動させる制御を行うことが好ましい。このように構成すると、移動規制領域内への作業台の移動を規制しつつ、作業台をさらに下方に揺動させたいという要求に応じて作業台を下方に揺動させて下げることができるので、使い勝手の良い高所作業車を提供可能になる。
【0018】
さらに、ブームの旋回位置、ブームの伸縮状態および作業台の首振り位置に基づいてブーム限界倒伏角を設定することが好ましい。このように構成した場合には、作業台の首振り位置も考慮されたブーム限界倒伏角が設定されるので、移動規制領域内への作業台の移動を確実に規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した一例としての高所作業車の側面図である。
【図2】上記高所作業車の制御系統を示したブロック図である。
【図3】作業台が下方スライド位置のどこかに位置した状態における作動を示した側面図である。
【図4】作業台が上端スライド位置に位置した状態における作動を示した側面図である。
【図5】倒伏作動時のフローを示したフローチャートである。
【図6】作業台の首振り位置とブーム限界倒伏角との関係を示した平面図である。
【図7】作業台の位置検出に関し、別の実施形態を示した模式図である。
【図8】作業台が下方スライド位置のどこかに位置した状態における作動に関し、別の実施形態を示した側面図である。
【図9】別の実施形態に係る高所作業車であって、(a)は作業台近傍の斜視図を、(b)は高所作業車の側面図を、(c)は作業台の首振り位置とブーム限界倒伏角との関係をそれぞれ示す。
【図10】別の実施形態に係る高所作業車の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1には、本発明を適用した一例としての高所作業車1の側面図を示しており、まず、図1および図2を参照して高所作業車1の概要構成について説明する。
【0021】
高所作業車1は、図1に示すように、車体2の前後左右に前後輪3a,3bを有して走行可能であり、車体2の前部に運転キャブ2aを有したトラック車両をベースに構成される。このトラック車両の車体2の上に旋回モータ21(図2参照)により駆動されて水平旋回可能に構成された旋回台4が配設されている。この旋回台4に基端部が枢結されてブーム5が取り付けられており、このブーム5は起伏シリンダ22により起伏動されるようになっている。ブーム5は、基端ブーム5a、中間ブーム5bおよび先端ブーム5cを入れ子式に組み合わせて、内蔵の伸縮シリンダ23(図2参照)によりブーム5全体が長手軸方向に伸縮動可能に構成される。ブーム5の基端部分には、ブーム5の基端部と旋回台4との間に跨って枢結されて、ブーム5の起伏動に連動して作動する下部レベリングシリンダ28が設けられている。
【0022】
先端ブーム5cは先端にブームヘッド5dを有し、このブームヘッド5dに枢結されて垂直ポスト6がブーム5の起伏作動面と同一面内で上下に揺動可能に取り付けられている。ブームヘッド5dと垂直ポスト部材6との間には、上部レベリングシリンダ29が設けられている。そして、上部レベリングシリンダ29のロッド側油室と下部レベリングシリンダ28のロッド側油室とが油路で繋がれるとともに、上部レベリングシリンダ29のボトム側油室と下部レベリングシリンダ28のボトム側油室とが油路で繋がれて構成される。そのため、下部レベリングシリンダ28の作動に連動して上部レベリングシリンダ29が作動され、ブーム5の起伏動に拘らず垂直ポスト6を常時垂直状態に保持できるようになっている。
【0023】
このようにして常時垂直状態に保持される垂直ポスト6には、首振モータ24(図2参照)により旋回自在(首振り自在)に、作業台8がアーム7を介して取り付けられており、作業台8はブーム5の起伏角に拘らず底面が常時水平に保持された状態で水平旋回可能となっている。アーム7には上下に延びるアーム側スライドガイド7aが形成され、このアーム側スライドガイド7aに、作業台8の側部に上下に延びて形成された作業台側スライドガイド8aが嵌合し、スライドシリンダ25(図2参照)の伸縮動により作業台8が上下にスライド移動可能に構成される。
【0024】
また、アーム7または作業台8には、作業台8の上下スライド位置を検出するためのリミットスイッチ9が設けられている。このリミットスイッチ9は、例えば作業台8がスライド移動可能な領域のうちの上端部近傍の上端スライド位置に位置するとき(図1参照)にはオンとなり、一方、作業台8がこの上端スライド位置以外に位置するとき(図3(a)参照)にはオフとなるように設けられている。すなわち、この検出結果から、作業台8が上端スライド位置に位置することが検出できるが、それ以外の位置にあるときには、それ以外の位置にあるということが分かっても、どの位置にあるかまでは検出できない。なお、以下においては、上端スライド位置以外の位置を「下方スライド位置」と称する。
【0025】
また、作業台8にはブーム5を作動(起伏、伸縮動)させ、旋回台4を旋回動させるための操作と、作業台8を作動(旋回動、上下スライド)させる操作とを行うための操作レバーを備えた上部操作装置11が配設されている。作業台8に搭乗する作業者は、上部操作装置11の操作レバーを操作することによってブーム5を自由に起伏動、伸縮動させ、旋回台4(ブーム5)を旋回動させ、さらには、作業台8を旋回動、上下にスライド移動させて、作業台8を所望もしくは任意の高所位置に移動させることができる。この高所作業車1は原則として、上部操作装置11に対する操作に応じた作動を行わせる制御がなされるように構成されており、例えば、ブーム5を起伏させる操作が行われることで、この操作に応じてブーム5を起伏動させ、また、上部操作装置11に対して作業台8を上下にスライド移動させる操作が行われることで、この操作に応じて作業台8を上下にスライド移動させる制御が行われる。
【0026】
図2に示すように、高所作業車1は、作動制御部21およびブーム限界倒伏角設定部22からなるコントローラ20を有している。また、車体2と旋回台4との間には車体2に対する旋回台4の旋回角を検出する旋回角検出器13、旋回台4とブーム5との間には車体2に対するブーム5の起伏角を検出する起伏角度検出器14、ブーム5にはブーム5の伸縮長さを検出する伸縮長さ検出器15がそれぞれ備えられている。これらの検出器で検出される検出結果は、高所作業車1の稼動中において常にブーム限界倒伏角設定部22に出力される。また、リミットスイッチ9で検出される作業台8の上下スライド位置についての検出結果(オンまたはオフ)も、常にブーム限界倒伏角設定部22に出力される。
【0027】
車体2の前後左右の四カ所には、車体2の左右方向外側への拡幅および車体2の下方に伸縮自在なジャッキ10が設けられており、高所作業を行うときには、ジャッキ10を車体2の左右に張出および下方に伸長させて車体2を安定に支持できるようになっている。このジャッキ10は、車体2の後端部において上方に突出して配設された下部操作装置12の操作レバーを操作することで、上記のような作動をさせることができるようになっている。また、この下部操作装置12の操作レバーを操作することで、上部操作装置11と同様に、ブーム5を作動させたり作業台8を作動させたりできるようになっている。
【0028】
以上ここまでは、高所作業車1の概要構成について説明した。以下においては、作業台8に搭乗した作業者が上部操作装置11に対する操作に基づいて作業台8を高所に移動させるときの制御構成について、図2を参照しながら説明する。
【0029】
上部操作装置11に対して操作(例えば、旋回台4を旋回させる操作)が行われると、その操作に対応した操作信号が上部操作装置11から作動制御部21に出力され、作動制御部21からコントロールバルブ(図示せず)へ操作信号に対応した作動信号が出力される。そして、コントロールバルブにより旋回モータ21へ作動油の供給を制御することで旋回モータ21が回転駆動され、車体2に対して旋回台4が旋回動される。このようにして、上部操作装置11に対する操作に応じた作動を旋回モータ21等に行わせることで、作業台8を所望の高所に移動させることができるように構成されている。
【0030】
上述のようにして作業台8を移動させる際に、例えばブーム5を前方に向けた状態で大きく倒伏させると、ある時点で作業台8またはブーム5と運転キャブ2aとが干渉する虞がある。このようにして、作業台8またはブーム5と車体2の一部とが干渉することを防止するために、高所作業車1には、作業台8またはブーム5が移動されて入り込むことを規制する移動規制領域が予め設定されている。上部操作装置11に対して、移動規制領域内に作業台8を入り込ませる起伏動等の操作が行われた場合には、作動制御部21はこの操作に対応した作動信号をコントロールバルブに出力せず、結果として移動規制領域内に作業台8が入り込む作動が規制される。なお、本実施形態では、ブーム5を倒伏させることで作業台8と運転キャブ2aとが干渉する場合を例に挙げて説明している。
【0031】
以上、上部操作装置11に対する操作に基づいて作業台8を高所に移動させるときの制御構成について説明した。本発明を適用した高所作業車1において、移動規制領域内に作業台8を入り込ませる起伏操作が行われた場合に、どのような制御を行うことで移動規制領域内に作業台8が移動されることを規制しているかについて、作業台8が下方スライド位置のどこかに位置した状態において倒伏操作が行われた場合(図3参照)と、作業台8が上端スライド位置に位置した状態において倒伏操作が行われた場合(図4参照)とに分けて説明する。
【0032】
まず、図3に示すように、作業台8が下方スライド位置のどこかに位置した状態において倒伏操作が行われた場合について、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
【0033】
図5に示すステップS111においては、図3(a)に示すように、作業台8が下方スライド位置のどこかに位置した状態において、上部操作装置11に対してブーム5を倒伏させる操作が行われることにより、コントローラ20(作動制御部21)に倒伏操作信号が入力される。
【0034】
ここで、ブーム限界倒伏角設定部22には、ブーム5の伸縮長さとブーム5の旋回角とに基づいて算出される作業台8の位置を基にして、この位置の作業台8が倒伏された場合に移動規制領域内への作業台8の移動を規制できる限界角度としての下側ブーム限界倒伏角θ1および上側ブーム限界倒伏角θ2を、ブーム5の伸縮長さとブーム5の旋回角とに対応させて予めマップ状に記憶されている。
【0035】
下側ブーム限界倒伏角θ1は、作業台8が下方スライド位置のうちの下端部分に位置する場合であっても、ブーム5の倒伏により移動規制領域内に移動されない限界角度であり、この下側ブーム限界倒伏角θ1を用いてブーム5の倒伏を規制することにより、作業台8が下方スライド位置のどこに位置しているとしても、ブーム5の倒伏により移動規制領域内に作業台8が入り込むことを確実に防止できる。上側ブーム限界倒伏角θ2は、作業台8が上端スライド位置に位置する場合に、ブーム5の倒伏により移動規制領域内に移動されない限界角度であり、作業台8が上端スライド位置に位置するときに上側ブーム限界倒伏角θ2を用いてブーム5の倒伏を規制することで、ブーム5を倒伏させるだけで作業台8を運転キャブ2aに近づけることが可能である。
【0036】
ステップS111において倒伏操作信号が入力されると、ステップS112においてブーム限界倒伏角設定部22は、旋回角検出器13および伸縮長さ検出器15から入力されるブーム5の旋回角および伸縮長さを基に、これに対応する下側ブーム限界倒伏角θ1および上側ブーム限界倒伏角θ2を読み込む。また、ブーム限界倒伏角設定部22には、このときのブーム5の起伏角(倒伏角)θが入力される(ステップS113)。
【0037】
続いてステップS120に進み、ブーム限界倒伏角設定部22において、起伏角度検出器14により検出されるブーム5の起伏角(倒伏角)θとステップS112で読み出された下側ブーム限界倒伏角θ1とが比較される。比較の結果、倒伏角θが下側ブーム限界倒伏角θ1に達したと判断された場合はステップS150に進み、これとは反対に、倒伏角θが下側ブーム限界倒伏角θ1に達していないと判断された場合はステップS130に進む。
【0038】
ステップS130に進むと、ブーム限界倒伏角設定部22において、起伏角度検出器14により検出されるブーム5の倒伏角θとステップS112で読み出された上側ブーム限界倒伏角θ2とが比較される。比較の結果、倒伏角θが上側ブーム限界倒伏角θ2に達したと判断された場合はステップS170に進み、これとは反対に、倒伏角θが上側ブーム限界倒伏角θ2に達していないと判断された場合はステップS140に進む。
【0039】
このようにして、ステップS120およびステップS130を経てステップS140に進む場合は、下側ブーム限界倒伏角θ1および上側ブーム限界倒伏角θ2のどちらよりも倒伏角θが大きい状態であって、ブーム5の倒伏動が許容される状態である。ステップS140においては、ステップS111で入力された倒伏操作信号に対応する倒伏作動信号が出力されることで、起伏シリンダ22が縮小動されてブーム5が倒伏動される。
【0040】
ステップS140でブーム5が倒伏動された後ステップS113に戻り、再び現在のブーム5の倒伏角θが入力される。そして、倒伏角θが下側ブーム限界倒伏角θ1に達するまで、上述のようにしてステップS113、ステップS120、ステップS130およびステップS140を繰り返して実行する。そして、ある時点において、倒伏角θが下側ブーム限界倒伏角θ1に達したとステップS120で判定された場合(図3(b)参照)には、ステップS150に進む。なお、図3(b)に示すように、倒伏角θが下側ブーム限界倒伏角θ1に達すると、作業台8と運転キャブ2aとが上下方向にh1だけ離れて位置している。
【0041】
ステップS150に進むと、作業台8が上端スライド位置に位置するか否かが判定され、作業台8が上端スライド位置に位置する場合にはステップS130に進み、一方、作業台8が下方スライド位置のどこかに位置する場合にはステップS160に進む。ここで、図3(b)に示す状態の場合には、作業台8が上端スライド位置に位置しない(下方スライド位置のどこかに位置する)というリミットスイッチ9による検出結果に基づいて、ステップS160に進む。
【0042】
ステップS160においては、図3(b)に示すように、ブーム5の倒伏動を下側ブーム限界倒伏角θ1で規制した上で、上部操作装置11に対するブーム5を倒伏させる操作に基づいて、作業台8を下方へスライド移動させる。ここで、下側ブーム限界倒伏角θ1を用いてブーム5の倒伏を規制することにより、作業台8が具体的にどの位置にあるということまでが検出されていなくても、単に上端スライド位置に位置していない(下方スライド位置のどこかに位置している)という検出結果に基づいて、ブーム5の倒伏により移動規制領域内に作業台8が入り込むことを確実に防止できる。また、上述したように、下側ブーム限界倒伏角θ1でブーム5の倒伏が規制された状態においては、たとえ作業台8を下端スライド位置にまでスライド移動させても作業台8が移動規制領域内に入り込むことがない。そこで、さらにブーム5を倒伏させたいという操作が継続して行われている場合には、作業者に作業台8をさらに下げたいという意志があるものと判断し、この操作に応じてブーム5を倒伏させる代わりに作業台8の下方へスライド移動させる制御を行うことで、作業台が移動規制領域内に移動されることを防止しつつ、作業台8をさらに下げたいという作業者の要求を満たすことができる。
【0043】
このようにして、ブーム5を倒伏させる操作に基づいて作業台8を下方へスライド移動させる制御を行い、作業台8が下端スライド位置にまで達した場合には、移動規制領域内への作業台8の移動を規制するために作業台8のスライド移動を規制し、このフローを終了する。この制御により、運転キャブ2aに対して作業台8を上下方向にh2(<h1)の距離にまで近づけることができる。
【0044】
以上説明したように、作業台8が下方スライド位置のどこかに位置する状態で倒伏操作された場合であっても、ブーム5を倒伏させるための単一の操作に基づいて、移動規制領域A内に作業台8が移動することを規制しつつ、運転キャブ2aに対して上下間隔h2となる位置にまで作業台8を近づけることができる。そのため、従来構成においては、ブームを倒伏させる操作とは別に作業台を下方にスライド移動させる操作を行わない限り、運転キャブ2aに対して上下間隔h2となる位置にまで作業台を近づけることができなかったが、本発明を適用した高所作業車1においては、ブーム5を倒伏させるための単一の操作のみに基づいて、運転キャブ2aに対して上下間隔h2となる位置にまで作業台を近づけることができる。また、ブーム5を倒伏させるための操作に基づいて、ブーム5が下側ブーム限界倒伏角θ1まで倒伏された後、これに引き続いて途切れることなく作業台8が下方にスライド移動されるので、使い勝手が良くなる。
【0045】
次に、図4に示す作業台8が上端スライド位置に位置した状態において倒伏操作が行われた場合について、図5に示すフローチャートに沿って説明する。なお、以下においては、上述した作業台8が下方スライド位置のどこかに位置した状態において倒伏操作が行われた場合とは異なる部分を中心に説明する。
【0046】
図4(a)に示すように、作業台8が上端スライド位置に位置した状態において、上部操作装置11に対してブーム5を倒伏させる操作が行われることで、作動制御部21に倒伏操作信号が入力される(ステップS111)。そうすると、ブーム限界倒伏角設定部22において、旋回角検出器13および伸縮長さ検出器15から入力されるブーム5の旋回角および伸縮長さを基に、これに対応する下側ブーム限界倒伏角θ1および上側ブーム限界倒伏角θ2が読み込まれる(ステップS112)。また、ブーム限界倒伏角設定部22には、このときのブーム5の倒伏角θが入力される(ステップS113)。
【0047】
そして、ステップS113、ステップS120、ステップS130およびステップS140を繰り返して実行することで、ブーム5の倒伏角θが下側ブーム限界倒伏角θ1に達するまでブーム5を倒伏させる。ある時点において、ブーム5の倒伏角θが下側ブーム限界倒伏角θ1に達するまで倒伏されると(ステップS120)、ステップS150に進んで作業台8が上端スライド位置に位置するか否かが判定される。
【0048】
ここで、図4に示す状態の場合には、作業台8が上端スライド位置に位置するというリミットスイッチ9による検出結果に基づいて、ステップS150からステップS130へと進む。ステップS130に進むと、倒伏角θと上側ブーム限界倒伏角θ2との大小関係が比較されるが、倒伏角θが上側ブーム限界倒伏角θ2に達するまで、ステップS140、ステップS113、ステップS120、ステップS150およびステップS130が繰り返して実行される。
【0049】
そして、倒伏角θが上側ブーム限界倒伏角θ2に達するまで倒伏されると、ステップS130からステップS170へと進む。ステップS170においては、ブーム5の倒伏動および作業台8のスライド移動が規制されて、このフローが終了する(図4(b)参照)。このようにしてフローが終了した状態においては、下側ブーム限界倒伏角θ1よりも小さな上側ブーム限界倒伏角θ2となって倒伏するとともに、作業台8は上端スライド位置に位置したままで運転キャブ2aに対して上下間隔h2となる位置にまで近づくように移動されている。
【0050】
以上説明したように、作業台8が上端スライド位置に位置する状態で倒伏操作された場合には、上端スライド位置に位置した状態を保持したままブーム5を上側ブーム限界倒伏角θ2にまで倒伏させるだけで、運転キャブ2aに対して作業台8を上下間隔h2となる位置にまで近づくように一気に移動させることができる。例えば従来構成では、作業台が上端スライド位置に位置する状態で倒伏操作された場合であっても、一律に下側ブーム限界倒伏角θ1(作業台と運転キャブとが比較的上下に離れた状態)で一旦ブーム5の倒伏を規制する制御構成となっていたので、この状態からさらに作業台8を下げたい場合には、別途作業台8を下げる操作を行う必要があったが、本発明を適用した高所作業車1では、ブーム5を倒伏させる操作に基づいて運転キャブ2aに対して作業台8が上下間隔h2となる位置にまで一気に倒伏動させることが可能であり、使い勝手が良くなる。
【0051】
なお、上述の実施形態においては、ブーム5の旋回角および伸縮長さを基に、これに対応する下側ブーム限界倒伏角θ1および上側ブーム限界倒伏角θ2を読み込む構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、垂直ポスト部材6に対する作業台8の首振り角度(首振り位置)を検出する首振り角検出器を搭載しておき、ブーム5の旋回角および伸縮長さに加えてこの首振り角検出器で検出される結果に応じて、下側ブーム限界倒伏角θ1および上側ブーム限界倒伏角θ2を設定する構成も可能である。例えば図6において、ブーム5の旋回角、伸縮長さおよび作業台8の首振り位置に基づいて、旋回ラインθL、θRおよび前方ラインFによって囲まれる規制対象領域B(ハッチング部分)内に作業台8が位置すると判断される場合には、上述と同様に作業台8の上下スライド位置に応じたブーム限界倒伏角が設定される。
【0052】
上述の実施形態においては、リミットスイッチ9として、作業台8が上端スライド位置に位置するか、下方スライド位置のどこかに位置するかを検出できる構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えば図7に示すように、リミットスイッチ9を2つ設けることで、作業台8のスライド位置を、上側の上部スライド領域Uと、この上部スライド領域Uの下側に位置する中部スライド領域Mと、この中部スライド領域Mの下側に位置する下部スライド領域Dとに分け、両方のリミットスイッチ9がオン状態で作業台8が上部スライド領域U内に位置し、一方のリミットスイッチ9がオン状態で他方のリミットスイッチ9がオフ状態で作業台8が中部スライド領域M内に位置し、両方のリミットスイッチ9がオフ状態で作業台8が下部スライド領域D内に位置することが検出できるようにしても良い。
【0053】
そして、図7に示す場合、作業台8が上部スライド領域U内に位置するときには、上部スライド領域Uの下端部分に作業台8が位置する状態を想定し、その状態でブーム5が倒伏動されても移動規制領域内へ作業台8が移動されない上部ブーム限界倒伏角θ3を用いて、ブーム5の倒伏動を規制する制御を行う。作業台8が中部スライド領域M内に位置するときには、中部スライド領域Mの下端部分に作業台8が位置する状態を想定し、その状態でブーム5が倒伏動されても移動規制領域内へ作業台8が移動されない中部ブーム限界倒伏角θ4を用いて、ブーム5の倒伏動を規制する制御を行う。作業台8が下部スライド領域D内に位置するときには、下部スライド領域Dの下端部分に作業台8が位置する状態を想定し、その状態でブーム5が倒伏動されても移動規制領域内へ作業台8が移動されない下部ブーム限界倒伏角θ5を用いて、ブーム5の倒伏動を規制する制御を行う。このようにすることで、作業台8のスライド位置に対応させて一層細かくブーム限界倒伏角を設定可能となる。
【0054】
また、上述の実施形態では、作業台8が下方スライド位置のどこかに位置した状態でブーム5を倒伏させる操作が行われた場合、図3に示すように、一旦ブーム5を下側ブーム限界倒伏角θ1まで倒伏させた後、作業台8を下方にスライド移動させる制御構成を例示して説明したが、この制御構成以外にも、例えば図8に示す制御構成も可能である。すなわち、図8(a)に示すように、作業台8が下方スライド位置のどこかに位置した状態でブーム5を倒伏させる操作が行われた場合に、この操作に基づいてブーム5を倒伏させる作動と、作業台8を上方にスライド移動させる作動とを同時に行わせる。そうすることで、図8(b)に示す中間状態を経て最終的には図8(c)に示すように、作業台8が上端スライド位置に位置した状態になるまで上方にスライド移動され、且つブーム5が上側ブーム限界倒伏角θ2で倒伏が規制され、運転キャブ2aとの上下間隔がh2の位置にまで作業台8を近づけるように移動させることが可能となる。このようにして、ブーム5を倒伏させる作動と、作業台8を上方にスライド移動させる作動とを同時に行わせる場合、車体2に対して作業台8が相対的に降下するように、ブーム5の倒伏速度と作業台8の上方への移動速度とが調整される。このように調整されることで、作業台8に搭乗する作業者とっては操作通りの方向に作業台8が移動するので、作業者に違和感を与えることがない。
【0055】
上述の実施形態では、アーム側スライドガイド7aと作業台側スライドガイド8aとを嵌合させ、スライドシリンダ25により作業台8を上下にスライド移動させる構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えば図9(a)に示すように、上下に対向して設けられた1対の上側リンク部材102と下側リンク部材103とからなる平行リンク機構により、作業台8を上下に揺動させる構成の高所作業車100にも適用可能である。この高所作業車100においては、図示しない屈伸シリンダにより上側リンク部材102と下側リンク部材103とが上下に揺動され、ブームヘッド5dに対して下側に作業台8を水平状態のまま揺動させることが可能となっている(8aの状態)。また、垂直ポスト部材101を中心に平行リンク機構が旋回可能に構成されており、例えば8aの位置にある作業台を旋回させることで、8bに位置させることが可能である。さらに、例えばリミットスイッチにより、作業台8が上端揺動位置に位置することが検出できるが、それ以外の位置にあるときには、それ以外の位置にあるということが分かっても、どの位置にあるかまでは検出できないように構成されている。
【0056】
そして、図9(a)に示す高所作業車100において、作業台8が運転キャブ2aに向けて倒伏される場合には、上述の場合と同様に、下側ブーム限界倒伏角θ1および上側ブーム限界倒伏角θ2が設定される。例えば、作業台8が最も上方に揺動されていない状態で倒伏された場合には、図9(b)に示すように、一端下側ブーム限界倒伏角θ1で倒伏が規制され、その後ブーム5の倒伏操作に基づいて作業台8が下方に揺動される。また、図9(c)において、ブーム5の旋回角、伸縮長さおよび作業台8の首振り位置に基づいて、旋回ラインθL、θRおよび前方ラインFによって囲まれる規制対象領域C内に作業台8が位置すると判断される場合には、上述同様に作業台8の上下揺動位置に応じたブーム限界倒伏角が設定される。
【0057】
上述の実施形態では、リミットスイッチ9を用いることで、作業台8が上端スライド位置に位置するか、下方スライド位置のどこかに位置するかを検出できる構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えば、リミットスイッチ9の代わりに、作業台8の上下スライド位置をリニアに細かく検出可能なスライド位置検出器を設けて、このスライド位置検出器によって検出される上下スライド位置に応じてブーム限界倒伏角を細かく設定し、そのブーム限界倒伏角を用いてブーム5の倒伏を規制する構成でも良い。このように構成すると、作業台8の上下スライド位置に拘らず、ブーム5を倒伏させるだけで(作業台8を上下にスライド移動させることなく)、運転キャブ2aとの上下間隔がh2の位置にまで作業台8を近づけることが可能になる。
【0058】
上述の実施形態では、運転キャブ2aの周囲に設定された移動規制領域Aを例に挙げて説明したが、このような移動規制領域は車体2の一部であって作業台8およびブーム5と干渉する虞がある部分、例えば車体2上に設置された工具等を収納するための工具箱等に対しても設定可能である。なお、移動規制領域が設定される部分は、車体2に対する位置が既知であることが必要である。例えば図10に示すように、高所作業車1(100)が車体2に工具箱99を搭載して構成される場合に、工具箱99と干渉しない倒伏角度でブーム5の倒伏を規制し、その後も継続してブーム5を倒伏させる操作が継続される場合には、この操作に基づいて作業台8を下方にスライド移動(下方に揺動)させる制御を行う。
【0059】
上述の実施形態では、図3(b)に示す状態でのステップS160において、上部操作装置11に対するブーム5を倒伏させる操作に基づいて、作業台8を下方へスライド移動させる構成を例示したが、これ以外にも例えば原則通りに、上部操作装置11に対する作業台8を下方にスライド移動させる操作に基づいて、作業台8を下方へスライド移動させる制御構成としても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 高所作業車
2 車体
5 ブーム
6 垂直ポスト(垂直ポスト部材)
7a ガイド部材(アーム側スライドガイド)
8a ガイド部材(作業台側スライドガイド)
8 作業台
9 リミットスイッチ(上下位置検出手段)
11 上部操作装置(ブーム操作手段、作業台操作手段)
12 下部操作手段(ブーム操作手段、作業台操作手段)
20 コントローラ(作動制御手段)
102 リンク部材(上側リンク部材)
103 リンク部材(下側リンク部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能に構成された車体と、
前記車体に基端部が取り付けられて、旋回動、伸縮動および起伏動が可能に構成されたブームと、
前記ブームの先端部に設けられて、前記ブームの起伏面内で前記ブームの起伏動に応じて常に垂直に位置するように上下に揺動される垂直ポスト部材と、
前記垂直ポスト部材に上下移動装置を介して取り付けられて、前記上下移動装置によって前記垂直ポスト部材に対して上下移動される作業台とを有する高所作業車であって、
前記ブームを旋回、伸縮および起伏操作するためのブーム操作手段と、
前記上下移動装置を操作するための作業台操作手段と、
前記垂直ポスト部材に対する前記作業台の上下移動位置を検出する上下位置検出手段と、
前記ブーム操作手段および前記作業台操作手段に対する操作に応じて前記ブームおよび前記作業台を作動させる制御を行うとともに、前記ブームおよび前記作業台と前記車体との干渉を防止するために予め設定された移動規制領域内に、前記ブームおよび前記作業台が移動される作動を規制する作動制御手段とを備えて構成されており、
前記作動制御手段が、前記ブーム操作手段に対する前記ブームを倒伏させる操作に応じて前記移動規制領域に近づくように前記ブームが倒伏動されて前記移動規制領域の上方に前記作業台が移動されるとき、前記ブームの旋回位置および伸縮状態において前記移動規制領域内への前記ブームおよび前記作業台の移動を規制しつつ前記ブームの倒伏が許容されるブーム限界倒伏角を、前記上下位置検出手段において検出される前記作業台の上下位置に対応させて設定し、前記ブーム限界倒伏角を越えて前記ブームが倒伏動されることを規制するように構成されたことを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記上下移動装置が、上下に延びて設けられたガイド部材から構成され、
前記作業台は、前記ガイド部材により前記垂直ポスト部材に対して上下にスライド移動可能に設けられており、
前記上下位置検出手段は、前記作業台が上端部近傍の上端スライド位置に位置するか否かを検出可能に構成されており、
前記上下位置検出手段により、前記作業台が前記上端スライド位置に位置していないことが検出されているときには、
前記作動制御手段は、前記作業台が最も下動した下端スライド位置に位置する状態で前記移動規制領域内への前記作業台の移動を規制可能な前記ブームの限界倒伏角を前記ブーム限界倒伏角として設定することを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記上下位置検出手段により、前記作業台が前記上端スライド位置に位置していないことが検出されている状態において、
前記作動制御手段は、前記ブーム操作手段が倒伏操作されたときに、前記ブームを前記ブーム限界倒伏角まで前記ブーム操作手段への倒伏操作に応じて倒伏作動させることを許容し、前記ブームが前記ブーム限界倒伏角に達したときに前記ブームの倒伏作動を規制し、その時から前記ブーム操作手段への倒伏操作が継続されたときには、前記ブームの倒伏作動を規制したまま前記作業台を下げる制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の高所作業車。
【請求項4】
前記上下移動装置が、複数のリンク部材を用いて構成されるリンク機構から構成され、
前記作業台は、前記リンク機構により前記垂直ポスト部材に対して上下に揺動可能に設けられており、
前記上下位置検出手段は、前記作業台が上端部近傍の上端揺動位置に位置するか否かを検出可能に構成されており、
前記上下位置検出手段により、前記作業台が前記上端揺動位置に位置していないことが検出されているときには、
前記作動制御手段は、前記作業台が最も下方に揺動した下端揺動位置に位置する状態で前記移動規制領域内への前記作業台の移動を規制可能な前記ブームの限界倒伏角を前記ブーム限界倒伏角として設定することを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項5】
前記上下位置検出手段により、前記作業台が前記上端揺動位置に位置していないことが検出されている状態において、
前記作動制御手段は、前記ブーム操作手段が倒伏操作されたときに、前記ブームを前記ブーム限界倒伏角まで前記ブーム操作手段への倒伏操作に応じて倒伏作動させることを許容し、前記ブームが前記ブーム限界倒伏角に達したときに前記ブームの倒伏作動を規制し、その時から前記ブーム操作手段への倒伏操作が継続されたときには、前記ブームの倒伏作動を規制したまま前記作業台を下方に揺動させる制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の高所作業車。
【請求項6】
前記作業台が、前記垂直ポスト部材を回転中心として首振り自在に構成されており、
前記作動制御手段が、前記ブームの旋回位置、前記ブームの伸縮状態および前記作業台の首振り位置に基づいて前記ブーム限界倒伏角を設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高所作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−254863(P2012−254863A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129008(P2011−129008)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】