説明

高活性のチーグラー・ナッタ触媒、触媒を生成するための方法およびその使用

改善されたチーグラー・ナッタ触媒、および改善された触媒の製造方法を記載する。チーグラー・ナッタ触媒は、球状のMgCl2−xROH担持体を用いて形成される。ここで、Rは、1〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位であり、ROHは、アルコール、または少なくとも2つの異なるアルコールの混合物であり、xは、約1.5〜6.0、好ましくは約2.5〜4、より好ましくは約2.9〜3.4、さらにより好ましくは2.95〜3.35である。チーグラー・ナッタ触媒はグループ4〜8の遷移金属および内部供与体を含む。触媒は、オレフィン重合反応の高い活性と良好な立体規則性および水素感受性とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は、一局面においては、改善されたチーグラー・ナッタ触媒に関する。特に、本発明は、オレフィンをポリオレフィンに重合する際にこのような触媒を使用することに関し、特に、チーグラー・ナッタ触媒の改善された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
優先権主張
本願は、その内容全体が引用によりこの明細書中に援用されている、2008年6月11日出願の米国仮出願連続番号第61/060,646号に対する優先権を主張している。
【0003】
発明の背景
チーグラー・ナッタ触媒は、一般に、触媒担持材料、遷移金属成分、および、金属の原子価を満たす1つ以上の配位子から構成されている。遷移金属成分は典型的にはグループ4〜8の遷移金属であり、チタン、ジルコニウム、クロムまたはバナジウムが一般に用いられている。遷移金属は、しばしば、TiCl4などの金属ハロゲン化物として提供される。チーグラー・ナッタ触媒を用いることにより、オレフィンの高収率重合が有効に促進される。オレフィンの重合時に、触媒は、有機アルミニウム共触媒と組合わせて用いられる。
【0004】
プロピレンの重合を触媒するのに用いられる場合、触媒において第3の成分が用いられてもよい。第3の成分は、ポリマーの立体規則性を制御するのに用いられる電子供与体であり、これは、その合成中に触媒に組込むことができる(内部供与体)か、または、重合反応中に重合反応器に加えることができる(外部供与体)。いくつかの反応においては、内部供与体および外部供与体の両方が用いられてもよい。芳香族エステル、ジエーテル、スクシナート、アルコキシシランおよびヒンダードアミンは、ポリプロピレンの形成に使用され得る化合物の例として挙げられる。
【0005】
いくつかのチーグラー・ナッタ触媒において用いられる或る1つの公知の担持材料として、MgCl2が挙げられる。MgCl2材料は、しばしば、エタノール(EtOH)と錯体化される。EtOHは、触媒を調製する際にTiCl4などの遷移金属ハロゲン化物と反応する。
【0006】
MgCl2−xEtOH錯体(この場合、xは担持材料中のEtOH分子の平均数である)を生成する方法が、いくつかの特許において記載されている。たとえば、コスキネン(Koskinen)に対する米国特許第5,468,698号には、MgCl2−xEtOH担持材料を調製するための方法が記載されている。溶融したMgCl2−xEtOH錯体(x=3.3〜5.5)を、加熱されたチャンバ内に噴霧することにより、粒状のMgCl2−xEtOH材料が形成される。この場合、x=2.0〜3.2である。Koskinenは、担持材料を用いて製造された特定の如何なる触媒の組成についても記載していない。
【0007】
MgCl2−xEtOH担持体を利用する触媒も記載されている。たとえば、イイスコラン(Iiskolan)に対する米国特許第4,829,034号には、チーグラー・ナッタ触媒、およびMgCl2−xEtOH担持体(この場合、xは約3である)を用いた触媒の製造方法が記載されている。Iiskolanにおいては、担持材料は、まず、D−i−BPなどの内部供与体と接触する。次いで、担持体D−i−BP錯体をTiCl4と組合わせて触媒を形成する。
【0008】
ウワイ(Uwai)に対する米国特許第6,020,279号は、MgCl2−xEtOH担持体を生成することによってチーグラー・ナッタ触媒を製造するための方法を記載している。この場合、x=1.5〜2.1であり、担持体の平均粒径は91μmである。担持体は、脂肪族溶媒の存在下で、120°C〜135°Cで10分〜10時間にわたってTiCl4などのチタンハロゲン化物および電子供与体と混ぜ合わされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さまざまなチーグラー・ナッタ触媒が開発されてきたが、オレフィン重合が重要であるため、活性を向上させた触媒の開発が依然として必要とされている。触媒の活性を向上させることにより、製品収率が高くなり、オレフィン重合反応に必要な触媒の量が少なくなる。これにより触媒のコストが低下し、かつ、ポリマー中の触媒不純物の量が減り(灰分の低下)、結果として、より優れた性能プロフィルを有するポリマーが得られることとなる。
【0010】
MgCl2担持体を生成するのに用いられる方法にかかわらず、または、そのような担持体が典型的に生成されたチーグラー・ナッタ触媒に用いられた場合であっても、この発明で教示されるようなチーグラー・ナッタ触媒の3つの必須の成分を組み合わせるという固有の方法によってのみ、この発明において見出される著しく高い活性、水素反応および立体規則性活性がもたらされることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
この発明は、球状のMgCl2−xROH担持体と組み合わされた改善された手順を用いて形成される改善されたチーグラー・ナッタ触媒に向けられている。この場合、Rは、1〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位であり、ROHは、アルコール、または少なくとも2つの異なるアルコールの混合物であり、好ましくは、ROHは、エタノール、またはエタノールと高級アルコールとの混合物であり、この場合、Rは、3〜10の炭素原子、好ましくは4〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位である。また、xは、約1.5〜6.0、好ましくは2.5〜4、より好ましくは2.9〜3.4、さらにより好ましくは2.95〜3.35の範囲である。
【0012】
触媒は、Tiなどのグループ4〜8の遷移金属、および、芳香族エステル、ジエーテル、スクシナートまたはヒンダードアミンなどの内部供与体、好ましくはジ−イソブチルフタラート(D−i−BP)またはジ−n−ブチルフタラート(D−n−BP)などのジアルキルフタラートを含む。この発明の触媒は、オレフィン重合反応における高い活性、ならびに、優れた立体規則性および水素感受性を有する。
【0013】
この発明はまた、改善されたチーグラー・ナッタ触媒の製造方法に関する。一般に、球状のMgCl2−xROH(x=3.0〜3.3)は、低温(−10°C〜+10°C)で、TiCl4などの遷移金属ハロゲン化物で処理される。反応生成物は、約50°Cに加熱され、内部供与体と接触させられる。結果として生じる前触媒は、約105°Cに加熱され、その温度で一定期間、好ましくは約1〜2時間にわたって保持される。反応混合物は室温に冷却され、固体の触媒は、高温で、有機溶媒/TiCl4混合物で抽出される。触媒はヘプタンなどの溶媒で洗浄され、真空乾燥される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の改善された触媒を用いることにより、ポリプロピレンまたは他の重合されたオレフィンを生成することができる。本発明の触媒は、改善された活性を示しつつ、優れた立体特異性および形態構造(morphology)を有するポリマーを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】前触媒段落を通じてこの発明のサンプル触媒を調製するのに用いられる機器を示す図である。
【図2】前触媒の調製物から活性化された触媒を抽出するのに用いられる機器を示す図である。
【図3】MgCl2−xROH担持体の顕微鏡写真を示す図であり、この顕微鏡写真は、結果を示す表に特に規定のない限り、この発明のプロセスによって生成される触媒およびポリマーの典型的な球形度を示す。
【図4】本発明の触媒の顕微鏡写真を示す図であり、この顕微鏡写真は、結果を示す表に特に規定のない限り、この発明のプロセスによって生成される触媒およびポリマーの典型的な球形度を示す。
【図5】その後のポリマーの顕微鏡写真を示す図であり、この顕微鏡写真は、結果を示す表に特に規定のない限り、この発明のプロセスによって生成される触媒およびポリマーの典型的な球形度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
この発明は、球状のMgCl2−xROH担持体と混ぜ合わされ、改善された手順を用いて形成される改善されたチーグラー・ナッタ触媒に向けられている。この場合、Rは、1〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位であり、ROHは、アルコール、または少なくとも2つの異なるアルコールの混合物であり、好ましくは、ROHは、エタノール、またはエタノールと高級アルコールとの混合物であり、ここでRは、3〜10の炭素原子、好ましくは4〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位である。また、xは、約1.5〜6.0、好ましくは約2.5〜4、より好ましくは約2.9〜3.4、さらにより好ましくは2.95〜3.35の範囲である。
【0017】
この担持材料は、この明細書中では「球状のMgCl2担持体」と称される。球状のMgCl2担持体はいかなる所望の粒径を有していてもよい。好ましい実施形態においては、球状のMgCl2担持体が有する平均粒径(d50)は、約10ミクロン〜200ミクロン、好ましくは20ミクロン〜150ミクロン、より好ましくは30ミクロン〜120ミクロン、さらにより好ましくは40ミクロン〜90ミクロンである。球状のMgCl2担持体は、Iiskolanおよびコスキネン(Koskinen)に対するUS4,829,034またはコシネン(Koshinen)に対するUS5,905,050に従って、溶融したMgCl2アルコール付加物を噴霧冷却することによって生成されてもよい。3つの好ましい固形担持体の物理的特性を表1に要約した。
【0018】
【表1】

【0019】
この発明のチーグラー・ナッタ触媒は、グループ4〜8の遷移金属、好ましくはグループ4〜6の遷移金属を含む。好ましい実施形態においては、触媒は、Ti、Zr、VまたはCr、最も好ましくはTi、を組込んでいる。遷移金属は、典型的には、塩化物、臭化物またはヨウ化物などのハロゲン化された形で提供される。塩化チタンが特に好ましい。
【0020】
この発明のチーグラー・ナッタ触媒は、反応器において低温、好ましくは+10°C以下で、攪拌によって球状のMgCl2担持体を遷移金属成分と接触させることによって作製される。反応器には、球状のMgCl2担持体および遷移金属成分がいずれの順序で投入されてもよい。すなわち、球状のMgCl2担持体が最初に加えられ、次いで遷移金属成分が加えられてもよく、またはこの逆であっても良い。但し、遷移金属成分に球状のMgCl2担持体を加える方が好ましい。遷移金属成分は、脂肪族または芳香族の有機溶媒、好ましくは脂肪族炭化水素、最も好ましくはヘプタンのような線状の脂肪族炭化水素、またはIsopar−Hのような分岐した炭化水素の混合物で希釈することができる。球状のMgCl2担持体は、ある期間にわたって、好ましくは約4分〜約300分にわたって、反応器に加えられる。遷移金属に対する球状のMgCl2担持体のMgのモル比は、1:100〜1:5、好ましくは1:50〜1:8、最も好ましくは1:25〜1:9である。
【0021】
球状のMgCl2担持体と遷移金属成分との反応生成物は、予め定められた約30°C〜100°Cの温度にゆっくりと加熱される。好ましい実施形態においては、反応器は、約2時間にわたって約40°C〜90°Cの温度に加熱される。予め定められた温度に達すると、電子供与体が反応器に加えられる。次いで、この前触媒が、少なくとも80°C、好ましくは100°C〜125°C、より好ましくは100°C〜110°Cの温度にさらに加熱され、その温度で、予め定められた期間、好ましくは約10分〜2時間にわたって保持される。次いで、結果として生じる混合物を室温に冷却し、ろ過して固体成分を除去する。固体成分は、有機溶媒と遷移金属との混合物を用いて、高温で抽出される。ソックスレー(Soxhlet)抽出法を適用することが好ましい。有機溶媒は、脂肪族または芳香族の炭化水素であってもよく、好ましくは芳香族炭化水素であってもよく、最も好ましくは、気相および抽出ゾーンにおいてTiCl4と有機溶媒との一定の比率を保証するTiCl4と同じ136°Cの沸点を有するエチルベンゼンであってもよい。
【0022】
この発明の一実施形態においては、チーグラー・ナッタ触媒を製造する手順は以下のとおりである。
【0023】
a)絶えず攪拌しつつ、TiCl4をゆっくりとMgCl2−xROH/有機溶媒懸濁液に追加することによって、−30°C〜+40°Cで、より好ましくは−20°C〜+20°Cで、さらにより好ましくは−10C〜+10Cで、MgCl2−xROHを純TiCl4と反応させる。
【0024】
b)上記の反応混合物の温度を約30°C〜100°C、好ましくは約40〜90°Cに上げ、次いで、内部電子供与体を追加し、混合物を約1〜2時間にわたり少なくとも80°Cに加熱し続ける。
【0025】
c)反応混合物を室温でろ過して、固形の前触媒を得る。
d)TiCl4およびエチルベンゼン(約30:70、好ましくは20:80、最も好ましくは10:90の体積比で)を採用し、ソックスレー抽出法を用いて、1〜5時間、好ましくは1〜4時間、最も好ましくは1〜3時間にわたり、少なくとも100°C、好ましくは100〜135°C、最も好ましくは120〜130°Cの温度で、前触媒を抽出する。
【0026】
e)触媒を室温(20°C)に冷却し、ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンのような炭化水素で数回洗浄し、真空下で、および/または、30〜100°C、好ましくは40〜90°C、最も好ましくは50〜80°Cの高温で乾燥させる。
【0027】
本発明の第2の実施形態においては、方法は以下のステップを含む。
a)非芳香族炭化水素で希釈されたTiCl4、または純TiCl4の冷却部分を調製するステップ。
【0028】
b)絶えず攪拌しつつ、MgCl2−xROHの予め形成された球状微粒子をゆっくりと加えることにより、−30°C〜+40°C、より好ましくは−20°C〜+20°C、最も好ましくは−10°C〜+10°Cで、純TiCl4または希釈されたTiCl4を反応させるステップ。
【0029】
c)反応混合物の温度を約30〜100°C、好ましくは約40〜90°Cに上げ、次いで、内部電子供与体を加えて、混合物を少なくとも80°Cにまで熱し続けるステップ。
【0030】
d)反応混合物を室温でろ過するステップ。
e)TiCl4およびエチルベンゼンを(約30:70、好ましくは20:80、最も好ましくは10:90の体積比で)採用し、ソックスレー抽出法を用いて、1〜5時間、好ましくは1〜4時間、最も好ましくは1〜3時間にわたり、少なくとも100°C、好ましくは100〜135°C、最も好ましくは120〜130°Cの温度で、前触媒を抽出するステップ。
【0031】
f)触媒を室温(20°C)に冷却し、ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンのような炭化水素で数回洗浄し、真空下で、および/または、30〜100°C、好ましくは40〜90°C、最も好ましくは50〜80°Cの高温で乾燥させるステップ。
【0032】
ソックスレー抽出法は、当該技術において一般に周知である。この場合、発明者は、前触媒を採取し、多孔性のガラスフリットに配置した。そしてこれをソックスレー抽出器の主チャンバに投入した。ソックスレー抽出器は、抽出溶媒、この場合はTiCl4およびエチルベンゼン、を含むフラスコ上に配置される。ソックスレーはコンデンサを備えている。溶媒は還流するよう加熱される。溶媒蒸気は、蒸留アームを通って上方に移動し、固体のフリットを収容するチャンバに流入する。コンデンサは、いかなる溶媒蒸気をも冷却して、約100°C〜135°C、最も好ましくは120〜130°Cで維持される固形材料を収容するガラス被覆チャンバに滴り落ちていくことを確実にする。前触媒を含むチャンバが暖かい溶媒でゆっくりと満たされる。次いで、前触媒中のいかなる汚染物質も暖かい溶媒に溶解し、加熱チャンバに滴り落ちて、触媒を残すこととなる。前触媒から汚染物質を抽出するのにさほど好ましくない方法が他にあり、少なくとも100°C、好ましくは100〜135°C、最も好ましくは120〜130°Cの温度で、有機溶媒とTiCl4との混合物で洗浄するステップを含むが、これには限定されない。有機溶媒は、脂肪族または芳香族の炭化水素、好ましくは芳香族炭化水素、最も好ましくはエチルベンゼンであり得る。この明細書では単にソックスレー抽出法しか言及していないが、発明者は、この発明が溶液中の有機溶媒および遷移金属を用いる如何なる抽出方法でも有効であることに留意している。
【0033】
球状のMgCl2−xROH担持体をより適切に定義する。この場合、Rは、(モルの合計が合わせて「x」になるという条件で)以下のうち1つ以上に該当するものであり、1〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位であり、ROHは、アルコール、または少なくとも2つの異なるアルコールの混合物であり、好ましくは、ROHは、エタノール、またはエタノールと高級アルコールとの混合物であり、この場合、Rは、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノールまたはオクタノールのような3〜10の炭素原子、好ましくはブタノール、ヘキサノール、ヘプタノールまたはオクタノールのような4〜10の炭素原子、を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位である。また、xは、約1.5〜6.0、好ましくは約2.5〜4、より好ましくは約2.9〜3.4、さらにより好ましくは2.95〜3.35の範囲である。ROHがエタノールと高級アルコールとの混合物である場合、エタノール:高級アルコールのモル比は、少なくとも80:20、好ましくは90:10、最も好ましくは95:5である。
【0034】
当該手順において参照される内部電子供与体は典型的にはルイス塩基である。好適な電子供与体は、ジエステル、ジエーテルおよびスクシナートを含む。好ましい内部供与体化合物は、カルボン酸誘導体、および、特に以下の一般式を有するフタル酸誘導体を含んでいた。
【0035】
【化1】

【0036】
ここで、XおよびYは各々、塩素原子もしくは臭素原子、またはC1〜Cl0のアルコキシ基を表わしているか、または、XとYとが合わさって、無水物機能を形成する酸素原子を表わしている。特に好ましい内部電子供与体化合物は、式(I)のフタル酸エステルであり、XおよびYは各々、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、sec.−ブチルオキシまたはtert.−ブチルオキシ基などのC1〜C8アルコキシ基である。好ましいフタル酸エステルの例には、ジエチルフタラート、ジ−n−ブチルフタラート、ジ−イソブチルフタラート、ジ−n−ペンチルフタラート、ジ−n−ヘキシルフタラート、(n−プロピル)(n−ヘプチル)フタラート、(i−プロピル)(n−ヘプチル)フタラート、ジ−n−ヘプチルフタラート、ジ−n−オクチルフタラート、ジ−ノニルフタラート、ジ−i−ノニルフタラート、または、ジ−2−エチルヘキシルフタラートが含まれる。
【0037】
好ましい内部電子供与体化合物のさらなる例には、3員または4員の、任意に置換されたシクロアルカン 1,2−ジカルボン酸のジエステル、および、置換されたベンゾフェノン 2−カルボン酸または置換されたベンゾフェノン 3−カルボン酸のモノエステルが含まれる。これらのエステルの合成のためのエステル化反応におけるヒドロキシ化合物として、C1〜C15またはC5〜C7のシクロアルカノールなどの通常のアルカノールが用いられるが、これらのアルカノールは、任意には、1つ以上のC1〜C8アルキル基およびC1〜Cl0フェノールと置換されてもよい。
【0038】
さらなるグループの好適な内部供与体化合物は、非置換のおよび置換済みの(C1〜C10アルキル)−1,3−プロパンジエーテル、および、スクシナートの基の誘導体である。
【0039】
好ましくは、電子供与体は、ジ−イソブチルフタラート(D−i−BP)、ジ−n−ブチルフタラート(D−n−BP)、(n−プロピル)(n−ヘプチル)フタラート、(イソプロピル)(n−ヘプチル)フタラート、ジ−イソオクチルフタラート、ジ−2−エチル,ヘキシルフタラート、および、ジ−イソノニルフタラートである。
【0040】
また、2つ以上の内部電子供与体化合物の混合物が、本発明の固体触媒成分の調製に用いられてもよい。
【0041】
粒子状の固体成分の調製に用いられる場合、内部電子供与体化合物は、概して、ハロゲン化マグネシウム化合物の1モルごとに、約0.01〜約2モル、好ましくは約0.04〜約0.6モル、より好ましくは約0.05〜約0.2モルの量で用いられる。
【0042】
触媒系
本発明の触媒系は、固体の触媒成分に加えて、共触媒として少なくとも1つのアルミニウム化合物をさらに含む。アルミニウム化合物に加えて、本発明の触媒系は、好ましくは、少なくとも1つの外部電子供与体化合物を含む。
【0043】
好適なアルミニウム化合物の例として、アルミニウムトリアルキルおよびその誘導体が挙げられる。この場合、アルキル基は、アルコキシ基またはハロゲン原子、たとえば塩素原子または臭素原子、によって置換される。アルキル基は同じであってもよいし、異なっていてもよい。アルキル基は、線状または分枝鎖のアルキル基であってもよい。好ましいトリアルキルアルミニウム化合物としては、アルキル基が各々、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、またはメチルジエチルアルミニウムなどの1〜8の炭素原子を有しているものが挙げられる。
【0044】
本発明の触媒系において用いられ得る外部電子供与体化合物の例には、単官能性および多官能性のカルボン酸、カルボン酸無水物、およびカルボン酸エステル、ならびにケトン、エーテル、アルコール、ラクトン、さらには、有機リンおよびシリコン化合物が含まれる。また、2つ以上の外部電子供与体化合物の混合物が用いられてもよい。固体の触媒成分a)の調製時に用いられる外部電子供与体化合物および内部電子供与体化合物は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。好ましい外部電子供与体化合物は、一般式(II)の有機珪素化合物である。
【0045】
RlnSi(OR2)4-n (II)
この場合、Rlの各々は、同じであっても異なっていてもよく、C1〜C20アルキル基、C1〜C10アルキルと任意に置換された5員環状−もしくは7−員環状アルキル基、C6〜C18アリール基、またはC6〜C18アリール基、C1〜C10アルキル基を表している。R2は、同じであっても異なっていてもよく、C1〜C20アルキル基であり、nは整数1、2または3である。
【0046】
式(II)の好ましい化合物として、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、イソプロピル−tert.−ブチルジメトキシシラン、イソプロピル−sec.−ブチルジメトキシシラン、およびイソブチル−sec.−ブチルジメトキシシランが挙げられる。
【0047】
触媒系の調製
本発明の触媒系を調製するために、共触媒としてのアルミニウム化合物および外部電子供与体化合物は、通常、約0°C〜200°C、好ましくは約20°C〜約90°Cの温度で、約1〜約100バール、特に約1〜約40バールの圧力で、別々に任意の順序で、または混ぜ合わせた状態で、固体の触媒成分と接触させてもよい。
【0048】
好ましくは、固体の触媒成分の遷移金属に対するアルミニウム化合物の原子比率が約10:1〜約800:1、特に約20:1〜約200:1となるような量のアルミニウム化合物共触媒が加えられる。
【0049】
本発明の触媒系は、有利には、アルク−1−エン(alk−1−enes)の重合に用いられ得る。好適なアルク−1−エン(alk−1−enes)は、線状のまたは分岐したC2〜C10アルケン、特に、エチレン、プロピレン、ブト−1−エン(but−1−ene)、ペント−1−エン(pent−1−ene)、ヘキス−1−エン(hex−1−ene)、ヘプト−1−エン(hept−1−ene)、オクト−1−エン(oct−1−ene)、ノン−1−エン(non−1−ene)、デク−1−エン(dec−1−ene)または4−メチルペント−1−エン(4−methylpent−1−ene)などの線状のC2〜C10のアルク−1−エン(alk−1−enes)を含む。これらのアルク−1−エン(alk−1−enes)の混合物も同様に重合されてもよい。
【0050】
固体の触媒成分および共触媒としてのアルミニウム化合物、またはアルミニウム化合物および外部電子供与体化合物を含む本発明の触媒系は、プロピレンポリマーと、プロピレンのホモポリマーと、さらには、プロピレンおよび最大10までの炭素原子を有する1つ以上のさらなるアルク−1−エン(alk−1−enes)のコポリマーとを生成するのに用いられる優れた触媒系である。この明細書中に用いられるコポリマーという語も、最大で10までの炭素原子を有するさらなるアルク−1−エン(alk−1−ene)が任意に組み込まれているコポリマーを指している。これらのコポリマーにおいては、一般に、コモノマー含有量は約15重量%未満である。コポリマーはまた、いわゆるブロックコポリマーまたはインパクトコポリマーの形態であってもよく、概して、少なくとも、最大10までの炭素原子を含む15重量%未満のさらなるアルク−1−エン(alk−1−ene)を含有するプロピレンホモポリマーまたはプロピレンランダムコポリマーのマトリックスと、最大で10までの炭素原子を含む15重量%〜80重量%のさらなるアルク−1−エン(alk−1−ene)を含有するプロピレンコポリマー(ゴム相)の軟質相とを含んでいる。また、たとえば、結果としてプロピレンのter−ポリマーとなるコモノマーの混合物も企図される。
【0051】
重合
プロピレンポリマーの生成は、バッチ方式で、または好ましくは連続的に、アルク−1−エン(alk−1−enes)の重合に適した共通のいずれの反応器において行なわれてもよい。すなわち、液状モノマーにおけるバルク重合を含む懸濁重合として、または気相重合として、溶液中で行なわれ得る。好適な反応器の例として、連続運転型の撹拌型反応器、ループ型反応器、流動床反応器、または水平型もしくは垂直型の撹拌型粉体床反応器が含まれる。重合が、連続的に連結された反応器において実行され得ることが理解されるだろう。反応時間は、選択された反応条件に依存している。一般に、反応時間は、約0.2〜約20時間、通常、約0.5〜約10時間、最も好ましくは0.5〜2時間である。
【0052】
一般に、重合は、約20°C〜約150°C、好ましくは約50°C〜約120°C、より好ましくは約60°C〜約95°Cの温度で、約1〜100バール、好ましくは約15〜約50バール、より好ましくは約20〜約45バールの圧力で実行される。
【0053】
結果として生じるポリマーの分子量は、水素などの、重合の技術分野において一般に用いられるようなポリマー鎖転移または停止剤を加えることによって、広範囲にわたって制御および調整され得る。加えて、トルエンまたはヘキサンなどの不活性溶媒、または窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガス、および少量の粉末状のポリマー、たとえばポリプロピレン粉末が加えられてもよい。
【0054】
本発明の触媒系を用いることによって生成されるプロピレンポリマーの(重量)平均分子量は、概して、約10,000〜2,000,000g/モルの範囲である。また、メルトフローレートは、約0.01〜2000g/10分、好ましくは約0.1〜100g/10分の範囲である。メルトフローレートは、230°Cの温度で、2.16kgの負荷をかけて、ISO1133に準拠した試験計器から10分以内に加圧される量に相当する。いくつかの適用例は、上述のものとは異なる分子量を必要とする可能性があり、本発明の範囲内に包含されるよう企図される。
【0055】
本発明の触媒系は、アルク−1−エン(alk−l−enes)を重合して、先行技術の触媒系と比べて優れた形態構造および高いかさ密度を有するポリマーを生成することを可能にする。加えて、本発明の触媒系により、生産性が劇的に高められる。
【0056】
本発明の触媒成分固体を含む触媒系を用いることによって得ることのできるポリマー、特に、プロピレンホモポリマー、または最大で10までのC原子を有する1つ以上のさらなるアルク−1−エン(alk−l−enes)を備えたプロピレンのコポリマーは、その機械的性質が良好であるので、薄膜、繊維または成形品の生成、特に薄膜の生成に有利に用いることができる。
【0057】
以下に記載の実施例において得られる固体の触媒成分、触媒系およびポリマーは、以下のテストを実行することで特徴付けられた。
【実施例】
【0058】
実験セクション
触媒合成
この発明の触媒のいくつかのサンプルは、改善された活性を実証し、かつ触媒の具体的な実施形態の物理的特性を決定するために生成およびテストされた。具体的な実施形態の以下の記載は、本発明の範囲を限定するよう意図されたものではない。
【0059】
図1は、前触媒を生成するのに用いられる機器を示す。反応容器(10)は、反応チャンバ(12)およびジャケット(14)を含む。ジャケットは吸気口(16)および排気口(18)を含む。反応チャンバにおいて選択された温度を維持するために、流体が所望の温度で吸気口を通じてジャケットに注入され、反応チャンバのまわりを流れて、排気口から出ていく。モータ(20)は、反応チャンバ(12)内の撹拌機(22)を駆動する。還流コンデンサ(24)は、窒素パージ源(26)を備える。排出口(28)は反応チャンバから反応生成物を除去するために設けられている。キャップ(32)を備えた添加口(30)を設けることにより、成分を反応チャンバに加えることが可能となる。
【0060】
以下に記載する触媒を生成するのに用いられる一般的な手順を以下に述べる。以下に記載するとおり各々の触媒調製のために1つ以上のパラメータを変更した。記載された手順は、この発明の触媒の例示的なサンプルを生成するのに用いられたものであり、本発明の範囲を限定するよう意図されたものではない。触媒は、MgCl2xEtOHの40ミクロンの担持体、60ミクロンの担持体および90ミクロンの担持体を用いて作成された(特定の工程において用いられる特別な担持体については表2の2列目を参照)。特に規定のない限り、「xEtOH」のxは、90ミクロンについては3.2であり、60ミクロンおよび40ミクロンについては3.1である(表1を参照)。球状の担持体は、民間の供給業者から入手可能であったが、背景の段落において詳述したように製造することもできた。
【0061】
各々の触媒調製については、(表2に示されるようにエチルベンゼンもしくはisopar−H中でスラリーにされた)球状のMgCl2担持体、または代替的な実施形態の場合にはTiCl4が、まず、被覆されたガラス反応器(10)に投入された。触媒工程の各々において用いられるTi/Mgのモル比は、表2の3列目に示されている。Ti/Mgのモル比は、好ましくは1:100〜1:5、好ましくは1:50〜1:8、最も好ましくは1:25〜1:9である。
【0062】
最初に投入する実際の量は、触媒調製工程ごとにわずかに異なる可能性があるが、概して、最初の投入は、ほぼ10gのMgCl2.xEtOHの使用に基づいていた(4gのMgCl2と等量)。Mgに対するD−n−BP(ジ−n−ブチルフタラート)またはD−i−BP(ジ−i−ブチルフタラート)のモル比は、表2の8列目に記載される。DBP/Mgのモル比は、好ましくは0.05〜3.0、より好ましくは0.1〜0.2、さらにより好ましくは約0.12〜約0.15である。被覆温度は、表2の5列目において特に規定のない限り、約+10°Cであり得る準大気条件にまで下げられた。
【0063】
次いで、MgCl2.xEtOHおよびTiCl4を混ぜ合わせた。混ぜ合わせる順序を表2の4列目および5列目に記載する。4列目に列挙される成分は、手順のうち第1の成分、すなわち、被覆されたガラス反応器に投入される成分、である。安全上の理由から、純TiCl4は固形のMgCl2には加えなかった。代わりに、MgCl2は不活性溶媒中でスラリーにされた。たとえば、ヘプタンまたはisopar−Hが加えられた。スラリー媒体も(これを用いた場合には)4列目に示されている。5列目の成分は、追加された成分および成分を追加する時間量を示す。温度がこれらの列のうちどちらかに記載されている場合、それは、追加時におけるその溶液の温度を示している。4列目において特に規定のない限り、被覆されたガラス反応器中の第1の成分の温度は、常に0°Cであった。5列目において特に規定のない限り、第2の成分(追加された成分)の温度は常に室温であった。
【0064】
この追加は、通常約5分〜最大で約300分、より好ましくは約10分〜約90分、さらにより好ましくは約9分〜約45分にわたって、混合物の反応を可能にするようゆっくりと行なわれた。加熱前の反応の時間を5列目に示す。たとえば、触媒工程56において、22°Cの液状のTiCl4は、20分にわたって温度0°Cのエチルベンゼン中で懸濁しているMgCl2−xEtOH錯体に加えられる。触媒工程58における別の例として、エチルベンゼン中で懸濁し0°Cに冷却されたMgCl2−xEtOHが、温度0°の液状のTiCl4に10秒間かけて加えられた。
【0065】
第2の成分が窒素パージ下で加えられた。すなわちTiCl4がMgCl2に、またはこの逆の態様で加えられた。数分間(5列目において「追加時間」と記載)にわたってTiCl4およびMgCl2担持体を反応させた後、温度を、毎分約1°Cずつ、50°Cに上げた。50°Cでは、8列目に記載のとおり、ジ−n−ブチルフタラート(D−n−BP)またはジ−イソブチルフタラート(D−i−BP)を加えた。混ぜ合わされた溶液を、7列目に記載される保持時間にわたって50°Cで保持した。次いで、被覆温度を約105°Cにまで上げ、約1〜2時間にわたってそこで保持した。実際の時間を9列目に記載している。
【0066】
2時間後、105°Cで、反応器内容物をソックレー抽出装置に移し、まだ熱い内にろ過し、ヘプタンで洗浄した。図2に図示のとおり、ソックスレー抽出器を用いて触媒を活性化する。抽出装置は、主チャンバ(42)およびジャケット(44)を備えた第1の容器(40)を含む。ジャケットは吸気口(46)および排気口(48)を含む。主チャンバにおいて選択された温度を維持するために、流体が所望の温度で吸気口を通じてジャケットに注入され、反応チャンバのまわりを流れて、排気口から出ていく。モータ(50)は、主チャンバ(42)内の撹拌機(52)を駆動する。還流コンデンサ(54)は、窒素パージ源(56)を備えている。排出口(58)を設けることにより、流体を主チャンバから除去することが可能となる。キャップ(62)を備えた添加口(60)を設けることにより、前触媒反応生成物を反応チャンバに加えることが可能となる。
【0067】
固体の前触媒材料を保持するために、フィルタ(72)が主チャンバの底に設けられる。反応チャンバ(42)の底には口(64)が設けられており、抽出容器(66)への流路を規定している。プラグ(68)は、反応チャンバから抽出容器への流れを制御するために設けられる。抽出容器は加熱マントル(70)内に位置しており、この加熱マントル(70)は、抽出容器中の溶媒(74)を熱して還流させるのに用いられる。溶媒蒸気は、蒸留ライン(76)を通って主チャンバ(42)内に移動する。暖かい溶媒が主チャンバ(42)を満たすと、口(64)が開かれて、触媒を含む溶媒が抽出容器内に戻される。前触媒の各々は、エチルベンゼンとTiCl4との90/10体積混合物で2時間にわたり125°Cでソックレー抽出された。抽出後、触媒がヘプタンで洗浄され、真空乾燥された。
【0068】
上述の手順との変更点を以下に記載する。
触媒63:D−n−BPを50°Cではなく85°Cで加えた。
【0069】
触媒101:まず、55°Cで担持体を真空乾燥することによってEtOHの一部をMgCl2担持体から除去した。担持体のサンプル、すなわち0.5グラム、をTGA分析にかけた。ここでは、2.84等量のEtOHが担持体に残留したことが示される(=MgCl2−2.84EtOH)。
【0070】
触媒105:MgCl2担持体を、触媒101と同じ態様で脱アルコールし、さらに油浴温度を70°Cに上げてサンプルから真空抜きをすることによって脱アルコールした。残留アルコール含有量は、TiCl4との反応前に、2.4等量にまで低減された(=MgCl2−2.4EtOH)。
【0071】
触媒107:MgCl2担持体を、触媒105と同じ態様で脱アルコールした。
触媒116:EtOHをMgCl2触媒から熱により除去するのではなく、SiCl4との反応によってEtOHの一部を除去した。SiCl4の等量ごとに1等量のEtOHを除去したと想定して、十分なSiCl4を追加して、EtOH含有量を3.1から2.6等量にまで下げた(=MgCl2−2.6EtOH)。SiCl4を0°Cで加えた後、反応混合物を50°Cにまでゆっくりと暖めた。25°Cから50°Cの間に、反応媒体が、乳状の液体として現われた十分に懸濁された固体から、懸濁していない撹拌された固体へと変化した。サンプルを顕微鏡写真用に採取したところ、MgCl2担持体の球体が溶解して「ブドウ状の」塊になることが明らかになった。室温にまで冷却した後、液体をデカントし、固体をヘプタンで洗浄し、isopar−H中で再度スラリーにし、0°Cに冷却してから、同様に0°Cに冷却されているTiCl4を加えた。TiCl4の追加後、反応混合物を室温で、週末の間、静置させた。
【0072】
触媒127:MgCl2−3.1EtOH(10.26g)をisopar−H(200ml)中で懸濁させ、−3°Cに冷却した。TiCl4(50ml)を150mlのisopar−Hで希釈し、氷で〜0°Cに冷却した。TiCl4を、44分かけてゆっくりとMgCl2に加えた。TiCl4をすべて追加した後、温度を10分間一定に保ち、次いで、100分かけてゆっくりと50°Cに上昇させた。50°CでDBPをゆっくりと加えた。次いで、溶液を室温にまで冷却し、一晩、調製物を懸濁させた。翌日、温度を50°Cに上げてそのまま120分間保持し、次いで105°Cに上げて90分間そのまま維持した。その後、「前触媒」を、活性化容器に移し、従来どおりソックレー抽出した。触媒は、バルク重合条件下で2回テストされたが、得られた活性は非常に不良なものであった。DBPの追加後に調製を一晩中止することは、触媒性能に極めて悪影響を及ぼすようである。
【0073】
触媒137:触媒127の調製に用いられた手順を繰り返した。しかしながら、DBPの追加後、夜間に調製を停止するのではなく、反応混合物は、周囲条件でTiCl4を加えた後に一晩静置された。翌日、反応混合物を50°Cに加熱して、D−n−BPを加えた。触媒調製物の残りは、触媒127について記載されたものと同じであった。
【0074】
触媒20、103および10740は、球状のMgCl2担持体として40ミクロンのMgCl2−3.1EtOHを用いて製造された。
【0075】
触媒20:触媒20では40ミクロンのMgCl2−3.1EtOH担持体を用い、触媒78では90ミクロンのMgCl2−3.2EtOHを用いたことを除いては、(上述の標準的な手順の後に)触媒78と同じ手順が用いられた。冷却されたTiCl4にMgCl2−3.1EtOHをゆっくりと加えた。触媒形態構造は、非常に良好であるようであった。しかしながら、活性は、良好であるものの、60ミクロンおよび90ミクロンの担持体について作成された同様の触媒で観察されたものよりもわずかに低かった。触媒の色は淡黄色がかった緑である。
【0076】
触媒103:この調製における目的は、制御された態様で、40ミクロンのMgCl2x3.1EtOH/Isopar Hを冷却されたTiCl4に加えること、および使用されるIsopar Hの量を最小限にすることであった。20グラムの40ミクロンMgCl2−3.1EtOHを23mlのIsoparHと混ぜ合わせた。スラリーが濃すぎたため、さらに27mlのIsopar Hを加えた。このとき、スラリーは、依然として濃いようであったが処理しやすいものとなった。さらに20グラムの担持体およびさらに50ミリリットルのIsopar Hを250mlフラスコに加えた。12ゲージ針を備えたシリンジを用いてスラリーを移送した。200mlのTiCl4を前触媒容器に加え、これを−5°Cに冷却した。MgCl2−3.1EtOH/Isopar Hのスラリーを〜0°Cに冷却したが、シリンジ針で移送するには濃すぎたため、1/8”のプラスチック管材料を用いて、MgCl2−3.1EtOH/Isopar Hのスラリーを滴下する態様で前触媒容器に移した。この触媒は、バルク(56.1kg PP/g−cat.hr.)および気相(32.2kg PP/g−cat.hr.)の重合条件では非常に良好な活性を示した。最終的な触媒の色は、黄色から淡黄色であった。
【0077】
触媒10740:この例では、触媒103で用いられた同じモル比に従った。Isopar Hをヘプタンと置換えたことが相違点として挙げられる。前触媒反応器に200mlのTiCl4および90mlのヘプタンを投入し、次いで−3°Cに冷却した。ヘプタンは反応媒体の粘性を低下させるのに用いられた。40グラムの40ミクロンMgCl2−3.1EtOHを、撹拌されたTiCl4/ヘプタン混合物にゆっくりと加えた。撹拌機モータ上の電流引き込みを監視するためにアンプメータを並べて設置した。最初のアンプ読取値は0.026であった。すべてのMgCl2−3.1EtOHが加えられる時までに、反応混合物温度が−3°C〜−1°Cへと2°C上昇し、モータアンプは、反応媒体が濃いために、0.026から0.034まで上昇した。反応器ジャケット設定点温度が−5°C〜0°C、次いで5°C、さらには10°Cまで上昇すると、撹拌機アンプがまず0.038、さらには0.039まで上昇し、次いで0.029に低下した。この触媒は、触媒103よりもさらに高い活性をもたらした。最終的な触媒の色は黄色であった。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
比較のために、チーグラー・ナッタ触媒は、同じ40ミクロン(比較触媒40)、60ミクロン(比較触媒60)または90ミクロン(比較触媒90)のMgCl2.xEtOH担持体を用いて生成され、米国特許第4,829,034号および第5,137,856号において開示されているのと同様の方法によって生成された。ソックレー抽出を行わず、前触媒を、二度、純TiCl4を用いて2時間にわたり105°Cで処理し、ろ過し、ヘプタンで洗浄した。比較触媒40は40ミクロンの担持体を有していた。比較触媒60は60ミクロンの担持体を有していた。比較触媒90は90ミクロンの担持体を有していた。これらの比較例についてのパラメータを表3に示し、重合結果を表4および表5に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
重合テスト
バルク重合条件および気相重合条件の両方で触媒性能をテストした。バルク重合テストは、5リットルの反応器、1800グラムのプロピレン、2.0mlの0.1Mシクロヘキシル−メチル−ジメトキシシラン、7.0mlの1.6Mトリエチルアルミニウム(TEAl)、および0.5グラムの水素を用いて行なわれた。これらは以下の順で反応器に投入された。水素を追加した後、TEAlとシランとを予混合し、次いで、900グラムのプロピレンを用いて反応器に流し込んだ。残りの900グラムのプロピレンを用いて加えられた最後の成分は、〜0.02グラムの触媒であった。次いで、反応器を、通常2〜3分以内に急速に70°Cに加熱し、重合工程を、1時間にわたって進めた。プロピレンは、加熱プロセス全体を通じて液相に残っている。
【0084】
ベンチスケール反応器は、気相重合にも対応し得る撹拌機を備えていた。気相条件下では、追加順序は同じであったが、プロピレン投入量は、〜200グラムにまで低減される。同様に、TEAlおよびシランの投入は、バルク工程の1/3から1/2低減され、水素は、バルク工程の1/5から1/10低減された。触媒は、40°Cで注入され、反応器は、10分間にわたり75°Cまで加熱されるようプログラムされた。気相条件は、システム内へのプロピレンの投入を制御することによって維持された。システムが最終温度にまで加熱されると、プロピレンを追加したが、このときの追加ペースは、反応器容器内を、プロピレンが常に気相に残るような圧力に設定することを確実にするようなものであった。気相条件を確保するために、気体のプロピレンを加えつつ、反応器圧力を、75°Cで400psigで維持した。但し、質量流量計は要求に応じたものとする。
【0085】
さまざまな触媒を用いて生成されたポリプロピレンポリマーの物理的特性は、以下に記載されるテストを用いて決定された。テストにより得られた結果を表6および表7に要約する。
【0086】
活性
この研究全体にわたって報告された活性の結果は、1時間にわたる重合のためにグラム単位で反応器に投入された触媒の重量で割られたグラム単位のポリマー収率に基づいている。発明者は、比較触媒と比べて本発明の触媒中に同伴している残留溶媒のせいで失われた活性について原因を明らかにする必要はないと判断した。というのも、同じ担持体を用いて触媒が作成されたために予想され得るように、同伴した量が実質的に同じであったからである。
【0087】
この明細書全体にわたって報告された活性は、同伴した溶媒に合わせて調整するものではない。このように、活性は、ポリマーのグラム/触媒+溶媒のグラムに基づいている。乾燥した触媒のみに基づいて活性を判断するために、いくつかの触媒に対して熱重量分析(TGA:Thermal Gravimetric Analysis)を行なった。TGAは、ティーエー・インスツルメント(TA Instrument)社のSDT Q600に、〜10ミリグラムの触媒を配置することによって行なわれた。温度を10.0°C/分の割合で300°Cにまで上げた。そして、触媒の重量を、上昇する温度の関数として連続的に記録した。0から190Cまでの重量損失は残留溶媒の損失に相当する。
【0088】
キシレン可溶物(wt% XS)
キシレン可溶物は、当該産業界において周知であるヴィスコテック(Viscotek)社のフロー・インジェクタ・ポリマー分析(FIPA:Flow Injector Polymer Analysis)技術を用いて測定された。Viscotek社が公開した「ポリプロピレンおよびインパクトコポリマーのキシレン可溶性判定のためのFlPA(FlPA for xylene soluble determination of polypropylene and impact copolymers)」と題される論文(Viscotek社のウェブサイトhttp://www.viscotek.com/applications.aspxから得ることができる)に記載されるとおり、Viscotek社のFIPA方法では、0.3%〜20%のキシレン可溶物の範囲にわたりASTM法のD5492−06(ISO16152と等量)との0.994r2相関性が示される。したがって、当業者であれば、Viscotek社のFIPA法またはASTM法のD5492−06を用いて、本発明の結果を再現することができただろう。ポリプロピレン中のキシレン可溶物の重量パーセントはポリプロピレンの立体規則性を示すものであり、wt% XSが高ければ高いほど、触媒の立体規則性は不良なものとなる。
【0089】
メルトフローレート(MFR)測定
メルトフローレートの効果をASTM法のD1238−04を用いて測定した。5グラムのポリマーのサンプルごとに、0.2グラムの安定化パッケージを加えた。付加的なパッケージは、50重量%のIrganox 1010および50重量%のIrgafos 168からなる。ポリマーがテスト中に数分間にわたって230°Cで空気に晒されるので、このパッケージを加えることによってポリマーの熱分解および酸化分解が抑制される。メルトフローレートにより、ポリマーの分子量および水素反応に関する情報が提供される。MFRが高ければ高いほど、ポリオレフィンを生成した触媒の水素反応率が高くなる。同様に、MFRが高ければ高いほど、ポリマーの分子量が低くなる。
【0090】
粒径分析
ポリマー粒径分布を2つの段落で決定した。まず、2380ミクロンを上回るポリマー粒子の通過を防ぐプレスクリーンが、モールヴァン・マスタサイザ(Malvern Mastersizer)の供給トレーに搭載されているので、10グラムの各サンプルは、2000ミクロンの篩を通じて予めスクリーニングされ、2000ミクロンを上回る材料の重量%が記録された。次いで、2000ミクロンの篩を通過した残りの材料を、Malvern Mastersizerによって分析した。190ミクロンよりも小さなこの材料の体積百分率が、ポリマー中の微粉を示すものと判断された。触媒中の190ミクロン未満の微粉は避けるよう求められている。というのも、このサイズの微粉では、触媒を用いて生成されたポリプロピレン−ポリエチレン・コポリマーに投入することのできるエチレン含有量が著しく低下するからである。しかしながら、本発明のほとんどすべての場合には、190ミクロンよりも小さな測定可能な微粉が存在していなかったので、発明者はまた、単に比較の目的で410ミクロン未満の粒径を測定した。加えて、>2000ミクロン径の粒子が除去された後に残留する粒子について、中央値分布(D50)が決定された。
【0091】
顕微鏡写真
MgCl2−xEtOH担持材料、触媒および選択されたポリマーサンプルの顕微鏡写真は、ダイアグノスティック・インスツルメント(Diagnositc Instrument)社のSpot Advancedソフトウェア(ウインドウズ(登録商標)用バージョン3.5.9.1)を用いて、Diagnositc Instrument社のModel4.2のカメラを搭載したOlympus SZX12顕微鏡を用いて撮影された。図3および図4は、MgCl2−xEtOH担持材料と、比較用のチーグラー・ナッタ触媒とともに完成した触媒とについての、100倍の倍率の顕微鏡写真を示す。図5は、この発明の触媒およびプロセスによって生成されたポリマーの典型的な球形の11.2倍の倍率での顕微鏡写真を示す。表2は、触媒についての性質に関する形態構造観察結果を含む。破砕した、ブドウ状などの用語の例をこれらの図において例示する。
【0092】
重合テストに基づいた触媒活性
表4および表5は、上述のこの発明の触媒で得られたバルク相重合および気相重合の結果をそれぞれまとめたものである。比較触媒の結果を表の下部に示す。
【0093】
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
表4および表5に要約されるように、バルク重合条件下では、この発明の例示的な触媒は、比較触媒よりも著しくかつ予想外に高い活性を示した。
【0096】
表6は、バルク活性順位を気相中で得られた順位と比較したものである。概して、順位に変化はなかった。バルク中の最も活性的な触媒(89、101および105)は、気相における4つの最も活性的な触媒のうちの3つに該当した。このことは、広範囲の重合条件に対する本発明の触媒の優れた安定性を示している。
【0097】
【表8】

【0098】
通常、当業者であれば、本発明の触媒によって実証される活性の著しい増加とともに微粉(190μm未満の粒子)の著しい増加を予想するだろう。しかしながら、表7は、これが本発明の触媒については見出されないことを実証している。表7は、バルク条件下でテストされたとおり、3つの最も活性的な触媒からのバルク相ポリマーおよび気相ポリマーの両方についての粒径分布データを含んでいる。
【0099】
【表9】

【0100】
予想に反して、バルク相テストでは、表7の3列目に示されるとおり、最も活性的な本発明の触媒が実際には比較触媒60よりも大量の大きなポリオレフィン粒子(>2000μm)を生成する傾向があった。しかしながら、最も活性的な本発明の触媒では、<190μmの微粉が生成されなかった。この限定を<410μmの粒子にまでさらに拡大すると、本発明の触媒では、付加的な小さなポリオレフィン粒子はほとんど生成されなかった。さらに印象的なことには、気相テストにおいては、最も活性的な触媒では、規定どおりに、大きなポリオレフィン粒子(>2000μm)の量が2倍にされる一方で、実際には(比較触媒の<190μm微粉の増加と比べて)<190μmの微粉は生成されなかった。同様に、気相中では、3つの最も活性的な触媒では、比較触媒60によって生成される量の1/3以下、しばしば1/20未満である<410μmのいくつかの小さな粒子が生成された。
【0101】
通常、当業者であれば、チーグラー・ナッタ触媒を用いた場合、ポリオレフィン形態構造が触媒形態構造に従うものと予想する。すなわち、生成される触媒粒子で破砕されるものが多ければ多いほど、最終ポリオレフィン生成物における微粉および小さな粒子の予想発生率が高くなる。驚くべきことに、この関係は本発明の触媒には該当しなかった。表2に示される観察された形態構造結果と、表4および表5に実証されるとおりに生成された微粉の量との間に相関関係はない。
【0102】
この明細書中の教示に基づいて当業者によって理解されるように、添付の特許請求の範囲に規定される範囲から逸脱することなく、本発明の上述および他の実施形態に対して多数の変更および変形が実施可能である。したがって、好ましい実施形態についてのこの詳細な説明は、限定としてではなく例示的なものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンの重合のためのチーグラー・ナッタ触媒を生成するためのプロセスであって、
a.MgCl2−xROHを混ぜ合わせるステップを含み、xは、約1.5〜約6.0に等しく、反応器における遷移金属化合物の温度は約−30°C〜+40°であり、前記プロセスはさらに、
b.反応器中の混合物を約30°C〜約100°Cの温度に加熱するステップと、
c.ステップ(b)における加熱と同時に、またはステップ(b)の温度に達した後、反応器中の混合物に内部電子供与体を加えるステップと、
d.結果として生じる混合物を少なくとも約80°Cに加熱し、結果として生じる混合物をその温度で約1〜2時間にわたり保持して、前触媒を生成するステップと、
e.前触媒を含む混合物を室温(20°C)に冷却し、混合物をろ過して、固体の前触媒成分を得るステップと、
f.前触媒を、少なくとも100°Cの温度で、1〜5時間にわたり、有機溶媒と遷移金属との混合物で抽出するステップと、
g.触媒を室温(20°C)に冷却し、炭化水素溶媒で、数回、触媒を洗浄し、真空下でおよび/または30〜100°Cの高温で触媒を乾燥させるステップとを含む、プロセス。
【請求項2】
ROHは、アルコール、または少なくとも2つの異なるアルコールの混合物であり、Rは、1〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ROHは、少なくとも2つの異なるアルコールの混合物であり、Rは、1〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
ROHは、エタノール、またはエタノールと高級アルコールとの混合物であり、Rは、3〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ROHは、エタノール、またはエタノールと高級アルコールとの混合物であり、Rは、4〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
ROHは、エタノールと、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノールまたはオクタノールとの混合物である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
ROHはエタノールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
xは約2.5〜約4.0の値である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
xは約2.95〜約3.35の値である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
遷移金属化合物がTiCl4であり、ROHが、エタノール、またはエタノールと高級アルコールとの混合物であり、Rは、3〜10の炭素原子を有する線状の、環状の、または分岐した炭化水素単位である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
遷移金属化合物がTiCl4であり、ROHがエタノールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
抽出するステップf)は、ソックスレー抽出法を用いて実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
MgCl2−xROHと遷移金属化合物とを混ぜ合わせるための反応器温度は、約−10°C〜+10°Cの温度である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
遷移金属化合物はTiCl4である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
内部電子供与体は、ジエステル、置換されたシクロアルカン、1,2−ジカルボン酸、置換されたベンゾフェノン2−カルボン酸のモノエステル、置換されたベンゾフェノン3−カルボン酸、非置換のおよび置換済みの(C1−C10アルキル)−1,3―プロパンジエーテル、カルボン酸の誘導体、フタル酸の誘導体、およびスクシナートの誘導体からなる群から選択される1つ以上の要素である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
内部電子供与体は、ジ−イソブチルフタラート(D−i−BP)、ジ−n−ブチルフタラート(D−n−BP)、ジイソオクチルフタラート、ジ−2−エチル,ヘキシルフタラート、およびジイソノニルフタラートからなる群から選択される1つ以上の要素である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
ステップ(a)の混合物は、ステップ(b)の加熱を進める前に、約2分〜約300分にわたり反応させられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
ステップ(d)の前記結果として生じる混合物は、約100°C〜約135°Cの温度に加熱される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップ(d)の前記結果として生じる混合物は、請求項18の温度で、約1時間〜約4時間、保持される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(f)の有機溶媒は脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップ(f)の有機溶媒は芳香族炭化水素である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
ステップ(f)の有機溶媒はエチルベンゼンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
TiCl4とエチルベンゼンとの体積比は約30:70であり、抽出時間は、少なくとも100°Cの温度で1〜5時間である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項24】
TiCl4とエチルベンゼンとの体積比は約20:80であり、抽出時間は、100〜135°Cで1〜4時間である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項25】
TiCl4とエチルベンゼンとの体積比は約10:90であり、抽出時間は、120〜130°Cで1〜3時間である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項26】
ROHの一部が、遷移金属化合物との反応前に、脱アルコールによってMgCl2担持体から除去される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項27】
Mg/Tiモル比が、約1:100〜約1:5である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項28】
Mg/Tiモル比が、約1:50〜約1:8である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項29】
Mg/Tiモル比が、約1:25〜約1:9である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項30】
DBP/Mgのモル比が、約0.12〜約0.15である.請求項1に記載のプロセス。
【請求項31】
オレフィンの重合のための触媒を生成するためのプロセスであって、
a.MgCl2−xEtOHを混ぜ合わせるステップを含み、xは約3.0〜約3.3であり、反応器中のTiCl4の温度は約−10°C〜+10°Cであり、前記プロセスはさらに、
b.反応器中の混合物を約40°C〜約90°Cの温度に加熱するステップと、
c.反応器中の混合物にD−i−BPを加えるステップと、
d.結果として生じる混合物を約100°C〜110°Cに加熱し、結果として生じる混合物をその温度で約1時間〜2時間にわたり保持して、前触媒を生成するステップと、
e.前触媒を含む混合物を室温(20°C)に冷却し、混合物をろ過して固体の前触媒成分を得るステップと、
f.ソックレー抽出を用いて、120〜130°Cの温度で、1〜3時間にわたり、有機溶媒としてのエチルベンゼンと遷移金属としてのTiCl4との混合物で前触媒を抽出するステップと、
g.ヘキサンまたはヘプタンを含む溶媒で触媒を数回洗浄し、真空下でおよび/または30〜100°Cの高温で触媒を乾燥させるステップとを含むプロセス。
【請求項32】
式CH2=CHR1のオレフィンの重合のためのプロセスであって、R1は、水素であるか、または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基であり、請求項1または請求項31に記載のプロセスによって生成される触媒の存在下で実行される、プロセス。
【請求項33】
請求項1または請求項31に記載のプロセスによって生成される触媒であって、60kgポリプロピレン/g−cat hourを上回るポリプロピレンのためのバルク重合活性を有する、触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【公表番号】特表2011−522958(P2011−522958A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513666(P2011−513666)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/046945
【国際公開番号】WO2009/152268
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509162540)ルムス・ノボレン・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (5)
【氏名又は名称原語表記】LUMMUS NOVOLEN TECHNOLOGY GMBH
【Fターム(参考)】