説明

高時空間解像度の機能的磁気共鳴映像を得る高次一般級数並列映像法及びサンプリング方法(HIGHER−ORDERGENERALIZEDSERIESPARALLELIMAGINGMETHODANDSAMPLINGMETHODFORACQUIRINGHIGHSPATIO−TEMPORALRESOLUTIONFUNCTIONALMAGNETICRESONANCEIMAGES)

【課題】
高時空間解像度の機能的磁気共鳴映像のための高次一般級数列映像法及びサンプリング法を開示する。
【解決手段】
本発明によれば、高時空間解像度を有する磁気共鳴映像を得るための方法であって、入力映像に対してk空間(k-space)においてサンプリングを遂行する段階と、前記サンプリング結果として獲得されたデータに対して高次一般級数映像法(Higher-Order Generalized Series(HGS))を適用して第1再構成映像を獲得する段階と、前記第1再構成映像に対して並列磁気共鳴映像法を適用して第2再構成映像を獲得する段階とを含む磁気共鳴映像法が提供される。本発明によれば、映像獲得速度を速くすることができ、高解像度機能の磁気共鳴映像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴映像に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、健康増進についての関心の増加とともに、医学用磁気共鳴映像法に関する関心も高くなっている。
このような磁気共鳴映像法の一つである、機能磁気共鳴映像法(functional Magnetic Resonance Imaging)は、脳が視覚、聴覚、動きなどの刺激を受ける時、脳のどの部分が活性化するかを調べるための映像法である。この映像法は、時間による脳の活性信号の変化を獲得しなければならないので、早い時間解像度を必要とする。このため、従来、データの獲得速度が速いEPI(Echo Planar Imaging)方式が多く使われられて来た。しかし、これは映像の大きさが64×64である場合だけ無理なく適用できる。映像の大きさが64×64以上の大きさのとき、信号対雑音比(SNR)が低くなり、使いにくくなるという問題があった。
【0003】
また、EPIは、他の一般磁気共鳴映像法とは異なり、データの獲得速度は速いが、ゴーストアーチファクト(ghost artifact)、幾何学的ひずみ(geometric distortion)などが生じるという問題点がある。さらに、このような問題点は、高い磁場の強さを有する磁気共鳴映像システムに、大きく影響を与える。
【0004】
現在、磁気共鳴映像はより高磁場に向かって進展されており、最近では7.0T(Tesla)に適用される超高磁場システムも商用化が進行中である。現在、病院や研究所では、1.5T、または3.0Tの強さの磁気共鳴映像を主に使用しており、機能的磁気共鳴映像もこの位の磁場の強さに適用されている。しかし、徐々に磁気共鳴映像が超高磁場に適用されるにつれ、EPIを使用して機能的磁気共鳴映像を遂行することが難しくなっている。したがって、データの獲得速度を増加させることができるEPI以外の一般的な磁気共鳴映像法に対する強い要望が生じている。
【0005】
一般的な磁気共鳴映像法は、EPIに比べてデータ獲得速度が遅いが、EPIに比べてゴーストアーチファクトまたは幾何学ひずみ現象の発生頻度が非常に少ない。このため、超高磁場システムにも簡単に適用できるといった長所がある。よって、このような一般的な磁気共鳴映像法のデータ獲得速度を増加させるようになれば、超高磁場に適用可能な磁気共鳴映像法が用いられる可能性がある。
【0006】
一般的な磁気共鳴映像法の速度を向上させる方法として、いくつかの技術がある。
先ず、一般的な磁気共鳴映像法の速度を向上させる方法の一つである、並列磁気共鳴映像法は、k空間(k-space)においてナイキストの割合より低い間歇的割合でサンプリングしてデータを獲得して映像を再構成する方式である。このような並列磁気共鳴映像法によれば、映像化速度を増加されることはできるが、その速度が使用されるコイルのチャンネルの数に比例するので、高解像度の機能的磁気共鳴映像を遂行することは難しい。
【0007】
次に、一般的な磁気共鳴映像法の速度を向上させる方法の一つである一般級数映像法は、時間的解像度が高い磁気共鳴映像を獲得しようとする時、主に使われる方法である。これは、k空間において、中央部分の低周波数帯域に対して限定的にナイキストの割合でサンプリングを遂行する方式であり、デ―タを獲得して映像を再構成する技術である。すなわち、隣のフレームにある映像はお互いに類似であるという仮定を利用する方法である。
【0008】
このような一般級数映像法は、結論的に映像化の速度を増加させる方法ではあるが、やはり同様に増加させることができる速度の割合が限定されており、高解像度の機能的磁気共鳴映像を遂行することは適さない。また、一般級数映像法は、高次一般級数映像法に比べてその再構成アルゴリズムの性能が落ちるという短所がある。
【0009】
最後に、一般的な磁気共鳴映像法の速度を向上させる方法の一つである高次一般級数映像法は、一般級数映像法を変形した方法であり、一般級数映像法とデータ獲得方法は同一であるが、再構成アルゴリズム性能面でもっと優れているという特性がある。高次一般級数映像法によれば、一般級数映像法に比べて高画質の再構成映像を得ることはできるが、時間的解像度側面では改善されることはない。よって、高次一般級数映像法だけで高解像度機能磁気共鳴映像を遂行することは難しい。
【0010】
一方、先に説明した並列磁気共鳴映像法と一般級数映像法との結合形態として、Xuによって提案された方法がある。
図1は、このような方法によりデータを獲得する時のサンプリング方法を示す図式図である。
図1に示されるように、この方式が提案するサンプリング方法は、k空間において中央部分はナイキストの割合でM個のラインをサンプリングし、中央を除いた外の部分は並列磁気共鳴映像法で減衰因子(Reduction Factor)をRにして間歇的にサンプリングを遂行する方式である。
【0011】
図1において、一番の左側の絵は、基準映像を得る時に使われるk空間サンプリング図式図の一般的映像化方法であり、その右側にある絵は、実際に動的磁気共鳴映像の撮影時、使われるk空間サンプリング図式図であり、Xuが提案する方法である。
このようなサンプリングによって獲得されたデータに基づいて映像を再構成する過程は次のようである。先ず、中央のM個のラインのみを使用して一般級数映像法を適用して映像を生成する。この時、並列映像と同様に位相配列コイルというマルチチャンネルコイルを使うので、この過程をチャンネルの数分を繰り返す。その後、各チャンネルから得られた映像の自乗加算和(square sum)を求めて最終に再構成する映像の初期推定値(initial estimate)を獲得する。
そして、Tikhonov正規化(regularization)技法を一緒に使用したSENSE(Sensitivity Encoding)を適用して映像を再構成することで、初期推定値をさらに向上させることができる。
【0012】
しかし、このような方法は、根本的に時間解像度を増加させることができる方法ではない。並列磁気共鳴映像法と一般級数映像法とをそれぞれ適用する場合より、再構成された映像の質は良くなることができるが、時間解像度は、むしろ並列磁気共鳴映像法と一般級数映像法とのうち、一つを適用した時より落ちるという問題点が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国特許第0902518号登録公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Kyriakos WE, Panych LP, Kacher DF, Westin CF, Bao SM, Mulkern RV and Jolesz FA. Sensitivity Profiles From an Array of Coils for Encoding and Reconstruction in Parallel (SPACE RIP). Magn Reson Med 2000
【非特許文献2】Z-P. Liang and P.C. Lauterbur. An Efficient Method for Dynamic Magnetic Resonance Imaging. IEEE Transactions on Medical Imaging 1994
【非特許文献3】Hernando D, Haldar J, Liang ZP. Reduced-encoding MRI using higherorder generalized series. 2006.
【非特許文献4】Xu D, Ying L, and Liang ZP. Parallel Generalized Series MRI: Algorithm and Application to Cancer Imaging. In: Proceedings of the 26th Annual International Conference of the IEEE EMBS, San Francisco, 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述した技術の問題点をすべて解決することを目的とする。
また、本発明は、磁気共鳴映像法として並列磁気共鳴映像法と高次一般級数映像法で使用する映像短縮方法を組み合わせて使うことで、各々の映像法を使うことよりも映像獲得時間を短縮することができ、高解像度機能磁気共鳴映像法が可能になることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を果たすための本発明の一実施例によれば、高時空間解像度を有する磁気共鳴映像を得るための方法であって、入力映像に対してk空間においてサンプリングを遂行する段階と、前記サンプリング結果として獲得されたデータに対して高次一般級数映像法(Higher-Order Generalized Series(HGS))を適用して第1再構成映像を獲得する段階と、前記第1再構成映像に対して並列磁気共鳴映像法を適用して第2再構成映像を獲得する段階とを含む磁気共鳴映像法が提供される。
【0017】
一方、上述した目的を果たすための本発明の他の実施例によれば、高時空間解像度を有する磁気共鳴映像を得るための方法であって、入力映像に対してk空間においてサンプリングを遂行する段階と、前記サンプリング結果として獲得されたデータに対して並列磁気共鳴映像法を適用して第1再構成映像を獲得する段階と、前記第1再構成映像に対して高次一般級数映像法を適用して第2再構成映像を獲得する段階とを含む磁気共鳴映像法が提供される。
【0018】
前記サンプリングを遂行する段階は、前記k空間の中央部分に対して限定的にサンプリングを遂行するが、ナイキスト(Nyquist)の割合より低い割合でデータを獲得する段階を含むことができる。
【0019】
前記ナイキストの割合でサンプリングを遂行する時のサンプリング数がNである場合、前記サンプリングを遂行する段階でのサンプリング数はNtot=N/Rtot、Rtot=RHGS・RPであり、RHGS=N/NGS、RP=N/NPであり、NGS及びNPはそれぞれ一般級数映像法と並列磁気共鳴映像法とによってデータを獲得する時のサンプリング数でありうる。
【0020】
前記並列磁気共鳴映像法を適用する段階は、正規化(regularization)を遂行する段階をさらに含むことができる。
前記高次一般級数映像法を適用する段階は、正規化を遂行する段階をさらに含むことができる。
前記並列磁気共鳴映像法は、SPACE RIP(Sensitivity Profiles From an Array of Coils for Encoding and Reconstruction in Parallel)、SENCE、PILSまたはGRAPPAでありうり、この以外の多チャンネルコイルを使用して並列磁気共鳴映像法を具現したどのような他の方法も含まれることができる。
【0021】
一方、上述した目的を果たすための本発明の他の実施例によれば、入力映像に対してk空間においてデータを獲得するためのサンプリング方法であって、k空間の中央部分に対して限定的にサンプリングを遂行するが、ナイキスト(nyquist)の割合より低い割合でデータを獲得する段階を含むサンプリング方法が提供される。
【0022】
前記ナイキストの割合でサンプリングを遂行する時のサンプリング数がNである場合、前記サンプリングを遂行する段階でのサンプリング数は、Ntot=N/Rtot、Rtot=RHGS・RPであり、RHGS=N/NGS、RP=N/NPであり、NGS及びNPは、それぞれ一般級数映像法と並列磁気共鳴映像法によってデータを獲得する時のサンプリング数でありうる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、磁気共鳴映像法として並列磁気共鳴映像法と高次一般級数映像法で使用する映像短縮方法を組み合わせて使用することによって、各々の映像法を使用することより、映像獲得時間が短縮されることができ、高解像度機能磁気共鳴映像法が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】Xuによって提案された従来の磁気共鳴映像のためのサンプリング方法を示する図式図である。
【図2】一般的なサンプリング方式を説明する図である。
【図3】一般級数映像法あるいは高次一般級数映像法で磁気共鳴映像を獲得する時、使われるサンプリング方式を説明する図である。
【図4】並列磁気共鳴映像法で磁気共鳴映像を獲得する時、使われるサンプリング方式を説明する図である。
【図5】本発明の一実施例による方法であり、磁気共鳴映像を獲得する時に使われるサンプリング方式を説明する図である。
【図6】SPACE RIPで一列を再構成するためのマトリックス方程式を示す図である。
【図7】図5に示されたサンプリング方式を通じて獲得されたデータを再構成する過程を説明する図である。
【図8】図5に示されたサンプリング方式を通じて獲得されたデータを再構成する過程を説明する図である。
【図9】図5に示されたサンプリング方式を通じて獲得されたデータを再構成する過程を説明する図である。
【図10】本発明の一実施例による方法の性能を実験するために使われた2-Dシミュレーションファントムを示す図である。
【図11】図3に示されたサンプリング方式を通じて再構成された映像を示した図である。
【図12】図4に示されたサンプリング方式を通じて再構成された映像を示した図である。
【図13】図5に示されたサンプリング方式を通じて再構成された映像を示した図である。
【図14】図11の映像が高次一般級数映像法によって再構成された結果を示した図面である。
【図15】図12の映像が並列磁気共鳴映像法によって再構成された結果を示した図面である。
【図16】図13の映像が本発明の方法によって再構成された結果を示した図面である。
【図17】一般級数映像法と高次一般級数映像法の性能を比べるために使われた1-Dシミュレーションデータを示した図面である。
【図18】図17のデータが一般級数映像法と高次一般級数映像法によって再構成された結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、高時空間解像度の機能的磁気共鳴映像を得る高次一般級数並列映像法を使用したデータサンプリング及び再構成方法に関し、より詳しくは、並列磁気共鳴映像法と高次一般級数映像法で使う映像圧縮方法を組み合わせて使うことで、各々の映像法をそれぞれ使う場合に比べて、映像獲得時間を短縮することができ、高解像度の機能的磁気共鳴映像を得ることができるようにする方法に関する。
【0026】
後述する本発明についての詳細な説明は、本発明を実施することができる特定の実施例を例示として示す添付図面を参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施することができる程度に十分に詳しく説明されている。本発明の多様な実施例はお互いに異なるが、相互排他的である必要はないことが理解されなければならない。例えば、ここに記載されている特定の形状、構造及び特性は、本発明の精神及び範囲を離れない範囲で、他の実施例に具現され得る。また、各々開示される実施例内の個別構成要素の位置または配置は、本発明の精神及び範囲を離れない範囲で、変更できることが理解されなければならない。よって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取られるのではい。本発明の範囲は、適切に説明すると、その請求項が主張するものと均等なすべての範囲とともに、添付された請求項だけによって限定される。図面で類似の参照符号は、多くの側面から同一又は類似の機能を指す。
【0027】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施するために、本発明の望ましい実施例について、添付された図面を参照しながら詳しく 説明する。
なお、本発明におけるデータサンプリングとデータの獲得は、映像取得装置で行われ、磁気共鳴映像の再構成は、映像構成装置、例えば映像再構成を行うプログラムを実行するコンピュータで行われる。また、データサンプリング、データの獲得および磁気共鳴映像の再構成の処理を1つの装置を用いて行ってもよい。
【実施例】
【0028】
<サンプリング方式>
磁気共鳴映像(Magnetic Resonance Imaging)は、k空間領域をサンプリングした後、フーリエ変換(Fourier Transform)を遂行することで得られる。先ず、本発明で使われるサンプリング方式について説明する。
図2乃至図5は、本発明で使うサンプリング方式を説明するために示した図である。
先ず、図2は、磁気共鳴映像獲得時、使われる従来のサンプリング方式を示す図面である。このようなサンプリング方式によれば、ナイキスト(Nyquist)の割合でデータを得る。一方、図2に示したように、k空間全体面積を細かくサンプリングしなければならないので、サンプリングに必要となる時間が最も長くなる。ここで、そのサンプリング数をNと仮定する。
【0029】
次に、図3は、一般級数映像法(Generalized Series(GS))または高次一般級数映像法(Higher-Order Generalized Series(HGS))によるサンプリング方式を示す図面である。高次一般級数映像法と一般級数映像法は、映像獲得方法は同じであるが、再構成アルゴリズム面でその差が存在する。一般的に、高次一般級数映像法の再構成の結果が映像の細密な面をより良く現わす。
【0030】
このようなサンプリング方式によれば、図3に示したように、k空間全体領域の中、予め定められた周波数以下の低周波帯域、つまりky軸の中央部分に対して、限定的なナイキストの割合でサンプリングが遂行される。すなわち、図3に示したサンプリング方式はサンプリング数がNGSであり、図2を参照として説明されたサンプリング方式に比べて、RHGS=N/NGS倍分、早く遂行することができる。ここで、NGS値は、使用者が選択することができる値であり、これを小さくすれば、データ獲得時間は減るかもしれないが、映像の再構成画質は漸次的に落ちるようになる。このようなサンプリング方式によれば、低周波帯域部分だけに対してサンプリングされるので、映像の高周波成分は損失されたと思うしかない。よって、このようなサンプリング方式は、動的磁気共鳴映像(Dynamic MRI)を獲得時、隣のフレームにある映像はお互いに類似である事実を利用し、映像の情報の中、大部分が集まっている低周波部分のみをサンプリングすることで、映像獲得時間を縮めるのに多く使われる。
【0031】
一方、図4は、並列磁気共鳴映像法(Parallel MRI)でデータを獲得する時に使うサンプリング方式を示した図である。ここではサンプリング数がNPであり、図2に示したサンプリング方式に比べてデータ獲得時間はRP=N/NP倍、早くなることができる。しかし、ナイキストの割合でサンプリングする方式ではないので、エイリアシング(aliasing)現象が生じるようになる。図3に示したサンプリング方式と比べて見れば、図4のサンプリング方式は、中央領域のみをサンプリングするのでははなく、サンプリングを間歇的に遂行するということが分かる。並列磁気共鳴映像法では、いくつかの多チャンネルコイルを通じて測定した付加的なデータを使って適切な処理をすることで、エイリアシング現象を取り除くことができる。このようなエイリアシング現象の除去方法は、従来技術に該当するので本明細書ではその詳細な説明を省略する。一方、並列磁気共鳴映像法においてサンプリングの割合、すなわち、どの位間歇的にサンプリングを遂行するかを示す割合は、多チャンネルRFコイルのチャンネル数に比例するようになる。よって、使用するコイルのチャンネル数が多いほど映像化時間の速度は速くなる。
【0032】
そして、図5は本発明の一実施例によるサンプリング方式を示す図である。図5のサンプリング方式は、それぞれ図3及び図4を参照して説明された高次一般級数映像法でデータを獲得する時に使われるサンプリング方式と並列磁気共鳴映像法でデータを獲得する時に使われるサンプリング方式とを結合させた方式である。図5に示したように、このようなサンプリング方式は、k空間の中央部分、つまり、予め定められた特定周波数以下の周波数帯域に対して限定的にサンプリングをするが、ナイキストの割合より、予め定められた割合分低い割合でデータを獲得するようになる。図5では、サンプリング数がNtotであり、図2に示したサンプリング方式に比べてRP=N/(RHGS・RP)倍分、データ獲得時間が早くなる。
【0033】
本発明では、このようなサンプリング方式を利用することでデータ獲得時間を縮めることができる。このようなデータ獲得方式とこれについての映像再構成技法とに関しては下記で説明する。
【0034】
<データ獲得方式>
磁気の共鳴映像データは、最初にk空間においてサンプリングを遂行することで得ることができ、どのような方式でサンプリングをするのかによって、後続するフーリエ変換を通じた映像再構成時にその結果が変わりうる。
本発明でのサンプリング遂行を通じたデータ獲得方式は、図5を参照して説明したことと同様である。すなわち、高次一般級数映像法のようにk空間の中央部分に対して限定的なサンプリングを遂行し、並列磁気共鳴映像法のようにナイキストの割合より低い割合でデータを獲得する。
【0035】
図5で、破線は、高次一般級数映像法によって除外されたサンプリングラインを示し、一点鎖線は、並列磁気共鳴映像法によって除外されたサンプリングラインを示す。
【0036】
<並列磁気共鳴映像法と正規化(regularization)>
並列磁気共鳴映像法としては、SPACE RIP(Sensitivity Profiles From an Array of Coils for Encoding and Reconstruction in Parallel)、SENSE(Sensitivity Encoding)、 PILS(Partially Parallel Imaging with Localized Sensitivities)または GRAPPA(GeneRalized Autocalibrating Partially Parallel Acquisitions)などを使うことができる。
【0037】
ここではSPACE RIPを例にあげて説明する。SPACE RIPは、映像を列ごとに(column by column)再構成する特徴があり、他の並列磁気共鳴映像法とは異なり、k空間を一定間隔にサンプリングする必要がないという長所がある。すなわち、映像の重要な情報は大体低周波帯域にあり、低周波部分に対しては細かくサンプリングし、高周波部分に対しては相対的に荒くサンプリングをする任意間隔のサンプリング方式を使うことができる。よって、同一な時間の間にデータを獲得しても、より高画質の映像を得られる。
本明細書では、説明しやすくするために、SPACE RIPを適用する時、一定間隔のサンプリング方式を使うことを例示しているが、任意間隔のサンプリング方式もいくらでも使われることができ、このような任意間隔サンプリングを使うことにより性能が向上できることは前述したようである。
本発明では、SPACE RIPと正規化を一緒に使うことで、再構成された映像の質を高めることができる。
【0038】
SPACE RIPの映像再構成方法について、説明すれば次のようである。
先ず、Wk(x、y)という感度プロフィール(Sensitivity Profile)を有するコイルで受ける MR信号は、次のような数1に示すことができる。
【0039】
【数1】

これをx方向にのみ、フーリエ変換すれば、次のような数2が得られるようになる。
【0040】
【数2】

【0041】
これを離散(discrete)ドメインでスパング方程式(Spanning Equation)を使えば、次のように数3のように示すことができる。
【0042】
【数3】


【0043】
最後に、正規直交特性(Orthonomal Property)を利用すれば、次のようになる。
【0044】
【数4】


【0045】
このような数4は、図6のようなマトリックス方程式で示すことができ、この方程式を解けば、次の数5のようにρベクトルを求めることができ、この過程がSPACE RIPの最後の段階である。
【0046】
【数5】


【0047】
条件数rとは、そのマトリックスの特異値(Singular Value)の中、最大値と最小値の比で定義され、この値が非常に大きくなると不良設定(ill-posed)問題が発生する。このような問題を克服する方法として正規化がある。正規化とは、マトリックス方程式、S=Wρを解く時、解をρ=W-1sにより求めず、数6のように条件項を付け加えて求めることで、マトリックスシステムの安定性を向上させる方法である。これによれば、より確実な再構成が可能になる。
【0048】
【数6】

【0049】
数6の陽な解(Explicit Solution)は数7のようになり、λは、正規化変数であり、マトリックスシステムによって変わる値であり、Iは、単位(identity)マトリックスである。
【0050】
【数7】

【0051】
<一般級数映像法(GS)>
任意の高解像度レファレンス映像、I(ref)(x,y)が与えられた時、一般級数映像法によれば、数8のような関数を基底関数として使う。
【0052】
【数8】

【0053】
一方、再構成する映像を数9のように基底関数の線形結合(Linear Combination)形態で示される。
【0054】
【数9】

【0055】
数9で、NGSは一般級数映像法で使った位相コード化(Phase Encoding)数を示す。数9で一般級数映像法はy軸、すなわち、位相コード化方向へのみ適用され、x軸方向には一般級数映像法が適用されないナイキストサンプリングの割合でデータが獲得されるようになる。つまり、x軸方向へのナイキスト割合サンプリング方式は図3のようになる。
ここで係数のC(x)は、獲得した映像のフーリエ変換関係式に基づいて次のように求められることができる。係数さえ求められれば、I(GS)(x,y)を計算することができ、これは映像の再構成が完了したことを意味する。
係数を求めるために先ず一般級数映像法で得られた2-DK空間データをx軸に1-D方向フーリエ変換を遂行した結果であるd(x,km)を定義する。
【0056】
【数10】

【0057】
このような数10と数9を結合すると、下記の数11のような関係式を得ることができる。
【0058】
【数11】

【0059】
ここで、d(ref)(x,k)はレファレンスデータの2-Dのk空間データをx軸に1-D方向フーリエ変換を遂行した結果である。すなわち、d(x,k)とd(ref)(x,k)はすべて分かっている値になるので、係数C(x)を計算することができるようになる。
上記数11を簡単なマトリックス方程式形態で示すと、数12のように示すことができ、ここでHマトリックスの(m、n)番目の項目はd(ref)(x,k−kn)である。
【0060】
【数12】

【0061】
<高次一般級数映像法(HGS)>
一般級数映像法の限界は、映像を再構成する時、レファレンスデータとは異なる任意の新しい情報が挿入されなければならなく、これがデータの獲得時、得られるk空間において中央領域のデータしかないということである。すなわち、数9でわかるように再構成映像はレファレンスデータに次のような対比調整関数(Contrast Modulation Function)が掛けられる。
【0062】
【数13】

【0063】
ここで説明しようとする高次一般級数映像法は、一般級数映像法に高周波成分の項目を前記CMFに加えることである。すなわち、高次一般級数映像法による再構成映像は次のような数14のように示すことができる。
【0064】
【数14】

【0065】
ここで、NHGSはNGSより大きい値である。実際に獲得したデータのサンプル数は NGS 個しかないが、高次一般級数映像法ではNGSより大きいNHGS数分、係数C(x)を求めることである。
結局、高次一般級数映像法は、推定〔estimation)過程を通さなければならないことを意味する。このような推定は次のような全変動(Total Variation)技法に基づいた正規化方法を使う。
【0066】
【数15】

【0067】
係数C(x)を求めるとき、上記数15で一番目の項だけ存在すると、これは一般級数映像法となり、二番目の項まで存在すると高次一般級数映像法となる。ここで、B=ΛrefDFであり、rは0またはレファレンスデータの値で設定する。また、FはCMF関数を意味し、Dは有限差分演算子(Finite Difference Operator)であり、Λrefは対角行列(Diagonal Matrix)であり、その要素はレファレンスデータで構成される。ここで、有限差分は離散数学で定義される用語であり、隣接した二つのデータ間の差を意味する。
上記のようなアルゴリズムを使用して、係数C(x)を求めることで映像を再構成すれば、同一のデータを有しても一般級数映像法より細密な再構成ができるようになる。
【0068】
<本発明の映像再構成技法>
前述したように、本発明のデータ獲得方式は図5に示したようなサンプリング方式を利用する。以下では、本発明の一実施例により図5のサンプリング方式によって得られたデータを再構成する方式について説明する。
図7ないし図9は、図5に示したサンプリング方式を通じて獲得されたデータを再構成する過程を説明する図面である。
【0069】
先ず、データ再構成のために高次一般級数映像法を適用する。すなわち、図7に示すkのラインは、サンプリングにより得られない外側部分、つまり予め定められた周波数以上の周波数帯域のラインで満たされている。高次一般級数映像法では、図7のデータから図8に示すデータが得られる。すなわち、k空間において中央部分だけでなく外側部分にもデータが存在するようになる。この場合、ロバスト性のある再構成のために正規化過程を共に使うことができる。このような過程を経れば並列磁気共鳴映像法を適用することができる形態のデータが得られる。
【0070】
次に、図8に示したデータに対して並列磁気共鳴映像法であるSPACE RIPを正規化とともに適用することで図9に示したような最終的な再構成映像を獲得する。SPACE RIPに対しては前に詳しく説明したので、ここではその説明を省く。
一方、ここでは、高次一般級数映像法と並列磁気共鳴映像法が順次に遂行されることで説明したが、本発明による映像再構成技法はここに限定されるのではなく、並列磁気共鳴映像法が先に遂行された後に高次一般級数映像法が遂行されることもできる。
【0071】
<性能実験>
以下では、実際に遂行された様々な実験を参照して高次一般級数映像法と並列磁気共鳴映像法とを結合して映像を再構成する本発明が有する他の技術との差別的特性について説明する。
【0072】
<2-Dシミュレーションファントム(Simulation Phantom)>
本発明の発明者は、2-Dシミュレーションファントムを利用して再構成能力及び時空間解像度の側面で本発明と他の技術とを比較及び分析した。
図10は実験に使われた2-Dのシミュレーションファントムである。 図10の(a)はレファレンス映像を示し、(b)は動的映像を示す。動的映像は、レファレンス映像に比べ、動的特性部分(1001、1002)をさらに含む。このような図面から、レファレンス映像に対してはそのフーリエ成分をすべて有していて、動的映像に対してはそのフーリエ成分の中、重要な一部の成分のみを有しても動的映像の全体フーリエ成分を再構成することができるということを分かる。本発明者は、レファレンス映像のフーリエ成分は全部有していると設定して、動的映像に対してはそのフーリエ成分の中で一部のみを有しているように設定した。ここで動的映像に対して有する一部のフーリエ成分は、図3、図4及び図5に示した方式によってサンプリングされた形式である。
【0073】
先ず、図3に示した方式、すなわち、高次一般級数映像法においてRHGS=4の状態でデータをサンプリングして映像を再構成させると、図11の形態のような再構成映像が得られる。
【0074】
また、図4に示した方式、すなわち、磁気共鳴映像法においてRP=4の状態でデータをサンプリングして映像を再構成すると、図12の形態のような再構成映像が得られる。
また、図5に示した方式、すなわち、本発明による方式においてRtot=RHGS・RP=2・2=4の状態でデータをサンプリングして映像を再構成すると、図13のような形態の再構成映像を得ることができる。一方、このシミュレーションデータは4チャンネルで作られたが、それぞれの映像は4チャンネルデータの平均値である。
【0075】
図11ないし図13に示した映像に対してそれぞれ高次一般級数映像法、並列磁気共鳴映像法及び本発明による映像法により、映像再構成アルゴリズムを適用すると、図14ないし図16の映像が得られることができる。
【0076】
このようなシミュレーションから、高次一般級数映像法、並列磁気共鳴映像法及び本発明による映像法は同一の時間解像度、すなわち、図2に示した一般的な映像法に比べて4倍早くデータを獲得することができるという面は同一であるが、図14ないし図16に示したように、再構成映像画質の側面では本発明による方式によって、一番良い結果が得られるということが分かる。
【0077】
<一般級数映像法と高次一般級数映像法との性能比較>
本発明の発明者は1-Dシミュレーションデータを利用して、本発明で使用した高次一般級数映像法と一般級数映像法との性能を比較した。
図17は1-Dのシミュレーション信号を示したグラフであり、左側グラフ(a)はレファレンス信号、右側グラフ(b)は動的信号を示す。
図17に示したように、動的信号での動的特性はグラフ中央の四角形部分(1701)である。実際データの長さは256であるが、この中、動的特性が現われた部分のみを拡大して示した。
【0078】
図18は図17のグラフでフーリエ成分256個の中、中央部分の50個のみを有して、一般級数映像法と高次一般級数映像法を遂行して映像を再構成した結果を示す。
図18の左側グラフ(a)は一般級数映像法によって再構成された結果を示し、右側グラフ(b)は高次一般級数映像法によって再構成された結果を示す。グラフで一点鎖線(1802、1804)が再構成された信号であり、実線(1801、1803)は、元々の動的信号であって比較のために示している。
【0079】
図18のグラフから分かるように、高次一般級数映像法による再構成が元々の動的信号をよく示してくれることが分かった。すなわち、高次一般級数映像法の性能が一般級数映像法に比べて相当良いことが分かる。
【0080】
以上、本発明は、具体的な構成要素等のような特定事項に限定した実施例及び図面によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解の助けのために提供されただけであって、本発明が上記実施例に限定されるのではない。本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から多様な修正及び変形を図ることができる。
したがって、本発明の思想は上記説明された実施例に限って定められるのではなく、後述する特許請求範囲だけではなくこの特許請求範囲と均等にまたは等価的に変形されたすべてのものは本発明の思想の範囲に属する。
【符号の説明】
【0081】
N,NGS,NP,Ntot サンプリング数
kx,ky 波数


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高時空間解像度を有する磁気共鳴映像を得るための方法であって、
入力映像に対してk空間(k-space)においてサンプリングを遂行する段階と、
前記サンプリング結果として獲得されたデータに対して高次一般級数映像法(Higher-Order Generalized Series(HGS))を適用して第1再構成映像を獲得する段階と、
前記第1再構成映像に対して並列磁気共鳴映像法を適用して第2再構成映像を獲得する段階とを含む磁気共鳴映像法。
【請求項2】
高時空間解像度を有する磁気共鳴映像を得るための方法であって、
入力映像に対してk空間においてサンプリングを遂行する段階と、
前記サンプリング結果として獲得されたデータに対して並列磁気共鳴映像法を適用して第1再構成映像を獲得する段階と、
前記第1再構成映像に対して高次一般級数映像法を適用して第2再構成映像を獲得する段階とを含む磁気共鳴映像法。
【請求項3】
前記サンプリングを遂行する段階は、
前記k空間の中央部分に対して限定的にサンプリングを遂行するが、ナイキスト(nyquist)の割合より低い割合でデータを獲得する段階を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴映像法。
【請求項4】
前記ナイキストの割合でサンプリングを遂行する時のサンプリング数がNである場合、
前記サンプリングを遂行する段階でのサンプリング数はNtot=N/Rtot、Rtot=RHGS・RPであり、 RHGS=N/NGS、RP=N/NPであり、
NGS及びNPは、それぞれ一般級数映像法と並列磁気共鳴映像法とによってデータを獲得する時のサンプリング数であることを特徴とする請求項3に記載の磁気共鳴映像法。
【請求項5】
前記並列磁気共鳴映像法を適用する段階は、正規化(regularization)を遂行する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴映像法。
【請求項6】
前記高次一般級数映像法を適用する段階は、正規化を遂行する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴映像法。
【請求項7】
前記並列磁気共鳴映像法は、SPACE RIP(Sensitivity Profiles From an Array of Coils for Encoding and Reconstruction in Parallel)、SENCE、PILSまたはGRAPPAであることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴映像法。
【請求項8】
入力映像に対してk空間においてデータを獲得するためのサンプリング方法であって、
k空間の中央部分に対して限定的にサンプリングを遂行するが、ナイキスト(nyquist)の割合より低い割合でデータを獲得する段階を含むサンプリング方法。
【請求項9】
前記ナイキストの割合でサンプリングを遂行する時のサンプリング数がNである場合、
前記サンプリングを遂行する段階でのサンプリング数は、Ntot=N/Rtot、Rtot=RHGS・RPであり、RHGS=N/NGS、RP=N/NPであり、
NGS及びNPは、それぞれ一般級数映像法と並列磁気共鳴映像法とによってデータを獲得する時のサンプリング数であることを特徴とする請求項8に記載のサンプリング方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−155063(P2010−155063A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232198(P2009−232198)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】